説明

放熱シート及びその製造方法

【課題】高熱伝導性と高絶縁性を有する放熱シート及びその製造方法を提供する。
【解決手段】基材層とダイヤモンド層とが交互に積層された放熱シートであって、上記基材層が柔軟性材料によって形成され、上記ダイヤモンド層が上記放熱シートのシート面に対して0°より大きく90°以下の方向に形成されているので、柔軟性に優れたシート層におけるダイヤモンド層を発熱体及び放熱体に良好に接触させられるため、発熱体から発生する熱をダイヤモンド層を介して良好に放熱体方向に伝熱させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放熱シート及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラズマディスプレイ、トランジスター、コンデンサー、パーソナルコンピュータ等の電気機器や電子部品に用いられるIC及びCPU等から発生する熱によって部品の動作が不安定になる等の問題が生じている。このため、電子部品等の発熱体とヒートシンクやヒートパイプ等の放熱体の間に放熱シートを設けることで、熱の拡散が行われている。
【0003】
このような放熱シートとして、マトリックス樹脂に熱伝導性フィラーを添加したものが従来から提案され、マトリックス樹脂に熱伝導性の球状マグネシアを適宜、粒状アルミナと組み合わせた組成物からなる放熱シート、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム等の熱伝導性フィラーを用いた放熱シート、酸化アルミニウムや酸化チタン等の酸化物粒子、窒化ホウ素等の窒化物粒子、炭化珪素等の炭化物粒子、銅、アルミニウム等の金属粒子を用いた熱伝導性シート等が開示されている。しかし、熱伝導率が低いため、高い放熱効果を望むことはできない。
【0004】
また、特許文献1には、グラファイトシートが複数枚積層され、グラファイト結晶のa−b面が放熱シートのシート面に対して垂直である放熱シートが開示されている。このシートはグラファイトシートがシート厚さ方向に連続しているため、高い熱伝導率を発現するものである。しかし、放熱シートに要求される電気絶縁性については、グラファイトシートが高導電体であるため、別途、電気絶縁性層を設ける必要があり、これが実質的に熱伝導率の低下や製造上の工数増大につながるという問題が生じていた。
【特許文献1】特開2006−303240号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記現状に鑑み、高熱伝導性と高絶縁性を有する放熱シート及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、基材層とダイヤモンド層とが交互に積層された放熱シートであって、上記基材層が柔軟性材料によって形成され、上記ダイヤモンド層が上記放熱シートのシート面に対して0°より大きく90°以下の方向に形成されることを特徴とする放熱シートである。
【0007】
上記ダイヤモンド層が、放熱シートのシート面に対して60〜90°の方向に形成されるものであることが好ましい。
上記放熱シートのシート面において、上記シート面全面に対して、上記ダイヤモンド層の占める面積比率が4〜10%であり、上記シートの厚みが0.1〜1.0mmであることが好ましい。
【0008】
上記ダイヤモンド層は、平均粒径1〜30nmのダイヤモンドを水中で再凝集させて得られる平均粒径10〜500nmのダイヤモンドを水中に分散した分散液を用いて得られるものであることが好ましい。
【0009】
本発明はまた、上述の放熱シートの製造方法であって、柔軟性材料によって形成された基材層上に、平均粒径1〜30nmのダイヤモンドを水中で再凝集させて得られる平均粒径10〜500nmのダイヤモンドを水中に分散した分散液を用いてダイヤモンド層を形成する工程(I)と、上記工程(I)で得られた各2層積層体を、基材層及びダイヤモンド層が交互に積層されるように積層する工程(II)と、上記工程(II)で得られた多層体を、ダイヤモンド層が放熱シートのシート面に対して0°より大きく90°以下の方向に形成されるように切断する工程(III)とを含むことを特徴とする放熱シートの製造方法でもある。
以下、本発明を詳細に説明する。
【0010】
本発明の放熱シートは、基材層と、使用時に発熱体及び放熱体に接するように配置されたダイヤモンド層(放熱シートのシート面に対して0°より大きく90°以下の方向に形成された層)とが交互に積層されている。このような構成であるため、高い熱伝導性を有すると同時に、高い絶縁性をも有している。
【0011】
アルミナ等のフィラーを分散した放熱シートは高い絶縁性を有しているが、熱伝導性が充分ではない。また、上述したように、基材シートとグラファイトシートとを交互に積層した放熱シートは高い熱伝導性を有しているが、絶縁性が低い。このように、高熱伝導性と高絶縁性を両立することは一般的に困難であるが、本発明では両立が可能である。
【0012】
即ち、本発明の放熱シートを発熱体と放熱体の間に載置して使用すると、柔軟性に優れたシート面におけるダイヤモンド層を発熱体及び放熱体に良好に接触させられるため、発熱体から発生する熱をダイヤモンド層を介して放熱体の方向に伝熱させることができ、良好な放熱性を得ることが可能となる。従って、放熱シートにおいて、高い熱伝導性、放熱性が発揮される。また、シート中にダイヤモンド層を有していることから、ダイヤモンドが有する絶縁性に起因して、極めて高い絶縁性も発揮させることが可能である。
【0013】
本発明の放熱シートは、柔軟性材料によって形成される基材層と、放熱シートのシート面に対して0°より大きく90°以下の方向に形成されるダイヤモンド層とが交互に積層されたものである。
【0014】
以下、図1〜2を用い、本発明の放熱シートを具体的に説明する。
図1は、本発明の放熱シートのシート面に対する垂直方向の断面図の一例であり、シート中のダイヤモンド層及び柔軟性材料の積層状態を示したものである。また、図2は、本発明の放熱シートのシート面の概略図の一例であり、図1におけるシート面4の一例を示したものである。
【0015】
本発明の放熱シート1は、図1〜2に示されるように、基材層2とダイヤモンド層3とが交互に積層されている。
本発明におけるダイヤモンド層3は、ダイヤモンドによって形成され、放熱シート1において所望の熱伝導性を発現させられる層であれば特に限定されない。また、ダイヤモンド粒子が基材層2の表面の全面を覆う層であっても、基材層2の表面の一部を覆う層であってもよい。
【0016】
本発明の放熱シート1におけるダイヤモンド層3は、放熱シート1のシート面4に対して0°より大きく90°以下の方向に形成されている。即ち、図1の放熱シート1(シート面4に対する垂直方向の断面図)において、シート面方向5とダイヤモンド層方向6とがなす角度7が0°より大きく90°以下のものである。
【0017】
本発明において、放熱シート1のシート面4とは、放熱シート1の表面及び裏面を意味する。放熱シート1では、使用時において、一方のシート面が発熱体に接して発熱体から熱を受け取る受熱面として機能し、他方のシート面が放熱体に接して放熱体へ熱を渡す放熱面として機能する。本発明では、上記角度7が0°より大きく90°以下であることから、放熱シート1はシート面4において、ダイヤモンド層3が表面に露出した形態を有している(図2)。更に、基材層2は柔軟性材料により形成されている。
【0018】
従って、放熱シート1を発熱体及び放熱体の間に使用した場合、露出したダイヤモンド層3を発熱体及び放熱体に良好に接触させることができる。よって、このようにダイヤモンド層3を接触させて使用することにより、極めて高い熱伝導性を得ることができる。また、ダイヤモンド層3の性質から、シートに高い絶縁性を付与することもできる。
【0019】
ダイヤモンド層3は、放熱シート1のシート面4に対して60〜90°の方向に形成されることが好ましい。即ち、図1における角度7が60〜90°であることが好ましい。この場合、硬いダイヤモンドを使用したシート厚さ方向の弾性率を低減し、発熱体及び放熱体間の介在物としての密着性を高め、接触熱抵抗を低減して、伝熱効果を高めることができる。その結果、高熱伝導性を得ることができる。また、高絶縁性も発揮させることが可能である。
【0020】
本発明の放熱シート1において、ダイヤモンド層3は、平均粒径1〜30nmのダイヤモンドを水中で再凝集させて得られる平均粒径10〜500nmのダイヤモンドを水中に分散した分散液を用いて得られるものであることが好ましい。これにより、上記効果を良好に得ることができる。
【0021】
上記ダイヤモンドの分散液の製造方法としては、上記分散液が得られる方法であれば特に限定されず、従来公知の方法により製造することができ、例えば、以下の方法により製造できる。
一次粒子径1〜15nmで平均粒径100〜300nmに二次凝集した原料ダイヤモンドをアルカリ並びに酸で洗浄することでアルミニウム、鉄、マンガン等の不純物金属を除去した後、中和する。中和した後のダイヤモンドを平均粒径1〜30nmのダイヤモンドに解砕する。解砕した平均粒径1〜30nmのダイヤモンドを公知の方法で水中で再凝集させ、平均粒径10〜500nmのダイヤモンドの分散液を得る。上記アルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水等の公知の塩基性化合物を使用することができる。また、上記酸としては、塩酸、硝酸、硫酸等の無機酸、各種有機酸等の公知の酸化合物を使用することができる。更に、上記解砕方法としては、特に限定されず、公知の気流式粉砕機や機械式粉砕機等を用いることにより解砕することができる。
【0022】
上記において、平均粒径1〜30nmのダイヤモンドが使用されるが、このダイヤモンドの平均粒径が1nm未満であると、ダイヤモンドの規則正しい結晶構造が得られず、結欠陥構造が多くなるおそれがある。30nmを超えると、再凝集のコントロールが出来なくなるおそれがある。上記平均粒径は、1〜15nmであることが好ましく、5〜15nmであることがより好ましい。
【0023】
更に、上記においては、上記平均粒径1〜30nmのダイヤモンドを水中で再凝集させて得られる平均粒径10〜500nmのダイヤモンドを水中に分散した分散液が使用される。分散液における平均粒径が10nm未満であると、徐々に凝集が進み平均粒径が大きくなるおそれがある。500nmを超えると、それ以上凝集しなくなるおそれがある。上記分散液における平均粒径は、30〜300nmであることが好ましい。
【0024】
本明細書において、平均粒径とは、正規分布関数から求められる体積基準の中央累積値(50%粒径、d50)をいい、上記分散液におけるダイヤモンドの平均粒径は、例えば、レーザー回析式粒度分布測定装置(堀場製作所製、LA−920)で測定することができる。
【0025】
本発明の放熱シート1のシート面4において、シート面4全面に対して、ダイヤモンド層3の占める面積比率が4〜20%であることが好ましい。即ち、図2のシート面4において、基材層2及びダイヤモンド層3を合わせたシート面4の全体面積100%に対するダイヤモンド層3が占める面積(図2中のダイヤモンド層3の合計面積)比率が4〜20%であることが好ましい。この場合、上記効果を良好に得ることができる。20%を超えると、放熱シートの柔軟性が低下し、発熱体への密着性が低下するので、熱伝導率が低下する恐れがある。5〜15%であることがより好ましい。
【0026】
本発明の放熱シート1における基材層2は、柔軟性材料によって形成される層であり、例えば、柔軟性を有するシートを使用することができる。
上記柔軟性材料としては特に限定されず、放熱シート1の熱伝導性や絶縁性を妨げるものでなければ、従来から使用されているものを使用できる。例えば、ポリウレタン、シリコーンゴム、エチレンプロピレンゴム、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド等のエラストマーを用いることができる。なかでも、軟質化が容易で機械強度が優れ、高い熱伝導性及び絶縁性を得ることができる点から、ポリウレタンが好ましい。
【0027】
上記ポリウレタンとしては、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させることにより得られるものを挙げることができ、例えば、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得られたプレポリマーに対して、更に架橋剤を反応させる方法等によって得ることができる。
【0028】
上記ポリオールとしては特に限定されず、例えば、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等のポリエーテルポリオール;ポリカーボネートジオール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレンアジペートエステル、ポリエチレンブチレンアジペートエステル、ポリブチレンアジペートエステル、カプロラクトンエステルジオール等のポリエステルポリオール等を挙げることができる。
【0029】
上記ポリイソシアネートとしては特に限定されず、従来公知のものを使用することができ、例えば、脂肪族イソシアネート、脂環族イソシアネート、芳香族イソシアネート等を挙げることができる。上記脂肪族イソシアネートとしては、例えば、炭素数6〜10の脂肪族ジイソシアネート等が挙げられる。具体例としては、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等が挙げられる。また、ヘキサメチレンジイソシアネートやイソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート体、ビウレット体、アダクト体の変性体等を挙げることができる。上記脂環族イソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート(NBDI)等の脂環族ジイソシアネート等を挙げることができる。上記芳香族イソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、フェニレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、カルボジイミド変性のMDI等を挙げることができる。
【0030】
上記架橋剤としては特に限定されず、例えば、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリメチロールプロパン、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等の低分子ジオール;エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン等のジアミン等を挙げることができる。
【0031】
上記ポリウレタンとして、ひまし油変性ポリオールとポリイソシアネートとを反応させることにより得られるものを使用した場合、低硬度で柔軟性に富み、機械強度に優れるとともに、高熱伝導性、高絶縁性を得ることが可能となる。
【0032】
上記ひまし油変性ポリオールは、ひまし油又はひまし油誘導体からなる広義のものを意味する。
上記ひまし油変性ポリオールとしては、例えば、ひまし油、脱水ひまし油、これらの変性物;ひまし油脂肪酸であるリシノール酸と、低分子ポリオール(分子量60〜500)、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールとのエステル交換又はエステル化により得られるポリオール等を挙げることができる。上記ひまし油変性ポリオールとしては、他に、部分脱水ひまし油、部分アシル化ひまし油(部分アセチル化ひまし油等)、ひまし油のアルキレンオキシド付加物、ひまし油のエポキシ化物、ひまし油のハロゲン化物、ビスフェノール類アルキレンオキサイド付加物のひまし油脂肪酸モノ又はジエステル、ダイマー酸とひまし油変性ポリオールとのエステル化物、重合ひまし油のエステル交換反応物とカプロラクトンとの反応物、ひまし油脂肪酸の2量体以上の縮合体又はその縮合体と多価アルコールとのエステル等も挙げることができる。また、水添ひまし油等のひまし油又はひまし油誘導体の水素添加物も用いることができる。
上記ひまし油変性ポリオールと反応させるポリイソシアネートとしては特に限定されず、例えば、上述したものと同様のものを使用することができる。
【0033】
上記基材層2の製造方法としては特に限定されず、従来公知のシート成形方法を用いて製造することができる。例えば、ゴム(マトリックスエラストマー)が液状材料を混合し反応硬化させて得られる場合(ポリウレタン等)は、液状材料に必要に応じて添加剤を添加し、撹拌混合して分散させ、混合液をシート形成型に注入し、加熱硬化させ、硬化後脱型することにより好適に製造できる。
また、上記方法以外に、押出成形、ロール、カレンダー加工等の方法を用いて製造することもできる。
上記基材層2は、コロナ処理を施したものであってもよい。また、上記製造方法で成形してシートを必要に応じて切断してもよい。
【0034】
本発明の放熱シート1は、高熱伝導性フィラーを含むものであってもよい。
上記高熱伝導性フィラーとしては、従来から用いられている各種の材料を用いることができ、例えば、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、二酸化珪素、二酸化チタン、マイカ、チタン酸カリウム、酸化鉄、タルク等の酸化物粒子、窒化ホウ素、窒化珪素、窒化アルミニウム等の窒化物粒子、炭化珪素等の炭化物粒子、銅、アルミニウム等の金属粒子等を挙げることができる。また、硬化剤、加工助剤、特性改良剤等、従来から用いられている添加剤を適宜配合してもよい。
【0035】
本発明の放熱シート1は、シートの厚みが0.1〜1.0mmであることが好ましい。即ち、図1の放熱シート1における厚み8が上記範囲であることが好ましい。これにより、放熱部材の実用的な強度を確保し、妥当な熱伝導距離となるため、良好な伝熱効果を発現させることができる。0.1mm未満であると、強度が低下し、破断のおそれがある。1mmを超えると、伝熱の効果が低下するおそれがある。上記厚みは0.1〜0.5mmであることがより好ましい。
【0036】
本発明の放熱シート1の製造方法は、基材層2とダイヤモンド層3とが交互に積層されたものが得られる方法であれば特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。なかでも、柔軟性材料によって形成された基材層上に、平均粒径1〜30nmのダイヤモンドを水中で再凝集させて得られる平均粒径10〜500nmのダイヤモンドを水中に分散した分散液を用いてダイヤモンド層を形成する工程(I)と、上記工程(I)で得られた各2層積層体を、基材層及びダイヤモンド層が交互となるように積層する工程(II)と、上記工程(II)で得られた多層体を、ダイヤモンド層が放熱シートのシート面に対して0°より大きく90°以下の方向に形成されるように切断する工程(III)とを含む方法を挙げることができる。
【0037】
上記工程(I)において、ダイヤモンドの分散液を用いてダイヤモンド層を形成する方法としては、例えば、印刷法、スプレー法、スピンコーティング法、ディップ法等、従来公知の塗布方法により行うことができる。上記基材層、分散液は上述したものと同様である。塗布後は、公知の方法で乾燥することによってダイヤモンド層を得ることができる。
【0038】
上記工程(II)は、上記工程(I)で得られた多数の2層積層体(基材層及びダイヤモンド層からなる積層体)を、それぞれ基材層及びダイヤモンド層が交互に積層されるように積層し、目的とする多層体(両層が交互に多数積層された積層体)が得られる方法であれば特に限定されず、従来公知の積層方法を採用できる。例えば、各2層積層体を接着剤を使用し、両層が交互となるように積層(接着)し、目的とする多層体を製造することができる。
【0039】
上記接着剤としては特に限定されず、従来公知のものを使用することができ、例えば、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、シリコーン系接着剤、ゴム系接着剤、オレフィン系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤、ポリサルファイド系接着剤、ポリイソブチレン系接着剤、酢酸ビニル系接着剤、ラテックス系接着剤、PVA系接着剤、EVA(エチレンビニルアセテート)系接着剤、塩化ビニル系接着剤、フェノール系接着剤、ポリウレタン系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、メラミン系接着剤等を挙げることができる。
【0040】
上記工程(III)は、上記工程(II)で得られた多層体を、製造される放熱シートにおいて、ダイヤモンド層が放熱シートのシート面に対して0°より大きく90°以下の方向に形成されたものとなるように切断することによって行うことができる。即ち、製造された多層体を、図1で示した角度7が目的の角度(0°より大きく90°以下の角度)となるように、従来公知の切断方法を用いて行うことができる。例えば、角度7が90°の放熱シートを製造する場合は、工程(II)で得られた多層体を、その多層体を構成する基材層のシート面に対して略垂直方向に切断することにより得ることができる。角度7が90°の放熱シートは、生産性に優れている。
【0041】
上記切断方法としては、例えば、ワイヤ、レーザー切断機、ウォータージェット切断機、等を使用する方法を挙げることができる。なかでも、ウォータージェット切断機が好ましい。この場合、高熱伝導性及び高絶縁性を有する放熱シートを良好に得ることができる。
【発明の効果】
【0042】
本発明の放熱シートは、高熱伝導率及び高絶縁性を示すダイヤモンド層により、発熱体から放熱体へと効率良く伝熱することができる。このため、高い熱伝導性、放熱性を得ることができる。また、高い電気絶縁性を得ることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
以下本発明について実施例を掲げて更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。また実施例中、「部」、「%」は特に断りのない限り「質量部」、「質量%」を意味する。
【0044】
製造例1 ダイヤモンド分散液の製造
一次粒子径1〜15nmで平均粒径100〜300nmに二次凝集した原料ダイヤモンドを水酸化カリウム、並びに、硝酸で洗浄することでアルミニウム、鉄、マンガン等の不純物金属を除去した後、中和した。中和した後のダイヤモンドを平均粒径5〜15nmのダイヤモンドに解砕した。解砕した平均粒径5〜15nmのダイヤモンドを水中で再凝集させ、平均粒径150〜200nmのダイヤモンドの分散液を得た。なお、上記解砕は、ビーズミルにより行った。
【0045】
実施例1 放熱シートの製造
縦横50mm、厚さ500μmのゴムシート(EPDMからなるシート)を用意し、スプレーコート装置により、シート上へダイヤモンド分散液を塗布後、乾燥させて成膜した。ダイヤモンド膜の厚さが50μmになるまでこの作業を繰返した。成膜したダイヤモンド膜上にシリコーン系接着剤を厚さ10μmで塗布し、このシートを16枚、上下方向から加圧しながら接着させて厚さ約10mmの積層体を得た。次に、ダイヤモンド膜に対し垂直に1mm厚に切断し積層体断面シート(放熱シート:図1の角度7が90°のシート)を得た。
なお、切断はウォータージェット切断機を使用して行った。また、得られた放熱シートのシート面に対して、ダイヤモンド層の占める面積比率は8.3%であった。
【0046】
比較例1 従来品の製造(ゴム+アルミナ)
1液型室温硬化シリコーンゴム(信越シリコーン製:KE3423)と、熱酸化アルミニウム(昭和電工製:AS−40:平均粒径12μm)を混合した。
この混合液を2枚の剥離紙(シート成形用型として使用)で挟み、カレンダー成形を行い、厚さ1.0mmの放熱シートを得た(酸化アルミニウムの含有量20容積%)。
【0047】
比較例2 従来品の製造(グラファイト積層品)
縦横約50mm、厚さ約100μmのグラファイトシートを用意し、グラファイトシートの片面に約10μm厚になるようにエポキシ系接着剤を塗布した。次いで、接着剤塗布済グラファイトシートを重ね合わせて500枚積層し、上下方向から加圧して強固に接着させて、厚さ約55mmのグラファイトシート積層体を得た。
次に、グラファイトシートに対して垂直に1.0mm厚に切断して、積層体断面シート(放熱シート)を得た。
【0048】
評価
〔熱伝導率〕
実施例、比較例で得られた放熱シートの熱伝導率について、熱伝導度測定機(カトーテック社製サーモラボ2)による定常熱伝導測定法で測定した。結果を表1に示した。
(測定条件)
ウォーターボックス中に室温下の水を流し、ボックス上に5×5cmのサンプルを乗せ、更に試料上の、BTボックスの熱板を試料にあてて載せる。定常に達した後、BTボックスの熱流損失(W)をパネルメーターで読みとる。
定常状態における熱流損失(W)は、以下の式で表すことができることから、熱伝導率が求められる。
W=K×(A・ΔT/D)
W:定常状態における熱流損失
D:試料厚み
ΔT:試料温度差
A:BT熱板面積
K:熱伝導率
【0049】
〔電気絶縁性〕
試料の上下に電極を置き、断面積Sに一定電流(I)を流し、距離Lだけ離れた電極間の電位差(V)を測ることにより求めた。
ρv=(V/I)・(S/L)
ρv:体積電気抵抗率
【0050】
【表1】

【0051】
表1から、実施例1では、高い熱伝導率を示すとともに、高い絶縁性も有していた。一方、比較例1では熱伝導率が低く、比較例2では、絶縁性が低かった。即ち、従来品では、高熱伝導率及び高絶縁性を両立することはできなかった。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の放熱シートは、電気機器や電子部品に用いられるIC及びCPU等の発熱体の放熱のために好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の放熱シートのシート面に対する垂直方向の断面図である。
【図2】本発明の放熱シートにおけるシート面の概略図である。
【符号の説明】
【0054】
1 放熱シート
2 基材層
3 ダイヤモンド層
4 放熱シートのシート面
5 放熱シートのシート面方向
6 放熱シート中のダイヤモンド層方向
7 放熱シートのシート面方向5とダイヤモンド層方向6とがなす角度
8 放熱シートの厚み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層とダイヤモンド層とが交互に積層された放熱シートであって、
前記基材層が、柔軟性材料によって形成され、
前記ダイヤモンド層が、前記放熱シートのシート面に対して0°より大きく90°以下の方向に形成される
ことを特徴とする放熱シート。
【請求項2】
ダイヤモンド層が、放熱シートのシート面に対して60〜90°の方向に形成される請求項1記載の放熱シート。
【請求項3】
放熱シートのシート面において、シート面全面に対して、ダイヤモンド層の占める面積比率が4〜10%であり、シートの厚みが0.1〜1.0mmである請求項1又は2記載の放熱シート。
【請求項4】
ダイヤモンド層は、平均粒径1〜30nmのダイヤモンドを水中で再凝集させて得られる平均粒径10〜500nmのダイヤモンドを水中に分散した分散液を用いて得られるものである請求項1、2又は3記載の放熱シート。
【請求項5】
請求項1、2、3又は4記載の放熱シートの製造方法であって、
柔軟性材料によって形成された基材層上に、平均粒径1〜30nmのダイヤモンドを水中で再凝集させて得られる平均粒径10〜500nmのダイヤモンドを水中に分散した分散液を用いてダイヤモンド層を形成する工程(I)と、
前記工程(I)で得られた各2層積層体を、基材層及びダイヤモンド層が交互に積層されるように積層する工程(II)と、
前記工程(II)で得られた多層体を、ダイヤモンド層が放熱シートのシート面に対して0°より大きく90°以下の方向に形成されるように切断する工程(III)とを含む
ことを特徴とする放熱シートの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate