説明

放熱装置

【課題】基板上に複数の振動板を自由に配置することが可能であり、容易に放熱効果を高めることが可能な放熱装置を提供する。
【解決手段】放熱装置は、基板2と、前記基板の一面上に個別に立設された、高分子アクチュエータ10からなる複数の振動板3と、を備え、前記振動板は、短冊形状をなし、その長手方向の一端部3aが前記基板の一面側に固設されて固定端を、長手方向の他端部3bが自由端をそれぞれ成しており、前記自由端側が前記固定端側に対して振動可能とされていること、を特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの微細化に伴い、微細配線を流れる電流密度も増大し、その結果発生するジュール熱によってデバイスが誤作動を起こすなどの問題がしばしば起こる。更にデバイスの小型化と携帯機器の普及に伴い、発熱源となる電子デバイスが高密度に実装されると、放熱が十分になされないため、より一層の悪影響が生じている。従来の半導体デバイスでは、発熱する半導体チップ上にアルミや銅などの高熱伝導度の金属を用いたヒートシンクを設けて、放熱を促進することによって素子冷却を行っていた。また、ヒートシンクだけでは放熱が不十分なプロセッサなどのデバイスでは、ヒートシンクと空冷ファンを組み合わせてデバイスの冷却を行っていた、また近年では、ヒートパイプや冷媒を用いたデバイス冷却も実施されている。
【0003】
しかしながら、ヒートシンクと空冷ファンを用いた冷却では、特に実装時の高さが高くなってしまうため、薄型の携帯機器において不利である、水冷やヒートパイプを用いた冷却では、暖まった冷媒を冷やすための場所が必要となるので、実装面積上不利である。従来技術の問題点は、一言で言うなら微細化によって発熱量が増大したデバイスを冷却するのに、それだけ多くの空間を要する、と言う点にあった。
【0004】
これに対し、半導体素子上に高分子アクチュエータを立設したものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。高分子アクチュエータを電気的に駆動制御することで、半導体素子上を扇ぐように往復運動させ、発生した風によって半導体素子を冷却する。そのため、高分子アクチュエータが振幅する領域内には、他の高分子アクチュエータを追加して配置することができない。ゆえに、半導体素子の発熱量に応じて高分子アクチュエータの数を増やして放熱効果を高めることが難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−60367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような従来の実情に鑑みて考案されたものであり、基板上に複数の振動板を自由に配置することが可能であり、容易に放熱効果を高めることが可能な放熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る放熱装置は、基板と、前記基板の一面上に個別に立設された、高分子アクチュエータからなる複数の振動板と、を備え、前記振動板は、短冊形状をなし、その長手方向の一端部が前記基板の一面側に固設されて固定端を、長手方向の他端部が自由端をそれぞれ成しており、前記自由端側が前記固定端側に対して振動可能とされていること、を特徴とする。
本発明の放熱装置では、前記基板の一面上に個別に立設された複数の振動板は、長手方向の一端部が前記基板の一面側に固設され、長手方向の他端部が自由端をそれぞれ成しており、前記自由端側が振動可能とされているので、複数の放熱板を基板上に高密度に配置することが可能である。したがって、本発明の放熱装置では、基板上に複数の振動板を自由に配置することが可能であり、容易に放熱効果を高めることが可能である。
【0008】
また、本発明に係る放熱装置は、前記複数の振動板が、面が相対向するように並べて前記基板の一面上に立設されていることが好ましい。
前記複数の振動板が、面が相対向するように並べて前記基板の一面上に立設されているので、空気の流れが制御され放熱効果をさらに高めることが可能である。
【0009】
また、本発明に係る放熱装置は、前記高分子アクチュエータが、一対の導電層と、前記一対の導電層の間に配された電解質層とから構成されることが好ましい。
高分子アクチュエータの二枚の導電層間に電圧(バイアス)を印加すると、電解質層に含まれるサイズの異なる陽イオンと負イオンが偏在し、その体積差によってアクチュエータが湾曲運動する。このように高分子アクチュエータを稼働させると、高分子アクチュエータからなる放熱板間距離を動的に変化させることができる。これにより周囲の空気が接伴されるので、放熱を促進することができる。
【0010】
また、本発明に係る放熱装置は、前記導電層が、カーボンナノチューブを含有することが好ましい。
カーボンナノチューブは、高い熱伝導度を有し、また比表面積も大きいため、放熱特性上有利である。
【0011】
また、本発明に係る放熱装置は、前記基板の一面上に一対のクランプが配されており、該クランプの間に前記振動板の一端部を挟み込むことにより、前記振動板が前記基板に固設されていることが好ましい。
前記基板の一面上に配された一対のクランプの間に前記振動板の一端部を挟み込むことにより、短冊形状の振動板を基板上に容易に立設することができる。
【0012】
また、本発明に係る放熱装置は、前記基板の一面に溝が設けられており、該溝内に前記振動板の一端部を挿入することにより、前記振動板が前記基板に固設されていることが好ましい。
前記基板の一面に設けられた溝に前記振動板の一端部を挟み込むことにより、短冊形状の振動板を基板上に容易に立設することができる。
【0013】
また、本発明に係る放熱装置は、前記振動板が、前記一端部において前記一対の導電層が分離され、それぞれの内側の面の一部が前記基板の一面に対向させた状態で、前記基板に固設されていることが好ましい。
振動板の一対の導電層を分離して基板上に固設することで、振動板を基板に固設するための部材が不要となり、振動板を基板上に簡単に固設することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、基板上に複数の振動板を自由に配置することが可能であり、容易に放熱効果を高めることが可能な放熱装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る放熱装置の第一実施形態を示す斜視図。
【図2】高分子アクチュエータの動作する様子を示す写真。
【図3】高分子アクチュエータの一例を示す断面図。
【図4】図1に示す放熱装置において、振動板を基板上に立設する方法の一例を示す断面図。
【図5】高分子アクチュエータの一例を示す断面図。
【図6】リード線を用いた給電の一例を示す断面図。
【図7】高分子アクチュエータの一例を示す断面図。
【図8】高分子アクチュエータの一例を示す断面図。
【図9】振動板を基板上に立設する方法の一例を示す断面図。
【図10】リード線を用いた給電の一例を示す断面図。
【図11】高分子アクチュエータの一例を示す断面図。
【図12】本発明に係る放熱装置の第二実施形態において、振動板が基板上に立設された状態を示す断面図。
【図13】図12に示す放熱装置において、リード線を用いた給電の一例を示す断面図。
【図14】リード線を用いた給電の一例を示す断面図。
【図15】本発明の放熱装置の他の形態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る放熱装置の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
(第一実施形態)
図1は、本発明の放熱装置の第一実施形態を示す斜視図である。図1(a)は放熱装置の全体図を示しており、図1(b)は放熱装置が備える高分子アクチュエータの動作状況を示す。
図1(a)に示すように、本発明の放熱装置1A(1)は、基板2と、前記基板2の一面2a上に個別に立設された、高分子アクチュエータ10からなる複数の振動板3と、を備え、前記振動板3は、短冊形状をなし、その長手方向の一端部3aが前記基板2の一面2a側に固設されて固定端を、長手方向の他端部3bが自由端をそれぞれ成しており、前記自由端側が前記固定端側に対して振動可能とされていること、を特徴とする。
【0018】
図1(b)は1つの高分子アクチュエータについて、その動作状況を示す斜視図である。図1(b)において、中央の図が図1(a)に相当しており、高分子アクチュエータ10の長手方向が、基板2の一面2aに対して垂直をなすz軸方向に立設された状態を表している。
後述するとおり、本発明の放熱装置1A(1)を構成する高分子アクチュエータ10は、その長手方向の一端部3aが前記基板2の一面2a側に固設されて固定端を成している。この固定端側において、高分子アクチュエータ10を構成する一対の導電層間に電圧(バイアス)を印加することにより、自由端を成している高分子アクチュエータ10の長手方向の他端部3bが振動する。具体的には、高分子アクチュエータ10の長手方向の他端部3bは、図1(b)において、左側の図では左向きの矢印方向(−x方向)へ、あるいは右側の図では右向きの矢印方向(+x方向)へ、振動可能とされている。
【0019】
図2は、高分子アクチュエータの動作する様子を示す写真であり、短冊状のアクチュエータの一端を固定し、短冊状のアクチュエータの短辺に沿う方向から、カメラで撮影した写真である。
図2において、図2(a)はバイアス印加前(あるいはバイアス印加がゼロ)の状態を、図2(b)はバイアス印加中(振動中)の状態を、それぞれ表している。すなわち、図2(a)の写真は、図1(b)における中央の図に相当する。そして、図2(b)の写真は、図1(b)における左側の図あるいは右側の図に相当する。
図2の写真から、本発明に係る高分子アクチュエータ10を構成する短冊形状の振動板3においては、その長手方向の一端部が基板に固設された固定端を、長手方向の他端部が自由端を、それぞれ成しており、自由端が固定端に対して変動することにより、振動板3は長手方向において湾曲するように変形している様子分かる。
【0020】
上述したように、本発明の放熱装置1A(1)では、前記基板2の一面2a上に個別に立設された複数の振動板3は、長手方向の一端部3aが前記基板2の一面2a側に固設され、長手方向の他端部3bが自由端をそれぞれ成しており、前記自由端側が振動可能とされているので、複数の振動板3を基板2上に高密度に配置することが可能である。したがって、本発明の放熱装置1A(1)では、基板2上に複数の振動板3を自由に配置することが可能であり、容易に放熱効果を高めることが可能である。
【0021】
基板2は、特に限定されるものではないが、高熱伝導度のものがより好適である。使用する基板2の絶縁性、導電性は問わないが、導電性の基板2を用いる場合には、振動板3の搭載箇所を適宜絶縁する必要が有る。本実施形態では、基板2として、平坦な板状のもの(ヒートスプレッダ)を用いている。
【0022】
基板2には、所定の配線パターン(図示略)が形成されている。配線パターンにはめっきした銅が好適に用いられるが、他の金属や導電性材料であっても構わない。また配線パターンの形成方法も、めっきに限らず任意の方法で形成して良い。基板2が金属などの導電性の場合は、少なくとも配線パターンの下部には絶縁層を設けることが必要である。
【0023】
振動板3は、高分子アクチュエータ10からなる。この高分子アクチュエータ10は、図3に示すように、一対の導電層11と、前記一対の導電層11の間に配された電解質層12とから構成される。
前記導電層11は、カーボンナノチューブを含有する。カーボンナノチューブは、銅やアルミニウムなどの高熱伝導度を有する金属に比べて約3倍の熱伝導度を有し、また比表面積も大きいため、放熱特性上有利である。
【0024】
カーボンナノチューブとイオン液体を混合すると、ゲル化することが知られている。これをバッキーゲルと呼ぶ(参考文献Fukushima et al.Angew.Chem.lnt.Ed.2005,44,2410)。本実施形態では、高分子アクチュエータ10の材料として、このバッキーゲルを用いる。
バッキーゲルにポリマ(典型的にはフッ素系のゴム材料)を混合して作製した二枚の導電層11の間に、イオン液体とポリマとを混合して作製した電解質層12を挟んでホットプレスすると、図3に示すようなバッキーゲル高分子アクチュエータ10が得られる。このようなバッキーゲル高分子アクチュエータ10は、幅が数mm(典型的には1〜5mm)、長さが数cm(典型的には0.5〜3cm)、厚さが例えば20μm〜100μm程度(典型的には50μm)の短冊状である。
【0025】
なお、導電層11へのポリマの添加は任意である。ポリマを添加すると、高分子アクチュエータ10自身により高い弾性を持たせることができる。一方、より高い熱伝導度や放熱性が必要な場合は、ポリマを添加せずにカーボンナノチューブとイオン液体のみで導電層11を構成すると良い。特にポリマを添加しない場合には、スーパーグロースカーボンナノチューブ等の長尺のカーボンナノチューブを用いるとより好適である。
【0026】
そして、このような高分子アクチュエータ10の一対の導電層11間に電圧を印加すると、電解質層12に含まれるサイズの異なる陽イオンと負イオンが偏在し、その体積差によって高分子アクチュエータ10が湾曲運動する。このように高分子アクチュエータ10を稼働させると、高分子アクチュエータ10からなる振動板3間距離を動的に変化させることができる。これにより周囲の空気が接伴されるので、放熱を促進することができる。
すなわち、本発明では、熱伝導性の高いアクチュエータ自身をヒートシンクとして用いて、そのヒートシンク自身を稼働する「可動型ヒートシンク」(ソフトヒートシンク)を実現する点がポイントとなる。
【0027】
バッキーゲルは、カーボンナノチューブを分散させて作るために、カーボンナノチューブの高い導電性と熱伝導性を併せ持つ。またカーボンナノチューブの比表面積は大きいので、カーボンナノチューブを含むバッキーゲルアクチュエータの比表面積は、アクチュエータの実表面積の千倍に値するため、放熱性も良好となる。このようなバッキーゲルアクチュエータを用いると、熱伝導性と熱放出性に優れたヒートシンクを作製することが可能となる。加えて、ヒートシンク自体がアクチュエータで作られているため、電圧を印加することによってこれを稼働させることが可能である。すなわち、ヒートシンクのフィン(ひだ)自身を動かすことによって周囲の空気に粗密を形成することができ、その結果熱放出が促進される。
また、従来はヒートシンク上に冷却ファンを搭載していたために、どうしても嵩高くなってしまっていたものが、本発明では、可動型ヒートシンクを用いることで、放熱特性を損なうことなく大幅に高さを抑制できるようになる。
【0028】
このような高分子アクチュエータ10からなる振動板3は、図4に示すように、前記基板2の一面2a上に一対のクランプ6が配されており、該クランプの間に前記振動板3の一端部を挟み込むことにより、前記振動板3が前記基板2に固設されている。
本実施形態では、基板2上に一対のクランプ6を設けている。クランプ6の空隙に振動板3を挿入し、ネジ、バネ、空気圧、スペーサなどの方法で振動板3の一端部を挟むことにより、短冊形状の振動板3を基板2上に容易に立設することができる。
【0029】
しかしながら、このようなクランプ6によって振動板3を基板2上に固設する場合、振動板3を十分強くクランプすることが困難である。振動板3を強くクランプすると、内部の電解質層12が押しつぶされてこの部分の電解質層12が薄くなり、高分子アクチュエータ10(振動板3)の動作に影響が生じる可能性があるからである。
【0030】
そこで、図5に示すように、振動板3がクランプされる部位の電解質層12を、ポリイミドやテフロン(登録商標)などのフッ素系樹脂の薄い絶縁性のフィルムからなるスペーサ層14に置き換えて高分子アクチュエータ10を形成してもよい。
高分子アクチュエータ10の導電層11に含まれるイオンは、電解質層12を経由して導電層11間に印加された電圧の符号に応じて反対側の導電層11に移動する。電解質層12は、フッ素系ポリマにイオン液体が含まれたものであり、イオンの通り道となることができるものである。従って、このスペーサ層14としては、イオンを通さない物質であればよい。この観点から、イオン液体を含まないフッ素系のポリマをスペーサ層14として用いることも可能である。
スペーサ層14を含む高分子アクチュエータ10からなる振動板3を、強くクランプしても高分子アクチュエータ10の特性に影響することなく、より強固に固定することができる。
【0031】
このような放熱装置1A(1)において、高分子アクチュエータ10への給電は、例えば、図4に示すように、高分子アクチュエータ10に接触するクランプ6の内壁に導電性の給電電極層7を設けておき、基板2に形成された配線パターンを通じて電源に電気的に接続する方法が挙げられる。このとき、高分子アクチュエータ10に直接触れる箇所には、導電層11に含まれるイオン液体で腐食しにくい金などの貴金属を用いるのが好適である。
【0032】
また、高分子アクチュエータ10への給電として、図6に示すように、リード線20を用いてもよい。高分子アクチュエータ10の固定箇所と給電箇所とを分けることにより、高分子アクチュエータ10を駆動させても、安定して給電することができる。また、リード線20を用いることにより、クランプ6の内壁の高分子アクチュエータ10と接触する部位に任意の物質を使用することができる。この部分に例えば柔らかい樹脂を用いると、高分子アクチュエータ10を駆動させても、その動きを吸収するので、アクチュエータを安定に固定できる。これにより、高分子アクチュエータ10の寿命を向上することができる。
【0033】
また、図7に示すように、アクチュエータ10の導電層11のリード線20が接続される部位に、金フィルム15を貼り付けしておくと、より効率的な給電ができる。カーボンナノチューブが主成分である導電層11の表面には微細な凹凸が多数存在する。アクチュエータ10の成型時(二枚の導電層11と電解質層12の熱圧着時)に、給電位置となる部位に、金フィルム15を同時にプレスすると、この微細な凹凸にフィルムが圧着され、アクチュエータ10とリード線20とのの電気的接触を向上することができる。
【0034】
なお、スペーサ層14を含む高分子アクチュエータ10をプレス成型後、図8に示すようにスペーサ層14を除去すると、クランプされる部位の導電層11が独立した状態となる。図9に示すように、この独立した導電層11を、絶縁部15を介してそれぞれ個別にクランプすることによって、より強固にアクチュエータを保持することができる。また強くクランプすることによって、クランプ6の給電電極層7と高分子アクチュエータ10の電気的な接触を向上させることができる。もちろん、この場合もリード線20を用いて給電してもよい(図10参照)。
さらに図11に示すように、一対の導電層11の間に、スペーサ層14を二枚挿入し、導電層11の内側に残るようにしてもよい。これにより、導電層11の内側の絶縁と補強とが可能になる。
【0035】
前記複数の振動板3は、図1に示すように、面が相対向するように並べて前記基板2の一面2a上に立設されている。前記複数の振動板3を、面が相対向するように並べて立設することで、図1中矢印に示すように、振動板3の幅方向に連続した空隙ができる。
この空隙による熱や空気の輸送が可能となる。特に、基板2に傾斜を設けたり、空隙が縦方向に繋がるように振動板3を設置すると、いわゆる煙突効果によって空気の流れを制御することができ、熱輸送、熱放出の効率を高めることが可能である。
【0036】
隣接する振動板3同士の間隔は、特に限定されるものではないが、振動板3同士の間隔が狭すぎると、振動板3を振動させたときに振動板同士が接触しやすくなり、振動板の振動幅が低下するので放熱効率が低下する。また、振動板同士が接触することによって振動板が損傷する、などの不具合が生じ易くなる。また、振動板3同士の間隔が広すぎると、単位面積あたりの振動板3の搭載数が減少するため、振動板3の表面積が減少し、放熱効果が低下する。振動板3同士の間隔は、例えば、振動板3の長手方向の長さよりも短い距離とすることが好ましい。
また、並べて配された複数の振動板3を、集団としてどのように振動させるかは重要である。例えば、振動板3の振幅を、隣り合う振動板3同士がぶつからない程度の幅に調整する。あるいは、複数の振動板3を、同一のタイミングで振動させてもよい。
【0037】
すなわち、本発明の放熱装置1では、カーボンナノチューブの大きな比表面積に起因する、振動板3表面からの放熱(ヒートシンク)に加えて、振動板3を稼動させることによって振動板3の間隔を変化させることにより、より効率的な放熱が可能となる(可動式のヒートシンク)。また、本発明の放熱装置1では、複数の振動板3を基板2上に高密度かつ自由に配置することが可能であり、容易に放熱効果を高めることができる。
【0038】
(第二実施形態)
次に、本発明の放熱装置の第二実施形態について説明する。
なお、以下に示す説明では、上述した実施形態と異なる部分について主に説明し、第一実施形態と同様の部分については、その説明を省略する。
図12は、本実施形態に係る放熱装置1B(1)の一構成例を模式的に示す図であり、放熱装置1B(1)において、高分子アクチュエータ10からなる振動板3が基板2上に立設された状態を示す断面図である。
【0039】
本実施形態の放熱装置1B(1)では、前記基板2の一面2aに溝8が設けられており、該溝8内に前記振動板3の一端部3aを挿入することにより、前記振動板3が前記基板2に固設されている。
基板2の一上に溝8(スリット)を設け、この溝8に前記振動板3の一端部3aを挟み込むことにより、短冊形状の振動板3を基板2上に容易に立設することができる。必要に応じて、溝8の側壁と振動板3の間にスペーサ(図示略)を挿入することにより、振動板3を基板2に立設することもできる。
【0040】
このような放熱装置1B(1)において、高分子アクチュエータ10への給電は、例えば、高分子アクチュエータ10に接触する溝8の内壁に導電性の給電電極層9を設けておき、基板2に形成された配線層を通じて電源に電気的に接続する方法が挙げられる。また、高分子アクチュエータ10への給電として、図13に示すように、リード線20を用いてもよい。高分子アクチュエータ10の固定箇所と給電箇所とを分けることにより、高分子アクチュエータ10を駆動させても、安定して給電することができる。
また、図14に示すように、溝8を、基板2を貫通して形成し、基板2の反対側に給電箇所を設けてもよい。
【0041】
以上、本発明の放熱装置について説明してきたが、本発明は上述した例に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、高分子アクチュエータ10からなる振動板3を基板2上に立設する方法としては、上述した例に限定されず、他の形態とすることも可能である。例えば、図15に示すように、振動板3(アクチュエータ10)の一端部3aにおいて一対の導電層11が分離され、それぞれの内側の面の一部が前記基板2の一面2aに対向させた状態で、前記基板2に固設されていてもよい。基板2上に電極パッド4を設け、この電極パッド4に対し、アクチュエータ10の二枚の導電層11をそれぞれ電気的に接触させ固定する。これによりアクチュエータ10の基板2への固定と、アクチュエータ10への給電が容易となる。振動板3を開いて基板2上に固設することで、開いた部分に生ずる空洞を、空気や熱の通り道とすることができるので、熱輸送、熱放出の効率をさらに高めることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、電子機器等に搭載される放熱装置に広く適用可能である。特に、放熱装置自体が狭い内部空間に設置が求められる放熱装置として、本発明は好適である。
【符号の説明】
【0043】
1A,1B(1) 放熱装置、2 基板、3 振動板、3a 一端部、3b 他端部、6 クランプ、7,9 給電電極層、8 溝、10 高分子アクチュエータ、11 導電層、12 電解質層、14 スペーサ、20 リード線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、前記基板の一面上に個別に立設された、高分子アクチュエータからなる複数の振動板と、を備え、
前記振動板は、短冊形状をなし、その長手方向の一端部が前記基板の一面側に固設されて固定端を、長手方向の他端部が自由端をそれぞれ成しており、前記自由端側が前記固定端側に対して振動可能とされていること、を特徴とする放熱装置。
【請求項2】
前記複数の振動板は、面が相対向するように並べて前記基板の一面上に立設されていること、を特徴とする請求項1に記載の放熱装置。
【請求項3】
前記高分子アクチュエータは、一対の導電層と、前記一対の導電層の間に配された電解質層とから構成されること、を特徴とする請求項1又は2に記載の放熱装置。
【請求項4】
前記導電層は、カーボンナノチューブを含有することを特徴とする請求項3に記載の放熱装置。
【請求項5】
前記基板の一面上に一対のクランプが配されており、該クランプの間に前記振動板の一端部を挟み込むことにより、前記振動板が前記基板に固設されていること、を特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の放熱装置。
【請求項6】
前記基板の一面に溝が設けられており、該溝内に前記振動板の一端部を挿入することにより、前記振動板が前記基板に固設されていること、を特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の放熱装置。
【請求項7】
前記振動板は、前記一端部において前記一対の導電層が分離され、それぞれの内側の面の一部が前記基板の一面に対向させた状態で、前記基板に固設されていること、を特徴とする請求項3又は4に記載の放熱装置。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−142408(P2012−142408A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−293719(P2010−293719)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】