説明

放送波検出装置

【課題】アナログ放送波の有無を従来よりも短時間で検出することができる、放送波検出装置を提供すること。
【解決手段】アナログ放送波を検出する放送波検出装置10であって、検出対象のチャンネルに含まれる複数のセグメントの内、所定の一部の複数のセグメントの各々のレベルを検出するレベル検出部12と、このレベル検出部12にて検出された一部の複数のセグメントの各々のレベルと、これらレベルの相互の差異に基づいて、検出対象のチャンネルにおけるアナログ放送波の有無を判定する判定部14とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アナログ放送波を検出する放送波検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
2011年にアナログテレビ放送(以下、アナログ放送)を終了して地上波デジタルテレビ放送(以下、デジタル放送)に移行することが予定されている。このデジタル放送を行う際には、放送を行うチャンネルを決定するために、現在放送が行われているチャンネルを検出し、当該チャンネル以外の空きチャンネルを特定する必要がある。このように空きチャンネルを特定するための方法としては、従来、各チャンネルの電界強度を測定し、電界強度が所定強度以上である場合には、当該チャンネルで放送が行われているものと判定する方法がある。
【0003】
しかしながら、デジタル放送への移行が完全に完了していない現状下においては、アナログ放送とデジタル放送とが混在しており、上述のように電界強度を用いた方法を適用しても、アナログ放送の信号をデジタル放送の信号であると誤って検出してしまい、実際には空いているチャンネルであってもデジタル放送を行うことができない可能性がある。
【0004】
このような問題を解決するため、電界強度に加えて、各チャンネルのシンボルを検出し、このシンボルに基づいて、現在放送が行われているチャンネルの有無やその種別を判定することも提案されている(例えば、特許文献1参照)。この方法では、各チャンネルの電界強度を順次測定し、電界強度が所定強度以上であるチャンネルに対しては放送波を復調してシンボルを検出し、シンボルが検出された場合には当該チャンネルにおいてデジタル放送が行われており、シンボルが検出されなかった場合には当該チャンネルにおいてアナログ放送が行われていると判定していた。
【0005】
また、放送信号を複数の周波数帯に分割し、分割された放送信号のそれぞれについて信号強度を測定し、この信号強度に基づいて、放送の有無や種類を判定することも提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平09−232984号公報
【特許文献2】特開2006−352488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来のようにシンボルに基づいてチャンネルの有無や種別を判定する場合には、電界強度の測定を行った上で、さらに放送波を復調する必要があるために、判定に時間を要するという問題があった。
【0008】
また、上記従来のように複数の周波数帯により分割された放送信号の信号強度に基づいて放送の有無や種類を判定する場合には、放送信号に含まれるデジタル放送波のレベルが局所的に低下した場合に、正確な判定を行なうことができない可能性があった。すなわち、周波数が近接している複数の信号に関しては、位相遅れが生じた信号と他の信号の重複部分のレベルが相殺されて低下する場合がある。従って、複数の周波数帯により放送信号を分割した場合、周波数帯の区分によっては、このようなレベルの低下部分を含む放送信号と、このようなレベルの低下部分を含まない放送信号とに分割される可能性がある。
しかし、レベルの低下部分を含んだ放送信号の信号強度の平均値は、レベルの低下部分を含まない放送信号の信号強度の平均値より低くなってしまうため、この結果、実際には放送波がある場合でも、放送波がないと判定してしまう等、正確な判定を行なうことができない可能性があった。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、アナログ放送波の有無を従来よりも短時間で正確に検出することができる、放送波検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に記載の放送波検出装置は、アナログ放送波を検出する放送波検出装置であって、検出対象のチャンネルに含まれる複数のセグメントの内、所定の一部の複数のセグメントの各々のレベルを検出するレベル検出手段と、前記レベル検出手段にて検出された前記一部の複数のセグメントの各々のレベルと、これらレベルの相互の差異に基づいて、前記検出対象のチャンネルにおけるアナログ放送波の有無を判定する判定手段とを備える。
【0011】
また、請求項2に記載の放送波検出装置は、請求項1に記載の放送波検出装置において、前記レベル検出手段は、前記検出対象のチャンネルに含まれる複数のセグメントの内、ワンセグ放送用の所定のセグメントのレベルと、アナログ放送の搬送波に対応するセグメントのレベルを検出し、前記判定手段は、前記レベル検出手段にて検出された前記ワンセグ放送用の所定のセグメントのレベルと、前記レベル検出手段にて検出された前記アナログ放送の搬送波に対応するセグメントのレベルとの中で、少なくとも一つが所定レベル以上であり、かつ、これらの相互の差異が所定範囲内にある場合には、前記検出対象のチャンネルにデジタル放送波のみがあると判定する。
【0012】
また、請求項3に記載の放送波検出装置は、請求項1又は2に記載の放送波検出装置において、前記レベル検出手段は、前記検出対象のチャンネルに含まれる複数のセグメントの内、ワンセグ放送用の所定のセグメントのレベルと、アナログ放送の搬送波に対応するセグメントのレベルを検出し、前記判定手段は、前記レベル検出手段にて検出された前記ワンセグ放送用の所定のセグメントのレベルと、前記レベル検出手段にて検出された前記アナログ放送の搬送波に対応するセグメントのレベルとの中で、少なくとも一つが所定レベル以上であり、かつ、これらの相互の差異が所定範囲内にない場合には、前記検出対象のチャンネルに少なくともアナログ放送波又はアナログ妨害波があると判定する。
【0013】
また、請求項4に記載の放送波検出装置は、請求項3に記載の放送波検出装置において、前記判定手段は、前記レベル検出手段にて検出された前記ワンセグ放送用の所定のセグメントのレベルが所定レベル以上である場合には、前記検出対象のチャンネルにデジタル放送波とアナログ妨害波があると判定し、前記レベル検出手段にて検出された前記ワンセグ放送用の所定のセグメントのレベルが所定レベル以上でない場合には、前記検出対象のチャンネルにアナログ放送波があると判定する。
【0014】
また、請求項5に記載の放送波検出装置は、請求項2又は4に記載の放送波検出装置において、前記検出対象のチャンネルに含まれるセグメントを復調する復調手段を備え、前記判定手段は、前記検出対象のチャンネルにデジタル放送波があると判定した場合には、前記ワンセグ放送用の所定のセグメントに対する前記復調手段による復調結果に基づいて、前記検出対象のチャンネルのチャンネル番号を特定する。
【0015】
また、請求項6に記載の放送波検出装置は、請求項1から5のいずれか一項に記載の放送波検出装置において、前記アナログ放送の搬送波に対応するセグメントは、アナログ放送の映像搬送波に対応するセグメントと、アナログ放送の音声搬送波に対応するセグメントの中の、少なくとも一方のセグメントである。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の放送波検出装置によれば、一部の複数のセグメントの各々のレベルと、これらレベルの相互の差異に基づいて、検出対象のチャンネルにおけるアナログ放送波の有無を判定するので、レベルのみに基づいてアナログ放送波の有無が判定でき、復調やシンボル検出を行うことが必須ではなくなるので、アナログ放送波の有無を従来よりも短時間で検出することが可能になる。特に、複数の周波数帯により放送信号を分割した場合には、レベルの低下部分を含む放送信号と、このようなレベルの低下部分を含まない放送信号とに分割される可能性があるのに対して、セグメント毎のレベルに基づいて判定を行なうことで、レベルの低下部分を各放送信号から排除することができ、あるいはレベルの低下部分を各放送信号に均等に含めることができるので、一層正確な判定を行なうことが可能になる。
【0017】
また、請求項2に記載の放送波検出装置によれば、ワンセグ放送用の所定のセグメントのレベルと、アナログ放送の搬送波に対応するセグメントのレベルとの中で、少なくとも一つが所定レベル以上であり、かつ、これらの相互の差異が所定範囲内にある場合には、検出対象のチャンネルにデジタル放送波のみがあるものと判定するので、復調を行なうことなく、アナログ放送波の有無を迅速に判定することが可能になる。
【0018】
また、請求項3に記載の放送波検出装置によれば、ワンセグ放送用の所定のセグメントのレベルと、アナログ放送の搬送波に対応するセグメントのレベルとの中で、少なくとも一つが所定レベル以上であり、かつ、これらの相互の差異が所定範囲内にない場合には、検出対象のチャンネルに少なくともアナログ放送波又はアナログ妨害波があると判定するので、復調を行なうことなく、アナログ放送波又はアナログ妨害波の有無を迅速に判定することが可能になる。
【0019】
また、請求項4に記載の放送波検出装置によれば、ワンセグ放送用の所定のセグメントのレベルが所定範囲以上である場合には、検出対象のチャンネルにデジタル放送波とアナログ妨害波があると判定し、ワンセグ放送用の所定のセグメントのレベルが所定範囲以上でない場合には、検出対象のチャンネルにアナログ放送波があると判定するので、復調を行なうことなく、デジタル放送波及びアナログ妨害波が存在する場合とアナログ放送波が存在する場合とを迅速に区別することが可能になる。
【0020】
また、請求項5に記載の放送波検出装置によれば、検出対象のチャンネルにデジタル放送波があると判定した場合には、ワンセグ放送用の所定のセグメントに対する復調結果に基づいて、検出対象のチャンネルのチャンネル番号を特定するので、復調結果に基づいてさらに詳細な判定を行うことができる。
【0021】
また、請求項6に記載の放送波検出装置によれば、アナログ放送の搬送波に対応するセグメントは、アナログ放送の映像搬送波に対応するセグメントと、アナログ放送の音声搬送波に対応するセグメントの中の、少なくとも一方のセグメントであり、このようなセグメントのレベルに基づいてアナログ放送波の有無を判定することで、アナログ放送波の有無を従来よりも短時間で検出することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態に係る放送波送信システムの構成を機能概念的に示すブロック図である。
【図2】図1の放送波検出装置の構成を機能概念的に示すブロック図である。
【図3】図2の放送波検出装置の要部の構成を機能概念的に示すブロック図である。
【図4】図1の放送波送信装置の構成を機能概念的に示すブロック図である。
【図5】放送波検出処理のフローチャートである。
【図6】1つのチャンネルに含まれるセグメントを概念的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る放送波検出装置の一実施の形態を詳細に説明する。まず、〔I〕本実施の形態の基本的概念を説明した後、〔II〕本実施の形態の具体的内容について説明し、〔III〕最後に、本実施の形態に対する変形例について説明する。ただし、本実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0024】
〔I〕本実施の形態の基本的概念
まず、本実施の形態の基本的概念について説明する。本実施の形態に係る放送波検出装置は、アナログ放送波を検出する装置である。ここで、放送波とは、任意の方式及び内容の放送波を含み、例えば、テレビ放送波やラジオ放送波を含むが、以下では、テレビ放送波を対象とした場合について説明する。アナログ放送波を検出するとは、アナログ放送波の有無を判定することであるが、アナログ放送波がある場合とは、アナログ放送波が所定の基準レベル以上の電界強度で存在しているか否かを意味し、この基準レベルとしては、ゼロレベル以外にも、任意のレベルを設定することができる。
【0025】
この放送波検出装置は、単独で使用され、又は、他の装置やシステムの内部に組み込まれて使用されるものであり、例えば、他のシステムの内部に組み込まれる場合としては、放送波送信システムの内部に組み込まれる場合を挙げることができる。放送波送信システムとは、アナログ放送波の検出を行い、当該アナログ放送波がないチャンネル(以下、空きチャンネル)に対してデジタル放送波を送信するシステムである。以下では、このような放送波送信システムの内部に放送波検出装置を組み込んだ例について説明する。
【0026】
このような放送波検出装置の特徴の一つは、検出対象のチャンネルに含まれる複数のセグメントの内、所定の一部の複数のセグメントの各々のレベルを検出するレベル検出手段と、前記レベル検出手段にて検出された前記一部の複数のセグメントの各々のレベルと、これらレベルの相互の差異に基づいて、前記検出対象のチャンネルにおけるアナログ放送波の有無を判定する判定手段とを備える点にある。すなわち、概略的には、検出対象のチャンネルに含まれる一部のセグメントのレベルを検出し、その相対的な関係に基づいて、アナログ放送波の有無を判定するものであり、各チャンネルの復調を行うことなくその判定を行うことができるために、従来よりも判定を迅速かつ正確に行うことが可能になる。
【0027】
〔II〕本実施の形態の具体的内容
次に、本実施の形態の具体的内容について説明する。最初に、本実施の形態に係る放送波検出装置を適用した放送波送信システムの構成を説明し、次いで、この放送波送信システムを用いて行われる各種の処理について説明する。
【0028】
(構成)
図1は、本実施の形態に係る放送波送信システムの構成を機能概念的に示すブロック図である。この放送波送信システム1は、概略的に、受信アンテナ2、放送波検出装置10、放送波送信装置(放送制御装置)20、及び送信アンテナ3を備えて構成されている。
【0029】
受信アンテナ2は、放送波を受信して放送信号として放送波検出装置10に出力する受信手段である。放送波検出装置10は、受信アンテナ2から出力された放送信号を用いて、アナログ放送波を検出する装置である。放送波送信装置20は、放送波検出装置10にて検出された放送波の有無又は種類に基づいて、空きチャンネルに対するデジタル放送波を生成して送信アンテナ3に出力する放送手段である。送信アンテナ3は、放送波送信装置20から出力された放送信号を放送波として送信する送信手段である。なお、これら受信アンテナ2及び送信アンテナ3については、従来と同様に構成できるので、その詳細は省略する。また、放送波送信装置20についても、従来と同様に構成できるため、以下では、その要部のみを説明する。
【0030】
(構成−放送波検出装置)
次に、放送波検出装置10の構成について説明する。図2は、図1の放送波検出装置10の構成を機能概念的に示すブロック図である。この放送波検出装置10は、周波数選択部11、レベル検出部12、復調部13、判定部14、表示部15、及び制御部16を備えて構成されている。
【0031】
周波数選択部11は、受信アンテナ2から出力された放送信号の中から、所望の周波数の放送信号を抽出してレベル検出部12に出力する周波数選択手段である。レベル検出部12は、周波数選択部11にて抽出された所望の周波数の放送信号のレベルを検出するレベル検出手段である。復調部13は、周波数選択部11にて抽出されレベル検出部12にてレベル検出が行われた所望の周波数の放送信号を復調する復調手段である。判定部14は、レベル検出部12にて検出された放送信号のレベルと、復調部13にて復調された放送信号とに基づいて、受信アンテナ2にて受信されたアナログ放送波の有無を判定する判定手段である。表示部15は、検出された放送波に関する情報を表示する表示手段であり、ここでは、液晶ディスプレイを含んで構成されている。制御部16は、放送波検出装置10の各部を制御する制御手段であり、例えば、CPU(Central Processing Unit)を含んで構成され、任意の記憶媒体やネットワークを介してインストールされた放送波検出プログラムを解釈及び実行する。
【0032】
図3は、図2の放送波検出装置の要部の構成を機能概念的に示すブロック図である。この図3には、図2の放送波検出装置の各部の中の一部のみを示しており、実際にはこの他にも、上記説明した機能を奏するための構成を含み得る。この図3に示すように、周波数選択部11は、ミキサー11a、発振器11b、及び1セグSawフィルタ11cを備えており、制御部16から制御された周波数にて発振器11bを発振させ、発振器11bの出力をミキサー11aに入力することで、所望のセグメントの放送信号が抽出される。このように抽出された放送信号は、1セグSawフィルタ11cでノイズ成分が除去された上で、レベル検出部12に出力される。
【0033】
レベル検出部12は、AGC12aとAGC検知部12bを備えて構成されており、周波数選択部11から出力された所望のセグメントの放送信号の利得調整をAGC12aにて行い、AGC検知部12bにてこの放送信号のレベルを検知する。
【0034】
判定部14は、保持メモリ14aとパターン比較器14bを備えて構成されており、AGC検知部12bにて検知されたレベルが保持メモリ14aに一時的に記憶され、当該記憶されたレベルを複数のセグメントの相互間や所定値とパターン比較器14bによって比較等することで、アナログ放送波の有無が判定される。
【0035】
(構成−放送波送信装置)
次に、図1の放送波送信装置20の構成について説明する。図4は、図1の放送波送信装置20の構成を機能概念的に示すブロック図である。この放送波送信装置20は、入力部21、放送信号生成部22、増幅部23、変調部24、及び制御部25を備えて構成されている。入力部21は、放送用データの入力や、放送の開始又は終了の指示を受け付ける入力手段であり、放送用データとしては、図示しない映像機器からの映像信号や図示しない音声機器からの音声信号の入力を受け付ける。放送信号生成部22は、入力部21にて受け付けられた映像信号や音声信号を合成等することにより、放送信号を生成する放送信号生成手段である。増幅部23は、放送信号生成部22にて生成された放送信号を所定レベルに増幅する増幅手段である。変調部24は、増幅部23にて増幅された放送信号を所定の変調方式(例えば、64QAM(Quadrature amplitude moduration))により変調する変調手段であり、放送波検出装置10にて検出された空きチャンネルの周波数により変調を行う。制御部25は、放送波送信装置20の各部を制御する制御手段であり、例えば、CPUを含んで構成され、任意の記憶媒体やネットワークを介してインストールされた放送波検出プログラムを解釈及び実行する。
【0036】
(処理)
次に、この放送波送信システム1において行われる放送処理について説明する。この放送処理は、アナログ放送波を検出するため、主として放送波検出装置10により行われる放送波検出処理と、放送波を送信するため、主として放送波送信装置20により行われる放送波送信処理に大別されるため、以下、これら各処理を順次説明する。
【0037】
(処理−放送波検出処理)
最初に、放送波検出処理について説明する。図5は、放送波検出処理のフローチャートである。この放送波検出処理は、放送波送信システム1の各装置への電源投入後に繰り返し実行される。なお、以下では、ステップを「S」と略記し、特記する場合を除き、放送波検出処理の各ステップは、放送波検出装置10の制御部16にて実行されるものとする。
【0038】
まず、受信アンテナ2にて放送波が受信されて放送信号として放送波検出装置10に出力される。この放送波検出装置10において、制御部16は、放送波の検出対象となるチャンネルの周波数を決定し、この決定に基づいて周波数選択部11に制御信号を出力することで、検出対象となるチャンネルの放送信号を周波数選択部11に抽出させる(SA1)。
【0039】
この放送信号の抽出は、チャンネルスキャンとセグメントスキャンを組合せて行われる。チャンネルスキャンとは、チャンネル単位で周波数を切り替えて放送信号を抽出することを意味し、ここでは、デジタル放送の周波数帯である470MHzから770MHzの間で6MHz毎に区分されたチャンネルの中で、最初の周波数帯(470〜476MHz)が最初に抽出され、判定部14による判定が終了すると次の周波数帯(476〜482MHz)が次に抽出され、以降同様に、判定部14による判定が終了する毎に次のチャンネルが順次抽出されることで、各チャンネルがスキャンされる。
【0040】
また、セグメントスキャンとは、各チャンネルの中のセグメント単位で周波数を切り替えて放送信号を抽出することを意味し、ここでは、チャンネルスキャンによりスキャンされているチャンネルに含まれる14セグメントの内、ガードバンドを除いた13セグメントを対象として、所定のセグメント番号の一部のセグメントを所定順序でスキャンする。ここでは、セグメント番号とは、地上デジタルテレビジョン放送の伝送方式の標準規格であるARIB STD−B31にて規定されているセグメント番号であり、図6に示すように、13セグメントの中で、中央のセグメントを0番とし、左右に離れるに連れて交互に1つずつ増加する番号である。このセグメントスキャンでは、最初にワンセグ放送用のセグメント(具体的には、0番のセグメント)を抽出し、次いでアナログ放送の搬送波に対応するセグメント(具体的には、アナログ放送の映像搬送波に対応する7番のセグメントと、アナログ放送の音声搬送波に対応する12番のセグメント)を抽出する。最初にワンセグ放送用のセグメントを抽出するのは、このセグメントのレベルが所定レベル以上である場合には、デジタル放送が行われているものと判定でき、特に、13セグメントの中でも、HDTV放送用の12セグメントに比べて、高感度で判定を行うことが可能なためである。また、アナログ放送用のセグメントを抽出するのは、このセグメントのレベルが所定レベル以上である場合には、アナログ放送が行われているか、あるいは、デジタル放送にアナログ妨害波が混在しているものと判定できるからである。
【0041】
次いで、レベル検出部12は、上述のチャンネルスキャンによりスキャンされているチャンネルに含まれる14セグメントの内、セグメントスキャンによりスキャンされたセグメントのレベルを検出する。具体的には、0番のセグメントのレベル(以下、0番レベル)、7番のセグメントのレベル(以下、7番レベル)、及び12番のセグメントのレベル(以下、12番レベル)を順次検出する(SA2)。そして、このように検出したセグメントのレベルを判定部14に出力する。
【0042】
そして、判定部14は、レベル検出部12から出力されたレベルに基づいて、放送波の有無又は種類を判定する。具体的には、判定部14は、0番レベルと、7番レベルと、12番レベルとについて、この中の少なくとも一つのレベルが、所定レベル以上であるか否かを判定する(SA3)。この所定レベルとしては、放送波又は妨害波として認識すべき程度の最低限のレベルが設定される。そして、一つのレベルも所定範囲以上でない場合には(SA3、No)、周波数選択部11のチャンネルスキャンにてスキャンされているチャンネル(以下、検出対象チャンネル)において、デジタル放送波もアナログ放送波もないと判定して、後述するSA10に移行する(SA4)。一方、少なくとも一つのレベルが、所定レベル以上である場合には、SA5に移行する。
【0043】
SA5において、判定部14は、0番レベルと、7番レベルと、12番レベルとについて、これらの相互の差異が所定範囲内にあるか否かを判定する(SA5)。そして、これらの相互の差異が所定範囲内にある場合には(SA5、Yes)、検出対象チャンネルにおいて、デジタル放送波のみがあるものと判定する(SA6)。このように判定する理由は、アナログ放送波がある場合には、映像搬送波に対応する7番レベル及び音声搬送波に対応する12番レベルが、ワンセグ信号がある0番レベルに対して大きくなるのに対して、デジタル放送波がある場合には、7番レベル及び12番レベルが、ワンセグ信号がある0番レベルとほぼ同じ大きさになると想定できるためである。このような判定を行った場合、後述するSA10に移行して、デジタル放送波の詳細を特定する。
【0044】
一方、これらの相互の差異が所定範囲内にない場合(SA5、No)、判定部14は、0番レベルが所定レベル以上であるか否かを判定する(SA7)。この所定レベルとしては、ワンセグ放送波があると認識すべき程度の最低限のレベルが設定される。そして、0番レベルが所定レベル以上でない場合には(SA7、No)、検出対象チャンネルにおいて、アナログ放送波のみがあるものと判定する(SA8)。
【0045】
逆に、0番レベルが所定レベル以上である場合には(SA7、Yes)、検出対象チャンネルにおいて、デジタル放送が行われているもののアナログ妨害波があるものと判定する(SA9)。この場合、判定部14は、後述するSA10に移行して、デジタル放送波の詳細を特定する。
【0046】
SA10では、復調部13は、検出対象チャンネルの0番のセグメントを復調し、復調された放送信号を判定部14に出力する(SA10)。その後、判定部14は、0番のセグメントに対する復調部13による復調結果に基づいて、検出対象のチャンネルのチャンネル番号を特定する(SA11)。具体的には、復調部13にて復調された0番のセグメントの放送信号から、当該放送信号に多重化されたID(例えば、NIT(Network Information Table)、SDT(Service Description Table)、BIT(Broadcaster Information Table)、EIT(Event Information Table)、あるいはCDT(Common Data Table))を取得し、当該取得したIDに基づいて公知の方法でチャンネル番号を特定する。そして、判定部14は、このように特定した結果を制御部16に出力する。ただし、チャンネル番号の特定が不要である場合には、SA10及びSA11を省略してもよい。
【0047】
制御部16は、この判定結果を表示部15に表示させる(SA12)。例えば、検出対象のチャンネルの周波数、放送波の有無及び種類(デジタル放送波又はアナログ放送波のいずれが存在するか、及び妨害波としてのアナログ放送波の有無)、及び各放送波のレベルを文字及び数値にて表示させる。
【0048】
次いで、制御部16は、デジタルチャンネルの全てのチャンネルの検出が終了したか否かを判定し(SA13)、終了していない場合には(SA13、No)、次のチャンネルを検出対象チャンネルに変更すべく、放送波の検出対象となるチャンネルの周波数を決定し、SA1において、この周波数に基づいて周波数選択部11に制御信号を出力することで、検出対象となるチャンネルの放送信号を周波数選択部11に抽出させる。以降、全てのチャンネルが検出対象チャンネルとして抽出されるまで、検出対象チャンネルを変更し、当該変更を行う毎に、検出対象チャンネルに対する0番レベル、7番レベル、及び12番レベルに基づいた放送波の有無及び種別の判定や、判定結果の表示が行われる。そして、デジタルチャンネルの全てのチャンネルの検出が終了した場合(SA13、Yes)、制御部16は、各チャンネルに対する判定結果を放送波送信装置20に出力して(SA14)、放送波検出処理を終了する。
【0049】
(処理−放送波送信処理)
次に、放送波送信処理について説明する。この放送波送信処理は、放送波送信システム1の各装置への電源投入後に繰り返し実行される。なお、特記する場合を除き、放送波送信処理の各ステップは、放送波送信装置20の制御部25にて実行されるものとする。
【0050】
この処理では、入力部21が放送の開始指示を受け付けた場合、放送信号生成部22は、入力部21に入力された映像信号や音声信号を合成等することにより放送信号を生成し、増幅部23はこの放送信号生成を増幅する。一方、制御部25は、放送波検出装置10からの出力に基づいて、アナログ放送波とデジタル放送波のいずれもない空きチャンネルを特定し、当該特定した空きチャンネルの周波数を変調部24に出力する。そして、変調部24は、増幅部23にて増幅された放送信号を、制御部25から出力された空きチャンネルの周波数で変調して送信アンテナ3に出力する。この結果、空きチャンネルの周波数でデジタル放送波が送信される。以降、入力部21が放送の終了指示を受け付けるまで放送が継続され、入力部21が放送の終了指示を受け付けた時点で放送波送信処理を終了する。
【0051】
(効果)
このように本実施の形態によれば、一部の複数のセグメントの各々のレベルと、これらレベルの相互の差異に基づいて、検出対象のチャンネルにおけるアナログ放送波の有無を判定するので、レベルのみに基づいてアナログ放送波の有無が判定でき、復調やシンボル検出を行うことが必須ではなくなるので、アナログ放送波の有無を従来よりも短時間で検出することが可能になる。特に、複数の周波数帯により放送信号を分割した場合には、レベルの低下部分を含む放送信号と、このようなレベルの低下部分を含まない放送信号とに分割される可能性があるのに対して、セグメント毎のレベルに基づいて判定を行なうことで、レベルの低下部分を各放送信号から排除することができ、あるいはレベルの低下部分を各放送信号に均等に含めることができるので、一層正確な判定を行なうことが可能になる。
【0052】
また、ワンセグ放送用の所定のセグメントのレベルと、アナログ放送の搬送波に対応するセグメントのレベルとの中で、少なくとも一つが所定レベル以上であり、かつ、これらの相互の差異が所定範囲内にある場合には、検出対象のチャンネルにデジタル放送波のみがあるものと判定するので、復調を行なうことなく、アナログ放送波の有無を迅速に判定することが可能になる。
【0053】
また、ワンセグ放送用の所定のセグメントのレベルと、アナログ放送の搬送波に対応するセグメントのレベルとの中で、少なくとも一つが所定レベル以上であり、かつ、これらの相互の差異が所定範囲内にない場合には、検出対象のチャンネルに少なくともアナログ放送波又はアナログ妨害波があると判定するので、復調を行なうことなく、アナログ放送波又はアナログ妨害波の有無を迅速に判定することが可能になる。
【0054】
また、ワンセグ放送用の所定のセグメントのレベルが所定範囲以上である場合には、検出対象のチャンネルにデジタル放送波とアナログ妨害波があると判定し、ワンセグ放送用の所定のセグメントのレベルが所定範囲以上でない場合には、検出対象のチャンネルにアナログ放送波があると判定するので、復調を行なうことなく、デジタル放送波及びアナログ妨害波が存在する場合とアナログ放送波が存在する場合とを迅速に区別することが可能になる。
【0055】
また、検出対象のチャンネルにデジタル放送波があると判定した場合には、ワンセグ放送用の所定のセグメントに対する復調結果に基づいて、検出対象のチャンネルのチャンネル番号を特定するので、復調結果に基づいてさらに詳細な判定を行うことができる。
【0056】
また、アナログ放送の搬送波に対応するセグメントは、アナログ放送の映像搬送波に対応するセグメントと、アナログ放送の音声搬送波に対応するセグメントの中の、少なくとも一方のセグメントであり、このようなセグメントのレベルに基づいてアナログ放送波の有無を判定することで、アナログ放送波の有無を従来よりも短時間で検出することが可能になる。
【0057】
〔III〕本実施の形態に対する変形例
以上、本発明の各実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
【0058】
(解決しようとする課題や発明の効果について)
まず、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、前記した内容に限定されるものではなく、本発明によって、前記に記載されていない課題を解決したり、前記に記載されていない効果を奏することもでき、また、記載されている課題の一部のみを解決したり、記載されている効果の一部のみを奏することがある。
【0059】
(抽出するセグメントについて)
上記実施の形態においては、抽出するセグメントとして、ワンセグ放送用のセグメントである0番のセグメントと、アナログ放送の搬送波に対応するセグメントである7番及び12番のセグメントを抽出しているが、このように抽出するセグメントは変更可能である。例えば、ワンセグ放送用のセグメント以外の他のデジタル放送専用のセグメント(つまり、0番のセグメント以外であり、かつ、7番又は12番以外のセグメント)を利用しても十分な感度が得られる環境下においては、当該他のデジタル放送専用のセグメントを抽出し、当該抽出したセグメントのレベルを利用して判定を行ってもよい。また、将来的には0番以外のセグメントによるワンセグ放送が自由化される可能性もあるため、このような場合には、ワンセグ放送用のセグメントとして、0番以外の他のワンセグ放送用のセグメントを抽出し、当該抽出したセグメントのレベルを利用して判定を行ってもよい。また、アナログ放送の搬送波に対応するセグメントとしては、7番と12番の両方のセグメントを利用することで判定精度が向上すると考えられるが、必ずしも7番と12番の両方のセグメントを利用する必要はなく、いずれか一方のセグメントのみを用い、他のセグメントは省略してもよい。
【0060】
(応用の可能性について)
また、本発明の放送検出装置としては、複数のセグメントを使用する地上デジタル放送波の放送検出装置に限らず、ワンセグ放送を受信するワンセグチューナ装置にも適用でき、また空きチャンネルを検出して送信する例えば特定のエリアにワンセグ放送を送信するエリアワンセグ用の放送検出装置にも適用できる。
【符号の説明】
【0061】
1 放送波送信システム
2 受信アンテナ
3 送信アンテナ
10 放送波検出装置
11 周波数選択部
11a ミキサー
11b 発振器
11c 1セグSawフィルタ
12 レベル検出部
12a AGC
12b AGC検知部
13 復調部
14 判定部
14a 保持メモリ
14b パターン比較器
15 表示部
16、25 制御部
20 放送波送信装置
21 入力部
22 放送信号生成部
23 増幅部
24 変調部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アナログ放送波を検出する放送波検出装置であって、
検出対象のチャンネルに含まれる複数のセグメントの内、所定の一部の複数のセグメントの各々のレベルを検出するレベル検出手段と、
前記レベル検出手段にて検出された前記一部の複数のセグメントの各々のレベルと、これらレベルの相互の差異に基づいて、前記検出対象のチャンネルにおけるアナログ放送波の有無を判定する判定手段と、
を備える放送波検出装置。
【請求項2】
前記レベル検出手段は、前記検出対象のチャンネルに含まれる複数のセグメントの内、ワンセグ放送用の所定のセグメントのレベルと、アナログ放送の搬送波に対応するセグメントのレベルを検出し、
前記判定手段は、前記レベル検出手段にて検出された前記ワンセグ放送用の所定のセグメントのレベルと、前記レベル検出手段にて検出された前記アナログ放送の搬送波に対応するセグメントのレベルとの中で、少なくとも一つが所定レベル以上であり、かつ、これらの相互の差異が所定範囲内にある場合には、前記検出対象のチャンネルにデジタル放送波のみがあると判定する、
請求項1に記載の放送波検出装置。
【請求項3】
前記レベル検出手段は、前記検出対象のチャンネルに含まれる複数のセグメントの内、ワンセグ放送用の所定のセグメントのレベルと、アナログ放送の搬送波に対応するセグメントのレベルを検出し、
前記判定手段は、前記レベル検出手段にて検出された前記ワンセグ放送用の所定のセグメントのレベルと、前記レベル検出手段にて検出された前記アナログ放送の搬送波に対応するセグメントのレベルとの中で、少なくとも一つが所定レベル以上であり、かつ、これらの相互の差異が所定範囲内にない場合には、前記検出対象のチャンネルに少なくともアナログ放送波又はアナログ妨害波があると判定する、
請求項1又は2に記載の放送波検出装置。
【請求項4】
前記判定手段は、
前記レベル検出手段にて検出された前記ワンセグ放送用の所定のセグメントのレベルが所定レベル以上である場合には、前記検出対象のチャンネルにデジタル放送波とアナログ妨害波があると判定し、
前記レベル検出手段にて検出された前記ワンセグ放送用の所定のセグメントのレベルが所定レベル以上でない場合には、前記検出対象のチャンネルにアナログ放送波があると判定する、
請求項3に記載の放送波検出装置。
【請求項5】
前記検出対象のチャンネルに含まれるセグメントを復調する復調手段を備え、
前記判定手段は、
前記検出対象のチャンネルにデジタル放送波があると判定した場合には、前記ワンセグ放送用の所定のセグメントに対する前記復調手段による復調結果に基づいて、前記検出対象のチャンネルのチャンネル番号を特定する、
請求項2又は4に記載の放送波検出装置。
【請求項6】
前記アナログ放送の搬送波に対応するセグメントは、アナログ放送の映像搬送波に対応するセグメントと、アナログ放送の音声搬送波に対応するセグメントの中の、少なくとも一方のセグメントである、
請求項1から5のいずれか一項に記載の放送波検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−124846(P2012−124846A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−276020(P2010−276020)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【出願人】(000229276)日本テレビ放送網株式会社 (53)
【出願人】(000003403)ホーチキ株式会社 (792)
【Fターム(参考)】