説明

放電コーティング圧延用ロール、圧延用ロールの表面処理用消耗電極および放電コーティング装置、並びに、圧延用ロールの表面処理方法

【課題】電極が加工油の高流速中にさらされた状態においても、放電により均一にコーティングする技術を確立することによって、ブリキ用や自動車用に供される冷延鋼板の圧延加工等で使用される圧延用ロール、圧延用ロールの表面処理方法および表面処理用電極、並びに圧延用ロール用表面処理装置を提供する。
【解決手段】 主成分としてTi、Zr、Ta、Nb、W、Cr、Ni、Coのうちいずれか1種、または2種以上と、不可避的不純物とを含み、原料粒径が10〜500μmであり、気孔率が30〜70%の多孔質体である消耗電極。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブリキ用や自動車用に供される冷延鋼板の圧延加工等で用いられる圧延用ロールおよび圧延用ロールの表面処理方法、並びに圧延用ロール用表面処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ブリキ用や自動車用に向けられる冷延鋼板は、冷間タンデムミルで圧延されたのち、洗浄工程を経てバッチ炉で焼鈍され、圧延、連続焼鈍後に調質圧延機により仕上げ圧延される。
【0003】
これらの圧延用ロールの表面には、例えば、放電ダル加工、ショットダル加工、レーザーダル加工等により微細な凹凸を形成し、ロールのグリップ力を高めたり、表面形状を鋼板に転写したりして、例えば鮮鋭性を与えることが従来から行われている。
【0004】
しかし、鋼板の冷間圧延時には、主成分が金属であるロールと鋼板とが凝着摩耗を起こし、上記各種加工方法により形成したロール表面の微細な凹凸が摩耗する、また、発生した金属摩耗粉が鋼板表面に残留し汚れになる等の問題がある。
【0005】
この対策としては、高融点、かつ高硬度で鋼板との間で凝着摩耗を起こし難いセラミックスを主成分とした圧延用ロールを使用することが考えられる。例えば、特許文献1ではWC系超硬合金からなる圧延用ロールを使用すること、また、特許文献2ではPVD法により表面に炭化物や窒化物からなる硬質被膜を形成した圧延用ロールを使用することが提案されている。
【0006】
しかし、例えば、WC系超硬合金を圧延用ロールとして使用した場合、高硬度ではあるが靱性が低いため圧延用ロールのような高荷重下では割れやすい、また、PVD法により炭化物や窒化物を圧延用ロール表面に被覆した場合、高硬度ではあるが被膜とロールとの密着性が低く剥離し易い問題があり、実用には困難な問題があった。
【0007】
一方で密着性に優れる炭化物被膜の形成方法として、放電加工による表面処理(コーティング)方法、例えば、特許文献3,4,5,6が提案されている。
【0008】
特許文献3,5,6では、WC、TiC、TaC、ZrC、SiC、VCなどの炭化物、TiB2、ZrB2 などの硼化物、TiN、ZrN などの窒化物の単体もしくは2種以上の混合物を圧縮成形し、焼結温度以下の温度で仮焼結して構成した放電加工用電極、または、Ti、V、Taなどの炭化の容易な材料の圧粉体を焼結温度以下の温度で仮焼結して構成した放電加工用電極、または金属の水素化合物粉末を含む粉末を成形した放電電極により金属表面処理を行うことが提案されている。
【0009】
しかし、一般に圧延用ロールの放電ダル加工では、放電時にロールと電極とが溶融して発生する溶融物(加工くず)をロールと電極とのギャップから排出しダル加工痕分布の均一性を高めるため、電極に対してロールを高速で回転させるか、また、場合によっては電極形状を筒状とし内部に加工油を高速で流通させることが行われている。このように、電極が加工油の高流速中にさらされながら放電加工を行う場合には、前記圧縮成形体の電極では加工液の流速により消耗してしまい長時間使用できない問題がある。また、圧延用ロールの放電ダル加工では、ロールと電極とのギャップを電位差により制御するため、電気抵抗が大きい前記圧縮成形体の電極では電極消耗により電気抵抗値が大きく変化してしまいギャップを一定に保つことが困難であり、均一な放電ダル加工ができない問題がある。
【0010】
また、特許文献4,6では、炭素と結合して炭化物を形成する金属材料からなる放電加工用電極により金属表面処理を行うことが提案されている。
【0011】
しかし、気孔のない緻密質の金属電極は、強度が高く電気抵抗も小さいが、熱伝導性が高いため放電加工時に電極が溶融し難く、圧延用ロールの放電ダル加工のようにロールが電極に対して高速で移動する場合には、表面処理効率が著しく低くなる問題がある。
【特許文献1】特許第3444063号
【特許文献2】特開2001−239308号
【特許文献3】特許第3363284号公報
【特許文献4】特許第3376174号公報
【特許文献5】特許第3537939号公報
【特許文献6】特許第WO 00/16918号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明者は、特許文献6の実施条件をトレースする実験を行った。この結果から、仮焼結体の電極は、加工液の流動で折れたり、または電極消耗により電気抵抗が大きく変化し被加工物と接触することで折れたりすることがあることが判明した。また、緻密質の金属電極は、炭化物がコーティングされずに、カーバイド化していない金属として付着することがあることが判明した。
【0013】
本発明は、電極が加工油の高流速中にさらされた状態においても、放電により均一にコーティングする技術を確立することによって、ブリキ用や自動車用に供される冷延鋼板の圧延加工等で使用される圧延用ロール、圧延用ロールの表面処理方法および表面処理用電極、並びに圧延用ロール用表面処理装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、放電加工による表面処理方法の問題点について種々検討した結果、原料粒径が10〜500μmの炭素と結合して炭化物を形成する金属材料Ti、Zr、Ta、Nb、W、Cr、Ni、Coまたはその水素化物粉末からなる焼結体は強度が高く、気孔率30〜70%の多孔質であっても、加工液の流動によって欠損しないことを見出した。
【0015】
粒径が10μm未満の粉末では表面酸化量が相対的に多くなり放電し難く、またコストも高くなる。粒径が500μmよりも大きいと放電が局所的に集中しやすく均一なコーティングができない。
【0016】
また、金属材料Ti、Zr、Ta、Nb、W、Cr、Ni、Coを焼結した焼結体は、仮焼結材と異なり、内部に抵抗となるバインダーが残っていないため電気抵抗が小さく、電極消耗により電気抵抗があまり変化しないため、被加工物と電極とのギャップを一定に保ちやすいことを見出した。
【0017】
気孔率30〜70%の多孔質であることにより、熱伝導率が低く、放電時に放電点近傍の電極が十分な熱を持ち溶融し、アーク放電により分解生成した加工液と反応し炭化し易い。
【0018】
気孔率が30%未満では熱伝導率が高いため放電加工時に電極が溶融し難く表面処理効率が著しく低下する。また気孔率が70%よりも大きいと電極の強度が低く、破損し易くなるため使用できない。
【0019】
また、本発明者は気孔率が30〜70%の多孔質焼結体電極を用いて、放電加工によりロール表面に炭化物被膜を形成することで、ロール表面と電極の溶融状態が最適化でき、表層と基材との間に所定厚さの溶融拡散層が形成されることを見いだした。また、溶融拡散層により高い密着性を有するため、高融点、かつ高硬度で鋼板との間で凝着摩耗を起こし難い炭化物セラミックス被膜を密着性良く表面に形成した圧延用ロールが提供できることを見いだした。
【0020】
この場合の圧延ロールの回転数としては10〜100rpmにおいてロール表面に均一なコーティングができることを見いだした。
【0021】
回転数が10rpm未満では、放電が局所に集中し均一なコーティングができないことがあり、回転数が100rpmよりも大きいとロール回転による電極とのギャップ変動に電極位置制御が間に合わず均一なコーティングができないことがある。
【0022】
また、圧延ロールを加工して所定の粗度を形成したい場合、粗度形成速度はコーティング時に比べて放電加工時の方が早いため、電極を最初に+極性にして放電加工を行い粗度を形成し、その後−極性に切り替えて放電表面処理によりコーティングし耐摩耗性を付与した方が効率が良いことがある。
【0023】
コーティングの厚みは25μm以下で表層と基材との間の溶融拡散層の厚みは10μm以下が適していることを見いだした。コーティングおよび溶融拡散層の厚みがそれぞれ25μm、10μmよりも大きいと圧延ロール使用中にコーティングが剥離し易い。
【0024】
また、コーティング組成としてはTi、Zr、Ta、Nb、W、Crのうちいずれか1種または2種以上の炭化物でもよいが、Ti、Zr、Ta、Nb、W、Crのうちいずれか1種または2種以上の炭化物とNi,Coのいずれか1種の金属を含むサーメットでも良い。
【0025】
特にサーメットとした場合には、密着性が非常に高いコーティングを施工することができる。
【0026】
コーティングされた表層は、30%以上の面積率でロール全面に対して均一に分散していることが好ましい。面積率が30%より小さい場合には、被加工物の組成が耐摩耗性に影響し、コーティングによる耐摩耗性向上効果はほとんど得られない。
【0027】
本発明は上記の知見を基に成されたものでありその要旨とするところは、以下のとおりである。
(1) 基材の材質をFe基合金とし、Ti、Zr、Ta、Nb、W、Crのうちいずれか1種または2種以上の炭化物、もしくはTi、Zr、Ta、Nb、W、Crのうちいずれか1種または2種以上の炭化物とNi,Coのいずれか1種の金属をコーティングされた表層に含み、前記表層の厚さが25μm以下であり、表層と基材との間に10μm以下の厚さの溶融拡散層を有することを特徴とする放電コーティング圧延用ロール。
(2) コーティングされた表層がロール全面に対して均一に分散して分布し、その面積率が30%以上であることを特徴とする(1)に記載の放電コーティング圧延用ロール。
(3) 加工液中に浸漬された被処理材である圧延ロールに対して、加工液中で放電加工を行う前記(1)または(2)に記載の圧延用ロールを製造する消耗電極において、
主成分としてTi、Zr、Ta、Nb、W、Cr、Ni、Coのうちいずれか1種、または2種以上と、不可避的不純物とを含み、原料粒径が10〜500μmであり、気孔率が30〜70%の焼結された多孔質体であることを特徴とする圧延用ロールの表面処理用消耗電極。
(4) (3)に記載の消耗電極と、
圧延ロールを浸漬して保持する機能のある加工液浸漬槽と、
放電加工用の制御機能のある電源と、
を有することを特徴とする圧延用ロールの表面処理用放電コーティング装置。
(5) (4)に記載の装置を用いて、
加工液中に被処理材である圧延ロールを浸漬し、加工液中で放電加工でコーティングすることを特徴とする放電加工による圧延用ロールの表面処理方法。
(6) 浸漬させた圧延ロールを回転させ、その回転数を10〜100rpmとすることを特徴とする前記(5)に記載の放電加工による圧延用ロールの表面処理方法。
(7) 前記(3)に記載した電極を最初に+極性にしてダル加工を行い、その後−極性に切り替えて放電加工によるコーティングすることを特徴とする前記(5)または(6)に記載の放電加工による圧延用ロールの表面処理方法。
【発明の効果】
【0028】
本発明の電極を用いることで、長時間安定したコーティング加工が可能であり、かつ、ロール表面と電極の溶融状態が最適化できるため密着性の高い炭化物被膜を形成することができる。
【0029】
本発明の圧延用ロールおよび圧延用ロールの表面処理方法、並びに圧延用ロール用表面処理装置によれば、高融点・高硬度の炭化物被膜をロール表面に密着性よく形成することができるため鋼板の冷間圧延時にロールと鋼板とが凝着摩耗を起こし難く、ロール表面の微細な凹凸が摩耗し難い。このため従来ロールに比べて10倍以上長寿命な圧延ロールを得ることができ、また、金属摩耗粉が発生しないため鋼板表面が汚れ難い特徴がある。
【0030】
このため長期にわたり圧延用ロールを使用することができ、また、鋼板表面の汚れの問題がないため生産性を向上させることができるなど、産業上の貢献が極めて顕著である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
まず、図1を参照して、本発明の一実施例である圧延用ロールの表面処理用放電コーティング装置について説明する。ここで、図1は、圧延用ロールの表面処理用放電コーティング装置の断面図である。
【0032】
1は加工槽であり、この加工槽1の中には加工油3が充填されている。2は加工油3内に配置された圧延用ロールであり、この圧延用ロール2の軸部2aは、ラジアル式の軸受4によって回転可能に支持されている。圧延用ロール2は、Fe基合金によって構成されている。
【0033】
5は圧延用ロール2の軸方向と略平行に並設された複数の電極であり、これらの電極5は、圧延用ロール2の下方に設けられている。各電極5は、主成分としてTi、Zr、Ta、Nb、W、Cr、Ni、Coのうちいずれか1種、または2種以上と、不可避的不純物とを含み、原料粒径が10〜500μmであり、気孔率が30〜70%の焼結された多孔質体から形成されている。これらの電極5は、不図示のパルス式の電源から電力の供給を受けて、圧延用ロール2に対して放電加工を行う。
【0034】
上述の圧延用ロールの表面処理用放電コーティング装置によれば、電極5に通電することによって、加工油3の絶縁破壊による火花放電が生じ、この熱エネルギよって、電極5のTi等が溶解するとともに加工油3が分解し、これらの溶解物及び分解物が化学結合することによって、圧延用ロール2の表面にTi、Zr、Ta、Nb、W、Crのうちいずれか1種または2種以上の炭化物、もしくはTi、Zr、Ta、Nb、W、Crのうちいずれか1種または2種以上の炭化物とNi,Coのいずれか1種の金属からなる表層を形成することができる。また、この表層の厚さは25μm以下であり、表層と圧延用ロール表面との間に10μm以下の厚さの溶融拡散層が形成される。
【0035】
本発明者は、特許文献6の実施条件をトレースするため、比較例の電極として仮焼結Ti電極、緻密質のTi板電極、および粒径75−150ミクロンの粉末Tiを1100℃で焼結して製造した気孔率50%の多孔質燒結Ti電極を用いて実験を行った。
【0036】
まず、下記放電表面処理条件で、圧延用ロールを想定した試験材を加工液中で回転させ、被加工物の表面が電極に対して相対的に高速で移動する状態で実際に表面処理を行い、その表面および断面をSEM,EPMA,微小硬度により調査した。
【0037】
また、この試験材について下記耐摩耗性評価条件にて表面粗度Raが初期の50%に低下するまでの転動回数を耐摩耗性として評価した。
【0038】
上記評価結果について表1にまとめた。
【0039】
尚、仮焼結Ti電極では、試験材加工中に電極が破損し試験材にコーティングができなかったため耐摩耗性評価は実施しなかった。
【0040】
また、Ti板電極では、SEM,EPMA,微少硬度による調査の結果、いずれの処理条件においても試験材表面には、直径2〜10ミクロンのTiが部分的に点在しているのみであること、Tiがカーバイド化していないこと、微小硬度も母材の5Cr鍛鋼よりも低いことが確認できた。このため耐摩耗性は放電表面処理しない場合と同等であり、放電表面処理の効果は確認できなかった。
【0041】
これに対し本発明の一実施例である電極では、SEM,EPMA,微少硬度による調査の結果、試験材表面に厚み0.1〜25μmのTiC被膜が成膜できており、微小硬度も1000〜2000程度と高いこと、また表層と試験材との間に厚さ0.1〜10μmの溶融拡散層が形成できていることが確認できた。このため、密着性が良く、耐摩耗性は母材の5Cr鍛鋼に比べ10〜20倍向上することを確認した。

・放電表面処理条件
試験材 :5Cr鍛鋼 外径100mm×幅20mm
電極 :仮焼結Ti、Ti板、多孔質燒結Ti
幅20mm×厚み5mm(肉厚1mm中空)
試験材回転数 :100rpm
放電電流ピーク値:1〜20A
放電パルス幅 :5〜500μsec
表面処理時間 :30min
加工液 :灯油系放電加工油

・耐摩耗性評価条件
試験材 :5Cr鍛鋼 外径100mm×幅20mm
相手材 :S45C 外径100mm×幅5mm
試験材回転数 :1000rpm
相手材回転数 : 990rpm
潤滑条件 :水添加
【0042】
【表1】

【実施例】
【0043】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。
【0044】
以下に本発明の実施例を示す。
【0045】
胴径φ500mm、胴長2000mmの圧延用5%Cr鍛鋼ロールを灯油系放電加工油中で回転させながら放電加工を行なった。従来例No.1では、緻密質金属Cu電極を用いて、電流値10A、パルス幅20μsec、休止幅20μsec、電極+極性にて通常の放電ダル加工を行った。
【0046】
従来例No.2、本発明の例No.3〜20では、各種粒径の各種金属を焼結して製造した多孔質焼結電極を用いて、電流値10A、パルス幅20μsec、休止幅20μsec、電極−極性の放電表面処理を実施した。尚、従来例No.2では処理時間を10分とし、本発明の例No.3〜20では処理時間を30分とした。
【0047】
電極製造条件、コーティング特性および圧延結果を表2にまとめた。
【0048】
上記ロールを冷間タンデムミルの上下ワークロールに採用し、普通鋼を用いて、エマルジョン潤滑下で平均圧延速度1000m/minにて冷間圧延した。
【0049】
表2の本発明例No.3〜20、および従来例No.1、2について、ロール表面粗さRaが1/2に低下しロール交換が必要とされるまでの転動回数でロール寿命を調べた結果、本発明例はいずれも従来例に対してロール寿命が10倍以上向上した。従来例No.2では被覆面積率が15%と小さいため、摩耗速度が基材である5%Cr鍛鋼により律速され、寿命が短くなった。
【0050】
次に、調質圧延機の上下ワークロールに従来ロールおよび本発明のロールを採用し、低炭素鋼を伸び率約1%にて冷間圧延し、ロール表面の初期粗度Raの変化を調べた。
【0051】
表2の本発明例No.3〜20、および従来例No.1、2について、ロール表面粗さRaが1/2に低下しロール交換が必要とされるまでの転動回数でロール寿命を調べた結果、本発明例はいずれも従来例に対してロール寿命が10倍以上向上した。従来例No.2では被覆面積率が15%と小さいため、摩耗速度が基材である5%Cr鍛鋼により律速され、寿命が短くなった。
【0052】
ロール全面の30%以上がコーティングされている場合は基材が摩耗していっても、コーティングされている表層が残るので、粗さが保たれ、寿命が延びたものと考えられる。一方、30%未満になるとコーティングされている表層が基材とともに摩耗して寿命が短くなったものと思われる。
【0053】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】圧延用ロールの表面処理用放電コーティング装置の断面図
【符号の説明】
【0055】
1 加工槽
2 圧延用ロール
3 加工油
4 軸受
5 電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の材質をFe基合金とし、Ti、Zr、Ta、Nb、W、Crのうちいずれか1種または2種以上の炭化物、もしくはTi、Zr、Ta、Nb、W、Crのうちいずれか1種または2種以上の炭化物とNi,Coのいずれか1種の金属をコーティングされた表層に含み、前記表層の厚さが25μm以下であり、表層と基材との間に10μm以下の厚さの溶融拡散層を有することを特徴とする放電コーティング圧延用ロール。
【請求項2】
コーティングされた表層がロール全面に対して均一に分散して分布し、その面積率が30%以上であることを特徴とする請求項1に記載の放電コーティング圧延用ロール。
【請求項3】
加工液中に浸漬された被処理材である圧延ロールに対して、加工液中で放電加工を行う請求項1または2に記載の圧延用ロールを製造する消耗電極において、
主成分としてTi、Zr、Ta、Nb、W、Cr、Ni、Coのうちいずれか1種、または2種以上と、不可避的不純物とを含み、原料粒径が10〜500μmであり、気孔率が30〜70%の焼結された多孔質体であることを特徴とする圧延用ロールの表面処理用消耗電極。
【請求項4】
請求項3に記載の消耗電極と、
圧延ロールを浸漬して保持する機能のある加工液浸漬槽と、
放電加工用の制御機能のある電源と、
を有することを特徴とする圧延用ロールの表面処理用放電コーティング装置。
【請求項5】
請求項4に記載の装置を用いて、
加工液中に被処理材である圧延ロールを浸漬し、加工液中で放電加工でコーティングすることを特徴とする放電加工による圧延用ロールの表面処理方法。
【請求項6】
浸漬させた圧延ロールを回転させ、その回転数を10〜100rpmとすることを特徴とする請求項5に記載の放電加工による圧延用ロールの表面処理方法。
【請求項7】
請求項3に記載した電極を最初に+極性にしてダル加工を行い、その後−極性に切り替えて放電加工によるコーティングすることを特徴とする請求項5または6に記載の放電加工による圧延用ロールの表面処理方法。

【図1】
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【公開番号】特開2007−111742(P2007−111742A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−305988(P2005−305988)
【出願日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】