説明

放電灯始動装置、並びにそれを用いたソケット及び車両用前照灯

【課題】2次巻線から内側電極部までの電路をより短くして絶縁性能を向上させることが
できること。
【解決手段】放電灯始動装置1は、放電灯2を始動させるイグナイタ部3と放電灯2の口
金が嵌合する受部4とが一体になる。イグナイタ部3は、パルス回路5、パルストランス
7、封止部8、内側及び外側電極部9,10を備える。パルストランス7はパルス回路5
で生成のパルス電圧を昇圧させる。内側電極部9は受部4底面に配置されて口金の中心電
極2aと電気的に接続される。外側電極部10は受部4周面に配置されて口金の外周電極
2bに電気的に接続される。パルストランス7は1次及び2次巻線7a,7bと磁気コア
7cを備える。磁気コア7cに巻回の2次巻線7bの高電圧側の一端部7dは内側電極部
9に接続される。1次巻線7aは2次巻線7b及び磁気コア7cを外装する絶縁性の封止
部8に巻回される。一端部7dは受部4の底面中心部近傍に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタルハライドランプ等の高輝度放電灯を始動させる放電灯始動装置、並び
にそれを用いたソケット及び車両用前照灯に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、メタルハライドランプ等の高輝度放電灯(HIDランプ)を始動させる放電
灯始動装置が提供されている。この様な放電灯始動装置は、放電灯を始動させるイグナイ
タ部と、有底筒状に形成されて放電灯の口金が嵌合する受部とから構成される。
【0003】
そして、近年では自動車や鉄道車両の前照灯として前述の高輝度放電灯が用いられるこ
とが多くなり、これに伴って放電灯始動装置の小型化に対する要望が高まっている。そこ
で、従来までイグナイタ部と受部とが別体であったのに対して、これらを一体とすること
で小型化を図っている放電灯始動装置も種々提供されている。
【0004】
上述のイグナイタ部は、パルス回路と、パルストランス、内側電極部及び外側電極部を
備える。パルストランスは、パルス回路で生成されるパルス電圧を昇圧させるもので、磁
気コアと、磁気コアに巻回される2次巻線と、磁気コア及び2次巻線に巻回される1次巻
線とから構成される。内側電極部は、受部の底面に配置されて放電灯の口金底面に設けら
れた中心電極と電気的に接続される。外側電極部は、受部の周面に配置されて放電灯の口
金の周面に設けられた外周電極に電気的に接続される。そして、2次巻線の高電圧を発生
する方の一端部は内側電極部に接続される。一方、1次巻線はパルス回路に接続されてい
る。尚、一般に少ない電力で高いパルス電圧を得るために、この種の1次巻線の巻数は2
次巻線の巻数より極端に少なくされている。
【0005】
ところで、1次巻線及び2次巻線の巻き始めの端部から巻き終わりの端部までの寸法を
互いに略等しくすれば、1次巻線側の漏れ磁束が低減されて磁気結合性を向上させること
ができる。しかし、2次巻線の上から直接1次巻線が巻回される場合、1次巻線と2次巻
線との間に空隙が存在すると、2次巻線の高パルス電圧(約30kV程度)がその空隙近
傍で発生することによってコロナ放電が発生し、経年変化に伴い巻線が劣化して2次巻線
側から所定のパルス電圧を取り出せなくなる可能性があった。そのため、特許文献1に記
載の放電灯始動装置は、1次巻線を磁気コアの長手方向中心部よりも2次巻線の低電圧側
寄りに巻回させている。
【0006】
これに対して特許文献2に記載の放電灯始動装置は、絶縁性材料によって形成された封
止部をパルストランスの外郭として備え、1次巻線が磁気コア及び2次巻線を外装するそ
の封止部に巻回されている。この様に1次巻線が封止部を介して巻回されることで絶縁性
能を向上させることができ、更に上述の様に2次巻線の低電圧側寄りに1次巻線を巻回さ
せる必要もないので、漏れ磁束を低減させて磁気結合性も向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】再公表特許WO2004/019353号公報
【特許文献2】特開2005−285364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2に記載の放電灯始動装置は、内側電極部が配置される受部の
底面中心部が磁気コアの長手方向中心部近傍に位置しているため、2次巻線の高電圧を発
生する方の一端部から内側電極部までの電路が、少なくとも磁気コアの長手方向寸法の略
半分の長さを有しており、絶縁性能を充分に満足させることができないという問題があっ
た。
【0009】
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、2次巻線から内側電極部
までの電路をより短くして絶縁性能を向上させることができる放電灯始動装置、ソケット
及び車両用前照灯を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明は、上記目的を達成するために、放電灯を始動させるイグナイタ部と、
有底筒状に形成されて前記放電灯の口金が嵌合する受部とが一体となった放電灯始動装置
であって、前記イグナイタ部は、パルス電圧を生成するパルス回路と、前記パルス回路の
パルス電圧を昇圧させるパルストランスと、絶縁性材料によって形成された前記パルスト
ランスの外郭たる封止部と、前記受部の底面に配置されて前記口金の底面に設けられた中
心電極と電気的に接続される内側電極部と、前記受部の周面に配置されて前記口金の周面
に設けられた外周電極に電気的に接続される外側電極部と、を備え、前記パルストランス
は、棒状に形成される磁気コアと、前記磁気コアに巻回されて、且つ高電圧を発生する方
の一端部が前記内側電極部に接続される2次巻線と、前記磁気コア及び前記2次巻線を外
装する前記封止部に巻回されて、且つ前記パルス回路に接続される1次巻線と、を備え、
前記2次巻線の前記一端部は、前記受部の底面中心部近傍に配置されていることを特徴と
する。
【0011】
この発明によれば、前記2次巻線の高電圧を発生する方の一端部は、前記受部の底面中
心部近傍に配置されているので、前記2次巻線の前記一端部から前記内側電極部までの電
路をより短くして絶縁性能を向上させることができる。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記1次巻線は、前記封止部に疎巻きさ
れていることを特徴とする。
【0013】
この発明によれば、前記1次巻線は、前記封止部に疎巻きされているので、前記1次巻
線の巻数を変えることなく1次巻線側の漏れ磁束を低減させることができ、より磁気結合
性を向上させることができる。
【0014】
請求項3の発明は、請求項1または2の発明において、前記磁気コアの長手方向に対す
る前記1次巻線の巻き始め位置及び巻き終わり位置は、前記2次巻線の巻き始め位置と巻
き終わり位置との間に介在していることを特徴とする。
【0015】
この発明によれば、前記2次巻線の高電圧を発生する方の一端部と対向する位置に、前
記1次巻線が配置されることがないので、前記1次及び2次巻線間の前記封止部の絶縁性
能をより向上させることができる。
【0016】
請求項4の発明は、請求項1〜3の何れか1項の発明において、前記1次巻線は、平角
導体が前記封止部に巻回されてなることを特徴とする。
【0017】
この発明によれば、前記1次巻線の巻数を変えることなく前記2次巻線と対向する1次
巻線の面積を広くすることができ、より磁気結合性を向上させることができる。
【0018】
請求項5の発明は、請求項1〜4の何れか1項の発明において、前記封止部は、合成樹
脂材料の射出成形によって形成されていることを特徴とする。
【0019】
この発明によれば、前記封止部は、合成樹脂材料の射出成形によって形成されているの
で、絶縁性能の向上に加えて生産性も向上させることができる。
【0020】
請求項6の発明は、請求項1〜5の何れか1項に記載の放電灯始動装置と、前記放電灯
始動装置を内部に収納するハウジングとを備えることを特徴とする。
【0021】
この発明によれば、請求項1〜5の何れか1項に記載の発明と同様の効果を奏するソケ
ットが提供できる。
【0022】
請求項7の発明は、請求項6記載のソケットと、前記放電灯始動装置によって始動され
る放電灯と、前記放電灯を点灯維持させる電力を生成する放電灯点灯装置と、これらを保
持して車両に取り付けられる灯体ハウジングとを備えることを特徴とする。
【0023】
この発明によれば、請求項6記載の発明と同様の効果を奏する車両用前照灯が提供でき
る。
【発明の効果】
【0024】
本発明では、2次巻線から内側電極部までの電路をより短くして絶縁性能を向上させる
ことができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態1の背面図である。
【図2】同上における回路構成図である。
【図3】同上における磁気コア、2次巻線及び内側電極部の斜視図である。
【図4】同上を用いたソケットの分解斜視図である。
【図5】同上を用いたソケットの斜視図である。
【図6】同上を用いた車両用前照灯のブロック図である。
【図7】同上を用いた車両用前照灯の断面図である。
【図8】本発明の実施形態2の要部断面図である。
【図9】同上における斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(実施形態1)
以下、本発明の実施形態1について、図1〜図7を参照して説明する。尚、以下の説明
では、図5において上下左右前後方向を規定している。本実施形態1の放電灯始動装置1
は、図1及び2に示すように、メタルハライドランプ等のような高輝度放電灯たる放電灯
2を始動させるイグナイタ部3と、放電灯2の口金(図示せず)が嵌合する受部4とが一
体になっている。
【0027】
イグナイタ部3は、パルス回路5、パルストランス7、封止部8、内側電極部9及び外
側電極部10を備える。
【0028】
パルス回路5は、パルス電圧を生成するための回路で、図2に示すように、3個の入力
端子TI1〜TI3と3個の出力端子TO1〜TO3とを有し、充電コンデンサC1やバ
イパスコンデンサC2、放電ギャップSG、2個のフィルターチョークLC1,LC2と
いった回路部品を備える。そして、これらの回路部品はリードをインサート成形して形成
された基板6に実装されている。尚、基板6は、図1に示すように、封止部8前面に配設
されている。
【0029】
パルストランス7は、パルス回路5で生成されたパルス電圧を昇圧させるもので、図1
及び2に示すように、1次巻線7a、2次巻線7b及び磁気コア7cから構成される。磁
気コア7cは固有抵抗が大きいフェライト材料によって棒状に形成されている。2次巻線
7bは、平角導体が磁気コア7c周面にエッジワイズ巻きされてなる。1次巻線7aは、
後述の様に、丸線導体が磁気コア7c及び2次巻線7bを外装する封止部8に疎巻きされ
てなる。
【0030】
2次巻線7bの高電圧を発生する方の一端部7dは、図3に示すように、磁気コア7c
の上端部側(図3中の右端部)に位置し、その一端部7dには内側電極部9が固定されて
いる。内側電極部9は、導電性部材によって略L字状に形成されており、先端部には一対
の狭持片9aが突設されている。また、磁気コア7cの上端部には、磁性材料により矩形
板状に形成されたヨーク(図示せず)が配設され、磁気コア7c及び前記ヨークは、合成
樹脂材料により形成されたコアホルダ(図示せず)によって保持される。
【0031】
一方、2次巻線7bの他端部7eは、図3に示すように、磁気コア7cの下端部側(図
3中の左端部)に位置し、その他端部7eには導電性材料によって矩形板状に形成された
端子片11が固定されている。そして、端子片11は、封止部8の前壁部に貫設される挿
通孔(図示せず)を通じて対向する基板6に向かって突出し、パルス回路5中の接点部a
に接続されている(図2参照)。
【0032】
パルストランス7の外郭たる封止部8は、図1に示すように、合成樹脂材料の射出成形
によって略角筒状に形成されており、その上方左端部(図1では上方右端部)に受部4が
一体となっている。また、封止部8内部の上下方向略中心部から下端部の位置には、磁気
コア7cを保持している前述のコアホルダを収納しており、封止部8は、磁気コア7c及
び2次巻線7bを略隙間なく外装している。但し、封止部8内部にて2次巻線7bの一端
部7dは、受部4の底面中心部近傍に配置されている。そして、1次巻線7aが封止部8
の前記中心部から前記下端部に亘って疎巻きされている。尚、1次巻線7aの両端部は封
止部8前面に配設される基板6に向かって延びており、パルス回路5中の接点部b及びc
に接続されている(図2参照)。
【0033】
受部4は、図4及び5に示すように、全体として有底円筒状に形成されており、先述の
通り封止部8と一体となっている。また、受部4は、外側に位置する円筒状の外筒部4a
と外筒部4aの内側に配設される前方が開口した円筒状の内筒部4bとから構成され、こ
れら2つの外筒部4a及び内筒部4bが同心に配置されてなる。更に、内筒部4bの開口
は、封止部8の内部と連通しており、2次巻線7の一端部7dに固定される内側電極部9
が、内筒部4bの内底面中心部に配置されている。そして、内側電極部9の狭持片9a先
端が内筒部4bの開口により露出している。従って、放電灯2の口金が受部4に嵌合した
とき、一対の狭持片9aが口金の底面に設けられた中心電極2aを狭持することで内側電
極部9と中心電極2aとが電気的に接続される。
【0034】
一方、外筒部4aの外周面には、図4及び5に示すように、一対の外側電極部10が配
設されている。各外側電極部10は、細長矩形板状に形成されたバネ部10aを2個ずつ
備え、その前端部は、外筒部4aの開口縁に設けた切欠部4cより内側に突出している。
従って、放電灯2の口金が受部4に嵌合したとき、バネ体10aの前端部が、口金の周面
に設けられた外周電極2bに弾接することで、外側電極部10と外周電極2bとが電気的
に接続される。尚、外側電極部10の後端部は、基板6に向かって延びており、パルス回
路5中の接点部d及びeに接続されている(図2参照)。
【0035】
次に、上述の様なパルス回路5とパルストランス7の回路構成について、図2を参照し
ながら説明する。入力端子TI1と出力端子TO2との間には、パルストランス7の1次
巻線7aと放電ギャップSGとの直列回路と充電コンデンサC1との並列回路が接続され
ている。入力端子TI2は、フィルターチョークLC1を介して出力端子TO3に接続さ
れている。入力端子TI3は、フィルターチョークLc2とパルストランス7の2次巻線
7bとを介して出力端子TO1に接続されている。更にフィルターチョークLC1及びL
C2の後段には、これらとともにノイズを除去するためのフィルタ回路を構成するバイパ
スコンデンサC2が設けられている。そして、放電灯2の口金が受部4に嵌合されると、
内側電極部9たる出力端子TO1は、放電灯2の中心電極2aと電気的に接続される。一
方、外側電極部10たる出力端子TO2及びTO3は、放電灯2の外周電極2bと電気的
に接続される。
【0036】
放電灯2を始動させるには、出力端子TO1〜TO3に放電灯2が接続された状態で、
入力端子TI2に対して入力端子TI1,TI3に各々正の電圧を加える。すると充電コ
ンデンサC1が充電され、その両端の電圧が所定の値を越えると放電ギャップSGが導通
して、充電コンデンサC1の充電電荷が放電されて、パルストランス7の1次巻線7aに
急激に電流が流れる。その結果、パルストランス7の2次巻線7bに非常に高いパルス電
圧が誘導される。そして、この高パルス電圧が出力端子TO2と出力端子TO3との間の
電圧に重畳して放電灯2に加えられて、放電灯2は絶縁破壊に至り始動する。尚、充電コ
ンデンサC1は、出力端子TO2と出力端子TO3とが放電灯2の外周電極2bを介して
電気的に接続されないと充電されることはない。従って、放電灯2が取り付けられていな
い状態での高パルス電圧の発生を防ぐことができる。
【0037】
そして、本実施形態1の放電灯始動装置1は、上述のように2次巻線7bの一端部7d
が配置される位置に特徴がある。特許文献2に記載の放電灯始動装置は、従来技術で述べ
た様に、受部の底面中心部が磁気コアの長手方向中心部近傍に位置していた。そのため、
2次巻線の高電圧を発生する方の一端部から内側電極部までの電路が少なくとも磁気コア
の長手方向寸法の略半分の長さを有し、絶縁性能を充分に満足させていなかった。これに
対して、本実施形態1の放電灯始動装置1は、図1に示すように、2次巻線7bの一端部
7dが受部4の底面中心部近傍に配置されているので、一端部7dから内側電極部9まで
の電路をより短くして絶縁性能を向上させることができる。また、本実施形態1の1次巻
線7aは、封止部8に疎巻きされているので、1次巻線7aの巻数を変えることなく1次
巻線7a側の漏れ磁束を低減させることができ、より磁気結合性を向上させることができ
る。
【0038】
尚、本実施形態1の受部4の底面中心部は、図1に示すように、2次巻線7bの一端部
7dの直ぐ左上(図1中の右上)に位置するが、この限りでなく例えば直ぐ左下(図1中
の右下)に位置してもよい。但し、この場合、内側電極部9と低電圧側の1次巻線7aと
の距離が狭まるため、例えば、封止部8の壁部に凹凸を設けるといったような絶縁性を高
める手段を新たに設ける必要がある。
【0039】
ところで、上述の様な放電灯始動装置1は、図4及び図5に示すように、ハウジング1
2内に収納されると、全体として略扁平な直方体形状に形成されたソケット15となる。
【0040】
ハウジング12は、図4に示すように、合成樹脂材料より形成されるケース13と、金
属板に打ち抜き加工や絞り加工を施すことによって形成されるシールドケース14とから
構成される。ケース13は、図4に示すように、放電灯始動装置1の後面を覆う後ケース
13aと、後ケース13aとの間に放電灯始動装置1を挟む形で後ケース13aに結合す
る前ケース13bとからなる。前ケース13bの前面には、放電灯始動装置1の受部4が
嵌合する円筒形状に形成された筒部13cが前方に突設されている。筒部13c前面は開
口しており、その開口を通じて受部4前面が露出される。
【0041】
そして、放電灯2は、周知のバヨネット結合によってケース13に取り付けられる。即
ち、筒部13cの開口縁には、各々前方が開放されて後端部が前方から見て時計回り方向
に窪んでなる略L字形状の凹部13dが周方向に沿って等間隔に4個並設されている。一
方、放電灯2の口金外周面には結合ピン(図示せず)が突設されていて、放電灯2を取り
付ける際には、前記結合ピンを前方から何れかの凹部13dに導入する。そして、放電灯
2を前方から見て時計回りに回動させることにより、前記結合ピンが凹部13dに係止さ
れて放電灯2の脱落が防止される。
【0042】
シールドケース14は、図4に示すように、ケース13の後面を覆う後シールドケース
14aと、後シールドケース14aとの間にケース13を挟む形で後シールドケース14
aと結合する前シールドケース14bとからなる。前シールドケース14bの前面には、
放電灯始動装置1の受部4及びケース13の筒部13cが嵌合する円筒形状に形成された
筒部14cが前方に突設されている。また、筒部14c前面は開口しており、筒部13c
が筒部14cに嵌合時には、図5に示すように、互いの開口縁は略面一となる。尚、ケー
ス13及びシールドケース14の下端部には、放電灯始動装置1の入力端子TI1〜TI
3に一対一に接続された電線16を外部に導出させるための導出口13e,14dが貫設
されている。
【0043】
更に、上述の様なソケット15は、例えば、図6及び図7に示すような車両用前照灯1
7に用いることができる。車両用前照灯17は、ソケット15と放電灯2と放電灯点灯装
置18と灯体ハウジング19とを備える。放電灯点灯装置18は、図6に示すように、直
流電源Eと、その直流電圧を矩形波電圧に変換して電線16を通じて放電灯始動装置1に
給電するインバータ回路INVとから構成される。灯体ハウジング19は、図7に示すよ
うに、車体に固定されて、その内部に放電灯2やソケット15、放電灯2から放射される
光を前方に反射するための反射板20を収納したものである。灯体ハウジング19前部(
図7中の左側)は開口しており、その開口には透光性材料により形成されるレンズ21が
取り付けられている。一方、灯体ハウジング19後部(図7中の右側)には、放電灯2を
交換するための開口部19aが貫設されており、前記交換時以外のときはキャップ19b
が開口部19aを塞ぐように被着されている。また、灯体ハウジング19下端部の下面に
は先述の放電灯点灯装置18が取り付けられており、灯体ハウジング19下端部に貫設さ
れる孔部19cには、放電灯点灯装置18とソケット15とを繋ぐ電線16が挿通される
。そして、この様な車両用前照灯17は、自動車や鉄道車両の車体前面の左右両側に1台
ずつ取り付けられる。
【0044】
(実施形態2)
以下、本発明の実施形態2について、図8及び9を参照して説明する。尚、本実施形態
2は、基本的な構成が実施形態1と共通であるので、共通の構成要素には、同一の符号を
付して説明を省略する。
【0045】
本実施形態2の磁気コア7cの長手方向に対する1次巻線7aの巻き始め位置及び巻き
終わり位置は、2次巻線7bの巻き始め位置と巻き終わり位置との間に介在している点に
特徴がある。
【0046】
図8は、本実施形態2のパルストランス7及び封止部8の断面図である。2次巻線7b
は、平角導体が磁気コア7c周面にエッジワイズ巻きされてなり、その巻き始め位置及び
巻き終わり位置となる端部71,72は、各々磁気コア7cの長手方向両端部近傍に位置
する。一方、1次巻線7aは、丸線導体が封止部8周面に疎巻きされてなり、その巻き始
め位置及び巻き終わり位置となる端部73,74は、磁気コア7cの長手方向に対して端
部71,72よりもそれぞれ平角導体5〜6本分の厚さ幅程度だけ内側に位置している。
従って、2次巻線7bの高電圧を発生する方の一端部7dと対向する位置に、1次巻線7
aが配置されることがないので、1次及び2次巻線7a,7b間の封止部8の絶縁性能を
より向上させることができる。
【0047】
ところで、上述の1次巻線7aは丸線導体が巻回されてなるが、丸線導体に代わって平
角導体を用いれば、1次巻線7aの巻数を変えることなく2次巻線7bと対向する1次巻
線7aの面積を広くすることができ、より磁気結合性を向上させることができる。尚、前
記平角導体は、図9に示すように、リードフレームの材料に使用される銅合金のように厚
さ幅の薄い細長矩形板状に形成されたものであってもよい。但し、この様に厚さ幅の薄い
導体を曲折させながら巻回させる場合、巻回してから弾性復帰力によって曲折する前の状
態に戻ろうとする、所謂、スプリングバックが発生する。従って、放電灯点灯装置1にス
プリングバックの防止策を設ける必要がある。そこで本実施形態2の放電灯始動装置1に
は、図9に示すように、1次巻線7aの端部に引掛けるようにして係止する係止片22が
突設されている。
【符号の説明】
【0048】
1 放電灯始動装置
2 放電灯
2a 中心電極
2b 外周電極
3 イグナイタ部
4 受部
5 パルス回路
7 パルストランス
7a 1次巻線
7b 2次巻線
7c 磁気コア
7d 一端部
8 封止部
9 内側電極部
10 外側電極部





【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電灯を始動させるイグナイタ部と、有底筒状に形成されて前記放電灯の口金が嵌合す
る受部とが一体となった放電灯始動装置であって、
前記イグナイタ部は、パルス電圧を生成するパルス回路と、前記パルス回路のパルス電
圧を昇圧させるパルストランスと、絶縁性材料によって形成された前記パルストランスの
外郭たる封止部と、前記受部の底面に配置されて前記口金の底面に設けられた中心電極と
電気的に接続される内側電極部と、前記受部の周面に配置されて前記口金の周面に設けら
れた外周電極に電気的に接続される外側電極部と、を備え、
前記パルストランスは、棒状に形成される磁気コアと、前記磁気コアに巻回されて、且
つ高電圧を発生する方の一端部が前記内側電極部に接続される2次巻線と、前記磁気コア
及び前記2次巻線を外装する前記封止部に巻回されて、且つ前記パルス回路に接続される
1次巻線と、を備え、
前記2次巻線の前記一端部は、前記受部の底面中心部近傍に配置されていることを特徴
とする放電灯始動装置。
【請求項2】
前記1次巻線は、前記封止部に疎巻きされていることを特徴とする請求項1記載の放電
灯始動装置。
【請求項3】
前記磁気コアの長手方向に対する前記1次巻線の巻き始め位置及び巻き終わり位置は、
前記2次巻線の巻き始め位置と巻き終わり位置との間に介在していることを特徴とする請
求項1または2記載の放電灯始動装置。
【請求項4】
前記1次巻線は、平角導体が前記封止部に巻回されてなることを特徴とする請求項1〜
3の何れか1項に記載の放電灯始動装置。
【請求項5】
前記封止部は、合成樹脂材料の射出成形によって形成されていることを特徴とする請求
項1〜4の何れか1項に記載の放電灯始動装置。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1項に記載の放電灯始動装置と、前記放電灯始動装置を内部に収
納するハウジングとを備えることを特徴とするソケット。
【請求項7】
請求項6記載のソケットと、前記放電灯始動装置によって始動される放電灯と、前記放
電灯を点灯維持させる電力を生成する放電灯点灯装置と、これらを保持して車両に取り付
けられる灯体ハウジングとを備えることを特徴とする車両用前照灯。






【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−218731(P2010−218731A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−60991(P2009−60991)
【出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】