説明

散水チューブ

【課題】 吊り下げ固定や地上固定が容易にできる散水チューブに関する。
【解決手段】 糸入り樹脂製の基材からなる散水チューブであって、長手方向に適当な間隔を設けて穿設した散水孔を有するチューブ本体と、チューブ本体の外側に連続して形成された幅1cm以上の固定用耳部を有してなることを特徴とする散水チューブであって,好ましくは糸入り樹脂製の基材が、織布状又はネット状の糸成形体からなる補強基材と熱可塑性樹脂からなる主基材の積層構造である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吊り下げ固定や地上固定が容易にできる散水チューブに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、農業用分野、土木用分野を中心に、散水用、或いは潅水用として、硬質合成樹脂管の替わりに、ポリエチレン樹脂等の合成樹脂製の散水チューブが利用されている。通常、これらの散水チューブには、散水孔を穿設した二枚の長尺状熱可塑性樹脂フィルムを重ね合わせて、幅方向の幅方向の両端を長尺方向に融着することによって形成された貼合タイプのもの(例えば、特許文献1)、および、溶融押出法によって熱可塑性樹脂を円筒状のスリットから溶融押出して、直接チューブ状に成形加工し、得られたチューブに散水孔を穿設した非貼合タイプのもの(特許文献2)が存在する。
更にこれらの散水チューブは、地面上に設置して使用する場合と、温室ハウスの骨組みパイプに固定して、ハウス内の散水に使用する場合とがあり、例えば後者のタイプでは、温室ハウスの骨組みパイプに固定するための特殊な固定具を必要とする(例えば、特許文献3)。また、前者のタイプでも、チューブを地上に単に置くだけでは、チューブの蛇行や、散水方向の不安定さが問題となるため、所定個所で押さえ治具による固定を必要とする。
しかしながら、これら固定具や押さえ治具を用いる固定は、別途の部材を必要とするため、固定作業や押さえ作業が大変である。例えばハウス内散水の場合には、固定間隔が骨組みアーチパイプの間隔に制限される、パイプが角材の場合は固定できない、固定具で被覆された部位の散水孔からの散水が邪魔される、ハウスの傾斜によって散水チューブの散水孔の向く角度の調整が難しい等の種々の課題を有している。
【0003】
【特許文献1】特開昭58−63335号公報
【特許文献2】特開平2−258187号公報
【特許文献3】特開平8−84534号広報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、上記問題に鑑み、簡単な作業で、吊り下げ固定や、地上固定ができる散水チューブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意検討した結果、散水チューブの基材を、糸入り樹脂製とし、かつ、散水孔を長手方向に穿孔したチューブ本体の外側に、一定幅以上の固定用耳部を連続して形成した散水チューブとすることにより、簡易に、吊り下げ固定や、地上固定ができる散水チューブを提供できることを見出し、本発明に至った。
【0006】
即ち本発明の要旨は、1)糸入り樹脂製の基材からなる散水チューブであって、長手方向に適当な間隔を設けて穿設した散水孔を有するチューブ本体と、チューブ本体の外側に連続して形成された幅1cm以上の固定用耳部を有してなることを特徴とする散水チューブにあり、更に好ましくは、2)糸入り樹脂製の基材が、織布状又はネット状の糸成形体からなる補強基材と熱可塑性樹脂からなる主基材の積層構造であることを特徴とする1)記載の散水チューブ、3)糸入り樹脂製のシート状基材の一部をシールして形成した請求項1または2記載の散水チューブにある。
【発明の効果】
【0007】
このように、散水チューブの基材を、糸入り樹脂製とし、かつ、散水孔を長手方向に穿孔したチューブ本体の外側に、一定幅以上の固定用耳部を連続して形成した散水チューブとすることにより、簡易に、吊り下げ固定や、地上固定を行うことが可能となる。例えば、固定用耳部に更に吊下げ用孔をあけて、S字フックを引っ掛けて、温室ハウスの所定高さに水平に張った針金等に、そのS字フックを吊るすなどの方法など(図2参照)により、簡易に、任意の所定間隔により散水チューブを固定することが可能となる。糸入り樹脂製であることにより、長手方向に張力を付加しても基材伸びないため吊下げ固定が可能となる。更に、固定間隔が骨組みアーチパイプの間隔に制限されず、パイプが角材の場合でも固定ができ、固定具で被覆された部位の散水孔からの散水が邪魔されず、吊下げ固定であれば、常に鉛直方向があるので、ハウスの傾斜によって散水チューブの散水孔の向く角度の調整が難しい等の問題もない。
また、散水チューブの地面固定(図3参照)も、固定用耳部を利用した固定で簡易に行うことができ、散水方向の安定化も図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の散水チューブについて詳細に説明する。
本発明に係わる散水チューブは、散水チューブを、チューブ本体(1)の外側に連続して一定幅以上の固定用耳部(2)を形成した形状とし、かつ、散水チューブ(チューブ本体と固定用耳部)の基材として、糸入り樹脂基材を用いることを特徴とする発明である。固定用耳部がチューブ本体の外側に連続して形成されていることにより、特殊な固定部材を用いなくとも、固定用耳部の任意の位置に吊下げ用孔を付設して吊下げ固定が簡易に可能となり、糸入り樹脂基材であることにより、水を含む散水チューブの重力に耐えうる構成となる。なお、従来糸入り樹脂製の散水チューブとして、特開平5−96691号公報に記載されたように、2枚のシートの両端をシールしたもの(図8参照)が知られているが、この両端のシール部の幅は約3mm程度であり、本発明でいう固定用耳部として機能するものではない。
【0009】
以下図面を参照し説明する。図1〜図7には、本発明の特徴ある散水チューブの形状の種々の態様を示し、図8には従来の散水チューブの一例を示している。図9には本発明の散水チューブに用いるシート状の糸入り樹脂製基材の一例を示している。
【0010】
図1は、本発明の散水チューブの一例を示す断面図である。この態様では、シート状の糸入り樹脂製の基材の一端を固定用耳部(2)とし、その他を円形にして散水チューブ本体(1)とし、その他端をチューブ本体(1)の内側でシール(4)して形成した、散水チューブ本体(1)と、それに連続して形成された固定用耳部(2)と、散水チューブ本体(1)に穿設された散水孔(3)を有する散水チューブを示している。この態様の散水チューブは、チューブの水圧に対するシール部の耐圧強度が優れる点で好ましい。またこの図の場合、散水孔はチューブ本体の一方(図中左側)に設けられており、温室ハウスの側面にこの散水チューブを設置して片側散水する場合に好ましく用いられる。
【0011】
図2は、図1の散水チューブを吊下げ固定に利用する場合の態様を示した斜視図であり、固定用耳部(2)に吊下げ用孔(5)を設けて、その孔にS字状の吊下げフック(6)を引っ掛け、フックを金属線などの固定用バー(8)に吊下げた例を示している。
図3は、図1の散水チューブを地面固定に利用する場合の態様を示した断面図であり、固定用耳部(2)を、地面固定具(7)を利用して固定した例を示している。
【0012】
図4は、図1とは別の態様である本発明の散水チューブの一例を示した断面図であり、この態様では、シート状の糸入り樹脂製の基材の両端を円形として散水チューブ本体(1)とし、これとは別に、同一組成、或いは同系組成のシート状の糸入り樹脂製の基材を固定用耳部(2)+シール用のオーバーテープ部位として、両者を同時、或いは逐次でシール(4)を形成し、散水チューブ本体(1)に穿設された散水孔(3)を有する散水チューブを示している。この態様の散水チューブは、散水孔を設計するに当たって、シール近傍での穿孔処理の制約無く、穿孔設計の比較的自由度が高い散水チューブを作製できる点で好ましい。
【0013】
図5は、図1や図4とは別の態様である本発明の散水チューブの一例を示した断面図であり、シート状の基材の中部を円形とし、基材の端部同士をシール部(4)でシールして形成した、散水チューブ本体(1)と、それに連続した固定用耳部(2)と、散水孔(3)を有する散水チューブを示している。この態様の散水チューブは、図4の散水チューブと同様に、散水孔を設計するに当たって、シール近傍での穿孔処理の制約無く、穿孔設計の比較的自由度が高い点と併せて、耳部が2枚で構成されるため耳部の強度が増す点で好ましい。また、両側に散水孔(3)を設けやすいため、両側散水を行う場合に好ましく用いられる。
図6も、更に別の態様の本発明の散水チューブの一例を示した断面図である。図1の散水チューブの形状に加えて、その固定用耳部(2)の先端を小さく丸めてロープや細棒等の吊下げ用長尺体を通すための連通部(9)を形成し、その端部を固定用耳部(2)部位でシール(4)した形状を示した例である。この態様であれば、別途、吊下げ用孔(5)を設ける必要もないため好ましい。
【0014】
図7は、本発明の散水チューブに設ける散水孔の穿孔処理設計図の一例を示すものであり、図中の数値単位はmm、穿孔の数値は孔径を示すものである。
図8は、従来の散水チューブに相当する一例を示すもので、シートを2枚重ね合わせ、シール部の形状が合掌型となる構造でその両端をシールした5mm幅の両耳部を有するチューブを示す。
図9は、本発明の散水チューブに用いるシート状の糸入り樹脂製基材の一例を示しており、縦糸と横糸からなる織布状の補強基材1aの両側に熱可塑性樹脂の主基材1bをラミネート法により積層した、糸入り樹脂基材であるチューブ原反を示している。
【0015】
このように、本発明の散水チューブは、長手方向に適当な間隔を設けて穿設した散水孔(3)を有するチューブ本体(1)と、チューブ本体の外側に連続して形成された固定用耳部(2)を有してなることを特徴とする。
【0016】
チューブ本体(1)は、通常用いられている散水チューブと同様に円筒形であればよく、大きさ、長さは、農業用、土木用、その他での散水用、或いは潅水用としての使用のされ方、また、その場合、均一散水性を要求される散水距離やチューブ敷設の長さなど、目的によって多少の異なりを有するが、例えば、チューブ管径は20〜100mmΦ、チューブ肉厚は0.2〜1.5mm、などにて形成される。なおこのチューブ本体(1)は通水時は膨張して円筒形状を呈するが非通水時は扁平となることができる。
【0017】
チューブ本体の長手方向に適当な間隔を設けて穿設する散水孔(3)としても、従来の散水チューブと同様に、その目的に応じた孔径、数、配列の散水孔を採用することができる。例えば、穿孔径は0.1〜2.0mmΦ、穿孔間隔は10〜200mm、穿孔列数は1〜20列が採用できる。チューブに穿孔を施す方法としては、レーザー穿孔法やポンチ打ち抜き法、針穿孔法などの任意の方法を採用することができるが、チューブに多数の小孔を各種孔径で高精度でバリなどの発生なく規則正しく均一に得るためには、レーザー穿孔法が最も優れている。片側散水のためにはチューブ本体(1)の片方のみに散水孔(3)を設け、両面散水の場合は、両側に散水孔(3)を設ける。
【0018】
本発明の、固定用耳部(2)とは、円筒形のチューブ本体(1)の外側に突設形成された部位を意味し、チューブ本体に連続して形成されている。チューブ本体(1)に連続して幅1cm以上の糸入り樹脂製基材の固定用耳部(2)が形成されることにより、チューブ本体に付加される重量を適確に固定用耳部で支持することが可能となる。
【0019】
固定用耳部(2)は、例えば耳部に吊下げ用孔又は固定用孔をあけて固定する方法(図2参照)や、耳部をクリップ部材で把持して固定する方法、固定用耳部に設けた連通部(9)に、吊下・固定用のロープや細棒等の吊下げ用長尺体(8)を通して固定する方法(図6参照)により固定するための部位であり、これらの固定方法に使用できる程度の幅、厚さ、長さがあればよく、チューブ本体(1)を形成する糸入り樹脂基材と同じ基材により構成されるものである。
例えば吊下げ用の固定用耳部(2)としては幅(図1中矢印の長さ)が1cm以上であり、特に上限は必須ではないが5cm以下が好ましい。厚さは0.2〜3mm程度が好ましく採用される。
【0020】
本発明の、固定用耳部(2)をチューブ本体(1)の外側に連続して形成した散水チューブの製造方法としては任意の製造方法を使用しうるが、一つは、図1〜図7に示すように、シート状の基材を用いて、その一部をシールして製造する方法が好ましい。
またシート状の基材を用いて本発明の散水チューブを形成する方法も、図1〜図7に示すように、種々任意に採用しうる。
【0021】
例えば、シート状基材の一方の端部をチューブ本体(1)の一部内側でシール(4)する態様(図1)、固定用耳部(2)+シール用のオーバーテープ部位としてシート状の糸入り樹脂製の基材を用いた態様(図4)、シート状基材の両端部をシールした部位(4)を固定用耳部(2)とする態様(図5)、シート状基材の両端部を、固定用耳部の先端に長尺体を通すための連通部(9)を設けるようにしてシールした部位(4)を固定用耳部(2)とする態様(図6)などが挙げられる。
【0022】
なお、本発明でいうシール部とは、ヒートシール法や熱風シール法、超音波シール法、高周波シール法、各種接着剤によるシール法等、散水チューブの水圧に耐えうる範囲で任意のシール法を採用しうる。
【0023】
本発明の糸入り樹脂基材とは、糸と熱可塑性樹脂を含む基材の意味であり、特に好ましくは、糸からなる補強基材と熱可塑性樹脂からなる主基材を積層した構成、更に好ましくは糸からなる補強基材を熱可塑性樹脂からなる主基材の間に介在させた層構成の基材が好ましい。更にその層構成は、樹脂主基材と補強基材が相互に積層された3層以上の多層構造のものを用いることも好ましく挙げられる。
【0024】
主基材を構成する熱可塑性樹脂としては、屈曲自在な性能を与える任意の樹脂、例えばポリオレフィン系樹脂、ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂などを用いることができるが、特にポリオレフィン系樹脂が好ましい。ポリオレフィン系樹脂は、密度が0.90〜0.94g/cm、好ましくは0.91〜0.93g/cmであるポリエチレン、密度が0.90〜0.94g/cm、好ましくは0.91〜0.03g/cmであるエチレン−αオレフィン共重合体、および酢酸ビニル単位の含有量が1〜20重量%、好ましくは3〜15重量%であるエチレン−酢酸ビニル共重合体、或いはこれら樹脂の少なくとも1種以上の混合物である。
【0025】
主基材を構成する当該熱可塑性樹脂には、散水チューブの耐久性、耐候性などを高める目的で、予め樹脂にカーボン、耐候安定剤、酸化防止剤などを適宜添加することができる。また、その他、無機フィラー、滑剤、顔料、染料、帯電防止剤、可塑剤などの各種添加剤を必要に応じて適宜添加することができる。
【0026】
特に、当該ポリオレフィン系樹脂にカーボンを添加することにより、後述するYAGレーザーを用いた穿孔法により穿孔加工する際、近赤外線領域のエネルギー吸収性を向上させることができ、穿孔速度を大幅に上げることができる。通常、樹脂100重量部に対して、カーボン1〜6重量部を添加することが好ましい。
【0027】
本発明の散水チューブ原反の補強基材を構成する糸としては、好ましくは樹脂製糸を用いることが好ましく、該樹脂は、前述の主基材のポリオレフィン系樹脂等が融ける温度以上の融点、或いは軟化点温度を有するポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、またはポリビニルアルコール系樹脂などにより構成された繊維を使用することができる。また、この場合、糸の仕様としては、特には規定しないが、補強の目的などを鑑みると、例えば、繊度50〜5000d、引き込み本数(2〜50本)×(2〜50本)/インチが好ましい。本発明の補強基材は、このような糸、好ましくは長糸を、そのままモノフィラメント状、マルチフィラメント状、フラットヤーン状で樹脂層間に介在させる態様や、予めそれらの糸をネット状、織布状に形成した糸成形物を、樹脂層間に介在させる態様が挙げられるが、特に好ましくは、ネット上や織布状の糸成形物を用いることが好ましい。糸にも、耐久性、耐候性などを高める目的で、各種添加剤を必要に応じて適宜添加することができる。特に、当該糸にカーボンを添加することにより、後述するYAGレーザーを用いた穿孔法により穿孔加工する際、近赤外線領域のエネルギー吸収性を向上させることができ、穿孔速度を大幅に上げることができ好ましい。
【0028】
本発明の散水チューブは、前述の糸と熱可塑性樹脂を含む基材からなる積層構成の散水チューブであり、その作製方法は特には限定されないが、例えば図9に示すように、縦糸と横糸からなる織布状の補強基材1aの両側に熱可塑性樹脂の主基材1bをラミネート法により積層して、糸入り樹脂基材であるチューブ原反を得ることができる。
糸入り樹脂基材の厚さは0.2〜1.5mmが好ましく、特に耐水圧性と、水を加えた散水チューブの支持強度を有するために、JIS K−7113に準拠して測定する引張強度が20〜1000N/cm、更には50〜500N/cmのものが好ましい。
【実施例】
【0029】
本発明について、以下の具体的な実施例および比較例により、さらに詳細に説明する。
尚、実施例に示した各特性値は下記方法により測定した値である。
1)引張破断点荷重(N/cm)
実施例、または比較例で得られた穿孔のないチューブを幅方向(TD方向)に沿ってチューブのシール部または折り目部が試料片の中心部となるように、JIS1号ダンベルを用いて打ち抜き、試料片を作成する。この試料片を、JIS K7113に準拠して引張速度300mm/分の条件にて引張試験を行い、散水チューブの引張破断点荷重(N/cm)の測定を行う。(測定雰囲気温度23℃)
2)耐圧試験(MPa)
実施例、または比較例で得られた穿孔のないチューブ(チューブ長さ:500mm)の一端部を完全密閉封止し、チューブ内に水を充填した後、端部を圧力計付きのプランジャー式水注入ポンプに接続する。この装置一式を40℃の温水に浸漬して、40℃の温水をポンプにてチューブ内に350ml/分の給水速度で送り込み、徐々にチューブ内を加圧化する。チューブが水内圧に耐え切れずに破壊する時のチューブ内圧を計測して破壊圧力(MPa)とする。
【0030】
3)散水試験(チューブ固定試験)
実施例で得られた穿孔を有する耳部付きの散水チューブを平坦な大型アーチ状鉄骨ハウス内に、地面から1m高さに金属線+S字吊り下げフックを設けた所定のチューブ固定装置を利用して80m長で図2に示すような空中固定敷設(敷設の両末端部に専用垂直固定柱を設置)を行い、チューブの末端部を専用の止め具を用いて密閉し、他端部を給水ポンプに接続して、送水元圧0.2MPa、散水量5リットル/分・mの条件で6時間散水を行う。その際、散水後でのチューブ固定具合を評価する。
また、実施例で得られた穿孔を有する耳部付きの散水チューブを平坦な露地面に、図3に示すように、吊り下げ用孔に杭型の簡易治具を用いて露地面に深く差し込んで散水チューブを地面固定を行い、その後にチューブの末端部を専用の止め具を用いて密閉し、他端部を給水ポンプに接続して、送水元圧0.2MPa、散水量5リットル/分・mの条件で6時間散水を行う。その際、散水後でのチューブ固定具合を評価する。
【0031】
(実施例1)
糸入り樹脂製基材として以下の構成のシートを準備した。
補強基材の中間層樹脂として低圧法高密度ポリエチレン樹脂(密度:0.950g/cm、MFR:0.5g/10分)100重量部にカーボンブラック2重量部の組成よりなるポリオレフィン系樹脂組成物(A)を用い、その表裏面に積層する内外層樹脂として高圧法低密度ポリエチレン樹脂(密度:0.925g/cm、MFR:2.5g/10分)100重量部にカーボンブラック2重量部、シリカ0.1重量部、エルカ酸アミド0.05重量部の組成よりなるポリオレフィン系樹脂組成物(B)を用いた層比構成が外層/中間層/内層=15/120/15μm、総厚150μm、糸幅1.3mmのフラットヤーンを打ち込み密度16本×16本/インチで織成し、縦横に配列した織布構造の補強基材を用意した。(平均厚み:300μm)
この補強基材に、高圧法低密度ポリエチレン樹脂(密度:0.923g/cm、MFR:6.0g/10分)100重量部にカーボンブラック2重量部、シリカ0.1重量部、エルカ酸アミド0.05重量部の組成よりなるポリオレフィン系樹脂組成物(C)を用いて溶融押出コーティング法にて厚さ70μmの外層および内層膜を補強基材の両層に積層化して糸入り樹脂製基材シートを作製した。(平均厚み:440μm)
次に、得られた糸入り樹脂製基材シートを190mm幅にスリット化して後、熱風シール機(熱風温度400℃、貼り合わせ速度5m/分)を用いて、図1に示すようなシート状基材の一方の端部をチューブ本体の一部内側でシールされた形態の構造を有する方法で20mm幅の固定用耳部を有するチューブ(チューブ管径:50mm、チューブ折径:80mm、シール幅:10mm)を作製した。
本チューブを用いて、上記に示す方法にてその引張破断点荷重、耐圧試験を行った。その結果を表1に示す。
また、本チューブをYAGレーザー穿孔装置を用いて、チューブ片面に図7に示すような、穿孔径1.00、1.00、0.60、0.60、0.50、0.60、0.70、0.70、0.40,0.40mmΦ、各穿孔間隔80mm、穿孔列数10列の穿孔処理を施して、その後、固定用耳部の中央部(10mm幅位置)に1m間隔で吊り下げ用孔(孔径:5mmΦ)をポンチ打ち抜き法で施した散水チューブを作成して、図2に示すような形態でハウス内での空中固定敷設を行って散水試験を実施した。
同様に、図3に示すような形態で、吊り下げ用孔に杭型の簡易治具を用いて露地面に差し込んで散水チューブを地面固定敷設を行って散水試験を実施した。その結果を表1に示す。
【0032】
(比較例1)
実施例1で作製した糸入り樹脂製基材シートを90mm幅にスリット化して後、これを2枚重ね合わせて、熱風シール機を用いて、図7に示すようなシール部の形状が合掌型となる構造を有する方法で5mm幅の両耳部を有するチューブ(チューブ管径:50mm、チューブ折径:80mm、シール幅:各5mm)を作製した。
本チューブを用いて、上記に示す方法にてその引張破断点荷重、耐圧試験を行った。その結果を表1に示す。
また、本チューブを実施例1と同様に、YAGレーザー穿孔装置を用いて、チューブ片面に図7に示すような穿孔処理を施して散水チューブを作成して散水試験を行った。その結果を表1に示す。
【0033】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施態様の一つでシート状基材の一方の端部をチューブ本体(1)の一部内側でシール(4)する態様を示す断面図
【図2】本発明の散水チューブを吊下げ固定に利用する場合の態様を示した斜視図
【図3】本発明の散水チューブを地面固定に利用する場合の態様を示した断面図
【図4】本発明の実施態様の一つで固定用耳部(2)+シール用のオーバーテープ部位としてシート状の糸入り樹脂製の基材を用いた態様を示す断面図
【図5】本発明の実施態様の一つでシート状基材の両端部をシールした部位(4)を固定用耳部(2)とする態様を示す断面図
【図6】本発明の実施態様の一つでシート状基材の両端部を、固定用耳部の先端に長尺体を通すための連通部(9)を設けるようにしてシールした部位(4)を固定用耳部(2)とする態様を示す断面図
【図7】本発明の散水チューブに設ける散水孔の穿孔処理設計図の一例を示す図
【図8】従来の散水チューブの一例を示した図
【図9】本発明の散水チューブに用いるシート状の糸入り樹脂製基材の一例を示した図
【符号の説明】
【0035】
1・・チューブ本体、2・・固定用耳部、3・・散水孔、4・・シール、5・・吊下げ用孔、6・・吊下げフック、7・・地面固定具、8・・固定用バー、9・・連通部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
糸入り樹脂製の基材からなる散水チューブであって、長手方向に適当な間隔を設けて穿設した散水孔を有するチューブ本体と、チューブ本体の外側に連続して形成された幅1cm以上の固定用耳部を有してなることを特徴とする散水チューブ。
【請求項2】
糸入り樹脂製の基材が、織布状又はネット状の糸成形体からなる補強基材と熱可塑性樹脂からなる主基材の積層構造であることを特徴とする請求項1記載の散水チューブ。
【請求項3】
糸入り樹脂製のシート状基材の一部をシールして形成した請求項1または2記載の散水チューブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−194310(P2006−194310A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−5139(P2005−5139)
【出願日】平成17年1月12日(2005.1.12)
【出願人】(504137956)MKVプラテック株式会社 (59)
【Fターム(参考)】