説明

数値設定装置

【課題】 操作部の操作継続中に所定の単位ずつ設定数値を変化させる(変更する)場合に,刻々と変化する設定数値の表示を凝視し続けることなくその値を所望の値に設定でき,また,スピーディに設定することが可能なこと。
【解決手段】 設定数値の表示以外に,その設定数値の現状を表す他の指標として,設定数値の値若しくはその変化値の大きさの程度,設定数値の値若しくはその変化値が予め定められた値になったこと,及び設定数値を変化させる単位が変化したこと,のうちの1若しくは複数について,操作部11を振動させる振動発生部12により触覚を通じて,音声出力部13により聴覚を通じて,或いは数値表示の表示パターンを変えることにより視覚を通じて報知する。また,操作部11の操作開始後の所定時間の間は設定数値を最小単位ずつ変化させる連続変化とし,その後は全部若しくは部分的に最小単位の複数分ずつ変化させる不連続変化とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,所定の操作部が操作された場合に機器に対する設定数値を変化させる数値設定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来,例えば複写倍率の設定機能を備えた複写機等の機器では,アップキーやダウンキー等の所定の操作部が操作された場合に,その機器に対する設定数値(複写倍率等)を変化させる機能を有するものがある。
ここで,例えば複写機においては,複写縮倍率(設定数値)を小刻みに,例えば1%刻みに変更し得るものも提供されている。
また,このような数値設定機能を備えた機器では,アップキー或いはダウンキー等の操作部を操作し続ける(押し続ける)ことにより,設定数値を徐々に変化させつつその設定数値を表示部に表示させ,目標の設定数値が表示されたところで操作部の操作を止めることによって,目標とする設定数値まで変化させる(変更する)ことが可能なように構成されている。
例えば,複写機における複写倍率(縮倍率)の設定では,ズームキー(アップキー或いはダウンキー)を押し続けると,10ステップ変化/秒程度,即ち0.1秒間隔程度で複写倍率表示が連続的に変化する。しかしながら,この0.1秒という表示の変化は,操作者にとって速すぎて見づらいという問題点がある。また逆に,見やすくするため複写倍率表示の変化を,例えば0.3秒間隔という遅い変化とすると,値の変更幅が大きい場合に長時間操作し続けなければならないという問題点がある。例えば,上記複写機の例において,70%から95%に複写倍率を変化させるためには,0.3×(95−70)=7.5秒という長時間を要してしまう。
そのような問題点を解消するため,特許文献1には,前記設定数値の表示変化(即ち,値の変化)のスピードを,前記操作部の操作開始後の所定時間の間においては予め定められた最小の数値変化単位ずつ変化させる連続変化とし,その後は全部若しくは部分的に前記最小の数値変化単位の複数分ずつ変化させる不連続変化とするとともに,前記連続変化中の方が前記不連続変化中よりも数値表示の変化スピード(値変化の刻み)を速くする若しくは同一とするものが示されている。これにより,設定数値の変化幅が大きい場合でも,操作継続中の途中から設定数値を比較的大きな刻み幅で変化させ,目標とする複写倍率にスピーディに到達できるとともに,複写倍率の表示変化のスピードを遅くすることによって複写倍率表示の見やすさも確保できる。
一方,特許文献2には,押しボタンスイッチの周囲に超音波振動子を設けることにより,ブラインド操作を行っても押しボタンスイッチの存在する領域とその他の領域とを識別できる操作スイッチ装置が示されている。
【特許文献1】特許第2577400号公報
【特許文献2】特開2004−63149号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら,設定数値の変化状況をその数値の表示によってのみ確認する構成では,操作者は,設定数値が目標値に近づき,そして到達するまでの比較的長い時間,順次変化する設定数値の表示を凝視し続けなければならず,操作者の目にかかる負担が大きいという問題点があった。さらに,携帯電話機や携帯型音楽プレイヤー等の携帯端末においては,設定数値を凝視しながら歩行すると安全性の問題が生じ,また,立ち止まって操作しなければならないとすると時間効率悪化の問題が生じる。このような問題点は,設定数値の変化幅(変更幅)が大きいほど顕著となる。
また,特許文献1に示される技術によっても,設定数値の変化幅(変更幅)が大きい場合には上記問題点を回避できない。
また,特許文献2にも,操作部を操作し続けることによって設定数値を所定の規則に従った単位ずつ変化させる(変更する)場合に,設定数値の表示を凝視し続けなければならないという問題を解決する手段について何ら示されていない。
従って,本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり,その目的とするところは,操作部を操作し続けることによって所定の規則に従った単位ずつ変化させる(変更する)場合に,刻々と変化する設定数値の表示を凝視し続けることなく設定数値を所望の値に設定することが可能であり,さらには,設定数値の変化幅(変更幅)が大きい場合でもスピーディに所望の値に設定することが可能な数値設定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために本発明は,例えば複写機における複写倍率の設定等のように,所定の操作部が操作された場合に機器に対する設定数値を変化させる数値設定装置に適用されるものであり,前記操作部の操作継続中に前記設定数値を予め定められた規則に従った単位ずつ変化させつつ(数値変化制御手段),その設定数値を表示手段(数値表示手段)に表示させるとともに,前記設定数値の現状を表す他の指標として,前記設定数値の値若しくはその変化値の大きさの程度,前記設定数値の値若しくはその変化値が予め定められた値に到達したこと,及び前記設定数値を変化させる単位が変化したこと,のうちの1若しくは複数について,触覚,聴覚及び視覚のうちの1若しくは複数を通じて報知するよう構成されたものである。
これにより,前記設定数値の表示以外に,設定数値の現状を表す他の指標が触覚,聴覚,視覚を通じて報知される(即ち,注意を喚起される)ので,操作者はその報知によって前記設定数値が所望の値(目標とする値)に近づいたか否かの概ねの状況,或いは前記設定値が所望の値に到達したか否かの状況を把握できる。従って,前記報知により前記設定数値が所望の値に近づいたことを把握した時点から前記設定数値の表示を監視し始める,或いは前記設定値が所望の値に到達したことを把握した時点で前記操作部に対する操作を止めることにより,刻々と変化する設定数値の表示を凝視し続けなくても設定数値を所望の値に設定することが可能となる。
さらに,前記操作部の操作開始後の所定時間の間においては前記設定数値を予め定められた最小の数値変化単位ずつ変化させる連続変化とし,その後は全部若しくは部分的に前記設定数値を前記最小の数値変化単位の複数分ずつ変化させる不連続変化とするよう制御すれば,設定数値の変化幅(変更幅)が大きい場合でもスピーディに(短時間で)所望の値に設定することが可能となる。
ここで,前記報知手段における触覚を通じた報知としては,前記操作部を振動させることによる報知等が考えられ,同様に聴覚を通じた報知としては,所定の発信音やガイダンス音声(言葉の音声)による報知等が考えられ,同様に視覚を通じた報知としては,数値表示の表示パターン(反転表示や点滅表示,表示色等)を変更することによる報知等が考えられる。
例えば,前記設定数値の変化値が大きくなるほど前記操作部を強く振動させることや,前記設定数値が予め定められた切りのよい値(10,20,30等)となるごとにその値に応じた回数だけ所定の発信音の信号をスピーカに出力すること(10のときに「ピッ」,20のときに「ピッ,ピッ」,…等)や,前記設定数値を変化させる単位を所定の周期で1ランクずつ大きくする(例えば,最初は1ずつの単位,次に5ずつの単位,その次に10ずつの単位,…等で変化させる)ような場合にその変化させる単位が変わるごとに前記設定数値の表示手段のバックライトを点滅させる(表示パターンを変化させる)こと等が考えられる。
【0005】
また,前記設定数値の値若しくはその変化値が予め定められた値に到達したことや,前記数値変化制御手段における前記設定数値を変化させる単位が変化したことの報知がなされた際に,表示手段への前記設定数値の表示を一時保持させるものであれば,前記操作者が前記報知に反応して前記設定数値の表示を確認する際に,値表示が変化せずに固定(保持)されているので見やすく好適である。
また,予め記憶手段に記憶された当該数値設定装置の操作者に関する操作者情報の中から,所定の入力手段を通じて入力された情報(パスワードやID,操作者の顔や指紋等の画像情報等)に対応する前記操作者情報を取得し,その取得情報に基づいて,前記報知を,触覚,聴覚及び視覚のうちのいずれの1若しくは複数の組み合わせを通じて行うかを切り替えることも考えられる。
これにより,例えば,取得された前記操作者情報が視覚や聴覚の不自由な操作者であることを表す場合に,その操作者に適した方法で前記報知を行うことが可能となる。
例えば,設定数値の現状を表す指標を,前記設定数値やその背景の表示色を変えることによって視覚を通じて報知することを基本の設定としつつ,操作者が色弱者である場合には前記設定数値の点滅や反転によって報知するよう切り替えること等が考えられる。同様に,操作者が目の不自由な人である場合に,音声信号の出力によって聴覚を通じて報知するよう切り替えること等も考えられる。
なお,本発明は機器に対する設定数値を変化させる数値設定方法等,他のカテゴリーの発明として捉えたものであってもよい。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば,機器に対する設定数値の表示以外に,その設定数値の現状を表す他の指標として,前記設定数値の値若しくはその変化値の大きさの程度,前記設定数値の値若しくはその変化値が予め定められた値になったこと,及び前記設定数値を変化させる単位が変化したこと,のうちの1若しくは複数について,触覚,聴覚及び視覚のうちの1若しくは複数を通じて報知するものであるので,操作者はその報知によって前記設定数値が所望の値(目標とする値)に近づいたことや到達したこと等を把握でき,刻々と変化する設定数値の表示を凝視し続けなくても設定数値を所望の値に設定することが可能となる。特に,触覚や聴覚を通じた報知を行えば,前記操作部のブラインド操作によっても前記設定数値の状態をある程度把握でき,操作者の目にかかる負担をより一層軽減できる。また,携帯端末においても,設定数値の表示を見ていない間は歩行しながらの数値変更操作を安全に行うことができる。
さらに,前記操作部の操作開始後の所定時間の間においては前記設定数値を予め定められた最小の数値変化単位ずつ変化させる連続変化とし,その後は全部若しくは部分的に前記設定数値を前記最小の数値変化単位の複数分ずつ変化させる不連続変化とするよう制御すれば,設定数値の変化幅(変更幅)が大きい場合でもスピーディに(短時間で)所望の値に設定することが可能となる。
また,前記設定数値の値若しくはその変化値が予め定められた値になったことや,前記数値変化制御手段における前記設定数値を変化させる単位が変化したことの報知がなされた際に,表示手段への前記設定数値の表示を一時保持させるものであれば,前記操作者が前記報知に反応して前記設定数値の表示を確認する際に,値表示が変化せずに固定(保持)されているので見やすく好適である。
また,所定の入力手段を通じて入力された情報に対応する操作者情報を取得し,その取得情報に基づいて,前記報知を,触覚,聴覚及び視覚のうちのいずれの1若しくは複数の組み合わせを通じて行うかを切り替えれば,その操作者に適した方法で前記報知を行うことができるのでより操作性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下添付図面を参照しながら,本発明の実施の形態について説明し,本発明の理解に供する。尚,以下の実施の形態は,本発明を具体化した一例であって,本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
ここに,図1は本発明の実施形態に係る数値設定装置Xが設けられた複写機Zの主要部の概略構成を表すブロック図,図2は数値設定装置Xが備える表示操作部に表示される数値設定画面の一例を表す図,図3は数値設定装置Xにおける設定数値変更処理の手順の一例を表すフローチャートである。
【0008】
まず,図1に示すブロック図を用いて,本発明の実施形態に係る数値設定装置X及びそれを搭載する機器の一実施例である複写機Zの主要部の構成について説明する。
複写機Zは,原稿読取部1,画像処理部2,画像形成部3,複写倍率制御部4,及び数値設定装置X等を具備している。この他,通常の複写機が備える各種構成要素も備えている。
前記原稿読取部1は,各種光学系及びCCD素子等からなり,原稿台に載置された原稿から画像を読み取るものである。
前記画像処理部2は,不図示の画像メモリを備え,前記原稿読取部1により読み取られた原稿画像についての各種画像処理を行うものである。
前記画像形成部3は,感光体ドラム及びその周辺装置(帯電装置,現像装置,転写装置,クリーニング装置等),及び感光体ドラムに静電潜像を書き込むレーザスキャナ装置等からなり,前記原稿読取部1による読み取られて前記画像処理部2により画像処理がなされた画像を記録シートに画像形成するものである。
前記複写倍率制御部4は,後述する数値設定装置Xにより設定される複写倍率の値に従ってレンズ等の光学系の位置制御及び原稿を露光する露光ランプ等の移動速度制御等を行うことにより,前記画像形成部3によって記録シートに形成される画像の縮倍率を制御するものである。
【0009】
また,本発明の実施形態に係る数値設定装置Xは,所定の操作部が操作された場合に,当該数値設定装置Xを搭載する複写機Z(機器)に対する設定数値である複写倍率等の値を変化させる(設定する)ものである。
ここで,前記数値設定装置Xは,MPU及びそのMPUにより実行されるプログラムが記憶されたROM等の周辺装置を備え,当該複写機Zの各構成要素を制御する制御部10と,前記複写倍率等の設定数値その他の情報を表示する液晶パネル等の表示手段(数値表示手段の一例)であるとともに,その表示部の表面にタッチセンサが形成され表示部に操作ボタンを表示させることによって操作部としても機能する表示操作部11と,前記表示操作部11に振動を発生させることによりその表示操作部11を操作中の操作者の指に振動を伝える振動発生部12と,スピーカを通じて発信音を出力する音声出力部13と,当該数値設定装置Xにより設定された設定数値等の各種情報を記憶するEEPROM等の不揮発性記憶手段であるデータ記憶部14と,前記表示操作部11から操作者によって入力されたユーザID(或いはパスワード)や不図示の指紋撮影装置により撮像された操作者の指紋画像等の入力情報に基づいてユーザ認証処理を行うとともに,ユーザ認証が成立した場合にその入力情報に対応する操作者(ユーザ)に関する操作者情報を後述する認証情報記憶部16から読み出して取得するユーザ認証部15と,当該数値設定装置Xの操作を許可されている操作者に関する操作者情報及びその操作者のユーザ認証情報(ID,パスワード,指紋画像等)及び各操作者に関する情報を記憶するハードディスク等の不揮発性記憶手段である認証情報記憶部16とを具備している。もちろん,前記認証情報記憶部16に相当する記憶手段を,例えばネットワーク等を介して接続された外部装置(サーバ計算機等)に設けた構成とすることも考えられる。
また,前記振動発生部12としては,モーターに偏芯したマス(おもり)をつけ回転しその遠心力によって振動を発生させるアンバランスマス型の振動発生手段や,磁界中でコイルに電流を流すことによる起きる力を利用するスピーカと同様の原理による動電型の振動発生手段等を用いることが考えられる。
ここで,前記制御部10は,前記ユーザ認証部15によりユーザ認証が成立(成功)した場合にのみ,前記表示操作部11を通じた当該数値設定装置X(即ち,当該複写機Z)に対する全ての処理要求(複写処理要求)を受け付け,ユーザ認証が成立しなかった場合には,一部又は全部の処理要求の受け付けを禁止する等の制御を行う。
【0010】
次に,図3に示すフローチャートを用いて,前記数値設定装置Xにおける設定数値変更処理の手順の一例について説明する。なお,以下に示すS1,S2,…は,処理手順(ステップ)の識別符号を表す。また,以下に示す前記制御部10及びユーザ認証部15の処理は,それらが備えるMPUにより所定の制御プログラム或いはユーザ認証プログラムが実行されることにより具現される。
まず,前記ユーザ認証部15により,前記表示操作部11を通じて操作者によて入力されたユーザIDやパスワード等の入力情報,又は前記ユーザ認証部15に接続された指紋撮影装置によって撮影された指紋画像情報等(以下,認証用入力情報という)に基づいて,当該数値設定装置Xの操作を許可されている操作者であるか否かのユーザ認証を行うとともに,ユーザ認証が成功した場合には前記認証用入力情報に対応する前記操作者情報を,予め前記認証情報記憶部16に記憶された当該数値設定装置Xの操作者に関する前記操作者情報の中から読み出すことによって取得する(S1,操作者情報取得手段の一例)。
ここで,前記操作者情報には,例えばその操作者が視覚障害を有する者であるか否か,及び聴覚障害を有する者であるか否か等に関する情報も含まれるものとする。
次に,前記制御部10は,ユーザ認証が失敗した場合には本処理を終了させる(S2のN側)が,ユーザ認証が成功した場合には(S2のY側),前記表示操作部11から前記複写倍率等の設定数値の変更を要求する操作がなされたか,或いはその他の処理を要求する操作がなされたかを判別し(S3),その他の処理がなされたと判別した場合には,要求された他の処理の実行モードへ移行する(S3のN側)。
一方,前記制御部10は,前記複写倍率等の設定数値の変更要求操作がなされたと判別した場合には(S3のY側),その設定数値の変更画面(数値設定画面)を前記表示操作部11に表示させる(S4)。その際,現状の前記複写倍率(設定数値)が前記データ記憶部14から読み出され,その値の表示もなされる。
図2は,前記複写倍率の変更処理を要求する操作がなされた場合に,前記制御部10が前記表示操作部11に表示させる数値設定画面の一例である。
この数値設定画面には,例えば図2に示すように,前記複写倍率(設定数値)を上げる方向に変更するための操作部であるアップボタン21と,下げる方向に変更するための操作部であるダウンボタン22と,現状の前記複写倍率(設定数値)が表示される数値表示部20と,当該数値設定処理を終了させるための操作部である戻るボタン23とが表示される。
【0011】
次に,前記制御部10は,ステップS1で前記ユーザ認証部15(操作者情報取得手段の一例)により取得された前記操作者情報に基づいて,前記複写倍率(設定数値)の現状を表す数値表示以外の他の指標(以下,現状指標という)を,前記振動発生部12により前記表示操作部1を振動させることによって操作する操作者の触覚を通じて報知すること,前記音声出力部13により所定の発信音やガイダンス音声を出力することによって操作者の聴覚を通じて報知すること,前記表示操作部11による前記複写倍率の数値表示の表示パターンを変更することによって視覚を通じて報知すること3のうちのいずれの1又は複数の組み合わせにより行うかを表す報知方式を切り替える(報知制御手段の一例)。
例えば,前記操作者情報にその操作者が聴覚障害を有する者である旨の情報が含まれる場合は,「視覚及び触覚」を通じた報知を行う方式Aとし,視覚障害を有する者である旨の情報が含まれる場合は,「聴覚及び触覚」を通じた報知を行う方式Bとし,その他の場合(デフォルト)は,「視覚,聴覚及び触覚」を通じた報知を行う方式Cとする。
次に,前記制御部10は,前記表示操作部11における前記アップボタン21若しくは前記ダウンボタン22(操作部の一例)が操作(ON)されているか否かをチェックし(S6),操作されている(ONである)場合,その操作の継続中(同じボタンの押圧操作継続中)はこのステップS6及び以下に示すステップS7〜S16の処理が所定の周期(例えば,0.1秒周期)で順次繰り返される。
【0012】
まず,ステップS7では,前記制御部10は,前記データ記憶部14から読み出した現状の前記複写倍率(設定数値)について,所定の刻み値Dを加算(前記アップボタン21を操作中の場合)若しくは減算(前記ダウンボタン22を操作中の場合)して前記データ記憶部14に記憶させることにより更新する(S7)。この刻み値Dの初期値は,前記複写倍率(設定数値)について予め定められた最小の数値変化単位(ここでは,1(%))である。
さらに,前記制御部10は,ボタン操作が開始されてからの前記複写倍率(設定数値)の変化値(差分の絶対値)Wを設定(即ち,現状の変化値Wに前記刻み値Dを加算)する(S8)。この変化値Wの初期値は0(ゼロ)である。
なお,本フローチャートには示していないが,前記刻み値D及び前記変化値Wは,前記アップボタン21又は前記ダウンボタン22のいずれかの継続操作(押圧し続けること)が途切れた時点で初期化(D←1,W←0)される。
次に,前記制御部10は,前記刻み値Dの設定(再設定)処理を行う(S9)。例えば,前記変化値Wが予め定められた第1の設定変化値H1(例えば,5)未満のときは前記刻み値Dを初期値(=1)のまま,前記変化値WがH1以上かつ第2の設定変化値H2(例えば,40)未満のときは前記刻み値Dを第1の刻み値(=5)に,前記変化値WがH2以上のときは前記刻み値Dを第2の刻み値(=10)に設定すること等が考えられる。
【0013】
次に,前記制御部10は,前記変化値Wが,予め定められた複数の値(既定値)のいずれかに到達したか否かを判別し(S10),前記既定値に到達していない場合には後述するステップS13へ処理を移行させ,前記既定値に到達している場合には,ステップS11へ処理を移行させて,ステップS5で設定された報知方式(A〜Cのいずれか)に従ってその旨の報知がなされる。
ここで,前記既定値としては,例えば,「10,20,30,…」(下位の1又は複数の桁を丸めた数値)或いは「50,100,150,…」等の切りのよい数値とすること等が考えられる。
例えば,前記報知方式Aにおいては,前記表示操作部11における前記数値表示部20の表示パターンを変化させる(例えば,反転表示や色替え表示を行う)とともに,前記振動発生部12により前記表示操作部11のパネル(操作部)を一時的に振動させる。
また,前記報知方式Bにおいては,前記音声出力部12により所定の発信音「ピッ」をスピーカを通じて出力するとともに,前記振動発生部12により前記表示操作部11のパネル(操作部)を一時的に振動させる。
また,前記報知方式Cにおいては,前記数値表示部20の表示パターン変化と,前記音声出力部12による発信音出力と,前記振動発生部12による前記表示操作部11の振動とを行わせる。
さらに,前記制御部10は,操作者が前記報知に気付いてから前記複写倍率の値表示を目視確認するのに十分な時間だけ前記表示操作部11(数値表示手段)による前記複写倍率(設定数値)の表示を一時的に保持させる設定を行い(S12),処理をステップS13へ移行させる。これにより,ステップS11において前記複写倍率の変化値が既定値に到達したことの報知がされた際に,前記複写倍率(設定数値)の後の変化にかかわらず,前記表示操作部11(数値表示手段)による前記複写倍率(設定数値)の表示が一時的に保持される。以下,このステップS12における設定を表示保持設定という。また,既定値に到達したとは,前記アップボタン21操作の場合は既定値以上となったこといい,前記ダウンボタン22操作の場合は既定値以下となったことをいう。
【0014】
ステップS13においては,前記制御部10は,前記表示保持設定がなされているか否かを判別し,同設定がなされていないと判別した場合には,ステップS7で更新した新たな前記複写倍率(設定数値)を前記表示操作部11の前記数値表示部20に更新表示させ(S15),その後ステップS16に処理を移行させる。
一方,前記表示保持設定がなされていると判別した場合には,前記制御部10は,ステップS7での前記複写倍率(設定数値)の変化にかかわらず,前記複写倍率(設定数値)の前記表示操作部11への表示をそのまま一時保持した状態で,前記表示保持設定の解除処理を実行(S14)した後,ステップS16に処理を移行させる。この解除処理は,ステップS12で前記表示保持設定がなされてから所定の保持時間(具体的には,ステップS6〜S16の処理の繰り返し回数で管理する)が経過するまでは前記表示保持設定を解除せずそのまま保持し,前記保持時間が経過したと判別したときに前記表示保持設定を解除する処理である。また,前記アップボタン21又は前記ダウンボタン22のいずれかの継続操作(押圧し続けること)が途切れたときも,前記表示保持設定は解除される。
ステップS16においては,前記制御部10は,前記表示操作部11から所定の終了操作(具体的には,前記戻るボタン23の操作)がなされたか否か,及び何も操作されない状態が一定時間以上継続したか否かによって当該設定数値変更処理(数値設定処理)の終了条件を満たすか否かを判別し,その終了条件を満たさないと判別したときは前述したステップS6へ処理を戻す。これにより,前述したステップS6〜S16の処理が所定の周期で繰り返される。一方,前記終了条件を満たすと判別しときは,前記制御部10は当該設定数値変更処理(数値設定処理)を終了させる。
【0015】
以上示したように,前記制御部10は,ステップS7及びS9の処理により,前記アップボタン21又は前記ダウンボタン22(操作部)の操作継続中に,前記複写倍率(設定数値)を予め定められた規則に従った単位ずつ(1ずつ,5ずつ又は10ずつ)変化させる(数値変化制御手段の一例)。
具体的には,前記制御部10は,操作部21,22の操作開始後の所定時間の間(前記変化値Wが前記第1の設定変化値H1未満である時間)においては,前記複写倍率を予め定められた最小の数値変化単位(前記刻み値Dの初期値(例えば,1))ずつ変化させる連続変化とし,その後の全時間帯(全部)について前記複写倍率を前記最小の数値変化単位の複数分ずつ(例えば,5ずつ或いは10ずつ)変化させる不連続変化とするよう制御する(数値変化制御手段の一例)。
例えば,元々設定されている前記複写倍率の値が70(%)であるときに前記アップボタン21の継続操作(押圧操作の継続)が行われた場合,所定の周期(例えば,0.1秒周期)で,前記複写倍率の値が,70,71,72,…75,80,85,90,…,105,110,120,130,…等のように変化する。
これにより,目標とする複写倍率にスピーディに到達できる。
また,前記複写倍率の値の前記表示操作部11への表示が,通常はその値の変化に従って更新表示されるが,予め定められた値(例えば,100,150等)に到達した際(その旨の報知が行われた際)には,一時的に(例えば,0.5秒程度)その値表示が保持される。
これにより,操作者は,前記複写倍率が既定値に到達したことの報知を認識した際に,その報知の内容(前記複写倍率の状態)を容易に確認できる。
また,捜査開始後の所定時間を経過後,部分的に前記複写倍率を前記最小の数値変化単位の複数分ずつ変化させる不連続変化とするよう制御することも考えられる。例えば,前記複写倍率(設定数値)が下限値や上限値に近づいたときには,前記操作部21,22の操作継続中に前記複写倍率の値を最小単位(例えば1)ずつ変化させるようにすること等が考えられる。
【0016】
また,ステップS11において,前記複写倍率(設定数値)を前記表示操作部11に数値表示させる以外の前記現状指標として,前記複写倍率の変化値が予め定められた値に到達したことを,前記振動発生部12により触覚を通じて報知し,前記音声出力部13により聴覚を通じて報知し,また,前記表示操作部11により視覚を通じて報知するので(いずれも報知手段の一例),操作者はその報知によって前記複写倍率が所望の値に近づいたか否か,或いは所望の値に到達したか否かの状況を把握できる。従って,前記報知により前記複写倍率が所望の値に近づいたことを把握した時点から前記表示操作部11の数値表示を監視(凝視)し始める,或いは所望の値に到達したことを把握した時点で前記操作部21,22に対する操作を止めることにより,刻々と変化する前記複写倍率の表示を凝視し続ける必要がなくなる。
【0017】
ここで,前述の実施形態では,前記現状指標として,前記複写倍率の変化値が既定値に到達したことを報知する例について示したが,これに限られない。
例えば,前記現状指標として,前記複写倍率(設定数値)の値或いはその変化値の大きさの程度を報知することも考えられる。
例えば,前記複写倍率の値或いはその変化値の大きさに応じて,前記振動発生部12における発振器の設定周波数や供給電流値等を制御して振動周波数や振動強度(振幅)を変化させて触感を変化させることや,前記音声出力部13を制御して発信音の高低(周波数)を変化させること,前記表示操作部11を制御してバックライトの明るさ,色或いは点滅周期を変化させること等が考えられる。
また,前記現状指標として,前記複写倍率(設定数値)の値自体が予め定められた値(既定値)に到達したことを報知することも考えられる。
例えば,前記複写倍率が,70(%),81(%),115(%),122(%),141(%)等,記録紙の規格サイズ(A3,A4,A5,B4,B5等)相互間でサイズ変換する際の複写倍率(既定値)に到達するごとに,前記振動発生部12による振動の発生,前記音声出力部13による発信音や音声ガイダンス(そのときの値を読み上げる音声等)の出力,前記表示操作部11のバックライトの点滅(表示パターン変更の一例)等を行うことが考えられる。
また,前記現状指標として,前記制御部10によるステップS7及びS9の処理(数値変化制御手段の処理の一例)によって前記複写倍率(設定数値)を変化させる単位が変化したことを報知することも考えられる。
例えば,前記刻み値Dが,1から5へ,或いは5から10へ変化したときに,前記振動発生部12による振動の発生,前記音声出力部13による発信音や音声ガイダンスの出力,前記表示操作部11のバックライトの点滅(表示パターン変更の一例)等を行うことが考えられる。
また,以上に示した前記現状指標の複数を組み合わせて報知することも考えられる。
例えば,前記複写倍率の値或いはその変化値の大きさに応じて,前記振動発生部12の振動周波数を変化さること(値が大きいほど高周波数とする等)に加え,前記複写倍率が既定値に到達するごとに一時的にその振動強度を強くすることや,前記複写倍率の値或いはその変化値の大きさに応じて,前記音声出力部13による発信音の高低(周波数)を変化させることに加え,前記複写倍率が既定値に到達するごとにその到達した既定値を読み上げる音声ガイダンスを出力すること等が考えられる。
【0018】
また,前述の実施形態では,前記制御部10によるステップS12〜S15の処理により,前記複写倍率の変化値Wが既定値に到達したことの報知がなされた際に,前記表示操作部11(数値表示手段)による前記複写倍率(設定数値)の表示が一時的に保持させる例を示したが,同様の前記制御部10の処理により,前記複写倍率の値そのものが既定値に到達したことの報知や,前記制御部10によるステップS7及びS9の処理(数値変化制御手段の処理の一例)によって前記複写倍率を変化させる単位が変化したことの報知がなされる場合にも,その報知がなされた際に,前記表示操作部11(数値表示手段)による前記複写倍率(設定数値)の表示が一時的に保持させる(一時表示保持制御手段の一例)ことも考えられる。
また,触覚を通じた報知の手段としては,振動による報知の他,例えば,操作部に微弱な電気信号(例えば,低周波電流等)を流して電気的な触感を感じさせることによる報知手段等も考えられる。
また,視覚を通じた報知の手段としては,設定数値の表示パターンの変更の他,別途その報知用のランプを設けること等も考えられる。
なお,以上に示した実施形態は,設定数値の一例として複写機の複写倍率(縮倍率)の値を例にとって説明したが,本発明に係る数値設定装置は,複写機等の画像処理装置において他の各種設定数値を変更(設定)する場合や,その他オーディオ機器など数値設定が必要な場合に適用できることは明かである。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明は,数値設定装置への利用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係る数値設定装置Xが設けられた複写機Zの主要部の概略構成を表すブロック図。
【図2】数値設定装置Xが備える表示操作部に表示される数値設定画面の一例を表す図。
【図3】数値設定装置Xにおける設定数値変更処理の手順の一例を表すフローチャート。
【符号の説明】
【0021】
Z…複写機
X…数値設定装置
1…原稿読取部
2…画像処理部
3…画像形成部
4…複写倍率制御部
10…制御部
11…表示操作部
12…振動発生部
13…音声出力部
14…データ記憶部
15…ユーザ認証部
16…認証情報記憶部
20…数値表示部
21…アップボタン
22…ダウンボタン
S1,S2,,,…処理手順(ステップ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の操作部が操作された場合に機器に対する設定数値を変化させる数値設定装置であって,
前記操作部の操作継続中に前記設定数値を予め定められた規則に従った単位ずつ変化させる数値変化制御手段と,
前記設定数値を表示する数値表示手段と,
前記設定数値の値若しくはその変化値の大きさの程度,前記設定数値の値若しくはその変化値が予め定められた値に到達したこと,及び前記数値変化制御手段における前記設定数値を変化させる単位が変化したことのうちの1若しくは複数を,触覚,聴覚及び視覚のうちの1若しくは複数を通じて報知する報知手段と,
を具備してなることを特徴とする数値設定装置。
【請求項2】
前記数値変化制御手段が,前記操作部の操作開始後の所定時間の間においては前記設定数値を予め定められた最小の数値変化単位ずつ変化させる連続変化とし,その後は全部若しくは部分的に前記設定数値を前記最小の数値変化単位の複数分ずつ変化させる不連続変化とするよう制御してなる請求項1に記載の数値設定装置。
【請求項3】
前記報知手段における触覚を通じた報知が,前記操作部を振動させることによる報知を含むものである請求項1又は2のいずれかに記載の数値設定装置。
【請求項4】
前記報知手段における聴覚を通じた報知が,所定の発信音及び/又はガイダンス音声による報知を含むものである請求項1〜3のいずれかに記載の数値設定装置。
【請求項5】
前記報知手段における視覚を通じた報知が,前記数値表示手段における数値表示の表示パターンを変更することによる報知を含むものである請求項1〜4のいずれかに記載の数値設定装置。
【請求項6】
前記報知手段により前記設定数値の値若しくはその変化値が予め定められた値に到達したこと及び/若しくは前記数値変化制御手段における前記設定数値を変化させる単位が変化したことの報知がなされた際に,前記数値表示手段による前記設定数値の表示を一時保持させる一時表示保持制御手段を具備してなる請求項1〜5のいずれかに記載の数値設定装置。
【請求項7】
予め記憶手段に記憶された当該数値設定装置の操作者に関する操作者情報の中から所定の入力手段を通じて入力された情報に対応する前記操作者情報を取得する操作者情報取得手段と,
前記操作者情報取得手段により取得された前記操作者情報に基づいて前記報知手段により触覚,聴覚及び視覚のうちのいずれの1若しくは複数の組み合わせを通じて報知を行うかを切り替える報知制御手段と,
を具備してなる請求項1〜6のいずれかに記載の数値設定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−155166(P2006−155166A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−343943(P2004−343943)
【出願日】平成16年11月29日(2004.11.29)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】