説明

整髪剤組成物

【課題】 セット力に優れ、かつ塗布後の毛髪に良好な指通り性やなめらかさを付与し得る整髪剤組成物を提供する。
【解決手段】 少なくとも、直鎖脂肪酸、水酸基を有する脂肪酸、分岐鎖を有する脂肪酸、脂肪酸以外の油性成分、アルカリおよび水が配合されたか、または、少なくとも、直鎖脂肪酸の塩、水酸基を有する脂肪酸の塩、分岐鎖を有する脂肪酸の塩、脂肪酸以外の油性成分、および水を含有することを特徴とする整髪剤組成物により、上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セット力が優れており、かつ毛髪に良好な指通りとなめらかさとを付与し得る整髪剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
脂肪酸とアルカリによって生成する脂肪酸アルカリ塩(石ケン)は、乳化剤としての機能を有しており、これを利用したクリーム状やワックス状の整髪剤が知られている。脂肪酸アルカリ塩は、乳化作用を有することに加えて整髪剤のセット力向上に寄与し得る成分であり、これを種々の油性成分と組み合わせて構成した整髪剤が提案されている(特許文献1〜4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−86450号公報
【特許文献2】特開2001−97830号公報
【特許文献3】特開2004−67571号公報
【特許文献4】特開2009−19023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、脂肪酸とアルカリとを配合した整髪剤は、毛髪に塗布すると、その指通り性やなめらかさが低下する傾向にあり、このような点において未だ改善の余地を残している。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、セット力に優れ、かつ塗布後の毛髪に良好な指通り性やなめらかさを付与し得る整髪剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成し得た本発明の整髪剤組成物は、少なくとも、直鎖脂肪酸、水酸基を有する脂肪酸、分岐鎖を有する脂肪酸、脂肪酸以外の油性成分、アルカリおよび水が配合されたことを特徴とするものである。
【0007】
また、本発明の整髪剤組成物の別の態様は、直鎖脂肪酸の塩、水酸基を有する脂肪酸の塩、分岐鎖を有する脂肪酸の塩、脂肪酸以外の油性成分、および水を含有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、セット力に優れ、かつ塗布後の毛髪に良好な指通り性やなめらかさを付与し得る整髪剤組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の整髪剤組成物には、脂肪酸として、直鎖脂肪酸、水酸基を有する脂肪酸および分岐鎖を有する脂肪酸を使用し、これらとアルカリとを配合して、組成物内で、直鎖脂肪酸の塩、水酸基を有する脂肪酸の塩および分岐鎖を有する脂肪酸の塩を形成させるなどすることで、直鎖脂肪酸の塩、水酸基を有する脂肪酸の塩および分岐鎖を有する脂肪酸の塩を含有させている。本発明の整髪剤組成物では、かかる構成の採用によって、セット力を高めつつ、塗布後の毛髪の指通り性およびなめらかさの向上を達成している。
【0010】
直鎖脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、オレイン酸などが挙げられ、これらのうちの1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。よって、整髪剤組成物の調製時に形成される直鎖脂肪酸の塩は、上記例示の直鎖脂肪酸と、後に例示するアルカリとで形成される塩が好ましい。
【0011】
整髪剤組成物において、直鎖脂肪酸の配合量は、直鎖脂肪酸、水酸基を有する脂肪酸および分岐鎖を有する脂肪酸を使用し、これらとアルカリとから形成される塩を含有させることによる上記の効果を良好に確保する観点から、0.1質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましい。ただし、整髪剤組成物における直鎖脂肪酸の配合量が多すぎると、整髪剤組成物を毛髪に塗布する際の操作性が低下する傾向がある。よって、直鎖脂肪酸の配合量は、15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。
【0012】
水酸基を有する脂肪酸としては、例えば、ヒドロキシステアリン酸、ヒドロキシラウリン酸などが挙げられ、これらのうちの1種のみを使用してもよく、複数種を併用してもよい。よって、整髪剤組成物の調製時に形成される水酸基を有する脂肪酸の塩としては、上記例示の水酸基を有する脂肪酸と、後に例示するアルカリとで形成される塩が好ましい。
【0013】
整髪剤組成物において、水酸基を有する脂肪酸の配合量は、直鎖脂肪酸、水酸基を有する脂肪酸および分岐鎖を有する脂肪酸を使用し、これらとアルカリとから形成される塩を含有させることによる上記の効果を良好に確保する観点から、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。ただし、整髪剤組成物における水酸基を有する脂肪酸の配合量が多すぎると、整髪剤組成物を比較的高温で貯蔵した際に、粘度が増大するなど、安定性が低下する虞があることから、水酸基を有する脂肪酸の配合量は、10質量%以下であることが好ましく、7質量%以下であることがより好ましい。
【0014】
分岐鎖を有する脂肪酸としては、例えば、イソステアリン酸、18−メチルエイコサン酸などが挙げられ、これらのうちの1種のみを使用してもよく、複数種を併用してもよい。よって、整髪剤組成物の調製時に形成される分岐鎖を有する脂肪酸の塩としては、上記例示の分岐鎖を有する脂肪酸と、先に例示したアルカリとで形成される塩が好ましい。
【0015】
整髪剤組成物において、分岐鎖を有する脂肪酸の配合量は、直鎖脂肪酸、水酸基を有する脂肪酸および分岐鎖を有する脂肪酸を使用し、これらとアルカリとから形成される塩を含有させることによる上記の効果を良好に確保する観点から、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。ただし、整髪剤組成物における分岐鎖を有する脂肪酸の配合量が多すぎると、整セット力の向上効果が小さくなったり、整髪剤組成物の安定性(例えば整髪剤組成物の剤型として好適なクリーム形態の安定性)が低下する傾向がある。よって、分岐鎖を有する脂肪酸の配合量は、10質量%以下であることが好ましく、7質量%以下であることがより好ましい。
【0016】
なお、水酸基を有する脂肪酸とアルカリとを配合した整髪剤組成物では、比較的高温下で貯蔵した場合に増粘する傾向があるが、水酸基を有する脂肪酸とともに、直鎖脂肪酸および分岐鎖を有する脂肪酸を配合して整髪剤組成物を調製することで、高温下での増粘を抑えて、より安定性の高い整髪剤組成物とすることができる。
【0017】
整髪剤組成物においては、本発明の効果をより良好に確保する観点から、整髪剤組成物の調製時に配合する直鎖脂肪酸の量を、水酸基を有する脂肪酸の量や分岐鎖を有する脂肪酸の量よりも多くすることが好ましい。
【0018】
本発明の整髪剤組成に係る脂肪酸以外の油性成分としては、例えば、動植物油脂、ロウ、炭化水素、高級アルコール、エーテル、シリコーン、エステルなどが挙げられる。
【0019】
動植物油脂としては、例えば、エミュー油、馬油、ミンク油などの動物油脂;アボカド油、アーモンド油、オリーブ油、ゴマ油、コメヌカ油、サフラワー油、大豆油、トウモロコシ油、ナタネ油、ローズヒップ油、マカデミアナッツ油、パーシック油、綿実油、月見草油、メドウホーム油、ヒマワリ油、ブドウ種子油、パーム油、ヒマシ油、グレープシード油、ヤシ油、硬化油、シア脂などの植物油脂;が挙げられる。ロウとしては、例えば、ホホバ油、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、コメヌカロウ、ラノリン、ミツロウ、オレンジラフィー油などが挙げられる。炭化水素としては、例えば、α−オレフィンオリゴマー、セレシン、軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、スクワラン、パラフィン、流動パラフィン、流動イソパラフィン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックスなどが挙げられる。
【0020】
高級アルコールとしては、例えば、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セタノール、ステアリルアルコ−ル、オクチルドデカノール、ベヘニルアルコール、イソセチルアルコール、イソステアリルアルコール、ヘキサデカノール、デシルテトラデカノール、テトラデシルオクタデカノール、セテアリルアルコール、オレイルアルコール、ホホバアルコール、ラノリンアルコール、コレステロール、フィトステロールなどが挙げられ、炭素数が12〜24のアルコールが好ましい。エーテルとしては、例えば、イソステアリルグリセリルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、グリセリンモノセチルエーテル、モノオレイルグリセリルエーテルなどが挙げられる。シリコーンとしては、例えば、ジメチルシリコーン、環状シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、ポリグリセリン変性シリコーン、メチルフェニルシリコーン、ジメチコノールなどが挙げられる。
【0021】
エステルとしては、例えば、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ブチル、パルミチン酸イソプロピル、オレイン酸エチル、リノール酸エチル、リノール酸イソプロピル、カプリル酸セチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸デシル、オレイン酸デシル、オレイン酸オレイル、ラウリン酸イソステアリル、ミリスチン酸イソトリデシル、ミリスチン酸2−ヘキシルデシル、ミリスチン酸イソステアリル、ミリスチン酸2−オクチルドデシル、パルミチン酸2−エチルヘキシル、パルミチン酸2−ヘキシルデシル、パルミチン酸イソステアリル、ステアリン酸2−ジエチルヘキシル、ステアリン酸2−ヘキシルデシル、オレイン酸イソデシル、オレイン酸オクチルドデシル、イソステアリン酸エチル、イソステアリン酸イソプロピル、2−エチルヘキサン酸セチル、2−エチルヘキサン酸セトステアリル、イソステアリン酸ヘキシル、ジ2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジオレイン酸エチレングリコール、ジカプリル酸プロピレングリコール、ジ(カプリル・カプリン酸)プロピレングリコール、ジカプリン酸プロピレングリコール、ジオレイン酸プロピレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジ2−エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、トリカプリル酸グリセリル、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル、トリイソパルミチン酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、トリ2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、テトライソステアリン酸ペンタエリスリトール、ネオペンタン酸2−オクチルドデシル、2−エチルヘキサン酸2−ヘキシルデシル、2−エチルヘキサン酸イソステアリル、イソノナン酸2−エチルヘキシル、ジメチルオクタン酸2−ヘキシルデシル、ジメチルオクタン酸2−オクチルドデシル、イソパルミチン酸2−エチルヘキシル、イソステアリン酸2−ヘキシルデシル、イソステアリン酸イソステアリル、イソステアリン酸2−オクチルドデシル、乳酸ラウリル、乳酸2−オクチルドデシル、クエン酸トリエチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル、クエン酸トリ2−エチルヘキシル、クエン酸トリイソセチル、クエン酸トリ2−オクチルドデシル、リンゴ酸ジステアリル、コハク酸ジ2−エチルヘキシル、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジ2−エチルヘキシル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジ2−エチルヘキシル、セバシン酸ジブチルオクチル、12−ステアロイルヒドロキシステアリン酸イソセチル、12−ステアロイルヒドロキシステアリン酸ステアリル、12−ステアロイルヒドロキシステアリン酸イソステアリルなどの常温(25℃)で液状のエステル;ステアリン酸エチル、ステアリン酸ブチル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸セチル、パルミチン酸セチル、ステアリン酸ステアリル、2−エチルヘキサン酸ステアリル、乳酸セチル、ステアリン酸コレステリル、オレイン酸コレステリルなどの常温で固体のエステル;などが挙げられる。
【0022】
脂肪酸以外の油性成分は、上記例示のものを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なお、整髪剤組成物のセット力をより高める観点からは、常温で固体の油性成分を使用することが好ましく、常温で固体のロウや炭化水素を使用することがより好ましい。また、整髪剤組成物を毛髪に塗布する際に、例えば、手のひらでのばしやすくなるなど、使用時の操作性をより高めることができ、更に塗布後の毛髪のなめらかさをより高め得る点で、常温で液状の油性成分を使用することが好ましく、例えば、常温で液状のエステル、植物油、炭化水素、シリコーンを使用することがより好ましい。
【0023】
脂肪酸以外の油性成分の、整髪剤組成物における配合量は、整髪剤組成物の剤型などに応じて適宜設定することができるが、通常、1質量%以上94.5質量%以下であり、2質量%以上であることがより好ましく、また、60質量%以下であることがより好ましい。
【0024】
本発明の整髪剤組成物に、直鎖脂肪酸、水酸基を有する脂肪酸および分岐鎖を有する脂肪酸とともに配合して、直鎖脂肪酸の塩、水酸基を有する脂肪酸の塩および分岐鎖を有する脂肪酸の塩を形成する場合に用いられるアルカリとしては、例えば、アミノエチルプロパノール、トリエタノールアミン、アルギニンなどの有機アルカリ;アルカリ金属の水酸化物(水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなど)、アンモニアなどの無機アルカリ;が挙げられる。これらのアルカリは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよいが、これらの中でも、セット力がより向上する点で、有機アルカリと無機アルカリとを併用することが好ましい。よって、直鎖脂肪酸の塩、水酸基を有する脂肪酸の塩および分岐鎖を有する脂肪酸の塩も、直鎖脂肪酸、水酸基を有する脂肪酸または分岐鎖を有する脂肪酸に、有機アルカリと無機アルカリとを反応させて得られるものが好ましい。
【0025】
整髪剤組成物の調製時に配合するアルカリの量は、直鎖脂肪酸、水酸基を有する脂肪酸および分岐鎖を有する脂肪酸の配合量や、整髪剤組成物の剤型に応じて適宜設定することができるが、例えば、0.05〜2質量%とすることが好ましい。
【0026】
本発明の整髪剤組成物は、媒体として水を使用する。なお、整髪剤組成物に配合される各種成分は、媒体である水に溶解していてもよく、分散していてもよい。整髪剤組成物における水の好適配合量は、整髪剤組成物の剤型などに応じて変動するが、通常、0.5〜90質量%である。
【0027】
整髪剤組成物の調製には、直鎖脂肪酸、水酸基を有する脂肪酸および分岐鎖を有する脂肪酸とアルカリとを使用するのではなく、直鎖脂肪酸の塩、水酸基を有する脂肪酸の塩および分岐鎖を有する脂肪酸の塩を用いることもできる。その場合、整髪剤組成物における直鎖脂肪酸の塩、水酸基を有する脂肪酸の塩および分岐鎖を有する脂肪酸の塩の配合量は、上記好適配合量の直鎖脂肪酸、上記好適配合量の水酸基を有する脂肪酸および上記好適配合量の分岐鎖を有する脂肪酸を混合し、これに上記好適配合量のアルカリを添加して形成され得る直鎖脂肪酸の塩の量、水酸基を有する脂肪酸の塩の量および分岐鎖を有する脂肪酸の塩の量に相当する量とすることが好ましい。
【0028】
本発明の整髪剤組成物は、乳化剤として機能する各種脂肪酸の塩、脂肪酸以外の油性成分および水を含有しており、乳化物としての形態を有しているが、その乳化安定性をより高める観点から、ノニオン性界面活性剤、多価アルコールまたは水溶性高分子を配合することが好ましい。
【0029】
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンラノリン、ポリオキシエチレンラノリンアルコール、ポリオキシエチレンソルビットミツロウ、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンステロール、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、レシチンなどが挙げられる。なお、上記の各ノニオン性界面活性剤におけるエチレンオキサイドの付加モル数は2〜50モルであることが好ましい。また、ポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンベヘニルエーテルなどが挙げられる。更に、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、およびショ糖脂肪酸エステルにおける脂肪酸としては、例えば、ウンデシレン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、ベヘン酸、リノール酸などが挙げられる。
【0030】
上記例示の各ノニオン性界面活性剤の中でも、その効果がより良好である点で、ポリオキシエチレンアルキルエーテルが好ましい。整髪剤組成物におけるノニオン性界面活性剤の配合量は、例えば、0.5〜10質量%であることが好ましい。
【0031】
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、1,3−ブチレングリコールなどが挙げられる。なお、整髪剤組成物に多価アルコールを用いることで、塗布後の毛髪の保湿効果を高め、よりしっとりとした質感の毛髪に仕上げることができるようにもなる。整髪剤組成物における多価アルコールの配合量は、例えば、0.1〜10質量%であることが好ましい。
【0032】
水溶性高分子としては、例えば、天然高分子、天然高分子誘導体、合成高分子などが挙げられる。天然高分子としては、例えば、カラギーナン、寒天、キサンタンガム、ゼラチン、ペクチン、タマリンド種子多糖類、ローカストビーンガム、グアーガム、アラビアガム、トラガカントガム、ヒアルロン酸またはその塩、キトサンなどが挙げられる。天然高分子誘導体としては、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カチオン化セルロース、デンプンリン酸エステル、デンプングルコール酸ナトリウム、両性デンプン、カチオン化グアーガム、カルボキシメチル・ヒドロキシプロピル化グアーガム、ヒドロキシプロピル化グアーガムなどが挙げられる。合成高分子としては例えば、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体などが挙げられる。整髪剤組成物における水溶性高分子の配合量は、例えば、0.05〜5質量%であることが好ましい。
【0033】
更に、整髪剤組成物には、セット力の更なる向上を図る目的で、セット樹脂や平均重合度が2000以上の高重合のポリエチレングリコールを配合することもできる。セット樹脂としては、例えば、ポリアクリル酸アミド、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレンイミン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、アクリル酸ヒドロキシエチル・アクリル酸ブチル・アクリル酸メトキシメチル共重合体、アクリル酸ヒドロキシエチル・アクリル酸メトキシエチル共重合体、アクリル酸・アクリル酸アミド・アクリル酸エチル共重合体、アクリル酸アルキル共重合体、アクリル酸オクチルアミド・アクリル酸ヒドロキシプロピル・メタクリル酸ブチルアミノエチル共重合体、アクリル酸ブチル・メタクリル酸ヒドロキシエチル共重合体、アクリル樹脂アルカノールアミン、アクリル酸アルキルエステル・メタクリル酸アルキルエステル・ジアセトンアクリルアミド・メタクリル酸共重合体、アクリル酸ヒドロキシエチル・アクリル酸ブチル・アクリル酸メトキシエチル共重合体、アクリル酸アルキル・酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル・ビニルピロリドン共重合体、ビニルメチルエーテル・マレイン酸エチル共重合体、ビニルメチルエーテル・マレイン酸ブチル共重合体、酢酸ビニル・クロトン酸共重合体、N−メタクリロイルオキシエチルN,N−ジメチルアンモニウム−N−メチルカルボキシベタイン・メタクリル酸アルキル共重合体、ビニルピロリドン・N,N−ジメチルアミノエチルメタクリル酸共重合体ジエチル硫酸塩、ポリウレタン−14などのウレタン系樹脂などが挙げられる。
【0034】
整髪剤組成物において、セット樹脂の配合量は、例えば、0.05〜5質量%であることが好ましく、また、高重合のポリエチレングリコールの配合量は、例えば、0.01〜1質量%であることが好ましい。
【0035】
また、本発明の整髪剤組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、糖類、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、有機または無機粉体、植物・海藻エキス、アミノ酸、ペプチドといった通常の整髪剤などの毛髪化粧料を始めとする各種化粧料に配合されている成分を、必要に応じて適宜配合することもできる。
【0036】
本発明の整髪剤組成物の剤型については、特に制限はなく、上記の各種成分の配合量を調整して、ワックス、クリーム、ローション、乳液、フォームなどの剤型とすることができる。
【0037】
本発明の整髪剤組成物は、ウェット状態(例えばタオルドライ後)の毛髪に塗布した後、毛髪を乾燥させる方法で使用してもよく、ドライ状態の毛髪に塗布して使用してもよい。
【実施例】
【0038】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は、本発明を制限するものではない。なお、以下の実施例などにおいて、「%」は「質量%」を意味している。また、整髪剤組成物の配合量としては、全体で100%となるように各成分の配合量を%で示し、後記の表1、表2および表4中ではその%の表示を省略し、配合量を表す数値のみで表示する。
【0039】
実施例1〜6および比較例1〜4
実施例1〜6および比較例1〜4の整髪剤組成物(クリーム状の整髪剤組成物)を、表1および表2に示す組成で調製した。なお、実施例1〜6および比較例1〜4の整髪剤組成物中においては、配合した直鎖脂肪酸、水酸基を有する脂肪酸および分岐鎖を有する脂肪酸と、アルカリとから、直鎖脂肪酸の塩、水酸基を有する脂肪酸の塩、および分岐鎖を有する脂肪酸の塩が形成されている。
【0040】
【表1】

【0041】
【表2】

【0042】
表1および表2(更には後記の表4)における水の欄の「計100とする」とは、整髪剤組成物を構成する水以外の各成分の合計量に、水の量を加えて100%となるようにしたことを意味している。
【0043】
実施例1〜6および比較例1〜4の整髪剤組成物について、下記の方法によってセット力並びに塗布後の毛髪の指通り性およびなめらかさと、安定性とを評価した。これらの結果を表3に示す。
【0044】
(セット力並びに塗布後の毛髪の指通り性およびなめらかさの評価)
評価用ウィッグを複数用意し、各ウィッグに、ミルボン社製「プレジュームCMCウェーブC/T−Nタイプ(商品名)」を使用し、直径20mmのロッドを用いてパーマネントウェーブ処理を施した。その後、それぞれのウィッグの毛髪が濡れた状態(タオルドライ後)で、左半分の毛髪に比較例1の整髪剤組成物を塗布し、右半分の毛髪には、実施例1〜6および比較例2〜4の各整髪剤組成物を塗布した。なお、各整髪剤組成物の毛髪への塗布は、整髪剤組成物を、それぞれパール1粒程度取り、手でのばして毛髪に塗布する方法で行った。各整髪剤組成物を塗布したウィッグは、ドライヤーで乾燥して仕上げた。
【0045】
乾燥後のウィッグの右半分の毛髪におけるセット力、指通り性およびなめらかさについて、比較例1の整髪剤組成物を塗布した左半分の毛髪におけるそれらを基準として、10名の評価者のそれぞれが、下記評価基準に従って点数付けし、全評価者の点数を合計して評価した。
【0046】
<セット力の評価基準>
比較例1の整髪剤組成物よりもセット力が優れている・・・2点。
比較例1の整髪剤組成物とセット力が同等である・・・1点。
比較例1の整髪剤組成物よりもセット力が劣っている・・・0点。
【0047】
<毛髪の指通り性およびなめらかさの評価基準>
比較例1の整髪剤組成物で処理した毛髪よりも、指通り性およびなめらかさが良好である・・・2点。
比較例1の整髪剤組成物で処理した毛髪と、指通り性およびなめらかさが同等である・・・1点。
比較例1の整髪剤組成物で処理した毛髪よりも、指通り性およびなめらかさが劣っている・・・0点。
【0048】
(安定性評価)
実施例1〜6および比較例1〜4の整髪剤組成物のそれぞれを、100mLのスクリュー管に、その8割を満たす程度に入れ、45℃で1週間放置した後、各スクリュー管を常温に戻し、各整髪剤組成物の状態を評価した。評価に際しては、分離の有無や色の変化を目視観察し、また、放置前からの粘度の変化を、スクリュー管から整髪剤組成物を取り出すことで調べた。なお、表3では、特に粘度の増大について、「硬化」と表現している。
【0049】
【表3】

【0050】
表3から明らかなように、実施例1〜6の整髪剤組成物は、直鎖脂肪酸および分岐鎖を有する脂肪酸を配合しておらず、水酸基を有する脂肪酸のみを配合した比較例1の整髪剤組成物よりもセット力が優れており、また、実施例1〜6の整髪剤組成物により処理した毛髪は、比較例1の整髪剤組成物で処理した毛髪よりも、指通り性およびなめらかさが良好である。なお、水酸基を有する脂肪酸および分岐鎖を有する脂肪酸を配合していない比較例2の整髪剤組成物、分岐鎖を有する脂肪酸を配合していない比較例3の整髪剤組成物、および水酸基を有する脂肪酸を配合していない比較例4の整髪剤組成物は、実施例1〜6の整髪剤組成物よりもセット力が劣っており、また、これらの整髪剤組成物で処理した毛髪は、実施例1〜6の整髪剤組成物で処理した毛髪よりも、指通り性およびなめらかさが劣っている。
【0051】
更に、実施例1〜6の整髪剤組成物は、比較例1〜4の整髪剤組成物に比べて、粘度の増大(硬化)やクリームの状態の変化が抑えられており、安定性(経時安定性)が良好である。
【0052】
実施例7
次に整髪剤組成物のより具体的な処方例として、実施例7の整髪剤組成物を、表4に示す組成で調製し、実施例1などと同様にして、セット力、塗布後の毛髪の指通り性およびなめらかさ、並びに安定性の各評価を行った。
【0053】
【表4】

【0054】
なお、表4に記載の「POE(5.5)セチルアルコール」および「POE(10)セチルアルコール」における「POE」は「ポリオキシエチレン」の略であり、POEの後の括弧内の数値は、酸化エチレンの平均付加モル数である。更に、表4における「セット樹脂」とは、アクゾノーベル社製の「DynamX(商品名)」であり、ポリウレタン−14を19.6%、アクリレーツコポリマーAMPを8.4%、エタノールを25%、および精製水を47.0%含んでいる。
【0055】
実施例7の整髪剤組成物においても、実施例1〜6の整髪剤組成物と同様に、セット力、塗布後の毛髪の指通り性およびなめらかさ、並びに安定性(経時安定性)が良好であり、これらの各効果がバランスよく確保できていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、直鎖脂肪酸、水酸基を有する脂肪酸、分岐鎖を有する脂肪酸、脂肪酸以外の油性成分、アルカリおよび水が配合されたことを特徴とする整髪剤組成物。
【請求項2】
アルカリとして、有機アルカリと無機アルカリとが併用されたものである請求項1に記載の整髪剤組成物。
【請求項3】
少なくとも、直鎖脂肪酸の塩、水酸基を有する脂肪酸の塩、分岐鎖を有する脂肪酸の塩、脂肪酸以外の油性成分、および水を含有することを特徴とする整髪剤組成物。
【請求項4】
直鎖脂肪酸の塩、水酸基を有する脂肪酸の塩および分岐鎖を有する脂肪酸の塩は、直鎖脂肪酸、水酸基を有する脂肪酸または分岐鎖を有する脂肪酸と、有機アルカリおよび無機アルカリとによって形成されたものである請求項3に記載の整髪剤組成物。

【公開番号】特開2011−102243(P2011−102243A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−256613(P2009−256613)
【出願日】平成21年11月10日(2009.11.10)
【出願人】(592255176)株式会社ミルボン (138)
【Fターム(参考)】