説明

文字ノイズ除去装置、文字ノイズ除去方法、文字ノイズ除去プログラム

【課題】非定型な形状の背景ノイズを除去できるノイズ除去装置等を提供する。
【解決手段】文字ノイズ除去装置は、画像から文字ノイズに相当する領域である文字ノイズ領域を検出する文字ノイズ領域検出手段26と、文字ノイズ領域の内外に複数の濃度変換領域層を設定する濃度変換領域層決定手段27と、濃度変換領域層含まれる画素に対して、注目画素の参照領域として、該画素が属する濃度変換領域層と同一の濃度変換領域層内の近傍画素群を設定し、局所的画像強調を施して濃度変換画像を生成する濃度変換手段28とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピュータを用いて、遺留指紋画像等の背景ノイズの多いディジタル画像を処理するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、縞紋様状の多数の隆線によって構成される指紋は終生不変及び万人不同という2つの大きな特徴をもっているため、古くから犯罪捜査の手段として利用されている。特に、犯罪現場に残された遺留指紋を用いた照合は効果的な捜査手段である。近年、多くの警察機関では、コンピュータを利用した指紋照合システムが導入され、遺留指紋照合が実施されている。
【0003】
しかし、遺留指紋の画像は、低品質でノイズがあるものが多いため、鑑定官による鑑定も難しく、また、自動化の大きな阻害要因になっていた。遺留指紋のノイズにはいろいろな種類のものがあるが、その中には文字に代表される非定型な形状の背景ノイズ(以下、このようなノイズを「文字ノイズ」という)がある。図4は、遺留指紋の例であるが、この例のように手書き文字の背景ノイズの上に指紋隆線が残留していることがある。従来技術では、このような文字ノイズを指紋隆線と間違えて抽出しやすいので、指紋隆線のみを強調することや抽出することは困難であった。
【0004】
背景パタンノイズを除去する従来技術としては、フーリエ変換の応用が一般的である。この技術は、例えば、非特許文献1に提案されている。
ところが、この技術を指紋画像の文字ノイズ除去に適用する場合、文字ノイズが周期的に現れていることが必要であり、その効果は限定的である。また、文字ノイズの周期が、指紋隆線の周期と似ている場合は、指紋隆線をも消失させてしまうので、その効果は限定的である。更に、ノイズ除去処理において、文字ノイズがない領域の指紋隆線濃度を劣化させてしまうので、その効果は限定的である。
【0005】
図13は、図4の指紋画像に対して、この従来技術で文字ノイズを除去したものである。この指紋画像例のように文字ノイズの周期性が弱い場合には、その除去性能は十分ではない。また、指紋隆線濃度も劣化させていることが分かる。
【0006】
また、従来の指紋隆線の強調方法としては、局所的な隆線の方向や周期性を抽出し、抽出された方向と周期性に合致したフィルタ処理で強調する方策が多々提案されている。この方法は、例えば、非特許文献2や、特許文献1に提案されている。
ところが、このような従来技術では、文字ノイズの影響で隆線の方向や周期性を正しく抽出できない場合には有効でなく、問題解決にならない。
【0007】
一方、文字ノイズ領域を適切に抽出できても、その領域の濃度変換方法として、従来の手法を用いても、文字ノイズを除去できないことが多い。
図14(a)は、図4の指紋画像に対して、図7に示す文字ノイズ領域の画素群濃度を、局所的ヒストグラム均等化法で濃度変換した画像である。この例を見ればわかるように、文字ノイズ領域内部が濃く変換され、エッジ近傍が薄く変換されるので、文字ノイズの除去は不十分なことがわかる。
【0008】
図14 (b) は、図4の指紋画像に対して、図7に示す文字ノイズ領域の画素群濃度を、文字ノイズ領域外側の近傍画素群の中で、紙地と想定される低い濃度値に置き換えたものである。この例を見ればわかるように、文字ノイズ領域内部が、ほぼ一様な濃度値に変換されるため隆線情報が除去されるという欠点がある他、文字ノイズ除去としても不十分なことがわかる。また、人工的かつ不自然な画像に見えることも欠点である
【0009】
【特許文献1】特開2002−99912号公報
【非特許文献1】キャノンら、“Background Pattern Removal by Power Spectral Filtering”、 Applied Optics、1983年3月15日
【非特許文献2】Hongら、”Fingerprint Image Enhancement: Algorithm and Performance Evaluation (1998)”、IEEE Transactions on Pattern Analysis and Machine Intelligence、1998年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記のように、従来の技術では、文字ノイズ等の非定型な形状の背景ノイズを適切に抽出して除去することができなかった。
そこで、本発明は、文字ノイズに代表される非定型な形状の背景ノイズを除去できるノイズ除去装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の、文字ノイズ除去装置は、画像から文字ノイズに相当する領域である文字ノイズ領域を検出する文字ノイズ領域検出手段と、文字ノイズ領域の内外に複数の濃度変換領域層を設定する濃度変換領域層決定手段と、濃度変換領域層に含まれる画素に対して、注目画素の参照領域として、該画素が属する濃度変換領域層と同一の濃度変換領域層内の近傍画素群を設定し、局所的画像強調を施して濃度変換画像を生成する濃度変換手段とを備えている(請求項1ないし請求項6)。ここで、「文字ノイズ」は、文字等の非定型な背景ノイズのことを言う。
【0012】
上記文字ノイズ除去装置によれば、文字ノイズから文字ノイズ領域を検出し、その文字ノイズ領域の内外に濃度変換領域層を設定し、注目画素が属する濃度変換領域層と同一の濃度変換領域層内の近傍画素群に参照領域を限定して、局所的画像強調方法(局所的ヒストグラム均等化法あるいは局所的コントラストストレッチ法)を用いて隆線を強調することで文字ノイズを除去する。
この結果、指紋隆線の強調や抽出は容易になる。遺留指紋に適用した場合には、文字ノイズが除去され、隆線が強調された指紋隆線を表示することができるので鑑定官の鑑定が容易になる。また、文字ノイズが除去された画像を用いて特徴抽出できるので、より正確な特徴量を抽出できることになり指紋照合精度も向上する。
【0013】
上記文字ノイズ除去装置において、濃度変換手段は、注目画素が属する濃度変換領域層と同一の濃度変換領域層に含まれる画素のうち注目画素からの距離が指紋または掌紋の平均隆線間隔に相当する画素数の1.5倍程度以内の近傍画素群を参照領域とするようにしてもよい(請求項2)。ここで、「隆線間隔」は、隣り合う隆線の中心同士の間の距離(ピッチ)のことを言う。
このようにすれば、参照領域は注目画素からの距離が、ある程度斜めの交差した指紋隆線の変動を包含する最小の距離以内の近傍領域に限定されるので、効果的に文字ノイズを除去することができる。なお、指紋の平均隆線間隔は実距離で0.5mm程度であるから、平均隆線間隔の1.5倍に相当する画素数は画像の解像度が500dpiの場合約15画素となる。掌紋の場合は、その25%増しの約20画素となる。
【0014】
上記文字ノイズ除去装置において、文字ノイズ領域検出手段は、その二値化閾値で画像を二値化した場合、二値画像中に隆線強度が所定の隆線強度閾値以上となり、かつ、指紋隆線部が黒画素として二値化された比率である黒画素比率が所定の黒画素比率閾値よりも小さくなる局所領域が存在する最適二値化閾値を求め、この最適二値化閾値で画像を二値化した最適二値画像から孤立した小さい領域を除去することで文字ノイズ領域を検出するようにしてもよい(請求項3)。
このようにして検出された文字ノイズ領域には、指紋隆線部を含む危険性が小さくなるので、指紋隆線部を誤って消失させる危険性が小さくなる。
【0015】
上記文字ノイズ除去装置において、文字ノイズ領域検出手段は、画像を複数の二値化閾値で二値化して得られた複数の二値画像を解析し、それぞれの二値画像において局所領域の隆線領域評価値を算出し、二値画像全体における最大の隆線領域評価値が予め定められた評価値閾値以上になる二値化閾値最大値と局所領域を特定し、複数の二値画像のうち二値化閾値最大値よりも大きな二値化閾値で二値化されかつ、特定された局所領域での黒画素比率が黒画素比率閾値より小さいものを特定し、特定した二値画像を生成するために用いられた二値化閾値のうち最小のものを最適二値化閾値とするようにしてもよい(請求項4)。
このようにして検出された文字ノイズ領域には、指紋隆線部を含む危険性が小さくなるので、指紋隆線部を誤って消失させる危険性が小さくなる。
【0016】
上記文字ノイズ除去装置において、画像に局所的画像強調を施して強調画像を生成する画像強調手段と、
濃度変換領域層に含まれる画素においては、強調画像と濃度変換画像の2つの画像の濃度値の小さいほうを当該画素の濃度値とし、濃度変換領域層に含まれない画素においては、強調画像の濃度値を当該画素の濃度値として、強調画像と濃度変換画像とを合成して合成画像を生成する画像合成手段を備え、濃度変換手段と画像強調手段は同様の方法で局所的画像強調を行うようにしてもよい(請求項5)。
このようにすれば、文字ノイズ領域内外の濃度レベルが平準化された合成画像を生成することができる。
【0017】
上記文字ノイズ除去装置において、画像は、全体画像を文字ノイズ濃度に応じて複数の部分画像に分割したものであり、各部分画像について生成した濃度変換画像または合成画像を合成して全体画像についての濃度変換画像または合成画像を生成するようにしてもよい(請求項6)。
このようにすれば、文字ノイズ濃度が画像全体で一様ではなく、部分的に変化している場合でも文字ノイズを除去することができる。
【0018】
本発明の、文字ノイズ除去方法は、画像から文字ノイズに相当する領域である文字ノイズ領域を検出する文字ノイズ領域検出工程と、文字ノイズ領域の内外に複数の濃度変換領域層を設定する濃度変換領域層決定工程と、濃度変換領域層含まれる画素に対して、注目画素の参照領域として、該画素が属する濃度変換領域層と同一の濃度変換領域層内の近傍画素群を設定し、局所的画像強調を施して濃度変換画像を生成する濃度変換工程とにより文字ノイズの除去を行う(請求項7ないし請求項12)。
【0019】
上記文字ノイズ除去方法によれば、文字ノイズから文字ノイズ領域を検出し、その文字ノイズ領域の内外に濃度変換領域層を設定し、注目画素が属する濃度変換領域層と同一の濃度変換領域層内の近傍画素群に参照領域を限定して、局所的画像強調方法を用いて隆線を強調することで文字ノイズを除去する。
この結果、指紋隆線の強調や抽出は容易になる。遺留指紋に適用した場合には、文字ノイズが除去され、隆線が強調された指紋隆線を表示することができるので鑑定官の鑑定が容易になる。また、文字ノイズが除去された画像を用いて特徴抽出できるので、より正確な特徴量を抽出できることになり指紋照合精度も向上する。
【0020】
上記文字ノイズ除去方法において、濃度変換工程では、注目画素が属する濃度変換領域層と同一の濃度変換領域層に含まれる画素のうち注目画素からの距離が指紋または掌紋の平均隆線間隔に相当する画素数の1.5倍程度以内の近傍画素群を参照領域とするようにしてもよい(請求項8)。
このようにすれば、参照領域は注目画素からの距離が、ある程度斜めの交差した指紋隆線の変動を包含する最小の距離以内の近傍領域に限定されるので、効果的に文字ノイズを除去することができる。
【0021】
上記文字ノイズ除去方法において、文字ノイズ領域検出工程では、その二値化閾値で画像を二値化した場合、二値画像中に隆線強度が所定の隆線強度閾値以上となり、かつ、指紋隆線部が黒画素として二値化された比率である黒画素比率が所定の黒画素比率閾値よりも小さくなる局所領域が存在する最適二値化閾値を求め、この最適二値化閾値で画像を二値化した最適二値画像から孤立した小さい領域を除去することで文字ノイズ領域を検出するようにしてもよい(請求項9)。
このようにして検出された文字ノイズ領域には、指紋隆線部を含む危険性が小さくなるので、指紋隆線部を誤って消失させる危険性が小さくなる。
【0022】
上記文字ノイズ除去方法において、文字ノイズ領域検出で工程は、画像を複数の二値化閾値で二値化して得られた複数の二値画像を解析し、それぞれの二値画像において局所領域の隆線領域評価値を算出し、二値画像全体における最大の隆線領域評価値が予め定められた評価値閾値以上になる二値化閾値最大値と局所領域を特定し、複数の二値画像のうち二値化閾値最大値よりも大きな二値化閾値で二値化されかつ、特定された局所領域での黒画素比率が黒画素比率閾値より小さいものを特定し、特定した二値画像を生成するために用いられた二値化閾値のうち最小のものを最適二値化閾値とするようにしてもよい(請求項10)。
このようにして検出された文字ノイズ領域には、指紋隆線部を含む危険性が小さくなるので、指紋隆線部を誤って消失させる危険性が小さくなる。
【0023】
上記文字ノイズ除去方法において、画像に局所的画像強調を施して強調画像を生成する画像強調工程と、
濃度変換領域層に含まれる画素においては、強調画像と濃度変換画像の2つの画像の濃度値の小さいほうを当該画素の濃度値とし、濃度変換領域層に含まれない画素においては、強調画像の濃度値を当該画素の濃度値として、強調画像と濃度変換画像とを合成して合成画像を生成する画像合成工程を備え、濃度変換工程と画像強調工程では同様の方法で局所的画像強調を行うようにしてもよい(請求項11)。
このようにすれば、文字ノイズ領域内外の濃度レベルが平準化された合成画像を生成することができる。
【0024】
上記文字ノイズ除去方法において、画像は、全体画像を文字ノイズ濃度に応じて複数の部分画像に分割したものであり、各部分画像について生成した濃度変換画像または合成画像を合成して全体画像についての濃度変換画像または合成画像を生成するようにしてもよい(請求項12)。
このようにすれば、文字ノイズ濃度が画像全体で一様ではなく、部分的に変化している場合でも文字ノイズを除去することができる。
【0025】
本発明の、文字ノイズ除去プログラムは、画像から文字ノイズに相当する領域である文字ノイズ領域を検出する文字ノイズ領域検出処理と、文字ノイズ領域の内外に複数の濃度変換領域層を設定する濃度変換領域層決定処理と、濃度変換領域層含まれる画素に対して、注目画素の参照領域として、該画素が属する濃度変換領域層と同一の濃度変換領域層内の近傍画素群を設定し、局所的画像強調を施して濃度変換画像を生成する濃度変換処理とをコンピュータに実行させる(請求項13ないし請求項18)。
【0026】
上記文字ノイズ除去プログラムによれば、文字ノイズから文字ノイズ領域を検出し、その文字ノイズ領域の内外に濃度変換領域層を設定し、注目画素が属する濃度変換領域層と同一の濃度変換領域層内の近傍画素群に参照領域を限定して、局所的画像強調方法を用いて隆線を強調することで文字ノイズを除去する。
この結果、指紋隆線の強調や抽出は容易になる。遺留指紋に適用した場合には、文字ノイズが除去され、隆線が強調された指紋隆線を表示することができるので鑑定官の鑑定が容易になる。また、文字ノイズが除去された画像を用いて特徴抽出できるので、より正確な特徴量を抽出できることになり指紋照合精度も向上する。
【0027】
上記文字ノイズ除去プログラムにおいて、濃度変換処理では、注目画素が属する濃度変換領域層と同一の濃度変換領域層に含まれる画素のうち注目画素からの距離が指紋または掌紋の平均隆線間隔に相当する画素数の1.5倍程度以内の近傍画素群を参照領域とするようにしてもよい(請求項14)。
このようにすれば、参照領域は注目画素からの距離が、ある程度斜めの交差した指紋隆線の変動を包含する最小の距離以内の近傍領域に限定されるので、効果的に文字ノイズを除去することができる。
【0028】
上記文字ノイズ除去プログラムにおいて、文字ノイズ領域検出処理では、その二値化閾値で画像を二値化した場合、二値画像中に隆線強度が所定の隆線強度閾値以上となり、かつ、指紋隆線部が黒画素として二値化された比率である黒画素比率が所定の黒画素比率閾値よりも小さくなる局所領域が存在する最適二値化閾値を求め、この最適二値化閾値で画像を二値化した最適二値画像から孤立した小さい領域を除去することで文字ノイズ領域を検出するようにしてもよい(請求項15)。
このようにして検出された文字ノイズ領域には、指紋隆線部を含む危険性が小さくなるので、指紋隆線部を誤って消失させる危険性が小さくなる。
【0029】
上記文字ノイズ除去プログラムにおいて、文字ノイズ領域検出で処理は、画像を複数の二値化閾値で二値化して得られた複数の二値画像を解析し、それぞれの二値画像において局所領域の隆線領域評価値を算出し、二値画像全体における最大の隆線領域評価値が予め定められた評価値閾値以上になる二値化閾値最大値と局所領域を特定し、複数の二値画像のうち二値化閾値最大値よりも大きな二値化閾値で二値化されかつ、特定された局所領域での黒画素比率が黒画素比率閾値より小さいものを特定し、特定した二値画像を生成するために用いられた二値化閾値のうち最小のものを最適二値化閾値とするようにしてもよい(請求項16)。
このようにして検出された文字ノイズ領域には、指紋隆線部を含む危険性が小さくなるので、指紋隆線部を誤って消失させる危険性が小さくなる。
【0030】
上記文字ノイズ除去プログラムにおいて、画像に局所的画像強調を施して強調画像を生成する画像強調処理と、濃度変換領域層に含まれる画素においては、強調画像と濃度変換画像の2つの画像の濃度値の小さいほうを当該画素の濃度値とし、濃度変換領域層に含まれない画素においては、強調画像の濃度値を当該画素の濃度値として、強調画像と濃度変換画像とを合成して合成画像を生成する画像合成処理をコンピュータに実行させ、濃度変換処理と画像強調処理では同様の方法で局所的画像強調を行うようにしてもよい(請求項17)。
このようにすれば、文字ノイズ領域内外の濃度レベルが平準化された合成画像を生成することができる。
【0031】
上記文字ノイズ除去プログラムにおいて、画像は、全体画像を文字ノイズ濃度に応じて複数の部分画像に分割したものであり、各部分画像について生成した濃度変換画像または合成画像を合成して全体画像についての濃度変換画像または合成画像を生成する処理をコンピュータに実行させるようにしてもよい(請求項18)。
このようにすれば、文字ノイズ濃度が画像全体で一様ではなく、部分的に変化している場合でも文字ノイズを除去することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明は、文字ノイズから文字ノイズ領域を検出し、その文字ノイズ領域の内外に濃度変換領域層を設定し、注目画素が属する濃度変換領域層と同一の濃度変換領域層内の近傍画素群に参照領域を限定して、局所的画像強調方法を用いて隆線を強調することで文字ノイズを除去する。
この結果、指紋隆線の強調や抽出は容易になる。遺留指紋に適用した場合には、文字ノイズが除去され、隆線が強調された指紋隆線を表示することができるので鑑定官の鑑定が容易になる。また、文字ノイズが除去された画像を用いて特徴抽出できるので、より正確な特徴量を抽出できることになり指紋照合精度も向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、図を参照しながら本発明の一実施形態である指紋画像強調装置10の構成と動作について説明する。
(画像強調装置10の構成)
図1は、指紋画像強調装置10の構成を示す機能ブロック図である。
指紋画像強調装置10は、たとえばパーソナルコンピュータであり、指紋画像入力手段11と文字ノイズ除去手段12と指紋画像出力手段13とを備えている。
指紋画像入力手段11は、たとえばセンサやスキャナで読み取られた指紋画像をディジタル化して入力する。また、既にディジタル化された画像をファイルとして入力するようにしても良い。
文字ノイズ除去手段12は、指紋画像入力手段11で入力された指紋画像から文字ノイズを除去するとともに隆線濃度を強調する機能を備えている。
指紋画像出力手段13は、前記文字ノイズ除去手段12で処理された指紋画像を、モニタやプリンタ等に出力する。また、文字ノイズ除去手段12で処理された指紋画像が、直接、照合装置14等に送信される実施例も考えられる。
【0034】
図2は、文字ノイズ除去手段12の構成を示す機能ブロック図である。
文字ノイズ除去手段12は、データ処理制御手段21とデータ記憶手段(記憶装置)22と画像強調手段23と隆線領域判定手段24と隆線強度算出手段25と文字ノイズ領域検出手段26と濃度変換領域層決定手段27と濃度変換手段28と画像合成手段29とを備えている。
【0035】
データ処理制御手段21は、文字ノイズ除去手段12を構成する前記の各手段の間で行われるデータとメッセージの授受の制御を行う。
【0036】
データ記憶手段22は、たとえばRAM(Random Access Memory)により構成され、文字ノイズ除去手段12を構成する前記の各手段が作業領域として使用する。また、各手段が算出した情報を一時的に格納するためにも使用される。さらに、画像強調手段23や隆線領域判定手段24や隆線強度算出手段25や文字ノイズ領域検出手段26や濃度変換領域層決定手段27や濃度変換手段28や画像合成手段29の各手段が作業領域として使用する。
【0037】
画像強調手段23は、局所的画像強調方法を用いて入力画像の濃度を強調する機能を備えている。
【0038】
隆線領域判定手段24は、入力画像に対して種々の二値化閾値で二値化し、その二値画像の隆線強度より、隆線領域評価値を算出し、その隆線領域評価値より、隆線局所領域を特定し、その局所領域内における黒画素比率を評価することで、指紋隆線成分を含まず、かつ、文字ノイズ領域を多く含む二値画像を出力する機能を備えている。
【0039】
隆線強度算出手段25は、入力画像から指紋隆線らしさの程度を隆線強度として算出する機能を備えている。
【0040】
文字ノイズ領域検出手段26は、二値画像を解析し、指紋隆線成分を除去し、残された領域を文字ノイズ領域として文字ノイズ領域画像に登録する機能を備えている。
【0041】
濃度変換領域層決定手段27は、文字ノイズ領域の外側と内側に複数の濃度変換領域層を決定し、濃度変換領域画像として登録する機能を備えている。
【0042】
濃度変換手段28は、濃度変換領域層が登録された濃度変換領域画像と入力画像を用いて、濃度変換領域層の画素濃度を、該画素が属する濃度変換領域層の近傍画素群を参照領域とする局所的画像強調方法で変換する機能を備えている。
【0043】
画像合成手段29は、画像強調手段23で強調された画像と濃度変換手段28で濃度変換された画像から、濃度変換領域においては各画素における2つの画像の小さい方の濃度値を採用し、濃度変換領域以外の各画素では強調画像の濃度値を採用することで、文字ノイズが除去された画像に合成する機能を備えている。
【0044】
上記の各手段は、指紋画像強調装置10のCPU(Central Processing Unit)がコンピュータプログラムを実行して指紋画像強調装置10のハードウェアを制御することにより実現される。
【0045】
図3は、文字ノイズ除去手段12全体及び指紋画像入力手段11や指紋画像出力手段13の動作を示すフローチャートである。
図3のステップS1において、図2の指紋画像入力手段11は、指紋画像を入力する。これは、たとえば、スキャナで読み取られた画像をディジタル化して入力する。また、既にディジタル化された指紋画像ファイルを入力する実施例も考えられる。この指紋画像例をGIと表記し、その例を図4に示す。
【0046】
図4を始めとする指紋画像例は、センサやスキャナで読み取られた指紋画像がディジタル化された画像である。このような指紋画像例は、米国National Institute of Standards and Technologyで標準化された ANSI/NIST-ITL-1-2000 Data Format for the Interchange of Fingerprint, Facial, & Scar Mark & Tattoo (SMT) Informationに従って、500dpiの解像度でディジタル化されたものである。尚、この標準化ドキュメントは、以下のURLよりダウンロード可能である(2006年7月時点)。
ftp://sequoyah.nist.gov/pub/nist_internal_reports/sp500-245-a16.pdf
【0047】
上記標準では、0から255迄の256階調の濃度値を持つようにディジタル化される。また、濃度値表現は、輝度が大きい(明るい)ほど、数値が大きくなる輝度基準で定義されている。しかし、本発明では、濃度値表現に関しては、濃度が大きいほど数値が大きくなる濃度基準で説明する。従って、濃度が大きい隆線部は255の最大値に近く、濃度が薄い紙地や隆線溝は0に近い濃度値になる。
【0048】
次に、図3のステップS2において、図2の画像強調手段23は、入力画像の濃度を強調し指紋隆線のダイナミックレンジを広げる。強調方式としては、局所的ヒストグラム均等化法あるいは局所的コントラストストレッチ法に代表される局所的画像強調方式を採用する。指紋隆線のダイナミックレンジが狭い領域があっても、局所的画像強調方式を用いて強調すれば、全領域で一様な濃淡変化を持つ画像に変換できる。尚、局所的画像強調方式では、参照する領域のサイズ設定が重要であるが、ここでは半径15画素程度の円を設定した。指紋の平均隆線間隔が約10画素(実距離は0.5ミリ)なので、隆線の濃淡変動を包含する最小の領域として、平均隆線間隔の1.5倍程度を半径とする円は適切である。図4の入力画像に対して上記処理で強調した画像を図5に示す。この指紋画像をGEと表記する。図5を見ると、背景濃度が濃い領域も薄い領域も一様に強調されていることがわかる。
【0049】
以降の処理は、大きく2つの処理に分かれる。前半の処理は、図3のステップS3からステップS8迄で、文字ノイズ領域検出に必要な二値画像を生成する。後半の処理は、図3のステップS9からステップS13迄で、文字ノイズ領域を検出し、次に文字ノイズ領域の画素を濃度変換することで文字ノイズ除去画像を生成する。
【0050】
ここで、文字ノイズ領域検出のために二値画像を生成する理由を説明する。一般に、文字ノイズがある領域の濃度値は、近傍の指紋隆線部(文字ノイズがない領域)の濃度値よりも大きいと想定できる。もし、文字ノイズ領域濃度が、その近傍の指紋隆線部の濃度値よりも小さい場合は、文字ノイズ領域が隆線抽出に及ぼす悪影響は限定的なので、文字ノイズ除去は重要ではない。従って、ここでは、文字ノイズ領域の濃度値が、近傍の指紋隆線部の濃度値よりも大きい指紋画像をターゲットとする。
【0051】
ここで利用する二値画像は、入力画像に対して、ある二値化閾値で単純二値化して生成する。この場合、二値化閾値を小さくするほど、より広い領域で文字ノイズ領域を検出できるが、一方、指紋隆線部も抽出しやすくなる。この例を、図6で説明する。図6(a),(b),(c)は、図4の入力画像を3種類の二値化閾値で二値化した画像である。図6(a)では、二値化閾値が大きいので、指紋隆線をほとんど判別できないのに対して、図6(c)では、二値化閾値が小さいので、指紋隆線を容易に判別できる領域が出現している。
この処理の目標となる二値画像は、指紋隆線部の抽出は最小限に抑え、かつ、なるべく広い範囲で文字領域を検出できる二値画像であり、これを満たすためには、指紋隆線の抽出を最小限に抑えることが可能な最大の二値化閾値(最適二値化閾値)を探し出さなければならない。
【0052】
このため、二値化閾値を最大値より少しずつ小さくしながら二値画像を生成し、その二値画像より隆線強度を算出し、ある一定面積の局所領域で隆線が検出されれば処理を終了して、その二値化閾値lを決定する。次に、決定された二値化閾値lより大きな二値化閾値で生成された二値画像を解析し、隆線領域として検出された局所領域において、黒画素に変換される画素数の比率が予め定められた閾値(例えば10%)より小さくなる最小の二値化閾値tを決定する。この二値化閾値tで二値化された二値画像が目的の二値画像となる。
【0053】
図3のステップS3において、図2の隆線領域判定手段24は、二値化閾値の初期値として最大値255をセットし、図3のステップS4に進む。ステップS4において、図2の隆線領域判定手段24は、入力画像を今回指定された二値化閾値で、白と黒の二値画像に単純に変換するつまり、濃度値が二値化閾値以上ならば黒画素、そうでなければ白画素に変換する。図4の入力画像GIに対して、3種類の二値化閾値185、175、165で二値化した画像を図6に示す。この二値画像をB、あるいは二値化閾値を付記してB(185)等と表示する。
【0054】
次に、図3のステップS5において、図2の隆線強度算出手段25は、二値画像から隆線強度を算出する。隆線強度あるいは隆線確信度を算出する方法は従来技術で実現できる。例えば、特許開2002−288641号(船田)に開示されている従来技術では、局所領域において二次元フーリエ変換を施し、その結果得られたフーリエ変換面のピーク周辺のパワーを基準に隆線強度を計算している。
また、特開昭52−97298号公報(浅井)に示される従来技術では、次のようにして指紋の隆線方向と確信度を抽出している。縞模様画像の方向は、縞と同一方向において濃淡の変動が小さく、縞と直交する方向において変動が大きいことを利用して、予め定められた複数の量子化方向に対して濃淡の変動量の極値を求め、この極値から縞の方向を決定する。次に、方向の確信度(強度)を、抽出された方向に直交する方向の濃淡変動量を基準に算出する。
尚、上記の従来技術は、濃淡画像を前提に記載されているが、濃淡画像の代わりに二値画像を用いても隆線強度を算出できる。
図2の隆線領域判定手段24は、このようにして算出された隆線強度を隆線強度画像としてメモリ登録する。
【0055】
次に、図3のステップS6において、図2の隆線領域判定手段24は、隆線強度画像を解析し、隆線領域評価値を計算する。具体的には、64x64画素程度の局所領域を設定し、その局所領域内における各画素の隆線強度平均値を算出して、隆線領域評価値とする。次に、この局所領域を画像全体に適用し、それぞれの局所領域で隆線領域評価値を算出し、その中で最大となる隆線領域評価値を、その画像の隆線領域評価値として決定する。
図6(c)の符号63の矩形破線は、二値画像B(165)において最大の隆線領域評価値をとる局所領域を示す。この領域は、画像全体の中で、指紋隆線としての確信度が最も大きい領域である。図6(a),(b)の符号61、62は、符号63と同じ局所領域を示している。二値画像B(185)における局所領域61の隆線領域評価値は、隆線が判別できないので0に近くなる。二値画像B(175)の局所領域62の隆線領域評価値は、B(165)の局所領域61よりも小さい値となる。
【0056】
次に、図3のステップS7において、図2の隆線領域判定手段24は、最大の隆線領域評価値が、予め定められた閾値未満か否かを判断する。閾値未満ならば、二値化閾値を下げてステップS4に戻る。二値化閾値は、255の最大値から濃度値を1ずつ下げても良いし、2以上下げても良い。このインターバルを小さくすれば、二値画像生成の精度は向上するが、処理時間は長くなるので、利用されるコンピュータの性能等を勘案して適切なインターバルを決定すれば良い。
最大の隆線領域評価値が、予め定められた閾値以上ならば、今回の二値画像から隆線領域を認識できたと判断できるので、二値化閾値lと最大の隆線領域評価値をとる局所領域をメモリ登録して、図3のステップS8に進む。
例えば、3つの二値画像B(185)、B(175)、B(165)と順に評価したとき、B(165)で初めて局所領域61の隆線領域評価値が閾値以上になるとすると二値化閾値lは165となる。
【0057】
次に、図3のステップS8において、図2の隆線領域判定手段24は、二値化閾値lよりも大きな閾値で二値化された二値画像を解析評価し、指紋隆線部がほとんど二値化されていない二値画像を決定する。この解析評価として、本実施例では、図3のステップS6で最大の隆線領域評価値をとる局所領域における黒画素比率を利用することとする。
図6の二値画像B(185)、B(175)、B(165)を例にとると、B(175)の局所領域62では、隆線部がある程度は二値化されていて閾値以上となるとし、二値画像B(185)の局所領域61では、隆線部がほとんど二値化されていないので閾値未満となるとすると二値化閾値tは185となる。従って、文字ノイズ解析対象となる二値画像は、B(185)と決定され、これをメモリ登録する。
【0058】
次に、図3のステップS9において、図2の文字ノイズ領域検出手段26は、前記ステップS7において出力された二値画像を解析し、指紋隆線成分を除去し、残された領域を文字ノイズ領域として抽出し、文字ノイズ領域画像CAとしてメモリ登録する。
この二値画像には、文字ノイズ領域を含んでいるが、一方、指紋隆線部も残っている。しかし、ここに残っている指紋隆線部は、図6(a)の二値画像B(185)に示される程度で、隆線としての十分な長さや幅はない。従って、簡単なロジックで除去できる。例えば、最大長が6画素程度未満の孤立した黒画素領域を除去するロジックや、ある黒画素を中心に半径4画素程度の近傍画素群を調べ、黒画素比率が50%未満の場合には中心画素を除去するというロジックを組み合わせても良い。
このようにして隆線成分が除去され、文字ノイズ領域のみが残された文字ノイズ領域画像CAを図7に示す。図7のCAと図6(a)のB(185)を比べると、隆線成分が除去されたことがわかる。
【0059】
次に、図3のステップS10において、図2の濃度変換領域層決定手段27は、文字ノイズ領域画像LC上の文字ノイズ領域の外側と内側に複数の領域層を決定し、濃度変換領域画像RAとしてメモリ登録する。
まず、濃度変換領域は、文字ノイズ領域内だけではなく、その外側にも設定する。この理由は、文字ノイズ領域の外側数画素分の背景濃度は、文字ノイズ領域の影響を受けて濃くなっていることが多いからである。この現象は、文字ノイズのエッジ(境界)近傍におけるインクの滲みやセンサ感度の影響によるものと考えられる。従って、文字ノイズ領域外側の数画素分は、濃度変換の対象とすべきである。
【0060】
次に、濃度変換領域層を設定する理由を説明する。文字ノイズ領域の外側の背景濃度は、文字ノイズ領域エッジから外側に向かって一様に薄くなることが多い。同様に、文字ノイズ領域内の背景濃度も、文字ノイズ領域エッジから内側に向かって一様に濃くなることが多い。この例を、図9と図10を用いて説明する。図9(a)は入力画像の拡大図であり文字ノイズ領域を含んでいる。図10は、図9の一部の領域に対して、101で示す水平方向の画素群の濃度プロファイルである。図10で、破線の上端は、文字ノイズとして抽出された領域のエッジの画素を示している。濃度プロファイルを見ると、文字領域のエッジ近傍の濃度は、急激に変化するわけではなく、エッジから外側に向かって数画素分は滑らかに低下している。また、エッジ内側においても一定濃度ではなく、内側に向かって数画素分は滑らかに増加していることがわかる。
【0061】
従って、この背景濃度が変化する領域を、同一の参照領域として局所的画像強調方式で強調すると強調結果も一様ではなくなる。つまり、文字ノイズ領域に適用した場合、文字ノイズの中心部分は相対的に大きい濃度値に、エッジ近傍は相対的に低い濃度値に変換されてしまい、ノイズ除去の効果が出なくなる。
この問題を解決するために、ノイズ領域のエッジ近傍に複数の濃度変換領域層を設定する。それぞれの濃度変換領域層に属するノイズ背景濃度が一様ならば、その層のみを参照領域とする局所的画像強調で濃度変換された画像からは、文字ノイズ成分が消失することが期待できる。
【0062】
そこで、文字ノイズ領域のエッジを検出し、その外側と内側に1画素単位の複数の層を設定する。この実施例では、外側に3層、内側にエッジ層を含めて4層の変換層を設定した。この例を、図8(a),(b)に示す。図8(a)は、文字ノイズ領域外側の濃度変換領域層でRA_Oと表記する。図8(b)は、文字ノイズ領域内側の濃度変換領域層でRA_Iと表記する。
【0063】
次に、エッジと領域層の関係を、図9を用いて説明する。図9(b)は、図9(a)に対応する文字ノイズ領域のエッジ層を示す画像である。また図9(c)は、図9(a)に対応する文字ノイズ領域外側の濃度変換領域層RA_Oである。図9(c)を見ると、図9(b)のエッジ層の外側に、3層の濃度変換領域層が1画素単位に定義されていることがわかる。
【0064】
次に、図3のステップS11において、図2の濃度変換手段28は、濃度変換領域の画素に限定して、局所的画像強調方法で、入力画像GIを濃度変換する。局所的画像強調方法における参照領域は、該画素が属する濃度変換領域層に属する近傍画素群(距離16画素程度以内)とする。上述のように、同程度のノイズ濃度を持つ近傍画素群に限定することで、濃度変換された画像からは、文字ノイズ成分が消失することが期待できる。
この濃度変換に利用する局所的画像強調方法は、ステップS2で利用する局所的画像強調方法と同等の方法を利用する。
【0065】
図11は、図9(a)の文字ノイズ領域に対して濃度変換した指紋画像であり、これをGRと表記する。図11と図9(a)を比べると、文字ノイズ成分がほぼ消失し、指紋隆線が強調されていることがわかる。
【0066】
次に、図3のステップS12では、図2の画像合成手段29は、ステップS2で強調された画像GEとステップS11で濃度変換された画像GRから、文字ノイズが除去された合成画像GCを生成する。本実施例における合成方法は、各画素について、濃度変換領域の各画素ではGEとGRの濃度値の小さい方を採用し、濃度変換領域以外の各画素では強調画像GEの濃度値を採用することとした。これは、文字ノイズが除去された画像の濃度値は通常小さくなるためである。図12は、このようにして合成された画像である。これを見ると、文字ノイズ成分が消失し、指紋隆線のみが強調されていることがわかる。
【0067】
次に、図3のステップS13において、文字ノイズが除去され隆線が強調された画像GOを出力する。この画像GOは、この実施例では、合成画像GCと同等である。出力先としてモニタやプリンタの他、照合装置や特徴抽出装置も考えられる。
【0068】
上記では、指紋画像を例として説明したが、本発明は、指紋と類似の模様を持つ掌紋にも効果的に適用できる。掌紋画像に適用する場合には、平均隆線間隔が指紋よりも25%程広いので、参照領域を距離20画素程度以内とすることで効果的に文字ノイズの除去ができる。
【0069】
また、文字ノイズ濃度が画像全体で一様ではなく、部分的に変化していることが想定されるときには、画像全体を数個の領域に分割して文字ノイズ除去を実施するようにしてもよい。この領域のサイズは、文字ノイズ領域の濃度が一様と想定される大きさに設定する。それぞれの領域において、本実施例の方法で、文字ノイズ除去された画像を生成し、最後に領域全体として合成すれば、画像全体で文字ノイズ濃度が一様でなくても文字ノイズを除去することが可能となる。
【0070】
次に、指紋画像強調装置10の効果について説明する。
本発明は、文字等の非定型な背景ノイズ(文字ノイズ)から文字ノイズ領域を検出し、その文字ノイズ領域の内外に濃度変換領域層を設定し、同一の濃度変換領域層に参照領域として限定して、局所的画像強調方法(局所的ヒストグラム均等化法あるいは局所的コントラストストレッチ法)を用いて隆線を強調することで文字ノイズを除去する。
この結果、指紋隆線の強調や抽出は容易になる。遺留指紋に適用した場合には、文字ノイズが除去され、隆線が強調された指紋隆線を表示することができるので鑑定官の鑑定が容易になる。また、文字ノイズが除去された画像を用いて特徴抽出できるので、より正確な特徴量を抽出できることになり指紋照合精度も向上する。
【0071】
ノイズ領域内部の濃度変換に利用する局所的画像強調方法と同等の方法でノイズ領域外部を画像強調することで、ノイズ領域内外の濃度レベルが平準化されたノイズ除去画像を生成することができる。
【0072】
指紋画像に適用する場合は、参照領域を、距離15画素程度以内の近傍画素群に限定することで、効果的に文字ノイズを除去ができる。指紋隆線は平均隆線間隔が10画素(実距離は0.5ミリ)なので、ある程度斜めの交差した指紋隆線の変動を包含する最小の距離として平均隆線幅の1.5倍程度は合理的である。
掌紋画像に適用する場合には、隆線幅が指紋よりも25%程広いので、20画素程度にすれば良い。
【0073】
指紋画像から文字ノイズ領域を検出するとき、複数の二値化閾値で二値化された二値画像を解析し、それぞれの二値画像において局所領域の隆線領域評価値を算出し、画像全体における最大の隆線領域評価値が、予め定められた閾値以上になるような二値画像を生成する二値化閾値最大値と局所領域を特定し、特定された二値化閾値よりも大きな閾値で二値化された画像を解析し、特定された局所領域で、指紋隆線部が黒画素として二値化された比率が予め定められた閾値(例えば10%)より小さい二値画像を生成する最小の二値化閾値で二値化した画像を特定し、特定された二値画像から孤立した小さい(最大長が短い)領域を除去することで、文字ノイズ領域を検出する。
このようにして検出された文字領域には、指紋隆線部を含む危険性が小さくなるので、指紋隆線部を誤って消失させる危険性も小さくなる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の一実施形態である指紋画像強調装置の全体構成図である。
【図2】図1の文字ノイズ除去手段の機能ブロック図である。
【図3】指紋画像強調装置の動作を示すフローチャートである。
【図4】入力画像の一例を示す図である。
【図5】図4の入力画像を強調処理した強調画像の一例を示す図である。
【図6】図6(a)、図6(b)、図6(c)は、図4の入力画像を異なる二値化閾値で二値化した二値画像の例を示す図である。
【図7】二値画像から検出した文字ノイズ領域画像の一例を示す図である。
【図8】図8(a)は、文字ノイズ領域外側の濃度変換領域層の一例を示す図である。図8(b)は、文字ノイズ領域内側の濃度変換領域層の一例を示す図である。
【図9】図9(a)は、図4の入力画像の一部を拡大した図である。図9(b)は、文字ノイズ領域のエッジ層を説明する図である。図9(c)は、文字ノイズ領域外側の変換領域層を説明する図である。
【図10】文字ノイズ領域近傍の濃度プロファイルを示す図である。
【図11】濃度変換画像の一例を示す図である。
【図12】合成画像の一例を示す図である。
【図13】フーリエ変換を応用した従来技術によるノイズ除去結果の一例を示す図である。
【図14】図14(a)は、従来の局所的ヒストグラム均等法によるノイズ除去結果の一例を示す図である。図14(b)は、従来の近傍濃度置換法によるノイズ除去結果の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0075】
10 指紋画像強調装置
11 指紋画像入力手段
12 文字ノイズ除去手段
13 指紋画像出力手段
14 照合装置
21 データ処理制御手段
22 データ記憶手段
23 画像強調手段
24 隆線領域判定手段
25 隆線強度判定手段
26 文字ノイズ領域検出手段
27 濃度変換領域層決定手段
28 濃度変換手段
29 画像合成手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
指紋または掌紋の画像から非定型な形状の背景ノイズである文字ノイズを除去する装置であって、
前記画像から前記文字ノイズに相当する領域である文字ノイズ領域を検出する文字ノイズ領域検出手段と、
前記文字ノイズ領域の内外に複数の濃度変換領域層を設定する濃度変換領域層決定手段と、
前記濃度変換領域層含まれる画素に対して、注目画素の参照領域として、該画素が属する前記濃度変換領域層と同一の前記濃度変換領域層内の近傍画素群を設定し、局所的画像強調を施して濃度変換画像を生成する濃度変換手段と、を備えたことを特徴とした文字ノイズ除去装置。
【請求項2】
前記濃度変換手段は、前記注目画素が属する前記濃度変換領域層と同一の前記濃度変換領域層に含まれる画素のうち前記注目画素からの距離が指紋または掌紋の平均隆線間隔に相当する画素数の1.5倍程度以内の近傍画素群を前記参照領域とすることを特徴とした請求項1に記載の文字ノイズ除去装置。
【請求項3】
前記文字ノイズ領域検出手段は、その二値化閾値で前記画像を二値化した場合、二値画像中に隆線強度が所定の隆線強度閾値以上となり、かつ、指紋隆線部が黒画素として二値化された比率である黒画素比率が所定の黒画素比率閾値よりも小さくなる局所領域が存在する最適二値化閾値を求め、この最適二値化閾値で前記画像を二値化した最適二値画像から孤立した小さい領域を除去することで前記文字ノイズ領域を検出することを特徴とした請求項1または請求項2に記載の文字ノイズ除去装置。
【請求項4】
前記文字ノイズ領域検出手段は、前記画像を複数の二値化閾値で二値化して得られた複数の二値画像を解析し、それぞれの二値画像において局所領域の隆線領域評価値を算出し、前記二値画像全体における最大の隆線領域評価値が予め定められた評価値閾値以上になる二値化閾値最大値と前記局所領域を特定し、
前記複数の二値画像のうち前記二値化閾値最大値よりも大きな二値化閾値で二値化されかつ、前記特定された局所領域での前記黒画素比率が前記黒画素比率閾値より小さいものを特定し、特定した二値画像を生成するために用いられた前記二値化閾値のうち最小のものを前記最適二値化閾値とすることを特徴とした請求項3に記載のノイズ除去装置。
【請求項5】
前記画像に局所的画像強調を施して強調画像を生成する画像強調手段と、
前記濃度変換領域層に含まれる画素においては、前記強調画像と前記濃度変換画像の2つの画像の濃度値の小さいほうを当該画素の濃度値とし、前記濃度変換領域層に含まれない画素においては、前記強調画像の濃度値を当該画素の濃度値として、前記強調画像と前記濃度変換画像とを合成して合成画像を生成する画像合成手段を備え、
前記濃度変換手段と前記画像強調手段は同様の方法で局所的画像強調を行うことを特徴とした請求項1ないし請求項4のいずれか一つに記載の文字ノイズ除去装置。
【請求項6】
前記画像は、全体画像を文字ノイズ濃度に応じて複数の部分画像に分割したものであり、前記各部分画像について生成した前記濃度変換画像または前記合成画像を合成して前記全体画像についての前記濃度変換画像または前記合成画像を生成することを特徴とした請求項1ないし請求項5のいずれか一つに記載の文字ノイズ除去装置。
【請求項7】
指紋または掌紋の画像から非定型な形状の背景ノイズである文字ノイズを除去する方法であって、
前記画像から前記文字ノイズに相当する領域である文字ノイズ領域を検出する文字ノイズ領域検出工程と、
前記文字ノイズ領域の内外に複数の濃度変換領域層を設定する濃度変換領域層決定工程と、
前記濃度変換領域層含まれる画素に対して、注目画素の参照領域として、該画素が属する前記濃度変換領域層と同一の前記濃度変換領域層内の近傍画素群を設定し、局所的画像強調を施して濃度変換画像を生成する濃度変換工程と、を備えたことを特徴とした文字ノイズ除去方法。
【請求項8】
前記濃度変換工程では、前記注目画素が属する前記濃度変換領域層と同一の前記濃度変換領域層に含まれる画素のうち前記注目画素からの距離が指紋または掌紋の平均隆線間隔に相当する画素数の1.5倍程度以内の近傍画素群を前記参照領域とすることを特徴とした請求項7に記載の文字ノイズ除去方法。
【請求項9】
前記文字ノイズ領域検出工程では、その二値化閾値で前記画像を二値化した場合、二値画像中に隆線強度が所定の隆線強度閾値以上となり、かつ、指紋隆線部が黒画素として二値化された比率である黒画素比率が所定の黒画素比率閾値よりも小さくなる局所領域が存在する最適二値化閾値を求め、この最適二値化閾値で前記画像を二値化した最適二値画像から孤立した小さい領域を除去することで前記文字ノイズ領域を検出することを特徴とした請求項7または請求項8に記載の文字ノイズ除去方法。
【請求項10】
前記文字ノイズ領域検出で工程は、前記画像を複数の二値化閾値で二値化して得られた複数の二値画像を解析し、それぞれの二値画像において局所領域の隆線領域評価値を算出し、前記二値画像全体における最大の隆線領域評価値が予め定められた評価値閾値以上になる二値化閾値最大値と前記局所領域を特定し、
前記複数の二値画像のうち前記二値化閾値最大値よりも大きな二値化閾値で二値化されかつ、前記特定された局所領域での前記黒画素比率が前記黒画素比率閾値より小さいものを特定し、特定した二値画像を生成するために用いられた前記二値化閾値のうち最小のものを前記最適二値化閾値とすることを特徴とした請求項9に記載のノイズ除去方法。
【請求項11】
前記画像に局所的画像強調を施して強調画像を生成する画像強調工程と、
前記濃度変換領域層に含まれる画素においては、前記強調画像と前記濃度変換画像の2つの画像の濃度値の小さいほうを当該画素の濃度値とし、前記濃度変換領域層に含まれない画素においては、前記強調画像の濃度値を当該画素の濃度値として、前記強調画像と前記濃度変換画像とを合成して合成画像を生成する画像合成工程を備え、
前記濃度変換工程と前記画像強調工程では同様の方法で局所的画像強調を行うことを特徴とした請求項7ないし請求項10のいずれか一つに記載の文字ノイズ除去方法。
【請求項12】
前記画像は、全体画像を文字ノイズ濃度に応じて複数の部分画像に分割したものであり、前記各部分画像について生成した前記濃度変換画像または前記合成画像を合成して前記全体画像についての前記濃度変換画像または前記合成画像を生成することを特徴とした請求項7ないし請求項11のいずれか一つに記載の文字ノイズ除去方法。
【請求項13】
指紋または掌紋の画像から非定型な形状の背景ノイズである文字ノイズを除去するプログラムであって、
コンピュータに、
前記画像から前記文字ノイズに相当する領域である文字ノイズ領域を検出する文字ノイズ領域検出処理と、
前記文字ノイズ領域の内外に複数の濃度変換領域層を設定する濃度変換領域層決定処理と、
前記濃度変換領域層含まれる画素に対して、注目画素の参照領域として、該画素が属する前記濃度変換領域層と同一の前記濃度変換領域層内の近傍画素群を設定し、局所的画像強調を施して濃度変換画像を生成する濃度変換処理と、を実行させることを特徴とした文字ノイズ除去プログラム。
【請求項14】
前記濃度変換処理では、前記注目画素が属する前記濃度変換領域層と同一の前記濃度変換領域層に含まれる画素のうち前記注目画素からの距離が指紋または掌紋の平均隆線間隔に相当する画素数の1.5倍程度以内の近傍画素群を前記参照領域とすることを特徴とした請求項13に記載の文字ノイズ除去プログラム。
【請求項15】
前記文字ノイズ領域検出処理では、その二値化閾値で前記画像を二値化した場合、二値画像中に隆線強度が所定の隆線強度閾値以上となり、かつ、指紋隆線部が黒画素として二値化された比率である黒画素比率が所定の黒画素比率閾値よりも小さくなる局所領域が存在する最適二値化閾値を求め、この最適二値化閾値で前記画像を二値化した最適二値画像から孤立した小さい領域を除去することで前記文字ノイズ領域を検出することを特徴とした請求項13または請求項14に記載の文字ノイズ除去プログラム。
【請求項16】
前記文字ノイズ領域検出で処理は、前記画像を複数の二値化閾値で二値化して得られた複数の二値画像を解析し、それぞれの二値画像において局所領域の隆線領域評価値を算出し、前記二値画像全体における最大の隆線領域評価値が予め定められた評価値閾値以上になる二値化閾値最大値と前記局所領域を特定し、
前記複数の二値画像のうち前記二値化閾値最大値よりも大きな二値化閾値で二値化されかつ、前記特定された局所領域での前記黒画素比率が前記黒画素比率閾値より小さいものを特定し、特定した二値画像を生成するために用いられた前記二値化閾値のうち最小のものを前記最適二値化閾値とすることを特徴とした請求項15に記載のノイズ除去プログラム。
【請求項17】
前記画像に局所的画像強調を施して強調画像を生成する画像強調処理と、
前記濃度変換領域層に含まれる画素においては、前記強調画像と前記濃度変換画像の2つの画像の濃度値の小さいほうを当該画素の濃度値とし、前記濃度変換領域層に含まれない画素においては、前記強調画像の濃度値を当該画素の濃度値として、前記強調画像と前記濃度変換画像とを合成して合成画像を生成する画像合成処理を前記コンピュータに実行させ、
前記濃度変換処理と前記画像強調処理では同様の方法で局所的画像強調を行うことを特徴とした請求項13ないし請求項16のいずれか一つに記載の文字ノイズ除去プログラム。
【請求項18】
前記画像は、全体画像を文字ノイズ濃度に応じて複数の部分画像に分割したものであり、前記各部分画像について生成した前記濃度変換画像または前記合成画像を合成して前記全体画像についての前記濃度変換画像または前記合成画像を生成する処理を前記コンピュータに実行させることを特徴とした請求項13ないし請求項17のいずれか一つに記載の文字ノイズ除去プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−65390(P2008−65390A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−239554(P2006−239554)
【出願日】平成18年9月4日(2006.9.4)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】