説明

文書追跡情報管理装置、その方法およびプログラム

【課題】機密情報を含む原稿を読み取って外部に送信した場合に、機密情報が外部へ流出しても後から流出経路が特定できる文書追跡情報管理装置とその方法およびプログラムを提供する。
【解決手段】制御部は、情報化部での復号化の結果、原稿の追跡情報を抽出できたかを判断する(S504)。制御部が追跡情報を抽出したと判断した場合、さらに出力形態が送信(電子メール送信、FAX送信等)か、印刷(複写)であるかを判断する(S505)。制御部において出力形態が送信であると判断したときは、追跡ログを画像データと関連付けてデータベースに保存し(S506)、原稿画像を送信先に送信する(S507)。一方、制御部が、S505において、出力形態が印刷(複写)であると判断した場合は、追跡情報を更新し(S508)、原稿画像に更新した追跡情報を付加し(S509)、原稿画像を印刷する(S510)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、文書の追跡情報を抽出して管理する装置、その方法およびプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、読取った文書の画像データをネットワークを介して送信したり、装置内部に保存したりする機能を有するネットワーク複合機の普及に伴い、文書の情報漏えい問題が増大している。この対策として、ネットワーク複合機で複写した、あるいは読取った文書の画像に関するログである画像ログを保存しておく技術がある。このように画像ログが保存されているので、個々のネットワーク複合機に対して誰がどのような情報を入出力したのかを、画像ログによって後から把握できるようにすることにより、情報漏えいを抑止することができる。
【0003】
また、別の対策として、印刷物に複写、送信等をした日時や操作者を含む追跡情報を付加することにより印刷物の流通経路を特定可能とすることによって、情報漏えいを抑止する技術もある。例えば、追跡情報を含むバーコードが付加された印刷物を複写すると、追跡情報を更新して更新された追跡情報を含むバーコードを複写の際に印刷物に付加する。このようにすることにより、情報漏えいが発覚した場合、印刷物に付加された情報によって情報漏えい行為を行ったユーザや印刷物の作成したユーザの特定が可能となるため抑止効果がある。
【0004】
また、バーコードが付加された印刷物を複写する際読み取った画像に、「複写許可」を示す情報が含まれていた場合に、画像ログを保存する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この画像ログには、複写したユーザのユーザID、バーコードに含まれるユーザID、画像データなどが含まれる。ただし、バーコードが付加された文書を電子メールやFAX等で外部に送信する場合については言及されていない。
【0005】
なお、上記のいずれの従来技術においても本質的な目的は、機密情報を含む文書を複写する場合において、ユーザにその文書を複写することの重大性を自覚させることで、情報漏えいの抑止効果を狙うことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−284472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来技術において、ネットワーク複合機に複写する文書の画像ログを保存する場合、個々のネットワーク複合機に対して誰がどのような文書の画像データを入出力したのかを知ることが可能となる。しかし、文書の追跡情報は保存されないため、その文書が誰によって作成され、どのような流通経路を辿ったのかを追跡することはできないという課題がある。
【0008】
また、印刷物に追跡情報を付加することにより文書の流通経路を特定する技術においては、文書がある特定の範囲内(例えば特定のオフィス内等)で紙から紙へ複写されることにより流通している場合にしか情報漏えいの抑止効果がないという課題がある。
【0009】
また、特許文献1は、バーコードが付加された文書について複写する場合の技術は記載しているが、電子メールやFAX等で外部に送信する場合の技術には言及していない。従って、例えば、機密情報を含む文書を読み取って電子メールやFAXを利用して外部に送信することにより情報漏えいした場合、漏えいが発覚してもその文書を送信したユーザや装置、情報漏えいに至った経路を特定することが困難であるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の文書追跡情報管理置は、装追跡情報を含むコード画像の付加された原稿画像を入力する入力手段と、入力された原稿画像を、印刷するか、または他の装置に送信することにより出力する出力手段と、出力手段が原稿画像を送信により出力する場合、コード画像に含まれている追跡情報及び送信が誰の指示で行われたのかを追跡するための情報を追跡ログとして保存する保存手段とを備えたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の文書追跡情報管理方法は、追跡情報を含むコード画像の付加された原稿画像を入力する入力ステップと、入力された原稿画像を、印刷するか、または他の装置に送信することにより出力する出力ステップと、出力ステップにおいて原稿画像を送信により出力する場合、コード画像に含まれている追跡情報及び送信が誰の指示で行われたのかを追跡するための情報を追跡ログとして保存する保存ステップとを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
機密情報を含む原稿を読み取って複写せずに外部に送信した場合であっても、原稿の流出経路の特定が容易となる。また、ユーザに対する情報漏えいの抑止効果を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例1におけるMFP3001のブロック図である。
【図2】実施例1におけるMFP3001の原稿の作成処理を示すフローチャートである。
【図3】実施例1における1つのバーコードが含まれている原稿画像の一例示す図である。
【図4】実施例1における追跡ログの情報内容を示す図である。
【図5】実施例1におけるMFP3001が実行する制御の流れを示すフローチャートである。
【図6】実施例2における追跡情報抽出時の動作設定対象となる宛先を設定するための画面例を示す図である。
【図7】実施例2におけるMFP3001が実行する制御の流れを示すフローチャートである。
【図8】実施例2における追跡ログの情報内容を示す図である。
【図9】実施例3におけるMFP3001が実行する制御の流れを示すフローチャートである。
【図10】実施例4におけるMFP3001が実行する制御の流れを示すフローチャートである。
【図11】実施例5におけるMFP3001が実行する制御の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。
【0015】
[実施例1]
本発明の第1の実施例では、文書追跡情報管理のため、追跡情報が付加された原稿をネットワーク複合機が読み取った場合に、複写された印刷物として出力するのか、データとして送信するのかなどの出力形態に応じて追跡ログを記録するか否かが判断される。なお、本実施例も含め以降の実施例では、追跡情報を付加するためにバーコードを利用する形態(即ち、バーコードを原稿画像に合成して印刷する形態、及びその印刷により得られた原稿を読み取り動作を制御する形態)を例として説明を行うこととする。また、本実施例では、バーコードとしてQRコードを使用し、コード画像として原稿の一面に対して1つのQRコードが付加されることとする。
【0016】
原稿に追跡情報としてのQRコードを付加する処理について説明する。まず、追跡情報を符号化することで埋め込み情報を得る。2番目に、埋め込み情報を画像化することでQRコードを生成する。3番目に、QRコードと原稿画像を合成し、QRコードの合成された原稿画像を生成する。最後に、QRコードの合成された原稿画像を印刷する。これにより、追跡情報がQRコードとして付加された原稿が作成される。この一連の処理を、追跡情報の「付加」と呼ぶ。また、追跡情報を符号化し、画像化する(QRコードを生成する)処理を、追跡情報の「バーコード化」と称することにする。
【0017】
次に、追跡情報がQRコードとして付加された原稿から追跡情報を抽出する処理について説明する。まず、原稿スキャナ上、またはADF(Auto Document Feeder)に置かれた原稿を読み取り、原稿画像を生成する。2番目に、その原稿画像からQRコードを探索する。3番目に、探索したQRコードを情報化して埋め込み情報を得る。4番目に、埋め込み情報を復号化して追跡情報を得る。これにより、追跡情報がQRコードとして付加された原稿から、追跡情報を得ることができる。この一連の処理の内の2番目以降の処理を、追跡情報の「抽出」と呼ぶ。
【0018】
以下、図1を参照して本発明の実施例1におけるネットワーク複合機(以下、MFP)3001の構成について詳細に説明する。ここで、図1は、本実施例に係るMFP3001の構成を例示するブロック図である。制御部1は、MFP3001の各ユニットの動作制御を行う。この制御部1は、図示しないCPU(Central Processing Unit)を有している。また、制御部1は、追跡情報の復号化も行う。操作部5は、MFP3001に対するユーザからの操作入力を受け付ける。ユーザ認証部6は、MFP3001を使用するユーザの認証に必要な情報を管理する。ユーザ認証部6の詳細な動作については後述する。
【0019】
読取部2は、上述の原稿を読み取る(例えば、スキャンする)ことで、その原稿の原稿画像の生成を行う。なお、原稿が印刷物等の紙文書であるのに対して、原稿画像はデジタル(又は、アナログ)のデータである。
【0020】
情報化部3は、上述の原稿画像からQRコードを見つけ出して情報化を行う。メモリ7には、原稿画像を記憶する。出力部8は、メモリ7から原稿画像を読み出した後、原稿画像の印刷、または外部装置への送信等の出力を行う。ここで外部装置とは、MFP3001とネットワークを介して接続されているPC等とすることもでき、MFP3001のような複写機とすることもできる。
【0021】
表示部9は、制御部1の制御により表示画面の表示を行う。データベース10には、MFP3001の印刷設定、ジョブログ、後述する追跡ログ等を記録する。エンコード部11は、上述の符号化と画像化を行う。
【0022】
次に、原稿に追跡情報を付加したい場合にユーザが行う手続き、およびそれに応じてMFP3001が行う処理について説明する。原稿に追跡情報を付加したいユーザは、まず、表示部9に表示される図示しないユーザ認証画面の指示に従い、ユーザID及びパスワードを、操作部5を介して入力する。操作部5を介して入力された情報は、操作部5からユーザ認証部6に送られる。ユーザ認証部6は、管理している情報に従って、入力されたパスワードが適切なパスワードであるか判断する。判断の結果、パスワードが適切なパスワードである場合に、ユーザ認証部6は、適切なパスワードであるという旨とユーザIDを制御部1に送信する。適切なパスワードであるという旨とユーザIDを受信した制御部1は、表示部9に、追跡情報を付加するかをユーザに確認する図示しないチェックボックスを表示する。ユーザが、操作部5からチェックボックスに対して追跡情報を付加するとのチェックをした場合は、追跡情報が印刷対象の原稿に付加する処理を実行する。一方、チェックしなかった場合は追跡情報が印刷対象の原稿に付加する処理は実行されない。
【0023】
なお、一連の操作で作成された原稿にはすべて同じ追跡情報が付加される。ここで、一連の操作とは、一連の複数の原稿を一度の複写指示で複写することである。例えば、ユーザが元の4枚の原稿をADFに置いて3部複写する指示をMFP3001にした場合、作成された3部の複写された原稿、つまり、12枚の原稿は、一連の操作で複写されたものとなり、すべて同じ追跡情報が付加されることとなる。また、追跡情報を付加する指示は、MFP3001と接続されているPCのドライバやユーティリティを介して設定してもよい。
【0024】
次に、QRコードを付加した原稿の作成方法について図2を参照して詳細に説明する。ここで、図2は、MFP3001のQRコードを付加した原稿の作成処理を示すフローチャートである。制御部1は、操作部5が追跡情報付加の指定を受けたか否か判断する(S101)。S101において、制御部1は、チェックボックスがチェックされ、追跡情報付加の指定がなされていると判断した場合、追跡情報を生成してエンコード部11に送信する(S102)。ここで、追跡情報は、原稿作成を行うユーザのユーザID、タイムスタンプ、原稿作成を行う装置を識別する情報を含むことができる。なお、原稿が複数枚であることも考慮するとページ番号も追跡情報に含めてもよい。
【0025】
S103において、読取部2は、原稿を読み取ることで原稿画像を生成し、メモリ7に記憶するとともに情報化部3に送信する。S104において、エンコード部11は、追跡情報を符号化し、およびコード画像データであるQRコードに変換して生成し、生成したQRコードをメモリ7に記憶する。
【0026】
S105において、制御部1は、メモリ7にQRコードおよび原稿画像が記憶されたことを検知すると、QRコードと原稿画像とを合成してQRコードの付加された原稿画像を生成してメモリ7に記憶する。図3に、QRコードを合成したときの原稿画像の一例を示す。図3を参照すると、原稿301に対して、追跡情報を含むQRコード302が付加されていることが理解できる。次に、制御部1は、QRコードの合成された原稿画像をメモリ7から読み出して、出力部8に送信し、出力部8に原稿画像を出力させる(S106)。出力部8が原稿画像を出力の具体的な形態としては、上述した通り、例えば原稿画像の印刷等がある。
【0027】
S101においてチェックボックスにチェックがされておらず、追跡情報を付加する設定ではないと判定された場合、読取部2は、原稿を読み取って原稿画像を生成し、メモリ7に記憶する(S107)。次に、制御部1は、メモリ7が原稿画像を記憶したことを検知すると、原稿画像をメモリ7から読み出して出力部8に送信し、出力部8に原稿画像を出力させる(S108)。
【0028】
上述の処理により追跡情報が付加された原稿をMFP3001が読み取った場合に、出力形態に応じて原稿の追跡ログを記録するか否かを判断する動作について詳細に説明する。
【0029】
まず、追跡ログの内容について図4を用いて詳細に説明する。図4は、1レコード分の追跡ログ401の内容を示す一例である。ログID402は、追跡ログの1レコードを一意に識別するための識別子である。操作者ユーザID403は、原稿画像の送信を行ったユーザのユーザIDを示す。日時情報であるタイムスタンプ404は、原稿の複写や送信を行った時刻を示す。送信先情報405は、送信先を示す情報であり、例えば電子メールアドレスやFAX番号などの情報が格納される。原稿の追跡情報406は原稿に付加されているQRコード412に埋め込まれている情報を示しており、ページ番号407、ユーザID408、タイムスタンプ409、装置情報410(例えば装置のシリアル番号)を含む。さらに画像データ411は、スキャナ等で読取られて生成された原稿画像であり、QRコード412に埋め込まれた原稿の追跡情報406に関連付けられて保存される。なお、図示していないが、原稿の追跡情報406は、原稿が複数ページである場合には、そのページ数分の情報を持つ。
【0030】
次に本実施例における追跡情報が付加された原稿をMFP3001が読み取った場合に、出力形態に応じて原稿の追跡ログを記録するか否かを判断し、追跡ログの記録を保存する処理について、図5のフローチャートを用いて詳細に説明する。ユーザ認証部6は、操作部5より入力されたユーザIDおよびパスワードにより、ユーザを認証する(S501)。ユーザ認証部6によりユーザ認証が成功すると、読取部2は原稿の読み取りを行う(S502)。原稿の読み取り後、情報化部3はバーコードの復号化を試みる(S503)。制御部1は、情報化部3での復号化の結果、原稿の追跡情報を抽出できたかを判断する(S504)。制御部1が追跡情報を抽出したと判断した場合、さらに出力形態が送信(電子メール送信、FAX送信等)か、印刷(複写)であるかを判断する(S505)。制御部1において出力形態が送信であると判断したときは、図4に示す追跡ログ401を画像データ411と関連付けてデータベース10に保存し(S506)、原稿画像を送信先に送信する(S507)。
【0031】
一方、制御部1が、S505において、出力形態が印刷(複写)であると判断した場合は、追跡情報を更新し(S508)、原稿画像に更新した追跡情報を付加し(S509)、原稿画像を印刷する(S510)。また、S504において、制御部1が追跡情報を抽出できなかったと判断した場合、S511へ進み、出力形態が送信か印刷であるかを判断する。制御部1がS511において、出力形態が送信であると判断したときは原稿画像を送信する(S507)。一方、制御部1が印刷であると判断した場合は原稿画像を印刷する(S510)。
【0032】
以上、説明したように、本実施例では追跡情報が付加されている原稿を読み取って電子メールやFAX等の出力機能を用いて外部に送信するような場合であっても、図4に示す追跡ログをデータベース10に保存しておく。その結果、例えば機密情報を含む原稿を外部に送信したことによって情報漏えいが発覚した場合、その情報を誰が、いつ、どの装置から送信したのか、すなわち流出経路を特定することが可能となる。この点をユーザに意識させることにより、情報漏えい抑止効果を高めることができる。
【0033】
[実施例2]
本発明の第2の実施例は、実施例1に加えて、出力の形態が送信(電子メール送信やFAX送信など)である場合に、送信先の宛先に応じて追跡ログを保存するか否かを判断する。
【0034】
以下、実施例1との差異を中心に説明する。図6(a)および(b)は、表示部9に表示する送信先登録画面の一例である。本実施例においては、図6に示す登録画面で登録された送信先に基づいて、制御部1は追跡ログを記録するか否かを判断する。図6(a)は、追跡ログの記録対象とする電子メールアドレスを登録するための画面1001であり、登録された電子メールアドレスのリスト1003が表示されている。この画面の例では、「abc@domainA.com」と「*@domainB.com」が登録されていることを示している。なお、「*@domainB.com」の*部分は、ワイルドカードを示しており、この部分の文字は何でもよいことを示している。さらにアドレスを追加したい場合は、アドレス追加ボタン1002から追加することができる。
【0035】
図6(b)は、追跡ログの記録対象とするFAX番号を登録するための画面1021であり、登録されたFAX番号のリスト1023が表示されている。この画面の例では、「000−1234−6589」と「111−1234−****」が登録されていることを示している。なお、「111−1234−****」の*部分は、ワイルドカードを示しており、この部分の数字は何でもよいことを示している。さらにFAX番号を追加したい場合はFAX番号追加ボタン1022から追加することができる。
【0036】
次に、実施例2の動作を図7のフローチャートを用いて説明する。S701〜S711の動作は、それぞれが実施例1の図5に示すS501〜S511の処理に対応する。実施例1との差異は、S705において、制御部1が出力機能は送信であると判断した場合にS712の動作が追加されるところである。S712では、制御部1は、原稿画像を送信する送信先が、図6(a)または(b)で登録された送信先のリストに含まれているか否かを判断する。送信先のリストに含まれていると判断した場合には、S707に進み、そのまま原稿画像を送信する。一方、送信先のリストに含まれていないと判断した場合にはS706に進み、図4に示した追跡ログ401と画像データ411をデータベース10に保存する。
【0037】
以上、説明したように、実施例2では、あらかじめ登録した送信先については追跡ログと画像データを保存しない。すなわち、送信先が安全であることが確認されている送信先については追跡ログと画像データを保存しないようにすることができるため、例えば装置内のログ格納領域の使用量を節約することが可能となる。
【0038】
[実施例3]
本発明の第3の実施例では、MFP3001内の画像保存手段である原稿画像格納領域(以下、BOX)に保存されている原稿画像を出力として送信する際に保存する追跡ログとして、原稿画像をMFP3001内に保存したユーザのユーザIDも記録する。すなわち、実施例1および2では、MFP3001で原稿を複写して得られた原稿が像を送信する場合に追跡ログを保存するが、本実施例では予めボックスに保存されている原稿画像を送信する場合に追跡ログを保存する。本実施例は、原稿を複写しない操作者でも、ボックスに保存された原稿画像を不正に送信する場合もあり得ることから、これを考慮にいれたものである。
【0039】
以下、実施例1および2との差異を中心に本実施例を説明する。図8は、実施例3において、BOX内の原稿画像を外部に送信する場合に保存される追跡ログの内容を示す。実施例1および2における図4に示す追跡ログ401との差異は、保存者ユーザID812が追加されていることである。保存者ユーザID812は、原稿を読み取って、装置内のBOXに原稿画像として保存したユーザのユーザIDである。保存者ユーザIDを追跡ログに保存する理由は、BOX内に保存された原稿画像を外部へ送信するユーザと、原稿画像をBOX内に保存したユーザとが異なる可能性があるためである。なお、MFP3001のボックスに原稿画像が保存される場合としては、原稿をMFP3001で複写する際にボックスへの保存が指定されており、この場合、複写の処理とともに読み込まれた原稿画像がボックスに保存される。したがって、原稿に付加された追跡情報が複製付加の場合はそもそもボックスに保存されることもなく本実施例の対象にはならない。
【0040】
次に、本実施例の動作を図9のフローチャートを用いて説明する。実施例2の図7で示したフローチャートとの差異は、S902およびS906である。すなわち、本実施例では現行の複写は行わないので、先ずS902で、ユーザの操作により制御部1がBOX内の原稿画像を選択する。ここで、選択された原稿画像が追跡ログの対象となり、実施例1または2と同様な処理が行われる。その後、S906に示すように、図8に示した、保存者ユーザID812を含む追跡ログ801および画像データ811をデータベース10に保存する。その他のステップの動作は実施例1と同様である。
【0041】
以上、説明したように、実施例3は、原稿画像をBOX内に保存したユーザとBOX内に保存された原稿画像を外部へ送信するユーザが異なる場合、不正な操作である可能性があることに着眼したものである。これにより、BOX内の原稿画像を外部に送信する場合は、原稿画像をBOX内に保存したユーザの情報も追跡ログに保存することにより、より詳細な原稿の追跡が可能となる。
【0042】
[実施例4]
本発明の第4の実施例は、スキャナ等により読み取った原稿画像をネットワーク複合機MFP3001内の原稿画像格納領域(以下、BOXと称す)に保存する際に、原稿から追跡情報が抽出された場合にBOXへの保存が可能か否かを判断するものである。通常、MFP3001のBOXには、パスワード等のユーザ認証により、特定のユーザの操作のみ認める認証設定ありBOX、および認証不要の認証設定なしBOXがある。本実施例では、原稿から追跡情報が抽出された場合にユーザ認証等によるアクセス制限がなされているBOXにのみ読取った原稿画像の保存が許可である。したがって、上述の実施例1および2で複写を行う際に、本実施例を用いて認証設定なしBOXには原稿画像を保存させないようにすることができる。また、実施例3に本実施例を適用すると、認証設定ありBOXにアクセスできるユーザのみ原稿画像を送信することができることとなる。この場合、BOXに保存するためアクセスする際ユーザ認証に使用したユーザIDを、保存者ID812とすることができる。同様に、BOXに保存された原稿画像を送信するためアクセスする際ユーザ認証に使用したユーザIDを、操作者ユーザID803とすることができる。
【0043】
以下、実施例1ないし3との差異を中心に説明する。図10は実施例4の動作を示すフローチャートである。S1001〜S1011の動作は、実施例1における図5のS501〜S511の動作に基本的に相当する。
【0044】
本実施例では、追跡情報が付加されている原稿が対象となる場合は、アクセス制限のあるBOXしか使用することができない。したがって、S1005において、制御部1が原稿画像の出力形態がBOX格納であると判断した場合、制御部1は、格納先のBOXが、ユーザ認証等によるアクセス制限がなされているBOXであるかを判断する(S1012)。S1012において、制御部1が、格納先のBOXがアクセス制限されていると判断した場合は、BOX内に原稿画像を保存する(S1013)。一方、S1012において、アクセス制限がされていないと判断した場合、制御部1は、原稿画像の保存を行わず、表示部9にその旨を示すエラーを表示する。
【0045】
以上、説明したように、実施例4では、追跡情報が付加されている原稿は機密性が高い情報が含まれている可能性が高いことに着眼する。すなわち、機密性がもともと低い原稿には追跡情報は付加されないし、機密性が最高度に高い原稿は追跡情報で複写自体が禁止される。本実施例は、この中間程度の機密性を有する原稿に対し、一定の条件で複写を認める場合により安全性を高めるようにするものである。この結果、このような原稿を誰でも参照、または操作できるBOXに不用意に保存されることを防止できる。
【0046】
[実施例5]
上述の実施例4では、原稿を読み取ってBOXに保存する動作について説明したが、本実施例ではPC等からネットワークを介して原稿画像をBOXに保存する場合に適用されるものである。すなわち、本実施例では、アクセス制限のあるBOXに原稿画像を保存すること、追跡ログを保存する点は上述の各実施例と同様であるが、複写処理の一部として原稿の読取りは行わず原稿画像はデータとして提供される。
【0047】
以下、実施例4との差異を中心に説明する。図11は実施例5の動作を示すフローチャートである。S1101〜S1111の動作は、実施例1における図10のS1001〜S1011の動作に基本的に相当する。S1102において、MFP3001にネットワーク等で接続したパソコン(PC)等から原稿画像を受信し、以降の処理は基本的に実施例4と同様である。ここで、受信する原稿画像のデータ形式はいずれのもの、例えばPDFやワードプロセッサ用のデータ形式等当業者が使用可能ないずれのものも使用することができる。また、追跡情報は原稿画像に組み込み済みとすることもでき、またはMFP3001で別途指定して付加することもできる。
【0048】
[他の実施例]
また、本発明の目的は、以下の処理を実行することによっても達成される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記録した記憶媒体を、システム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出す処理である。この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が前述した実施の形態の機能を実現することになり、そのプログラムコード及び該プログラムコードを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
追跡情報を含むコード画像の付加された原稿画像を入力する入力手段と、
前記入力された原稿画像を、印刷するか、または他の装置に送信することにより出力する出力手段と、
前記出力手段が前記原稿画像を送信により出力する場合、前記コード画像に含まれている追跡情報及び前記送信が誰の指示で行われたのかを追跡するための情報を追跡ログとして保存する保存手段と
を備えたことを特徴とする文書追跡情報管理装置。
【請求項2】
前記出力手段は、前記原稿画像を印刷することにより出力する場合、
前記入力されたコード画像に含まれている追跡情報を、前記印刷が誰の指示で行われたのか追跡するための情報を用いて更新し、当該更新の後の追跡情報をコード画像データに変換し、当該コード画像データを前記原稿画像に合成して印刷することを特徴とする請求項1に記載の文書追跡情報管理装置。
【請求項3】
前記入力手段により入力された原稿画像を後の印刷、送信のために保存する画像保存手段と、
前記画像保存手段に保存された原稿画像を他の装置に送信する送信手段と
をさらに備え、
前記保存手段は、前記送信手段が前記原稿画像を送信する場合、前記コード画像に含まれている追跡情報、前記送信が誰の指示で行われたのか追跡するための情報および前記原稿画像を保存したユーザを特定する情報を追跡ログとして保存することを特徴とする請求項1又は2に記載の文書追跡情報管理装置。
【請求項4】
前記保存手段は、前記出力手段または前記送信手段により送信する場合、さらに前記原稿画像を保存することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の文書追跡情報管理装置。
【請求項5】
前記追跡情報は、前記原稿画像の出力を指示したユーザのユーザIDを含むことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の文書追跡情報管理装置。
【請求項6】
前記追跡情報は、前記原稿画像を出力した日時情報を含むことを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の文書追跡情報管理装置。
【請求項7】
原稿を読取って原稿画像を生成する読取手段
をさらに備え、前記入力手段は、前記読取手段から前記追跡情報を含むコード画像の付加された原稿画像を入力することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の文書追跡情報管理装置。
【請求項8】
前記入力手段は、他の装置から前記追跡情報を含むコード画像の付加された原稿画像を受信して入力することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の文書追跡情報管理装置。
【請求項9】
追跡情報を含むコード画像の付加された原稿画像を入力する入力ステップと、
前記入力された原稿画像を、印刷するか、または他の装置に送信することにより出力する出力ステップと、
前記出力ステップにおいて前記原稿画像を送信により出力する場合、前記コード画像に含まれている追跡情報及び前記送信が誰の指示で行われたのかを追跡するための情報を追跡ログとして保存する保存ステップと
を備えたことを特徴とする文書追跡情報管理方法。
【請求項10】
コンピュータに文書追跡情報管理方法を実行させるプログラムであって、該文書追跡情報管理方法は、
追跡情報を含むコード画像の付加された原稿画像を入力する入力ステップと、
前記入力された原稿画像を、印刷するか、または他の装置に送信することにより出力する出力ステップと、
前記出力ステップにおいて前記原稿画像を送信により出力する場合、前記コード画像に含まれている追跡情報及び前記送信が誰の指示で行われたのかを追跡するための情報を追跡ログとして保存する保存ステップと
を備えたことを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図3】
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【図4】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−15645(P2012−15645A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−148080(P2010−148080)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】