斜方蒸着装置、スクリーンの製造方法及び搬送方向変更装置
【課題】少なくとも一方の面に複数の凹凸部を有する長尺シートを用いた場合、凹凸部の一部に蒸着材料を選択的に蒸着することが可能な蒸着装置を提供する。
【解決手段】少なくとも一方の面に複数の凹凸部を有する長尺シートW1に、一方の面が鉛直方向を含む縦平面に沿い、かつ、搬送方向が縦平面内における水平方向に沿う状態で斜方蒸着を行う斜方蒸着装置であって、一方の面が縦平面以外の平面に沿う、又は、搬送方向が縦平面内における水平方向以外の方向に沿う長尺シートW1を、一方の面が縦平面に沿い、かつ、搬送方向が縦平面内における水平方向に沿うようにする第1搬送方向変更部20と、第1搬送方向変更部20の後段に配置され、凹凸部の一部に蒸着材料を斜方蒸着する斜方蒸着部40とを備える斜方蒸着装置1。
【解決手段】少なくとも一方の面に複数の凹凸部を有する長尺シートW1に、一方の面が鉛直方向を含む縦平面に沿い、かつ、搬送方向が縦平面内における水平方向に沿う状態で斜方蒸着を行う斜方蒸着装置であって、一方の面が縦平面以外の平面に沿う、又は、搬送方向が縦平面内における水平方向以外の方向に沿う長尺シートW1を、一方の面が縦平面に沿い、かつ、搬送方向が縦平面内における水平方向に沿うようにする第1搬送方向変更部20と、第1搬送方向変更部20の後段に配置され、凹凸部の一部に蒸着材料を斜方蒸着する斜方蒸着部40とを備える斜方蒸着装置1。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、斜方蒸着装置、スクリーンの製造方法及び搬送方向変更装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、長尺シートに蒸着を行う蒸着装置が広く知られている(例えば、特許文献1参照。)。従来の蒸着装置によれば、長尺シートにおける一方の全面に渡って安定した蒸着を行うことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−323552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の蒸着装置においては、少なくとも一方の面に複数の凹凸部を有する長尺シートを用いた場合、凹凸部の一部に蒸着材料を選択的に蒸着することができないという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は上記の問題を解決するためになされたものであり、少なくとも一方の面に複数の凹凸部を有する長尺シートを用いた場合、凹凸部の一部に蒸着材料を選択的に蒸着することが可能な蒸着装置を提供することを目的とする。また、上記のような斜方蒸着装置を用いるスクリーンの製造方法を提供することを目的とする。さらにまた、搬送方向を変更するときの長尺シートの捩れを抑制することが可能な搬送方向変更装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ところで、凹凸部の一部に蒸着材料を選択的に蒸着する蒸着装置として、対象物(本発明の場合は長尺シート)に対して斜め方向から蒸着物質を蒸着する斜方蒸着部を備える斜方蒸着装置が考えられる(後述する図3参照。)。このような斜方蒸着部においては、面が鉛直方向を含む縦平面に沿い、かつ、搬送方向が縦平面内における水平方向に沿う(いわゆる「立たせた」)状態で蒸着を行うことが好ましいが、長尺シートの搬送には面が鉛直方向に対して垂直な面に沿う(いわゆる「寝せた」)状態で搬送を行うことが搬送の安定性の観点から好ましく、また、繰り出しロール等を立たせておくと多大な体積を占有してしまうため、従来の蒸着装置のような蒸着装置に上記の斜方蒸着部をそのまま適用することができなかった。そこで、本発明の発明者は、上記の点を踏まえた鋭意研究の結果、長尺シートの搬送方向を変更する構成要素を含めた斜方蒸着装置を想到し、本発明として完成させた。本発明は以下の構成要素からなる。
【0007】
[1]本発明の斜方蒸着装置は、少なくとも一方の面に複数の凹凸部を有する長尺シートに、前記一方の面が鉛直方向を含む縦平面に沿い、かつ、搬送方向が前記縦平面内における水平方向に沿う状態で斜方蒸着を行う斜方蒸着装置であって、前記一方の面が前記縦平面以外の平面に沿う、又は、搬送方向が前記縦平面内における水平方向以外の方向に沿う長尺シートを、前記一方の面が前記縦平面に沿い、かつ、搬送方向が前記縦平面内における水平方向に沿うようにする第1搬送方向変更部と、前記第1搬送方向変更部の後段に配置され、前記凹凸部の一部に蒸着材料を斜方蒸着する斜方蒸着部とを備えることを特徴とする。
【0008】
このため、本発明の斜方蒸着装置は、凹凸部の一部に蒸着材料を斜方蒸着する斜方蒸着部を備えるため、少なくとも一方の面に複数の凹凸部を有する長尺シートを用いた場合、凹凸部の一部に蒸着材料を選択的に蒸着することが可能な斜方蒸着装置となる。
【0009】
また、本発明の斜方蒸着装置によれば、一方の面が縦平面以外の平面に沿う、又は、搬送方向が縦平面内における水平方向以外の方向に沿う長尺シートを、一方の面が縦平面に沿い、かつ、搬送方向が縦平面内における水平方向に沿うようにする(長尺シートを立たせた状態にする)第1搬送方向変更部を備えるため、立たせた状態の長尺シートを斜方蒸着部に搬送して、立たせた状態の長尺シートに斜方蒸着を行うことが可能となる。
【0010】
なお、本発明において「鉛直方向(重力に沿う方向)」というときには、厳密な鉛直方向のみをいうものではなく、実際上鉛直方向として扱える方向も含んでいう。「水平方向(重力に対して垂直な方向)」、「垂直」及び「平行」についても同様であり、実際上「水平方向」、「垂直」又は「平行」として扱える方向も含んでいう。
【0011】
斜方蒸着に用いる「少なくとも一方の面に複数の凹凸部を有する長尺シート」は、例えば、プロジェクターからの投写光を主に使用者に向けて反射する投写用のスクリーンを製造するときに用いられる(後述する実施形態1参照。)。本発明の斜方蒸着装置は、上記のようなスクリーンを製造する用途において(つまり、投写用スクリーン製造用蒸着装置として)好適に用いることができる。
【0012】
[2]本発明の斜方蒸着装置においては、前記一方の面が鉛直方向に対して垂直な面に沿って搬送される前記長尺シートの搬送方向を、前記第1搬送方向変更部の方に向けて変更する前段搬送方向変更部をさらに備えることが好ましい。
【0013】
このような構成とすることにより、前段搬送方向変更部と第1搬送方向変更部とで搬送方向を変更するため、長尺シートを段階的に寝せた状態から立たせた状態にすることとなり、その結果、長尺シートを寝せた状態から立たせた状態にするときの長尺シートの捩れを抑制することが可能となる。
【0014】
なお、「長尺シートの捩れ」とは、搬送方向を変更することに起因して、一方の面の凹凸部をはじめとする長尺シートの形状が捩れてしまう事をいう。
【0015】
[3]本発明の斜方蒸着装置においては、前記前段搬送方向変更部は、前記前段搬送方向変更部を通過する前後いずれの前記長尺シートの搬送方向に対しても垂直な回転軸を有する前段搬送方向変更ローラーを備えることが好ましい。
【0016】
このような構成とすることにより、簡易に、かつ、安定して長尺シートの搬送方向を変更することが可能となる。
【0017】
[4]本発明の斜方蒸着装置においては、前記第1搬送方向変更部は、前記第1搬送方向変更部を通過する前後いずれの前記長尺シートの搬送方向に対しても斜めの回転軸を有し、表面の摩擦力が低い第1低摩擦ローラーを備えることが好ましい。
【0018】
ところで、第1搬送方向変更部においては、長尺シートを折り曲げるように搬送方向を変更するため、長尺シートの一方の端と他方の端とで進行方向が異なる状態となり、長尺シートの捩れの原因となることがある。しかしながら、上記のような構成とすることにより、表面の摩擦力が低い第1低摩擦ローラーを備えるため、長尺シートの搬送方向を変更するときにおいて、長尺シートの一方の端と他方の端との進行方向の差異を緩和し、搬送方向を変更するときの長尺シートの捩れを抑制することが可能となる。
【0019】
[5]本発明の斜方蒸着装置においては、前記第1搬送方向変更部は、前記第1搬送方向変更部を通過する前の前記長尺シートの前記一方の面に沿い、かつ、水平方向に沿う回転軸を有する複数の第1水平軸回転体からなる第1水平軸回転部と、前記第1水平軸回転部の後段に配置され鉛直方向に沿う回転軸を有する複数の第1鉛直軸回転体からなる第1鉛直軸回転部とを備えることも好ましい。
【0020】
このような構成とすることにより、複数の第1水平軸回転体からなる第1水平軸回転部と、複数の第1鉛直軸回転体からなる第1鉛直軸回転部とを備えるため、長尺シートの搬送方向を変更するときにおいて、長尺シートの一方の端と他方の端との進行方向の差異を緩和し、搬送方向を変更するときの長尺シートの捩れを抑制することが可能となる。
【0021】
また、上記のような構成とすることにより、長尺シートが、まず複数の第1水平軸回転体からなる第1水平軸回転部に接触し、次に複数の第1鉛直軸回転体からなる第1鉛直軸回転部に接触するため、搬送方向変更前の長尺シートの搬送方向に沿って回転する第1水平軸回転体と、搬送方向変更後の長尺シートの搬送方向に沿って回転する第1鉛直軸回転体とに長尺シートが段階的に接触することになり、その結果、長尺シートを立たせた状態にするときの長尺シートの捩れをより一層抑制することが可能となる。
【0022】
なお、第1水平軸回転体は、水平方向に沿う回転軸を有するため、いわゆる「縦回転」をする回転体となる。後述する第2水平軸回転体も同様である。また、第1鉛直軸回転体は、鉛直方向に回転軸を有するため、いわゆる「横回転」をする回転体となる。後述する第2鉛直軸回転体も同様である。
【0023】
[6]本発明の斜方蒸着装置においては、前記第1搬送方向変更部は、前記第1搬送方向変更部を通過する前後いずれの前記長尺シートの搬送方向に対しても斜めの回転軸を有する複数の第1斜め回転体からなる第1斜め回転部を備えることも好ましい。
【0024】
このような構成とすることにより、複数の第1斜め回転体からなる第1斜め回転部を備えるため、長尺シートの搬送方向を変更するときにおいて、長尺シートの一方の端と他方の端との進行方向の差異を緩和し、搬送方向を変更するときの長尺シートの捩れを抑制することが可能となる。
【0025】
[7]本発明の斜方蒸着装置においては、前記斜方蒸着部からの前記長尺シートの搬送方向を、後段の構成要素に向けて変更する第2搬送方向変更部をさらに備えることが好ましい。
【0026】
このような構成とすることにより、斜方蒸着部で斜方蒸着した長尺シートを後段の構成要素に向けて搬送することが可能となる。
【0027】
「後段の構成要素」とは、第2搬送方向変更部の後段に配置される構成要素のことをいい、このような構成要素としては、例えば、別の搬送方向変更部(後述する後段搬送方向部)や、巻き取りローラーを用いることができる。
【0028】
[8]本発明の斜方蒸着装置においては、前記第2搬送方向変更部からの前記長尺シートの搬送方向を変更して、前記長尺シートを、前記一方の面が鉛直方向に対して垂直な面に沿うようにする後段搬送方向変更部をさらに備えることが好ましい。
【0029】
このような構成とすることにより、第2搬送方向変更部と後段搬送方向変更部とで搬送方向を変更するため、長尺シートを段階的に立たせた状態から寝せた状態にすることとなり、その結果、長尺シートを立たせた状態から寝せた状態にするときの長尺シートの捩れを抑制することが可能となる。
【0030】
[9]本発明の斜方蒸着装置においては、前記後段搬送方向変更部は、前記後段搬送方向変更部を通過する前後いずれの前記長尺シートの搬送方向に対しても垂直な回転軸を有する後段搬送方向変更ローラーを備えることが好ましい。
【0031】
このような構成とすることにより、簡易に、かつ、安定して長尺シートの搬送方向を変更し、長尺シートを寝せた状態にすることが可能となる。
【0032】
[10]本発明の斜方蒸着装置においては、前記第2搬送方向変更部は、前記第2搬送方向変更部を通過する前後いずれの前記長尺シートの搬送方向に対しても斜めの回転軸を有し、表面の摩擦力が低い第2低摩擦ローラーを備えることが好ましい。
【0033】
このような構成とすることにより、表面の摩擦力が低い第2低摩擦ローラーを備えるため、斜方蒸着部からの長尺シートの搬送方向を変更するときにおいて、長尺シートの一方の端と他方の端との進行方向の差異を緩和し、搬送方向を変更するときの長尺シートの捩れを抑制することが可能となる。
【0034】
[11]本発明の斜方蒸着装置においては、前記第2搬送方向変更部は、鉛直方向に沿う回転軸を有する複数の第2鉛直軸回転体からなる第2鉛直軸回転部と、前記第2鉛直軸回転部の後段に配置され、前記第2搬送方向変更部を通過した後の前記長尺シートの前記一方の面に沿い、かつ、水平方向に沿う回転軸を有する複数の第2水平軸回転体からなる第2水平軸回転部とを備えることも好ましい。
【0035】
このような構成とすることにより、複数の第2鉛直軸回転体からなる第2鉛直軸回転部と、複数の第2水平軸回転体からなる第2水平軸回転部とを備えるため、斜方蒸着部からの長尺シートの搬送方向を変更するときにおいて、長尺シートの一方の端と他方の端との進行方向の差異を緩和し、長尺シートの搬送方向を変更するときの長尺シートの捩れを抑制することが可能となる。
【0036】
また、上記のような構成とすることにより、長尺シートが、まず複数の第2鉛直軸回転体からなる第2鉛直軸回転部に接触し、次に複数の第2水平軸回転体からなる第2水平軸回転部に接触するため、搬送方向変更前の長尺シートの搬送方向に沿って回転する第2鉛直軸回転体と、搬送方向変更後の長尺シートの搬送方向に沿って回転する第2水平軸回転体とにより、搬送方向を変更するときの長尺シートの捩れをより一層抑制することが可能となる。
【0037】
[12]本発明の斜方蒸着装置においては、前記第2搬送方向変更部は、前記第2搬送方向変更部を通過する前後いずれの前記長尺シートの搬送方向に対しても斜めの回転軸を有する複数の第2斜め回転体からなる第2斜め回転部を備えることも好ましい。
【0038】
このような構成とすることにより、複数の第2斜め回転体からなる第2斜め回転部を備えるため、斜方蒸着部からの長尺シートの搬送方向を変更するときにおいて、長尺シートの一方の端と他方の端との進行方向の差異を緩和し、搬送方向を変更するときの長尺シートの捩れを抑制することが可能となる。
【0039】
[13]本発明のスクリーンの製造方法は、少なくとも一方の面に複数の凹凸部を有しスクリーンの基材となる長尺シートにおける、前記凹凸部の一部に蒸着反射層が選択的に形成されたスクリーンの製造方法であって、本発明の斜方蒸着装置を用いて、前記長尺シートにおける前記凹凸部の一部に蒸着材料を斜方蒸着し、前記蒸着反射層を形成する工程を含むことを特徴とする。
【0040】
本発明のスクリーンの製造方法によれば、本発明の斜方蒸着装置を用いて長尺シートにおける凹凸部の一部に蒸着材料を斜方蒸着し、蒸着反射層を形成する工程を含むため、プロジェクターからの投写光(特に、斜方から投写される投写光)を主に使用者に向けて反射することが可能な投写用のスクリーンを容易に製造することが可能となる。
【0041】
「凹凸部の一部に蒸着材料を斜方蒸着する」とは、例えば、凹凸部が山形形状からなる場合には、当該山形形状における峰で区分される一方の領域の全部又は一部に蒸着材料を斜方蒸着することをいう。また、凹凸部が略半球形状の凹部(いわゆるマイクロレンズ)の組み合わせからなる場合には、当該略半球形状の一部に蒸着材料を斜方蒸着することをいう。
【0042】
[14]本発明の搬送方向変更装置は、長尺シートの搬送に用いる搬送方向変更装置であって、前記搬送方向変更装置を通過する前の前記長尺シートの面又は前記搬送方向変更部を通過した後の前記長尺シートの面に沿い、かつ、水平方向に沿う回転軸を有する複数の水平軸回転体からなる水平軸回転部と、鉛直方向に沿う回転軸を有する複数の鉛直軸回転体からなる鉛直軸回転部とを備えることを特徴とする。
【0043】
本発明の搬送方向変更装置によれば、水平軸回転部と鉛直軸回転部とを備えるため、長尺シートの搬送方向を変更するときにおいて、長尺シートの一方の端と他方の端との進行方向の差異を緩和し、搬送方向を変更するときの長尺シートの捩れを抑制することが可能となる。
【0044】
また、本発明の搬送方向変更装置によれば、長尺シートが、まず水平方向に沿う回転軸を有する複数の水平軸回転体からなる水平軸回転部に接触し、次に鉛直方向に沿う回転軸を有する複数の鉛直軸回転体からなる鉛直軸回転部に接触するか、又は、この逆の順番で接触するかであるため、搬送方向変更前の長尺シートの搬送方向に沿って回転する水平軸回転体又は鉛直軸回転体と、搬送方向変更後の長尺シートの搬送方向に沿って回転する鉛直軸回転体又は水平軸回転体とにより、搬送方向を変更するときの長尺シートの捩れをより一層抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】実施形態1に係る斜方蒸着装置1を説明するために示す図。
【図2】実施形態1における長尺シートW1を説明するために示す図。
【図3】実施形態1における斜方蒸着部40を説明するために示す図。
【図4】実施形態1におけるスクリーンSCRの部分拡大断面図。
【図5】実施形態1に係るスクリーンの製造方法のフローチャート。
【図6】実施形態2に係る斜方蒸着装置2を説明するために示す図。
【図7】実施形態2における第1水平軸回転部82を説明するために示す図。
【図8】実施形態2における第1水平軸回転体83を説明するために示す図。
【図9】実施形態2における第1鉛直軸回転部86を説明するために示す図。
【図10】実施形態3に係る斜方蒸着装置3を説明するために示す図。
【図11】実施形態3における第1斜め回転部(前段搬送方向変更部100)を説明するために示す図。
【図12】実施形態3における第1斜め回転体102を説明するために示す図。
【図13】変形例1における長尺シートW2を説明するために示す図。
【図14】変形例2における長尺シートW3を説明するために示す図。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、本発明の斜方蒸着装置、スクリーンの製造方法及び搬送方向変更装置について、図に示す実施の形態に基づいて説明する。
【0047】
[実施形態1]
図1は、実施形態1に係る斜方蒸着装置1を説明するために示す図である。図1(a)は斜方蒸着装置1の斜視図であり、図1(b)は斜方蒸着装置1の正面図であり、図1(c)は斜方蒸着装置1の側面図である。図1における矢印は、長尺シートW1の搬送方向を示すものである。
図2は、実施形態1における長尺シートW1を説明するために示す図である。図2(a)は長尺シートW1の1単位を示す平面図であり、図2(b)は図2(a)のA1−A1断面の一部を拡大して示す部分拡大断面図である。なお、図2においては、説明のために凹凸部の数を減らし、また、凹凸部を大きく表示している。後述する図3、図4、図13及び図14においても同様である。
【0048】
図3は、実施形態1における斜方蒸着部40を説明するために示す図である。図3(a)は斜方蒸着部40の内部を示す正面断面図であり、図3(b)は斜方蒸着部40の内部を示す側面断面図である。図3における矢印は、蒸着源44から飛散する蒸着材料Mを示すものである。
図4は、実施形態1におけるスクリーンSCRの部分拡大断面図である。なお、図4は模式図であり、蒸着された蒸着材料Mの厚さを大きく表示している。
【0049】
斜方蒸着装置やその構成要素を説明する図面においては、互いに直交する3つの方向をそれぞれx軸方向(図1において長尺シートW1が第1搬送方向変更部20から第2搬送方向変更部60まで搬送される方向、つまり縦平面内における水平方向)、y軸方向(図1(b)における紙面に平行かつx軸に垂直な方向)及びz軸方向(図1(b)における紙面に垂直かつx軸に垂直な方向)として表示する。
【0050】
まず、実施形態1に係る斜方蒸着装置1の構成を説明する。
実施形態1に係る斜方蒸着装置1は、図1に示すように、一方の面(図2(a)において示す面)に複数の凹凸部を有する長尺シートW1に、一方の面が鉛直方向を含む縦平面に沿い、かつ、搬送方向が前記縦平面内における水平方向に沿う状態で斜方蒸着を行う斜方蒸着装置であって、前段搬送方向変更部10と、第1搬送方向変更部20と、補助ローラー部30,50と、斜方蒸着部40と、第2搬送方向変更部60と、後段搬送方向変更部70とを備える。実施形態1に係る斜方蒸着装置1は、いわゆるバッチ式の斜方蒸着装置であり、蒸着ごとに長尺シートW1の搬送が停止する。なお、本発明の斜方蒸着装置は上記のものに限られるものではなく、例えば、連続蒸着式の斜方蒸着装置とすることもできる。
【0051】
斜方蒸着装置1においては、図1に表示する矢印で示すように長尺シートW1を搬送する。なお、図示及び詳しい説明は省略するが、実施形態1においては、斜方蒸着装置1の前段には、例えば、長尺シートW1を繰り出す繰り出しローラー等があり、斜方蒸着装置1の後段には、例えば、長尺シートW1を巻き取る巻き取りローラー等がある。当該繰り出しローラー及び巻き取りローラーは、回転軸が水平方向に沿うように設置される。
【0052】
長尺シートW1における凹凸部は、図2に示すように、鋸刃状の断面形状を有する複数の山形形状からなる。
実施形態1で用いる長尺シートW1は、図2(a)に示す長尺シートW1の1単位を紙面横方向に連結したパターンを有する。
実施形態1で用いる長尺シートW1においては、当該山形形状は、使用者から見たときに、直線(図2(a)の長方形内の実線)に沿って形成されている。なお、本発明の斜方蒸着装置においては、上記の長尺シートW1に限られず、製造するものに合わせて様々な凹凸部が形成された長尺シートに蒸着を行うことができる。
【0053】
実施形態1においては、斜方蒸着装置1は、山形形状の広い方(当該山形形状を断面形状としたとき、山形形状における峰で区分される領域のうち、傾斜角度が緩い方の領域)の一部に蒸着材料Mを選択的に蒸着する(図3及び図4参照。)。なお、後述するスクリーンの製造方法に示すように、図4の状態のものが実施形態1に係るスクリーンの製造方法で製造するスクリーンSCRであるということになる。
【0054】
長尺シートとしては、目的に応じて様々な材料からなるものを用いることができる。好適に用いることができるものの例としては、プレス成形や型による転写等により蒸着面の凹凸部を容易に形成することが可能なもの(例えば、熱可塑性樹脂等からなるもの)を挙げることができる。
【0055】
前段搬送方向変更部10は、一方の面が鉛直方向に対して垂直な面に沿って搬送される(寝せた状態で搬送される)長尺シートW1の搬送方向を、第1搬送方向変更部20の方に向けて変更する。前段搬送方向変更部10は、図1に示すように、前段搬送方向変更部10を通過する前後いずれの長尺シートW1の搬送方向に対しても垂直な回転軸を有する2本の前段搬送方向変更ローラー12,14を備える。前段搬送方向変更ローラー12,14は、図示しない回転力付加装置(例えば、回転モーター)により回転し、長尺シートW1を搬送する。
【0056】
実施形態1においては、前段搬送方向変更部10は、長尺シートW1の搬送方向を上方に向けて90°変更する。このため、長尺シートW1は、図1に示すように、一方の面が縦平面に沿い、かつ、搬送方向が縦平面内における水平方向以外の方向(鉛直方向)に沿うことになる。
【0057】
実施形態1においては、第1搬送方向変更部20は、一方の面が縦平面に沿い、かつ、搬送方向が縦平面内における水平方向以外の方向に沿う長尺シートW1を、一方の面が縦平面に沿い、かつ、搬送方向が縦平面内における水平方向に沿うようにする(立たせた状態にする)。
【0058】
第1搬送方向変更部20は、第1搬送方向変更部20を通過する前後いずれの長尺シートW1の搬送方向に対しても斜めの回転軸を有し、表面の摩擦力が低い第1低摩擦ローラーを備える。当該第1低摩擦ローラーは、実施形態1においては、第1搬送方向変更部20を通過する前後いずれの長尺シートW1の搬送方向に対しても45°で交わる回転軸を有する。第1低摩擦ローラーとしては、例えば、表面にポリテトラフルオロエチレン等の低摩擦力樹脂によるコーティングが施された回転ローラーを用いることができる。
【0059】
補助ローラー部30は、第1搬送方向変更部20と斜方蒸着部40との間に配置され、長尺シートW1の搬送を補助する。補助ローラー部30は、補助ローラー32,34を備える。補助ローラー32,34は、図示しない回転力付加装置(例えば、回転モーター)により回転する。
【0060】
斜方蒸着部40は、第1搬送方向変更部20の後段に配置され、凹凸部の一部に蒸着材料Mを斜方蒸着する。よって、一方の面が縦平面に沿う状態の長尺シートW1に斜方蒸着を行うことになる。斜方蒸着部40は、図3に示すように、真空チャンバー42、蒸着源44及び真空保持部46,48を備える。
真空チャンバー42は、蒸着時において、内部を蒸着に適した環境(例えば、10−2Pa〜10−3Paの低圧環境)に保つ。蒸着源44及び真空保持部46,48は、真空チャンバー42内に配置されている。真空チャンバー42は、図示しない真空ポンプ及び排気装置を有する。
【0061】
蒸着源44は、長尺シートW1に対して斜め下に配置され(図3(b)参照。)、蒸着時において蒸着材料Mを収容し加熱する。なお、蒸着材料としては、目的に応じて様々なものを用いることができ、例えば、金属や無機誘電体を用いることができる。実施形態1においては、蒸着材料Mはアルミニウムからなる。詳しい説明は省略するが、蒸着源44は、蒸着材料Mを収容するるつぼ及び蒸着材料Mを加熱する電子銃(電子ビームを射出する装置)を備える。実施形態1においては、電子銃からの電子ビームによりるつぼ中の蒸着材料Mが加熱され、微細な粒子となった蒸着材料Mが真空チャンバー42内に放出される。
【0062】
実施形態1における斜方蒸着部40においては、図3に示すように、1個の蒸着源44を用いているが、本発明はこれに限定されるものではない。斜方蒸着部や長尺シートの大きさ等に合わせて任意の数の蒸着源を用いることができる。
【0063】
真空保持部46,48は、長尺シートW1が搬送されるときに開き、蒸着時に閉じることにより、蒸着時において真空チャンバー42内を蒸着に適した環境に保つ。
【0064】
補助ローラー部50は、図1に示すように、斜方蒸着部40と第2搬送方向変更部60との間に配置され、長尺シートW1の搬送を補助する。補助ローラー部50は、補助ローラー52,54を備える。補助ローラー52,54は、図示しない回転力付加装置(例えば、回転モーター)により回転する。
【0065】
第2搬送方向変更部60は、斜方蒸着部40からの長尺シートW1の搬送方向を、後段の構成要素(この場合、後段搬送方向変更部70)に向けて変更する。第2搬送方向変更部60は、第2搬送方向変更部60を通過する前後いずれの長尺シートW1の搬送方向に対しても斜めの回転軸を有し、表面の摩擦力が低い第2低摩擦ローラーを備える。
【0066】
当該第2低摩擦ローラーは、実施形態1においては、第2搬送方向変更部60を通過する前後いずれの長尺シートW1の搬送方向に対しても45°で交わる回転軸を有する。第2低摩擦ローラーとしては、表面にポリテトラフルオロエチレン等の低摩擦力樹脂によるコーティングが施された回転ローラーを用いることができる。
このため、実施形態1においては、第1搬送方向変更部20と第2搬送方向変更部60とで同種の構成要素が用いられていることになる。
【0067】
後段搬送方向変更部70は、第2搬送方向変更部60からの長尺シートW1の搬送方向を変更して、長尺シートW1を、一方の面が鉛直方向に対して垂直な面に沿うようにする(長尺シートを寝せた状態にする)。後段搬送方向変更部70は、後段搬送方向変更部70を通過する前後いずれの長尺シートW1の搬送方向に対しても垂直な回転軸を有する2本の後段搬送方向変更ローラー72,74を備える。後段搬送方向変更ローラー72,74は、図示しない回転力付加装置(例えば、回転モーター)により回転し、長尺シートW1を搬送する。実施形態1においては、後段搬送方向変更部70は搬送方向を水平方向に向けて90°変更する。
このため、実施形態1においては、前段搬送方向変更部10と後段搬送方向変更部70とで同種の構成要素が用いられていることになる。
【0068】
次に、実施形態1に係るスクリーンの製造方法について説明する。
図5は、実施形態1に係るスクリーンの製造方法のフローチャートである。
【0069】
実施形態1に係るスクリーンの製造方法は、一方の面に複数の凹凸部を有しスクリーンの基材となる長尺シートにおける、凹凸部の一部に蒸着反射層Rが選択的に形成されたスクリーンの製造方法であって、図5に示すように、長尺シート準備工程S1及び蒸着工程S2を含む。
長尺シート準備工程S1は、長尺シートW1を準備する工程である。長尺シートW1の準備については一般的な方法を用いることができ、例えば、プレス成形や型による転写により一方の面の凹凸部(実施形態1においては鋸刃状の山形形状)を形成することにより長尺シートW1を準備することができる。
【0070】
蒸着工程S2は、実施形態1に係る斜方蒸着装置1を用いて、長尺シートW1における凹凸部の一部に蒸着材料Mを斜方蒸着し、蒸着反射層Rを形成する工程である。具体的には、斜方蒸着装置1を用い、山形形状の広い方(当該山形形状を断面形状としたとき、山形形状における峰で区分される領域のうち、傾斜角度が緩い方の領域)の一部に蒸着材料Mを選択的に蒸着して、当該蒸着材料Mを蒸着反射層Rとする(図4参照。)。その後、長尺シートW1を1単位ごとに切り出すことによりスクリーンSCRを製造することができる。
【0071】
次に、実施形態1に係る斜方蒸着装置1及びスクリーンの製造方法の効果を説明する。
【0072】
実施形態1に係る斜方蒸着装置1によれば、凹凸部の一部に蒸着材料Mを斜方蒸着する斜方蒸着部40を備えるため、少なくとも一方の面に複数の凹凸部を有する長尺シートを用いた場合、凹凸部の一部に蒸着材料を選択的に蒸着することが可能な斜方蒸着装置となる。
【0073】
また、実施形態1に係る斜方蒸着装置1によれば、一方の面が縦平面以外の平面に沿う、又は、搬送方向が縦平面内における水平方向以外の方向に沿う長尺シートW1を、一方の面が縦平面に沿い、かつ、搬送方向が縦平面内における水平方向に沿うようにする(長尺シートを立たせた状態にする)第1搬送方向変更部20を備えるため、立たせた状態の長尺シートを斜方蒸着部に搬送して、立たせた状態の長尺シートに斜方蒸着を行うことが可能となる。
【0074】
また、実施形態1に係る斜方蒸着装置1によれば、一方の面が鉛直方向に対して垂直な面に沿って搬送される長尺シートW1の搬送方向を、第1搬送方向変更部20の方に向けて変更する前段搬送方向変更部10を備えるため、前段搬送方向変更部と第1搬送方向変更部とで搬送方向を変更するため、長尺シートを段階的に寝せた状態から立たせた状態にすることとなり、その結果、長尺シートを寝せた状態から立たせた状態にするときの長尺シートの捩れを抑制することが可能となる。
【0075】
また、実施形態1に係る斜方蒸着装置1によれば、前段搬送方向変更部10は、前段搬送方向変更部10を通過する前後いずれの長尺シートW1の搬送方向に対しても垂直な回転軸を有する前段搬送方向変更ローラー12,14を備えるため、簡易に、かつ、安定して長尺シートの搬送方向を変更することが可能となる。
【0076】
また、実施形態1に係る斜方蒸着装置1によれば、第1搬送方向変更部20は、第1搬送方向変更部20を通過するいずれの長尺シートW1の搬送方向に対しても斜めの回転軸を有し、表面の摩擦力が低い第1低摩擦ローラーを備えるため、長尺シートの搬送方向を変更するときにおいて、長尺シートの一方の端と他方の端との進行方向の差異を緩和し、搬送方向を変更するときの長尺シートの捩れを抑制することが可能となる。
【0077】
また、実施形態1に係る斜方蒸着装置1によれば、斜方蒸着部40からの長尺シートW1の搬送方向を、後段の構成要素に向けて変更する第2搬送方向変更部60を備えるため、斜方蒸着部で斜方蒸着した長尺シートを後段の構成要素に向けて搬送することが可能となる。
【0078】
また、実施形態1に係る斜方蒸着装置1によれば、第2搬送方向変更部60からの長尺シートW1の搬送方向を変更して、長尺シートW1を、一方の面が鉛直方向に対して垂直な面に沿うようにする後段搬送方向変更部70を備えるため、第2搬送方向変更部と後段搬送方向変更部とで搬送方向を変更するため、長尺シートを段階的に立たせた状態から寝せた状態にすることとなり、その結果、長尺シートを立たせた状態から寝せた状態にするときの長尺シートの捩れを抑制することが可能となる。
【0079】
また、実施形態1に係る斜方蒸着装置1によれば、後段搬送方向変更部70は、後段搬送方向変更部70を通過する前後いずれの長尺シートW1の搬送方向に対しても垂直な回転軸を有する後段搬送方向変更ローラー72,74を備えるため、簡易に、かつ、安定して長尺シートの搬送方向を変更し、長尺シートを寝せた状態にすることが可能となる。
【0080】
また、実施形態1に係る斜方蒸着装置1によれば、第2搬送方向変更部60は、第2搬送方向変更部60を通過する前後いずれの長尺シートW1の搬送方向に対しても斜めの回転軸を有し、表面の摩擦力が低い第2低摩擦ローラーを備えるため、斜方蒸着部からの長尺シートの搬送方向を変更するときにおいて、長尺シートの一方の端と他方の端との進行方向の差異を緩和し、搬送方向を変更するときの長尺シートの捩れを抑制することが可能となる。
【0081】
実施形態1に係るスクリーンの製造方法によれば、実施形態1に係る斜方蒸着装置1を用いて長尺シートW1における凹凸部の一部に蒸着材料Mを斜方蒸着し、蒸着反射層Rを形成する工程(蒸着工程S2)を含むため、プロジェクターからの投写光(特に、斜方から投写される投写光)を主に使用者に向けて反射することが可能な投写用のスクリーンを容易に製造することが可能となる。
【0082】
[実施形態2]
図6は、実施形態2に係る斜方蒸着装置2を説明するために示す図である。図6(a)は斜方蒸着装置2の斜視図であり、図6(b)は斜方蒸着装置2の正面図であり、図6(c)は斜方蒸着装置2の側面図である。図6における矢印は、長尺シートW1の搬送方向を示すものである。
図7は、実施形態2における第1水平軸回転部82を説明するために示す図である。図7(a)は第1水平軸回転部82の斜視図であり、図7(b)は第1水平軸回転部82の正面図であり、図7(c)は第1水平軸回転部82の側面図である。
【0083】
図8は、実施形態2における第1水平軸回転体83を説明するために示す図である。図8(a)は第1水平軸回転体83の斜視図であり、図8(b)は第1水平軸回転体83の正面図であり、図8(c)は第1水平軸回転体83の側面図である。
図9は、実施形態2における第1鉛直軸回転部86を説明するために示す図である。図9(a)は第1鉛直軸回転部86の斜視図であり、図9(b)は第1鉛直軸回転部86の正面図であり、図9(c)は第1鉛直軸回転部86の側面図である。
【0084】
実施形態2に係る斜方蒸着装置2は、基本的には実施形態1に係る斜方蒸着装置1と同様の構成を有するが、第1搬送方向変更部及び第2搬送方向変更部の構成が実施形態1に係る斜方蒸着装置1とは異なる。すなわち、実施形態2に係る斜方蒸着装置2においては、図6に示すように、第1搬送方向変更部80は第1水平軸回転部82と第1鉛直軸回転部86とを備え、第2搬送方向変更部90は第2鉛直軸回転部92と第2水平軸回転部96とを備える。
【0085】
第1水平軸回転部82は、図6〜図8に示すように、第1搬送方向変更部82を通過する前の長尺シートW1の搬送方向と垂直であり、かつ、水平方向に沿う回転軸83axを有する13個の第1水平軸回転体83からなる。第1水平軸回転体83は、図8に示すように、回転可能な回転部84及び固定されている固定部85を有し、全体として車輪状の形状を有する。第1水平軸回転体83としては、例えば、ボールベアリングを用いることができる。13個の第1水平軸回転体83は、それぞれ固定部85同士で、45°の角度で配列するように固定されている。
【0086】
第1水平軸回転体83の回転部84においては、長尺シートW1と接触する部分に面取りが施されており、当該面取りの角度は回転軸に対して45°である。なお、第1水平軸回転体83と長尺シートW1とは斜めに(第1水平軸回転体83の回転軸に対して45°で)接する。第1鉛直軸回転体87、第2鉛直軸回転体93及び第2水平軸回転体97についても同様である。実施形態2においては、第1水平軸回転体83、第1鉛直軸回転体87、第2鉛直軸回転体93及び第2水平軸回転体97と、長尺シートW1とは斜めに接するため、上記のような構成とすることにより、第1水平軸回転体83、第1鉛直軸回転体87、第2鉛直軸回転体93及び第2水平軸回転体97の角で長尺シートW1が損傷するのを防止することが可能となる。
【0087】
第1鉛直軸回転部86は、図6及び図9に示すように、第1水平軸回転部82の後段に配置され鉛直方向に沿う回転軸87ax(図示せず。)を有する13個の第1鉛直軸回転体87からなる。第1鉛直軸回転体87は、第1水平軸回転体83と向き以外は同様の構成を有するために詳しい説明は省略するが、回転部88及び固定部89を有する。13個の第1鉛直軸回転体87は、それぞれ固定部89同士で、45°の角度で配列するように固定されている。
【0088】
第2鉛直軸回転部92は、鉛直方向に沿う回転軸93ax(図示せず。)を有する13個の第2鉛直軸回転体93(符号を図示せず。)からなる。第2鉛直軸回転部92は、向き以外は第1鉛直軸回転部86と同様の構成を有する。第2鉛直軸回転体93は、第1水平軸回転体83と向き以外は同様の構成を有するために詳しい説明は省略するが、回転部94及び固定部95(いずれも符号を図示せず。)を有する。13個の第2鉛直軸回転体93は、それぞれ固定部95同士で、45°の角度で配列するように固定されている。
【0089】
第2水平軸回転部96は、第2鉛直軸回転部92の後段に配置され、第2搬送方向変更部96を通過した後の長尺シートW1の搬送方向と垂直であり、かつ、水平方向に沿う回転軸97ax(図示せず。)を有する13個の第2水平軸回転体97(符号を図示せず。)からなる。第2水平軸回転部96は、向き以外は第1水平軸回転部82と同様の構成を有する。第2水平軸回転体97は、第1水平軸回転体83と同様の構成を有するために詳しい説明は省略するが、回転部98及び固定部99(いずれも符号を図示せず。)を有する。13個の第2水平軸回転体97は、それぞれ固定部99同士で、45°の角度で配列するように固定されている。
【0090】
斜方蒸着装置2における第1搬送方向変更部80及び第2搬送方向変更部90は、いずれも長尺シートW1の搬送に用いる搬送方向変更装置であって、水平方向に沿う回転軸を有する複数の水平軸回転体からなる水平軸回転部と、鉛直方向に沿う回転軸を有する複数の鉛直軸回転体からなる鉛直軸回転部とを備える本発明に係る搬送方向変更装置である。
【0091】
上記のように、実施形態2に係る斜方蒸着装置2は、第1搬送方向変更部及び第2搬送方向変更部の構成が実施形態1に係る斜方蒸着装置1とは異なるが、凹凸部の一部に蒸着材料Mを斜方蒸着する斜方蒸着部40を備えるため、実施形態1に係る斜方蒸着装置1と同様に、少なくとも一方の面に複数の凹凸部を有する長尺シートを用いた場合、凹凸部の一部に蒸着材料を選択的に蒸着することが可能な斜方蒸着装置となる。
【0092】
また、実施形態2に係る斜方蒸着装置2によれば、複数の第1水平軸回転体83からなる第1水平軸回転部82と、複数の第1鉛直軸回転体87からなる第1鉛直軸回転部86とを備えるため、長尺シートの搬送方向を変更するときにおいて、長尺シートの一方の端と他方の端との進行方向の差異を緩和し、搬送方向を変更するときの長尺シートの捩れを抑制することが可能となる。
【0093】
また、実施形態2に係る斜方蒸着装置2によれば、長尺シートW1が、まず複数の第1水平軸回転体83からなる第1水平軸回転部82に接触し、次に複数の第1鉛直軸回転体87からなる第1鉛直軸回転部86に接触するため、搬送方向変更前の長尺シートの搬送方向に沿って回転する第1水平軸回転体と、搬送方向変更後の長尺シートの搬送方向に沿って回転する第1鉛直軸回転体とに長尺シートが段階的に接触することになり、その結果、長尺シートを立たせた状態にするときの長尺シートの捩れをより一層抑制することが可能となる。
【0094】
また、実施形態2に係る斜方蒸着装置2によれば、複数の第2鉛直軸回転体93からなる第2鉛直軸回転部92と、複数の第2水平軸回転体97からなる第2水平軸回転部96とを備えるため、斜方蒸着部からの長尺シートの搬送方向を変更するときにおいて、長尺シートの一方の端と他方の端との進行方向の差異を緩和し、長尺シートの搬送方向を変更するときの長尺シートの捩れを抑制することが可能となる。
【0095】
また、実施形態2に係る斜方蒸着装置2によれば、長尺シートW1が、まず複数の第2鉛直軸回転体93からなる第2鉛直軸回転部92に接触し、次に複数の第2水平軸回転体97からなる第2水平軸回転部96に接触するため、搬送方向変更前の長尺シートの搬送方向に沿って回転する第2鉛直軸回転体と、搬送方向変更後の長尺シートの搬送方向に沿って回転する第2水平軸回転体とにより、搬送方向を変更するときの長尺シートの捩れをより一層抑制することが可能となる。
【0096】
なお、実施形態2に係る斜方蒸着装置2は、第1搬送方向変更部及び第2搬送方向変更部の構成以外は実施形態1に係る斜方蒸着装置1と同様の構成を有するため、実施形態1に係る斜方蒸着装置1が有する効果のうち該当する効果をそのまま有する。
【0097】
実施形態2に係る搬送方向変更装置(第1搬送方向変更部80及び第2搬送方向変更部90)によれば、水平軸回転部(第1水平軸回転部82及び第2水平軸回転部96)と鉛直軸回転部(第1垂直軸回転部86及び第2鉛直軸回転部92)とを備えるため、長尺シートの搬送方向を変更するときにおいて、長尺シートの一方の端と他方の端との進行方向の差異を緩和し、搬送方向を変更するときの長尺シートの捩れを抑制することが可能となる。
【0098】
また、実施形態2に係る搬送方向変更装置によれば、長尺シートW1が、まず水平方向に沿う回転軸を有する複数の水平軸回転体からなる水平軸回転部に接触し、次に鉛直方向に沿う回転軸を有する複数の鉛直軸回転体からなる鉛直軸回転部に接触するか、又は、この逆の順番で接触するかであるため、搬送方向変更前の長尺シートの搬送方向に沿って回転する水平軸回転体又は鉛直軸回転体と、搬送方向変更後の長尺シートの搬送方向に沿って回転する鉛直軸回転体又は水平軸回転体とにより、搬送方向を変更するときの長尺シートの捩れをより一層抑制することが可能となる。
【0099】
[実施形態3]
図10は、実施形態3に係る斜方蒸着装置3を説明するために示す図である。図10(a)は斜方蒸着装置3の斜視図であり、図10(b)は斜方蒸着装置3の正面図であり、図10(c)は斜方蒸着装置3の側面図である。図10における矢印は、長尺シートW1の搬送方向を示すものである。
図11は、実施形態3における第1斜め回転部(第1搬送方向変更部100)を説明するために示す図である。図11(a)は第1斜め回転部の斜視図であり、図11(b)は第1斜め回転部の正面図であり、図11(c)は第1斜め回転部の側面図である。
図12は、実施形態3における第1斜め回転体102を説明するために示す図である。図12(a)は第1斜め回転体102の斜視図であり、図12(b)は第1斜め回転体102を回転軸102axに垂直な方向から見る図であり、図12(c)は第1斜め回転体102を回転軸102axに沿う方向から見る図である。
【0100】
実施形態3に係る斜方蒸着装置3は、基本的には実施形態1に係る斜方蒸着装置1と同様の構成を有するが、第1搬送方向変更部及び第2搬送方向変更部の構成が実施形態1に係る斜方蒸着装置1とは異なる。すなわち、実施形態3に係る斜方蒸着装置3においては、図10に示すように、第1搬送方向変更部100は第1斜め回転部を備え、第2搬送方向変更部110は第2斜め回転部を備える。
【0101】
第1斜め回転部は、図10及び図11に示すように、第1搬送方向変更部100を通過する前後いずれの長尺シートW1の搬送方向に対しても斜めの回転軸102axを有する13個の第1斜め回転体102からなる。第1斜め回転体102は、図12に示すように、回転可能な回転部103及び固定されている固定部104を有し、全体として車輪状の形状を有する。第1斜め回転体102は、例えば、ボールベアリングを用いることができる。13個の第1斜め回転体102は、第1搬送方向変更部100を通過する前後いずれの長尺シートW1の搬送方向に対しても45°の回転軸を有し、固定部104同士でそれぞれの回転軸が一致するように固定されている。
【0102】
第2斜め回転部は、図10及び図11に示すように、第2搬送方向変更部110を通過する前後いずれの長尺シートW1の搬送方向に対しても斜めの回転軸112ax(図示せず。)を有する13個の第2斜め回転体112(符号を図示せず。)からなる。第2斜め回転体112は、第1斜め回転体102と向き以外は同様の構成を有するために詳しい説明は省略するが、回転部113及び固定部114(いずれも符号を図示せず。)を有する。13個の第2斜め回転体112は、第2搬送方向変更部110を通過する前後いずれの長尺シートW1の搬送方向に対しても45°の回転軸を有し、それぞれ固定部114同士で、それぞれの回転軸が一致するように固定されている。
【0103】
上記のように、実施形態3に係る斜方蒸着装置3は、第1搬送方向変更部及び第2搬送方向変更部の構成が実施形態1に係る斜方蒸着装置1とは異なるが、凹凸部の一部に蒸着材料Mを斜方蒸着する斜方蒸着部40を備えるため、実施形態1に係る斜方蒸着装置1と同様に、少なくとも一方の面に複数の凹凸部を有する長尺シートを用いた場合、凹凸部の一部に蒸着材料を選択的に蒸着することが可能な斜方蒸着装置となる。
【0104】
また、実施形態3に係る斜方蒸着装置3によれば、複数の第1斜め回転体102からなる第1斜め回転部を備えるため、長尺シートの搬送方向を変更するときにおいて、長尺シートの一方の端と他方の端との進行方向の差異を緩和し、搬送方向を変更するときの長尺シートの捩れを抑制することが可能となる。
【0105】
また、実施形態3に係る斜方蒸着装置3によれば、複数の第2斜め回転体112からなる第2斜め回転部を備えるため、斜方蒸着部からの長尺シートの搬送方向を変更するときにおいて、長尺シートの一方の端と他方の端との進行方向の差異を緩和し、搬送方向を変更するときの長尺シートの捩れを抑制することが可能となる。
【0106】
なお、実施形態3に係る斜方蒸着装置3は、第1搬送方向変更部及び第2搬送方向変更部の構成以外は実施形態1に係る斜方蒸着装置1と同様の構成を有するため、実施形態1に係る斜方蒸着装置1が有する効果のうち該当する効果をそのまま有する。
【0107】
以上、本発明を上記の実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。その趣旨を逸脱しない範囲において種々の様態において実施することが可能であり、例えば、次のような変形も可能である。
【0108】
(1)上記各実施形態において記載した斜方蒸着装置の構成要素や長尺シートの数、材質、形状等は例示であり、本発明の効果を損なわない範囲において変更することが可能である。例えば、前段搬送方向変更部、後段搬送方向変更部及び補助ローラー部はいずれも2本のローラーを備えるものとして記載したが、1本のローラーを備えるものとしてもよいし、3本以上のローラーを備えるものとしてもよい。
【0109】
(2)上記各実施形態においては、図2に示すような長尺シートW1を用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。図13は、変形例1における長尺シートW2を説明するために示す図である。図13(a)は長尺シートW2の1単位を示す平面図であり、図13(b)は図13(a)のA2−A2断面の一部を拡大して示す部分拡大断面図である。図14は、変形例2における長尺シートW3を説明するために示す図である。図14(a)は長尺シートW3の1単位を示す平面図であり、図14(b)は図14(a)のA3−A3断面の一部を拡大して示す部分拡大断面図である。本発明においては、例えば、図13に示すような長尺シート(図13(a)に示す1単位を紙面横方向に連結したパターンを有する長尺シートW2)や図14に示すような長尺シート(図14(a)に示す1単位を紙面横方向に連結したパターンを有する長尺シートW3)を用いてもよい。
【0110】
(3)上記各実施形態においては、第2搬送方向変更部及び後段搬送方向変更部70を用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。第2搬送方向変更部及び後段搬送方向変更部を備えなくてもよく、この場合、例えば、第2搬送方向変更部及び後段搬送方向変更部の代わりに長尺シートを立たせた状態のまま巻き取る長尺シート巻き取り部を備えてもよい。
【0111】
(4)上記各実施形態においては、第1搬送方向変更部と第2搬送方向変更部とで同種の構成要素(ローラーや回転体)を用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。第1搬送方向変更部と第2搬送方向変更部とで異なる構成要素(一例を挙げれば、実施形態1における第1搬送方向変更部20と実施形態2における第2搬送方向変更部90との組み合わせ)を用いてもよい。また、上記各実施形態においては、前段搬送方向変更部と後段搬送方向変更部とも同種の構成要素を用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。前段搬送方向変更部と後段搬送方向変更部とで異なる構成要素を用いてもよい。
【0112】
(5)上記各実施形態においては、前段搬送方向変更部10及び後段搬送方向変更部70を用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。前段搬送方向変更部を備えなくてもよく、この場合、例えば、長尺シートを繰り出す繰り出しローラーを代わりに備えるものとすることができる。また、後段搬送方向変更部を備えなくてもよく、この場合、例えば、長尺シートを巻き取る巻き取りローラーを代わりに備えるものとすることができる。
【0113】
(6)上記各実施形態において記載した各構成要素の回転軸の角度や配置角度は例示であり、本発明の効果を損なわない範囲において変更することが可能である。
【0114】
(7)上記各実施形態においては、斜方蒸着部40の前後に配置された補助ローラー部30,50を用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。補助ローラー部を用いなくてもよい。また、さらに多くの補助ローラー部を用いてもよい。さらにまた、異なる位置(例えば、第1搬送方向変更部の前後や、前段搬送方向変更部と第1搬送方向変更部との間)に配置される補助ローラー部を用いてもよい。
【0115】
(8)上記実施形態1においては、長尺シート準備工程S1及び蒸着工程S2を含むスクリーンの製造方法を例にとって本発明のスクリーンの製造方法を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明のスクリーンの製造方法においては、上記工程以外にも既知の方法を用いる種々の工程(例えば、蒸着工程後の後処理工程や仕上工程)を含んでもよい。
【0116】
(9)上記実施形態2においては、本発明の搬送方向変更装置を本発明の斜方蒸着装置2に適用した場合を例にとって説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明の搬送方向変更装置は、長尺シートの搬送方向を変更する構成要素を含む装置であれば、種々の装置(長尺シート搬送装置等)に適用することができる。
【0117】
(10)上記各実施形態においては、長尺シートW1の搬送方向を90°変更する前段搬送方向変更部を用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。長尺シートの搬送方向を90°以外の角度に変更する前段搬送方向変更部を用いてもよい。この場合、長尺シートは、一方の面が斜めの平面に沿う状態で第1搬送方向変更部に向かうため、一方の面が縦平面以外の平面に沿い、かつ、搬送方向が縦平面内における水平方向以外の方向に沿うということになる。なお、この場合、第1搬送方向変更部の角度(ローラーを有する場合はローラーの回転軸の角度。複数の回転体を有する場合は回転体の配列角度。)は、第1搬送方向変更部を通過する前後いずれの長尺シートの搬送方向に対しても45°以外の角度となる。本発明における第1搬送方向変更部は、上記のように、一方の面が縦平面以外の平面に沿い、かつ、搬送方向が縦平面内における水平方向以外の方向に沿う長尺シートを、一方の面が縦平面に沿い、かつ、搬送方向が縦平面内における水平方向に沿うようにするものであってもよい。また、後段搬送方向変更部についても同様である。
【0118】
(11)上記各実施形態においては、一方の面が縦平面に沿い、かつ、搬送方向が縦平面内における水平方向以外の方向に沿う長尺シートを、一方の面が縦平面に沿い、かつ、搬送方向が縦平面内における水平方向に沿うようにする第1搬送方向変更部を用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。一方の面が縦平面以外の平面に沿い、かつ、搬送方向が縦平面内における水平方向に沿う長尺シートを、一方の面が縦平面に沿い、かつ、搬送方向が縦平面内における水平方向に沿うようにしてもよい。長尺シートが「一方の面が縦平面以外の平面に沿い、かつ、搬送方向が縦平面内における水平方向に沿う」状態になる場合としては、例えば、長尺シートが寝た状態であり、その搬送方向が斜方蒸着部の内部における長尺シートの搬送方向と同様である場合を挙げることができる。この場合、第1搬送方向変更部は、長尺シートの搬送方向を変えずに長尺シートを捻って長尺シートを立たせるようにするもの(例えば、角度を変更する複数のローラーを備えるもの)となる。
【符号の説明】
【0119】
1,2,3…斜方蒸着装置、10…前段搬送方向変更部、12,14…前段搬送方向変更ローラー、20,80,100…第1搬送方向変更部、30,50…補助ローラー部、32,34,52,54…補助ローラー、40…斜方蒸着部、42…真空チャンバー、44…蒸着源、46,48…真空保持部、60,90,110…第2搬送方向変更部、70…後段搬送方向変更部、72,74…後段搬送方向変更ローラー、82…第1水平軸回転部、83…第1水平軸回転体、83ax,102ax…回転軸、84,88,103…回転部、85,89,104…固定部、86…第1鉛直軸回転部、87…第2鉛直軸回転体、92…第2鉛直軸回転部、96…第2水平軸回転部、102…第1斜め回転体、M…蒸着物質、R…蒸着反射層、SCR…スクリーン、W1,W2,W3…長尺シート
【技術分野】
【0001】
本発明は、斜方蒸着装置、スクリーンの製造方法及び搬送方向変更装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、長尺シートに蒸着を行う蒸着装置が広く知られている(例えば、特許文献1参照。)。従来の蒸着装置によれば、長尺シートにおける一方の全面に渡って安定した蒸着を行うことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−323552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の蒸着装置においては、少なくとも一方の面に複数の凹凸部を有する長尺シートを用いた場合、凹凸部の一部に蒸着材料を選択的に蒸着することができないという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は上記の問題を解決するためになされたものであり、少なくとも一方の面に複数の凹凸部を有する長尺シートを用いた場合、凹凸部の一部に蒸着材料を選択的に蒸着することが可能な蒸着装置を提供することを目的とする。また、上記のような斜方蒸着装置を用いるスクリーンの製造方法を提供することを目的とする。さらにまた、搬送方向を変更するときの長尺シートの捩れを抑制することが可能な搬送方向変更装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ところで、凹凸部の一部に蒸着材料を選択的に蒸着する蒸着装置として、対象物(本発明の場合は長尺シート)に対して斜め方向から蒸着物質を蒸着する斜方蒸着部を備える斜方蒸着装置が考えられる(後述する図3参照。)。このような斜方蒸着部においては、面が鉛直方向を含む縦平面に沿い、かつ、搬送方向が縦平面内における水平方向に沿う(いわゆる「立たせた」)状態で蒸着を行うことが好ましいが、長尺シートの搬送には面が鉛直方向に対して垂直な面に沿う(いわゆる「寝せた」)状態で搬送を行うことが搬送の安定性の観点から好ましく、また、繰り出しロール等を立たせておくと多大な体積を占有してしまうため、従来の蒸着装置のような蒸着装置に上記の斜方蒸着部をそのまま適用することができなかった。そこで、本発明の発明者は、上記の点を踏まえた鋭意研究の結果、長尺シートの搬送方向を変更する構成要素を含めた斜方蒸着装置を想到し、本発明として完成させた。本発明は以下の構成要素からなる。
【0007】
[1]本発明の斜方蒸着装置は、少なくとも一方の面に複数の凹凸部を有する長尺シートに、前記一方の面が鉛直方向を含む縦平面に沿い、かつ、搬送方向が前記縦平面内における水平方向に沿う状態で斜方蒸着を行う斜方蒸着装置であって、前記一方の面が前記縦平面以外の平面に沿う、又は、搬送方向が前記縦平面内における水平方向以外の方向に沿う長尺シートを、前記一方の面が前記縦平面に沿い、かつ、搬送方向が前記縦平面内における水平方向に沿うようにする第1搬送方向変更部と、前記第1搬送方向変更部の後段に配置され、前記凹凸部の一部に蒸着材料を斜方蒸着する斜方蒸着部とを備えることを特徴とする。
【0008】
このため、本発明の斜方蒸着装置は、凹凸部の一部に蒸着材料を斜方蒸着する斜方蒸着部を備えるため、少なくとも一方の面に複数の凹凸部を有する長尺シートを用いた場合、凹凸部の一部に蒸着材料を選択的に蒸着することが可能な斜方蒸着装置となる。
【0009】
また、本発明の斜方蒸着装置によれば、一方の面が縦平面以外の平面に沿う、又は、搬送方向が縦平面内における水平方向以外の方向に沿う長尺シートを、一方の面が縦平面に沿い、かつ、搬送方向が縦平面内における水平方向に沿うようにする(長尺シートを立たせた状態にする)第1搬送方向変更部を備えるため、立たせた状態の長尺シートを斜方蒸着部に搬送して、立たせた状態の長尺シートに斜方蒸着を行うことが可能となる。
【0010】
なお、本発明において「鉛直方向(重力に沿う方向)」というときには、厳密な鉛直方向のみをいうものではなく、実際上鉛直方向として扱える方向も含んでいう。「水平方向(重力に対して垂直な方向)」、「垂直」及び「平行」についても同様であり、実際上「水平方向」、「垂直」又は「平行」として扱える方向も含んでいう。
【0011】
斜方蒸着に用いる「少なくとも一方の面に複数の凹凸部を有する長尺シート」は、例えば、プロジェクターからの投写光を主に使用者に向けて反射する投写用のスクリーンを製造するときに用いられる(後述する実施形態1参照。)。本発明の斜方蒸着装置は、上記のようなスクリーンを製造する用途において(つまり、投写用スクリーン製造用蒸着装置として)好適に用いることができる。
【0012】
[2]本発明の斜方蒸着装置においては、前記一方の面が鉛直方向に対して垂直な面に沿って搬送される前記長尺シートの搬送方向を、前記第1搬送方向変更部の方に向けて変更する前段搬送方向変更部をさらに備えることが好ましい。
【0013】
このような構成とすることにより、前段搬送方向変更部と第1搬送方向変更部とで搬送方向を変更するため、長尺シートを段階的に寝せた状態から立たせた状態にすることとなり、その結果、長尺シートを寝せた状態から立たせた状態にするときの長尺シートの捩れを抑制することが可能となる。
【0014】
なお、「長尺シートの捩れ」とは、搬送方向を変更することに起因して、一方の面の凹凸部をはじめとする長尺シートの形状が捩れてしまう事をいう。
【0015】
[3]本発明の斜方蒸着装置においては、前記前段搬送方向変更部は、前記前段搬送方向変更部を通過する前後いずれの前記長尺シートの搬送方向に対しても垂直な回転軸を有する前段搬送方向変更ローラーを備えることが好ましい。
【0016】
このような構成とすることにより、簡易に、かつ、安定して長尺シートの搬送方向を変更することが可能となる。
【0017】
[4]本発明の斜方蒸着装置においては、前記第1搬送方向変更部は、前記第1搬送方向変更部を通過する前後いずれの前記長尺シートの搬送方向に対しても斜めの回転軸を有し、表面の摩擦力が低い第1低摩擦ローラーを備えることが好ましい。
【0018】
ところで、第1搬送方向変更部においては、長尺シートを折り曲げるように搬送方向を変更するため、長尺シートの一方の端と他方の端とで進行方向が異なる状態となり、長尺シートの捩れの原因となることがある。しかしながら、上記のような構成とすることにより、表面の摩擦力が低い第1低摩擦ローラーを備えるため、長尺シートの搬送方向を変更するときにおいて、長尺シートの一方の端と他方の端との進行方向の差異を緩和し、搬送方向を変更するときの長尺シートの捩れを抑制することが可能となる。
【0019】
[5]本発明の斜方蒸着装置においては、前記第1搬送方向変更部は、前記第1搬送方向変更部を通過する前の前記長尺シートの前記一方の面に沿い、かつ、水平方向に沿う回転軸を有する複数の第1水平軸回転体からなる第1水平軸回転部と、前記第1水平軸回転部の後段に配置され鉛直方向に沿う回転軸を有する複数の第1鉛直軸回転体からなる第1鉛直軸回転部とを備えることも好ましい。
【0020】
このような構成とすることにより、複数の第1水平軸回転体からなる第1水平軸回転部と、複数の第1鉛直軸回転体からなる第1鉛直軸回転部とを備えるため、長尺シートの搬送方向を変更するときにおいて、長尺シートの一方の端と他方の端との進行方向の差異を緩和し、搬送方向を変更するときの長尺シートの捩れを抑制することが可能となる。
【0021】
また、上記のような構成とすることにより、長尺シートが、まず複数の第1水平軸回転体からなる第1水平軸回転部に接触し、次に複数の第1鉛直軸回転体からなる第1鉛直軸回転部に接触するため、搬送方向変更前の長尺シートの搬送方向に沿って回転する第1水平軸回転体と、搬送方向変更後の長尺シートの搬送方向に沿って回転する第1鉛直軸回転体とに長尺シートが段階的に接触することになり、その結果、長尺シートを立たせた状態にするときの長尺シートの捩れをより一層抑制することが可能となる。
【0022】
なお、第1水平軸回転体は、水平方向に沿う回転軸を有するため、いわゆる「縦回転」をする回転体となる。後述する第2水平軸回転体も同様である。また、第1鉛直軸回転体は、鉛直方向に回転軸を有するため、いわゆる「横回転」をする回転体となる。後述する第2鉛直軸回転体も同様である。
【0023】
[6]本発明の斜方蒸着装置においては、前記第1搬送方向変更部は、前記第1搬送方向変更部を通過する前後いずれの前記長尺シートの搬送方向に対しても斜めの回転軸を有する複数の第1斜め回転体からなる第1斜め回転部を備えることも好ましい。
【0024】
このような構成とすることにより、複数の第1斜め回転体からなる第1斜め回転部を備えるため、長尺シートの搬送方向を変更するときにおいて、長尺シートの一方の端と他方の端との進行方向の差異を緩和し、搬送方向を変更するときの長尺シートの捩れを抑制することが可能となる。
【0025】
[7]本発明の斜方蒸着装置においては、前記斜方蒸着部からの前記長尺シートの搬送方向を、後段の構成要素に向けて変更する第2搬送方向変更部をさらに備えることが好ましい。
【0026】
このような構成とすることにより、斜方蒸着部で斜方蒸着した長尺シートを後段の構成要素に向けて搬送することが可能となる。
【0027】
「後段の構成要素」とは、第2搬送方向変更部の後段に配置される構成要素のことをいい、このような構成要素としては、例えば、別の搬送方向変更部(後述する後段搬送方向部)や、巻き取りローラーを用いることができる。
【0028】
[8]本発明の斜方蒸着装置においては、前記第2搬送方向変更部からの前記長尺シートの搬送方向を変更して、前記長尺シートを、前記一方の面が鉛直方向に対して垂直な面に沿うようにする後段搬送方向変更部をさらに備えることが好ましい。
【0029】
このような構成とすることにより、第2搬送方向変更部と後段搬送方向変更部とで搬送方向を変更するため、長尺シートを段階的に立たせた状態から寝せた状態にすることとなり、その結果、長尺シートを立たせた状態から寝せた状態にするときの長尺シートの捩れを抑制することが可能となる。
【0030】
[9]本発明の斜方蒸着装置においては、前記後段搬送方向変更部は、前記後段搬送方向変更部を通過する前後いずれの前記長尺シートの搬送方向に対しても垂直な回転軸を有する後段搬送方向変更ローラーを備えることが好ましい。
【0031】
このような構成とすることにより、簡易に、かつ、安定して長尺シートの搬送方向を変更し、長尺シートを寝せた状態にすることが可能となる。
【0032】
[10]本発明の斜方蒸着装置においては、前記第2搬送方向変更部は、前記第2搬送方向変更部を通過する前後いずれの前記長尺シートの搬送方向に対しても斜めの回転軸を有し、表面の摩擦力が低い第2低摩擦ローラーを備えることが好ましい。
【0033】
このような構成とすることにより、表面の摩擦力が低い第2低摩擦ローラーを備えるため、斜方蒸着部からの長尺シートの搬送方向を変更するときにおいて、長尺シートの一方の端と他方の端との進行方向の差異を緩和し、搬送方向を変更するときの長尺シートの捩れを抑制することが可能となる。
【0034】
[11]本発明の斜方蒸着装置においては、前記第2搬送方向変更部は、鉛直方向に沿う回転軸を有する複数の第2鉛直軸回転体からなる第2鉛直軸回転部と、前記第2鉛直軸回転部の後段に配置され、前記第2搬送方向変更部を通過した後の前記長尺シートの前記一方の面に沿い、かつ、水平方向に沿う回転軸を有する複数の第2水平軸回転体からなる第2水平軸回転部とを備えることも好ましい。
【0035】
このような構成とすることにより、複数の第2鉛直軸回転体からなる第2鉛直軸回転部と、複数の第2水平軸回転体からなる第2水平軸回転部とを備えるため、斜方蒸着部からの長尺シートの搬送方向を変更するときにおいて、長尺シートの一方の端と他方の端との進行方向の差異を緩和し、長尺シートの搬送方向を変更するときの長尺シートの捩れを抑制することが可能となる。
【0036】
また、上記のような構成とすることにより、長尺シートが、まず複数の第2鉛直軸回転体からなる第2鉛直軸回転部に接触し、次に複数の第2水平軸回転体からなる第2水平軸回転部に接触するため、搬送方向変更前の長尺シートの搬送方向に沿って回転する第2鉛直軸回転体と、搬送方向変更後の長尺シートの搬送方向に沿って回転する第2水平軸回転体とにより、搬送方向を変更するときの長尺シートの捩れをより一層抑制することが可能となる。
【0037】
[12]本発明の斜方蒸着装置においては、前記第2搬送方向変更部は、前記第2搬送方向変更部を通過する前後いずれの前記長尺シートの搬送方向に対しても斜めの回転軸を有する複数の第2斜め回転体からなる第2斜め回転部を備えることも好ましい。
【0038】
このような構成とすることにより、複数の第2斜め回転体からなる第2斜め回転部を備えるため、斜方蒸着部からの長尺シートの搬送方向を変更するときにおいて、長尺シートの一方の端と他方の端との進行方向の差異を緩和し、搬送方向を変更するときの長尺シートの捩れを抑制することが可能となる。
【0039】
[13]本発明のスクリーンの製造方法は、少なくとも一方の面に複数の凹凸部を有しスクリーンの基材となる長尺シートにおける、前記凹凸部の一部に蒸着反射層が選択的に形成されたスクリーンの製造方法であって、本発明の斜方蒸着装置を用いて、前記長尺シートにおける前記凹凸部の一部に蒸着材料を斜方蒸着し、前記蒸着反射層を形成する工程を含むことを特徴とする。
【0040】
本発明のスクリーンの製造方法によれば、本発明の斜方蒸着装置を用いて長尺シートにおける凹凸部の一部に蒸着材料を斜方蒸着し、蒸着反射層を形成する工程を含むため、プロジェクターからの投写光(特に、斜方から投写される投写光)を主に使用者に向けて反射することが可能な投写用のスクリーンを容易に製造することが可能となる。
【0041】
「凹凸部の一部に蒸着材料を斜方蒸着する」とは、例えば、凹凸部が山形形状からなる場合には、当該山形形状における峰で区分される一方の領域の全部又は一部に蒸着材料を斜方蒸着することをいう。また、凹凸部が略半球形状の凹部(いわゆるマイクロレンズ)の組み合わせからなる場合には、当該略半球形状の一部に蒸着材料を斜方蒸着することをいう。
【0042】
[14]本発明の搬送方向変更装置は、長尺シートの搬送に用いる搬送方向変更装置であって、前記搬送方向変更装置を通過する前の前記長尺シートの面又は前記搬送方向変更部を通過した後の前記長尺シートの面に沿い、かつ、水平方向に沿う回転軸を有する複数の水平軸回転体からなる水平軸回転部と、鉛直方向に沿う回転軸を有する複数の鉛直軸回転体からなる鉛直軸回転部とを備えることを特徴とする。
【0043】
本発明の搬送方向変更装置によれば、水平軸回転部と鉛直軸回転部とを備えるため、長尺シートの搬送方向を変更するときにおいて、長尺シートの一方の端と他方の端との進行方向の差異を緩和し、搬送方向を変更するときの長尺シートの捩れを抑制することが可能となる。
【0044】
また、本発明の搬送方向変更装置によれば、長尺シートが、まず水平方向に沿う回転軸を有する複数の水平軸回転体からなる水平軸回転部に接触し、次に鉛直方向に沿う回転軸を有する複数の鉛直軸回転体からなる鉛直軸回転部に接触するか、又は、この逆の順番で接触するかであるため、搬送方向変更前の長尺シートの搬送方向に沿って回転する水平軸回転体又は鉛直軸回転体と、搬送方向変更後の長尺シートの搬送方向に沿って回転する鉛直軸回転体又は水平軸回転体とにより、搬送方向を変更するときの長尺シートの捩れをより一層抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】実施形態1に係る斜方蒸着装置1を説明するために示す図。
【図2】実施形態1における長尺シートW1を説明するために示す図。
【図3】実施形態1における斜方蒸着部40を説明するために示す図。
【図4】実施形態1におけるスクリーンSCRの部分拡大断面図。
【図5】実施形態1に係るスクリーンの製造方法のフローチャート。
【図6】実施形態2に係る斜方蒸着装置2を説明するために示す図。
【図7】実施形態2における第1水平軸回転部82を説明するために示す図。
【図8】実施形態2における第1水平軸回転体83を説明するために示す図。
【図9】実施形態2における第1鉛直軸回転部86を説明するために示す図。
【図10】実施形態3に係る斜方蒸着装置3を説明するために示す図。
【図11】実施形態3における第1斜め回転部(前段搬送方向変更部100)を説明するために示す図。
【図12】実施形態3における第1斜め回転体102を説明するために示す図。
【図13】変形例1における長尺シートW2を説明するために示す図。
【図14】変形例2における長尺シートW3を説明するために示す図。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、本発明の斜方蒸着装置、スクリーンの製造方法及び搬送方向変更装置について、図に示す実施の形態に基づいて説明する。
【0047】
[実施形態1]
図1は、実施形態1に係る斜方蒸着装置1を説明するために示す図である。図1(a)は斜方蒸着装置1の斜視図であり、図1(b)は斜方蒸着装置1の正面図であり、図1(c)は斜方蒸着装置1の側面図である。図1における矢印は、長尺シートW1の搬送方向を示すものである。
図2は、実施形態1における長尺シートW1を説明するために示す図である。図2(a)は長尺シートW1の1単位を示す平面図であり、図2(b)は図2(a)のA1−A1断面の一部を拡大して示す部分拡大断面図である。なお、図2においては、説明のために凹凸部の数を減らし、また、凹凸部を大きく表示している。後述する図3、図4、図13及び図14においても同様である。
【0048】
図3は、実施形態1における斜方蒸着部40を説明するために示す図である。図3(a)は斜方蒸着部40の内部を示す正面断面図であり、図3(b)は斜方蒸着部40の内部を示す側面断面図である。図3における矢印は、蒸着源44から飛散する蒸着材料Mを示すものである。
図4は、実施形態1におけるスクリーンSCRの部分拡大断面図である。なお、図4は模式図であり、蒸着された蒸着材料Mの厚さを大きく表示している。
【0049】
斜方蒸着装置やその構成要素を説明する図面においては、互いに直交する3つの方向をそれぞれx軸方向(図1において長尺シートW1が第1搬送方向変更部20から第2搬送方向変更部60まで搬送される方向、つまり縦平面内における水平方向)、y軸方向(図1(b)における紙面に平行かつx軸に垂直な方向)及びz軸方向(図1(b)における紙面に垂直かつx軸に垂直な方向)として表示する。
【0050】
まず、実施形態1に係る斜方蒸着装置1の構成を説明する。
実施形態1に係る斜方蒸着装置1は、図1に示すように、一方の面(図2(a)において示す面)に複数の凹凸部を有する長尺シートW1に、一方の面が鉛直方向を含む縦平面に沿い、かつ、搬送方向が前記縦平面内における水平方向に沿う状態で斜方蒸着を行う斜方蒸着装置であって、前段搬送方向変更部10と、第1搬送方向変更部20と、補助ローラー部30,50と、斜方蒸着部40と、第2搬送方向変更部60と、後段搬送方向変更部70とを備える。実施形態1に係る斜方蒸着装置1は、いわゆるバッチ式の斜方蒸着装置であり、蒸着ごとに長尺シートW1の搬送が停止する。なお、本発明の斜方蒸着装置は上記のものに限られるものではなく、例えば、連続蒸着式の斜方蒸着装置とすることもできる。
【0051】
斜方蒸着装置1においては、図1に表示する矢印で示すように長尺シートW1を搬送する。なお、図示及び詳しい説明は省略するが、実施形態1においては、斜方蒸着装置1の前段には、例えば、長尺シートW1を繰り出す繰り出しローラー等があり、斜方蒸着装置1の後段には、例えば、長尺シートW1を巻き取る巻き取りローラー等がある。当該繰り出しローラー及び巻き取りローラーは、回転軸が水平方向に沿うように設置される。
【0052】
長尺シートW1における凹凸部は、図2に示すように、鋸刃状の断面形状を有する複数の山形形状からなる。
実施形態1で用いる長尺シートW1は、図2(a)に示す長尺シートW1の1単位を紙面横方向に連結したパターンを有する。
実施形態1で用いる長尺シートW1においては、当該山形形状は、使用者から見たときに、直線(図2(a)の長方形内の実線)に沿って形成されている。なお、本発明の斜方蒸着装置においては、上記の長尺シートW1に限られず、製造するものに合わせて様々な凹凸部が形成された長尺シートに蒸着を行うことができる。
【0053】
実施形態1においては、斜方蒸着装置1は、山形形状の広い方(当該山形形状を断面形状としたとき、山形形状における峰で区分される領域のうち、傾斜角度が緩い方の領域)の一部に蒸着材料Mを選択的に蒸着する(図3及び図4参照。)。なお、後述するスクリーンの製造方法に示すように、図4の状態のものが実施形態1に係るスクリーンの製造方法で製造するスクリーンSCRであるということになる。
【0054】
長尺シートとしては、目的に応じて様々な材料からなるものを用いることができる。好適に用いることができるものの例としては、プレス成形や型による転写等により蒸着面の凹凸部を容易に形成することが可能なもの(例えば、熱可塑性樹脂等からなるもの)を挙げることができる。
【0055】
前段搬送方向変更部10は、一方の面が鉛直方向に対して垂直な面に沿って搬送される(寝せた状態で搬送される)長尺シートW1の搬送方向を、第1搬送方向変更部20の方に向けて変更する。前段搬送方向変更部10は、図1に示すように、前段搬送方向変更部10を通過する前後いずれの長尺シートW1の搬送方向に対しても垂直な回転軸を有する2本の前段搬送方向変更ローラー12,14を備える。前段搬送方向変更ローラー12,14は、図示しない回転力付加装置(例えば、回転モーター)により回転し、長尺シートW1を搬送する。
【0056】
実施形態1においては、前段搬送方向変更部10は、長尺シートW1の搬送方向を上方に向けて90°変更する。このため、長尺シートW1は、図1に示すように、一方の面が縦平面に沿い、かつ、搬送方向が縦平面内における水平方向以外の方向(鉛直方向)に沿うことになる。
【0057】
実施形態1においては、第1搬送方向変更部20は、一方の面が縦平面に沿い、かつ、搬送方向が縦平面内における水平方向以外の方向に沿う長尺シートW1を、一方の面が縦平面に沿い、かつ、搬送方向が縦平面内における水平方向に沿うようにする(立たせた状態にする)。
【0058】
第1搬送方向変更部20は、第1搬送方向変更部20を通過する前後いずれの長尺シートW1の搬送方向に対しても斜めの回転軸を有し、表面の摩擦力が低い第1低摩擦ローラーを備える。当該第1低摩擦ローラーは、実施形態1においては、第1搬送方向変更部20を通過する前後いずれの長尺シートW1の搬送方向に対しても45°で交わる回転軸を有する。第1低摩擦ローラーとしては、例えば、表面にポリテトラフルオロエチレン等の低摩擦力樹脂によるコーティングが施された回転ローラーを用いることができる。
【0059】
補助ローラー部30は、第1搬送方向変更部20と斜方蒸着部40との間に配置され、長尺シートW1の搬送を補助する。補助ローラー部30は、補助ローラー32,34を備える。補助ローラー32,34は、図示しない回転力付加装置(例えば、回転モーター)により回転する。
【0060】
斜方蒸着部40は、第1搬送方向変更部20の後段に配置され、凹凸部の一部に蒸着材料Mを斜方蒸着する。よって、一方の面が縦平面に沿う状態の長尺シートW1に斜方蒸着を行うことになる。斜方蒸着部40は、図3に示すように、真空チャンバー42、蒸着源44及び真空保持部46,48を備える。
真空チャンバー42は、蒸着時において、内部を蒸着に適した環境(例えば、10−2Pa〜10−3Paの低圧環境)に保つ。蒸着源44及び真空保持部46,48は、真空チャンバー42内に配置されている。真空チャンバー42は、図示しない真空ポンプ及び排気装置を有する。
【0061】
蒸着源44は、長尺シートW1に対して斜め下に配置され(図3(b)参照。)、蒸着時において蒸着材料Mを収容し加熱する。なお、蒸着材料としては、目的に応じて様々なものを用いることができ、例えば、金属や無機誘電体を用いることができる。実施形態1においては、蒸着材料Mはアルミニウムからなる。詳しい説明は省略するが、蒸着源44は、蒸着材料Mを収容するるつぼ及び蒸着材料Mを加熱する電子銃(電子ビームを射出する装置)を備える。実施形態1においては、電子銃からの電子ビームによりるつぼ中の蒸着材料Mが加熱され、微細な粒子となった蒸着材料Mが真空チャンバー42内に放出される。
【0062】
実施形態1における斜方蒸着部40においては、図3に示すように、1個の蒸着源44を用いているが、本発明はこれに限定されるものではない。斜方蒸着部や長尺シートの大きさ等に合わせて任意の数の蒸着源を用いることができる。
【0063】
真空保持部46,48は、長尺シートW1が搬送されるときに開き、蒸着時に閉じることにより、蒸着時において真空チャンバー42内を蒸着に適した環境に保つ。
【0064】
補助ローラー部50は、図1に示すように、斜方蒸着部40と第2搬送方向変更部60との間に配置され、長尺シートW1の搬送を補助する。補助ローラー部50は、補助ローラー52,54を備える。補助ローラー52,54は、図示しない回転力付加装置(例えば、回転モーター)により回転する。
【0065】
第2搬送方向変更部60は、斜方蒸着部40からの長尺シートW1の搬送方向を、後段の構成要素(この場合、後段搬送方向変更部70)に向けて変更する。第2搬送方向変更部60は、第2搬送方向変更部60を通過する前後いずれの長尺シートW1の搬送方向に対しても斜めの回転軸を有し、表面の摩擦力が低い第2低摩擦ローラーを備える。
【0066】
当該第2低摩擦ローラーは、実施形態1においては、第2搬送方向変更部60を通過する前後いずれの長尺シートW1の搬送方向に対しても45°で交わる回転軸を有する。第2低摩擦ローラーとしては、表面にポリテトラフルオロエチレン等の低摩擦力樹脂によるコーティングが施された回転ローラーを用いることができる。
このため、実施形態1においては、第1搬送方向変更部20と第2搬送方向変更部60とで同種の構成要素が用いられていることになる。
【0067】
後段搬送方向変更部70は、第2搬送方向変更部60からの長尺シートW1の搬送方向を変更して、長尺シートW1を、一方の面が鉛直方向に対して垂直な面に沿うようにする(長尺シートを寝せた状態にする)。後段搬送方向変更部70は、後段搬送方向変更部70を通過する前後いずれの長尺シートW1の搬送方向に対しても垂直な回転軸を有する2本の後段搬送方向変更ローラー72,74を備える。後段搬送方向変更ローラー72,74は、図示しない回転力付加装置(例えば、回転モーター)により回転し、長尺シートW1を搬送する。実施形態1においては、後段搬送方向変更部70は搬送方向を水平方向に向けて90°変更する。
このため、実施形態1においては、前段搬送方向変更部10と後段搬送方向変更部70とで同種の構成要素が用いられていることになる。
【0068】
次に、実施形態1に係るスクリーンの製造方法について説明する。
図5は、実施形態1に係るスクリーンの製造方法のフローチャートである。
【0069】
実施形態1に係るスクリーンの製造方法は、一方の面に複数の凹凸部を有しスクリーンの基材となる長尺シートにおける、凹凸部の一部に蒸着反射層Rが選択的に形成されたスクリーンの製造方法であって、図5に示すように、長尺シート準備工程S1及び蒸着工程S2を含む。
長尺シート準備工程S1は、長尺シートW1を準備する工程である。長尺シートW1の準備については一般的な方法を用いることができ、例えば、プレス成形や型による転写により一方の面の凹凸部(実施形態1においては鋸刃状の山形形状)を形成することにより長尺シートW1を準備することができる。
【0070】
蒸着工程S2は、実施形態1に係る斜方蒸着装置1を用いて、長尺シートW1における凹凸部の一部に蒸着材料Mを斜方蒸着し、蒸着反射層Rを形成する工程である。具体的には、斜方蒸着装置1を用い、山形形状の広い方(当該山形形状を断面形状としたとき、山形形状における峰で区分される領域のうち、傾斜角度が緩い方の領域)の一部に蒸着材料Mを選択的に蒸着して、当該蒸着材料Mを蒸着反射層Rとする(図4参照。)。その後、長尺シートW1を1単位ごとに切り出すことによりスクリーンSCRを製造することができる。
【0071】
次に、実施形態1に係る斜方蒸着装置1及びスクリーンの製造方法の効果を説明する。
【0072】
実施形態1に係る斜方蒸着装置1によれば、凹凸部の一部に蒸着材料Mを斜方蒸着する斜方蒸着部40を備えるため、少なくとも一方の面に複数の凹凸部を有する長尺シートを用いた場合、凹凸部の一部に蒸着材料を選択的に蒸着することが可能な斜方蒸着装置となる。
【0073】
また、実施形態1に係る斜方蒸着装置1によれば、一方の面が縦平面以外の平面に沿う、又は、搬送方向が縦平面内における水平方向以外の方向に沿う長尺シートW1を、一方の面が縦平面に沿い、かつ、搬送方向が縦平面内における水平方向に沿うようにする(長尺シートを立たせた状態にする)第1搬送方向変更部20を備えるため、立たせた状態の長尺シートを斜方蒸着部に搬送して、立たせた状態の長尺シートに斜方蒸着を行うことが可能となる。
【0074】
また、実施形態1に係る斜方蒸着装置1によれば、一方の面が鉛直方向に対して垂直な面に沿って搬送される長尺シートW1の搬送方向を、第1搬送方向変更部20の方に向けて変更する前段搬送方向変更部10を備えるため、前段搬送方向変更部と第1搬送方向変更部とで搬送方向を変更するため、長尺シートを段階的に寝せた状態から立たせた状態にすることとなり、その結果、長尺シートを寝せた状態から立たせた状態にするときの長尺シートの捩れを抑制することが可能となる。
【0075】
また、実施形態1に係る斜方蒸着装置1によれば、前段搬送方向変更部10は、前段搬送方向変更部10を通過する前後いずれの長尺シートW1の搬送方向に対しても垂直な回転軸を有する前段搬送方向変更ローラー12,14を備えるため、簡易に、かつ、安定して長尺シートの搬送方向を変更することが可能となる。
【0076】
また、実施形態1に係る斜方蒸着装置1によれば、第1搬送方向変更部20は、第1搬送方向変更部20を通過するいずれの長尺シートW1の搬送方向に対しても斜めの回転軸を有し、表面の摩擦力が低い第1低摩擦ローラーを備えるため、長尺シートの搬送方向を変更するときにおいて、長尺シートの一方の端と他方の端との進行方向の差異を緩和し、搬送方向を変更するときの長尺シートの捩れを抑制することが可能となる。
【0077】
また、実施形態1に係る斜方蒸着装置1によれば、斜方蒸着部40からの長尺シートW1の搬送方向を、後段の構成要素に向けて変更する第2搬送方向変更部60を備えるため、斜方蒸着部で斜方蒸着した長尺シートを後段の構成要素に向けて搬送することが可能となる。
【0078】
また、実施形態1に係る斜方蒸着装置1によれば、第2搬送方向変更部60からの長尺シートW1の搬送方向を変更して、長尺シートW1を、一方の面が鉛直方向に対して垂直な面に沿うようにする後段搬送方向変更部70を備えるため、第2搬送方向変更部と後段搬送方向変更部とで搬送方向を変更するため、長尺シートを段階的に立たせた状態から寝せた状態にすることとなり、その結果、長尺シートを立たせた状態から寝せた状態にするときの長尺シートの捩れを抑制することが可能となる。
【0079】
また、実施形態1に係る斜方蒸着装置1によれば、後段搬送方向変更部70は、後段搬送方向変更部70を通過する前後いずれの長尺シートW1の搬送方向に対しても垂直な回転軸を有する後段搬送方向変更ローラー72,74を備えるため、簡易に、かつ、安定して長尺シートの搬送方向を変更し、長尺シートを寝せた状態にすることが可能となる。
【0080】
また、実施形態1に係る斜方蒸着装置1によれば、第2搬送方向変更部60は、第2搬送方向変更部60を通過する前後いずれの長尺シートW1の搬送方向に対しても斜めの回転軸を有し、表面の摩擦力が低い第2低摩擦ローラーを備えるため、斜方蒸着部からの長尺シートの搬送方向を変更するときにおいて、長尺シートの一方の端と他方の端との進行方向の差異を緩和し、搬送方向を変更するときの長尺シートの捩れを抑制することが可能となる。
【0081】
実施形態1に係るスクリーンの製造方法によれば、実施形態1に係る斜方蒸着装置1を用いて長尺シートW1における凹凸部の一部に蒸着材料Mを斜方蒸着し、蒸着反射層Rを形成する工程(蒸着工程S2)を含むため、プロジェクターからの投写光(特に、斜方から投写される投写光)を主に使用者に向けて反射することが可能な投写用のスクリーンを容易に製造することが可能となる。
【0082】
[実施形態2]
図6は、実施形態2に係る斜方蒸着装置2を説明するために示す図である。図6(a)は斜方蒸着装置2の斜視図であり、図6(b)は斜方蒸着装置2の正面図であり、図6(c)は斜方蒸着装置2の側面図である。図6における矢印は、長尺シートW1の搬送方向を示すものである。
図7は、実施形態2における第1水平軸回転部82を説明するために示す図である。図7(a)は第1水平軸回転部82の斜視図であり、図7(b)は第1水平軸回転部82の正面図であり、図7(c)は第1水平軸回転部82の側面図である。
【0083】
図8は、実施形態2における第1水平軸回転体83を説明するために示す図である。図8(a)は第1水平軸回転体83の斜視図であり、図8(b)は第1水平軸回転体83の正面図であり、図8(c)は第1水平軸回転体83の側面図である。
図9は、実施形態2における第1鉛直軸回転部86を説明するために示す図である。図9(a)は第1鉛直軸回転部86の斜視図であり、図9(b)は第1鉛直軸回転部86の正面図であり、図9(c)は第1鉛直軸回転部86の側面図である。
【0084】
実施形態2に係る斜方蒸着装置2は、基本的には実施形態1に係る斜方蒸着装置1と同様の構成を有するが、第1搬送方向変更部及び第2搬送方向変更部の構成が実施形態1に係る斜方蒸着装置1とは異なる。すなわち、実施形態2に係る斜方蒸着装置2においては、図6に示すように、第1搬送方向変更部80は第1水平軸回転部82と第1鉛直軸回転部86とを備え、第2搬送方向変更部90は第2鉛直軸回転部92と第2水平軸回転部96とを備える。
【0085】
第1水平軸回転部82は、図6〜図8に示すように、第1搬送方向変更部82を通過する前の長尺シートW1の搬送方向と垂直であり、かつ、水平方向に沿う回転軸83axを有する13個の第1水平軸回転体83からなる。第1水平軸回転体83は、図8に示すように、回転可能な回転部84及び固定されている固定部85を有し、全体として車輪状の形状を有する。第1水平軸回転体83としては、例えば、ボールベアリングを用いることができる。13個の第1水平軸回転体83は、それぞれ固定部85同士で、45°の角度で配列するように固定されている。
【0086】
第1水平軸回転体83の回転部84においては、長尺シートW1と接触する部分に面取りが施されており、当該面取りの角度は回転軸に対して45°である。なお、第1水平軸回転体83と長尺シートW1とは斜めに(第1水平軸回転体83の回転軸に対して45°で)接する。第1鉛直軸回転体87、第2鉛直軸回転体93及び第2水平軸回転体97についても同様である。実施形態2においては、第1水平軸回転体83、第1鉛直軸回転体87、第2鉛直軸回転体93及び第2水平軸回転体97と、長尺シートW1とは斜めに接するため、上記のような構成とすることにより、第1水平軸回転体83、第1鉛直軸回転体87、第2鉛直軸回転体93及び第2水平軸回転体97の角で長尺シートW1が損傷するのを防止することが可能となる。
【0087】
第1鉛直軸回転部86は、図6及び図9に示すように、第1水平軸回転部82の後段に配置され鉛直方向に沿う回転軸87ax(図示せず。)を有する13個の第1鉛直軸回転体87からなる。第1鉛直軸回転体87は、第1水平軸回転体83と向き以外は同様の構成を有するために詳しい説明は省略するが、回転部88及び固定部89を有する。13個の第1鉛直軸回転体87は、それぞれ固定部89同士で、45°の角度で配列するように固定されている。
【0088】
第2鉛直軸回転部92は、鉛直方向に沿う回転軸93ax(図示せず。)を有する13個の第2鉛直軸回転体93(符号を図示せず。)からなる。第2鉛直軸回転部92は、向き以外は第1鉛直軸回転部86と同様の構成を有する。第2鉛直軸回転体93は、第1水平軸回転体83と向き以外は同様の構成を有するために詳しい説明は省略するが、回転部94及び固定部95(いずれも符号を図示せず。)を有する。13個の第2鉛直軸回転体93は、それぞれ固定部95同士で、45°の角度で配列するように固定されている。
【0089】
第2水平軸回転部96は、第2鉛直軸回転部92の後段に配置され、第2搬送方向変更部96を通過した後の長尺シートW1の搬送方向と垂直であり、かつ、水平方向に沿う回転軸97ax(図示せず。)を有する13個の第2水平軸回転体97(符号を図示せず。)からなる。第2水平軸回転部96は、向き以外は第1水平軸回転部82と同様の構成を有する。第2水平軸回転体97は、第1水平軸回転体83と同様の構成を有するために詳しい説明は省略するが、回転部98及び固定部99(いずれも符号を図示せず。)を有する。13個の第2水平軸回転体97は、それぞれ固定部99同士で、45°の角度で配列するように固定されている。
【0090】
斜方蒸着装置2における第1搬送方向変更部80及び第2搬送方向変更部90は、いずれも長尺シートW1の搬送に用いる搬送方向変更装置であって、水平方向に沿う回転軸を有する複数の水平軸回転体からなる水平軸回転部と、鉛直方向に沿う回転軸を有する複数の鉛直軸回転体からなる鉛直軸回転部とを備える本発明に係る搬送方向変更装置である。
【0091】
上記のように、実施形態2に係る斜方蒸着装置2は、第1搬送方向変更部及び第2搬送方向変更部の構成が実施形態1に係る斜方蒸着装置1とは異なるが、凹凸部の一部に蒸着材料Mを斜方蒸着する斜方蒸着部40を備えるため、実施形態1に係る斜方蒸着装置1と同様に、少なくとも一方の面に複数の凹凸部を有する長尺シートを用いた場合、凹凸部の一部に蒸着材料を選択的に蒸着することが可能な斜方蒸着装置となる。
【0092】
また、実施形態2に係る斜方蒸着装置2によれば、複数の第1水平軸回転体83からなる第1水平軸回転部82と、複数の第1鉛直軸回転体87からなる第1鉛直軸回転部86とを備えるため、長尺シートの搬送方向を変更するときにおいて、長尺シートの一方の端と他方の端との進行方向の差異を緩和し、搬送方向を変更するときの長尺シートの捩れを抑制することが可能となる。
【0093】
また、実施形態2に係る斜方蒸着装置2によれば、長尺シートW1が、まず複数の第1水平軸回転体83からなる第1水平軸回転部82に接触し、次に複数の第1鉛直軸回転体87からなる第1鉛直軸回転部86に接触するため、搬送方向変更前の長尺シートの搬送方向に沿って回転する第1水平軸回転体と、搬送方向変更後の長尺シートの搬送方向に沿って回転する第1鉛直軸回転体とに長尺シートが段階的に接触することになり、その結果、長尺シートを立たせた状態にするときの長尺シートの捩れをより一層抑制することが可能となる。
【0094】
また、実施形態2に係る斜方蒸着装置2によれば、複数の第2鉛直軸回転体93からなる第2鉛直軸回転部92と、複数の第2水平軸回転体97からなる第2水平軸回転部96とを備えるため、斜方蒸着部からの長尺シートの搬送方向を変更するときにおいて、長尺シートの一方の端と他方の端との進行方向の差異を緩和し、長尺シートの搬送方向を変更するときの長尺シートの捩れを抑制することが可能となる。
【0095】
また、実施形態2に係る斜方蒸着装置2によれば、長尺シートW1が、まず複数の第2鉛直軸回転体93からなる第2鉛直軸回転部92に接触し、次に複数の第2水平軸回転体97からなる第2水平軸回転部96に接触するため、搬送方向変更前の長尺シートの搬送方向に沿って回転する第2鉛直軸回転体と、搬送方向変更後の長尺シートの搬送方向に沿って回転する第2水平軸回転体とにより、搬送方向を変更するときの長尺シートの捩れをより一層抑制することが可能となる。
【0096】
なお、実施形態2に係る斜方蒸着装置2は、第1搬送方向変更部及び第2搬送方向変更部の構成以外は実施形態1に係る斜方蒸着装置1と同様の構成を有するため、実施形態1に係る斜方蒸着装置1が有する効果のうち該当する効果をそのまま有する。
【0097】
実施形態2に係る搬送方向変更装置(第1搬送方向変更部80及び第2搬送方向変更部90)によれば、水平軸回転部(第1水平軸回転部82及び第2水平軸回転部96)と鉛直軸回転部(第1垂直軸回転部86及び第2鉛直軸回転部92)とを備えるため、長尺シートの搬送方向を変更するときにおいて、長尺シートの一方の端と他方の端との進行方向の差異を緩和し、搬送方向を変更するときの長尺シートの捩れを抑制することが可能となる。
【0098】
また、実施形態2に係る搬送方向変更装置によれば、長尺シートW1が、まず水平方向に沿う回転軸を有する複数の水平軸回転体からなる水平軸回転部に接触し、次に鉛直方向に沿う回転軸を有する複数の鉛直軸回転体からなる鉛直軸回転部に接触するか、又は、この逆の順番で接触するかであるため、搬送方向変更前の長尺シートの搬送方向に沿って回転する水平軸回転体又は鉛直軸回転体と、搬送方向変更後の長尺シートの搬送方向に沿って回転する鉛直軸回転体又は水平軸回転体とにより、搬送方向を変更するときの長尺シートの捩れをより一層抑制することが可能となる。
【0099】
[実施形態3]
図10は、実施形態3に係る斜方蒸着装置3を説明するために示す図である。図10(a)は斜方蒸着装置3の斜視図であり、図10(b)は斜方蒸着装置3の正面図であり、図10(c)は斜方蒸着装置3の側面図である。図10における矢印は、長尺シートW1の搬送方向を示すものである。
図11は、実施形態3における第1斜め回転部(第1搬送方向変更部100)を説明するために示す図である。図11(a)は第1斜め回転部の斜視図であり、図11(b)は第1斜め回転部の正面図であり、図11(c)は第1斜め回転部の側面図である。
図12は、実施形態3における第1斜め回転体102を説明するために示す図である。図12(a)は第1斜め回転体102の斜視図であり、図12(b)は第1斜め回転体102を回転軸102axに垂直な方向から見る図であり、図12(c)は第1斜め回転体102を回転軸102axに沿う方向から見る図である。
【0100】
実施形態3に係る斜方蒸着装置3は、基本的には実施形態1に係る斜方蒸着装置1と同様の構成を有するが、第1搬送方向変更部及び第2搬送方向変更部の構成が実施形態1に係る斜方蒸着装置1とは異なる。すなわち、実施形態3に係る斜方蒸着装置3においては、図10に示すように、第1搬送方向変更部100は第1斜め回転部を備え、第2搬送方向変更部110は第2斜め回転部を備える。
【0101】
第1斜め回転部は、図10及び図11に示すように、第1搬送方向変更部100を通過する前後いずれの長尺シートW1の搬送方向に対しても斜めの回転軸102axを有する13個の第1斜め回転体102からなる。第1斜め回転体102は、図12に示すように、回転可能な回転部103及び固定されている固定部104を有し、全体として車輪状の形状を有する。第1斜め回転体102は、例えば、ボールベアリングを用いることができる。13個の第1斜め回転体102は、第1搬送方向変更部100を通過する前後いずれの長尺シートW1の搬送方向に対しても45°の回転軸を有し、固定部104同士でそれぞれの回転軸が一致するように固定されている。
【0102】
第2斜め回転部は、図10及び図11に示すように、第2搬送方向変更部110を通過する前後いずれの長尺シートW1の搬送方向に対しても斜めの回転軸112ax(図示せず。)を有する13個の第2斜め回転体112(符号を図示せず。)からなる。第2斜め回転体112は、第1斜め回転体102と向き以外は同様の構成を有するために詳しい説明は省略するが、回転部113及び固定部114(いずれも符号を図示せず。)を有する。13個の第2斜め回転体112は、第2搬送方向変更部110を通過する前後いずれの長尺シートW1の搬送方向に対しても45°の回転軸を有し、それぞれ固定部114同士で、それぞれの回転軸が一致するように固定されている。
【0103】
上記のように、実施形態3に係る斜方蒸着装置3は、第1搬送方向変更部及び第2搬送方向変更部の構成が実施形態1に係る斜方蒸着装置1とは異なるが、凹凸部の一部に蒸着材料Mを斜方蒸着する斜方蒸着部40を備えるため、実施形態1に係る斜方蒸着装置1と同様に、少なくとも一方の面に複数の凹凸部を有する長尺シートを用いた場合、凹凸部の一部に蒸着材料を選択的に蒸着することが可能な斜方蒸着装置となる。
【0104】
また、実施形態3に係る斜方蒸着装置3によれば、複数の第1斜め回転体102からなる第1斜め回転部を備えるため、長尺シートの搬送方向を変更するときにおいて、長尺シートの一方の端と他方の端との進行方向の差異を緩和し、搬送方向を変更するときの長尺シートの捩れを抑制することが可能となる。
【0105】
また、実施形態3に係る斜方蒸着装置3によれば、複数の第2斜め回転体112からなる第2斜め回転部を備えるため、斜方蒸着部からの長尺シートの搬送方向を変更するときにおいて、長尺シートの一方の端と他方の端との進行方向の差異を緩和し、搬送方向を変更するときの長尺シートの捩れを抑制することが可能となる。
【0106】
なお、実施形態3に係る斜方蒸着装置3は、第1搬送方向変更部及び第2搬送方向変更部の構成以外は実施形態1に係る斜方蒸着装置1と同様の構成を有するため、実施形態1に係る斜方蒸着装置1が有する効果のうち該当する効果をそのまま有する。
【0107】
以上、本発明を上記の実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。その趣旨を逸脱しない範囲において種々の様態において実施することが可能であり、例えば、次のような変形も可能である。
【0108】
(1)上記各実施形態において記載した斜方蒸着装置の構成要素や長尺シートの数、材質、形状等は例示であり、本発明の効果を損なわない範囲において変更することが可能である。例えば、前段搬送方向変更部、後段搬送方向変更部及び補助ローラー部はいずれも2本のローラーを備えるものとして記載したが、1本のローラーを備えるものとしてもよいし、3本以上のローラーを備えるものとしてもよい。
【0109】
(2)上記各実施形態においては、図2に示すような長尺シートW1を用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。図13は、変形例1における長尺シートW2を説明するために示す図である。図13(a)は長尺シートW2の1単位を示す平面図であり、図13(b)は図13(a)のA2−A2断面の一部を拡大して示す部分拡大断面図である。図14は、変形例2における長尺シートW3を説明するために示す図である。図14(a)は長尺シートW3の1単位を示す平面図であり、図14(b)は図14(a)のA3−A3断面の一部を拡大して示す部分拡大断面図である。本発明においては、例えば、図13に示すような長尺シート(図13(a)に示す1単位を紙面横方向に連結したパターンを有する長尺シートW2)や図14に示すような長尺シート(図14(a)に示す1単位を紙面横方向に連結したパターンを有する長尺シートW3)を用いてもよい。
【0110】
(3)上記各実施形態においては、第2搬送方向変更部及び後段搬送方向変更部70を用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。第2搬送方向変更部及び後段搬送方向変更部を備えなくてもよく、この場合、例えば、第2搬送方向変更部及び後段搬送方向変更部の代わりに長尺シートを立たせた状態のまま巻き取る長尺シート巻き取り部を備えてもよい。
【0111】
(4)上記各実施形態においては、第1搬送方向変更部と第2搬送方向変更部とで同種の構成要素(ローラーや回転体)を用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。第1搬送方向変更部と第2搬送方向変更部とで異なる構成要素(一例を挙げれば、実施形態1における第1搬送方向変更部20と実施形態2における第2搬送方向変更部90との組み合わせ)を用いてもよい。また、上記各実施形態においては、前段搬送方向変更部と後段搬送方向変更部とも同種の構成要素を用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。前段搬送方向変更部と後段搬送方向変更部とで異なる構成要素を用いてもよい。
【0112】
(5)上記各実施形態においては、前段搬送方向変更部10及び後段搬送方向変更部70を用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。前段搬送方向変更部を備えなくてもよく、この場合、例えば、長尺シートを繰り出す繰り出しローラーを代わりに備えるものとすることができる。また、後段搬送方向変更部を備えなくてもよく、この場合、例えば、長尺シートを巻き取る巻き取りローラーを代わりに備えるものとすることができる。
【0113】
(6)上記各実施形態において記載した各構成要素の回転軸の角度や配置角度は例示であり、本発明の効果を損なわない範囲において変更することが可能である。
【0114】
(7)上記各実施形態においては、斜方蒸着部40の前後に配置された補助ローラー部30,50を用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。補助ローラー部を用いなくてもよい。また、さらに多くの補助ローラー部を用いてもよい。さらにまた、異なる位置(例えば、第1搬送方向変更部の前後や、前段搬送方向変更部と第1搬送方向変更部との間)に配置される補助ローラー部を用いてもよい。
【0115】
(8)上記実施形態1においては、長尺シート準備工程S1及び蒸着工程S2を含むスクリーンの製造方法を例にとって本発明のスクリーンの製造方法を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明のスクリーンの製造方法においては、上記工程以外にも既知の方法を用いる種々の工程(例えば、蒸着工程後の後処理工程や仕上工程)を含んでもよい。
【0116】
(9)上記実施形態2においては、本発明の搬送方向変更装置を本発明の斜方蒸着装置2に適用した場合を例にとって説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明の搬送方向変更装置は、長尺シートの搬送方向を変更する構成要素を含む装置であれば、種々の装置(長尺シート搬送装置等)に適用することができる。
【0117】
(10)上記各実施形態においては、長尺シートW1の搬送方向を90°変更する前段搬送方向変更部を用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。長尺シートの搬送方向を90°以外の角度に変更する前段搬送方向変更部を用いてもよい。この場合、長尺シートは、一方の面が斜めの平面に沿う状態で第1搬送方向変更部に向かうため、一方の面が縦平面以外の平面に沿い、かつ、搬送方向が縦平面内における水平方向以外の方向に沿うということになる。なお、この場合、第1搬送方向変更部の角度(ローラーを有する場合はローラーの回転軸の角度。複数の回転体を有する場合は回転体の配列角度。)は、第1搬送方向変更部を通過する前後いずれの長尺シートの搬送方向に対しても45°以外の角度となる。本発明における第1搬送方向変更部は、上記のように、一方の面が縦平面以外の平面に沿い、かつ、搬送方向が縦平面内における水平方向以外の方向に沿う長尺シートを、一方の面が縦平面に沿い、かつ、搬送方向が縦平面内における水平方向に沿うようにするものであってもよい。また、後段搬送方向変更部についても同様である。
【0118】
(11)上記各実施形態においては、一方の面が縦平面に沿い、かつ、搬送方向が縦平面内における水平方向以外の方向に沿う長尺シートを、一方の面が縦平面に沿い、かつ、搬送方向が縦平面内における水平方向に沿うようにする第1搬送方向変更部を用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。一方の面が縦平面以外の平面に沿い、かつ、搬送方向が縦平面内における水平方向に沿う長尺シートを、一方の面が縦平面に沿い、かつ、搬送方向が縦平面内における水平方向に沿うようにしてもよい。長尺シートが「一方の面が縦平面以外の平面に沿い、かつ、搬送方向が縦平面内における水平方向に沿う」状態になる場合としては、例えば、長尺シートが寝た状態であり、その搬送方向が斜方蒸着部の内部における長尺シートの搬送方向と同様である場合を挙げることができる。この場合、第1搬送方向変更部は、長尺シートの搬送方向を変えずに長尺シートを捻って長尺シートを立たせるようにするもの(例えば、角度を変更する複数のローラーを備えるもの)となる。
【符号の説明】
【0119】
1,2,3…斜方蒸着装置、10…前段搬送方向変更部、12,14…前段搬送方向変更ローラー、20,80,100…第1搬送方向変更部、30,50…補助ローラー部、32,34,52,54…補助ローラー、40…斜方蒸着部、42…真空チャンバー、44…蒸着源、46,48…真空保持部、60,90,110…第2搬送方向変更部、70…後段搬送方向変更部、72,74…後段搬送方向変更ローラー、82…第1水平軸回転部、83…第1水平軸回転体、83ax,102ax…回転軸、84,88,103…回転部、85,89,104…固定部、86…第1鉛直軸回転部、87…第2鉛直軸回転体、92…第2鉛直軸回転部、96…第2水平軸回転部、102…第1斜め回転体、M…蒸着物質、R…蒸着反射層、SCR…スクリーン、W1,W2,W3…長尺シート
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方の面に複数の凹凸部を有する長尺シートに、前記一方の面が鉛直方向を含む縦平面に沿い、かつ、搬送方向が前記縦平面内における水平方向に沿う状態で斜方蒸着を行う斜方蒸着装置であって、
前記一方の面が前記縦平面以外の平面に沿う、又は、搬送方向が前記縦平面内における水平方向以外の方向に沿う長尺シートを、前記一方の面が前記縦平面に沿い、かつ、搬送方向が前記縦平面内における水平方向に沿うようにする第1搬送方向変更部と、
前記第1搬送方向変更部の後段に配置され、前記凹凸部の一部に蒸着材料を斜方蒸着する斜方蒸着部とを備えることを特徴とする斜方蒸着装置。
【請求項2】
請求項1に記載の斜方蒸着装置において、
前記一方の面が鉛直方向に対して垂直な面に沿って搬送される前記長尺シートの搬送方向を、前記第1搬送方向変更部の方に向けて変更する前段搬送方向変更部をさらに備えることを特徴とする斜方蒸着装置。
【請求項3】
請求項2に記載の斜方蒸着装置において、
前記前段搬送方向変更部は、前記前段搬送方向変更部を通過する前後いずれの前記長尺シートの搬送方向に対しても垂直な回転軸を有する前段搬送方向変更ローラーを備えることを特徴とする斜方蒸着装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の斜方蒸着装置において、
前記第1搬送方向変更部は、
前記第1搬送方向変更部を通過する前後いずれの前記長尺シートの搬送方向に対しても斜めの回転軸を有し、表面の摩擦力が低い第1低摩擦ローラーを備えることを特徴とする斜方蒸着装置。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載の斜方蒸着装置において、
前記第1搬送方向変更部は、
前記第1搬送方向変更部を通過する前の前記長尺シートの前記一方の面に沿い、かつ、水平方向に沿う回転軸を有する複数の第1水平軸回転体からなる第1水平軸回転部と、
前記第1水平軸回転部の後段に配置され鉛直方向に沿う回転軸を有する複数の第1鉛直軸回転体からなる第1鉛直軸回転部とを備えることを特徴とする斜方蒸着装置。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれかに記載の斜方蒸着装置において、
前記第1搬送方向変更部は、
前記第1搬送方向変更部を通過する前後いずれの前記長尺シートの搬送方向に対しても斜めの回転軸を有する複数の第1斜め回転体からなる第1斜め回転部を備えることを特徴とする斜方蒸着装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の斜方蒸着装置において、
前記斜方蒸着部からの前記長尺シートの搬送方向を、後段の構成要素に向けて変更する第2搬送方向変更部をさらに備えることを特徴とする斜方蒸着装置。
【請求項8】
請求項7に記載の斜方蒸着装置において、
前記第2搬送方向変更部からの前記長尺シートの搬送方向を変更して、前記長尺シートを、前記一方の面が鉛直方向に対して垂直な面に沿うようにする後段搬送方向変更部をさらに備えることを特徴とする斜方蒸着装置。
【請求項9】
請求項8に記載の斜方蒸着装置において、
前記後段搬送方向変更部は、前記後段搬送方向変更部を通過する前後いずれの前記長尺シートの搬送方向に対しても垂直な回転軸を有する後段搬送方向変更ローラーを備えることを特徴とする斜方蒸着装置。
【請求項10】
請求項7〜9のいずれかに記載の斜方蒸着装置において、
前記第2搬送方向変更部は、
前記第2搬送方向変更部を通過する前後いずれの前記長尺シートの搬送方向に対しても斜めの回転軸を有し、表面の摩擦力が低い第2低摩擦ローラーを備えることを特徴とする斜方蒸着装置。
【請求項11】
請求項7〜9のいずれかに記載の斜方蒸着装置において、
前記第2搬送方向変更部は、
鉛直方向に沿う回転軸を有する複数の第2鉛直軸回転体からなる第2鉛直軸回転部と、
前記第2鉛直軸回転部の後段に配置され、前記第2搬送方向変更部を通過した後の前記長尺シートの前記一方の面に沿い、かつ、水平方向に沿う回転軸を有する複数の第2水平軸回転体からなる第2水平軸回転部とを備えることを特徴とする斜方蒸着装置。
【請求項12】
請求項7〜9のいずれかに記載の斜方蒸着装置において、
前記第2搬送方向変更部は、
前記第2搬送方向変更部を通過する前後いずれの前記長尺シートの搬送方向に対しても斜めの回転軸を有する複数の第2斜め回転体からなる第2斜め回転部を備えることを特徴とする斜方蒸着装置。
【請求項13】
少なくとも一方の面に複数の凹凸部を有しスクリーンの基材となる長尺シートにおける、前記凹凸部の一部に蒸着反射層が選択的に形成されたスクリーンの製造方法であって、
請求項1〜12のいずれかに記載の斜方蒸着装置を用いて、前記長尺シートにおける前記凹凸部の一部に蒸着材料を斜方蒸着し、前記蒸着反射層を形成する工程を含むことを特徴とするスクリーンの製造方法。
【請求項14】
長尺シートの搬送に用いる搬送方向変更装置であって、
前記搬送方向変更装置を通過する前の前記長尺シートの面又は前記搬送方向変更部を通過した後の前記長尺シートの面に沿い、かつ、水平方向に沿う回転軸を有する複数の水平軸回転体からなる水平軸回転部と、
鉛直方向に沿う回転軸を有する複数の鉛直軸回転体からなる鉛直軸回転部とを備えることを特徴とする搬送方向変更装置。
【請求項1】
少なくとも一方の面に複数の凹凸部を有する長尺シートに、前記一方の面が鉛直方向を含む縦平面に沿い、かつ、搬送方向が前記縦平面内における水平方向に沿う状態で斜方蒸着を行う斜方蒸着装置であって、
前記一方の面が前記縦平面以外の平面に沿う、又は、搬送方向が前記縦平面内における水平方向以外の方向に沿う長尺シートを、前記一方の面が前記縦平面に沿い、かつ、搬送方向が前記縦平面内における水平方向に沿うようにする第1搬送方向変更部と、
前記第1搬送方向変更部の後段に配置され、前記凹凸部の一部に蒸着材料を斜方蒸着する斜方蒸着部とを備えることを特徴とする斜方蒸着装置。
【請求項2】
請求項1に記載の斜方蒸着装置において、
前記一方の面が鉛直方向に対して垂直な面に沿って搬送される前記長尺シートの搬送方向を、前記第1搬送方向変更部の方に向けて変更する前段搬送方向変更部をさらに備えることを特徴とする斜方蒸着装置。
【請求項3】
請求項2に記載の斜方蒸着装置において、
前記前段搬送方向変更部は、前記前段搬送方向変更部を通過する前後いずれの前記長尺シートの搬送方向に対しても垂直な回転軸を有する前段搬送方向変更ローラーを備えることを特徴とする斜方蒸着装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の斜方蒸着装置において、
前記第1搬送方向変更部は、
前記第1搬送方向変更部を通過する前後いずれの前記長尺シートの搬送方向に対しても斜めの回転軸を有し、表面の摩擦力が低い第1低摩擦ローラーを備えることを特徴とする斜方蒸着装置。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載の斜方蒸着装置において、
前記第1搬送方向変更部は、
前記第1搬送方向変更部を通過する前の前記長尺シートの前記一方の面に沿い、かつ、水平方向に沿う回転軸を有する複数の第1水平軸回転体からなる第1水平軸回転部と、
前記第1水平軸回転部の後段に配置され鉛直方向に沿う回転軸を有する複数の第1鉛直軸回転体からなる第1鉛直軸回転部とを備えることを特徴とする斜方蒸着装置。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれかに記載の斜方蒸着装置において、
前記第1搬送方向変更部は、
前記第1搬送方向変更部を通過する前後いずれの前記長尺シートの搬送方向に対しても斜めの回転軸を有する複数の第1斜め回転体からなる第1斜め回転部を備えることを特徴とする斜方蒸着装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の斜方蒸着装置において、
前記斜方蒸着部からの前記長尺シートの搬送方向を、後段の構成要素に向けて変更する第2搬送方向変更部をさらに備えることを特徴とする斜方蒸着装置。
【請求項8】
請求項7に記載の斜方蒸着装置において、
前記第2搬送方向変更部からの前記長尺シートの搬送方向を変更して、前記長尺シートを、前記一方の面が鉛直方向に対して垂直な面に沿うようにする後段搬送方向変更部をさらに備えることを特徴とする斜方蒸着装置。
【請求項9】
請求項8に記載の斜方蒸着装置において、
前記後段搬送方向変更部は、前記後段搬送方向変更部を通過する前後いずれの前記長尺シートの搬送方向に対しても垂直な回転軸を有する後段搬送方向変更ローラーを備えることを特徴とする斜方蒸着装置。
【請求項10】
請求項7〜9のいずれかに記載の斜方蒸着装置において、
前記第2搬送方向変更部は、
前記第2搬送方向変更部を通過する前後いずれの前記長尺シートの搬送方向に対しても斜めの回転軸を有し、表面の摩擦力が低い第2低摩擦ローラーを備えることを特徴とする斜方蒸着装置。
【請求項11】
請求項7〜9のいずれかに記載の斜方蒸着装置において、
前記第2搬送方向変更部は、
鉛直方向に沿う回転軸を有する複数の第2鉛直軸回転体からなる第2鉛直軸回転部と、
前記第2鉛直軸回転部の後段に配置され、前記第2搬送方向変更部を通過した後の前記長尺シートの前記一方の面に沿い、かつ、水平方向に沿う回転軸を有する複数の第2水平軸回転体からなる第2水平軸回転部とを備えることを特徴とする斜方蒸着装置。
【請求項12】
請求項7〜9のいずれかに記載の斜方蒸着装置において、
前記第2搬送方向変更部は、
前記第2搬送方向変更部を通過する前後いずれの前記長尺シートの搬送方向に対しても斜めの回転軸を有する複数の第2斜め回転体からなる第2斜め回転部を備えることを特徴とする斜方蒸着装置。
【請求項13】
少なくとも一方の面に複数の凹凸部を有しスクリーンの基材となる長尺シートにおける、前記凹凸部の一部に蒸着反射層が選択的に形成されたスクリーンの製造方法であって、
請求項1〜12のいずれかに記載の斜方蒸着装置を用いて、前記長尺シートにおける前記凹凸部の一部に蒸着材料を斜方蒸着し、前記蒸着反射層を形成する工程を含むことを特徴とするスクリーンの製造方法。
【請求項14】
長尺シートの搬送に用いる搬送方向変更装置であって、
前記搬送方向変更装置を通過する前の前記長尺シートの面又は前記搬送方向変更部を通過した後の前記長尺シートの面に沿い、かつ、水平方向に沿う回転軸を有する複数の水平軸回転体からなる水平軸回転部と、
鉛直方向に沿う回転軸を有する複数の鉛直軸回転体からなる鉛直軸回転部とを備えることを特徴とする搬送方向変更装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−251218(P2012−251218A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−125087(P2011−125087)
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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