説明

断層写真法画像における運動補正

【課題】局所的な関心領域において運動補正を提供することにより断層写真法撮像での定量的精度を高める。
【解決手段】撮像方法(500)が、関心領域について同期放出断層写真法画像を再構成するステップ(504)と、この同期放出断層写真法画像と関心領域の計算機式断層写真法画像との間の不一致を調節するステップ(508)と、同期放出断層写真法画像を位置合わせするステップ(512)と、運動補正済み画像を形成するように位置合わせ済み同期放出断層写真法画像を結合するステップ(512)とを含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的には、断層写真法撮像に関し、さらに具体的には、断層写真法撮像に用いられる局所レベルでの運動補正の方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
断層写真法撮像は、健康管理サービスの不可欠な部分となってきた。断層写真法撮像の例としては、陽電子放出断層写真法(PET)撮像、単光子放出計算機式断層写真法(SPECT)撮像、X線計算機式断層写真法(CT)撮像、及び磁気共鳴撮像(MRI)等がある。CT撮像では、X線が身体を通して伝播されて、身体の他方の側で検出される。X線は遭遇した身体構造に依存して異なる程度に減弱されて、身体の構造的特徴を示す画像を生ずる。しかしながら、CT撮像は生物学的過程及び生物学的機能に対して特に感度が高い訳ではない。
【0003】
一方、PET撮像は様々な生物学的過程及び生物学的機能の画像を形成する。PET撮像では、走査される被検体又は患者にトレーサを含む溶液が注射される。トレーサは、放射性フッ素を含む糖の一形式である18F−フルオロ−2−デオキシグルコース(FDG)のように比較的短い半減期を有する放射性同位体を含む医薬品化合物である。トレーサは、被検体内の病変のように特定の生物学的過程又は生化学的過程が発生する部位に誘引されるように構成され得る。トレーサは、これらの生物学的過程及び生化学的過程が発生している被検体の1又は複数の器官に移動して、典型的には取り込まれる。例えば、癌細胞はトレーサを代謝することができ、PETスキャナが癌性領域を照明した画像を形成することを可能にする。放射性同位体は崩壊するときに陽電子を放出し、陽電子は短い距離を移動した後に電子と共に消滅する。陽電子飛程とも呼ばれるこの短い距離は典型的には、通常の被検体では1mm程度である。この消滅は、実質的に反対の方向に伝播する2個の高エネルギ・フォトンを生成する。
【0004】
PET撮像は、走査域の周囲で通常は環形パターンに構成されているフォトン検出器アレイを用い、この検出器アレイに被検体又は少なくとも被検体の注目部分が配置される。検出器アレイが短いタイミング・ウィンドウの内部で2個のフォトンを検出するときに、所謂「同時計数(coincidence)」が記録される。これらのフォトンを受け取った二つの検出器を結ぶ線を同時計数線(line of response、LOR)と呼ぶ。画像の再構成は、崩壊した放射性同位体がLORの何らかの位置に位置するとの前提に基づく。比較的短い陽電子飛程は、無視されてもよいし、再構成時に補償されてもよい。各々の同時計数は、二つの検出器を表わす二つの項目と、検出時刻を表わす一つの項目との三つの項目によって一覧に記録され得る。この一覧の同時計数を1又は複数のサイノグラムにグループ分けすることができる。サイノグラムは典型的には、画像再構成アルゴリズムを用いて処理されて、被検体の容積測定医用画像を得る。しかしながら、PET撮像は、CTスキャナ及びMRIスキャナのような他の形式のスキャナほど十分に構造の詳細を一般に与える訳ではない。
【0005】
PET−CTスキャナは、CTスキャナ及びPETスキャナの両方を単一の患者中孔の周囲に設置して含んでいる。PET−CTスキャナは、CT画像に空間的に位置合わせされたPET画像を含む融合画像を形成する。PET−CTスキャナは、PET走査によって示される機能的特徴及び生物学的特徴を、CT走査によって照明される構造に関して正確に位置決定し得るという利点を与える。典型的なPET−CT走査では、患者は先ずCT走査を受け、次いでPET走査を受けた後にスキャナから退出する。CTデータ及びPETデータが取得された後に、PET−CTスキャナがデータを処理してPET−CT融合画像を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願第2008/0095414号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
患者の呼吸による運動は、PET画像の定量的整合性を低下させる重要な要因である。呼吸運動は、体動によるボケから病変のコントラスト希薄化を生ずる。定量化に影響し得る第二の要因は、PET取得とCT取得との間の運動に起因する不正確な減弱補正である。PET画像及びCT画像の呼吸同期(呼吸ゲート)式取得は、運動によるボケを減少させることができる。呼吸同期式取得では、各回の呼吸サイクル時のデータが分割されて、各々の画分又はゲート毎に独立した画像を形成する。これらの画像の各々が、非同期画像と比較して運動によるボケを減少させる。しかしながら、各々のゲートが非同期画像よりも少ない計数を有するため、ボケの減少は画像雑音の増加を代償とする。
【0008】
独立した各同期画像の位置合わせに続いてこれらの画像を加算することが、画像雑音を増加させることなく運動によるボケを減少させる方法である。しかしながら、全身画像の位置合わせは、整合的に実行するのが困難であることが判明している。従って、局所的な関心領域において運動補正を提供することにより断層写真法撮像での定量的精度を高めることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本書に開示される一実施形態によれば、撮像方法が、関心領域について同期放出断層写真法画像を再構成するステップと、この同期放出断層写真法画像と関心領域の計算機式断層写真法画像との間の不一致を調節するステップと、同期放出断層写真法画像を位置合わせするステップと、運動補正済み画像を形成するように位置合わせ済み同期放出断層写真法画像を結合するステップとを含んでいる。
【0010】
本書に開示されるもう一つの実施形態によれば、撮像方法が、計算機式断層写真法画像及び放出断層写真法画像を取得するステップと、定量化関心領域を指定するステップと、関心領域について同期放出断層写真法画像を再構成するステップと、同期放出断層写真法画像と計算機式断層写真法画像との間の関心領域の不一致を調節するステップと、同期放出断層写真法画像に減弱不一致補正を施すステップと、同期放出断層写真法画像を位置合わせするステップと、運動補正済み画像を形成するように位置合わせ済み同期放出断層写真法画像を結合するステップとを含んでいる。
【0011】
本書に開示されるもう一つの実施形態によれば、イメージング・システムが、少なくとも一つの受信器と、処理システムとを含んでおり、少なくとも一つの受信器は計算機式断層写真法画像及び放出断層写真法画像を取得し、処理システムは、関心領域について同期放出断層写真法画像を再構成し、同期放出断層写真法画像と計算機式断層写真法画像との間の関心領域の不一致を調節し、同期放出断層写真法画像に減弱不一致補正を施し、同期放出断層写真法画像を位置合わせして、運動補正済み画像を形成するように位置合わせ済み同期放出断層写真法画像を結合する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本発明の上述の特徴、観点及び利点並びに他の特徴、観点及び利点は、添付の図面を参照して以下の詳細な説明を読むとさらに十分に理解されよう。図面全体を通して類似の符号は類似の部分を表わす。
【図1】PET−CTイメージング・システムの模式図である。
【図2】CTシステム・アーキテクチャの一実施形態を示す図である。
【図3】PETシステム・アーキテクチャの一実施形態を示す図である。
【図4】本書に開示される各観点による運動補正を提供する方法の流れ図である。
【図5】本書に開示される各観点による不一致調節工程の一実施形態を示す図である。
【図6】本書に開示される各観点による不一致調節工程のもう一つの実施形態を示す図である。
【図7】本書に開示される各観点による不一致調節工程のもう一つの実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本書に開示される各実施形態は、断層写真法撮像に運動補正を提供する撮像方法を含んでいる。この方法は初めに、関心領域について呼吸同期PET画像及びCT画像を再構成する。PET走査中の患者の運動は、PET画像とCT画像との不一致を齎す。この不一致を、対応する同期PET画像とCT画像との間で調節する。不一致の調節はPET画像において実行され、関心領域での運動を補正する。次いで、減弱不一致補正が同期PET画像に施される。次いで、各同期PET画像を位置合わせする。従って、得られる画像は、局所的な運動が補正された画像となる。本書で用いる場合には、単数不定冠詞及び定冠詞を冠したもののような単数形は、文脈が明らかに他を指示していない限り複数の指示対象を含む。
【0014】
図1は、PET−CTスキャナ100の実施形態の一例を示す。PET−CTスキャナ100は、筐体120の中孔の周りに装着されたCTシステム200及びPETシステム300を含み得る。PET−CTスキャナ100はまた、患者テーブル113、テーブル寝台114、処理ユニット150、及び制御ステーション115を含み得る。患者テーブル制御器(図示されていない)が、制御ステーション115から受け取った命令に応答してテーブル寝台114を中孔の内部に移動させることができる。制御ステーション115は、表示器、及び例えばキーボード、マウス、又は他の同様の入力/制御装置のような1又は複数の入力装置を含み得る。キーボード及び付設されている入力装置によって、操作者は、PET−CTスキャナ100の動作、及び得られる画像の表示器での表示を制御することができる。
【0015】
処理ユニット150は、1又は複数のプロセッサ、1又は複数のメモリ、及び画像処理用の他の関連する電子回路を含み得る。処理ユニット150は、制御ステーション115を操作する操作者の制御の下で、CTシステム200及びPETシステム300によって取得されたデータを処理することができる。
【0016】
図2は、本発明の実施形態の一例によるPET−CTシステム100のCTシステム200の主な構成要素を示す。CTシステム200の各構成要素は、CT検出器200を支持する筐体120及び図1に示す処理ユニット150の両方に収容され得る。CTシステム200は、被検体20を通る軸を実質的に横断するX線ビーム204を被検体20に照射することによりX線断層写真法撮像を実行する。軸は、器官又は他の組織構造のような関心対象22の全体的に中心に位置し得る。被検体20は軸の方向に沿って並進するテーブル寝台114(図1に示す)に位置し、これによりX線ビーム204による被検体20の容積測定部分の照射を可能にすることができる。
【0017】
CTシステム200は線源−検出器アセンブリを含んでいてよく、線源−検出器アセンブリは実施形態の一例では軸の周りを回転可能なガントリ212を含み得る。X線管のようなX線源214がガントリ212に装着されて、ガントリ212の回転と共に回転することができる。X線源214はコリメート用要素(図示されていない)を含んでいてよく、ガントリ212に対して線源214の反対側に配設されている検出器アレイ216に向かってX線のビーム204を投射することができる。
【0018】
検出器アレイ216は多数の個別の検出器素子218を含み得る。検出器素子218は一括で、対象22のような被検体20の内部構造に関する情報を提供することができる。一実施形態では、各々の検出器素子218が、入射するX線ビーム204の部分の強度を示す電気信号を発生し得る。
【0019】
検出器素子218からの信号は、X線が被検体20の材料又は物質を横断するときのビーム204の減弱度を示し得る。一実施形態では、線源214が被検体20の周りを回転して走査動作を実行することができ、これによりCTシステム200はX線データを取得する。もう一つの実施形態では、側面部分に線源214を取り付けたガントリ212が被検体20の軸の周りを回転して、多数の異なる照射角又は「ビュー角度」からX線データを収集することができる。
【0020】
線源214の回転動作は制御/インタフェイス・システム220によって制御され得る。制御/インタフェイス・システム220は、処理ユニット150に存在するサーバ・コンピュータを含んでいてよく、操作者は制御ステーション115及び/又は他の入力装置によって制御/インタフェイス・システム220と相互作用(対話)することができる。制御/インタフェイス・システム220は、軸の周りの回転速度の制御及びテーブル113とガントリ212との相対的位置の制御のように、被検体20に対するガントリ212の配置のための制御を提供することができる。また、制御部222が、線源214のX線発生(電力及びタイミング)に対する制御を提供することができる。制御/インタフェイス・システム220はまた、データ取得システム(DAS)224を含んでいてよく、データ取得システム224は検出器素子218から発生される検出器信号をサンプリングして、サンプリングされたデータをさらなる処理のためにディジタル・データへ変換する。
【0021】
また、やはり処理ユニット150に収容され得る再構成エンジン230が、サンプリングされてディジタル化されたデータ(「投影データ」とも呼ぶ)をDAS224から受け取って、画像再構成を実行してCT画像を形成することができる。一実施形態では、再構成エンジン230は別個のプロセッサ232及び/又はメモリ234を含み得る。複数の投影ビューを含む投影データからCT画像を再構成するために様々なアルゴリズムを利用することができる。一般的には、CT画像はDICOM(医療におけるディジタル画像と通信)規格に準ずる形式で形成され得る。DICOM規格は、2基のDICOM準拠システムが通信するための網プロトコルを規定している。
【0022】
一実施形態では、再構成エンジン230は、再構成されたCT画像を記憶又はさらなる処理のために、例えばやはり処理ユニット150に存在し得るシステム管理コンピュータ240へ送ることができる。コンピュータ240はCPU(プロセッサ)242及び/又は少なくとも一つのメモリ244を含み得る。
【0023】
図3は、PET−CTイメージング・システムのPETシステム300の一実施形態を示す。PETシステム300は、患者中孔の周りに配設された検出器環アセンブリ311を含み得る。検出器環アセンブリ311は、中心軸に沿って隔設されており円筒形の検出器環アセンブリを形成する多数の検出器環を含み得る。検出器環アセンブリ311の各々の検出器環は検出器モジュール320で形成されていてよい。各々の検出器モジュール320が、例えばゲルマン酸ビスマス(BGO)で形成され得る個別の検出器結晶のアレイ(例えば6×6アレイ)を含み得る。他の様々な検出器結晶又は材料を設けてもよい。検出器結晶は患者から放出されるγ線を検出し、応答してフォトンを発生することができる。一実施形態では、検出器結晶のアレイは4個の光電子増倍管(PMT)の前方に配置され得る。シンチレーション事象が検出器結晶の一つにおいて発生するとき、例えば患者から放出されたγ線が検出器結晶の一つによって受光されるときに、PMTはアナログ信号を発生することができる。一組の取得回路325が筐体120(図1に示す)の内部に装着されており、これらの信号を受信して事象の座標(例えば検出されたγ線の位置)及びγ線の全エネルギを示すディジタル信号を発生することができる。これらの信号はケーブル326を通じて事象位置決め回路327へ送られ得る。もう一つの実施形態では、各々の取得回路325はまた、シンチレーション事象が発生した時刻を示す事象検出パルス(EDP)を発生することができる。
【0024】
事象位置決め回路327は、取得回路325によって発生される信号を周期的にサンプリングするデータ取得プロセッサ330の一部を形成し得る。プロセッサ330は、構内網318及びバックプレーン・バス331での通信を制御する取得CPU329を有し得る。事象位置決め回路327は、各々の有効事象に関する情報をまとめて、事象が起こった時刻、及び事象を検出した検出器結晶の位置を正確に示す一組のディジタル数とする。この事象データ・パケットは、やはりデータ取得プロセッサ330の一部である同時計数検出器332に伝達され得る。
【0025】
同時計数検出器332は、事象位置決め回路327からの事象データ・パケットを受け入れて、これらのデータ・パケットの何れか二つが同時発生しているか否かを決定することができる。この例では、同時発生(同時計数)は多数の要因によって決定され得る。第一に、各々の事象データ・パケットの時間マーカが、例えば12.5ナノ秒のように互いの何らかの時間内にあることが要求され得る。第二に、二つの事象データ・パケットによって示される各位置が、患者中孔の視野(FOV)を通る直線に位置することが要求され得る。同時計数検出器332の詳細な説明については米国特許第5,241,181号「Coincidence Detector For A PET Scanner」を参照されたい。この特許を参照によりその全体として本出願に援用する。同時発生事象対は位置決定されて、リンク333を通じて記憶サブシステム350へ伝達される同時計数データ・パケットとして記録され得る。記憶サブシステム350では、ソータ334がルックアップ・テーブルを用いて同時計数事象を三次元投影平面形式としてソートすることができる。ソータ334の詳細な説明については米国特許第5,272,343号「Sorter For Coincidence timing Calibration In A PET Scanner」を参照されたい。この特許を参照によりその全体として本出願に援用する。
【0026】
検出された事象は動的ヒストグラム・メモリ(ヒストグラマ335)に記憶されて、ここで半径、投影角度及び他のパラメータによって順序付けされる。例えば、飛行時間差(Time-of-Flight、TOF)型PETスキャナでは、2個のフォトンの到達時刻の差も記録され得る。加えて、フォトンのエネルギに関する情報も用いられ得る。特定のフレームのPETデータは、未処理データ・ディスク336に書き込まれ得る。TOF型PET撮像は時間差測定を可能にし、例えば検出器の一つによる一つの事象の記録と他の検出器による他の事象の記録との間の時間量を決定する。従って、事象がこれら二つの検出器の間の中点で発生している場合には、時間差はゼロとなる。事象が一方の検出器に近接して発生すると、他方の検出器が観測するまでに遅延が生ずる。このように、TOFは消滅の発生点をさらに正確に予測することを可能にし、これによりさらに正確な撮像を齎す。最終的に、事象の位置決定が改善されることにより画像データの雑音が減少し、画質の向上、撮像時間の短縮、及び患者への線量の低下が得られる。
【0027】
図3に示すように、PETシステム300は、例えば予測型再構成マネージャ(PRM)、計算ジョブ・マネージャ(CJM)及びPET画像プロセッサ(PET IP)のような1又は複数の付加的なプロセッサ345を含み得る。プロセッサ345は、記憶サブシステム350のアレイ・プロセッサ337と相互作用して投影平面形式PETデータを処理して減弱補正済みPET画像にすることができる。
【0028】
PETシステム300はまた、計算機式断層写真法減弱補正(CTAC)サーバ342を含み得る。CTACサーバ342は、処理ユニット150において走行する独立した工程を実行することができる。CTAC工程は、CTシステム200からCT画像データを受け取って、このCT画像データをCTACデータへ変換することができる。例えば、CTAC工程は、CTシステムから要求を受け取り、双一次アルゴリズム又は他のアルゴリズムを実行してデータをCT画像単位(Hu)からPET511keV減弱係数(cm−1)へ変換することができ、CT画像からPETデータのCTAC補正を生成することができる。一旦、CT画像がCTACデータへ変換されると、CTACサーバ342がCTACデータを記憶サブシステム350の未処理データ・ディスク336に書き込むことができる。同時に、記録がPETデータベース348へ送信されて、CTACデータへのデータ・リンク(CTAC記録)を作成することができる。
【0029】
PETシステム300はまた、CT画像及びPET画像を受け取るPET−CT画像プロセッサ410を含み得る。患者はテーブル寝台114の同じ位置に留まりつつ両方の走査を受けるので、CT画像及びPET画像を互いに対して空間的に位置合わせすることができる。位置合わせは、患者の運動を検出すると共に予測することにより達成され得る。PET−CT画像プロセッサ410は、入力されたCT画像及びPET画像を用いてPET−CT融合画像を形成する。
【0030】
図1〜図3に示す構成は例示的なものであることを認められたい。例えば、PET−CTスキャナ100は、様々な付加的な作用を果たすために異なる構成又は異なる数のプロセッサ、メモリ、及び/又は他のハードウェアを含んでいてよく、これらの構成要素は制御ステーション115のような他の場所、又は他のサーバ若しくは処理ユニットに配置され得る。また、PET−CTシステム100を様々な走査需要に合わせてさらに構成し又はカスタマイズし得ることを認められたい。
【0031】
図4は、本発明による運動補正を提供する撮像方法500の一実施形態の流れ図を示す。方法500は、局所的な関心領域において運動補正を提供し、図1〜図3を参照して記載されているPET−CTシステムと共に用いられる。最初に、同期PETデータ、及び同期CTデータ又は非同期CTデータが、PETシステム及びCTシステムによってそれぞれ収集される。一実施形態では、呼吸同期式又は心拍同期式のような同期(ゲート)手法を用いることができる。定量化関心領域がブロック502において指定される。関心領域は、例えば病変であっても病変の一部であってもよい。関心領域は、非同期の減弱補正PET画像の断面変換(multi-planar)表示から指定され得る。代替的には、関心領域は、CT画像、PET画像又はPET−CT画像に対して走行する自動アルゴリズムによって指定され得る。
【0032】
ブロック504において、関心領域の高分解能同期PET画像がキーホール(keyhole)画像再構成を用いて再構成される。キーホール画像再構成の手順は、2009年3月26日に出願され共有されている同時係属中の米国特許出願第12/412160号「KEYHOLE COMPUTED TOMOGRAPHY」に詳細に記載されている。この特許出願を参照によりその全体として本出願に援用する。このキーホール画像再構成手法を用いて同期PET画像を再構成する。
【0033】
次いで、ブロック506では、関心領域が同期PET画像及びCT画像の各々においてセグメント分割される。自動、半自動、又は手動の輪郭描写(delineation)手法を用いて関心領域をセグメント分割することができる。
【0034】
患者の運動はPETとCTとの間に不一致又は整列不正を齎し、PETデータ及びCTデータが融合されると不正確な画像が生ずる。CT画像及び同期PETが比較されて、対応する同期PET画像とCT画像との間の不一致が算出される。一実施形態では、不一致は、ブロック508において同期PET画像を対応するCT画像と比較することにより同期PET画像において調節される。関心領域の基準特徴がCT画像及び同期PET画像において選択される。同期PET画像の不一致は、基準特徴に基づいて同期CT画像を同期PET画像に整列させることにより調節される。特徴は、関心領域の質量中心又は関心領域の任意の位置に位置していてよい。同期PET画像の調節によって、患者の運動によるCTデータとPETデータとの間の整列不正が補正される。明確に述べると、関心領域における運動が補正される。
【0035】
次いで、ブロック510において減弱不一致補正が同期PET画像に施される。減弱補正を施す一つの手順が、2008年5月9日に出願され共有されている同時係属中の米国特許出願第12/118170号「SYSTEM AND METHOD FOR IMAGE-BASED ATTENUATION CORRECTION OF PET/SPECT IMAGES」に詳細に記載されている。この特許出願を参照によりその全体として本出願に援用する。また、代替的な手順が、キーホール画像再構成法を用いて同期PETデータを改めて再構成するステップから成り、この場合には整列済みのCT画像が減弱補正に用いられる。
【0036】
次いで、各同期PET画像がブロック512において位置合わせされて結合される。幾つかの位置合わせ手法を適用することができる。一実施形態では、同期PET画像は剛体型位置合わせ又は非剛体型位置合わせによって基準ゲートに位置合わせされて、共に加算される。もう一つの実施形態では、画像は同期PET画像の質量中心を整列させることにより位置合わせされ、次いで加算される。もう一つの実施形態では、加重和のように、加重がデータ及び/又は位置合わせ品質の関数となっているような加重係数が用いられる。例えば、各ゲートが異なる持続時間を有する場合には、長時間のゲートが短時間のゲートよりも大きい加重を受けるものとする。同様に、位置合わせ品質が低い場合には加重も小さくするものとする。一例として、関心領域を整列するためにセグメント分割を用いる場合には、例えばジャカール指数(Jaccard index)又はダイス係数(Dice coefficient)によって測定されるような整列及びセグメント分割後の領域の類似性を用いて、位置合わせの信頼性尺度を与えることができる。また、他の位置合わせ方法が、類似性尺度を最大化することを試み、かかる尺度の最終値を用いて加重を決定することができる。
【0037】
もう一つの実施形態では、同期画像がブロック512において位置合わせされて結合され、ここでは位置合わせされた画像が加重和の加算の代わりに超解像(super-resolution)アルゴリズムを用いて結合される。位置合わせ後の低分解能画像の超解像結合は、単一の高分解能画像を生ずる(例えばM. Irani and S. Peleg. 1991,“Super Resolution From Image Sequences”ICPR, 2:115--120, June 1990)。超解像アルゴリズムは、周波数領域アルゴリズム又は空間領域アルゴリズムの何れであってもよい。
【0038】
もう一つの実施形態では、位置合わせからの運動ベクトルが、運動補償型の標的視野限定(targeted)キーホール再構成に用いられ、ここでは関心領域の単一の運動補正済み画像が全ての同期データから再構成される。前述の実施形態と同様に、位置合わせでの信頼性が低い場合には加重係数を用いてゲートの寄与を減少させる(又は除去する)ことができる。
【0039】
次いで、ブロック514では、関心領域を表示することができる。表示は、局所運動補正済み画像を与える。ブロック516では、関心領域の定量化を実行することができる。もう一つの実施形態では、定量化を個別の同期画像において実行することができる。関心領域の容積の平均及び標準偏差のような統計学的パラメータ、又は複数の呼吸ゲートにわたる標準集積値(standardized uptake values、SUV)を求めることができる。この値は、最終的な測定の統計学的品質に対するフィードバックを提供する。もう一つの実施形態では、個々の同期画像の定量的パラメータを用いて、異常値ゲート拒絶を行ない、又は運動補正済み同期PET画像を結合するときに用いられるべき加重係数を決定することができる。一例として、セグメント分割が整列に用いられている場合には、関心領域の容積は類似したゲートについて類似するものと期待される。従って、容積が一つのゲートにおいて他のゲートと比較して異なっている場合には、セグメント分割が失敗したので整列後の同期画像を結合するときには小さい(又は0の)加重が用いられるべきであるとの指示を与える。
【0040】
図5は不一致調節工程518の一実施形態を示す。呼吸同期されたCT画像及びPET画像が再構成される。一例として、図には8枚の同期CT画像520及び8枚の同期PET画像522が示されており、1〜8の番号を付されている。同期PET画像522の各々が対応する同期CT画像520と比較される。例えば、第一の同期PET画像は、対応する第一の同期CT画像と比較される。第一の同期PET画像及び第一の同期CT画像の質量中心524の不一致が算出される。一実施形態では、不一致は、第一の同期CT画像を移動させて第一の同期CT画像の質量中心を第一の同期PET画像の質量中心に整列させることにより調節される。同様に、全ての対応する同期CT画像と同期PET画像との間の不一致が調節される。
【0041】
次いで、減弱不一致補正が不一致調節済み同期PET画像525に施される。次いで、同期PET画像は位置合わせされ526、同期CT画像と融合されて運動補正済み画像528を与える。従って、局所的な関心領域での患者の運動の影響は、対応する同期CT画像と同期PET画像との間の不一致を調節することにより補正される。
【0042】
図6に示すようなもう一つの実施形態530では、多数の同期CT画像の代わりに単一のCT画像532が用いられる。同期PET画像534の各々を単一のCT画像532と比較して不一致を調節することができる。次いで、減弱不一致補正が不一致調節済み同期PET画像535に施される。次いで、同期PET画像は位置合わせされ536、同期CT画像と融合されて運動補正済み画像538を与える。
【0043】
図7を参照して述べると、もう一つの実施形態550では、同期PET画像552は減弱不一致補正を施される前に位置合わせ554される。位置合わせを用いて変形ベクトルが得られ、減弱不一致補正及びPET画像整列の工程がステップ556の一段として結合されている。位置合わせ後のPETゲート522はR1〜R8と参照され、減弱補正後のPETゲートはA1〜A8と参照されている。この実施形態は、単一の(非同期の)CT画像558が入手可能である場合に特に有利である。次いで、元の同期PET画像を単一のCTに整列させることができ、減弱不一致補正558によってPET画像をCT位置までシフトさせることができ、これによりあらゆる不一致を調節することができる。例えば、減弱不一致補正及び整列のステップはキーホール再構成工程を用いて結合されることができ、この工程では、関心領域の単一の運動補正済み画像560が、CT位置を基準として用いることにより全ての同期データから再構成される。
【0044】
従って、本発明の撮像方法は、CT−PET撮像時に局所的に運動補正を施す方法を提供する。上述の方法は、図1〜図3に関して記載されるようなCT−PETシステム・アーキテクチャに組み入れられる。一実施形態では、PET−CT画像プロセッサ410(図3に示す)が、この方法、特に不一致調節を実行する処理システムとして用いられる。表示器420(図3に示す)を用いて、運動補正済みPET画像又はCT−PET融合画像を表示する。
【0045】
ここでの議論ではX線CTイメージング・システム及びPETシステムに特定的な言及が為されているが、本発明の手法はこれらのシステムにも如何なる特定の形式のイメージング・システム又はモダリティにも限定されないことを認められたい。一般的には、本発明の手法を用いて、例えばCT−SPECT及びCT−MRIのような他の断層写真法撮像の組み合わせについて局所的運動補正を提供することができる。
【0046】
上述のような目的及び利点の全てが必ずしもあらゆる特定の実施形態に従って達成され得る訳ではないことを理解されたい。従って、例えば当業者は、本書に記載されるシステム及び手法は本書に教示されるような一つの利点又は一群の利点を達成し又は最適化するような態様で具現化され又は実施され得るのであって、本書に教示され又は示唆され得るような他の目的又は利点を必ずしも達成しなくてもよいことを認められよう。
【0047】
発明の幾つかの特徴のみを本書で図示して説明したが、当業者には多くの改変及び変形が想到されよう。従って、特許請求の範囲は、本発明の真意に含まれるような全ての改変及び変形を網羅するものとすることを理解されたい。
【符号の説明】
【0048】
20 被検体
22 関心対象
100 PET−CTスキャナ
113 患者テーブル
114 テーブル寝台
115 制御ステーション
120 筐体
150 処理ユニット
200 CTシステム
204 X線ビーム
212 ガントリ
214 X線源
216 検出器アレイ
218 検出器素子
220 制御/インタフェイス・システム
222 制御部
224 データ取得システム
230 再構成エンジン
232 プロセッサ
234 メモリ
240 システム管理コンピュータ
242 CPU
244 メモリ
300 PETシステム
311 検出器環アセンブリ
318 構内網
320 検出器モジュール
325 取得回路の組
326 ケーブル
327 事象位置決め回路
329 取得CPU
330 データ取得プロセッサ
331 バックプレーン・バス
332 同時計数検出器
333 リンク
334 ソータ
335 動的ヒストグラム・メモリ
336 未処理データ・ディスク
337 アレイ・プロセッサ
342 CTACサーバ
345 付加的なプロセッサ
348 PETデータベース
350 記憶サブシステム
410 PET−CT画像プロセッサ
420 表示器
500 撮像方法
502 関心領域の指定
504 再構成ブロック
506 セグメント分割ブロック
508 不一致調節ブロック
510 減弱不一致ブロック
512 位置合わせ及び結合ブロック
514 表示ブロック
516 定量化ブロック
518 不一致調節工程の一実施形態
520 同期CT画像
522 同期PET画像
524 質量中心
526 同期PET画像の位置合わせ
528 運動補正済み画像
530 もう一つの実施形態
532 単一のCT画像
534 同期PET画像
535 不一致調節済み同期PET画像
536 同期PET画像の位置合わせ
538 運動補正済み画像
550 もう一つの実施形態
552 同期PET画像
554 同期PET画像の位置合わせ
556 減弱不一致補正及びPET画像整列
558 単一の(非同期)CT画像
560 運動補正済み画像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
関心領域について同期放出断層写真法画像を再構成するステップ(504)と、
前記同期放出断層写真法画像と前記関心領域の計算機式断層写真法画像との間の不一致を調節するステップ(508)と、
前記同期放出断層写真法画像を位置合わせするステップ(512)と、
運動補正済み画像を形成するように前記位置合わせ済み同期放出断層写真法画像を結合するステップ(512)と
を備えた撮像方法(500)。
【請求項2】
不一致を調節する前記ステップ(508)は、前記計算機式断層写真法画像(532)と前記同期放出断層写真法画像(534)との間の前記関心領域の特徴(524)の前記不一致を調節するステップを含んでいる、請求項1に記載の方法(500)。
【請求項3】
前記関心領域の特徴の前記不一致を調節する前記ステップ(508)は、前記同期放出断層写真法画像(534)の前記特徴の前記不一致を調節するステップを含んでいる、請求項2に記載の方法(500)。
【請求項4】
前記特徴(524)は、質量中心を含む前記関心領域の位置を含んでいる、請求項2に記載の方法(500)。
【請求項5】
前記同期放出断層写真法画像に減弱不一致補正を施すステップ(510)をさらに含んでいる請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記計算機式断層写真法画像は、同期計算機式断層写真法画像(520)を含んでいる、請求項1に記載の方法(500)。
【請求項7】
前記計算機式断層写真法画像及び前記同期放出断層写真法画像をセグメント分割するステップ(506)をさらに含んでいる請求項1に記載の方法(500)。
【請求項8】
前記同期放出断層写真法画像を位置合わせした後に前記関心領域を表示するステップ(514)をさらに含んでいる請求項1に記載の方法(500)。
【請求項9】
計算機式断層写真法−放出断層写真法融合画像を形成して表示するステップ(514)をさらに含んでいる請求項1に記載の方法(500)。
【請求項10】
前記放出断層写真法画像は、陽電子放出断層写真法(PET)画像又は単光子放出計算機式断層写真法(SPECT)画像を含んでいる、請求項1に記載の方法(500)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−53210(P2011−53210A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−190198(P2010−190198)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】