説明

断熱又は防音あるいはその両方のための構造体

【課題】防火材の使用必要性を満たす、断熱又は防音あるいはその両方のための構造体を提供する。
【解決手段】建物部分と被担持構造部材との間の断熱又は防音あるいはその両方のための構造体であって、これらの2つの構造部材の間に配置される絶縁体2と、この絶縁体を貫く補強筋3と、少なくとも1つの防火材4,5とを含み、防火材は梱包部材を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの構造部材の間、特に建物部分と被担持構造部材との間の断熱又は防音あるいはその両方のための構造体であって、前記2つの構造部材の間に配置される絶縁体と、この絶縁体を貫く補強筋と、少なくとも1つの防火材とを含むものに関する。
【背景技術】
【0002】
断熱又は防音あるいはその両方のための従来構造の1つは、継目内部の補強筋を包囲する絶縁体を備え、この絶縁体は、熱や火炎の作用から補強筋を保護して火災後にもこの建物の構造力学的存続を保障し得るように、ロックウールから成る防火スリーブで外周が被覆されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】ドイツ特許第29605209号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
防火材の使用は好適であることが実証されてきているだけではなく、この間に法令によってもその使用が定められてきており、今や、特にこうした防火材に関する長年の経験を裏づけとして、防火スリーブを備えた、断熱又は防音あるいはその両方のための構造体を発展改良し、さらに最適化する必要性が生じており、本発明の課題はそのような防火材の要求仕様を満たす、断熱又は防音あるいはその両方のための構造体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明による、2つの構造部材の間の断熱又は防音あるいはその両方のための構造体は、前記2つの構造部材の間に配置される絶縁体と、この絶縁体を貫く補強筋と、少なくとも1つの防火材を含み、前記防火材は梱包部材を備え、前記防火材の中身が前記梱包部材によって包み込まれている。本発明による構造体は、特に建物部分と被担持構造部材との間の断熱又は防音あるいはその両方に適している。つまり、本発明による断熱又は防音あるいはその両方のための構造体では、防火材に備えられた梱包部材は、好適には防火材、詳しくは防火材の中身を全面的に隙間なく密閉包囲して、防火材の防火特性を損ない得るような気象要因ならびにその他の老化作用から防火材を保護する。つまりこの梱包部材は、本来の防火材のための耐候手段または老化防止手段として機能する。
【0006】
上記梱包部材は好適には膜材または板材から成り、特にプラスチックまたは金属から製造されて、接着、溶接または類似の接合方法で密閉される。この場合、梱包部材を丸形断面又は多角形断面(一般には四角形断面)を有する筒状体に形成し、所定の長さで裁断して終端キャップで封止可能とし、こうすることで防火材と梱包部材とを現場で加工し得るようにすることも可能である。
【0007】
梱包部材を備えた防火材は絶縁体の上側および/または下側に配置されて、絶縁体の長手方向と平行に延びて絶縁体の上側面および/または下側面の全体を被覆するのが好適であり、これによって、双方の構造部材の間に残された継目は上方および/または下方に対して隔絶され、こうして継目を貫通する補強筋は適切に保護されることができる。加えてさらに、絶縁体の側面にも防火材を配置し、こうしてたとえば上下面に配された防火材と一体となった周回包囲防火材を形成することができる。
【0008】
防火材自体に関していえば、これは通例の方法でマット状または板状に形成されたロックウールから成っている。ただしさらに、梱包部材を使用することにより、防火材をたとえば流し込み可能な小さな粒子(例えば防火剤充填物質)で構成し、梱包部材による成形作用を通じて絶縁体に適合した所要の形状となる防火材を作り出すようにすることも可能である。また、たとえば膨張剤を他の断熱・防音物質と組合わせて梱包部材に注入することができる。このようにして作り出された防火材は、まったく新しい可能性を実現することができる。
以下、図面を参照し、本発明の一連の実施形態を説明することによって本発明のその他の特徴ならびに利点を明らかにする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1の(a)は、基本的に平行六面体(例えば直方体)の形状を有する絶縁体2と、この絶縁体2を貫いて基本的に水平な面内を走る一連の補強筋3とを有する断熱又は防音あるいはその両方のための構造体1を示している。絶縁体2はその上側面ならびに下側面が、それぞれ絶縁体2と同じ縦横長さを有する防火材4、5で被覆されている。この点についてはたとえば図1の(a)においてZで示した箇所の詳細を示す図1の(b)からよく理解することができる。
【0010】
防火材4,5に関して考えられる一連の実施形態は図2〜4に詳細に示されており、図2の(a)は防火材心材(防火材の中身)としてのロックウールマット6と、チューブ状に形成されてロックウールマットの両側終端箇所で溶接されて密封されるプラスチック被膜として形成されている梱包部材7とから成る防火材4aを示している。この溶接接合部8は、図2の(a)に示されている透視斜視図、図2の(b)に示されている側面図ならびに図2の(c)に示されている正面図からその様子を知ることができるように、シール接合の形態である。
【0011】
図3には、ロックウールマット6がプラスチックカプセルの形の梱包部材9によって周囲から隔離される別な実施形態の防火材4bが示されている。このプラスチックカプセルは図3の(b)に示した平面図から理解できるような展開状態となる形態を有しており、図3の(a)の斜視図に示した平行六面体(板状の直方体)の形のプラスチックカプセルは互いに隣接する辺を溶接接合して作られる。
【0012】
図4は、さらに別な実施態様の防火材4c,4dを示したものである。この形態でもロックウールマット6はプラスチックカプセル10で包囲されている。ここで図4の(a)と(c)とは、プラスチックカプセル10の開放端に被され、同所に接着または溶接によって固定される外嵌めシールキャップ11を有する1つの実施態様のそれぞれ垂直断面図と正面図とを示している。図4の(b)と(d)とは、内嵌めシールキャップ12で封止されたプラスチックカプセル10を有する類似の実施形態のそれぞれ垂直断面図と正面図とを示しており、この実施形態においてシールキャップ12は、ロックウールマット6に適合された長方形の断面形状を有する角柱形のプラスチックカプセル10に固定されている。
【0013】
最後に図5には、直方体の形の絶縁体14と、補強筋15と、防火材16とを有する、断熱又は防音あるいはその両方のための構造体13が側面図として示されている。この防火材16の特徴は、ロックウール心材とこれを被覆する梱包部材としての(防火材4cおよび4dと同様に)プラスチックカプセルとからなる4つの個別防火材16a,16b,16c,16dから構成されていることであり、これらの個別防火材16a,16b,16c,16dは、それぞれ、絶縁体14の上側面14aと左側面14bと下側面14cならびに右側面14dとに面状に密接配置されている。これら4つの個別防火材は絶縁体14のそれぞれのコーナーに配置された総計4個のコーナー継手17a,17b,17c,17dによって結合されて、絶縁体14を(隣接するコンクリート構造部材と連結される前方側と後方側とを除いて)全面的に包囲して、断熱および/または防音用の部材をすべての継目方向で火炎と熱から防護する周回包囲防火材を作り出している。
【0014】
総じて本発明により、シンプルな手段で周囲環境の影響から保護された、耐久性ならびに耐候性を有する防火材を備えた、断熱又は防音あるいはその両方のための構造体もしくは構造が提供される。この種の防火材は、たとえば階段、階段踊り場などの防音部材に応用し得ると同様に、たとえば建物から突き出した外側部分の断熱部材に応用することができ、あるいはまた、継目や特に継目を貫いて延びる補強筋が火災から保護されなければならないようなその他の応用例に適用することもできる。
【0015】
尚、特許請求の範囲の項に図面との対照を便利にするために符号を記すが、該記入により本発明は添付図面の構造に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明による断熱又は防音あるいはその両方のための構造体の一例を示し、(a)は斜視図で、(b)は部分拡大図
【図2】本発明による梱包部材を備えた防火材の1つの実施形態を示す、斜視図(a)、側面図(b)ならびに正面図(c)
【図3】別な実施形態の梱包部材を備えた防火材を示しており、この防火材の梱包部材の斜視図(a)と展開図(b)
【図4】さらに異なる2種の構造を有する梱包部材を備えた防火材の断面図(a)、(b)ならびに正面図(c)、(d)
【図5】周回包囲防火材の構造を示す側面図
【符号の説明】
【0017】
1,13 断熱又は防音あるいはその両方のための構造体
2,14 絶縁体
3,15 補強筋
4,5,4a,4b,4c,4d,16,16a,16b,16c,16d 防火材
7,9,10 梱包部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの構造部材の間の断熱又は防音あるいはその両方のための構造体であって、前記2つの構造部材の間に配置される絶縁体(2,14)と、この絶縁体を貫く補強筋(3,15)と、少なくとも1つの防火材(4,5,4a,4b,4c,4d,16,16a,16b,16c,16d)とを含むものにおいて、
前記防火材は梱包部材(7,9,10)を備えており、前記防火材の中身が前記梱包部材(7,9,10)によって包み込まれることを特徴とする断熱又は防音あるいはその両方のための構造体。
【請求項2】
前記梱包部材(7,9,10)は前記防火材(4,5,4a,4b,4c,16,16a〜16d)の中身を全面的に被覆していることを特徴とする請求項1に記載の断熱又は防音あるいはその両方のための構造体。
【請求項3】
前記梱包部材(7,9,10)は前記防火材(4,5,4a〜4d,16,16a〜16d)の中身を隙間なく被覆していることを特徴とする請求項1又は2に記載の断熱又は防音あるいはその両方のための構造体。
【請求項4】
前記梱包部材(7,9,10)は膜材または板材から成ることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の断熱又は防音あるいはその両方のための構造体。
【請求項5】
前記梱包部材(7,9,10)はプラスチックまたは金属から成ることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の断熱又は防音あるいはその両方のための構造体。
【請求項6】
前記梱包部材(7,9,10)は接着または溶接によって密閉されることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の断熱又は防音あるいはその両方のための構造体。
【請求項7】
前記梱包部材(10)は丸断面又は多角形断面の筒状に形成されて、所定の長さ寸法に裁断され、終端キャップ(11,12,17a,17b,17c,17d)で封止可能であることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の断熱又は防音あるいはその両方のための構造体。
【請求項8】
前記梱包部材を備えた防火材(4,5,4a〜4d,16a,16c)は、前記絶縁体(2,14)の上側又は下側あるいはその両方に配置されて、この絶縁体の長手方向と平行に絶縁体の上側面14a又は下側面14cあるいはその両方を覆って延びていることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の断熱又は防音あるいはその両方のための構造体。
【請求項9】
前記防火材(16)は、前記絶縁体の上側面(14a)と下側面(14c)ならびに左右の外側垂直面(14b,14d)とに配置されて全体として1つの周回包囲防火材を形成する4つの個別材(16a〜16d)から成ることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の断熱又は防音あるいはその両方のための構造体。
【請求項10】
前記防火材(4,5,4a〜4d)はマット状または板状の材料から成る心材(6)を有することを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の断熱又は防音あるいはその両方のための構造体。
【請求項11】
前記防火材(4,5,4a〜4d)は前記梱包部材によって包囲される防火剤充填物質を有し、この充填物質は流し込みが可能なように形成されていることを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の断熱又は防音あるいはその両方のための構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−56667(P2007−56667A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−227829(P2006−227829)
【出願日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【出願人】(500170711)シェック・バウタイレ・ゲー・エム・ベー・ハー (6)
【氏名又は名称原語表記】SCHOECK BAUTEILE GMBH
【住所又は居所原語表記】VIMBUCHER STRASSE 2, D‐76534 BADEN‐BADEN, BUNDESREPUBLIK DEUTSCHLAND
【Fターム(参考)】