説明

断熱容器

【課題】 流通段階では胴部を薄い構造にすることができ、また使用に当って胴部の断熱把持部分を簡単に断熱構造に変化させることができる断熱容器を得る。
【解決手段】 容器本体2の胴部壁外周面に嵌合した外套5を有し、該外套は下方が容器本体の胴部壁より下方に突出し、そのほぼ中間部に高さ方向一定範囲の全周にわたって縦方向に複数のスリット7を形成して、胴部壁中間部を複数の短冊片15に分割し、該短冊片に罫線8、9を入れ、且つ外套の上方を容器本体の胴部壁外面に接着し、短冊片15を含む下部を容器本体の胴部壁3に沿って下方にスライド可能してなり、容器本体を押し込むことにより、短冊片15が罫線から折曲して外方に突出して空気層を有する断熱把持部16を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱容器、より詳しくは加熱して飲食できるインスタント食品等特に、熱湯を注いで又は電子レンジで加熱して飲食できるインスタント食品を包装する断熱カップ状容器やプラスチック成形容器等の断熱対策を施した断熱容器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、容器内に熱湯を注ぐことにより飲食できるインスタントラーメン、味噌汁、コーヒー、スープ、お茶等の容器、あるいは電子レンジで容器ごと加熱して飲食する調理食品用のカップ状容器として、紙を主材とするカップ状容器(以下、単に紙製カップ状容器という)が多用されてきている。この種容器は、飲食時に内容物の熱から容器を把持する手を保護するために断熱対策を施している。従来知られている断熱対策としては、紙基材の表面に熱可塑性樹脂をラミネート若しくは含浸させて発泡処理したもの、容器本体(内カップ)の胴部外周部にサックを設けて胴部を2重壁構造とし、サックと容器本体との間に空気層を設けたもの(例えば、特許文献1、2、3参照)、あるいは容器外周部に起こすと取っ手となる取っ手片を連結したもの(例えば、特許文献4参照)が知られている。
【特許文献1】特開平4−201840号公報
【特許文献2】特開2000−281045号公報
【特許文献3】特許第3252478号掲載公報
【特許文献4】実開平3−23011号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記断熱対策のうち、胴部壁を発泡処理したものは断熱効果が低く、熱湯を注いだ場合素手で把持すると非常に熱く感じられ、また、2重壁構造にして空気層を設けたものは一般に発泡処理を施したものと比べて断熱効果は高いが、このような断熱処理を施しても容器外面が65℃〜75℃に達し、素手で持つとかなり熱く感じられ、断熱効果は未だ満足するものではない。また、2重壁構造にして内部に空気層を設けるのは、壁厚方向に空間を形成する必要上、内部に波形状の中芯を設けたり、サック自体に複雑な罫線を形成して外部に膨らませた立体形状に成形しているので、製造工程が複雑であると共に、必然的に容器の胴部壁が厚くなり、容積が増大して製品の箱詰め等収納に不利である。さらに、容器への内容物の充填時には、空容器を筒状に重ねた状態で下部より切り出して供給されるが、胴部壁に空気層があると胴部壁が弾力性を増すため、積重ねた状態で上方のコップの自重により、容器同士の嵌合が強くなり、容器切り出し性が悪くなるという欠点もある。また、容器の胴部壁の外周部に取っ手片を設けるのは、その取っ手片が邪魔になり空容器の積重ね性、切出し性を阻害するという欠点がある。
【0004】
さらに、従来のこの種容器は、断熱容器に限らず、胴部壁は所定の形状や状態に固定されており、使用時に外周面の壁構造が変化するなどのことはなく、変化や遊び性に欠けている。また、従来のこの種容器は、断熱性と保温性の向上という観点に基づいて上記のような種々の改良が加えられてきているが、例えば、カップラーメンの場合、食するときは手で把持する部分に断熱性があれば、容器全体としてはむしろ保温性よりも、食するラーメンが素早く食べ易い温度になるように放熱効果の高いものが望ましい。しかしながら、従来このような考え方に基づく容器はいまだ提供されていない。
【0005】
そこで、本発明は、上記用途に適用されるカップ状断熱容器の上記技術的課題を一挙に解決しようとするものであり、流通段階では中間に空気層を形成する必要がなく2重壁構造であっても薄く構成できて嵩張らず、容器切出し性がよく充填包装性に優れ、また使用時には手で把持する部分は断熱性に優れ、しかも容器の形状変化や遊び性等の意外性に富んでいる断熱容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するために種々研究した結果、必ずしも容器を常に断熱構造にする必要はなく、実際に使用する段階、即ち消費者が内容品を食するときに手で保持する部分が集中的に断熱効果が高ければよく、流通段階では胴部壁に特別な断熱効果を持たさなければ、胴部を薄い構造にすることが可能であり、また使用に当って消費者によって胴部の断熱把持部分を断熱構造に変化させることができれば、容器に意外性と変化性を持たせることが可能であることを見出し、本発明に至ったものである。
【0007】
即ち、上記課題を解決する本発明の断熱容器は、胴部壁と底部壁を有する容器本体、該容器本体の胴部壁外周面に嵌合した外套を有し、該外套は、容器本体の底部から下方に突出しており、その高さ方向一定範囲にわたって複数のスリットが形成され、上端部を基準にして下方が上方にスライド可能にしてなり、容器本体を上方より押し下げることによって、前記外套がスライドして該外套のスリット形成区間部が屈曲又は湾曲して外周部に突出して断熱把持部を形成してなるようにしたことを特徴とするものである。
【0008】
前記スリットは、角形容器等胴部壁面に平坦面を有する断熱容器である場合は、必ずしもスリットを全周に形成する必要はないが、カップ状容器等全周が曲面になっている場合は、全周にわたって所定間隔で縦方向に複数形成して、外套のほぼ中間部が前記スリットにより複数の短冊片に分割されているのが望ましい。そして、前記スリット間に折曲用罫線を形成することによって、使用に際して外套は容易に前記折曲罫線より屈曲して外周部に突出し、断熱構造の断熱把持部を形成することができる。また、前記外套は、例えば、下端が容器本体の底部外形と略同径の内径を有するように構成する等、下端部が容器本体の底部外周面付近に上昇した際、該容器本体外周面と密着して摩擦係合する構造になっているのが望ましく、使用に際して容器本体を押し込んだ場合、外套の底部近傍外周が容器本体の底部外周に密着して摩擦力によりその状態を容易に維持することができる。
【0009】
前記外套は、上下端部が開口している筒状に形成したものでよいが、有底筒状に形成してもよい。そして、前記外套は上部が容器本体の胴部壁に接着されていることが望ましいが、その上端が容器本体のカール部に係止され、容器自体を持ち上げたとき外套が容器本体から抜け落ちることがなければ、必ずしも接着する必要はない。また、前記外套を容器本体と別体に構成し、容器本体に着脱可能とすることによって、容器本体と切り離して流通させて容器ホルダ的に使用することができる。
【0010】
前記断熱把持部は、前記短冊片が屈曲して容器本体の胴部壁を含め4重壁以上の構成とすることによって、胴部を発泡処理又は積極的に空気層を設けなくても断熱把持部の断熱性の高い容器を得ることができる。1例として、前記短冊片のほぼ中間部に水平な山折り用罫線を形成し、該山折り罫線の下方に所定間隔をおいて平行に形成された谷折り用罫線を形成することによって、前記断熱把持部を、容器本体の胴部壁を含め4重壁に構成することができる。
【0011】
また、前記断熱把持部の断熱性を得る他の構成として、外套を上方にスライドさせることによって、短冊片を屈曲させて外方に膨出させ、前記容器本体の胴部壁との間に空気層が形成するような構造にすることができる。その1例として、前記短冊片は、高さ方向上方寄りに水平な山折り用罫線が形成された短冊片と、高さ方向下方寄りに水平な山折り用罫線が形成された短冊片が周方向に交互に配置することによって、上方に短辺が位置する三角状突出部と、下方に短辺が位置する三角状突出部が周方向に交互に繰り替えして配置された断熱把持部を形成することによって、外套と胴部壁との間に有効な空気層が生じる。
【0012】
前記短冊片が高さ方向開口部寄りに水平な谷折り用罫線と底部寄りに水平な谷折り用罫線が形成され、その中間部に山折り用罫線が形成されたものである場合、前記外套が容器本体から突出する長さDは、次式を満たすものであることが望ましい。
D≧A・Sinθb{(tan(θa/2)+tan(θb/2)}
ここで、A:短冊片のスリット上端から山折り用罫線までの距離
θa:短冊片のスリット下端から前記山折り用罫線を結ぶ辺がなす角度
θb:短冊片のスリット上端から前記山折り用罫線を結ぶ辺がなす角度
それにより、容器を押圧した場合、容器の胴部壁底と外套底が一致して密嵌合し、把持部である突出部を形成した状態を維持できる。
【0013】
また、前記罫線は、前記短冊片のほぼ上部近傍に45度傾斜した谷折り用の第1罫線、該第1罫線と平行にその下方に形成された山折り用の第2罫線、さらにその下方に所定間隔をおいて前記第1罫線及び第2罫線と線対称に形成された山折り用の第3罫線と谷折り用の第4罫線からなり、前記容器本体を上方より押し下げることによって、前記容器本体の胴部壁との間に外套の円周方向に沿って台形錐台状に突出した断熱把持部が形成されることを特徴とする。前記容器は、記容器がカップ状容器に限らず、トレー状等断面非円形の容器にも適用可能である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、通常の流通段階では胴部壁を断熱性に形成する必要はないので、2重壁構造であっても中間に空気層を形成する必要がなく嵩張らず収納性に優れ、且つ容器外周面が均一面に形成できて容器積重ね性および容器切出し性がよい。しかも、消費者が使用する際には単に容器を上方より押しこむことで外套がスリットから拡がり外方に突出して空気層を有する断熱把持部が形成されるので、手で把持する部分は断熱性に優れ、他の部分は放熱性が増したカップ状容器を得ることができる。また、消費者が容器を上方より単にポンと押しこむことで、外套が罫線に沿って変形して断熱把持部が形成されるので、容易に断熱把持部を形成させることができると共に容器外形に立体的な変化が生じて、従来の容器にない変化性と意匠性に富んだ断熱容器を得ることができる。
【0015】
さらに、請求項4の構成によれば、容器を押し込んだ際、外套の底部近傍外周が容器本体の底部外周に密着して摩擦力によりその状態を容易に維持することができる。また、請求項5の構成によれば、下端から容器本体底壁までの上げ底空間部が外部から観察できず、望ましい。請求項6の構成によれば、外套が容器本体から抜け落ちることがなく、且つ確実に上部を基準にして外套をスライドさせることができる。請求項7の構成によれば、外套を容器本体と別体にした状態で流通させることができ、容器本体と別意匠を印刷できると共に使用に際してカップホルダーとして使用できる。
【0016】
請求項8〜10の構成によれば、胴部が2重壁でありながら、使用時には簡単に断熱把持部を簡単に4重壁に構成することができ、断熱把持部の断熱性を効果的に確保できる。また、請求項11〜13の構成によれば、使用時には容器を上方より押し込んで、容器本体の胴部壁と外套を高さ方向に相対移動させるだけで、断熱把持部に簡単に空気層を形成することができ、しかも請求項11の構成によれば上方に短辺が位置する三角状突出部と、下方に短辺が位置する三角状突出部が周方向に交互に繰り替えして配置され、安定して把持できる把持性に優れた断熱把持部を形成できる。また、請求項13の構成によれば、空気層が周方向に一様な台形錐台状のものが多数連続して出現する形状となり、確実に空気層が確保できて断熱性に優れていると共に意匠性に優れたカップ状容器が得られる。請求項12の構成によれば、使用に際して断熱把持部強く把持しても、外套が下方にスライドして断熱構造が破壊されることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は、本発明の実施形態に係る断熱容器の実施形態を示し、本実施形態は紙製カップ状容器に適用した場合である。ここで、紙製カップ状容器とは、必ずしも紙材のみで形成されているものに限らず、紙材に合成樹脂フィルムをラミネートしたもの、あるいは紙材に合成樹脂を含浸させたもの、さらには紙材と合成樹脂フィルムや金属箔を積層したものなど、紙を主材とする容器をさす。また、本発明での断熱容器は、胴部壁と底部壁を有する容器で、その大きさや深さ、胴部形状は特に限定されない。また、以下の実施形態では、断熱容器として紙製カップ状容器の例を示すが、カップ状容器本体は、必ずしもカップ状容器に限らず、合成樹脂製成形容器も適用でき、また外周面を包囲する外套も紙製に限らず、合成樹脂フィルム又は複合フィルムで形成することも可能である。
【0018】
本実施形態(第1実施形態)のカップ状のカップ状容器1は、内面が耐水加工された胴部壁3と底部壁4を有するカップ状の容器本体2と外套5とから形成され、胴部壁3の外周部に胴部壁全体を覆うように外套5が嵌装されている。外套5は、紙製又は合成樹脂ラミネート紙等の紙を基材とするシート材で、容器本体の胴部壁の外周面に沿って嵌合するように容器本体の胴部壁形状に合わせて緩いテーパー筒状に形成されている。外套5は、その断面を図1(b)に示すように、上端部が容器本体の開口端部のカール部13近傍位置まで延び、下方突出部が容器本体の底部から下方に所定長さLだけ突出して形成され、その下端6の内径は、容器本体の外周壁下方突出部外径と略同じ内径に形成され、後述するように容器本体を下方に押し下げたとき、容器下端外周に外套下端6が密嵌合し、容器下方突出部外周面と外套下方突出部内周面の摩擦力によりその状態を維持できるようになっている。そして、外套5の上方部12の上端部付近は、容器本体外周面に適宜手段で接着され、外套が容器本体から抜け落ちないように係止されている。なお、必ずしも接着しなくても外套が抜け落ちないように係止しておればよく、摩擦力その他適宜の係止手段を採用してもよい。また、該外套5は本実施形態に示すように、その上端が胴部壁のカール下に位置して容器本体の胴部壁全体を覆うようにするのが保温性或は体裁上から望ましいが、必ずしもその位置に達してなくても良い。
【0019】
外套5のほぼ中間部11には、縦方向に所定間隔に同長のスリット7を全周にわたって形成し、スリット間を複数の短冊片15に分割する。そして、図1(a)に破線で示すように、短冊片15のほぼ中央部と下方突出部に周方向全周にわたって罫線8、9を施す。このうち罫線8は山折り用罫線として形成し、罫線9は谷折り用罫線として形成する。このように形成された外套5は、下端6から短冊片15が形成されている中間部11までは、容器本体2に対してスライド可能となっている。
【0020】
以上のように形成された容器は、通常は図1に示すように、胴部は容器本体の胴部壁3と外套5の2重壁となって、外套の下方突出部10が容器本体から下方に突出している状態にあるが、胴部壁3と外套5との間に空気層などの空間部が存在しないので、容器本体の胴部壁と外套は直接接触した状態にあり、厚みが厚くならず嵩張らないし、胴部壁同士を嵌合して積重ねた状態では、従来のこの種断熱容器と比べて積重ね性・切出し性が良好である。したがって、内容物を充填し開口部を蓋材でシールした状態では従来の断熱容器と比較して嵩張らず、箱詰め等流通段階における収容性を向上させることができる。
【0021】
この状態から、消費者が内容物を食する場合は、内部に熱湯を注ぐ前に容器をテーブルに置き、全体を上から下へ押え付けると、外套下端6にテーブル面から反力が作用して、外套が相対的に上方に突き上げられる。外套5は縦方向にスリット7が形成されているので、容器本体2を下方に押し下げることによって、スリットからの拡がりが許容されてスリット間に形成される短冊片15が、そのほぼ中間に形成された罫線8から山折り及び下方の罫線9から谷折り状に次第に折れ曲がり、図2(a)に示すように、胴部壁外周部に多数の短冊片によってあたかもスカートのフレア状の断熱把持部16が形成される。罫線8の部分が罫線9の部分を超えて下方に折り曲がると、その方向に付勢力が働き、手を離しても折り曲がり状態を維持する。また、この状態では、外套5の下端6は容器本体の下端と一致しているので、外套下方突出部内周壁と容器本体下方突出部外周面と密嵌合状態となり、その摩擦力でもその状態を維持する。
【0022】
そして、この状態では、断熱把持部16は、同図(b)に示すように、容器本体の胴部壁3、外套の下方部10、短冊片の下方部壁11−1、短冊片の上部壁11−2の4重壁となると共に、その間に空気層が形成され、断熱把持部の断熱効果が他の部分と比べて一段と高くなる。したがって、この部分を指で把持すれば、指への内容物の熱の伝わりが弱く、熱さを感じることなく、快適に容器を把持して内容物を食することができる。そして、上記のように断熱把持部が形成された状態では、外套の短冊片が容器本体の胴部壁3から浮き上がり、その部分にスリットから外気が入りこんで直接容器本体の胴部壁3に接触するので、放熱効果が高まり、図1の状態と比べて内容物の温度降下を早め、より快適に食することができる。また、逆に容器本体の保温性が高い方が望ましい場合は、容器本体の胴部壁3を発泡処理等を行い、保温性を上げるようにすればよい。
【0023】
本実施形態のカップ状容器は、以上のように使用時に容器本体の上部を単に押圧するだけで、断熱効果の高い断熱把持部を形成することができると共に、従来のこの種容器には見られない胴部に立体的な変化が生じて、意外性と意匠的効果を生じせしめる効果もある。なお、容器本体の胴部壁外周面に予め印刷を施すことにより、断熱把持部16が形成された状態では、分割されたスリット部から容器本体の胴部壁外面の印刷部が見えるため、より効果的に立体感を出すことができる。
【0024】
図3〜図4は本発明の第2の実施形態に係るカップ状容器を示している。本実施形態のカップ状容器20は、上記第1実施形態のカップ状容器における罫線の位置を変えた変形例であり、同様な部分は同一符号を付し、相違点のみについて説明する。本実施形態と第1実施形態との相違点は、スリットにより形成された短冊片に形成される罫線の位置を隣接する短冊片間で交互に変えて配置した点にある。即ち、本実施形態では、図3に示すように、外套5のほぼ中間部に縦方向に所定間隔で形成されるスリット7によって形成される短冊片において、スリット7の上端間に形成された谷折り用罫線22と該罫線より所定間隔を有して下方に形成された山折り用罫線23を有する短冊片21と、スリット7の下端間に形成された谷折り用罫線24と該罫線より所定間隔を有して上方に形成された山折り用罫線25を有する短冊片26とを交互に配置してある。短冊片21の山折り用罫線23と短冊片26の山折り用罫線25とは、高さ方向に所定間隔を有している。
【0025】
本実施形態のカップ状容器20は、以上のように構成され、使用に際して前記実施形態と同様に、容器をテーブル上において、上方より押圧することによって、容器本体2はその下端がテーブル面に当るまで下がり、外套5には圧縮力が作用し、短冊片21、26はスリットから拡がり、罫線22、23、24、25から折れ曲がり外方に突出する。したがって、短冊片21は図4に示すように、上方の谷折り用罫線22と山折り用罫線23から折れ、上方に短辺29が位置する三角状に屈曲して外方に突出する第1突出部27が形成される。その隣の短冊片26は、下方の谷折り用罫線24と山折り用罫線25から折れ、下方に短辺29が位置する三角状に屈曲して外方に突出する第2突出部28が形成される。第1突出部27と第2突出部28が、周方向に交互に繰り替えして配置されて断熱把持部を形成する。第1突出部27及び第2突出部28とも容器本体の胴部壁3との間に空間が形成されて空気層となり、断熱効果が高い。したがって、この部分を指で把持すれば、指への内容物の熱の伝わりが弱く、熱さを感じることなく、快適に容器を把持して内容物を食することができる。そして、本実施形態における断熱把持部は、傾斜方向の異なる第1突出部27と第2突出部28が交互に繰り返されるので、指がその両方に懸かりより安定して容器を把持することができる。その他の作用効果は前記実施形態と同様である。
【0026】
上記実施形態において、外套の下端が容器本体の下端と一致するまで容器本体を押し込んだ状態で、図5に示すように外套を外方に膨出させて断熱把持部を形成させた場合、該断熱把持部を把持した際、その押圧により外套が元の状態に戻って断熱構造が破壊されないためには、図5(a)に示すように、外套底内径φFが容器本体の胴部壁底外径φEと等しければ、外套と胴部壁は底で密嵌合して摩擦力によりその状態に維持される。ところで、外套が容器本体の胴部壁外周面と同じ勾配で傾斜して胴部壁外周面に嵌合していると、外套の胴部壁底部から突出している部分は上方に移動することができないので、外套は図5(b)に部分的に拡大して仮想線で示すように胴部壁3は、下方に突出している状態で胴部壁に比べて緩勾配となっていなければならない。この状態で容器を押し込んで外套の底部が容器本体の胴部壁底端が一致するように容器底部からの突出長さDを決定すればよい。そして、容器を押圧した場合、外套5が図5に示すように罫線23で折曲して断面三角形状に膨出すると膨出部の斜辺の長さをそれぞれA、Bとし、底辺の長さCとし、且つ該底辺の延長線上の胴部壁底からの突出長さをD’とすると、
D’=(A+B)−C
でなければならない。押圧してない状態での実際の外套の突出長さはDであるが、外套の傾斜角の相違は僅かであるので、D=D’とみなせるから、外套5の容器本体からの下方突出部14の長さDは、膨出部の内角を用いて表せば、次式の条件を満たす状態において、外套底は胴部底と一致し密嵌合する。
D≧A・Sinθb{(tan(θa/2)+tan(θb/2))
ここで、A:短冊片21のスリット上端(上側谷折り用罫線22)から山折り用罫線2 3までの距離、
θa:短冊片21のスリット下端から前記山折り用罫線を結ぶ辺がなす角度
θb:短冊片21の上側谷折り用罫線22から前記山折り用罫線23を結ぶ辺が なす角度
【0027】
図6〜図7は本発明の第3の実施形態に係るカップ状容器を示している。本実施形態の紙製のカップ状容器30は、短冊片の折れ曲がった形態が前記両実施形態と相違し、容器本体を押し下げることによって容器本体の胴部壁との間に台形錐台状の空気層を形成するようになっている。本実施形態では、縦のスリット7を外套31の全周に等間隔で同じ長さで形成するのは、第1実施形態と同様であるが、各短冊片32ごとに4本の罫線が形成され、各罫線はそれぞれ45°づつ傾斜している。第1罫線33は、図においてスリットの頂部から下り傾斜状に45°傾斜して谷折り用に形成され、第2罫線34は第1罫線33と所定間隔離れて平行に山折り用に形成されている。また、第3罫線35は前記スリットの下端から登り傾斜状に45°傾斜して谷折り用に形成され、第4罫線36は、第3罫線35と所定間隔(第1罫線と第2罫線の間隔と同間隔)離れて平行に山折り用に形成されている。即ち、第1罫線、第2罫線と第3罫線、第4罫線は線対称に形成されている。その他の構成は、前記の各実施形態と同様であり、外套31は容器本体の下端から所定寸法だけ下方に突出している。
【0028】
以上のように構成された本実施形態のカップ状のカップ状容器30は、使用に際して、容器をテーブル等の台に置いて容器本体の上部を押すことによって、各短冊片32が第1罫線33〜第4罫線36に沿って折り曲がって、短冊が台形錐台状に外方に膨出した断熱把持部37を形成する。各短冊とも同一形状に変形するので、図7に示すように、容器胴部に台形錘台状の断熱把持部37が連続して繋がったバンド形状を呈し、立体的な装飾性を高める。そして、該断熱把持部の外周壁38と容器本体の胴部壁3との間(即ち、断熱把持部の内部)には空気層が形成され、しかも該空気層は前記第1罫線と第2罫線との間隔に対応して広く形成できるので、断熱効果が高い。なお、本実施形態では、断熱把持部を円錐台形台状に膨出させて空気層を形成したが、空気層の形成はこの形状に限定されるものでなく、例えば上記第1〜第4の罫線を円周方向に互いに平行に形成すれば、四角柱状の膨出部を形成することができ、罫線の設け方によって種々の形状に膨出した断熱把持部を形成することができる。
【0029】
以上の実施形態はカップ状容器に適用した場合を示したが、本発明は断面円形のカップ状容器に限らず、断面四角形、楕円形等非円形容器にも適用できる。図8−9は、断面四角形の容器に適用した場合の一例である。
図における断面四角形の容器40は、容器本体41とその胴部に嵌装した外套42とから構成され、外套42が容器本体41の胴部壁下端43から所定長さ突出しているのは上記実施形態と同様である。本実施形態の場合、外套に形成するスリットは、前記実施形態と同様に全周にわたって所定間隔で形成することも勿論可能であるが、胴部壁の平坦面に面する部分はスリットを形成しなくても、周方向折曲用罫線を施してあれば良いので、スリットは、平坦面には形成せずに図示のように4つのコーナー部のみに形成してある。即ち、本実施形態では、各コーナー部にそれぞれ図示のように3本のスリット44を形成してある。そして、該スリット44の下端を通る谷折り用罫線45とほぼ中間部を通る山折り用罫線46を全周にわたって施してある。その他の構成は前記各実施形態と同様な手段を適宜採用できるので、詳細な説明は省略する。
【0030】
以上のように形成された容器40は、使用に際して前記各実施形態と同様に、単に容器本体を上側から押し下げるだけで、外套が図9に示すように外側に防出して、多重壁構造の断熱把持部47が容易に形成される。
【0031】
また、以上の各実施形態では、何れも外套を容器本体に予め装着してある場合を示しているが、図10に示すように、外套50を容器本体と別体に構成しても良い。外套50には前記実施形態と同様に適宜の断熱把持部を形成するためのスリットや罫線が施されている。図示の実施形態では、図3に示す実施形態と同様にスリット及び折曲用罫線が施されている。このように、外套を別体に構成することによって、容器本体と別々に供給してそのサイズの容器の何れにも適用でき、熱い内容物を充填した容器の断熱ホルダーとして自由に使用することができる。なお、外套の底部は、その断面が同図(b)に示すように底がない筒状に形成してもよく、底壁51を設けても良い。底壁を設けるか否かは、前記各実施形態においても任意である。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明の断熱容器は、通常の流通段階では胴部に膨出部等がなく、使用時に膨出部が形成されて断熱性を高めるので、容器内に熱湯を注ぐことにより飲食できるインスタントラーメン、味噌汁、コーヒー、スープ、お茶等の容器、あるいは電子レンジで容器ごと加熱して飲食する調理食品用のカップ状容器に適用できるばかりでなく、熱い飲食物を食する使い捨てカップとしても利用可能性が高い。また、内容物が冷たい飲食物の容器にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の第1実施形態に係るカップ状容器を示し、(a)は斜視図、(b)はそのA−A断面図である。
【図2】(a)は図1のカップ状容器の使用時の状態を示す斜視図、(b)はそのB−B断面図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係るカップ状容器を示し、(a)は斜視図、(b)はそのC−C断面拡大図である。
【図4】(a)は図3のカップ状容器の使用時の状態を示す斜視図、(b)はそのD−D断面図である。
【図5】(a)外套の下方突出部長さを規定するための断面説明図であり、(b)はそその部分拡大説明図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係るカップ状容器の斜視図である。
【図7】そのカップ状容器の使用時の状態を示す斜視図である。
【図8】本発明の第4実施形態に係る断熱容器の斜視図である。
【図9】その断熱容器の使用時の状態を示す斜視図である。
【図10】本発明の実施形態に係る断熱容器の外套の他の実施形態を示し、(a)はその斜視図、(b)は底部を設けない場合の要部断面図、(c)は底部を設けた場合の要部断面図である。
【符号の説明】
【0034】
1、20、30 カップ状容器
2、41 容器本体 3 胴部壁
4 底部壁 5、31、42、50 外套
7、44 スリット 8、9 罫線
10 下方部 11 中間部
12 上方部 13 カール部
14 下方突出部
15、21、26、32 短冊片
16、37、47 断熱把持部 22、24、45 谷折り用罫線
23、25、46 山折り用罫線 27 第1突出部
28 第2突出部 29 短辺
33 第1罫線 34 第2罫線
35 第3罫線 36 第4罫線
38 外周壁 51 外套の底壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
胴部壁と底部壁を有する容器本体、該容器本体の胴部壁外周面に嵌合した外套を有し、該外套は、容器本体の底部から下方に突出しており、その高さ方向一定範囲にわたって複数のスリットが形成され、上端部を基準にして下方が上方にスライド可能にしてなり、容器本体を上方より押し下げることによって、前記外套がスライドして該外套のスリット形成区間部が屈曲又は湾曲して外周部に突出して断熱把持部を形成してなるようにしたことを特徴とする断熱容器。
【請求項2】
前記スリットが、外套のほぼ中間部に高さ方向一定範囲の全周にわたって所定間隔で縦方向に複数形成され、該外套のほぼ中間部が前記スリットにより複数の短冊片に分割されている請求項1に記載の断熱容器。
【請求項3】
前記スリット間に折曲用罫線が形成され、前記外套は前記折曲罫線より屈曲して外周部に突出する請求項1又は2に記載の断熱容器。
【請求項4】
前記外套は、下端部が容器本体の底部外周面付近に上昇した際、該容器本体外周面と密着して摩擦係合する構造になっている請求項1又は3何れかに記載の断熱容器。
【請求項5】
前記外套は有底の外套である請求項1〜4何れかに記載の断熱容器。
【請求項6】
前記外套は上部が容器本体の胴部壁に接着されている請求項1〜5何れかに記載の断熱容器。
【請求項7】
前記外套は容器本体と別体に構成され、容器本体に着脱可能となっている請求項1〜5何れかに記載の断熱容器。
【請求項8】
前記断熱把持部は、前記短冊片が屈曲して容器本体の胴部壁を含め4重壁以上の構成となっている請求項1又は2に記載の断熱容器。
【請求項9】
前記罫線は、前記短冊片のほぼ中間部に形成された水平な山折り罫線と、該山折り罫線の下方に所定間隔をおいて平行に形成された谷折り罫線からなり、前記断熱把持部が、容器本体の胴部壁を含め4重壁から構成されていることを特徴とする請求項3〜8何れかに記載の断熱容器。
【請求項10】
前記断熱把持部には、前記短冊片が屈曲して前記容器本体の胴部壁との間に空気層が形成されることを特徴とする請求項1〜9何れかに記載の断熱容器。
【請求項11】
前記短冊片は、高さ方向上方寄りに水平な山折り用罫線が形成された短冊片と、高さ方向下方寄りに水平な山折り用罫線が形成された短冊片が周方向に交互に配置されていることを特徴とする請求項3〜10何れかに記載の断熱容器。
【請求項12】
前記短冊片が高さ方向開口部寄りに水平な谷折り用罫線と底部寄りに水平な谷折り用罫線が形成され、その中間部に山折り用罫線が形成されたものである場合、前記外套が容器本体から突出する長さDは、次式を満たすものである請求項7〜11何れかに記載の断熱容器。
D≧A・Sinθb{(tan(θa/2)+tan(θb/2))
ここで、A:短冊片の上側谷折り用罫線から山折り用罫線までの距離
θa:短冊片のスリット下端から前記山折り用罫線を結ぶ辺がなす角度
θb:短冊片のスリット上端から前記山折り用罫線を結ぶ辺がなす角度
【請求項13】
前記罫線は、前記短冊片のほぼ上部近傍に45度傾斜した谷折り用の第1罫線、該第1罫線と平行にその下方に形成された山折り用の第2罫線、さらにその下方に所定間隔をおいて前記第1罫線及び第2罫線と線対称に形成された山折り用の第3罫線と谷折り用の第4罫線からなり、前記容器本体を上方より押し下げることによって、前記容器本体の胴部壁との間に外套の円周方向に沿って台形錐台状に突出した断熱把持部が形成されることを特徴とする請求項3に記載の断熱容器。
【請求項14】
前記容器がカップ状容器である請求項1〜13の何れかに記載の断熱容器。
【請求項15】
前記容器が断面非円形の容器である請求項1〜13の何れかに記載の断熱容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−160346(P2006−160346A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−357415(P2004−357415)
【出願日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(000223193)東罐興業株式会社 (90)
【Fターム(参考)】