説明

断熱材葺設の屋根構造

【課題】 従来、木造住宅等における屋根(天井部分)で断熱を行う場合、一般に屋根地にグラスウール(断熱材)を敷設する方法と、屋根地に、通常、合成樹脂発泡体でなる断熱材を、隣接する横棧間の隙間に葺設する。そして、冬期には、屋根地からの熱の拡散防止を図り、断熱効果を図ること、又は夏期には、屋根地の高温回避を図るとともに、屋根裏への熱のこもりを回避し、室内の冷房効率化を図ること、等が必要不可欠である。
【解決手段】 本発明は、屋根地の多数本の縦棧、縦棧の上に設けた多数本の横棧でなり、この縦棧の上に断熱材を葺設し、この断熱材と、横棧を介して瓦を葺設し、断熱材の軒側端面と、横棧との間に空間を設け、空間に、瓦の引掛けを挿入すると共に、引掛けを、横棧の棟側端面に係止し、瓦の尻側の上に、棟側の瓦の頭側を葺設する構成とした断熱材葺設の屋根構造で、断熱効果が図れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱材葺設の屋根構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、木造住宅等における屋根(天井部分)で断熱を行う場合、一般に屋根地にグラスウール(断熱材)を敷設する方法と、屋根地に、通常、合成樹脂発泡体でなる断熱材を、隣接する横棧間の隙間に葺設する。そして、冬期には、屋根地からの熱の拡散防止を図り、断熱効果を図ること、又は夏期には、屋根地の高温回避を図るとともに、屋根裏への熱のこもりを回避し、室内の冷房効率化を図ること、等が必要不可欠となっている。
【0003】
しかしながら、従来の屋根地に、直接、合成樹脂発泡体でなる断熱材を葺設する方法では、屋根裏の湿気が、前記断熱材と野地板の界面か、又は野地板とアスファルトルーフィングの界面で結露しやすくなり、この結露水によって野地板や横棧等の木質部材の腐蝕が生じて建物の耐久性が低下する虞があった。
【0004】
上記に鑑み、屋根地と断熱材との間に、空気の流れが確保できる隙間が要求される。この要求を達成できる先行文献を検討する。
【0005】
その文献(1)は、実開平4−84626号の「瓦葺屋根構造」であり、横棧の間の屋根地に、表面の棟側に嵌込み凹部を有する断熱材を葺設し、この嵌込み凹部と横棧との隙間に、瓦の引掛けを係止する構造である。しかし、この断熱材に、複数の嵌込み凹部を形成する構造では、嵌込み凹部の欠損が発生し、使用に問題が発生することと、品質の低下を招来する。また、この断熱材に、複数の嵌込み凹部を形成する構造では、嵌込み凹部の欠損が発生し易いことから、その取引過程とか、葺設等の運搬、また、葺設時、等において、慎重を要求されること、余分の神経を使うこと、等の改良点がある。さらに、屋根地の上面(表面)と、断熱材の下面(裏面)との間で形成される空間において空気の流れを確保する構造でなく、断熱効果と換気効果を十分、発揮できないものと考えられる。
【0006】
また、文献(2)は、実開平2−11925号の「断熱下地材」であり、屋根地に葺設される形状の断熱材であり、その表面に複数の排水溝を備えた構造で、棟側端部に横棧を葺設できる舌辺(差込み口)を、また、その軒側端部に、前記舌辺が挿入される切欠窪み部(空所部)を設けた構造であり、舌辺に釘打ちした横棧に、瓦の引掛けを係止するとともに、断熱材の表面に瓦の裏面を添接する構造である。しかし、この断熱材に、複数の排水溝を、また、軒側端部に舌辺を、更に軒側端部に切欠窪み部を形成する構造では、この排水溝、舌辺、切欠窪み部、その他の加工等の欠損が発生し、使用に問題が発生することと、品質の低下を招来する。また、この断熱材に、排水溝、舌辺、切欠窪み部等を形成する構造では、排水溝、舌辺、切欠窪み部等の欠損が発生し易いことから、その取引過程とか、葺設等の運搬、また、葺設時、等において、慎重を要求されること、余分の神経を使うこと、等の改良点がある。さらに、屋根地の表面と、断熱材の裏面との間で形成される空間において空気の流れを確保する構造でなく、断熱効果と換気効果を十分、発揮できないものと考えられる。
【0007】
さらに、特開平11−241426号の「断熱パネル及び該断熱パネルを用いた断熱構造」であり、合成樹脂発泡体の片側表面に防湿シートを、その他側表面に補強材を設けた断熱パネルを、屋根地に葺設し、この断熱パネルの表面に横棧を付設し、この断熱パネルと横棧とを利用して瓦を葺設する構造である。しかし、この発明は、単に、断熱効果を期待するものであり、屋根地の表面と、断熱材の裏面との間で形成される空間において空気の流れを確保する構造でなく、断熱効果と換気効果を十分、発揮できないものと考えられる。
【0008】
【特許文献1】実開平4−84626号
【特許文献2】実開平2−11925号
【特許文献3】特開平11−241426号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記文献(1)と、文献(2)は、屋根の断熱効果は期待できる。しかし、前述した如く、この断熱材は、特殊な構造となっており、欠損が発生し易いこと、また、この欠損が発生した場合には、使用に問題が発生することと、品質の低下を招来すること、等の問題がある。また、断熱材が、特殊な構造であるが故に、その取引過程とか、葺設等の運搬、また、葺設時、等において、慎重を要求されること、余分の神経を使うこと、等の改良点がある。
【0010】
また、文献(3)は、その断熱パネルを、野地板に、敷詰める構造であり、在来の瓦屋根には馴染まないことから、施工の複雑化、施工技術が活用できないこと、等の問題を抱えている。
【0011】
そして、前記文献(1)〜文献(2)は、屋根地の表面と、断熱材の裏面との間で形成される空間において空気の流れを確保する構造でなく、断熱効果と換気効果を十分、発揮できないものと考えられる。
【0012】
さらに、前記文献(1)〜文献(2)は、前記屋根地の表面と、断熱材の裏面との間で形成される空間において空気の流れと、この断熱材の表面と、瓦の裏面とで形成される空間において空気の流れと、を確保し、かつこの流れを棟換気に導く構造は、全く開示されておらず、夏期の換気(屋根地の換気、屋根裏の換気等)と、湿気の排出とにおいて改良の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1の発明は、屋根地の表面と、断熱材の裏面との間で形成される空間において空気の流れと、この断熱材の表面と、瓦の裏面とで形成される空間において空気の流れと、を確保し、かつこの流れを棟換気に導く構造として、夏期の換気(屋根地の換気、屋根裏の換気等)と、湿気の排出を図ることを意図する。また、請求項1の発明は、屋根地の横棧に設けられる断熱材の形状・構造を簡略化することで、この断熱材の欠損の発生を回避すること、また、この欠損の発生を回避し、使用の利便性を図ることと、品質の低下を回避すること、等を目的とする。そして、また、この請求項1の発明は、断熱材の形状・構造を簡略化することで、その取引過程とか、葺設等の運搬、また、葺設時、等において、容易化と簡便化、スピード化等を図ることを意図する。
【0014】
請求項1は、屋根地に設けた多数本の縦棧と、この縦棧に直交する多数本の横棧を、前記屋根地に空間を形成して設けると共に、この縦棧の上で、かつ棟側に位置する横棧と軒側に位置する横棧との間に断熱材を葺設し、この葺設時に、前記棟側に位置する横棧と前記断熱材の表面とを当接すると共に、この断熱材の軒側端面と、前記軒側に位置する横棧との間に空間を設け、この空間に、瓦の引掛けを挿入すると共に、この引掛けを、前記軒側に位置する横棧の棟側端面に係止し、この瓦の尻側の上に、棟側の瓦の頭側を葺設する構成とした断熱材葺設の屋根構造である。
【0015】
請求項2の発明は、請求項1の目的を達成すること、また、この目的に最適な、断熱材の形状・構造を提供することを意図する。
【0016】
請求項2は、請求項1に記載の断熱材葺設の屋根構造において、
前記断熱材が、軒側において高く、軒側に向かって低くなり、側面視して、下側がフラットの裏面と、テーパー形状の表面と、棟側の高い表面と、軒側の低い下端面で、略台形形状とする構成とした断熱材葺設の屋根構造である。
【0017】
請求項3の発明は、請求項1の目的を達成すること、また、この目的に最適な、屋根地の表面と、断熱材の裏面とで形成される空気を通る空間の構造を提供することを意図する。
【0018】
請求項3は、請求項1に記載の断熱材葺設の屋根構造において、
前記断熱材を、多数本の横棧に架承することで、前記屋根地の表面と、この断熱材の裏面との間に空気を通る空間を形成する構成とした断熱材葺設の屋根構造である。
【0019】
請求項4の発明は、請求項1の目的を達成すること、また、この目的に最適な、瓦の裏面と、断熱材の表面とで形成される空気を通る空間の構造を提供することを意図する。
【0020】
請求項4は、請求項1に記載の断熱材葺設の屋根構造において、
前記瓦の裏面にリブ片を突設することで、この瓦の裏面と、前記断熱材の表面との間に空気を通る空間を形成する構成とした断熱材葺設の屋根構造である。
【0021】
請求項5の発明は、請求項1の目的を達成すること、また、この目的に最適で、多様な瓦に最適な、断熱材の形状・構造を提供することを意図する。
【0022】
請求項5は、請求項1に記載の断熱材葺設の屋根構造において、
前記断熱材を、前記瓦の種類で、その寸法を変更する構成とした断熱材葺設の屋根構造である。
【発明の効果】
【0023】
請求項1の発明は、屋根地に設けた多数本の縦棧と、縦棧に直交する多数本の横棧を、屋根地に空間を形成して設けると共に、縦棧の上で、かつ棟側に位置する横棧と軒側に位置する横棧との間に断熱材を葺設し、葺設時に、棟側に位置する横棧と断熱材の表面とを当接すると共に、断熱材の軒側端面と、軒側に位置する横棧との間に空間を設け、空間に、瓦の引掛けを挿入すると共に、引掛けを、軒側に位置する横棧の棟側端面に係止し、瓦の尻側の上に、棟側の瓦の頭側を葺設する構成とした断熱材葺設の屋根構造である。
【0024】
従って、請求項1は、屋根地の表面と、断熱材の裏面との間で形成される空間において空気の流れと、この断熱材の表面と、瓦の裏面とで形成される空間において空気の流れと、を確保し、かつこの流れを棟換気に導く構造として、夏期の換気(屋根地の換気、屋根裏の換気等)と、湿気の排出が図れる等の特徴がある。また、請求項1は、屋根地の横棧に設けられる断熱材の形状・構造を簡略化することで、この断熱材の欠損の発生を回避すること、また、この欠損の発生を回避し、使用の利便性が図れることと、品質の低下を回避できること、等の実益を有する。そして、また、この請求項1は、断熱材の形状・構造を簡略化することで、その取引過程とか、葺設等の運搬、また、葺設時、等において、容易化と簡便化、スピード化等が図れる利点がある。
【0025】
請求項2の発明は、請求項1に記載の断熱材葺設の屋根構造において、
断熱材が、軒側において高く、軒側に向かって低くなり、側面視して、下側がフラットの裏面と、テーパー形状の表面と、棟側の高い表面と、軒側の低い下端面で、略台形形状とする構成とした断熱材葺設の屋根構造である。
【0026】
従って、請求項2は、請求項1の目的を達成できること、また、この目的に最適な、断熱材の形状・構造を提供できること等の特徴を有する。
【0027】
請求項3の発明は、請求項1に記載の断熱材葺設の屋根構造において、
断熱材を、多数本の横棧に架承することで、屋根地の表面と、断熱材の裏面との間に空気を通る空間を形成する構成とした断熱材葺設の屋根構造である。
【0028】
従って、請求項3は、請求項1の目的を達成できること、また、この目的に最適な、屋根地の表面と、断熱材の裏面とで形成される空気を通る空間の構造を提供できること等の特徴を有する。
【0029】
請求項4の発明は、請求項1に記載の断熱材葺設の屋根構造において、
前記瓦の裏面にリブ片を突設することで、この瓦の裏面と、前記断熱材の表面との間に空気を通る空間を形成する構成とした断熱材葺設の屋根構造である。
【0030】
従って、請求項4は、請求項1の目的を達成できること、また、この目的に最適な、瓦の裏面と、断熱材の表面とで形成される空気を通る空間の構造を提供できること等の特徴を有する。
【0031】
請求項5の発明は、請求項1に記載の断熱材葺設の屋根構造において、
前記断熱材を、前記瓦の種類で、その寸法を変更する構成とした断熱材葺設の屋根構造である。
【0032】
従って、請求項5は、請求項1の目的を達成できること、また、この目的に最適で、多様な瓦に最適な、断熱材の形状・構造を提供できること等の特徴を有する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】屋根地の流れ方向(棟から軒に向かって)に縦棧を、この縦棧の上で、かつ棟方向に横棧を設けた要部の俯瞰図
【図2】屋根地に設けた縦棧の上で、かつ棟側の横棧に添接するとともに、軒側の横棧に隙間を設けて断熱材を、葺設した状態の要部の俯瞰図
【図3−1】図2に示した断熱材の上に、平板瓦(瓦の一種類)を複数枚葺設した状態の要部の俯瞰図
【図3−2】図3−1を更に進めて、断熱材の上に、平板瓦を複数枚葺設した状態の要部の俯瞰図
【図3−3】断熱材の上に、和形瓦(瓦の一種類)を複数枚葺設した状態の要部の俯瞰図
【図3−4】図3−3を更に進めて、断熱材の上に、和形瓦を複数枚葺設した状態の要部の俯瞰図
【図4】断熱材の軒側端面と、軒側に位置する横棧との間に空間を設け、空間に、平板瓦の引掛けを挿入し、この横棧に、引掛けが略係止される一部欠截の葺設状態の模式図
【図5】図4の状態から、棟側の平板瓦を葺設し、葺設済の軒側の平板瓦の尻側表面に、この棟側の平板瓦の頭側裏面を葺設した状態の要部の模式図
【図6−1】図5の状態を、広く側面視し、複数枚の平板瓦を葺設した状態を局部的に示した模式図
【図6−2】図6−1の複数枚の平板瓦を葺設した状態を局部的に俯瞰して示した模式図
【図7】棟側の一枚の平板瓦を葺設した状態であって、棟換気装置との関係を説明する要部の模式図
【図8】棟側の一枚の平板瓦を葺設した状態であって、縦棧と横棧との関係を説明する一部欠截の要部の拡大側面模式図
【図9】棟側の一枚の和形板瓦を葺設した状態であって、縦棧と横棧との関係を説明する一部欠截の要部の拡大側面模式図
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の一実施例を説明する。図中1は屋根地で、この屋根地1には、適宜間隔(屋根地1の流れ方向における方向)で、多数本の縦棧2、2、2等(2とする)を設ける。そして、この多数本の縦棧2の上に、多数本の横棧3、3、3等(3とする)を設ける。そして、この横棧3を設ける間隔(屋根地1の棟方向における間隔)は、平板瓦Aの場合には、後述する空間との関係で、例えば、利き足230mmの長さに、+αと、また、和形瓦Bの場合は、例えば、利き足190mmの長さに、+αと、した間隔で、多数本の縦棧2を設ける。
【0035】
そして、この多数本の縦棧2の上には、断熱材5が葺設される。例えば、図8、図3−1と、図3−2に示した平板瓦Aでは、棟側1aの横棧3に、断熱材5の棟側端面5aを添接し、また、軒側1bの横棧3との間に、空間6を形成するようにして、この断熱材5の軒側端面5bを設ける。また、図9、図3−3と、図3−4に示した和形瓦Bでは、棟側1aの横棧3に、断熱材5の棟側端面5aを添接し、また、軒側1bの横棧3の空間6を形成するようにして、断熱材5の軒側端面5bを設ける。
【0036】
この断熱材5の葺設を説明すると、この断熱材5は、平板瓦Aでは、図8に示す構造、また、和形瓦Bでは、図9に示す構造となる。その共通点は、この断熱材5の裏面5cはフラットで、その表面5dが軒側端面5bから棟側端面5aに向かって、下がった(低くなった)傾斜となる構造(テーバー形状)であり、この一例では、その軒側端面5bの高さは、横棧3の表面高さより高く、また、棟側端面5aの高さは、横棧3の表面高さと略同じである。また、断熱材5の寸法を説明すると、その幅(屋根の流れ方向)は、平板瓦Aに対して、和形瓦Bが短寸であり、また、その長手方向(屋根の棟方向)は、原則として、同じとする。そして、この断熱材5を、屋根地1に葺設する一例を説明すると、断熱材5を、横棧3、3間に葺設する。その際に、この断熱材5の棟側端面5aを、横棧3の軒側端面3aに当接するとともに、この断熱材5の棟側表面5dが横棧3の表面高さと略同じとなる。また、この断熱材5の軒側端面5bを、横棧3の棟側端面3bとの間には、前述の如く、空間6が形成されるとともに、この断熱材5の軒側端面5bが高いことから、軒側表面5dは、横棧3の表面より高くなり、後述するように、平板瓦Aの尻側表面に、棟側1aの平板瓦Aの頭側裏面が葺設されるに最適な高さとなる。そして、前述の操作を、例えば、この横棧3、3間に繰返し、この横棧3、3間の棟方向1cの全体に、断熱材5を複数枚葺設する。その結果の最終的は、図2に示されており、屋根地1の全体に、断熱材5が葺設される。
【0037】
以上のようにして、葺設された断熱材5の裏面5cと、屋根地1の表面との間には、縦棧2の高さに準じた空気通路空間8が形成される。
【0038】
次に平板瓦Aを葺設する順番を説明すると、例えば、図4、図6−2等の如く、断熱材5の軒側端面5bの表面に、平板瓦Aの頭側裏面が添接されるとともに、この断熱材5の棟側端面5aに、平板瓦Aの尻側裏面が添接される。そして、この平板瓦Aの引掛けA1が、空間6に挿入されるとともに、この引掛けA1の頭側が、横棧3の棟側端面3bに引掛け係止される構造である。そして、この平板瓦Aでは、その裏面にリブ片(図示せず)を有することから、断熱材5の表面5dと平板瓦Aの裏面との間には、空気通路空間10が形成される。そして、この空気通路空間10は、空間6と、縦棧2間に形成される空間12とを介して、空気通路空間8に繋がることで、通路空間Cが形成される。従って、この通路空間Cを介して、平板瓦Aの裏面と断熱材5の表面5dで形成される隙間(空気通路空間10)と、断熱材5の裏面5cと屋根地1の表面で形成される隙間(空気通路空間8)は、通路空間Cを介して繋がる構造である。
【0039】
尚、前記空間6は、平板瓦Aの引掛けA1の挿入空間としての役割りと、平板瓦Aの尻側の低い葺設状態を確保できる構造として、従来の瓦葺き方法が採用できること、等を意図し、葺設の容易化と、また、葺設の経験と、点検の容易化、等を意図する。そして、さらに、空間6と引掛けA1との間に、間隙600を形成し、この間隙600を、空気通路空間8と空気通路空間10との連繋路として利用する。
【0040】
続いて、次の平板瓦Aを葺設する。この際に、図5の如く、平板瓦Aの尻側表面に、次の平板瓦Aの頭側裏面が被さり、この次の平板瓦Aで、空間6を塞ぎ、また、次の断熱材5に葺設される。そして、また、この次の平板瓦Aの引掛けA1は、棟側1aの横棧3の棟側端面5aに係止される。その他の構造は、既に葺設した平板瓦Aに準ずる。このような葺設を順次することで、図6−1と図6−2を経由して、図3−1と図3−2の状態となる。尚、図7は屋根地1の棟側1aの上端に設けた平板瓦Aであり、この平板瓦Aの棟側端面A2には、外気に開口する空気通路(一部は図示しない)を備えた換気棟装置Dが設けられる。従って、換気棟構造D(換気棟装置)を介して、前記通路空間Cを通過した屋根裏、又は前記多数の空気通路空間8、10と、同空間6、12を流れる(こもった)、例えば、熱気及び/又は湿った空気を、棟から、空気中に排出する。この空気の流通で、例えば、室内とか、屋根裏等の暖冷房効果、湿度調整効果を達成できること、建屋の腐蝕防止と耐久性の向上とを図る。そして、また、冬期には、屋根地からの熱の拡散防止を図り、断熱効果を図ること、又は夏期には、屋根地1の高温回避を図るとともに、屋根裏への熱のこもりを回避し、室内の冷房効率化を図ることにある。尚、換気棟構造Dの吸込側の壁面D1には、複数個の換気孔D2を開設し、棟部Eに達した空気は、前記換気孔D2から通路D3を介して、換気される。この換気棟Fで換気されることで、前述した効果と実益が達成できる特徴がある。
【0041】
また、図3−3と、図3−4は、断熱材5の上に、和形瓦B(瓦の一種類)を複数枚葺設した状態の要部の俯瞰図であり、この和形瓦Bの葺設時には、図9に示した断熱材5を採用する。そして、この断熱材5の表裏面と、和形瓦Bの表裏面と、及び屋根地1、並びに縦横棧2、3との関係と、その構造は、前述の平板瓦Aに準ずる。但し、前記和形瓦Bの裏面と断熱材5の表面5dで形成される隙間(空気通路空間10)は、図示しないが、この和形瓦Bの差込み側、及び/又は、棧山との間で形成される。尚、葺設と、葺設時の引掛け、又は空間6の取扱いと、効果、空気の流れ(通路空間C等)又は作用等は、前述の平板瓦Aに準ずる。
【符号の説明】
【0042】
1 屋根地
1a 棟側
1b 軒側
1c 棟方向
2 縦棧
3 横棧
3a 軒側端面
3b 棟側端面
5 断熱材
5a 棟側端面
5b 軒側端面
5c 裏面
5d 表面
6 空間
600 間隙
8 空気通路空間
10 空気通路空間
12 空間
A 平板瓦
A1 引掛け
A2 棟側端面
B 和形瓦
C 通路空間
D 換気棟構造
D1 壁面
D2 換気孔
D3 通路
E 棟部
F 換気棟

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋根地に設けた多数本の縦棧と、この縦棧に直交する多数本の横棧を、前記屋根地に空間を形成して設けると共に、この縦棧の上で、かつ棟側に位置する横棧と軒側に位置する横棧との間に断熱材を葺設し、この葺設時に、前記棟側に位置する横棧と前記断熱材の表面とを当接すると共に、この断熱材の軒側端面と、前記軒側に位置する横棧との間に空間を設け、この空間に、瓦の引掛けを挿入すると共に、この引掛けを、前記軒側に位置する横棧の棟側端面に係止し、この瓦の尻側の上に、棟側の瓦の頭側を葺設する構成とした断熱材葺設の屋根構造。
【請求項2】
請求項1に記載の断熱材葺設の屋根構造において、
前記断熱材が、軒側において高く、軒側に向かって低くなり、側面視して、下側がフラットの裏面と、テーパー形状の表面と、棟側の高い表面と、軒側の低い下端面で、略台形形状とする構成とした断熱材葺設の屋根構造。
【請求項3】
請求項1に記載の断熱材葺設の屋根構造において、
前記断熱材を、多数本の横棧に架承することで、前記屋根地の表面と、この断熱材の裏面との間に空気を通る空間を形成する構成とした断熱材葺設の屋根構造。
【請求項4】
請求項1に記載の断熱材葺設の屋根構造において、
前記瓦の裏面にリブ片を突設することで、この瓦の裏面と、前記断熱材の表面との間に空気を通る空間を形成する構成とした断熱材葺設の屋根構造。
【請求項5】
請求項1に記載の断熱材葺設の屋根構造において、
前記断熱材を、前記瓦の種類で、その寸法を変更する構成とした断熱材葺設の屋根構造。

【図1】
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【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図3−3】
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【図3−4】
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【図4】
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【図5】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−190622(P2011−190622A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−58162(P2010−58162)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(592157870)マルスギ株式会社 (4)
【Fターム(参考)】