説明

断熱部材及び断熱パネル取付構造

【課題】断熱性を向上し得る断熱部材及び断熱パネル取付構造を提供する。
【解決手段】断熱部材1は、表裏の面材11,12の両端部に桟材13,13を配し、これら表裏の面材間に断熱材14を収容した断熱パネル10と、前記断熱パネルの桟材の長手方向に沿って配設されるとともに、施工下地3、4に固定される断熱性を有した断熱下地桟20と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住居等の建物に配設される断熱部材及び断熱パネル取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、室内外の熱移動を防止するために、住居等の建物に配設される種々の断熱材が提案されている。
例えば、下記特許文献1では、木製の支持板材の幅方向の中央及び左右両端に木製の芯材を固着し、これら芯材の間に発泡樹脂材料からなる断熱材を配置し、さらにこれらを保護板材で覆った木造建築用パネルが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−124944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のようなパネルでは、支持板材と保護板材との間に設けられた芯材が断熱材と比べて熱抵抗が小さい(熱伝導率が大きい)ため、当該芯材が配置された部位が熱橋(ヒートブリッジ)となり、断熱性が損なわれるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、断熱性を向上し得る断熱部材及び断熱パネル取付構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る断熱部材は、表裏の面材の両端部に桟材を配し、これら表裏の面材間に断熱材を収容した断熱パネルと、前記断熱パネルの桟材の長手方向に沿って配設されるとともに、施工下地に固定される断熱性を有した断熱下地桟と、を備えていることを特徴とする。
【0007】
本発明においては、前記断熱下地桟を、前記断熱パネル側に配される木質層と、前記施工下地側に配される断熱層とを積層した構造としてもよい。
また、本発明においては、前記断熱下地桟の断熱層を、圧縮変形可能な断熱材からなるものとしてもよい。
【0008】
また、上記目的を達成するために、本発明に係る断熱パネル取付構造は、表裏の面材の両端部に桟材を配し、これら表裏の面材間に断熱材を収容した断熱パネルを施工下地に取り付ける断熱パネル取付構造であって、前記断熱パネルの桟材の長手方向に沿わせるようにして前記施工下地に断熱性を有した断熱下地桟を固定し、この断熱下地桟に対して前記断熱パネルを固定した構造とされていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る断熱部材及び断熱パネル取付構造は、上述のような構成としたことで、断熱性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】(a)〜(c)は、いずれも本発明の一実施形態に係る断熱部材及び断熱パネル取付構造の一例を模式的に示し、(a)、(b)は、同断熱パネル取付構造の施工手順の一例をそれぞれ模式的に示し、図3におけるX−X線矢視に対応させた一部破断概略縦断面図、(c)は、同断熱パネル取付構造の一例を模式的に示し、図3におけるX−X線矢視に対応させた一部破断概略縦断面図である。
【図2】同断熱部材の一例を模式的に示す一部破断概略斜視図である。
【図3】同断熱部材及び同断熱パネル取付構造を用いた建物の断熱構造の一例を模式的に示す一部破断概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
図1〜図3は、本実施形態に係る断熱部材及び断熱パネル取付構造の一例について説明するための概念的な説明図である。
本実施形態に係る断熱部材1は、図1(b)及び図2に示すように、略矩形平板状の断熱パネル10と断熱性を有した略角柱形状の断熱下地桟20とを備えている。
断熱パネル10は、平板状の表裏の面材11,12と、これら表面材11及び裏面材12の両端部に配された角柱状の一対の桟材13,13と、これら表面材11、裏面材12及び一対の桟材13,13によって区画された空間に収容された断熱材14とを備えている。
【0012】
この断熱パネル10は、表裏の面材11,12の一方の両端部内側面に、桟材13,13をそれぞれ固定し、これら一対の桟材13,13間に断熱材14を充填、収容させて、他方の面材の両端部内側面を桟材13,13にそれぞれ固定することで作製してもよい。これら面材11,12と桟材13,13とは、木ねじ(ビス)や釘、タッカー等の固定止具及び接着剤の両方または一方を用いて固定するようにしてもよい。また、断熱材14は、表裏の面材11,12や桟材13に固定止具及び接着剤の両方または一方を用いて固定するようにしてもよい。
なお、図例では、長方形状の断熱パネル10とした例を示しており、その幅方向両端部に一対の桟材13,13を配した例を示しているが、長手方向両端部に一対の桟材をさらに設けたり、これらの間に中桟材をさらに設けたりするようにしてもよい。
【0013】
表面材11、裏面材12及び桟材13は、合板やLVL等の木質積層板、パーティクルボード等の木質ボード、またはインシュレーションボードやMDF(中密度繊維板)等の木質繊維板などの木質系材料から形成されたものとしてもよい。また、これら種々の木質系材料を積層した複合材料から形成されたものとしてもよい。または、表面材11及び裏面材12の両方若しくは一方を、石膏ボード等の無機質系材料から形成されたものとしてもよい。さらには、これら表面材11及び裏面材12の両方若しくは一方を、解繊したケナフ長繊維にバインダーとして合成樹脂系接着剤等を加えてボード化したケナフボードからなるものとしてもよい。
断熱材14としては、発泡ポリスチレン(発泡PS)や発泡ウレタンなどの各種フォーム系(発泡系)断熱材、またはロックウールやグラスウールなどの繊維系断熱材を採用してもよい。または、例えば、多孔質のウレタンフォーム、シリカなどの粉末若しくはグラスファイバーなどの繊維で芯材を形成し、その芯材をガスバリア性の金属フィルムなどの包装材で外装して真空吸引することにより形成された真空断熱材を採用してもよい。
【0014】
この断熱パネル10は、図1及び図3に示すように、断熱下地桟20を介在させて、天井下地3や壁下地4などの施工下地に沿わせるようにして複数枚を隣接させて接合するようにして配設される。
なお、この断熱パネル10の両端部のそれぞれに、凹溝を設け、雇い実等を用いて隣接する断熱パネル10,10同士を実接合するようにしてもよい。このような実接合としては、雇い実接合に限られず、本実接合やあいじゃくり接合等の実接合を採用するようにしてもよい。この場合は、各実接合の態様に応じて、断熱パネル10の両端部に適宜の加工を施すようにすればよい。または、このように隣接する断熱パネル10,10同士を実接合する態様に代えて、突合せ接合するような態様としてもよい。
【0015】
断熱下地桟20は、略角柱状で長尺に形成されており、断熱パネル10の桟材13の長手方向に沿わせるようにして配設されるとともに、天井下地3や壁下地4などの施工下地に固定される。
この断熱下地桟20は、図例では、複数枚を隣接させて配設される断熱パネル10,10の接合部に沿わせるようにして配設される構成とされている。図3では、断熱パネル10,10の長手方向に沿う接合部に沿わせるようにして断熱下地桟20を配設した例を示している。つまり、図例では、断熱パネル10の長手方向に沿って配された桟材13に沿わせるようにして断熱下地桟20を配設した例を示している。
また、本実施形態では、断熱下地桟20は、図1(b)、(c)に示すように、隣接する断熱パネル10,10の各桟材13,13部分を厚さ方向に貫通して止着される上記同様の固定止具6,6の止着が可能なように、その幅寸法が形成されている。このような構成によれば、断熱パネル10の各桟材毎に断熱下地桟を設ける場合と比べて、部品点数を少なくでき、施工時における作業性を向上させることができる。
【0016】
また、この断熱下地桟20は、本実施形態では、断熱パネル10側に配される木質層21と、施工下地(図1及び図2では、天井下地3)側に配される断熱層22とを積層した構造とされている。これら木質層21と断熱層22とは、接着剤やタッカー、ステイプル等を用いて積層一体化するようにしてもよい。
木質層21は、上記同様の木質系材料から形成されている。この木質層21としては、断熱パネル10を当該断熱下地桟20に固定するための固定止具6の保持強度等の観点から、合板等の木質積層板から形成されたものとしてもよい。また、この木質層21の厚さ寸法は、10mm〜30mm程度としてもよい。
【0017】
断熱層22は、本実施形態では、圧縮変形可能な断熱材からなるものとしている。このような断熱材としては、発泡ポリスチレンや発泡ウレタンなどの各種フォーム系(発泡系)断熱材、またはロックウールやグラスウールなどの繊維系断熱材を採用するようにしてもよい。取り扱い性や保形性等の観点から、弾性を有した発泡ポリスチレンや発泡ウレタンなどの各種フォーム系(発泡系)断熱材を採用するようにしてもよい。この断熱層22の厚さ寸法は、厚さ方向への熱移動を防止できる程度であればよく、5mm前後の数mm程度〜20mm程度としてもよい。
【0018】
なお、断熱下地桟20が固定される施工下地としての天井下地3としては、野縁等としてもよく、壁下地4としては、胴縁や桟部材、間柱、通し柱、外壁材等としてもよい。または、鉄筋コンクリート造等の建築物において、直壁や直天井仕上げ等とされている場合には、その仕上げ面を施工下地としてもよい。この場合は、適宜、コンクリート用のアンカーボルト(プラグ)等の固定止具を採用するようにしてもよい。
さらには、既設の天井材や壁材等を施工下地として、後施工的に本実施形態に係る断熱部材1を施工する態様としてもよい。
また、施工下地としては、天井下地3や壁下地4に限られず、床下地や屋根下地等を施工下地としてもよい。
【0019】
次に、本実施形態に係る断熱部材1を用いた断熱パネル取付構造2の施工手順の一例について説明する。
まず、図1(a)、(b)に示すように、断熱下地桟20の断熱層22を施工下地としての天井下地3側に配置し、当該断熱下地桟20を天井下地3に対して固定止具5またはこれに加えて接着剤等を用いて固定する。この際、各断熱下地桟20が幅方向に隣接する断熱パネル10の接合部、すなわち、桟材13,13の長手方向に沿って配設されるように、幅方向に所定の間隔を空けて各断熱下地桟20を固定する。また、この際、各断熱下地桟20の木質層21の断熱パネル10側の面(図例では、下面)が略同一水平面となるように適宜、水準器等を用いて施工するようにしてもよい。なお、図3に示すように、壁下地4に当該断熱部材1を施工する際には、各断熱下地桟20の木質層21の断熱パネル10側の面が略同一垂直面となるように適宜、下げ振りや水準器等を用いて施工するようにしてもよい。
【0020】
次いで、図1(b)、(c)に示すように、断熱パネル10を順次、断熱下地桟20に対して固定止具6またはこれに加えて接着剤等を用いて固定する(図3も参照)。この際、当該断熱パネル10を断熱下地桟20に対して固定する固定止具6が熱橋とならないよう、施工下地(天井下地3、壁下地4)に達しない固定止具6を用いることが好ましい。つまりは、当該固定止具6の先端が断熱下地桟20の層内に留まるような固定止具6を採用するようにしてもよい。
このように断熱下地桟20及び断熱パネル10を施工した状態では、断熱パネル10の桟材13の長手方向に沿うようにして施工下地3,4に断熱下地桟20が固定され、この断熱下地桟20に対して断熱パネル10が固定された状態となる。
なお、上記のように断熱パネル10を施工した後、断熱パネル10の室内側の面に、適宜、天井仕上げ材や壁仕上げ材等を施工したり、合成樹脂化粧シートや化粧紙、クロス紙等を貼着したりするようにしてもよい。
【0021】
以上のように、本実施形態に係る断熱部材1及びこれを用いた断熱パネル取付構造2によれば、断熱性を向上させることができる。
つまり、断熱部材1の断熱下地桟20を施工下地3,4に固定し、この断熱下地桟20に対して断熱部材1の断熱パネル10の桟材13部位を固定することができる。従って、熱橋(ヒートブリッジ)となる傾向がある断熱パネル10の桟材13部位における熱移動を断熱下地桟20によって低減させることができ、断熱性を向上させることができる。
また、断熱パネル10は、表裏の面材11,12間に断熱材14を収容した構造とされているので、間柱間等に手作業で断熱材を充填する必要があるものと比べて、取り扱い性及び施工時における作業性を向上させることができる。
【0022】
また、本実施形態では、断熱下地桟20を、木質層21と断熱層22とを積層した構造としている。従って、断熱下地桟20の断熱層22によって断熱パネル10の桟材13部位における熱移動の低減が可能でありながらも、断熱パネル10の桟材13部位を断熱下地桟20の木質層21に対して木ねじや釘等の固定止具6によって強固に固定することができる。
【0023】
さらに、本実施形態では、断熱下地桟20の断熱層22を、圧縮変形可能な断熱材からなるものとしている。従って、図1(b)、(c)に示すように、施工下地3,4に凹凸や波打ち等の不陸がある場合にも、このような不陸を断熱下地桟20の断熱層22によって吸収することができる。この結果、施工下地3,4に固定されたこの断熱下地桟20に対して断熱パネル10を固定することで、複数枚の断熱パネル10を略同一水平面や略同一垂直面となるように平らに施工することができる。また、不陸によって生じる恐れがある断熱パネル10の施工下地に対する接着不良等の発生も防止することができる。
【0024】
なお、本実施形態では、木質層21と断熱層22とからなる断熱下地桟20の断熱層22を、圧縮変形可能な断熱材からなるものとした例を示しているが、断熱層22として他の断熱材を採用するようにしてもよい。
また、本実施形態では、施工下地3,4に固定される断熱下地桟20を、木質層21と断熱層22とを積層した構造とされたものを例示しているが、断熱層22のみからなるものとしてもよい。
【符号の説明】
【0025】
1 断熱部材
2 断熱パネル取付構造
10 断熱パネル
11 表面材
12 裏面材
13 桟材
14 断熱材
20 断熱下地桟
21 木質層
22 断熱層
3 天井下地(施工下地)
4 壁下地(施工下地)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表裏の面材の両端部に桟材を配し、これら表裏の面材間に断熱材を収容した断熱パネルと、
前記断熱パネルの桟材の長手方向に沿って配設されるとともに、施工下地に固定される断熱性を有した断熱下地桟と、
を備えていることを特徴とする断熱部材。
【請求項2】
請求項1において、
前記断熱下地桟は、前記断熱パネル側に配される木質層と、前記施工下地側に配される断熱層とを積層した構造とされていることを特徴とする断熱部材。
【請求項3】
請求項2において、
前記断熱下地桟の断熱層は、圧縮変形可能な断熱材からなることを特徴とする断熱部材。
【請求項4】
表裏の面材の両端部に桟材を配し、これら表裏の面材間に断熱材を収容した断熱パネルを施工下地に取り付ける断熱パネル取付構造であって、
前記断熱パネルの桟材の長手方向に沿わせるようにして前記施工下地に断熱性を有した断熱下地桟を固定し、この断熱下地桟に対して前記断熱パネルを固定した構造とされていることを特徴とする断熱パネル取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−87533(P2012−87533A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−235121(P2010−235121)
【出願日】平成22年10月20日(2010.10.20)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度、環境省、地球温暖化対策技術開発事業「既存住宅における断熱性向上のための薄型断熱内装建材に関する技術開発」委託契約業務、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】