説明

断面試料作製装置

【課題】表面からは見ることのできない試料内部の要観察部位に位置を合わせて断面を作成できる試料作製装置を提供する。
【解決手段】試料Sについて、試料内部に存在する波線で囲まれた要観察部位Zの中央を通る平面AAで切断し試料断面S2を得たい場合、遮蔽板43のエッジが試料S上で平面AAの位置に来るように遮蔽板を位置合わせする。遮蔽板43は矢印47で示す方向に移動可能であり、試料S上方の撮像素子36で撮像しモニタ37上に映し出されるX線顕微鏡像中の遮蔽板の影を観察することにより位置が視認でき、オペレータはX線顕微鏡像中の試料Sの要観察部位と遮蔽板43の重なり具合を見ながら、矢印27方向に遮蔽板43を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走査電子顕微鏡や透過電子顕微鏡、あるいは集束イオンビーム装置などで観察される試料の断面を作製する断面試料作製装置に関する。
【背景技術】
【0002】
走査電子顕微鏡(SEM)や透過電子顕微鏡(TEM)で観察される試料を作製する方法として、例えば下記特許文献1に記載されているようなイオンミーリング試料作製装置が知られている。下記特許文献1のイオンミーリング試料作製装置においては、板状マスク(遮蔽材)が試料上に配置され、マスクのエッジを境界として試料に照射されたイオンビームによって試料がエッチングされるように構成されている。エッチング後に現れた試料断面は走査電子顕微鏡などで観察される。
【0003】
ところで、下記特許文献1のイオンミーリング試料作製装置においては、試料表面や遮蔽材を観察する観察装置が備えられていない。このため、下記特許文献1では試料加工前に、試料像を観察しながら試料位置や遮蔽材位置を調節することができない。このため、下記特許文献1では、試料上の所望の部分にイオンビームを照射することができない虞があり、所望の断面を有する電子顕微鏡用試料を作製することが困難になってしまうことがある。
【0004】
そこで、下記特許文献2では、所望の断面を有する試料を作製することができる試料作製装置が開示された。この試料作製装置では、試料加工前に、光学顕微鏡の位置調整と、その光学顕微鏡を用いた遮蔽材の位置調整が行われる。その後、位置調整が行われた光学顕微鏡が用いられて試料加工位置が決められる。このため、位置決めされた試料加工位置にイオンビームが正確に照射され、所望の断面を有する電子顕微鏡用試料を作製することができる。
【特許文献1】第3260920号公報
【特許文献2】特開2005−37164号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2記載の装置では、不透明な試料の内部に断面を作成したい構成物がある場合には、光学顕微鏡による構成物の観察が困難なため、遮蔽材を構成物に正確に位置合わせすることが困難である。
【0006】
本発明は、このような課題解決のためになされたものであり、イオン照射によって試料断面を作成する装置において、不透明な試料の内部に断面を作成したい構成物がある場合であっても、試料内部を観察しながら遮蔽板と試料との位置合わせを行うことができ、断面作製部位を正確に位置決めして直ちに試料作製に移行することの可能な試料作製装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る試料作製装置は、試料を保持する試料保持部と、前記試料を削るために試料面上に照射されるイオンビームを発生するイオン源と、前記試料上に配置される遮蔽板であって端縁部を有し、その端縁部が前記イオン源により発生され試料面上に照射されるイオンビームの照射領域内に配置され、その結果、当該端縁部を境界として試料上にイオンビーム照射領域と非照射領域を画定するための遮蔽板と、前記試料に対し前記イオンビームと異なる方向から照射される観察用X線を発生するX線発生部と、前記試料保持部に保持された試料及び当該試料上に配置される遮蔽板に前記X線発生部から発生されたX線が照射されその結果当該試料を透過したX線を検出することにより当該試料及び遮蔽板のX線画像を撮像する撮像素子と、前記撮像素子によって撮像されたX線画像を表示する表示部とを備え、前記試料のX線画像に基づき前記試料と前記遮蔽板との相対的位置合わせを行い得るように構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、不透明な試料であっても、試料内部の欠陥や構成物を観察しながら遮蔽板と試料との位置合わせを行うことにより、断面作製部位を正確に位置決めし、直ちに断面作製作業に移行することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照しながら説明する。この実施の形態は、図1に断面構成を示す試料作製装置1である。試料作製装置1は、投影型X線顕微鏡を構成する微小焦点X線発生部10と、イオン研磨部30とを備える。
【0010】
試料作製装置1は、試料Sを保持する試料ホルダ40と、試料Sを削るために試料に照射されるイオンビームIBを発生するイオン源33と、試料S上に配置される遮蔽板であって端縁部を有し、その端縁部が試料S上に照射されるイオンビームIBの照射領域内に配置され、その結果当該端縁部を境界として試料S上にイオンビーム照射領域と非照射領域を画定するための遮蔽板43と、試料S及び遮蔽板43に照射されるX線を発生する微小焦点X線発生部10と、試料Sを透過したX線が入射することによって得られる試料のX線透過画像(X線顕微鏡像)を撮像する撮像素子36と、撮像素子36によって撮像された画像を表示する表示部37とを備えている。
【0011】
図1に示されているように、試料ホルダ40に保持された試料Sの上に遮蔽板43が載せられた構成に対してイオン源33からのイオンビームIBが上方から照射され、一方、微小焦点X線発生部10から発生したX線は、イオンビームIBの光軸0に沿ってイオンビームとは反対方向すなわち下方から、試料ホルダ40に開けられた開口を介して試料Sに照射され、その結果試料Sを透過したX線は試料Sの上方のイオン源33との間に配置される撮像素子36に入射して検出される。撮像素子36は微小焦点X線発生装置10と共に投影型X線顕微鏡を構成するものであり、例えばCCD撮像素子が用いられ、光軸に対して横方向に移動可能で、撮像時のみ光軸0上に挿入される。
【0012】
概略的に動作を説明すると、微小焦点X線発生装置10により試料SにX線を照射し、光軸0上に挿入された撮像素子36で撮像した透過X線に基づくX線顕微鏡像を表示部37により観察しながら、遮蔽板43の位置決めを行う。位置決めが終了したら、撮像素子36を光軸上から退避させ、イオン源33からイオンビームを照射し、遮蔽板43の端縁部を境界として試料の断面を作製する。
【0013】
このため、試料作製装置1によれば、オペレータは表示装置に表示される試料Sと遮蔽板43のX線顕微鏡像における試料Sと遮蔽板43の重なり具合を見ながら、光軸0に直交する図1に示すy軸方向に遮蔽板43を調整することができる。このとき、試料Sの内部構造がX線顕微鏡像により観察できるので、試料Sの内部構造を見ながら、遮蔽板43の端縁部(エッジ)が断面作製を所望する試料の位置に配置されるように調整することにより、断面作製位置を正確に決めることができる。
【0014】
以下、各部について説明する。先ず、微小焦点X線発生装置10は、任意の横断面を有する管からなるX線管球11を排気ケーシングとしている。このX線管球11は、ガラス又は非強磁性の金属からなる。X線管球11の後方端面12には、カソードのフィラメント13を加熱するための電流を流す電気給電線14が、図示しない加熱電源から接続されている。
【0015】
加熱されたフィラメント13は、電子源となり、キャップ状のグリッド15を用いて、発散及び分散する電子ビーム16を放射する。放射された電子ビーム16は、ディスクアノード17の中央の開口部18を通過する際に集束され、フォーカスがかけられる。このため、虚焦点(virtual focus)19が光軸O上に生じる。
【0016】
虚焦点19を形成したのち、電子ビーム16は再び拡がり、X線管球11内に配置された偏向コイル20の偏向場を通過してから集束フォーカシングコイル21の磁気ギャップ内にいたる。集束フォーカシングコイル21によるレンズ作用により、電子ビーム16は集束され、ターゲット22上に、焦点として、虚焦点19の縮小された画像23が結像される。
【0017】
ターゲット22は、僅かにX線を吸収するが良好な導電性の担体相(好ましくはアルミニウム又はベリリウムからなる)の表面にX線を発生するターゲット材料例えばタングステン、金、銅又はモリブデンの層を形成することにより作られており、ターゲット材料に電子ビーム16が入射することにより、発散X線ビーム24が発生する。
【0018】
発散X線ビーム24は、イオン研磨部30内に保持された試料Sに照射される。発散X線ビーム24は、試料Sの構造を、陰影、シルエットとして拡大して撮像素子36上に投影する。その拡大倍率は、(ターゲット・撮像素子間距離)/(ターゲット・試料間距離)となる。
【0019】
なお、真空排気装置25は、管11内を真空排気し、内部の真空状態を維持すると共に、溶融フィラメントやターゲットから発生する蒸気を排出し、内部空間を清浄化する。
次に、イオン研磨部30の構成は以下のとおりである。イオン研磨部30は、前記微小焦点X線発生装置10の上に乗るような形で一体化して形成されている。前記X線管球11に一体化されて形成されている壁部材31により囲まれた試料加工室32は、真空排気装置26により微小焦点X線発生装置10側とは独立に真空排気されており、その上部には、イオンビーム発生装置33を有している。イオンビーム発生装置33は、放電ガス(例えば、Arガス)導入部34および高圧が印加される放電電極33a等を有しており、放電によりArガスをイオン化してArイオンを発生させる機能を有している。なお、イオンビーム発生装置で使用する放電ガスとしてはネオン、窒素等を採用することが可能である。
【0020】
前記イオンビーム発生装置33の下方には、前記イオンビーム発生装置33で発生したイオンビームIBを直径約1mmに絞って前記試料Sの加工面Saに入射させるための絞り35が配置されている。
【0021】
絞り35の下には、微小焦点X線発生装置10からの発散X線によって投影拡大された試料のX線顕微鏡像を撮像する撮像素子36が配置される。撮像素子36によって撮影された試料及び遮蔽板のX線顕微鏡像はモニタ37に映し出される。既に説明したように、撮像素子36は、固定ではなく光軸に対して横方向に移動可能で、撮像時のみ光軸0上に挿入される。
【0022】
イオン研磨部30の下部には、試料S及び遮蔽板43を保持するステージ38が配置されている。ステージ38上には、xy移動機構39が配置されており、xy移動機構39はx及びy軸方向に移動可能に構成されている。そして、xy移動機構(試料ホルダ保持部)39上には試料Sを保持した試料ホルダ40がセットされる。これらステージ38、xy移動機構39、試料ホルダ40には、それぞれ貫通孔38a、39a、40aが開けられており、試料ホルダ貫通孔40aはxy移動機構貫通孔39aを介してステージ貫通孔38aに通じている。これらの貫通孔を介して、微小焦点X線発生装置10からの発散X線が試料裏面に到達し得るように構成されている。
【0023】
図2は、図1における試料ホルダ40を詳しく説明するために示した図である。図2(a)は、試料ホルダ40の斜視図、図2(b)は試料ホルダ40を上から見た図、図2(c)は試料ホルダ40を裏側から見た図である。図2(a)に示すように、試料ホルダ40の中央部には前記試料ホルダ貫通孔(イオンビーム進入孔)40aが開けられている。そして、イオンエッチングしたい試料端部Saが試料ホルダ貫通孔40a上に位置するように、試料Sは試料ホルダ40の載置面上に載せられる。
【0024】
また、図2(a)に示すように試料ホルダ40には取り付け部40bが形成されており、前記図1の状態は、この取り付け部40bがxy移動機構39の装着部39bにセットされた状態である。こうして試料ホルダ40がxy移動機構39にセットされると、図1に示したように、試料ホルダ貫通孔40aはxy移動機構貫通孔39aとステージ貫通孔38aと連なって接続される。
【0025】
また、図1において41は遮蔽板移動機構41である。この遮蔽板移動機構41は、ステージ38上に配置されており、y軸方向に移動可能に構成されている。そして、遮蔽板43を保持した遮蔽板保持部42が、x軸に平行な軸jの周りに傾倒可能に前記遮蔽板移動機構41に取り付けられている。遮蔽板43は、イオンビームによって削られにくい金属材料から形成され、直線状の端縁部(エッジ)を有する。この端縁部を境界として試料S上にイオンビーム照射領域と遮蔽板で覆われたイオンビーム非照射領域が画定される。そして、照射領域側に照射されたイオンビームによって試料がエッチングされる一方、遮蔽板によって覆われた非照射領域はエッチングされない。そのため、エッチングが進むにつれ、前記エッジを境界とした段差が形成され、その段差部分に試料断面が出現形成されることになる。
【0026】
図1の状態においては、遮蔽板保持部42は試料側に傾倒されており、遮蔽板43は試料S上に密接配置されている。この状態で、微小焦点X線発生装置10と撮像素子36を用いて試料のX線顕微鏡像をモニタ37上に表示させれば、X線を遮った遮蔽板の影と共に、遮蔽板で遮られない部分に於いてX線を透過した試料の内部構造を示すシルエットを観察することができる。
【0027】
なお、遮蔽板43で覆われた試料S内部も観察したい場合には、必要に応じて遮蔽板保持部42を軸jの周りに傾倒し、遮蔽板43を試料S上から除けば良い。さらには、遮蔽板43を構成する材料として、イオンビームによってエッチングされにくく且つX線はある程度透過させる物質を用いれば、遮蔽板43が試料S上に配置されたままでも、遮蔽板をX線が透過するので、遮蔽板で覆われた部分の試料Sの構造が映し出されて観察することができる。また、遮蔽板の有無によりエッジ部分にコントラストが付くので、エッジ部分の位置も確認することができる。
【0028】
図3は、図1に示した試料作製装置1の要部を説明するための図である。微小焦点X線発生装置10から出射された発散X線ビーム24は、試料Sに照射される。試料Sについて拡大した図6に示すように、試料内部に存在する波線で囲まれた要観察部位Zの中央を通る平面AAで切断し試料断面S2を得たい場合、遮蔽板43のエッジが試料S上で平面AAの位置に来るように遮蔽板を位置合わせする。遮蔽板43は矢印47で示す方向に移動可能であり、試料S上方の撮像素子36で撮像しモニタ37上に映し出されるX線顕微鏡像中の遮蔽板の影を観察することによりその移動が視認でき、オペレータはX線顕微鏡像中の試料Sの要観察部位と遮蔽板43の重なり具合を見ながら、矢印47方向に板状マスク43を調整することができる。
【0029】
図4及び図5は、この位置合わせの操作を説明するための図である。先ず、(A)に示すような貫通孔40aのある試料ホルダ40に、(B)に示すように試料Sを乗せ固定する。この試料Sには、表面から肉眼では見えないが、波線で囲んだ要観察部位Zが存在する。そして、遮蔽板43を試料上に載せない状態で、微小焦点X線発生装置10から発生したX線が試料Sに照射される。これにより、撮像素子36には試料を透過したX線が投影され、それを検出撮像して得られるX線顕微鏡像が(C)に示すようにモニタ37の画面に表示される。表示されたX線顕微鏡像には試料内部の要観察部位Zの像48が含まれており、それを観察することにより、要観察部位Zの形状及び位置を確認することができる。
【0030】
次に、(D)に示すように、オペレータは遮蔽板43を試料上に載せ、その状態でX線を試料Sに照射することにより、試料に遮蔽板が重ねられた状態のX線顕微鏡像がモニタ37に映し出される。
【0031】
オペレータは、モニタ37に映し出されたX線顕微鏡像を観察しつつ、像中で遮蔽板のエッジが要観察部位の所望の位置に来るように、遮蔽板43を(D)における矢印47方向に移動させる。
【0032】
これで位置合わせ作業が終了するので、イオン照射の邪魔にならないよう撮像素子36をイオン光軸0から退避させた上で、(E)に示すように、楕円形断面のイオンビームIBを試料S及び遮蔽板43に照射する。適宜な期間にわたるイオンビーム照射を受け、遮蔽板43の直線状のエッジを境界とする試料Sのイオン照射領域は、イオンビームIBにより(F)に示すように削り取られ、その結果目的とする要観察部位Zの断面49を含む試料断面S2が出現する。
【0033】
(G)は、(F)における矢印55方向(イオン照射方向に垂直な方向)から見た上記断面S2を示し、要観察部位Zの断面49が露出していることが分かる。このようにして作成された断面を持つ試料を例えば走査電子顕微鏡の試料室に導入し、この断面に電子ビームを照射して観察すれば、要観察部位Zの断面を高倍率で観察することができる。
【0034】
なお、イオン照射の際に、イオンや削り取られた試料が微小焦点X線発生装置10側へ進行し、ターゲット22に到達して損傷や汚損が発生するのを防ぐため、試料とターゲット22との間の適宜な位置、例えば図1におけるステージ38の直下に、ステージ38の貫通孔38aを塞ぐことができるよう例えばスライド式のシャッター50を配置するのが好ましい。このようにすれば、撮像素子36がイオン光軸0上に配置されている位置合わせ作業中はシャッター50を開いて微小焦点X線発生装置10からのX線が試料に到達するようにし、一方、位置合わせ作業が終了し、イオン照射を行うために撮像素子36をイオン光軸0から退避させる際には、それに連動してシャッター50を50′の位置に配置することにより貫通孔38aを閉じれば、イオン照射に伴ってイオンや削り取られた試料がターゲット22に到達するのを防ぐことができる。
【0035】
また、微小焦点X線発生装置10とイオン研磨部30とは、ターゲット22により仕切られ、それぞれ真空排気装置25,26により独立に真空排気されているので、どちらか一方を真空に維持したまま他方を大気に開放することができる。例えば、X線顕微鏡による試料Sと遮蔽板43との位置合わせが終了すれば、微小焦点X線発生装置10側は大気にしても良い。逆に、試料加工室32を大気にした状態で試料Sをステージ38にセットし、そのまま微小焦点X線発生装置10からX線を発生させれば、X線顕微鏡による試料Sと遮蔽板43との位置合わせを、イオン研磨部30を大気圧にした状態で行うことが可能である。
【0036】
図7は、本発明の第2の実施形態を示す断面図である。図7において図1と同じ構成要素には同一の番号及び記号が付されている。この第2の実施形態では、試料加工室32を囲む壁部材31のステージ38が取り付けられている側壁部分31aが、イオンビーム発生装置33が取り付けられている本体部分と別体構造とされ、引き出し機構51により本体部分と離れて引き出せる構造とされている。引き出し機構51は、前記側壁部分31aを保持する移動部51aと、移動部51aをスライド可能に保持するガイドレール部51bと、壁部材31の本体部分底部に取り付けられ、前記ガイドレール部51bを収納保持するベース部分51cとから構成される。図7は引き出された状態を示しており、側壁部分31aに取り付けられているステージ38も一緒に引き出されており、この状態で試料の新規な配置、あるいは試料交換が可能である。
【0037】
微小焦点X線発生装置10は引き出された状態におけるステージ38の貫通孔38aの位置に下方から図示の位置に接近でき、また、不使用時には引き出し機構51による側壁部分31aの出し入れに邪魔にならない退避位置へ後退できるよう、上下方向に前進/後退可能に引き出し機構51のベース部分51cに保持されている。
【0038】
一方、試料Sの上方に配置される撮像素子36は、側壁部分31aの上端部に固定された撮像素子傾倒機構52に取り付けられており、不使用時には、撮像素子36は撮像素子傾倒機構52によって軸rを中心として上に波線で示す退避位置まではね上げられる。
【0039】
このような構成において、図7に示した状態で微小焦点X線発生装置10から発生したX線が試料S及び遮蔽板43に照射され、試料を透過したX線を撮像素子36により検出して得られた信号に基づき図示しないモニタにX線顕微鏡像が表示される。このX線顕微鏡像を観察することにより、先の例と同様に試料Sの要観察部位と遮蔽板43のエッジの位置合わせを行うことができる。
【0040】
そして、位置合わせが終了したら、オペレータは微小焦点X線発生装置10を退避位置まで下降させると共に、撮像素子36を撮像素子傾倒機構52によって退避位置まではね上げる。このようにして、微小焦点X線発生装置10と撮像素子36の退避が終了したのを確認した後、オペレータが側壁部分31aを本体部分の方向へ押すと、側壁部分31aは引き出し機構51により本体部分に向けて移動し、やがて本体部分と接触して停止する。
【0041】
側壁部分31aが本体部分と接触して停止した際に、既に位置決めされた遮蔽板43のエッジ部分がイオンビーム発生装置33の真下に位置され、イオンビームIBが(遮蔽板と試料にまたがって)照射されるようステージ38の長さが選定されていることは言うまでもない。停止後、オペレータは真空排気装置26を作動させ、壁部材31と側壁部分31aによって囲まれた試料加工室32の内部を真空排気する。そして、イオンビームの照射に適する真空度に到達したら、オペレータは、イオンビーム発生装置33からイオンビームIBを発生させて遮蔽板43のエッジ部分に照射し、試料の断面加工を開始する。
【0042】
上述した第2の実施形態によれば、試料を引き出し大気圧の状態で試料のセット及びその後のX線顕微鏡による試料と遮蔽板の位置合わせまで行うことができ、第1の実施形態で得られる本発明の効果に加えて操作性の向上を図ることができる。
【0043】
図8は、本発明の第3の実施形態を示す断面図である。図8において図1及び図7と同じ構成要素には同一の番号及び記号が付されている。この第3の実施形態は第2の実施形態と同様の基本構成であるが、微小焦点X線発生装置10が側壁部分31aに取り付けられ、退避機構が省略されている点で第2の実施形態と異なる。
【0044】
すなわち、図8に示されているように、微小焦点X線発生装置10は取付部材53により側壁部分31aに取り付け固定されており、側壁部分31aと共に移動する。この第3の実施形態においても、上述した第2の実施形態と同様、ステージ38を引き出し、大気圧の状態で試料のセット及びその後のX線顕微鏡による試料と遮蔽板の位置合わせまで行うことができ、第1の実施形態で得られる本発明の効果に加えて操作性の向上を図ることができる。
【0045】
以上述べたように、本発明によれば、イオンビーム照射による断面試料作製装置に投影型X線顕微鏡を組み込むことにより、不透明な試料であっても、試料内部の欠陥を観察しながら位置選択を行い、断面試料の作成を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかる断面試料作製装置の断面図である。
【図2】試料ホルダの詳細な構成図である。
【図3】試料作製報置の要部を説明するための図である。
【図4】位置合わせの操作を説明するための図である。
【図5】位置合わせの操作を説明するための図である。
【図6】試料Sについての拡大図である。
【図7】本発明の第2の実施形態にかかる断面試料作製装置の断面図である。
【図8】本発明の第3の実施形態にかかる断面試料作製装置の断面図である。
【符号の説明】
【0047】
1:試料作製装置、10:微小焦点X線発生装置、13:フィラメント、16:電子ビーム、22:ターゲット、24:発散X線ビーム、30:イオン研磨部、33:イオンビーム発生装置、36:撮像素子、37:モニタ、40:試料ホルダ、43:遮蔽板、S:試料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を保持する試料保持部と、
前記試料を削るために試料面上に照射されるイオンビームを発生するイオン源と、
前記試料上に配置される遮蔽板であって端縁部を有し、その端縁部が前記イオン源により発生され試料面上に照射されるイオンビームの照射領域内に配置され、その結果、当該端縁部を境界として試料上にイオンビーム照射領域と非照射領域を画定するための遮蔽板と、
前記試料に対し前記イオンビームと異なる方向から照射される観察用X線を発生するX線発生部と、
前記試料及び当該試料上に配置される遮蔽板に前記観察用X線が照射されその結果当該試料を透過したX線を検出することにより試料及び遮蔽板のX線画像を撮像する撮像素子と、
前記撮像素子によって撮像されたX線画像を表示する表示部とを備え、
前記試料のX線画像に基づき前記試料と前記遮蔽板との相対的位置合わせを行い得るように構成したことを特徴とする断面試料作製装置。
【請求項2】
前記X線発生部は、電子線が集束されて照射されたターゲットからX線を発生することを特徴とする請求項1記載の断面試料作製装置。
【請求項3】
前記試料保持部にはイオンビーム光軸の周囲を開口とするようにX線通過孔が形成され、当該X線通過孔を塞ぐように試料が保持されると共に、当該X線通過孔を介して前記イオンビームと反対方向から試料にX線が照射されることを特徴とする請求項1又は2記載の断面試料作製装置。
【請求項4】
前記撮像素子は、前記イオン源と前記試料保持部との間に配置され、前記イオンビーム通路から退避可能に設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の断面試料作製装置。
【請求項5】
前記試料保持部と前記X線発生部との間に、前記イオンビームの前記X線発生部への進入を防ぐ開閉自在のシャッタ機構が配置されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の断面試料作製装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−109323(P2009−109323A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−281577(P2007−281577)
【出願日】平成19年10月30日(2007.10.30)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【出願人】(000004271)日本電子株式会社 (811)
【Fターム(参考)】