説明

新体操用こん棒及びその製造方法

【課題】床の損傷防止、人体へのダメージの低減及び製造能率の向上を図ることにある。
【解決手段】首部2と、胴体部1と、頭部3とを備え、首部2は、熱可塑性樹脂(第1の材料)によって形成され、胴体部1は、常温においてゴム弾性を有し、加熱によって溶融し射出成形が可能な熱可塑性エラストマー(第2の材料)によって、首部2の一端部2bに射出成形により一体的に形成され、頭部2は、頭部2及び胴体部1に同時に外接する仮想平面Aと接触することなく首部2側に位置する頭基端部31と、仮想平面Aとの接点3bを含み首部2とは反対側に位置する頭先端部32とを備えてなり、頭先端部32を熱可塑性エラストマーによって頭基端部31に一体的に射出成形した構成になっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新体操において使用する新体操用こん棒及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の新体操用こん棒としては、木製の棒によって形成された首部の一端部に弾性材からなる胴体部を接着剤やねじによって結合し、上記首部の他端部にも同じく弾性材からなる頭部を接着剤によって結合することにより、胴体部、首部及び頭部からなる一体的に構成されたものが知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
このように構成された新体操用こん棒においては、胴体部及び頭部がクッション性を有する弾性材によって構成されているので、投げ上げた後に、誤って床に落としてしまうようなことがあっても、当該床が傷付くことがなく、また例えば胴体部が人の体に当るようなことがあっても、その人体に対するダメージを最小限に抑えることができるという利点がある。
【0004】
また、他の従来例としては、グラスファイバーのような強靭な材料で心材を構成し、この心材の周囲にゴム材料からなる胴体部、首部及び頭部を一体的に形成したものも知られている(例えば、特許文献2)。
【0005】
このように構成された新体操用こん棒においては、全体がクッション性を有するゴムによって覆われた構造になっているので、上述した特許文献1に記載のものと同様の作用効果を奏する。
【0006】
【特許文献1】実公平2−46931号公報
【特許文献2】実公平4−45734号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上記特許文献1に記載の新体操用こん棒においては、例えば接着剤を用いて結合する構造のものは、首部等に接着剤を塗布する作業が必要になると共に、その接着効果を得るために十分な養生時間が必要になる。また、ねじを用いて結合する構造のものは、首部や胴体部に雄ねじや雌ねじの加工が必要になると共に、そのねじ結合のために胴体部を回転するなどの作業が必要になり、しかも確実な締結力を得るためにはねじの締め付けトルクの管理が必要になる。従って、製造能率が劣るという問題がある。
【0008】
一方、上記特許文献2に記載の新体操用こん棒においては、胴体部、首部及び頭部を構成するゴム材料に所定のゴム物性を与えるために、天然ゴムや合成ゴムに加硫剤等を混ぜる混練り作業が必要になると共に、このように混練りした材料を用いて、心材の周囲に胴体部、首部及び頭部を成形した後、当該加硫のために胴体部、首部及び頭部を所定時間高温で保持する必要がある。従って、この場合も、製造能率が劣るという問題があった。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、床への損傷を防止することができると共に、人体へのダメージを最小限に抑えることができ、且つ製造能率の向上を図ることのできる新体操用こん棒及びその製造方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、棒状に形成された首部と、この首部の一端部に形成され当該一端部の外周面より大径の外周面を有する胴体部と、前記首部の他端部に形成され当該他端部の外周面より大径の外周面を有する頭部とを備えた新体操用こん棒であって、前記首部は、所定の強度を有する第1の材料によって形成され、前記胴体部は、常温においてゴム弾性を有し、加熱によって溶融し射出成形が可能な第2の材料によって、前記首部の一端部に前記射出成形により一体的に形成され、前記頭部は、当該頭部及び前記胴体部に同時に外接する仮想平面を想定した場合に、当該仮想平面と接触することなく前記首部側に位置する頭基端部と、前記仮想平面との接点を含み前記首部とは反対側に位置する頭先端部とを備えてなり、前記頭先端部が前記第2の材料によって前記頭基端部に射出成形により一体的に形成されていることを特徴としている。
【0011】
ここで、常温とは、新体操用こん棒を使用して演技したり、当該新体操用こん棒を保存しておいたりする通常の環境下における温度をいう。また、射出成形とは、加熱により溶融可能な材料(熱可塑性樹脂等)を所定のシリンダ内で溶融させておき、その溶融した材料を、当該シリンダから高圧で射出することによって、閉じた金型のキャビティ(成形空間)内に高圧で注入した後、冷却して固化させることにより、キャビティに合致する形状の製品を成形することをいう。この射出成形によって、寸法や重量のばらつきの小さな製品を大量に得ることが可能になる。
【0012】
また、第2の材料としては、例えば熱可塑性エラストマーがある。この熱可塑性エラストマーとは、加硫せず、又は架橋せずに、こん棒の使用温度あるいは保存温度の範囲(即ち、常温)においては加硫ゴムと類似のゴム弾性を有する特性を持ち、射出成形のための加工温度まで加熱することによりその特性が消滅し、容易に射出成形ができ、常温に戻すと再びもとの特性を発現するポリマー、またはポリマーブレンドをいう。例えば、スチレン系、オレフィン系、PVC系、ウレタン系、エステル系、アミド系等の熱可塑性エラストマーがある。また、熱可塑性エラストマーは、発泡剤を含有する発泡熱可塑性エラストマーであってもよく、ガラス繊維等の補強材を含有するものであってもよい。
【0013】
更に、第2の材料は、常温においてゴム弾性を有し、加熱によって溶融し射出成形が可能な材料であれば、胴体部に用いるものと、頭先端部に用いるものとで、溶融温度、ゴム硬度、比重等の物性が異なるものであってもよい。但し、胴体部と頭先端部を同時に射出成形することを考慮した場合には、これらの胴体部及び頭先端部において同一物性の第2の材料を用いることが好ましい。また、頭基端部については、第1の材料によって首部と一体的に形成することが好ましい。
【0014】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記首部の一端部には、前記胴体部が射出成形されることにより当該胴体部の内方に位置することになる胴体結合部が設けられており、前記頭基端部には、前記頭先端部が射出成形されることにより当該頭先端部の内方に位置することになる頭端結合部が設けられており、前記胴体結合部及び前記頭端結合部には、それぞれの外周面に凹部又は凸部が形成されていることを特徴としている。
【0015】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記凹部又は前記凸部は、周方向に連続的に及び又は部分的に形成されていることを特徴としている。
【0016】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れかに記載の発明において、前記首部の外周面には、前記頭部の近傍部分を除く部分に、表面を荒らす粗面加工が施されていることを特徴としている。
【0017】
ここで、表面を荒らす粗面加工とは、首部の外周面が岩目、砂目、なし地等の状態となるように、当該外周面に比較的荒い凹凸を生じさせるような加工をいう。首部が例えば金属で形成されている場合には、当該首部の外周面に対して薬品による化学腐食(エッチング)や、ショットブラスト(例えば、サンドブラスト)等の表面処理を施すことにより、当該外周面に表面を荒らす凹凸が形成された状態になる。また、首部が例えば熱可塑性樹脂で形成されている場合には、当該首部を成形する金型のキャビティ内面に上述した化学腐食やサンドブラスト等による表面処理を施すことにより、首部の外周面に表面を荒らす凹凸が形成された状態になる。この粗面加工は、首部の外周面と掌との間の摩擦力を十分高めるため、その首部の外周面を10S〜50Sの表面あらさとなるように処理することが好ましい。また、粗面加工をシボ加工という場合もある。
【0018】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4の何れかに記載の発明において、前記胴体部及び前記頭先端部の各外周面には、つや消し処理が施されていることを特徴としている。
【0019】
ここで、つや消し処理としては、例えば、胴体部及び頭先端部を射出成形するための金型におけるそれぞれのキャビティ内面に上述した化学腐食やサンドブラスト等による表面処理を施すことにより、射出成形後の胴体部及び頭先端部の外周面を岩目、砂目、なし地等の状態にする粗面加工による処理がある。
【0020】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5の何れかに記載の発明において、前記胴体部及び前記頭先端部は、硬度が60〜80であることを特徴としている。
【0021】
ここで、硬度とは、ゴム硬度をいい、JIS K 6253(ISO 7619)に規定するタイプAデュロメータによるゴムの硬さをいう。
【0022】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6の何れかに記載の新体操用こん棒を製造する方法であって、前記胴体部及び前記頭先端部のそれぞれを射出成形するためのキャビティを有する金型を開いて、当該金型内の所定の位置に前記首部及び前記頭基端部が一体的に形成されたものを挿入してから、前記金型を閉じ、前記各キャビティ内に加熱により溶融した状態となった前記第2の材料を注入することにより、前記首部の一端部に前記胴体部を射出成形すると共に、前記頭基端部に前記頭先端部を射出成形することを特徴としている。
【0023】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜6の何れかに記載の新体操用こん棒を製造する方法であって、前記首部及び前記頭基端部を一体的に射出成形するためのキャビティを有する第1の金型を閉じてから、前記キャビティ内に加熱により溶融した状態となった前記第1の材料としての射出成形可能な材料を注入することにより、前記首部及び前記頭基端部を一体的に射出成形した後、前記胴体部及び前記頭先端部のそれぞれを射出成形するためのキャビティを有する第2の金型を開いて、当該第2の金型内の所定の位置に前記第1の金型により射出成形された前記首部及び前記頭基端部からなるものを挿入してから、前記第2の金型を閉じ、当該第2の金型の前記各キャビティ内に加熱により溶融した状態となった前記第2の材料を注入することにより、前記首部の一端部に前記胴体部を射出成形すると共に、前記頭基端部に前記頭先端部を射出成形することを特徴としている。
【0024】
ここで、第1の材料としての射出成形可能な材料としては、熱可塑性樹脂(例えば、PP)や、ガラス繊維等の補強材や発泡剤等を含有する熱可塑性樹脂を用いることが可能である。また、第2の金型は、請求項7に記載の発明における金型に対応する。
【発明の効果】
【0025】
請求項1に記載の発明によれば、胴体部が常温においてゴム弾性を有する第2の材料によって形成され、頭部における仮想平面との接点を含む頭先端部も第2の材料によって形成されているので、胴体部が先に平面状に形成された床に落下した場合も、頭部が先に当該床に落下した場合も、胴体部及び頭部が同時に当該床に落下した場合も、必ずゴム弾性を有する部分が当該床に当ることになる。従って、誤って床に落してしまった場合でも、当該床を損傷させることがない。また、床等に当った際の衝撃力を胴体部や頭先端部の弾性変形によって吸収することができるので、胴体部、頭部又は首部が損傷するのも防止することができる。更に、胴体部や頭先端部が人の体に当った場合にも、その人体へのダメージを最小限に抑えることができる。
【0026】
また、加熱により溶融し射出成形が可能な第2の材料を、首部の一端部に射出成形することにより、当該一端部に胴体部を一体的に形成するようになっているので、当該胴体部を首部の一端部に強固に結合することができる。即ち、物の表面にはいかに綺麗に仕上げた場合でも微細な凹凸が交互に連続的に存在しており、胴体部を首部の一端部に射出成形した際には、その溶融した第2の材料が首部の一端部に存在する微細な凹凸に合致した状態になってから冷えて固まることになる。このため、胴体部と首部の一端部とが強固に結合されることになる。同様にして、頭先端部と頭基端部とも強固に結合された状態になる。
【0027】
このように、胴体部と首部及び頭先端部と頭基端部を、接着剤やねじ等をまったく使用することなく、強固に結合することができるので、接着剤やねじ等を用いた場合に生じる面倒な作業等が不要になる。しかも、ゴム材料を用いて胴体部や頭部を成形する場合のような混練りの作業や、加硫のための時間も必要がない。従って、製造能率の向上を図ることができる。
【0028】
更に、第2の材料に着色剤を混入させることにより、その着色剤に対応した種々の色の胴体部及び頭先端部を射出成形することができる。この場合、胴体部や頭先端部は、塗装のように表面のみが着色されるものではないので、落下等により、これらの胴体部や頭先端部に弾性変形が生じた場合でも、塗装が部分的に剥げたり当該塗装に亀裂が入ったりすることがなく、新品時の色彩や外観を長期間維持することができる。
【0029】
請求項2に記載の発明によれば、首部の一端部に胴体部の内方に位置することになる胴体結合部を設け、頭基端部に頭先端部の内方に位置することになる頭端結合部を設け、胴体結合部及び頭端結合部の外周面に凹部又は凸部を形成しているので、胴体部及び頭先端部が凹部又は凸部に密着した状態になる。従って、胴体部と首部及び頭先端部と頭基端部を、より強固に結合することができる。
【0030】
請求項3に記載の発明によれば、胴体結合部及び頭端結合部の外周面に形成された凹部又は凸部が周方向に連続的に及び又は部分的に形成されているので、凹部又は凸部が周方向に連続的に形成されている場合には、胴体部を首部に対して軸方向に引き離す力、及び頭先端部を頭基端部に対して軸方向に引き離す力に対して大きな抵抗力が生じることになる。また、凹部又は凸部が周方向に部分的に形成されている場合には、胴体部を首部に対して軸回りに回転させる力、及び頭先端部を頭基端部に対して軸回りに回転させる力に対して大きな抵抗力が生じることになる。更に、凹部又は凸部が周方向に連続的に及び部分的に形成されている場合には、胴体部を首部に対して軸方向に引き離す力及び軸回りに回転させる力や、頭先端部を頭基端部に対して軸方向に引き離す力及び軸周りに回転させる力に対して、大きな抵抗力が生じることになる。従って、胴体部と首部及び頭先端部と頭基端部を、強固に結合することができる。
【0031】
請求項4に記載の発明によれば、首部の外周面における頭部の近傍部分を除く部分に、表面を荒らす粗面加工が施されているので、その加工が施された部分について例えば掌との摩擦係数の増大を図ることができる。従って、首部を確実に把持しながら演技をすることができると共に、投げ上げた後に受け取る際にも、当該首部を確実にキャッチすることができる。しかも、首部における頭部の近傍部は粗面加工の範囲に入っておらず、かつ頭部における頭基端部も粗面加工の範囲に入っていないこと及びゴム弾性を有することにより摩擦係数が大きくなる傾向にある第2の材料によって頭先端部が形成されていることから、例えば首部における頭部近傍部分を、頭基端部を軸方向への抜け止めとして利用しながら把持することにより、その把持する手の指等に対して首部及び頭部をすべらせるような演技、例えば胴体部側を揺動させたり回転させたりするような演技を円滑に行うことができる。更に、粗面加工によって、首部の外周面がつや消し状態となり、首部に当った光が分散された光となって反射することになるので、当該首部で反射した強い光が演技者の目に入るようなことがない。従って、安定した演技が可能になる。
【0032】
請求項5に記載の発明によれば、胴体部及び頭先端部の各外周面につや消し処理がなされているので、胴体部や頭先端部に当った光が分散されて反射することになり、胴体部や頭先端部で反射した強い光が演技者の目に入るようなことがない。従って、安定した演技が可能になる。
【0033】
請求項6に記載の発明によれば、胴体部及び頭先端部の硬度が60〜80になっているので、高く投げ上げた後、床に落下するようなことがあっても、胴体部や頭先端部が十分に弾性変形して、その床に衝突する際のエネルギを吸収することができる。従って、床が損傷するのを防止することができると共に、胴体部、頭部又は首部が損傷するのを防止することができる。また、胴体部や頭先端部が人の体に当った場合にも、その人体へのダメージを最小限に抑えることができる。
【0034】
請求項7に記載の発明によれば、胴体部及び頭先端部のそれぞれを射出成形するためのキャビティを有する金型を開いて、当該金型内の所定の位置に首部及び頭基端部が一体的に形成されたものを挿入してから、当該金型を閉じ、各キャビティ内に加熱により溶融した状態となった第2の材料を注入することにより、首部の一端部に胴体部を射出成形すると共に、頭基端部に頭先端部を射出成形するようになっているので、首部の一端部における金型によって規定される所定の位置に当該金型のキャビティによって規定される所定の寸法及び重量の胴体部を正確に成形することができると共に、頭基端部における金型によって規定される所定の位置に当該金型のキャビティによって規定される所定の寸法及び重量の頭先端部を正確に成形することができる。従って、胴体部や頭先端部について、寸法、重量及び首部等に対する位置のばらつきの極めて小さな安定した品質の新体操用こん棒を得ることができる。
【0035】
請求項8に記載の発明によれば、首部及び頭基端部を一体的に射出成形するためのキャビティを有する第1の金型を閉じてから、当該第1の金型のキャビティ内に加熱により溶融した状態となった第1の材料としての射出成形可能な材料を注入することにより、首部及び頭基端部を一体的に射出成形するようになっているので、当該首部及び頭基端部からなる一体的に形成したものについて、第1の金型のキャビティによって規定される正確な寸法及び重量のものを得ることができる。
【0036】
そして、胴体部及び頭先端部のそれぞれを射出成形するためのキャビティを有する第2の金型を開いて、当該第2の金型内の所定の位置に第1の金型により射出成形した首部及び頭基端部からなるものを挿入してから、第2の金型を閉じ、当該第2の金型の各キャビティ内に加熱により溶融した状態となった第2の材料を注入することにより、首部の一端部に胴体部を射出成形すると共に、頭基端部に頭先端部を射出成形するようになっているので、首部の一端部における第2の金型によって規定される所定の位置に当該第2の金型のキャビティによって規定される所定の寸法及び重量の胴体部を正確に成形することができると共に、頭基端部における第2の金型によって規定される所定の位置に当該第2の金型のキャビティによって規定される所定の寸法及び重量の頭先端部を正確に成形することができる。従って、胴体部、首部及び頭部のすべてについて、寸法及び重量のばらつきの極めて小さな安定した品質の新体操用こん棒を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、本発明を実施するための最良の形態としての一実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0038】
この実施の形態で示す新体操用こん棒は、図1〜図3に示すように、胴体部1と、首部2と、頭部3とによって同軸状に一体的に構成されている。また、新体操用こん棒は、断面が円形状に形成されており、胴体部1は首部2の一端部2bより大径の外周面を有し、頭部3は首部2の他端部2dより大径の外周面を有している。以下、新体操用こん棒の各構成について詳細に説明する。
【0039】
首部2は、射出成形が可能な所定の強度を有する熱可塑性樹脂(第1の材料)を用いて、当該射出成形により一体的に形成されたものである。この首部2は、直線状の棒状に延在し、その外周面2aが基端側(頭部3側)から一端側(胴体部1側)に向けて漸次拡径されている。そして、首部2の一端部2bには、胴体部1、首部2及び頭部3の軸心を貫く中心線Cに直交する方向の平面で切り欠かれた形状の端面2cが形成され、この端面2cの軸心部から軸方向に突出するように胴体結合部21が形成されている。
【0040】
胴体結合部21は、図2に示すように、胴体部1の内方に入り込むことによって、当該胴体部1を首部2の一端部2bに強固に結合するようになっている。この胴体結合部21は、断面が円形状に形成されていると共に、その外周面21aが先端に向かうに従って漸次拡径されるように形成されている。この場合、胴体結合部21の外周面21aは、首部2の一端部2bに射出成形される胴体部1の外周面1aに沿うように漸次拡径された形状になっている。また、胴体結合部21の外周面21aには、端面2cに隣接する位置に周方向に連続的に陥没する形状の第1の環状凹部21bが形成されていると共に、先端近傍の位置に周方向に連続的に陥没する形状の第2の環状凹部21cが形成されている。そして、第1の環状凹部21bと第2の環状凹部21cとの間や当該第2の環状凹部21cの先端側の部分が周方向に連続的に隆起する形状の環状凸部21dになっている。また、第1の環状凹部21b及び第2の環状凹部21cの各底部は円弧状に丸められた形状になっていると共に、各環状凸部21dの各角部Kも円弧状に丸められた形状になっている。
【0041】
また、胴体結合部21の外周面21aには、第2の環状凹部21cに対応する位置であって、周方向に180度離れた各位置に、当該第2の環状凹部21cより更に深く陥没する形状の穴状凹部(周方向において部分的に形成された凹部)21eが形成されている。各穴状凹部21eは、断面が円形状に形成され、その底部が半球状に丸められた形状になっている。
【0042】
そして、胴体結合部21は、第1の環状凹部21bや第2の環状凹部21cの底部を円弧状に丸め、且つ穴状凹部21eの底部を半球状に丸めることにより、当該第1の環状凹部21b、第2の環状凹部21c及び穴状凹部21eの底部に生じる応力集中の緩和を図る上で有効な形状になっている。更に、胴体結合部21は、各環状凸部21dの各角部Kを円弧状に丸めることにより、当該胴体結合部21に密着するようにして射出成形される胴体部1の各角部Kに対応する部分に生じる応力集中の緩和も図る形状になっている。また、胴体結合部21の先端面21fは、中心線Cに対して直交する方向の平面状に形成されている。なお、首部2を構成する熱可塑性樹脂は、ガラス繊維等の補強材が含有されており、強度の向上が図られている。
【0043】
また、首部2の外周面2aには、図1に示すように、頭部3の近傍部分を除く部分(図1(b)の網点で示す部分)に、表面を荒らす粗面加工が施されている。この粗面加工は、首部2を射出成形する第1の金型のキャビティ内面における所定の範囲に、薬品による化学腐食(エッチング)や、サンドブラスト等による表面処理を施すことにより比較的荒い凹凸を形成しておき、そのキャビティ内に熱可塑性樹脂を高圧で注入することによって、首部2の外周面2aにおける所定の範囲にその比較的荒い凹凸を転写するようにして形成するようになっている。
【0044】
このような粗面加工が施された部分(以下、「粗面加工部2e」という)は、表面あらさが10S〜50Sとなっており、当該粗面加工部2eと、この粗面加工部2eを握る掌との間の十分な摩擦力の向上を図るようになっている。ここで、表面あらさを、10S以上としたのは、10S未満では凹凸の高低差(最大高さ)が10μm未満と小さく、掌との摩擦力を十分に高めることができないからであり、50S以下としたのは、50Sを超えるとその凹凸の高低差が50μm超となり、当該粗面加工部2eを握った際のざらつき感が強くなって好ましくないからである。なお、表面あらさは、JIS規格に準拠した最大高さ(Rmax)で表示した例を示している。この最大高さ(Rmax)による表面あらさは、あらさ曲線の平均線の方向に基準長さだけ抜き取り、この抜き取った部分の平均線に平行な2直線でその抜き取った部分をはさんだとき、この2直線の間隔をあらさ曲線の縦倍率の方向に測定した値をマイクロメートル単位(μm)で表したものである。
【0045】
一方、首部2における頭部3の近傍の外周面2aは、上記キャビティ内面における当該頭部3近傍の外周面2aに対応する部分が鏡面状に仕上げられた状態になっていることにより、この鏡面状の仕上面が転写された滑らかな面となっている。
【0046】
胴体部1は、常温(新体操用こん棒を使用又は保存する温度)において首部2より軟質で且つゴム弾性を有する材料であって、加熱によって溶融した状態となり射出成形が可能な熱可塑性エラストマー(第2の材料)によって、首部2の一端部2bに射出成形により一体的に形成されている。この胴体部1は、射出成形されることによって、首部2の一端部2bにおける端面2c、胴体結合部21の外周面21a及び先端面21fに密着した状態になり、且つ胴体結合部21における第1の環状凹部21b、第2の環状凹部21c及び各穴状凹部21eに入り込んでこれらの各面にも密着した状態になるようになっている。
【0047】
また、胴体部1の外周面1aは、首部2の一端部2bにおける外周面2aに連続するようにして漸次拡径され、その軸方向のほぼ中央の位置で最大径になると共に、その先端側に向けて漸次縮径するように形成されており、全体として樽形状の外周面形状を呈している。この胴体部1の先端面1bは、中心線Cに対して直交する方向の平面状に形成されている。
【0048】
更に、胴体部1には、先端面1bの中心部から中心線Cに沿って胴体結合部21の先端面21fの近傍に至る断面円形状の空洞1cが形成されている。この空洞1cは、胴体部1を射出成形するための第2の金型における当該胴体部1の成形空間としてのキャビティ内に当該空洞1c形状の中子を突入させた状態で射出成形することによって形成することが可能である。このため、空洞1cは、先端面1bから内方に向って漸次縮径されたテーパ状に形成されており、キャビティ内において熱可塑性エラストマーが固化した後に、当該熱可塑性エラストマーによって形成された胴体部1内から中子を引き抜くことが容易な形状になっている。
【0049】
また、胴体部1には、外周面1aにおける最大径の位置に、周方向に連続的に陥没する形状の環状凹部1dが形成されている。この環状凹部1dの底部も円弧状に形成されており、胴体部1における環状凹部1dの底部に発生する応力集中の緩和が図られている。
【0050】
そして、胴体部1の外周面1a、先端面1b及び環状凹部1dの表面には、粗面加工によるつや消し処理がなされている。この場合の粗面加工は、胴体部1を射出成形することになる第2の金型のキャビティ内面における所定の部分に、化学腐食や、サンドブラスト等によって比較的荒い凹凸を形成しおき、そのキャビティ内に熱可塑性エラストマーを高圧で注入することによって、その凹凸を胴体部1の外周面1a、先端面1b及び環状凹部1dの表面に転写するようになっている。
【0051】
また、胴体部1は、常温において、60〜80のゴム硬度を有している。この硬度は、JIS K 6253(ISO 7619)に規定するタイプAデュロメータによるゴムの硬さである。ここで、ゴム硬度を、60以上としたのは、60未満にすると、硬度低下に伴う剛性の低下により、胴体結合部21を含む首部2の一端部2bとの結合力が低下するおそれがあるからであり、80を超えると、ゴム弾性によるクッション性が低下し、特に人体に当った際に当該人体に与えるダメージが大きくなるからである。なお、首部2の一端部2bとの結合力を高め、且つ人体に対するダメージを小さくする上では、胴体部1の硬度を70程度にすることがより好ましい。
【0052】
頭部3は、図1及び図3に示すように、当該頭部3及び胴体部1に同時に外接する仮想平面Aを想定した場合に、当該仮想平面Aに接することなく首部2側に位置する頭基端部31と、仮想平面Aと接触する部分を含み首部2とは反対側に位置する頭先端部32とによって、球形状に一体的に形成されている。この場合、頭部3の外周面3aにおける仮想平面Aとの接点3bは、頭先端部32側に存在する。
【0053】
頭基端部31は、首部2と同一の熱可塑性樹脂によって当該首部2と同時に一体的に射出成形されたものである。この頭基端部31は、首部2の他端部2dから頭部3の先端側に向けて漸次球形状に膨出し、その先端側の端面31aが中心線Cと直交する方向の平面状に形成されている。端面31aは、接点3bを通り中心線Cに直交する方向の平面Bに対して所定寸法だけ首部2側に位置している。この端面31aには、その軸心部から軸方向に突出するように頭端結合部31bが一体的に形成されている。
【0054】
頭端結合部31bは、頭先端部32の内方に入り込むことによって、当該頭先端部32を頭基端部31に強固に結合するようになっている。この頭端結合部31bの外周面31cは、頭基端部31の先端側に射出成形される頭先端部32の外周面3aに沿うような球面状に形成されている。また、頭端結合部31bの外周面31cには、端面31aに隣接する位置に周方向に連続的に陥没する形状の環状凹部31dが形成されている。そして、この環状凹部31dによって、当該環状凹部31dの先端側の部分が周方向に連続的に隆起する形状の環状凸部31eとなっている。また、環状凹部31dの底部は円弧状に丸められた形状になっており、環状凸部31eの角部Kも円弧状に丸められた形状になっている。
【0055】
また、頭端結合部31bの外周面31cには、環状凸部31eに対応する位置であって、周方向に180度離れた各位置に、当該外周面31cに対して陥没する形状の穴状凹部(周方向において部分的に形成された凹部)31fが形成されている。各穴状凹部31fは、断面円形状に形成され、その底部が半球状に丸められた形状になっている。
【0056】
そして、頭端結合部31bは、環状凹部31dの底部を円弧状に丸めると共に、穴状凹部31fの底部を半球状に丸めることによって、当該環状凹部31dや穴状凹部31fの底部に生じる応力集中の緩和を図る上で有効な形状になっている。更に、頭端結合部31bは、環状凸部31eの角部Kを円弧状に丸めることにより、当該頭端結合部31bの外側に当該頭端結合部31bに密着するようにして射出成形される頭先端部32における上記角部Kに対応する部分に生じる応力集中を緩和する形状にもなっている。
【0057】
また、頭基端部31における外周面3aは、上述した首部2における頭部3の近傍部分の外周面2aと同様に、第1の金型のキャビティ内面における鏡面状の仕上げ面が転写された滑らかな面になっている。
【0058】
頭先端部32は、胴体部1を射出成形する熱可塑性エラストマーと同一の熱可塑性エラストマーによって、頭基端部31の先端側に射出成形により一体的に形成されている。従って、頭先端部32も、胴体部1と同様の硬度になっている。この頭先端部32は、射出成形されることによって、頭基端部31の端面31a及び頭端結合部31bの外周面31cに密着した状態になると共に、頭端結合部31bにおける環状凹部31d及び各穴状凹部31fに入り込んでこれらの面とも密着した状態になるようになっている。また、頭先端部32の外周面3aは、胴体部1の外周面1aと同様に、粗面加工によるつや消し処理がなされている。
【0059】
次に、上記のように構成された新体操用こん棒の製造方法について説明する。この製造方法においては、首部2及び頭先端部32を一体的に射出成形するための第1の金型(図しせず)と、この第1の金型で射出成形された首部2及び頭先端部32からなる一体成形されたもの(以下、「第1成形体」という。)を所定の位置に挿入した上で、首部2の一端部2bに胴体部1を射出成形すると共に、頭基端部31に頭先端部32を射出成形するための第2の金型(図示せず)と、これらの金型を用いて射出成形を行うための射出成形機(図示せず)を用いることになる。
【0060】
まず、所定の射出成形機に第1の金型をセットし、この第1の金型を用いて第1成形体を成形する。この成形においては、第1の金型を閉じた後に、射出成形機における射出シリンダから溶融後の熱可塑性樹脂を第1の金型内に高圧で射出し、当該熱可塑性樹脂を第1の金型内における第1成形体を成形するためのキャビティ内に注入する。そして、熱可塑性樹脂がキャビティ内で冷却され、固化した後に、第1の金型を開くことにより、キャビティの形状通りに成形された第1成形体を取り出す。このような工程を繰り返すことにより、第1成形体を大量に得ることができる。
【0061】
一方、所定の射出成形機に第2の金型をセットし、この第2の金型を用いて、第1の金型で成形した後の第1成形体に対して胴体部1及び頭部3を更に成形する。この成形においては、まず、第2の金型を開いた後、当該第2の金型内の所定の位置に第1成形体を挿入してから、当該第2の金型を閉じる。そして、射出シリンダから溶融後の熱可塑性エラストマーを第2の金型内に高圧で射出し、当該熱可塑性エラストマーを第2の金型内における胴体部1及び頭先端部32のそれぞれを射出成形するための各キャビティ内に注入する。その後、熱可塑性エラストマーが各キャビティ内で冷却され、固化した後に、第2の金型を開くことにより、各キャビティの形状通りに成形され、かつ第1成形体の所定の位置に当該第1成形体と一体的に成形された胴体部1及び頭先端部32を有する新体操用こん棒を、当該第2の金型から取り出す。このような工程を繰り返すことにより、新体操用こん棒を大量に製造することができる。
【0062】
上記のように構成された新体操用こん棒によれば、胴体部1及び頭先端部32が首部2より軟質で且つゴム弾性を有する熱可塑性エラストマーによって形成されているので、胴体部1が先に平面状の床に落下した場合も、頭部3が先に当該床に落下した場合も、胴体部1及び頭部3が同時に当該床に落下した場合も、必ずゴム弾性を有する熱可塑性エラストマーの部分が当該床に当ることになる。従って、誤って床に落ちるようなことがあっても、当該床を傷付けることがない。また、床等に当った際の衝撃力を熱可塑性エラストマーの部分が弾性変形して吸収することができるので、胴体部1、頭部3又は首部2が損傷することも防止することができる。更に、胴体部1や頭先端部32が人の体に当るようなことがあっても、その人体へのダメージを最小限に抑えることができる。そして、胴体部1及び頭先端部32のゴム硬度を60〜80に設定しているので、上述した効果を確実に発揮することができる。
【0063】
また、胴体部1及び頭先端部32を、首部2の一端部及び頭基端部31の先端側のそれぞれに、熱可塑性エラストマーの材料を用いて射出成形により一体的に形成するようになっているので、当該胴体部1及び頭先端部32を首部2及び頭基端部31のそれぞれに強固に結合することができる。即ち、物の表面はいかに綺麗に仕上げた場合であっても微細な凹凸が交互に連続的に存在しており、溶融した熱可塑性エラストマーはその微細な凹凸に合致した形状になってから冷えて固まることになるので、胴体部1及び頭先端部32を首部2及び頭基端部31に強固に結合することができる。
【0064】
このように、胴体部1と首部2及び頭先端部32と頭基端部31を、接着剤やねじ等をまったく用いることなく、強固に結合することができるので、接着剤やねじ等を用いた場合に生ずる面倒な作業等が不要になる。しかも、ゴム材料によって胴体部や頭部を成形する場合に必要になる混練りの作業や、加硫のための時間も不要になる。従って、製造能率の向上を図ることができる。
【0065】
更に、着色剤を混入させた熱可塑性エラストマーを用いて射出成形することにより、その着色剤に対応した種々の色の胴体部1及び頭先端部32を成形することができる。この場合、胴体部1や頭先端部32は、塗装のように表面のみが着色されるものではないので、落下等により、これらの胴体部1や頭先端部32に弾性変形が生じた場合でも、塗装が部分的に剥げたり、その塗装に亀裂が入ったりすることがなく、新品時の色彩や外観を長期間維持することができる。
【0066】
なお、首部2及び頭基端部31についても、着色剤を混入させた熱可塑性樹脂によって射出成形することにより、その着色剤に対応した種々の色彩のものを得ることができる。この場合も、首部2及び頭基端部31の素材自体が着色された状態になるので、塗装の一部が剥げる等の不具合が生じることがない。
【0067】
また、首部2の一端部2bに胴体結合部21が形成され、この胴体結合部21の外周面21aに第1の環状凹部21b、第2の環状凹部21c、各環状凸部21d及び各穴状凹部21eが形成されているので、胴体部1を、不可避的に存在する上述した微細な凹凸に密着させることができることに加えて、第1の環状凹部21b、第2の環状凹部21c、各環状凸部21d及び各穴状凹部21eにも密着させることができる。従って、胴体部1を首部2に、極めて強固に結合することができる。
【0068】
この場合、第1の環状凹部21b、第2の環状凹部21c及び各環状凸部21dは、胴体部1を首部2に対して軸方向(中心線Cに沿う方向)に引き離す力に対して大きな抵抗力を生じさせることができ、各穴状凹部21eは、胴体部1を首部2に対して軸回り(中心線C回り)に回転させる力に対して大きな抵抗力を生じさせることができる。
【0069】
頭先端部32についても、頭基端部31に頭端結合部31bが形成され、当該頭端結合部31bの外周面31cに環状凹部31d、環状凸部31e及び各穴状凹部31fが形成されているので、当該頭基端部31に極めて強固に結合することができる。
【0070】
また、首部2の外周面2aにおける頭部3の近傍部分を除く部分に、表面を荒らす粗面加工が施されているので、その加工が施された部分について例えば掌との摩擦係数の増大を図ることができる。従って、首部2を確実に把持しながら演技をすることができると共に、投げ上げた後に受け取る際にも、当該首部2を確実にキャッチすることができる。しかも、首部2における頭部3の近傍部を粗面加工の範囲外とすると共に滑らかな表面に形成し、かつ頭部3における頭基端部31も粗面加工の範囲外にすると共に滑らかな表面に形成していること及びゴム弾性を有し摩擦係数の大きな熱可塑性エラストマー(第2の材料)からなる部分が頭先端部32に配置されていることから、例えば首部2における頭部3近傍部分を、頭基端部31を軸方向への抜け止めとして利用しながら把持することにより、その把持する手の指等に対して首部2及び頭部3を滑らせるような演技、例えば胴体部1側を揺動させたり回転させたりするような演技を円滑に行うことが可能になる。更に、粗面加工によって、首部の表面につや消し処理がなされた状態になるので、首部2に当った光が分散されて反射することになり、当該首部2で反射した強い光が演技者の目に入るようなことがない。従って、種々の演技会場における照明の下においても、安定した演技を行うことができるという利点がある。
【0071】
更に、胴体部1及び頭先端部32の外周面1a、3aにつや消し処理がなされているので、胴体部1や頭先端部32に当った光が分散されて反射することになり、胴体部1や頭先端部32で反射した強い光が演技者の目に入るようなことがない。従って、より安定した演技を行うことができる。
【0072】
そして、胴体部1の軸心部に先端面1bから軸方向(中心線Cに沿う方向)に延在する空洞1cを設けているので、当該胴体部1における空洞1cに対応する部分について、特に軸方向に直交する方向の剛性を低下させることができる。このため、軸方向に直交する方向の力に対して、胴体部1の弾性変形が容易になるので、その空洞1cに対応する胴体部1の外周面1aが人体に当るようなことがあっても、その人体に対するダメージをより有効に緩和することができる。
【0073】
更に、胴体部1の外周面1aに環状凹部1dが形成されているので、中心線Cを中立軸とするような曲げ方向の剛性を低下させることができる。このため、環状凹部1dより先端側の胴体部1の外周面1aが人体に当った際の衝撃を更に緩和することができる。
【0074】
そして特に、胴体部1を60〜80のゴム硬度のもので形成し、当該胴体部1の軸心部に空洞1cを形成し、且つ当該胴体部1の外周面1aに環状凹部1dを形成することによる相乗効果により、胴体部1を首部2の一端部2bに強固に結合しながら、極めて大きな衝撃力を吸収することができるようになるという顕著な効果を奏する。なお、空洞1cの大きさを変更することにより、胴体部1の重さを調整することも可能である。
【0075】
一方、新体操用こん棒の製造方法によれば、首部2及び頭基端部31からなる第1成形体について、第1の金型のキャビティによって規定される正確な寸法及び重量のものを得ることができる。
【0076】
また、首部2の一端部2bにおける第2の金型によって規定される所定の位置に、当該第2の金型のキャビティによって規定される所定の寸法及び重量の胴体部1を正確に成形することができると共に、頭基端部31における第2の金型によって規定される所定の位置に、当該第2の金型のキャビティによって規定される所定の寸法及び重量の頭先端部32を正確に成形することができる。
【0077】
従って、胴体部1、首部2及び頭部3のすべてについて、寸法及び重量のばらつきの極めて小さな安定した品質の新体操用こん棒を得ることができる。
【0078】
なお、上記実施の形態においては、首部2及び頭基端部31を熱可塑性樹脂によって一体的に射出成形した例を示したが、この首部2及び頭基端部31からなるものについては、木、金属、その他の材料によって構成してもよい。
【0079】
また、胴体部1や頭先端部32を構成する材料については、常温においてゴム弾性を有する材料であって、加熱により溶融状態となり射出成形が可能な材料であれば、上述した熱可塑性エラストマーに限定されるものでないことはいうまでもない。
【0080】
更に、胴体部1及び頭先端部32を、同一の熱可塑性エラストマーによって射出成形する例を示したが、これらの胴体部1及び頭先端部32は、物性の異なる熱可塑性エラストマーや、その他の材料で射出成形するようにしてもよい。ただし、胴体部1及び頭先端部32を同一の材料のもので構成するようにすれば、一種類の第2の金型を用いて一度の射出成形で胴体部1及び頭先端部32を得ることができる。
【0081】
また、周方向に部分的に形成された凹部の一例として穴状凹部21e、31fを示したが、胴体結合部21の外周面21aや頭端結合部31bの外周面31cに、周方向に部分的に形成された凸部の一例としての突起を周方向に180度離れた位置に設けるように構成してもよい。この突起としては、外周面21aや外周面31cから円柱状に突出し、先端部を半球状に丸められた形状のものが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の一実施の形態として示した新体操用こん棒の図であって、(a)は正面図、(b)は要部断面図である。
【図2】同新体操用こん棒における胴体部側の部分を拡大して示す要部断面図である。
【図3】同新体操用こん棒における頭部側の部分を拡大して示す要部断面図である。
【符号の説明】
【0083】
1 胴体部
1a、2a、3a、21a、31c 外周面
2 首部
2b 一端部
2d 他端部
2e 粗面加工部
3 頭部
3b 接点(仮想平面との接触部分)
21 胴体結合部
21b 第1の環状凹部(周方向に連続的に形成された凹部)(凹部)
21c 第2の環状凹部(周方向に連続的に形成された凹部)(凹部)
21d 環状凸部(周方向に連続的に形成された凸部)(凸部)
21e 穴状凹部(周方向に部分的に形成された凹部)(凹部)
31 頭基端部
31b 頭端結合部
31d 環状凹部(周方向に連続的に形成された凹部)(凹部)
31e 環状凸部(周方向に連続的に形成された凸部)(凸部)
31f 穴状凹部(周方向に部分的に形成された凹部)(凹部)
32 頭先端部
A 仮想平面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状に形成された首部と、この首部の一端部に形成され当該一端部の外周面より大径の外周面を有する胴体部と、前記首部の他端部に形成され当該他端部の外周面より大径の外周面を有する頭部とを備えた新体操用こん棒であって、
前記首部は、所定の強度を有する第1の材料によって形成され、
前記胴体部は、常温においてゴム弾性を有し、加熱によって溶融し射出成形が可能な第2の材料によって、前記首部の一端部に前記射出成形により一体的に形成され、
前記頭部は、当該頭部及び前記胴体部に同時に外接する仮想平面を想定した場合に、当該仮想平面と接触することなく前記首部側に位置する頭基端部と、前記仮想平面との接点を含み前記首部とは反対側に位置する頭先端部とを備えてなり、前記頭先端部が前記第2の材料によって前記頭基端部に射出成形により一体的に形成されていることを特徴とする新体操用こん棒。
【請求項2】
前記首部の一端部には、前記胴体部が射出成形されることにより当該胴体部の内方に位置することになる胴体結合部が設けられており、
前記頭基端部には、前記頭先端部が射出成形されることにより当該頭先端部の内方に位置することになる頭端結合部が設けられており、
前記胴体結合部及び前記頭端結合部には、それぞれの外周面に凹部又は凸部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の新体操用こん棒。
【請求項3】
前記凹部又は前記凸部は、周方向に連続的に及び又は部分的に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の新体操用こん棒。
【請求項4】
前記首部の外周面には、前記頭部の近傍部分を除く部分に、表面を荒らす粗面加工が施されていることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の新体操用こん棒。
【請求項5】
前記胴体部及び前記頭先端部の各外周面には、つや消し処理が施されていることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の新体操用こん棒。
【請求項6】
前記胴体部及び前記頭先端部は、硬度が60〜80であることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の新体操用こん棒。
【請求項7】
請求項1〜6の何れかに記載の新体操用こん棒を製造する方法であって、
前記胴体部及び前記頭先端部のそれぞれを射出成形するためのキャビティを有する金型を開いて、当該金型内の所定の位置に前記首部及び前記頭基端部が一体的に形成されたものを挿入してから、前記金型を閉じ、前記各キャビティ内に加熱により溶融した状態となった前記第2の材料を注入することにより、前記首部の一端部に前記胴体部を射出成形すると共に、前記頭基端部に前記頭先端部を射出成形することを特徴とする新体操用こん棒の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜6の何れかに記載の新体操用こん棒を製造する方法であって、
前記首部及び前記頭基端部を一体的に射出成形するためのキャビティを有する第1の金型を閉じてから、前記キャビティ内に加熱により溶融した状態となった前記第1の材料としての射出成形可能な材料を注入することにより、前記首部及び前記頭基端部を一体的に射出成形した後、
前記胴体部及び前記頭先端部のそれぞれを射出成形するためのキャビティを有する第2の金型を開いて、当該第2の金型内の所定の位置に前記第1の金型により射出成形された前記首部及び前記頭基端部からなるものを挿入してから、前記第2の金型を閉じ、当該第2の金型の前記各キャビティ内に加熱により溶融した状態となった前記第2の材料を注入することにより、前記首部の一端部に前記胴体部を射出成形すると共に、前記頭基端部に前記頭先端部を射出成形することを特徴とする新体操用こん棒の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−78075(P2009−78075A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−251018(P2007−251018)
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(000109288)チャコット株式会社 (7)
【Fターム(参考)】