説明

新規なエステル及び組成物、並びにこれらの使用

任意に置換されていてもよい芳香族酸(例えば安息香酸)と分枝状C13第一級アルコールとの新規エステルは、サンスクリーン組成物、制汗組成物、及びデオドラント組成物を含む改良された化粧品組成物及びパーソナルケア組成物を提供するための使用に適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、C13分枝鎖状脂肪アルコールの芳香族エステル(例えば安息香酸エステル)、及び局所化粧品組成物におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許出願第4275222号明細書は、C12、C13、C14及びC15第一級アルコールの混合物の安息香酸エステルについて、また、希釈剤、溶媒、可塑剤及び液状担体としてのその使用、特に、トイレタリー製品又は化粧製品、染料又は繊維製品における使用について記載している。そのようなアルコール類では、それぞれ特定鎖長のアルコールの少なくとも70重量%が直鎖状であると記載されている。分枝(もしある場合)には、メチル基が約50%含まれ、それより少ない量でエチル、プロピル、ブチル、アリール及びヘキシル基が含まれる。かかるアルコール類は市販されていると記載されている。
【0003】
米国特許出願第4275222号明細書に記載の混合物に成分として含まれているエステルの中には、皮膚軟化剤として特にサンスクリーン組成物等の化粧品組成物に加えたときに、前記混合物と比較して新規かつ予期せぬ性質を提供するものがあることがわかってきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願第4275222号明細書
【発明の概要】
【発明の効果】
【0005】
本発明の第1の態様によると、任意に置換されていてもよい芳香族酸と分枝状C13第一級アルコールとのエステルが提供される。
【0006】
好ましいエステルは、任意に置換されていてもよい安息香酸と分枝状C13第一級アルコールとのエステルである。この好ましいエステルの一般式は以下のとおりである。
【0007】
【化1】

(I)

【0008】
前記式中、Qは、以下で定義する置換基であり、mは、0又は1〜5の整数(mが2、3、4又は5のとき、Q基はそれぞれ同じ又は互いに異なる)であり、Rは、分枝状C13アルキル基である。
【0009】
ベンゼン環(又は他の芳香族環系)は0〜5個の基(反応酸性基COOHに加えて)で置換されてもよい。例えば、ベンゼン環は環内(又は環系)に三置換又は二置換を有していてもよく、一置換であることがより好ましい。オルト位、及び/又はメタ位、及び/又はパラ位で置換されていてよい。
【0010】
置換基としては、ベンゼン環(又は他の芳香族環系)の置換に使用される一般的な基であれば任意の基を用いることができる。例えば、アルキル基(特に好ましい置換基)、アルケニル基、ハロアルキル基、アルキニル基、ニトリル基、カルボン酸(反応カルボン酸基に加えて)、エステル、エーテル、アルコキシ基、ハロアルコキシ基、ハロ基、ヒドロキシル基、メルカプト基、アルキルメルカプト基、アルキルスルホキシ基、スルホキシ基、アリール基、アリールアルキル基、又は置換若しくは非置換のアミン基若しくはニトロ基のうちの1又は2以上が置換基として挙げられる。これらの置換基の中で、アルキル含有基(例えばアルコキシ又はハロアルキル)のアルキル部分を含むアルキル基は、好適にはC1−4アルキル基、より好ましくはメチル基である。また、最も好ましくはベンゼン環(又は他の芳香族環系)が置換されていないことである(すなわちm=0)。
【0011】
分枝状C13第一級アルコールのバックボーンは、第一級アルコールのバックボーンの1又は2以上の位置で分枝していてもよい。
【0012】
分枝状C13第一級アルコールの残基は、第一級アルコールのバックボーン上の1つの位置のみから分枝していることが好ましい。
【0013】
分枝状C13第一級アルコールの残基は、その1又は2以上の側鎖において1〜6個の炭素原子を有することが好ましい。
【0014】
分枝状C13第一級アルコールの残基は、C1−6アルキル側鎖を有することが好ましい。C3−6アルキル側鎖が存在する場合は、n−C3−6アルキル基であることが好ましい。しかし、好ましい側鎖は、エチル基、又は特にメチル基である。
【0015】
分枝状C13第一級アルコールの残基は、任意に置換されていてもよい芳香族部分から2番目に遠い炭素原子から分枝していることが好ましい。
【0016】
本発明の第1態様で特に好ましいエステルは以下の式を有する。
【0017】
【化2】

(II)

【0018】
第1態様の化合物は、少なくとも90重量%を純粋な形で含んで提供されることが好ましく、より好ましくは95重量%、最も好ましくは98重量%を純粋な形で含む。特に好ましい実施形態では、実質的に純粋な形で提供される。
【0019】
例えば式I又は式IIの化合物といった第1態様のエステルは、化粧品組成物に加えられると増強した特性をもたらすことが見い出されている。そのような増強した特性を有するがゆえに、かかる化合物はスキンケア製品及びパーソナルケア製品等の化粧製品における使用に有益なものとなる。これらの製品はクリーム状、ローション状、バー状、又はスティック状のいずれであってもよい。式I又は式IIの化合物は化粧添加剤として、皮膚軟化剤としてだけでなく、化粧品における化粧学的活性物質のための溶媒及び液状担体としても新規で予期せぬ特性を有する。
【0020】
第1態様のエステルは、他の脂肪アルコール−芳香族酸エステルの調製に用いられるエステル化反応と類似のエステル化反応によって作製される。
【0021】
本発明の好ましい実施形態によるエステルには、他の脂肪アルコール又は脂肪酸エステルが含まれないことが適切であり、実質的に純粋状態にあることが適切である。
【0022】
本発明の第2の態様によると、第1態様のエステルを一成分として含み、髪、皮膚又は爪などヒトに適用する組成物が提供される。かかる組成物のことを以下では化粧品組成物、局所組成物、又は皮膚に有益な(skin benefit)組成物という。
【0023】
前記組成物のさらなる成分としては、担体若しくは希釈剤若しくは溶媒、及び/又は化粧学的に効果のある成分等が挙げられる。このようなさらなる成分について以下に記載する。
【0024】
第2態様の組成物が、組成物中のC12−C15脂肪アルコール−芳香族酸エステル含有量の総重量の少なくとも40重量%を占めることが好ましく、好ましくは少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも70重量%、最も好ましくは少なくとも90重量%を占める。組成物が、第1態様の化合物以外にはC12−C15脂肪アルコール−芳香族酸エステルを実質的に含まないことが最も好ましい。
【0025】
いくつかの実施形態では、第2態様の組成物が、組成物中の脂肪アルコールと酸との全エステルの総重量の少なくとも40重量%を占めることが好ましく、好ましくは少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも70重量%、最も好ましくは少なくとも90重量%を占める。組成物が、第1態様の化合物以外には、脂肪アルコールと酸との全エステルを実質的に含まないことが最も好ましい。
【0026】
第1態様のエステルは有益な特性を有する。式IIの代表的な化合物は、油性感や脂っぽさがなく実質的にベタベタしておらず、曇り点及び流動点が非常に低く、無臭性、低毒性であり、安定している。式IIの代表的な化合物は、触覚特性、伸び性(spreadability)、及びサンスクリーン剤への溶解度が良好であり、粘着性(粘性)が低く、皮膚にのせたときに脂っぽさが少なく、また、懸濁性(TiO)が良好で色素の湿潤化・分散化に有効である。前記化合物はこれらの特性により、サンスクリーンクリーム、ヘアクリーム、ハンドクリーム、コールドクリーム、手動式及び電気式による髭剃り前、髭剃り中、髭剃り後に使う組成物、フィンガーネイルポリッシュ、局所医薬軟膏、口紅、スキンローション、クリーム、及びその他の調剤などのトイレタリー製剤及び化粧品製剤に用いる媒体、担体、皮膚軟化剤又は可溶化剤として有用である。本発明の第1態様のエステルの使用としては、制汗剤組成物、デオドラント組成物、サンスクリーン組成物、及びパーソナルクレンジング組成物に用いる皮膚軟化剤としての使用が特に挙げられる。式I又は式IIのエステルは、化粧品組成物に加えると、その化粧品組成物に以下の特性の1又は2以上、或いは全てが付与される。
乳化の容易さ;
高い屈析率;
良好な使用後感のある皮膚軟化性;
脂っぽさのなさ/心地よい皮膚感触;
潤滑性が良好でありながら油性感はない;
曇り点及び流動点(pour point)が低い;
高い拡散係数;
アルコール溶解性;
低毒性;
加水分解安定性;及び
サンスクリーンを含む数多くの皮膚用及び髪用添加剤のための溶媒
【0027】
第1態様のエステルには、サンスクリーン剤における皮膚軟化剤として用いるときに、上述の特性の他にもいくつもの特性が備わっている。この点に関し、第1態様のエステルを皮膚軟化剤としてサンスクリーン剤に含めると、サンスクリーン組成物におけるサンスクリーン剤の日焼け防止指数(SPF)が高くなることがわかっている。このように、第1態様のエステルを含有するサンスクリーン組成物では、サンスクリーン剤による日焼け防止効果だけでなく、第1態様のエステルによる日焼け防止効果も得られる。したがって、第1態様のエステルを含有するサンスクリーン組成物に日焼け防止指数の低いサンスクリーン剤を使用しても、日焼け防止効果がより高いサンスクリーン剤で得られるような日焼け防止指数を達成することができる。
【0028】
最善の結果を得るためには、第1態様のエステルは、芳香族酸と脂肪アルコールとの他のエステルを実質的に含まない、実質的に純粋な状態で組成物に加えなくてはならない。このようにして最善の結果が得られるはずである。しかし、このことは、これらの組成物における他の脂肪酸エステル又は脂肪酸の使用、適切には上述のパーセンテージの範囲内での使用を排除するものではない。なぜなら、この新規エステルを使用することにより、かかるエステルが組み込まれた化粧品組成物には依然として向上した結果がもたらされるからである。
【0029】
前述した本発明の有益効果のある特性を化粧品組成物又は肌手入用組成物に付与するため、かかる組成物に第1態様のエステルを皮膚軟化剤として組み込んでもよい。第1態様のエステルは、皮膚軟化剤としてだけではなく、希釈剤、溶媒及び液体担体としても、皮膚、爪、唇、又は髪用の局所組成物を含む任意の局所化粧品組成物の成分として用いることができる。溶媒としては、第1態様のエステルは、前記化粧品組成物に用いられる化粧学的に活性な剤(agent)に対する効果的な可溶化剤である。
【0030】
本発明によると、本発明の第1態様のエステルは、皮膚軟化効果を呈する有効量で化粧品組成物に好適に組み込まれる。このようにして、前記エステルは、少なくとも皮膚軟化特性を化粧品組成物に付与するために十分な量で提供される。皮膚軟化剤は、皮膚を滑らかにし、皮膚の柔軟性を高め、皮膚の乾燥を予防又は軽減し、及び/又は皮膚を保護する皮膚科学的に許容される組成物である。皮膚軟化剤は、通常、水分放出性(water emissible)の油性又はろう状の物質であり、本発明の成果を向上させるため、化粧品組成物に対し、その皮膚軟化特性を付与又は向上させるのに少なくとも十分量の第1態様のエステルを添加剤として供給してもよい。本発明によると、第1態様のエステルは、化粧品組成物に皮膚軟化性を付与するのに少なくとも十分な量にて化粧品組成物に好適に加えることができる。これらの化粧品組成物に用いるこの混合物の量は、使用される他の成分の種類や量に依存し、また利用される機能的添加剤の量や種類に左右される。一般的に、これらの化粧品組成物に組み込む本発明のエステルの量は、化粧品組成物の総重量の約0.1重量%〜約30重量%の範囲であり、例えば、化粧品組成物の総重量に対して約0.3重量%〜約20重量%であり、かかる組成物の重量に対して約5重量%〜約15重量%の量であることが特に好ましい。
【0031】
本発明の第3の態様では、化粧品組成物の調製方法が提供される。この方法では、本発明の第1態様のエステルを他の成分と混合し、本発明の第2の態様の化粧品組成物を作製する。
【0032】
第1態様のエステルを利用して、上述した有益効果のある特性を、サンスクリーンクリーム、ヘアクリーム、ハンド用軟膏、口紅、スキンローション及びクリーム、並びにその他の製剤等の従来の局所化粧品組成物にもたらすことができる。化粧品組成物なる用語には、化粧品組成物、スキンケア組成物だけでなく、唇用組成物、ヘア用組成物及び爪用組成物が含まれる。これらはいずれもヒトに局所塗布され、塗布表面に有益な作用がもたらされる。
【0033】
第1態様のエステルは、非油性、無味、不活性、本質的に非毒性及び非感作性、並びに安定であるという特性の1又は2以上を有する点で有利である。第1態様のエステルは、皮膚軟化剤、可溶化剤、保湿剤、可塑剤、サンスクリーン担体/溶媒、脱油剤/脱脂剤、及び乳化剤/共乳化剤としての特性の1又は2以上をもたらす。第1態様のエステルは独特な物理化学特性を有し、特に、手、顔及びボディ用のクリーム、ローション、石鹸及びスティック等における高度な送達系のための有益で独特の成分とすることができる優れた拡散係数を有する。
【0034】
さらに、第1態様のエステルは、固体有機紫外線(UV)吸収剤用の溶媒及び/又は媒体であってもよい。かかるエステルは、スキンケア組成物に含まれるポリマー用の可塑剤としての機能を有していてもよく、スキンケア組成物中の成分の懸濁を助けることができる懸濁補助剤として作用してもよく、また、均染剤及び染色担体として機能してもよい。したがって、第1態様のエステルは、スキンケア組成物に使用されると、皮膚軟化剤としてだけではなく、担体としても役立ち、前記の他の機能を呈することもある。
【0035】
本発明によると、本発明の第1態様のエステルを加えることにより増強される特性を備える化粧品組成物は、人体、特に皮膚、唇、髪又は爪に対し、治療効果又は有益効果のある化粧作用をもたらす化粧学的活性を有する従来物質であり得る。かかる化粧品組成物は、化粧学的活性を有する物質を含有するクリーム、ローション、軟膏、スプレー、棒状石鹸、スティック等の形態をとることができる。本発明によると、化粧学的活性を有する物質には、アンチエイジング成分、抗しわ剤、ミネラル、防腐剤、抗酸化剤、保湿剤、ビタミン、サンスクリーン剤、抗にきび剤、デオドラント、及び制汗剤等が含まれる。これらの中で好ましい化粧学的活性を有する物質はビタミンであり、ビタミンA、B、B、B、B、B、B12、ビオチン、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、葉酸、及びビタミンK等が挙げられる。本発明の化粧品組成物に利用可能な、その他の好ましい化粧学的活性を有する成分としては、抗しわ剤、抗にきび剤、ビタミンE等の保湿剤、鉱物油、アジピン酸ジイソプロピルが挙げられる。
【0036】
第2の態様の化粧品組成物が液体状である場合、かかる組成物は化粧品組成物用の担体媒体水溶液を含有していてもよい。担体媒体水溶液は、水でよく、又は水中油若しくは水中油型乳濁液であり得る。本発明によると、水との相溶性があり化粧学的に許容される担体を水と組み合わせて2番目の成分系の水性担体媒体を形成することができる。かかる水性担体媒体は、1又は2以上の油成分を含むことができる。かかる油成分は、実質的に水に不溶性の薬学上又は化粧学上許容される油性物質であれば任意の物質であってよい。これらの物質は、例えば、CTFA国際化粧品成分辞典(CTFA International Dictionary of Cosmetic Ingredients)、米国薬局方(U.S. Pharmacopoeia)、その他の同等な情報源にて見い出すことができる。適切な油成分としては、ココナッツ油等の天然油、鉱物油及び水素化ポリイソブテン等の炭化水素、ラノリン等のステロール誘導体、蜜ろう等の動物ろう、カルナウバ等の植物ろう、オゾケライト等のミネラルワックス、パラフィンワックス等の石油ワックス、ポリエチレン等の合成ワックス、及びそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されるものではない。化粧品組成物がデオドラントスティック、バー又は石鹸など固体である場合は、固体担体媒体を含有させることが一般的である。かかる固体化粧品組成物を製剤化するのに用いられる従来の固体担体媒体であれば、任意のものを本発明において使用できる。
【0037】
第2の態様の化粧品組成物には、上述したような種々の抗酸化剤、安定化剤、保湿剤、防腐剤、及び乳化剤を含む安定な成分がさらに含まれていてもよい。担体媒体中で安定な、任意の従来の抗酸化剤、保湿剤、安定化剤、防腐剤、又は乳化剤が含まれていてもよい。
【0038】
第2の態様の化粧品組成物に、従来用いられてきた公知の化粧品用の添加剤、アジュバント、及びビークル基質を加えてもよい。ステアリン酸グリセロール又はセスキステアリン酸メチルグルコース等の乳化剤が存在していてもよい。また、エタノール、イソプロパノール又はプロパノール等の炭素原子数1〜6の低級脂肪族アルコール、グリセリン又は1,2−プロピレングリコール等のグリコール など、有機溶媒が存在していてもよい。最終化粧製品には、以下のものが含まれていてもよい。すなわち、香油、ジステアリン酸エチレングリコール等の乳白剤、湿潤剤若しくは乳化剤、抗菌若しくは抗真菌成分、増粘剤(ベントナイトなど)、pH緩衝物質、水分保持剤、香料若しくは香水、香油、着色剤(天然若しくは合成の直接染料など。フルオレセインナトリウム塩等の着色剤も含む)、サンスクリーン若しくはUVフィルター、防腐剤、抗酸化剤(トコフェロール等)、発熱ケイ酸、錯化剤、並びにリン酸、酢酸、ギ酸、グリオキシル酸、乳酸、酒石酸若しくはクエン酸等の生理学的に許容できる無機酸若しくは有機酸、塩基、塩(塩化ナトリウムなど)、緩衝剤(クエン酸ナトリウム若しくはリン酸ナトリウムなど)、コンシステンシー付与剤(consistency-lending agents)、並びに天然型若しくは修飾型の一部若しくは全体的な合成ポリマー(キトサン、FMOCキトサン及びPVPなど)が含まれていてもよい。当業者であれば当然、本発明の組成物の所望の製剤を得るために、多種多様のアジュバント及び担体物質の中からいずれを加えるべきか十分知っているであろう。しかし、本発明の好ましい態様によると、かかる組成物には、本発明の第1態様のエステル以外には、脂肪アルコールエステルが含まれていないことが好ましく、仮に含まれていたとしても、そのようなさらなるエステルは上述の範囲内の量で含まれる。
【0039】
本発明の第4の態様によると、任意に置換されていてもよい芳香族酸と分枝状C13第一級アルコールとのエステルを使用してヒトの皮膚又は髪を処理する方法が提供される。
【0040】
本発明の第5の態様によると、任意の目的のために、又は本明細書に記載の任意の有益な作用を達成するために、任意に置換されていてもよい芳香族酸と分枝状C13第一級アルコールとのエステルの使用が提供される。特に、向上したサンスクリーン性、向上した保湿性、及び向上した皮膚軟化性の1又は2以上が提供されるが、これら以外の特性の提供を排除するものではない。
【0041】
第1及び第2の態様の好ましい特性は、第3、第4又は第5の態様における好ましい特性でもある。
【0042】
以下の実施例にしたがって本発明をさらに詳しく説明する。
【0043】
実施例中、添加剤Aは、C13安息香酸エステルであり、このエステルは、1モルのイソトリデカン−1−オル(Marlipal O13)と、1モルの安息香酸(すなわち非置換)とを標準的なエステル化条件下にてエステル化反応に供することにより調製される。その結果得られた産物の酸価は、0.1mgKOH/g未満であり、この産物をWhatmanフィルターNo.4を用いたフィルタープレスによりろ過した。添加剤Aは、凝固点が−25℃、屈折率が1.4850、25℃での比重が0.903の無臭の液体だった。
【0044】
実施例において、実施例中に記載のある商標名又は一般名の化学名を以下の表1に示す。
【0045】
【表1】




[実施例]
【実施例1】
【0046】
添加剤Aの溶解度及び相溶性
添加剤Aの溶解度特徴を以下の表に示す。添加剤Aは、化粧品製剤に一般的に使用されている殆どの溶媒、皮膚軟化剤及び媒体中で、通常の取扱い及び使用温度において溶解性である。
【0047】
【表2】

【実施例2】
【0048】
エステルにおけるサンスクリーンの溶解度(25℃)
最も一般的に使用されている固体結晶性有機サンスクリーン2種は、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン(ベンゾフェノン−3と呼ばれる)及びParsol 1789(ブチル−メトキシジベンゾイルメタン)である。これら2種類のサンスクリーンは、最適なSPF(日焼け防止指数)としてサンスクリーン製剤に使用するために溶液中に溶解させて保持することが難しい。サンスクリーン成分に対する溶解度が高いということは、製剤中のサンスクリーン活性成分の濃度が高くなるということである。これにより、製剤のSPFランクが上がるので有利である。液体有機サンスクリーンとして一般的に使用されているのは、サリチル酸オクチル(OS)及びメトキシケイ皮酸オクチル(OMC)である。本発明のエステルは、一般的に使用及び市販されている化粧品用の皮膚軟化剤/材料に比べて優れている。
【0049】
【表3】

【0050】
固体結晶性有機サンスクリーンに対して添加剤Aが示す高い溶解度は、スキンケア市場におけるサンスクリーン製品の製剤化にとって有利な効果となる。したがって、化粧品用皮膚軟化剤としてだけではなく、上述のサンスクリーンに対しても優れた溶媒となる。
【0051】
サンスクリーンに対する可溶化剤として以外にも、このエステルのさらなる態様としては、洗い流されにくい(antiwashoff)という効果をもたらす。この効果は、サンスクリーンがより長い時間皮膚に残ることを可能とするので、長持ちするサンスクリーン製品の製剤化において非常に魅力的なものである。
【実施例3】
【0052】
サンスクリーンクリーム
以下の成分を以下の表に示す重量%の量で用い、サンスクリーンクリームを調製した。
【0053】
【表4】

【0054】
上記の成分を用いて以下の手順によりサンスクリーンクリームを作製した。
1.水を一番目としてI部の成分を加えて(charge)いく。
2.温度を70℃〜75℃とする。
3.均一になるまでよく混合する。
4.II部の成分を75℃まで加熱する。
5.II部の成分をI部に混ぜながら加える。
6.緩やかに混合しながら35℃まで冷却する。
7.III部の成分を加える。
8.よく混合し、30℃まで冷却する。
【0055】
各製品を添加剤Aに対して評価した。使用した試料の量は、シリンジで投与した製品0.5ccだった。各製品を以下の特質について評価し、1を最高とする1〜5の基準で評価した。各製品は、適用した瞬間から終末感(end feel)まで時間計測し、その吸収時間を判断した。前記各製品を前腕に適用し、反対側の手の指を4本使って皮膚にすり込み、各試料を評価した。前腕は、次の試料セットを評価する前に温水で評価して(evaluated)水分を拭き取った。本出願の他の実施例においてもこの手順及び基準を用いる。
【0056】
前記の手順で調製した製剤A〜Fについて肌感触、皮膚軟化性、滑り性(slip)、及び伸び性を1〜5の基準に基づき、1が最高で5を最低として試験した。結果を以下に示す。
【0057】
【表5】

【実施例4】
【0058】
サンスクリーンスティック
以下の成分を以下の表に示す重量%の量で用い、サンスクリーンスティックを調製した。
【0059】
【表6】

【0060】
上記の成分を用いて以下の手順によりサンスクリーンスティックを調製した。
1.成分を記載順に加えていく。
2.温度を80℃とする。
3.均一になるまでよく混合する。
4.60℃まで冷却する。
5.60℃で適切な型に流し込む。
【0061】
このようにして調製した製剤A〜Fについて滑り性、伸び性、肌感触、皮膚軟化性、粘性、及び耐水性(water rinse-off resistance)を1〜5の基準に基づき、1が最高で5を最低として試験した。結果を以下に示す。
【0062】
【表7】

【実施例5】
【0063】
クリアサンスクリーンオイル
以下の成分を以下の表に示す重量%の量で用い、クリアサンスクリーンオイルを調製した。
【0064】
【表8】

【0065】
上記の成分を用いて以下の手順によりクリアサンスクリーンオイルを調製した。
1.I部とII部の成分をそれぞれ個別に均一になるまで混合する。
2.均一になったら、II部の成分をI部に加え、25℃で攪拌する。
【0066】
25℃では全ての製剤が透明な液体となる。このようにして調製した製剤A〜Fについて、滑り性、耐水性、粘性、感触、及び皮膚軟化性を試験した。1〜5の基準に基づき、1を最高とし、5を最低とする。結果を以下に示す。
【0067】
【表9】

【実施例6】
【0068】
モイスチャライジングハンドローション及びボディローション
以下の成分を以下の表に示す重量%の量で用い、モイスチャライジングハンドローション及びボディローションを調製した。
【0069】
【表10】


【0070】
上記の成分を用いて以下の手順によりモイスチャライジングハンドローション及びボディローションを調製した。
1.水にカルボマーを分散させる。
2.その他のI部の成分を、各成分が溶解するように加えていく。
3.トリエタノールアミンを加えた後、65℃まで加熱する。
4.I部の成分を合わせて混合し、60℃まで加熱する。
5.II部の成分をI部の成分に加え、よく混合して乳剤を形成する。
6.25℃まで冷却しながら混合し続ける。全ての製剤は、pH6.5の不透明な流動性ローションである。
【0071】
このようにして調製された製剤A〜Fについて、肌感触、滑り性、粘性、長期持続性の保湿効果、及び皮膚軟化性を1〜5の基準に基づき、1が最高で5を最低として試験した。結果を以下に示す。
【0072】
【表11】

【実施例7】
【0073】
エレガントスキンクリーム
以下の成分を以下の表に示す重量%の量で用い、エレガントスキンクリームを調製した。
【0074】
【表12】

【0075】
上記の成分を用いて以下の手順によりスキンクリームを調製した。
1.水を一番目としてI部の成分を加えていく。
2.温度を70℃〜75℃とする。
3.均一になるまでよく混合する
4.II部の成分を75℃まで加熱する。
5.II部の成分をI部に混ぜながら加える。
6.緩やかに混合しながら25℃まで冷却する。
【0076】
全ての製剤の外観は軟らかく、pHは6.6である。前記のようにして調製した製剤A〜Fについて、肌感触、滑り性、粘性、及び皮膚軟化性を1〜5の基準に基づき、1が最高で5を最低として試験した。結果を以下に示す。
【0077】
【表13】

【実施例8】
【0078】
デオドラントスティック
以下の成分を以下の表に示す重量%の量で用い、デオドラントスティックを調製した。
【0079】
【表14】

【0080】
上記の成分を用いて以下の手順によりデオドラントスティックを調製した。
1.プロピレングリコールを一番目として成分を記載順に加えていく。
2.温度を80℃とし、全ての成分を溶解させる。
3.均一になるまでよく混合する。
4.60℃まで冷却し、スティック型に流し込む。
【0081】
このようにして調製した製剤A〜Fについて、皮膚軟化性、滑り性、滑り性、及びソフトドライな使用感を1〜5の基準に基づき、1が最高で5を最低として試験した。結果を以下に示す。
【0082】
【表15】

【実施例9】
【0083】
白浮きしない(non-whitening)制汗スティック
以下の成分を以下の表に示す重量%の量で用い、白浮きしない制汗スティックを調製した。
【0084】
【表16】

【0085】
上記の成分を用いて以下の手順により白浮きしない制汗スティックを調製した。
1.Dow Corning 345 Fluidを一番目としてI部の成分を記載順に加えていく。
2.温度を75℃とする。
3.均一になるまでよく混合する。
4.II部のパウダーを加え、完全に分散するまで混合する。75℃で保持する。
5.55℃まで冷却し、スティック型に流し込む。
【0086】
このようにして調製した製剤A〜Fについて、皮膚軟化性、粘性、タルク様感、及びスティック構造を1〜5の基準に基づき、1が最高で5を最低として試験した。結果を以下に示す。
【0087】
【表17】

【0088】
本明細書では別途記載のない限り、実施例を含め、パーセンテージで示す値は組成物の総重量に対する重量(wt/wt)で表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
任意に置換されていてもよい芳香族酸と、分枝状C13第一級アルコールとのエステル。
【請求項2】
任意に置換されていてもよい芳香族酸が、任意に置換されていてもよい安息香酸である、請求項1に記載のエステル。
【請求項3】
芳香族酸が非置換である、請求項1又は2に記載のエステル。
【請求項4】
分枝状C13第一級アルコール残基が、第一級アルコールのバックボーン上の1つの位置からのみ分枝している、請求項1〜3のいずれかに記載のエステル。
【請求項5】
分枝状C13第一級アルコール残基が、1〜6個の炭素原子、好ましくはメチル基を、1又は2以上の側鎖に有する、請求項1〜4のいずれかに記載のエステル。
【請求項6】
分枝状C13第一級アルコール残基が、任意に置換される芳香族部分を基準にしてバックボーンの最後から2番目の炭素原子から分枝している、請求項1〜5のいずれかに記載のエステル。
【請求項7】
以下の式を有する請求項1〜6のいずれかに記載のエステル。
【化1】

(II)

【請求項8】
その少なくとも90重量%、好ましくは少なくとも95重量%、好ましくは少なくとも98重量%が純粋な形で提供され、好ましくは実質的に純粋で提供される、請求項1〜7のいずれかに記載のエステル。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載のエステルを成分の1つとして含む、ヒトに適用するための組成物。
【請求項10】
担体若しくは希釈剤若しくは溶媒、及び/又はサンスクリーン剤等の化粧学的に有効な成分、及びデオドラント剤若しくは制汗剤を含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
エステルが、組成物中のC12−C15脂肪アルコール−芳香族酸エステル含有量の総重量の少なくとも40重量%、好ましくは少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも70重量%、最も好ましくは少なくとも90重量%、及び好ましくは実質的に全てを構成する、請求項9又は10に記載の組成物。
【請求項12】
エステルが、組成物中の脂肪アルコールと酸との全エステルの総重量の少なくとも40重量%、好ましくは少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも70重量%、最も好ましくは少なくとも90重量%、及び好ましくは実質的に全てを構成する、請求項9又は10に記載の組成物。
【請求項13】
エステルが、組成物の総重量に対し、約0.1重量%〜約30重量%の量で存在する、請求項9〜12のいずれかに記載の組成物。
【請求項14】
エステルが、組成物中で皮膚軟化剤として作用し、組成物中に存在する唯一の皮膚軟化剤である、請求項9〜13のいずれかに記載の組成物。
【請求項15】
サンスクリーン組成物であり、エステルによって有効性が増強されたサンスクリーン剤を含む、請求項9〜14のいずれかに記載の組成物。
【請求項16】
請求項1〜8のいずれかに記載のエステルを他の成分と混合することにより、請求項9〜15のいずれかに記載の組成物を調製する方法。
【請求項17】
任意に置換されていてもよい芳香族酸と分枝状C13第一級アルコールとのエステルを使用する、ヒトの皮膚又は髪を処置する方法。
【請求項18】
向上したサンスクリーン性、向上した保湿性、及び向上した皮膚軟化性の1又は2以上を提供するための、任意に置換されていてもよい芳香族酸と分枝状C13第一級アルコールとのエステルの使用。




【公表番号】特表2011−507942(P2011−507942A)
【公表日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−540176(P2010−540176)
【出願日】平成20年12月23日(2008.12.23)
【国際出願番号】PCT/GB2008/051227
【国際公開番号】WO2009/083735
【国際公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(508020258)インノスペック リミテッド (24)
【氏名又は名称原語表記】INNOSPEC LIMITED
【Fターム(参考)】