説明

新規なシリケート系黄色−緑色蛍光体

【課題】発光強度が大きいシリケート系黄色−緑色蛍光体を提供する。
【解決手段】式A2SiO4:Eu2+Dで示され、式中、Aは、Sr、Ca、Ba、Mg、Zn及びCdからなる群より選択される二価金属の少なくとも一つであり、Dは、F、Cl、Br、I、S及びNからなる群より選択されるドーパントである、新規な蛍光体システム。一つの実施態様では、新規な蛍光体は、式(Sr1-x-yBaxy2SiO4:Eu2+Fで示され、式中、Mは、0<y<0.5の範囲の量の、Ca、Mg、Zn又はCdの一つである。蛍光体は、青色LEDからの可視光線を吸収するように構成されており、蛍光体からのルミネセンス光及び青色LEDからの光を組み合わせて白色光を形成することができる。ドーパントイオンを含有しない、従来から知られるYAG化合物又はシリケート系蛍光体よりも大きい強度で光を発することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の参照
本出願は、2004年9月22日出願の「Novel silicate-based yellow-green phosphors」と題する、発明者Ning Wang、Shifan Cheng及びYi-Qun Liによる米国特許出願第10/948,764号の一部継続出願である。米国特許出願第10/948,764号は、2004年8月4日出願の「Novel phosphor systems for a white light emitting diode (LED)」と題する、同じく発明者Ning Wang、Shifan Cheng及びYi-Qun Liによる米国特許出願第10/912,741号の一部継続出願である。これら両米国特許第10/948,764号及び第10/912,741号をすべて引用例として本明細書に取り込む。
【0002】
発明の分野
本発明の実施態様は、一般に、白色光照明システム、たとえば白色発光ダイオード(LED)で使用するための新規なシリケート系黄色及び/又は緑色蛍光体(以下、黄色−緑色蛍光体と呼ぶ)に関する。特に、本発明の黄色−緑色蛍光体は、少なくとも一つの二価アルカリ土類元素及び少なくとも一つのアニオンドーパントを有するシリケート系化合物を含み、この新規な蛍光体の光学性能は、アニオンドーパントを含む利点を利用しない公知のYAG:Ce化合物又は公知のシリケート系化合物の光学性能に対して同等であるか、又は優れたものである。
【0003】
背景
白色LEDは当該技術で公知であり、比較的最近の技術革新である。電磁スペクトルの青/紫外線領域で発光するLEDが開発されてはじめて、LEDに基づく白色照明源を製造することが可能になった。経済的には、白色LEDは、特にその製造コストが下がり、技術がさらに進歩するにつれ、白熱光源(電球)に取って代わる潜在性を有している。特に、白色LEDの潜在性は、寿命、ロバスト性及び効率において白熱電球のそれよりも優れると考えられている。たとえば、LEDに基づく白色照明源は、100,000時間の作動寿命及び80〜90%の効率の工業規格に適合すると期待されている。高輝度LEDは、交通信号のような社会の分野に対してすでに実質的な影響を及ぼして白熱電球に取って代わっており、ほどなく、家庭及びビジネスならびに他の日常用途で一般化している照明要求に応じるということは驚くべきことではない。
【0004】
発光性蛍光体に基づく白色光照明システムを製造するための一般的手法がいくつかある。今日まで、大部分の白色LED市販品は、図1に示す、放射線源からの光が白色光照明の色出力に影響するような手法に基づいて製造される。図1のシステム10を参照すると、放射線源11(LEDであってもよい)が電磁スペクトルの可視部分で光12、15を発する。光12及び15は同じ光であるが、説明のために二つの別個のビームとして示されている。放射線源11から発される光の一部分、すなわち光12が、放射線源11からのエネルギーを吸収したのち光14を発することができるフォトルミネセンス物質である蛍光体13を励起する。光14は、スペクトルの黄色領域の実質的に単色であることもできるし、緑色と赤色、緑色と黄色又は黄色と赤色などの組み合わせであることもできる。放射線源11はまた、蛍光体13によって吸収されない可視部分で青の光を発する。これは、図1に示す青色可視光15である。青色可視光15が黄色光14と混合して、図示する所望の白色照明16を提供する。
【0005】
要望されていることは、従来技術のシリケート系黄色蛍光体に対する、青から黄への同等以上の転換効率によって少なくとも部分的に顕在化される改良である。低い重量密度及び低いコストを有する増強された黄色蛍光体は、青色LEDと組み合わせて使用されると、色出力が安定であり、色の混合が所望の均一な色温度及び演色指数を生じさせる光を発することができる。
【0006】
発明の概要
本発明の実施態様は、白色光照明システム、たとえば白色発光ダイオード(LED)で使用するための新規なシリケート系黄色及び/又は緑色蛍光体(以下、黄色−緑色蛍光体と呼ぶ)に関する。特に、本発明の黄色−緑色蛍光体は、少なくとも一つの二価アルカリ土類元素及び少なくとも一つのアニオンドーパントを有するシリケート系化合物を含み、この新規な蛍光体の光学性能は、アニオンドーパントを含む利点を利用しない公知のYAG:Ce化合物又は公知のシリケート系化合物の光学性能に対して同等以上である。
【0007】
本発明の一つの実施態様では、新規なシリケート系黄色−緑色蛍光体は、式A2SiO4:Eu2+Dで示され、式中、Aは、Sr、Ca、Ba、Mg、Zn及びCdからなる群より選択される二価金属の少なくとも一つであり、Dは、F、Cl、Br、I、P、S及びNからなる群より選択されるドーパントであり、蛍光体中、約0.01〜20モル%の範囲の量で存在する。もう一つの実施態様では、ドーパントは、F、Cl、Br、I、S及びNからなる群より選択される。このシリケート系蛍光体は、約280nm〜490nmの範囲の波長の放射線を吸収するように構成されており、約460nm〜590nmの範囲の波長を有する可視光を発する。
【0008】
代替態様では、シリケート系蛍光体は、式(Sr1-x-yBaxy2SiO4:Eu2+Dで示され、式中、Mは、Ca、Mg、Zn及びCdからなる群より選択される元素の少なくとも一つであり、
0≦x≦1、
MがCaである場合、0≦y≦1、
MがMgである場合、0≦y≦1、及び
MがZn及びCdからなる群より選択される場合、0≦y≦1
である。
【0009】
一つの実施態様では、シリケート系蛍光体中の「D」イオンはフッ素である。
【0010】
代替態様では、シリケート系蛍光体は、式(Sr1-x-yBaxy2SiO4:Eu2+Fで示され、式中、Mは、Ca、Mg、Zn、Cdからなる群より選択される元素の少なくとも一つであり、
0≦x≦0.3、
MがCaである場合、0≦y≦0.5、
MがMgである場合、0≦y≦0.1、及び
MがZn及びCdからなる群より選択される場合、0≦y≦0.5
である。この蛍光体は、電磁スペクトルの黄色領域で光を発し、約540〜590nmの範囲のピーク発光波長を有する。
【0011】
代替態様では、シリケート系蛍光体は、式(Sr1-x-yBaxy2SiO4:Eu2+Fで示され、式中、Mは、Ca、Mg、Zn及びCdからなる群より選択される元素の少なくとも一つであり、
0.3≦x≦1、
MがCaである場合、0≦y≦0.5、
MがMgである場合、0≦y≦0.1、及び
MがZn及びCdからなる群より選択される場合、0≦y≦0.5
である。このシリケート系蛍光体は通常、電磁スペクトルの緑色領域で光を発し、約500〜530nmの範囲のピーク発光波長を有する。シリケート系蛍光体は通常、電磁スペクトルの緑色領域で光を発し、約500〜530nmの範囲のピーク発光波長を有する。
【0012】
特定の実施態様では、約410nm〜約500nmの範囲の波長を有する放射線を発するように構成された放射線源と、放射線源からの放射線の少なくとも一部を吸収し、約530〜590nmの範囲の波長でピーク強度を有する光を発するように構成された、請求項7記載の黄色蛍光体とを含む白色光LEDが開示される。
【0013】
特定の実施態様では、白色LEDは、約410nm〜約500nmの範囲の波長を有する放射線を発するように構成された放射線源と、放射線源からの放射線の少なくとも一部を吸収し、約530〜約590nmの範囲の波長でピーク強度を有する光を発するように構成された、請求項7記載の黄色蛍光体と、放射線源からの放射線の少なくとも一部を吸収し、約500〜約540nmの範囲の波長でピーク強度を有する光を発するように構成された、請求項9記載の緑色蛍光体とを含むことができる。
【0014】
特定の実施態様では、白色LEDは、約410nm〜約500nmの範囲の波長を有する放射線を発するように構成された放射線源と、放射線源からの放射線の少なくとも一部を吸収し、約500〜約540nmの範囲の波長でピーク強度を有する光を発するように構成された、請求項9記載の緑色蛍光体と、放射線源からの放射線の少なくとも一部を吸収し、約590〜690nmの範囲の波長でピーク強度を有する光を発するように構成された、CaS:Eu2+、SrS:Eu2+、MgO*MgF*GeO:Mn4+及びMxSiyz:Eu+2からなる群より選択され、式中、Mは、Ca、Sr、Ba及びZnからなる群より選択され、z=2/3x+4/3yである赤色蛍光体とを含むことができる。
【0015】
特定の実施態様では、白色LEDは、約410nm〜約500nmの範囲の波長を有する放射線を発するように構成された放射線源と、放射線源からの放射線の少なくとも一部を吸収し、約540〜約590nmの範囲の波長でピーク強度を有する光を発するように構成された、請求項7記載の黄色蛍光体と、放射線源からの放射線の少なくとも一部を吸収し、約590〜690nmの範囲の波長でピーク強度を有する光を発するように構成された、CaS:Eu2+、SrS:Eu2+、MgO*MgF*GeO:Mn4+及びMxSiyz:Eu+2(式中、Mは、Ca、Sr、Ba及びZnからなる群より選択され、z=2/3x+4/3yである)からなる群より選択される赤色蛍光体とを含むことができる。
【0016】
組成物の特定のさらなる実施態様は、式A2SiO4:Eu2+Dで示され、式中、Aは、Sr、Ca、Ba、Mg、Zn及びCdからなる群より選択される少なくとも一つの二価金属であり、Dは、黄色蛍光体中、約0.01〜20モル%の範囲の量で存在するイオンであるシリケート系黄色蛍光体と、青色蛍光体とを含み、黄色蛍光体は、約540nm〜約590nmの範囲の波長でピーク強度を有する可視光を発するように構成されており、青色蛍光体は、約480〜約510nmの範囲の波長でピーク強度を有する可視光を発するように構成されている。組成物の青色蛍光体は、シリケート系蛍光体及びアルミネート系蛍光体からなる群より選択される。シリケート系青色蛍光体の組成は、式Sr1-x-yMgxBaySiO4:Eu2+Fで示すことができ、
式中、
0.5≦x≦1.0、及び
0≦y≦0.5
である。アルミネート系青色蛍光体の組成は、式Sr1-xMgEuxAl1017で示すことができ、
式中、
0.01<x≦1.0
である。
【0017】
特定の実施態様で、組成物は、式A2SiO4:Eu2+Hで示され、式中、Aは、Sr、Ca、Ba、Mg、Zn及びCdからなる群より選択される二価金属の少なくとも一つであり、Hは、黄色蛍光体中、約0.01〜20モル%の範囲の量で存在する負電荷を有するハロゲンイオンであるシリケート系緑色蛍光体と、青色蛍光体と、赤色蛍光体とを含み、緑色蛍光体は、約500nm〜約540nmの範囲の波長でピーク強度を有する可視光を発するように構成されており、青色蛍光体は、約480〜約510nmの範囲の波長でピーク強度を有する可視光を発するように構成されており、赤色蛍光体は、約775〜約620nmの範囲の波長でピーク強度を有する可視光を発するように構成されている。
【0018】
特定の実施態様では、式A2SiO4:Eu2+Dで示され、式中、Aは、Sr、Ca、Ba、Mg、Zn及びCdからなる群より選択される二価金属の少なくとも一つであり、Dは、F、Cl、Br、I、P、S及びNからなる群より選択されるドーパントであり、蛍光体中、約0.01〜20モル%の範囲の量で存在するシリケート系黄色蛍光体を調製する方法であって、ゾルゲル法及び固相反応法からなる群より選択される方法が提供される。もう一つの実施態様では、ドーパントは、F、Cl、Br、I、S及びNからなる群より選択される。
【0019】
新規な蛍光体を調製する方法が提供される。このような方法は、一般に、
a)Mg、Ca、Sr及びBa含有硝酸塩からなる群より選択される所望の量のアルカリ土類硝酸塩を、Eu23及びBaF2又は他のアルカリ金属ハロゲン化物からなる群より選択される化合物とともに、酸に溶解して第一の溶液を調製することと、
b)対応する量のシリカゲルを脱イオン水に溶解して第二の溶液を調製することと、
c)a)及びb)で製造した溶液をいっしょに攪拌したのち、アンモニアを加えて混合溶液からゲルを生成することと、
d)c)で製造した溶液のpHを約9の値に調節したのち溶液を約60℃で約3時間、連続して攪拌することと、
e)d)のゲル化溶液を蒸発によって乾燥させたのち、得られた乾燥ゲルを500〜700℃で約60分間分解させて酸化生成物を得ることと、
f)e)のゲル化溶液を冷却し、a)でアルカリ土類金属ハロゲン化物が使用されない場合、NH4F又は他のアンモニアハロゲン化物と共に粉砕して粉末を製造することと、
g)f)の粉末を、還元雰囲気中、約1200〜1400℃の範囲の焼結温度で約6〜10時間焼成/焼結することと
を含むゾルゲル法を含む。
【0020】
固相反応法を含む方法では、
a)所望の量のアルカリ土類酸化物又は炭酸塩(Mg、Ca、Sr、Ba)と、Eu23及び/又はBaF2もしくは他のアルカリ土類金属ハロゲン化物、対応するSiO2及び/又はNH4Fもしくは他のアンモニアハロゲン化物のドーパントとをボールミルで湿式混合することと、
b)乾燥及び粉砕ののち、得られた粉末を、還元雰囲気中、約1200〜1400℃の範囲の焼成/焼結温度で約6〜10時間焼成及び焼結することと
を含む。
【0021】
特定の実施態様では、本明細書に記載する蛍光体は、米国特許第6809347号に開示されている蛍光体、たとえば式(2−x−y)SrO・x(Bau、Cav)O・(1−a−b−c−d)SiO2・aP25bAl23cB23dGeO2:yEu2+(式中、0≦x<1.6、0.005<y<0.5、x+y≦1.6、0≦a、b、c、d<0.5、u+v=1)及び/又は式(2−x−y)BaO・x(Sru、Cav)O・(1−a−b−c−d)SiO2・aP25bAl23cB23dGeO2:yEu2+(式中、0.01<x<1.6 0.005<y<0.5、0≦a、b、c、d<0.5、u+v=1、x・v≧0.4)で示され、発光原子団が黄緑色、黄色又はオレンジ色スペクトル領域で発光し、生成される白色光の色温度及び色指数を前記領域のパラメータの選択によって調節することができることを特徴とする蛍光体を明示的に除外する。
【0022】
特定の実施態様では、シリケート系黄色−緑色蛍光体は、式(A1-xEux2Si(O1-yy4で示され、式中、
Aは、Sr、Ca、Ba、Mg、Zn及びCdからなる群より選択される二価金属の少なくとも一つであり、
Dは、F、Cl、Br、I、S及びNからなる群より選択されるドーパントであり、
0.001<x<0.10、0.01<y<0.2
である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】可視部分で発光する放射線源及び放射線源からの励起に応答して発光する蛍光体を含む白色光照明システムであって、システムから発される光が蛍光体からの光と放射線源からの光との混合であるシステムを構築するための一般的スキームの略図である。
【図2】従来技術のYAG系蛍光体及び従来技術のシリケート系蛍光体に関して励起スペクトルを波長の関数としてプロットしたグラフであり、いずれも470nmの波長を有する放射線で励起された二つの従来技術の黄色蛍光体それぞれから測定された発光スペクトルを含むグラフである。
【図3】本発明の実施態様の典型的な蛍光体の発光スペクトルの集合を示す。各組成は、そのフッ素含有量が異なるが、式[(Sr0.7Ba0.30.98Eu0.022SiO4-xxに適合し、実験に使用した励起放射線の波長は約450nmであった。
【図4】式[(Sr0.7Ba0.30.98Eu0.022SiO4-xx(この実験におけるDはF、Cl又はPである)で示される典型的な組成物の、発光強度対イオン(D)のドープ濃度のグラフである。
【図5】式[(Sr0.7Ba0.30.98Eu0.022SiO4-xx(この実験におけるDはF、Cl又はPである)で示される典型的な組成物の、ピーク波長位置対アニオン(D)のドープ濃度のグラフである。
【図6】本実施態様でフッ素が演じる役割をさらに確認する、フッ素含有シリケートと非フッ素含有シリケートとを比較した励起スペクトルのグラフである。
【図7】二つのアルカリ土類Sr及びBaの比率の関数としてピーク強度及び波長位置がどのように変化するかを示す、式[(Sr1-xBax0.98Eu0.022SiO4-yyで示される典型的な蛍光体の発光スペクトルの集合を示す。
【図8】[(Sr0.7Ba0.30.98Eu0.022SiO3.90.140%と[(Sr0.9Ba0.05Mg0.050.98Eu0.022SiO3.90.160%とを混合することによって調製される新規な蛍光体を含む、類似したCIEカラーを有する化合物に関して発光強度を波長の関数としてプロットしたグラフである。
【図9】試験した典型的な蛍光体[(Sr0.7Ba0.30.98Eu0.022SiO3.90.1に関して、発光スペクトルを25〜120℃の範囲の温度の関数としてプロットした集合である。
【図10】典型的な黄色蛍光体[(Sr0.7Ba0.30.98Eu0.022SiO3.90.1の最大強度をYAG:Ce化合物及び(Y、Gd)AG化合物と比較して示す、スペクトルの最大強度を温度の関数としてプロットしたグラフである。
【図11】典型的な黄色蛍光体[(Sr0.7Ba0.30.98Eu0.022SiO3.90.1に関して、図8に示すスペクトルの最大発光波長を温度の関数としてプロットしたグラフである。
【図12】典型的な黄色−緑色蛍光体[(Sr0.7Ba0.30.98Eu0.022SiO3.90.1に関して、最大発光強度を湿度の関数としてプロットしたグラフである。
【図13】新規な黄色−緑色蛍光体の製造に関連して、典型的な焼結蛍光体中の出発原料のフッ素濃度を、蛍光体中に最終的に実際に存在するフッ素のモル%の関数としてプロットしたグラフである。焼結蛍光体中のフッ素含有量は、二次イオン質量分光分析法(SIMS)によって測定した。
【図14】CIE図上の本発明の黄色−緑色蛍光体の位置を、比較のための典型的なYAG:Ce蛍光体の位置とともに示す。
【図15】典型的な(Sr0.7Ba0.3Eu0.021.95Si1.023.90.1蛍光体からの黄色光を青色LED(典型的な黄色−緑色蛍光体に励起放射線を提供するために使用される)からの青色光と組み合わせて含む典型的な白色LEDからの発光スペクトルである。青色LEDの励起波長は約450nmである。
【図16】先の図14の同様に、典型的な(Sr0.7Ba0.3Eu0.021.95Si1.023.90.1蛍光体からの黄色光を式(Ba0.3Eu0.021.95Si1.023.90.1で示される典型的な緑色蛍光体からの緑色光及び青色LEDからの青色光と組み合わせて含む典型的な白色LEDからの発光スペクトルである。青色LEDからの励起放射線は同じく約450nmの波長を有する。
【図17】青色LED(約450nmのピーク波長で発光)、この場合には約530nmで緑をより多く発するように調節した本発明の黄色−緑色蛍光体及び式CaS:Euで示される赤色蛍光体を含む典型的な白色LEDからの発光スペクトルである。
【図18】典型的な赤色、緑色及び黄色蛍光体の位置ならびに個々の蛍光体からの光を混合することによって生成される白色光の位置を示す色度図である。
【0024】
発明の詳細な説明
以下の順序で本発明の様々な実施態様を説明する。まず、新規なシリケート系蛍光体の概要を、特にドーパントアニオンの選択及びその包含の理由ならびに特に発光強度の増大に関する利点、蛍光体中に存在するアルカリ土類及びそれらの含有比がルミネセンス特性に及ぼす効果ならびに温度及び湿度が蛍光体に及ぼす効果に関して記載する。次に、蛍光体処理及び製造方法を論じる。最後に、まず青色LEDの一般特性を論じ、次いで新規な黄色−緑色蛍光体とともに使用することができる他の蛍光体、たとえば特に赤色蛍光体を論じることにより、新規な黄色−緑色蛍光体を使用して製造することができる白色光照明を開示する。
【0025】
本実施態様の新規な黄色蛍光体
本発明の特定の実施態様によると、式A2SiO4:Eu2+D(式中、Aは、Sr、Ca、Ba、Mg、Zn及びCdからなる群より選択される二価金属の少なくとも一つであり、Dは、蛍光体中、約0.01〜20モル%の範囲の量で存在する負電荷を有するイオンである)で示される黄色蛍光体が開示される。一つの蛍光体の中に2種以上の二価金属Aが存在してもよい。好ましい実施態様では、Dは、F、Cl、Br及びIからなる群より選択されるドーパントイオンであるが、Dはまた、N、S、P、As及びSbのような元素であることもできる。もう一つの実施態様では、ドーパントは、F、Cl、Br、I、N、S、As及びSbからなる群より選択される。シリケート系蛍光体は、約280nm〜約520nmの範囲の波長、特にその範囲の可視部分、たとえば約430〜約480nmの波長を有する励起放射線を吸収するように構成されている。たとえば、本シリケート系蛍光体は、約460nm〜590nmの範囲の波長を有する可視光を発するように構成されており、式(Sr1-x-yBaxCayEu0.022SiO4-zz(式中、0<x≦1.0、0<y≦0.8、0<z≦0.2)で示される。代替式は(Sr1-x-yBaxMgyEu0.022SiO4-zz(式中、0<x≦1.0、0<y≦0.2、0<z≦0.2)である。代替態様で、蛍光体は、式(Sr1-x-yBaxy2SiO4:Eu2+D(式中、0<x≦1であり、Mは、Ca、Mg、Zn、Cdの一つ以上である)によって表すこともできる。この実施態様では、MがCaである場合、条件0≦y≦0.5が当てはまり、MがMgである場合、条件0≦y≦0.1が当てはまり、MがZn又はCdである場合、条件0≦y≦0.5が当てはまる。好ましい実施態様では、成分Dは元素フッ素(F)である。
【0026】
典型的な蛍光体を本実施態様にしたがって製造し、多様な方法で光学的に特性決定した。第一の、おそらくはもっとも本質を明らかにする試験は、蛍光体から発される光の強度を波長の関数として評価するために実施したものであり、Dアニオンの含有量を変化させた一連の蛍光体組成物に対して実施した。このデータから、Dアニオン含有量の関数としてピーク発光強度のグラフを作成することが有用である。同様に有用であるものは、同じくDアニオン含有量の関数としてのピーク発光波長のグラフの作成である。最後に、蛍光体性能において二価金属が演じる役割を調査することが可能である。具体的には、2種のアルカリ土類元素A1及びA2を含有し、場合によってはさらなる(又は第三の)アルカリ土類元素A3を含有する一連の組成物を製造することができ、異なるアルカリ土類に関して発光スペクトルを波長の関数として測定することができる。換言するならば、2種のアルカリ土類の場合、A1/A2の比を変えることもできる。
【0027】
代表的なデータが図3〜6に示されている。本発明概念を例示するために選択した蛍光体は[(Sr1-xBax0.98Eu0.022SiO4-yy系の黄色−緑色蛍光体であった。換言するならば、これらの典型的な組成におけるアルカリ土類成分(A1及びA2)がSr及びBaであり、それがEu2+活性化システムであり、これらの組成に選択されるDアニオンがF及びClであるということが当業者には理解されよう。本開示では一貫して「D」をアニオンとして参照するが、カチオンを構造に組み入れることも可能である。このような組成物の結果は、リンの包含を塩素及びフッ素の場合に得られた結果と比較する図5にも示されている。
【0028】
Dアニオンドーパント(Dは、例示的な組成ではフッ素(F)である)を蛍光体に包含する効果が図3〜5に示されている。図3を参照すると、組成[(Sr0.7Ba0.30.98Eu0.022SiO4-xxに関して一連の6種の組成物(フッ素のモル%はそれぞれ0、3.2、13.5、9.0、16.8及び19.0であった)からの発光スペクトルが記録されている。この実験における励起放射線の波長は450nmであり、したがって、この青色LEDからの光が、その後に発される白色光照明に寄与するものと考えることができる。図3の結果は、組成物をフッ素で約10モル%の濃度までドーピングすることによってこの蛍光体からの発光強度が有意に増大することを示す。約10モル%から、フッ素濃度がさらに増すにつれ、強度は低下し始める。
【0029】
図3からのデータは、少し異なる方法でプロットすることもできる。各ピークの最大値における発光強度の値は、図4の三角形記号を使用するFに関して示すように、フッ素含有量の関数としてプロットすることができる。たとえば、最高の強度を示す図3の曲線は、9モル%のフッ素を含有する組成物の場合に得られるため、図4におけるFイオン曲線の最高点は、x軸上でも同じく9モル%の位置で得られる。図4を興味深いものにするもの(及びデータをこのようにプロットする理由)は、このようなプロットが異なるDアニオンを比較することを可能にすることである。図4を参照すると、正規化されたピーク発光強度がアニオンフッ素(三角形)、塩素(丸)及びリン(四角形)のアニオンドーピング関数としてプロットされている。この場合もまた、ホスト蛍光体は、シリケートを、それぞれ0.7及び0.3のモル比のSr及びBaアルカリ土類成分とともに含むものであった。
【0030】
図4のデータは、研究対象のこの特定のシステムにおいてフッ素アニオンが発光強度をP及びClの場合よりも高めることができることを示す。F及びP組成物がいずれも約9モル%でピークを迎えたが、Clの発光強度は9〜17モル%の範囲で比較的一定であり、9〜17モル%範囲でわずかな増大しか示さなかったということは興味深い。また、Cl及びP組成物によって提供される増大は、最適化濃度での正規化された強度において約40〜50%という有意さであるが、F組成物が示した100%という非常に大きい増強のせいで、その利点が有意に思えないかもしれないことに留意されたい。さらには、この場合、一定範囲の組成(たとえば、9〜17モル%の範囲のCl含有量)の発光の比較的一定の性質のせいで製造の困難さ及び/又は含有量の許容差における矛盾を無視することができるという、Cl組成物の比較的フラットな曲線によって提供される利点があるかもしれない。
【0031】
一連のDアニオン又はカチオン(この場合、F、Cl又はP)組成物に関して正規化ピーク発光強度をドーピング濃度の関数としてプロットすることができるように、ピーク発光が起こるところの波長を波長の関数としてプロットすることもできる。このデータは、同じく[(Sr0.7Ba0.30.98Eu0.022SiO4-xx(式中、Dは、F、Cl又はPアニオンである)系の組成物に関する図5にも示されている。前記と同様に、励起放射線の波長は約450nmであった。図5の結果は、ピーク発光波長が、Pの濃度とで有意には変化しないが、F及びClの場合には、ドーパント濃度の増大とともに約2〜4モル%の値まで低下し、その後、定常的に増大することを示す。図6は、本発明のシリケート系蛍光体中のフッ素含有量によって影響を受ける、約450nmの励起波長で試験した典型的な蛍光体からの励起(吸収)スペクトルの例である。これもまた、フッ素が、特に約400nm〜500nmの波長範囲に関して、シリケート蛍光体の励起スペクトルを劇的に変化させたことを明らかに示す。わずか約10%(モル%)のフッ素濃度の増大で青色LEDの励起波長430〜490nmにおける励起強度の100%増大が達成されたため、これは、白色LED用途に対して多大な影響を及ぼす。
【0032】
Dアニオン成分を蛍光体に含める効果は図3〜5で論じられた。アルカリ土類成分の効果の開示に進む前に、Dアニオンが組成中で演じる役割を簡潔に記載する。
【0033】
本発明の一つの実施態様は、式(2−x−y)SrO・x(Bau、Cav)O・(1−a−b−c−d)SiO2・aP25bAl23cB23dGeO2:yEu2+(式中、0≦x<1.6、0.005<y<0.5、x+y≦1.6、0≦a、b、c、d<0.5、u+v=1)の組成物が特別に除外されるという条件を含む。
【0034】
本発明のもう一つの実施態様は、式(2−x−y)BaO・x(Sru、Cav)O・(1−a−b−c−d)SiO2・aP25bAl23cB23dGeO2:yEu2+(式中、0.1≦x<1.6、0.005<y<0.5、0≦a、b、c、d<0.5、u+v=1、u・v≧0.4)の組成物が特別に除外されるという条件を含む。
【0035】
イオンドーパント(D)が黄色蛍光体において演じる役割
蛍光体へのアニオンDの包含の効果が、フッ素含有量が異なる典型的な黄色蛍光体の発光スペクトルの集合を示す図3によって強調されている。実験で使用した励起放射線の波長は約450nmであった。一つの実施態様では、フッ素はNH4Fドーパントの形態で蛍光体組成物に加えられる。本発明者らは、NH4Fドーパントの量が非常に小さい(約1%)とき、ピーク発光は短めの波長に位置し、より多くNH4Fが加えられるにつれ、波長がドーパント量とともに増大するということを見いだした。Euドープされた蛍光体のルミネセンスは、4f65d1から4f7への電子遷移を経る、化合物中のEu2+の存在によるものである。発光バンドの波長位置は、ホストの材料又は結晶構造に多分に依存して、スペクトルの近UV領域から赤色領域まで変化する。この依存性は、5dレベルの結晶場分裂によるものと解釈されている。結晶場強度が増すにつれ、発光バンドはより長い波長にシフトする。5d−4f遷移のルミネセンスピークエネルギーは、電子間反発を規定する結晶パラメータ、換言するならば、Eu2+カチオンと包囲するアニオンとの間の距離ならびに遠いカチオン及びアニオンまでの平均距離によってもっとも影響を受ける。
【0036】
少量のNH4Fの存在では、フッ素アニオンドーパントは、焼結処理中に主として融剤(フラックス)として機能する。一般に、融剤は、二つの方法のいずれか一方で焼結処理を改善する。第一の方法は、液体焼結機構によって結晶成長を促進する方法であり、第二の方法は、結晶粒子から不純物を吸収、回収し、焼結材料の相純度を高める方法である。本発明の一つの実施態様では、ホスト蛍光体は(Sr1-xBax2SiO4である。Sr及びBaはいずれも大きなカチオンである。不純物と見なすことができる、より小さなカチオン、たとえばMg及びCaが存在するかもしれない。したがって、ホスト格子のさらなる精製が、より完全な対称結晶格子及びカチオンとアニオンとの間のより大きな距離を生じさせて、その結果、結晶場強度が弱まる。これが、少量のNH4Fドーピングが発光ピークをより短い波長に移動する理由である。この少量のFドーピングによる発光強度の増大は、欠陥がほとんどない高品質結晶に起因する。
【0037】
NH4Fの量がさらに増すと、F-アニオンのいくつかがO2-アニオンに取って代わり、格子に組み込まれる。電荷の中性を維持するため、カチオン空位が形成される。カチオン位置の空位はカチオンとアニオンとの間の平均距離を減らすため、結晶場強度が増す。したがって、カチオン空位の増加によってNH4F含有量が増すにつれ、発光曲線のピークはより長い波長に移動する。発光波長は、結晶場強度によってのみ決まる基底状態と励起状態との間のエネルギーギャップと密接に関連する。フッ素及び塩素による発光波長増大の結果は、フッ素又は塩素がホスト格子中におそらくは酸素の格子点に取って代わって組み込まれることの強い証拠である。他方、リンイオンの添加は、予想どおり、発光波長を実質的に変化させない。これもまた、リンイオンがカチオンとして作用し、酸素に取って代わらず、したがって、容易には格子に組み込まれず、ホスト材料の結晶場強度を変化させないという証拠である。これは特に、本質的に酸素の格子点からなるEu2+イオンを取り囲む結晶場に当てはまる。NH42PO4を加えることによって得られる発光強度の改善は、それが上述のように融剤として働くことを示す。
【0038】
図6に示すような、フッ素含有シリケートと非フッ素含有シリケートとを比較する励起スペクトルが、本ハロゲン化物含有シリケート蛍光体の本実施態様においてフッ素が演じる重要な役割をさらに確認させた。図6に示す励起スペクトルは、540nmの波長における発光強度を励起波長に対してプロットすることによって得られる。励起強度は吸収と密接に関連し、励起レベルと基底レベルとの間の励起及び伝達確率によって決まる。シリケート蛍光体へのフッ素の導入による400nm超での励起強度の劇的な増大もまた、フッ素がシリケート格子に組み込まれ、Eu2+の対称な包囲構造を非対称構造へと劇的に変化させ、それが、発光状態と基底状態との間の発光及び伝達の確率を直接的に高めたことを示す。図6から、当業者は、シリケート蛍光体中約10モル%のフッ素が、白色LED用途にとってもっとも重要である450〜480nmの励起波長で、非フッ素含有シリケート蛍光体の発光強度を約100%高めることができることを理解するであろう。
【0039】
図3に示すように、ハロゲン化物濃度が10モル%を超えると、発光強度は、低下するか、横ばい状態になる。これは、格子へのフッ素組み込みに伴って導入される欠陥が多くなればなるほど、より多くの非放射線中心が生成されて、Eu2+有効発光中心に移される吸収エネルギーを減らすという事実によるEu発光の消光によって説明することができる。図3の結果は、Eu発光の消光なしでのフッ素による最大強度増大が約10モル%であることを示す。
【0040】
アルカリ土類成分の効果
先に論じた方法に加えて、蛍光体に含まれるアルカリ土類元素の比率を調節することにより、本発明の黄色蛍光体の光学的性質を制御することができる。本発明概念のこの実施態様を定位置に配する典型的なデータセットが図7に示されている。しかし、図7に転じる前に、考慮されるアルカリ土類がSr、Ba、Ca及びMgである場合に、それ自体が光学的性質に影響する蛍光体の結晶構造に対する典型的なアルカリ土類の一般的効果を論じることが有用であるかもしれない。
【0041】
本発明者らは、ルミネセンス特性を高めるための組成空間(Sr1-x-y-zBaxCayMgz2SiO4(式中、x+y+z=1)の調査を完了した。この場合、ある特定の対象は、青色励起によって緑色ないし黄色の光を発するように構成された材料を最適化することであった。本発明の組成物は、発光波長を所望の緑色ないし黄色領域に制御しながら発光強度を改善する。図7は、[(Sr0.7Ba0.30.98Eu0.022SiO3.90.1系に属する典型的な黄色−緑色蛍光体の発光スペクトルのグラフであり、一連の蛍光体のストロンチウム含有量の値は0〜12、25、37、50、60、65、70、80、90及び100%で異なる。もう一つのやり方でのプロットは、式Sr1-xBaxのxの値が0、0.1、0.2、0.3、0.35、0.4、0.5、0.63、0.75、0.87及び1.0の範囲である。同じく比較のためのプロットしたものは、従来技術のYAG:Ce蛍光体である。シリケート蛍光体のルミネセンス特性に対するアルカリ金属の効果の本研究は次のように要約することができる。
【0042】
(1)(Sr1-xBax2SiO4蛍光体材料では、発光ピーク波長は、図7に示すように、x=1(Ba100%)の場合の500nmの緑色からx=0(Sr100%)の場合の580nmの黄色まで変化する。同じ光源からの450nmでの転換効率は、Baが0から約90%まで増大するとき、連続的な増加を示す。Srに対するBaの比が0.3〜0.7であるときに得られる545nmのピーク発光波長は、図7で比較するように、純粋なYAG:Ceピーク発光波長に近い。
【0043】
(2)Sr−Ba系シリケート蛍光体システムにおけるバリウム又はストロンチウムのカルシウム置換は一般に発光強度を下げ、カルシウム置換が40%未満であるとき発光をより長い波長に移動させるために有利に働くことさえある。
【0044】
(3)Sr−Ba系シリケート蛍光体におけるバリウム又はストロンチウムのマグネシウム置換は一般に発光強度を下げ、発光をより短い波長に移動させる。しかし、バリウム又はストロンチウムの少量のマグネシウム置換(<10%)は発光強度を高め、発光をより長い波長に移動させる。たとえば、(Sr0.9Ba0.12SiO4におけるマグネシウムによるバリウムの5%の置換は、図7で[(Sr0.9Ba0.075Mg0.0250.98Eu0.022SiO3.90.1と標識した曲線に関して示すように、発光強度を高め、わずかに長い波長に移動させる。
【0045】
(4)YAG発光スペクトルに匹敵する、又はそれを上回るためには、本発明のいくつかの実施態様で、本発明のシリケート蛍光体を混合することが望ましいかもしれない。図8は、[(Sr0.7Ba0.30.98Eu0.022SiO3.90.140%と[(Sr0.9Ba0.05Mg0.050.98Eu0.022SiO3.90.160%とを混合することによってYAGと実質的に同一のCIEカラーを調製することができることを示す。この混合物の合計輝度は、YAG組成物のほぼ90%の輝度であると推定される。
【0046】
蛍光体に対する温度及び湿度の効果
選択された蛍光体材料システムによるLED発光の他の波長の発光への部分的又は完全な転換に基づく白色LEDのような蛍光体系照明素子にとって、ルミネセンス特性に対する温度及び湿度の効果は非常に重要である。このような蛍光体系放射線素子の作動温度範囲は特定の要件に依存する。市販の電子用途の場合、85℃までの安定な温度が一般に求められる。しかし、高出力LED用途の場合には、180℃までの温度が望ましい。ほぼすべての市販の電子用途の場合、0〜100%の全湿度範囲にわたる安定性が求められる。
【0047】
図9〜11は、典型的なフッ素含有シリケート蛍光体(Sr0.7Ba0.3Eu0.021.95Si1.023.90.1に関して、最大ルミネセンス強度を温度の関数又は異なる温度での波長の関数としてプロットしたものである。この特定の蛍光体は、先に示した異なる温度で測定した一連の発光スペクトルから導出した。本発明の蛍光体の温度安定性は、特に100℃まででは、市販のYAG蛍光体の温度安定性と非常に似た挙動を示す。図12は、約20〜100%の範囲の湿度での本発明の蛍光体の安定性のグラフを示す。どの一つの理論に拘束されることもなく、本発明者らは、90%を超える湿度における発光最大強度の3%の増大の理由がこの時点では不明であるが、湿度が約90%〜100%の値の間で変動するとき、そのような現象が可逆的であると考える。
【0048】
蛍光体製造法
本実施態様の新規なシリケート系蛍光体を製造する方法は、一つの製造方法に限定されず、たとえば、1)出発原料のブレンド、2)出発原料ミックスの焼成、及び3)焼成材料に対して実施される、微粉砕及び乾燥をはじめとする種々の処理を含む3工程法で製造することができる。出発原料は、種々の粉末、たとえばアルカリ土類金属化合物、ケイ素化合物及びユーロピウム化合物の粉末を含むことができる。アルカリ土類金属化合物の例は、アルカリ土類金属の炭酸塩、硝酸塩、水酸化物、酸化物、シュウ酸塩及びハロゲン化物を含む。ケイ素化合物の例は、酸化物、たとえば酸化ケイ素及び二酸化ケイ素を含む。ユーロピウム化合物の例は、酸化ユーロピウム、フッ化ユーロピウム及び塩化ユーロピウムを含む。ゲルマニウムを含有する本発明の新規な黄色−緑色蛍光体のゲルマニウム材料としては、酸化ゲルマニウムのようなゲルマニウム化合物を使用することができる。
【0049】
出発原料は、所望の最終組成が達成されるようなやり方でブレンドする。一つの実施態様では、たとえば、アルカリ土類、ケイ素(及び/又はゲルマニウム)及びユーロピウム化合物を適当な比率でブレンドしたのち、焼成して所望の組成を達成する。ブレンドした出発原料を第二の工程で焼成し、ブレンドした材料の反応性を高めるため(焼成のいずれか又は種々の段階で)、融剤を使用してもよい。融剤は、種々のハロゲン化物及びホウ素化合物を含むことができ、それらの例は、フッ化ストロンチウム、フッ化バリウム、フッ化カルシウム、フッ化ユーロピウム、フッ化アンモニウム、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、塩化ストロンチウム、塩化バリウム、塩化カルシウム、塩化ユーロピウム、塩化アンモニウム、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム及びそれらの組み合わせを含む。ホウ素含有融剤化合物の例は、ホウ酸、酸化ホウ素、ホウ酸ストロンチウム、ホウ酸バリウム及びホウ酸カルシウムを含む。
【0050】
いくつかの実施態様では、融剤化合物は、モル%の数が約0.1〜3.0の範囲であるような量で使用される。値は通常、約0.1〜1.0モル%の範囲であることができる。
【0051】
出発原料(融剤を用いる場合又は用いない場合)を混合するための様々な技術としては、乳鉢の使用、ボールミルを用いる混合、V字形ミキサを用いる混合、クロスロータリーミキサを用いる混合、ジェットミルを使用する混合及び攪拌機を用いる混合がある。出発原料は、ドライ混合してもよいし、湿式混合してもよい。ドライ混合とは、溶媒を使用しない混合をいう。湿式混合法で使用することができる溶媒としては、水又は有機溶媒があり、有機溶媒は、メタノール又はエタノールであることができる。
【0052】
出発原料のミックスは、当該技術で公知の多数の技術によって焼成することができる。電気炉又はガス炉のような加熱器を焼成に使用することができる。加熱器は、出発原料ミックスが所望の温度で所望の時間焼成される限り、特定のタイプに限定されない。実施態様によっては、焼成温度は約800〜1600℃の範囲であることができる。焼成時間は約10分〜1000時間の範囲であることができる。焼成雰囲気は、空気、低圧雰囲気、真空、不活性ガス雰囲気、窒素雰囲気、酸素雰囲気、酸化性雰囲気及び/又は還元性雰囲気の中から選択することができる。焼成のどこかの段階でEu2+イオンを蛍光体に含めなければならないため、実施態様によっては、窒素と水素との混合ガスを使用して還元性雰囲気を提供することが望ましい。
【0053】
本蛍光体を調製するための例示的な方法としては、ゾルゲル法及び固相反応法がある。ゾルゲル法は、粉末蛍光体を製造するために使用することができる。典型的な処理は以下の工程を含むものであった。
【0054】
1.a)特定量のアルカリ土類硝酸塩(Mg、Ca、Sr、Ba)ならびにEu23及び/又はBaF2もしくは他のアルカリ土類金属ハロゲン化物を希釈硝酸に溶解し、
b)対応する量のシリカゲルを脱イオン水に溶解して第二の溶液を調製する工程。
【0055】
2.上記工程1a)及び1b)の二つの溶液の固形分を完全に溶解したのち、二つの溶液を混合し、2時間攪拌した。次いで、アンモニアを使用して混合物溶液中にゲルを生成した。ゲルの形成ののち、pHを約9.0に調節し、ゲル化溶液を約60℃で3時間連続的に攪拌した。
【0056】
3.蒸発によってゲル化溶液を乾燥させたのち、得られた乾燥ゲルを500〜700℃で60分間分解して酸化物を得た。
【0057】
4.冷却後、工程1a)でアルカリ土類金属ハロゲン化物を使用しない場合、特定量のNH4F又は他のアンモニアハロゲン化物と共に粉砕したのち、粉末を還元雰囲気中で約6〜10時間焼結した。焼成/焼結温度は約1200〜1400℃の範囲であった。
【0058】
特定の実施態様では、シリケート系蛍光体のために、固相反応法も使用した。固相反応法に使用される典型的な処理の工程は以下を含むことができる。
【0059】
1.所望の量のアルカリ土類酸化物又は炭酸塩(Mg、Ca、Sr、Ba)と、Eu23及び/又はBaF2もしくは他のアルカリ土類金属ハロゲン化物、対応するSiO2及び/又はNH4Fもしくは他のアンモニアハロゲン化物のドーパントとをボールミルで湿式混合した。
【0060】
2.乾燥させ、粉砕したのち、得られた粉末を還元雰囲気中で約6〜10時間焼成/焼結した。焼成/焼結温度は1200〜1400℃の範囲であった。
【0061】
本蛍光体の調製に関する具体例では、二次イオン質量分光分析(SIMS)を使用して焼結蛍光体[(Sr1-xBax0.98Eu0.022SiO4-yy中のフッ素の濃度を測定した。その結果が図13に示されている。この実験では、フッ素をNH4Fとして蛍光体に加えた。結果は、出発原料中で約20モル%のフッ素モル%の場合、焼結蛍光体では最終的に約10モル%であった。原料中のフッ素の含有量が約75モル%である場合、焼結蛍光体中のフッ素含有量は約18モル%である。
【0062】
白色光照明の製造
本開示のこの最終部分で、本発明の新規な黄色−緑色蛍光体を使用して製造することができる白色光照明を論じる。この最終部分の最初のセクションは、本発明の黄色−緑色蛍光体を励起するために使用することができる例示的な青色LEDの記載で始まる。本黄色−緑色蛍光体が、可視部分の青色部分を含む大きな範囲の波長の光を吸収することができ、そのような光によって励起されることができるということが、図6の励起(吸収)スペクトルによって実証されている。次に、CIE図の一般的説明を、図14に示すようなその図中での本発明の黄色−緑色蛍光体の位置とともに提供する。図1の略図にしたがって、本発明の黄色−緑色蛍光体からの光を青色LEDからの光と組み合わせて白色照明を作ることができる。そのような実験の結果が図15でこのシステムの発光強度対波長のプロットに示されている。白色光の演色性は、図16のスペクトルによって例示されるように、他の蛍光体をシステムに含めることによって調節することができる。あるいはまた、本発明の蛍光体は、緑色をより多く発するように調節し、赤色蛍光体と組み合わせて蛍光体システムを構成させることもでき、その蛍光体システムが青色LEDからの青色光と合わさって図17のスペクトルを生じさせる。最後に、得られた白色光のCIE図が図18に示されている。
【0063】
青色LED放射線源
特定の実施態様では、青色LEDは、約400nm以上かつ約520nm以下の波長範囲で主発光ピークを有する光を発する。この光は二つの目的に役立つ。1)励起放射線を蛍光体システムに提供し、2)青色光を提供し、その光が、蛍光体システムから発される光と合わさって、白色光照明の白色光を構成する。
【0064】
特定の実施態様では、青色LEDは、約420nm以上かつ約500nm以下の光を発する。さらに別の実施態様では、青色LEDは、約430nm以上かつ約480nm以下の光を発する。青色LEDの波長は450nmであることができる。
【0065】
本明細書では、本実施態様の青色発光素子を総称的に「青色LED」と記すが、当業者には、青色発光素子は、青色発光ダイオード、レーザダイオード、面発光レーザダイオード、共振空洞発光ダイオード、無機エレクトロルミネセンス素子及び有機エレクトロルミネセンス素子の少なくともいずれかであればよい(いくつかが同時に作動することも考えられる)ということが理解されよう。青色発光素子が無機素子であるならば、それは、窒化ガリウム系化合物半導体、セレン化亜鉛半導体及び酸化亜鉛半導体からなる群より選択される半導体であることができる。
【0066】
図6は、本黄色−緑色蛍光体の励起スペクトルであり、これら新規な蛍光体が約280〜520nmの範囲の放射線及び、本実施態様に該当して、約400〜520nmの範囲の放射線を吸収することができることを示す。本発明の好ましい実施態様では、新規な黄色−緑色蛍光体は、430〜480nmの範囲の放射線を吸収する(換言するならば、放射線によって励起されることができる)。さらに別の実施態様では、蛍光体は、約450nmの波長を有する放射線を吸収する。
【0067】
次に、CIE図の一般的説明を、そのCIE図中で本発明の黄色−緑色蛍光体がどこに現れるかの説明とともに提供する。
【0068】
CIE図における色度座標及びCRI
白色光照明は、電磁スペクトルの、およそ400〜700nmを占める可視部分からの異なる又はいくつかの単色を混合することによって構成される。人の眼は、約475〜650nmの領域に非常に敏感である。LEDのシステム又は短波長LEDによってポンピングされる蛍光体のシステムから白色光を生成するためには、少なくとも二つの相補的光源からの光を適切な強度比で混合することが必要である。色混合の結果は一般にCIE「色度図」に表示され、図中、単色が図の周辺部に位置し、白が中心に位置する。したがって、目的は、得られる光を図の中心の座標にマッピングすることができるように色をブレンドすることである。
【0069】
もう一つの用語は、白色光照明のスペクトル特性を表すために使用される「色温度」である。この語は、「白色光」LEDの物理的意味を有しないが、白色光の色座標を黒体放射線源によって達成される色座標に関連させるために当該技術で使用される。高色温度LED対低色温度LEDがwww.korry.comで示されている。
【0070】
色度(CIE色度図上の色座標)がSrivastavaらによって米国特許第6,621,211号に記載されている。上記の従来技術の青色LED−YAG:Ce蛍光体白色光照明システムの色度は、いわゆる「黒体軌跡」又はBBLに隣接して6000〜8000Kの温度に位置する。BBLに隣接する色度座標を示す白色光照明システムは、プランクの放射公式に準じ(同特許の第一カラム60〜65行目に記載)、そのようなシステムは観測者にとって心地よい白色光を発するため、望ましい。
【0071】
演色指数(CRI)は、照明システムが黒体放射体のそれとどのように対比するかの相対的測度である。白色光照明システムによって照らされる試験色のセットの色座標が、黒体放射体による照射を受ける同じ試験色のセットによって生成される座標と同じであるならば、CRIは100に等しい。
【0072】
ここで本黄色−緑色蛍光体に転じると、新規な蛍光体の様々な例示的な組成物を450nmの放射線で励起した。それらの発光のCIE図上での位置が図14に示されている。また、450nmの励起光の位置及び比較のためのYAG:Ce蛍光体の位置が示されている。
【0073】
好都合なことに、これらの典型的な蛍光体の黄色ないし黄緑色を上記青色LEDからの青色光と混合して(青色光は、一つの実施態様では約400〜520nmの範囲の波長を有し、もう一つの実施態様では430〜480nmの範囲の波長を有する)多様な用途に望まれる白色光照明を構成することができる。図15は、青色LEDからの光を典型的な黄色蛍光体、この場合は式
(Sr0.7Ba0.3Eu0.021.95Si1.023.90.1
で示される黄色蛍光体と混合した結果を示す。
【0074】
本黄色−緑色蛍光体を他の蛍光体とともに蛍光体システムの一部として使用することができ、その結果、蛍光体システムの各蛍光体から発される光を青色LEDからの青色光と組み合わせて、代替の色温度及び演色性を有する白色光を構成することができることが当業者によって理解されよう。特に、従来技術ですでに開示されている緑色、オレンジ色及び/又は赤色蛍光体を本黄色−緑色蛍光体と組み合わせることができる。
【0075】
たとえば、Bognerらへの米国特許第6,649,946号は、450nmで発光する青色LEDによって励起することができる、ホスト格子としてのアルカリ土類窒化ケイ素材料に基づく黄色ないし赤色蛍光体を開示している。赤色ないし黄色発光蛍光体は、ニトリドシリケートタイプMxSiyz:Eu(式中、Mは、Ca、Sr及びBaの群より選択されるアルカリ土類金属の少なくとも一つであり、z=2/3x+4/3yである)のホスト格子を使用する。材料組成の一例はSr2Si58:Eu2+である。そのような赤色ないし黄色蛍光体の使用が、青色発光原色光源ならびに一つ以上の赤色及び緑色蛍光体とともに開示されている。このような材料の目的は、赤色の演色R9を改善する(演色性を赤色シフトに調節する)こと及び全体的な演色Raが改善された光源を提供することであった。
【0076】
本黄色−緑色蛍光体とともに使用することができる赤色蛍光体を含む補足的蛍光体の開示のもう一つの例は、470nmのピーク波長を有する青色LEDからの第一次光を受け、可視光スペクトルの赤色スペクトル領域で光を放射する(補足的な)蛍光材料を有する発光素子を開示したMueller-Machへの米国特許出願第2003/0006702号に見られる。補足的な蛍光材料は、主蛍光材料とともに使用されて、複合出力光の赤色成分を増大させ、それにより、白色出力光演色性を改善する。第一の実施態様では、主蛍光材料は、Ce活性化され、Gdドープされたイットリウムアルミニウムガーネット(YAG)であり、補足的蛍光材料は、YAG主蛍光材料にPrをドープすることによって製造される。第二の実施態様では、補足的蛍光材料はEu活性化SrS蛍光体である。赤色蛍光体は、たとえば、(SrBaCa)2Si58:Eu2+であることができる。主蛍光材料(YAG蛍光体)は、青色LEDからの第一次光に応答して黄色光を発する性質を有する。補足的な蛍光材料は、青色LEDからの青色光及び主蛍光材料からの黄色光に赤色光を加える。
【0077】
Ellensらへの米国特許第6,504,179号は、青−黄−緑(BYG)色を混合することに基づく白色LEDを開示している。黄色発光蛍光体は、希土類Y、Tb、Gd、Lu及び/又はLaのCe活性化ガーネットであり、YとTbとの組み合わせが好ましかった。一つの実施態様では、黄色蛍光体は、テルビウムアルミニウムガーネット(TbAG)にセリウムをドープしたもの(Tb3Al512−Ce)であった。緑色発光蛍光体は、Euでドープされ、おそらくは、Mnのようなさらなるドーパントを含むCaMgクロロシリケートフレームワーク(CSEu)からなるものであった。代替緑色蛍光体はSrAl24:Eu2+及びSr4Al1425:Eu2+であった。
【0078】
新規な黄色−緑色蛍光体は、緑色及び黄色蛍光体(Tb3Al512−Ce)と組み合わせて使用することもできる。
【0079】
Srivastavaらへの米国特許第6,621,211号は、非可視性UV LEDを使用して白色光を発する方法を開示している。この特許は、蛍光体システムで使用される補足的な緑色、オレンジ色及び/又は赤色蛍光体の使用を記載している。この方法で発される白色光は、以下のタイプの3種の蛍光体及び場合によっては第四の蛍光体に作用する非可視性放射線によって生成されたものである。第一の蛍光体は、575〜620nmのピーク発光波長を有するオレンジ色光を発し、好ましくは、式A227:Eu2+、Mn2+のユーロピウム及びマンガンドープしたアルカリ土類ピロリン酸塩蛍光体を含むものであった。あるいはまた、オレンジ色蛍光体の式は、(A1-x-yEuxMny227(式中、0<x≦0.2、0<y≦0.2)と書くこともできる。第二の蛍光体は、495〜550nmでピーク発光波長を有する青緑色の光を発し、二価ユーロピウム活性化アルカリ土類シリケート蛍光体ASiO:Eu2+(式中、Aは、Ba、Ca、Sr又はMbの少なくとも一つを含むものであった)である。第三の蛍光体は、420〜480nmのピーク発光波長を有する青色光を発し、二つの市販の蛍光体「SECA」D5(PO43Cl:Eu2+(式中、Dは、Sr、Ba、Ca又はMgの少なくとも一つであった)又はAMg2Al1627(式中、Aは、Ba、Ca又はSrの少なくとも一つを含むものであった)もしくはBaMgAl1017:Eu2+と書くことができる「BAM」のいずれかを含むものであった。場合によって使用される第四の蛍光体は、620〜670nmのピーク発光波長を有する赤色光を発し、フルオロゲルマニウム酸マグネシウム蛍光体MgO*MgF*GeO:Mn4+を含むことができる。
【0080】
本発明の黄色蛍光体と他の蛍光体との組み合わせ
本発明の一つの実施態様では、約430nm〜480nmの範囲の発光ピーク波長を有するGaN系青色LEDを約540nm〜580nmの範囲の発光ピーク波長を有する本発明の黄色蛍光体と組み合わせて使用して白色照明素子を構築することができる。図15は、青色LED及び本発明の黄色蛍光体層からなる白色照明素子から測定した組み合わせスペクトルである。転換効率及び素子に使用される蛍光体の量がCIE図中の白色光照明素子の色座標を決定する。この場合、青色LEDからの光を本発明の黄色蛍光体からの光と組み合わせることにより、Xが0.25〜0.40の範囲であり、Yが0.25〜0.40の範囲である色座標で約5,000〜10,000Kの色温度を達成することができる。
【0081】
もう一つの実施態様では、約430nm〜480nmの範囲の発光ピーク波長を有するGaN系青色LED、約540nm〜580nmの範囲の発光ピーク波長を有する本発明の黄色蛍光体及び約500nm〜520nmの範囲の発光ピーク波長を有する本発明の緑色蛍光体を使用して白色照明素子を構築することができる。得られる白色光の演色性は、緑色蛍光体と黄色蛍光体とを混合するこの解決方法によって改善された。図16は、青色LEDからの光ならびに本発明の黄色及び緑色蛍光体の混合物からの光を含む白色照明素子から測定した組み合わせスペクトルである。転換効率及び素子に使用される蛍光体の量がCIE図中の白色光照明素子の色座標を直接決定する。この場合、青色LEDからの光を本発明の黄色及び緑色蛍光体の混合物からの光と組み合わせることにより、80を超える演色性で5,000〜7,000Kの色温度を達成した。
【0082】
もう一つの実施態様では、約430nm〜480nmの範囲の発光ピーク波長を有するGaN系青色LED、約530nm〜540nmの範囲の発光ピーク波長を有する本発明の緑色蛍光体及び600nm〜670nmの範囲の発光ピーク波長を有する市販の赤色蛍光体、たとえばEuドープCaSを使用することによって白色照明素子を構築することができる。ここで開示した緑色及び赤色蛍光体を使用して、色温度を3,000Kに調節し、演色性を約90を超える値まで高めることができる。図17は、青色LEDならびに本発明の緑色及びCaS:Eu蛍光体の混合物を含む白色照明素子から測定した組み合わせスペクトルである。転換効率及び素子に使用される蛍光体の量がCIE図中の白色光照明素子の色座標を直接決定する。この場合、青色LEDからの光を本発明の赤色及び緑色蛍光体システムの混合物からの光と組み合わせることにより、85を超える演色性で2,500〜4,000Kの色温度を達成することができる。図18は、得られた白色光照明のCIE図上の位置を示す。
【0083】
上記で開示した発明の例示的な実施態様の多くの改変が当業者には容易に想到されよう。したがって、本発明は、請求の範囲に入るすべての構造及び方法を包含するものと解釈されなければならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式A2SiO4:Eu2+Dで示され、式中、
Aは、Sr、Ca、Ba、Mg、Zn及びCdからなる群より選択される二価金属の少なくとも一つであり、
Dは、F、Cl、Br、I、P、S及びNからなる群より選択されるドーパントであり、蛍光体中、約0.01〜20モル%の範囲の量で存在する、
シリケート系黄色−緑色蛍光体。
【請求項2】
前記蛍光体が、約280nm〜490nmの範囲の波長の放射線を吸収するように構成されている、請求項1記載のシリケート系蛍光体。
【請求項3】
前記蛍光体が、約460nm〜590nmの範囲の波長を有する可視光を発する、請求項1記載のシリケート系蛍光体。
【請求項4】
前記蛍光体が、式(Sr1-x-yBaxy2SiO4:Eu2+Dで示され、式中、Mは、Ca、Mg、Zn及びCdからなる群より選択される元素の少なくとも一つであり、
0≦x≦1、
MがCaである場合、0≦y≦1、
MがMgである場合、0≦y≦1、及び
MがZn及びCdからなる群より選択される場合、0≦y≦1である、
請求項1記載のシリケート系蛍光体。
【請求項5】
DがFである、請求項1記載のシリケート系蛍光体。
【請求項6】
前記蛍光体が、式(Sr1-x-yBaxy2SiO4:Eu2+Fで示され、式中、
Mは、Ca、Mg、Zn、Cdからなる群より選択される元素の少なくとも一つであり、
0≦x≦0.3、
MがCaである場合、0≦y≦0.5、
MがMgである場合、0≦y≦0.1、及び
MがZn及びCdからなる群より選択される場合、0≦y≦0.5である、
請求項1記載のシリケート系蛍光体。
【請求項7】
前記蛍光体が、電磁スペクトルの黄色領域で光を発し、約540〜590nmの範囲のピーク発光波長を有する、請求項6記載のシリケート系蛍光体。
【請求項8】
前記蛍光体が、式(Sr1-x-yBaxy2SiO4:Eu2+Fで示され、式中、
Mは、Ca、Mg、Zn及びCdからなる群より選択される元素の少なくとも一つであり、
0.3≦x≦1、
MがCaである場合、0≦y≦0.5、
MがMgである場合、0≦y≦0.1、及び
MがZn及びCdからなる群より選択される場合、0≦y≦0.5である、
請求項1記載のシリケート系蛍光体。
【請求項9】
前記蛍光体が、電磁スペクトルの緑色領域で光を発し、約500〜530nmの範囲のピーク発光波長を有する、請求項8記載のシリケート系蛍光体。
【請求項10】
約410nm〜500nmの範囲の波長を有する放射線を発するように構成された放射線源と、
前記放射線源からの前記放射線の少なくとも一部を吸収し、約530〜590nmの範囲の波長でピーク強度を有する光を発するように構成された、請求項7記載の黄色蛍光体と
を含む白色LED。
【請求項11】
約410〜約500nmの範囲の波長を有する放射線を発するように構成された放射線源と、
前記放射線源からの前記放射線の少なくとも一部を吸収し、約530〜590nmの範囲の波長でピーク強度を有する光を発するように構成された、請求項7記載の黄色蛍光体と、
前記放射線源からの前記放射線の少なくとも一部を吸収し、約500〜540nmの範囲の波長でピーク強度を有する光を発するように構成された、請求項9記載の緑色蛍光体と、
を含む白色LED。
【請求項12】
約410nm〜500nmの範囲の波長を有する放射線を発するように構成された放射線源と、
前記放射線源からの前記放射線の少なくとも一部を吸収し、約500〜540nmの範囲の波長でピーク強度を有する光を発するように構成された、請求項9記載の緑色蛍光体と、
前記放射線源からの前記放射線の少なくとも一部を吸収し、約590〜690nmの範囲の波長でピーク強度を有する光を発するように構成された、CaS:Eu2+、SrS:Eu2+、MgO*MgF*GeO:Mn4+及びMxSiyz:Eu+2からなる群より選択され、式中、Mは、Ca、Sr、Ba及びZnからなる群より選択され、z=2/3x+4/3yである赤色蛍光体と、
を含む白色LED。
【請求項13】
約410nm〜500nmの範囲の波長を有する放射線を発するように構成された放射線源と、
前記放射線源からの前記放射線の少なくとも一部を吸収し、約540〜590nmの範囲の波長でピーク強度を有する光を発するように構成された、請求項7記載の黄色蛍光体と、
前記放射線源からの前記放射線の少なくとも一部を吸収し、約590〜690nmの範囲の波長でピーク強度を有する光を発するように構成された、CaS:Eu2+、SrS:Eu2+、MgO*MgF*GeO:Mn4+及びMxSiyz:Eu+2からなる群より選択され、式中、Mは、Ca、Sr、Ba及びZnからなる群より選択され、z=2/3x+4/3yである赤色蛍光体と、
を含む白色LED。
【請求項14】
式A2SiO4:Eu2+Dで示され、式中、Aは、Sr、Ca、Ba、Mg、Zn及びCdからなる群より選択される少なくとも一つの二価金属であり、Dは、黄色蛍光体中、約0.01〜20モル%の範囲の量で存在するイオンである、シリケート系黄色蛍光体と、
青色蛍光体と、
を含み、前記黄色蛍光体が、約540nm〜590nmの範囲の波長でピーク強度を有する可視光を発するように構成されており、前記青色蛍光体が、約440〜510nmの範囲の波長でピーク強度を有する可視光を発するように構成されている組成物。
【請求項15】
前記青色蛍光体が、シリケート系蛍光体及びアルミネート系蛍光体からなる群より選択される、請求項14記載の組成物。
【請求項16】
前記シリケート系青色蛍光体が、式Sr1-x-yMgxBaySiO4:Eu2+Fで示され、
式中、
0.5≦x≦1.0、及び
0≦y≦0.5である、
請求項15記載の組成物。
【請求項17】
前記アルミネート系青色蛍光体が、式(SrxBa1-x1-yMgEuyAl1017で示され、式中、
0.01<x<0.99、0.01<y≦1.0である、
請求項15記載の組成物。
【請求項18】
式A2SiO4:Eu2+Hで示され、式中、Aは、Sr、Ca、Ba、Mg、Zn及びCdからなる群より選択される二価金属の少なくとも一つであり、Hは、黄色蛍光体中、約0.01〜20モル%の範囲の量で存在する負電荷を有するハロゲンイオンである、シリケート系緑色蛍光体と、
青色蛍光体と、
赤色蛍光体と
を含み、前記緑色蛍光体が、約500nm〜540nmの範囲の波長でピーク強度を有する可視光を発するように構成されており、前記青色蛍光体が、約480〜510nmの範囲の波長でピーク強度を有する可視光を発するように構成されており、前記赤色蛍光体が、約775〜620nmの範囲の波長でピーク強度を有する可視光を発するように構成されている組成物。
【請求項19】
式A2SiO4:Eu2+Dで示され、式中、
Aは、Sr、Ca、Ba、Mg、Zn及びCdからなる群より選択される二価金属の少なくとも一つであり、
Dは、F、Cl、Br、I、P、S及びNからなる群より選択されるドーパントであり、蛍光体中、約0.01〜20モル%の範囲の量で存在する、
シリケート系黄色蛍光体を調製する方法であって、ゾルゲル法及び固相反応法からなる群より選択される方法。
【請求項20】
前記ゾルゲル法が、
a)Mg、Ca、Sr及びBa含有硝酸塩からなる群より選択される所望の量のアルカリ土類硝酸塩を、Eu23及びBaF2又は他のアルカリ金属ハロゲン化物からなる群より選択される化合物とともに、酸に溶解して第一の溶液を調製する工程と、
b)対応する量のシリカゲルを脱イオン水に溶解して第二の溶液を調製する工程と、
c)工程a)及びb)で製造した溶液をいっしょに攪拌したのち、アンモニアを加えて混合溶液からゲルを生成する工程と、
d)工程c)で製造した溶液のpHを約9の値に調節したのち、溶液を約60℃で約3時間、連続して攪拌する工程と、
e)工程d)のゲル化溶液を蒸発によって乾燥させたのち、得られた乾燥ゲルを500〜700℃で約60分間分解させて酸化生成物を得る工程と、
f)工程e)のゲル化溶液を冷却し、工程a)でアルカリ土類ハロゲン化物が使用されない場合、NH4F又は他のアンモニアハロゲン化物と共に粉砕して粉末を製造する工程と、
g)工程f)の粉末を、還元雰囲気中、約1200〜1400℃の範囲の焼結温度で約6〜10時間焼成/焼結する工程と、
を含む、請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記固相反応法が、
a)所望の量のアルカリ土類酸化物又は炭酸塩(Mg、Ca、Sr、Ba)と、Eu23及び/又はBaF2もしくは他のアルカリ土類金属ハロゲン化物、対応するSiO2及び/又はNH4Fもしくは他のアンモニアハロゲン化物のドーパントとをボールミルで湿式混合する工程と、
b)乾燥及び粉砕ののち、得られた粉末を、還元雰囲気中、約1200〜1400℃の範囲の焼成/焼結温度で約6〜10時間焼成及び/又は焼結する工程と
を含む、請求項19記載の方法。
【請求項22】
式A2SiO4:Eu2+Dで示され、式中、
Aは、Sr、Ca、Ba、Mg、Zn及びCdからなる群より選択される二価金属の少なくとも一つであり、
Dは、F、Cl、Br、I、S及びNからなる群より選択されるドーパントであり、蛍光体中、約0.01〜20モル%の範囲の量で存在する、
シリケート系黄色−緑色蛍光体。
【請求項23】
式A2SiO4:Eu2+Dで示され、式中、
Aは、Sr、Ca、Ba、Mg、Zn及びCdからなる群より選択される二価金属の少なくとも一つであり、
Dは、F、Cl、Br、I、S及びNからなる群より選択されるドーパントであり、蛍光体中、約0.01〜20モル%の範囲の量で存在する、
シリケート系黄色蛍光体を調製する方法であって、ゾルゲル法及び固相反応法からなる群より選択される方法。
【請求項24】
式A2SiO4:Eu2+Dで示され、式中、
Aは、Sr、Ca、Ba、Mg、Zn及びCdからなる群より選択される二価金属の少なくとも一つであり、
Dは、F、Cl、Br、I、S及びNからなる群より選択されるドーパントであり、蛍光体中、約0.01〜20モル%の範囲の量で存在し、
ただし、
式(2−x−y)SrO・x(Bau、Cav)O・(1−a−b−c−d)SiO2・aP25bAl23cB23dGeO2:yEu2+であり、式中、0≦x<1.6、0.005<y<0.5、x+y≦1.6、0≦a、b、c、d<0.5、u+v=1である組成物が特別に除外される、
シリケート系黄色−緑色蛍光体。
【請求項25】
式A2SiO4:Eu2+Dで示され、式中、
Aは、Sr、Ca、Ba、Mg、Zn及びCdからなる群より選択される二価金属の少なくとも一つであり、
Dは、F、Cl、Br、I、S及びNからなる群より選択されるドーパントであり、蛍光体中、約0.01〜20モル%の範囲の量で存在し、
ただし、
式(2−x−y)BaO・x(Sru、Cav)O・(1−a−b−c−d)SiO2・aP25bAl23cB23dGeO2:yEu2+であり、式中、0.1≦x<1.6、0.005<y<0.5、0≦a、b、c、d<0.5、u+v=1、u・v≧0.4である組成物が特別に除外される、
シリケート系黄色−緑色蛍光体。
【請求項26】
式(A1-xEux2Si(O1-yy4で示され、式中、
Aは、Sr、Ca、Ba、Mg、Zn及びCdからなる群より選択される二価金属の少なくとも一つであり、
Dは、F、Cl、Br、I、S及びNからなる群より選択されるドーパントであり、
0.001<x<0.10、0.01<y<0.2である、
シリケート系黄色−緑色蛍光体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−189651(P2010−189651A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−93147(P2010−93147)
【出願日】平成22年4月14日(2010.4.14)
【分割の表示】特願2007−511734(P2007−511734)の分割
【原出願日】平成18年4月4日(2006.4.4)
【出願人】(506358764)インテマティックス・コーポレーション (40)
【氏名又は名称原語表記】INTEMATIX CORPORATION
【Fターム(参考)】