説明

新規なデヒドロアビエチン酸重合体

【課題】天然物であるロジン由来の原料を用いることができ、高耐熱性且つ高耐湿耐水性を有する新規なデヒドロアビエチン酸重合体、及びそれを含有する複合材料の提供。
【解決手段】デヒドロアビエチン酸に由来するデヒドロアビエチン酸骨格を含む繰り返し単位を有するデヒドロアビエチン酸重合体、及びそれを含有する複合材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なデヒドロアビエチン酸重合体に関し、より詳細には、ロジンに含まれる構成成分の一つであるデヒドロアビエチン酸を用いて得られた新規なデヒドロアビエチン酸重合体、及びこれを含有する複合材料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境保護の観点から、資源の脱石油化が検討され、様々な天然資源が注目されている。プラスチックの分野でも脱石油化が図られ、グルコースの発酵により得られる乳酸を原料としたポリ乳酸が包装材料等に広く用いられている。
【0003】
非特許文献1によると、ポリ乳酸は透明性に優れるが、耐熱性が低いため、射出成型等による成型品への適用は高温に曝されない限定的用途に留まっている。
【0004】
また、ポリ乳酸に限らず、非特許文献2、3に示されるように、石油系の汎用ポリマーであるPET(ポリエチレンレテフタレート)やPC(ポリカーボネート)は、高温高湿度あるいは酸性もしくはアルカリ性の環境下では加水分解してしまうため耐湿性が低いことが問題であり、その改良が望まれている。
【0005】
ところで、天然物由来の成分として、松脂等から採取できるロジンがある。このロジンは種々のカルボン酸から構成されるが、そのカルボン酸のうちアビエチン酸を高分子材料に利用することが知られている(特許文献1及び2参照)。
例えば、特許文献1及び2は、アビエチン酸をフェノール樹脂又はエポキシ樹脂の末端部に修飾することにより、ロジン変性フェノール樹脂及びロジン変性エポキシ酸樹脂として塗料等の結合剤とすることを開示している。しかしながら、これらの樹脂は、フェノール樹脂又はエポキシ樹脂を主骨格としているため、石油依存の原料であり、地球環境保護の観点に至っていない。
【0006】
また、アビエチン酸を多価アルコールと重合させた重合体も知られている(特許文献3参照)。しかしながら、特許文献3に記載の重合体は、不規則に重合しゲル化してしまうため、高い分子量の線状重合体とはならない。従って、このような重合体は、成形体等の工業的な用途に利用することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−274150号
【特許文献2】特開平6−87946号
【特許文献3】特開平6−33395号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】辻 秀人「ポリ乳酸−植物由来プラスチックの基礎と応用」、米田出版、2008年
【非特許文献2】滝山 栄一郎「ポリエステル樹脂ハンドブック」、日刊工業新聞社、1988年
【非特許文献3】本間 精一「ポリカーボネート樹脂ハンドブック」、日刊工業新聞社、1992年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前記の状況に鑑みなされたものであり、以下の目的を達成することを課題とする。
即ち、本発明は、天然物であるロジン由来の原料を用いることができ、高耐熱性且つ高耐湿耐水性を有する新規なデヒドロアビエチン酸重合体を提供することを目的とする。
さらに、本発明は、新規なデヒドロアビエチン酸重合体を含有する複合材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するための手段は、以下の通りである。
【0011】
<1> デヒドロアビエチン酸に由来するデヒドロアビエチン酸骨格を含む繰り返し単位を有するデヒドロアビエチン酸重合体。
<2> 前記繰り返し単位が、2つのデヒドロアビエチン酸骨格が直接結合して又は連結基を介して結合してなる二量体構造を含む前記<1>に記載のデヒドロアビエチン酸重合体。
<3> デヒドロアビエチン酸誘導体とジオール化合物とを用いて得られたポリエステル重合体である前記<1>又は<2>に記載のデヒドロアビエチン酸重合体。
<4> 前記繰り返し単位が、下記一般式(I)で表される繰り返し単位である前記<1>〜<3>のいずれか1項に記載のデヒドロアビエチン酸重合体。
【化1】


(一般式(I)中、Lは単結合又は二価の連結基を示し、Lはアルキレン基又はアリーレン基を示す。)
<5> 前記一般式(I)で表される繰り返し単位が、下記一般式(II)で表される繰り返し単位である前記<4>に記載のデヒドロアビエチン酸重合体。
【化2】


(一般式(II)中、L及びLは、前記一般式(I)におけるL及びLと同義である。)
<6> 前記Lが、単結合、−O−、−S−、−CO−、−SO−、−O(C2n)O−、−CO(C2n)CO−、−(C2n)−(ここで、nは1〜12の整数である。)、又は−C(−R)(−R)−(ここで、R及びRは、各々独立に、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。)である前記<4>又は<5>に記載のデヒドロアビエチン酸重合体。
<7> 下記一般式(III)で表される繰り返し単位からなる重合体である前記<1>に記載のデヒドロアビエチン酸重合体。
【化3】


(一般式(III)中、Lは単結合又は二価の連結基を表す。)
<8> 重量平均分子量が、5000以上500000以下である前記<1>〜<7>のいずれか1項に記載のデヒドロアビエチン酸重合体。
<9> 前記<1>〜<8>のいずれか1項に記載のデヒドロアビエチン酸重合体を含有する複合材料。
<10> 下記一般式(IV)で表される化合物であるデヒドロアビエチン酸誘導体。
【化4】


(一般式(IV)中、Lは、単結合又は二価の連結基を示し、Yは、塩素原子、−OH、−OR、−OCOR、−OCOOR、又は−OSORを示し、Rは、アルキル基、又はアリール基を示す。)
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、天然物であるロジン由来の原料を用いることができ、高耐熱性且つ高耐湿耐水性を有する新規なデヒドロアビエチン酸重合体を提供することができる。
さらに、本発明によれば、新規なデヒドロアビエチン酸重合体を含有する複合材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例4に用いた化合物(4−I)のH−NMRチャートである。
【図2】実施例4で得られたデヒドロアビエチン酸重合体のH−NMRチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[デヒドロアビエチン酸重合体]
以下、本発明のデヒドロアビエチン酸重合体について説明する。
本発明のデヒドロアビエチン酸重合体は、デヒドロアビエチン酸に由来するデヒドロアビエチン酸骨格を含む繰り返し単位を有する重合体である。
【0015】
本発明のデヒドロアビエチン酸重合体は、高耐熱性であり、且つ高耐湿耐水性を示す。また、本発明のデヒドロアビエチン酸重合体の原料であるデヒドロアビエチン酸は、バイオマス資源として入手可能な松脂由来のロジン等から得ることができる。
従って、本発明の重合体は、ポリ乳酸等の従来のバイオマスポリマーよりも耐熱性及び耐湿耐水性の点で優位な、新規なバイオマスポリマーとして提供することができる。
さらに、本発明のデヒドロアビエチン酸重合体は、高耐熱性であり、且つ高耐湿耐水性を有する特性を生かした用途に利用でき、例えば、シート、フィルム、繊維、成型材料、等の様々な形態で種々の用途に利用できる。
【0016】
本発明のデヒドロアビエチン酸重合体について詳細に説明する。
本発明のデヒドロアビエチン酸重合体は、下記式(A)で表されるデヒドロアビエチン酸又はその誘導体を原料モノマーとして使用し、これを重合させて得られる単独重合体、又は当該原料モノマーと他のモノマーとを重合させて得られる共重合体であり、その分子構造中にデヒドロアビエチン酸に由来するデヒドロアビエチン酸骨格を含む繰り返し単位を有してなる。
【0017】
【化5】

【0018】
ここで、本発明において「デヒドロアビエチン酸骨格」とは、上記のデヒドロアビエチン酸に由来する下記式(B)で表される骨格を意味する。
【0019】
【化6】

【0020】
本発明のデヒドロアビエチン酸重合体は、デヒドロアビエチン酸骨格である上記式(B)で表される骨格を主骨格として含んでいれば限定されるものではない。
【0021】
本発明のデヒドロアビエチン酸重合体の重量平均分子量は限定的でないが、好ましくは5000〜500000、より好ましくは10000〜200000とすればよい。重量平均分子量をこの範囲とすることにより、デヒドロアビエチン酸重合体は、成形性等に優れ、工業的利用の点で良好となる。
【0022】
なお、本発明における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフェィー(GPC)による分子量測定(ポリスチレン換算)で得られた値である。
【0023】
本発明のデヒドロアビエチン酸重合体は、成形性を有しながらも、耐熱性及び耐湿耐水性に優れている。これは、デヒドロアビエチン酸骨格が有する化学構造的に安定した3環状部分(下記に示す構造式における3環状部分)が、主骨格として二次元的に連結していくためであること、及び、該3環状部分にイソプロピル基とメチル基が置換していることによって更に疎水性が付与されているためと推察される。
【0024】
【化7】

【0025】
また、デヒドロアビエチン酸骨格に含まれる18位(*)のエステル構造は極めて安定であり、加水分解に対する優れた耐性があることから、このことも本発明のデヒドロアビエチン酸重合体が示す優れた耐湿耐水性に寄与しているものと考えられる。
【0026】
既述のごとく、バイオマス資源を用いて得られる従来のバイオマスポリマーは、通常、耐熱性や耐湿耐水性に劣るという問題があるが、本発明のデヒドロアビエチン酸重合体は、バイオマス資源に由来する原料物資も用いることができるにも拘らず、上記のごとく優れた耐熱性及び耐湿耐水性を示す。
【0027】
本発明のデヒドロアビエチン酸重合体には、デヒドロアビエチン酸骨格を含む繰返し単位を有するものに対して、更に化学処理等を施したデヒドロアビエチン酸重合体の誘導体も含む。
【0028】
本発明のデヒドロアビエチン酸重合体の好適な態様の一つは、2つのデヒドロアビエチン酸骨格が直接結合して又は連結基を介して結合してなる二量体構造を繰り返し単位中に含むものである。この二量体構造は、例えば、下記一般式(C)で表される骨格で表される。
【0029】
【化8】

【0030】
一般式(C)中、Lは単結合又は二価の連結基を示す。
【0031】
本発明のデヒドロアビエチン酸重合体は、好ましくは、デヒドロアビエチン酸誘導体とジオール化合物とを用いて得られたポリエステル重合体である。
【0032】
本発明のデヒドロアビエチン酸重合体がポリエステル重合体である場合の好適な具体的な態様の一つは、下記一般式(I)で表される繰り返し単位を有する重合体である。
【0033】
【化9】

【0034】
一般式(I)中、Lは単結合又は二価の連結基を示し、Lはアルキレン基又はアリーレン基を示す。
【0035】
で示される二価の連結基としては特に限定的ではないが、例えば、−O−、−S−、−CO−、−SO−、−O(C2n)O−、−CO(C2n)CO−、−(C2n)−(ここで、nは1〜12、好ましくは1〜6の整数である)、及び−C(−R)(−R)−(ここで、R及びRは、各々独立に、水素原子、炭素数1〜8(好ましくは炭素数2〜4)のアルキル基等を示す)等が挙げられる。
として、好ましくは、単結合、−O−、−S−、又は−CH−等である。
【0036】
で示されるアルキレン基の好ましい炭素数は1〜20であり、特に好ましくは2〜12である。Lで示されるアルキレン基は、直鎖、分岐及び環状のいずれでもよく、また、更に置換基を有していてもよい。
で示されるアルキレン基は、分子鎖を構成する炭素原子の1つ以上が、酸素原子に置き換わった構造であってもよい。
【0037】
で示されるアルキレン基として、具体的には、例えば、−(CH)2−、−(CH)3−、−(CH)4−、−(CH−、−(CH−、−(CH)10−、−CHCHOCHCH−、−CHCH(OCHCH)−、−CHCH(OCHCH)3−、及び−CHCHOCOCHCH−、等が挙げられる。
【0038】
で示されるアリーレン基の好ましい炭素数は6〜20であり、特に好ましくは6〜15である。Lで示されるアリーレン基は、単環であっても縮環であってもよく、また、更に置換基を有していもよい。
【0039】
で示されるアリーレン基として、具体的には、例えば、−C−、及び−C−C(CH−C−、等が挙げられる。
として好ましくは、−(CH−、−(CH10−、又は−CHCH(OCHCH−である。
【0040】
一般式(I)で表される繰り返し単位としては、下記一般式(II)で表される繰り返し単位であることが好ましい。
【0041】
【化10】

【0042】
一般式(II)中、L及びLは、前記一般式(I)におけるL及びLと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0043】
ポリエステル重合体の例としては、一般式(II)において、
が単結合であり、Lが、−(CH−、(CH−、−CHCH(CH)−、−(CH−、−(CH−、−(CH−、−(CH10−、−(CH12−、−CHCHOCHCH−、−CHCH(OCHCH−、−CHCH(OCHCH−、−CHCHOCOCHCH−、−C−、又は−CC(CH−であるポリエステル重合体;
が酸素原子であり、Lが−(CH−、(CH−、−CHCH(CH)−、−(CH−、−(CH−、−(CH−、−(CH10−、−(CH12−、−CHCHOCHCH−、−CHCH(OCHCH−、−CHCH(OCHCH−、−CHCHOCOCHCH−、−C−、又は−CC(CH−であるポリエステル重合体;
が硫黄原子であり、Lが−(CH−、−(CH−、−CHCH(CH)−、−(CH−、−(CH−、−(CH−、−(CH10−、−(CH12−、−CHCHOCHCH−、−CHCH(OCHCH−、−CHCH(OCHCH−、−CHCHOCOCHCH−、−C−、又は−CC(CH−のポリエステル重合体;
が−CO−であり、Lが−(CH−、(CH−、−CHCH(CH)−、−(CH−、−(CH−、−(CH−、−(CH10−、−(CH12−、−CHCHOCHCH−、−CHCH(OCHCH−、−CHCH(OCHCH−、−CHCHOCOCHCH−、−C−、又は−CC(CH−であるポリエステル重合体;
が−SO−であり、Lが−(CH−、(CH−、−CHCH(CH)−、−(CH−、−(CH−、−(CH−、−(CH10−、−(CH12−、−CHCHOCHCH−、−CHCH(OCHCH−、−CHCH(OCHCH−、−CHCHOCOCHCH−、−C−、又は−CC(CH−であるポリエステル重合体;
が−O(CHO−であり、Lが−(CH−、(CH−、−CHCH(CH)−、−(CH−、−(CH−、−(CH−、−(CH10−、−(CH12−、−CHCHOCHCH−、−CHCH(OCHCH−、−CHCH(OCHCH−、−CHCHOCOCHCH−、−C−、又は−CC(CH−であるポリエステル重合体;
が−O(CHO−であり、Lが−(CH−、−(CH−、−CHCH(CH)−、−(CH−、−(CH−、−(CH−、−(CH10−、−(CH12−、−CHCHOCHCH−、−CHCH(OCHCH−、−CHCH(OCHCH−、−CHCHOCOCHCH−、−C−、又は−CC(CH−であるポリエステル重合体;
が−O(CHO−であり、Lが−(CH−、−(CH−、−CHCH(CH)−、−(CH−、−(CH−、−(CH−、−(CH10−、−(CH12−、−CHCHOCHCH−、−CHCH(OCHCH−、−CHCH(OCHCH−、−CHCHOCOCHCH−、−C−、又は−CC(CH−であるポリエステル重合体;
が−O(CHO−であり、Lが−(CH−、−(CH−、−CHCH(CH)−、−(CH−、−(CH−、−(CH−、−(CH10−、−(CH12−、−CHCHOCHCH−、−CHCH(OCHCH−、−CHCH(OCHCH−、−CHCHOCOCHCH−、−C−、又は−CC(CH−のポリエステル重合体;
が−O(CH12O−であり、Lが−(CH−、−(CH−、−CHCH(CH)−、−(CH−、−(CH−、−(CH−、−(CH10−、−(CH12−、−CHCHOCHCH−、−CHCH(OCHCH−、−CHCH(OCHCH−、−CHCHOCOCHCH−、−C−又は−CC(CH−であるポリエステル重合体;
【0044】
が−CO(CHCO−であり、Lが−(CH−、−(CH−、−CHCH(CH)−、−(CH−、−(CH−、−(CH−、−(CH10−、−(CH12−、−CHCHOCHCH−、−CHCH(OCHCH−、−CHCH(OCHCH−、−CHCHOCOCHCH−、−C−、又は−CC(CH−であるポリエステル重合体;
が−CO(CHCO−であり、Lが−(CH−、−(CH−、−CHCH(CH)−、−(CH−、−(CH−、−(CH−、−(CH10−、−(CH12−、−CHCHOCHCH−、−CHCH(OCHCH−、−CHCH(OCHCH−、−CHCHOCOCHCH−、−C−、又は−CC(CH−であるポリエステル重合体;
が−CO(CH10CO−であり、Lが−(CH−、−(CH−、−CHCH(CH)−、−(CH−、−(CH−、−(CH−、−(CH10−、−(CH12−、−CHCHOCHCH−、−CHCH(OCHCH−、−CHCH(OCHCH−、−CHCHOCOCHCH−、−C−、又は−CC(CH−であるポリエステル重合体;
が−CH−であり、Lが−(CH−、−(CH−、−CHCH(CH)−、−(CH−、−(CH−、−(CH−、−(CH10−、−(CH12−、−CHCHOCHCH−、−CHCH(OCHCH−、−CHCH(OCHCH−、−CHCHOCOCHCH−、−C−、又は−CC(CH−であるポリエステル重合体;
が−(CH−であり、Lが−(CH−、−(CH−、−CHCH(CH)−、−(CH−、−(CH−、−(CH−、−(CH10−、−(CH12−、−CHCHOCHCH−、−CHCH(OCHCH−、−CHCH(OCHCH−、−CHCHOCOCHCH−、−C−、又は−CC(CH−であるポリエステル重合体;
が−(CH−であり、Lが−(CH−、−(CH−、−CHCH(CH)−、−(CH−、−(CH−、−(CH−、−(CH10−、−(CH12−、−CHCHOCHCH−、−CHCH(OCHCH−、−CHCH(OCHCH−、−CHCHOCOCHCH−、−C−、又は−CC(CH−であるポリエステル重合体;
が−(CH−であり、Lが−(CH−、−(CH−、−CHCH(CH)−、−(CH−、−(CH−、−(CH−、−(CH10−、−(CH12−、−CHCHOCHCH−、−CHCH(OCHCH−、−CHCH(OCHCH−、−CHCHOCOCHCH−、−C−、又は−CC(CH−であるポリエステル重合体;
が−(CH−であり、Lが−(CH−、−(CH−、−CHCH(CH)−、−(CH−、−(CH−、−(CH−、−(CH10−、−(CH12−、−CHCHOCHCH−、−CHCH(OCHCH−、−CHCH(OCHCH−、−CHCHOCOCHCH−、−C−、又は−CC(CH−であるポリエステル重合体;
が−(CH12−であり、Lが−(CH−、−(CH−、−CHCH(CH)−、−(CH−、−(CH−、−(CH−、−(CH10−、−(CH12−、−CHCHOCHCH−、−CHCH(OCHCH−、−CHCH(OCHCH−、−CHCHOCOCHCH−、−C−、又は−CC(CH−であるポリエステル重合体;
が−CH(−CH)−であり、Lが−(CH−、−(CH−、−CHCH(CH)−、−(CH−、−(CH−、−(CH−、−(CH10−、−(CH12−、−CHCHOCHCH−、−CHCH(OCHCH−、−CHCH(OCHCH−、−CHCHOCOCHCH−、−C−、又は−CC(CH−であるポリエステル重合体;
【0045】
が−C(−CH−であり、Lが−(CH−、−(CH−、−CHCH(CH)−、−(CH−、−(CH−、−(CH−、−(CH10−、−(CH12−、−CHCHOCHCH−、−CHCH(OCHCH−、−CHCH(OCHCH−、−CHCHOCOCHCH−、−C−、又は−CC(CH−であるポリエステル重合体;
が−CH(−CHCH)−であり、Lが−(CH−、−(CH−、−CHCH(CH)−、−(CH−、−(CH−、−(CH−、−(CH10−、−(CH12−、−CHCHOCHCH−、−CHCH(OCHCH−、−CHCH(OCHCH−、−CHCHOCOCHCH−、−C−、又は−CC(CH−であるポリエステル重合体;
が−C(CH)(−CHCH)−であり、Lが−(CH−、−(CH−、−CHCH(CH)−、−(CH−、−(CH−、−(CH−、−(CH10−、−(CH12−、−CHCHOCHCH−、−CHCH(OCHCH−、−CHCH(OCHCH−、−CHCHOCOCHCH−、−C−、又は−CC(CH−であるポリエステル重合体;
が−C(−CHCH−であり、Lが−(CH−、−(CH−、−CHCH(CH)−、−(CH−、−(CH−、−(CH−、−(CH10−、−(CH12−、−CHCHOCHCH−、−CHCH(OCHCH−、−CHCH(OCHCH−、−CHCHOCOCHCH−、−C−、又は−CC(CH−であるポリエステル重合体;
が−CH(−CHCHCH)−であり、Lが−(CH−、−(CH−、−CHCH(CH)−、−(CH−、−(CH−、−(CH−、−(CH10−、−(CH12−、−CHCHOCHCH−、−CHCH(OCHCH−、−CHCH(OCHCH−、−CHCHOCOCHCH−、−C−、又は−CC(CH−であるポリエステル重合体;
が−C(−CH)(−CHCHCH)−であり、Lが−(CH−、−(CH−、−CHCH(CH)−、−(CH−、−(CH−、−(CH−、−(CH10−、−(CH12−、−CHCHOCHCH−、−CHCH(OCHCH−、−CHCH(OCHCH−、−CHCHOCOCHCH−、−C−、又は−CC(CH−であるポリエステル重合体;
が−C(−CHCH)(−CHCHCH)−であり、Lが−(CH−、−(CH−、−CHCH(CH)−、−(CH−、−(CH−、−(CH−、−(CH10−、−(CH12−、−CHCHOCHCH−、−CHCH(OCHCH−、−CHCH(OCHCH−、−CHCHOCOCHCH−、−C−、又は−CC(CH−であるポリエステル重合体;
が−C(−CHCHCH−であり、Lが−(CH−、(CH−、−CHCH(CH)−、−(CH−、−(CH−、−(CH−、−(CH10−、−(CH12−、−CHCHOCHCH−、−CHCH(OCHCH−、−CHCH(OCHCH−、−CHCHOCOCHCH−、−C−、又は−CC(CH−であるポリエステル重合体が挙げられる。
【0046】
これらの中でも、Lが単結合であり、Lが−(CH−、−(CH−、−CHCH(CH)−、−(CH−、−(CH−、−(CH−、−(CH10−、−CHCH(OCHCH−、−CHCHOCOCHCH−、−C−、又は−CC(CH−であるポリエステル重合体;
が酸素原子であり、Lが−(CH−、−(CH−、−CHCH(CH)−、−(CH−、−(CH−、−(CH−、−(CH10−、−CHCH(OCHCH−、−CHCHOCOCHCH−、−C−、又は−CC(CH−であるポリエステル重合体;
が硫黄原子であり、Lが−(CH−、−(CH−、−CHCH(CH)−、−(CH−、−(CH−、−(CH−、−(CH10−、−CHCH(OCHCH−、−CHCHOCOCHCH−、−C−、又は−CC(CH−であるポリエステル重合体;
が−CO−であり、Lが−(CH−、−(CH−、−CHCH(CH)−、−(CH−、−(CH−、−(CH−、−(CH10−、−CHCH(OCHCH−、−CHCHOCOCHCH−、−C−、又は−CC(CH−であるポリエステル重合体;
が−SO−であり、Lが−(CH−、−(CH−、−CHCH(CH)−、−(CH−、−(CH−、−(CH−、−(CH10−、−CHCH(OCHCH−、−CHCHOCOCHCH−、−C−、又は−CC(CH−であるポリエステル重合体;
が−O(CHO−であり、Lが−(CH−、−(CH−、−CHCH(CH)−、−(CH−、−(CH−、−(CH−、−(CH10−、−CHCH(OCHCH−、−CHCHOCOCHCH−、−C−、又は−CC(CH−であるポリエステル重合体;
が−O(CHO−であり、Lが−(CH−、−(CH−、−CHCH(CH)−、−(CH−、−(CH−、−(CH−、−(CH10−、−CHCH(OCHCH−、−CHCHOCOCHCH−、−C−、又は−CC(CH−であるポリエステル重合体;
が−O(CHO−であり、Lが−(CH−、−(CH−、−CHCH(CH)−、−(CH−、−(CH−、−(CH−、−(CH10−、−CHCH(OCHCH−、−CHCHOCOCHCH−、−C−、又は−CC(CH−であるポリエステル重合体;
が−CO(CHCO−であり、Lが−(CH−、−(CH−、−CHCH(CH)−、−(CH−、−(CH−、−(CH−、−(CH10−、−CHCH(OCHCH−、−CHCHOCOCHCH−、−C−、又は−CC(CH−であるポリエステル重合体;
が−CO(CHCO−であり、Lが−(CH−、−(CH−、−CHCH(CH)−、−(CH−、−(CH−、−(CH−、−(CH10−、−CHCH(OCHCH−、−CHCHOCOCHCH−、−C−、又は−CC(CH−であるポリエステル重合体;
が−CH−であり、Lが−(CH−、−(CH−、−CHCH(CH)−、−(CH−、−(CH−、−(CH−、−(CH10−、−CHCH(OCHCH−、−CHCHOCOCHCH−、−C−、又は−CC(CH−であるポリエステル重合体;
が−(CH−であり、Lが−(CH−、−(CH−、−CHCH(CH)−、−(CH−、−(CH−、−(CH−、−(CH10−、−CHCH(OCHCH−、−CHCHOCOCHCH−、−C−、又は−CC(CH−であるポリエステル重合体;
が−(CH−であり、Lが−(CH−、−(CH−、−CHCH(CH)−、−(CH−、−(CH−、−(CH−、−(CH10−、−CHCH(OCHCH−、−CHCHOCOCHCH−、−C−、又は−CC(CH−であるポリエステル重合体;
が−(CH−であり、Lが−(CH−、−(CH−、−CHCH(CH)−、−(CH−、−C−、−(CH−、−(CH10−、−CHCH(OCHCH−、−CHCHOCOCHCH−、−C−、又は−CC(CH−であるポリエステル重合体;
が−CH(−CH)−であり、Lが−(CH−、−(CH−、−CHCH(CH)−、−(CH−、−(CH−、−(CH−、−(CH10−、−CHCH(OCHCH−、−CHCHOCOCHCH−、−C−、又は−CC(CH−であるポリエステル重合体、及び、
が−C(−CH−であり、Lが−(CH−、−(CH−、−CHCH(CH)−、−(CH−、−(CH−、−(CH−、−(CH10−、−CHCH(OCHCH−、−CHCHOCOCHCH−、−C−、又は−CC(CH−であるポリエステル重合体がより好ましい。
【0047】
特に好ましいポリエステル重合体は、Lが単結合であり、Lが−(CH−、−(CH10−、又は−CHCH(OCHCH)3−であるポリエステル重合体;
が酸素原子であり、Lが−(CH−、−(CH10−、又は−CHCH(OCHCH)3−であるポリエステル重合体;及び、
が硫黄原子であり、Lが−(CH−、−(CH10−、又は−CHCH(OCHCH−であるポリエステル重合体;
が−CH−であり、Lが−(CH−、−(CH10−、又は−CHCH(OCHCH−であるポリエステル重合体である。
【0048】
ポリエステル重合体であるデヒドロアビエチン酸重合体の原料として用いられるジカルボン酸化合物若しくはその誘導体としては、下記一般式(IV)で表される化合物若しくはその誘導体が挙げられる。
【0049】
【化11】

【0050】
一般式(IV)中、Lは、単結合又は二価の連結基を示し、Yは、塩素原子、−OH、−OR、−OCOR、−OCOOR、又は−OSORを示し、Rは、アルキル基、又はアリール基を示す。
【0051】
特に、一般式(IV)において、Lが、単結合、−O−、−S−、−CO−、−SO−、−O(C2n)O−、−CO(C2n)CO−、−(C2n)−(ここで、nは1〜12の整数である。)、又は−C(−R)(−R)−(ここで、R及びRは、各々独立に、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。)である化合物が好ましく、より好ましくは、Lが、単結合、−O−、−S−、又は−CH−で示される化合物である。
【0052】
ジオール化合物としては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン等といった脂肪族ジオール;ハイドロキノン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等といった芳香族ジオール等が挙げられ、植物度を下げない観点では、1,3−プロパンジオール、又は1,10−デカンジオール等がより好ましい。
【0053】
また、本発明のデヒドロアビエチン酸重合体の他の例としては、下記一般式(III)で表される繰り返し単位からなる重合体が挙げられる。この重合体は、一分子自己収縮型の重合体である。
【0054】
【化12】

【0055】
一般式(III)中、Lは単結合又は二価の連結基を表す。
【0056】
で示される二価の連結基としては特に限定的ではないが、例えば、−(C2n)−、−CO(C2n)−、−(C2n)CO−L−、−CO(C2n)CO−L−(ここで、nは1〜12、好ましくは1〜8の整数であり、直鎖でも分岐でも環状でもよく、また、更に置換基を有していてもよい。また、分子鎖を構成する炭素原子の1つ以上が、酸素原子に置き換わった構造であってもよい。Lはアリーレン基を表し、好ましい炭素数は6〜20であり、特に好ましくは6〜15である。Lで表されるアリーレン基は、単環であっても縮環であってもよく、また、更に置換基を有していもよい。)等が挙げられる。
として、好ましくは−(CH−、−CO(CH−、−(CHCO−C−C(CH−C−、又は−CO(CHCO−C−C(CH−C−、等である。
【0057】
一般式(III)で表される繰り返し単位からなる重合体を合成するためのモノマー(自己収縮型モノマー)としては、下記一般式(V)で表される化合物若しくはその誘導体が挙げられる。
【0058】
【化13】

【0059】
特に、一般式(V)において、Lが、−(CH−、−(CH−、−CHCH(CH)−、−(CH−、−CHCHOCHCH−、−CO(CH−、−CO(CH−、−CO(CH−、−(CHCO−C−C(CH−C−、−(CHCO−C−C(CH−C−、−(CHCO−C−C(CH−C−、−CO(CHCO−C−C(CH−C−、−CO(CHCO−C−C(CH−C−、又は−CO(CHCO−C−C(CH−C−である化合物が好ましく、より好ましくは、Lが、−(CH−、−CO(CH−、−(CHCO−C−C(CH−C−、又は−CO(CHCO−C−C(CH−C−で示される化合物である。
【0060】
[デヒドロアビエチン酸重合体の製造方法]
本発明のデヒドロアビエチン酸重合体の製造方法について説明する。
本発明のデヒドロアビエチン酸重合体は、前述のごとく、前記式(A)で表されるデヒドロアビエチン酸又はその誘導体を原料モノマーとして使用し、これを重合させて得られる単独重合体、又は当該原料モノマーと他のモノマーと重合させて得られる共重合体であり、その分子構造中にデヒドロアビエチン酸に由来するデヒドロアビエチン酸骨格を含む繰り返し単位を有してなるものであれば、特に限定的でない。
【0061】
デヒドロアビエチン酸重合体の製造に用いるデヒドロアビエチン酸は、例えば、ロジンから得ることができる。
【0062】
ロジンとは松脂から採取される樹脂成分であり、採取の方法により、「ガムロジン」、「トールロジン」及び「ウッドロジン」の3種がある。ロジンに含まれる構成成分は、これら採取の方法や松の産地により異なるが、一般的には、以下にその構造を示す、アビエチン酸(1)、ネオアビエチン酸(2)、パラストリン酸(3)、レボピマール酸(4)、デヒドロアビエチン酸(5)、ピマール酸(6)、イソピマール酸(7)等のジテルペン系樹脂酸の混合物である。
【0063】
【化14】

【0064】
これらのジテルペン系樹脂酸のうち、(1)から(4)で表される各化合物は、ある種の金属触媒の存在下、加熱処理することにより不均化を起こし、デヒドロアビエチン酸(5)と、下記構造のジヒドロアビエチン酸(8)に変性する。
【0065】
【化15】

【0066】
即ち、本発明のデヒドロアビエチン酸重合体の合成を実施する上で必要なデヒドロアビエチン酸(5)は、種々の樹脂酸の混合物であるロジンに適切な化学処理を施すことにより比較的容易に得ることができ、工業的にも安価に製造することができる。なお、ジヒドロアビエチン酸(8)とデヒドロアビエチン酸(5)とは、公知の方法により容易に分離できる。
【0067】
本発明のデヒドロアビエチン酸重合体は、例えば、以下の合成経路1又は2で合成することができる。なお、合成経路1又は2は、本発明のデヒドロアビエチン酸重合体として、ポリエステル重合体である前記一般式(II)で表される繰り返し単位を有する重合体を合成する際の合成経路の例である。
【0068】
(合成経路1)
【化16】

【0069】
【化17】

【0070】
上記合成経路1中、L、L、及びYは、一般式(IV)の説明において示したものである。
上記合成経路2中、L、L、R、及びYは、一般式(IV)の説明において示したものである。
【0071】
以下では、当該合成経路1及び2中、前記一般式(IV)で表される化合物若しくはその誘導体とジオール化合物とにより、最終生成物であるポリエステル重合体を合成する工程(合成経路1及び2の右端に示す工程)について、詳細に説明する。なお、上記合成経路1及び2によるポリエステル重合体の詳細な合成例については、後述する実施例において更に具体的に説明する。
【0072】
合成経路1及び2において、一般式(II)で表される繰り返し単位を有する重合体(ポリエステル重合体)を合成する工程は、ジオール化合物(好ましくは、脂肪族ジオール化合物)と、一般式(IV)で表される化合物に包含されるジカルボン酸クロリド又はジエステルとを公知の方法で重縮合させることにより合成することができる。
【0073】
具体的な合成方法としては、例えば、新高分子実験学3 高分子の合成・反応(2)、78〜95頁、共立出版(1996年)に記載の方法(例えば、エステル交換法、直接エステル化法、酸クロリド法等の溶融重合法、低音溶液重合法、高温溶液重縮合法、界面重縮合法など)などが挙げられ、本発明では特に酸クロリド法及び界面重縮合法が好ましく用いられる。
【0074】
エステル交換法は、前記脂肪族ジオール化合物と前記ジカルボン酸エステルとを溶融状態または溶液状態で、必要により触媒の存在下に加熱することにより脱アルコール重縮合させポリエステルを合成する方法である。
【0075】
直接エステル化法は、前記脂肪族ジオール化合物と前記ジカルボン酸化合物とを溶融状態または溶液状態で触媒の存在下に、加熱下において脱水重縮合させることによりポリエステルを合成する方法である。
【0076】
酸クロリド法は、前記脂肪族ジオール化合物と前記ジカルボン酸クロリド化合物とを溶融状態または溶液状態で、必要により触媒の存在下に加熱し脱HCl重縮合させることによりポリエステルを合成する方法である。
【0077】
界面重合法は、前記脂肪族ジオール化合物を水、前記ジカルボン酸化合物を有機溶媒に溶解させ、層間移動触媒を使用して水/有機溶媒界面で重縮合させることによりポリエステルを合成する方法である。
【0078】
また、本発明のデヒドロアビエチン酸重合体が、前記一般式(III)で表される繰り返し単位からなる重合体として合成される場合であれば、デヒドロアビエチン酸から誘導した自己縮合型モノマーを用い、これを自己縮合させることにより合成することができる。本発明のデヒドロアビエチン酸重合体として、ポリエステル重合体である前記一般式(III)で表される繰り返し単位を有する重合体を合成する際の合成経路の例としては、例えば、以下に示す合成経路3が挙げられる。
【0079】
(合成経路3)
【化18】

【0080】
上記合成経路3中、L及びYは、一般式(V)の説明において示したものである。
【0081】
なお、一般式(III)で表される繰り返し単位からなる重合体の詳細な合成例についても、後述する実施例において更に具体的に説明する。
【0082】
以上説明した本発明のデヒドロアビエチン酸重合体は、単独でポリマー材料として用いることができる。或いは、本発明のデヒドロアビエチン酸重合体と種々の材料とを混合することにより、複合材料とすることもできる。
以下、本発明のデヒドロアビエチン酸重合体を含有する複合材料について説明する。
【0083】
[デヒドロアビエチン酸重合体を含有する複合材料]
本発明のデヒドロアビエチン酸重合体は、その物性を改良するために種々の材料を混合して、複合材料とすることができる。
【0084】
デヒドロアビエチン酸重合体を複合材料とする場合に、特に重要なのは、ポリマーアロイ化(異種ポリマーの混合)とフィラーの混合であり、これにより、耐衝撃性、耐熱性、耐久性、成形性等を改良することができる。
【0085】
ポリマーアロイ化に使用されるポリマーとしては、異なるポリマー特性を有する本発明のデヒドロアビエチン酸重合体を2種以上使用してもよいし、本発明のデヒドロアビエチン酸重合体とそれ以外のポリマーとを併用してもよい。
【0086】
ポリマーアロイ化に使用される本発明のデヒドロアビエチン酸重合体以外のポリマーとしては、
1)オレフィン系樹脂(エチレン又はプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィン、又はシクロペンテン、シクロヘキセン、シクロオクテン、シクロペンタジエン、1,3−シクロヘキサジエン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン等のシクロオレフィンの単独重合体、上記α−オレフィン同士の共重合体、及びα−オレフィンと共重合可能な他の単量体、酢酸ビニル、マレイン酸、ビニルアルコール、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等との共重合体等)、
【0087】
2)ポリエステル系樹脂(テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸等のジカルボン酸単量体とエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール、ビスフェノール化合物又はその誘導体のアルキレンオキサイド付加物、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等のジオール又は多価アルコール単量体との共重合体、乳酸、β−ヒドロキシ酪酸、p−ヒドロキシ安息香酸や、2,6−ヒドロキシナフトエ酸、等のヒドロキシカルボン酸等の重縮合体等)、
【0088】
3)ポリアミド系樹脂(3員環以上のラクタム、重合可能なω−アミノ酸、二塩基酸とジアミンなどの重縮合によって得られる鎖中に酸アミド結合を有する重合体で、具体的には、ε−カプロラクタム、アミノカプロン酸、エナントラクタム、7−アミノヘプタン酸、11−アミノウンデカン酸、9−アミノノナン酸、α−ピロリドン、α−ピペリドンなどの重合体、ヘキサメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、メタキシレンジアミンなどのジアミンと、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二塩基酸、グルタール酸などのジカルボン酸と重縮合せしめて得られる重合体またはこれらの共重合体であり、たとえば、ナイロン−4、ナイロン−6、ナイロン−7、ナイロン−8、ナイロン−11、ナイロン−12、ナイロン−6、6、ナイロン−6、10、ナイロン−6、11、ナイロン−6、12、ナイロン−6T、ナイロン−6/ナイロン−6、6共重合体、ナイロン−6/ナイロン−12共重合体、ナイロン−6/ナイロン−6T共重合体、ナイロン−6I/ナイロン−6T共重合体等)
【0089】
4)ゴムやエラストマー(天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、1,2−ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、二トリルゴム、ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、多硫化ゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム等)、
【0090】
その他、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリビニルアルコール、塩化ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニリデン、フッ素樹脂、ポリアセタール、ポリスルホン、ABS、ポリエーテルエーテルケトン等の樹脂が挙げられる。
【0091】
上記したポリマーアロイ化に使用されるポリマーのうち、植物度を下げない観点で、ポリ乳酸やポリβ−ヒドロキシ酪酸、ポリブチレンサクシナート等が好ましく用いられる。
【0092】
ポリマーアロイ化は、通常、溶融混練により行われるが、単純な混練では相分離してしまう場合は、相溶化剤を用いたり、二次的にブロック重合やグラフト重合させたり、一方のポリマーをクラスター状に分散させたりして均一相を形成させる。
【0093】
また、本発明のデヒドロアビエチン酸重合体が示す特性を損なうことなく、ポリマーアロイ化をする観点からは、ポリマーアロイ中における本発明のデヒドロアビエチン酸重合体の含有比率(質量基準)は、20〜100%が好ましく、50〜100%がより好ましい。
【0094】
また、本発明のデヒドロアビエチン酸重合体は、種々のフィラーを混合して所望のポリマー物性に改良することができる。特に、耐熱性、耐久性、及び耐衝撃性改良には、フィラーの混合は有効である。
【0095】
フィラーとしては、無機フィラー、有機フィラーのいずれを用いてもよい。
無機フィラーとしては、ガラス繊維、炭素繊維、グラファイト繊維、金属繊維、チタン酸カリウムウイスカー、ホウ酸アルミニウムウイスカー、マグネシウム系ウイスカー、珪素系ウイスカー、ワラステナイト、セピオライト、スラグ繊維、ゾノライト、エレスタダイト、石膏繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、窒化硅素繊維および硼素繊維等の繊維状の無機フィラー;ガラスフレーク、非膨潤性雲母、フラーレン、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、グラファイト、金属箔、セラミックビーズ、タルク、クレー、マイカ、セリサイト、ゼオライト、ベントナイト、ドロマイト、カオリン、微粉ケイ酸、長石粉、チタン酸カリウム、シラスバルーン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、酸化ケイ素、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、石膏、ノバキュライト、ドーソナイト、白土等の板状や粒状の無機フィラーが有用でである。
また、有機フィラーとしては、セルロースナノファイバーやポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、再生セルロース繊維、アセテート繊維、アラミド繊維等の合成繊維、ケナフ、ラミー、木綿、ジュート、麻、サイザル、マニラ麻、亜麻、リネン、絹、ウール等の天然繊維、微結晶セルロース、さとうきび、木材パルプ、紙屑、古紙等から得られる繊維状の有機フィラーや、有機顔料等の粒状の有機フィラーが有用である。
【0096】
本発明のデヒドロアビエチン酸重合体は、実際の製品として適用される多くの場合、難燃剤が混合された複合材料として使用される。
難燃剤はポリマー材料を燃え難くし、或いは炎が広がらないようにする素材である。
難燃剤としては、主に、ハロゲン系(臭素および塩素化合物)化合物やリン系化合物(芳香族のリン酸エステル等)が利用される。しかし、これらの難燃剤は、火災の際に人体に有害な物質を発生したり環境有害物質を生成するので改良が求められている。かかる観点からは、難燃効果と環境安全性の観点で優れているとして最近着目される、水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウムについても、本発明のデヒドロアビエチン酸重合体に併用される難燃剤として好ましく用いられる。
【0097】
難燃剤と併用して難燃性を高めたり、樹脂表面に炭化皮膜を形成して火災の広がりを抑える素材(難燃助剤)も、本発明のデヒドロアビエチン酸重合体を含む複合材料としてに有用である。具体的には、無機系ではアンチモン化合物、有機系芳香族化合物(フェノール誘導体等)が好ましく用いられる。
【0098】
また、本発明のデヒドロアビエチン酸重合体には、上記の他に、通常使用される添加剤、例えば、可塑剤、安定剤、耐衝撃性向上剤、結晶核剤、滑剤、帯電防止剤、界面活性剤、顔料、染料、充填剤、酸化防止剤、加工助剤、紫外線吸収剤、防曇剤、防菌剤、防黴剤等を単独又は二種以上添加してもよい。
【0099】
上記記載の素材を混合して得られる本発明の複合材料は、種々の方法で賦形(成型)することができる。成形方法しては、例えば、押出成形、射出成形等が用いられる。そのようにして得られた成形体の用途は、特に限定されるものではないが、例えば、自動車、家電、電気・電子機器(OA・メディア関連機器、光学用機器及び通信機器等)の構成部品、機械部品、住宅・建築用材料、コンテナ・ボトルなどの各種容器、等が挙げられる。
【実施例】
【0100】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0101】
まず、本発明のデヒドロアビエチン酸重合体の合成に用いる各化合物を、デヒドロアビエチン酸から下記合成例[1]〜[5]に示すように合成した。
【0102】
[1]一般式(IV)において、Lが単結合であり、Yが−OHであるジカルボン酸化合物の合成例
(合成経路)
【化19】

【0103】
a)冷却管を備えた1l三口フラスコに、デヒドロアビエチン酸(135g,0.500mol)を入れ、酢酸(450ml)に溶解させた。反応系に、オルト過よう素酸二水和物(20.4g,0.0895mol)、よう素(93g,0.366mol)を添加した。その後、濃硫酸(15mL)/水(90mL)を滴下し、60℃にて5時間撹拌した。放冷後、反応溶液を水に投与し、1時間撹拌した後、ろ過した。得られた残留物をメタノールでかけ洗いし、化合物(1−I)(128g,0.300mol,60%)を得た。
【0104】
b)冷却管を備えた200ml三口フラスコに、化合物(1−I)(27.0g,63.3mmol)を入れ、N,N−ジメチルアセトアミド(60ml)に溶解させた。反応系に炭酸カリウム(11g,79.5mmol)を添加した後、ベンジルクロリド(8.41g,66.4mmol)を滴下し、50℃にて3時間撹拌した。放冷後、反応液を水に添加し、酢酸エチルで抽出、分液後、有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧留去した後、濃縮残留物をメタノールでかけ洗いし、化合物(1−II)(29.2g,56.5mmol,89.2%)を得た。
【0105】
c)冷却管を備えた500ml三口フラスコに化合物(1−II)(21.7g,42.0mmol)を入れ、ヘキサメチルリン酸トリアミド(200ml)に溶解させた。反応系にジクロロビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(II)(27.5g,42.0mmol)、トリシクロヘキシルホスフィン(1.18g,4.21mmol)、ヨードカリウム(7.0g,42.1mmol)、亜鉛(6.3g,96.3mmol)を添加した後、60℃にて5時間撹拌した。放冷後、反応溶液を希塩酸に添加し、酢酸エチルで抽出、セライトろ過後、分液し、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧留去した後、濃縮残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、化合物(1−III)(6.54g,8.40mmol,40.0%)を得た。
【0106】
d)200mlオートクレーブに、化合物(1−III)(2.8g,3.59mmol)を入れ、テトラヒドロフラン(60ml)に溶解させた。反応系に10%Pd−C(0.3g)を添加し、水素圧5MPa、60℃で12時間撹拌した。放冷後、反応液をろ過し、溶媒を除去した後にメタノールでかけ洗いし、ジカルボン酸化合物である化合物(1−IV)(2.05g,95.0%)を得た。
【0107】
化合物(1−IV)のH−NMRデータを以下に示す。
【0108】
1H NMR(300 MHz, CDCl3) δ 0.90〜2.40(m, 42H), 2.49〜2.77(m 2H), 2.81〜3.09(m, 4H), 6.88〜6.98(m, 2H), 6.98(s, 2H)
【0109】
[2]一般式(IV)において、Lが酸素原子であり、Yが−OHであるジカルボン酸化合物の合成例
(合成経路)
【化20】

【0110】
a)冷却管を備えた1l三口フラスコに、デヒドロアビエチン酸(90.1g,0.300mol)を入れ、酢酸(500ml)に溶解させ、室温にて窒素を吹き込んだ。その後、臭素(53.0g,0.330mol)を滴下し、室温にて8時間撹拌した。反応溶液を水に投与し、1時間撹拌した後、ろ過した。得られた残留物をメタノールでかけ洗いし、化合物(2−I)(61.1g,0.161mol,53.7%)を得た。
【0111】
b)冷却管を備えた200ml三口フラスコに、化合物(2−I)(7.50g,20.0mmol)を入れ、N,N−ジメチルアセトアミド(30ml)に溶解させた。反応系に炭酸カリウム(3.28g,23.7mmol)を添加した後、ベンジルクロリド(2.66g,21.0mmol)を滴下し、50℃にて3時間撹拌した。反応液を水に添加し、酢酸エチルで抽出、分液後、有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧留去した後、濃縮残留物をメタノールでかけ洗いし、化合物(2−II)(7.01g,14.9mmol,74.5%)を得た。
【0112】
c)還流管を備えた200ml三口フラスコに、化合物(2−II)(11.7g,25.0 mmol)を入れ、1,4−ジオキサン(20ml)に溶解させ、水酸化カリウム(14.0g,250mmol)を溶解させた水溶液(20ml)を加えた。反応系にトリスベンジリデンアセトンジパラジウム(0)(1.14g,1.24mmol)、ジ−tert−ブチルホスフィノ-2’−4’−6’−トリイソプロピルビフェニル(1.10g,2.59mmol)を添加した後、100℃にて5時間還流した。放冷後、反応溶液を希塩酸に添加し、酢酸エチルで抽出、セライトろ過後、分液、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧留去した後、濃縮残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、化合物(2−III)(9.22g,22.7mmol,90.8%)を得た。
【0113】
d)冷却管を備えた100ml三口フラスコに、化合物(2−III)(2.44g, 6.00mmol)、化合物(2−II)(2.34g,5.00mmol)を入れ、トルエン(20ml)で懸濁させた。反応系にりん酸三カリウム(2.55g,12.0 mmol)、酢酸パラジウム(0.11g,0.5mmol)、ジ−tert−ブチルホスフィノ-2’−4’−6’−トリイソプロピルビフェニル(0.21g,0.5mmol)を添加し、100℃にて5時間撹拌した。放冷後、反応溶液を希塩酸に添加し、酢酸エチルで抽出、セライトろ過後、分液、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧留去した後、濃縮残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、化合物(2−IV)(1.0g,1.26mmol,25.2%)を得た。
【0114】
e) 200mlオートクレーブに、化合物(2−IV)(2.90g,3.65mmol)を入れ、テトラヒドロフラン(60ml)に溶解させた。反応系に10%Pd−C(0.3 g)を添加し、水素圧5MPa、室温で3時間撹拌した。反応溶液をろ過し、溶媒を減圧留去した後に、メタノールでかけ洗いし、ジカルボン酸化合物である化合物(2−V)(2.02g,3.29mmol,90.1%)を得た。
【0115】
化合物(2−V)のH−NMRデータを以下に示す。
【0116】
1H NMR(300 MHz, CDCl3) δ 0.90〜2.30(m, 42H), 2.75〜3.02(m, 4H), 3.10〜3.38(m 2H), 6.59(s, 2H), 6.93(s, 2H)
【0117】
[3]一般式(IV)において、Lが硫黄原子であり、Yが−OHであるジカルボン酸化合物の合成例
(合成経路)
【化21】

【0118】
a)300ml三口フラスコに、デヒドロアビエチン酸(30.1g,100mmol)を入れ、塩化メチレン(100ml)に溶解させた。窒素を吹き込みながらオキサリルクロリド(10.3ml,120mol)を滴下し、室温で1時間攪拌した後、氷冷下にてメタノール(50ml)を滴下し、3時間攪拌した。反応液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液に添加し、塩化メチレンで抽出、分液後、有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧留去した後、濃縮残留物をメタノールでかけ洗いし、化合物(3−I)(26.7g,84.9mmol,84.9%)を得た。
【0119】
b)200ml三口フラスコに、化合物(3−I)(12.6g,40.0mmol)を入れ、塩化メチレンに(30ml)溶解させた。二塩化二硫黄(4.07g,30.4mmol)を添加した後、氷冷下、四塩化チタン(8.70g,45.9mmol)を滴下し、室温で3時間撹拌した。反応溶液を氷水に添加し、酢酸エチルで抽出、分液後、有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧留去した後、濃縮残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、化合物(3−II)(10.5g,15.9mmol,79.5%)を得た。
【0120】
c)還流管を備えた500ml三口フラスコに、化合物(3−II)(10.5g,15.9 mmol)を入れ、エタノール(300ml)、水(20ml)に溶解させた。水酸化カリウム(20g,0.356mol)を添加し、80℃にて18時間還流した。放冷後、反応液を水に添加し、希塩酸で中和、酢酸エチルで抽出、分液後、有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧留去した後、濃縮残留物をメタノールでかけ洗いし、ジカルボン酸化合物である化合物(3−III)(7.25g,11.9mmol,74.8%)を得た。
【0121】
化合物(3−III)のH−NMRデータを以下に示す。
【0122】
1H NMR(300 MHz, CDCl3) δ 0.90〜2.10(m, 42H), 2.70〜2.98(m, 4H), 3.60〜3.80(m 2H), 6.65(s, 2H), 6.97(s, 2H)
【0123】
[4]一般式(IV)において、Lがメチレンであり、Yが−OHであるジカルボン酸化合物の合成例
(合成経路)
【化22】

【0124】
500ml三口フラスコに、デヒドロアビエチン酸(30.1g,0.100mol)、36%ホルムアルデヒド水溶液(4.17g,0.0500mol)を入れ、塩化メチレン(100ml)に溶解させた。反応系に硫酸(20ml)を滴下し、室温にて3時間撹拌した。反応溶液を水に添加し、塩化メチレンで抽出、分液、有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧留去した後、濃縮残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、ジカルボン酸化合物である化合物(4−I)(20.0g,0.0326mol,65.2%)を得た。
【0125】
化合物(4−I)のH−NMRデータを以下に示す。
【0126】
1H NMR(300 MHz, CDCl3) δ 0.90〜2.30(m, 42H), 2.76〜2.98(m, 4H), 3.00〜3.18(m 2H), 3.96(s, 2H), 6.68(s, 2H), 6.95(s, 2H), 11.10(br-s, 2H)
【0127】
[5]自己縮合型モノマーの合成例
合成経路
【化23】

【0128】
a)500ml三口ナスフラスコに、デヒドロアビエチン酸メチル(前記[3]において得た化合物(3−I))(44.0g,0.140mol)、無水コハク酸(20.7g,0.207mol)を入れ、塩化メチレン(240ml)に溶解させた。反応系に無水塩化アルミニウム(63.6g,0.477mlo)を10〜15℃で少量ずつ加えた。室温で3時間攪拌した後、反応液を氷水に添加し、塩化メチレンで抽出、分液、有機層を水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧留去した後、濃縮残留物にメタノールを加えて晶析、かけ洗いし、化合物(5−I)(49.6g,0.120mol,85.7%)を得た。
【0129】
b) 冷却管を備えた300ml三口ナスフラスコに、化合物(5−I)(37.0g,89.3mmol)、トリエチルシラン(31.2g,0.268mol)を入れ、懸濁した。40℃に昇温し、反応系にトリフルオロ酢酸(70.6g,0.619mol)を滴下した後、65℃で12時間攪拌した。放冷後、反応液を氷に添加し、酢酸エチルで抽出、分液、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄、PHを3に調整した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧留去した後、濃縮残留物にn−ヘキサンを加えて晶析、かけ洗いし、化合物(5−II)(32.0g,79.9mmol,89.5 %)を得た。
【0130】
c) 100ml三口ナスフラスコに、化合物(5−II)(6.70g,16.7mmol)を入れ、塩化メチレン(20ml)に溶解させた。反応系にオキサリルクロリド(1.7ml,21.5mmol)を滴下し、室温で2時間攪拌した。反応溶液を濃縮し、濃縮残留物にテトラヒドロフラン(30ml)を加え、溶解させた。反応系に水素化ホウ素ナトリウム(1.3g,34.4mmol)を加え、室温で5時間攪拌した。反応液を水に添加し、6N塩酸を加えた後、酢酸エチルで抽出、分液、有機層を水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧留去し、濃縮残留物をカラムクロマトグラフィーにて精製し、自己縮合型モノマーである化合物(5−III)(3.2g,8.28mmol,49.6%)を得た。
【0131】
化合物(5−III)のH−NMRデータを以下に示す。
【0132】
1H NMR(300 MHz, CDCl3) δ 1.07〜1.98(m, 23H), 2.12〜2.39(m 2H), 2.50〜2.70(m, 2H), 2.77〜2.95(m, 2H), 3.00〜3.19(m, 1H), 3.60〜3.75(m, 2H), 3.65(s, 3H), 6.89(s, 1H), 6.97(s, 1H)
【0133】
[実施例1]
(デヒドロアビエチン酸重合体(A)の合成)
【化24】

【0134】
a)50ml三口フラスコに、化合物(1−IV)(1.00g,1.67mmol)を入れ、塩化メチレン(10ml)に懸濁させた。オキサリルクロリド(0.3ml,3.50mmol)を滴下し、触媒量のN,N−ジメチルホルムアミドを添加し、室温で2時間攪拌した。反応溶液を濃縮し、化合物(1−V)(1.06g,1.67mmol,q.y.)を得た。
【0135】
b)窒素導入管を備えた50ml三口フラスコに、ジカルボン酸化合物である化合物(1−V)(1.06g,1.67mmol)および1,3−プロパンジオール(127mg,1.67mmol)を入れ、1,2−ジクロロベンゼン(1.5ml)に溶解させた。窒素を吹き込みながら攪拌し100℃まで昇温し、1時間、次いで170℃で5時間、さらに200℃で5時間反応させた。放冷後、反応物をジクロロメタン(5ml)に溶解し、2−プロパノール(200ml)に投入して析出した沈殿物をろ別した。該沈殿物をテトラヒドロフラン(5ml)に溶かし、不溶物を除去した後、2−プロパノール(200ml)に投入して再沈殿したポリマーをろ別、2−プロパノールで洗浄し、乾燥して粉末のポリエステル(0.98g)を得て、これをデヒドロアビエチン酸重合体(A)とした。
デヒドロアビエチン酸重合体(B)のGPC測定による重量平均分子量は12000であった。また、デヒドロアビエチン酸重合体(A)の熱物性として、DSCにより昇温速度10℃/分で測定したガラス転移温度Tgは200℃であった。
【0136】
デヒドロアビエチン酸重合体(A)のH−NMRデータを以下に示す。
【0137】
1H NMR(300 MHz, CDCl3) δ 0.90〜2.40(m, 44H), 2.49〜2.77(m 2H), 2.81〜3.09(m, 4H), 3.99〜4.37(m, 4H), 6.88〜6.98(m, 2H), 6.98(s, 2H)
【0138】
[実施例2]
(デヒドロアビエチン酸重合体(B)の合成)
【化25】

【0139】
ジカルボン酸化合物として化合物(2−V)(1.85g,3.01mmol)を用い、その他の条件は実施例1と同様にして酸クロリド(2−VI)(1.96g,3.01mmol)を得た後、1,3−プロパンジオール(229mg,3.01mmol)と重縮合反応および処理を行い、ポリエステル(1.45g)を得て、これをデヒドロアビエチン酸重合体(B)とした。
デヒドロアビエチン酸重合体(B)のGPC測定による重量平均分子量は10700であった。デヒドロアビエチン酸重合体(B)の熱物性として、DSCにより昇温速度10℃/分で測定したガラス転移温度Tgは138℃であった。
【0140】
デヒドロアビエチン酸重合体(B)のH−NMRデータを以下に示す。
【0141】
1H NMR(300 MHz, CDCl3) δ 0.90〜2.30(m, 44H), 2.75〜3.02(m, 4H), 3.10〜3.38(m 2H), 4.00〜4.30(m, 4H), 6.59(s, 2H), 6.93(s, 2H)
【0142】
[実施例3]
(デヒドロアビエチン酸重合体(C)の合成)
【化26】

【0143】
ジカルボン酸化合物として化合物(3−III)(3.15g,4.99mmol)を用い、その他の条件は実施例1と同様にして酸クロリド(3−IV)を得た後、50ml三口フラスコに化合物(3−IV)(3.33g,4.99mmol)および1,3−プロパンジオール(380mg,4.99mmol)を入れジクロロメタン(10ml)に溶解させた。無水ピリジン(10ml)を加え、窒素を吹き込みながら室温で1時間攪拌し、40℃に昇温して2時間、次いで60℃で3時間反応させた。放冷後、反応物をメタノール(100ml)に投入して析出した沈殿物をろ別した。該沈殿物をテトラヒドロフラン(30ml)に溶かし、不溶物を除去した後、メタノール(100ml)に投入して再沈殿した。ポリマーをろ別、メタノールで洗浄し、乾燥して粉末のポリエステル(1.85g)を得て、これをデヒドロアビエチン酸重合体(C)とした。
デヒドロアビエチン酸重合体(C)のGPC測定による重量平均分子量は6600であった。また、デヒドロアビエチン酸重合体(C)の熱物性として、DSCにより昇温速度10℃/分で測定したガラス転移温度Tgは105℃であった。
【0144】
デヒドロアビエチン酸重合体(C)のH−NMRデータを以下に示す。
【0145】
1H NMR(300 MHz, CDCl3) δ 0.90〜2.29(m, 44H), 2.70〜2.98(m, 4H), 3.19〜3.49(m 2H), 3.98〜4.27(m, 4H), 6.85(s, 2H), 7.47(s, 2H)
【0146】
[実施例4]
(デヒドロアビエチン酸重合体(D)の合成)
【化27】

【0147】
ジカルボン酸化合物として化合物(4−I)(24.5g,40.0mmol)を用い、その他の条件は実施例1と同様にして酸クロリド(4−II)を得た後、窒素導入管を備えた200ml三口フラスコに化合物(4−II)(26.0g,40.0mmol)および1,3−プロパンジオール(3.04g,40.0mmol)を入れジクロロメタン(20ml)に溶解させた。無水ピリジン(50ml)を滴下し、窒素を吹き込みながら室温で1時間攪拌し、50℃に昇温して1時間、次いで100℃で3時間、120℃で5時間反応させた。放冷後、反応物をメタノール(1l)に投入して析出した沈殿物をろ別した。該沈殿物をテトラヒドロフラン(50ml)に溶かし、不溶物を除去した後、メタノール(1l)に投入して再沈殿したポリマーをろ別、メタノールで洗浄し、乾燥して粉末のポリエステル(21.5g)を得て、これをデヒドロアビエチン酸重合体(D)とした。
デヒドロアビエチン酸重合体(D)のGPC測定による重量平均分子量は11600であった。また、デヒドロアビエチン酸重合体(D)の熱物性として、DSCにより昇温速度10℃/分で測定したガラス転移温度Tgは125℃であった。
【0148】
デヒドロアビエチン酸重合体(D)のH−NMRデータを以下に示す。
【0149】
1H NMR(300 MHz, CDCl3) δ 0.90〜2.30(m, 44H), 2.76〜2.98(m, 4H), 3.00〜3.18(m 2H), 3.96(s, 2H), 4.02〜4.25(m, 4H), 6.68(s, 2H), 6.95(s, 2H)
【0150】
なお、図1に、本実施例にて用いた化合物(4−I)のH−NMRチャートを示す。また、図2に、得られたデヒドロアビエチン酸重合体(D)のH−NMRチャートを示す。
【0151】
[実施例5]
(デヒドロアビエチン酸重合体(E)の合成)
【化28】

【0152】
窒素導入管を備えた50ml三口ナスフラスコに、化合物(5−III)(2.0g,5.17mmol)を入れ、オルトチタン酸テトラエチル(100mg,0.438mmol)を加えた。200〜250mmHgの減圧下、ゆるやかに乾燥窒素を流しながら温度を徐々に200℃に上げ、2時間加熱し、生成したメタノールを留去した。さらに220℃で2時間、250℃で2時間加熱した。放冷後、メタノールを加えて析出した沈殿物をろ別、メタノールで洗浄した。該沈殿物を乾燥、粉砕して粉末のポリエステル(1.80g)を得て、これをデヒドロアビエチン酸重合体(E)とした。
デヒドロアビエチン酸重合体(E)のGPC測定による重量平均分子量は9700であった。また、デヒドロアビエチン酸重合体(E)熱物性として、DSCにより昇温速度10℃/分で測定したガラス転移温度Tgは102℃であった。
【0153】
デヒドロアビエチン酸重合体(E)のH−NMRデータを以下に示す。
【0154】
1H NMR(300 MHz, CDCl3) δ 1.07〜1.98(m, 23H), 2.12〜2.41(m 2H), 2.45〜2.71(m, 2H), 2.72〜2.95(m, 2H), 2.96〜3.15(m, 1H), 3.92〜4.25(m, 2H), 6.88(s, 1H), 6.96(s, 1H)
【0155】
[評価]
実施例1〜5で得られたデヒドロアビエチン酸重合体(A)〜(E)と、比較例1〜3における比較用ポリマーとして、市販のPC(ポリカーボネート)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、及びPLA(ポリ乳酸)をそれぞれ用いて、それぞれのガラス転移温度Tg(℃)、吸水率(%)、及び加水分解率の各物性を対比し評価した。評価結果を下記表1に示す。
【0156】
比較例1〜3において比較用ポリマーとして用いたPC、PET、及びPLAの詳細は、以下の通りである。
PC:帝人化成(株)製のポリカーボネート、製品名:パンライト L-1225Y、Tg:150℃
PET:SIGMA-ALDRICH社製ポルエチレンテレフタレート、製品名:Poly(ethylene terephthalate granular、Tg:67℃
PLA:三井化学(株)製のポリ乳酸、製品名:LACEA H-140、Tg:57〜60℃
【0157】
<吸水率(%)>
吸水率は、以下のようにして測定した。
実施例1〜5で得られたデヒドロアビエチン酸重合体(A)〜(E)と、比較例1〜3の市販のPC、PET、PLA(各1g)とを、熱プレス(160〜250℃)して、200μmのフィルムを作製した。得られたフィルムを23℃の水に24時間浸し、その後、表面の水滴をよく拭き取り、素早く重量を測定した。吸水率を下記式から算出した。

吸水率(%)=(浸水後のフィルムの重量−浸水前のフィルムの重量)/浸水前のフィルムの重量
【0158】
<加水分解度>
加水分解度は、以下のようにして測定した。
実施例1〜5で得られたデヒドロアビエチン酸重合体(A)〜(E)と、比較例1〜3の比較用ポリマーとして用いた市販のPC、PET、PLA(各1g)とを、THF(テトラヒドロフラン)(30ml)及び1,2−ジクロロエタン(30ml)にそれぞれ溶解し、THF溶液には1N NaOH水溶液(10ml)、1,2−ジクロロエタン溶液には硫酸(0.1ml)を加え、24時間撹拌した。撹拌した溶液を水に投入し、析出した沈殿物の重量平均分子量をGPCにより測定した。
デヒドロアビエチン酸重合体及び比較用ポリマーの各々についての、加水分解後の重量平均分子量と加水分解前の重量平均分子量との比を加水分解度とした。
【0159】
【表1】

【0160】
表1に示されるように、実施例1〜5で得られたデヒドロアビエチン酸重合体(A)〜(E)(ポリエステル重合体)は、PLAとの比較においては、耐熱性及び耐湿耐水性がいずれも向上していることことが判る。また、PET及びPCとの比較においても、デヒドロアビエチン酸重合体(A)〜(E)は、耐湿耐水性が向上していることが判る。
【0161】
また、各実施例のデヒドロアビエチン酸重合体を用いてJIS K7139に準拠して、射出成形にて多目的試験片を作製した。各実施例のデヒドロアビエチン酸重合体は、成形性に優れ、得られた試験片は電子機器の部材に使用可能な強度があることを確認した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デヒドロアビエチン酸に由来するデヒドロアビエチン酸骨格を含む繰り返し単位を有するデヒドロアビエチン酸重合体。
【請求項2】
前記繰り返し単位が、2つのデヒドロアビエチン酸骨格が直接結合して又は連結基を介して結合してなる二量体構造を含む請求項1に記載のデヒドロアビエチン酸重合体。
【請求項3】
デヒドロアビエチン酸誘導体とジオール化合物とを用いて得られたポリエステル重合体である請求項1又は請求項2に記載のデヒドロアビエチン酸重合体。
【請求項4】
前記繰り返し単位が、下記一般式(I)で表される繰り返し単位である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のデヒドロアビエチン酸重合体。
【化1】


(一般式(I)中、Lは単結合又は二価の連結基を示し、Lはアルキレン基又はアリーレン基を示す。)
【請求項5】
前記一般式(I)で表される繰り返し単位が、下記一般式(II)で表される繰り返し単位である請求項4に記載のデヒドロアビエチン酸重合体。
【化2】


(一般式(II)中、L及びLは、前記一般式(I)におけるL及びLと同義である。)
【請求項6】
前記Lが、単結合、−O−、−S−、−CO−、−SO−、−O(C2n)O−、−CO(C2n)CO−、−(C2n)−(ここで、nは1〜20の整数である。)、又は−C(−R)(−R)−(ここで、R及びRは、各々独立に、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。)である請求項4又は請求項5に記載のデヒドロアビエチン酸重合体。
【請求項7】
下記一般式(III)で表される繰り返し単位からなる重合体である請求項1に記載のデヒドロアビエチン酸重合体。
【化3】


(一般式(III)中、Lは単結合又は二価の連結基を表す。)
【請求項8】
重量平均分子量が、5000以上500000以下である請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載のデヒドロアビエチン酸重合体。
【請求項9】
請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載のデヒドロアビエチン酸重合体を含有する複合材料。
【請求項10】
下記一般式(IV)で表される化合物であるデヒドロアビエチン酸誘導体。
【化4】


(一般式(IV)中、Lは単結合又は二価の連結基を示し、Yは、塩素原子、−OH、−OR、−OCOR、−OCOOR、又は−OSORを示し、Rは、アルキル基、又はアリール基を示す。)

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−26569(P2011−26569A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−142916(P2010−142916)
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】