説明

新規な二重標的化抗腫瘍複合体

本発明は、式(I)の2重標的化細胞毒性化合物と、それらの調製とに関する。記述される化合物には、腫瘍特異的作用が与えられており3つの機能的単位:スペーサと、それによって1つに接続されている腫瘍認識部分及び腫瘍選択的酵素基質配列とが組み込まれている。これらの複合体は、血清安定性及びそれと同時に酵素切断性の結果としての腫瘍細胞内での所望の作用が保証されるよう設計されている。
[(L-D)nE]m-F-D-PI-SI-CT (式I)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2重標的化細胞毒性誘導体及びそれらの調製物に関する。記述される化合物には、腫瘍特異的作用が与えられており、3つの機能単位:腫瘍認識部分及び腫瘍選択的酵素基質配列が組み込まれている。これらの複合体は、血清安定性、及びそれと同時に酵素的切断性の結果としての腫瘍細胞内での所望の作用を保証するよう設計されている。
【背景技術】
【0002】
伝統的な癌化学療法は、急速に増殖する癌細胞が、生理学的組織の静止細胞よりも死滅され易いという仮定に基づく。事実、細胞毒性剤は、特異性が非常に不十分であり、重篤な望ましくない作用を引き起こす。ここ30年で、薬物をその作用部位に選択的に送達させる、様々なシステムが検討されてきた。増殖中に癌細胞によって過発現される典型的な受容体に関する知見の最近の向上によって、細胞毒性剤と複合した場合にそれらを腫瘍に優先的に割り当てることができる選択的リガンドの活用が可能になる。一般的なプロドラッグとは異なり、リガンドと薬物との間のリンカーは、循環内で安定でなければならず、癌細胞内への全複合体の内部移行後は、細胞毒性剤が再生されるように化学的または酵素的メカニズムによって容易に切断されるべきである。
【0003】
腫瘍標的化剤複合体の最近の進歩は、モノクローナル抗体、多価不飽和脂肪酸、ヒアルロン酸、及びオリゴペプチドを、腫瘍関連受容体のリガンドにする。
【0004】
現在、いくつかの免疫複合体、即ち:メイタンシン(Liu C.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.、1996、93、8618)、ドキソルビシン(Saleh M.N.ら、J.Clin.Oncol.、2000、18、11、2282)、ハーセプチン(Baselga J.ら、J.Clin.Oncol.、1996、14、737)、カリケアマイシン(Bross P.F.ら、Clin.Cancer Res.、2001、7、1490; Chan S.Y.ら、Cancer Immunol. Immunother.、2003、52、243)が臨床試験中である。後者に関しては、マイロターグ、CD33抗体結合カリケアマイシンが、急性白血病の治療用として2000年にFDAによって承認された(Hammann P.R.ら、Bioconjugate Chem.、2002、13、1、47)。
【0005】
免疫複合体の実際の使用は、非常に強力な薬物にのみ適しているが、それは、限られた量の抗原が腫瘍細胞表面で過発現し、結合親和性を低下させることなくかつ免疫原性を増大させることのない状態では限られた数の分子しか各mAb上に負荷できないからである。最近、腫瘍細胞によって過発現される種々の受容体に割り当てられたオリゴペプチドとの細胞毒性剤のいくつかの複合体が、可能性ある選択的抗腫瘍化学療法として研究されている。オリゴペプチドの中で、最も将来性があるものは、ソマスタチン(Pollak M.N.ら、Proc. Soc. Exp. Biol. Med.、1998、217、143; Fuselier J.A.ら、Bioorg. Med. Chem. Lett.、2003、13、799)、ボムベシン(Moody T.W.ら、J. Biol. Chem.、2004、279、23580)、インテグリン媒介性RGDペプチド(国際公開第2001/17563号、Ruoslahti E.、Nature reviews Cancer、2002、2、83; Dickerson E.B.ら、Mol. Cancer Res.、2004、2、12、663; de Groot F.M.ら、Mol. Cancer Ther.、2002、1、901; Chen X.ら、J. Med. Chem.、2005、48、1098)のようである。腫瘍認識部分と抗癌剤との間の、一般に実験がなされる化学リンカーは、ヒドラゾン、ジスルフィド、及びリソソーム酵素のペプチド基質を含む。リンカーの性質は、生体内での複合体の運命、その安定性、溶解度、及び生物学的利用能を決定するのに必須である。
【0006】
本発明の腫瘍標的化複合体は、スペーサ(リンカー)を用いて一緒に接続された3つの機能単位(腫瘍認識部分及び抗癌剤)で作られている。
【0007】
出願人名義の国際公開第05/111064号は、抗インテグリン活性が付与された、RGD単位を提示するシクロペプチドについて記述している。出願人名義の国際公開第05/111063号は、スペーサを介してインテグリン認識環状ペプチドと複合した7-イミノカムプトテシン誘導体について報告する。
【0008】
出願人名義の国際公開第05/110487号は、インテグリン拮抗薬と20位で複合したカムプトテシン誘導体について報告する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2001/17563号
【特許文献2】国際公開第05/111064号
【特許文献3】国際公開第05/111063号
【特許文献4】国際公開第05/110487号
【特許文献5】国際公開第00/53607号
【特許文献6】国際公開第04/083214号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Liu C.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.、1996、93、8618
【非特許文献2】Saleh M.N.ら、J.Clin.Oncol.、2000、18、11、2282
【非特許文献3】Baselga J.ら、J.Clin.Oncol.、1996、14、737
【非特許文献4】Bross P.F.ら、Clin.Cancer Res.、2001、7、1490
【非特許文献5】Chan S.Y.ら、Cancer Immunol. Immunother.、2003、52、243
【非特許文献6】Hammann P.R.ら、Bioconjugate Chem.、2002、13、1、47
【非特許文献7】Pollak M.N.ら、Proc. Soc. Exp. Biol. Med.、1998、217、143
【非特許文献8】Fuselier J.A.ら、Bioorg. Med. Chem. Lett.、2003、13、799
【非特許文献9】Moody T.W.ら、J. Biol. Chem.、2004、279、23580
【非特許文献10】Ruoslahti E.、Nature reviews Cancer、2002、2、83
【非特許文献11】Dickerson E.B.ら、Mol. Cancer Res.、2004、2、12、663
【非特許文献12】de Groot F.M.ら、Mol. Cancer Ther.、2002、1、901
【非特許文献13】Chen X.ら、J. Med. Chem.、2005、48、1098
【非特許文献14】Dubowchick G.M.ら、Bioconjugate Chem.、2002、13、4、855
【非特許文献15】Rejmanova P.ら、Biomaterials、1985、6、1、45
【非特許文献16】Dubowchick G.M.ら、Bioorg. Med. Chem.、1998、8、3341
【非特許文献17】Carl P.L.ら、J. Med. Chem.、1981、24、5、479
【非特許文献18】Shamis M.L.ら、J. Am. Chem. Soc.、2004、126、6、1726
【非特許文献19】Rostovtsev V.V.ら、Angew. Chem.、2002、41、2596
【非特許文献20】Guidance for Industry and Reviewers document (2002、U.S. Food and Drug Administration、Rockville, Maryland、USA)
【非特許文献21】Remington's Pharmaceutical Sciences (Mack Pub. Co.、N. J.1991)
【非特許文献22】Orlando R.A.ら、J. Biol. Chem. 1991、266、19543
【非特許文献23】Cheng Y.C.ら、Biochem. Pharmacol.、1973、22、3099
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の目的は、3つの単位を含有する新しい分子橋によって細胞毒性剤に接続されたインテグリンαvβ3及びαvβ5認識部分を含有する腫瘍標的化複合体の開発である。後者は、スペーサ、腫瘍関連酵素によって切断可能なペプチド、及び自壊的機能単位で作られている。
【0012】
選択されたスペーサは、受容体との結合に影響を及ぼすことなく全複合体に溶解性を付与する、剛性部分として機能する親水性アミノ酸または複素環構造と交互に配された、小さい柔軟なグリコールで作られている。これら特定のスペーサは、高い溶解特性を有するが、結合領域を妨害するループを形成するその傾向故に得策でない広く使用されている高分子量グリコールよりも優れている。
【0013】
カテプシンBの基質としての、いくつかのリンカー含有ペプチド、例えば、Phe-Lys、Val-Cit (Dubowchick G.M.ら、Bioconjugate Chem.、2002、13、4、855); Gly-Phe-Leu-Gly (Rejmanova P.ら、Biomaterials、1985、6、1、45); D-Ala-Phe-Lys (de Groot F.M.H.ら、Mol. Cancer. Ther.、2002、1、901)が既に記述されている。これらペプチドのいくつかは、抗体に結合したときに首尾よく利用されており、そのかさ高さによって血漿ペプチダーゼから遮断することができる。しかし、本発明者らが、オリゴペプチドの場合のように、小リガンドを含有する複合体に結合されたこれらペプチド配列について実験したとき、これらペプチド配列は、他の筆者によって記述された内容とは対照的に直ぐに切断され、循環内に細胞毒性剤を放出した。特に、Phe-Lysリンカー含有ペプチド(ST3280)は、実施された様々なアッセイの中でも高い不安定性をもたらした。Dubowchickによる上記引用された論文は、カテプシンB感受性ジペプチドリガンドに対処する。同筆者は、4年前に、Citアミノ酸がP1位にあるときのP2位でのアミノ酸の影響に関する別の研究についても公表しており、そのような位置での最良のアミノ酸は、カテプシンBの結合部位内での疎水性相互作用によってValであると結論付けられ(Dubowchick G.M.ら、Bioorg. Med. Chem.、1998、8、3341)、一方、Valの代わりにAlaを含有する類似体は、ドキソルビシンの放出を著しく遅くするのに寄与し、これは本研究の目的とは明らかに対照的なものであった。
【0014】
驚くべきことに、マウスの血液中で安定でありかつ腫瘍細胞内で切断可能であることを予期せず示したAla-CitまたはD-Ala-Citは、作用部位での細胞毒性モチーフの放出を可能にする手段として特に十分適切であることを、ついに見出した。
【0015】
自壊的な基の存在は、エンドペプチダーゼの作用を高めるのにも必ず必要である(Carl P.L.ら、J. Med. Chem.、1981、24、5、479; Shamis M.L.ら、J. Am. Chem. Soc.、2004、126、6、1726)。これらの新しいリンカーは、代謝安定性や細胞内での内部移行後の細胞毒性剤のさらなる放出など、関連ある複合体の必要とされる薬理学的特性を、最適な溶解度及び生物学的利用能と共に、より良く保証する。さらに、これらのリンカーは、標的化デバイスと受容体との結合に適合可能なサイズ及び高次構造を有するように設計されている。
【0016】
新しいリンカーは、様々なリガンドにならびに種々の抗腫瘍剤に結合させることができる、多目的分子橋である。
【0017】
本発明は、一般式I
[(L-D)nE]m-F-D-PI-SI-CT 式I
の化合物を含む
(式中、
Lは、式II
c(R1-Arg-Gly-Asp-R2) 式II
の認識α-インテグリン受容体環状ペプチドであり、
R1は、Amp、Lys、またはAadであり;
R2は、R配置を有するPhe、Tyr、またはAmpであり;
Dは、出現するごとに、同じにしもしくは異ならせることができ、不在または式III
-SP1-A1-SP2-A2-SP3- 式III
の2価の基であり、
SP1は、不在またはR3-(CH2)q-(OCH2-CH2)q-O-(CH2)q-R4であり;
同じまたは異なるR3及びR4は、不在または-CO-、-COO-、-NH-、-O-、もしくは式IV、式VIII、もしくは式IXの2価の基であり、
【化1】

qは、出現するごとに同じにしまたは異ならせることができ、独立して0〜6の間を含めた整数であり;
A1は、不在または、親水性側鎖を保持する天然のもしくは非天然の(L)もしくは(D)-アミノ酸であり;
SP2は、不在またはSP1と同じであり;
A2は、不在またはA1と同じであり;
SP3は、不在またはSP1と同じであり;
m=1または2であり;
n=1または2であり;
Eは、出現するごとに同じにしまたは異ならせることができ、Glu、Lysまたは不在であり;
Fは、Eと同じ、または不在もしくは式Xのヒスチジン類似体であり;
【化2】

但し、トリアゾール環は、D-PI-SI-CT部分に結合しており、カルボニル部分はL含有部分に結合しており、SP1は上記にて定義された通りであり;
PIは、Ala及びCitの間で選択された(L)または(D)アミノ酸で作られている、天然または非天然のオリゴペプチドであり;
SIは、2価の基p-アミノベンジルオキシカルボニルであり;
CTは、細胞毒性基を表す);
それらの互変異性体、それらの幾何異性体、それらの鏡像異性体、ジアステレオマーなどの光学的に活性な形、それらのラセミ体、ならびにそれらの医薬品として許容される塩(但し:
少なくとも1個のDが存在すべきであり;
Eが存在する場合には、EがLysであるときにはそのアミノ部分を通して、またはEがGluであるときにはそのカルボキシル部分を通して、L基を保持する部分に結合されていることを条件とする)。
【0018】
本発明の実施形態は、CTがカムプトテシン誘導体を表す式Iの化合物の実施形態である。
【0019】
本発明の別の実施形態は、CTがカムプトテシン誘導体を表し、R1がAmpであり、R2がPheである式Iの化合物の実施形態である。
【0020】
本発明のその他の実施形態は、PIが、2個または3個のアミノ酸残基を含むオリゴペプチドを表す、式Iの化合物の実施形態である。
【0021】
本発明のさらにその他の実施形態は、m=1及びn=1である式Iの化合物の実施形態である。
【0022】
本発明の別の好ましい実施形態は、m=1及びn=2である式Iの化合物の実施形態である。
【0023】
式Iの化合物は、当業者に周知の標準的な結合法を使用して得ることができる。典型的なまたは好ましい実験条件(即ち、反応温度、時間、試薬のモル数、溶媒など)が与えられた場合、他に指示しない限りその他の実験条件も使用できることが理解されよう。最適な反応条件は、使用される特定の反応物または溶媒に応じて変えてもよいが、そのような条件は、通常の最適化手順によって当業者が決定することができる。
【0024】
本発明はさらに、一般式(I)の化合物を調製するための方法を提供し、例えば、式Vの化合物
(CT-SI-PI)-NH2 (式V)
(式中、CT、SI、及びPIは、上述の通りである)
のPIフラグメントの遊離アミノ基と、
式VIのアジド含有誘導体
L-(SP1-A1-SP2-A2-SP3)-N3 (式VI)
(式中、L、SP1、A1、SP2、A2、及びSP3は上述の通りであり、R4はCOである)
とを反応させることによる方法を提供する。
【0025】
あるいは、式Iの化合物は、式VIIの化合物
(CT-SI-PI)-CO-C≡CH (式VII)
(式中、CT、SI、及びPIは、上述の通りである)
と、式VIの化合物
(但し、Rostovtsev V.V.ら、Angew. Chem.、2002、41、2596に記載されるように、式VIの化合物中のL、SP1、A1、SP2、A2、及びSP3は上述の通りであり、このときR4は存在しないことを条件とする)とを反応させることによって得ることができる。
【0026】
式Iの化合物は、式XIの化合物
(CT-SI-PI)-D-NHCH2-C≡CH (式XI)
(式中、CT、SI、PI、及びDは、上述の通りである)
と、式XIIの化合物
[(L-D)nE]m-COCH2-N3 (式XII)
(式中、L、D、及びEは、上述の通りである)
とを反応させることによって得ることもできる。
【0027】
あるいは、式Iの化合物は、式XIIIの化合物
(CT-SI-PI)-D-N3 (式XIII)
(式中、CT、SI、PI、及びDは、上述の通りである)
と、式XIVの化合物
[(L-D)nE]m-CO-CH(NHD)CH2-C≡CH (式XIV)
(式中、L、D、及びEは、上述の通りである)
とを反応させることによって得ることができる。
【0028】
親水性側鎖を保持するアミノ酸は、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、シトルリン、システイン、グルタミン酸、グルタミン、ヒスチジン、リジン、セリン、トレオニン、及びチロシンからなる群から選択されたアミノ酸を指す。
【0029】
カムプトテシン誘導体または細胞毒性基は、出願人名義で出願された国際公開第00/53607号及び国際公開第04/083214号に記載されている誘導体などのカムプトテシンを意味する。
【0030】
本発明の別の目的は、治療上有効な量の上述の式(I)の化合物を投与するステップを含む、制御されない細胞増殖、浸潤、及び/または転移状態に罹っている哺乳類を治療する方法である。本明細書で使用される「治療上有効な量」という用語は、標的にされた疾患もしくは状態を治療し回復させるのに、または検出可能な治療効果を示すのに必要な、治療薬の量を指す。
【0031】
任意の化合物では、治療上有効な用量は、細胞培養アッセイでまたは動物モデルで、通常はマウス、ラット、モルモット、ウサギ、イヌ、またはブタで、最初に推定することができる。動物モデルは、適切な濃度範囲及び投与経路を決定するのに使用してもよい。次いでそのような情報を使用して、ヒトに投与する場合の有用な用量及び経路を決定することができる。ヒト相当用量(HED)を計算する際、Guidance for Industry and Reviewers document (2002、U.S. Food and Drug Administration、Rockville, Maryland、USA)で提供された換算表を使用することが推奨される。
【0032】
ヒト対象に関する正確な有効用量は、疾患状態の重症度、対象の全体的な健康、対象の年齢、体重、及び性別、食餌、投与の時間及び頻度、薬物の組合せ、反応感受性、及び治療に対する耐性/応答に依存することになる。この量は、通常の実験によって決定することができ、臨床医の判断による。一般に、有効量は、0.01mg/kg〜100mg/kgになり、好ましくは0.05mg/kg〜50mg/kgである。組成物は、患者に個別に投与してもよく、またはその他の薬剤、薬物、もしくはホルモンと組み合わせて投与してもよい。
【0033】
薬品は、治療薬を投与するために、医薬品として許容される担体を含有していてもよい。そのような担体には、抗体、及びその他のポリペプチド、遺伝子、及びリポソームなどのその他の治療薬が含まれるが、この担体は、それ自体が、組成物を受け取る個人に有害な抗体の産生を誘導しないこと、及び過度な毒性なしに投与できることを条件とする。
【0034】
適切な担体は、タンパク質、多糖、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリマーアミノ酸、アミノ酸コポリマー、及び不活性なウイルス粒子など、大きな、ゆっくりと代謝される巨大分子であってもよい。
【0035】
医薬品として許容される担体の徹底した考察は、Remington's Pharmaceutical Sciences (Mack Pub. Co.、N. J.1991) で得ることができる。
【0036】
治療組成物中の、医薬品として許容される担体は、水、生理食塩液、グリセロール、及びエタノールなどの液体を、追加として含有していてもよい。さらに、湿潤または乳化剤やpH緩衝物質などの補助物質を、そのような組成物中に存在させてもよい。そのような担体によれば、患者が摂取する目的で、医薬品組成物を錠剤、丸剤、糖剤、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、及び懸濁液などとして配合することができる。
【0037】
配合後、本発明の組成物は、対象に直接投与することができる。治療がなされる対象は、動物にすることができ;特に、ヒト対象を治療することができる。
【0038】
本発明の薬品は、経口、静脈内、筋肉内、動脈内、髄内、くも膜下腔内、心室内、経真皮もしくは経皮適用、皮下、腹腔内、鼻腔内、経腸、局所、舌下、膣内、経直腸手段を含むがこれらに限定することのない、任意の数の経路によって、または、外科手術後に患部組織に局所的に投与してもよい。
【0039】
投薬治療は、単回用量スケジュールまたは多回用量スケジュールであってもよい。
【0040】
本発明のその他の目的は、活性成分としての少なくとも1種の式(I)の化合物を、有意な治療効果をもたらすような量で含有する医薬品組成物である。本発明によって包含される組成物は、完全に従来の通りであり、医薬品産業では一般的な手法である方法を使用して得られる。選択される投与経路によれば、この組成物は、固体または液体の形になり、経口、非経口、または静脈内投与に適したものになる。本発明による組成物は、活性成分と共に、医薬品として許容される少なくとも1種のビヒクルまたは添加物を含有する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1A】2重標的化細胞毒性誘導体を合成するのに使用されるフラグメント1の化学構造を示す図である。
【図1B】2重標的化細胞毒性誘導体を合成するのに使用されるフラグメント2の化学構造を示す図である。
【図1C】2重標的化細胞毒性誘導体を合成するのに使用されるフラグメント3の化学構造を示す図である。
【図1D】2重標的化細胞毒性誘導体を合成するのに使用されるフラグメント4の化学構造を示す図である。
【図1E】2重標的化細胞毒性誘導体を合成するのに使用されるフラグメント5の化学構造を示す図である。
【図1F】2重標的化細胞毒性誘導体を合成するのに使用されるフラグメント6の化学構造を示す図である。
【図1G】2重標的化細胞毒性誘導体を合成するのに使用されるフラグメント7の化学構造を示す図である。
【図1H】2重標的化細胞毒性誘導体を合成するのに使用されるフラグメント8の化学構造を示す図である。
【図1I】2重標的化細胞毒性誘導体を合成するのに使用されるフラグメント9の化学構造を示す図である。
【図1J】2重標的化細胞毒性誘導体を合成するのに使用されるフラグメント10の化学構造を示す図である。
【図1K】2重標的化細胞毒性誘導体を合成するのに使用されるフラグメント11の化学構造を示す図である。
【図1L】2重標的化細胞毒性誘導体を合成するのに使用されるフラグメント12の化学構造を示す図である。
【図2A】2重標的化細胞毒性誘導体ST3833の化学構造を示す図である。
【図2B】2重標的化細胞毒性誘導体ST3280の化学構造を示す図である。
【図2C】2重標的化細胞毒性誘導体ST4167の化学構造を示す図である。
【図2D】2重標的化細胞毒性誘導体ST4215の化学構造を示す図である。
【図2E】2重標的化細胞毒性誘導体ST5548TF1の化学構造を示す図である。
【図2F】2重標的化細胞毒性誘導体ST5546TF1の化学構造を示す図である。
【図2G】2重標的化細胞毒性誘導体ST5744TF1の化学構造を示す図である。
【図2H】2重標的化細胞毒性誘導体ST5745TF1の化学構造を示す図である。
【図3A】フラグメント1用の構成単位の合成を示す図である。
【図3B】フラグメント2の合成を示す図である。
【図3C】フラグメント5及び12用の構成単位の合成を示す図である。
【図3D】フラグメント6用の構成単位の合成を示す図である。
【図3E】フラグメント10の合成を示す図である。
【図4】各最終化合物の合成に必要とされる2つのフラグメントの性質を、概略的に示す図である。
【0042】
(実施例)
以下の例示された実施例は、決して本発明が保護しようとするものの余すところのないリストではない。
【0043】
略語:
Aad:アミノアジピン酸
Alloc:アリルオキシカルボニル
Amp: p-アミノメチルフェニルアラニン
Boc: t-ブトキシカルボニル
Cit:シトルリン
CPT:カムプトテシン
DCM:ジクロロメタン
DIPEA:ジイソプロピルエチルアミン
DMF:ジメチルホルムアミド
equiv.:当量
Et2O:ジエチルエーテル
Fmoc: 9H-フルオレニルメトキシカルボニル
HCTU: (2-(6-クロロ-1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルアミニウムヘキサフルオロホスフェート)
HOAt: 1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール
HOBt: 1-ヒドロキシベンゾトリアゾール
MALDI:マトリックス支援レーザ脱離イオン法
MeOH:メタノール
NMP: N-メチルピロリドン
PABA: 4-アミノベンジルアルコール
PABC:パラ-アミノベンジルオキシカルボニル
Pmc: 2,2,5,7,8-ペンタメチル-クロマン-6-スルホニル
RP-HPLC:逆相高性能液体クロマトグラフィ
RT:室温
rt:保持時間
SPPS:固相ペプチド合成
TBTU: O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N',N'-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート
TEA:トリエチルアミン
TFA:トリフルオロ酢酸
Tof:飛行時間
概評: 1Hスペクトルを、Bruker機器を用いて300MHzで、示されるようにDMSO-D6、CDCl3、またはD2O溶液中で記録した。化学シフト値は、ppmを単位として、また結合定数はHzを単位として示す。フラッシュカラムクロマトグラフィは、シリカゲル(Merck 230〜400メッシュ)を使用して実施した。
【0044】
(実施例1)
ST3833の合成
DMF 2ml中に溶解したフラグメント2(1当量)を、フラグメント1(その場で調製したもの、0.32mmol)及びDIPEA(1当量)を含有するDMF(7ml)溶液に添加した。pHを、DIPEAで約7.5に調節し、反応混合物を、暗所においてRTで撹拌した。2時間後、フラグメント1をさらに1当量添加し、pHを再び調節し、反応混合物を一晩撹拌したままにした。
【0045】
分取HPLC(カラム、Discovery Bio Wide pore C18、Supelco、250×21.2mm、10μm;移動相: H2O中29% CH3CN+0.1% TFA、λ=220nM)による精製及び凍結乾燥の後、ST3833 365mgが97.6%の純度で得られた。
収率60%。
【0046】
分析HPLC(Gemini、Phenomenex、C18、250×4.6mm、5μm;移動相: H2O中34% CH3CN+0.1% TFA、λ=220nm)。複合体は、rt 7.96及び10.43分で2つのピークを示すが、これは当初の細胞毒性分子のE/Z異性体の混合物に起因する。
Maldi-Tof質量: 1650.71[M+H]+
1H-NMR (DMSO-D6)、主要シフト、δ: 9.28、8.57、8.28、8.22、8.14、8.07、7.93、7.88、7.75、7.65、7.55、7.45、7.36、7.24、7.15、7.11、7.03、7.02、6.42、5.95、5.42、4.94、4.60、4.41、4.28、4.09、3.95、3.89、3.57、3.48、3.18、3.00〜2.31、1.91、1.75、1.60〜1.30、1.25、0.90。
【0047】
(実施例2(比較用))
ST3280の合成
フラグメント1とフラグメント3との結合を、alloc保護基を除去する前に、実施例1に記述した手順に従って行った。[Alloc-ST3280](0.078mmol)をDMF 3mlに溶かした溶液に、Bu3SnH(0.172mmol)、AcOH(0.375mmol)、及びPd(PPh3)4(0.003mmol)を添加した。反応混合物を、Ar中RTで1時間撹拌した。減圧下で溶媒を蒸発させた後、残留物を、分取HPLC(カラム、Alltima、Alltech、RP18、10μm、250×22mm;移動相: H2O中34% CH3CN+0.1% TFA)によって精製した。凍結乾燥後、複合体が99.9%の純度で得られた。
収率=55%。
分析HPLC(Gemini、Phenomenex、C18、250×4.6mm、5μm;移動相: H2O中35% CH3CN+0.1% TFA、λ=360nm)。E/Z異性体のrt: 7.24及び9.61分。
ESI質量: 1696[M+H]+
1H-NMR (DMSO-D6)、主要シフト、δ: 8.57、8.28、8.22、8.14、8.07〜7.50、7.36、7.24、7.20〜6.90、6.42、5.42、4.94、4.60、4.41、4.28、4.18〜4.00、3.95、3.90、3.57、3.48、3.12〜2.25、1,91、1.55、1.38、0.90。
【0048】
(実施例3)
ST4167の合成
フラグメント4(0.09mmol)及びフラグメント(88mg、0.09mmol)をDMF 2mlに溶かした溶液に、アスコルビン酸ナトリウム(0.089mmol)及びCuSO4・5H2O(0.009mmol)をH2O 500μlに溶かした溶液を添加した。pHを、NaOHの添加によってpH6に調節し、懸濁液をRTで一晩撹拌した。減圧下で溶媒を蒸発させた後、残留物を、分取HPLC(カラム、Alltima C18、10μm、Alltech;移動相: H2O中33% CH3CN+TFA 0.1%、λ=220nm)によって精製した。凍結乾燥後、所望の付加物72mgが97%の純度で得られた。
収率=44%。
分析HPLC:(カラム、Gemini C18、250×4.6mm、5μm;移動相: H2O中34% CH3CN+0.1% TFA、λ=220nm)。rt=7.7及び9.9分。
ESI質量: 1745.7[M+H]+
1H-NMR (DMSO-D6 + D2O)、主要シフト、δ: 8.90、8.44、8.33、8.18、8.03〜7.84、7.8〜7.69、7.45、7.39、7.2〜6.94、5.48〜5.30、5.19、4.89、4.69、4.6〜4.24、4.20、4.13、4.02、3.89〜3.52、3.5〜3.37、3.24、3.10〜2.62、2.40〜2.30、1.93〜1.25、0.85。
【0049】
(実施例4)
ST4215の合成
フラグメント4とフラグメント6との結合を、実施例3に記述した手順に従い行った。
【0050】
付加環化から得られた粗製反応生成物を、分取HPLC(カラム、Alltima、C18、10μm、Alltech;移動相: H2O中30% CH3CN+0.1% TFA)によって精製した。凍結乾燥後、所望の付加物52mgが98.6%の純度で得られた。
収率=41%。
分析HPLC(Gemini、Phenomenex、C18、250×4.6mm、5μm;移動相: H2O中30% CH3CN+0.1% TFA、λ=220nm)。rt=11.23及び15.43分。
ESI質量: 2106[M+H]+
1H-NMR (DMSO-D6)、主要シフト、δ: 9.79、9.13、8.42、8.15、7.95、7.86、7.80〜7.69、7.45〜7.39、7.18〜6.70、5.47〜5.24、4.85、4.60〜4.30、4.28〜3.65、3.64〜3.31、3.30〜2.61、2.43〜2.30、1.91〜1.38、1.33、0.84。
【0051】
(実施例5)
ST5548TF1の合成
フラグメント4とフラグメント7との付加環化を、実施例3で記述した手順に従い行った。分取HPLC後、所望の付加物が100%の純度で得られた。
収率=45%。
分析HPLC(Gemini、Phenomenex、C18、250×4.6mm、5μm;移動相: H2O中29% CH3CN+0.1% TFA、λ=220nm)。rt=10.84及び15.22分。
Maldi質量: 2120.89[M+H]+
1H-NMR (DMSO-D6) 主要シフト、δ: 9.94、9.28、9.04、8.58、8.52、8.27〜8.17、8.03、7.93〜7.73、7.55、7.37、7.25、7.11〜7.07、6.82、6.56、6.41、5.90、5.42〜5.29、4.95、4.60〜4.53、4.46、4.37、4.25、4.16、4.01〜3.96、3.84、3.65〜3.37、3.17、3.10、3.01〜2.88、2.42〜2.36、1.90〜1.86、1.75〜1.71、1.61〜1.58、1.50〜1.30、0.89。
【0052】
(実施例6)
ST5546TF1の合成
フラグメント4とフラグメント8との結合を、実施例3で記述した手順に従い行った。付加環化から得られた粗製反応生成物を、分取HPLC(Alltima、Alltech、RP18、250×22mm、10μm;移動相: H2O中28% CH3CN+0.1% TFA、λ=220nm)によって精製した。凍結乾燥後、ST5546TF1が100%の純度で得られた。
収率=38%。
分析HPLC(Gemini、Phenomenex、C18、250×4.6mm、5μm;移動相: H2O中28% CH3CN+0.1% TFA、λ=220nm)。rt=11.38及び16.16分。
Maldi質量: 2480[M+H]+
1H-NMR (D2O) 主要シフト、δ: 8.73、8.52、7.83〜7.74、7.62、7.39、7.19、7.05、6.93、6.87、6.63、5.58〜5.49、4.91、4.68〜4.26、4.04、3.85〜3.42、3.24〜3.12、2.93〜2.87、2.77、2.65〜2.60、2.11、1.93、1.82、1.72、1.63、1.58〜1.49、1.12。
【0053】
(実施例7)
ST5744TF1の合成
アスコルビン酸ナトリウム(0.014mmol)及びCuSO4・5H2O(0.0014mmol)の14μl水溶液を、フラグメント9(15mg、0.014mmol)及びフラグメント10(34mg、0.016mmol)を含有する2ml溶液(DMF/H2O: 1/1)に添加した。得られた反応混合物を、RTで1.5時間撹拌した。次いで溶媒を減圧下で除去した。HPLC(カラム、Alltima、Alltech、C18、10μm、250×22mm;移動相: H2O中30% CH3CN+0.1% TFA)を通した精製の後、所望の付加物が得られた。
収率=37%。
分析HPLC(カラムGemini、移動相H2O中29% CH3CN+0.1% TFA)。rt=9.2及び12.6分。
Maldi-TOF[M+H]+ 2988.78。
1H-NMR (DMSO-D6 + D2O) 主要シフト、δ: 9.30、8.56、8.40、8.22、8.19、8.01、7.92〜7.85、7.83、7.78〜7.69、7.53、7.37、7.23、7.08、6.68、5.42〜5.3、5.21、5.10、4.93、4,74、4.37〜4.34、4.23、4.20〜4.03、3.89、3.85、3.61、3.56〜3.36、3.29〜3.16、3.07、3.00〜2.73、2.38、2.10、1.85、1.72、1.55、1.40〜1.30、1.23、0.87。
【0054】
(実施例8)
ST5745TF1の合成
アスコルビン酸ナトリウム(0.016mmol)及びCuSO4・5H2O(0.0016mmol)の16μl水溶液を、フラグメント11(33.2mg、0.032mmol)及びフラグメント12(84mg、0.031mmol)を含有する溶液(DMF/H2O: 4/3、3.5ml)に添加した。得られた溶液を、マイクロ波照射(90W)に2分間かけた。観察された最高温度は120℃に達した。HPLC(カラム、Alltima、Alltech、C18、10μm、250×22mm;移動相: H2O中32% CH3CN+0.1% TFA)を通した精製の後、所望の付加物が97%の純度で得られた。
収率=42%。
分析HPLC(カラムGemini、移動相H2O中29% CH3CN+0.1% TFA)。rt=10.2及び12.5分。
Maldi質量:[M+H]+ 3723。
1H-NMR (DMSO-D6 + D2O) 主要シフト、δ: δ: 9.05、8.34〜8.09、7.82〜7.71、7.42〜7.24、7.06〜6.99、6.66、5.49、5.55〜5.11、4.79、4.57、4.37〜3.97、3.70〜3.38、3.16、3.01〜2.87、2.34〜2.32、2.00〜1.55、1.42〜1.28、1.19、0.84。
【0055】
(実施例9)
フラグメント1の合成
c{Arg-Gly-Asp-D-Phe-Amp[CO-CH2-(O-CH2-CH2)2-O-CH2-CO-N3]}
シクロペプチドアシルヒドラジドのマイクロ波支援固相合成
Fmoc-Gly-SASRIN(登録商標)(2.53g、2mmol)を、20%ピペリジンを含有するDMF 40ml中に懸濁し、25Wに3分間かけた。樹脂を濾過し洗浄した後、次のアミノ酸を2当量含有する溶液を添加し、その後、2当量のHOBT及びTBTUをDMF 36ml中に含有する溶液を添加した。最後に、NMP 5ml中に溶解したDIPEA 4当量を添加し、懸濁液を30Wで5分間照射した。濾過及びFmoc脱保護の後、次の結合を、ペプチドが完了するまで同じ方法で実施した。アミノ酸の添加順序は、Fmoc-Arg(Pmc)-OH、Fmoc-Amp構成単位(合成に関しては図3a参照)、Fmoc-D-Phe-OH、及びFmoc-Asp(OtBu)-OHであった。
【0056】
最後のFmoc脱保護及び洗浄の後、樹脂からの切断を、TFAをDCM(60ml)に溶かした1%溶液で15分間処理することによって行った。濾過後、同じ操作を5回繰り返した。合わせた濾液を、ピリジンの添加によって中和し、乾燥させた。CH3CN 1500ml中に溶解した残留物に、HOBT及びTBTU(3当量)と1% DIPEAとを添加し、反応混合物をRTで1時間撹拌した。次いで溶媒を減圧下で蒸発させた。フラッシュカラムクロマトグラフィ(DCM/MeOH: 94/6→92/8)による精製の後、所望の保護シクロペプチドが50%の収率で得られた。
【0057】
後者を、TFA/H2O: 95/5に溶解し、RTで1時間撹拌した。次いで溶媒を減圧下で蒸発させ、TFA/Et2Oからの沈殿によって精製した後にシクロペプチドが98%の収率で得られた。
分析HPLC(カラム、Purosphere STAR(登録商標)Merck、RP18、250×4mm、5μm;移動相: H2O中20% CH3CN+0.1% TFA; λ=220nm)。rt=9.14分。
Maldi-Tof質量: 870.13[M+H]+
【0058】
脱保護アシルヒドラジド(0.32mmol)及びHOAT(1.91mmol)を、DMF 7ml中に溶解し、亜硝酸t-ブチル(0.38mmol)を添加した。反応混合物を30分間撹拌した。アシルアジドは単離せず、次のステップにおいていかなる精製もすることなく使用した。
【0059】
(実施例10)
フラグメント2の合成
HCl.Ala-Cit-PABC-CPT
ステップ1:
Boc-Cit-OH(1g、3.63mmol)、(PABA、1.3g、10.9mmol)、HOAT(0.74g、5.45mmol)、DIPEA(0.93ml、5.45mmol)、及びDCC(1.12g、5.45mmol)をDMF(65ml)に溶かした溶液を、RTで一晩撹拌した。溶媒を減圧下で蒸発させた後、残留物を、フラッシュカラムクロマトグラフィ(DCM/MeOH: 90/10→85/15)により精製した。Boc脱保護を、先の中間体とTFA/DCM 1/1とを反応させることによって行い;減圧下で溶媒を除去した後、TFA.Cit-PABA 520mgが得られた。
収率=73%。
【0060】
ステップ2:
Alloc-Ala-OH(472mg、2.68mmol)、DCC(272mg、1.34mmol)、及びDIPEA(460μl、2.68mmol)をDCM/DMF(v/v=1/1、20ml)の混合物に溶かした0℃の溶液に、TFA.Cit-PABAを添加し、溶液を6時間撹拌したままにした。溶媒を減圧下で除去し、残留物を、pH2の水に溶解した。得られた溶液を、EtOAcで2回抽出した。水相を、NaHCO3の添加によって中和し、水を減圧下で除去した。フラッシュクロマトグラフィ(EtOAc/MeOH=85/15)による精製によって、Alloc-Ala-Cit-PABA 398mgが得られた。
収率=69%。
【0061】
ステップ3:
後者(392mg、0.9mmol)を乾燥DMF 5mlに溶かした溶液に、クロロギ酸4-ニトロフェニル(363mg、1.8mmol)をDCM 20ml及びピリジン150μlに溶かしたものを添加し、反応混合物を1時間撹拌した。溶媒を、減圧下で除去し、残留物を冷Et2Oで数回摩砕した。
【0062】
ステップ4:
先の付加物をDMF 25ml中に溶かした溶液に、7-(2-アミノエトキシイミン)-メチル-カムプトテシン.HCl(423.5mg、0.90mmol)及びTEA(150μl、1.1mmol)を添加し、反応混合物を5時間撹拌した。溶媒を減圧下で除去し、残留物を水で数回摩砕して、過剰なTEAを除去した。フラッシュクロマトグラフィ(DCM/MeOH: 90/10)による精製後、保護フラグメント2 320mg(0.36mmol)が得られた。
収率=40%(2ステップ)。
【0063】
ステップ5:
上記得られた保護フラグメント2をDMF(3.8ml)中に溶かした溶液に、Bu3SnH(220μl、0.8mmol)をDCM(3.8ml)に溶かした溶液、水40μl、最後にPd[(PPh)3]4(17mg、0.014mmol)を添加し、得られた反応混合物を15分間撹拌した。溶媒を減圧下で除去することにより、pH3の水(65ml)に吸収される固体が得られた。水層をEt2Oで抽出し(25ml×3)、その後、濃縮することによって、純粋なフラグメント2がその塩酸塩として得られた。
収率=93%。
HPLC (Gemini、Phenomenex、C18、250×4.6mm、5μm;移動相: H2O中28% CH3CN+0.1% TFA、λ=220nm)。rt=8.9及び12.3分。
Maldi質量=834 [M+Na]+
【0064】
(実施例11)
フラグメント3の合成
TFA.Phe-Lys(Alloc)-PABC-CPT
標題の化合物を、実施例10で記述した手順に従って、Boc-Cit-OHの代わりにBoc-Lys(Alloc)-OHから出発しかつAlloc-Ala-OHの代わりに第2のステップでBoc-Phe-OHを使用して得た。
分析HPLC (Purosphere STAR、Merck、5μm;移動相: H2O中35% CH3CN+0.1% TFA、λ=220nm)。rt=18.00及び25.29分。
Maldi質量: 965 [M+Na]+
【0065】
(実施例12)
フラグメント4(HC≡C-CO-Ala-Cit-PABC-CPT)の合成
フラグメント2(0.12mmol)をDMF 3ml中に溶かした溶液に、DIPEA(0.31mmol)、プロピオル酸(0.18mmol)、及びHOAT(0.18mmol)を添加し、溶液を0℃に冷却し、その後、DCC(0.21mmol)を添加した。反応混合物をRTで1.5時間撹拌した。減圧下で溶媒を除去した後、残留物を、フラッシュカラムクロマトグラフィ(DCM/MeOH: 9/1→8/2)により精製した。
収率=72%。
分析HPLC (Gemini、Phenomenex、C18、250×4.6mm、5μm;移動相: H2O中31% CH3CN+0.1% TFA、λ=220nm)。rt=11.46及び16.14分。
Maldi質量: 863.8 [M+H]+及び885.8 [M+Na]+
【0066】
(実施例13)
フラグメント5 c{Arg-Gly-Asp-D-Phe-Amp-[CO-(CH2)2-(O-CH2-CH2)2-O-(CH2)2-N3]}の合成
標題のシクロペプチドを、実施例9に記述した手順に従い、構成単位Fmoc-Amp[CO-(CH2)2-(O-CH2-CH2)2-O-(CH2)2-N3]をSPPSの第2のステップに組み込んで合成した。
分析HPLC (Gemini、Phenomenex、C18、250×4.6mm、5μm;移動相: H2O中30% CH3CN+0.1% TFA、λ=220nm)。rt=8.3分。
Maldi質量: 881 [M+H]+
【0067】
(実施例14)
フラグメント6 c{Arg-Gly-Asp-D-Phe-Amp-[CO-(CH2)2-(O-CH2-CH2)2-O-(CH2)2-NH-Cit-CO-(CH2)2-(O-CH2-CH2)2-O-(CH2)2-N3]}の合成
このシクロペプチドを、実施例9で記述した手順に従い、SPPSの第2のステップでFmoc-Amp [CO-CH2-(O-CH2-CH2)2-O-CH2-CO-N3]の代わりに構成単位Fmoc-Amp-[CO-(CH2)2-(O-CH2-CH2)2-O-(CH2)2-NH-Cit-CO-(CH2)2-(O-CH2-CH2)2-O-(CH2)2-N3]}を組み込んで合成した。
分析HPLC (Gemini、Phenomenex、C18、250×4.6mm、5μm;移動相: H2O中25% CH3CN+0.1% TFA)。rt=10.79分。
Maldi-Tof質量: 1241 [M+H]+
【0068】
(実施例15)
フラグメント7の合成
c{Arg-Gly-Asp-D-Tyr-Amp[CO-(CH2)2-(O-CH2-CH2)2-O-(CH2)2-NH-Cit-CO-(CH2)2-(O-CH2-CH2)2-O-(CH2)2-N3]}
標題のシクロペプチドを、実施例14で記述した手順に従い、SPPSの第3のステップでFmoc-D-Tyr-(t-Bu)-OHを組み込んで合成した。
分析HPLC (Gemini、Phenomenex、C18、250×4.6mm、5μm;移動相: H2O中22% CH3CN+0.1% TFA、λ=220nm)。rt=8.87分。
Maldi質量: 1256.96 [M+H]+
1H-NMR (D2O) 主要シフト、δ: 7.43、7.29、7.19、6.94、4.93、4.59、4.53〜4.37、4.01〜3.65、3.57、3.35、3.27、3.14〜3.07、2.95〜2.87、2.79〜2.72、2.03〜1.60。
【0069】
(実施例16)
フラグメント8の合成
c{Arg-Gly-Asp-D-Tyr-Amp[CO-(CH2)2-(O-CH2-CH2)2-O-(CH2)2NH-Cit]2-CO-(CH2)2-(O-CH2-CH2)2-O-(CH2)2N3}
標題のシクロペプチドを、実施例15で記述した手順に従い、SPPSの第2でFmoc-Amp-[CO-(CH2)2-(O-CH2-CH2)2-O-(CH2)2NH-Cit]2-CO-(CH2)2-(O-CH2-CH2)2-O-(CH2)2N3を組み込んで合成した。
分析HPLC (Gemini、Phenomenex、C18、250×4.6mm、5μm;移動相: 21% CH3CN、λ=220nm)。rt=11.62分。
Maldi質量: 1617.31 [M+H]+
1H-NMR (D2O)、主要シフト、δ: 7.23、7.10、7.05、6.73、4.58、4.40、4.33〜4.17、3.82〜3.47、3.40、3.38、3.16〜3.05、2.96〜2.82、2.75、2.69、2.58、1.84〜1.40。
【0070】
(実施例17)
フラグメント9の合成
ステップ1:
無水3,6,9-トリオキサウンデカンジオン酸(2.1g、9.43mmol)を0℃で63mlのDCMに懸濁した懸濁液に、DCC(97.2mg、0.47mmol)、p-ニトロフェノール(437mg、0.31mmol)、TEA(1.31ml、9.43mmol)、及びDMAP(7.7mg、0.06mmol)を添加した。30分後、反応混合物を、H2O、0.1N HCl、H2Oで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥した後、小体積に濃縮し、冷凍庫内で1時間保持し、その後、濾過した。塩酸プロパルギルアミン(144mg、1.57mmol)及びTEA(262μl、1.88mmol)を濾液に添加し、数分後、溶媒を減圧下で除去した。得られた残留物を、H2O 20ml中に溶解し、Dowex 50 W X8に通して濾過した。母液をDCMで2回抽出して、残留ニトロフェノールを除去し、濃縮することによって、所望のアルキン-PEG-CO2Hが白色固体として得られた。
収率=72%。
【0071】
ステップ2:
DCC(25mg、0.12mmol)を、Ala-Cit-PABC-CPT(フラグメント2、56mg、0.06mmol)、アルキン-Peg-CO2H(22mg、0.085mmol)、HOAT(16mg、0.12mmol)、及びDIPEA(41μl、0.24mmol)を1.5mlのDMFに溶かした冷(0℃)溶液に添加した。次いで反応混合物をRTで一晩撹拌した。濾過後、濾液を濃縮乾固し、得られた残留物をフラッシュクロマトグラフィ(DCM/MeOH: 85/15)により精製することによって、所望の付加物40mgが黄色の固体として最終的に得られた。
収率=63.5%。
分析HPLC (カラムGemini Phenomenex C18; 250×4.6mm、5μm; H2O中32% CH3CN+0.1%TFA)。rt=11.6及び16.3分。
ESI質量 [M+H]+ 1053.42
【0072】
(実施例18)
フラグメント10の合成(図3e参照)
ステップ1:
DCC(84mg、0.41mmol)を、L-グルタミン酸ジ-tert-ブチルエステル塩酸塩(100mg、0.34mmol)、アジド酢酸(41mg、0.41mmol)、HOAT(0.41mmol)、及びDIPEA(127ml、0.74mmol)を4.6mlのDCMに溶かした冷(0℃)溶液に添加した。反応混合物をRTで2.5時間撹拌した。濾過後、有機溶液をDCMで30mlまで希釈し、H2O、1N HCl、5% NaHCO3、及びH2Oで洗浄した。溶媒を減圧下で除去し、得られた残留物を3mlのTFAに溶解し、1時間撹拌した。TFAを、その番になったら減圧下で除去することにより、2-(2-アジド-アセチルアミノ)-ペンタジオン酸が得られた。
【0073】
ステップ2:
2-(2-アジド-アセチルアミノ)-ペンタジオン酸を、DCM/DMF(8/1)の45ml混合物に溶解した。tert-ブチル-12-アミノ-4,7,10-トリオキサドデカノエート(281mg、1.01mmol)、HOAT(137mg、1.01mmol)、DIPEA(174μl)、及びDCC(209mg、1.014mmol)との標準的な結合によって、粗製生成物の獲得が可能になり、この生成物を、フラッシュクロマトグラフィ(DCM/MeOH: 95/5)により精製することによって、所望のビス-カルボン酸エステル中間体175mgが固体生成物として得られた。
収率=68.4%。
1H-NMR (CDCl3)、δ: 7.54、7.23、6.74、4.42、4.01、3.70、3.61、3.41、2.50、2.35、2.08、1.44。
【0074】
ステップ3:
上記得られた化合物を、TFAを用い、標準条件を使用して脱保護化した。全ての出発材料が消失したら、TFAを減圧下で除去し、その結果ビス-カルボン酸中間体が得られ、これをさらなる精製に全く供することなく次のステップで使用した。
【0075】
ステップ4:
N-ヒドロキシスクシンイミド(63mg、0.55mmol)をDMFに溶かした溶液を、0℃で、上記得られた中間体の溶液に添加し、その後、DCC(115mg、0.55mmol)を添加した。反応混合物を、RTで一晩撹拌した。粗製の所望の生成物が、標準的な後処理の後に得られ、さらなる精製に全く供することなく次のステップで使用した。
【0076】
ステップ5:
上記得られた中間体を、2mlのDCMに溶解し、DIPEA(153μl、0.93mmol)の存在下、3.5mlのDMFで溶解したシクロペプチドc{Arg(Pmc)-Gly-Asp(OtBu)-D-Tyr(tBu)-Amp} (725mg、0.69mmol)と、RTで1.5時間反応させた。シクロペプチドc{Arg(Pmc)-Gly-Asp(OtBu)-D-Tyr(tBu)-Amp}は、SPPSにより、実施例15で記述した手順に従って、Fmoc-Amp-[CO-(CH2)2-(O-CH2-CH2)2-O-(CH2)2-NH-Cit-CO-(CH2)2-(O-CH2-CH2)2-O-(CH2)2-N3]})の代わりにFmoc-Amp(Cpz)-OHを使用して調製した。粗製残留物を、分取HPLC(カラムAlltima、C18 Alltech; 10μm、250×22mm; H2O中69% CH3CN+0.1%TFA)によって精製した。
収率=48%。
【0077】
ステップ6:
最終的な脱保護を、TFA(540当量)及びチオアニソール(110当量)を含む1mlのDCM中で行うことにより、粗製生成物が得られ、これを冷Et2Oから数回連続して沈殿させることによって精製した。所望のフラグメント10が、白色固体として得られた。
収率=69%。
分析HPLC (カラムGemini Phenomenex C18; 250×4.6mm、5μm; H2O中22% CH3CN+0.1%TFA)。rt=10.9
MALDI質量 [M+H]+ 1935.22。
【0078】
(実施例19)
フラグメント11の合成
フラグメント2(80mg、0.094mmol)及びDIPEA(19μl、0.11mmol)をDMF(1ml)に溶かした溶液に、0.5mlのDCMに溶解したフラグメント5の構成単位(図3c、37mg、0.11mmol)の合成中にステップiiで得られたスクシンイミド誘導体を添加した。反応混合物を、RTで5時間撹拌した。減圧下で溶媒を蒸発させた後、残留物を、分取HPLC(カラムAlltima、10μm、250×22mm;移動相 H2O中37% CH3CN+0.1%TFA)によって精製した。rt=9.7及び12.4分。
収率=76.3%。
ESI質量 [M+H]+ 1041.42。
【0079】
(実施例20)
フラグメント12の合成
ステップ1:
アスコルビン酸ナトリウム(90μl)及び0.5M CuSO4・5H2O(45μl)の水性2.5M溶液を、(1,3-ビス-プロプ-2-イニルカルバモイル-プロピル)-カルバミン酸ベンジルエステル(72.5mg、0.20mmol)及びc {Arg(Pmc)-Gly-Asp(OtBu)-D-Tyr(tBu)-Amp-[CO-(CH2)2-(O-CH2-CH2)2-O-(CH2)2-N3]} (572mg、0.45mmol)のDMF/H2O(7/5)の12ml溶液に添加した。後者は、実施例13で述べた手順に従い、Fmoc-D-Phe-OHの代わりにFmoc-D-Tyr-(t-Bu)-OHを使用して合成した。得られた反応混合物を、マイクロ波照射(90W)に2分間かけた。観察された最高温度は121℃であった。照射は、出発材料の消失が完了するまで3回繰り返し、この状態を、HPLC(カラムGemini、250×4.6mm、5μm;移動相 H2O中35% CH3CN+0.1% TFA)によってモニタした。次いで溶媒を減圧下で除去し、粗製反応混合物を、フラッシュクロマトグラフィ(DCM/MeOH勾配: 93/7→90/10→80/20)に通して精製することにより、所望の生成物417mgが得られた。
収率=71%。
ESI質量:1453.6 (m/z 2+)、969.4 (m/z 3+)。
【0080】
ステップ2:
DMF(3ml)及びMeOH(5ml)の混合物に溶解した、上記得られた生成物406mgを、ギ酸アンモニウム(44mg、0.70mmol)及びPd/C(200mg)を用いてベンジルオキシカルボニル保護基を除去するために脱保護した。懸濁液を3時間撹拌し、次いで濾過した。溶媒を減圧下で除去し、得られた生成物を、さらなる精製に全く供することなく次のステップで使用した。
【0081】
ステップ3:
上記得られた生成物をDMF(3ml)に溶かした溶液を、プロパルギルグリシンとメチル-(PEG)12-NHS(102mg、0.15mmol)とのDCM(4.5ml)中での標準的な結合から得られた中間体の溶液に添加し、その後、HCTU(62mg、0.15mmol)及びDIPEA(51μl、0.30mmol)を添加した。得られた溶液をRTで2時間撹拌した。減圧下で溶媒を除去した後、残留物をDCM(300ml)中に溶解し、H2Oで洗浄した。次いで有機相を蒸発させることにより、所望の付加物312mgが得られた。
収率=67%
ESI質量:1741 (m/z 2+)、1168 (m/z 3+)。
【0082】
ステップ4:
上記得られた中間体を、TFA/DCM/チオアニソール(1/1/0.3)の混合物を用いて完全に脱保護した。化合物を、冷Et2Oから沈殿させることによって精製し、その結果、所望のフラグメント12が245mg得られた。
収率=92%。
MALDI質量: 2679.79実測値
【0083】
生物学的結果
インテグリン受容体αvβ3及びαvβ5との複合体の固相結合アッセイ
受容体結合アッセイを、記載されているように(Orlando R.A.ら、J. Biol. Chem. 1991、266、19543)行った。αvβ3及びαvβ5を、コーティング緩衝液(20mM Tris、pH7.4、150mM NaCl、2mM CaCl2、1mM MgCl2、1mM MnCl2)中でそれぞれ500ng/ml及び1μg/mlに希釈し、一定分量100μLを96ウェルマイクロタイタープレートに添加し、4℃で一晩インキュベートした。プレートを、遮断/結合緩衝液(50mM Tris、pH7.4、100mM NaCl、2mM CaCl2、1mM MgCl2、1mM MnCl2、1%ウシ血清アルブミン)で1回洗浄し、次いでさらに2時間、RTでインキュベートした。プレートを、同じ緩衝液で2回濯ぎ、RTで3時間、放射標識リガンド[125I]エキスタチン(Amersham Pharmacia Biotech)0.05nM(αvβ5に関しては0.1nM)と共に、競合阻害剤の存在下でインキュベートした。インキュベーション後、ウェルを洗浄し、放射能をγカウンタ(Packard)で決定した。リガンドの非特異的結合は、モル数が過剰な(200nM)冷エキスタチンで決定した。
【0084】
Table 1(表1)及び2(表2)で報告されたIC50値は、エキスタチン結合の50%阻害に必要とされる化合物の濃度として計算し、これらの値をPrism GraphPadプログラムにより評価した。競合リガンドのKiは、Cheng-Prusoffの方程式(Cheng Y.C.ら、Biochem. Pharmacol.、1973、22、3099)に従い計算した。値は、2つの独立した実験から得た3回の測定値の、平均±log標準誤差である。複合体のほとんどは、強力な活性と共に低ナノモル範囲での阻害を示した。ST3280により実証された生体外活性が、主に化合物そのもの不安定性による分解生成物の固有活性に起因したことは、注目すべきことである。
【0085】
【表1】

【0086】
【表2】

【0087】
ビトロネクチンに対する腫瘍細胞の接着アッセイ
A2780ヒト卵巣癌及びPC3癌細胞を、10%ウシ胎児血清及び50μg/ml硫酸ゲンタマイシンを含有する培地RPMI 1640で増殖させた。細胞を、飽和湿度と空気95%及びCO2 5%の雰囲気を有する37℃のインキュベータ内で維持した。A2780腫瘍細胞系は、高レベルのαvβ5インテグリンを発現し、PC3は両方のインテグリンを低レベルで発現する。
【0088】
96ウェル組織培養プレートでは、50μl/ウェルのビトロネクチン(5μg/ml)溶液を、室温で2時間添加した。溶液を、プレートを逆さにして除去した。50μl/ウェルの1%BSA溶液を、RTで1時間添加した。プレートは、ウシ胎児血清(FCS)を含まない培地RPMI 1640を100μl/ウェル添加することによって洗浄した。洗浄を2回繰り返した。分子を、0.039μM〜20μMの間の範囲の種々の濃度で添加した。溶液を、FCSを含まない培地に1:2の希釈率で調製した。フラスコ内の腫瘍細胞を生理食塩液で洗浄し、その後、FCS及び1%BSAを含まない培地5mlを添加することにより、スクレーパで剥離した。腫瘍細胞を、再懸濁後にカウントし、適切な細胞密度(40000〜50000細胞/ウェル)で添加した。プレートを、5% CO2を含む加湿インキュベータ内で、37℃で1時間インキュベートした。次いで溶液を、プレートを逆さにして除去し、Ca2+及びMg2+を含む200μl/ウェルのPBSで1回洗浄した。腫瘍細胞を、0.2M Sorensenリン酸緩衝液pH7.2〜7.4に4%パラホルムアルデヒドを溶かした溶液100μlで、RTで10分間固定した。プレートを逆さにし、1%トルイジンブルー溶液100μlをRTで10分間添加した。プレートを、再蒸留水に浸漬することによって2回洗浄し、次いでサーモスタットインキュベータ(Kottermann)内で60℃で乾燥した。100μl/ウェルの1%SDSを添加した。プレートを、RTで20分間撹拌しながら保持し、次いで600nmで、Victor 1420マルチラベルカウンタ(Wallac)により評価した。
【0089】
ビトロネクチンとの腫瘍細胞接着に対する分子の阻害効果を測定する、パラメータとしてのIC50値は、「ALLFIT」コンピュータプログラムを使用して評価した。
【0090】
調査した複合体は、ビトロネクチン、細胞表面受容体インテグリンαvβ3及びαvβ5のリガンドなどの、細胞外マトリックス成分に対する腫瘍細胞(PC3及びA2780)の結合を遮断すると共に、IC50値が0.39〜4.6μM(Table 3(表3))に及び、腫瘍細胞系に対して過剰な選択性を示さないことがわかった。αvβ3受容体に対する結合親和性に関して述べたように、αvβ5受容体に対するST3280活性は、化合物の切断の結果であり、化合物そのものによるものではない。
【0091】
【表3】

【0092】
種々の腫瘍細胞系に対する複合体の細胞毒性
生存細胞に対する化合物の影響を評価するために、スルホローダミンB試験を使用した。細胞増殖に対する化合物の影響を測定するために、PC3ヒト前立腺癌及びA2780ヒト卵巣癌細胞を使用した。A2780及びPC3腫瘍細胞を、10%ウシ胎児血清(GIBCO)を含有するRPMI 1640で増殖させた。
【0093】
腫瘍細胞を、約10%の集密度で96ウェル組織培養プレートに播き、少なくとも24時間結合させ回収した。次いで様々な濃度の薬物を、各ウェルに添加して。それらのIC50値(細胞生存の50%を阻害する濃度)を計算した。プレートを、37℃で72時間インキュベートした。処理の終わりに、上澄みを除去しかつPBSを3回添加することによって、プレートを洗浄した。200μlのPBS及び50μlの冷80%トリクロロ酢酸(TCA)を添加した。プレートを、氷上で少なくとも1時間インキュベートした。TCAを除去し、プレートを蒸留水に浸漬することによって3回洗浄し、紙上で、40℃で5分間乾燥させた。次いで1%酢酸に溶かした0.4%スルホローダミンB 200μlを添加した。プレートを、RTでさらに30分間インキュベートした。スルホローダミンBを除去し、プレートを、1%酢酸に3回浸漬することによって洗浄し、次いでプレートを紙上で、40℃で5分間乾燥した。次いで200μlのTris 10mMを添加し、プレートを、20分間撹拌しながら保持した。細胞の生存は、540nmでMutiskan蛍光分光計を使用して、光学密度により決定した。死滅した細胞の量は、対照培養物と比較した、スルホローダミンB結合のパーセンテージの低下として計算した。
【0094】
IC50値を、「ALLFIT」プログラムで計算した。
【0095】
3種の複合体の抗増殖活性を、2種のヒト腫瘍細胞系(インテグリンが高レベルのA2780卵巣腫瘍細胞と、インテグリンが低レベルのPC3前立腺腫瘍細胞)で比較した。これらの分子は、Table 4(表4)に示されるように、IC50値が8nMである腫瘍細胞において著しい細胞毒性能を示した。全ての複合体は、インテグリンが低レベルであるPC3腫瘍細胞に対して(IC50値は1〜4.6μMに及ぶ)、効果が低いことを明らかにした。特に、3種の化合物は、PC3腫瘍細胞で観察されたものに関し、A2780腫瘍細胞に対してかなり特異的な抗増殖効果を発揮し(Table 4(表4))、その効力は、A2780腫瘍細胞において凡そ100倍大きかった。
【0096】
【表4】

【0097】
CD1ヌードマウスに異種移植された卵巣癌の腫瘍増殖に対する、複合体ST3833の抗腫瘍活性の生体内評価
腫瘍細胞系(3×106)を、CD1ヌードマウス(Harlan)の右側腹部に皮下注射した。各実験群は、10匹のマウスを含んでいた。腫瘍を0日目に移植し、腫瘍増殖を、Vernierカリパーで腫瘍直径を週2回測定することにより追跡した。腫瘍体積は、式: TV(mm3)=d2×D/2(但し、d及びDは、それぞれ最短直径及び最長直径である)に従い計算した。薬物治療は、腫瘍が腫瘍接種後3日目にちょうど測定可能になったときに開始した。薬物を、スケジュールqd×5/w×2wに従い、10ml/kgの体積中種々の用量で、2週間皮下投与した。対照マウスはビヒクル(10%DMSO)で処理した。
【0098】
薬効は、下記の通り評価した。
a)薬物処理したマウスと対照マウスとのTVIは、下記の通り表した:
TVI(%)=100-(平均TV処理/平均TV対照)×100。TVIを、最後の処理後6日目に評価したが、このタイミングは、対照マウスで腫瘍体積が2倍になったことを観察するのに必要な時間に相当する。
b)Log細胞死滅(LCK)は、下式を使用して計算した: LCK=(T-C)/3.32×DT(但し、T及びCは、決定された体積に到達するために、処理された(T)及び対照(C)の腫瘍にそれぞれ必要とされる平均時間(日を単位とする)であり、DTは、対照マウスの腫瘍細胞が2倍になったことを観察するのに必要な時間である)。
c)CRは、処理が終わった後少なくとも6日間続く腫瘍の消失と定義される。実験の終わりまでに再増殖しなかった腫瘍は、「治癒した」と見なした。
【0099】
薬物治療の毒性効果を、以下に示すように評価した。
a)BWLは、下記の通り計算した: BWL(%)=100-(x日目の平均体重/1日目の平均体重)×100(但し、1日目は治療の初日であり、x日目はその後の任意の日である)。最高(最大)BWLを、表に報告する。マウスは、治療期間の全体を通して毎日計量した。
b)致死毒性は、任意の対照の死の前に生じる治療群での任意の死と定義した。マウスの死亡率に関して毎日検査した。
【0100】
TI(治療指数)は、比MTD/ED80として計算した。
【0101】
結果
ST3833の抗腫瘍活性について、CD1ヌードマウスに生体外で異種移植された、最も応答性のある腫瘍に関して調査した。分子は、スケジュールqd×5/w×2wに従い皮下送達された、おおよその最大耐量(MTD)25mg/kgを示したが、これはBWLが25%でありかつ10匹中1匹が死んだからである。ST3833は、全腫瘍の完全な退行をもたらしたので、強力な抗腫瘍効果があることを明らかにした(治癒マウスは、90日目において、MTDで100%であった)(Table 5(表5))。1/3 MTD(8.3mg/kg)では、50%治癒マウスが観察された。より低い用量(2.77及び0.92mg/kg)では、治癒マウスは30%であった。最後の治療の後の効果の持続性及び複合体の良好な耐用性は、高い治療指数(TI=8.9)を示し、複合体の高い治療可能性を示唆していた。
【0102】
【表5】

【0103】
PC3ヒト前立腺癌の心臓内注射によって誘発された骨転移に対する、複合体ST3833の抗転移活性の生体内評価
オスCD1ヌードマウスに、腹腔内注射された混合物(キシラジン:ケタベット 100)4ml/kgによって麻酔をかけた。PC3腫瘍細胞を、27ゲージ針を使用して、マウスの左心室に心臓内注射(1×105細胞/0.1ml/マウス)により接種した。マウスを、以下の実験群に分類し(11マウス/群)、腫瘍注射から3日後に、分子を記述されるように投与した:
ビヒクル(DMSO 10%)静脈内 q4d×4。
ST3833 56mg/10ml/kg静脈内 q4d×4
【0104】
薬物の抗腫瘍活性を評価するために、Faxitronシステムを使用することにより、高分解能全身放射能分析を実施した。放射能分析は、腫瘍注入後30日目に実施した。体重の記録は、この研究の全体を通して実施し、死亡率をメモした。
【0105】
複合体は、致死毒性の体重の低下が見られなかったので、56mg/kg iv(q4d×4)で十分耐えることを示した。分子は、45%(P<0.001)という寿命の著しい増大と、溶骨性病変の発生率をビヒクル処理群のマウス91%から薬物治療群のマウスの45%にまで低下させることを明らかにした(Table 6(表6))。
【0106】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
[(L-D)nE]m-F-D-PI-SI-CT (式I)
の環状ペプチド
(式中、
Lは、式II
c(R1-Arg-Gly-Asp-R2) (式II)
の認識α-インテグリン受容体環状ペプチドであり、
R1は、Amp、Lys、またはAadであり;
R2は、R配置を有するPhe、Tyr、またはAmpであり;
Dは、出現するごとに、同じにしもしくは異ならせることができ、不在または式III
-SP1-A1-SP2-A2-SP3- (式III)
の2価の基であり、
SP1は、不在またはR3-(CH2)q-(OCH2-CH2)q-O-(CH2)q-R4であり;
同じまたは異なるR3及びR4は、不在または-CO-、-COO-、-NH-、-O-、もしくは式IV、式VIII、もしくは式IXの2価の基であり、
【化1】

qは、出現するごとに、同じにしまたは異ならせることができ、独立して0〜6の間を含めた整数であり;
A1は、不在または、親水性側鎖を保持する天然のもしくは非天然の(L)もしくは(D)-アミノ酸であり;
SP2は、不在またはSP1と同じであり;
A2は、不在またはA1と同じであり;
SP3は、不在またはSP1と同じであり;
m=1または2であり;
n=1または2であり;
Eは、出現するごとに、同じにしまたは異ならせることができ、Glu、Lysまたは不在であり;
Fは、Eと同じ、または不在もしくは式Xのヒスチジン類似体であり;
【化2】

但し、トリアゾール環は、D-PI-SI-CT部分に結合しており、カルボニル部分はL含有部分に結合しており、SP1は上記にて定義された通りであり;
PIは、Ala及びCitの間で選択された(L)または(D)アミノ酸で作られている、天然または非天然のオリゴペプチドであり;
SIは、2価の基p-アミノベンジルオキシカルボニルであり;
CTは、細胞毒性基を表す);
それらの互変異性体、それらの幾何異性体、それらの鏡像異性体、ジアステレオマーなどの光学的に活性な形、及びそれらのラセミ体、ならびにそれらの医薬品として許容される塩(但し:
少なくとも1個のDが存在すべきであり;
Eが存在する場合には、EがLysであるときにはそのアミノ部分を通して、またはEがGluであるときにはそのカルボキシル部分を通して、L基を保持する部分に結合されていることを条件とする)。
【請求項2】
CTがカムプトテシン誘導体であり、R1がAmpまたはAadであり、R2がPhe、Amp、またはTyrから選択される、請求項1に記載の環状ペプチド。
【請求項3】
m=1及びn=1である、請求項1または2に記載の環状ペプチド。
【請求項4】
m=1及びn=2である、請求項1または2に記載の環状ペプチド。
【請求項5】
薬品としての、インテグリンαvβ3及びαvβ5阻害特性が与えられた、請求項1〜4のいずれか一項に記載の環状ペプチドの使用。
【請求項6】
1μM未満のインテグリンIC50を有する、請求項5に記載の環状ペプチドの使用。
【請求項7】
医薬品として許容される少なくとも1種の添加物及び/またはビヒクルとの混合物中の活性成分として、請求項1〜4のいずれか一項に記載の少なくとも1種の環状ペプチドを含有する医薬品組成物。
【請求項8】
式Vの化合物
(CT-SI-PI)-NH2 (式V)
(式中、CT、SI、及びPIは、上述の通りである)
と、式VIのアジド含有誘導体
L-(SP1-A1-SP2-A2-SP3)-N3 (式VI)
(式中、L、SP1、A1、SP2、A2、及びSP3は上述の通りであり、R4はCOであり、CT、SI、及びPIは上述の通りである)
とを反応させることによる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の環状ペプチドを合成するための方法。
【請求項9】
式VIIの化合物
(CT-SI-PI)-CO-C≡CH (式VII)
(式中、CT、SI、及びPIは、上述の通りである)
と、式VIの化合物
(式中、式VIの化合物中のL、SP1、A1、SP2、A2、及びSP3は上述の通りであり、但しR4は存在しないことを条件とする)
とを反応させることによる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の環状ペプチドを合成するための方法。
【請求項10】
式XIの化合物
(CT-SI-PI)-D-NHCH2-C≡CH (式XI)
(式中、CT、SI、PI、及びDは、上述の通りである)
と、式XIIの化合物
[(L-D)nE]m-COCH2-N3 (式XII)
(式中、L、D、及びEは、上述の通りである)
とを反応させることによる、請求項1または2または4のいずれか一項に記載の環状ペプチドを合成するための方法。
【請求項11】
式XIIIの化合物
(CT-SI-PI)-D-N3 (式XIII)
(式中、CT、SI、PI、及びDは、上述の通りである)
と、式XIVの化合物
[(L-D)nE]m-CO-CH(NHD)CH2-C≡CH (式XIV)
(式中、L、D、及びEは、上述の通りである)
とを反応させることによる、請求項1または2または4のいずれか一項に記載の環状ペプチドを合成するための方法。
【請求項12】
抗癌活性を有する薬品を調製するための、請求項7に記載の使用。
【請求項13】
治療上有効な量の、請求項3または4に記載の医薬品組成物を投与するステップを含む、制御されない細胞増殖、浸潤、及び/または転移状態に罹患している哺乳類を治療する方法。
【請求項14】
卵巣及び/または前立腺癌を治療する、請求項13に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図1F】
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【図1G】
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【図1H】
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【図1I】
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【図1J】
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【図1K】
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【図1L】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図2d】
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【図2e】
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【図2f】
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【図2g】
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【図2h】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−523415(P2011−523415A)
【公表日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−509923(P2011−509923)
【出願日】平成21年5月11日(2009.5.11)
【国際出願番号】PCT/EP2009/055653
【国際公開番号】WO2009/141240
【国際公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(591043248)シグマ−タウ・インドゥストリエ・ファルマチェウチケ・リウニテ・ソシエタ・ペル・アチオニ (92)
【氏名又は名称原語表記】SIGMA−TAU INDUSTRIE FARMACEUTICHE RIUNITE SOCIETA PER AZIONI
【Fターム(参考)】