説明

新規な9−アザ−ビシクロ[3.3.1]ノン−3−イルオキシクロメン−2−オン誘導体及びモノアミン神経伝達物質再取り込み阻害薬としてのそれらの使用

本発明は、モノアミン神経伝達物質再取り込み阻害薬として有用な新規な9−アザ−ビシクロ[3.3.1]ノン−3−イルオキシクロメン−2−オン誘導体に関する。他の態様において、本発明は、治療の方法におけるこれらの化合物の使用、及び本発明の化合物を含む医薬組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モノアミン神経伝達物質再取り込み阻害薬として有用な新規な9−アザ−ビシクロ[3.3.1]ノン−3−イルオキシクロメン−2−オン誘導体に関する。
【0002】
他の態様において、本発明は、治療の方法におけるこれらの化合物の使用、及び本発明の化合物を含む医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)は現在、鬱病及びパニック障害を含めたいくつかのCNS疾患の治療において有効性を示す。SSRIは一般に、効果的で忍容性にすぐれ、容易に投与されるものとして精神科医及び一次診療医に理解されている。しかし、それらにはいくつかの望ましくない特徴が伴う。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、モノアミン神経伝達物質セロトニン、ドーパミン、及びノルアドレナリンの再取り込みの活性に関して、最適化された薬理学的プロファイル(セロトニン再取り込み対ノルアドレナリン及びドーパミン再取り込み活性の比など)を有する化合物が依然として強く求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の目的は、モノアミン神経伝達物質再取り込み阻害薬としての活性を示す新規な化合物を提供することである。
【0006】
一態様において、本発明は、式(I)の化合物:
【化1】


その任意の立体異性体若しくはその立体異性体の任意の混合物、又はその薬学的に許容される塩を提供し、式中、R及びQは下記に定義される通りである。
【0007】
別の第2の態様において、本発明は、治療有効量の本発明の化合物、その任意の立体異性体若しくはその立体異性体の任意の混合物、又はその薬学的に許容される塩を、少なくとも1つの薬学的に許容される担体、賦形剤、又は希釈剤と共に含む医薬組成物を提供する。
【0008】
別の態様において、本発明は、ヒトを含めた哺乳動物の、中枢神経系におけるモノアミン神経伝達物質再取り込みの阻害に反応性である疾患又は障害又は状態を治療、予防又は軽減するための医薬組成物の製造における、本発明の化合物、その任意の立体異性体若しくはその立体異性体の任意の混合物、又はその薬学的に許容される塩の使用を提供する。
【0009】
別の態様において、本発明は、ヒトを含めた動物の生体の、中枢神経系におけるモノアミン神経伝達物質再取り込みの阻害に反応性である疾患又は障害又は状態を治療、予防又は軽減する方法に関し、この方法は、それを必要とするそのような動物の生体に、治療有効量の本発明の化合物、その任意の立体異性体若しくはその立体異性体の任意の混合物、又はその薬学的に許容される塩を投与するステップを含む。
【0010】
本発明の他の目的は、下記の詳細な説明及び実施例から当業者には明らかであろう。
【発明を実施するための形態】
【0011】
一態様において、本発明は、式(I)の化合物:
【化2】


その任意の立体異性体若しくはその立体異性体の任意の混合物、又はその薬学的に許容される塩を提供し、式中、
は水素又はC1〜6アルキルを表し、
Qはクロメン−2−オン基を表し、このクロメン−2−オン基はハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、C1〜6アルコキシ、C3〜7シクロアルコキシ、C1〜6アルキル、C3〜7シクロアルキル、C3〜7シクロアルキル−C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、C2〜6アルキニル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から独立に選択される1つ又は複数の置換基で場合によって置換されている。
【0012】
本発明の一実施形態において、式(I)中、Rは水素を表す。別の実施形態において、RはC1〜6アルキル、例えばメチルを表す。
【0013】
本発明の別の実施形態において、式(I)中、Qはクロメン−2−オン基を表し、この基はハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、C1〜6アルコキシ、C3〜7シクロアルコキシ、C1〜6アルキル、C3〜7シクロアルキル、及びフラニルからなる群から独立に選択される1つ又は複数の置換基で場合によって置換されている。
【0014】
本発明の別の実施形態において、式(I)中、Qはクロメン−2−オン−イル(クロメン−2−オン−7−イルなど)を表し、この基はハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、C1〜6アルコキシ、C3〜7シクロアルコキシ、C1〜6アルキル、C3〜7シクロアルキル、及びフラニルからなる群から独立に選択される1つ又は複数の置換基で場合によって置換されている。
【0015】
本発明の別の実施形態において、式(I)中、Qはクロメン−2−オン−7−イル基を表す。
【0016】
別の実施形態において、Qは置換クロメン−2−オン−イル(ハロ置換クロメン−2−オン−イルなど、例えばブロモ置換クロメン−2−オン−イル)を表す。別の実施形態において、Qはクロメン−2−オン−イルを表し、このクロメン−2−オン−イル基は3位がブロモなどのハロで置換されている。別の実施形態において、Qは3−ブロモ−クロメン−2−オン−7−イルを表す。
【0017】
別の実施形態において、Qはヘテロアリール置換クロメン−2−オン−イル(フラニル置換クロメン−2−オン−イルなど)を表す。別の実施形態において、Qはクロメン−2−オン−イルを表し、このクロメン−2−オン−イル基は3位がヘテロアリール(フラニルなど、例えばフラン−2−イル)で置換されている。別の実施形態において、Qは3−フラール−2−イル−クロメン−2−オン−7−イルを表す。
【0018】
別の実施形態において、本発明の化合物は、
exo−7−(9−アザ−ビシクロ[3.3.1]ノン−3−イルオキシ)−クロメン−2−オン;
exo−7−(9−アザ−ビシクロ[3.3.1]ノン−3−イルオキシ)−3−ブロモ−クロメン−2−オン;
exo−7−(9−アザ−ビシクロ[3.3.1]ノン−3−イルオキシ)−3−フラン−2−イル−クロメン−2−オン;
又はそれらの薬学的に許容される塩である。
【0019】
別の実施形態において、本発明の化合物は、
exo−7−(9−メチル−9−アザ−ビシクロ[3.3.1]ノン−3−イルオキシ)−クロメン−2−オン;
3−ブロモ−7−(9−メチル−9−アザ−ビシクロ[3.3.1]ノン−3−イルオキシ)−クロメン−2−オン;
又はそれらの薬学的に許容される塩である。
【0020】
2つ又はそれを超える上記の実施形態の任意の組合せは、本発明の範囲内と考えられる。
【0021】
置換基の定義
本明細書及び添付の特許請求の範囲のすべてにわたって用いられる場合、以下の用語は以下に示される意味を有する。
【0022】
本明細書で用いられる用語「C1〜6アルキル」は、1〜6個の炭素原子を有する飽和の分岐鎖又は直鎖炭化水素基、例えば、C1〜3アルキル、C1〜4アルキル、C1〜6アルキル、C2〜6アルキル、C3〜6アルキルなどを意味する。代表的な例は、メチル、エチル、プロピル(例えばプロパ−1−イル、プロパ−2−イル(又はイソプロピル))、ブチル(例えば2−メチルプロパ−2−イル(又はtert−ブチル)、ブタ−1−イル、ブタ−2−イル)、ペンチル(例えばペンタ−1−イル、ペンタ−2−イル、ペンタ−3−イル)、2−メチルブタ−1−イル、3−メチルブタ−1−イル、ヘキシル(例えばヘキサ−1−イル)などである。
【0023】
本明細書で用いられる用語「C2〜6アルケニル」は、2〜6個の炭素原子及び少なくとも1つの二重結合を有する分岐鎖又は直鎖炭化水素基、例えばC2〜6アルケニル、C3〜6アルケニルなどを表す。代表的な例は、エテニル(又はビニル)、プロペニル(例えばプロパ−1−エニル、プロパ−2−エニル)、ブタジエニル(例えばブタ−1,3−ジエニル)、ブテニル(例えばブタ−1−エン−1−イル、ブタ−2−エン−1−イル)、ペンテニル(例えばペンタ−1−エン−1−イル、ペンタ−2−エン−2−イル)、ヘキセニル(例えばヘキサ−1−エン−2−イル、ヘキサ−2−エン−1−イル)、1−エチルプロパ−2−エニル、1,1−(ジメチル)プロパ−2−エニル、1−エチルブタ−3−エニル、1,1−(ジメチル)ブタ−2−エニルなどである。
【0024】
本明細書で用いられる用語「C2〜6アルキニル」は、2〜6個の炭素原子及び少なくとも1つの三重結合を有する分岐鎖又は直鎖炭化水素基を表す。代表的な例は、エチニル、プロピニル(例えばプロパ−1−イニル、プロパ−2−イニル)、ブチニル(例えばブタ−1−イニル、ブタ−2−イニル)、ペンチニル(例えばペンタ−1−イニル、ペンタ−2−イニル)、ヘキシニル(例えばヘキサ−1−イニル、ヘキサ−2−イニル)、1−エチルプロパ−2−イニル、1,1−(ジメチル)プロパ−2−イニル、1−エチルブタ−3−イニル、1,1−(ジメチル)ブタ−2−イニルなどである。
【0025】
用語「ハロ」又は「ハロゲン」はフッ素、塩素、臭素、又はヨウ素を意味するものとする。
【0026】
用語「ヒドロキシ」は−OH基を意味するものとする。
【0027】
用語「シアノ」は−CN基を意味するものとする。
【0028】
用語「ニトロ」は−NO基を意味するものとする。
【0029】
用語「アミノ」は−NH基を意味するものとする。
【0030】
用語「トリハロメチル」は、トリフルオロメチル、トリクロロメチル、及び類似のトリハロ置換メチル基を意味するものとする。
【0031】
用語「トリハロメトキシ」は、トリフルオロメトキシ、トリクロロメトキシ、及び類似のトリハロ置換メトキシ基を意味するものとする。
【0032】
本明細書で用いられる用語「C1〜6アルコキシ」は、アルキル−O−基を指す。代表的な例は、メトキシ、エトキシ、プロポキシ(例えば1−プロポキシ、2−プロポキシ)、ブトキシ(例えば1−ブトキシ、2−ブトキシ、2−メチル−2−プロポキシ)、ペントキシ(1−ペントキシ、2−ペントキシ)、ヘキソキシ(1−ヘキソキシ、3−ヘキソキシ)などである。
【0033】
本明細書で用いられる用語「C3〜7シクロアルキル」は、3〜7個の炭素原子を有する飽和の単環式炭素環、例えばC3〜6アルキル、C3〜4アルキル、C3〜5アルキルC3〜7アルキルなどを表す。代表的な例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルなどである。
【0034】
本明細書で用いられる用語「C3〜7シクロアルコキシ」は、酸素橋を介して結合した先に定義されるC3〜7シクロアルキル基を表す。代表的な例は、シクロプロピルオキシ、シクロブチルオキシ、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシ、シクロヘプチルオキシなどである。
【0035】
本明細書で用いられる用語「アリール」は、フェニル、ナフチル(1−ナフチル又は2−ナフチル)、又はフルオレニルなどの炭素環式芳香族環系を表す。
【0036】
本明細書で用いられる用語「ヘテロアリール」は、芳香族の単環又は二環式複素環基を表し、その環構造中に1つ又は複数のヘテロ原子を持つ。好ましいヘテロ原子としては、窒素(N)、酸素(O)、及び硫黄(S)が挙げられる。
【0037】
本発明の好ましい単環式ヘテロアリール基としては、芳香族の5員及び6員の複素環式単環基が挙げられ、これには例えば、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、テトラゾリル、1,2,4−オキサジアゾリル、1,2,5−オキサジアゾリル、1,3,4−オキサジアゾリル、トリアゾリル、1,2,4−チアジアゾリル、1,2,5−チアジアゾリル、イミダゾリル、ピロリル、ピラゾリル、フラニル、チエニル、ピリジル、ピリミジル、又はピリダジニルが含まれるがそれらに限定されない。
【0038】
本発明の好ましい二環式ヘテロアリール基としては、例えばインドリジニル、インドリル、イソインドリル、インダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾ[b]チエニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾオキサジアゾリル 、ベンゾチアゾリル、ベンゾ[d]イソチアゾリル、プリニル、キノリニル、イソキノリニル、シンノリニル(cinnolinyl)、フタラジニル、キナゾリニル、キノキサリニル、1,8−ナフチリジニル、プテリジニル、及びインデニルが挙げられるが、それらに限定されない。
【0039】
定義された用語のうちのいくつかは組合せで現れることがあり、最初に述べられる基は次に述べられる基における置換基であり、置換の位置(すなわち分子の別の部分への結合位置)は最後に述べられる基におけるものであることが理解されるべきである。そのような用語の組合せとしては、例えば「C3〜7シクロアルキル−C1〜6アルキル」が挙げられる。代表的な例は、シクロプロピルメチル、2−シクロヘキシルエチル、3−シクロペンチルプロパ−1−イル、1−シクロヘキシルエチル、アダマンチルメチルなどである。
【0040】
薬学的に許容される塩
本発明の化合物は、意図する投与に適した任意の形態で提供することができる。適切な形態としては、薬学的に(すなわち生理学的に)許容される塩、及び本発明の化合物のプレドラッグ(predrug)又はプロドラッグ形態が挙げられる。
【0041】
薬学的に許容される付加塩の例としては、限定はされないが、非毒性の無機及び有機酸付加塩、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、硝酸塩、過塩素酸塩、リン酸塩、硫酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、アコナート(aconate)、アスコルビン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、ケイ皮酸塩、クエン酸塩、エンボナート(embonate)、エナンタート(enantate)、フマル酸塩、グルタミン酸塩、グリコール酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、メタンスルホン酸塩、ナフタレン−2−スルホン酸塩、フタル酸塩、サリチル酸塩、ソルビン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、p−トルエンスルホン酸塩などが挙げられる。そのような塩は当技術分野で記載され周知である方法により生成することができる。
【0042】
薬学的に許容可能と考えることができない、シュウ酸などの他の酸は、本発明の化合物及びその薬学的に許容される酸付加塩を得る際の中間体として有用な塩を調製する際に、有用である場合もある。
【0043】
本発明の化合物の薬学的に許容されるカチオン性塩の例としては、限定はされないが、アニオン性基を含有する本発明の化合物のナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、亜鉛塩、アルミニウム塩、リチウム塩、コリン塩、リシニウム(lysinium)塩、及びアンモニウム塩などが挙げられる。そのようなカチオン性塩は当技術分野で記載され周知である方法により生成することができる。
【0044】
本発明の文脈においてN含有化合物の「オニウム塩」もまた薬学的に許容される塩として意図される。好ましい「オニウム塩」としては、アルキル−オニウム塩、シクロアルキル−オニウム塩、及びシクロアルキルアルキル−オニウム塩が挙げられる。
【0045】
本発明の化合物のプレドラッグ又はプロドラッグ形態の例としては、本発明による物質の適切なプロドラッグの例が含まれ、親化合物の1つ又は複数の反応性基又は誘導体化可能な基において修飾された化合物が挙げられる。カルボキシル基、ヒドロキシル基、又はアミノ基で修飾された化合物は特に対象となる。適切な誘導体の例は、エステル又はアミドである。
【0046】
本発明の化合物は、水、エタノールなどの薬学的に許容される溶媒と共に、溶解性又は非溶解性の形態で提供してもよい。溶解性の形態としては、一水和物、二水和物、半水和物、三水和物、四水和物などの水和形態も挙げられる。一般に、本発明の目的において、溶解性の形態は非溶解性の形態と等価であると考えられる。
【0047】
立体異性体
本発明の化合物は、エナンチオマー、ジアステレオマー、又はシス−トランス異性体を含めた、異なる立体異性体で存在してもよいことが、当業者によって理解されるであろう。
【0048】
本発明は、すべてのそのような異性体及びその任意の混合物(ラセミ混合物を含める)を含む。
【0049】
ラセミ体は、公知の方法及び技術により光学的対掌体に分割できる。エナンチオマー化合物(エナンチオマー中間体を含む)を分離する1つの方法は、化合物がキラル酸である場合、光学活性アミンを使用し、酸での処理によりジアステレオマーの分離した塩を遊離させることによる。ラセミ体を光学的対掌体に分割する別の方法は、光学活性マトリックス上でのクロマトグラフィーに基づくものである。本発明のラセミ化合物はしたがって、例えばD−又はL−(酒石酸、マンデル酸、又はカンフルスルホン酸)塩の分別再結晶により、その光学的対掌体に分割できる。
【0050】
本発明の化合物と光学活性の活性化カルボン酸((+)又は(−)フェニルアラニン、(+)又は(−)フェニルグリシン、(+)又は(−)カンファン酸に由来するものなど)との反応によりジアステレオマーアミドを生成させることによって、又は本発明の化合物と光学活性のクロロギ酸塩若しくは同様のものとの反応によりジアステレオマーカルバミン酸塩を生成させることによってもまた、本発明の化合物を分割することができる。
【0051】
光学異性体を分離するさらなる方法は、当技術分野で公知である。そのような方法としては、Jaques J、Collet A、及びWilen S著、“Enantiomers,Racemates,and Resolutions”、John Wiley and Sons,New York(1981)に記載されるものが挙げられる。
【0052】
光学活性化合物は、光学活性の出発材料から調製することもできる。
【0053】
標識化合物
本発明の化合物は、その標識化形態又は非標識化形態で使用してもよい。本発明の文脈において、標識化合物は、1つ又は複数の原子が、自然界で通常見られる原子質量又は質量数とは異なる原子質量又は質量数を有する原子で置き換えられている。標識化により前記化合物の容易な定量的検出が可能となる。
【0054】
本発明の標識化合物は、診断用手段、放射性トレーサ、又は種々の診断法におけるモニタリング剤として、及びインビボの受容体イメージングにおいて有用である場合がある。
【0055】
本発明の標識異性体は、好ましくは少なくとも1つの放射性核種を標識として含有する。ポジトロン放出放射性核種はすべて使用の候補である。本発明の文脈において、放射性各種は好ましくはH(重水素)、H(トリチウム)11C、13C、14C、131I、125I、123I、及び18Fから選択される。
【0056】
本発明の標識異性体を検出するための物理的方法は、ポジトロン放出断層撮影法(Position Emission Tomography(PET))、単一光子イメージングコンピュータ断層撮影法(Single Photon Imaging Computed Tomography(SPECT))、核磁気共鳴分光法(Magnetic Resonance Spectroscopy(MRS))、磁気共鳴画像法(Magnetic Resonance Imaging(MRI))、及びコンピュータ体軸X線断層撮影法(Computed Axial x−ray Tomography(CAT))又はそれらの組合せから選択してもよい。
【0057】
調製方法
本発明の化合物は、化学合成の従来法(例えば実施例に記載される方法)により調製してもよい。本出願に記載される方法における出発物質は、公知であるか又は市販の化学物質から従来法により容易に調製できる。
【0058】
本発明の一化合物はまた、従来法を用いて本発明の別の化合物に転換することもできる。
【0059】
本明細書に記載される反応の最終生成物は、従来技術により、例えば抽出、結晶化、蒸留、クロマトグラフィーなどにより単離してもよい。
【0060】
生物活性
本発明の化合物は、例えばWO97/30997(NeuroSearch A/S)又はWO97/16451(NeuroSearch A/S)に記載されるように、シナプトソームにおけるモノアミンのドーパミン、ノルアドレナリン、及びセロトニンの再取り込みを阻害するそれらの能力を試験できる。これらの試験において観察される均衡のとれた活性に基づき、本発明の化合物は、ヒトを含めた哺乳動物の、中枢神経系におけるモノアミン神経伝達物質再取り込みの阻害に反応性である疾患又は障害又は状態を治療、予防又は軽減するのに有用であると考えられる。
【0061】
特殊な実施形態において、本発明の化合物は、気分障害、鬱病、非定型鬱病、疼痛に続発する鬱病、大鬱病性障害、気分変調性障害、双極性障害、双極性I型障害、双極性II型障害、気分循環性障害、全身的状態に起因する気分障害、物質誘発性気分障害、仮性認知症、ガンザー症候群、強迫性障害、パニック障害、広場恐怖を伴わないパニック障害、広場恐怖を伴うパニック障害、パニック障害の病歴を伴わない広場恐怖、パニック発作、記憶欠損、記憶喪失、注意欠陥多動性障害(ADHD)、肥満症、不安症、全般性不安障害、摂食障害、パーキンソン病、パーキンソン症、認知症、高齢者の認知症、老人性認知症、アルツハイマー病、ダウン症候群、エイズ認知症複合、加齢による記憶機能障害、特定恐怖症、社会恐怖症、社会不安障害、心的外傷性ストレス障害、急性ストレス障害、薬物依存症、薬物乱用、薬物依存障害、コカイン乱用、ニコチン乱用、タバコ乱用、アルコール中毒、アルコール依存症、窃盗癖、常習性物質の使用停止により引き起こされる禁断症状、疼痛、慢性痛、炎症痛、神経因性痛、片頭痛、緊張型頭痛、慢性緊張型頭痛、鬱病を合併する疼痛、繊維筋痛、関節痛、変形性関節症、関節リウマチ、背部痛、癌性疼痛、過敏性腸による疼痛、過敏性腸症候群、術後痛、乳房切除後疼痛症候群(PMPS)、脳卒中後疼痛、薬物誘因性神経障害、糖尿病性神経障害、交感神経依存性疼痛、三叉神経痛、歯痛、筋筋膜痛、幻肢痛、過食症、月経前緊張症候群、月経前不快気分障害、黄体期後期症候群、心的外傷後症候群、慢性疲労症候群、遷延性植物状態、尿失禁、腹圧性尿失禁、切迫性尿失禁、夜間尿失禁、性機能障害、早漏、勃起困難、勃起障害、早発性女性オルガズム、下肢静止不能症候群、周期性四肢運動障害、摂食障害、神経性食欲不振症、睡眠障害、広汎性発達障害、自閉症、アスペルガー症候群、レット症候群、小児期崩壊性障害、学習障害、運動能力障害、無言症、抜毛癖、ナルコレプシー、脳卒中後鬱病、脳卒中誘発性脳損傷、脳卒中誘発性神経損傷、ジル・ドゥ・ラ・トゥレット症候群、耳鳴、チック障害、身体醜形障害、反抗挑戦性障害、又は脳卒中後障害の治療、予防又は軽減に有用であると考えられる。別の特殊な実施形態において、本発明の化合物は、鬱病の治療、予防又は軽減に有用であると考えられる。別の特殊な実施形態において、本発明の化合物は、注意欠陥多動性障害(ADHD)の治療、予防又は軽減に有用であると考えられる。
【0062】
現在のところ、医薬品有効成分(API)の適切な用量は、1日あたり約0.1〜約1000mgAPI、より好ましくは1日あたり約10〜約500mgAPI、最も好ましくは1日あたり約30〜約100mgAPIの範囲内であると考えられるが、正確な投与方法、それが投与される形態、考えられる適応症、対象及び特に罹患している患者の体重、及びさらには担当の医者又は獣医の好み及び経験に依存する。
【0063】
本発明の好ましい化合物は、サブマイクロモル濃度及びマイクロモル濃度の範囲、すなわち1未満〜約100μMの範囲において、生物活性を示す。
【0064】
医薬組成物
別の態様において、本発明は、治療有効量の本発明の化合物を含む新規な医薬組成物を提供する。
【0065】
治療において使用するための本発明の化合物は、未加工の化合物の形態で投与してもよいが、活性成分を、場合により生理学的に許容される塩の形態で、1つ又は複数の補助剤、賦形剤、担体、緩衝剤、希釈剤、及び/又は他の慣例的な医薬品佐剤と共に医薬組成物中に導入するのが好ましい。
【0066】
一実施形態において、本発明は、本発明の化合物又はその薬学的に許容される塩若しくは誘導体を、1つ又は複数の薬学的に許容される担体、及び場合により当技術分野で公知であり使用されている他の治療成分及び/又は予防成分と共に含む医薬組成物を提供する。担体(単数又は複数)は、製剤の他の成分と適合性でありその受容者に有害ではないという意味において、「許容され」なければならない。
【0067】
本発明の医薬組成物は、経口、直腸、気管支、経鼻、肺、局所(頬側及び舌下を含める)、経皮、膣内又は非経口(皮膚、皮下、筋肉内、腹腔内、静脈内、動脈内、脳内、眼内の注射又は点滴を含める)での投与に適したものであってもよく、或いは吸入又は吹送法による投与(粉末エアロゾル及び液体エアロゾル投与を含める)、又は徐放システムによる投与に適した形態のものであってもよい。徐放システムの好適な例としては、本発明の化合物を含有する固体疎水性ポリマーの半透過性マトリックスが挙げられ、このマトリックスは成形品、例えばフィルム又はマイクロカプセルの形態であってもよい。
【0068】
本発明の化合物はしたがって、従来の補助剤、担体、又は希釈剤と共に、医薬組成物の形態及びその単位剤形中に入れてもよい。そのような形態としては、固体、及び特に錠剤、充填カプセル、粉末、及びペレット形態、並びに液体、特に水性又は非水性溶液、懸濁液、エマルション、エリキシル剤、及びそれを充填したカプセル、(すべて経口用途である)、直腸投与のための坐薬、及び非経口用途のための無菌注射溶液が挙げられる。そのような医薬組成物及びその単位剤形は、さらなる活性化合物若しくは成分の有無に関わらず、従来の成分を従来の比率で含んでいてもよく、そのような単位剤形は、意図する使用されるべき1日の用量範囲に相応の、任意の適切な有効量の活性成分を含有していてもよい。
【0069】
本発明の化合物は、多様な経口及び非経口剤形で投与できる。下記の剤形は、活性成分として本発明の化合物又は本発明の化合物の薬学的に許容される塩を含んでもよいことが、当業者には明らかであろう。
【0070】
本発明の化合物からの医薬組成物の調製において、薬学的に許容される担体は固体又は液体であってもよい。固形調製物としては、粉末、錠剤、丸薬、カプセル、オブラート、坐薬、及び分散性顆粒が挙げられる。固体の担体は、希釈剤、香味剤、可溶化剤、潤滑剤、懸濁化剤、バインダー、保存料、錠剤崩壊剤、又はカプセル化材料としても働くことができる1つ又は複数の物質であってもよい。
【0071】
粉末において、担体は、微粉化活性成分との混合物中の微粉化した固体である。
【0072】
錠剤において、活性成分は、必要な結合能力を適切な比率で有する担体と混合され、所望の形状及びサイズに圧縮されている。
【0073】
粉末及び錠剤は、5又は10〜約70パーセントの活性化合物を含有してもよい。好適な担体は、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、乳糖、ペクチン、デキストリン、セルロース、デンプン、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低融点ワックス、ココアバターなどである。用語「調製物」は、カプセルを提供する担体としてのカプセル化材料を有する、活性化合物の配合物を含むことを意図し、カプセル内で活性成分は(担体の有無に関わらず)担体によって取り囲まれ、したがって担体は活性成分と会合している。同様に、オブラート及び薬用ドロップが含まれる。錠剤、粉末、カプセル、丸薬、オブラート、及び薬用ドロップは、経口投与に適した固形として使用できる。
【0074】
坐薬の調製において、低融点ワックス(脂肪酸グリセリド又はココアバターの混合物など)をまず溶融し、撹拌により活性成分をその中に均一に分散させる。次いで溶融した均一な混合物を好都合なサイズの型に注ぎ、冷却させ、それによって固める。
【0075】
膣内投与に適した組成物は、活性成分に加えて当技術分野において適切であることが公知であるような担体を含有するペッサリー、タンポン、クリーム、ジェル、ペースト、泡、又はスプレーとして与えられてもよい。
【0076】
液体調製物としては、溶液、懸濁液、及びエマルション、例えば水溶液又は水−プロピレングリコール溶液が挙げられる。例えば、非経口注射用液体調製物は、水性ポリエチレングリコール溶液中の溶液として調剤できる。
【0077】
本発明による化合物はしたがって、非経口投与(例えば注射、例えばボーラス注入又は持続点滴による)用に調剤してもよく、アンプル、充填済みシリンジ、小容量輸液中の単位剤形で、又は保存料の添加された多回用量容器で与えられてもよい。組成物は油性又は水性の賦形剤中の懸濁液、溶液、又はエマルションのような形態をとってもよく、懸濁化剤、安定化剤、及び/又は分散剤などの配合剤を含有してもよい。或いは、活性成分は、使用前に適切な賦形剤、例えば無菌の発熱物質を含まない水と共に配合するための粉末形態(無菌固体の無菌での単離により得られるか、又は溶液からの凍結乾燥により得られる)であってもよい。
【0078】
経口用途に適した水性溶液は、活性成分を水に溶解させ、所望により適切な着色剤、香味剤、安定化剤、及び増粘剤を加えることにより調製できる。
【0079】
経口用途に適した水性懸濁液は、微粉化した活性成分を粘性材料(天然又は合成ゴム、樹脂、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、又は他の周知の懸濁化剤)と共に水中に分散させることにより作製できる。
【0080】
使用の直前に経口投与用の液状調製物へ転換させることを意図した固形調製物もまた含まれる。そのような液状物としては、溶液、懸濁液、及びエマルションが挙げられる。活性成分に加えて、そのような調製物は、着色剤、香味料、安定化剤、緩衝剤、人工及び天然甘味料、分散剤、増粘剤、可溶化剤などを含んでいてもよい。
【0081】
表皮への局所的投与において、本発明の化合物は軟膏、クリーム、若しくはローションとして、又は経皮パッチとして調剤してもよい。軟膏及びクリームは、例えば、適切な増粘剤及び/又はゲル化剤を加えて水性又は油性の基剤と共に調剤してもよい。ローションは、水性又は油性の基剤と共に調剤してもよく、一般に1つ又は複数の乳化剤、安定化剤、分散剤、懸濁化剤、増粘剤、又は着色剤を含有することになる。
【0082】
口腔内での局所的投与に適した組成物としては、風味づけされた基剤(通常はショ糖及びアカシア又はトラガカント)中に活性剤を含む薬用ドロップ;不活性基剤(ゼラチン及びグリセリン又はショ糖及びアカシアなど)中に活性成分を含むトローチ;及び適切な液体担体中に活性成分を含む口腔洗浄薬が挙げられる。
【0083】
溶液又は懸濁液は、従来法により、例えば点滴器、ピペット、又はスプレーを用いて、鼻腔へ直接施用される。組成物は単回又は多回用量剤形で与えられてもよい。後者の場合の点滴器又はピペットでは、これは適切なあらかじめ決められた容量の溶液又は懸濁液を投与する患者によって実現できる。スプレーの場合、これは例えば定量噴霧スプレーポンプによって実現できる。
【0084】
気道への投与もまた、クロロフルオロカーボン(CFC)(例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、又はジクロロテトラフルオロエタン)、二酸化炭素、又は他の適切なガスなどの適切な高圧ガスで加圧されたパック中に活性成分が提供されているエアロゾル製剤によって実現できる。好都合には、エアロゾルは、レシチンなどの界面活性剤を含むこともできる。薬物の用量は計量バルブを備えることによって制御し得る。
【0085】
或いは、活性成分は乾燥粉末、例えば適切な粉末基剤(乳糖、デンプン、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのデンプン誘導体、及びポリビニルピロリドン(PVP)など)中の化合物の混合粉末の形態で与えられてもよい。好都合には、粉末担体は鼻腔内でジェルを形成することになる。粉末組成物は、例えばゼラチン、又はブリスター包装(吸入器によって粉末がそこから投与され得る)の、例えばカプセル又はカートリッジ中の単位剤形で与えられてもよい。
【0086】
鼻腔内への組成物を含めた、気道への投与を意図する組成物において、化合物は一般に、例えば約5ミクロン又はそれを下回る小さい粒径を有することになる。そのような粒径は、当技術分野で公知の手段により、例えば微粒子化によって得ることができる。
【0087】
所望の場合、活性成分の徐放をもたらすように適合された組成物を使用してもよい。
【0088】
医薬調製物は好ましくは単位剤形である。そのような形態において、調製物は活性成分の適切な量を含有する単位用量にさらに分割される。単位剤形は、パッケージ化調製物、個別の量の調整物を含有するパッケージ、例えばパッケージ化錠剤、カプセル、又はバイアル若しくはアンプル中の粉末などであってもよい。単位剤形はまた、カプセル、錠剤、オブラート、又は薬用ドロップ自体であってもよく、又はこれは、適切な数のパッケージ化形態にあるこれらの任意のものであってもよい。
【0089】
一実施形態において、本発明は経口投与のための錠剤又はカプセルを提供する。
【0090】
別の実施形態において、本発明は静脈内への投与及び持続点滴のための液体を提供する。
【0091】
調剤及び投与における技術のさらなる詳細は、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Maack Publishing Co.,Easton,PA)の最新版で見ることができる。
【0092】
投与される用量は当然、治療される個人の年齢、体重、及び状態、並びに投与の経路、剤形及び投与計画、及び望まれる結果に注意深く合わせなければならず、当然施術者により正確な用量が決定されるべきである。
【0093】
実際の用量は、治療される疾患の性質及び重篤度によって決まり、医師の裁量の範囲内であり、所望の治療効果をもたらす本発明の特定の環境に合わせて用量を調整することにより変化してもよい。しかし現在は、個人の用量あたり約0.1〜約500mg好ましくは約1〜約100mg、最も好ましくは約1〜約10mgの活性成分を含有する医薬組成物が治療に適していることを意図している。
【0094】
活性成分は、1日あたり1回又は数回の用量で投与してもよい。場合によっては、静脈内で0.1μg/kg及び経口で1μg/kgという低用量で満足できる結果を得ることができる。用量範囲の上限は、現在、静脈内で約10mg/kg及び経口で100mg/kgと考えられる。範囲は、静脈内で1日あたり約0.1μg/kg〜約10mg/kg、経口で1日あたり約1μg/kg〜約100mg/kgである。
【0095】
治療方法
別の態様において、本発明は、ヒトを含めた動物の生体の、中枢神経系におけるモノアミン神経伝達物質再取り込みの阻害に反応性である疾患又は障害又は状態を治療、予防又は軽減する方法を提供し、この方法は、それを必要とするヒトを含めたそのような動物の生体に、有効量の本発明の化合物を投与するステップを含む。
【0096】
現在、適切な用量範囲は、通常のように投与の正確な方法、投与される形態、投与が向けられる適応症、罹患している対象及び罹患している対象の体重、及びさらには担当の医師又は獣医の好み及び経験に応じて、毎日0.1〜1000ミリグラム、毎日10〜500ミリグラム、及び特に毎日30〜100ミリグラムであることを意図している。
【実施例】
【0097】
下記の実施例及び一般手順は、本明細書において同定される一般式(I)における中間体化合物及び最終生成物に関する。本発明の一般式(I)の化合物の調製は、下記の実施例を用いて詳細に記載される。時には、本発明の開示範囲内に含まれる各化合物に、反応が記載のように適用できない場合がある。このことが生じる化合物は、当業者によって容易に認識されるであろう。これらの場合では、当業者に公知の従来の修飾によって(つまり、干渉する基を適切に保護することにより、他の従来型の試薬に変更することにより、又は反応条件の定型的な変更により)、反応を首尾良く行うことができる。或いは、本明細書において開示される他の反応又はそれでなければ従来のものが、本発明の対応する化合物の調製に適用できるであろう。あらゆる調製方法において、すべての出発物質は公知であるか、又は公知の出発物質から容易に調製できる。
【0098】
空気の影響を受ける試薬又は中間体に関わるすべての反応は、窒素下及び無水溶媒中で行われる。後処理の手順において硫酸マグネシウムを乾燥剤として使用し、溶媒は減圧下で蒸発させる。
【0099】
実施例で使用される略称は下記の意味を持つ:
DCM:ジクロロメタン
DME:ジメトキシエタン
DEAD:ジエチルアゾジカルボキシラート
THF:テトラヒドロフラン
EtOAc:酢酸エチル
DMF:N,N−ジメチルホルムアミド
【0100】
方法A
exo−7−(9−アザ−ビシクロ[3.3.1]ノン−3−イルオキシ)−クロメン−2−オン塩酸塩(化合物A1) DEAD(40%、トルエン中、4.98g、11.4mmol)を、トリフェニルホスフィン(3.13g、11.9mmol)及びトルエン(50ml)の氷冷した混合物へ10分間にわたって加え、その後室温で5分間撹拌した。endo−3−ヒドロキシ−9−アザ−ビシクロ[3.3.1]−ノナン−9−カルボン酸tert−ブチルエステル(2.4g、9.94mmol)を混合物へ加え、透明溶液が得られたら、7−ヒドロキシクマリン(1.77g、10.9mmol)を加えた。温度は28℃に上昇した。混合物を室温で15時間撹拌した。水(50ml)及び水酸化ナトリウム水溶液(10ml、1M)を加え、混合物を撹拌した。混合物を水で洗浄した(2×50ml)。中間体exo−3−(2−オキソ−2H−クロメン−7−イルオキシ)−9−アザ−ビシクロ[3.3.1]ノナン−9−カルボン酸tert−ブチルエステルの溶液を蒸発させた。酢酸中の塩化水素の混合物(20ml、1M)を加えた。混合物を15分間撹拌し、ここで 沈殿が生じた。固体をろ過し、ジエチルエーテルで洗浄した。固体生成物を、エタノール中で煮沸させることによりさらに精製した。収量800mg(25%)。
LC−ESI−HRMSの[M+H]+実測値は286.1446Da。計算値286.144319Da、偏差1ppm。
【0101】
exo−7−(9−メチル−9−アザ−ビシクロ[3.3.1]ノン−3−イルオキシ)−クロメン−2−オン塩酸塩(化合物A2)を、方法Aに従ってendo−3−ヒドロキシ−9−メチル−9−アザ−ビシクロ[3.3.1]−ノナンから調製した。LC−ESI−HRMSの[M+H]+実測値は300.1605Da。計算値300.159424Da、偏差3.6ppm.
【0102】
endo−3−ヒドロキシ−9−アザ−ビシクロ[3.3.1]ノナン−9−カルボン酸tert−ブチルエルテル
水素化ホウ素ナトリウム(2.88g、76.2mmol)を、3−オキソ−9−アザ−ビシクロ[3.3.1]ノナン−9−カルボン酸tert−ブチルエステル(15.2g、63.5mmol)及びメタノール(125ml)の氷冷した混合物へ何回かに分けて加えた。温度は24℃に上昇した。混合物の撹拌及び氷での冷却を続けた。水(10ml)を加え、メタノールを留去した。ジエチルエーテル(50ml)を加え、混合物を撹拌し、水で洗浄した(2×30ml)。混合物を乾燥させ蒸発させた。収量15.8g(100%)。
【0103】
3−オキソ−9−アザ−ビシクロ[3.3.1]ノナン−9−カルボン酸tert−ブチルエステル
9−アザ−ビシクロ[3.3.1]ノナン−3−オン塩酸塩(12.0g、68.3mmol)をTHF(200ml)中に懸濁し、トリエチルアミン(27.6g、273mmol)を加えた。THF(50ml)中に溶解させたジ−tert−ブチル−ジカルボナート(15.6g、71.7mmol)を、15℃未満で15分間にわたって滴下して加えた。混合物を室温で1時間撹拌しておいた。水を加え、ジエチルエーテル(200ml)で抽出した。有機相を水(2×100ml)で洗浄した。有機相を、短いシリカゲルカラムに通してろ過した。収量15.24g(93%)。
【0104】
9−アザ−ビシクロ[3.3.1]ノナン−3−オン塩酸塩
1−クロロエチルクロロホルマート(21.4g、150mmol)を、9−メチル−9−アザ−ビシクロ[3.3.1]ノナン−3−オン(15.3g、100mmol)及びトルエン(100ml)の混合物へ加え、室温で15時間撹拌しておいた。混合物を90℃で9時間撹拌した。別の分割分の1−クロロエチルクロロホルマート(14.3g、100mmol)を加え、その後90℃で20時間撹拌した。メタノール(80ml)を加え、その後2時間還流させた。混合物を氷浴で冷却した。純粋な生成物が沈殿し、これをろ過しジエチルエーテルで洗浄した。収量12.0g(68%)。
【0105】
方法B
exo−7−(9−アザ−ビシクロ[3.3.1]ノン−3−イルオキシ)−3−ブロモ−クロメン−2−オン塩酸塩(化合物B1)
臭素(2.74g、17.1mmol)を、酢酸ナトリウム(3.83g 46.7mmol)、exo−3−(2−オキソ−2H−クロメン−7−イルオキシ)−9−アザ−ビシクロ[3.3.1]ノナン−9−カルボン酸tert−ブチルエステル、及び酢酸(75ml)の撹拌された混合物へ、室温にて加えた。混合物を2時間撹拌した。生成物(exo−3−(3−ブロモ−2−オキソ−2H−クロメン−7−イルオキシ)−9−アザ−ビシクロ[3.3.1]ノナン−9−カルボン酸tert−ブチルエステル)が沈殿した。水を加え、固体生成物をろ過し、水で洗浄した。収量5.7g(73%)。exo−3−(3−ブロモ−2−オキソ−2H−クロメン−7−イルオキシ)−9−アザ−ビシクロ[3.3.1]ノナン−9−カルボン酸tert−ブチルエステル(1.0g、2.15mmol)及び酢酸中の塩化水素(10ml、1M)の混合物を1時間撹拌した。混合物をエタノール(30ml、96%)中で煮沸し、冷却及びろ過した。収量0.67g(78%)。
LC−ESI−HRMSの[M+H]+実測値は364.0533Da。計算値364.054832Da、偏差−4.2ppm。
【0106】
3−ブロモ−7−(9−メチル−9−アザ−ビシクロ[3.3.1]ノン−3−イルオキシ)−クロメン−2−オン塩酸塩(化合物B2)を、方法Bに従ってexo−7−(9−メチル−9−アザ−ビシクロ[3.3.1]ノン−3−イルオキシ)−クロメン−2−オンから調製した。LC−ESI−HRMSの[M+H]+実測値は378.0702Da。計算値378.069937Da、偏差0.7ppm.
【0107】
方法C
exo−7−(9−アザ−ビシクロ[3.3.1]ノン−3−イルオキシ)−3−フラン−2−イル−クロメン−2−オン塩酸塩(化合物C1)
exo−3−(3−ブロモ−2−オキソ−2H−クロメン−7−イルオキシ)−9−アザ−ビシクロ[3.3.1]ノナン−9−カルボン酸tert−ブチルエステル(2.3g、5.0mmol)、フラン−2−ボロン酸(1.12g、10mmol)、炭酸カリウム(2.42g、17.5mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)−パラジウム(0)(0.20g、0.172mmol)、パラダサイクル(palladacycle)(0.10g、0.107)、DME(50ml)、水(25ml)の混合物を15時間還流撹拌した。水酸化ナトリウム水溶液(20ml、1M)を加え、その後ジクロロメタンで抽出した(2×30ml)。合わせた有機相を水(50ml)で洗浄した。クロロホルム、メタノール(6:1)及び 0.5%アンモニア水溶液を溶媒として用いたシリカゲル上のクロマトグラフィーにより、exo−3−(3−フラン−2−イル−2−オキソ−2H−クロメン−7−イルオキシ)−9−アザ−ビシクロ[3.3.1]ノナン−9−カルボン酸tert−ブチルエステルを得た。これを方法Bに従って表題化合物の対応する塩酸塩へ転換した。収量15mg(0.7%)。
LC−ESI−HRMSの[M+H]+実測値は352.1567Da。計算値352.154884Da、偏差5.2ppm。
【0108】
インビトロでの阻害活性
化合物を、WO97/16451(NeuroSearch A/S)に記載のように、シナプトソームにおけるモノアミン神経伝達物質のドーパミン(DA)、ノルアドレナリン(NA)、及びセロトニン(5−HT)の再取り込みを阻害するそれらの能力について試験した。
【0109】
試験の値はIC50として与えられる(H−DA、H−NA、又はH−5−HTの特定の結合を50%阻害する試験物質の濃度(μM))。
【0110】
本発明の試験化合物により得られる試験結果は、以下の表から明らかとなる:
【表1】

【0111】
前述のことから、本発明の具体的な実施形態が本明細書において説明の目的のために記載されているが、本発明の精神及び範囲から逸脱せずに様々な修正を行ってもよいことが理解されるであろう。したがって、本発明は添付の特許請求の範囲によってなされるように制限されるべきではない。
【0112】
前述の説明において、特許請求の範囲において、及び/又は付随する図面において開示される特徴は、別々に及びその任意の組合せの両方において、本発明をその多様な形態において実現する物質であり得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物
【化1】


その任意の立体異性体若しくはその立体異性体の任意の混合物、又はその薬学的に許容される塩
[式中、
は水素又はC1〜6アルキルを表し、
Qはクロメン−2−オン基を表し、このクロメン−2−オン基はハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、C1〜6アルコキシ、C3〜7シクロアルコキシ、C1〜6アルキル、C3〜7シクロアルキル、C3〜7シクロアルキル−C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、C2〜6アルキニル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から独立に選択される1つ又は複数の置換基で場合によって置換されている]。
【請求項2】
が水素又はC1〜6アルキルを表し、Qがクロメン−2−オン−7−イル基を表し、この基はハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、C1〜6アルコキシ、C3〜7シクロアルコキシ、C1〜6アルキル、C3〜7シクロアルキル、及びフラニルからなる群から独立に選択される1つ又は複数の置換基で場合によって置換されている、請求項1に記載の化合物、その任意の立体異性体若しくはその立体異性体の任意の混合物、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項3】
が水素を表す、請求項1又は2に記載の化合物、その任意の立体異性体若しくはその立体異性体の任意の混合物、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項4】
がメチルを表す、請求項1又は2に記載の化合物、その任意の立体異性体若しくはその立体異性体の任意の混合物、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項5】
exo−7−(9−アザ−ビシクロ[3.3.1]ノン−3−イルオキシ)−クロメン−2−オン;
exo−7−(9−アザ−ビシクロ[3.3.1]ノン−3−イルオキシ)−3−ブロモ−クロメン−2−オン;
exo−7−(9−アザ−ビシクロ[3.3.1]ノン−3−イルオキシ)−3−フラン−2−イル−クロメン−2−オン
である、請求項1に記載の化合物、その任意の立体異性体若しくはその立体異性体の任意の混合物、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項6】
exo−7−(9−メチル−9−アザ−ビシクロ[3.3.1]ノン−3−イルオキシ)−クロメン−2−オン;
3−ブロモ−7−(9−メチル−9−アザ−ビシクロ[3.3.1]ノン−3−イルオキシ)−クロメン−2−オン
である、請求項1に記載の化合物、その任意の立体異性体若しくはその立体異性体の任意の混合物、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項7】
治療有効量の請求項1から6までのいずれか一項に記載の化合物、その任意の立体異性体若しくはその立体異性体の任意の混合物、又はその薬学的に許容される塩を、少なくとも1つの薬学的に許容される担体、賦形剤、又は希釈剤と共に含む、医薬組成物。
【請求項8】
薬剤の製造における、請求項1から6までのいずれか一項に記載の化合物、その任意の立体異性体若しくはその立体異性体の任意の混合物、又はその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項9】
ヒトを含めた哺乳動物の、中枢神経系におけるモノアミン神経伝達物質再取り込みの阻害に反応性である疾患又は障害又は状態を治療、予防又は軽減するための医薬組成物の製造における、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
疾患、障害又は状態が、気分障害、鬱病、非定型鬱病、疼痛に続発する鬱病、大鬱病性障害、気分変調性障害、双極性障害、双極性I型障害、双極性II型障害、気分循環性障害、全身的状態に起因する気分障害、物質誘発性気分障害、仮性認知症、ガンザー症候群、強迫性障害、パニック障害、広場恐怖を伴わないパニック障害、広場恐怖を伴うパニック障害、パニック障害の病歴を伴わない広場恐怖、パニック発作、記憶欠損、記憶喪失、注意欠陥多動性障害(ADHD)、肥満症、不安症、全般性不安障害、摂食障害、パーキンソン病、パーキンソン症、認知症、高齢者の認知症、老人性認知症、アルツハイマー病、ダウン症候群、エイズ認知症複合、加齢による記憶機能障害、特定恐怖症、社会恐怖症、社会不安障害、心的外傷性ストレス障害、急性ストレス障害、薬物依存症、薬物乱用、薬物依存障害、コカイン乱用、ニコチン乱用、タバコ乱用、アルコール中毒、アルコール依存症、窃盗癖、常習性物質の使用停止により引き起こされる禁断症状、疼痛、慢性痛、炎症痛、神経因性痛、片頭痛、緊張型頭痛、慢性緊張型頭痛、鬱病を合併する疼痛、繊維筋痛、関節痛、変形性関節症、関節リウマチ、背部痛、癌性疼痛、過敏性腸による疼痛、過敏性腸症候群、術後痛、乳房切除後疼痛症候群(PMPS)、脳卒中後疼痛、薬物誘因性神経障害、糖尿病性神経障害、交感神経依存性疼痛、三叉神経痛、歯痛、筋筋膜痛、幻肢痛、過食症、月経前緊張症候群、月経前不快気分障害、黄体期後期症候群、心的外傷後症候群、慢性疲労症候群、遷延性植物状態、尿失禁、腹圧性尿失禁、切迫性尿失禁、夜間尿失禁、性機能障害、早漏、勃起困難、勃起障害、早発性女性オルガズム、下肢静止不能症候群、周期性四肢運動障害、摂食障害、神経性食欲不振症、睡眠障害、広汎性発達障害、自閉症、アスペルガー症候群、レット症候群、小児期崩壊性障害、学習障害、運動能力障害、無言症、抜毛癖、ナルコレプシー、脳卒中後鬱病、脳卒中誘発性脳損傷、脳卒中誘発性神経損傷、ジル・ドゥ・ラ・トゥレット症候群、耳鳴、チック障害、身体醜形障害、反抗挑戦性障害、又は脳卒中後障害である、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
ヒトを含めた動物の生体の、中枢神経系におけるモノアミン神経伝達物質再取り込みの阻害に反応性である疾患又は障害又は状態を治療、予防又は軽減する方法であって、それを必要とするそのような動物の生体に、治療有効量の請求項1から6までのいずれか一項に記載の化合物、その任意の立体異性体若しくはその立体異性体の任意の混合物、又はその薬学的に許容される塩を投与するステップを含む上記方法。
【請求項12】
薬剤として使用するための、請求項1から6までのいずれか一項に記載の化合物、その任意の立体異性体若しくはその立体異性体の任意の混合物、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項13】
ヒトを含めた哺乳動物の、中枢神経系におけるモノアミン神経伝達物質再取り込みの阻害に反応性である疾患又は障害又は状態の治療、予防又は軽減において使用するための、請求項1から6までのいずれか一項に記載の化合物、その任意の立体異性体若しくはその立体異性体の任意の混合物、又はその薬学的に許容される塩。

【公表番号】特表2011−511031(P2011−511031A)
【公表日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−545450(P2010−545450)
【出願日】平成21年2月4日(2009.2.4)
【国際出願番号】PCT/EP2009/051217
【国際公開番号】WO2009/098209
【国際公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【出願人】(505377201)ノイロサーチ アクティーゼルスカブ (135)
【Fターム(参考)】