説明

新規のフッ素化化合物、これを含む組成物、およびこれを利用したフィルムの製造方法

本発明は、新規のフッ素化化合物、これを含む組成物、およびこれを利用したフィルムの製造方法に関し、より詳細には、シランコアに1つ以上のフッ素、アクリレート系作用基が置換されている新規の構造の化合物、そして前記化合物および光開始剤を含む組成物、およびこれを利用してフィルムを製造する方法に関する。本発明に係る化合物を含む組成物を利用すれば、屈折率が低く、反射率が減少して透過率が増加したフィルムを製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規のフッ素化化合物、これを含む組成物、およびこれを利用したフィルムの製造方法に関する。本出願は、2010年2月4日に韓国特許庁に提出された韓国特許出願第10−2010−0010653号の出願日の利益を主張し、その内容すべては本明細書に含まれる。
【背景技術】
【0002】
最近普及されているインターネットや電子商取引などのディスプレイおよび情報通信技術の発展に伴い、巨大な容量の光通信、光情報処理、および高解像度ディスプレイの必要性が要求されている。特に、ディスプレイ素子においては、外部光源の反射によって起こる反射現象を防ぐAR(Anti−reflection)層の製造が重要な技術の1つとなっており、AR層は2つの層間の屈折率差を利用して界面で反射する光が消滅干渉するようにしたものであって、通常は低屈折素材と高屈折素材の多層膜または屈折率分布が非対称的なグラデーション(gradient)単層膜構造で形成されている。低屈折層の屈折率が小さいほど反射防止はより効果的なので、低屈折層の屈折率制御技術が極めて重要となる。
【0003】
低屈折光学素材としては、フッ素系単量体およびこれから製造されるフッ素系高分子が、屈折率が低くて可視光および赤外線領域の波長における低い吸収損失のため、屈折率制御素材として大きい関心を受けてきた。
【0004】
一例として、米国特許第4、985、473号、第6、306、563号、および第6、323、361号には、エポキシ樹脂や不飽和基を持つ過フッ素化したアクリレート誘導体を含む組成物およびこれを利用して製造された光学素子が開示されている。前記組成物から低損失および低異方性特性を持つ薄膜の製造は可能であるが、製造された薄膜は極性(polarity)が低くて基板との接着特性が低く、屈折率制御および特性改善のために添加される染料との相溶性も低く、透光度が低下して機能向上に困難を来たす。
【0005】
また、多価の官能基を含む単量体の製造が困難である。基材との相互作用が可能な作用基としては、高い極性を持つカーボネート(−O−C(=O)−O−)またはカバーメート(−NH−C(=O)−O−)作用基を分子内に含ませた化合物が知られているが(韓国公開特許第2003−0097532号)、前記化合物は単量体屈折率が1.4以上と比較的高いため、低屈折薄膜として使用し難いという問題点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような従来技術の問題点を解決するために、本発明は、屈折率が低いだけでなく、光重合が可能な化合物を提供することを目的とする。
また、前記化合物を含む組成物を提供し、これを利用して低屈折フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述したような目的を達成するために、本発明は、下記化学式(1)で表示される化合物およびその製造方法を提供する。
[化1]
{[(A−RO)Si(OR4−a−b−(X(1−b)−R)}Si(OR−B)4−c
【0008】
前記化学式(1)において、
およびRは互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立的にフッ素が置換されている線形(linear)または分枝型(branched)の炭素数1〜20のアルキレン基であり、前記置換されたフッ素の数は1〜36であり、
は炭素数1〜20のアルキレン基、またはフッ素が置換されている線形(linear)または分枝型(branched)の炭素数1〜20のアルキレン基であり、前記置換されたフッ素の数は1〜36であり、
は互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立的にフッ素が置換されている線形(linear)または分枝型(branched)の炭素数1〜20のアルキル基であり、前記置換されたフッ素の数は1〜36であり、
AおよびBは互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立的にアクリレート系またはメタクリレート系作用基であり、
XはFまたはHであり、
aは1〜3の間の整数であり、bは0または1であり、cは1〜3の間の整数である。
本発明は、全体組成物の重量を基準としてI)前記化学式(1)で表示される化合物からなる群より選択された1種以上の化合物0.1〜99.9重量部および、II)光開始剤0.01〜30重量部を含む組成物を提供する。本発明の前記組成物は、追加でIII)バインダ、不飽和基を含む共単量体、および溶媒からなる群より1種以上を選択し、それぞれ0.1〜99重量部で含むことができる。
【0009】
また、本発明は、前記組成物から製造されるフィルムおよびその製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る化合物を含む組成物を利用すれば、低屈折率を持つだけでなく、透過率、反射率、基材との接着性、染料との相溶性などが優れており、常用される機溶媒に対して優れた耐化学性を示し、信頼度が優れた成形体、光素子などを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る実施例39によって製造された組成物の光重合の動きを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0013】
本発明は、シランコアに1以上のフッ素、アクリレート系作用基が置換されている下記化学式(1)で表示される化合物に関する。
[化1]
{[(A−RO)Si(OR4−a−b−(X(1−b)−R)}Si(OR−B)4−c
【0014】
前記化学式(1)において、
およびRは互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立的にフッ素が置換されている線形(linear)または分枝型(branched)の炭素数1〜20のアルキレン基であり、前記置換されたフッ素の数は1〜36であり、
は炭素数1〜20のアルキレン基、またはフッ素が置換されている線形(linear)または分枝型(branched)の炭素数1〜20のアルキレン基であり、前記置換されたフッ素の数は1〜36であり、
は互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立的にフッ素が置換されている線形(linear)または分枝型(branched)の炭素数1〜20のアルキル基であり、前記置換されたフッ素の数は1〜36であり、
AおよびBは互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立的にアクリレート系またはメタクリレート系作用基であり、
XはFまたはHであり、
aは1〜3の間の整数であり、bは0または1であり、cは1〜3の間の整数である。
前記化学式(1)の化合物は、下記化学式(1−a)または化学式(1−b)で表示されることができる。
[化1−a]
{[(A−RO)Si(OR3−a]−(R)}Si(OR−B)4−c
[化1−b]
(X−R)}Si(OR−B)4−c
【0015】
前記化学式(1−a)および化学式(1−b)において、R1〜R4、A、B、X、aおよびcはそれぞれ、前記化学式(1)における定義と同じである。
【0016】
前記化学式(1)に該当する化合物の具体的な例は下記のとおりであるが、これに限定されることはない。
【化1−1】

【化1−2】

【化1−3】

【化1−4】

【化1−5】

【化1−6】

【化1−7】

【化1−8】

【化1−9】

【化1−10】

【化1−11】

【0017】
前記化合物でアクリレート系作用基を含むことによって光重合が可能な特性を持つようになり、フッ素の含量を増加させることによって屈折率が低くなる効果を得ることができる。これだけでなく、基材との相互作用が可能なシラン中心体の物質を利用することによって光硬化後の接着能力を向上させることができ、フッ素化アルキル鎖の反応性を増加させると同時に、界面との接着性を向上させることができる。
【0018】
また、前記化合物は、熱重合が可能な特性がある。
【0019】
前記化学式(1)で表示される化合物の製造方法は下記のとおりであるが、これに限定されることはない。
【0020】
すなわち、下記化学式(2)の化合物および下記化学式(3)の化合物、または芳香族アルコール1種または2種以上の化合物を使用して製造し、溶媒なく製造したり、またはMC(dichloromethane、CHCl)、DMF(dimethylformamide)、THF(tetrahydrofuran)、DMSO(dimethylsulfoxide)、EA(Ethyl acetate)、IPA(Isopropyl alcohol)、EC(ethylene carbonate)などうちから選択された1種または2種以上の溶媒を使用して温度−20℃〜110℃、好ましくは10℃〜70℃で10分〜48時間以上撹拌することにより、前記化学式(1)で表示される化合物を製造することができる。
[化2]
{[(Y)Si(OR4−a−b−(X(1−b)−R)}Si(Z)4−c
【0021】
前記化学式(2)において、
XはFまたはHであり、
YおよびZはそれぞれ独立的にハロゲン原子であり、
は炭素数1〜20のアルキレン基、またはフッ素が置換されている線形(linear)または分枝型(branched)の炭素数1〜20のアルキレン基であり、前記置換されたフッ素の数は1〜36であり、
は互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立的にフッ素が置換されている線形(linear)または分枝型(branched)の炭素数1〜20のアルキル基であり、前記置換されたフッ素の数は1〜36であり、
aは1〜3の間の整数であり、bは0または1であり、cは1〜3の整数である。
【0022】
[化3]
−C
前記化学式(3)において、
はヒドロキシ基とフッ素が置換されている線形(linear)または分枝型(branched)の炭素数1〜20のアルキル基であり、前記置換されたフッ素の数は1〜36であり、
Cはアクリレート系またはメタクリレート系作用基である。
【0023】
前記化学式(2)と化学式(3)に該当する化合物の具体的な例は下記のとおりであるが、これに限定されることはない。
【化2−1】

【化2−2】

【化2−3】

【化2−4】

【化2−5】

【化2−6】

【化2−7】

【化2−8】

【化2−9】

【化2−10】

【化2−11】

【0024】
前記化合物(2−1)〜(2−11)の化合物は、シグマアルドリッチ(sigma Aldrich)、ゲレスト(Gelest Inc.)、マーク(Merck)社で購入して使用することができる。
【化3−1】

【化3−2】

【化3−3】

【化3−4】

【化3−5】

【化3−6】

【化3−7】

【0025】
前記化合物(3−1)の出発物質であるフローリンが置換されたダイオールはエクスフロア(exfluor chem.)から購入し、化合物(3−4)の分枝型フルオロダイオール(branched fluoro diol)鎖は米国登録特許(US5、204、441)を参考文献として合成された。また、アクリレートまたはメタクリレートを置換させる合成法は、論文[Chem.Mater、2005、175962]を参照とした。
【0026】
上述したような方法によって製造された本発明の化学式(1)の化合物は、屈折率が1.39以下と極めて低い特徴を持つ。また、前記化合物および光開始剤を添加した組成物を熱または光(紫外線、可視光線、赤外線など)に露出させれば、低屈折の透明な薄膜として製造される特徴も持つ。
【0027】
本発明に係る化合物は、前記化学式(1−b)のように化合物内に少なくとも2つのシラン基を含むことがより好ましく、前記化学式(1−b)の化合物を含む組成物を利用すれば、低屈折率を持つだけでなく、透過率、反射率、基材との接着性、染料との相溶性などが優れ、常用される有機溶媒に対して優れた耐化学性を示し、信頼度が優れた成形体、光素子などを提供することができる。
【0028】
また、本発明に係る前記化学式(1)の化合物を含む組成物は下記のとおりである。
【0029】
本発明の組成物は、全体組成物の重量を基準としてI)前記化学式(1)で表示される化合物からなる群より選択された1種以上の化合物0.1〜99.9重量部、およびII)光開始剤0.01〜30重量部を含み、前記組成物に追加でIII)バインダ、不飽和基を含む共単量体、および溶媒からなる群から1種以上を選択し、それぞれ0.1〜99重量部で含んで使用することができる。
【0030】
特に、本発明に係る組成物において、前記化学式(1)で表示される化合物は、前記化学式(1−a)で表示される化合物単独、化学式(1−b)で表示される化合物単独、または化学式(1−a)で表示される化合物、および化学式(1−b)で表示される化合物の混合物を含むことができる。
【0031】
前記光開始剤はラジカル開始剤と酸発生開始剤を含み、当業界で一般的に用いられる開始剤を使用することができ、特に限定されない。好ましくは、Union Carbide社のCyracure UVI−6990、Cyracure UVI−6974製品、Degusa社のDegacure、AsahiDenkaのSP−55、SP−150、SP−170製品、Ciba−Geigy社のIrgacure 261、Irgacure 184、Irgacure 819、Irgacure 907、Irgacure 2959、Irgacure 500、Irgacure 127、Irgacure 754、Irgacure 369、Irgacure 651、Irgacure 2100製品、およびフルーカ製品としてDarocure 1173、Darocure 4265、Darocure 4265、Darocure 1664、Darocure MBF、Darocure TPO製品などのうちから選択された1種または2種以上の開始剤を使用することができる。
【0032】
前記光開始剤の含量は、全体組成物の重量を基準として0.01〜30重量部であり、好ましくは0.01〜20重量部であることができる。その含量が0.01重量部未満の場合には、反応が遅くなったり分子量が小さくなるという問題が発生することがあり、30重量部を超過する場合には、重合速度が遅くなったり重合が適切に行われないという問題が発生することがあるため、前記範囲内で使用することが好ましい。
【0033】
前記バインダとしては、当業界で一般的に用いられるものを使用することができ、特に限定されない。好ましくは、フッ素樹脂、PES(polyeth er sulfone)、ポリスチレン、ポリエチレングリコール、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエステル、ポリシロキサン、PMMA(polymethylmethacrylate)、PDMS(polydimethylsiloxane)などのうちから選択された1種または2種以上を使用することができる。
【0034】
前記バインダの含量は、全体組成物の重量を基準として0.1〜99重量部であり、好ましくは30〜90重量部であることができる。バインダを前記含量範囲で使用すれば、薄膜が均一であるという長所がある。
【0035】
前記不飽和基を含む共単量体としては、当業界で広く知られた不飽和化合物、アクリレートまたはメタクリレート系化合物、アクリレートまたはメタクリレートが置換されたフッ素化アルキル鎖化合物、公知の方法(ref.E.kim.S.Cho.D.Yeu、S.Shin.Chem.Mater.2005、17、962または韓国公開特許第2003−0097532号)によって合成される単量体、米国特許第4、985、473号、第6、306、563号、および第6、323、361号に知られた方法によって製造された単量体およびその組成物からなる群より選択された1つ以上を使用することができる。
【0036】
前記不飽和基は、ビニル基、アセチレン基、エポキシ樹脂などを意味する。
【0037】
前記不飽和基を含む共単量体の含量は、全体組成物の重量を基準として0.1〜99重量部であり、好ましくは20〜95重量部であることができる。不飽和基を含む共単量体を前記含量範囲で使用すれば、屈折率を制御することができ、薄膜が均一になるという長所がある。
【0038】
前記組成物には、当業界で周知である有機溶媒を追加で使用することができる。前記溶媒としては、テトラヒドロフラン、クロロホルム、テトラクロロメタン、およびテトラクロロエタンからなる群より1種以上を選択して使用することができ、またはトリクロロエタノール、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、メチルイソカルビノール(methylisocarbinol)、アセトン、2−ブタノン(2−butanone)、エチルアミルケトン(ethyl amyl ketone)、ジアセトンアルコール(diacetonealcohols)、イソプロパノン(isopropanone)、シクロヘキサノン(cyclohexanone)、N、N−ジメチルホルムアミド(N、N−dimethylformaide)、N、N−ジメチルアセトアミド(N、N−dimethylacetoamide)、ジエチルエーテル(diethylether)、ジイソプロピルエーテル(diisopropyl ether)、1、4−ジオキサン(1、4−dioxane)、3、4−ジヒドロ−2H−ピラン(3、4−dihydro−2H−pyran)、2−メトキシエタノール(2−methoxy ethanol)、2−エトキシエタノール(2−ethoxy ethanol)、2−ブトキシエタノール(2−butoxy ethanol)、エチレングリコールジメチルエーテル(ethylene glycol dimethyl ether)、メチルアセテート(methyl acetate)、エチルアセテート(ethy lacetate)、イソブチルアセテート(isobutyl acetate)、アミルアセテート(amyl acetate)、エチルラクテート(ethyl lactate)、エチレンカーボネート(ethylene carbonate)、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、ペプタン、イソ−オクタン、シクロヘキサンなどの芳香族炭化水素、メチレンクロライド、1、2−ジクロロエタン(1、2−dichloroethane)、ジクロロプロパン(dichloropropane)、クロロベンゼン(chlorobenzene)、ジメチルスルホキシド(dimethylsulfoxide)、N−メチル2−ピロリドン(N−methyl−2−pyrrolidone)からなる群より選択された1種以上を使用することができる。
【0039】
前記溶媒の含量は、全体組成物の重量を基準として0.1〜99重量部であり、好ましくは10〜95重量部であることができる。溶媒を前記含量範囲で使用すれば、薄膜の厚さを制御することができるという長所がある。
【0040】
本発明に係る化学式(1)の化合物を含む前記組成物の屈折率は、1.38〜1.44の範囲を持つ。
【0041】
また、本発明は、本発明に係る前記組成物を−20℃〜110℃以下で乾燥してフィルムを形成した後、光照射によって製造される低屈折フィルムおよびこの製造方法を提供する。
【0042】
本発明によれば、本発明の前記組成物をモールドに入れたり支持体、例えば、シリコンウエハ、ガラス基板、樹脂フィルムなどのような支持体にコーティングした後、常温〜80℃の温度で乾燥した後、紫外線、可視光線、電子ビーム、X−線、γ−線などの光を照射することによって高分子薄膜または高分子成形体を製造することができる。
【0043】
このとき、コーティングは、ロール(roll)コーティング、スピン(spin)コーティング、バー(bar)コーティング、スプレー(spray)コーティング、ディープ(deep)コーティングなどの方法を用いることができ、薄膜厚さは通常0.01μm〜3mmまで可能である。
【0044】
このように製造された高分子薄膜および成形体は、低屈折率ながらも染料との相溶性および基板との接着性が優れるだけでなく、特に、常用される有機溶媒に対して優れた耐化学性を示し、信頼度が優れた反射防止膜および光素子を提供することができる。
【実施例】
【0045】
本発明について、下記の実施例を参照しながらより具体的に説明する。しかし、これらの実施例は例示的なものに過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0046】
<実施例>
<物性測定方法>:
1)屈折率;製造された化合物または組成物をSAIRON Tech社のSPA−400を使用して650mm波長の光源下で測定した。
2)透過性:PETフィルム上にコーティング厚さが100nmのフィルムを利用してAvantes社のAvaSec−2048から測定した。
3)光重合特性:赤外線分光器を利用し、不飽和基のC=C振動波数の強度変化で測定し、Bruker社のTensor37を利用した。
【0047】
<製造例1>化合物3−1の製造
250mlの丸底フラスコに0.047molの1H、1H、5H、5H−パーフルオロ−1、5−ペンタンジオール(1H、1H、5H、5H−Perfluoro−1、5−pentanediol)と100mlの無水(anhydrous)THFを混合した。ここに0.047molのトリエチルアミン(Triethylamine)を窒素雰囲気で投入した。1時間に渡って撹拌した後、0.047molのメタクリロイルクロライド(methacryloyl chloride)をゆっくり投入した。反応混合物を3日間に渡って室温で撹拌した。反応が終結した後、反応後に生じた沈殿物をフィルタを通じてろ過し、ジクロロメタン(dichloromethane)100mlを追加した後、炭酸水素ナトリウム(Sodium bicarbonate)を溶解させた水溶液を利用して抽出過程を経るようにした。
【0048】
抽出過程を経てろ過された溶液は溶媒が除去され、ペトロレウムエーテル(Petroleum ether)とテトラヒドロフラン(Tetrahydrofuran)の展開溶媒(1:2)を使用するシリカゲルカラムクロマトグラフィを通じて精製された。
最終結果物は55%の収率を示した。
【0049】
<製造例2>化合物3−4の製造
アクリロイルクロライド(methacryloyl chloride)と2、2、3、3、4、4、5、5−オクタフルオロ−1、6−ヘキサンジオール(2、2、3、3、4、4、5、5−Octafluoro−1、6−hexanediol)を反応させることを除いては、前記製造例1と同じように実施して化合物3−4を製造し、最終結果物の収率は65%であった。
【0050】
<製造例3>化合物3−5の製造
アクリロイルクロライドと2、2、3、3、4、4、5、5、6、6、7、7、8、8、9、9−ヘキサデカフルオロ−1、10−デカンジオール(2、2、3、3、4、4、5、5、6、6、7、7、8、8、9、9−Hexadecafluoro−1、10−decanediol)を反応させることを除いては、前記製造例1と同じように実施して化合物3−5を製造し、最終結果物の収率は62%であった。
【0051】
<実施例1>化合物1−4の製造

【0052】
前記製造例1で得られた物質を利用し、窒素雰囲気で充填された50mlの丸底フラスコに化学式(2−3)の塩素化シラン0.5mol、化学式(3−7)のフルオロ化アルキルメタクリレート1.5molを入れ、有機溶媒を添加しない状態で7時間に渡って撹拌させた。このときの反応温度は0℃を継続して維持させた。このように得られた物質は、ペトロレウムエーテル(Petroleum ether)とジクロロメタン(dichloromethan)の展開溶媒(1:2)を使用するシリカゲルカラムクロマトグラフィを通じて精製された。
最終結果物の収率は90%を示した。
【0053】
<実施例2〜12>化合物1−1〜化合物1−11の製造
前記実施例1の方法によって物質を合成し、合成された物質および反応条件を下記表1に示した。
【0054】
このように合成された最終結果物の収率、H NMR、および19F NMRを下記表1に示した。
【表1】

【0055】
<実施例13〜27>低屈折組成物の製造
前記実施例によって製造された物質、下記表2に示す成分、溶媒、および製造方法を使用して組成物を製造した。製造された組成物の屈折率を測定して下記表2に示した。
【表2】

前記表2に記載された化学式(4)〜化学式(7)の化合物は、下記のとおりである。
【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

【0056】
<実施例28>低反射フィルムの製造方法
前記実施例16で製造された組成物をPETフィルムに塗布し、スピンコーティングによって1、500rpmで30秒間に渡ってコーティングした後、60℃オーブンで2分間に渡って乾燥させ、高圧水銀ランプのUVを5分間に渡って照射して100nmの低反射フィルムを製造した。
前記製造された膜の透過率は96%、反射率は4%である。
【0057】
<実施例29〜42>
前記実施例13〜27で製造された組成物を前記実施例28と類似するように、ガラス、シリコンウエハ、またはPET基板上に塗布し、スピンコーティングによって200rpm〜2、000rpmでコーティングした後、60℃〜90℃オーブンで60分〜120分間に渡って乾燥させ、高圧水銀ランプのUV、可視光線、または赤外線を利用して3分〜180分間に渡って照射して50nm〜10μmの低反射フィルムを製造した。その測定結果を下記表3に示した。
【0058】
前記製造された膜の透過率は90%〜99%、反射率は1%〜10%であり、透光度測定時の基板はPETフィルムを使用した。
【表3】

【0059】
前記表3で詳察したように、本発明に係る組成物を利用してフィルムを製造する場合には、透過率は高く、反射率は低い低反射フィルムを製造することができることが分かる。
また、添付の図1は前記実施例39によって製造された赤外線分光スペクトルを示すものであって、単量体で見えた不飽和基のC=C二重結合の振動に該当する1、640cm−1位置のピークが、光照射によってフィルムになった後に消えることを確認することができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式(1)で表示される化合物。
[化1]
{[(A−RO)Si(OR4−a−b−(X(1−b)−R)}Si(OR−B)4−c
前記化学式(1)において、
およびRは互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立的にフッ素が置換されている線形(linear)または分枝型(branched)の炭素数1〜20のアルキレン基であり、前記置換されたフッ素の数は1〜36であり、
は炭素数1〜20のアルキレン基、またはフッ素が置換されている線形(linear)または分枝型(branched)の炭素数1〜20のアルキレン基であり、前記置換されたフッ素の数は1〜36であり、
は互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立的にフッ素が置換されている線形(linear)または分枝型(branched)の炭素数1〜20のアルキル基であり、前記置換されたフッ素の数は1〜36であり、
AおよびBは互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立的にアクリレート系またはメタクリレート系作用基であり、
XはFまたはHであり、
aは1〜3の間の整数であり、bは0または1であり、cは1〜3の間の整数である。
【請求項2】
前記化学式(1)は、下記化学式(1−a)で表示されることを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
[化1−a]
{[(A−RO)aSi(OR3−a]−(R)}Si(OR−B)4−c
前記化学式(1−a)において、
およびRは互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立的にフッ素が置換されている線形(linear)または分枝型(branched)の炭素数1〜20のアルキレン基であり、前記置換されたフッ素の数は1〜36であり、
は炭素数1〜20のアルキレン基、またはフッ素が置換されている線形(linear)または分枝型(branched)の炭素数1〜20のアルキレン基であり、前記置換されたフッ素の数は1〜36であり、
は互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立的にフッ素が置換されている線形(linear)または分枝型(branched)の炭素数1〜20のアルキル基であり、前記置換されたフッ素の数は1〜36であり、
AおよびBは互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立的にアクリレート系またはメタクリレート系作用基であり、
aは1〜3の間の整数であり、cは1〜3の間の整数である。
【請求項3】
前記化合物は、下記化合物のうちのいずれか1つであることを特徴とする、請求項2に記載の化合物。
【化1−1】

【化1−2】

【化1−3】

【化1−11】

【請求項4】
前記化学式(1)は、下記化学式(1−b)で表示されることを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
[化1−b]
(X−R)}Si(OR−B)4−c
前記化学式(1−b)において、
はそれぞれ独立的にフッ素が置換されている線形(linear)または分枝型(branched)の炭素数1〜20のアルキレン基であり、前記置換されたフッ素の数は1〜36であり、
は炭素数1〜20のアルキレン基、またはフッ素が置換されている線形(linear)または分枝型(branched)の炭素数1〜20のアルキレン基であり、前記置換されたフッ素の数は1〜36であり、
Bはそれぞれ独立的にアクリレート系またはメタクリレート系作用基であり、
XはFまたはHであり、
cは1〜3の間の整数である。
【請求項5】
前記化合物は、下記化合物のうちのいずれか1つであることを特徴とする、請求項4に記載の化合物。
【化1−4】

【化1−5】

【化1−6】

【化1−7】

【化1−8】

【化1−9】

【化1−10】

【請求項6】
前記化合物は、下記化学式(2)の化合物、および下記化学式(3)の化合物または芳香族アルコール1種または2種以上の化合物を使用して製造されることを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
[化2]
{[(Y)Si(OR4−a−b−(X(1−b)−R)}Si(Z)4−c
前記化学式(2)において、
XはFまたはHであり、
YおよびZはそれぞれ独立的にハロゲン原子であり、
は炭素数1〜20のアルキレン基、またはフッ素が置換されている線形(linear)または分枝型(branched)の炭素数1〜20のアルキレン基であり、前記置換されたフッ素の数は1〜36であり、
は互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立的にフッ素が置換されている線形(linear)または分枝型(branched)の炭素数1〜20のアルキル基であり、前記置換されたフッ素の数は1〜36であり、
aは1〜3の間の整数であり、bは0または1であり、cは1〜3の整数であり、
[化3]
−C
前記化学式(3)において、
はヒドロキシ基とフッ素が置換されている線形(linear)または分枝型(branched)の炭素数1〜20のアルキル基であり、前記置換されたフッ素の数は1〜36であり、
Cはアクリレート系またはメタクリレート系作用基である。
【請求項7】
全体組成物の重量を基準としてI)請求項1に係る化合物からなる群より選択された1種以上の化合物0.1〜99.9重量部、およびII)光開始剤0.01〜30重量部を含む、組成物。
【請求項8】
全体組成物の重量を基準としてI)請求項2に係る化合物0.1〜99.9重量部、およびII)光開始剤0.01〜30重量部を含む組成物。
【請求項9】
前記組成物は、請求項4に係る化合物0.1〜99.9重量部を追加で含むことを特徴とする、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
全体組成物の重量を基準としてI)請求項4に係る化合物0.1〜99.9重量部、およびII)光開始剤0.01〜30重量部を含む、組成物。
【請求項11】
前記組成物は追加でIII)バインダ、不飽和基を含む共単量体、および溶媒からなる群より1種以上を選択し、それぞれ0.1〜99重量部で含むことを特徴とする、請求項7に記載の組成物。
【請求項12】
前記光開始剤は、Cyracure UVI−6990、Cyracure UVI−6974;Degacure、SP−55、SP−150、SP−170;Irgacure 261、Irgacure 184、Irgacure 819、Irgacure 907、Irgacure 2959、Irgacure 500、Irgacure 127、Irgacure 754、Irgacure 369、Irgacure 651、Irgacure 2100、Darocure 1173、Darocure 4265、Darocure 4265、Darocure 1664、Darocure MBF、およびDarocure TPOからなる群より選択された1種または2種以上であることを特徴とする、請求項7に記載の組成物。
【請求項13】
前記バインダは、フッ素樹脂、PES(poly ether sulfone)、ポリスチレン、ポリエチレングリコール、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエステル、ポリシロキサン、PMMA(polymethylmethacrylate)、およびPDMS(polydimethylsiloxane)からなる群より選択された1種以上であることを特徴とする、請求項11に記載の組成物。
【請求項14】
前記不飽和基を含む共単量体は、アクリレートまたはメタクリレート系化合物;およびアクリレートまたはメタクリレートが置換されたフッ素化アルキル鎖化合物からなる群より選択された1種以上であることを特徴とする、請求項11に記載の組成物。
【請求項15】
前記溶媒は、テトラヒドロフラン、クロロホルム、テトラクロロメタン、テトラクロロエタン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、メチルイソカルビノール(methylisocarbinol)、アセトン、2−ブタノン(2−butanone)、エチルアミルケトン(ethyl amyl ketone)、ジアセトンアルコール(diacetonealcohols)、イソプロパノン(isopropanone)、シクロヘキサノン(cyclohexanone)、N、N−ジメチルホルムアミド(N、N−dimethylformaide)、N、N−ジメチルアセトアミド(N、N−dimethylacetoamide)、ジエチルエーテル(diethyl ether)、ジイソプロピルエーテル(diisopropyl ether)、1、4−ジオキサン(1、4−dioxane)、3、4−ジヒドロ−2H−ピラン(3、4−dihydro−2H−pyran)、2−メトキシエタノール(2−methoxy ethanol)、2−エトキシエタノール(2−ethoxy ethanol)、2−ブトキシエタノール(2−butoxy ethanol)、エチレングリコールジメチルエーテル(ethylene glycol dimethyl ether)、メチルアセテート(methyl acetate)、エチルアセテート(ethyl acetate)、イソブチルアセテート(isobutyl acetate)、アミルアセテート(amyl acetate)、エチルラクテート(ethyl lactate)、エチレンカーボネート(ethylene carbonate)、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、ペプタン、イソ−オクタン、シクロヘキサン、メチレンクロライド、1、2−ジクロロエタン(1、2−dichloroethane)、ジクロロプロパン(dichloropropane)、クロロベンゼン(chlorobenzene)、ジメチルスルホキシド(dimethylsulfoxide)、およびN−メチル−2−ピロリドン(N−methyl−2−pyrrolidone)からなる群より選択された1種以上であることを特徴とする、請求項11に記載の組成物。
【請求項16】
前記組成物は1.38〜1.44の屈折率を持つことを特徴とする、請求項7に記載の組成物。
【請求項17】
請求項7に記載の組成物を利用して製造される成形体。
【請求項18】
前記成形体はフィルムであることを特徴とする、請求項17に記載の成形体。
【請求項19】
前記フィルムの厚さは0.01μm〜3mmであることを特徴とする、請求項18に記載の成形体。
【請求項20】
請求項7に記載の組成物を利用して成形体を製造する方法。
【請求項21】
前記成形体はフィルムであることを特徴とする、請求項20に記載の成形体を製造する方法。
【請求項22】
前記組成物をコーティングし、光照射をしてフィルムを形成することを特徴とする、請求項20に記載の成形体を製造する方法。

【図1】
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【公表番号】特表2013−518969(P2013−518969A)
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−551917(P2012−551917)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【国際出願番号】PCT/KR2011/000696
【国際公開番号】WO2011/096701
【国際公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(500239823)エルジー・ケム・リミテッド (1,221)
【出願人】(509016896)インダストリ−アカデミック コオペレーション ファウンデイション, ヨンセイ ユニヴァーシティ (2)
【氏名又は名称原語表記】Industry−Academic Cooperation Foundation, Yonsei University
【住所又は居所原語表記】Yonsei University, 134 Sinchon−Dong, Seodaemun−Gu, Seoul 120−749 Republic of Korea
【Fターム(参考)】