説明

新規イミダゾール化合物、表面処理剤、プリント回路基板およびその製造方法

【課題】有機酸水溶液に対する溶解性が高く、処理液のpHの変動や蒸発などに起因するイミダゾール系化合物の析出が抑制され、プリント配線板やソフトエッチング処理による雑イオンの混入に対しても安定した継続使用が可能な、表面処理剤に適したイミダゾール化合物を提供する。
【解決手段】下記一般式で表される新規イミダゾール化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規イミダゾール化合物、表面処理剤、プリント回路基板およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プリント回路基板は、例えば銅張積層基板に回路配線のパターンを形成したものであって、その上に電子部品を搭載して一つの回路ユニットを形成できるようにしたものである。このようなプリント回路基板には、その表面に回路配線を形成した回路パターンを有し、その回路パターンに電子部品を搭載する表面実装型のものが多く用いられている。例えば電子部品として、両端に電極を有するチップ部品を搭載するには、プリント回路基板にフラックスを塗布した後、噴流はんだ付方法やリフローはんだ付方法によりそのチップ部品をはんだ付けする。チップ部品をはんだ付けする際には、プリント回路基板の回路パターン形成後、すなわち銅張積層基板の銅箔部分を所望の回路配線が得られるようにエッチングした後、その得られた回路のうち、チップ部品をはんだ付する部分(いわゆるはんだ付ランドの部分)を残してソルダーレジスト膜により被覆する。そしてソフトエッチング処理を行ってから、直ちにチップ部品をはんだ付けすることもある。しかし、ソルダーレジスト膜により被覆するまでの工程と、その後のチップ部品のはんだ付工程とをそれぞれ独立に行うことが多い。例えば、ソルダーレジスト膜を被覆したプリント回路基板を部品として保管した後に、改めてチップ部品のはんだ付工程を行ったり、プリント回路基板を流通させ、他の業者がはんだ付工程を行うことがある。このような場合、はんだ付工程を行うまでには多くの時間を経過することがあるので、露出しているはんだ付ランドの銅箔面は空気酸化され易い。特に湿気の多い場合は、はんだ付けランドの銅箔面の空気酸化が一層起こり易い。このため、その表面の酸化を防止するために酸化防止膜を形成することが行われており、そのために表面保護剤が用いられる。
【0003】
また、ソルダーレジスト膜を被覆したプリント回路基板をその製造後間もなく使用する場合でも、電子部品を両面実装する場合には、例えばリフローはんだ付方法では、ソルダーペーストをはんだ付ランドに塗布した後、はんだ粉末を溶融するには260℃のような高温加熱を行う。このため、プリント回路基板の一方の面にはんだ付工程を行っているときに、他方の面も高温に曝され、はんだ付ランドの銅箔面は酸化され易くなることから、このような場合にも酸化防止膜を形成する処理がなされる。
【0004】
このような表面保護剤により処理を行う場合や、プリント回路基板の片面のはんだ付工程に伴って起こる加熱劣化を防止するために他方の面のはんだ付ランドにも酸化防止処理を行う場合には、いわゆるプリフラックスが用いられている。その中でも、有機溶剤を使用せず、公害や火災の危険のない水溶性プリフラックスが好んで用いられている。従来、露出しているはんだ付ランドの銅箔には、防錆処理をほどこすことが行われている。これには、特許文献1、特許文献2に記載されているように、ベンズイミダゾール系化合物を含有する水溶性のプリント配線板用表面保護剤を水溶性プリフラックスとして用いることが知られている。特許文献1、2には、ベンズイミダゾール系化合物を含有する水溶性のプリント配線板用表面保護剤に、銅箔の回路パターンが表面に形成されているプリント基板を浸漬することにより、プリント回路基板の回路パターンの銅及び銅合金表面に耐熱性被膜が形成されることが記されている。この被膜は、高湿度下に曝された後でも非常に良好な耐湿性を有しており、プリント回路基板の保護並びに部品実装時のはんだ付性に極めて優れている。また、ロジン等を含有するプリフラックスの場合には、塗布膜が銅箔以外にも形成され、部品実装後に不要な塗布膜の洗浄をしなければ回路の高い信頼性が得られないことがある。特許文献1、2のような水溶性プリフラックスを使用すると、こうした不要な塗膜を洗浄する必要がないことから生産性、性能等の点で優れている。
【特許文献1】特開平5−25407号公報
【特許文献2】特開平5−186888号公報
【0005】
近年プリント配線板に対する電子部品の接合方法として、表面実装法が多く採用されるようになり、チップ部品の仮止め、部品装置の両面装着あるいはチップ部品とディスクリート部品の混載などにより、プリント配線板が高温下に曝されるようになったが、2位に長鎖アルキル基を有するイミダゾール化合物を用いてプリント配線板の表面処理を行う場合、プリント配線板が高温に曝されると表面処理された銅面が変色し、その後のはんだ付けに支障を生じるため、表面実装法には不向きであった。また、特特許文献3、4には、イミダゾール系化合物を含有する水溶性のプリント配線板用表面保護剤に、銅箔の回路パターンの銅及び銅合金表面に耐熱性被膜が形成されることが記されており、特に2,4−ジフェニルイミダゾール化合物を含有する処理液は、銅金属の表面に耐熱性に優れた化成被膜を形成し、表面実装工程におけるリフロー加熱後の良好なはんだ付け性が確保され、処理液は、処理浴に有効成分が析出せず安定であると記載されている。しかしながら、これら2−アリールイミダゾール化合物を用いてプリント配線板の表面処理を行う場合、銅金属の表面に耐熱性に優れた化成被膜を形成し得るが、その実用化に当たっては解決すべき課題を有していた。
【特許文献3】特許3277025号
【特許文献4】特許3367743号
【0006】
すなわち、これらのイミダゾール系化合物は有機酸水溶液に対する溶解性が低いため、調整した処理液のpHの上昇あるいは処理液の蒸発などに起因して、イミダゾール系化合物が析出し易く、一旦析出した固体のイミダゾール系化合物は、結晶が大きく成長し再溶解が困難であった。特に、装置の稼動しない槽内や補充時の処理液の保管温度が低くなると、上記の問題が顕著であった。
【0007】
本発明の課題は、有機酸水溶液に対する溶解性が高く、処理液のpHの変動や蒸発などに起因するイミダゾール系化合物の析出が抑制され、プリント配線板やソフトエッチング処理による雑イオンの混入に対しても安定した継続使用が可能な、表面処理剤に適したイミダゾール化合物を提供することである。
【0008】
また、本発明の課題は、このイミダゾール化合物を用いた金属表面処理剤を使用して、耐熱性を有し、高湿度下に曝された後でも非常に良好な耐湿性を有する被膜を形成できるようにすることである。
【0009】
また、本発明の課題は、こうした表面処理剤をプリント回路基板に適用することにより、高温加熱されて劣化するはんだ付ランドに対しても、溶融はんだが良く濡れ広がることができるようにすることである。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、下記一般式で表される新規イミダゾール化合物に係るものである。
【0011】
【化2】

【0012】
式中、Rは、水素、炭素数1〜11の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を表す。Rは、互いに独立して、炭素数1〜11の直鎖又は分岐鎖のアルコキシ基を表す。Rは、互いに独立して、炭素数1〜11の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、塩素または臭素を表す。mは1〜4の整数、nは0〜4の整数である。
【0013】
また、本発明は、前記イミダゾール化合物を含有することを特徴とする、金属の表面処理剤に係るものである。
【0014】
また、本発明は、この表面処理剤を塗布することによって形成された防錆膜を備えていることを特徴とする、プリント回路基板に係るものである。
【0015】
また、本発明は、プリント回路基板の金属膜上に、前記表面処理剤を塗布することによって防錆膜を形成することを特徴とする、プリント回路基板の金属の表面処理方法に係るものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、有機酸水溶液に対する溶解性が高く、処理液のpHの変動や蒸発などに起因するイミダゾール系化合物の析出が抑制され、プリント配線板やソフトエッチング処理による雑イオンの混入に対しても安定した継続使用が可能な、表面処理剤に適したイミダゾール化合物を提供できる。
【0017】
また、本発明によれば、このイミダゾール化合物を用いた金属表面処理剤を使用して、耐熱性を有し、高湿度下に曝された後でも非常に良好な耐湿性を有する被膜を形成できる。
【0018】
また、本発明によれば、こうした表面処理剤をプリント回路基板に適用することにより、高温加熱されて劣化するはんだ付ランドに対しても、溶融はんだが良く濡れ広がるようにできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
[新規イミダゾール化合物]
式中、Rは、水素、炭素数1〜11の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を表す。ここで、Rのアルキル基の炭素数は、1〜7であることが更に好ましく、1〜4であることが一層好ましい。特に好ましくは、Rが水素である。
【0020】
は、互いに独立して、炭素数1〜11の直鎖又は分岐鎖のアルコキシ基を表す。ここで、Rの炭素数は、1〜7であることが更に好ましく、1〜4であることが一層好ましい。特に好ましくは、Rがメトキシ基である。
【0021】
は、互いに独立して、炭素数1〜11の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、塩素または臭素を表す。ここで、Rの炭素数は、1〜7であることが更に好ましく、1〜4であることが一層好ましい。特に好ましくは、Rがメチル基である。
【0022】
mは1〜4の整数であり、1〜2が特に好ましい。また、nは0〜4の整数であり、0〜1が特に好ましい。
【0023】
[イミダゾール化合物の合成]
(方法1)
本発明のイミダゾール化合物において、Rが水素の場合は、例えば、(工程1)のように合成することができる。
【化3】

【0024】
式中、Rは、互いに独立して、炭素数1〜11の直鎖又は分岐鎖のアルコキシ基を表す。Rは、互いに独立して、炭素数1〜11の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、塩素または臭素を表す。mは1〜4の整数、nは0〜4の整数である。
【0025】
すなわち、1段階目は、アセトフェノン誘導体(化2)を臭素化剤または塩素化剤でまたはα−ブロモアセトフェノン類およびα−クロロアセトフェノン類(化3)を合成する。臭素化剤としては一般的な臭素化剤を使用でき、臭素、三臭化ピリジニウム、N−ブロモスクシンイミド等が挙げられ、好ましくは臭素である。塩素化剤としては、一般的な塩素化剤を使用でき、塩素、塩化チオニル、塩化スルフリル、ホスゲン、塩化オキサリル、オキシ塩化リン、五塩化リン、三塩化リン等が挙げられ、好ましくは塩化チオニル、塩化スルフリルである。これらのハロゲン化剤は、通常、市販のものを用いることができる。これらハロゲン化反応は任意でルイス酸またはブレンステッド酸を触媒として使用できる。ハロゲン化は溶媒がなくても、または少なくとも1種の溶媒があって行うことができる。反応溶媒として特に適した溶媒は、例えばメタノール、エタノール、1,2−エタンジオール、n−プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノール等のアルコール類、n−ヘキサン、n−ペンタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレンなど脂肪族炭化水素や芳香族炭化水素、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン等芳香族化水素、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン等脂肪族エーテルや脂環式エーテルが挙げられる。また、蟻酸、酢酸、プロピオン酸等有機酸も使用できる。
【0026】
2段階目は、上記α−クロロアセトフェノン類(化3)をベンズアミジンと塩基の存在下反応させ、目的物を得ることができる。ベンズアミジンは塩酸塩または硫酸塩等、対応する無機酸および/または有機酸との塩も使用できる。反応溶媒として特に適した溶媒は、酢酸エチル、酢酸ブチルなどの酢酸エステル類、例えばメタノール、エタノール、1,2−エタンジオール、n−プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノール等のアルコール類、n−ヘキサン、n−ペンタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレンなど脂肪族炭化水素や芳香族炭化水素、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン等芳香族化水素、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジオキサンなど脂肪族エーテルや脂環式エーテルが挙げられる。また、いずれの段階でも反応温度や濃度は任意に設定できる。
【0027】
(方法2)
また、本発明のイミダゾール化合物において原料となるアセトフェノン類が市販されてない場合などは、例えば、(工程2)のようにも合成することができる。
(工程2)
【0028】
【化4】

【0029】
式中、Rは、水素、炭素数1〜11の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を表す。Rは、互いに独立して、炭素数1〜11の直鎖又は分岐鎖のアルコキシ基を表す。Rは、互いに独立して、炭素数1〜11の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、塩素または臭素を表す。mは1〜4の整数、nは0〜4の整数である。
【0030】
すなわち、Rが水素の場合は、1段階目は置換ベンゼン類(化4)にハロ酢酸クロリド(X−CH−COCl:Xは塩素または臭素)またはハロ酢酸ブロミド(X−CH−COBr:Xは塩素または臭素)を反応させ、α−ハロ-アセトフェノン類(化3)を合成する。この反応はフリーデルクラフトアシル化反応が適当であり、この反応に適用する一般的なルイス酸、例えば塩化アルミニウム等の存在下に反応を行うことができる。ハロ酢酸クロリドとしては、クロロ酢酸クロリド、ブロモ酢酸クロリド、ハロ酢酸ブロミドとしてはクロロ酢酸ブロミド、ブロモ酢酸ブロミド等が挙げられ、好ましくはクロロ酢酸クロリドである。
【0031】
また、Rが炭素数1〜11の直鎖又は分岐鎖のアルキル基の場合は、対応する酸クロリドまたは酸ブロミドを上記同様にフリーデルクラフトアシル化反応を行った後に、方法1と同様な方法で臭素化剤または塩素化剤でアセトフェノン誘導体(化3)を調製することができる。2段階目も、ベンズアミジン以降同様の方法で合成することができる。また、いずれの段階でも反応温度や濃度は任意に設定できる。
【0032】
[金属の表面処理剤]
本発明の表面処理剤は、新規イミダゾール化合物を含有するものである。
好適な実施形態においては、必須成分としてイミダゾール化合物を0.01〜10質量%、より好ましくは0.05質量%以上、あるいは5質量%以下で含有する水溶液の表面処理剤を使用する。イミダゾール化合物の含有量を0.01%以上とすることによって、防錆膜等の塗膜を形成しやすくなる。この含有量が10質量%を越えると、不溶解分が多くなり易く、経済的でもない。
【0033】
前記イミダゾール化合物は中性の水に対しては難溶性であるため、有機酸を用いて水溶化させる。またこの時に水溶性の有機溶剤を併用しても良い。
【0034】
この際に用いられる有機酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、
カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、べラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、 アラキジン酸、ベヘン酸 - リグノセリン酸、α-リノレン酸、ステアリドン酸、エイコサペンタエン酸 、ドコサヘキサエン酸、リノール酸、γ-リノレン酸、ジホモ-γ-リノレン酸、アラキドン酸、オレイン酸、エルカ酸、グリコール酸、乳酸、2-ヒドロキシ酪酸、3-ヒドロキシ酪酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、イソクエン酸、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、ブロモ酢酸、メトキシ酢酸、アクリル酸、安息香酸、パラニトロ安息香酸、パラブチル安息香酸、パラトルエンスルホン酸、ピクリン酸、メタトルイル酸、コハク酸、サリチル酸、マレイン酸、フマール酸、アジピン酸、グルタル酸、レブリン酸等が挙げられ、特にギ酸、酢酸が好ましい。これらの酸は、1〜40質量%で含有させることが好ましい。またこの際に併用できる水溶性有機溶剤としてはメタノール、エタノール、1,2−エタンジオール、n−プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノール等のアルコール類、アセトン、N,N-ジメチルホルムアミド等が挙げられる。
【0035】
表面処理剤で処理される金属としては、銅、銅とリン、ニッケルとの合金、ニッケル、スズ、亜鉛、銀−パラジウム合金及びこれらの金属を主成分とした合金を例示できる。
【0036】
本発明の表面処理剤(好ましくは水溶性プリフラックス)には、さらに銅との錯体被膜形成助剤として、例えばギ酸銅、塩化第一銅、塩化第二銅、シュウ酸銅、酢酸銅、水酸化銅、酸化第一銅、酸化第二銅、炭酸銅、リン酸銅、硫酸銅、ギ酸マンガン、塩化マンガン、シュウ酸マンガン、硫酸マンガン、酢酸亜鉛、酢酸鉛、水素化亜鉛、塩化第一鉄、塩化第二鉄、酸化第一鉄、酸化第二鉄、ヨウ化銅、臭化第一銅、臭化第二銅等の金属化合物、また、エチレンジアミン、エチレンジアミン四酢酸、イミノジ酢酸、ニトリロ三酢酸、グルコン酸、クラウンエーテル、ビピリジン、ポルフィリン、フェナントロリン等のキレート、その他環状配位化合物を添加しても良い。これらは1種又は2種以上用いられ、添加量は処理液に対して0.01〜10質量%、好ましくは0.05〜5質量%である。
【0037】
また、上記金属化合物を使用した金属イオンを含有する緩衝液を併用することも好ましく、そのための代表的塩基としてアンモニア、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、イソプロピルエタノールアミン、ヒドラジン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。
【0038】
本発明の表面処理剤には、さらにはんだ付特性を向上させるために、例えば、ヨウ化カリウム、臭化カリウム、よう化亜鉛、臭化亜鉛、よう化アンモニウム、臭化アンモニウム、臭化プロピオン酸、ヨードプロピオン酸等のハロゲン化合物、また、よう化テトラメチルアンモニウム、臭化メチルピリジニウム塩、複素環化合物やアミン化合物のハロゲン塩を添加しても良い。これらは1種又は2種以上用いられ、添加量は処理液に対して0.01〜10質量%、好ましくは0.05〜5質量%である。
【0039】
これらのことから、上記一般式(1)で表されるイミダゾール化合物と、有機酸を含有する水溶性プリフラックスに、上記金属化合物、配位化合物及びハロゲン化合物の少なくとも1種を含有しても良い。
【0040】
本発明の水溶性プリフラックスを塗布して防錆処理をし、防錆膜を形成するには、処理対象のプリント回路基板の銅層の表面を研磨、脱脂、酸洗、水洗する前処理工程を経た後、その水溶性プリフラックスに10〜60℃で数秒から数十分、好ましくは20〜50℃で、5秒〜1時間、好ましくは10秒〜10分間プリント回路基板を浸漬する。このようにして本発明に係わるイミダゾール化合物は銅層に付着するが、その付着量は処理温度を高く、処理時間を長くする程多くなる。超音波を利用するとなお良い。なお、他の塗布手段、例えば噴霧法、刷毛塗り、ローラー塗り等も使用できる。このようにして得られた防錆膜は、両面実装する場合等に高温加熱されて劣化するはんだ付ランドに対しても溶融はんだが良く濡れ広がることができる。
【0041】
さらに水溶性プリフラックスを塗布して防錆膜を形成したプリント回路基板に対し、ロジン誘導体、テルペンフェノール系樹脂などからなる耐熱性に優れた熱可塑性樹脂を溶剤に溶かしたものをロールコータなどにより均一に塗布して耐熱性を向上させてもよい。
【0042】
本発明のプリント回路基板を製造するには、例えば次の工程を行う。
(1)
銅張積層板からなる基板に、チップ部品をはんだ付するはんだ付ランドを有する所定の回路配線からなる回路パターンをエッチングにより形成し、はんだ付ランド以外をソルダーレジストで被覆する工程
(2)
その回路パターンの銅表面を研磨、脱脂、酸洗(ソフトエッチング)、水洗する前処理工程
(3)
露出しているはんだ付ランドの銅面を上記一般式(1)で表される化合物からなる群の少なくとも1つの化合物を含有する水溶性プリフラックスを塗布、乾燥する工程
(4)
得られたプリント回路基板にはポストフラックスが塗布された後あるいはその塗布をせずに直接、上記はんだ付ランドにソルダーペースト(はんだ粉末とフラックスを含有する)が塗布され、チップ部品の電極がリフローはんだ付される。
【実施例】
【0043】
本発明の実施の形態を以下の実施例により説明する。なお、「%」は特に断りのない限り、「質量%」である。
【0044】
[1.新規イミダゾールの合成]
[製造例1]
(2−フェニル−4−(2−メトキシ)フェニルイミダゾールの製造)
o−メトキシアセトフェノン(300g)をトルエン(500mL)に溶解させた溶液に、臭素(320g)を撹拌しながら5〜10℃を保持しながら、3時間かけて滴下した。その後、20℃以下で水(500mL)を加え、炭酸カリウム(300g)を1時間かけて投入し中和した。その後、酢酸エチル(500mL)と水(500mL)を加え、有機層を抽出した。有機層は飽和食塩水(500mL)で2回洗浄し、生じたα−ブロモ(2−メトキシ)アセトフェノンを単離せず、そのまま次反応に用いた。得られた有機層とベンズアミジン塩酸塩(320g)、炭酸カリウム(800g)および水(600mL)を混合し、60℃で6時間撹拌した。反応溶液を冷却しながら、水酸化カリウムを使用して中和した後、酢酸エチル(1L)を加え有機層を抽出した。有機層は飽和食塩水(1L)で3回洗浄し、エバポレーターで150mLまで濃縮した。ヘキサン(1L)を加え、室温で撹拌させ生じた結晶をろ過し、150gの2−フェニル−4−(3−メトキシ)フェニルイミダゾールを得た。
融点(160℃)、δ1H−NMR(400MHz,DMSO−d6):3.83(s)、6.80(d)、7.29(t)、7.37(t)、7.45(m)、7.80(s)、8.02(d)
【0045】
【化5】

【0046】
[製造例2]
(2−フェニル−4−(3−メトキシ)フェニルイミダゾールの製造)
m−メトキシアセトフェノン(250g)および塩化メチレン(1kg)に溶解し、塩化スルフリル(250g)を撹拌しながら0〜5℃を保ちながら滴下した。生じるガスをトラップしながら、2時間滴下を続け、その後、室温で5時間撹拌した。有機層を5%炭酸カリウム水溶液(1L)で2回洗浄し、その後、水で2回洗浄した。有機層を半分まで濃縮し、ヘキサン(2L)を加え室温に静置した。10時間後、生じた結晶を減圧濾過し、140gのα−クロロ(3−メトキシ)アセトフェノンを得た。続いて、得られたα−クロロ(3−メトキシ)アセトフェノン(140g)、ベンズアミジン塩酸塩(120g)、炭酸水素ナトリウム(240g)、テトラヒドロフラン(1L)および水(500mL)を混合し、60℃で6時間撹拌した。反応溶液を冷却し、アンモニアで中和した後、酢酸エチル(1L)を加え有機層を抽出した。有機層は飽和食塩水(1L)で3回洗浄し、エバポレーターで100mLまで濃縮した。ヘキサン(1L)を加え、室温で撹拌させ生じた結晶をろ過し、127gの2−フェニル−4−(3−メトキシ)フェニルイミダゾールを得た。
融点(159℃)、δ1H−NMR(400MHz,DMSO−d6):3.82(s)、6.80(d)、7.29(t)、7.36(t)、7.48(m)、7.79(s)、8.02(d)
【0047】
【化6】

【0048】
[製造例3]
(2−フェニル−4−(3−エトキシ)フェニルイミダゾールの製造)
o−メトキシアセトフェノンの代わりにm−エトキシアセトフェノン(100g)を用いて、[製造例1]と同様に調整し、55gの2−フェニル−4−(3−エトキシ)フェニルイミダゾールを得た。
融点(159℃)、δ1H−NMR(400MHz,DMSO−d6):3.82(s)、6.80(d)、7.29(t)、7.37(t)、7.48(m)、7.79(s)、8.02(d)
【0049】
【化7】

【0050】
[製造例4]
(2−フェニル−4−(3,4−ジメトキシ)フェニルイミダゾールの製造)
3,4−ジメトキシアセトフェノン(100g)を用いて、[製造例2]と同様に調整し、45gの2−フェニル−4−(3−エトキシ)フェニルイミダゾールを得た。
融点(155℃)、δ1H−NMR(400MHz,CDCl3):3.95(m)、6.96(d)、7.02(d)、7.21(d)、7.30(S)、7.39(t)、7.57(s)、7.82(d)、10.84(m)
【0051】
【化8】

【0052】
[製造例5]
(2−フェニル−4−(3,4−ジメトキシ)フェニル−5−メチルイミダゾールの製造)
1,2−ジメトキシベンゼン(100g)および無水塩化アルミニウム(150g)を塩化メチレン(600g)に混合した溶液に、5℃以下を保持してプロピオン酸クロリド(70g)を3時間で滴下した。その後、生じるガスをトラップしながら、室温で3時間撹拌したあと、5%塩酸(300mL)を加えて1時間室温で撹拌した。有機層を5%炭酸カリウム水溶液(500mL)で2回洗浄し、その後、水で2回洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで脱水し、ろ過した。その後、溶液を0℃に調整し、塩化スルフリル(100g)を3時間かけて滴下した。その後、生じるガスをトラップしながら室温で5時間撹拌し、冷却しながら2%水酸化カリウム水溶液(120mL)で2回洗浄した。その後、有機層を半分まで濃縮し、続けてベンズアミジン塩酸塩(95g)、炭酸水素ナトリウム(270g)、テトラヒドロフラン(600mL)および水(300mL)を混合し、60℃で6時間撹拌した。反応溶液を冷却しながら、アンモニアを使用して中和した後、酢酸エチル(500mL)を加え有機層を抽出した。有機層は飽和食塩水(500mL)で3回洗浄し、エバポレーターで100mLまで濃縮した。ヘキサン(300mL)を加え、室温で撹拌させ生じた結晶をろ過し、50gの2−フェニル−4−(3,4−ジメトキシ)フェニル−5−メチルイミダゾールを得た。
融点(175℃)、δ1H−NMR(400MHz,CDCl3):3.92(s)、6.89(d)、7.00(d)、7.25(m)、7.39(t)、7.57(s)、7.80(d)、10.82(m)
【0053】
【化9】

【0054】
[製造例6]
(2−フェニル−4−(2−メトキシ−5−メチル)フェニルイミダゾールの製造)
メチルアニソール(30g)とクロロアセチルクロリド(50g)を混合した溶液をトリフルオロメタンスルホン酸(100g)中に0〜5℃で、3時間かけ滴下した。その後、氷水(1L)にゆっくと撹拌しながら反応液を投入した。冷却しながら3時間撹拌し、生じた白色結晶をろ取し、α−クロロ(2−メトキシ−5メチル)アセトフェノン(35g)を得た。引き続いて、続けてベンズアミジン塩酸塩(30g)、炭酸水素ナトリウム(80g)、トルエン(100mL)および水(100mL)を加え、50℃で5時間撹拌した。反応溶液を冷却しながら、アンモニアを使用して中和した後、酢酸エチル(200mL)を加え有機層を抽出した。有機層は飽和食塩水(200mL)で3回洗浄し、エバポレーターで50mLまで濃縮した。ヘキサン(100mL)を加え、室温で撹拌させ生じた結晶をろ過し、22gの2−フェニル−4−(2−メトキシ−5−メチル)フェニルイミダゾールを得た。
融点(192℃)、δ1H−NMR(400MHz,CDCl3):2.28(s)、3.86(s)、6.86(d)、7.36(t)、7.44(t)、7.64(s)、7.88(d)
【0055】
【化10】

【0056】
[製造例7]
(2−フェニル−4−(2−クロロ−5−メトキシ)フェニルイミダゾールの製造)
塩化アルミニウム(34g)を塩化メチレン(150g)に5℃で混合し、その溶液に4−クロロアニソール(30g)およびクロロアセチルクロリド(26g)の混合液を、5℃以下を保持して3時間で滴下した。その後、生じるガスをトラップしながら、室温で3時間撹拌した。その後、5%塩酸(100mL)を加えて1時間室温で撹拌した。有機層を抽出し、2%水酸化カリウム水溶液(120mL)で2回洗浄し、その後、水で2回洗浄した。有機層を半分まで濃縮し、続けてベンズアミジン塩酸塩(120g)、炭酸水素ナトリウム(240g)、テトラヒドロフラン(500mL)および水(300mL)を混合し、60℃で6時間撹拌した。反応溶液を冷却しながら、アンモニアを使用して中和した後、酢酸エチル(500mL)を加え有機層を抽出した。有機層は飽和食塩水(500mL)で3回洗浄し、エバポレーターで100mLまで濃縮した。ヘキサン(300mL)を加え、室温で撹拌させ生じた結晶をろ過し、18gの2−フェニル−4−(2−クロロ−5−メトキシ)フェニルイミダゾールを得た。
融点(162℃)、δ1H−NMR(400MHz,CDCl3):3.87(s)、6.89(d)、7.29(t)、7.34(t)、7.59(d)、7.74(s)、7.87(d)、CDCl3
【0057】
【化11】

【0058】
[製造例8]
(2−フェニル−4−(2、5−ジメトキシ−3−メチル)フェニルイミダゾールの製造)
4−クロロアニソールの代わりに2,5−ジメトキシトルエン(130g)を用いて、[製造例7]と同様に調整し、45gの2−フェニル−4−(2、5−ジメトキシ−3−メチル)フェニルイミダゾールを得た。
融点(190℃)、δ1H−NMR(400MHz,CDCl3):2.398(s)、3.883(s)、6.741(s)、7.129(s)、7.336(t)、7.395(t)、7.877(d)、10.172(m)、(CDCl3)
【0059】
【化12】

【0060】
[製造例9]
(2−フェニル−4−(2、3、5−トリメトキシ−6−メチル)フェニルイミダゾールの製造)
4−クロロアニソールの代わりに2,4,5−トリメトキシトルエン(100g)を用いて、[製造例7]と同様に調整し、38gの2−フェニル−4−(2、5−ジメトキシ−3−メチル)フェニルイミダゾールを得た。
融点(190℃)、δ1H−NMR(400MHz,CDCl3):3.733(s)、3.895(s)、3.911(s)、6.641(s)、7.364(t)、7.450(t)、7.880(d)、10.242(m)、(CDCl3)
【0061】
【化13】

【0062】
[2.表面処理剤の配合と評価]
以下、実施例として(1)本発明の新規イミダゾールおよび比較化合物を表面処理剤(水溶性プリフラックス)として配合する手順、(2)表面処理剤の溶液安定性テスト、(3)表面処理剤による銅貼積層基板表面への被膜形成手順、(4)表面処理剤による被膜の耐熱性および加湿劣化テストについて説明する。
【0063】
(1)本発明の新規イミダゾールおよび比較化合物を表面処理剤(水溶性プリフラックス)配合手順
[実施例1]
[製造例1]の2−フェニル−4−(2−メトキシ)フェニルイミダゾール0.3%、酢酸10%、臭化亜鉛0.05%を溶解させ、アンモニア水および純水でpHを調整し、被膜を形成可能な処理液とした。
【0064】
[実施例2]
[製造例2]の2−フェニル−4−(3−メトキシ)フェニルイミダゾール0.3%、酢酸20%、エナント酸0.05%、よう化亜鉛0.05%を溶解させ、アンモニア水および純水でpHを調整し、被膜を形成可能な処理液とした。
【0065】
[実施例3]
[製造例3]の2−フェニル−4−(3−エトキシ)フェニルイミダゾール0.2%、ギ酸5.00%、酢酸10.00%、よう化アンモニウム0.03%、エチレンジアミン四酢酸0.05%を溶解させ、アンモニア水および純水でpHを調整し、被膜を形成可能な処理液とした。
【0066】
[実施例4]
[製造例4]の2−フェニル−4−(3,4−ジメトキシ)フェニルイミダゾール0.25%、酢酸10.00%、グリコール酸1.00%、臭化アンモニウム0.05%、イミノジ酢酸0.05%を溶解させ、アンモニア水および純水でpHを調整し、被膜を形成可能な処理液とした。
【0067】
[実施例5]
[製造例5]の2−フェニル−4−(4−メトキシ)フェニル−5−メチルイミダゾール0.25%、メトキシ酢酸10.00%、酢酸銅0.05%を溶解させ、アンモニア水および純水でpHを調整し、被膜を形成可能な処理液とした。
【0068】
[実施例6]
[製造例6]の2−フェニル−4−(2−メトキシ−5−メチル)フェニルイミダゾール0.30%、酢酸30.00%、カプロン酸0.10%、臭化カリウム0.05%を溶解させ、アンモニア水および純水でpHを調整し、被膜を形成可能な処理液とした。
【0069】
[実施例7]
[製造例7]の2−フェニル−4−(2−クロロ−5−メトキシ)フェニルイミダゾール0.20%、酢酸15%、クエン酸0.10%、酢酸亜鉛0.30%、トリエタノールアミン0.10%を溶解させ、アンモニア水および純水でpHを調整し、被膜を形成可能な処理液とした。
【0070】
[実施例8]
[製造例8]の2−フェニル−4−(2、5−ジメトキシ−3−メチル)フェニルイミダゾール0.20%、酢酸20.00%、リンゴ酸0.10%、よう化テトラメチルアンモニウム0.05%、ヒドラジン0.10%溶解させ、アンモニア水および純水でpHを調整し、被膜を形成可能な処理液とした。
【0071】
[実施例9]
[製造例9]の2−フェニル−4−(2、3、5−トリメトキシ−6−メチル)フェニルイミダゾール0.20%、ギ酸10.00%、酢酸20.00%、ヨウ化カリウム0.05%を溶解させ、アンモニア水および純水でpHを調整し、被膜を形成可能な処理液とした。
【0072】
[比較例1]
2−ペンチルイミダゾール0.80%、酢酸2.00%、臭化亜鉛0.05%を溶解させ、アンモニア水および純水でpHを調整し、被膜を形成可能な処理液とした。
【0073】
[比較例2]
2−フェニルイミダゾール1.00%、ギ酸1.00%、酢酸1.00%、臭化亜鉛0.05%溶解させ、アンモニア水および純水でpHを調整し、被膜を形成可能な処理液とした。
【0074】
[比較例3]
2,4−ジフェニルイミダゾール0.30%、酢酸10.00%、臭化亜鉛0.05%を溶解させ、アンモニア水および純水でpHを調整し、被膜を形成可能な処理液とした。
【0075】
(2)表面処理剤の溶液安定性テスト
本発明の表面処理剤(水溶性プリフラックス)の安定性は以下のテストにより実施した。
(2−1:低温安定性)
300ccのポリプロピレン製フラスコに処理剤を入れ、5℃で7日間静置保管した。7日後の結晶や油状物の析出状態を観察した。結果を表1に示した。
(2−2:撹拌安定性)
300ccのポリプロピレン製フラスコに処理剤と撹拌子を入れ、マグネチックスターラーで撹拌させ、7日後の結晶や油状物の析出状態を観察した。結果を表1に示した。
(2−3:硫酸および塩素イオン混入安定性)
300ccのポリプロピレン製フラスコに処理剤と0.1%(1000ppm)の硫酸または塩酸を入れ、撹拌子を使用し、マグネチックスターラーで撹拌させ、7日後の結晶や油状物の析出状態を観察した。結果を表1に示した。
【0076】
【表1】

【0077】
(3)表面処理剤による銅貼積層基板表面への被膜形成手順
(3−1)評価基板の洗浄・準備
予めソフトエッチング剤(商品名:SE−30M
タムラ化研株式会社製)により銅箔表面を清浄化した評価基板を、取り出して水洗、液切りした。
次いで、上に調整した本発明の新規イミダゾールおよび比較化合物が含まれる表面処理剤に、評価基板を40℃で60秒浸漬した後、取り出し、水洗、乾燥した。この様に処理した試験片を用いて、以下のように、表面処理剤による被膜の耐熱性および加湿劣化テストを実施した。
【0078】
(4)表面処理剤による被膜の耐熱性および加湿劣化テスト
(4−1:加熱劣化処理)
水溶性プリフラックス被膜の耐熱性テストには、図1に示す温度プロファイルを持つエアーリフロー炉を使用し、複数回のリフロー処理を行うことにより、プリント回路基板の加熱劣化処理を実施した。
【0079】
(4−2:加湿劣化処理)
水溶性プリフラックス被膜の加湿劣化テストには、40℃、90%R.H.の恒温恒湿層に96時間投入することで実施した。
(4−3:はんだ広がり性試験(1))
試験基板として、JIS
2形くし形基板を使用し、前記の通りの手法により防錆膜を形成させた物を使用した。
被膜を形成した試験基板を前記のリフロー条件で0〜3回加熱処理した後、ソルダーペースト(商品名:RMA−010NFP
タムラ化研株式会社製)を開口巾 0.635mm、厚さ200μmのメタルマスクで1文字印刷を行い、リフロー加熱処理を行い、はんだの広がり長さを測定した。この時のはんだ広がりの長さが長いほど、はんだのぬれ性が高いことを示している。各水溶性プリフラックスの評価結果を表2に示す。
【0080】
(4−4:はんだ広がり性試験(2))
試験基板として、JIS
2形くし形基板を使用し、前記の通りの手法により防錆膜を形成させた物を使用した。
被膜を形成した試験基板を加湿劣化処理した後、前記のリフロー条件で0〜3回加熱処理した後、ソルダーペースト(商品名:RMA−010NFP
タムラ化研株式会社製)を開口巾0.635mm、厚さ200μmのメタルマスクで1文字印刷を行い、リフロー加熱処理 を行い、はんだの広がり長さを測定した。この時のはんだ広がりの長さが長いほど、はんだのぬれ性が高いことを示している。実施例の評価結果を表2に示す。
【0081】
【表2】

【0082】
(4−5:スルーホールはんだ上がり性試験(1))
試試験基板として、内径0.6〜1.0mmのスルーホール360穴を有する基板を使用し、前記の通りの手法により防錆膜を形成させた物を使用した。被膜を形成した試験基板を前記のリフロー条件で0〜3回加熱処理した後、ポストフラックス(商品名:CF−110VH−2A
タムラ化研株式会社製)を塗付し、フローはんだ付装置を使用してはんだ付処理を行い、スルーホール上部まではんだが上がったスルーホールの数の割合を測定した。各水溶性プリフラックスの評価結果を表3に示す。
【0083】
(4−6:スルーホールはんだ上がり性試験(2))
試験基板として、内径0.6〜1.0mmのスルーホール360穴を有する基板を使用し、前記の通りの手法により防錆膜を形成させた物を使用した。被膜を形成した試験基板を加湿劣化処理した後、前記のリフロー条件で0〜3回加熱処理した後、ポストフラックス(商品名:CF−110VH−2A
タムラ化研株式会社製)を塗付し、フローはんだ付装置を使用してはんだ付処理を行い、スルーホール上部まではんだが上がったスルーホールの数の割合を測定した。各水溶性プリフラックスの評価結果を表3に示す。
【0084】
【表3】

【0085】
表1〜3から分かるように、本発明により提供される新規なイミダゾール化合物を含有した金属の表面処理剤は、非常に安定であり、水溶液に対する溶解性が高く、処理液のpHの変動や蒸発などに起因するイミダゾール系化合物の析出が抑制され、更にプリント配線板やソフトエッチング処理による雑イオンの混入に対しても安定した継続使用が可能な表面処理剤として使用できる。
【0086】
また同時に、それを用いた金属表面処理剤を使用して、耐熱性を有し、高湿度下に曝された後でも非常に良好な耐湿性を有する被膜を形成でき、こうした表面処理剤をプリント回路基板に適用することにより、高温加熱されて劣化するはんだ付ランドに対しても、溶融はんだが良く濡れ広がるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】加熱劣化試験におけるエアーリフロー炉の温度プロファイルを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式で表される新規イミダゾール化合物。
【化1】

(式中、Rは、水素、炭素数1〜11の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を表す。Rは、互いに独立して、炭素数1〜11の直鎖又は分岐鎖のアルコキシ基を表す。Rは、互いに独立して、炭素数1〜11の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、塩素または臭素を表す。mは1〜4の整数、nは0〜4の整数である。)
【請求項2】
請求項1記載のイミダゾール化合物を含有することを特徴とする、金属の表面処理剤。
【請求項3】
有機酸を含有することを特徴とする、請求項2記載の表面処理剤
【請求項4】
前記イミダゾール化合物の含有量が0.01〜10質量%であることを特徴とする、請求項2または3記載の表面処理剤。
【請求項5】
前記有機酸の含有量が1〜40質量%であることを特徴とする、請求項3または4記載の表面処理剤。
【請求項6】
請求項2〜5のいずれか一つの請求項に記載の表面処理剤を塗布することによって形成された防錆膜を備えていることを特徴とする、プリント回路基板。
【請求項7】
プリント回路基板の金属膜上に、請求項2〜5のいずれか一つの請求項に記載の表面処理剤を塗布することによって防錆膜を形成することを特徴とする、プリント回路基板の金属の表面処理方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−83844(P2010−83844A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−257323(P2008−257323)
【出願日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(000108823)タムラ化研株式会社 (23)
【Fターム(参考)】