説明

新規シスイミダゾリン

本発明は、式(I)の化合物、並びにその医薬的に許容できる塩およびエステル、それらを製造する方法、それらを含む医薬並びにこれらの化合物の医薬的に許容できる活性剤としての使用に関連する。当該化合物は抗増殖剤としての活性を示し且つ特にがんの治療のために使用されて良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MDM2-p53反応の小分子阻害物質であるキラルシスイミダゾリンに関連する。p53は、がんの進行に対して中心的な役割を果す腫瘍抑制タンパク質である。それは、細胞の完全性を保護し且つ増殖抑制又はアポトーシスの導入により細胞の先天的なダメージを受けたクローンの増殖を抑制する。分子レベルにおいて、p53は、細胞周期及びアポトーシスの制御に関連する遺伝子団を活性化することができる転写因子である。p53は、細胞レベルにいてMDM2によって非常によく制御される有力な細胞周期阻害物質である。MDM2及びp53は、フィードバックコントローループを形成する。MDM2は、p53を結合することができ且つそのp53制御を受ける遺伝子を転写活性化する能力を阻害する。加えて、MDM2は、p53のユビキチン依存性分解に介在する。p53のMDM2遺伝子の発現を活性化し、従って、MDM2タンパク質の細胞レベルを上昇することができる。フィードバックコントロールループは、MDM2及びp53の両方が通常の増殖する細胞において低レベルであることを維持する。MDM2は、細胞周期制御における中心的な役割を果たすE2Fのための補因子でもある。
【0002】
p53(E2F)に対するMDM2の比は、多くのがんにおいて調節異常になっている。往々にして、p16INK4/pl9ARF座において生ずる分子欠損は、例えば、MDM2タンパク質分解に影響を及ぼすことが示されている。腫瘍細胞におけるMDM2-p53反応の、野生型p53との反応における阻害は、p53、細胞周期阻止及び又はアポトーシスの蓄積につながるべきである。従って、MDM2アンアゴニストは、単一の剤として又は広範な他の抗腫瘍療法との組み合わせにおいてがん治療への新規方法を提案する。この戦略の弱さは、MDM2-p53反応の阻害するための異なるマクロ分子ツール(例えば、抗体、アンチセンスオリゴヌクレオチド、ペプチド)によって示される。MDM2はまた、p53としての保存された結合領域を介してE2Fを結合し且つサイクリンAのE2F依存性転写を活性化し、MDM2アンアゴニストがp53突然変異細胞において効果を有しうることを示唆する。
【0003】
Wellsら J. Org. Chem., 1972, 37, 2158-2161は、イミダゾリンの合成を報じる。Hunterら, Can. J. Chem., 1972, Vol. 50.ページ669-77は、化学発光について報じられたアマリン及びイソアマリンの調製を報じる(McCapraら. Photochem. and Photobiol. 1965, 4, 1111-1121)。Zupancら. Bull. Soc. Chem. & Tech. (Yugoslavia) 1980-81, 27/28, 71-80は、EDTA誘導体の調製における出発物質としてのトラニルイミダゾリンの使用を報じる。
【0004】
MatsumotoのEP363061は、免疫調製物質として有用なイミダゾリン誘導体を報じている。個の化合物は、毒性が低いことが示された。関節リューマチ、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、及びリューマチ熱の治療及び/又は予防も含まれた。Choueiry らのWO 00/78725は、代替アミン化合物を調製する方法を報じ、そしてイミダゾリン型の化合物は、糖尿病又は損なわれた糖処理など類縁疾患の治療に胃おいて有用でありうる。
【0005】
US6,617,346B1(2003年9月9日に刊行された)およびUS6,734,302B2(2004年5月11日に刊行された)は、類縁するラセミシス-イミダゾリンを開示する。US6,734,302B2は特に、本発明の化合物を包含する密接に関連した幅広いラセミ化合物属は、本発明の化合物のキラリティー及び限られた属を除いて、包含する。
【0006】
本発明は、少なくとも1つの式I
【化1】

(式中、
X1、X2、Y1、Y2及びRは、本明細書中に記載のとおりである)
の化合物並びにその医薬的に許容できる塩及びエステルを提供する。
【0007】
本発明は、MDM2-p53反応の小分子阻害物質であるキラルシスイミダゾリンを提供する。細胞フリー及び細胞ベースのアッセイにおいて、本発明の化合物は、p53誘導ペプチドよりも約100倍大きい潜在性を有しうるp53様ペプチドとMDM2タンパク質との反応を阻害することを示す。細胞ベースのアッセイにおいて、これらの化合物は機械的な活性を示す。野生型p53を伴うがん細胞のインキュベーションにより、p53タンパク質の蓄積、p53-制御p21遺伝子の誘導、及びG1及びG2段階における細胞周期阻止につながり、in vitroでの野生型p53細胞に対する潜在的な抗増殖活性がもたらされる。対照的に、これらの活性は、比較可能な化合物濃度において、突然変異p53を伴うがん細胞においては確認されなかった。従って、MDM2アンアゴニストの活性は、その作用のメカニズムと関連するようだ。これらの化合物は、有力且つ選択的な抗がん剤でありうる。
【0008】
本発明は、少なくとも1つの式Iの化合物並びにその医薬的に許容できる塩及びそのエステル
【化2】

(式中、
Rは、S、N及びOから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含み;そして任意に、低級アルキル、シクロアルキル、-C(O)-R1、ヒドロキシ、ヒドロキシで置換された低級アルキル、低級アルコキシで置換された低級アルキル、-NH2で置換された低級アルキル、-SO2-低級アルキルで置換された低級アルキル、-C(O)-R1で置換された低級アルキル、-NH-低級アルキル、-N(低級アルキル)2、-SO2-低級アルキル、=O、-CH2C(O)CH3から選択された置換基で任意に置換された飽和又は不飽和5〜6員環を示す、又はS、N及びOから選択される1、2又は3個のヘテロ原子を含む5〜6員飽和環を示し;
R1は、水素、低級アルキル、-NH2、-NH-低級アルキル、-N(低級アルキル)2、 ヒドロキシで置換された低級アルキル、NH2で置換された低級アルキル、又はS、N及びOから選択される1、2又は3個のヘテロ原子を含む5〜6員飽和環であり;
X1及びX2は独立して、水素、低級アルコキシ、-CH2OCH3、-CH2OCH2CH3、-OCH2CF3-OCH2CH2Fからなる群から選択され;
Y1及びY2は、互いに独立して、-Cl、 -Br、-NO2、-C≡N、及び-C≡CHからなる群から選択され;そして
イミダゾリン環の4及び5位における絶対立体化学は、それぞれS及びRである(式Iに記載のとおり))
を提供する。
【0009】
一つの好適な実施態様において、本発明は式I
【化3】

(式中、
Rは、S、N及びOから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含み且つ低級アルキル、シクロアルキル、ヒドロキシで置換された低級アルキル、-NH2で置換された低級アルキル、N-低級アルキル、-SO2CH3、=O、-CH2C(O)CH3から選択された基で任意に置換された飽和又は不飽和5及び6員環、並びに-S、N及びOから選択された少なくとも1つのヘテロ原子を含む5及び6員飽和環から選択され、
X1及びX2は独立して、水素、低級アルコキシ、-CH2OCH3、-CH2OCH2CH3、-OCH2CF3、-OCH2CH2Fからなる群から選択され、
Y1及びY2は、互いに独立して、-Cl-Br、-NO2、-C≡N、及び-C≡CHからなる群から選択され、そして
イミダゾリン環の4及び5位における絶対立体化学は、それぞれS及びRである(式Iに記載のとおり))
から給選択される少なくとも1つの化合物並びにその医薬的に許容できる塩及びエステルを提供する。
【0010】
更に好適な化合物は、式Iの化合物であり、ここでY1及びY2は互いに独立して-Cl及び-Brから選択される。
【0011】
更に好適な化合物は、式Iの化合物であり、ここでRは、低級アルキル、シクロアルキル、C(O)R1、ヒドロキシで置換された低級アルキル、-NH2で置換された低級アルキル、-C(O)R1で置換された低級アルキル、N-低級アルキル、-SO2CH3、=O、-CH2C(O)CH3から選択された少なくとも1つの基で置換されたピペラジニルである、又は
C1-C3アルキル、-C1-C2アルコキシ、-C(O)CH3、-SO2CH3、-C(O)、-OH、-CH2NH2-C(O)CH2NH2、-C(O)CH2OH、-C(O)C(OH)CH2OH、-CH2C(OH)CH2OH、-C(O)N(CH2)2、-C(O)NH2、及び-C(O)N(CH3)CH3、-N(CH3)CH3から選択された少なくとも1つの基で置換されたで置換されたピペリジニル、ピロリジニル及びピペリジニルである。
【0012】
そしてまた、オルトの位置におけるX1基は、低級アルコキシ、-OCH2CF3及び-OCH2CH2Fから選択され、そしてパラの位置におけるX2基が低級アルコキシである式Iの化合物が好適である。
【0013】
オルトの位置におけるX1基は、エトキシ、イソプロポキシ、-OCH2CF3及び-OCH2CH2Fから選択され、そしてパラの位置におけるX2基がメエトキシ及びエトキシから選択される式Iの化合物が更に好適である。
【0014】
本発明の更に他の好適な実施態様において、式I-Aの化合物及びその医薬的に許容できる塩:
【化4】

(式中、
Rは、ピペラジニル又はピペリジニルであり、
C1-C4-アルキル;
-C(O)-(Cl-C4-アルキル);
ピロリジン-1-イル;
=O;
-CH2-C(O)-モルホリノ;
-CH2-C(O)-N(Cl-C4-アルキル)2;
-(CH2)n-SO2-(C1-C4-アルキル)で置換されており;
X1は、-O-(C1-C4-アルキル)であり;
X2は、水素又は-O-(C1-C4-アルキル)であり;
nは0、1又は2であり;そして
イミダゾリン環の4及び5位における絶対立体化学は、それぞれS及びRである)
が提供されている。
【0015】
更に、Rがピペラジニル及び置換されたピペラジニルから選択されている化合物が好適である。
【0016】
かかる化合物は、例えば:
1-{4-[(4S,5R)-4,5-ビス-(4-クロロ-フェニル)-2-(2-イソプロポキシ-4-メトキシ-フェニル)-4,5-ジヒドロ-イミダゾール-1-カルボニル]-ピペラジン-1-イル}-エタノン;
4-[(4S,5R)-4,5-ビス-(4-クロロ-フェニル)-2-(2-イソプロポキシ-4-メトキシ-フェニル)-4,5- ジヒドロ-イミダゾール-l-カルボニル]-ピペラジン-2-オン;
[(4S,5R)-4,5-ビス-(4-クロロ-フェニル)-2-(2-イソプロポキシ-4-メトキシ-フェニル)-4,5-ジヒドロ-イミダゾール-1-イル]-(4-ピロリジン-1-イル-ピペリジン-1-イル)-メタノン;
4-[(4S,5R)-4,5-ビス-(4-クロロ-フェニル)-2-(2-エトキシ-フェニル)-4,5-ジヒドロ-イミダゾール-1 -カルボニル]-ピペラジン-2-オン;
1-{4-[(4S,5R)-4,5-ビス-(4-クロロ-フェニル)-2-(2-エトキシ-フェニル)-4,5-ジヒドロ-イミダゾール-1 -カルボニル]-ピペラジン-1 -イル} -エタノン;
2-{4-[(4S,5R)-4,5-ビス-(4-クロロ-フェニル)-2-(2-エトキシ-フェニル)-4,5-ジヒドロ-イミダゾール-1-カルボニル]-1-ピペラジン-1-イル}-1-モルホリン-4-イル-エタノン;
[(4S,5R)-4,5-ビス-(4-クロロ-フェニル)-2-(2-エトキシ-フェニル)-4,5-ジヒドロ-イミダゾール-1-イル]-[4-(2-メタンスルホニル-エチル)-ピペラジン-1-イル]-メタノン; 及び
[(4S,5R)-4,5-ビス-(4-クロロ-フェニル)-2-(2-イソプロポキシ-4-メトキシ-フェニル)-4,5-ジヒドロ-イミダゾール- 1-イル]-(4-メチル-ピペラジン-1-イル)-メタノンである。
【0017】
「有効な量」とは、疾患の症状を予防、緩和又は改善するためかあるいは治療を受ける対象者の寿命を延ばすために有効である量を意味する。
【0018】
「ハロゲン」とは、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素を意味する。
【0019】
「ヘテロ原子」とは、N、O及びSから選択される原子を意味する。
【0020】
「IC50」とは、特定の測定した活性の50%を阻害するに必要な特定の化合物の濃度を意味する。IC50はとりわけ、後に記載のように測定されて良い。
【0021】
「アルキル」とは、直鎖状又は分鎖状の飽和脂肪族炭化水素を意味する。
【0022】
「低級アルキル」基とは、C1-C6アルキル基を意味し且つメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t-ブチル、2-ブチル、ペンチル、ヘキシルなどを含む。一般に、低級アルキルは、好適にC1-C4アルキルであり、そして一層好適にC1-C3アルキルである。
【0023】
「シクロアルキル」とは、3〜8個の原子を含む非芳香族、部分的又は完全飽和一価環状炭化水素基である。シクロアルキル基の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル及びシクロへキシルが挙げられる。
【0024】
「アルコキシ」とは、-O-アルキルを意味する。「低級アルキル」とは、-O-低級アルキルを意味する。
【0025】
表現「少なくとも1つのヘテロ原子を含む」とは、上で規定した5〜6員環との関係において、当該環が1又は複数の、好適に1、2又は3個のヘテロ原子を含むことを意味する。
【0026】
「医薬的に許容できるエステル」とは、カルボキシル基を有する常用にエステル化された式Iの化合物を意味し、当該エステルは、式Iの化合物の生物学的有効性及び特性を維持し且つ対応する活性カルボン酸に対してin vivo(有機物中)で解裂される。
【0027】
エステル及び医薬化合物のデリバリーのためのエステルの使用の情報は、Design of Prodrugs. Bundgaard H著 (Elsevier, 1985)において入手可能である。そしてまた、H. Anselら、Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems (第6版 1995) pp. 108-109; Krogsgaard-Larsenら, Textbook of Drug Design and Development (2d Ed. 1996) pp. 152-191においても入手可能である。
【0028】
「医薬的に許容できる塩」とは、本発明の化合物の生物学的有効性及び特性を維持し且つ適切な無毒性有機もしくは無機酸又は無機もしくは有機塩基から形成される常用の酸付加塩もしくは塩基付加塩を意味する。例となる酸付加塩としては無機酸の例えば、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸及び硝酸から誘導されたもの、並びに有機酸の例えば、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸、メタンスルホン酸、シュウ酸、コハク酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、フマル酸などから誘導されたものが挙げられる。例となる塩基付加塩としては、アンモニウム、カリウム、ナトリウム、及び第四アンモニウム水酸化物の例えば、水酸化テトラメチルアンモニウムから誘導されたものが挙げられる。医薬化合物(例えば、薬物)の塩への化学的変換は、当該化合物の向上した物理的及び化学的安定性、吸湿性及び流動性を獲得するために化学者に周知の技術である。例えば、H. Anselら, Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems (第6版1995) pp.196及び1456-1457を参照のこと。
【0029】
「医薬的に許容できる」例えば、医薬的に許容できる担体、賦型剤などは、薬理学的に許容でき且つそれを投与される対象者に対して実質的に無毒であることを意味する。
【0030】
「置換される」とは、置換が1又は複数の場所で生ずることを意味し、特に示さない限り、各置換部位における置換基は特定の選択枝から独立に選択される。
【0031】
「治療上有効な量」とは、ヒト腫瘍細胞の例えば、ヒト腫瘍細胞系統の増殖及び/又は分化を有意に阻害する少なくとも1つの規定の化合物の量を意味する。
【0032】
本発明の化合物は、IC50約0.020μM〜約20μMのIC50を有意に示すことが実証された。
【0033】
本発明の化合物は、細胞増殖性疾患、特にがん疾患の治療又はコントロールにおいて有用である。これらの化合物及び当該化合物を含有する製剤は、固形腫瘍の例えば、乳房、結腸、肺及び前立腺の腫瘍の治療又はコントロールにおいて有用であって良い。
【0034】
本発明の化合物の治療上有効な量とは、治療される対象者の疾患の症状を予防、改善もしくは緩和するかあるいは寿命を延ばすのに有効である化合物の量を意味する。治療上有効な量の決定は、当業界で公知である。
【0035】
本発明の化合物の治療上有効な量又は投与量は、様々な範囲内で変化させることができ且つ当業者の公知の方法で決定されて良い。かかる投与量は、特定の場合、投与される特定の1又は複数の化合物、投与の経路、治療される症状、並びに治療される患者など個別の要請、応じて調節されるだろう。一般に、体重約70kgの成人へ経口又は非経口投与する場合、毎日約10mg〜約10,000mg、好適に約200mg〜約1,000mgの投与量が適切であるが、特定の場合にはこの上限を超えても良い。毎日の投与量は、単回投与としてもしくは分割投与において、又は非経口投与のために投与されて良く、それは、連続注入として投与されて良い。
【0036】
本発明はまた、少なくとも1つの式Iの化合物、又は医薬的に許容できる塩もしくはそのエステル、及び医薬的に許容できる担体又は賦型剤を含んで成る医薬組成物を提供する。
【0037】
本発明の化合物は、以下のスキーム1に従い調製されて良い。
【0038】
【化5】

【0039】
合成は、溶媒の例えばエタノール中での、ベンゾイミデート2(エタノール中、塩化水素ガスを使用することで対応するベンゾニトリルから調製した、US6,617,346B1)とジアミン1、例えば、メソ-l,2-ビス-(4-クロロフェニル)-エタン-1,2-ジアミン(Jennerwein, M.ら. Cancer Res. Clin. Oncol. 1988, 114, 347-58; Vogtle, F.; Goldschmitt, E. Chem. Ber. 1976, 109, 1-40によって記載された手順により調製し)中でのカップリング反応により始まる。塩基の例えば、トリエチルアミンの存在下でのホスゲンによるイミダゾリン3の処理により、ラセミ体カルバモイルクロリド4を獲得する。カルバモイルクロリドrac-4のエナンチオマーは、キラルクロマトグラフィーを使用することで分離できうる。Regis Technologiesから入手可能であるキラル定常相Diacel ChiralPakOD又はADが使用できうる。所望のエナンチオマー5Aと適切なアミン基(R基として示されている)のカップリングにより、式Iの化合物を提供する。
【0040】
もし所望されれば、 式Iのラセミ化合物が、適切なアミン基(R基として示されている)を使用することでrac-6から調製されて良い。次いで、式Iのエナンチオマーはキラルクロマトグラフィーにより分離できうる。キラル定常相Diacel ChiralPak OD又はADが使用されて良い。
【0041】
Iの活性エナンチオマーの絶対立体化学は、 その、ヒトMDM2(Vassilevら. Science, 2004, 303, 844-848)との錯体の結晶構造に依存して決定される。
【0042】
以下の例及び参照は、本発明、添付するクレームに開示された真の範囲を理解する目的で提供されている。
【実施例】
【0043】
実施例1
【化6】

シス-4,5-ビス-(4-クロロ-フェニル)-2-(2-エトキシ-フェニル)-4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾールをUS 6,617,346 B1に記載の手中に従い調製した。
【0044】
実施例2
【化7】

シス-4,5-ビス-(4-クロロ-フェニル)-2-(2-イソプロポキシ-4-メトキシ-フェニル)-4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾールをUS 6,617,346 B1に記載の手順に従い調製した。
【0045】
実施例3
【化8】

1-{4-[(4S,5R)-4,5-ビス-(4-クロロ-フェニル)-2-(2-イソプロポキシ-4-メトキシ-フェニル)-4,5-ジヒドロ-イミダゾール-1-カルボニル]-ピペラジン-1-イル}-エタノン
シス-4,5-ビス-(4-クロロ-フェニル)-2-(2-イソプロポキシ-4-メトキシ-フェニル)-4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾール(5.48g、12.03mmol、実施例2)の塩化メチレン(100mL)中の0℃に冷やした溶液に対して、逐次、トリエチルアミン(11.8mL、84.21mmol)及びホスゲン(30.53mL、60.15mmol、トルエン中21%溶液)を加えた。反応混合物を0℃で、アルゴン下0.5時間に渡り又は薄相クロマトグラフィー(シリカゲル、100%酢酸エチル)が出発物質残留を示さなくなる迄攪拌した。溶媒及び過剰の試薬を減圧下で除去し、そして残留物を真空下で1時間に渡り乾燥させた。残留物を塩化メチレン(100mL)へ溶かし、次いで、1-アセチルピペラジン(1.619g、12.63mmol)の塩化メチレン(10mL)中の溶液を加えた。反応混合物を室温で1時間に渡り(又は出発物質が薄相クロマトグラフィーによって確認されなくなる迄)攪拌した。飽和重炭酸ナトリウム溶液(10mL)を加えた。産物を塩化メチレン(2×50mL)で抽出した。有機層を塩水(1×20mL)で洗浄し、乾燥させ(無水硫酸ナトリウム)そしてin vacuoで濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー((Biotage system, KP-SilTM 32-63 μm, 60 A シリカゲル)による粗製残留物の精製100%酢酸エチル、次いで酢酸エチル中5%メタノールによりにより溶出させる)により、rac-1-{4-[4,5-ビス-(4-クロロ-フェニル)-2-(2-イソプロポキシ-4-メトキシ-フェニル)-4,5-ジヒドロ-イミダゾール-l-カルボニル]-ピペラジン-l-イル}-エタノンをオレンジ泡沫(約7.2g)として獲得した。それを塩化メチレン及びエチルエーテル(6.721g白色固体)で再結晶化した。更なる量のrac-1-{4-[4,5-ビス-(4-クロロ-フェニル)-2-(2-イソプロポキシ-4-メトキシ-フェニル)-4,5-ジヒドロ-イミダゾール-1-カルボニル]-ピペラジン-1-イル}-エタノン(201mg、黄褐色)を、フラッシュクロマトグラフィー((Biotage system, KP-SilTM 32-63 μm, 60A シリカゲル)100%酢酸エチル次いで、酢酸エチル中5%メタノールで溶出させる)により母液から獲得した。合計収量: 6.922g(94%).C32H35N4O4Cl2に関して計算したHR-MS(ES,m/z)[(M+H)+]609.2030、実測609.2045。
【0046】
rac-1-{4-[4,5-ビス-(4-クロロ-フェニル)-2-(2-イソプロポキシ-4-メトキシ-フェニル)-4,5-ジヒドロ-イミダゾール-l-カルボニル]-ピペラジン-1-イル}-エタノンのエナンチオマーを、キラルクロマトグラフィー(Daicel ChiralPak OD、1:1のエタノールとヘキサンで溶出させる)によって分離した。カラムから生ずる最初のピークが所望のエナンチオマー、1-{4-[(4S,5R)-4,5-ビス-(4-クロロ-フェニル)-2-(2-イソプロポキシ-4-メトキシ-フェニル)-4,5-ジヒドロ-イミダゾール-1-カルボニル]-ピペラジン-1-イル}-エタノンである。
LR-MS(APCI):609.12[(M+H)+]。
【0047】
実施例4
【化9】

4-[(4S,5R)-4,5-ビス-(4-クロロ-フェニル)-2-(2-イソプロポキシ-4-メトキシ-フェニル)-4,5-ジヒドロ-イミダゾール-1-カルボニル]-ピペラジン-2-オンを、シス-4,5-ビス-(4-クロロ-フェニル)-2-(2-イソプロポキシ-4-メトキシ-フェニル)-4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾール(実施例2)及び2-ピペラジノンから、実施例3に記載と類似する方法で調製した。
C30H31N4O4Cl2[(MH+H)+]について計算したHR-MS(ES,m/z)581.1717、実測値581.1709。
【0048】
実施例5
【化10】

[(4S,5R)-4,5-ビス-(4-クロロ-フェニル-2-(2-イソプロポキシ-4-メトキシ-フェニル-4,5-ジヒドロ-イミダゾール-1-イル-(4-ピロリジン-1-イル-ピペリジン-1-イル)-メタノンを、シス-4,5-ビス-(4-クロロ-フェニル)-2-(2-イソプロポキシ-4-メトキシ-フェニル)-4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾール(実施例2)及び4-(1-ピロリジニル)ピペリジンから実施例3と類似する方法で調製した。
C35H41N4O3Cl2について計算したHR-MS(ES,m/z)[(M+H)+]635.2550、実測値635.2558。
【0049】
実施例6
【化11】

(4S,5R)-4,5-ビス-(4-クロロ-フェニル)-2-(2-イソプロポキシ-4-メトキシ-フェニル)-4,5-ジヒドロ-イミダゾール-1-カルボニルクロリド
シス-4,5-ビス-(4-クロロ-フェニル)-2-(2-イソプロポキシ-4-メトキシ-フェニル)-4,5-ジヒドロ-イミダゾール(5g、10.98mmol、実施例2)の塩化メチレン(50mL)中の0℃へ冷却した溶液に対して、トリエチルアミン(3mL、21.96mL)及びフォスゲン(8.7mL、16.47mmol、トルエン中約20%)をそれぞれ加えた。反応混合物を0℃で30分に渡り攪拌し、次いで過剰の試薬及び溶媒を減圧下で除去した。残留物を塩化メチレン(約100mL)中で溶かし且つ溶液をシリカゲル(約50g)の詰物(plug)を通じてろ過した。シリカゲルをヘキサン中20%酢酸エチルで洗浄した。ろ過物をin vacuoで濃縮し且つ残留物をフラッシュクロマトグラフィー(Biotage system, KP-SilTM 32-63 μm, 60Aシリカゲル,ヘキサン中、5%, 10%、20%酢酸エチルで溶出させる)により精製し、rac-4,5-ビス-(4-クロロ-フェニル)-2-(2-イソプロポキシ-4-メトキシ-フェニル)-4,5-ジヒドロ-イミダゾール-1-カルボニルクロリドを白色固体(4.31g76%)として獲得した。
【0050】
rαc-4,5-ビス-(4-クロロ-フェニル)-2-(2-イソプロポキシ-4-メトキシ-フェニル)- 4,5-ジヒドロ-イミダゾール-l-カルボニルクロリドのエナンチオマーを、キラルクロマトグラフィー(R,R-Whelk-Ol spherical Kromasil シリカゲル(Regis Technologiesから購入した)を充填したWaters Delta Prep 4000 及びModcolスプリングカラム(50mm×70cm)を使用する)によって分離した。溶出液:ヘキサン中30%塩化メチレン。流速:85mL/分。ローディングスケール:約2g。カラムから生ずる最初のピークが所望のエナンチオマー、(4S,5R)-4,5-ビス-(4-クロロ-フェニル)-2-(2-イソプロポキシ-4-メトキシ-フェニル)-4,5-ジヒドロ-イミダゾール-l-カルボニルクロリドである。
【0051】
実施例7
【化12】

(4S,5R)-4,5-ビス-(4-クロロ-フェニル)-2-(2-エトキシ-フェニル-4,5-ジヒドロ-イミダゾール-1-カルボニルクロリドを、4,5-ビス-(4-クロロ-フェニル)-2-(2-エトキシ-フェニル)-4,5-ジヒドロ-イミダゾール(実施例1)及びホスゲンから実施例6と類似する方法で調製した。
【0052】
実施例8
【化13】

4-{(4S,5R)-4,5-ビス-(4-クロロ-フェニル)-2-(2-エトキシ-フェニル)-4,5-ジヒドロ-イミダゾール-1-カルボニル-ピペラジン-2-オン
(4S,5R)-4,5-ビス-(4-クロロ-フェニル)-2-(2-エトキシ-フェニル)-4,5-ジヒドロ-イミダゾール-1-カルボニルクロリド(100mg0.211mmol実施例7)の塩化メチレン(3mL)中の0℃へ冷やした溶液へトリエチルアミン(30μL0.211mmol)及び2-ピペラジノン(23mg0.232mmol)をそれぞれ加えた。15分後、薄相クロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン中20%酢酸エチル)により、出発物質の残留が示されなかったことを示した。反応混合物をフラッシュシリカゲルカラムへロードした(12g)。フラッシュカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル中5%メタノール及び0.1%トリエチルアミンでIntelliflash 280systemを使用して溶出させる)による精製により4-[(4S,5R)-4,5-ビス-(4-クロロ-フェニル)-2-(2-エトキシ-フェニル)-4,5-ジヒドロ-イミダゾール-1-カルボニル]-ピペラジン-2-オンを白色泡沫(69mg)として獲得した。C30H31N4O4Cl2について計算したHR-MS(ES,m/z)[(MH+H)+]581.1717、実測値581.1717。
【0053】
実施例9
【化14】

1-{4-[(4S,5R)-4,5-ビス-(4-クロロ-フェニル)-2-(2-エトキシ-フェニル)-4,5-ジヒドロ-イミダゾール-1-カルボニル]-ピペラジン-1-イル}-エタノンを(4S,5R)-4,5-ビス-(4-クロロ-フェニル)-2-(2-エトキシ-フェニル)-4,5-ジヒドロ-イミダゾール-1-カルボニルクロリド(実施例7)及び1-アセチルピペラジンから実施例8と類似する方法で調製した。C30H31N4O3Cl2について計算したHR-MS(ES, m/z)[(MH+H)+] 565.1768、実測値565.1772。
【0054】
実施例10
【化15】

2-{4-[(4S,5R)-4,5-ビス-(4-クロロ-フェニル)-2-(2-エトキシ-フェニル)-4,5-ジヒドロ-イミダゾール-1-カルボニル]-ピペラジン-1-イル}-1-モルホリン-4-イル-エタノンを(4S,5R)-4,5-ビス-(4-クロロ-フェニル)-2-(2-エトキシ-フェニル)-4,5-ジヒドロ-イミダゾール-1-カルボニルクロリド(実施例7)及び1-モルホリン-4-イル-2-ピペラジン-l-イル-エタノンヒドロクロリド(Oakwood Chemicals)から実施例8と類似する方法で調製した。C34H38N5O4Cl2について計算したHR-MS(ES,m/z)[(MH+H)+] 650.2296、実測値650.2299。
【0055】
実施例11
【化16】

[(4S,5R-4,5-ビス-(4-クロロ-フェニル)-2-(2-エトキシ-フェニル)-4,5-ジヒドロ-イミダゾール-1-イル]-[4-(2-メタンスルホニル-エチル)-ピペラジン-l-イル]-メタノン
メチルビニルスルフォン(1.8mL、20.1mmol)を1-(tert-ブチルオキシカルボニル)ピペラジン(1.50g、8mmol)のメタノール(84mL)の溶液へ加えた。反応混合物を室温で4時間に渡り撹拌し且つ白色固体まで濃縮した。フラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、塩化メチレン中1〜5%メタノールで溶出させる)による固体の精製により1-tert-ブチルオキシカルボニル-4-(2-メタンスルホニルエチル)ピペラジンを白色固体(2.29g、95%)として獲得した。
【0056】
塩酸(42mL、168mmol、1,4-ジオキサン中4M)を、1-tert-ブチルオキシカルボニル-4-(2-メタンスルホニルエチル)ピペラジン(2.29g、7.8mmol)の1,4-ジオキサン(42mL)中の冷溶液へと加えた。この混合物を室温で一晩攪拌して濃縮し、1-(2-メタンスルホニルエチル)ピペラジンビスヒドロクロリドを白色固体(2.05g)として獲得した。
【0057】
(4S,5R)-4,5-ビス-(4-クロロ-フェニル)-2-(2-エトキシ-フェニル)-4,5-ジヒドロ-イミダゾール-1-カルボニルクロリド(実施例7)を1-(2-メタンスルホニルエチル)-ピペラジンビスヒドロクロリドと塩化メチレン中、実施例8に記載の手順を使用することで調製し、[(4S,5R)-4,5-ビス-(4-クロロ-フェニル)-2-(2-エトキシ-フェニル)-4,5-ジヒドロ-イミダゾール-1-イル]-[4-(2-メタンスルホニル-エチル)-ピペラジン-1-イル]-メタノンを獲得した。C31H35N4O4SCl2について計算したHR-MS(ES,m/z) [(M+H)+]629.1751、実測値629.1757。
【0058】
実施例12
【化17】

[(4S,5R)-4,5-ビス-(4-クロロ-フェニル)-2-r2-イソプロポキシ-4-メトキシ-フェニル)-4,5-ジヒドロ-イミダゾール-1-イル]-(4-メチル-ピペラジン-l-イル)-メタノンを、(4S,5R)-4,5-ビス-(4-クロロ-フェニル)-2-(2-イソプロポキシ-4-メトキシ-フェニル)-4,5-ジヒドロ-イミダゾール-1-カルボニルクロリド(実施例6)及び1-メチルピペラジンから実施例8と類似の方法で調製した。
C31H35N4O4SCl2について計算したHR-MS (ES,m/z)[(M+H)+]629.1751、実測値629.1757.
【0059】
実施例 13
【化18】

[(4S,5R)-4,5-ビス-(4-クロロ-フェニル)-2-(2-イソプロポキシ-4-メトキシ-フェニル)-4,5-ジヒドロ-イミダゾール-1-イル]-[4-(2-メタンスルホニル-エチル)-ピペラジン-1-イル]-メタノンを、(4S,5R)-4,5-ビス-(4-クロロ-フェニル)-2-(2-イソプロポキシ-4-メトキシ-フェニル)-4,5-ジヒドロ-イミダゾール-1-カルボニルクロリド(実施例6)及び1-(2-メタンスルホニルエチル)-ピペラジン(実施例11)から実施例8と類似する方法で調製した LR-MS:673.3[(M+H)+].
【0060】
実施例14
【化19】

2-{4-[(4S,5R)-4,5-ビス-(4-クロロ-フェニル)-2-(2-イソプロポキシ-4-メトキシ-フェニル)-4,5-ジヒドロ-イミダゾール-1-カルボニル]-ピペラジン-1-イル}-N,N-ジメチル-アセトアミドを(4S,5R)-4,5-ビス-(4-クロロ-フェニル)-2-(2-イソプロポキシ-4-メトキシ-フェニル)-4,5-ジヒドロ-イミダゾール-l-カルボニルクロリド(実施例6)及びN,N-ジメチル-2-ピペラジン-1-イル-アセトアミド(Oakwood Chemicals)から実施例8と類似する方法で調製した。
LR-MS:652.3[(M+H)+].
【0061】
実施例15
【化20】

2-{4-[(4S,5R)-4,5-ビス-(4-クロロ-フェニル)-2-(2-イソプロポキシ-4-メトキシ-フェニル-4,5-ジヒドロ-イミダゾール-1-カルボニル]-ピペラジン-1-イル}-1-モルホリン-4-イル-エタノンを、(4S,5R)-4,5-ビス-(4-クロロ-フェニル)-2-(2-イソプロポキシ-4-メトキシ-フェニル)-4,5-ジヒドロ-イミダゾール-1-カルボニルクロリド(実施例6)及び1-モルホリン-4-イル-2-ピペラジン-1-イル-エタノンヒドロクロリド(Oakwood Chemicals)から実施例8に類似する方法で調製した。
LR-MS:694.3[(M+H)+].
【0062】
実施例16
【化21】

[(4S,5R)-4,5-ビス-(4-クロロ-フェニル)-2-(2-イソプロポキシ-4-メトキシ-フェニル)-4,5-ジヒドロ-イミダゾール-1-イル]-(4-エタンスルホニル-ピペラジン-1-イル)-メタノンを、(4S,5R)-4,5-ビス-(4-クロロ-フェニル)-2-(2-イソプロポキシ-4-メトキシ-フェニル)-4,5-ジヒドロ- イミダゾール-1-カルボニルクロリド(実施例6)及び1-エタンスルホニル-ピペラジン(1-tert-ブチルオキシカルボニル-ピペラジン及びエタンスルホニルクロリドから調製した)から実施例8に類似する方法で調製した。
LR-MS:659.2[(M+H)+].
【0063】
実施例17
in vitro活性アッセイ
p53とMDM2タンパク質の反応を阻害する化合物の能力を、ELISA(Enzyme-Linked Immuno Sorbent Assay)によって測定した。この方法では、組換えGST-標識MDM2がp53(Bottger ら., J. MoI. Bio. 1997, Vol. 269, pgs. 744-756)のMDM2-p53相互反応領域に類似するペプチドへ結合する。このペプチドは、ストレプトアビヂンコーティングウェルへ結合するN-末端ビオチンを介して96ウェルプレートの表層に固定化されている。MDM2を抗MDM2マウスモノクローナル抗体(SMP-14, Santa Cruz Biotech)の存在下で各ウェルへ加えた。結合しなかったMDM2タンパク質の除去後、ペルオキシダーゼ結合した第二抗体(抗マウスIgG, Roche Molecular Biochemicals)及び所定のペプチド結合MDM2の量を、ペルオキシダーゼ基質(MTB Microwell Peroxydase Substrate System, Kirkegaard & Perry Labs)の添加によって比色分析で決定した。
【0064】
テストプレートを、ストレプトアビジン(5mg/ml、PBS中)で2時間に渡りコーティングし、しかる後にPBS(リン酸干渉塩類溶液)で洗浄し、そして一晩、150μLのブロッキングバッファー(2mg/mlのウシ血清アルブミン(Sigma)及びPBS中0.05%のTween20(Sigma)を含む)を4℃で調製した。ビオチン化ペプチド(1μM)を50μLのブロッキングバッファー中各ウェルへ加え、そして1時間のインキュベーション後に十分に洗浄した。試験化合物を、個別の96ウェルプレートで希釈し且つ3つぞろいにて化合物インキュベーションプレート(MDM2タンパク質と抗-MDM2抗体が入っている)へ加えた。20分のインキュベーション後、プレートの内容物を試験プレートへ移動して更に1時間に渡りインキュベートした。第二抗マウスIgG抗体を、先行する試験プレートへ加えてしかる後にPBS中0.05% Tween 20で3重に洗浄した。最後に、ペルオキシダーゼ基質を各ウェルへ加え、そして吸光度を、プレートリーダー(MR7000, Dynatech)を使用し、450nmで読んだ。試験化合物の阻害活性を処理したウェルに対する未処理ウェルにおいて結合したMDM2の%として測定し且つIC50を計算した。
【0065】
本発明の対象の化合物に当てはまる生物活性を示すIC50は約0.020μM〜約20μMである。いくつかの実施例の特異的データは:
実施例 IC50(μM)
4 0.604
5 0.071
である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化1】

(式中、
Rは、S、N及びOから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含み;そして
任意に、低級アルキル、シクロアルキル、-C(O)-R1、ヒドロキシ、ヒドロキシで置換された低級アルキル、低級アルコキシで置換された低級アルキル、-NH2で置換された低級アルキル、-SO2-低級アルキルで置換された低級アルキル、-C(O)-R1で置換された低級アルキル、-NH-低級アルキル、-N(低級アルキル)2、-SO2-低級アルキル、=O、-CH2C(O)CH3から選択された置換基で置換された飽和又は不飽和5〜6員環を示す、又はS、N及びOから選択される1、2又は3個のヘテロ原子を含む5〜6員飽和環を示し;
R1は、水素、低級アルキル、-NH2、-NH-低級アルキル、-N(低級アルキル)2、 ヒドロキシで置換された低級アルキル、NH2で置換された低級アルキル、又はS、N及びOから選択される1、2又は3個のヘテロ原子を含む5〜6員飽和環であり;
X1及びX2は独立して、水素、低級アルコキシ、-CH2OCH3、-CH2OCH2CH3、-OCH2CF3、-OCH2CH2Fからなる群から選択され;
Y1及びY2は、互いに独立して、-Cl、-Br、-NO2、-C≡N、及び-C≡CHからなる群から選択され;そして
イミダゾリン環の4及び5位における絶対立体化学は、それぞれS及びRである)の化合物及びその医薬的に許容できる塩及びそのエステル。
【請求項2】
請求項1に記載の化合物
(式中、
Rは、S、N及びOから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含み且つ低級アルキル、シクロアルキル、ヒドロキシで置換された低級アルキル、-NH2で置換された低級アルキル、N-低級アルキル、-SO2CH3、=O、-CH2C(O)CH3から選択された基で任意に置換されている飽和又は不飽和5及び6員環、並びに-S、N及びOから選択された少なくとも1つのヘテロ原子を含む5及び6員飽和環から選択され、
X1及びX2は独立して、水素、低級アルコキシ、-CH2OCH3、-CH2OCH2CH3、-OCH2CF3、-OCH2CH2Fからなる群から選択され、
Y1及びY2は、互いに独立して、-Cl, -Br、-NO2、-C≡N、及び-C≡CHからなる群から選択され、そして
イミダゾリン環の4及び5位における絶対立体化学は、それぞれS及びRである)。
【請求項3】
Y1及びY2は互いに独立して-Cl及び-Brから選択される、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
請求項3に記載の化合物
(式中、
Rは、低級アルキル、シクロアルキル、C(O)-R1、ヒドロキシ、ヒドロキシで置換された低級アルキル、低級アルキルで置換された低級アルキル、-NH2で置換された低級アルキル、-C(O)R1で置換された低級アルキル、N(低級アルキル)2、-SO2CH3、=O、-CH2C(O)CH3から選択された少なくとも1つの基で置換されたピペラジニルであり;そしてここでR1は、水素、低級アルキル、-NH2、-N-低級アルキル、ヒドロキシで置換された低級アルキル、NH2で置換された低級アルキルから選択される;又は
C1-C3アルキル、-C1-C2アルコキシ、-C(O)CH3、-SO2CH3、-C(O)、-OH、-CH2NH2、-C(O)CH2NH2、-C(O)CH2OH、-C(O)C(OH)CH2OH、-CH2C(OH)CH2OH、-C(O)N(CH2)2、-C(O)NH2、及び-C(O)N(CH3)CH3、-N(CH3)CH3で置換されたピペリジニル、ピロリジニル及びピペリジニルである)。
【請求項5】
オルトの位置におけるX1基は、低級アルコキシ、-OCH2CF3及び-OCH2CH2Fから選択され、そしてパラの位置におけるX2基が低級アルコキシである、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
オルトの位置におけるX1基は、エトキシ、イソプロポキシ、-OCH2CF3及び-OCH2CH2Fから選択され、そしてパラの位置におけるX2基がメトキシ及びエトキシで選択される、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
請求項6に記載の化合物
(式中、
Rは、低級アルキル、シクロアルキル、C(O)-R1、ヒドロキシ、ヒドロキシで置換された低級アルキル、低級アルコキシで置換された低級アルキル、-NH2で置換された低級アルキル、-C(O)-R1で置換された低級アルキル、N-低級アルキル、-SO2CH3、=O、-CH2C(O)CH3から選択された少なくとも1つの基で置換されたピペラジニルであり、
R1は、水素、低級アルキル、-NH2、-N-低級アルキル、ヒドロキシで置換された低級アルキル、NH2で置換された低級アルキルから選択される;又は
C1-C3アルキル、-C1-C2アルコキシ、-C(O)CH3、-SO2CH3、-C(O)、-OH、-CH2NH2、-C(O)CH2NH2、-C(O)CH2OH、-C(O)C(OH)CH2OH、-CH2C(OH)CH2OH、-C(O)N(CH2)2、-C(O)NH2、及び-C(O)N(CH3)CH3、-N(CH3)CH3から選択される少なくとも1つの置換基で置換されたピペリジニル、ピロリジニル及びピペリジニルである)。
【請求項8】
式I-Aの請求項1
【化2】

(式中、
Rは、ピペラジニル又はピペリジニルであり、
C1-C4-アルキル;
-C(O)-(Cl-C4-アルキル);
ピロリジン-1-イル;
=O;
-CH2-C(O)-モルホリノ;
-CH2-C(O)-N(Cl-C4-アルキル)2;
-(CH2)n-SO2-(C1-C4-アルキル)で置換されており;
X1は、-O-(C1-C4-アルキル)であり;
X2は、水素又は-O-(C1-C4-アルキル)であり;
nは0、1又は2であり;そして
イミダゾリン環の4及び5位における絶対立体化学は、それぞれS及びRである)
に記載の化合物及びその医薬的に許容できる塩。
【請求項9】
前記化合物が、
1-{4-[(4S,5R)-4,5-ビス-(4-クロロ-フェニル)-2-(2-イソプロポキシ-4-メトキシ-フェニル)-4,5- ジヒドロ-イミダゾール-1-カルボニル]-ピペラジン-1-イル}-エタノン;
4-[(4S,5R)-4,5-ビス-(4-クロロ-フェニル)-2-(2-イソプロポキシ-4-メトキシ-フェニル)-4,5-ジヒドロ-イミダゾール-l-カルボニル]-ピペラジン-2-オン;
[(4S,5R)-4,5-ビス-(4-クロロ-フェニル)-2-(2-イソプロポキシ-4-メトキシ-フェニル)-4,5-ジヒドロ-イミダゾール-1-イル]-(4-ピロリドン-1-イル-ピペリジン-1-イル)-メタノン;
4-[(4S,5R)-4,5-ビス-(4-クロロ-フェニル)-2-(2-エトキシ-フェニル)-4,5-ジヒドロ-イミダゾール-1-カルボニル]-ピペラジン-2-オン;
1-{4-[(4S,5R)-4,5-ビス-(4-クロロ-フェニル)-2-(2-エトキシ-フェニル)-4,5-ジヒドロ-イミダゾール-1-カルボニル]-ピペラジン-1-イル}-エタノン;
2-{4-[(4S,5R)-4,5-ビス-(4-クロロ-フェニル)-2-(2-エトキシ-フェニル)-4,5-ジヒドロ-イミダゾール-1-カルボニル-1-ピペラジン-1-イル}-1-モルホリン-4-イル-エタノン;
[(4S,5R)-4,5-ビス-(4-クロロ-フェニル)-2-(2-エトキシ-フェニル)-4,5-ジヒドロ-イミダゾール-1-イル]-[4-(2-メタンスルホニル-エチル)-ピペラジン-1-イル]-メタノン; 及び
[(4S,5R)-4,5-ビス-(4-クロロ-フェニル)-2-(2-イソプロポキシ-4-メトキシ-フェニル)-4,5-ジヒドロ-イミダゾール-1-イル]-(4-メチル-ピペラジン-1-イル)-メタノン
[(4S,5R)-4,5-ビス-(4-700-フェニル)-2-(2-イソプロポキシ-4-メトキシ-フェニル)-4,5-ジヒドロ-イミダゾール-1-イル]-(4-(2-メタンスルホニル-エチル)-ピペラジン-1-イル)-メタノン;
2-{4-[(4S,5R)-4,5-ビス-(4-700-フェニル)-2-(2-イソプロポキシ-4-メトキシ-フェニル)-4,5-ジヒドロ-イミダゾール-1-カルボニル]-ピペラジン-1-イル}-N,N-ジメチル-アセトアミド;
2-{4-[(4S,5R)-4,5-ビス-(4-700-フェニル)-2-(2-イソプロポキシ-4-メトキシ-フェニル)-4,5-ジヒドロ-イミダゾール-1-カルボニル]-ピペラジン-1-イル}-1-モルホリン-4-イル-メタノン;又は
[(4s,5r)-4,5-ビス-(4-700-フェニル)-2-(2-イソプロポキシ-4-メトキシ-フェニル)-4,5-ジヒドロ-イミダゾール-1-イル]-(4-メタンスルホニル-ピペラジン-1-イル)-メタノン
である、請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
請求項1に記載の式Iの化合物を治療上有効な量、それを必要とする患者へ投与することを含んで成る、腫瘍増殖を阻害する方法。
【請求項11】
請求項1に記載の式Iの化合物及び医薬的に許容できる担体又は賦形剤を含んで成る医薬組成物。
【請求項12】
式:
(4S,5R)-4,5-ビス-(クロロ-フェニル)-2-(2-イソプロポキシ-4-メトキシ-フェニル)-4,5-ジヒドロ-イミダゾール-1-カルボニルクロリド又は
(4S,5R)-4,5-ビス-(4-クロロ-フェニル)-2-(2-エトキシ-フェニル)-4,5-ジヒドロ-イミダゾール-1-カルボニルクロリド
の化合物。
【請求項13】
請求項1に記載の式Iの化合物を生産する方法であって、
ラセミ体カルバモイルクロリドのエナンチオマー
【化3】

を分離し、その後所望のエナンチオマーと適切なR-アミン基をカップリングすることを含んで成り、ここで、R、Y1、Y2、X1及びX2は請求項1に記載の意味を有する方法。
【請求項14】
MDM2タンパク質とp53様ペプチドの反応に基づく疾患の治療をするための請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項15】
MDM2タンパク質とp53ペプチドの反応に基づく疾患の治療をするための請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項16】
がんを治療するための請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項17】
固形腫瘍を治療するための請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項18】
MDM2タンパク質とp53様ペプチドの反応に基づく疾患を治療するための請求項1に記載の化合物の使用。
【請求項19】
MDM2タンパク質とp53ペプチドの反応に基づく疾患を治療するための請求項1に記載の化合物の使用。
【請求項20】
がんの治療のための請求項1に記載の化合物の使用。
【請求項21】
固形腫瘍の治療のための請求項1に記載の化合物の使用。
【請求項22】
MDM2タンパク質とp53様ペプチドの反応に基づく疾患の治療のための医薬の製造のための請求項1に記載の化合物の使用。
【請求項23】
MDM2タンパク質とp53ペプチドの反応に基づく疾患の治療のための医薬を製造するための請求項1に記載の化合物の使用。
【請求項24】
がんを治療するための医薬の製造のための請求項1に記載の化合物の使用。
【請求項25】
固形腫瘍を治療するための医薬の製造のための請求項1に記載の化合物の使用。
【請求項26】
本願明細書中に記載の発明。

【公表番号】特表2008−502620(P2008−502620A)
【公表日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−515829(P2007−515829)
【出願日】平成17年6月8日(2005.6.8)
【国際出願番号】PCT/EP2005/006167
【国際公開番号】WO2005/123691
【国際公開日】平成17年12月29日(2005.12.29)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】