説明

新規テトラヒドロキノリン誘導体

本発明は、前立腺に対して過剰な作用を示さず、また、骨格筋組織、骨組織に特に強いアンドロゲン受容体アゴニスト作用を示す非ステロイド性の一般式(I)


(R、R、X、Y及びiは請求項1で定義される通りである)
で示されるテトラヒドロキノリン誘導体またはその塩、およびそれらを有効成分として含有する医薬を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、前立腺に対して過剰な作用を示さず、かつ、骨組織、骨格筋組織に特に強いアンドロゲン受容体アゴニスト作用を示すテトラヒドロキノリン誘導体またはその塩およびそれらを含有する医薬に関する。
【背景技術】
アンドロゲンはC19ステロイドの総称であり、男性の正常な性分化と発育、思春期における男性化、睾丸における初期の造精機能の活性化及び男性機能の維持に重要な性ホルモンである。アンドロゲンはその約90%が精巣ライディッヒ細胞から、残り10%は副腎から、主にテストステロンとして産生され、血中へ分泌される。テストステロンは標的細胞に取り込まれ、5α−リダクターゼにより生物学的活性の強いジヒドロテストステロン(DHT)に変換され、テストステロンとともに男性の二次性徴発現(皮脂腺の増殖、ざ瘡、体毛の発生、声変り、顎鬚の発生)や外性器(陰茎、睾丸)、副性器(前立腺、精嚢腺)の発育、性的衝動と勃起の発現などに重要な役割を演じている。
一方、これらの主作用以外に、蛋白同化作用(骨格筋、骨量の増大、赤血球産生亢進作用など)、ゴナドトロピン分泌抑制作用などの生殖器系以外の作用を有し、アンドロゲン標的細胞は外・副性器組織に存在する他、脳、下垂体、筋組織、骨、腎臓など多岐に分布している(N Engl J Med 334,707−714,1996)。
これらの役割に加えて、アンドロゲンは抗炎症作用を示すことが報告され、炎症性細胞の増殖抑制やIL−6等のサイトカイン産生を抑制することにより、関節炎や自己免疫疾患を緩和することが今日明らかにされつつある(Ann Rheum Dis 55,811−815,1996)。
全てのアンドロゲン作用は標的細胞の核内に存在する分子量約10万のアンドロゲン受容体(Androgen Receptor、以下ARという)を介して発現する。ARは1988年にChang及びLubahnらによりその遺伝子がクローニングされ、エストロゲン、プロゲステロン、ミネラルコルチコイド及びグルココルチコイド受容体と構造が類似し、一群の核内ステロイド受容体ファミリーを形成することが明らかにされた(Science 240,324−326、327−330、1988)。脂溶性に富むアンドロゲンは標的細胞膜を受動拡散により通過し、ARのホルモン結合領域に特異的かつ高親和性に結合して二量体を形成し、特定遺伝子の上流に存在するアンドロゲン応答性DNA領域(Androgen Response Element:ARE)に結合する。そして、標的遺伝子の転写が開始され、mRNAの発現が起こり、アンドロゲン作用を司る機能蛋白質が産生されて作用が発現する(Trend in Endocrinology and Metabolism 9,317−324,1998)。この機構において、ARに結合し、天然リガンドであるテストステロン等と同様の作用を発現させる化合物はアゴニストと定義づけられる。
ARアゴニストとして、テストステロンエステル及びその他の誘導体などのアンドロゲンステロイド製剤が、骨粗鬆症、消耗性疾患、男子性腺機能低下症などの治療に現在用いられている。
しかし、上記ステロイド製剤は、肝機能障害、胃腸障害などのステロイド製剤特有の副作用の他に、男性患者特に高年齢者へ投与する場合には前立腺に対して過剰に作用するためにアンドロゲン依存性腫瘍(前立腺癌など)、前立腺肥大の発症や症状悪化を促す恐れがあり、また、女性患者へ投与する場合には声帯の変化(男性様の嗄声発現)、体躯部の多毛症、禿頭症、ざ瘡などの男性化作用が大きな問題であった。
従って、性腺機能低下症の治療には、前立腺に対して過剰な作用を示さず、副作用が少ない非ステロイド性ARアゴニストが望まれ、研究開発が進められているが、世界的に認知された化合物は未だ創製されていない。
また骨粗鬆症、消粍性疾患を適応疾患とした場合には、骨組織、骨格筋組織に対して特に強いARアゴニスト作用を示すものが望まれているが、このような化合物は未だ創製されていない。
【発明の開示】
本発明は、このようなARを介する疾患の治療および治療研究を鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、アンドロゲンステロイド製剤などに見られる前立腺に対する過剰な作用を示さず、また、骨組織、骨格筋組織に対して特に強いARアゴニスト作用を示す非ステロイド性の新規化合物およびその塩を提供すること、さらにこれらを有効成分とする医薬を提供することにある。
本発明者らは、これらの課題を解決するため鋭意研究を行った結果、テトラヒドロキノリン誘導体の中で、特定の下記式(I)化合物(以下、「本発明化合物」という)が、前立腺に対して過剰作用せず、また、骨組織、骨格筋組織に対して特に強いARアゴニスト作用を示す化合物であることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の1態様によると、式(I)

(上記式(I)に示される番号1〜10は、iが1の場合であり、iが0の場合は、番号3の位置がないので、番号4〜10を3〜9として位置を示し、以下の説明に用いる)。
式中、Rはニトロ基またはシアノ基を表し、
iは0または1を表し、
Xは炭素数1〜6のアルキル基及び炭素数3〜7のシクロアルキル基からなる群から選択される置換基で置換されていてもよい炭素数1〜5のアルキレン基を表し、
Yは−NRCO−、−NRSO−、−NRCONH−または−NRCSNH−(式中、Rは水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜7のシクロアルキル基または炭素数7〜9のアラルキル基を表す)を表し、
は独立した1〜3個のRで置換されていてもよいフェニル基若しくは独立した1〜3個のR4’で置換されていてもよいヘテロアリール基
[式中、R及びR4’は、各々独立して、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、−A−R5A{式中、Aは、−CO−、−CO−、−CONR−、−O−、−OCO−、−NR−、−NRCO−、−NRSO−、−NRCONH−、−NRCSNH−または−NRCOO−を表し(式中、Rは独立して前記Rと同じ意味を表す)、R5Aは、水素原子、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基または炭素数3〜7のシクロアルキル基を表す}または−B−(CH−R5B{式中、Bは単結合、−CO−、−CO−、−CONR6’−、−O−、−OCO−、−NR6’−、−NR6’CO−、−NR6’SO−、−NR6’CONH−、−NR6’CSNH−または−NR6’COO−を表し(式中、R6’は独立して前記Rと同じ意味を表す)、nは1または2の整数を表す、R5Bは、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜7のシクロアルキル基、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、炭素数1〜5のアルコキシ基または−NR7’8’(式中、R7’およびR8’はそれぞれ独立して前記Rと同じ意味を表す)を表す}を表す]、または−C≡C−R{式中、Rは水素原子、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜7のシクロアルキル基、R10で置換されていてもよいアリール基(式中、R10はフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基またはハロゲン原子を表す)を表す}
で示されるテトラヒドロキノリン誘導体またはその薬理学的に許容される塩、それらを有効成分として含有する医薬およびアンドロゲン受容体アゴニストに関する。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明化合物(実施例1化合物)及びDHTの前立腺重量に及ぼす効果の比較を示すグラフである。
図2は、本発明化合物(実施例1化合物)及びDHTの大腿骨骨密度に及ぼす効果の比較を示すグラフである。
図3は、本発明化合物(実施例1化合物)及びDHTの肛門挙筋重量に及ぼす効果の比較を示すグラフである。
図4は、本発明化合物(実施例8および23)及びDHTの前立腺重量に及ぼす効果の比較を示すグラフである。
図5は、本発明化合物(実施例8および23)及びDHTの大腿骨骨密度に及ぼす効果の比較を示すグラフである。
図6は、本発明化合物(実施例8および23)及びDHTの肛門挙筋重量に及ぼす効果の比較を示すグラフである。
図7は、本発明化合物(実施例16)の前立腺重量に及ぼす効果を示すグラフである。
図8は、本発明化合物(実施例16)の大腿骨骨密度に及ぼす効果を示すグラフである。
図9は、本発明化合物(実施例16)の肛門挙筋重量に及ぼす効果を示すグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明の他の態様によると、一般式(I)において、Rがニトロ基またはシアノ基であり、iが0であり、Xが−C(CH−CH−であり、Yが−NHCO−または−NHCONH−であり、Rが独立した1〜3個のRで置換されていてもよいフェニル基若しくは独立した1〜3個のR4’で置換されていてもよいヘテロアリール基
[式中、R及びR4’は、各々独立して、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン原子、−A−R5A{式中、Aは、−CO−、−O−、−OCO−、−NR−、−NRCO−または−NRCONH−を表し(式中、Rは、水素原子またはメチル基を表す)、R5Aは、水素原子、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基または炭素数3〜7のシクロアルキル基を表す}または−B−(CH−R5B{式中、Bは−CO−、−O−、−OCO−、−NR6’−、−NR6’CO−または−NR6’CONH−を表し(式中、R6’は、水素原子またはメチル基を表す)、nは1または2の整数を表す、R5Bは、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜7のシクロアルキル基または炭素数1〜5のアルコキシ基を表す}を表す]である、テトラヒドロキノリン誘導体またはその薬理学的に許容される塩を提供する。
本発明の他の態様によると、一般式(I)において、Rがニトロ基またはシアノ基であり、iが0であり、Xが−C(CH−CH−であり、Yが−NHCO−であり、Rが独立した1〜3個のRで置換されていてもよいフェニル基若しくは独立した1〜3個のR4’で置換されていてもよいヘテロアリール基[式中、R及びR4’は、各々独立して、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン原子、−A−R5A{式中、Aは、−CO−、−O−、−OCO−、−NH−、−NHCO−または−NHCONH−を表し、Rは、水素原子、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基または炭素数3〜7のシクロアルキル基を表す}または−B−(CH−R5B{式中、Bは−CO−、−O−、−OCO−、−NH−、−NHCO−または−NHCONH−を表し、nは1または2の整数を表し、R5Bは、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜7のシクロアルキル基または炭素数1〜5のアルコキシ基を表す}を表す]である、テトラヒドロキノリン誘導体またはその薬理学的に許容される塩を提供する。
本発明の他の態様によると、一般式(I)において、Rがニトロ基またはシアノ基であり、iが0であり、Xが−C(CH−CH−であり、Yが−NHCO−であり、Rが独立した1〜3個のR4’で置換されていてもよいヘテロアリール基{式中、R4’がフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン原子、−A−R5A(式中、Aは−O−または−NHCO−を表し、R5Aは、水素原子またはフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基を表す)または−B−CH−R5B(式中、Bは−O−または−NHCO−を表し、R5Bは、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基または炭素数1〜5のアルコキシ基を表す)を表す}である、テトラヒドロキノリン誘導体またはその薬理学的に許容される塩を提供する。
本発明の他の態様によると、一般式(I)において、Rがニトロ基またはシアノ基であり、iが0であり、Xが−C(CH−CH−であり、Yが−NHCO−であり、Rが4位に置換基Rを有するフェニル基若しくは4位に置換基R4’を有する6員ヘテロアリール基[式中、R及びR4’は、各々独立して、ハロゲン原子、−O−R5Aまたは−NHCO−R5A(式中,R5Aは、水素原子またはフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基を表す)である]である、テトラヒドロキノリン誘導体またはその薬理学的に許容される塩を提供する。
本発明の他の態様によると、一般式(I)において、Rがニトロ基またはシアノ基であり、iが0であり、Xが−C(CH−CH−であり、Yが−NHCO−であり、Rが4位に置換基Rを有するフェニル基若しくは4位に置換基R4’を有する6員ヘテロアリール基[式中、R及びR4’は、各々独立して、−NHCO−R5A(式中,R5Aは、水素原子またはフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基を表す)である]である、テトラヒドロキノリン誘導体またはその薬理学的に許容される塩を提供する。
本発明の他の態様によると、一般式(I)において、Rがニトロ基またはシアノ基であり、iが0であり、Xが−C(CH−CH−であり、Yが−NHCO−であり、Rが−C≡C−R{式中、Rはフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基またはR10で置換されていてもよいアリール基(式中、R10はフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基またはハロゲン原子を表す)を表す}である、テトラヒドロキノリン誘導体またはその薬理学的に許容される塩を提供する。
本発明の他の態様によると、一般式(I)において、Rがニトロ基またはシアノ基であり、iが0であり、Xが−C(CH−CH−であり、Yが−NHCO−であり、Rが−C≡C−R(式中、Rがフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基またはフェニル基である)である、テトラヒドロキノリン誘導体またはその薬理学的に許容される塩を提供する。
本発明化合物の式(I)における置換基について説明する。
「炭素数1〜6のアルキル基」の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、sec−ブチル基、n−ペンチル基、tert−アミル基、3−メチルブチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、3,3−ジメチルブチル基および2−エチルブチル基などの直鎖または分枝鎖状のアルキル基があげられる。
「炭素数3〜7のシクロアルキル基」の具体例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基およびシクロヘプチル基などがあげられる。
「炭素数1〜5のアルキレン基」の具体例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基およびペンタメチレン基などがあげられる。
「炭素数7〜9のアラルキル基」の具体例としては、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基などがあげられる。
「ヘテロアリール基」の具体例としては、2−ピリジル基、3−ピリジル基、4−ピリジル基、2−ピラジニル基、2−ピロリル基、2−インドリル基、2−フリル基、3−フリル基、2−チエニル基、3−チエニル基、2−ピロール基および3−ピロール基などがあげられる。「6員ヘテロアリール基」の具体例としては、2−ピリジル基、3−ピリジル基、4−ピリジル基、2−ピラジニル基などがあげられる。
「フッ素原子で置換されていても良い炭素数1〜6のアルキル基」のフッ素原子置換アルキル基の具体例としては、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基およびテトラフルオロエチル基などがあげられる。
「ハロゲン原子」の具体例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子などがあげられる。
「炭素数1〜5のアルコキシ基」の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、tert−アミルオキシ基、3−メチルブトキシ基およびネオペンチルオキシ基などの直鎖または分枝鎖状のアルコキシ基があげられる。
「アリール基」の具体例としては、フェニル基、ナフチル基(1−ナフチル基および2−ナフチル基)などがあげられる。
式(I)の化合物において、好ましい態様としては、以下のものがあげられる。
は、シアノ基が好ましく、iが1の場合は9位(iが0の場合8位)に置換されることが好ましい。
iは0が好ましい。
Xの定義において、炭素数1〜5のアルキレン基に置換されていてもよい置換基の数は1〜3個が好ましく、また、置換基の好ましい例は、メチル基、エチル基があげられる。Xの好ましい例は、−C(CH−CH−があげられる。
Yは−NHCO−、−NHSO−または−NHCONH−が好ましく、−NHCO−または−NHCONH−がより好ましく、−NHCO−がさらに好ましい。
の定義において、独立した1〜3個のRで置換されていてもよいフェニル基は、より好ましくは、独立した1〜2個のRで置換されていてもよいフェニル基であり、さらに好ましくは、Yとの結合位置を1位として番号付けをした場合の4位に置換基Rを有するフェニル基である。
ここで、置換基Rの好ましい例は、ハロゲン原子、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基または−A−R5A{式中、Aは−CO−、−O−、−OCO−、−NR−、−NRCO−または−NRCONH−(式中、Rは水素原子またはメチル基が好ましい)を表し、R5Aは水素原子、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基または炭素数3〜7のシクロアルキル基を表す}または−B−(CH−R5B{式中、Bは−CO−、−O−、−OCO−、−NR6’−、−NR6’CO−または−NR6’ONH−(式中、R6’は、水素原子またはメチル基が好ましい)を表し、nは1または2の整数を表す、R5Bは、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜7のシクロアルキル基または炭素数1〜5のアルコキシ基を表す}があげられる。
において、「フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基」の例としては、例えば、メチル基、トリフルオロメチル基があげられる。
「−A−R5A」の例としては以下のものがあげられる。
−O−R5A(式中、R5Aは、好ましくは水素原子またはフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基である)は、例えば、−OMe、−OEt、−OPr、−OPr、−OBu、−OCHF、−OCF、−OCHCFがあげられる。
−CO−R5Aは、例えば、−CO−(C−Cアルキル基)(例えば、−COMe)があげられる。
−OCO−R5Aは、例えば、−OCO−(C−Cアルキル基)(例えば、−OCOMe)があげられる。
−NR−R5Aは、好ましくは、−NH−R5Aであり、その例としては、−NH、−NMeがあげられる。
−NRCO−R5Aは、好ましくは、−NHCO−R5Aであり、その例としては、−NHCOH、−NHCO−(C−Cアルキル基)(例えば、−NHCOMeがあげられる)があげられる。
−NRCONH−R5Aは、好ましくは、−NHCONH−R5Aであり、その例としては、−NHCONH−(C−Cアルキル基)(例えば、−NHCONHMeがあげられる)があげられる。
「−B−(CH−R5B」の例としては、−O−(CH−(C−Cアルコキシ基)(式中、nは1または2の整数を表す)(例えば、−OCHOMe、−OCHCHOMe)があげられる。
置換基Rのより好ましい例は、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン原子、または−A−R5A{式中、Aは、−CO−、−O−、−OCO−、−NH−、−NHCO−または−NHCONH−を表し、Rは、水素原子、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基または炭素数3〜7のシクロアルキル基を表す}であり、さらに好ましくは、ハロゲン原子、−O−R5Aまたは−NHCO−R5A(式中,R5Aは、水素原子またはフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基を表す)であり、さらにより好ましくは、−NHCO−R5A(式中,R5Aは、水素原子またはフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基を表す)であり、特には、−NHCOH、−NHCO−(C−Cアルキル基)である。
の定義において、独立した1〜3個のR4’で置換されていてもよいヘテロアリール基(ピリジル基およびフリル基が好ましい)は、より好ましくは、独立した1〜2個のR4’で置換されていてもよいヘテロアリール基であり、Rが6員ヘテロアリール(ピリジル基が好ましい)である場合、さらに好ましくは、Yとの結合位置を1位として番号付けをした場合の4位に置換基R4’を有するヘテロアリール基である。
ここで、置換基R4’の好ましい例は、上記置換基Rの好ましい例と同様であである。
の定義において、−C≡C−Rの置換基Rは、好ましくは、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基またはR10で置換されていてもよいアリール基(式中、R10はフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基またはハロゲン原子を表す)であり、より好ましくは、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基またはフェニル基であり、その例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、フェニル基があげられる。
本発明化合物の好ましい化合物は以下のものである。
N−[2−(8−シアノ−2,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−1H−シクロペンタ[c]キノリン−4−イル)−2−メチル−プロピル]−4−トリフルオロメトキシベンズアミド
N−[2−(8−シアノ−2,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−1H−シクロペンタ[c]キノリン−4−イル)−2−メチル−プロピル]−4−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)−ベンズアミド
N−[2−(8−シアノ−2,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−1H−シクロペンタ[c]キノリン−4−イル)−2−メチルプロピル]−4−ホルミルアミノベンズアミド
6−アセトアミド−N−[2−(8−シアノ−2,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−1H−シクロペンタ[c]キノリン−4−イル)−2−メチル−プロピル]−ニコチンアミド
式(I)で表される本発明の化合物において不斉炭素が存在する場合には、そのラセミ体、ジアステレオ異性体および個々の光学異性体のいずれも本発明に包含されるものであり、また幾何異性体が存在する場合には(E)体、(Z)体およびその混合物のいずれも本発明に包含されるものである。
式(I)で表される本発明化合物のテトラヒドロキノリン環は3つの不斉炭素をもつのでジアステレオ異性体が存在するが、その相対配置としては、iが0の場合は、(3aR,4S,9bS)、iが1の場合は、(4aR,5S,10bS)のものが好ましい。
本発明化合物の好ましい異性体は以下のものである。
(3aR,4S,9bS)−N−[2−(8−シアノ−2,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−1H−シクロペンタ[c]キノリン−4−イル)−2−メチル−プロピル]−4−トリフルオロメトキシベンズアミド(実施例1の化合物)
(3aR,4S,9bS)−N−[2−(8−シアノ−2,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−1H−シクロペンタ[c]キノリン−4−イル)−2−メチル−プロピル]−4−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)−ベンズアミド(実施例8の化合物)
(3aR,4S,9bS)−N−[2−(8−シアノ−2,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−1H−シクロペンタ[c]キノリン−4−イル)−2−メチルプロピル]−4−ホルミルアミノベンズアミド(実施例16の化合物)(3aR,4S,9bS)−6−アセトアミド−N−[2−(8−シアノ−2,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−1H−シクロペンタ[c]キノリン−4−イル)−2−メチル−プロピル]−ニコチンアミド(実施例23の化合物)
式(I)で表される本発明の化合物の塩としては、薬理学的に許容されるものであれば特に制限されず、例えば、フッ素酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩などのハロゲン化水素酸塩、硝酸塩、過塩素酸塩、硫酸塩、リン酸塩、炭酸塩などの無機酸塩、メタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩などの低級アルキルスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩などのアリールスルホン酸塩、酢酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、シュウ酸塩、マレイン酸塩などのカルボン酸塩、グリシン塩、アラニン塩、グルタミン酸塩、アスパラギン酸塩などのアミノ酸塩、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩などがあげられる。本発明化合物の溶媒和物も本発明に包含されるものであり、溶媒和物としてはアセトン、2−ブタノール、2−プロパノール、エタノール、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテルなどとの溶媒和物があげられる。
本発明のテトラヒドロキノリン誘導体は、以下に示す方法により製造することができる。
[製造法1]

(式中、すべての記号は前記と同じである。)
式(I)で示される本発明化合物は、以下の工程1および2の反応により製造することができる。
(工程1)本工程では、式(a)、(b)および(c)で示される化合物を、酸存在下または非存在下、不活性溶媒中反応させることにより式(II)で示される化合物を製造することができる。
式(a)、(b)および(c)で示される化合物は市販の試薬としてまたはそれから通常の化学反応により容易に誘導することにより入手できる。
本反応を具体的に説明すると、酸は有機酸、無機酸いずれも好ましく、たとえば酢酸、トリフルオロ酢酸、p−トルエンスルホン酸、塩酸、硫酸、四塩化スズ、四塩化チタン、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体、ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムジクロリドなどが用いられる。酸は式(a)で示される化合物に対し触媒量〜10当量用いるのが好ましい。反応溶媒としては本反応を著しく阻害しない溶媒であればとくに限定されないが、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、メタノール、エタノール、水またはこれらの混合溶媒などが好ましい。反応温度は−20〜100℃が好ましく、反応時間は5分〜48時間が好ましい。
(工程2)本工程では、式(II)で示される化合物を、触媒存在下接触還元することにより式(I)で示される化合物を製造することができる。
本反応を具体的に説明すると、触媒としてはたとえば、5%パラジウム炭素、10%パラジウム炭素、30%パラジウム炭素、酸化白金およびウィルキンソン触媒などがあげられる。触媒の量としては式(II)で示される化合物の重量の1/10〜等量用いるのが好ましく、水素圧は1〜5気圧が好ましい。反応溶媒としては本反応を著しく阻害しない溶媒であればとくに限定されないが、メタノール、エタノール、酢酸エチルまたはテトラヒドロフランなどが好ましい。反応温度は25〜70℃が好ましく、反応時間は30分〜72時間が好ましい。
[製造法2]

(式中、すべての記号は前記と同じであり、Bocはtert−ブトキシカルボニル基を表し、Dはハロゲン化カルボニル基を表す。)
式(Ia)で示される本発明化合物は、製造法1以外に、以下の工程1および2の反応により製造することができる。
(工程1)本工程では、製造法1の工程1と同様の方法により製造できる、式(IIIa)で示される化合物を酸で処理して脱保護することにより式(IIIb)で示される化合物を製造することができる。
本反応を具体的に説明すると、酸は有機酸、無機酸いずれも好ましく、たとえば酢酸、トリフルオロ酢酸、p−トルエンスルホン酸、塩酸、硫酸などがあげられる。酸は式(IIIa)で示される化合物に対し1〜50当量用いるのが好ましい。反応溶媒としては本反応を著しく阻害しない溶媒であればとくに限定されないが、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、メタノール、エタノール、水またはこれらの混合溶媒などが好ましい。反応温度は0〜100℃が好ましく、反応時間は30分〜24時間が好ましい。
(工程2)本工程では、式(IIIb)で示される化合物と式(d)、(e)または(f)で示される化合物を、塩基存在下または非存在下無溶媒または不活性溶媒中で反応させ、アミド結合を形成させることにより式(Ia)で示される化合物を製造することができる。
Dの「ハロゲン化カルボニル基」の具体例としては、クロロカルボニル基およびブロモカルボニル基などがあげられる。
アミド結合を形成させる反応は公知であり、酸ハライドまたは酸無水物を用いる方法や縮合剤などを用いる方法があげられる。
これらの反応を具体的に説明すると、酸ハライドまたは酸無水物を用いる方法は、式(d)または(e)で示される化合物と式(IIIb)で示される化合物とを塩基存在下または非存在下、無溶媒または不活性溶媒中で反応させてアミド化する方法である。塩基は三級アミンが好ましく、たとえばトリエチルアミンおよびピリジンなどがあげられる。式(d)または(e)で示される化合物は式(IIIb)で示される化合物に対して1〜10当量用いるのが好ましい。塩基は酸ハライドまたは酸無水物に対し1当量〜大過剰量用いるのが好ましい。反応溶媒としては、本反応を著しく阻害しない溶媒であればとくに限定されないが、N,N−ジメチルホルムアミド、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、トルエンおよびピリジンなどが好ましい。反応温度は0〜80℃が好ましく、反応時間は30分〜24時間が好ましい。
縮合剤を用いる方法は、式(IIIb)で示される化合物と式(f)で示される化合物とを、2−クロロ−1,3−ジメチルイミダゾリニウムクロライド、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドなどの縮合剤を用いて、塩基存在下または非存在下無溶媒または不活性溶媒中で反応させる方法である。縮合剤は、式(f)で示される化合物に対して1〜2当量用いるのが好ましい。塩基は三級アミンが好ましく、たとえば4−メチルモルホリン、トリエチルアミンおよびピリジンなどがあげられる。塩基は式(f)で示される化合物に対して1当量〜大過剰量用いるのが好ましい。反応溶媒は、本反応を著しく阻害しない溶媒であればとくに限定されないが、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジクロロメタン、クロロホルムおよび1,2−ジクロロエタンなどが好ましい。反応温度は0〜150℃が好ましく、反応時間は1〜48時間が好ましい。
[製造法3]

(式中、すべての記号は前記と同じであり、Yは−NRSO−、−NRCONH−または−NRCSNH−を表し、Gはクロロスルホニル基、イソシアナト基またはイソチオシアナト基を表す。)
式(Ib)で示される本発明化合物は、製造法1以外に、以下の反応により製造することができる。
本反応では、式(IIIb)で示される化合物と式(g)で示される化合物を、塩基存在下または非存在下無溶媒または不活性溶媒中で反応させることにより式(Ib)で示される化合物を製造することができる。
本反応を具体的に説明すると、塩基は三級アミンが好ましく、たとえばトリエチルアミン、ピリジンなどがあげられる。式(g)で示される化合物は式(IIIb)で示される化合物に対して1〜10当量用いるのが好ましい。塩基は式(g)で示される化合物に対し1当量〜大過剰量使用するのが好ましい。反応溶媒としては本反応を著しく阻害しない溶媒であればとくに限定されないが、N,N−ジメチルホルムアミド、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、トルエン、テトラヒドロフランなどが好ましい。反応温度は0〜80℃が好ましく、反応時間は30分〜12時間が好ましい。
前述した製法で製造される本発明化合物は遊離化合物、その塩、その水和物もしくはエタノール和物などの各種溶媒和物または結晶多形の物質として単離精製される。本発明化合物の薬理学的に許容される塩は常法の塩形成反応により製造することができる。単離精製は抽出分別、結晶化、各種分画クロマトグラフィーなどの化学操作を適用して行われる。また光学異性体は適当な原料化合物を選択することにより、またはラセミ化合物のラセミ分割法により立体化学的に純粋な異性体に導くことができる。
本発明のテトラヒドロキノリン誘導体またはその塩は、優れたARアゴニスト作用を有しており、それらを有効成分として用いて医薬またはARアゴニストとすることができ、種々のAR関連疾患の予防および治療に広く適用することができる。
ARアゴニスト作用により以下の疾患の治癒が期待できる。
蛋白同化作用により治癒が期待できる疾患としては、たとえば、骨組織に強い作用を示すことから、原発性骨粗鬆症(老人性、閉経後、若年性骨粗鬆症)及び続発性骨粗鬆症(甲状腺機能亢進症、クッシング症候群(ステロイド投与によるもの)、末端肥大症、性腺機能低下、骨形成不全症、低ホスファターゼ症若しくは糖尿病に由来する骨粗鬆症または不動性骨粗鬆症)などがあげられ、筋組織に強い作用を示すことから、手術後、悪性腫瘍、外傷、慢性腎疾患、熱傷、AIDS等に由来する消粍性疾患などがあげられ、赤血球産生亢進作用を示すことから、造血機能障害及びその関連疾患、例えば、再生不良性貧血、溶血性貧血、鎌状赤血球性貧血、特発性血小板減少性紫斑病、骨髄線維症、腎性貧血などがあげられる。
また、性作用により治癒が期待できる疾患としては、たとえば、男子性腺機能低下症、男子性機能障害(インポテンス、造精機能障害による男性不妊症)、性分化異常症(男性半陰陽)、男性思春期遅発症、女性性器癌(癌に伴う疼痛を包含する)、乳癌、乳腺症、子宮内膜症および女性性機能障害などがあげられる。
本発明の医薬は、これらのAR関連疾患に対して広く適用することができ、また、ここに例示されていない疾患に対しても、ARの機能調節が現在または将来必要とされる場合であれば、本発明の医薬を適用することができる。
本発明の医薬は、経口または非経口により投与することができ、全身投与型であっても局所投与型であってもよい。
また、剤型も特に制限されず、投与経路に応じて適宜選択することができる。例えば、錠剤、カプセル剤、糖衣錠、顆粒剤、細粒剤、吸入剤、座剤、液剤、シロップ、ドライシロップ、懸濁剤、乳剤、ローション、軟膏、貼付剤、スプレー剤、ゲル剤、点鼻剤、点眼剤、注射剤などがあげられる。
これらの製剤は、有機または無機の固体または液体の賦形剤、補助物質、安定化剤、浸潤剤、乳化剤、緩衝剤、その他薬理学的に許容される各種添加剤を配合し、製造することができる。
本発明の医薬のヒトへの投与量は、治療または予防の目的、患者の性別、体重、年齢、健康状態、疾患の種類や程度、剤型、投与経路、投与期間などの種々の条件により適宜決定する。本発明のテトラヒドロキノリン誘導体の1日当たりの投与量として概ね0.01〜100mg/kgの範囲である。
なお、本発明の医薬は、家畜、愛玩動物、飼育下または野生動物などの温血動物におけるアンドロゲン受容体を介する疾患の治療に使用しても良い。この場合の剤型および投与量はヒトに対する剤型および投与量を参考にして決定することができる。
【実施例】
以下に実施例をあげて本発明化合物および製造法をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの記載によって限定的に解釈されるものではない。
なお、H−NMRスペクトルは、テトラメチルシラン(TMS)を内部標準とし、JNM−EX270型スペクトルメーター(270MHz、日本電子(株)製)で測定し、δ値はppmで示した。
また、以下の構造式および表において、Meはメチル基、Etはエチル基、Prはプロピル基、Buはブチル基、Hexはヘキシル基を表す。
[実施例1](3aR,4S,9bS)−N−[2−(8−シアノ−2,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−1H−シクロペンタ[c]キノリン−4−イル)−2−メチル−プロピル]−4−トリフルオロメトキシベンズアミドの製造

(便宜上、化学構造式においては絶対配置は省略する。以下の化学構造式においても同様。)
(1)(3aR,4S,9bS)−[2−(8−シアノ−3a,4,5,9b−テトラヒドロ−1H−シクロペンタ[c]キノリン−4−イル)−2−メチル−プロピル]カルバミン酸 tert−ブチルエステル

4−アミノベンゾニトリル50.0g、シクロペンタジエン41.8mLおよび2,2−ジメチル−3−オキソプロピルカルバミン酸 tert−ブチルエステル85.0gをアセトニトリル1000mLに溶解し、トリフルオロ酢酸3.2mLを0℃で加えた。室温で一晩撹拌した後、析出した結晶を濾取することにより標題化合物50.4gを得た。物性値を以下に示す。
H−NMR(CDCl)δ値:0.99(3H,s),1.01(3H,s),1.35(9H,s),2.21−2.30(1H,m),2.45−2.55(1H,m),2.81−2.92(2H,m),3.27(1H,brs),3.38−3.42(1H m),3.98(1H,d,J=7.9Hz),4.69(1H,brs),5.74−5.76(1H,m),5.85−5.88(1H,m),6.64(1H,d,J=7.9Hz),7.17(1H,d,J=7.9Hz),7.19(1H,s).
(2)(3aR,4S,9bS)−[2−(8−シアノ−2,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−1H−シクロペンタ[c]キノリン−4−イル)−2−メチル−プロピル]カルバミン酸 tert−ブチルエステル

(1)で得た化合物10.0gを酢酸エチル750mLに溶解し、酸化白金100mgを加えて、水素雰囲気下、室温で1時間攪拌した。酸化白金を濾去した後、溶媒を減圧下留去し、標題化合物10.4gを得た。物性値を以下に示す。
H−NMR(CDCl)δ値:0.97(3H,s),0.99(3H,s),1.37(9H,s),1.43−1.69(5H,m),1.81−1.98(2H,m),2.37(1H,q,J=7.9,12.5Hz),2.90(1H,dd,J=5.3,14.2Hz),3.24−3.34(3H,m),4.68(1H,brs),6.53(1H,d,J=8.6Hz),7.19(1H,dd,J=1.7,8.6Hz),7.32(1H,d,J=1.7Hz).
(3)(3aR,4S,9bS)−4−(2−アミノ−1,1−ジメチル−エチル)−2,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−1H−シクロペンタ[c]キノリン−8−カルボニトリル

(2)で得た化合物3.0gをテトラヒドロフラン10mLに溶解し、4N塩酸−ジオキサン溶液10mLを加えた。50℃で2時間撹拌した後、2N水酸化ナトリウム水溶液および酢酸エチルを加えた。酢酸エチル層を飽和食塩水および水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶媒を減圧下留去し、標題化合物1.5gを得た。物性値を以下に示す。
H−NMR(CDCl)δ値:0.93(3H,s),1.03(3H,s),1.44−1.73(4H,m),1.81−1.91(2H,m),2.27−2.32(1H,m),2.72(1H,dd,J=12.5,33.0Hz),3.25(1H,t,J=5.9Hz),3.44(1H,d,J=2.3Hz),6.44(1H,d,J=8.6Hz),7.00(1H,brs),7.15(1H,dd,J=1.7,8.4Hz),7.29(1H,s).
(4)(3aR,4S,9bS)−N−[2−(8−シアノ−2,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−1H−シクロペンタ[c]キノリン−4−イル)−2−メチル−プロピル]−4−トリフルオロメトキシベンズアミド

(3)で得た化合物3.6g、4−トリフルオロメトキシ安息香酸2.8gをN、N−ジメチルホルムアミド100mLに溶解し、4−メチルモルホリン3.4mL、N−ヒドロキシベンゾトリアゾール2.4gおよび1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩3.4gを加えた。室温で2時間撹拌した後、水および酢酸エチルを加えた。酢酸エチル層を水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧下留去した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒 ヘキサン:酢酸エチル=3:1)で精製し、標題化合物3.2gを得た。物性値を以下に示す。
H−NMR(CDCl)δ:1.08(3H,s)1.11(3H,s),1.52−1.74(5H,m),1.85−1.99(1H,m),2.42(1H,q,J=7.6Hz),3.19−3.27(2H,m),3.33(1H,d,J=2.3Hz),3.74(1H,dd,J=7.3,14.2Hz),6.37(1H,brs),6.62(1H,d,J=8.6Hz),7.21−7.33(4H,m),7.77(2H,d,J=8.9Hz).
以下、実施例1と同様にして実施例2〜29に示す化合物を製造した。えられた化合物の物性値を表1に示す。





[実施例30](3aR,4S,9bS)−1−[2−(8−シアノ−2,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−1H−シクロペンタ[c]キノリン−4−イル)−2−メチル−プロピル]−3−(3,4−ジクロロフェニル)ウレアの製造

実施例1の(3)で得た化合物50.0mgをN、N−ジメチルホルムアミド2mLに溶解し、イソシアン酸3,4−ジクロロフェニル52mgを加えた。室温で1時間撹拌した後、水および酢酸エチルを加えた。酢酸エチル層を水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧下留去した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒 ヘキサン:酢酸エチル=4:1〜1:1)で精製し、標題化合物72mgを得た。物性値を以下に示す。
H−NMR(CDCl)δ:1.00(3H,s),1.13(3H,s),1.43−1.67(6H,m),2.38(1H,d,J=7.6Hz),3.11−3.23(2H,m),3.37(1H,dd,J=6.3,13.9Hz),3.38(1H,s),4.56(1H,s),5.52(1H,t,J=6.3Hz),6.51(1H,d,J=8.6Hz),7.06(1H,dd,J=2.0,8.4Hz),7.14(1H,d,J=2.3Hz),7.17(1H,d,J=2.3Hz),7.25(1H,s),7.29(1H,d,J=2.0Hz),7.52(1H,d,J=2.3Hz).
以下、実施例30と同様にして実施例31〜33に示す化合物を製造した。えられた化合物の物性値を表2に示す。

次に、本発明化合物の有用性を下記の試験例により説明するが、本発明はこれらの記載によって限定的に解釈されるものではない。
[試験例1]ラットアンドロゲン受容体(ラットAR)に対する競合的結合試験
ラットAR画分の調製:11週齢の雄性SDラットを精巣摘出後、3日目に前立腺を摘出、氷冷したET緩衝液(10mM Tris,1mM EDTA,5mM DTT,10mMモリブデン酸ナトリウム,pH7.4)中に回収した。前立腺を細切し、ET緩衝液を加え、ホモジナイザーを用いてホモジナイズした。このホモジネートを100,000×g、60分、4℃で超遠心分離した上清をラットAR画分(以下ARFという)とした。
結合試験:H−テストステロン(以下H−Tという)をET緩衝液で希釈調製し、ジヒドロテストステロン(DHT)はH−T(2.5nM)の最高濃度の400倍濃度(最終濃度1μM)となるように調製した。H−T調製液を、DHT添加、無添加および各濃度の試験化合物を添加した1.5mlチューブに加え、さらに200μgARFを加えて最終容量を100μlとした。4℃で2時間インキュベート後、0.05%デキストランT70−1.0%活性炭素溶液300μlを加えて、氷中でさらに15分間インキュベートして未結合のH−Tを吸着除去した。4℃、2,500rpm、5分間遠心分離後、その上清275μlを液体シンチレーションバイアルに採り、クリアゾル2mlを加え撹拌、静置後、液体シンチレーションカウンターでH放射活性を測定した。
相対的結合阻害率の算出:以下の式から本発明化合物の結合阻害率(%)を算出し、その濃度−結合阻害曲線のプロビット(probit)解析により50%阻害濃度(IC50)を算出した。
結合阻害率(%)=100×[1−(a−c)/(b−c)]
a:本発明化合物添加サンプルの放射活性(H−T+化合物)
b:本発明化合物無添加サンプルの放射活性(H−Tのみ:総結合量)
c:DHT添加サンプルの放射活性(H−T+DHT:非特異的結合量)
抗アンドロゲン剤であるビカルタミドの結合阻害率を100とした相対的結合阻害率(RBA:Relative Binding Affinity)は以下の式より求めた(Endocrinology 138,863−870,1997)。
RBA=100×(ビカルタミドのIC50)/(本発明化合物のIC50
上記より求めた本発明化合物のRBAを表3に示す。

この結果、本発明化合物は非常に強い結合阻害活性を示した。
[試験例2]精巣摘出(ORX)ラットでの前立腺、大腿骨骨密度及び肛門挙筋に対する効果
12週齢雄SDラットを精巣摘出後、翌日より実施例1の化合物(30mg/kg)およびDHT(10mg/kg)を1日1回週5日で4週間連続皮下投与した。実施例化合物およびDHTはジメチルスルホキシドに溶解後、オリーブ油で10倍希釈して、各濃度の溶液を調製し試験に用いた。ORX対照群には、ジメチルスルホキシドをオリーブ油で10倍希釈したものを試験に用いた。精巣摘出せず、開腹手術して閉じたものを偽手術対照群として用いた。最終投与日の翌日に、腹側前立腺および肛門挙筋の湿重量の測定と右大腿骨骨密度のDEXA法(二重エネルギーX線吸収法)による測定を行い、実施例1の化合物のin vivoでの効果を評価した。結果を表4及び図1〜3に示す。

実施例1の化合物は有意な大腿骨骨密度、肛門挙筋重量の増加効果を示した。このとき、前立腺重量は偽手術対照群の約74%であった。
一方DHTは、10mg/kgで有意な大腿骨骨密度増加及び有意な肛門挙筋重量の増加が認められたが、前立腺重量は偽手術対照群の約175%に腫脹した。
これらの結果から実施例1の化合物は、前立腺に対しては天然アンドロゲンに見られるような過剰作用を示さないこと、また、特に骨組織及び筋肉組織に強い増殖作用を示す化合物であることが明らかとなった。
[試験例3]精巣摘出(ORX)ラットでの前立腺、大腿骨骨密度及び肛門挙筋に対する効果
12週齢雄SDラットを精巣摘出後、翌日より実施例8および23の化合物(30mg/kg)およびDHT(10mg/kg)を1日1回週5日で4週間連続皮下投与した。実施例化合物およびDHTはジメチルスルホキシドに溶解後、オリーブ油で10倍希釈して、各濃度の溶液を調製し試験に用いた。ORX対照群には、ジメチルスルホキシドをオリーブ油で10倍希釈したものを試験に用いた。精巣摘出せず、開腹手術して閉じたものを偽手術対照群として用いた。最終投与日の翌日に、腹側前立腺および肛門挙筋の湿重量の測定と右大腿骨骨密度のDEXA法(二重エネルギーX線吸収法)による測定を行い、実施例8および23の化合物のin vivoでの効果を評価した。
結果を表5及び図4〜6に示す。

実施例8の化合物は有意な大腿骨骨密度、肛門挙筋重量の増加効果を示した。このとき、前立腺重量は偽手術対照群の約50%であった。また、実施例23の化合物も有意な大腿骨骨密度、肛門挙筋重量の増加効果を示した。このとき、前立腺重量は偽手術対照群の約90%であった。
一方DHTは、10mg/kgで有意な大腿骨骨密度増加及び有意な肛門挙筋重量の増加が認められたが、前立腺重量は偽手術対照群の約130%に腫脹した。
これらの結果から実施例8および23の化合物は、前立腺に対しては天然アンドロゲンに見られるような過剰作用を示さないこと、また、特に骨組織及び筋肉組織に強い増殖作用を示す化合物であることが明らかとなった。
[試験例4]精巣摘出(ORX)ラットでの経口投与による前立腺、大腿骨骨密度および肛門挙筋に対する効果
12週齢雄性SD系ラットを精巣摘出し、翌日より実施例16の化合物(30mg/5ml/kg)を1日2回週7日で4週間連続経口投与した。試験化合物は0.5%メチルセルロース溶液を溶媒として懸濁し、試験に用いた。ORX対照群には、0.5%メチルセルロース溶液(5ml/kg)を投与した。精巣摘出せず、開腹手術して閉じたものを偽手術対照群として用いた。最終投与日の翌日に、腹側前立腺および肛門挙筋の湿重量の測定と右大腿骨骨密度のDEXA法(二重エネルギーX線吸収法)による測定を行い、実施例16の化合物のin vivoでの効果を評価した。結果を表6及び図7〜9に示す。

実施例16の化合物はORXラットの大腿骨骨密度、及び肛門挙筋重量を有意に増加させ、偽手術対照群と同等まで回復させた。一方、実施例16の化合物を投与したラットの前立腺重量は偽手術対照群の約90%を示した。
これらの結果から実施例16の化合物は、経口投与において前立腺に対しては過剰作用を示さず、また、特に骨組織及び筋肉組織に強い増殖作用を示すことがわかった。
現在研究開発されている非ステロイド性ARアゴニストは、経口投与した場合体内吸収が悪く、静脈または筋肉注射剤として適用されているが、注射剤として適用される場合、苦痛や通院などにより患者に負担をきたすため、実施例16の化合物は、患者に負担なく経口投与できる点で優れている。
以下に本発明化合物の製剤例を示すが、処方はこれらに限定されるものではない。
[製剤例1]錠剤
下記の処方にしたがって、1錠あたり有効成分2mgを含有する錠剤を調製した。
実施例1の化合物 2mg
澱粉 48mg
乳糖 30mg
結晶セルロース 15mg
メチルセルロース 3mg
ステアリン酸マグネシウム 2mg
全量 100mg
[製剤例2]カプセル剤
下記の処方にしたがって、1錠あたり有効成分2mgを含有する100mgの混合成分をカプセルに充填してカプセル剤を調製した。
実施例1の化合物 2mg
澱粉 38mg
乳糖 50mg
結晶セルロース 8mg
ステアリン酸マグネシウム 2mg
全量 100mg
【産業上の利用可能性】
本発明のテトラヒドロキノリン誘導体およびそれを有効成分とする医薬は、アンドロゲンステロイド製剤に見られる前立腺に対する過剰な作用を示さず、ARアゴニスト作用を示すことができる。また、骨組織、骨格筋組織に特に強いARアゴニスト作用を示すことができる。従って、本発明化合物は、種々のARアゴニスト作用が有効と考えられる疾患の予防および治療を行うことができ、性腺機能低下症の予防、治療においては、前立腺に対する作用が適度であり、また副作用がより少ないものとして適用でき、また骨粗鬆症、消耗性疾患の予防、治療においては、骨組織、骨格筋組織などの標的組織に対して強い作用が期待できる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)

式中、Rはニトロ基またはシアノ基を表し、
iは0または1を表し、
Xは炭素数1〜6のアルキル基及び炭素数3〜7のシクロアルキル基からなる群から選択される置換基で置換されていてもよい炭素数1〜5のアルキレン基を表し、
Yは−NRCO−、−NRSO−、−NRCONH−または−NRCSNH−(式中、Rは水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜7のシクロアルキル基または炭素数7〜9のアラルキル基を表す)を表し、
は独立した1〜3個のRで置換されていてもよいフェニル基若しくは独立した1〜3個のR4’で置換されていてもよいヘテロアリール基
[式中、R及びR4’は、各々独立して、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、−A−R5A{式中、Aは、−CO−、−CO−、−CONR−、−O−、−OCO−、−NR−、−NRCO−、−NRSO−、−NRCONH−、−NRCSNH−または−NRCOO−を表し(式中、Rは独立して前記Rと同じ意味を表す)、R5Aは、水素原子、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基または炭素数3〜7のシクロアルキル基を表す}または−B−(CH−R5B{式中、Bは単結合、−CO−、−CO−、−CONR6’−、−O−、−OCO−、−NR6’−、−NR6’CO−、−NR6’SO−、−NR6’CONH−、−NR6’CSNH−または−NR6’COO−を表し(式中、R6’は独立して前記Rと同じ意味を表す)、nは1または2の整数を表す、R5Bは、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜7のシクロアルキル基、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、炭素数1〜5のアルコキシ基または−NR7’8’(式中、R7’およびR8’はそれぞれ独立して前記Rと同じ意味を表す)を表す}を表す]、または−C≡C−R{式中、Rは水素原子、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜7のシクロアルキル基、R10で置換されていてもよいアリール基(式中、R10はフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基またはハロゲン原子を表す)を表す}
で示されるテトラヒドロキノリン誘導体またはその薬理学的に許容される塩。
【請求項2】
iが0であり、Xが−C(CH−CH−であり、Yが−NHCO−または−NHCONH−であり、Rが独立した1〜3個のRで置換されていてもよいフェニル基若しくは独立した1〜3個のR4’で置換されていてもよいヘテロアリール基
[式中、R及びR4’は、各々独立して、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン原子、−A−R5A{式中、Aは、−CO−、−O−、−OCO−、−NR−、−NRCO−または−NR6’CONH−を表し(式中、Rは、水素原子またはメチル基を表す)、R5Aは、水素原子、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基または炭素数3〜7のシクロアルキル基を表す}または−B−(CH−R5B{式中、Bは−CO−、−O−、−OCO−、−NR6’−、−NR6’CO−または−NR6’CONH−を表し(式中、R6’は、水素原子またはメチル基を表す)、nは1または2の整数を表す、R5Bは、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜7のシクロアルキル基または炭素数1〜5のアルコキシ基を表す}を表す]である、請求項1に記載のテトラヒドロキノリン誘導体またはその薬理学的に許容される塩。
【請求項3】
iが0であり、Xが−C(CH−CH−であり、Yが−NHCO−であり、Rが独立した1〜3個のRで置換されていてもよいフェニル基若しくは独立した1〜3個のR4’で置換されていてもよいヘテロアリール基
[式中、R及びR4’は、各々独立して、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン原子、−A−R5A{式中、Aは、−CO−、−O−、−OCO−、−NH−、−NHCO−または−NHCONH−を表し、Rは、水素原子、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基または炭素数3〜7のシクロアルキル基を表す}または−B−(CH−R5B{式中、Bは−CO−、−O−、−OCO−、−NH−、−NHCO−または−NHCONH−を表し、nは1または2の整数を表し、R5Bは、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜7のシクロアルキル基または炭素数1〜5のアルコキシ基を表す}を表す]である、請求項1に記載のテトラヒドロキノリン誘導体またはその薬理学的に許容される塩。
【請求項4】
iが0であり、Xが−C(CH−CH−であり、Yが−NHCO−であり、Rが独立した1〜3個のR4’で置換されていてもよいヘテロアリール基{式中、R4’は、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン原子、−A−R5A(式中、Aは−O−または−NHCO−を表し、R5Aは、水素原子またはフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基を表す)または−B−CH−R5B(式中、Bは−O−または−NHCO−を表し、R5Bは、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基または炭素数1〜5のアルコキシ基を表す)を表す}である、請求項1に記載のテトラヒドロキノリン誘導体またはその薬理学的に許容される塩。
【請求項5】
が4位に置換基Rを有するフェニル基若しくは4位に置換基R4’を有する6員ヘテロアリール基[式中、R及びR4’は、各々独立して、ハロゲン原子、−O−R5Aまたは−NHCO−R5A(式中,R5Aは、水素原子またはフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基を表す)である]である、請求項3に記載のテトラヒドロキノリン誘導体またはその薬理学的に許容される塩。
【請求項6】
が4位に置換基Rを有するフェニル基若しくは4位に置換基R4’を有する6員ヘテロアリール基[式中、R及びR4’は、各々独立して、−NHCO−R5A(式中,R5Aは、水素原子またはフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基を表す)である]である、請求項3に記載のテトラヒドロキノリン誘導体またはその薬理学的に許容される塩。
【請求項7】
iが0であり、Xが−C(CH−CH−であり、Yが−NHCO−であり、Rが−C≡C−R{式中、Rはフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基またはR10で置換されていてもよいアリール基(式中、R10はフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基またはハロゲン原子を表す)を表す}である、請求項1に記載のテトラヒドロキノリン誘導体またはその薬理学的に許容される塩。
【請求項8】
がフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基またはフェニル基である、請求項7に記載のテトラヒドロキノリン誘導体またはその薬理学的に許容される塩。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のテトラヒドロキノリン誘導体またはその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する医薬。
【請求項10】
アンドロゲン受容体アゴニストである請求項9に記載の医薬。
【請求項11】
骨粗鬆症または消粍性疾患の予防または治療に用いることができる請求項10に記載の医薬。
【請求項12】
男子性腺機能低下症、男子性機能障害、性分化異常症、男性思春期遅発症、女性性器癌、乳癌、乳腺症、子宮内膜症および女性性機能障害からなる群から選択される疾患の予防または治療に用いることができる請求項10に記載の医薬。
【請求項13】
造血機能障害及びその関連疾患の予防または治療に用いることができる請求項10に記載の医薬。
【請求項14】
消粍性疾患または骨粗鬆症を予防または治療する方法であって、そのような予防又は治療を必要とする哺乳動物に、そのような疾患の予防又は治療に有効な量の請求項1〜8のいずれか1項に記載のテトラヒドロキノリン誘導体またはその薬理学的に許容される塩を投与することを含む方法。
【請求項15】
男子性腺機能低下症、男子性機能障害、性分化異常症、男性思春期遅発症、女性性器癌、乳癌、乳腺症、子宮内膜症および女性性機能障害からなる群から選択される疾患を予防または治療する方法であって、そのような予防又は治療を必要とする哺乳動物に、そのような疾患の予防又は治療に有効な量の請求項1〜8のいずれか1項に記載のテトラヒドロキノリン誘導体またはその薬理学的に許容される塩を投与することを含む方法。
【請求項16】
造血機能障害及びその関連疾患を予防または治療する方法であって、そのような予防又は治療を必要とする哺乳動物に、そのような疾患の予防又は治療に有効な量の請求項1〜8のいずれか1項に記載のテトラヒドロキノリン誘導体またはその薬理学的に許容される塩を投与することを含む方法。

【国際公開番号】WO2004/013104
【国際公開日】平成16年2月12日(2004.2.12)
【発行日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−525820(P2004−525820)
【国際出願番号】PCT/JP2003/009815
【国際出願日】平成15年8月1日(2003.8.1)
【出願人】(000124269)科研製薬株式会社 (18)
【Fターム(参考)】