説明

新規ヘビ毒素

本発明は、ヘビの毒素の分野に関するものであり、本発明は新規なヘビの毒素のタンパク質およびそれをコードする核酸を提供する。また、新規なヘビの毒素の発見に基づく、様々な使用方法および組成物も提供する。ここでは鎮静剤として使用される薬品の製造において、発明の新規なタンパク質、核酸分子、ベクターまたはホスト細胞の使用を提供する。更に、神経系または筋肉系の疾患治療に使用される医薬品の製造において、発明の新規なタンパク質、核酸分子、ベクターまたはホスト細胞の使用を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はヘビ毒の分野に関するものであり、発明は新規ヘビ毒素タンパク質およびそれをコードする核酸を提供する。また新規ヘビ毒素の発見に基づいた様々な方法および組成物も提供する。
【背景技術】
【0002】
ヘビ毒は、酵素および非酵素タンパク質を含む生物活性化合物、ならびにペプチド、脂質、核酸、炭水化物、およびアミンを含む低分子成分の複合混合物である(1〜2)。毒液タンパク質は、一般的には複数の適用的な役割を果たしている:被食者の不動化、麻痺、殺滅、および消化(3)。従ってヘビ毒は、攻撃および防御両方の目的に役立つ(4)。過去40年にわたって非常に多くの毒素タンパク質がヘビの毒液から単離され特徴付けられてきた(5)。しかしながらこれらの毒素タンパク質は極めて少数の構造学的スーパーファミリーのタンパク質に属している(6)。スーパーファミリーのメンバーは、類似した分子骨格を共有しているが、時に異なる生物学的機能を示す。
【0003】
ヘビ毒に見出される主要な酵素群としては、ホスホリパーゼ、セリンプロテイナーゼ、メタロプロテイナーゼ、ホスホジエステラーゼ、アセチルコリンエステラーゼ、L−アミノ酸オキシダーゼ、およびヌクレアーゼが挙げられる(2、7)。一般的に、毒液内の酵素は13,000Da〜150,000Daの範囲の分子量を有する。これらの多くは加水分解酵素であり、消化的な役割を持っている。一方1000を超える非酵素毒液タンパク質の特徴が調べられており、それらはスリーフィンガー毒素、セリンプロテイナーゼインヒビター、レクチン、サラファトキシン、神経成長因子、心房性ナトリウム利尿ペプチド、ブラジキニン−増強ペプチド、ヘルベプリン(helveprins)/CRISPタンパク質、ジスインテグリン、およびワプリン(waprin)にグループ分けされている(6〜9)。非酵素ポリペプチド毒素は、約1,000Daから25,000Daの分子量を有し、ジスルフィド結合に富んでいる。それゆえにそれらは頑丈であり、ひとたび単離されると比較的安定である。低分子化合物は、1,500Da未満の分子量を有する。それらは生物学的には低活性であり、酵素の補助因子と推定されている(2)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【課題を解決するための手段】
【0004】
我々は、Ophiophagus bannah(キングコブラ)毒由来の新規タンパク質オハニン(Ohanin)を同定、精製し、且つ完全なアミノ酸配列を決定した。それは107アミノ酸残基を含む、ESI質量分析法で見積もった時に分子量11951.47±0.67Daの小型のタンパク質である。それはいかなる既知のヘビ毒タンパク質のファミリーとも類似性を示さず、従って新規のヘビ毒タンパク質ファミリーの最初のメンバーである。それはRRYおよびSPRYドメイン(リアノジン受容体およびDictyostelium discoideumにおける機能の分からないドメイン)ならびにB30.2ドメインと類似性を示す。それは腹腔内投与した時、10mg/kgの用量まで非致死性である。1mg/kgおよび10mg/kgの用量のオハニンが投与されたマウスは、動きが怠慢となり静かになった。これをうけて、赤外線センサーを用いてマウスの運動活性に対するその効果を調べた。オハニンは統計的有意且つ用量依存的な運動低下をマウスに起こした。ホットプレートアッセイでは、用量依存的は疼痛過敏作用を示した。
【0005】
このタンパク質の反応誘発能力が腹腔内投与時に比べ脳室内注射時に、運動実験およびホットプレート実験の両方で大きく低下したことはオハニンが中枢神経系に働くことを強く示唆している。それはi.p.(腹腔内)投与時に比べi.c.v.(脳室内投与)投与時に6,500倍強力であった。毒液に含まれるこのタンパク質の元々の量は少ない(〜1mg/g)ため、合成遺伝子が構築され、発現された。大腸菌の不溶性分画中に得られた組換え体タンパク質は、変性条件で精製されて折りたたみ直された。組換え体オハニンは、円偏光二色性およびホットプレートアッセイで決定したとき、構造的にも機能的にも未変性タンパク質に類似しており、今後の構造−機能相関研究にとってそれが有益であることが示唆された。
【0006】
この新規タンパク質を更に特徴付けるために、我々はオハニンをコードするcDNAの配列を決定した。興味深いことに、そのcDNAはB30.2類似ドメイン含有タンパク質ファミリーを含め、GenBankデータベース内の既知配列のいずれとも有意な配列類似性を示さなかった。その5’−非翻訳領域が異なる2種類のmRNAサブタイプが存在することが見出された。完全長のcDNA配列はポリAテールを除いて長さ1558bpであった。それは20残基のシグナルペプチド、それに続く107残基の成熟オハニン、および成熟タンパク質のC末端領域にある63残基のプロペプチド断片を有している。オハニンは、プロペプチド領域にまで至る完全なSPRYドメインを有する。この新規タンパク質ファミリーはベスプリン(vespryn)(毒液PRY−SPRYドメイン含有タンパク質)と名付けられた。しかしながら、比較的長いN末端セグメントを持つ、その他全てのB30.2類似ドメイン含有タンパク質ファミリーとは異なり、オハニンはそのPRY−SPRYドメインの前に8個の残基しか持っていない。
【0007】
プロ−オハニンは大腸菌の中でN末端にヘキサヒスチジンのタグが付いた可溶性の融合タンパク質として発現された。オハニンと同様に、組換え体プロ−オハニンについても、マウスにおけるその生物学的機能が調べられた。移動活動およびホットプレートアッセイの両分析からは、プロ−オハニンは成熟オハニンと比較したとき腹腔内投与を受けたマウスでは同様の薬理作用を示さないことが強く示唆されたことに注目すべきである。しかしプロ−オハニンは、マウス脳室内に直接注射された時には強力な移動低下作用および感覚過敏作用を示した。プロ−タンパク質の大きなサイズおよび/または立体構造の変化が、プロ−オハニンの血液脳関門の通過を阻止し、結果として中枢神経系での標的分子との相互作用を妨げたのだろう。興味深いことにプロペプチドセグメントの存在は、オハニンの血液脳関門通過能力を阻害するが、それは中枢神経系での薬理作用を高める。プロ−オハニンはi.c.v経路から注射された時、オハニンに比べ〜35倍強力である。さらには、0.3μg/kgのプロ−オハニンは、実験マウスの移動活動を〜90%阻止できる。
【0008】
我々はまたオハニン遺伝子のゲノム構造についても研究した。サザンハイブリダイゼーションは、オハニンがキングコブラゲノム内の単一遺伝子によってコードされていることを示した。ゲノムDNA配列の分析は、オハニン遺伝子が7086bpであること;および5個のエクソンと4個のイントロンを持つことを示している。観察された2種類のmRNAは、ヘビ毒遺伝子が異なるスプライシングを受けて作られる。オハニンとその他B30.2類似ドメイン含有タンパク質との間でゲノム構造が類似していることは、これらタンパク質のB30.2類似ドメインが共通の祖先から進化し、毒腺での機能に適応したことを示している。
【0009】
これは、実験マウスに移動低下および疼痛過敏を誘導することが最初に報告されたヘビ毒タンパク質である。オハニンは、新規薬理作用物質または研究用ツールのプロトタイプの開発において有益であると考えられている。
【0010】
従って、発明の第1の側面は次のものを含む:
(a)配列番号1(シグナルペプチドを除くオハニンのアミノ酸配列)に記載のオハニンの成熟配列を含むタンパク質;
(b)配列番号3(オハニンおよびそのシグナルペプチドのアミノ酸配列)に記載のオハニンおよびそのシグナルペプチドの成熟配列を含むタンパク質;
(c)配列番号5(シグナルペプチドを除くプロ−オハニンのアミノ酸配列)に記載のプロ−オハニンのアミノ酸配列を含むタンパク質;ならびに
(d)配列番号7(シグナルペプチドを含むプロ−オハニンのアミノ酸配列)に記載のプロ−オハニンおよびそのシグナルペプチドのアミノ酸配列を含むタンパク質。
【0011】
典型的には、発明の第1側面のタンパク質は、対立遺伝子変異体のような天然の生物学的変異体を含む。また単一もしくは複数のアミノ酸置換、付加、挿入、および/または欠失、ならびに/あるいは化学修飾されたアミノ酸置換を含む機能的均等物も含まれるが、ここで言う「機能的均等物」とは:(i)移動低下または疼痛過敏の少なくとも一方を誘導するタンパク質の能力を保持しているタンパク質;または(ii)タンパク質と共通の抗原決定基を持つタンパク質を意味する。また活性断片も含むが、ここで言う「活性断片」とは:(i)移動低下または疼痛過敏の少なくとも一方を誘導するタンパク質の能力を保持しているか、または(ii)タンパク質と共通の抗原決定基を持つ切断されたタンパク質を意味する。また、タンパク質が、例えば生物活性、放射活性、酵素、もしくは蛍光でよい標識物、または抗体のようなペプチドまたはその他タンパク質と融合している融合タンパク質も含まれる。
【0012】
不確かさを回避するために、発明の第1側面は:天然の生物学的変異体の機能的均等物;天然の生物学的変異体および機能的均等物の活性断片;ならびに天然の生物学的変異体、機能的均等物、および活性断片を含む融合タンパク質を含む。
【0013】
発明の第2の側面は、発明の第1側面のタンパク質をコードする核酸分子を提供する。
【0014】
発明の第3の側面は、発明の第2側面の核酸分子を含有する、発現ベクターのようなベクターを提供する。
【0015】
発明の第4の側面は、発明の第3側面のベクターを用いて形質転換した宿主細胞を提供する。
【0016】
発明の第5の側面は、発明の第1側面のタンパク質を産生する方法であって、発明の第4側面の宿主細胞を発明の第1側面のタンパク質の発現に好適な条件の下で培養することを含む方法を提供する。この発明の第5側面の方法は、タンパク質を精製することを更に含んでもよい。
【0017】
発明の第6の側面は、発明の第1側面のタンパク質を産生する方法であって、例えば固相ペプチド合成またはコンビナトリアルケミストリーによるタンパク質の化学的合成を含む方法を提供する。
【0018】
発明の第7の側面は、発明の第1側面のタンパク質に結合できる抗体を作製する方法を提供する。
【0019】
発明の第8の側面は、発明の第1側面のタンパク質に結合できる抗体を提供する。
【0020】
発明の第9の側面は、発明の第1側面のタンパク質に対する抗毒素を産生する方法であって、発明の第1側面のタンパク質で動物を免疫すること、および動物から抗毒素として使用するために抗体を回収することを含む方法を提供する。
【0021】
発明の第10の側面は、発明の第1側面のタンパク質に対し有効な抗毒素を提供することである。望ましくは、抗毒素は発明の第9側面に従って産生される。
【0022】
発明の第11の側面は、発明の第1側面のポリペプチドの調整因子(例えばアゴニストまたはアンタゴニスト)化合物を同定するための方法を提供する。
【0023】
発明の第12の側面は、発明の第1側面のタンパク質、発明の第2側面の核酸分子、発明の第3側面のベクター、発明の第4側面の宿主細胞、発明の第8側面の抗体、発明の第10側面の抗毒素、または発明の第11側面で同定された調整因子(例えばアゴニストもしくはアンタゴニスト)を含む医薬組成物を提供する。
【0024】
発明の第13の側面は医薬品で使用するための、発明の第1側面のタンパク質、発明の第2側面の核酸分子、発明の第3側面のベクター、発明の第4側面の宿主細胞、発明の第8側面の抗体、発明の第10側面の抗毒素、または発明の第11側面で同定された調整因子(例えばアゴニストもしくはアンタゴニスト)を提供する。
【0025】
発明の第14の側面は、鎮静剤として使用される医薬品製造における、発明の第1側面のタンパク質、発明の第2側面の核酸分子、発明の第3側面のベクター、または発明の第4側面の宿主細胞の使用を提供する。
【0026】
発明の第15の側面は、神経系または筋肉系の疾患治療に使用される医薬品製造における、第1の側面のタンパク質、発明の第2側面の核酸分子、発明の第3側面のベクター、または発明の第4側面の宿主細胞を提供する
【0027】
発明の第16の側面は、発明の第1側面のタンパク質、発明の第2側面の核酸分子、発明の第3側面のベクター、発明の第4側面の宿主細胞、または発明の第12側面の医薬組成物を動物に投与することを含む、動物を鎮静化する方法を提供する。
【0028】
発明の第17の側面は、発明の第1側面のタンパク質、発明の第2側面の核酸分子、発明の第3側面のベクター、発明の第4側面の宿主細胞、または発明の第12側面の医薬組成物を、神経系または筋肉系の疾患を持つ患者に投与することを含む、患者を治療する方法を提供する。
【0029】
発明の第18の側面は、発明の第1側面のタンパク質を含む防御用組成物を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
発明の第1側面は次のものを含む:
(a)配列番号1(シグナルペプチドを除くオハニンのアミノ酸配列)に記載のオハニンの成熟配列を含むタンパク質;
(b)配列番号3(オハニンのアミノ酸配列およびそのシグナルペプチド)に記載のオハニンの成熟配列およびそのシグナルペプチドを含むタンパク質;
(c)配列番号5(シグナルペプチドを除くプロ−オハニンのアミノ酸配列)に記載のプロ−オハニンのアミノ酸配列を含むタンパク質;
(d)配列番号7(シグナルペプチドを含むプロ−オハニンのアミノ酸配列)に記載のプロ−オハニンのアミノ酸配列およびそのシグナルペプチドを含むタンパク質。
【0031】
発明の第1側面のタンパク質は、対立遺伝子変異体のような天然の生物学的変異体を含む。また単一または複数のアミノ酸置換、付加、挿入、および/または欠失、ならびに/あるいは化学修飾されたアミノ酸の置換を含む機能的等価物も含まれるが、ここでいう「機能的等価物」とは:(i)移動低下または疼痛過敏の少なくとも一方を誘導するタンパク質の能力を保持するか、または(ii)タンパク質と共通の抗原決定基を有しているタンパク質を意味する。また活性断片も含まれるが、ここでいう「活性断片」とは:移動低下または疼痛過敏の少なくとも一方を誘導するタンパク質の能力を保持するか、または(ii)タンパク質と共通の抗原決定基を有している、切断されたタンパク質を意味する。また発明のタンパク質が、例えば、生物活性、放射活性、酵素性もしくは蛍光性である標識物、または抗体のようなペプチドまたはその他タンパク質と融合している融合タンパク質も含まれる。
【0032】
不確かさを回避するために、発明の第1側面は:天然の生物学的変異体の機能的均等物;天然の生物学的変異体および機能的均等物の活性断片;ならびに天然の生物学的変異体、機能的均等物、および活性断片を含む融合タンパク質を含む。
【0033】
用語「ポリペプチド」および「タンパク質」は互換的に用いられ、天然または合成により作られたかにかかわらず、ペプチド結合または修飾されたペプチド結合を介して連結されたアミノ酸の任意のポリマー(ジペプチド以上の大きさ)を指す。約10〜20アミノ酸残基未満のポリペプチドは、一般的には「ペプチド」と呼ばれる。
【0034】
発明のタンパク質は、炭水化物群のような非ペプチド成分を含むこともできる。炭水化物およびその他の非ペプチド成分は、タンパク質を産生する細胞によって付加することができ、それは細胞のタイプによって異なるだろう。タンパク質は、ここではそのアミノ酸主鎖構造に関して定義されている;炭水化物群のような成分は一般的には明示されていないが、しかし存在していることもある。しかし未変性オハニンは翻訳後修飾を受けないと信じられていることから、発明の第1側面のタンパク質は、糖化またはジスルフィド結合のような翻訳後修飾を含まないことが望ましい。しかしながら、当然発明の第1側面のタンパク質がプロ−タンパク質として発現される場合には、タンパク質はプロセッシングを受けて成熟型になる。それ故に、発明の第1側面の成熟タンパク質または発明の第1側面のタンパク質は、それらの成熟型にプロセッシングされる場合、糖化またはジスルフィド結合のような翻訳後修飾を含まないことが望ましい。
【0035】
ここで用いられる用語「含む」および文法的なその変形は、「含む(備える)」または「成る(構成される)」を意味する。従って、例えばXを「含む」組成物は、Xだけから成っても、または1つ以上の追加の成分を含んでもよい。同様に、ある配列を含むポリペプチドまたは核酸分子は、示した配列だけから成っても、1以上の追加の成分を含んでもよい。
【0036】
発明の第1側面の一つの態様では、配列番号1に記載されている成熟オハニンアミノ酸配列を含むポリペプチドが提供される。配列番号1は、107個のアミノ酸から成り、図3に示されている。一つの態様では、配列番号1に記載されている成熟オハニンアミノ酸配列から成るポリペプチドが提供される。
【0037】
発明の第1側面の別の態様では、配列番号3に記載されているアミノ酸配列を含むポリペプチドが提供される。配列番号3は、オハニンの成熟配列(即ち配列番号1の107アミノ酸)と先行するその20個のアミノ酸シグナルペプチド配列から成る。シグナルペプチド配列は図9の下線が付けられた配列である。一つの態様では、配列番号3に記載されているアミノ酸配列から成るポリペプチドが提供される。
【0038】
発明の第1側面の別の態様では、配列番号5に記載されているアミノ酸配列を含むポリペプチドが提供される。配列番号5は、プロ−オハニン配列、即ち配列番号1の107個のアミノ酸および63個のアミノ酸のC末端プロ配列である。一つの態様では、配列番号5に記載されているアミノ酸配列から成るポリペプチドが提供される。
【0039】
発明の第1側面の別の態様では、配列番号7に記載されているアミノ酸配列を含むポリペプチドが提供される。配列番号7は20個のアミノ酸のシグナルペプチド配列が先行するプロ−オハニン配列であり、即ち配列番号7は図3の107個のアミノ酸配列、および63個のC末端プロ配列、およびシグナル配列から成る。配列番号7は図9に示す。一つの態様では、配列番号7に記載されているアミノ酸配列から成るポリペプチドが提供される。
【0040】
発明の一つの態様では、発明のタンパク質、特に配列番号1、3、5、または7に記載されているタンパク質の天然の生物学的変異体が提供される。天然の生物学的変異体は、そこからポリペプチドが導出される種内に存在する対立遺伝子変異体を含む。このような変異体は、1個以上のアミノ酸残基が保存的または非保存的アミノ酸残基(保存的アミノ酸残基が望ましい)で置換されたポリペプチドを含んでよい。典型的にはこのような置換はAla、Val、Leu、とIleとの間;SerとThrの間;酸性残基AspとGluの間;AsnとGlnの間;塩基性残基LysとArgの間;または芳香族残基PheとTyrの間である。
【0041】
特に好ましいのは、複数、即ち5〜10個、1〜5個、1〜3個、1〜2個、またはちょうど1個のアミノ酸が、任意の組み合わせにより置換、欠失、または付加されている天然の変異体である。特に好ましいものはタンパク質の性質および活性を変えないサイレントな置換、付加、および欠失である。これに関しては保存的置換も特に好ましい。「突然変異体」ポリペプチドは、1個以上のアミノ酸残基が置換基を含むポリペプチドも含む。
【0042】
発明の第1側面の更なる態様は、野生型タンパク質の配列からの単一または複数のアミノ酸置換、付加、挿入、および/または欠失、ならびに/あるいは化学修飾されたアミノ酸を含む発明のタンパク質(特に配列番号1、3、5、または7、およびその天然の生物学的変異体)の機能的均等物を提供するが、ここでいう「機能的均等物」とは:(i)移動低下または疼痛過敏の少なくとも一方を誘導するタンパク質の能力を保持しているタンパク質;または(ii)タンパク質と共通の抗原決定基を持つタンパク質を意味する。
【0043】
移動低下または疼痛過敏を誘導するタンパク質の能力について言及する場合でタンパク質が不活性なプロ−タンパク質の場合(少なくとも腹腔内投与したとき)は、移動低下および疼痛過敏を誘導するその能力についての言及は、もちろんその成熟(活性)型に処理された時、またはi.c.v.投与された時のそれらの誘導能力についてのものである。
【0044】
移動低下または疼痛過敏を誘導するタンパク質の能力を決定する方法は当技術分野では既知である。また、移動低下または疼痛過敏を誘導するタンパク質の能力を決定する方法は、実施例の節に記載されている。実施例の節に記載されている方法は、移動低下または疼痛過敏を誘導するタンパク質の能力の決定に好適に用いることができる。
【0045】
好ましくは、発明の第1側面のタンパク質は、オハニンの移動低下誘導効力の少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%を保持する。オハニン(配列番号1)の移動低下誘導能力と比較したタンパク質の移動低下誘導能力は、本明細書の実施例の節に記載されている方法を用いて、移動に対するタンパク質の作用を比較することで評価できる。タンパク質の作用は、それらが共にi.p.またはi.c.v.投与された時に比較できる。比較は、タンパク質が例えば0.1mg/kg、1mg/kg、および10mg/kgの用量でi.p,投与された時に実施できる。比較はまた、タンパク質を0.3μg/kg、1μg/kg、または10μg/kgの用量でi.c.v.投与された時に比較できる。
【0046】
一つの態様では、発明の第1側面のタンパク質は、オハニンの疼痛過敏誘導効力の少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%を保持するが、他所に記されているように、特定の態様では、タンパク質にとって疼痛過敏誘導能力を低下または無くすことが都合よいこともある。オハニン(配列番号1)の疼痛過敏誘導能力と比較したタンパク質の疼痛過敏誘導能力は、本明細書の実施例の節に記載されている方法を用いて、熱痛の痛覚に対するタンパク質の作用を比較することで評価できる。タンパク質の作用は、それらが共にi.p.またはi.c.v.投与された時に比較できる。比較は、タンパク質が例えば0.1mg/kg、1mg/kg、および10mg/kgの用量でi.p,投与された時に実施できる。比較はまた、タンパク質を0.3μg/kg、1μg/kg、または10μg/kgの用量でi.c.v.投与された時に比較できる。
【0047】
発明のこの側面による機能的に均等であるポリペプチドは、発明のポリペプチドに相同であるポリペプチドであってよい。好ましくは、発明のこの側面による機能的に均等であるポリペプチドは、配列が配列番号1、3、5、または7の様な、ここに明示的に引用されているポリペプチドに相同であるポリペプチドであってよい。
【0048】
2つのポリペプチドは、一方のポリペプチドの配列がもう一方のポリペプチドの配列と十分高い程度の同一性または類似性を有する時、「相同」であると言われる。「同一性」とは、アラインメントをとった配列の特定位置にあるアミノ酸残基が配列間で同一であることを表す。「類似性」とは、アラインメントをとった配列中の特定位置にあるアミノ酸残基が配列間で類似のタイプであることを表す。
【0049】
タンパク質の相同性を測る方法は当技術分野では周知であり、同業者は、この意味に関係して、相同性がアミノ酸同一性を下に計算される(「ハードホモロジー」と呼ばれることもある)ことを了解するだろう。例えばUWGCGパッケージは、それを用いて相同性が計算できるBESTFITプログラムを提供する(例えば初期設定で使用して)(Devereux et al(1984)Nucleic Acids Research 12、p387〜395)。PILEUPおよびBLASTアルゴリズムを用いて、例えばAltschul S.F.(1993)J Mol Evol 36:290〜300;Altschul S.F et al(1990)J Mol Biol 215:403に記載されているように相同性を計算し、または配列を並べることもできる(例えば初期設定で使用して)。BLAST分析を実施するためのソフトウエアは、インターネットを通して、ワールドワイドウェブ、例えば「www.ncbi,nlm.nih.gov/」上にあるNational Center for Biotechnology Informationから公的に入手できる。このアルゴリズムは最初に、データベース配列中の同じ長さのワードとアラインメントを取った時に、正の値を持つ閾値スコアTに一致するかまたは満たす問い合わせ配列中にある長さWの短いワードを同定することによって高いスコアを持つ配列のペア(HSP)を特定することを含む。Tは類似ワードスコア(neighbourhood word score)閾値(Altschul et al、上記)と呼ばれる。これら初期類似ワードスコア閾値を満たしたもの(ヒット)を種として探索を行い、それらを含むHSPを見つける。ワードヒットを各配列に沿って、累積されたアラインメントスコアが増加できる間、両方向に伸長していく。両鎖について伸長していく。BLASTアルゴリズムは、2つの配列間の類似性の統計学的分析を行う;例えばKarlin and Altschul(1993)Proc.Nad.Acad.Sci.USA 90:5873を参照。BLASTアルゴリズムが提供する類似性に関する一つの手段は、最小合計確率(P(N))であり、これは2つのヌクレオチドまたはアミノ酸配列の間の致が相互に置換される確率を明らかにする。
【0050】
典型的には、タンパク質の生物活性(疼痛過敏および移動低下の少なくとも一方を誘導する能力)が保持されているか、またはタンパク質が相手のタンパク質と共通の抗原決定基を持っている場合には、2つのタンパク質間の相同性が60%より高いことが機能的均等の指標と考えられている。好ましくは、発明のこの側面の機能的に均等なポリペプチドは、ポリペプチドまたはその断片と、60%を超える配列同一度を示す。より好ましきポリペプチドは、それぞれ70%、80%、90%、95%、98%、または99%を超える相同度を有する。
【0051】
発明の機能的に均等なポリペプチドは、それ故に突然変異体(アミノ酸置換、挿入、または欠損を含む突然変異体のような)を含むと解釈される。このような突然変異体は、その中の1以上のアミノ酸残基が保存的または非保存的なアミノ酸残基(好ましくは保存的アミノ酸残基)によって置換されているポリペプチドを含んでよく、またそのような置換アミノ酸残基は遺伝子コードによってコードされているものでも、されていないものでもよい。典型的には、このような置換はAla、Val、Leu、およびIleの間;SerとThrの間;酸性残基のAspとGluの間;AsnとGlnの間;塩基性残基のLysとArgの間;または芳香族残基のPheとTyrの間で起こる。
【0052】
特に好ましい変異体は、複数、即ち5〜10、1〜5、1〜3,1〜2個の間、またはちょうど1個のアミノ酸が、任意の組み合わせにより置換、欠失、または付加されているものである。特に好ましいものはタンパク質の性質および活性を変えないサイレントな置換、付加、および欠失である。これに関しては保存的置換も特に好ましい。「突然変異体」ポリペプチドは、1個以上のアミノ酸残基が置換基を含むポリペプチドも含む。
【0053】
改良された機能を持つ機能的均等物は、タンパク質配列中の特定残基の体系的または指向的突然変異を通じてもデザインできる。望ましいと思われる一つ改良は、ポリペプチドの疼痛過敏機能を低下または無効にするものであろう。これはポリペプチドを、その移動低下/沈静化を誘導する能力に関して用いる場合、または動物に投与して抗体を作らせる場合に望ましいだろう。
【0054】
発明の活性断片は、発明のポリペプチドに由来する、少なくともn個の連続するアミノ酸を含まねばならない。好適には、活性断片は、配列番号1、3、5、または7のポリペプチドに由来する、少なくともn個の連続するアミノ酸を含むだろう。nは、好ましくは7以上である(例えば8、10、12、14、16、18、20、50、100、150以上)。このような断片は「独立」したものでよく、即ち他のアミノ酸またはポリペプチドの一部でなくとも、またはこれに融合していなくともよく、あるいはそれが一部を、または領域を形成するより大きなポリペプチド内に含まれていてもよい。より大きなポリペプチド内に含まれる場合、発明の断片は単一の連続する領域を形成するのが最も好ましい。これに加えて複数の断片が単一のより大きなポリペプチドの中に含まれてもよい。
【0055】
発明の第1側面の一つの態様では、発明のタンパク質と共通な抗原決定基を持つ機能的均等物または活性断片が提供される。好ましくは、抗原決定基は、配列番号1、3、5、または7に記載のアミノ酸配列、あるいはその天然の変異体から成るポリペプチドと共有される。
【0056】
「抗原決定基」とは、特定の抗体と接触させる分子の断片(即ちエピトープ)を指す。「抗原決定基」またはエピトープは、通常は、アミノ酸または糖側鎖のような化学的に活性な表面分子のグループから成り、特異的な三次元構造の特徴および特異的電荷特性を有している。
【0057】
好ましくは、機能的均等物または活性断片は、配列番号1に記載のアミノ酸配列と共通の抗原決定基を有する。
【0058】
タンパク質の抗原決定基を模擬できる比較的短い合成ペプチドを用いて、前記タンパク質に対する抗体産生を刺激できることが知られている(例えばSutcliffe et al.、Science 219:660(1983)を参照)。抗原エピトープを担持するペプチドおよびポリペプチドは、少なくとも4〜10個の配列番号1のアミノ酸、少なくとも10〜15個の配列番号1のアミノ酸、または約15〜約30個の配列番号1のアミノ酸を含むことができる。このようなエピトープ担持ペプチドおよびポリペプチドは、ここに記したように配列番号1を断片化することによって、または化学的ペプチド合成によって作ることができる。更には、抗原決定基は、無作為なペプチドライブラリーのファージディスプレイによって選択できる(例えば、Lane and Stephen、Curr.Opin.Immunol.5:268(1993)、およびCortese et al.、Curr.Gpin.Biotechnol.7.616(1996)を参照)。抗原決定基を同定する方法および抗原決定基を含む小ペプチドから抗体を産生する標準的な方法は、例えばMoleによって、Methods in Molecular Biology、Vol.10、Manson(編)(The Humana Press,Inc、1992)の中、ページ105〜116の「Epitope Mapping」に、Priceによって、Monocolonal Antibodies Production,Engieering,and Clinicla Application、Ritter and Ladyman(編)(Cambridge University Press 1995)の中、ページ6084の「Production and Characterization of Synthetic Peptide−Derived Antibodies」に、およびColigan et al.(編)、Current Protocols in Immunology、ページ91〜95およびページ91〜911(John Wiley & Sons 1997)に記載されている。
【0059】
抗原決定基を持つこのようなポリペプチドを用いて、ポリクローナルまたはモノクローナル抗体のような、発明のポリペプチドに免疫特異的であるリガンドを作ることができる。このような抗体を用いて、発明のポリペプチドを発現しているクローンを単離または同定すること、あるいはアフィニティークロマトグラフィーによりポリペプチドを精製することができる。抗体は更に、診断または治療補助として、とりわけ当業者に明らかな他の応用に用いることもできる。
【0060】
発明の第1側面の一つの態様では、例えば生物活性、放射活性、酵素、もしくは蛍光でよい標識物、または抗体のようなペプチドまたはその他タンパク質と融合している発明のタンパク質を含む融合タンパク質が提供される。
【0061】
例えば、分泌またはリーダー配列、プロ配列、精製に役立つ配列、または例えば組換え体製造中に高いタンパク質安定性を付与する配列を含む、1個以上の追加のアミノ酸配列を加えることが有利であることが多々ある。これに代わって、またはこれに加えて、成熟ポリペプチドを別の化合物、ポリペプチドの半減期を延長するような化合物(例えばポリエチレングリコール)に融合することもできる。
【0062】
融合タンパク質は、発明のポリペプチドの活性に対する阻害剤についてのペプチドライブラリーのスクリーニングにとっても有用であろう。それは市販されている抗体が認識できる融合タンパク質を発現させるのに有用であろう。融合タンパク質はまた、切断部位を発明のポリペプチドの配列と異種タンパク質の配列との間の位置に入るように遺伝子工学的に作成し、ポリペプチドを切断して異種タンパク質から分離して精製することもできる。「異種タンパク質」と表現する場合、我々は自然界において発明のポリペプチドとの関連性が見いだせないタンパク質を含める。
【0063】
発明の第1側面の好ましい態様では、配列番号1、3、5、または7に記載のアミノ酸配列を含むタンパク質が提供される。好ましくは、タンパク質は、配列番号1、3、5、または7に記載のアミノ酸配列から成る。
【0064】
発明の第2の側面は、発明の第1側面のタンパク質をコードする核酸分子を提供する。
【0065】
発明の第2側面の一つの態様では、核酸分子は配列番号1、3、5、または7に記載のアミノ酸配列をコードする核酸配列を含んでよい。
【0066】
発明の第2側面の一つの態様では、核酸分子は配列番号1、3、5、または7に記載のアミノ酸配列から成るタンパク質をコードする核酸配列から成ってよい。
【0067】
一つの態様では、核酸分子は配列番号1に記載のアミノ酸配列をコードする配列番号2に記載の配列を含むことができる。一つの態様では、核酸分子は配列番号2に記載の配列から成ってよい。
【0068】
一つの態様では、核酸分子は配列番号3に記載のアミノ酸配列をコードする配列番号4に記載の配列を含むことができる。一つの態様では、核酸分子は配列番号4に記載の配列から成り得る。
【0069】
一つの態様では、核酸分子は配列番号5に記載のアミノ酸配列をコードする配列番号6に記載の配列を含むことができる。一つの態様では、核酸分子は配列番号6に記載の配列から成り得る。
【0070】
一つの態様では、核酸分子は配列番号7に記載のアミノ酸配列をコードする配列番号8に記載の配列を含むことができる。一つの態様では、核酸分子は配列番号8に記載の配列から成り得る。
【0071】
別の態様では、核酸分子は配列番号9に記載の核酸配列(シグナルペプチド配列を含むオハニン/プロ−オハニンの完全長cDNA配列)を含むことができる。一つの態様では、核酸分子は配列番号9に記載の核酸配列から成り得る。
【0072】
別の態様では、核酸分子は配列番号10に記載の核酸配列(シグナルペプチド配列を除くオハニン/プロ−オハニンのゲノムDNA配列)を含むことができる。一つの態様では、核酸分子は配列番号10に記載の核酸配列から成り得る。
【0073】
当業者は、遺伝子コードの縮重の結果、多数の核酸分子が発明の第1側面のタンパク質をコードし、既知および自然界に在る遺伝子のポリヌクレオチド配列と最小限の相同性しか持たないものが生じ得ることを認識するだろう。かくして発明は可能なコドン選択に基づいた組み合わせの選択によって作ることができる、可能なポリヌクレオチドの変異体のそれぞれ、および全てを包含する。
【0074】
更には、当業者はコドンを選択して、特定の原核または真核宿主で起こるポリペプチドの発現の率を、宿主が特定のコドンを利用する頻度に従って上げることができることを認識するだろう。
【0075】
本発明の核酸は、mRNAのようなRNAの形でも、または例えばクローニングもしくは合成で作られたcDNAおよびゲノムDNAを含むDNAの形でもよい。DNAは二重鎖でも一本鎖でもよい。一本鎖DNAまたはRNAはセンス鎖としても知られるコーディング鎖でも、アンチセンス鎖とも呼ばれる非コーディング鎖でもよい。
【0076】
用語「核酸分子」は、修飾された主鎖を含むようなDNAおよびRNAの類似体も含む。
【0077】
発明の第2側面の一つの態様では、配列番号1、3、5、または7に記載されているアミノ酸配列を含む(および場合によっては該アミノ酸配列から成る)タンパク質をコードする核酸分子と相同である核酸分子が提供される。
【0078】
一つの態様では、配列番号2、4、6、8、9、または10に記載されている核酸配列に相同である核酸が提供される。
【0079】
特定の態様では、配列比較アルゴリズムによって決定した時に少なくとも70%、および最も好ましくは少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、または99%のヌクレオチドが、規定長のDNA配列と一致する時、2つのDNA配列は「相同」である。
【0080】
2つの核酸配列間の相同性の強さは、GCGプログラムパッケージ(Program Manual for the Wisconsin Package、Version 8、1996年8月、Genetics Computer Group、575 Science Drive、Madison、Wisconsin、USA 53711)(Needleman、S.B.and Wunsch,C.D.、(1970)、Journal of Molecular Biology、48、443〜453)の中に提供されているGAPのような、当技術分野で既知であるコンピュータプログラムを用いて決定できる。GAPを次のDNA配列比較向け設定で使用する:GAP創造ペナルティー5.0、およびGAPエクステンションペナルティー0.3。
【0081】
核酸分子は、GCGプログラムパッケージの一部として入手できるPileupアラインメントソフトウエアーを、例えばギャップ創造ペナルティー5およびギャップ幅ペナルティー0.3の初期設定で用いて互いにアラインメントを取ることができる。
【0082】
発明の第2側面の核酸分子はまた、発明の核酸分子、特に配列番号:2、4、6、8、9、または10(好ましくは配列番号2)に規定されている核酸配列と、厳密性の低い条件で、より好ましくは中程度の厳密性で、更により好ましくは高い厳密性の条件でハイブリダイゼーションできる変異体であって、発明の第1側面のタンパク質をコードする変異体を含んでもよい。低厳密性ハイブリダイゼーション条件は、2×SSC中で50℃で実施されるハイブリダイゼーションに対応するだろう。
【0083】
ある核酸分子が特定の核酸とハイブリダイゼーションするか否かを判定するための好適な実験条件は、検証対象となる核酸の関連サンプルを含有するフィルターを5×SSCに10分間予備浸漬すること、およびフィルターを5×SSC、5xデンハルトの溶液、0.5%SDS、および100μg/mlの変性超音波処理した鮭精子DNAの溶液内で予備ハイブリダイゼーションし、続いてSambrook et al.(1989;Molecular Cloning、ALaboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbour、New York)に記載されているハイブリダイゼーション法に従って、10ng/ml濃度の32P−dCTP標識プローブを含む同一溶液中で12時間、約45℃でハイブリダイゼーションすることを含むだろう。
【0084】
次にフィルターを30分間、2×SSC、0.5%SDS、少なくとも55℃(低厳密性)、少なくとも60℃(中厳密性)、少なくとも70℃(高厳密性)、または少なくとも75℃(非常に高厳密性)で2回洗浄する。ハイブリダイゼーションは、フィルターをx線フィルムに露光することで検出できる。
【0085】
更には、ハイブリダイゼーションの厳密性を変えるのに利用できる、当業者に周知である様々な条件および要因が存在する。例えば、特定の核酸にハイブリダイゼーションする核酸の長さおよび性質(DNA、RNA、塩基組成);塩、およびホルムアミド、硫酸デギストラン、ポリエチレングリコール等の有無といったその他成分の濃度;ならびにハイブリダイゼーションおよび/または洗浄段階の温度の変更である。
【0086】
更には、ある2つの核酸配列が特定の指定条件の下でハイブリダイゼーションするか理論的に予測することも可能である。従って上記の経験的な方法に替わって、変異体核酸配列が、例えば配列番号:2、4、6、8、9、または10の核酸とハイブリダイゼーションするかどうかを、配列が分かっている2つの非相同核酸配列が例えば塩濃度および温度などの指定された条件でハイブリダイゼーションするT(融解温度)の理論的計算に基づいて決定できる。
【0087】
非相同核酸配列の融解温度(Tm(hetero))を決定する場合、最初に相同核酸配列の融解温度(Tm(homo))を決定する必要がある。2つの完全に相補的な核酸鎖(ホモ二重鎮形成)間の融解温度(Tm(homo))は、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley and Sons、1995に概要が説明されている次式に従って決定できる:
m(homo)=81.5℃+16.6(logM)+0.41(%GC)−0.61(%form)−500/L
M=一価陽イオンのモル濃度を示す
%GC=配列中の全塩基数の%グアニン(G)およびシトシン(C)
%form=ハイブリダイゼーション緩衝液中の%ホルムアミド、および
L=核酸配列の長さ
【0088】
上記の式により決定されたTは、2つの完全に相補的な核酸配列間のホモ二重鎖形成のT(Tm(homo))である。このT、の値を2つの非相同核酸配列のTに適応するために、2つの非相同配列間の1%のヌクレオチド差は、Tが1℃下がることに等しいと仮定する。それ故にヘテロ二重鎖形成のTm(hetero)は、問題の類似配列と上記ヌクレオチドプローブとの間の相同性%差をTm(homo)から差し引くことによって得られる。
【0089】
本発明のポリペプチド、核酸分子、および抗体は「精製される」。ここで使用する用語「精製される」とは、その自然状態から「ヒトの手によって」変えられることを意味する;即ち、それが自然界で起こった場合には、それはその天然宿主から変更を受けるかまたは取り除かれ、それに伴う不純物は減らされるか、または排除される。一つの態様では、目的の種は存在する優勢種である(即ち、モルベースで、組成物中のその他個別種に比べ量の多いものである)。実質的に精製された分画としては、目的種が、存在する全高分子種の少なくとも約30パーセント(モルベースで)を構成する組成物が挙げられる。一般的には、実質的に純粋な組成物は、組成物中に存在する全高分子種の約80〜90パーセント以上を構成する。最も好ましくは、目的種は実質的に均一になるまで精製され、そのとき組成物は実質的に単一の高分子種から成る(通常の検出法によって組成物中に汚染種は検出されない)。
【0090】
発明の第3側面は、発現ベクターのような、発明の第2側面の核酸分子を含むベクターを提供する。本発明のベクターは、転写プロモータ、および転写ターミネータを含み、このときプロモータは核酸分子と作動可能に連結しており、且つ核酸分子は転写ターミネータと作動可能に連結している。
【0091】
本発明のベクターは、好適宿主細胞の中に在る前記ベクターを、好適な条件下で選択できるようにするマーカー遺伝子のような別の遺伝子を含んでもよい。
【0092】
本発明は、これらベクターおよび発現ベクターを含む組換え体宿主細胞も包含する。従って、発明の第4の側面は、発明の第3側面のベクターで形質転換された宿主細胞を提供する。例示的な宿主細胞としては、細菌、酵母、真菌、昆虫、鳥類、哺乳類、および植物細胞が挙げられる。特に好ましいものは、オハニンを未変性オハニンに類似の形態で発現する大腸菌のような細胞である(オハニンは糖化またはジスルフィド架橋のような翻訳後修飾を含まない)。
【0093】
発明の第5の側面は、発明の第1側面のタンパク質の製造方法であって、発明の第4側面の宿主細胞を、発明の第1側面のタンパク質の発現に好適な条件の下に培養することを含む方法を提供する。
【0094】
発明の第6の側面は、発明の第1側面のタンパク質の製造方法であって、例えば固相ペプチド合成またはコンビナトリアルケミストリーによるタンパク質の化学合成を含む方法を提供する。このような技術は当技術分野では周知であり、当業者は容易に実施できるだろう。
【0095】
発明の第5および第6側面の方法は、タンパク質を精製する行為を更に含んでよい。このような技術は当技術分野では周知であり、当業者は容易に実施できるだろう。
【0096】
発明の第7の側面は、発明の第1側面のタンパク質に結合できる抗体を作成する方法を提供する。
【0097】
発明の第8の側面は、発明の第1側面のタンパク質に結合できる抗体を提供する。
【0098】
発明の抗体は、問題の抗原に結合するポリクローナルまたはモノクローナル抗体調製物、単一特異的抗血清、ヒト抗体でよく、あるいはヒト化抗体、変更抗体(Fab’)2断片、F(ab)断片、Fv断片、単一ドメイン抗体、二量体もしくは三量体抗体断片もしくは構築物、ミニ抗体、またはそれらの機能的断片のようなハイブリッドまたはキメラ抗体でもよい。
【0099】
抗体は、当業者に周知であり、例えば米国特許第4,011,308号;第4,722,890号;第4,016,043号;第3,876,504号;第3,770,380号、および第4,372,745号に開示されている技術を用いて作ることができる。Antibodies−A Laboratory Manual、Harlow and Lane編、Cold Spring Harbor Laboratory、N.Y.(1988)も参照。例えばポリクローナル抗体は、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、またはヤギのような好適な動物を関心対象の抗原で免疫感作することによって作られる。免疫原性を高めるために、免疫前に抗原にキャリアーを連結することができる。このようなキャリアーは当業者には周知である。免疫は、一般的には抗原を食塩水に、好ましくはフロイントの完全アジュバントのようなアジュバントの中に混合または乳化し、混合液または乳剤を非経口的(一般には皮下または筋肉内)注射することによって行われる。動物は、一般的には2〜6週後に、抗原の食塩水溶液、好ましくはフロイントの不完全アジュバントを用いて1回以上注射し、追加免疫される。抗体は当技術分野で既知である方法を用いて、in vitro免疫によっても作ることができる。次に免疫した動物からポリクローナル抗血清を得る。
【0100】
モノクローナル抗体は、一般的にはKohler & Milstein(1975)Nature 256:495〜497の方法、またはその改良法を用いて調製される。典型的には、マウスまたはラットを上記に従って免疫する。ウサギも使用できる。しかしながら、動物から採血して血清を得る代わりに、脾臓(および場合によっては複数の大型のリンパ節)を取り出し、単細胞に解離する。望ましい場合には、細胞浮遊液を抗原をコーティングしたプレートまたはウェルに加えて脾臓細胞を篩いにかけてもよい(非特異的な付着細胞を除いた後に)。抗原に特異的な膜結合免疫グロブリンを発現しているB細胞はプレートに結合し、浮遊液の残りと一緒に洗い流されない。次に得られたB細胞、または全ての解離脾臓細胞を誘導して骨髄腫細胞と融合させハイブリドーマを形成させ、選択培地の中で培養する(例えばヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン培地、「HAT」)。得られたハイブリドーマを限界希釈法によってプレーティングし、免疫抗原に特異的に結合する(同時に無関係の抗体とは結合しない)抗体の産生についてアッセイする。
【0101】
次に選択したモノクローナル抗体分泌ハイブリドーマをin vitro(例えば組織培養ボトルもしくは中空糸リアクター)またはin vivo(例えばマウス腹水)のいずれかで培養する。
【0102】
ヒト化およびキメラ抗体も発明には有用である。ハイブリッド(キメラ)抗体分子はWinter et al(1991)Nature 349:293〜299および米国特許第4,816,567号に一般的に論じられている。ヒト化抗体分子は、Riechmann et al.(1988)Nature 332:323〜327;Verhoeyan et al.(1988)Science 239;1534〜1536;および1994年9月21日公開された英国特許出願第GB2,276,169号に一般的に論じられている。
【0103】
抗体は、分子と特異的に反応し、それによって分子を抗体に結合させることができる場合に、分子を結合できると考えられる。
【0104】
好ましくは、抗体またはその断片は、約10−1より高い、より好ましくは約10−1より高い、より好ましくは約10−1より更に高い、最も好ましくは約10−1〜10−1より高い結合親和性または親和力を有する。抗体の結合親和性は当業者によって、例えばScatchard分析(Scatchard、Ann.NY Acad.Sci.51:660(1949))によって容易に決定できる。
【0105】
発明の第9の側面は、分子、例えば発明の第1側面のタンパク質に対する抗毒素を製造する方法であって、動物を発明の第1側面のタンパク質で免疫し、抗毒素として用いるために動物から抗体を採取することを含む方法を提供する。
【0106】
治療薬を製造する伝統的な方法は、ウマ、ヤギ、またはヒツジのような哺乳動物を毒液に対し免疫感作させるものである。それらの毒性を下げるために、毒液をホルマリンで処理して修飾することができる。それらの吸収を遅延させるために、修飾した毒液を水酸化アルミニウムゲルと混合してもよい。次にこうして作製した抗体を動物から単離し、患者、典型的にはヒトの患者に解毒薬として用いる。ごく最近、ニワトリのような鳥類を用いて哺乳動物以外の動物が使用されている。この場合は、若いニワトリを少量の標的ヘビ毒で免疫し、これらの動物は成長すると毒素に対する解毒薬として働く抗体を産生する。ニワトリが成熟したメンドリになり産卵を始めると、抗毒素タンパク質が通過して卵黄の中に蓄積することが分かっている。次に、卵を集めて解毒薬製造に用いるタンパク質を抽出する。
【0107】
次に最初の動物(例えばウマまたはニワトリ)の血清を病気に罹っている動物(「宿主」)に投与して、特異的且つ反応的な抗体の供給源を与える。投与された抗体はある程度内因性の抗体のように機能して、ヘビ毒に結合してその毒性を下げる。
【0108】
発明の第10の側面は、発明の第1側面のタンパク質に対し有効な抗毒素を提供する。抗毒素は、発明の第9側面に従って作ることができるが、発明の第11側面の方法を用いてもよい。
【0109】
発明の更なる側面は、発明のタンパク質を薬物の設計および抗毒素のモデルとして用いることを想定している。従って発明の第11側面は、発明の第1側面のポリペプチドの調整因子(例えばアゴニストまたはアンタゴニスト)化合物を同定するための方法を提供する。
【0110】
発明の第1側面のポリペプチドは、数ある薬物スクリーニング技術のいずれかにおいて化合物ライブラリーのスクリーニングに利用できる。このような化合物は、発明の第1側面のポリペプチドの活性を調整(作動または拮抗)できる。
【0111】
一つの態様では、方法は試験化合物を発明の第1側面のポリペプチドと接触させること、および試験化合物が発明の第1側面または第2側面のポリペプチドに結合したか判定することを含む。方法は更に、試験化合物が発明の第1側面または第2側面のポリペプチドの活性を高めるか、または下げるか判定することも含む。試験化合物が発明の第1側面または第2側面のポリペプチドの活性を高めるか、または下げるか判定する方法は当業者にとって既知であり、例えば、実験/ソフトウエアまたはX線結晶学を一体化することが挙げられる。
【0112】
発明のスクリーニング法に使用する発明のポリペプチドは溶液中で遊離していても、固体支持物に固定されても、細胞表面にあっても、あるいは細胞内に局在してもよい。
【0113】
試験化合物(即ち、潜在的調整因子、例えばアゴニストもしくはアンタゴニスト化合物)は、天然または修飾された基質、酵素、受容体、最大2000Da、好ましくは800Da以下の天然もしくは合成有機低分子のような有機低分子、ペプチド模擬体、無機分子、ペプチド、ポリペプチド、抗体、上記のものの構造もしくは機能的模擬物を含む様々な形態を取ることができる。
【0114】
試験化合物は、例えば細胞、無細胞調製物、化学物質ライブラリー、または天然産物の混合物から単離できる。これら調整因子(例えばアゴニストもしくはアンタゴニスト)は天然の基質もしくは修飾された基質、リガンド、酵素、受容体、または構造的もしくは機能的な模擬物でよい。このようなスクリーニング技術の好適なレビューについては、Coligan et al.、Current Protocols in Immunology 1(2):第5章(1991)を参照。
【0115】
良好な調整因子(例えばアンタゴニストもしくはアゴニスト)となる可能性が最も高い化合物は、発明のポリペプチドに結合する分子である(アンタゴニストの場合、それとの結合によるポリペプチドの生物学的作用の誘導はない)。
【0116】
アンタゴニストは、発明のポリペプチドの受容体と競合結合する利点により二者択一的に機能するだろう。
【0117】
アゴニストは、発明のポリペプチドの受容体へ結合して、受容体と発明のポリペプチドとの開の結合親和性を上げることによって、二者択一的に機能するだろう。
【0118】
潜在的アンタゴニストとしては、発明のポリペプチドに結合し、それによってその活性を阻害または消失させる低分子の有機分子、ペプチド、ポリペプチド、および抗体が上げられる。この方法では、正常な細胞結合分子へのポリペプチドの結合が阻害され、ポリペプチドの天然の生物活性は阻止されるだろう。
【0109】
発明の調整因子およびアンタゴニストは、抗毒素として利用できることが当業者に理解されるだろう。
【0120】
上記した特定の態様では、ポリペプチドを担持している表面への試験化合物の付着を、試験化合物に直接もしくは間接的に結合させた標識物を用いて検出する簡単な結合アッセイ、または標識された競合物と競合させるアッセイを用いることができる。
【0121】
使用可能な薬物スクリーニングの別の技術は、関心対象のポリペプチドに対し好適な結合親和性を有する化合物の大量スクリーニングを提供する(国際特許出願WO084/03564を参照)。この方法では、多種類の小試験化合物が固体基質上に合成され、次にこれを発明のポリペプチドと反応させて、洗浄する。ポリペプチドを固定する一つの方法は、非中和抗体を用いるものである。次に結合したポリペプチドは、当技術分野で周知の方法を用いて検出できる。精製したポリペプチドは、上記した薬物スクリーニング技術で使用するために、プレート上に直接コーティングすることもできる。
【0122】
In silico法も、調整因子(例えばアゴニストまたはアンタゴニスト)の同定に用いることができる。次に、望ましい場合には、調整因子(例えばアゴニストおよびアンタゴニスト)成分の活性を実験的に確認することもできる。
【0123】
発明の第12の側面は、発明の第1側面のタンパク質、発明の第2側面の核酸分子、発明の第3側面のベクター、発明の第4側面の宿主細胞、発明の8側面の抗体、発明の第10側面の抗毒素、または発明の第11側面の調整因子(例えばアゴニストまたはアンタゴニスト)を含む医薬組成物を提供する。
【0124】
本発明の医薬組成物は、薬学的に許容される担体を含んでよい。組成物は単独、または少なくとも1種類の、安定化化合物のようなその他作用物質と一緒に投与することができ、それらは食塩水、緩衝化食塩水、デキストロース、および水を含むが、これらに限定されない無菌の生体適合性の医薬担体に含めて投与してよい。
【0125】
本発明で利用される医薬組成物は、経口、静脈内、筋肉内、動脈内、脳室内、骨髄内、包膜内、心室内、経皮、皮下、腹腔内、鼻内、腸、局所、舌下、または直腸を含むが、これらに限定されない多くの経路から投与できる。
【0126】
活性成分に加えてこれら医薬組成物は、薬学的に利用できる、活性化合物を調合しやすくする賦形剤および補助剤を含む好適な薬学的に許容される担体を含んでよい。調剤および投与の技術に関する更なる詳細については、最新版のRemington’s Pharmaceutical Sciences(Maack Publishing、Easton Pa)に見ることができる。
【0127】
経口投与向けの医薬組成物は、当技術分野で周知である薬学的に許容される担体を、経口投与に適した用量で使用して調合できる。このような担体は、医薬組成物を、患者が摂取するための錠剤、ピル、ドラジェ、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液等に調合できるようにする。
【0128】
経口使用向けの医薬調製物は、活性化合物を固体賦形剤とを混合し、得られた顆粒混合物を加工して(必要に応じて粉砕した後)錠剤、またはドラジェ核を得ることにより入手できる。望ましい場合には、好適な補助剤を加えることができる。好適な賦形剤としては、ラクトース、ショ糖、マンニトール、およびソルビトールを含む糖;トウモロコシ、ムギ、コメ、ジャガイモまたはその他植物のデンプン;メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル−セルロース、またはカルボキシメチルセルロースナトリウムのようなセルロース;アラビアゴム、トラガントゴムを含むゴム;ならびにゼラチンおよびコラーゲンのようなタンパク質などの、炭水化物またはタンパク質が挙げられる。望ましい場合には、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、およびアルギン酸、またはアルギン酸ナトリウムといったその塩のような崩壊剤または可溶化剤を加えてもよい。
【0129】
ドラジェ核は、濃縮糖液のような好適なコーティングと共に用いることができ、それらはまたアラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、および/または二酸化チタン、ラッカー液、および好適な有機溶媒もしくは溶媒混合物を含んでよい。色素または顔料は、製品を区別するかまたは活性化合物の量、即ち用量の特徴を表すために錠剤またはドラジェコーティングに加えることができる。
【0130】
経口的に使用できる医薬調製物は、ゼラチン製のプッシュフィットカプセルならびに、ゼラチン製であり、グリセロールまたはソルビトールのようなコーティングを持つ軟質の密封カプセルが挙げられる。プッシュフィットカプセルは、ラクトースもしくはデンプンのような充填剤もしくは結合剤、タルクもしくはステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、および場合によって安定化剤と混合した活性成分を含むことができる。軟質カプセルでは、活性化合物は、安定化剤を含んでも含まなくともよい、脂肪油、液体、またはポリエチレングリコール液のような好適な液体に溶解または懸濁できる。
【0131】
非経口投与に好適な医薬調合物は、水溶液、好ましくはハンクス液、リンゲル液、または生理緩衝食塩水のような生理的に適合した緩衝液に調合できる。水性注射懸濁液は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、またはデキストランのような懸濁液の粘度を上げる物質を含んでよい。これに加えて、活性化合物の懸濁液は、適切な油性注射懸濁液としても調製できる。好適な親油性溶媒またはビークルとしては、ゴマ油のような脂肪油、オレイン酸エチル、トリグリセリド、またはリポソームのような合成脂肪酸エステルが挙げられる。非脂肪ポリカチオン性アミノポリマーはデリバリーにも用いることができる。場合によっては、懸濁液は好適な安定化剤、または化合物の溶解度を上げ、且つ極めて高い濃度の溶液を調製できるようにする作用物質を含んでもよい。
【0132】
局所または鼻内投与の場合は、浸透対象となる具体的バリアーにとって適切である浸透剤を調合物中に使用する。このような浸透剤は当技術分野に公知である。本発明の医薬組成物は、当技術分野で既知である様式、例えば通常の混合、溶解、顆粒化、ドラジェ作成、湿式粉砕、乳化、封入化、閉じ込め、または凍結乾燥工程の手段によって製造できる。
【0133】
医薬組成物は塩として提供でき、且つ塩酸、硫酸、酢酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、およびコハク酸を含むが、これらに限定されない多くの酸と形成することができる。塩は、対応する遊離塩基型に比べ、水溶液またはその他プロトン性溶媒により可溶性である傾向を示す。
【0134】
医薬組成物は調製された後、それらは適切な容器に入れ、指定された状態の治療についてラベルを貼ることができる。このようなラベルには、投与の量、頻度、および方法が記載される。
【0135】
発明での使用に好適な医薬組成物としては、活性成分が所定の目的を達成するのに有効な量含まれている組成物が挙げられる。有効投与量の決定は、十分当業者の能力の範囲内である。
【0136】
任意の化合物の治療有効用量は、例えば腫瘍性細胞のような細胞の培養アッセイ、またはマウス、ラット、ウサギ、イヌ、もしくはブタのような動物モデルのどちらかでまず予測することができる。。動物モデルはまた、適切な濃度範囲および投与経路を決定するのにも用いることができる。このような情報を次に用いて、ヒトの投与に関し有益な用量および経路を決定することができる。
【0137】
治療有効用量とは、症状または状態を緩和する活性成分の量を指す。治療効力および毒性は、ED50(集団の50%の治療効果がある用量)、またはLD50(集団の50%にとって致死的である用量)を統計学的に計算するといった細胞培養または実験動物での標準的な薬学的手順によって決定することができる。毒性と治療効果の用量比は、治療指数であり、それはLD50/ED50として表すことができる。高い治療指数を示す医薬組成物が好ましい。細胞培養アッセイおよび動物研究から得たデータを用いて、ヒトに使用する場合の用量範囲を定式化する。このような組成物中に含まれる用量は、毒性がほとんど、もしくは全くないED50を含む血中濃度の範囲内であることが好ましい。用量は、使用する投与形状、患者の感受性、および投与経路によって、この範囲内で変わる。
【0138】
正確な投与量は、治療を必要としている対象に関係する要因を考慮に入れながら実施者によって決められるだろう。投与量および投与は、十分なレベルの活性成分が提供されるか、または所望する効果を維持するように調整される。考慮の対象となる要因としては、疾患状態の重篤度、対象の一般健康状態、対象の年齢、体重、および性別、投与時間および頻度、薬物の組み合わせ、反応感受性、および治療に対する反応性が挙げられる。長期作用型の医薬組成物は、具体的な調合物の半減期またはクリアランス速度に応じて3〜4日おき、毎週1回、または2週に1回投与されるだろう。
【0139】
通常の投与量は、投与経路によって、約0.1μg〜100,000μg、最大合計用量約1グラムまで変わることがある。具体的な投与量およびデリバリー方法に関するガイダンスは文献中に報告されており、また一般的には当技術分野の実施者にとって入手可能なもものである。
【0140】
発明の第1側面のポリペプチドを医薬調製物/医薬品に使用する場合には、天然産ポリペプチドの持つ疼痛過敏機能が低下しているか、または失われているポリペプチドを用いることが望ましいだろう。これを達成するための方法は当業者には既知であり、例えば部位指定突然変異誘導が挙げられる。ポリペプチドがオハニン(配列番号1)に比べて疼痛過敏特性が低下しているか、または無いかを決定することは、例えば、以下実施例の項に記載するように、ホットプレートアッセイにてマウスに対する問題のポリペプチドおよびオハニンの作用を比較することによって経験的に決定できる。
【0141】
以下に更に詳しく論じるように、オハニンは腹腔内注射した場合に比べて、脳室内注射によって投与した時有意に高い効力を示すことが知られている。このことから、発明の一つの態様では、発明の成分は、例えば脳室内注射によって神経系に直接投与され、それに合わせて調合できる。発明の別の態様では、発明の成分は静脈内に投与できる。
【0142】
医薬品に使用するための、発明の第1側面のタンパク質、発明の第2側面の核酸分子、発明の第3側面のベクター、発明の第4側面の宿主細胞、発明の第8側面の抗体、発明の第10側面の抗毒素、発明の第11側面の調整因子(例えばアゴニストもしくはアンタゴニスト)に関する第13側面。
【0143】
発明の第14側面は、鎮静剤として使用する医薬品製造における、発明の第12側面に記載の発明の第1側面のタンパク質、発明の第2側面の核酸分子、発明の第3側面のベクター、発明の第4側面の宿主細胞の使用を提供する。
【0144】
上記し、且つ下記に更に詳しく記載するように、オハニンのマウスへの投与は、マウスを緩慢化し、且つ運動性を下げる。それ故に、発明の各種成分は、鎮静剤として有用であろう。
【0145】
好ましくは、医薬品は、ブタ、ウシ、ヒト、およびウマのような温血動物を沈静化するためのものである。動物がストレス状態に対し敏感であることにより困難な問題が起こる。例えば、繁殖、輸送条件、気候等の要因により、屠殺場まで運搬される間に最大5%のブタが興奮して死亡する。動物の運搬距離が長くなり、数日または数週間を要する距離では損失はさらに大きくなり、また今日、例えばウマ、ウシ、ヒツジ、およびブタの輸送では、船または飛行機により長距離運搬されることもある。同様のことはニワトリやトリ、例えば外国産のトリについても見られ、飼育されることになる場所まで長距離運ばれることもある。このような輸送に伴う興奮状態および攻撃性は、おそらくは小屋で飼育されている豚に見られる凶暴性の原因でもあろう。ウマおよびウシのようなより大型の動物では、単に輸送だけでなく体重測定といった作業においてもその興奮性が大きな問題の原因となることがある。
【0146】
上記の理由から、ストレス状態にある時に興奮性の動物、特にウマ、ウシ、およびブタについては、沈静剤を使って興奮を鎮める処置が採られている。
【0147】
上記したように、発明の成分を医薬目的で用いる場合、オハニンタンパク質の疼痛過敏効果は低減させるか、無効にすることが一般的に望まれる。
【0148】
発明の成分を鎮静剤として用いる場合、前記成分を含む医薬組成物は1種類以上の追加の鎮静剤を更に含んでもよい。
【0149】
発明の第15の側面は、神経学的または筋肉性の苦痛を治療するための医薬品製造における、発明の第1側面のタンパク質、発明の第2側面の核酸分子、発明の第3側面のベクター、発明の第4側面の宿主細胞、または発明の第12側面の医薬組成物の使用を提供する。
【0150】
以下に記載するように、オハニンは中枢神経系に直接作用して移動低下を誘導できる。オハニンのこれらの機能が、オハニンを神経学的または筋肉性の苦痛の治療にとって有用なものにしている。本発明によって効果的に治療できる障害としてはパーキンソン病、ハンチントン舞踏病、てんかん、膀胱痙攣、座位不能、アルツハイマー病、記憶喪失、筋萎縮性側索硬化症、双極性障害、緊張病、脳腫瘍、認知症、うつ病、糖尿病性神経症、ダウン症候群、遅発性ジスキネジー、失調症、てんかん、ハンチトン病、末梢神経症、多発性硬化症、神経線維腫症、妄想性精神病、ヘルペス後神経痛、総合失調症、およびトゥレット症候群が挙げられる。本発明は失禁、喘息、気管支痙攣、シャックリ等の、振戦または筋肉痙攣が存在するか、または顕在化するその他分野にも応用できる。
【0151】
発明の第16の側面は、発明の第1側面のタンパク質、発明の第2側面の核酸分子、発明の第3側面のベクター、発明の第4側面の宿主細胞、または発明の第12側面の医薬組成物を動物に投与することを含む、動物を沈静化する方法を提供する。
【0152】
発明の第17の側面は、発明の第1側面のタンパク質、発明の第2側面の核酸分子、発明の第3側面のベクター、または発明の第4側面の宿主細胞を患者に投与することを含む、神経系または筋肉系の疾患を患う患者を治療する方法を提供する。
【0153】
発明の第18の側面は、発明の第1側面のタンパク質を含む防御用組成物を提供する。
【0154】
防御用組成物は、個人的な防御目的に用いられる組成物を含む。発明の第18側面の組成物は、例えば潜在的または実際の個人攻撃に対抗しての使用に有益であり、公人または法的処置によって用いられる。発明の第18側面の防御用組成物の調合については、上記の発明の医薬組成物について論じた部分に見出すことができる。
【0155】
発明の第18側面の一つの態様では、組成物は攻撃者等に対して素早く投与できるようにスプレーの形で提供される。
【0156】
当業者は、攻撃者を迅速に無能化することが望まれる場合に、吸収が容易であり、且つそれ自体が防御用組成物としての使用に好適である調合物を考案できるだろう。
【0157】
オハニンの疼痛を誘導する能力と運動性を低下させる能力の両方が、防御を目的とする場合にオハニンを有用なものにしている。更には、以下論じるようにオハニンが投与されたマウスは、麻痺または脳内出血もしくは壊死の明瞭な兆候を示すことなく回復した。このことからオハニンの作用は可逆的と考えられ、これは個人的安全および法的処置のための調合物としてオハニンを特に好適なものにしている。
【0158】
発明は特定の箇所では、発明の特別な側面に関係して記載されているが、当業者はそのコメントが発明の他の側面にも等しく当てはまること、記述をそのように解釈しなければならないことを了解するだろう。
【0159】
本発明の実施は、特に明記しない限り、当業者の技術水準内である分子生物学、微生物学、および組換え体DNA技術の通常の技術を用いる。このような技術は、文献に十分に説明されている。参考となるテキストの例としては次のものが挙げられる:Sambrook Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Third Edition(2000)およびその後の版。
【実施例】
【0160】
実験手順
材料
凍結乾燥されたキングコブラの粗毒液はPT Venom Indo Persada(Jakarta、Indonesia)から得た。キングコブラの毒腺および肝臓は、寛大にもDepartment of Biological Sciences、National University of Singapore、SingaporeのDr Bryan G.Fryから提供された。腺および肝臓を直ちに液体窒素で凍結し、使用時まで−70℃で維持した。全ての化学物質および試薬は、次のものを除いて全てSigma(St.Louis、MO、USA)より購入した:Lys−CエンドペプチダーゼおよびトリプシンはWako Pure Chemicals(Osaka、Japan)より購入し、エドマン分解N末端配列決定用の試薬(Applied Biosystem、Foster City、CA、USA)、アセトニトリル(Merck KGaA、Darmstadt、Germany)、LB培地および寒天はQ.BIOgene(Irvine、CA、USA)より購入し、SDS−PAGEゲル標準物質(Prestained broad range SDS−PAGE標準物質およびPrecision plus prestaineddual−color標準物質)はBio−Rad Laboratories(Hercules、CA、USA)から購入した。Superdex 30 Hiload(16/60)およびμRPC C2/C18(10μ 120Å 2.1mm×100mm)カラムはAmersham Pharmacia(Uppsala、Sweden)から得た。RP−Jupiter C18(5μ 300Å 1mm×150mm)およびRP−Jupiter C18(10μ 300Å 10mm×250mm)カラムはPhenomenex(Torrance、CA、USA)から購入した。ニッケル−NTAアガロースはQiagen GmbH(Hilden、Germany)から購入した。オリゴヌクレオチドは全てBioBasic(Shanghai、China)および1st Base Pte.Ltd.(Singapore)から購入した。Platinum Taqポリメーラゼ、dNTPミックス、およびラダー(50bp、100bp、および1Kb Plus)はGIBCO BRL(登録商標)(Carlsbad、CA、USA)から購入した。使用した全ての制限エンドヌクレアーゼは、New England Biolabs(登録商標)(Beverly、MA、USA)から、またpGEMT−easyベクターはPromega(Madison、WI、USA)から得た。RNeasy(登録商標)Miniキット、QIAGEN(登録商標)OneStep RT−PCRキット、QIAprep(登録商標)Miniprepキット、QIAEX II Gel ExtractionキットおよびDNeasy(登録商標)TissueキットはQiagen GmbH(Hilden、Germany)から購入した。SMART(商標)RACE cDNA AmplificationキットはClontech Laboratories Inc.(Palo Alto、CA、USA)から購入した。ABI PRISM(登録商標)BigDye(商標)Terminator Cycle Sequencing Ready Reactionキット(バージョン3.0)はPE Applied Biosystem(Foster City、CA、USA)から購入した。水はMilliQシステム(Millipore、Billerica、MA、USA)を使って精製した。
【0161】
動物
動物実験には雄のSwissアルビノマウス(20±2g)を使用した。環境の変化および行動研究中の取り扱いからの影響を軽減するために、それぞれの場合について、マウスをLaboratory Animal Holding Centerおよび研究環境に3日間および少なくとも実験前1時間順応させた。動物は標準条件に維持され、食事(低タンパク質食)および水は自由に摂取させた。動物は照明管理された(12時間の明暗サイクル、07:00に点灯)23℃、60%相対湿度の室の中でケージ当たり4匹ずつ飼育した。全ての行動実験は、08:30時〜13:00時の間に行われた。各試験群は、少なくとも7匹のマウスから成り、各マウスは1回のみ使用した。全ての動物実験は、Laboratory Animal Center of the National University of Singporeが定めるガイドラインに従って行われた(Howard−Jones(10)に適合)。
【0162】
キングコブラ毒液の液体クロマトグラフィー−質量分析装置(LC/MS)
凍結乾燥された粗毒液(60μg)は、Perkin−Elmer Sciex API300 LC/MS/MSシステム質量分析装置(Thornton、Canada)に接続された、0.1%(v/v)TFA(トリフルオロ酢酸)で平衡化しておいたRP−Jupiter C18分析カラムに直接注入する前に、20μlのMilliQ水に溶解した。粗混合液は、80%(v/v)ACN(アセトニトリル)の0.1%TFA溶液の直線勾配を用いて、流速50μl/分で溶出した。ESI/MS(エレクトロスプレー質量スペクトル)データは、オリフィス電子80Vの陽イオンモードで得た。窒素は、カーテンガスとして流速0.6リットル/分で、また噴霧ガスとしては100psiの圧力設定で使用した。完全スキャンデータを、500〜3000m/zのイオン幅について、0.1Da刻みに獲得した。データ処理は、BioMultiviewソフトウエア(Perkin−Elmer Sciex、Thornton、Canada)の助けを借りて行った。
【0163】
単離および精製
凍結乾燥された粗毒液(各200mgの複数のバッチ)を2mlのMilliQ水に溶解し、50mMのTris−HCl(pH7.4)で予備平衡化しておいたSuperdex 30カラムにかけた。タンパク質はFPLC(Fast Protein Liquid Chromatography system、Amersham Pharmacia、Uppsala、Sweden)で50mMのTris−HCl(pH7.4)を用いて流速1ml/分で溶出した。タンパク質の溶出は、280nmでモニタリングした。次に関心対象の分画をVision Workstation(PE Applied Biosystem、Foster City、CA、USA)を用いて、0.1%TFA(v/v)で平衡化したRP−Jupiter C18半調製カラムにかけた。結合したタンパク質は、80%ACNの0.1%TFA(v/v)溶液の直線勾配を用いて、流速2ml/分で1時間かけて溶出した。タンパク質の溶出は280nmおよび215nmでモニタリングした。関心対象のタンパク質は、質量を決定して(以下に記載する)同定した。
【0164】
還元およびピリジルエチル化
凍結乾燥し精製された関心対象タンパク質を、既に報告した方法(11)を用いて還元し、ピリジルエチル化した。タンパク質(500μg)を500μlの変性緩衝液(6M GdnCl(グアニジン塩酸)、50mM Tris−HCl、1mM EDTA pH8.0)に溶解した。β−ME(β−メルカプトエタノール)を10μl加えた後、混合液を37℃で2時間、真空下でインキュベーションした。続いて4−ビニルピリジンを20μl混合液に加えて、室温(〜25℃)で更に2時間、真空下に維持した。還元し、ピリジルエチル化されたタンパク質を、SMART Workstation(Amersham Pharmacia、Uppsala、Sweden)上の0.1%のTFA(v/v)で平衡化したRP−μRPC C2/C18分析カラムにかけた。結合したタンパク質を、80%ACNの0.1%TFA(v/v)溶液の直線勾配を用いて、1時間かけて流速200μl/分で溶出した。タンパク質の溶出は280nmおよび215nmでモニタリングした。
【0165】
酵素切断
Lys−Cエンドペプチダーゼおよびトリプシンによるピリジルエチル化タンパク質の消化を、37℃で20時間行った。タンパク質(150μg)を150μlの酵素消化緩衝液(50mM Tris−HCl、4M尿素、5mM EDTA pH7.5)に溶解し、プロテアーゼを1:50(w/w)の割合で加えた。
【0166】
化学切断
還元ピリジルエチル化タンパク質のギ酸による消化(Asp特異的)は、Inglis(12)が記載した通りに実施した。簡単に説明すると、ピリジルエチル化タンパク質150μgをガラス製バイアルに入った2%のギ酸に溶解し、次に−30℃で凍結した。続いて真空下、室温でバイアルを融解してから開封した。次にバイアルを108℃で2時間加熱し、室温まで冷ました。
【0167】
消化されたペプチドの分離
酵素消化および化学的消化の両方によって生成されたペプチドを、SMART Workstation(Amersham Pharmacia、Uppsala、Sweden)上のRP−μRPC C2/C18分析カラムを用いて、80%ACNの0.1%TGA(v/v)溶液の直線勾配を用い、1時間かけて分画化した。ペプチドの溶出を215nmおよび280nmでモニタリングした。
【0168】
エレクトロスプレーイオン化−質量分析装置(ESI/MS)
ESI/MSを用いて、未変性タンパク質およびペプチド両方の正確な質量および純度(±0.01%)を決定した。RP−HPLC分画をPerkin−Elmer Sciex API300 LC/MC/MSシステム質量分析装置(Thornton、Canada)に直接注入した。イオンスプレー、オリフィス、およびリングの電圧はそれぞれ4600V、50V、および350Vに設定した。窒素を流速0.6リットル/分でカーテンガスとして、また圧力を100psiに設定して噴霧ガスとして使用した。質量はLC−10AD Shimadzu Liquid Chromatographyポンプを溶媒デリバリーシステム(40%ACN、0.1%TFA溶液)として用いて流速50μl/分で直接注入し決定した。BioMultiviewソフトウエアを用いて、未加工の質量スペクトルを分析し、デコンボリューションした。
【0169】
アミノ末端配列の決定
未変性および消化したペプチドのN末端の配列は、オンライン785A PTH−アミノ酸分析装置と一緒にPerkin−Elmer Applied Biosystem 494パルス液相タンパク質シーケンサー(Procise)を用い、自動エドマン分解によって決定した。次に標準的なクロマトグラムを用いて各分離プロフィールをマッピングして、誘導体化されたPTH−アミノ酸を連続的に同定した。
【0170】
タンパク質投与方法
i.p.(腹腔内投与)経路から注射される容積は200μlであり、タンパク質は水に溶解した。i.c.v.(脳室内)注射は、頭蓋の頂部から2mmまで通るように改良された針の付いた10μlのルアーチップHamiltonマイクロシリンジを使ってブレグマの側方1.5mm、後方1.0mmにある穿刺点を通して、2μlの容積で行った(13)。i.c.v注射用のタンパク質はACSF(人工脳脊髄液)に溶解した。針を回転させながら引き抜いた。これら2種類の投与方法を、移動活動およびホットプレート実験に用いた。
【0171】
In vivo毒性試験
未変性のタンパク質をマウスに0.1mg/kg、1mg/kg、および10mg/kgの用量でi.p.注射した(n=2)。注射後、マウスの行動観察を15分おきに、6時間まで記録した。動物は24時間後に屠殺し、死体解剖を行った。
【0172】
移動活動
マウスの移動活動は、赤外線センサー、シグナル増幅回路、および制御回路から構成されるNS−AS01活動モニタリングシステム(Neuroscience,Inc.、Tokyo、Japan)で測定した。マウスの運動は、マウスの体温に付随する赤外線に基づいて、赤外線センサーによって検出された。各マウスを飼育ケージから取り出し、ケージ全体に8チャンネルの赤外線センサーを配置したケージ(12cm×12cm×30cm)に一匹ずつ入れた。ケージの床には、約40mlのおがくずを敷した。別々のケージに入れた8匹の動物の運動活動を同時に測定した。4cm以上の距離の運動は全て赤外線センサーによって検知され、それぞれが注射されたマウスの全身運動の数値となった。動物の活動性は、予備走行実験を実施して評価しておいた。その後の実験に用いられた動物は、最初に行ったこの20分間の予備走行実験中に最低で450カウント、最大で850カウントを示した。次に活動性のマウスにタンパク質を投与して、同じ運動活動モニタリングシステムにかけた。その直後から移動活動のカウントを10分間隔で80分間、コンピュータ接続分析システム(AB System−24A、Neuroscience,Inc.、Tokyo、Japan)を使って集めた。
【0173】
ホットプレートアッセイ
各マウスを透明なプラスチック製の輪(直径12cm、高さ13cm)を使って拘束した状態でホットプレート(55℃)の上に置いた。ホットプレート装置は滑らかな金属表面15cm×15cmを持つ密封された木製の箱で、水槽(Model Y22 Grant、Cambridge、UK)を使って加熱した。マウスをホットプレートの上にそっと置いてから、次の反応の一つ、すなわち、WoolfeとMacDonaldが記載したような(14)跳躍、なめること、または後ろ脚の踏みつけのうちの一つを初めて示した時間までの潜伏期間を測定した。ホットプレートアッセイは、i.p.またはi.c.v.経路による薬物投与から15分後に行った。
【0174】
結果の分析および統計学
移動活動の変化は、反復測定しながら二元配置分散分析によって分析した。オハニンによって誘導された疼痛過敏作用は、一元配置分散分析を用いて分析した。全ての分散分析は続いて、ボンフェローニ補正により事後分析を行った。統計的有意は、p<0.05の時とした。
【0175】
合成遺伝子のデザイン、アセンブリ、およびクローニング
369bpを含む完全長の合成遺伝子は2つの断片からアセンブルしたが、各断片は、特異的アニーリングを促進するために50%を超える高いGC含有量を持つ21bpの重複領域をそれぞれ持つ、96bp〜117bpの2つの重複オリゴヌクレオチドから組み立てられた。プライマー1(5’−GGAATTCGTCGACGGATCCATGGCTAGCCCGCCGGGTAACTGGCAGAAAGCGGACGTCACCTTCGATAGCAACACCGCGTTCGAAAGCCTGGTGGTGAGCCCGGAC−3’)およびプライマー2(5’−TCCCCCCGGGCTGCCTAGGACGCACGGGCTCGAGGAGAAGCGTTCCGGGCTATCCGGCACACCTTTCGGCACACCAACGTTTTCCACGGTTTTTTTGTCCGGGCTCACCACCAGGCT−3’)を用いて、第1断片を調製した;プライマー3(5’−TCCCCCCGGGTTTCCGTTCCGGAAAACACTTCTTCGAGGTGAAATACGGTACCCAGCGTGAATGGGCGGTGGGGCTAGCGGGTAAAAGCGTGAAGCGTAAGGGTTAC−3’)およびプライマー4(5’−GACTAGTAAGCTTGCGGCCGCCTACAGCCACCACAGACCTTTCTGCCAGATACGTTCTTCCGCACCAGCCTTAAGTAACCCTTACGCTTCACGCT−3’)を用いて第2断片を調製した。下線を付したヌクレオチドは、XmaI制限部位のフランキング配列である。両断片を生成するPCR混合物は、合計容積25μlの中に最終濃度0.3UのPlatinum Taqポリメラーゼ、0.2mM dNTP混合物、および0.2μMのプライマーを含んでいた。増幅条件は次の通りである:94℃/1分間を1サイクル;94℃/30秒、55℃/30秒、72℃/1分間を20サイクル;72℃/5分間の最終伸長。2つの断片はXmaIで消化し、一つに連結して完全長の合成遺伝子を得た。この連結産物をpGEMT−easyベクターにクローニングし、配列を決定した。
【0176】
組換え体オハニンの発現
発現ベクター内にクローニングするために、369bpの合成遺伝子断片を制限エンドヌクレアーゼBamHIおよびNotIで二重消化した。ベクターM(pET32Aの改良版)を用いて、大腸菌BL21/DE株にて合成オハニンを発現させた。サブクローニングの結果、N末端がヘキサヒスチジンタグから成る融合タンパク質が発現した。発現させるために、ベクターM/オハニンを含む単一コロニーを100μg/mlのAmp(アンピシリン)を含むLB培地に接種し、37℃、200rpmで14時間インキュベーションした。一晩培養したものを100μg/mlのAmpを1:50の希釈率で含む新鮮なLB培地に接種した。再度、細菌培養物を37℃、200rpmで、培養物のA600が約0.6に達するまでインキュベーションした。次にイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)を最終濃度0.1mMになるように加えて発現を誘導し、さらに細菌を集める前に16℃、200rpmで16時間インキュベーションした。細菌細胞は使用時まで−80℃で保管した。大腸菌での組換え体タンパク質の発現は、Laemmli(15)の方法に従った、15%のアクリルアミドゲルを用いたSDS−PAGE(ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動)によって分析した。
【0177】
Hisタグの付いた融合タンパク質を発現している細胞を15分間融解し、最終濃度0.5mg/mlのリゾチームを用いて、4℃で15分間溶解し、続いて適切に冷却しながら、溶解緩衝液(10mM Tris−HCl、5mM β−ME pH8.0)の中で軽く超音波処理(1分間処理を6回)を加えた。16,000rpmで遠心分離した後、封入体および細胞破砕物を含む沈殿を集め、変性条件(6M GdnCl、10mM Tris−HCl、5mM β−MEpH8.0)で結合緩衝液中に再懸濁した。
【0178】
融合タンパク質の精製、リフォールディング(再折りたたみ)、および切断
沈殿物溶解のプロセスは、変性条件の下、結合緩衝液を用いて4℃で少なくとも4時間続けた。結合緩衝液で溶解できなかった細胞破砕物は、遠心分離によって取り除いた。上清を結合緩衝液で事前に平衡化しておいた荷電Ni−NTA樹脂カラムにかけた。アフィニティークロマトグラフィーは製造元のガイドラインに従って実施した。洗浄緩衝液(10mMのIMD(イミダゾール)、6M GdnCl、10mM Tris−HCl、5mM β−ME pH8.0)を用いて徹底的に洗浄した後、結合したタンパク質を最小容積の溶出緩衝液(250mM IMD、6M GdnCl、10mM Tris−HCl、5mM β−ME pH8.0)を用いて溶出した。融合タンパク質の溶出および濃度は280nmでモニタリングした。
【0179】
続くリフォールディングの段階は全て4℃で行った。最初に変性した融合タンパク質の濃度を、280nmでモニタリングした時に約6mg/mlになるよう溶出緩衝液を用いて調節した。次に変性した融合タンパク質15mg(2.5ml)を5mM β−MEを含むMilliQ水中にゆっくりと希釈した。5mM β−MEを含むMilliQ水をペリスタルティックポンプ(Amersham Pharmacia、Uppsala、Sweden)を用いて流速50μl/分で、激しく攪拌している変性融合タンパク質の入ったビーカーにGdnClの濃度がゆっくりと1Mに低下するまで送り込んだ。希釈された、折りたたまれていないタンパク質を、200倍過剰量の、5mM β−MEを含むMilliQ水に対し、12時間毎に交換しながら、36時間透析した。
【0180】
凍結乾燥したリフォールディングされた融合タンパク質(1mg/ml)を0.1M HClに溶解した。Met含量に対し100:1モル過剰量のCNBrを加える前に、溶液にNを3分間フラッシングした。CNBr(ブロモシアン)の溶液は、最終濃度が100mg/mlになるように適当量の固体を100%ACNに溶解して実験前に新たに調製した。反応混合液は、RP−HLPCにかけて精製する前に、室温、暗所で24時間インキュベーションした。
【0181】
円二色性(CD)スペクトルの測定
未変性および組換え体オハニンの二次構造は、経路長2mmのセルとJasco J810分光偏光計(Jasco Corporation、Tokyo、Japan)を用いて、260nmから190nmの波長域について22℃でUV CDスペクトルを記録して測定した。キュベットチャンバーは、実験前および実験中、持続的に窒素でパージした。未変性および組換え体タンパク質の測定は共にMilliQ水の中で行い、3回のスキャンの平均を取って、良好なシグナル対ノイズ比を得た。結果はdeg.cm.dmol−1を単位とした平均残留楕円率(θ)として表した。αヘリックス、βシート、およびランダムコイル含有量は、http://www.embl−heidelberg.de/〜andrade/k2d/に記載されている方法を用いて見積もった。
【0182】
トータルRNAの単離
トータルRNAは、RNeasy(登録商標)Miniキットの製造元のプロトコールに従ってキングコブラの毒液から単離した。簡単に説明すると、毒液腺組織(30mg)を液体窒素中で、モーターおよび−80℃に前もって冷却しておいた乳棒を用いて粉砕し、さらにHeidolph DIAX600ホモジェナイザー(Schwabach、Germany)を用いて600μlの緩衝液RLTと共に更にホモジェナイズした。完全に均一になった溶解物を20〜30秒後に得て、溶解物を最大速度で3分間遠心分離した。透明になった溶解物を新しい1.5mlのエッペンドルフチューブに移した。70%エタノール(550μl)を溶解物に加え、ピペッティングによってよく混合した。次に混合液を、15秒間、13,000rpmの遠心分離にかけるための2mlの収集用チューブの上にセットしたRNeasyミニスピンカラムに連続的にかけた。ピペットを使って緩衝液RW1(700μl)をRNeasyカラムに加え、カラムを15秒間、13,000rpmで遠心分離して洗浄した。RNeasyカラムを新しい採取用チューブに移した。緩衝液RPE(500μl)を用いてRNeasyカラムを15秒間、13,000rpmで洗浄した。ピペットを使って更に500μlの緩衝液RPEをRNeasyカラムに加え、2分間、最大速度で遠心分離してRNeasy膜を乾かした。RNeasyカラムを新しい1.5mlのエッペンドルフチューブに移した。無RNase水(40μl)をRNeasy膜の上に直接加えた。室温で1分間インキュベーションした後、1分間、14,000rpmで遠心分離を行い膜からRNAを溶出した。RNAの完全性は、変性アガロースゲル電気泳動によって調べた。
【0183】
逆転写酵素−ポリメラーゼチェインリアクション(RT−PCR)
遺伝子特異的配列を生成するために、QIAGEN(登録商標)OneStep RT−PCRキットを用いてRT−PCRを行った。簡単に説明すると、RT−PCR混合液は合計容積50μlの中に2μlのQIAGEN OneStep RT−PC Enzyme Mix、ならびに最終濃度250ngのトータルRNA、0.4mMのdNTP混合物、および0.6μMの縮重プライマーを含んでいた。使用した縮重プライマーは:RT1センスプライマー5’−GGNAAYTGGCARAARGCNGAY−3’およびRT2アンチセンスプライマー5’−CCACCANARNCCYTTYTGCCA−3’であった。逆転写および増幅条件は次の通りである:逆転写、50℃/30分間;初期PCR活性化段階、95℃/15分間;直後に94℃/1分間の変性、50℃/1分間のアニーリング、72℃/2分間の伸長の3段階サーマルサイクリングを30サイクル;および最終伸長、72℃/10分間。次にPCR産物を1.5%TAEアガロースゲル電気泳動で分離した。pGEMT−easyベクターに連結する前に最も強いバンドを切り出し、精製した。pGEMT−easyベクター内の挿入体の配列を、T7およびSP6プライマーを用いて両鎖について、ABI PRISM(登録商標)3100Genetic Analyzer(Applied Biosystem、Foster City、CA、USA)を用いてジデオキシチェインターミネーション法により決定した。ABI PRISM(登録商標)BigDye(商標)Terminator Cycle Sequencing Ready Reactionキット(バージョン3.0)を用いてサイクルシークエンシング反応を行った。配列データの分析は、Sequencing Analysis 3.7(Sample Manager)ソフトウエア(Applied Biosystem、Foster City、CA、USA)を用いて行った。
【0184】
cDNA末端の5’−および3’−迅速増幅(RACE)
5’−および3’−RACE−Ready cDNAライブラリーは、SMART(商標)RACEキットを、製造元プロトコール通りに使用して構築した。cDNA増幅の場合はPCR反応混合液を調製した。5’−RACE反応混合液は、合計容積25μlの中に、2.5μlの5’−RACE Ready cDNA、5μlのUniversal Primer Mix(UPM)、ならびに最終濃度1.5UのPlatinum Taqポリメラーゼ、1.5mMのMgCl、0.2mMのdNTP混合物、および0.2μMのアンチセンスプライマー(GSP2)(5’−CTTCCCAGCTAACCCAACAGCCCATTCCC−3’)を含んだ。3段階のサーマルサイクリングプロフィールは次の通りである:94℃/1分間のホットスタートを1サイクル;94℃/30秒間の変性、67℃/30秒間のアニーリング、72℃/2分間の伸長を30サイクル、それに続いて72℃/10分間の最終伸長である。完全長のcDNA配列を生ずる3’−RACE反応混合液は、合計容積25μl中に、2.5μlの5’−RACE Ready cDNA、5μlのUniversal PrimerMix(UPM)、および最終濃度1.5UのPlatinum Taqポリメラーゼ、1.5mMのMgCl、0.2mMのdNTP混合物、および0.2μMのセンスプライマー(GSP1)(5’−GATCATTTGATCCAGAGAAGACACAGTCTC−3’)を含んだ。3段階のサーマルサイクリングプロフィールは次の通りである:94℃/1分間のホットスタートを1サイクル;94℃/30秒間の変性、68℃/30秒間のアニーリング、72℃/2分間の伸長を30サイクル、それに続いて72℃/10分間の最終伸長である。PCR産物は1.5%TAEアガロースゲル電気泳動で分離した。pGEMT−easyベクターに連結する前に最も強いバンドを切り出し、精製した。完全長のRACEクローンの配列を決定し、DNAsis For Windows(バージョン2.5)から入手できるコンティグ結合方法を用いてアセンブルした。
【0185】
組換え体プローオハニンの発現
シグナルペプチド領域を除く全オープンリーディングフレームをカバーしたcDNAに、PCRを用いて両端に制限部位を加えた。cDNA断片の導入および増幅に使用したプライマーは次の通りである:センスプライマー(19K1)5’−GTCGACGGATCCATGTCACCTCCTGGGAATTGGCAG−3’およびアンチセンスプライマー(19K2)5’−AAGCTTGCGGCCGCTTAAAGATTTGCGAGTGAAACACG−3’。PCR反応混合液は、合計容積25μl中に、最終濃度1.5UのPlatinum Taqポリメラーゼ、1.5mMのMgCl、0.2mMのdNTP混合物、および0.2μMを含んだ。3段階のサーマルサイクリングプロフィールは次の通りである:94℃/1分間のホットスタートを1サイクル;94℃/1分間の変性、70℃/30秒間のアニーリング、72℃/1分間の伸長を30サイクル、それに続いて72℃/5分間の最終伸長である。ゲル精製したPCR産物を、発現ベクター内にクローニングするために制限エンドヌクレアーゼBamHIおよびNotIで消化した。発現ベクターであるベクターMを用いて、プロ−オハニンを大腸菌BL21/DE3株で発現した。サブクローニングの結果、N末端領域がヘキサヒスチジンタグから成る融合タンパク質が発現した。
【0186】
発現を目的として、ベクターM/プロ−オハニンを含む単一コロニーを100μg/mlのAmpを含むLB培地に接種し、37℃、200rpmで振盪しながら一晩培養した。種培養物を、100μg/mlのAmpを1:50の希釈率で含む新鮮なLB培地に接種した。再度、細菌培養物を37℃で、200rpmで振盪しながら、培養物のA600が0.6に達するまで培養した。IPTGを最終濃度0.1mMになるように加えて発現を誘導した。さらに細菌を集める前に16℃で、200rpmで振盪しながら更に培養した。細菌培養物を30分間、6,000rpmで遠沈した。Hisタグを発現している細胞を最終濃度0.5mg/mlのリゾチームを用いて、4℃で15分間溶解し、続いて溶解緩衝液(10mMのTris−HCl、5mM β−ME pH8.0)中で、適切に冷却しながら軽く超音波処理した。16,000rpmで遠心分離した後、上清を集めた。
【0187】
融合タンパク質の精製および切断
上清を荷電Ni−NTA樹脂カラムにかけた。アフィニティークロマトグラフィーは製造元のガイドラインに従って実施した。洗浄緩衝液(10mM IMD、10mM Tris−HCl、5mM β−ME pH8.0)を用いて徹底的に洗浄した後、結合したタンパク質を最小容積の溶出緩衝液(250mM IMD、10mM Tris−HCl、5mM β−ME pH8.0)を用いて溶出した。融合タンパク質の溶出および濃度は280nmでモニタリングした。
【0188】
凍結乾燥した純粋な融合タンパク質をMilliQ水に、0.5mg/mlの濃度になるように溶解した。保存トロンビンはMilliQ水を使って1U/μlの濃度に調製した。次にトロンビンを、組換え体タンパク質200μgに対しプロテアーゼ1Uの割合で加え、22℃でゆっくり振盪しながら切断反応を16時間続けた。大腸菌での組換え体タンパク質の発現および切断は、Laemmli(15)の方法に従った、15%のアクリルアミドゲルを用いたSDS−PAGEによって分析した。切断された組換え体タンパク質は、Jupiter C18半調製カラムを用いたRP−HPLCによって、その融合ペプチドおよびトロンビンから分離された。組換え体タンパク質の確認および正確な分子量(±0.01%)は、エドマン分解配列決定およびESI/MSによって決定した。
【0189】
ゲノムDNAの単離
ゲノムDNAは、DNeasy(登録商標)Tissueキットの製造元のプロトコールに従ってキングコブラの肝臓組織から単離した。簡単に説明すると、肝臓組織(25mg)を液体窒素中で、モーターおよび−80℃に前もって冷却しておいた乳棒を用いて粉砕した。組織粉末を新しい1.5mlのエッペンドルフチューブに移した。緩衝液ATLおよびプロテイナーゼKをそれぞれ180μlおよび20μl加えて、細胞を溶解した。溶解物を振盪中の水槽の中で、55℃でインキュベーションした。3時間後、400μgのRNaseAを加え、ゆっくり混合し、16℃で2分間インキュベーションしてRNA汚染を防止した。70℃で10分間インキュベーションする前に、緩衝液AL(200μl)を加えて、ゆっくり混合した。100%エタノール(200μl)を溶解物に加えてゲノムDNAを沈殿させた。1分間、8,000rpmで遠心分離するために、溶解物および白色の沈殿の混合物を2ml採取チューブ上に設置したDNeasyミニスピンカラムにかけた。DNeasyスピンカラムを新しい採取用チューブに移した。緩衝液AW1(500μl)を用いてDNeasyカラム中でゲノムDNAを洗浄し、1分間、8,000rpmで遠心分離した。さらに500μlの緩衝液AW2を用いてゲノムDNAを洗浄してからスピンカラムをさらに14,000rpm、3分間の遠心分離にかけ、次の溶出時に残留エタノールが確実に持ち込まれれないようにした。DNeasyカラムを新しい1.5mlのエッペンドルフチューブに移した。緩衝液AE(200μl)をDNeasy膜に直接かけた。室温で1分間インキュベーションした後、1分間、8,000rpmで遠心分離を行い膜からゲノムDNAを溶出した。ゲノムDNAの完全性は、0.8%アガロースゲル電気泳動によって調べた。
【0190】
ゲノムDNAのPCR
gDNA増幅のためにPCR反応混合液を調製した。PCR反応混合液は、合計容積25μl中に、鋳型となるgDNAを1μl、ならびに最終濃度として1.5UのPlatinum Taqポリメラーゼ、1.5mMのMgCl、0.2mMのdNTP混合物、および0.2μMのプライマーを含んだ。使用したプライマーは:図15−Aに示すセンス(gDNA1)5’−TCACCTCCTGGGAATTGG−3’およびアンチセンス(gDNA2)5’−AAGATTTGCGAGTGAAAC−3’である。3段階のサーマルサイクリングは、94℃/1分間のホットスタート、続く94℃/1分間、60℃/30秒間、72℃/3分間を30サイクル;および72℃/10分間の最終伸長を含んだ。PCR産物は1.5%アガロースゲルで分析し、強いバンドを切り出して精製した。挿入体を担持する16個のクローンの配列を、T7およびSP6プライマーを使って両鎖について決定した。16個全てのクローンについて、追加の内部プライマーを用いて配列を決定して配列を完成させ、DNAsis For Windows(バージョン2.5)から入手できるコンティグ結合方法を用いてアセンブルした。
【0191】
メカニズムに関する研究
これらの実験で使用したオハニンおよびプロ−オハニンをコードする遺伝子は、前述したようにベクターMにクローニングされ、大腸菌株BL21(DE3)に形質転換された。精製は若干変更を加えたPungら(34)の方法に従って行った。精製されたN末端オリゴヒスチジンタグ付きオハニンおよびプロ−オハニン(His−オハニンおよびHis−プロ−オハニンとそれぞれ称する)を免疫蛍光検出に直接使用した。
【0192】
オハニンおよびプロ−オハニンのIn vivo投与
体重20〜25gのSwissアルビノマウスを用いた。脳室内および腹腔内注射は共に、Pungら(34)が記載した方法を用いて行った。次に動物を全採血して、外科的に脳を取り出した。
【0193】
凍結解剖
マウスの脳を、ロボトミー外科技術を用いて取り出し、30%ショ糖、50mM Tris−アセタート、5mM EDTA(pH7.4)を含み、完全プロテアーゼインヒビターカクテル錠剤(Roche)を補充した溶液の中に、4℃で12時間入れた。
【0194】
次に溶液中の脳に、前もって−25℃に冷却しておいたLeica CM840クリオトームを使って凍結解剖するための準備を行った。チャンバー内にクリオチャックを置き、十分量のOptimal Cutting Temperature媒体(OCT)をチャックの上部まで加えて、媒体をほぼ凍結状態にした。次に脳をその横に横方向に置いてからさらにOCTを加えて、脳全体をOCTで覆い、20分間放置して凍結させた。次にチャックを逆さまにして、温度が平衡に達するまで液体窒素に浸した。次に脳をクリオトームに載せて、10μmの切片を切り出し、Superfrost Plus(Menzel−Glaser)スライドの上に載せた。スライドは−20℃で保存した。アッセイ前にスライドを、4℃にて、0.01%BSAを溶解したリン酸緩衝食塩水(PBS)の中に一晩入れて、タンパク質および抗体のスライド表面への非特異結合を防止した。
【0195】
In vitro結合アッセイ
タンパク質は0.05μMの濃度でPBSに溶解した。次にタンパク質溶液(1ml)を、注射していない脳の切片を載せた各スライドに掛けて4℃で一晩インキュベーションした。次にスライドを氷冷したPBSと共に振盪インキュベータの中に入れてすすぎ洗いし、振盪インキュベータで室温にて30分間振盪した。競合アッセイについては、最初のすすぎ洗い段階が終わった後に、1mlの第2タンパク質溶液を各スライドに加えて4℃にて一晩、再度インキュベーションし、すすぎ洗い処置を繰り返した。
【0196】
すすぎ洗い段階後に、氷冷したPBSを用いて、振盪インキュベータの上で、それぞれ室温にて15分間、更に2回洗浄を行った。
【0197】
免疫蛍光
Anaspec Inc製のウサギ抗His抗体(α−His、ヤギ)を、PBS中に1:1000の割合で使用した。抗体溶液(1ml)を調製済みの各スライドに掛けて、一晩、4℃でインキュベーションした。次にスライドを、振盪インキュベータの中の氷冷PBS中に入れて、室温で15分間振盪インキュベータで振盪し、3回洗浄した。Molecular Probes製Alexa−fluo488で標識した抗ウサギ二次抗体を1:500の割合で使用した。二次抗体溶液をスライドの上に掛けて、暗所、4℃で一晩インキュベーションした。スライドを一次抗体洗浄時と同様にして暗所で洗浄し、半乾燥状態で放置した。次にProlong Gold Antifadeマウンティング媒体をDAPI(Molecular Probes)と共にスライドの上に加え、カバーガラスをその上に載せた。脳の切片は、Axiocam HRcデジタルカメラアタッチメントの付いたZeiss Axiovert 200M顕微鏡で観察した。連続写真は、Axiovisionバージョン4.3.0.101を用いて、405および480nmの波長で撮影した。写真はPhotoshopバージョン5.5を使って編集し、重ね合わせた。
【0198】
結果
キングコブラ毒液からの新規タンパク質の同定
Ophiophagus hannah(キングコブラ)の粗毒液のプロフィールをLC/MC(図1)を使って調べ、毒液中に新規の興味深いタンパク質成分を同定した。LC/MSで検出したペプチドおよびタンパク質は、保持時間別に系統だててまとめた(図1−A)。50分後に溶出したタンパク質は比較的ノイズの多いm/zスペクトルを示したことから、これらの分子についてはその質量を決定しなかった。これは、タンパク質のサイズが大きいこと、ならびに糖化およびその他の翻訳後修飾によるものと思われた。このようにしてLC/MSを用いたキングコブラ毒液の質量プロファイリングからは、この技術が有効でなく、限界があることが明らかになった。我々はLC/MSプロフィールを用いて、まずよく知られている毒素ファミリーの質量と異なる質量を持つタンパク質を探した。我々は分子量11951.35±3.92Daを持つタンパク質を同定したが、これは確立されたどのファミリーとも異なっており、それ故に我々はこの新規タンパク質を更に研究することとした。
【0199】
新規タンパク質の単離および精製
前記新規タンパク質を、2段階の精製手順を介してキングコブラ毒液から精製した。第1段階は、ゲル濾過クロマトグラフィーを用いた粗毒液の分離を含む。新規タンパク質の分子量はおおよそ12kDaであることから、ゲル濾過クロマトグラフィーには、Superdex30(Hiload 16/60)カラムを選択した。粗毒液のゲル濾過では5つの主要ピークが得られた(図2−A)。我々はゲル濾過クロマトグラフィーの先頭の3つのピークをRP−HPLCにかけた。RP−HPLCから出てきた個々の分画をESI/MSを用いて評価した(データ未提示)。ゲル濾過のピーク1bから、38〜40%の緩衝液B(80%ACNの0.1%TFA溶液)(図2−B)の勾配に溶出されたタンパク質分画が均一であり、分子量が11951.47±0.67Daであることが見出された(図2−C)。新規タンパク質の全体収量は、粗毒液1gからおおよそ1mgであった。
【0200】
アミノ酸配列の決定
未変性タンパク質のN末端配列をエドマン分解によって決定し、その結果、先頭40個の残基が同定された。前記N末端配列は、既知のヘビ毒素ファミリーのタンパク質のいずれとも配列相同性を示さなかった。全配列を決定するために、ピリジルエチル化タンパク質をLys−Cエンドペプチダーゼ、トリプシン、およびギ酸で消化した。各消化物からのペプチドは逆相HPLCによって分離した(図3)。精製ペプチドの分子量およびアミノ末端配列を得て、全長のアミノ酸配列を完成させた(図4)。ペプチドおよびタンパク質全体の配列は、消化ペプチドの計算質量と観察質量とを比較して確認した(図3−D)。観察分子量は計算分子量とよく一致した。新規タンハク質は1個の遊離システインと共に107個のアミノ酸残基を含み、翻訳後修飾は含んでいなかった。我々はこのタンパク質を、それがキングコブラOphiophagus hannahの毒液から精製されたことからオハニンと命名した。
【0201】
オハニンの配列分析
BLASTPアルゴリズム(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)(16)を用いてオハニンの完全長アミノ酸配列と他のタンパク質の配列とを比較し、モノクルコブラ(Naja kaouthia)から単離されたタイ(Thai)コブリン(SP:P82885)との間に93%の配列同一性があることを示した。その配列はタンパク質データベースに寄託したが、タイコブリンに関する発表文献はない。かくしてオハニンとタイコブリンは、ヘビ毒素の新規ファミリーの最初のメンバーを形作っている。タイコブリンとの間を除いてオハニンはGenBankデータベース内のその他タンパク質との間に有意な配列類似性を示さなかった(E値>10−5)。
【0202】
第2段階として、onserved Proteinomainatabase(保存タンパク質ドメインデータベース)(CDD)(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/Structure/cdd/wrpsb.cgi)(17)を用いて保存ドメインを探索し、ドメインがタンパク質の構造および機能の基本単位であるとする仮定(18)に基づいて、オハニンの生物学的機能を推測した。オハニンの残基9〜107は、端部を切りそろえたPRY−SPRYドメインと全体で44%の同一性と54%の類似性を示した(図5)。PRYはSPRYドメインと交互に存在しているドメインである(詳しくは考察を参照)。SPRYドメインは、B30.2類似ドメイン内のサブドメインとして同定された(19)。SPRYドメインおよびB30.2類似ドメインは、様々なタンパク質で見出されている(詳しくはHenryら、(20、21)を参照せよ)。
【0203】
In vivo毒性試験
オハニンを、マウスでのin vivo毒性試験に用いた。全てのマウスについて、実験開始前には活動的であることが観察された。タンパク質をi.p.注射すると、1mg/kgおよび10mg/kgの用量が注射されたマウスについては静かになり、動きが緩慢になることが観察された。しかしながらマウスは注射2時間後には回復し、四肢および呼吸器系に麻痺の顕著な兆候は認められなかった。10mg/kgの用量でさえ死亡例は無かった。注射後24時間目の肉眼による病理分析からは、コントロール動物から得た病理分析と比較して、脳、心臓、肺、腎臓、脾臓、および肝臓に出血または壊死を示す証拠は認められなかった(データ未提示)。
【0204】
移動活動
in vivo毒性試験での我々の観察を定量的に検証するために、注射したマウスの移動活動に対するオハニンの作用を調べた。図6−Aに示すように、オハニンは0.1mg/kg、1mg/kg、および10mg/kgの用量では、i.p.注射後に用量依存的な移動低下を誘導した(F3,30=5.787、p<0.01)。移動活動の低下は、図6−Aに示すように10mg/kgの用量と0.1mg/kgの用量の間(p=0.030);10mg/kgの用量とコントロール(p=0.004)の間で統計学的に有意であった。10mg/kgの用量では、全運動カウント数がコントロール(1942±147)に比べて742±190まで低下した。図6−Bに示すように、この用量依存的な阻害は、注射後10分の時点でさえ異なっていた。2元配置反復測定分散分析が示すように、1時間の実験期間中、同一用量内には統計学的に有意な時間効果は存在しておらず、阻害作用からまだ回復していないことが示唆された。実験期間(1時間)を超えてこの作用を測定することはしなかった。長時間の身体的活動および食事を与えないことはマウスを消耗させる。それ故に、実験期間を超えた場合の動きの緩慢化は、タンパク質の作用だけによるものではない可能性がある。
【0205】
脳室内注射を利用して、中枢神経系に対するオハニンの直接作用について評価した。i.c.v.に用いた投与量は、高、中、および低用量いずれもi.p.で使用した用量に比べ約1000倍少なかった。オハニンは、図6−Cに示すように統計学的に有意(F3,26=9.112、p<0.001)且つ用量依存的な移動低下を示し、0.3μg/kg、1μg/kg、および10μg/kgそれぞれのコントロールと比較した時のp値は0.027、0.009、および0.000であった。0.3μg/kgの用量でさえ、合計運動カウントはコントロールのマウス(2109±264)に比べて1155±248に低下した。これに加えて反応の開始が、注射直後から用量依存的に低下し、1時間で終了した(図6−D)。全実験期間を通して、同一用量内に有意な時間効果は存在しなかった。このことは、極めて低用量であるが、i.p.注射の場合に似ていた。i.p.およびi.c.v.注射それぞれのIC50(移動カウントを〜50%阻害するのに必要な用量)値は3.25mg/kgおよび0.5μg/kgであった。かくしてオハニンはi.c.v.経路で注射した時に、〜6,500倍低い用量で移動低下を誘導する高い能力を示し、観察された移動に対する作用について中枢神経系の経路が示唆された。
【0206】
ホットプレートアッセイ
オハニン投与したマウスに熱痛刺激が起こす痛覚について、ホットプレートアッセイを用いて評価した。ホットプレートアッセイで使用した投与量は、移動活動に使用したものと同じであった。疼痛刺激に対するオハニンの作用は、i.p.およびi.c.v.注射15分後に評価した。図7−Aおよび図7−Bに示すように、i.p.およびi.c.v.注射は共に同様のU字型の用量反応曲線を示した。オハニンをi.p.注射した場合については、全投与量について有意な作用は認められなかった。(F3,28=0.867、p>0.05)(図7−A)。しかしながら、0.3μg/kgおよび1μg/kgの用量でi.c.v.注射した時には、オハニンは用量依存的な疼痛過敏作用を示した(F3,50=6.390、p<0.01)。しかし、より高い用量の10μg/kgでは、有意な疼痛過敏作用は存在しなかった。図7−Bに示すように、潜伏期間は、1μg/kgとコントロールの間(p=0.002);1μg/kgと10μg/kgの間(p=0.015)で統計学的に有意であった。
【0207】
合成遺伝子のデザイン、アセンブリ、およびクローニング
粗毒液中に元々存在しているオハニンの量は少ないため、オハニンをコードする合成遺伝子を、そのタンパク質配列に基づき、帰納的(recursive)PCR法(22)によって構築した。オハニンは糖化またはジスルフィド架橋のような翻訳後修飾を含んでいないことから大腸菌発現システムを選択した。第2に、大腸菌発現系でのオハニンの過剰発現は、組換え体タンパク質を適切量提供して、その構造−機能相関についての我々の今後の研究を容易にする上でも有利である。
【0208】
合成遺伝子のデザインおよび構築の全体ストラテジーを図8に示す(詳細については考察も参照)。図8−Aは、ベクターMでの発現のための合成遺伝子構築体を示す。図8−Bは、完全長の合成遺伝子を逆翻訳したDNA配列を示す。369bpの合成遺伝子を得るために重複したオリゴヌクレオチドを生成するためのストラテジーを図8−Cに示す。2組のオリゴヌクレオチドを用いて2つの断片(P1およびP2)をアセンブルした。次にこの2つの断片をXmaI部位を介して連結し全体遺伝子を生成した。重複しているオリゴを伸長して断片1および2を生成するためのPCR反応を、2組のオリゴヌクレオチド(図8−D)を用いて行った。XmaI制限部位を介した断片の連結によって、369bpの完全長合成遺伝子を得た(図8−E)。合成遺伝子をpGEMT−easyベクターにクローニングし、発現ベクター内にサブクローニングする前にT7およびSP6プライマーを使って両鎖について配列を決定した。
【0209】
組換え体オハニンの発現
ベクターM/オハニン構築体を含む大腸菌を用いて組換え体オハニンを発現させた。0.1mM IPTGを用いて、16℃で一晩誘導した後に細菌培養物から調製した全タンパク質のSDS−PAGE分析から、見かけ上の分子量が約14kDaのタンパク質が大量にあることが証明された。未誘導および誘導した培養物から抽出した全タンパク質と、融合タンパク質を可溶性および不溶性タンパク質に分画化したものを、一つにまとめて比較したものを図9−Aに示す。融合タンパク質に相当する14kDa(1として矢印で示す)の明瞭なバンドが不溶性分画に見られた。発現ベクター、細菌株、培養時の細胞密度、インキュベーション時間、緩衝液、および使用したIPTGのような様々なパラメータを変えても、組換え体タンパク質の発現について有意な差は観察されなかった(データ未提示)。
【0210】
融合タンパク質の精製および切断
融合タンパク質内のHisタグによって、変性条件下において、単一のアフィニティーカラムを用いて迅速に精製することができる。精製段階を図9−Bに示す。レーン3は1つの主要種(〜14kDa)を示し、レーン5はリフォールディング後に見かけ上の分子量14kDaを持つ融合タンパク質を示す。未変性タンパク質と比較した時に、組換え体タンパク質に追加された2kDaは、N末端のHisタグ、トロンビン、およびCNBr切断部位に対応している(図8−A)。細菌培養物1リットルから、Ni−NTAアフィニティークロマトグラフィーを用いて、25mgのHisタグ付き融合タンパク質が精製された。
【0211】
CNBrを用いて、組換え体タンパク質(図9−C)からHisタグを切断した。切断後、組換え体オハニンをRP−HPLCを用いて精製し(図10−A)、タンパク質の分子量および均一性をESI−MSを用いて決定した。組換え体オハニンは、ESI/MSで評価したところ均一で、分子量は12226.91±0.89Daであった(図10−B)。組換え体タンパク質の同一性を、エドマン分解によるN末端配列決定を利用して更に確認した。組換え体オハニンのN末端配列はASPPGであり、これはCNBr切断の効率を上げるために挿入されたアラニンを除いて未変性タンパク質のN末端と一致した。
【0212】
組換え体オハニンの特徴付け
未変性および組換え体タンパク質の二次構造をCD分光分析によって評価した(図11−A)。未変性タンパク質のCDスペクトルは、200nmおよび215nm近くで極端に負の楕円率を示し、βシートおよび複数のβシート構造を持つランダムコイル構造の存在が示唆された。組換え体タンパク質のCDスペクトルは未変性タンパク質のそれに近く、200nmおよび215nmに負の楕円率を示した。CDスペクトルから計算した二次構造の骨格を図11−Bに示す。
【0213】
組換え体オハニンが未変性タンパク質に類似した薬理作用を有しているか検証するために、我々はi.c.v.投与したマウスでのその疼痛過敏作用について調べた。組換え体オハニンは、未変性タンパク質と同様のU字型の用量反応曲線を示した(F3,45=5.783、p<0.01)(図7−Bおよび図7−C)。1μg/kg用量とコントロールの間;および1μg/kgと10μg/kg用量の間に有意差が認められ、それぞれのp値は0.007および0.015であった。これらの結果は、組換え体オハニンが構造的および機能的に毒液から単離された未変性タンパク質に類似していることを示している。
【0214】
オハニンのクローニングおよび配列決定
キングコブラ毒腺から抽出されたトータルRNAは微量であったが(抽出当たり〜4μg)、RNAの質は比較的良好であった。我々はRT−PCRとRACE技術を組み合わせて用い、完全長のオハニンのcDNAを得た。遺伝子特異的な配列を単離するために、RT−PCRをまずトータルRNAを鋳型にして行った。縮重プライマーRT1およびRT2は既知のアミノ酸配列に基づいてデザインした。増幅された長さ〜200bpの断片をゲル精製し、pGEMT−easyベクターに連結して配列を決定した。配列決定分析からは、8つのクローン全てが、オハニンの部分配列と完全に相同であるアミノ酸配列をコードしていることが明らかにされた。
【0215】
次に5’コーディング領域をその5’−UTR(非翻訳領域)と一緒にUPM(Universal Primer Mix)およびアンチセンスプライマー、GSP2を用いて増幅した。2本のバンド、それぞれ550および600bpを5’−RACE増幅によって得た(図12−A)。しかしながら、550bpのバンドだけがオハニンの予想コーディング配列を示した。我々はさらに5’−UTR配列の開始部分からセンスプライマー、GSPIをデザインした。GSP1およびUPMを用いて3’−RACE増幅を行い、1558bpの完全長cDNAを得た(図12−B)。オハニンの完全長cDNA配列およびそれから導出されたアミノ酸配列を図12−Cに示す。
【0216】
cDNAは190アミノ酸の推定オープンリーディングフレームをコードしている。それには234bpの5’−UTRと、ポリAテールを含む783bpの3’−UTRがフランキングしていた。興味深いことに、推定オープンリーディングフレームは、成熟オハニンのC末端にさらに63個のアミノ酸をコードしていた。これはヘビを起源とする成熟タンパク質について、初めて報告されたC末端にプロペプチドセグメントを持つcDNA配列である。それ故に、そのプロ−タンパク質ドメインが付いたオハニンを、プロ−オハニンと命名した。導出されたアミノ酸配列分析から、成熟オハニンを産生するプロ−オハニンの切断は二塩基性のRR部位に起こると思われる。
【0217】
プロ−オハニンの配列アラインメント
BLASTNアルゴリズム(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)(15)を用いた完全長cDNA配列の比較からは、今までのところGenBankデータベースに寄託されている他のヌクレオチド配列と配列相同性は確認されていない。しかしながら、導出されたアミノ酸配列は、完全なPRY−SPRYおよびB30.2類似ドメインと相同性を示し、プロ−タンパク質にはHenryら(20、21)が提案している3rdモチーフが存在していた。導出されたタンパク質配列と、B30.2類似ドメインとのアラインメントを図13に示す。タンパク質配列はPRY−SPRYドメインと、38%の全体同一性および49%の類似性を共有した。B30.2類似ドメインを持つタンパク質の概略図を図14に示す。
【0218】
プロ−オハニンの発現
プロ−オハニンを、大腸菌を用いて発現させるために発現ベクターにクローニングした。プライマー19K1および19K2を用いて増幅し、同時にMetおよび停止コドンだけでなくベクターMにクローニングするための制限部位も加えた。増幅された、制限部位をフランキングした配列を消化して、BamHI部位およびNotI部位で発現ベクターと連結した。連結のための特異的制限部位を使用することで、プロ−オハニンが適切な向きで確実に挿入されるようにし、一方Metを第2の代替切断部位として挿入した。増幅断片を示すアガロースゲルを図15−Aに示す。プロ−オハニン発現ベクターの構造の概略図を図15−Bに示す。
【0219】
最終構築体を大腸菌株DH5αにトランスフェクションし、クローニングした。陽性反応を示したクローンから得たプラスミドを、組換え体プロ−オハニンを発現させるために大腸菌株BL21(DE3)にトランスフェクションした。単一コロニーを接種して100mlの種培養物として増殖させた。種培養物を更に新鮮なLB培地に1:50の希釈率で接種した。細菌培養中のプロ−オハニンの発現は、後期対数期に0.1mMのIPTGを用いて誘導し、SDS−PAGEによって分析した。IPTG誘導後に細菌培養物から調製した全タンパク質を、未誘導培養物からの全タンパク質と比較し、分子量約20kDa(融合タンパク質の予想値)を持つバンドの発現が増加していることが分かった(図16−A)。
【0220】
可溶性融合タンパク質は、非変性条件下にてNi−NTAカラムを用いて全タンパク質から精製した(図16−B)。融合タンパク質の合計収量はおおよそ50mg/1リットル細菌培養物であった。精製した融合タンパク質をトロンビン切断にかけた(図16−C)。トロンビン切断で得た収量は、CNBr切断で得た場合に比べ若干高かった。組換え体プロ−オハニンは、RP−HPLCを用いて精製した(データ未提示)。RP−HPLCプロフィールは、融合ペプチドとプロ−オハニンにそれぞれ対応する2つの明確に分離したピークを示した。ESI−MSを用いて、プロ−オハニンの正確な分子量および均一性を決定した。Biospec Reconstructスペクトルは、プロ−オハニンが均一で、分子量が19277.27±2.32(図17)であることを示した。プロ−オハニンの先頭8個の残基は、エドマン分解配列決定法によってGSMSPPGNであると決定された。この配列は、プロ−オハニンの推定N末端配列に一致しており、Gly、Ser、およびMetはトロンビン切断時に持ち込まれ残った残基であった。
【0221】
組換え体プロ−オハニンの二次構造
オハニンとプロ−オハニン両方の二次構造含有率を、12.5μM濃度について、CD分光法を用いて測定した(図18−A)。オハニンのCDスペクトルは、215nm付近で極端な負の楕円率を示し、βシート構造の存在を示した(7%αヘリックス、48%βシート、および45%ランダムコイル)(図18−B)。オハニンと異なり、プロ−オハニンのCDスペクトルは、22%αヘリックス、29%βシート、および49%ランダムコイルから成る混合型の二次構造プロフィールを示した。従って、図18に見られるように、プロ−オハニンのC末端プロペプチドセグメントの存在が、そのαヘリックス含有量を上げていることは明らかである。オハニンおよびプロ−オハニンは共に〜50%のランダムコイル構造を持っている。
【0222】
プロ−オハニンの機能的特徴付け
精製プロ−オハニンについて、マウスでのin vivo毒性を調べた。それはi.p.投与時には、10mg/kgの用量まで非致死性であった。成熟オハニンを注射した時に見られたような、緩慢化の明瞭な兆候は見られなかった。これに加えて24時間後にマウスを屠殺した時の目視検査では、脳、心臓、肺、腎臓、脾臓、および肝臓に、検知可能な出血または壊死は見られなかった(データ未提示)。
【0223】
プロ−オハニンの移動活動に及ぼす作用
前節で記載したように、オハニンはi.p.注射後に用量依存的、且つ統計有意に移動低下を誘導する(F3,30=5.787、p<0.01)(34)。マウスの移動活動に及ぼすプロ−オハニンの作用を、0.1mg/kg、1mg/kg、および10mg/kgの用量をi.p.注射して調べた。最高用量(10mg/kg用量)時のプロ−オハニンの全運動カウントは約2048±225であり、コントロールのカウント(1942±147)と同等であった。従ってプロ−オハニンは、オハニン(図19−A)に比べると、i.p.注射後、実験マウスの運動性に有意に阻害をもたらさないことは明らかである(F3,28=0.251、p>0.05)(図19−B)。
【0224】
プロ−オハニンを用いて、i.c.v.注射時の移動に対する直接作用についても調べた。この場合もi.c.v.注射に用いた用量は、i.p.注射に用いた用量に比べ約1000倍低くかった。興味深いことに、低用量(0.3μg/kg;p=0.000)でもコントロールのマウス(2109±264)に比べてマウスの全運動カウントは190±43まで低下した。したがってプロ−オハニンは、0.3μg/kg、1μg/kg、および10μg/kgの全ての用量について、i.c.v.注射後、高いマウス移動低下誘導能力を示した(F3,25=35.565、p=0.000)(図19−Dおよび図19−C)。
【0225】
プロ−オハニンの疼痛過敏に及ぼす作用
オハニンと同様にして、ホットプレート実験に及ぼすプロ−オハニンの作用を注射15分後に評価した。プロ−オハニンは、腹腔内投与時には、オハニン注射したマウスのような用量依存性もU字型の用量反応曲線も示さなかった(F3,28=0.922、p>0.05)(図20−Bおよび図20−A)。脳室内注射時には、プロ−オハニンは使用した全ての用量(0.3μg/kg、1μg/kg、および10μg/kg)についてコントロールに比べて比較的短い潜伏期間を示した(F3,39=3.275、p<0.05)(図20−D)。疼痛過敏作用は、0.3μg/kg用量とコントロールとの間でのみ有意であった(p=0.026)。
【0226】
移動実験およびホットプレートアッセイについての観察は、オハニンとプロ−オハニンとの間に興味深い薬理作用の差を示した。オハニンはi.p.でもi.c.v.注射経路でも移動低下と疼痛過敏を誘導したが、プロ−オハニンは脳室内投与時のみ活性であった。
【0227】
サザンブロットハイブリダイゼーション
上記した様に、オハニンには2種類のmRNAサブタイプが存在している。これら2種類のmRNAが2つの独立した遺伝子の産物であるか、または異なるスプライシングに由来するものであるか明らかにすることは興味深い。第1段階として我々はゲノムサザンハイブリダイゼーション実験を行った。キングコブラのゲノムDNAをEcoRI、HindIII、BamHI、およびNdeIで別々に消化した。これらゲノムDNA消化物を、そのcDNAのヌクレオチド319〜616からデザインした297bpのDIG標識プローブでハイブリダイゼーションした。我々は、4種類全ての消化物について単一のバンドを観察し(図21)、オハニンがキングコブラゲノムの中では単一の遺伝子にコードされていることが示唆された。
【0228】
オハニン遺伝子のクローニングおよび配列決定
オハニン遺伝子のゲノム構造を決定するために、ゲノムDNAのPCRおよび「ゲノムウォーキング」法を用いた。オハニンのcDNAの配列を用いて、エクソン−イントロンの境界をマッピングした。最初の増幅では、gDNAsigpepおよびgDNAstopを用いて、そのコーディング領域を増幅した。得られた断片は〜1.9kbであった(データ未提示)。ゲノムDNAの3’−UTR領域をPCR増幅しようとした我々の試みからは、別の〜750bpのバンドが得られた。
【0229】
我々は転写開始部位からシグナルペプチド領域までについてデザインしたプライマーを用いて、ゲノムDNAからの5’−UTR領域増幅を試みた。しかしながら、複数回試みたもののバンドは得られなかった。このことから我々は、我々のプライマーがイントロンの存在によって中断されているか、または用いたサーマルサイクリングプロフィールがまだ最適でないのではないかと考えた。そこでゲノムウォーカーライブラリーを構築した。「ゲノムウォーク」は、アンチセンスプライマーgDNA5UTR1およびgDNA5UTRnes2を、キットのアダプタープライマー(AP1およびAP2)と一緒に用いて行った。得られた〜1.65kbの断片の配列を完全に決定した。
【0230】
cDNAの5’領域および以前に得た〜1.65kbのゲノムDNA断片(データ未提示)からデザインしたプライマー1−gDNA5UTRおよび2−gDNA5UTRを用いてgDNA PCRを行い、更に上流に別の〜1.8kbのものを得た。サーマルサイクリングプロフィールを最適化して、我々は更にプライマー9−gDNA5UTRおよび6−gDNA5UTRを用いて、cDNAの転写開始部位領域に対応する〜1.4kbの別の断片も生成した(データ未提示)。
【0231】
かくして我々はオハニンcDNAの5’−UTRから3’−UTR領域に至る合計7086bpの遺伝子配列を得た(図22および図23)。オハニンの全てのエクソンとイントロンについて、スプライス結合部にフランキングしている配列を決定した(図23−A)。エクソン−イントロン境界のドナーおよびアクセプタのスプライス部位から、イントロンがGTで始まり、AGで終わるという規則を確認した。オハニン遺伝子は5個のエクソンと4個のイントロンを含んでいた。オハニンのコーディング領域は、同定された5個のエクソンのうちの2つのエクソンからできている。エクソン1、2、および3は、主に5’−UTRをコードしている。興味深いことにエクソン2はmRNAのサブタイプの一つではスプライシングを受けて除かれていた(図1−C、図4−B、および図4−C)。エクソン4は、残りの5’−UTR領域(11bp)、シグナルペプチド、およびオハニンの先頭8個のアミノ酸残基を含んでいる。エクソン5は、残基9〜107までのオハニン、プロペプチドセグメント、ならびに3’−UTRに対応する配列をコードしている(図22および図23)。
【0232】
His−プロ−オハニンのin vitro結合研究
マウスでの移動活動に関するこれまでの研究から、オハニンとプロ−オハニンは共にi.c.v.注射によって強力な移動低下作用を示すことが明らかになった。そこでN末端にHisタグを融合させたプロ−オハニン(His−プロ−オハニンと呼ぶ)について、まずin vitroでの脳切片結合能力を試験した(図24)。我々の結果は、図25に示すようにHis−プロ−オハニンが脳の海馬および小脳領域に特異的に結合することを示した。脳切片の他の領域は染色されずに残った。同様にHis−プロ−オハニンと共に予備インキュベーションしなかったコントロール実験も蛍光染色を示さなかった(図25)。
【0233】
その特異性を更に確認するために、競合結合コントロールアッセイを行った(図26)。脳切片を未変性オハニンと予備インキュベーションし、続いて染色前にHis−プロ−オハニンとインキュベーションした。蛍光染色が低下するのが分かった(図27)。かくして我々の結果は、His−プロ−オハニンが脳に特異的に結合すること、およびこの相互作用が成熟タンパク質の領域を介して仲介されることを示した。
【0234】
His−オハニンおよびHis−プロ−オハニンのIn vivo結合研究
次に我々はオハニンおよび/またはプロ−オハニンが血液脳関門を通過して観察された薬理作用を発揮するか確認することを試みた(図28)。かくしてHis−オハニンおよびHis−プロ−オハニンをi.p.およびi.c.v.経路から注射し、3種類の濃度について、脳内のタンパク質の存在を免疫蛍光を用いて検出した。図29は、His−オハニンがin vivoにおいて小脳および海馬に用量依存的な様式で結合することを示している。しかしながら、His−プロ−オハニンを投与すると、同じ領域の染色が顕著に低下することが見られた(図30)。このことは、プロ−オハニンが血液脳関門を通過できることを示してはいるが、適切な免疫蛍光染色を可能にするために投与したタンパク質の量がこれまでに報告した最高濃度(10mg/kg)よりも1000倍高いことを指摘しておかねばならない。
【0235】
得られた結果は、オハニンが中枢神経系に直接影響を及ぼしてその作用を示すという、またオハニンが血液脳関門を通過して頭蓋空間を横切るという我々のこれまでの報告を裏付けている。これに加えて、前駆体タンパク質、プロ−オハニンは、仮にできたとしても効率的に横断できないことも示唆された(図30)。
【0236】
考察
我々は、LC−MSを用いた最初のキングコブラ毒液スクリーニングで、異常な分子量を持つ新規タンパク質の存在を確認した(図1)。ここでは、このタンパク質、オハニンの精製および特徴付けについて記載している。オハニンの完全アミノ酸配列は、エドマン分解によって決定した。それは単一のシスティン残基を含む107個のアミノ酸残基を有している(図3)。それは確立されたどのヘビ毒タンパク質ファミリーとも類似性を有していない。かくしてオハニンおよびタイコブリン(タイコブラについて報告されたアイソフォーム)は、新規のヘビ毒タンパク質ファミリーの最初のメンバーである。このファミリーのメンバーの固有の特徴は、システィン残基の含有量が低いことであると思われる(<1%)。これに対し、他の全てのヘビ毒タンパク質ファミリーは、複数のジスルフィド結合および高いシスティン残基含有量を持つ(一般的に8〜10%より高い)。
【0237】
オハニンおよびB30.2類似ドメインタンパク質
CDD研究は、オハニンがPRY−SPRYドメインと類似性を共有していることを明らかにした(図5)。SPRYドメインの3つのコピーは、3種類の哺乳類リアノジン受容体(RyR)サブタイプに最初に確認された。このドメインは、Dictyostelium discoideumの二重特異性キナーゼ、splAにも3コピー存在している。splAおよびRyRに於いて反復していることから、これらの配列はSPRYドメインと呼ばれている(23)。SPRYドメインは、B30.2類似ドメインファミリーのサブドメインであることが確認されている(19)。SPRYドメインは、B30.2類似ドメインと比較するとN末端領域に欠失がある。〜50個の残基を含むPRYドメインが、SPRYドメイン(〜110〜120残基)のN末端領域に常に見いだせることを指摘することは興味深い。それ故に、両PRY−SPRYドメインをB30.2類似ドメインのサブドメインと見なすことができるだろう。
【0238】
B30.2ドメインはヒトクラスI組織適合性複合体(MHC)領域内にマッピングされる単一のエクソンにコードされている約160〜170アミノ酸の保存されたタンパク質ドメインである(24)。そのためにそれは、それが最初に同定されたMHC1領域内のB30.2エクソンに従って命名された。B30.2類似ドメインは、核、細胞質、膜貫通、または分泌タンパク質内、特にC末端領域に存在し、これらのタンパク質はN末端ドメインのタイプおよび/または機能に従って分類されている(20、21)。第1のカテゴリーは、BBoxおよびコイルドコイルドメインを持つRING(eallynterestingewene)フィンガータンパク質のサブセットを含む。第2のカテゴリーは可変(IgV)および定常1(IgC1)タイプの2つの免疫グロブリン類似折りたたみを持つBTN(ブチロフィリン)およびBTN2/BTN3推定タンパク質を含む。第3のカテゴリーは、オニダルマオコゼSynanceja horridaの毒液から単離された致死毒素であるストヌストキシンを含む。これに加えて、エンテロフィリン、SOCSボックス(サイトカインシグナル伝達の抑制因子)、およびビタミンK依存性ガンマカルボキシラーゼファミリーもまたB30.2類似ドメインをそれらのC末端領域に含んでいる。B30.2類似ドメインタンパク質は様々な種および様々なタンパク質コンテクストに見出されるが、B30.2類似ドメインの機能はまだ明確には分かっていない(20、21)。構造上の類似性に基づいて、我々はオハニンを急速に拡大しているB30.2類似ドメインファミリーの新規メンバーとして加えた。しかしながら、それはB30.2類似ドメインを含む他のクラスのタンパク質のいずれとも無関係と思われた。オハニンが、B30.2類似ドメインを含む他のタンパク質に比べ、わずか8個のアミノ酸残基だけの比較的短いN末端領域を有していることを指摘することは興味深い。これに加えて、オハニンはより短いC末端領域も有しており、B30.2類似ドメインのC末端領域の50〜60アミノ酸残基を欠いている。B30.2類似ドメインに存在する同様のC末端切断は、ヒト細胞株KG−1(gb:D50919)およびStaf50(gb:X82200)から単離されたKIAA0129にも見出されている(図5)。
【0239】
オハニンの生物学的機能
オハニンは、i.p.注射により、実験マウスに用量依存的様式で移動低下を誘導した(図4)。ヘビ毒素中の神経毒は骨格筋の麻痺誘導において特に重要であることを指摘しておく(25)。オハニンが末梢神経筋接合の遮断を誘導するか試験するために、われわれは単離したニワトリの二腹頸神経筋標本(CBCNM)に対する作用について研究した。オハニンはCBCNM刺激の直接単収縮反応だけでなく、ACh、CCh、およびKCIのような外から作用させたアゴニストに対する反応にも作用を示さなかった(Y.F.Pung、J.C.Wickramaratna、N.G.Lumsden、W.C.Hodgson、およびR.M.Kini、未発表の観察)。これらの結果は、オハニンがシナプス前およびシナプス後毒性(筋肉毒性を含む)を持たないことを示している。このことから、我々はオハニンをマウス脳室内に直接注射して、中枢神経系での薬理作用を検証した。オハニンは、i.p.注射した場合に比べて、i.c.v.注射した時に、〜6,500倍より強力な移動低下活性を生じた。それ故オハニンは、おそらくは中枢神経系に対する直接作用を介して移動低下を誘導する。オハニンが血液脳関門を通過できるか明らかにするために、更に研究が行われている。
【0240】
ホットプレートアッセイでは、i.p.およびi.c.v.注射経路の両方で、U字型の用量反応曲線が得られた(図7−Aおよび図7−B)。低および中濃度では平均潜在期間が短かったが、高用量と各コントロールとの間に潜在期間について明瞭な差は存在しなかった。この結果は、運動系が正常に機能することに依存しているホットプレートアッセイの結果を解釈する際には、オハニンによる移動低下障害作用について考慮すべきであることを示唆している。投与されたオハニンの用量が高いほど潜伏期間が長くなることは、運動が大きく障害されたことによる可能性がある。その結果として、マウスは熱痛を感じても直ちにそれに反応することができないのかもしれない。さらにホットプレートアッセイでは、全身投与に比べてi.c.v.注射したとき、タンパク質が非常に低い用量で反応を誘導できることは、、オハニンが中枢神経系におそらく直接作用することを強く示唆している。しかしながら、オハニンの正確な作用モードについては、今もなお研究の途上にある。
【0241】
ブチロフィリンは泌乳中の乳脂肪球の出芽および放出に関係している(24、26)。そのB30.2類似ドメインはキサンチンデヒドロゲナーゼ/オキシダーゼと相互作用し、この相互作用がその機能にとって重要であると考えられている(26、27)。同様のドメインを含むタンパク質は、それらの機能を類似のタンパク質−タンパク質相互作用および機序を通して発揮するという仮定に基づいて、Henryら(20、21)は、内皮細胞由来弛緩因子(おそらくはNOもしくはNO産生物質)の放出を介して伝達されるというSNTXの血圧降下活性のメカニズムを提案している。これによれば、SNTXはそのB30.2類似ドメインを介してキサンチンオキシダーゼと相互作用し、キサンチンオキシダーゼが媒介するNO合成酵素の阻害を解除する。これは次にNOの合成増加および血管弛緩をもたらすだろう(20、21、28、29)。我々の研究では、オハニンは、静脈投与した場合1mg/kgの用量までは、麻酔したSprague−Dawleyラットの血圧に何ら有意な作用を示さなかった(Y.F.Pung、S.M.Atan、S.Moochhala、およびR.M.Kini、未発表の観察)。我々はオハニンとキサンチンオキシダーゼとの直接的な相互作用を検証していないが、オハニンの機能がキサンチンオキシダーゼとは無関係であることを提案している。
【0242】
合成遺伝子のデザインおよびオハニンのクローニング
我々は、ヘビ由来の小型の新規毒液タンパク質の構造機能相関研究に関心がある(7)。毒液タンパク質を薬物デザインおよび抗毒素のモデルとして用いるこれらの研究では、タンパク質を得る確実で安価な方法が必要とされる。タンパク質を獲得するための一つの潜在的方法は、それらを固相ペプチド合成およびコンビナトリアルケミストリーを用いて作成することである。第2の、より安価な方法は、分子生物学的技術を用いて細菌宿主細胞にタンパク質を過剰発現させることである。タンパク質製造のための合成遺伝子は、強力な方法である。この方法では、cDNA配列に対し、単一アミノ酸またはタンパク質ドメイン全体を容易に変更できる(30)。
【0243】
合成遺伝子は、次のようにデザインした:第1に、オハニンのアミノ酸配列を、大腸菌で最も頻度の高いトリプレットコドンを用いてヌクレオチド配列に逆翻訳した(31)。第2に、広範な発現ベクターへ容易にサブクローニングできるように合計6個の一般的な制限部位を合成遺伝子の5’および3’領域に加えた。第3に、将来のカセットを基本とする突然変異導入のために、10個の固有の制限部位を、コードするアミノ酸配列が変化しないようにして配列内に導入した。最終目標は、各種制限酵素が遺伝子を1回のみ切断するように制限部位を含むヌクレオチド配列を作製することであった。これに加えて、制限部位をB30.2類似ドメインの保存配列モチーフおよび遺伝子のシステイン残基にフランキングさせ、且つ約20〜45bp毎に存在させた。このような構造により、二種類の制限エンドヌクレアーゼを用いて消化することで、コードされているアミノ酸配列を容易に操作し、除去し、且つ交換用のDNAセグメントを連結することが可能となる。第4に、オハニンがそのアミノ酸配列中にMet残基を含まないことから、Met−Ala残基のコドンをオハニンのN末端に組み込んで発現後の融合タンパク質からのCNBr切断を容易にした。第5に、最後のアミノ酸残基の後に停止コドンを入れて、翻訳の工程を停止させた。最後に、DNAmanおよびDNAsisのような各種コンピュータプログラムを用いて配列をチェックし、続いて不要の制限部位および過剰な二次構造の可能性について目視検査を行った(図8)。この合成遺伝子を用いて、我々は大腸菌に組換え体オハニンを産生させた。組換え体オハニンは、CDによって決定されたその折りたたみ、および機能について(図11)、ならびに生物学的活性(図7−C)について未変性のタンパク質に類似していた。従って、デザインされた合成遺伝子は、この新規タンパク質の構造−機能相関に関する将来の研究にとって重要である。
【0244】
オハニンの生理学的役割
ヘビ毒素は薬理学的に活性なペプチドおよびタンパク質の複合混合物である。それらは攻撃および防御の両機能に重要な役割を果たしている。神経毒のような、これらのタンパク質のいくつかは、被食者を麻痺させるのに関係するが、一方加水分解酵素を含むその他のものは被食者を消化するのに関係している。我々は、オハニンは被食者の運動性を緩慢にすることで貢献し、その捕獲を助ける。疼痛過敏作用もまた、捕食動物に疼痛を誘導することで防御機能に役立つだろう。毒液中に存在するその他成分と関係してオハニンが果たしている役割を明らかにするには、更なる研究が必要である。
【0245】
プロ−オハニンのプロペプチドセグメントの潜在的意義
オハニンは毒液腺の中で、プレプロ−タンパク質としてC末端プロペプチドセグメントと共に合成される(図12)。これは、成熟タンパク質のC末端にプロペプチドセグメントを含むヘビ毒タンパク質として報告された、これまでのところ最初のものである。
【0246】
特徴付けするために、プロタンパク質を大腸菌に発現させ、精製した。組換え体プロ−オハニンは非常に可溶性であるタンパク質として得たが、これに対し組換え体オハニンは、溶解性を上げる努力をしたものの発現後不溶性である。従って、プロペプチドセグメントの存在は、大腸菌での大規模発現後に成熟タンパク質を可溶化するのに役立つことは明らかである。しかしながら、プロペプチドセグメントが溶解度を上げること、および/または毒液腺細胞もしくは管腔内での成熟タンパク質の正しい折りたたみを高めることを促進するのかは明らかではない。成熟タンパク質が粗毒液中に微量存在することを指摘しておく。かくしてこのことは、毒液内でのオハニンの溶解性にとってプロペプチドセグメントが必要ない可能性を示唆している。
【0247】
オハニンと同様にプロ−オハニンについても、マウスにおいてその生物学的機能を評価した。移動活動およびホットプレートアッセイの両分析は、プロ−オハニンが腹腔内投与したマウスにおいて、成熟オハニンと比較した時、同様の薬理作用は示さないことを強く示唆していることを指摘しなければならない。しかしプロ−オハニンは、マウス脳室内に直接注射した時、強力な移動低下および疼痛過敏作用を示した。プロタンパク質の大きなサイズおよび/または立体構造の変化が、プロ−オハニンの血液脳関門通過を阻害し、その結果中枢神経系における分子標的との相互作用を妨害しているのかもしれない。興味深いことに、ポリペプチドセグメントの存在はオハニンの血液脳関門通過能力を阻害するが、それは中枢神経系でのオハニンの薬理作用を促進する。プロ−オハニンはi.c.v.経路から注射した時には、オハニンよりも〜35倍強力であることを指摘しなければならない。さらには、プロ−オハニンは、0.3μg/kgの用量にて、実験マウスの移動活動を〜90%阻害できる。
【0248】
エクソンの起源
我々はまた、オハニン遺伝子がPRY−SPRYおよびB30.2ドメインの直前に局在する単一のイントロンを有することも示した(図22および23)。現在イントロンの起源については2つ見解がある。一つの理論、初期エクソンは、エクソンが古代ミニ遺伝子の子孫であり、イントロンはそれらの間の間隔であるというものである(32)。別の理論は、後期イントロンは、イントロンの挿入によって中断されていない遺伝子から分断された遺伝子が生じたというものである(33)。簡単に説明すると、最初の理論は、エクソンがタンパク質の個別の機能または構造単位を表すことを示唆するが、一方第2の理論はイントロンの挿入が若干無秩序であることを示唆している。プロ−オハニン遺伝子の構造上の類似性は、それがB30.2ドメインタンパク質と同一の先祖遺伝子から進化したらしいことを示している。このことは更に、オハニン遺伝子の進化が初期エクソン理論により近いことを示している。
【0249】
オハニンおよびプロ−オハニンのメカニズム
オハニンおよびプロ−オハニンが海馬および小脳に局在することは、移動低下作用を示すこのタンパク質の正確な性質を示唆している。海馬は、動物の移動活動に間接的に影響する代謝に関係することが分かっている。実際、海馬の神経細胞は、フェニルシクリプリン(phenylcycliprin)およびコカインによる移動低下に関係している。オハニンはアンタゴニストと同じ受容体に作用して、その移動低下作用を示す可能性がある。一方、小脳は動物の全体のバランスに関係している。アンフェタミンを用いたこれまでの実験は、小脳の神経細胞に作用することを示し、且つアンフェタミン投与の結果として移動低下を示すことを示した。また、同じ神経細胞がオハニンの相互作用にも関係している可能性もある。バランスに影響する神経細胞がオハニンの影響を受けるかは未だ不明であるが、バランスの欠如は全体的な移動能力の欠如をもたらすだろう。
【0250】
結論
我々は、キングコブラ毒液から新規タンパク質のオハニンを同定し、精製し、且つ機能的に特徴付けした。オハニンは移動低下および疼痛過敏をマウスに誘導する。i.c.v.経路により投与されたオハニンが全身投与した場合に比べ効果的であることは、末梢神経系の役割を排除することはできないが、その作用が中枢神経系を介していることを強く示唆している。我々は将来の構造および機能相関研究のために、合成遺伝子発現系も確立した。オハニンの分子レベルの詳細な作用メカニズムは現在研究中である。
【0251】
これに加えて、我々はまたオハニンのcDNAをクローニングし、配列を決定した。1558bpの完全長のcDNA配列は、C末端にプロペプチドセグメントを持つプレプロ−オハニンをコードしている。組換え体プロ−オハニンは、i.c.v.注射時には移動に対し強力な作用を示したが、i.p.注射時には示さなかった。このことから、オハニンの生物学的活性にとっては成熟が重要であると考えられる。ゲノムDNAの配列決定からは、5つのエクソンと4つのイントロンの存在が示された。興味深いことに、5’非翻訳領域をコードする第2エクソンは二者択一的なスプライシングを受ける。これらの所見を全てまとめると、オハニンはB30.2ドメイン含有タンパク質の新規サブファミリーを形成していることが示される。
【図面の簡単な説明】
【0252】
【図1】 キングコブラ毒からの新規タンパク質の探索。粗毒液(60μg)をPerkin−Elmer Sciex API300 LC/MS/MS質量分析装置に取り付けられたRP−Jupiter C18分析用カラムにかけた。結合したタンパク質は、80%ACNの0.1%TFA(v/v)溶液の直線勾配を用いて、50μl/分の流速で溶出した。関心対象のタンパク質を含有するピークを矢印で示す。
【図1−A】 LC/MSによってキングコブラ毒から検出されたペプチドおよびタンパク質の質量。
【図2】 新規タンパク質の単離および精製。(A)キングコブラ毒のゲル濾過。粗毒液(200mg)をSuperdex 30カラム(Hiload 16/60)にかけた。カラムを50mMのTris−HCl(pH7.4)で予備平衡化した。タンパク質を同一緩衝液中に1ml/分の流速で溶出した。水平の実線(ピーク1b)は関心対象のタンパク質を含有する分画を示す。(B)ゲル濾過のピーク1bのRP−HPLC。JupiterC18半調製カラムを0.1%(v/v)TFAを用いて平衡化した。関心対象のタンパク質を、38〜40%B(80%ACNの0.1%TFA溶液)の勾配を付けて2ml/分の流速でカラムから溶出した。矢印は、関心対象のタンパク質に対応するピークを示す。(C)新規タンパク質のESI/MS。タンパク質はBiospec Reconstructスペクトルによれば、11951.47±0.67Daの分子量を持つ。
【図3】 ペプチド消化物の精製。Lys−Cエンドペプチダーゼ消化ペプチド(A);トリプシン処理ペプチド(B);およびギ酸消化ペプチド(C)。
【図3−D】 オハニンのペプチドの理論質量および実測質量。
【図4】 オハニンのアミノ酸配列。タンパク質配列はエドマン分解によって決定した。太字、実線の矢印、未変性のピリジルエチル化オハニンのN末端配列;破線矢印、Lys−Cペプチド;点線矢印、トリプシンペプチド;および実線矢印、ギ酸消化ペプチド。
【図5】 オハニンのB30.2類似ドメインと他のB30.2類似ドメイン含有タンパク質との配列アラインメント。B30.2類似ドメイン含有タンパク質は次の通りである:オハニン(sp:P83234)、タイコブリン(Thaicobrin)(sp:P82885)、PRY−SPRYドメイン(PRY−SPRYドメインの保存配列は、CDDデータベースより得た)、RFP(リングフィンガータンパク質、gb:J03407)、BTN(ブチロフィリン(Butyrophilin)、sp:P18892)、アルファSNTX(ストヌストキシン(Stonustoxin)α−サブユニット、gb:U36237)、KIAA0129(gb:D50919)、およびStaf50(gb:X82200)。同一および保存された残基にはそれぞれ黒および灰色の陰を付けた。3種類の保存されたLDP、WEVE、およびLDYEモチーフには囲いを付けた。カッコ内の数字は、タンパク質のB30.2類似ドメイン間の類似性をパーセント表示したものである。次のアミノ酸残基グループ間の置換を保存的変更とする:Y、F、およびW;SおよびT;V、L、I、およびM;H、R、およびK;DおよびE;NおよびQ;AおよびG。
【図6】 マウスの移動活動に及ぼすオハニンの作用。オハニンi.p.注射後の移動活動の累積(A)および経時変化(B)(n=8〜9)。オハニンi.c.v.注射後の移動運動の累積(C)および経時変化(D)(n=7〜9)。移動活動の用量依存的な阻害は、オハニンのi.c.v.注射の方が6,500倍以上強力である。データは移動活動の平均値±S.E.Mで表している;(A)および(C)では一元配置分散分析を用い、(B)および(D)では二元配置分散分析を用いた;Bonferroni検定による事後分析:a、P<0.05;b、P<0.01、およびc、P<0.001。
【図7】 未変性の組換え体オハニンの疼痛過敏作用。未変性オハニンi.p.注射後の55℃ホットプレートアッセイでの潜在期(n=8)(A);および同i.c.v.注射後(n=8〜16)(B)。(C)組換え体オハニンi.c.v.注射後の潜在期(n=8から16)。未変性および組換え体オハニンは共にi.c.v.投与時に、低および中間用量について用量依存的な疼痛過敏を示した。データは、平均潜在期±S.E.Mで表している;一元配置分散分析後にBonferroni検定を行った:a、P<0.05およびb、P<0.01。
【図8】 オハニンの合成遺伝子のデザイン、構築、およびクローニング。(A)発現構築体の概略図。トロンビンおよびCNBr切断部位はそれぞれTbおよびCNBrで示した。2つの矢印の間のDNA断片がBamHIおよびNotI部位でベクターMに挿入された。(B)合成遺伝子の全長配列。アミノ酸配列をDNA配列の下に示した。10カ所の固有の制限部位(AatII、BstBI、AclI、XhoI、AvrII、XmaI、BspEI、KpnI、NheI、およびAflII)は太字で示している。(C)合成遺伝子構築のストラテジー。長さ96bp〜117bpの2組のオリゴヌクレオチドを用いて、2つの断片(P1およびP2)をアセンブルした。これら2つの断片を次にXmaI部位を介して連結し、全体遺伝子を作成した(詳細については実験手順を参照)。この2つの断片(D)および合成遺伝子(E)のアガロースゲル(1.5%、w/v)電気泳動像。
【図9】 組換え体オハニンのSDS−PAGE分析。サンプルを15%ポリアクリルアミドゲル上で分離し、クマシーブリリアントブルーR250で染色した。(A)大腸菌での組換え体オハニンの発現および溶解性。レーンM、予備染色した広域標準物質;レーン1〜5、それぞれ細菌培養物からIPTG誘導後0、10、12、14および16時間後に得た全タンパク質サンプル;レーン6および7、超音波処理後に上清および沈殿から得たタンパク質サンプル。(B)融合タンパク質の精製および巻き戻し。レーンM:予備染色されたプレシジョンプラス二色標準物質;レーン1および2、超音波処理を1回および2回行ったものから得た全タンパク質サンプル;レーン3、変性条件下でのアフィニティーカラムからの融合タンパク質の溶出;レーン4、空レーン;レーン5、巻き戻された融合タンパク質。(C)CNBrによる融合タンパク質の切断。レーンM、予備染色されたプレシジョンプラス二色標準物質;レーン1および2、切断前および後の融合タンパク質。融合ペプチド(〜2kDa)は15%ポリアクリルアミドゲルで分離するには小さすぎる。1、2、および3と印したバンドは、それぞれ発現した融合タンパク質、リゾチーム、および組換え体オハニンである。
【図10】 組換え体オハニンの精製。(A)トロンビン切断後の組換え体オハニンのRP−HPLC。矢印は、組換え体タンパク質含有分画を示す。(B)組換え体オハニンのESI/MS。組換え体タンパク質は、Biospec Reconstructスペクトルが指示するところによれば、12226.91±0.89Daの分子量を持つ。
【図11】 未変性および組換え体オハニンのCDスペクトル。(A)CDスペクトルは2mm路程キュベットを用いて記録した。測定はMilliQ水の中で行った。使用した濃度は12.5μMであった。未変性および組換え体オハニンのCDスペクトルは、それぞれ太線と細線で示している。(B)未変性および組換え体オハニンの構造内容。
【図12】 オハニンcDNAのクローニングおよび配列決定。(A)5’−RACE増幅。5’−UTRを伴うオハニンの一部コーディング領域を、GSP2およびUPMを用いた5’−RACE増幅によって得た。(B)3’−RACE増幅。ポリAテールを除く1558bpの全長cDNAをもたらす3’−RACE増幅を、GSP1およびUPMを用いて行った。(C)オハニン(gb:AY351433)のヌクレオチド配列および推定アミノ酸配列。ヌクレオチドは5’−から3’−方向に示している。最長のオープンリーディングフレームの逆翻訳より推定されたアミノ酸配列を示している:推定シグナルペプチドには下線をつけてある;オハニンは太字でマークした;2塩基切断部位は囲いを付け、プロペプチドセグメントはイタリックで示した。停止コドンはアスタリスクで示し、ポリアデニル化シグナル、AATAAAは二重下線を付けた。タイプIIcDNAのヌクレオチド消失部分には黒色の陰を付けた。
【図13】 B30.2類似ドメインの配列アラインメント。ドメインはプロ−オハニン(gb:AY351433)、タイコブリン(sp;P82885)、RFP(リングフィンガータンパク質、gb:NM 172016)、BTN(ブチロフィリン、gb:NP 038511)、PRY−SPRYドメイン(PRY−SPRYドメインの保存配列はCDDデータベースから得た)、SNTXのベータサブユニット(β−サブユニットストヌストキシン、gb:Q91453)、SNTXのアルファサブユニット(α−サブユニットストヌストキシン、gb:Q98989)、エンテロフィリン(gb:AF126833)、およびSPRYドメイン含有SOCSボックスタンパク質4(サイトカインシグナル伝達の抑制因子、gb:NP 660116)。同一および保存された残基には黒および灰色の陰を付けている。プロ−オハニンのArg−Arg2塩基切断部位は太字で示し、プロペプチドセグメントはイタリックで表した。3つの保存されたLDP、WEVE、およびLDYEモチーフには囲いを付けた。配列のアラインメントを最適にし、且つ相同性を最大にするために、ギャップ(−)を入れた。矢印はPRYとSRPYドメインの境界を示す。カッコ内の数字はプロ−オハニンのB30.2類似ドメインと他のB30.2類似ドメイン含有タンパク質の間の類似性のパーセンテージを表す。アミノ酸残基の次のグループ内の置換は保存的な交換とされる:Y、F、およびW;SおよびT;V、L、I、およびM;H、R、およびK;D、E、N、およびQ;AおよびG。
【図14】 B30.2類似ドメインを持つタンパク質の概略図。B30.2類似ドメインには黒色の陰を付け、未同定のドメインはドットを付けた。
【図15】 プロ−オハニンの発現構築体。(A)19K1および19K2プライマーから増幅されたプロ−オハニンに対応する核酸配列のアガロースゲル(1.5%、w/v)電気泳動。(B)発現構築体の概略図。トロンビンおよびCNBr切断部位は、それぞれTbおよびCNBrで示した。プロ−オハニンに対応する〜530bpのcDNA断片を、BamHIおよびNotI部位にある2つの矢印の間に挿入した。
【図16】 組換え体プロ−オハニンのSDS−PAGE分析。サンプルを15%SDS−PAGEゲル上で分離し、クマシーブリリアントブルーR250で染色した。(A)大腸菌での組換え体プロ−オハニンの発現。レーンM、予備染色されたプレシジョンプラス二色標準物質;レーン1、誘導前の細菌培養物から得た全タンパク質サンプル;レーン2、IPTG誘導後。(B)融合タンパク質の精製。レーンM:予備染色されたプレシジョンプラス二色標準物質;レーン1および2、未変性条件下でのアフィニティーカラムからの融合タンパク質の溶出。(C)トロンビンによる融合タンパク質の切断。レーンM、予備染色されたプレシジョンプラス二色標準物質;レーン1および2、切断前および後の融合タンパク質。1および2と印したバンドは、それぞれ発現した融合タンパク質および組換え体プロ−オハニンである。融合ペプチド(〜2kDa)は15%SDS−PAGEゲルで分離するには小さすぎる。
【図17】 RP−HPLCを用いた組換え体プロ−オハニンの精製。水平のバーは組換え体プロ−オハニンに対応するピークを示す。
【図18】 オハニンとプロ−オハニンのCDスペクトルの比較。(A)CDスペクトルは2mm路程キュベットを用い、MilliQ水内にて、12.5μMのタンパク質について記録した。太線、オハニン;細線、プロ−オハニン。(B)オハニンおよびプロ−オハニンの二次構造の内容。
【図19】 オハニンおよびプロ−オハニンの移動低下作用。オハニン(A)およびプロ−オハニン(B)腹腔内注射後(n=8〜9)の累積移動活動。オハニン(C)およびプロ−オハニン(D)のi.c.v.注射後(n=6〜9)の累積移動活動。データは移動活動平均カウント±S.E.Mで表した;一元配置分散分析を用いた;Bonferroni検定による事後分析:a、P<0.05;b、P<0.01、およびc、P<0.001。
【図20】 オハニンおよびプロ−オハニンの疼痛過敏作用。腹腔内注射後(n=8)(A)および(B);i.c.v.注射後(n=8〜16)(C)および(D)の55℃でのホットプレートアッセイ潜在期間。(A)および(C)、オハニンを注射したマウスから得られた潜在期間;(B)および(D)、プロ−オハニンを注射したマウスから得られた潜在期間。i.c.v.経路で投与した時、オハニンは低用量および中用量で用量依存的な疼痛過敏作用を示した;一方プロ−オハニンは、全ての用量について潜在期間は比較的短い。データは平均潜在時間±S.E.Mで表した;一元配置分散分析後にBonferroni検定を行った:a、P<0.05およびb、P<0.01。
【図21】 オハニンのゲノムサザンブロッティング。キングコブラのゲノムDNA(各レーンに10μg)をEcoRI、HindIII、RamHIまたはNdeI酵素で消化した。サザンハイブリダイゼーションは、4種類全ての消化について1本のバンドの存在を示している。かくしてオハニンは、キングコブラゲノム中の単一遺伝子によってコードされている。λHindIIIマーカーの移動位置が指示されている。
【図22】 オハニンゲノムの配列。ゲノムDNAのPCRおよび「ゲノムウォーキング」法の両方を用いて、7086bpの完全長のゲノム配列を得た。エクソン−イントロンの境界は、cDNAおよびゲノム配列に基づいて決定した。エクソンには灰色の陰を付けて大文字で示し、一方イントロンは小文字で示した。タイプIIcDNAの中で消失しているエクソンには黒の陰を付けた。3カ所あるATGは太字で示した;推定シグナルペプチドには下線を付けた;二塩基プロセッシング部位には囲いを付けた;プロペプチドセグメントはイタリックで印し、停止コドンにはアスタリスクを付け示し、ポリアデニル化シグナルであるAATAAAには二重下線を付けた。
【図23】 オハニンのゲノム構造。オハニン遺伝子は5つのエクソンと4つのイントロンを含んでいる。エクソン1〜5は、それぞれ53、76、95、96、および1238bpのサイズを持っている。イントロンはそれぞれ1160、1743、1292〜1333bpである。もう一つのスプラシング例ではエクソン2全体が除かれ、より短い1482bpの転写体ができる。完全なcDNAはタイプIと名付けられ、一方もう一つのスプラシング(エクソン2が無い)に対応する短いcDNAはタイプIIcDNAと名付けられた。
【図23−A】 オハニン遺伝子のエクソン−イントロンの境界。
【図24】 His−プロ−オハニンのin vitro結合研究のストラテジー
【図25】 His−プロ−オハニンとの予備インキュベーション無しの非蛍光コントロール実験と比較した、脳の海馬および小脳領域へのHis−プロ−オハニンin vitro結合アッセイでの蛍光を示す免疫蛍光スライド。
【図26】 His−プロ−オハニンの結合特異性を評価する競合結合コントロールアッセイを示す概略図。
【図27】 コントロールと比較したHis−プロ−オハニンの結合特性を示す免疫蛍光スライド。
【図28】 His−オハニンとHis−プロ−オハニンのin vivo結合研究のストラテジー。
【図29】 脳の(A)海馬および(B)小脳領域内でのオハニンおよびプロ−オハニンの用量依存的結合を示す免疫蛍光スライド。
【図30】 オハニンおよびプロ−オハニンの血液脳関門通過能力を示す免疫蛍光スライド。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)配列番号1の配列を含むタンパク質、
(b)配列番号3の配列を含むタンパク質、
(c)配列番号5の配列を含むタンパク質、
(d)配列番号7の配列を含むタンパク質、あるいは
(e)(i)(a)、(b)、(c)、もしくは(d)のタンパク質の対立遺伝子変異、
(ii)移動低下もしくは疼痛過敏の少なくとも一方を誘導する能力を保持した機能的均等物、または(a)、(b)、(c)、(d)、もしくは(e)(i)のタンパク質と共通の抗原決定基を有する機能的均等物である(a)、(b)、(c)、(d)、もしくは(e)(i)のタンパク質の機能的均等物、
(iii)活性断片が移動低下もしくは疼痛過敏の少なくとも一方を誘導する能力を保持しているか、または活性断片が(a)、(b)、(c)、(d)、(e)(i)、もしくは(e)(ii)のタンパク質と共通の抗原決定基を有している、(a)、(b)、(c)、(d)、(e)(i)、もしくは(e)(ii)のタンパク質の活性断片、または
(iv)(a)、(b)、(c)、(d)、(e)(i)、(e)(ii)、もしくは(e)(iii)のタンパク質を含む融合タンパク質
を含む群から選択されるタンパク質。
【請求項2】
請求項1に記載のタンパク質をコードする核酸分子。
【請求項3】
請求項2に記載の核酸分子を含むベクター。
【請求項4】
請求項3に記載のベクターで形質転換された宿主細胞。
【請求項5】
請求項1に記載のタンパク質を製造する方法であって、請求項4に記載の宿主細胞を培養することを含む方法。
【請求項6】
請求項1に記載のタンパク質を製造する方法であって、タンパク質の化学的合成を含む方法。
【請求項7】
化学的合成が固相ペプチド合成またはコンビナトリアルケミストリーでよい、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
動物を請求項1に記載のタンパク質を用いて免疫すること、および動物から抗体を採取すること、またはモノクローナル抗体作製に使用するために動物から細胞を採取することを含む、請求項1に記載のタンパク質に結合できるポリクローナルまたはモノクローナル抗体の作製方法。
【請求項9】
請求項1に記載のタンパク質に結合する抗体。
【請求項10】
動物を請求項1に記載のタンパク質を用いて免疫すること、および抗毒素として使用するために動物から抗体を採取することを含む、請求項1に記載のタンパク質に対する抗毒素を作製する方法。
【請求項11】
動物がウマ、ヤギ、ヒツジ、またはトリである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
請求項1のタンパク質に対し有効な抗毒素。
【請求項13】
請求項1に記載のタンパク質の調整因子を同定するための方法。
【請求項14】
請求項1に記載のタンパク質、請求項2に記載の核酸分子、請求項3に記載のベクター、請求項4に記載の宿主細胞、請求項9に記載の抗体、請求項11に記載の抗毒素、または請求項13の方法により同定された調整因子を含む、医薬組成物。
【請求項15】
医薬品に使用するための請求項1に記載のタンパク質、請求項2に記載の核酸分子、請求項3に記載のベクター、請求項4に記載の宿主細胞、請求項9に記載の抗体、請求項11に記載の抗毒素、または請求項13の方法により同定された調整因子。
【請求項16】
鎮静剤として使用するための医薬品製造への請求項1に記載のタンパク質、請求項2に記載の核酸分子、請求項3に記載のベクター、請求項4に記載の宿主細胞、請求項9に記載の抗体、請求項11に記載の抗毒素、または請求項14の方法で同定された調整因子の使用。
【請求項17】
神経系または筋肉系の疾患の治療に使用するための医薬品を製造するための請求項1に記載のタンパク質、請求項2に記載の核酸分子、請求項3に記載のベクター、請求項4に記載の宿主細胞。
【請求項18】
請求項1に記載のタンパク質、請求項2に記載の核酸分子、請求項3に記載のベクター、請求項4に記載の宿主細胞、または請求項14に記載の医薬組成物を動物に投与することを含む、動物を沈静化させる方法。
【請求項19】
請求項1に記載のタンパク質、請求項2に記載の核酸分子、請求項3に記載のベクター、請求項4に記載の宿主細胞、または請求項14に記載の医薬組成物を患者に投与することを含む、神経系または筋肉系の疾患を持つ患者を治療する方法。
【請求項20】
請求項1に記載のタンパク質を含む、防御用組成物。

【図1】
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【図1A】
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【図2】
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【図3】
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【図3D】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図12C】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図23A】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29A】
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【図29B】
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【図30】
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【公表番号】特表2008−525020(P2008−525020A)
【公表日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−548163(P2007−548163)
【出願日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【国際出願番号】PCT/SG2005/000429
【国際公開番号】WO2006/068625
【国際公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.WINDOWS
【出願人】(501482592)ナショナル ユニバーシティ オブ シンガポール (9)
【Fターム(参考)】