説明

新規ポリエステルアミドイミド及びポリエステルアミドをベースとする自己融着エナメル

相互に架橋することができる、求核基を有する樹脂、および場合によりアミド基を含む樹脂を含む自己融着エナメルであって、
(A)OH、NHR、SH、C(O)NHR、カルボキシレート、CH−酸性基、およびカルボアニオンからなる群から選択される求核基を有する少なくとも1種の樹脂5〜95重量%と、
(B)少なくとも1種のアミド基を含む樹脂0〜70重量%、場合によっては1〜70重量%と、
(C)少なくとも1種のポリウレタン樹脂0〜30重量%、場合によっては1〜30重量%と、
(D)少なくとも1種のエポキシ樹脂0〜30重量%、場合によっては1〜30重量%と、
(E)少なくとも1種の有機溶媒5〜95重量%と
を含み、
成分(A)の樹脂、および/または成分(B)が組成物に含まれる場合は成分(B)の樹脂が、α−カルボキシ−β−オキソシクロアルキルカルボン酸アミド基を含み、(A)〜(E)の重量パーセントが合計100%になり、自己融着エナメルのコーティングは、導電性電線に対する優れた接着性、および高い固着特性を有し、かつコーティングの高い再軟化温度をもたらす、自己融着エナメル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性電線の被覆表面の接着性に優れ、かつ被覆の再軟化温度が高い、新規ポリエステルアミドイミドおよびポリエステルアミドをベースとする新規自己融着(selfbonding)エナメルに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、一般的に使用される電線被覆剤は、クレゾール、フェノール、ベンジルアルコール、炭酸プロピレン、またはN−メチルピロリドンなどの適切な有機溶媒;キシレン、他の置換芳香族物質、脂肪族物質などの希釈液;ならびに少量添加の添加剤、触媒、および調節剤中のTHEIC[トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレート]ポリエステル、ポリエステル、ポリアミド、ポリアミド−イミド、THEICポリエステルイミド、ポリエステルイミド、またはポリウレタンなどの電線エナメルバインダーの溶液である。溶媒は、電線被覆剤の熱硬化中に蒸発する。高品質の被覆を得るためには、溶媒をできる限り完全に排除することが必要である。溶媒に加えて、硬化反応の副生物も、エナメル化相から、縮合反応による架橋中に生じる気相に移る。
【0003】
自己融着エナメル(電線被覆用組成物)は、通常、例えば個別の導電性電線を一緒に融着して、導電性電線のコンパクトで固定された巻物を形成するのに使用される。例えば、導電性電線は、通常、当業者によって知られているワイヤーコーティング、例えば多層ワイヤーコーティングで被覆される。自己融着エナメルは、多層ワイヤーコーティングの最後の硬化コーティング層上にトップエナメルとして塗布される。例えば回転子、固定子、または変圧器中で使用されるトップエナメル付き被覆電線を巻いた後、かつ得られた巻物を加熱した後、エナメル層は、巻線間で溶融し流動している。巻物を固定し、かつその機能を維持するために、巻線を積み重ねる。
【0004】
自己融着エナメルは、例えばポリアミドを含有する。例えば、米国特許第4420536号明細書および米国特許第4461805号明細書を参照のこと。独国特許出願公開第3612372号(A)明細書には、イミド官能基を含むポリアミドをベースとする自己融着エナメルが記載されている。このような自己融着エナメルは、熱可塑性系であり、その再軟化温度が低いため、したがって固定特性が低いため、限定される場合が多い。
【0005】
また、熱硬化性自己融着エナメルは、ポリアミドをベースとすることができるが、さらに硬化剤を含有することがある。独国特許出願公開第19903137号(A)明細書には、2成分調合物の使用を必要とする高反応性硬化剤を含む組成物が開示されている。他の組成物は、ブロックイソシアネートを硬化剤として含有する(例えば、カナダ特許第909990号明細書、独国特許出願公開第3517753号(A)明細書、欧州特許出願公開第461389号(A)明細書、および独国特許出願公開第3917197号(A)明細書)。コーティングの硬化中および/または後にブロッキング剤を放出することによって、排出、およびフクレ効果、したがって固着力の低下、または非揮発性ブロッキング剤の場合には、硬化コーティング中にブロッキング剤が残留するため軟化効果を引き起こす場合がある。また、このような組成物は、自己融着エナメルの再軟化温度範囲を限定する可能性がある。
【0006】
独国特許出願公開第3903483号(A)明細書には、高い熱エネルギーを必要とする、自己融着エナメル中、硬化剤としてのビスマレインイミドの使用が記載されている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、相互に架橋することができる、求核基を有する樹脂、および場合によりアミド基を含む樹脂を含む自己融着エナメルであって、
(A)OH、NHR、SH、C(O)NHR、カルボキシレート、CH−酸性基、およびカルボアニオンからなる群から選択される求核基を有する少なくとも1種の樹脂5〜95重量%と、
(B)少なくとも1種のアミド基を含む樹脂0〜70重量%、場合によっては1〜70重量%と、
(C)少なくとも1種のポリウレタン樹脂0〜30重量%、場合によっては1〜30重量%と、
(D)少なくとも1種のエポキシ樹脂0〜30重量%、場合によっては1〜30重量%と、
(E)少なくとも1種の有機溶媒5〜95重量%と
を含み、
成分(A)の樹脂、および/または成分(B)が組成物に含まれる場合は成分(B)の樹脂が、α−カルボキシ−β−オキソシクロアルキルカルボン酸アミド基を含み、(A)〜(E)の重量パーセントが合計100%になる。
【0008】
本発明による自己融着エナメルは、導電性電線の被覆表面の優れた接着性、および高い固着特性を可能にし、かつコーティングの高い再軟化温度をもたらす。エナメル化速度は、標準的自己融着エナメルの肯定的特性を失うことなく、標準的自己融着エナメルに比べて高くすることができる。本発明による自己融着エナメルは、保管の際に貯蔵安定性があり、丸くプロファイルされた導電性電線への良好な接着性を示し、適切な耐熱ショック性、ならびに非常に良好な電気的、熱的、および機械的諸特性をもつ高い表面品質を有する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
電線の被覆で知られている樹脂を、成分(A)として使用することができる。これらは、ポリエステル、またヘテロ環系の窒素含有環を有するポリエステル、例えばイミドおよびヒダントインおよびベンゾイミダゾール構造が縮合して分子となったポリエステルとすることができる。ポリエステルは、具体的には多塩基性の脂肪族、芳香族、および/または脂環式のカルボン酸ならびにその無水物、多価アルコール、ならびにイミドを含むポリエステルの場合はポリエステルアミノ基を含む化合物、および場合によっては所定量の単官能性化合物、例えば1価アルコールの縮合生成物である。飽和ポリエステルイミドは、好ましくはジオールに加えて、ポリオール、および追加のジカルボン酸成分としてジアミノジフェニルメタンとトリメリト酸無水物の反応生成物を含有することもできるテレフタル酸ポリエステルをベースとする。さらに、不飽和ポリエステル樹脂および/またはポリエステルイミド、ならびにポリアクリレートを使用することもできる。成分Aとして、下記:ポリアミド、例えば熱可塑性ポリアミド、芳香族、脂肪族、および芳香族−脂肪族のポリアミド、さらに例えばトリメリット酸無水物およびジイソシアナト−ジフェニルメタンから生成されたタイプのポリアミドイミドを使用することもできる。
【0010】
好ましくは、ポリアミド、ポリエステルイミドおよび/または不飽和のポリエステルを使用する。
【0011】
本発明による組成物は、さらに電線被覆産業において周知で一般的なタイプの別のバインダーを1種または複数含有することができる。これらは、例えばポリエステル、ポリエステルイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、THEIC−ポリエステルイミド、ポリチタン酸エステル−THEIC−エステルイミド、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリメタクリル酸イミド、ポリイミド、ポリビスマレイン酸イミド、ポリエーテルイミド、ポリベンゾオキサジンジオン、ポリヒダントイン、ポリビニルホルマール、ポリアクリレートおよびその誘導体、ポリビニルアセタール、ならびに/またはマスクされたイソシアネートとすることができる。好ましくは、ポリエステルおよびTHEIC−ポリエステルイミドを使用する(参考文献:Behr,“Hochtemperaeturbestandige Kunststoffe”Hanser Verlage,Munich 1969;Cassidy,“Thermally Stable Polymers”New York: Marcel Dekker, 1980;Frazer,“High Temperature Resistant Polymers”New York:Interscience,1968; Mair,Kunststoffe 77(1987)204)。
【0012】
したがって、さらに、フェノール樹脂、および/またはメラミン樹脂、触媒、ナノスケール粒子、および/または元素−有機化合物、場合によっては一般的に使用される添加剤および/または補助剤、ならびに顔料および/または充填剤を含有する電線被覆用組成物が好ましい。
【0013】
このタイプの電線被覆用組成物は、
(A)OH、NHR、SH、C(O)NHR、カルボキシレート、CH−酸性基、およびカルボアニオンからなる群から選択される求核基を有する少なくとも1種の樹脂5〜60重量%と、
(B)少なくとも1種のアミド基を含む樹脂0〜50重量%、場合によっては1〜50重量%と、
(C)少なくとも1種のポリウレタン樹脂0〜30重量%、場合によっては1〜30重量%と、
(D)少なくとも1種のエポキシ樹脂0〜30重量%、場合によっては1〜30重量%と、
(E)少なくとも1種の有機溶媒5〜90重量%と、
(F)少なくとも1種の触媒0〜10重量%、場合によっては0.1〜5重量%と、
(G)少なくとも1種のフェノール樹脂および/またはメラミン樹脂および/またはブロックイソシアネート0〜20重量%、好ましくは0.1〜20重量%と、
(H)一般的に使用される添加剤または補助剤0〜3重量%、好ましくは0.1〜3重量%と、
(I)ナノスケール粒子0〜70重量%、場合によっては1〜70重量%と、
(J)一般的に使用される充填剤および/または顔料0〜60重量%、場合によっては1〜60重量%と
を含み、
成分(A)および/または成分(B)の樹脂が、α−カルボキシ−β−オキソシクロアルキルカルボン酸アミド基を含み、(A)〜(J)の重量パーセントが合計100パーセントになる。
【0014】
成分(A)および/または成分(B)のアミドを含む樹脂は、本発明に役立つ成分としてα−カルボキシ−β−オキソシクロアルキルカルボン酸アミド基を含む。α−カルボキシ−β−オキソシクロアルキルカルボン酸アミド基は、好ましくは末端部位に組み込まれている。上記のα−カルボキシ基は、好ましくはアルキル−またはアリール−エステル化されている。一方、このタイプのα−カルボキシ−β−オキソシクロアルキルカルボン酸アミドは、反応するカルボン酸、またはカルボン酸ハロゲン化物、カルボン酸無水物基など、その反応性誘導体から、アミン基との反応によって生成することができる。アミンとカルボン酸からの合成中にジシクロヘキシルカルボジイミドなどのアミド化補助剤を使用することも好都合である。α−カルボキシ−β−オキソシクロアルキルカルボン酸は、例えば塩基性条件下におけるハロギ酸エステルとの反応、およびその後の選択的ケン化によって得ることができる。1−カルボキシ−2−オキソシクロアルカンは、例えば1,n−カルボン酸ジエステルから、アルコール開裂を伴う塩基との反応によって合成して得ることができる。一方、前記α−カルボキシ−β−オキソシクロアルキルカルボン酸アミドは、塩基性条件下における前記1−カルボキシ−2−オキソシクロアルカンとイソシアネートとの反応によって生成することもできる。前記1−カルボキシ−2−オキソシクロアルカンは、例えばグルタル酸ジアルキルエステル、グルタル酸ジアリールエステル、アジピン酸ジアルキルエステル、アジピン酸ジアリールエステル、ピメリン酸ジアルキルエステル、ピメリン酸ジアリールエステル、オクタン二酸ジアルキルエステル、オクタン二酸ジアリールエステル、ならびにアルキル−、アリール−、アルコキシ−、アリールオキシ−、アルキルカルボキシ−、アリールカルボキシ−、ハロゲン−、およびその他のその置換誘導体、特に好ましくはアジピン酸ジメチルおよびエチルエステルから得ることができる。上記のイソシアネートは、例えばプロピレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、エチルエチレンジイソシアネート、3,3,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−シクロペンチルジイソシアネート、1,4−シクロヘキシルジイソシアネート、1,2−シクロヘキシルジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,5−トルイレンジイソシアネート、2,6−トルイレンジイソシアネート、4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、1,4−ナフチレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート;アニリン、ホルムアルデヒド、およびCOCl2の反応に由来し、>2個の官能基を有する多核イソシアネート;4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリイソシアナトノナン、またはこれらのイソシアネートから作製されたオリゴマーおよびポリマー(例えば、ウレトジオン、イソシアヌレートなど)とすることができる。
【0015】
例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、1,3−プロパンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリトリトール、および他のジオール、トリオール、テトラオール、ポリオール、あるいはアミノアルコール、ジアミン、トリアミン、およびポリアミンとの反応によって得ることができる前記イソシアネートから得られた過剰のウレタンまたはウレアを使用することもできる。
【0016】
アミド化に使用される上記のアミンは、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどの脂肪族第一級ジアミン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミンなどの脂環式ジアミン、あるいはトリアミンとすることができ、第二級アミンを使用することも可能である。アミンは、ジアミノジフェニルメタン、フェニレンジアミン;>2個の可能基を有する多核芳香族アミン、トルイレンジアミン、または対応する誘導体などの芳香族アミンとすることもできる。分子中に別の官能基を有するアミン、例えばモノエタノールアミンおよび/またはモノプロパノールアミンなどのアミノアルコール、あるいはグリシン、アミノプロパン酸、アミノカプロン酸、またはアミノ安息香酸などのアミノ酸、およびそのエステルを使用することも可能である。
【0017】
α−カルボキシ−β−オキソシクロアルキルカルボン酸アミド基を、成分(A)に直接組み込むこともできる。これは、例えば成分(A)の樹脂とジ−またはポリイソシアネートおよび少なくとも1つのカルボキシ−β−オキソシクロアルカンの反応によって実現することができる。
【0018】
好ましくは成分(B)が、α−カルボキシ−β−オキソシクロアルキルカルボン酸アミド基を含む。
【0019】
成分(E)として、組成物は、芳香族炭化水素、N−メチルピロリドン、クレゾール、フェノール、キシレノール、スチレン、ビニルトルエン、メチルアクリレートなど、1種または複数の有機溶媒を含有することができる。
【0020】
チタン酸テトラブチル、チタン酸イソプロピル、チタン酸クレゾール、他のチタン酸誘導体、そのポリマー形、ジラウリン酸ジブチルスズ、別のスズ触媒、他の金属をベースとする触媒、ジアザビシクロウンデセン、ジアザビシクロオクタンなどのアミン触媒、および/または当業者に周知の他のアミン触媒などの触媒を、成分(F)として個別にまたは混合物として使用することができる。
【0021】
成分(G)として使用することができるフェノール樹脂および/またはメラミン樹脂は、例えばフェノールとアルデヒドの重縮合によって得ることができるノボラック、あるいはポリビニルアルコールとアルデヒドおよび/またはケトンから得ることができるポリビニルホルマールとすることができる。
【0022】
ポリオール、アミン、C−H−酸性化合物(例えば、アセト酢酸エステル、マロン酸エステルなど)、およびジイソシアネートのNCO−付加物などのブロックイソシアネート(例えば、参考文献、Methoden der org.Chemie,Houben−Weyl,Georg Thieme Verlag,Stuttgart, 4th edition,Vol.14/2,Part 2“Makromolekulare Stoffe”,1963,page 61)を成分(G)として使用することもでき、クレゾールおよび/またはフェノールを、一般的にブロッキング剤として使用する。
【0023】
成分(H)の一般的な添加剤および補助剤としては、例えば延長剤、可塑成分、促進剤(例えば、金属塩、置換アミン)、開始剤(例えば、光開始剤、熱応答性開始剤)、安定化剤(例えば、ヒドロキノン、キノン、アルキルフェノール、アルキルフェノールエーテル)、脱泡剤、およびフローコントロール剤など、一般的なエナメル添加剤が挙げられる。
【0024】
成分(I)のナノスケール粒子としては、平均粒径が1〜300nmの範囲、好ましくは2〜80nmの範囲の粒子が挙げられる。これらは、例えばSi02、Al23、TiO2、ホウ窒化物、炭化ケイ素などの化合物をベースとする無機ナノスケール粒子である。粒子は、例えばケイ素、亜鉛、アルミニウム、スズ、ホウ素、ゲルマニウム、ガリウム、鉛、遷移金属、ならびにランタニドおよびアクチニドからなる系列、具体的にはケイ素、チタン、亜鉛、イットリウム、セリウム、バナジウム、ハフニウム、ジルコニウム、ニッケル、および/またはタンタルからなる系列からの元素を含む元素−酸素のネットワークをベースとする化合物とすることができる。これらの粒子の元素−酸素のネットワークの表面は、例えば欧州特許出願公開第1166283号(A)明細書に記載されているように有機基で変性することができるか、または変性したものが好ましい。前記粒子は、有機樹脂基体、すなわち成分(A)および/または(B)および/または別のバインダー、例えば成分(C)、(D)、および/または(G)と反応性があっても、または非反応性であってもよい。
【0025】
組成物は、成分(J)として、例えばSiO2、Al23、TiO2、Cr23をベースとする顔料および/または充填剤、例えば二酸化チタンやカーボンブラックなどのカラー付与無機および/または有機顔料、ならびに金属フレーク顔料および/または真珠光沢顔料などのエフェクト顔料を含有することができる。
【0026】
被覆用組成物は、さらにモノマーおよび/またはポリマーの元素−有機化合物を含有することができる。ポリマーの有機−元素化合物の例としては、例えば独国特許出願公開第198 41 977号(A)明細書に記載されているタイプの無機−有機ハイブリッドポリマーが挙げられる。モノマーの有機−元素化合物の例としては、ノニル、セチル、ステアリル、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、アセチルアセトン、アセト酢酸エステル、テトライソプロピル、クレジル、テトラブチルチタネートおよびジルコネートなどのオルト−チタン酸エステルおよび/またはオルト−ジルコン酸エステル、チタニウムテトララクタート、ハフニウムおよびケイ素化合物、例えばハフニウムテトラブトキシドおよびケイ酸テトラエチル、ならびに/または様々なシリコーン樹脂が挙げられる。このタイプの追加のポリマーおよび/またはモノマーの有機−元素化合物を、本発明による組成物中に例えば0〜70重量%の含有量で含むことができる。
【0027】
成分(A)および成分(B)は、本発明による組成物の融着プロセス時、すなわち組成物の加熱時に化学反応に入ることができる。好ましくは、成分(A)と成分(B)の化学反応は融着プロセス時に進行する。
【0028】
成分(A)および成分(B)の化学的性質に応じて、当業者に周知の適切な反応としては、例えばエステル交換反応、重合反応、重付加反応、縮合反応が挙げられる。成分(A)と成分(B)との付加反応、例えば(A)の求核攻撃による(B)における開環が好ましい。ポリエステルアミドイミド電線被覆またはポリエステルアミド電線被覆は、融着プロセス時の化学反応により生成される。
【0029】
本発明による自己融着エナメルは、使用する導電性電線のタイプおよび直径とは関わりなく、一般的な方法で塗布することができる。通常、多層コーティングとして、例えばポリエステルイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエステル、THEIC−ポリエステルイミド、およびその組合せをベースとする当該技術分野で知られている典型的な電線被覆用組成物で電線をプレコートすることができる。自己融着エナメルは、多層ワイヤーコーティングの最後の硬化コーティング層上に、従来の層の厚さ、例えば0.3〜25μm/パスでトップエナメルとして塗布される。次いで、本発明による自己融着エナメルは、オーブン中で乾燥してもよい。被覆および乾燥は、場合によっては連続して数回行われることがある。オーブンは、水平または垂直に配置してもよく、オーブン温度は、室温〜800℃の範囲としてもよい。乾燥は、当業者に周知の技法で赤外(IR)線および/または近赤外(NIR)線を照射することによって支援してもよい。
【0030】
乾燥した後、トップエナメル付きの電線を巻いて、回転子、固定子、または変圧器を作製してもよく、得られた巻物を加熱することによって、エナメル層は、巻線間で例えば180〜220℃の範囲の温度で溶融し流動している。加熱は、オーブン中で進行させることができ、当業者に周知の技法で赤外(IR)線および/または近赤外(NIR)線を照射することによって支援してもよい。巻線を積み重ね、冷却した後、固定した巻物が得られる。
【0031】
本発明による組成物は、導電性電線のタイプおよび直径とは関わりなく使用することができる。例えば、直径が5μm〜6mmの電線を被覆することができる。例えば、銅、アルミニウム、亜鉛、鉄、金、銀、またはその合金で作製された一般的な金属導体を電線として使用することができる。
【0032】
本発明を、下記の実施例によって説明する。
【実施例】
【0033】
試験:
固形分[%] 1g、1時間、180℃(DIN EN ISO 3251に対応)
25℃における粘度[mPas]または[Pas](DIN 53015に対応)
【0034】
実施例1(成分Bとして、アミド基を含む樹脂)
撹拌機、還流冷却器、および温度計を備えた2リットルの3ツ口フラスコ中で、150.0gのキシレン、346.5gのDesmodur(登録商標)44 M、0.2gの一般的な触媒(例えば、水酸化物)、49.6gのトリメチロールプロパン、および216.5gの2−オキソ−シクロペンチルカルボン酸エチルエステルを、NCO数が約4時間後に<6.5%に低下するまで70℃に加熱する。次いで、混合物を40℃に冷却し、160.0gのポリエステルイミド樹脂溶液(クレゾール中固形分30.2%、ヒドロキシル数:322mgKOH/g)を添加し、140℃に加熱する。3時間後に、1040mPasの粘度(4:4、クレゾール中、25℃)が実現される。次いで、混合物を577.2gのクレゾールで希釈し、樹脂を濾過する。得られたアミドウレタン樹脂溶液の粘度は、25℃において5500mPasである。
【0035】
実施例2(ポリアミド自己融着エナメル)
自己融着エナメル2a(従来技術):
801gのポリアミド溶液(市販のフェノールと芳香族炭化水素の混合物中ポリアミド、19.8重量%)、77gのフェノール、112gのキシロール異性体の混合物、および10gの従来の市販の表面添加剤とフェノール樹脂の混合物を、攪拌しながら自己融着エナメルに作製する。得られた自己融着エナメルの固形分は16.3%であり、25℃における粘度は1540mPasである。
【0036】
自己融着エナメル2b:
658.6gのポリアミド溶液(市販のフェノールと芳香族炭化水素の混合物中ポリアミド、19.8重量%)、53.6gのブロックポリイソシアネート溶液(DuPontのDibasenester(登録商標)DBE中Desmodur(登録商標)AP、59.7重量%)、127gのフェノール、150.8gのキシロール異性体の混合物、および10gの従来の市販の表面添加剤とフェノール樹脂の混合物を、攪拌しながらエナメルに作製する。得られた自己融着エナメルの固形分は16%であり、25℃における粘度は1620mPasである。
【0037】
自己融着エナメル2c:
658.6gのポリアミド溶液(市販のフェノールと芳香族炭化水素の混合物中ポリアミド、19.8重量%)、74.1gの実施例1の溶液、117gのフェノール、140.3gのキシロール異性体の混合物、および10gの従来の市販の表面添加剤とフェノール樹脂の混合物を、攪拌しながらエナメルに作製する。得られた自己融着エナメルの固形分は16.5%であり、25℃における粘度は1760mPasである。
【0038】
結果
DIN 46453およびDIN IEC 851−3による試験データ:
直径0.65mmの銅線に、オーブン温度580℃で、それぞれ38および46m/分でエナメルを施した。
【0039】
ベースコートとして、典型的な市販のポリエステルイミド電線エナメルを使用した。接着強さおよび再軟化温度は、表3、DIN IEC 851−3およびDIN 46453(170℃におけるベーキング、60分間)に従って、コイルとして測定した。
【0040】


【0041】
本発明(2c)に対応するエナメルの接着強さは(2a)および(2b)のエナメルの接着強さより高いことがはっきりとわかる。さらに、再軟化温度は、架橋剤を含まないエナメル(2a)およびブロックイソシアネートを含むエナメル(2b)の再軟化温度より大幅に高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に架橋することができる、求核基を有する樹脂、および場合によりアミド基を含む樹脂を含む自己融着エナメルであって、
(A)OH、NHR、SH、C(O)NHR、カルボキシレート、CH−酸性基、およびカルボアニオンからなる群から選択される求核基を有する少なくとも1種の樹脂5〜95重量%と、
(B)少なくとも1種のアミド基を含む樹脂0〜70重量%、場合によっては1〜70重量%と、
(C)少なくとも1種のポリウレタン樹脂0〜30重量%、場合によっては1〜30重量%と、
(D)少なくとも1種のエポキシ樹脂0〜30重量%、場合によっては1〜30重量%と、
(E)少なくとも1種の有機溶媒5〜95重量%と
を含み、
成分(A)の樹脂、および/または成分(B)が組成物に含まれる場合は成分(B)の樹脂が、α−カルボキシ−β−オキソシクロアルキルカルボン酸アミド基を含み、重量パーセントが全自己融着エナメルに基づく、自己融着エナメル。
【請求項2】
(A)OH、NHR、SH、C(O)NHR、カルボキシレート、CH−酸性基、およびカルボアニオンからなる群から選択される求核基を有する少なくとも1種の樹脂5〜60重量%と、
(B)少なくとも1種のアミド基を含む樹脂0〜50重量%、場合によっては1〜50重量%と、
(C)少なくとも1種のポリウレタン樹脂0〜30重量%、場合によっては1〜30重量%と、
(D)少なくとも1種のエポキシ樹脂0〜30重量%、場合によっては1〜30重量%と、
(E)少なくとも1種の有機溶媒5〜90重量%と、
(F)少なくとも1種の触媒0〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%と、
(G)少なくとも1種のフェノール樹脂および/またはメラミン樹脂および/またはブロックイソシアネート0〜20重量%、好ましくは0.1〜20重量%と、
(H)一般的に使用される添加剤または補助剤0〜3重量%、好ましくは0.1〜3重量%と、
(I)ナノスケール粒子0〜70重量%、場合によっては1〜70重量%と、
(J)一般的に使用される充填剤および/または顔料0〜60重量%、場合によっては1〜60重量%と
を含み、
成分(A)および/または成分(B)の樹脂が、α−カルボキシ−β−オキソシクロアルキルカルボン酸アミド基を含み、重量パーセントが全自己融着エナメルに基づく、請求項1に記載の自己融着エナメル。
【請求項3】
ポリアミド、ポリエステルイミド、および/または不飽和ポリエステルが、成分(A)として使用される、請求項1または2に記載の自己融着エナメル。
【請求項4】
前記α−カルボキシ−β−オキソシクロアルキルカルボン酸アミド基が、成分(A)または(B)の末端部位に組み込まれている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の自己融着エナメル。
【請求項5】
前記成分(B)が、前記α−カルボキシ−β−オキソシクロアルキルカルボン酸アミド基を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の自己融着エナメル。
【請求項6】
前記ナノスケール粒子が、成分(A)および/または(B)と反応性がある、請求項1〜5のいずれか一項に記載の自己融着エナメル。
【請求項7】
モノマーおよび/またはポリマーの元素−有機化合物が含まれている、請求項1〜6のいずれか一項に記載の自己融着エナメル。
【請求項8】
導電性電線を被覆する方法であって、
(a)請求項1〜7の前記自己融着エナメルを前記電線に塗布する工程と、
(b)前記塗布されたエナメルを乾燥する工程と
を含む方法。
【請求項9】
前記電線がプレコートされた電線である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
請求項1〜7に記載の前記自己融着エナメルで被覆された被覆基材。

【公表番号】特表2010−513674(P2010−513674A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−542898(P2009−542898)
【出願日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【国際出願番号】PCT/US2007/025960
【国際公開番号】WO2008/079237
【国際公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】