説明

新規抗酸化性リグナン化合物

【課題】生体内において極めて優れた抗酸化作用を示す物質、及びそれを有効成分として含有する抗酸化剤等の提供。
【解決手段】セサモリンを原料として調製したゴマリグナン代謝物である、2−(3,4−メチレンジオキシフェノキシ)−6−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−シス−3,7−ジオキサビシクロ[3.3.0]オクタン、2−(3,4−ジヒドロキシフェノキシ)−6−(3,4−メチレンジオキシフェニル)−シス−3,7−ジオキサビシクロ[3.3.0]オクタン、及びこれらの混合物。また、このようなリグナン化合物を有効成分として含有する抗酸化剤、医薬組成物、飼料及び飲食品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規リグナン化合物、詳しくはセサモリンカテコール体又はセサモリンジカテコール体からなる抗酸化性の新規リグナン化合物に関する。また、本発明は、当該リグナン化合物を有効成分として含有する新規抗酸化剤にも関し、より詳しくはセサモリンの分子内に存在するメチレンジオキシフェニル基がカテコール基に変換された構造を有し、高い抗酸化活性を発揮するリグナン化合物を有効成分として含有する抗酸化剤や、飼料、飲食品又は医薬組成物(医薬品)に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトをはじめとする好気性生物にとって酸素は不可欠であるが、一方で活性酸素種(ROS)と呼ばれる酸素分子由来のフリーラジカルが、生体に障害をもたらすことが知られている。生体内にはROSを直接消去する物質や、ROSによって生じた障害を除去・修復するような酵素の存在が知られており、これらはROSによる障害に対抗する生体防御システムの一部としてホメオスタシスに寄与している。こうした生体防御システムとROS生成とのバランスが崩れた際に生じる酸化ストレスは、細胞の死や増殖、機能、外的刺激に対するレスポンスなどを変化させる結果、ガンや糖尿病等の生活習慣病の発生や進行、また生理的な老化等とも深く関係していることが近年明らかとなってきた。
【0003】
食品成分等として摂取する外来の抗酸化物質が、こうした生体内酸化ストレスの抑制に貢献していることが、多くの動物実験や臨床試験、疫学調査などから示唆されている。そのような外来性抗酸化物質として、ゴマ種子中に含まれるリグナン類、カテキンやケルセチン等のフラボノイド類、アントシアニンやルテイン等の色素類等が知られている。しかしながら、これらの化合物はin vitroで強いラジカル消去活性を持っていても、生体内に取り込まれると、抗酸化活性が大幅に減弱した代謝物に変換されることが多く、これらが実際に生体内で酸化ストレスの抑制に寄与するのか否か、ほとんど明らかにされていない。逆に、in vitroで強い抗酸化活性を示さなくても生体内で抗酸化作用を示すと考えられる物質も存在する。
【0004】
そこで、in vitroで強い抗酸化活性を示さなくても生体内で抗酸化作用を示すと考えられる物質を特定することが試みられてきた(特許文献1、並びに非特許文献1及び2参照)。
【0005】
例えば、ゴマ種子中に約0.4%程度含まれるセサモリンについては、それ自身は抗酸化性を持たないが、セサモリンを摂取させたラットの肝臓、及び腎臓において、脂質の過酸化を有意に抑制したり、発ガンとの関わりが示唆されるDNA酸化障害で生じる8−ヒドロキシデオキシグアノシン(8-OHdG)の生成を抑制する働きがあることが示されている(非特許文献1及び2)。これらの物質が腸内細菌や、消化管/肝臓等の代謝酵素により変換されて生じた物質が、抗酸化活性を有する活性本体として生体内で機能している可能性が示唆されている。しかしながら、こうした代謝による物質変換効率には大きな個人差や動物種差があることが知られている。したがって、健康の増進、疾病の予防・治療、或いは食品や飼料の酸化防止等の目的に活性本体そのものを利用することが考えられるが、実際に生体内で酸化ストレスを抑制する活性本体が明らかにされたケースは稀である。
【0006】
また、特許文献1には特定の一般式で表されるジオキサビシクロ[3.3.0]オクタン誘導体が記載され、特許文献2には特定の一般式で表されるジオキサビシクロ[3.3.0]オクタン誘導体を有効成分とする体脂肪低減剤が記載されているが、セサモリンの代謝活性物自体が抗酸化作用を有することについての記載はない。
【0007】
更に、セサミン、セサミノール又はセサミノール配糖体を含む発酵原料にアスペルギルス属微生物を接種して微生物発酵処理することにより得られる抗酸化素材(特許文献3参照)が提案されているが、セサモリンの代謝活性物についての記載はない。
【0008】
そこで、生体内で抗酸化作用を示す物質の特定や、生体内で抗酸化作用を示す薬剤の開発が求められる。しかも、セサモリンカテコール体又はセサモリンジカテコール体からなる抗酸化性の新規リグナン化合物やこれを有効成分として含有する抗酸化剤等についての記載は見当たらない。
【0009】
【特許文献1】特開平8−26989号公報
【特許文献2】特開2000−309533号公報
【特許文献3】特開2005−23125号公報
【非特許文献1】並木満夫編、「ゴマその科学と機能性」丸善プラネット株式会社、p17-22,180(1998)
【非特許文献2】Kangら、J. Nutr. 128: 1018-1022 (1998)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記の事情に鑑み、生体内において極めて優れた抗酸化作用を示す物質、及びそれを有効成分として含有する抗酸化剤等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鋭意研究を行った結果、セサモリンを原料としてゴマリグナン代謝物である新規な化合物を調製し、このような化合物が、極めて優れた抗酸化活性を有すること等を見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、本発明において、
下記一般式(I)で表されることに特徴を有するリグナン化合物(以下、「本発明の化合物」とも称する。)、特に、2−(3,4−メチレンジオキシフェノキシ)−6−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−シス−3,7−ジオキサビシクロ[3.3.0]オクタン、2−(3,4−ジヒドロキシフェノキシ)−6−(3,4−メチレンジオキシフェニル)−シス−3,7−ジオキサビシクロ[3.3.0]オクタン、2−(3,4−メチレンジオキシフェノキシ)−6−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−シス−3,7−ジオキサビシクロ[3.3.0]オクタン、及びこれらの混合物から選択されるリグナン化合物を提供することができる。これらの化合物は光学活性体であってもよい。
【0013】
【化1】

(但し、式中、R〜Rはそれぞれ独立して水素原子又はメチル基を表し、或いはRとR又はRとRは一緒になってメチレン基を表す。)
【0014】
本発明において、別の形態として、前記記載のリグナン化合物を有効成分として含有することに特徴を有する抗酸化剤(以下、「本発明の抗酸化剤」とも称する。)を提供することができる。
【0015】
本発明において、別の形態として、前記記載のリグナン化合物を含有することに特徴を有する医薬組成物(以下、「本発明の医薬組成物」とも称する。)を提供することができる。
【0016】
尚、本発明の医薬組成物については、肝臓障害、腎臓障害若しくはDNA酸化障害の予防又は軽減用の医薬組成物として用いることが好ましい。
【0017】
本発明において、別の形態として、前記記載のリグナン化合物を含有することに特徴を有する飼料又は飲食品(以下、「本発明の飼料又は飲食品」とも称する。)を提供することができる。
【0018】
本発明において、別の形態として、セサモリン又はセサモリンを含む原料を薬物代謝酵素と反応させることに特徴を有する前記記載のリグナン化合物の製造方法(以下、「本発明の製造方法」とも称する。)を提供することができる。
【0019】
尚、前記記載の本発明の製造方法によって製造されるリグナン化合物も、本発明に含まれる。
【発明の効果】
【0020】
本発明により極めて優れた抗酸化活性を有するリグナン化合物を提供する。
【0021】
また、前記リグナン化合物を使用(配合)して、上記効果に優れた抗酸化剤、或いは飼料又は飲食品を、容易かつ簡便に製造することができる。したがって、本発明は特に食品分野及び医薬品分野において、工業的に極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に、特定の式、詳しくは下記一般式(I)で表されるリグナン化合物、即ち本発明の化合物を、特に医薬組成物を用途とする場合を中心に、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明するが、これに限定されることはない。
【0023】
(本発明の化合物)
本発明の化合物は、新規リグナン化合物、詳しくはセサモリンカテコール体又はセサモリンジカテコール体からなる抗酸化性の新規リグナン化合物、具体的には下記一般式(I)で表されるリグナン化合物、特に、2−(3,4−メチレンジオキシフェノキシ)−6−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−シス−3,7−ジオキサビシクロ[3.3.0]オクタン、2−(3,4−ジヒドロキシフェノキシ)−6−(3,4−メチレンジオキシフェニル)−シス−3,7−ジオキサビシクロ[3.3.0]オクタン、2−(3,4−メチレンジオキシフェノキシ)−6−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−シス−3,7−ジオキサビシクロ[3.3.0]オクタン、及びこれらの混合物から選択されるリグナン化合物である。これらの化合物は、その光学活性体であってもよい。
【0024】
【化2】

(但し、式中、R〜Rはそれぞれ独立して水素原子又はメチル基を表し、或いはRとR又はRとRは一緒になってメチレン基を表す。)
【0025】
本発明の化合物は、後述するように、例えば、セサモリン等を薬物代謝酵素と反応させる、詳しくはセサモリン又はセサモリンを含む原料に、適当な薬物代謝酵素分画、例えば、ラットやヒト由来等のS9ミックスを加えて酵素処理することにより得られる。
【0026】
ここで、セサモリンの分子構造を示す(一般式(II))。このセサモリン(sesamolin: 2-(3,4-methylenedioxyphenoxy)-6-(3,4-methylenedioxyphenyl)-cis-3,7-dioxabicyclo[3.3.0]octane)は、ゴマに特有のリグナンであり、抗酸化作用をほとんど有しない有機化合物である。これは、分子内に2つのメチレンジオキシ基を有しているが、上述した酵素処理によって、これらの基の一方、或いは両方が開裂してセサモリンカテコール体又はセサモリンジカテコール体となる。このセサモリンカテコール体又はセサモリンジカテコール体は、原料であるセサモリンよりも顕著に高い抗酸化作用を有している。
【0027】
【化3】

【0028】
本発明の化合物の製造方法には、特に制限はない。例えば、本発明の化合物は、セサモリン又はセサモリンを含む原料をP450を含む適当な薬物代謝酵素群を用いてin vitroで反応(代謝)させることにより製造することができる。
【0029】
本発明において用いられる薬物代謝酵素群としては、例えば、哺乳類(例えば、げっ歯類やサル、ヒト)の肝臓のホモジェネートを所定の条件で遠心した後に得られる上清(S9ミックス)、又はミクロソーム画分等を挙げることができる。
【0030】
尚、後述する本発明の製造方法は、前記記載の製造方法と同一であり、この方法により得られたリグナン化合物も本発明の化合物に含まれる。
【0031】
一方、上記方法に代えて、本発明の化合物を、特開2005−23125号公報(上記特許文献3)に記載された方法、即ち微生物発酵処理によって製造することもできる。
【0032】
前記微生物発酵処理は、例えば、前記セサモリンを含む原料にアスペルギルス属微生物を接種し、該微生物を所定の発酵条件下で所定の発酵期間培養することにより行われる。このとき微生物発酵処理では、主として前記微生物の栄養菌糸が生産する酵素により、セサモリン分子内のメチレンジオキシフェニル基をカテコール基に変換する反応が行われる。
【0033】
前記アスペルギルス(Aspergillus)属微生物(発酵菌)としては、アスペルギルス・サイトイ(Aspergillus saitoi)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)等の黒麹菌、又はアスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)、アルペルギルス・ソーイエ(Aspergillus sojae)、アスペルギルス・タマリ(Aspergillus tamarii)等の黄麹菌が挙げられる。これらの発酵菌のうち微生物変換効率が良好であることから、アスペルギルス・サイトイ、アスペルギルス・ニガー、又はアスペルギルス・アワモリが好適に用いられ、Aspergillus saitoi(IAM2210)、Aspergillus niger(ATCC38857)、Aspergillus shirousami(RIB2503)が特に好適に用いられる。
【0034】
前記微生物を発酵原料に接種する方法としては、当該微生物の胞子を発酵原料に直接振りかける方法を挙げることができる。また、予め前記微生物を含む培地を好気的条件で振盪培養する予備培養処理を行った後、その予備培養処理後の培地を発酵原料に振りかけたり、前記予備培養後の培地中に発酵原料を添加して接種する方法を採用することも可能である。これらの接種方法のうち、微生物発酵処理が比較的均一に進むことから、予備培養処理後の培地を発酵原料に振りかける方法が最も好ましい。
【0035】
前記予備培養処理は、微生物発酵処理に用いられる微生物を予め十分に増殖させるとともに活性化させることによって、微生物発酵処理を迅速かつ円滑に進行させるために行われる。この予備培養処理は、20〜40℃の好気的条件下で最低5日以上行われ、好ましくは前記微生物の菌糸体が培地表面を3分の1程度覆う状態となるまで行われる。前記培地としてはポテトデキストロース含有培地やツァペック培地等の糸状菌用培地、又はオカラ等の有機物を含有する種々の液体培地が好適に使用される。更に、この予備培養処理では、前記微生物の生育を良好にするために、培養開始時点における培地のpHを3〜7に調整するのが好ましい。また、前記振盪培養する際の振盪速度としては、好ましくは50rpm以上、より好ましくは50〜200rpmである。この振盪速度が50rpm未満の場合には、前記微生物を含有した培地全体が好気的でないため、菌糸の増殖が十分にできない傾向にある。また、振盪速度が200rpmを超える場合には、培地の揺れが激しく、前記微生物の菌体形成が抑制されるおそれがある。
【0036】
微生物発酵処理条件としては、好気的条件で行うことが好ましい。また、暗所で行うのが好ましい。また、発酵温度としては、好ましくは10〜40℃、より好ましくは20〜40℃、更に好ましくは25〜30℃である。前記リグナン化合物(本発明の化合物)を多量に得るための発酵期間としては、好ましくは3日から1ヶ月、より好ましくは1〜3週間、更に好ましくは10〜20日間、特に好ましくは12〜18日間である。この発酵期間が3日未満の場合には、前記微生物による微生物発酵がほとんど進行していないことから、十分な量のリグナン化合物が生成されていない。逆に1ヶ月を超える場合には、生成されたリグナン化合物の分解が進むおそれがある上、不経済である。
【0037】
前記セサモリンの入手方法については、特に制限はない。したがって、公知の方法により製造したものを使用することができ、また、市販のものを使用することもできる。
【0038】
前記記載したように、本発明においては、セサモリンに代えて、セサモリンを含む原料を使用することもできる。このような原料としては、ゴマ種子、ゴマ製品、又はゴマ製品製造時の副産物を選択することができ、好ましくはそれらからゴマリグナン類を抽出したゴマリグナン類抽出物が選択され、更に好ましくは、当該ゴマリグナン類抽出物よりセサモリンを精製した精製物が選択される。前記ゴマ種子、ゴマ製品、又はゴマ製品製造時の副産物としては、セサモリンを多量に含有する焙煎ゴマ種子、ゴマ油、ゴマ脱臭スカム等が挙げられる。
【0039】
本発明の化合物(リグナン化合物)は、何れも高い抗酸化活性を有するカテコール基を備えていることから、低密度コレステロール(LDL)の酸化防止や、アルコールや薬物により誘導される肝臓や腎臓等の障害の予防・軽減、DNA酸化障害の予防・軽減(発ガン抑制作用)等の目的に利用することができる。更に、本発明の化合物は、生体内に摂取される以前に、予め酵素や微生物変換によって抗酸化活性を高めておいたものであるから、生体内で極めて迅速、かつ効率的に抗酸化作用を発揮させることが出来る。
【0040】
(本発明の抗酸化剤)
本発明の抗酸化剤は、前記記載のリグナン化合物(本発明の化合物)を有効成分として含有する。これに含まれるリグナン化合物(本発明の化合物)は、前記記載したように、何れも高い抗酸化活性を有するカテコール基を備えている。したがって、本発明の抗酸化剤も、低密度コレステロール(LDL)の酸化防止や、アルコールや薬物により誘導される肝臓や腎臓等の障害の予防・軽減、DNA酸化障害の予防・軽減(発ガン抑制作用)等のための薬剤として有用である。よって、本発明の抗酸化剤は、抗酸化剤を使用する飼料、飲食品及び医薬品等の分野において利用されうる。
【0041】
(本発明の医薬組成物)
本発明の医薬組成物は、前記記載のリグナン化合物(本発明の化合物)又は前記記載の抗酸化剤(本発明の抗酸化剤)を含有する。したがって、生体内に摂取又は投与することによって、活性酸素の消去等により高い健康増進効果を発揮させることができる。更に、前記記載したように、本発明の化合物は、生体内に摂取される以前に、予め酵素や微生物変換によって抗酸化活性を高めておいたものであるため、本発明の医薬組成物では、生体吸収性の向上や、新たな生理機能の付加も期待できることから、トータルとして生体内での健康増進機能をより一層上げることが可能になる。
【0042】
本発明の医薬組成物においては、上記本発明の化合物を、少なくとも1つ、好ましくは2つ又は3つ使用することができ、このような医薬組成物も当然本発明の医薬組成物に含まれる。
【0043】
本発明の化合物又は本発明の抗酸化剤は、製剤の形態として使用することができ、これら有効成分の他に医薬的に許容される担体やその他の生理活性成分を含んでもよい。医薬的に許容される担体やその他の生理活性成分は製剤の剤型により適宜選択することができるが、医薬的に許容される担体としては、製剤素材として慣用の各種有機又は無機担体物質が挙げられ、例えば固形製剤における賦形剤、滑沢剤、結合剤及び崩壊剤、或いは液状製剤における溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤及び無痛化剤等が挙げられる。更に必要に応じ、通常の防腐剤、本発明の化合物以外の抗酸化剤、着色剤、甘味剤、吸着剤、湿潤剤等の添加物を適宜、適量用いることもできる。
【0044】
前記賦形剤としては、例えば乳糖、白糖、D−マンニトール、デンプン、コーンスターチ、結晶セルロース、軽質無水ケイ酸等が挙げられる。
【0045】
前記滑沢剤としては、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、コロイドシリカ等が挙げられる。
【0046】
前記結合剤としては、例えば結晶セルロース、白糖、D−マンニトール、デキストリン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、デンプン、ショ糖、ゼラチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム等が挙げられる。
【0047】
前記崩壊剤としては、例えばデンプン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、L−ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。
【0048】
前記溶剤としては、例えば注射用水、アルコール、プロピレングリコール、マクロゴール、ゴマ油、トウモロコシ油、オリーブ油等が挙げられる。
【0049】
前記溶解補助剤としては、例えばポリエチレングリコール、プロピレングリコール、D−マンニトール、安息香酸ベンジル、エタノール、トリスアミノメタン、コレステロール、トリエタノールアミン、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0050】
前記懸濁化剤としては、例えばステアリルトリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルアミノプロピオン酸、レシチン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、モノステアリン酸グリセリン等の界面活性剤;例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等の親水性高分子等が挙げられる。
【0051】
前記等張化剤としては、例えばブドウ糖、D−ソルビトール、塩化ナトリウム、グリセリン、D−マンニトール等が挙げられる。
【0052】
前記緩衝剤としては、例えばリン酸塩、酢酸塩、炭酸塩、クエン酸塩等の緩衝液等が挙げられる。無痛化剤としては、例えばベンジルアルコール等が挙げられる。
【0053】
前記防腐剤としては、例えばパラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、デヒドロ酢酸、ソルビン酸等が挙げられる。
【0054】
前記本発明の化合物以外の抗酸化剤としては、例えば亜硫酸塩、アスコルビン酸、α−トコフェロール等が挙げられる。
【0055】
本発明の医薬組成物について、被検者(被検体)が摂取又は被検者に投与する場合の摂取又は投与形態については特に制限は無い。従って、経口摂取、経口投与、又は非経口投与(静脈投与、経皮投与等)等の各種の投与形態が採用可能である。簡便さの点で経口摂取又は経口投与が好ましいが、抗酸化剤が使用される製品に混合、使用することが簡便であるので、抗酸化剤が使用される製品の形態が参考になる。
【0056】
本発明の医薬組成物は、前述の如く公知の又は将来開発される様々な製剤の形態、例えば、経口投与、腹腔内投与、経皮的投与、吸入投与等、各種の投与形態のものにすることができる。本発明の化合物又は本発明の抗酸化剤をこれらの様々な製剤の形態に調製するためには公知の又は将来開発される方法を適宜採用することができる。
【0057】
これらの様々な医薬組成物の形態として、例えば適当な固体又は液状の製剤形態、例えば顆粒、粉剤、錠剤又は被覆錠剤(糖衣錠、フィルムコーティング錠を含む)、カプセル剤(ソフトカプセルを含む)、坐剤、シロップ剤、ジュース、懸濁液、乳濁液、滴下剤又は注射用溶液等の液剤、活性物質の放出を延長する製剤等を挙げることができる。
【0058】
以上に例示した製剤形態にある本発明の医薬組成物には、薬効を奏するに有効な量の前記成分(本発明の化合物)を含有すべきことは当然のことである。
【0059】
本発明の医薬組成物の摂取又は投与対象(被検者)は、主として哺乳類、例えばラット等のげっ歯類やヒト等である。
【0060】
本発明の医薬組成物において、有効成分である本発明の化合物の摂取又は投与量については、本発明に係る酸化ストレスの状態、被検者の年齢、体重、体質、体調、薬剤の剤形、投与方法、摂取又は投与期間等により異なるが、例えば、経口投与の場合は、これを、成人(体重約60kg)一人につき、一般に1日当たり、0.01mg〜10g、より好ましくは0.5mg〜1g、より一層好ましくは1mg〜500mgの範囲で適宜選択することができる。非経口投与の場合は、通常、1日当たり、本発明の化合物を0.001mg〜100mg、好ましくは0.1mg〜50mgの範囲で、これを1回又は数回に分けて投与する。もちろん、前記したように投与量は種々の条件で変動するので、前記投与量より少ない量で十分な場合もあり、また範囲を超えて投与する必要のある場合もある。
【0061】
(本発明の飼料又は飲食品)
本発明の飼料又は飲食品は、前記記載のリグナン化合物(本発明の化合物)又は前記記載の抗酸化剤(本発明の抗酸化剤)を含有する。したがって、生体内に摂取することによって、活性酸素の消去等により高い健康増進効果を発揮させることができる。更に、本発明の化合物は、生体内に摂取される以前に、予め酵素や微生物変換によって抗酸化活性を高めておいたものであるため、このような飼料又は飲食品では、生体吸収性の向上や、新たな生理機能の付加も期待できることから、トータルとして生体内での健康増進機能をより一層上げることが可能になる。
【0062】
本発明の化合物又は本発明の抗酸化剤の使用方法等については、前記説明した通りであり、前記説明や公知技術を利用して本発明の飼料又は飲食品を容易に取得することができる。
【0063】
例えば、従来から知られている、抗酸化剤を含有させることを必要とする飼料又は飲食品について、本発明の化合物又は本発明の抗酸化剤を、公知の又は将来開発される方法により、均一に混合して使用することができる。
【0064】
本発明の化合物又は本発明の抗酸化剤は、前述の如く公知の又は将来開発される様々な飼料又は飲食品の形態を適宜採用することができる。この場合において、機能性食品或いは特定保健用食品の形態についても同様に採用することができる。
【0065】
様々な飲食品の製品の形態として、例えば、菓子(冷菓、ゼリー、ケーキ、キャンディー、チューインガム等)、パン、牛乳やヨーグルト等の乳製品、ゴマ製品等、抗酸化剤の使用を必要とする各種製品を挙げることができ、このようにして抗酸化作用が付与された製品の形態についても当然本発明に含まれる。
【0066】
前記機能性食品或いは特定保健用食品(栄養剤を含む)は、前記同様、本発明の化合物を含有するものであるが、一般に飲料品や、食料品の形態のみならず、前記医薬組成物同様、錠剤(糖衣錠、フィルムコーティング錠を含む)、散剤、顆粒剤、カプセル剤(ソフトカプセルを含む)、シロップ剤、液剤(ジュース等)等の製剤の形態で経口摂取できるように構成される。例えば、このような食品は、前記化合物を果汁、牛乳やヨーグルト等の乳製品、ゴマ製品、乳糖やデキストリン等の賦形剤等の一般的な健康食品用の素材に添加することにより製造され得るがこれらに限定されるものではない。機能性食品の一態様であるサプリメントの形態を選択する場合であっても、公知の方法に従って製造すればよく、例えば、有効成分である本発明の化合物に、賦形剤(乳糖、白糖、デンプン等)、崩壊剤(デンプン、炭酸カルシウム等)、結合剤(デンプン、アラビアゴム、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース等)又は滑沢剤(タルク、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール 6000等)等を添加して圧縮成形し、次いで必要により、味のマスキング、腸溶性或いは持続性の目的のため公知の方法でコーティングすることができる。このような食品は、前記リグナン化合物の高い抗酸化活性により、経口摂取した時に生体内での過剰な活性酸素など酸化ストレスを低減して、有害な過酸化脂質の生成を抑制する作用を発揮する。
【0067】
尚、本発明の化合物又は本発明の抗酸化剤は使用される製品に混合、使用することが簡便であり、本発明の化合物又は本発明の抗酸化剤が使用される飼料又は飲食品の形態が参考になるが、抗酸化作用を奏するに有効な量の本発明の化合物を含有すべきことは当然のことである。
【0068】
飲料品の形態を選択した場合において、この中に含まれる本発明の化合物の濃度は、好ましくは0.001〜50重量%、より好ましくは0.01〜30重量%、更に好ましくは0.1〜10重量%である。前記本発明の化合物の濃度が0.001重量%未満の場合には、健康増進効果を効果的に発揮させることが出来なくなる傾向にあり、逆に50重量%を超える場合は不経済である。また、飼料、食料品、又は製剤の形態を選択した場合において、これらの中に含まれる本発明の化合物の含有量は、好ましくは0.001〜80重量%、より好ましくは0.01〜70重量%、更に好ましくは0.1〜50重量%である。前記本発明の化合物の含有量が0.001重量%未満の場合には、健康増進効果を効果的に発揮させることが出来なくなる傾向にあり、逆に80重量%を超える場合には不経済である。
【0069】
本発明の飼料又は飲食品に関し、有効成分である本発明の化合物の摂取量としては、被検者の年齢、体重、体質、体調、形態、摂取期間等により異なるが、成人(体重約60kg)一人につき、一般に1日当たり、好ましくは0.01mg〜10g、より好ましくは0.5mg〜1000mg、より一層好ましくは1mg〜500mgが選択される。このリグナン化合物の1日当たりの摂取量が0.01mg未満の場合には、健康増進効果を効果的に発揮させることが出来なくなる傾向にあり、逆に10gを超える場合には不経済である。更にこれらの飼料又は飲食品は、1日数回(2〜3回、又はそれ以上)に分けて服用するのが好ましく、特に激しい運動の前後、日光による紫外線照射の前後、ストレス時、喫煙の前後等の酸化ストレスに曝され易い状態の時に摂取するとよい。また、小人の場合は、主に体重に依存して摂取量が調整されるが、前記成人の摂取量の約半量が目安となる。
【0070】
(医薬品及び飲食品以外の用途)
本発明の化合物については、医薬品(医薬組成物)、飼料及び飲食品のみならず化粧料や、外用剤等の各種分野で広く使用される抗酸化剤にも適用可能である。特に、他の分野で、抗酸化剤の使用を必要とする場合には、上記医薬品、飼料及び飲食品用に説明したリグナン化合物及び抗酸化剤が当該他の分野でも同様に採用可能である。
【0071】
(本発明の製造方法)
本発明の製造方法は、セサモリン又はセサモリンを含む原料を薬物代謝酵素と反応させて前記記載のリグナン化合物(本発明の化合物)を製造するものである。したがって、前記本発明の化合物における記載内容に基づいて容易に実施することができる。
【実施例】
【0072】
以下に実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0073】
[実施例1] セサモリンのラットS9ミックス処理、並びに反応液のHPLC、LC−MS分析、及びNMR解析
下記表1の組成に基づいて本発明の化合物(セサモリンin vitro代謝物)を製造し、HPLC及びLC−MS分析を行った。即ち、下記の成分を混合した後、37℃で1日間、反応させた。その後、2倍量の酢酸エチルで2回抽出し、濃縮乾固後、メタノールで再溶解させHPLC、及びLC−MS分析を行った。分析条件を以下に示す。
【0074】
【表1】

【0075】
(セサモリンin vitro代謝物のHPLC及びLC−MS分析条件)
HPLC :JASCO
カラム :デベロシルODS−HG−5 (4.6φ x 250mm)
溶離液 :A液;100% 水 / 0.01% 酢酸
B液;100% アセトニトリル / 0.01% 酢酸
流速 :0.8mL/分
検出波長 :285nm
プローブ :ESP−
溶出条件

【0076】
HPLC分析の結果、基質であるセサモリン以外に、メインピークとしてピークA(Compound A)が35分付近に、またマイナーピークとしてピークB(Compound B)、ピークC(Compound C)、及びピークD(Compound D)が、それぞれ27分、29分、31分付近に検出された(図1)。
【0077】
LC−MS分析の結果、メインピークA(Compound A)の測定分子量[M−H]はm/z 357.11であることが判明した。Compound Aの吸収極大(λmax)はセサモリンと同じ285nmであり、その分子量358はセサモリンの分子量370よりも12小さいことから、構造的にセサモリンの両端にある2つのメチレンジオキシ基のうち何れかがそれぞれ水酸基に開裂したカテコール体であると予想された(図2)。また、ピークCについても、その分子量が358であると判明し、セサモリンの分子量370よりも12小さいことから、同様に、構造的にセサモリンの両端にある2つのメチレンジオキシ基のうち何れかがそれぞれ水酸基に開裂したカテコール体であると予想された。一方、ピークBについては測定分子量[M−H]はm/z 345.11であった。Compound Bの分子量346は上記モノカテコール体とみられる物質よりも更に12小さいことから、この物質はセサモリンのメチレンジオキシ基の両方が開裂したジカテコール体であると考えられた。
【0078】
次に、分取したメインピークA(Compound A)を重メタノール(Methanol−D4)に溶解させ、NMR(Brunker APX−400)解析を行った。結果(H−及び13C−NMRのシグナルの値)を図3に示す。以上より、セサモリンをラットS9ミックスで処理(in vitro代謝)させて得られた反応物中のCompound Aは、分子内の2つのメチレンジオキシフェニル基のうち、アセタール酸素と結合していない方のメチレンジオキシ基が開裂してカテコール構造を持ったもの(セサモリン−6−カテコール)であるとの結論を得た。
【0079】
[実施例2] セサモリンのヒトS9ミックス処理、並びに反応液のHPLC及びLC−MS分析
下記表2の組成に基づいて本発明の化合物(セサモリンin vitro代謝物)を製造し、HPLC、及びLC−MS分析を行った。即ち、下記の成分を混合した後、37℃で1日間、反応させた。その後、2倍量の酢酸エチルで2回抽出し、濃縮乾固後、メタノールで再溶解させHPLC及びLC−MS分析を行った。分析条件を以下に示す。
【0080】
【表2】

【0081】
(セサモリンin vitro代謝物のHPLC及びLC−MS分析条件)
HPLC :JASCO
カラム :デベロシルODS−HG−5 (4.6φ x 250mm)
溶離液 :A液;100% 水 / 0.01% 酢酸
B液;100% アセトニトリル / 0.01% 酢酸
流速 :0.8mL/分
検出波長 :285nm
プローブ :ESP−
溶出条件

【0082】
HPLC分析の結果、基質であるセサモリン以外に、ラットS9処理で得られたものと同様なピークA’(Compound A’)が35分付近に検出された(図4)。
【0083】
LC−MS分析の結果、メインピークA’(Compound A’)の測定分子量{M−H}はm/z 357.11であることが判明した。Compound A’の吸収極大(λmax)はセサモリンと同じ285nmであり、その分子量358はセサモリンの分子量370よりも12小さいことから、構造的にセサモリンの両端にある2つのメチレンジオキシ基のうち何れかがそれぞれ水酸基に開裂したカテコール体であるとの結論を得た(図5)。
【0084】
[実施例3] Compound A(セサモリン−6−カテコール)のDPPH(1,1−ジフェニル−2−ピクリルヒドラジル)ラジカル捕捉活性評価
下記表3の組成に基づいて各サンプルを作成し、DPPHラジカル捕捉活性評価を行った。即ち、下記の成分を遮光エッペンドルフチューブ中で混合させ、室温で10分間反応させた後、HPLCによりCompound AのDPPHラジカル捕捉活性評価を行った。尚、評価を、下記式を用いて行った:
{(コントロールのDPPHラジカルピーク面積)−(各サンプルのDPPHラジカルピーク面積)}/(コントロールのピーク面積)
HPLC分析条件を以下に示す。
【0085】
【表3】

【0086】
(HPLC分析条件)
HPLC :JASCO
カラム :TSKゲル Octyl−80Ts(4.6φ x 150mm)
溶離液 :70%メタノール
流速 :1.0mL/分
検出 :517nm
【0087】
結果を図6に示す。セサモリンの代謝物であるCompound Aはセサモリンよりも明らかに強い抗酸化活性を示すことが判明した。
【0088】
[実施例4] ゴマ抽出物の経口投与によるセサモリン代謝物の検出
7週齢のF344/Nラット(雄性)4匹を、オリーブオイルのみを経口投与するControl群と180mg/kg セサモリン含有ゴマ抽出物を経口投与する群の2群に分け、20時間絶食させた後、2度の経口投与を行い、翌日採尿した。次に尿に対して2倍量の酢酸エチルを加えて酢酸エチル層を2回抽出し、濃縮乾固後、メタノールで再溶解させ、HPLCにより画分の分取を行い、再びメタノールに再溶解させ、LC−MS/MSを用いて分析を行った。このときのHPLC分取条件、及びLC−MS/MSによる分析条件を以下に示す。
【0089】
(尿サンプルからのCompound A画分のHPLC分取条件)
カラム :デベロシル300C4−HG−5(4.6φ x 250mm)
溶離液 :A液;100%水/0.01%酢酸
B液;100%アセトニトリル/0.01%酢酸
流速 :0.8mL/分
検出 :285nm
溶出条件

画分として20〜40分を分取した。
【0090】
(上記分取画分のLC−MS/MS分析条件)
LC−MS/MS(アプライドバイオシステム API2000 HPLC−MS/MSシステム)
カラム :デベロシルODS−HG−3(2φ x 50mm)
溶離液 :A液;100%水/0.1%蟻酸
B液;100%アセトニトリル/0.1%蟻酸
流速 :0.2mL/分
イオン源 :Turbo Spray Ionization positive(ESP−モード)
溶出条件

Compound A:356.8→219.0、及び356.8→108.0のフラグメントを各々検出する設定で実施。
【0091】
結果を図7に示す。上段(Standard)はセサモリン−6−カテコール標品、下段(Urine)はラット尿サンプルを用いて測定したチャートである。セサモリン含有ゴマ抽出物を経口投与したラット尿中より、同一の親イオン(Compound A)由来と考えられる分子量219、及び108のピーク(各々のフラグメント構造は、チャート内に示したセサモリン−6−カテコールが矢印の部分から切れて生じたものであることを示す)を検出した。このことから、生体内においてセサモリンはCompound Aに代謝されることが明らかとなった。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】実施例1において、セサモリンをラットS9ミックスで処理して得られた反応物をHPLCで分析した結果を示す図である。
【図2】実施例1において、セサモリンをラットS9ミックスで処理して得られた反応物のうちピークAを示したものをLC−MSで分析した結果を示す図である。
【図3】実施例1において、セサモリンをラットS9ミックスで処理して得られた反応物のうちピークAを示したもの(Compound A)の構造と、NMR(H、13C)で得られたシグナルを示したものである。
【図4】実施例2において、セサモリンをヒトS9ミックスで処理して得られた反応物をHPLCで分析した結果を示す図である。
【図5】実施例2において、セサモリンをヒトS9ミックスで処理して得られた反応物のうちピークA’を示したものをLC−MSで分析した結果を示す図である。
【図6】Compound A(セサモリン−6−カテコール)のDPPHラジカル捕捉活性(実施例3)を示す図である。
【図7】セサモリン含有ゴマ抽出物を経口投与したラット尿のLC−MS/MS分析結果(実施例4)を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表されることを特徴とするリグナン化合物。
【化1】

(但し、式中、R〜Rはそれぞれ独立して水素原子又はメチル基を表し、或いはRとR又はRとRは一緒になってメチレン基を表す。)
【請求項2】
2−(3,4−メチレンジオキシフェノキシ)−6−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−シス−3,7−ジオキサビシクロ[3.3.0]オクタン、2−(3,4−ジヒドロキシフェノキシ)−6−(3,4−メチレンジオキシフェニル)−シス−3,7−ジオキサビシクロ[3.3.0]オクタン、2−(3,4−メチレンジオキシフェノキシ)−6−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−シス−3,7−ジオキサビシクロ[3.3.0]オクタン、及びこれらの混合物から選択される請求項1に記載のリグナン化合物
【請求項3】
請求項1又は2に記載のリグナン化合物を有効成分として含有することを特徴とする抗酸化剤。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のリグナン化合物を含有することを特徴とする医薬組成物。
【請求項5】
肝臓障害、腎臓障害若しくはDNA酸化障害の予防又は軽減用である請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
請求項1又は2に記載のリグナン化合物を含有することを特徴とする飼料又は飲食品。
【請求項7】
セサモリン又はセサモリンを含む原料を薬物代謝酵素と反応させることを特徴とする請求項1又は2に記載のリグナン化合物の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法によって製造される請求項1又は2に記載のリグナン化合物。

【図3】
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【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−127301(P2008−127301A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−312146(P2006−312146)
【出願日】平成18年11月17日(2006.11.17)
【出願人】(000000066)味の素株式会社 (887)
【出願人】(504139662)国立大学法人名古屋大学 (996)
【Fターム(参考)】