新規銅錯体およびそれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子
【課題】有機エレクトロニクス材料、特に有機エレクトロルミネッセンス素子用材料として有用な新規発光性金属錯体を提供すること。
【解決手段】下記式(1)で表される単核1価銅錯体を使用する。
【解決手段】下記式(1)で表される単核1価銅錯体を使用する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規金属錯体、特に発光性金属錯体、およびそれを用いた有機エレクトロニクス材料、特に有機エレクトロルミネッセンス素子用材料又は発光材料並びに有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。より詳しくは、特定の銅錯体を有機エレクトロルミネッセンス素子用材料又は発光材料として用いることで、特に高効率な発光が得られる有機エレクトロルミネッセンス素子又は発光材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子はキャリア注入型の発光素子であり、液晶やプラズマディスプレイに次ぐ次世代のフラットパネルディスプレイとして近年注目されており、一部実用化もされている。有機EL素子では、キャリアの再結合によって生じる励起子には1重項と3重項の2種類が存在する。電子と正孔の再結合が無秩序に起こり、単純なスピン統計に従うとすれば、その生成比は1重項:3重項=1:3となるはずであり、1重項励起子に比べ3重項励起子は3倍量生成していることになる。ここで、1重項励起子からの発光は蛍光、3重項励起子からの発光はりん光と呼ばれている。
ところで、有機EL素子用材料として頻繁に用いられる従来型の蛍光色素は、3重項からの放射失活過程はスピン禁制のため非常に遅く、室温では無輻射遷移(熱失活)に打ち勝つことができず、室温でりん光発光を観測することはほとんどない。従って、有機EL素子内でキャリア再結合によって生成された3重項励起子は熱的に失活してしまい発光に寄与しないことになる。このような理由から、1重項のみを利用する蛍光型有機EL素子の内部量子収率の上限は25%と言われている。これに光取出し効率などを加味して、実際に外部に取出せる光に換算すると、外部量子収率(exQE)の上限は約5%と言われている。
【0003】
そこで、有機EL素子の発光効率を向上させるために、3重項励起子を利用することが提唱され、ベンゾフェノン誘導体やランタニド錯体が検討されたが、内部量子収率は蛍光色素に及ばないものであった。その後、d-ブロックの遷移金属を用いる検討がなされ、白金のポルフィリン錯体(PtOEP)を用いたりん光EL素子(赤色発光)が発表されたが、依然として蛍光色素と同程度の内部量子収率であった。しかしその後、オルトメタル型イリジウム錯体(緑色発光)が報告され、緑色発光で26cd/A, 19lm/W, exQE=7.5%が達成され 、蛍光色素の内部量子収率限界を越えるりん光型EL素子が実現された。これらd-ブロック遷移金属錯体の特徴は、中心金属として第5周期以降の重金属を用いていることであり、これによりスピン−軌道相互作用が大きくなり(重原子効果)、本来スピン禁制であるはずの3重項−1重項遷移が許容遷移になり、高効率のりん光発光を室温で観測することができるようになった。
これを機に多くのイリジウム錯体が研究されてきたが、イリジウム金属は地殻中の存在比が極めて少ない元素のひとつであるため非常に高価であり、より安価かつ入手容易な金属を用いた発光性金属錯体が待ち望まれていた。
一方、イリジウム以外の金属を用いた発光性金属錯体の研究もこれまで多くなされてきた。たとえば、白金、オスミウムなどがあるが、いずれもイリジウムと同じ第六周期の遷移金属のため非常に高価であり、高効率な発光も実現できていなかった。そこで、より安価かつ入手容易な第四周期の遷移金属、中でも銅錯体が特に注目され、その発光特性についてこれまでいくつか報告されてきた。
【0004】
一般に銅は1価と2価の酸化状態を取るが、2価の場合はd9の開殻構造を取るため、基底状態、励起状態ともに2重項になり、それらの光学遷移は同じ多重項同士であるから蛍光となる。従ってりん光型有機EL素子の発光材料として用いても高効率発光は望めない。また、光学遷移は非発光性のd-d遷移になることが多ため、発光性の2価銅錯体はほとんど知られていない。これに対して、1価の銅錯体の場合はd10の閉殻構造を取り、熱失活の原因となるd-d遷移が存在しないため、高効率で発光しやすいことが知られている。また発光の起源に関しても、銅1価錯体はイリジウムと同様な金属−配位子遷移(3MLCT)に基づく発光を示すことが知られている。従って、大きなスピン−軌道相互作用ひいては高効率りん光発光が期待できるが、それでもなお発光効率は実用領域に達しておらず、高効率で発光する安価かつ入手容易な銅錯体が望まれていた。
【0005】
発光性銅錯体に関しては、これまでにもいくつかの文献が開示されているが、実用的な発光性錯体は得られていなかった。更に、発光性銅錯体およびそれを用いた有機EL素子は、以下のような特許文献1〜3や非特許文献1〜4に開示されているが、発光効率が充分でなかった。
【化1】
【0006】
【特許文献1】特開2003-332074号公報
【特許文献2】特開2005-36020号公報
【特許文献3】特開2006-286749号公報
【非特許文献1】Appl. Phys. Lett., 88, 213508 (2006)
【非特許文献2】Adv. Mater., 16, 432 (2004)
【非特許文献3】J. Amer. Chem. Soc., 124, 6 (2002)
【非特許文献4】Inorg. Chem., 41, 3313 (2002)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の第一の目的は、有機エレクトロニクス材料、特に有機エレクトロルミネッセンス素子用材料として有用な新規発光性金属錯体を提供することにある。
本発明の第二の目的は、このような金属錯体を含む、有機エレクトロルミネッセンス素子用材料、当該材料を含む有機エレクトロルミネッセンス素子の有機層、例えば、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層を提供することにある。
本発明の第三の目的は、このような有機エレクトロルミネッセンス素子用材料を含む有機エレクトロルミネッセンス素子、並びに当該有機エレクトロルミネッセンス素子を含む装置、例えば、車載用、携帯機器用、パソコン用、テレビ用等のディスプレイを提供することにある。
本発明の第四の目的は、発光材料として有用な新規発光性金属錯体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の発明者らは、特定構造の単核1価銅錯体を用いることで、発光効率が高く、素子の発光寿命が長く、しかも安価で入手容易な有機エレクトロルミネッセンス素子又は発光材料を得ることができることを見出した。具体的に、本発明は、
1.下記式(1)で表される単核1価銅錯体に関する。
【化2】
(式中、XおよびYはそれぞれ独立にNまたはCR6であり、R1〜R6はそれぞれ独立に、水素、ハロゲン、C1〜C40の置換もしくは無置換のアルキル基、C2〜C40の置換もしくは無置換のアルケニル基、C6〜C40の置換もしくは無置換のアリール基、C3〜C40の置換もしくは無置換のヘテロアリール基、C1〜C40の置換もしくは無置換のアルコキシ基、C6〜C40の置換もしくは無置換のアリールオキシ基、C1〜C40の置換もしくは無置換のアルキルチオ基であり、R1〜R6のうち隣接する基は互いに結合して環を形成してもよく、L1およびL2はそれぞれ独立に、窒素、燐及び砒素から選ばれる元素を含む配位子であり、L1とL2が互いに結合して2座配位子を形成してもよい。)
2.XがCR6であり、YがNである上記1に記載の銅錯体に関する。
3.XがNであり、YがCR6である上記1に記載の銅錯体に関する。
4.L1およびL2がそれぞれ独立に窒素及び燐から選ばれる元素を含む配位子であり、互いに結合して2座配位子を形成している、上記1〜3の何れか1に記載の銅錯体に関する。
【0009】
5.L1およびL2が互いに結合した2座配位子であり、該配位子が、下記式(2)の2座ホスフィンを形成している、上記1〜4の何れか1に記載の銅錯体に関する。
【化3】
(式中、R10〜R13はそれぞれ独立に水素、ハロゲン、C1〜C40の置換もしくは無置換のアルキル基、C2〜C40の置換もしくは無置換のアルケニル基、C6〜C40の置換もしくは無置換のアリール基、C3〜C40の置換もしくは無置換のヘテロアリール基、C1〜C40の置換もしくは無置換のアルコキシ基、C6〜C40の置換もしくは無置換のアリールオキシ基、C1〜C40の置換もしくは無置換のアルキルチオ基であり、R10とR11及び/又はR12とR13は互いに結合して環を形成してもよく、QはC1〜C6の置換もしくは無置換のアルキリデン基、C2〜C6の置換もしくは無置換のアルケニリデン基、C6〜C40の置換もしくは無置換のアリーレン基、C3〜C40の置換もしくは無置換のヘテロアリーレン基である。)
6.Qが、ハロゲン、C1〜C40の置換もしくは無置換のアルキル基、C6〜C40の置換もしくは無置換のアリール基で置換されてもよい下記構造;
【化4】
から選ばれる有機基である、上記5に記載の銅錯体に関する。
7.上記1〜6の何れか1に記載の銅錯体を含有する発光材料に関する。
8.上記1〜6の何れか1に記載の銅錯体を含有する有機エレクトロルミネッセンス素子用材料に関する。
9.陰極と、陽極と、該陰極と該陽極との間に挟持された1層または複数層からなる有機層とを含み、該有機層が少なくとも発光層を含み、及び、該有機層の少なくとも1層が、上記8に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料を含む有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。
10.上記9に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を有する装置に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の特定構造の単核1価銅錯体を用いることで、発光効率が高く、素子の発光寿命が長く、しかも安価で入手容易な有機エレクトロルミネッセンス素子又は発光材料を得ることができる。
また、本発明で使用する単核1価銅錯体を含む有機エレクトロルミネッセンス素子用材料又は発光材料は、結晶状態のみならず、溶液状態または分散状態でも良好な発光を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(1)銅錯体
本発明の銅錯体は、下記式(1)で表される単核1価銅錯体である。
【化5】
(式中、XおよびYはそれぞれ独立にNまたはCR6(R6は1価の置換基。-C(-R6)=の様に結合している)であり、R1〜R6はそれぞれ独立に、水素、ハロゲン、C1〜C40の置換もしくは無置換のアルキル基、C2〜C40の置換もしくは無置換のアルケニル基、C6〜C40の置換もしくは無置換のアリール基、C3〜C40の置換もしくは無置換のヘテロアリール基、C1〜C40の置換もしくは無置換のアルコキシ基、C6〜C40の置換もしくは無置換のアリールオキシ基、C1〜C40の置換もしくは無置換のアルキルチオ基であり、R1〜R6のうち隣接する基は互いに結合して環を形成してもよく、L1およびL2はそれぞれ独立に、窒素、燐及び砒素から選ばれる元素を含む配位子であり、L1とL2が互いに結合して2座配位子を形成してもよい。)
【0012】
ここで、X=CR6, Y=CR6のものをピロール誘導体(但し、XのR6とYのR6は互いに同一でも異なっていてもよい)、X=CR6, Y=Nのものをピラゾール誘導体、X=N, Y=CR6のものをイミダゾール誘導体、X=N, Y=Nのものをトリアゾール誘導体と呼ぶ。
【化6】
【0013】
上記R1〜R6のC1〜C40の置換もしくは無置換のアルキル基は、直鎖、分岐鎖または環状のいずれであってもよく、それらの具体例としては、メチル、エチル、1-プロピル、2-プロピル、1-ブチル、2-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル、2-エチルヘキシル、3,7-ジメチルオクチル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、1-アダマンチル、2-アダマンチル、ノルボルニル、トリフルオロメチル、トリクロロメチル、ベンジル、α,α-ジメチルベンジル、2-フェニルエチル、1-フェニルエチルなどが挙げられる。好ましくは、C1〜C20の置換もしくは無置換のアルキル基であり、より好ましくは、C1〜C10の置換もしくは無置換のアルキル基であり、更に好ましくは、C1〜C6の置換もしくは無置換のアルキル基であり、具体的には、好ましくは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、tert-ブチル、シクロヘキシルなどである。
R1〜R6のC2〜C40の置換もしくは無置換のアルケニル基は、直鎖、分岐鎖または環状のいずれであってもよく、それらの具体例としては、ビニル、プロペニル、ブテニル、オレイル、エイコサペンタエニル、ドコサヘキサエニル、2,2-ジフェニルビニル、1,2,2-トリフェニルビニル、2-フェニル-2-プロペニルなどが挙げられる。好ましくは、C2〜C20の置換もしくは無置換のアルケニル基であり、より好ましくは、C2〜C10の置換もしくは無置換のアルケニル基であり、具体的には、好ましくは、ビニル、2,2-ジフェニルビニルなどである。
【0014】
R1〜R6のC6〜C40の置換もしくは無置換のアリール基の具体例としては、フェニル、2-トリル、4-トリル、4-トリフルオロメチルフェニル、4-メトキシフェニル、4-シアノフェニル、2-ビフェニリル、3-ビフェニリル、4-ビフェニリル、ターフェニリル、3,5-ジフェニルフェニル、3,4-ジフェニルフェニル、ペンタフェニルフェニル、4-(2,2-ジフェニルビニル)フェニル、4-(1,2,2-トリフェニルビニル)フェニル、フルオレニル、1-ナフチル、2-ナフチル、9-アントリル、2-アントリル、9-フェナントリル、1-ピレニル、クリセニル、ナフタセニル、コロニルなどが挙げられる。好ましくは、C6〜C20の置換もしくは無置換のアリール基であり、より好ましくは、C6〜C14の置換もしくは無置換のアリール基であり、具体的には、好ましくは、フェニル、4-ビフェニリル、1-ナフチル、2-ナフチル、9-フェナントリルなどである。
R1〜R6のC3〜C40の置換もしくは無置換のヘテロアリール基の具体例としては、フラン、チオフェン、ピロール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、ピラゾール、ベンズピラゾール、トリアゾール、オキサジアゾール、ピリジン、ピラジン、トリアジン、キノリン、ベンゾフラン、ジベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、カルバゾールなどが挙げられる。好ましくは、1以上のS、O又はN基を有し、C3〜C20の置換もしくは無置換のヘテロアリール基であり、より好ましくは、C4〜C5の置換もしくは無置換のヘテロアリール基であり、具体的には、好ましくは、フラン、チオフェン、ピリジンなどである。
【0015】
R1〜R6のC1〜C40の置換もしくは無置換のアルコキシ基は、直鎖、分岐鎖または環状のいずれであってもよく、それらの具体例としては、メトキシ、エトキシ、1-プロピルオキシ、2-プロピルオキシ、1-ブチルオキシ、2-ブチルオキシ、sec-ブチルオキシ、tert-ブチルオキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、オクチルオキシ、デシルオキシ、ドデシルオキシ、2-エチルヘキシルオキシ、3,7-ジメチルオクチルオキシ、シクロプロピルオキシ、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシ、1-アダマンチルオキシ、2-アダマンチルオキシ、ノルボルニルオキシ、トリフルオロメトキシ、ベンジロキシ、α,α-ジメチルベンジロキシ、2-フェニルエトキシ、1-フェニルエトキシなどが挙げられる。好ましくは、C1〜C20の置換もしくは無置換のアルコキシ基であり、より好ましくは、C1〜C10の置換もしくは無置換のアルコキシ基であり、更に好ましくは、C1〜C4の置換もしくは無置換のアルコキシ基であり、具体的には、好ましくは、メトキシ、エトキシ、ter-ブチルオキシなどである。
R1〜R6のC6〜C40の置換もしくは無置換のアリールオキシ基の具体例としては、前記アリール基が酸素を介して結合した置換基が挙げられる。好ましくは、C6〜C20の置換もしくは無置換のアリールオキシ基であり、より好ましくは、C6〜C14の置換もしくは無置換のアリールオキシ基であり、具体的には、好ましくは、フェノキシ、ナフトキシ、フェナントリルオキシなどである。
【0016】
R1〜R6のC1〜C40の置換もしくは無置換のアルキルチオ基は、直鎖、分岐鎖または環状のいずれであってもよく、それらの具体例としては、メチルチオ、エチルチオ、1-プロピルチオ、2-プロピルチオ、1-ブチルチオ、2-ブチルチオ、sec-ブチルチオ、tert-ブチルチオ、ペンチルチオ、ヘキシルチオ、オクチルチオ、デシルチオ、ドデシルチオ、2-エチルヘキシルチオ、3,7-ジメチルオクチルチオ、シクロプロピルチオ、シクロペンチルチオ、シクロヘキシルチオ、1-アダマンチルチオ、2-アダマンチルチオ、ノルボルニルチオ、トリフルオロメチルチオ、ベンジルチオ、α,α-ジメチルベンジルチオ、2-フェニルエチルチオ、1-フェニルチルチオなどが挙げられる。好ましくは、C1〜C20の置換もしくは無置換のアルキルチオ基であり、より好ましくは、C1〜C10の置換もしくは無置換のアルキルチオ基であり、更に好ましくは、C1〜C4の置換もしくは無置換のアルキルチオ基であり、具体的には、好ましくは、メチルチオ、エチルチオ、ter-ブチルチオなどである。
R1〜R6を構成する上述した各基の置換基としては、上記アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、及びヘテロアリール基が挙げられる。
【0017】
R1およびYがCR6である場合の当該R6は水素以外の置換基であることが好ましい。本発明で使用する単核1価銅錯体に含まれているような1価の銅錯体は、空気中の酸素によって酸化されやすく、容易に2価銅錯体になるという性質を有している。ところが、2価銅錯体は開殻のd軌道を有しており、非発光性のd-d遷移が優勢になるため一般的には発光しないことが知られている。R1およびYがCR6である場合の当該R6の少なくともひとつを水素以外の置換基にすることにより、立体障害が生じ、正四面体型の1価銅錯体から平面四辺形型2価銅錯体への異性化反応が阻害され、安定に発光する銅錯体を得ることができる。R1およびYがCR6である場合の当該R6の更に好ましい例としては、C1〜C8程度のアルキル基や塩素、臭素などに代表されるハロゲン類など、適度な立体障害を有する置換基を挙げることができる。このようにR1およびYがCR6である場合の当該R6の置換基が適度な大きさを有する場合は、置換基による立体反発も抑制でき、1価銅錯体の安定性を保持できる。
【0018】
R1〜R6のうち隣接する基は互いに結合して環を形成してもよい。例えば、R5と隣接するYがCR6である場合のR6は、互いに結合して環を形成してもよい。また、R4と隣接するXがCR6である場合のR6は、互いに結合して環を形成してもよい。環としては、例えば3〜8員環、好ましくは5〜6員環の、芳香環又は一部に不飽和結合を有してもよい脂肪族環が挙げられる。
【0019】
式(1)中、L1およびL2となる材料として好ましくは、トリエチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミンなどのアミン類、ピリジン、ビピリジン、フェンナントロリン、ジメチルフェナントロリン、ジフェニルフェンナントロリン、ジメチルジフェニルフェナントロリンなどのアジン類、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィンなどのホスフィン類などを挙げることができる。より好ましくは、L1とL2は、それぞれ独立に燐を含む配位子であり得る。
燐を含む配位子であるL1とL2としては、具体的には、ビスジフェニルホスフィノメタン、ビスジシクロヘキシルホスフィノメタン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,4-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エチレン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)ベンゼン、2,2'-ビス(ジフェニルホスフィノ)ビフェニル、2,2'-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1'-ビナフチル、1,1'-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、2,2'-ビス(ジフェニルホスフィノ)ジフェニルエーテル、4,5-ビス(ジフェニルホスフィノ)-9,9-ジメチルキサンテンなどの2座ホスフィン配位子を挙げることができる。
【0020】
また、L1およびL2は、それぞれ独立に窒素及び燐から選ばれる元素を含む配位子であり、互いに結合して2座配位子を形成していることが好ましい。L1およびL2を形成する配位子は、窒素又は燐が銅に配位していることが好ましい。
さらに、L1およびL2は、互いに結合した2座配位子であり、該配位子が、下記式(2)の2座ホスフィンを形成していることがより好ましい。
【化7】
(式中、R10〜R13はそれぞれ独立に水素、ハロゲン、C1〜C40の置換もしくは無置換のアルキル基、C2〜C40の置換もしくは無置換のアルケニル基、C6〜C40の置換もしくは無置換のアリール基、C3〜C40の置換もしくは無置換のヘテロアリール基、C1〜C40の置換もしくは無置換のアルコキシ基、C6〜C40の置換もしくは無置換のアリールオキシ基、C1〜C40の置換もしくは無置換のアルキルチオ基であり、R10とR11及び/又はR12とR13は互いに結合して環を形成してもよく、QはC1〜C6の置換もしくは無置換のアルキリデン基、C2〜C6の置換もしくは無置換のアルケニリデン基、C6〜C40、好ましくは、C6〜C20、より好ましくは、C6〜C14の置換もしくは無置換のアリーレン基、C3〜C40、好ましくはC3〜C20、より好ましくは、C4〜C5の置換もしくは無置換のヘテロアリーレン基(好ましくは、1以上のS、O又はN基を有するヘテロアリーレン基)である。)
【0021】
上記式(2)のR10〜R13として挙げられているC1〜C40の置換もしくは無置換のアルキル基、C2〜C40の置換もしくは無置換のアルケニル基、C6〜C40の置換もしくは無置換のアリール基、C3〜C40の置換もしくは無置換のヘテロアリール基、C1〜C40の置換もしくは無置換のアルコキシ基、C6〜C40の置換もしくは無置換のアリールオキシ基、C1〜C40の置換もしくは無置換のアルキルチオ基は、前記したR1〜R6と同様の基を選択することができる。
R10とR11及び/又はR12とR13は互いに結合して環を形成してもよい。環としては、例えば3〜8員環、好ましくは5〜6員環の、芳香環又は一部に不飽和結合を有してもよい脂肪族環が挙げられる。
上記Qは、さらに、ハロゲン、C1〜C40、好ましくは、C1〜C20、より好ましくは、C1〜C10、更に好ましくは、C1〜C6の置換もしくは無置換のアルキル基、C6〜C40、好ましくは、C6〜C20、より好ましくは、C6〜C14の置換もしくは無置換のアリール基で置換されてもよい下記構造;
【化8】
から選ばれる有機基であってもよい。
【0022】
具体的に、上記式(2)のようなL1およびL2が互いに結合した2座配位子を含む本発明の単核1価銅錯体は、下記式(3)の様に示すことができる。
【化9】
(式中、X、Y、Q、R1〜R5、R10〜R13の定義は上記と同様である。)
【0023】
本発明で用いることのできる単核1価銅錯体の具体例を以下に示す。
【化10】
【0024】
【化11】
【0025】
【化12】
【0026】
【化13】
【0027】
本発明の単核1価銅錯体の一般的な合成経路を以下に説明する。
第一の方法は、アルゴンや窒素などの不活性ガス雰囲気下、アゾール誘導体のNHプロトンを塩基(base)により引き抜き、第二配位子(L1)および第三配位子(L2)を加え、更に銅(I)源を加えて、室温(約25℃)で撹拌することにより合成できる。
【化14】
また第二の方法として、X=N(イミダゾールまたはトリアゾール)およびY=N(ピラゾール)の場合は、L1およびL2とともに先に錯体形成を行ない、カチオン性錯体を単離した後に塩基を反応させて、本発明化合物(中性錯体)に誘導することも可能である。
【0028】
【化15】
【0029】
これらの反応で用いられる塩基としては、特に限定はされないが、例えば水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カルシウムなどのアルカリ(土類)金属水素化物、ナトリウムメトキシド、カリウムt-ブトキシドなどのアルコキシド類、n-ブチルリチウム、t-ブチルリチウムなどの有機リチウム類などを挙げることができる。これらの塩基のうち好ましいのは、水素化ナトリウムなどに代表されるアルカリ金属水素化物であり、これらの塩基は求核性が低いため、副反応(C=N結合への塩基の付加反応)を抑制し、収率を向上させることができる。また、銅(I)源としては、テトラキス(アセトニトリル)銅(I)ヘキサフルオロホスフェート(Cu(MeCN)4PF6)やCu(PPh3)3Clなどに代表される錯体類、CuI、CuBr、CuClなどのハロゲン化物などを用いることができる。
【0030】
このようにして合成した単核1価銅錯体は、室温、大気中で安定なため、必要に応じてカラムクロマトグラフィや再結晶などによって精製することができる。また構造の確認には、中心金属がd10の閉殻構造をしているため各種核磁気共鳴(1H-NMR、13C-NMR、31P-NMR)を用いることができ、必要に応じて元素分析、X線構造解析などによっても確認することができる。
【0031】
(2) 発光材料及び有機エレクトロルミネッセンス素子用材料
本発明の上記銅錯体は、有機エレクトロニクス素子用材料または発光材料として用いることができる。
有機エレクトロニクス素子用材料の具体例としては、例えば有機エレクトロルミネッセンス材料、有機半導体材料、有機トランジスタ材料、有機光電変換材料、有機太陽電池材料などを挙げることができ、これらの中で好ましい適用例としては、有機エレクトロルミネッセンス材料を挙げることができる。
また、発光材料の具体例としては、りん光色素、波長変換素子などを挙げることができ、好ましい適用例としては、波長変換素子を挙げることができる。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料又は発光材料は、上記単核1価銅錯体以外の他の材料として、後述する(3)有機エレクトロルミネッセンス素子の項で説明する発光材料、正孔注入材料、正孔輸送材料、電子注入材料、電子輸送材料等を含んでもよい。
さらに本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料又は発光材料は、従来から公知の他の混合物である、以下のような樹脂及び添加剤等を含んでもよい。以下、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料又は発光材料について詳しく説明するが、「有機エレクトロルミネッセンス素子用材料又は発光材料」は、「有機エレクトロルミネッセンス素子用材料等」と省略して説明する。
【0032】
(2-1)樹脂
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料等は、成膜性向上、膜のピンホール防止等のため適切な樹脂を含んでいてもよい。このような樹脂としては、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリスルフォン、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、セルロース等の絶縁性樹脂およびそれらの共重合体、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリシラン等の光導電性樹脂、ポリチオフェン、ポリピロール等の導電性樹脂を挙げられる。
(2-2)添加剤
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料等は、成膜性向上、膜のピンホール防止等のため適切な添加剤を含んでいてもよい。このような添加剤としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤等が挙げられる。
【0033】
(3)有機エレクトロルミネッセンス素子
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、陰極と、陽極と、該陰極と陽極との間に挟持された1層または複数層からなる有機層とを含む。また、この有機エレクトロルミネッセンス素子の素子は、基板上に設けられていてよい。本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子表面上に、さらに保護層を設けてもよい。
より具体的には、本発明における有機エレクトロルミネッセンス素子の素子構造は、電極間に有機層を1層あるいは2層以上積層した構造である。有機層としては、例えば、正孔注入層、正孔輸送層(電子障壁層)、発光層、電子輸送層(正孔障壁層)及び電子注入層がある。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の具体的な素子構造は、例えば、(陽極/発光層/陰極)、(陽極/正孔注入層または輸送層/発光層/電子注入層または輸送層/陰極)、(陽極/正孔注入層または輸送層/発光層/陰極)、(陽極/発光層/電子注入層または輸送層/陰極)、あるいは(陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極)等の構造が挙げられる。
【0034】
(3-1)発光層
発光層を構成する発光材料としては、上記単核1価銅錯体をそのまま使用することができる。また、発光層は、本発明で使用する単核1価銅錯体をトーパントとして用い、ホスト材料とドーパントとの混合物であってもよい。なお、通常、各種有機層に含まれるドーパントとホスト材料との質量比は、1:99〜50:50、好ましくは、5:95〜20:80であることが適当である。発光材料用のホスト材料としては、本発明で使用する単核1価銅錯体からホスト材料への逆エネルギー移動を防止するため、金属錯体よりも3重項エネルギーギャップが広い化合物であれば特に限定されない。特に好ましいホスト材料としては、m−ジカルバゾリルベンゼン、4,4’−ジカルバゾリルビフェニルに代表されるカルバゾール誘導体、1,3−ビス(トリメチルシリル)ベンゼン、に代表されるシリコン誘導体、1,3,5−トリス(3,5−ジフェニルフェニル)ベンゼンに代表されるオリゴアリーレン類、ポリビニルカルバゾールに代表される高分子化合物などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。さらに、発光層は、後述する正孔注入材料、正孔輸送材料、電子注入材料及び電子輸送材料等の他の材料を含んでいてもよい。発光層に含み得る他の材料は、例えば、発光層全体の質量に対し、1〜50質量%、好ましくは、1〜20質量%であることが適当である。
【0035】
(3-2)正孔注入層及び正孔輸送層(電子障壁層)
正孔注入層及び正孔輸送層(電子障壁層)等に含まれる正孔注入材料及び正孔輸送材料(電子障壁材料)としては、特に限定はなく、公知の正孔注入材料及び正孔輸送材料(電子障壁材料)を使用できるが、薄膜形成能力の優れた化合物が好ましい。正孔注入層は、陽極からの正孔注入効果、発光層または発光材料に対して優れた正孔注入効果を有する。正孔輸送層は、正孔を輸送する能力を有する。正孔輸送層は、電子障壁層とも呼ばれ、発光層で生成した励起子の電子注入層または電子注入材料への移動を防止する能力を有する。これら正孔注入層及び正孔輸送層(電子障壁層)は、それぞれ独立の層として使用しても、又は、各層の各特性を併せ持つ単一の層として使用してもよい。具体的には、フタロシアニン誘導体、ナフタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、金属フタロシアニン類、金属ポルフィリン類、オリゴアリーレン類、オリゴチオフェン類、ベンジジン型トリフェニルアミン類、スチリルアミン型トリフェニルアミン類、スターバースト型トリフェニルアミン類、テトラシアノテトラアザトリフェニレン類と、それらの重合体、およびポリビニルカルバゾール、ポリシランなどの高分子、ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸(PEDOT:PSS)、ポリアニリン/カンファースルホン酸(PANI/CSA)などに代表される導電性高分子等の高分子材料、酸化ゲルマニウム、酸化モリブデン等に代表される無機酸化物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0036】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子において使用できる正孔注入材料及び正孔輸送材料(電子障壁材料)の中で、さらに効果的な正孔注入材料及び正孔輸送材料(電子障壁材料)は、芳香族三級アミン誘導体もしくはフタロシアニン誘導体である。芳香族三級アミン誘導体の具体例は、トリフェニルアミン、トリトリルアミン、トリルジフェニルアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン、N,N,N’,N’−(4−メチルフェニル)−1,1’−フェニル−4,4’−ジアミン、N,N,N’,N’−(4−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ジナフチル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン、N,N’−(メチルフェニル)−N,N’−(4−n−ブチルフェニル)−フェナントレン−9,10−ジアミン、N,N−ビス(4−ジ−4−トリルアミノフェニル)−4−フェニル−シクロヘキサン等、もしくはこれらの芳香族三級アミン骨格を有したオリゴマーもしくはポリマーであるが、これらに限定されるものではない。フタロシアニン(Pc)誘導体の具体例は、H2 Pc、CuPc、CoPc、NiPc、ZnPc、PdPc、FePc、MnPc、ClAlPc、ClGaPc、ClInPc、ClSnPc、Cl2 SiPc、(HO)AlPc、(HO)GaPc、VOPc、TiOPc、MoOPc、GaPc−O−GaPc等のフタロシアニン誘導体およびナフタロシアニン誘導体であるが、これらに限定されるものではない。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子において使用できる正孔注入材料及び正孔輸送材料(電子障壁材料)の中で、更に効果的な材料は、CuPc、PEDOT:PSS、N,N’−ジフェニル−N,N’−ジナフチル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミンであってもよい。
【0037】
(3-3)電子注入層及び電子輸送層(正孔障壁層)
電子注入層及び電子輸送層(正孔障壁層)等に含まれる電子注入材料及び電子輸送材料(正孔障壁材料)としては、特に限定はなく、公知の電子注入材料及び電子輸送材料(正孔障壁材料)を使用できるが、薄膜形成能力の優れた化合物が好ましい。電子注入層は、陰極からの電子注入効果、発光層または発光材料に対して優れた電子注入効果を有する。電子輸送層は、電子を輸送する能力を有する。電子輸送層は、正孔障壁層とも呼ばれ、発光層で生成した励起子の正孔注入層への移動を防止する能力を有する。これら電子注入層及び電子輸送層(正孔障壁層)は、それぞれ独立の層として使用しても、又は、各層の各特性を併せ持つ単一の層として使用してもよい。具体的には、フルオレノン、アントラキノジメタン、ジフェノキノン、チオピランジオキシド、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、イミダゾール、ペリレンテトラカルボン酸、フレオレニリデンメタン、アントラキノジメタン、アントロン等とそれらの誘導体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、正孔注入材料に電子受容物質を、電子注入材料に電子供与性物質を添加することにより電荷注入性を向上させることもできる。
【0038】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子において、さらに効果的な電子注入材料及び電子輸送材料(正孔障壁材料)は、金属錯体化合物もしくは含窒素ヘテロ環誘導体である。金属錯体化合物の具体例は、8−ヒドロキシキノリナートリチウム、ビス(8−ヒドロキシキノリナート)亜鉛、ビス(8−ヒドロキシキノリナート)銅、ビス(8−ヒドロキシキノリナート)マンガン、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム、トリス(2−メチル−8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)ガリウム、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナート)ベリリウム、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナート)亜鉛、ビス(2−メチル−8−キノリナート)クロロガリウム、ビス(2−メチル−8−キノリナート)(o−クレゾラート)ガリウム、ビス(2−メチル−8−キノリナート)(1−ナフトラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリナート)(2−ナフトラート)ガリウム等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0039】
また、含窒素ヘテロ誘導体は、オキサゾール、チアゾール、オキサジアゾール、チアジアゾールなどのアゾール誘導体、フェナントロリン、バソフェナントロリン、バソクプロインなどのフェナントロリン誘導体、ビピリジン、アリール置換ピリジンなどのピリジン類が好ましい。具体的には、2,5−ビス(1−フェニル)−1,3,4−オキサゾール、2,5−ビス(1−フェニル)−1,3,4−チアゾール、2,5−ビス(1−フェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−(4’−tert−ブチルフェニル)−5−( 4”−ビフェニル) 1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、1,4−ビス[2−( 5−フェニルオキサジアゾリル) ]ベンゼン、1,4−ビス[2−( 5−フェニルオキサジアゾリル) −4−tert−ブチルベンゼン]、2−(4’−tert−ブチルフェニル)−5−( 4”−ビフェニル) −1,3,4−チアジアゾール、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−チアジアゾール、1,4−ビス[2−( 5−フェニルチアジアゾリル) ]ベンゼン、2−(4’−tert−ブチルフェニル)−5−(4”−ビフェニル) −1,3,4−トリアゾール、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−トリアゾール、1,4−ビス[2−( 5−フェニルトリアゾリル)]ベンゼン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0040】
電子注入層が絶縁体や半導体で構成されていれば、電流のリークを有効に防止して、電子注入性を向上させることができる。このような絶縁体としては、アルカリ金属カルコゲナイド、アルカリ土類金属カルコゲナイド、アルカリ金属のハロゲン化物およびアルカリ土類金属のハロゲン化物からなる群から選択される少なくとも一つの金属化合物を使用するのが好ましい。電子注入層がこれらのアルカリ金属カルコゲナイド等で構成されていれば、電子注入性をさらに向上させることができる点で好ましい。
具体的に、好ましいアルカリ金属カルコゲナイドとしては、例えば、Li2O、LiO、Na2S、Na2SeおよびNaOが挙げられ、好ましいアルカリ土類金属カルコゲナイドとしては、例えば、CaO、BaO、SrO、BeO、BaS、およびCaSeが挙げられる。また、好ましいアルカリ金属のハロゲン化物としては、例えば、LiF、NaF、KF、LiCl、KClおよびNaCl等が挙げられる。また、好ましいアルカリ土類金属のハロゲン化物としては、例えば、CaF2 、BaF2、SrF2、MgF2およびBeF2といったフッ化物や、フッ化物以外のハロゲン化物が挙げられる。
【0041】
さらに電子注入層は、通常電子輸送層として使用される電子輸送材料に還元性ドーパントを添加して、電子注入層として機能させたものであってもよい。還元性ドーパントは、仕事関数が2.9eV以下の還元性ドーパントであってもよい。ここで、還元性ドーパントとは、電子輸送材料を還元できる物質と定義される。したがって、一定の還元性を有するものであれば、様々なものが用いられ、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、アルカリ金属の酸化物、アルカリ金属のハロゲン化物、アルカリ土類金属の酸化物、アルカリ土類金属のハロゲン化物、希土類金属の酸化物または希土類金属のハロゲン化物、アルカリ金属の有機錯体、アルカリ土類金属の有機錯体、希土類金属の有機錯体からなる群から選択される少なくとも一つの物質を好適に使用することができる。
【0042】
また、より具体的に、好ましい還元性ドーパントとしては、Na(仕事関数:2.36eV)、K(仕事関数:2.28eV)、Rb(仕事関数:2.16eV)およびCs(仕事関数:1.95eV)からなる群から選択される少なくとも一つのアルカリ金属や、Ca(仕事関数:2.9eV)、Sr(仕事関数:2.0〜2.5eV)、およびBa(仕事関数:2.52eV)からなる群から選択される少なくとも一つのアルカリ土類金属が挙げられる仕事関数が2.9eVのものが特に好ましい。
これらのうち、より好ましい還元性ドーパントは、K、RbおよびCsからなる群から選択される少なくとも一つのアルカリ金属であり、さらに好ましくは、RbまたはCsであり、最も好ましのは、Csである。これらのアルカリ金属は、特に還元能力が高く、電子注入域(電子注入層又は発光層中の電子注入領域)への比較的少量の添加により、有機エレクトロルミネッセンス素子における発光輝度の向上や長寿命化が図られる。
また、仕事関数が2.9eV以下の還元性ドーパントとして、これら2種以上のアルカリ金属の組合わせも好ましく、特に、Csを含んだ組み合わせ、例えば、CsとNa、CsとK、CsとRbあるいはCsとNaとKとの組み合わせであることが好ましい。Csを組み合わせて含むことにより、還元能力を効率的に発揮することができ、電子注入域(電子注入層又は発光層中の電子注入領域)への添加により、有機エレクトロルミネッセンス素子における発光輝度の向上や長寿命化が図られる。
【0043】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子において、さらに効果的な電子輸送材料は、トリス(8-ヒドロキシキノリン)アルミニウム、バソクプロイン、バソフェナントロリン等が挙げられる。
また、電子輸送層が半導体で構成されていれば、電流のリークを有効に防止して、電子注入性を向上させることができる。電子輸送層を構成する半導体としては、Ba、Ca、Sr、Yb、Al、Ga、In、Li、Na、Cd、Mg、Si、Ta、SbおよびZnの少なくとも一つの元素を含む酸化物、窒化物または酸化窒化物等の一種単独または二種以上の組み合わせが挙げられる。また、電子輸送層を構成する無機化合物が、微結晶または非晶質の絶縁性膜であることが好ましい。電子輸送層がこれらの絶縁性膜で構成されていれば、当該絶縁製膜を薄膜とする際、より均質な薄膜が形成されるために、ダークスポット等の画素欠陥を減少させることができる。なお、このような無機化合物としては、上述したアルカリ金属カルコゲナイド、アルカリ土類金属カルコゲナイド、アルカリ金属のハロゲン化物およびアルカリ土類金属のハロゲン化物等が挙げられる。
【0044】
(3-4)陽極及び陰極
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の陽極として使用される導電性材料としては、4eVより大きな仕事関数を持つものが適しており、炭素、アルミニウム、バナジウム、鉄、コバルト、ニッケル、タングステン、銀、金、白金、パラジウム等およびそれらの合金、ITO基板、NESA基板に使用される酸化スズ、酸化インジウム等の酸化金属、さらにはポリチオフェンやポリピロール等の有機導電性樹脂が用いられる。
【0045】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の陰極として使用される導電性物質としては、4eVより小さな仕事関数を持つものが適しており、マグネシウム、カルシウム、錫、鉛、チタニウム、イットリウム、リチウム、ルテニウム、マンガン、アルミニウム等およびそれらの合金が用いられるが、これらに限定されるものではない。合金としては、マグネシウム/銀、マグネシウム/インジウム、リチウム/アルミニウム等が代表例として挙げられるが、これらに限定されるものではない。合金の比率は、蒸着源の温度、雰囲気、真空度等により制御され、適切な比率に選択される。陽極および陰極は、必要があれば二層以上の層構成により形成されていても良い。
【0046】
(3-5)基板
基板は、機械的、熱的強度を有し、好ましくは透明性を有するものであれば限定されるものではない。基板として好ましくは、ガラス基板および透明性樹脂フィルムがある。
透明性樹脂フィルムとしては、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメチルメタアクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ナイロン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリサルホン、ポリエーテルサルフォン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ポリビニルフルオライド、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリプロピレン等が挙げられる。
【0047】
(3-6)保護層
本発明により得られた有機エレクトロルミネッセンス素子の、温度、湿度、雰囲気等に対する安定性の向上のために、素子の表面に保護層を設けることができる。保護層を構成する材料としては、シリコンオイル、樹脂等が挙げられる。
【0048】
(3-7)添加剤等
いずれの有機層においても、成膜性向上、膜のピンホール防止等のため、上述した樹脂や添加剤((2-1)及び(2-2)参照)を使用しても良い。
【0049】
(3-8)各層の性質
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の膜厚は特に限定されるものではないが、適切な膜厚に設定する必要がある。本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の膜厚は、例えば、5nm〜10μm、好ましくは、10nm〜0.2μmの範囲であることが適当である。10μm以下であれば、一定の光出力を得るための印加電圧が大きくなりすぎず、効率化が図れる。5nm以上であれば、ピンホール等が発生することもなく、また、電界を印加することにより充分な発光輝度が得られるので好ましい。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の各有機層の膜厚は特に制限されないが、、例えば、1nm〜5μm、好ましくは、5nm〜1μmの範囲であることが適当である。1nm以上であれば、ピンホール等の欠陥が生じることもなく、また、5μm以下であれば必要な印加電圧を低く抑えることができ、効率化が図れる。
特に、有機層の一つである発光層の膜厚は、更に好ましくは、1nm〜500nm、最も好ましくは、10nm〜100nmの範囲であることが適当である。
【0050】
また、有機層の一つである正孔注入層の膜厚は、更に好ましくは、1nm〜100nm、最も好ましくは、10nm〜50nmの範囲であることが適当である。
有機エレクトロルミネッセンス素子では、効率良く発光させるために、基板、保護層及び少なくとも一方の電極は、素子の発光波長領域において充分透明にすることが望ましい。ここで、透明電極は、上記の導電性材料を使用して、蒸着やスパッタリング等の方法で所定の透光性が確保するように設定する。本発明で使用される電極は、光透過率を10%以上、好ましくは、30〜100%、より好ましくは、50〜100%にすることが望ましい。
【0051】
(3-9)各層の作製
本発明に係わる有機エレクトロルミネッセンス素子の各層の形成は、真空蒸着、スパッタリング、プラズマ、イオンプレーティング等の乾式成膜法やスピンコーティング、ディップコート、キャスティング、ロールコート、フローコーティング、インクジェット等の湿式成膜法のいずれの方法も適用することができる。
【0052】
湿式成膜法の場合、各層を形成する材料を、適切な溶媒に溶解または分散させて有機溶液を調製し、スピンコート法等を利用して有機溶液を基板上に塗布し、乾燥し、各層の薄膜を得る。ここで、使用される溶媒はいずれであっても良い。例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、テトラクロロエタン、トリクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロトルエンなどのハロゲン系炭化水素系溶媒や、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アニソールなどのエーテル系溶媒、メタノールやエタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、エチレングリコールなどのアルコール系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ヘキサン、オクタン、デカン、テトラリンなどの炭化水素系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミルなどのエステル系溶媒等が挙げられる。なかでも、炭化水素系溶媒またはエーテル系溶媒が好ましい。また、これらの溶媒は単独で使用しても複数混合して用いてもよい。なお、使用可能な溶媒はこれらに限定されるものではない。
【0053】
(3-10)有機エレクトロルミネッセンス素子の製造及び性質
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、陰極と陽極との間に、上記有機層を挟持することによって製造される。このうち、有機層は、上述の乾式成膜法や湿式製膜法により各層を好ましくは基板上に順次積層することによって製造される。
具体的には、例えば、まず、基板を準備する。基板は、上述した各種の基板を利用できる。この基板上に、電極を設けて電極−基板接合体を得る。この作業に代わり、あらかじめ電極が基板の一面に設けられた電極−基板接合体を市場から入手してもよい。この接合体の上に、有機層を構成する材料を、上述したスピンコート法等を用いて順次積層する。有機層の積層に続いて、基板上の電極と対極をなす電極を、真空蒸着法等により積層する。
その他、基板、陰極、陽極、有機層を別々の工程で調製した後、これらを圧着して積層させてもよい。
得られた有機エレクトロルミネッセンス素子は、例えば、500nm以下、好ましくは 400nm〜500nm、より好ましくは、430nm〜480nmの発光極大波長を有することが適当である。500nm以下であれば、青色発光となるので好ましく、400nm以上であれば、人間の目の視感度が良好になるので好ましい。ここで、発光極大波長は、一般的に、発光スペクトルを分光放射輝度計の様な装置で測定し、得られた発光スペクトルから判断される。
得られた有機エレクトロルミネッセンス素子は、例えば、1ms以下、好ましくは、100μs以下の発光寿命を有することが適当である。
【0054】
(4)有機エレクトロルミネッセンス素子を有する装置
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、車載用、携帯機器用、パソコン用、テレビ用等のディスプレイ等の装置として利用できる。
【実施例】
【0055】
(実施例1)
錯体Aを以下の合成スキームに従って合成した。
【化16】
Ar雰囲気下、水素化ナトリウム(60%, 2.06g, 51.5mmol)を無水THF(60ml)に懸濁し、これに室温で3,3-ジメチル-2-ブタノン(tBuCOMe、6.1ml, 49.3mmol, 1.3eq)を少量ずつ加えた。水素ガスの発生が収まるまで室温で20分撹拌し、反応混合物を60℃に加熱した。これに、6-メチル-2-ピリジンカルボン酸エチルエステル(6.48g, 38.1mmol)を少量ずつ滴下し、70℃で20分撹拌した。反応混合物を放冷後、氷浴で冷却し、希塩酸を少量ずつ加えてpH=8〜9に調整した。エーテルで抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥、溶媒留去して黄色オイルを得た。これをエタノール(100ml)に溶かし、ヒドラジン1水和物(3.95g, 77.3mmol)のエタノール溶液(20ml)をゆっくり加え、2時間還流した。反応混合物を放冷し、溶媒留去後、残渣をジクロロメタンに溶かし、飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥、溶媒留去して黄色オイルを得た。これをカラムクロマトグラフィ(シリカゲル/ヘキサン+50%ジクロロメタン、続いてジクロロメタン+20%酢酸エチル)で精製して淡黄色固体として5-(6-メチル-2-ピリジル)-3-t-ブチルピラゾール(7.3g, 89%)を得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3, TMS) δ 1.38 (9H, s), 2.57 (3H, s), 6.62 (1H, s), 7.04 (1H, d, J=8Hz), 7.53 (1H, bs), 7.59 (1H, t, J=8Hz).
【0056】
Ar雰囲気下、4,5-ビス(ジフェニルホスフィノ)-9,9-ジメチルキサンテン(Xantphos、1.14g, 1.97mmol)、水素化ナトリウム(60%, 84mg, 2.1mmol, 1.1eq)を無水THF(35ml)に懸濁し、5-(6-メチル-2-ピリジル)-3-t-ブチルピラゾール(0.42g, 1.95mmol)の無水THF溶液(10ml)を室温で滴下した。反応混合物を室温で1時間撹拌後、塩化第一銅(0.19g, 1.92mmol)を加え、室温で3時間撹拌した。反応混合物をろ別し、ろ液を溶媒留去して淡黄色固体を得た。これをジクロロメタン+ジエチルエーテルの混合溶媒から2回再結晶することにより緑黄色板状晶として錯体A(0.3g, 18%)を得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3, TMS) δ 1.26 (9H, s), 1.46 (3H, s), 1.61 (3H, s), 1.89 (3H, s), 6.24 (1H, s), 6.54-6.57 (2H, m), 6.66 (1H, d, J=9Hz), 6.78 (3H, bs), 6.99-7.15 (16H, m), 7.29 (1H, d, J=8Hz), 7.45-7.49 (3H, m), 7.72 (3H, bs).
【0057】
(実施例2)
錯体Bを以下の合成スキームに従って合成した。
【化17】
Ar雰囲気下、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)ベンゼン(dppbz、0.92g, 2.06mmol)、水素化ナトリウム(60%, 90mg, 2.3mmol, 1.1eq)を無水THF(35ml)に懸濁し、5-(6-メチル-2-ピリジル)-3-t-ブチルピラゾール(0.45g, 2.1mmol)の無水THF溶液(15ml)を室温で滴下した。反応混合物を室温で1時間撹拌後、塩化第一銅(0.20g, 2.1mmol)を加え、室温で5時間撹拌した。反応混合物をろ別し、ろ液を溶媒留去して黄色アモルファス固体を得た。これをジクロロメタン+ジエチルエーテルの混合溶媒から再結晶することにより黄色板状晶として錯体B(0.74g, 50%)を得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3, TMS) δ 1.28 (3, s), 1.54 (9H, s), 6.54 (1H, s), 6.57 (1H, d, J=8Hz), 7.21-7.45 (21H, m), 7.62-7.66 (2H, m), 8.00 (3H, bs).
【0058】
(実施例3)
錯体Cを以下の合成スキームに従って合成した。
【化18】
Ar雰囲気下、2,2'-ビス(ジフェニルホスフィノ)ジフェニルエーテル(DPEphos、1.05g, 1.91mmol)、水素化ナトリウム(60%, 80mg, 2.0mmol, 1.1eq)を無水THF(35ml)に懸濁し、5-(6-メチル-2-ピリジル)-3-t-ブチルピラゾール(0.41g, 1.9mmol)の無水THF溶液(15ml)を室温で滴下した。反応混合物を室温で1時間撹拌後、塩化第一銅(0.18g, 1.8mmol)を加え、室温で5時間撹拌した。反応混合物をろ別し、ろ液を溶媒留去して茶色アモルファス固体を得た。これをヘキサンで洗浄し、ジクロロメタン+エタノールの混合溶媒から再結晶することにより白色固体として錯体C(0.37g, 25%)を得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3, TMS) δ 1.37 (9H, s), 1.91 (3H, s), 6.22 (1H, s), 6.63-6.68 (3H, m), 6.84 (2H, t, J=8Hz), 6.94 (2H, d, J=8Hz), 7.12-7.20 (2H, m), 7.43 (1H, t, J=8Hz), 7.84 (2H, bs).
元素分析、C49H44CuN3OP2としての計算値: C, 72.09; H, 5.43; N, 5.15
実測値: C, 72.4; H, 5.5; N, 5.0
【0059】
(実施例4)
錯体Dを以下の合成スキームに従って合成した。
【化19】
Ar雰囲気下、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン(dppe、1.24g, 2.96mmol)、水素化ナトリウム(60%, 0.12g, 3.0mmol, 1.1eq)を無水THF(50ml)に懸濁し、5-(6-メチル-2-ピリジル)-3-t-ブチルピラゾール(0.63g, 2.93mmol)の無水THF溶液(20ml)を室温で滴下した。反応混合物を室温で1時間撹拌後、塩化第一銅(0.28g, 2.83mmol)を加え、室温で4時間撹拌した。反応混合物をろ別し、ろ液を溶媒留去して黄色アモルファス固体を得た。これを少量のジクロロメタンに溶かし、ヘキサンで再沈することにより白色固体を得た。更にトルエン+ヘキサンの混合溶媒から再結晶することにより淡黄色板状晶として錯体D(0.72g, 38%)を得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3, TMS) δ 1.56 (9H, s), 1.70 (3H, s), 2.40 (4H, bs), 6.59 (1H, s), 6.65 (1H, d, J=8Hz), 7.16-7.18 (1H, m), 7.23-7.29 (12H, m), 7.40 (1H, d, J=8Hz), 7.48 (1H, t, J=8Hz), 7.74 (7H, bs).
元素分析、C39H40CuN3P2+0.8PhMeとしての計算値: C, 71.44; H, 6.24; N, 5.60
実測値: C, 71.0; H, 6.6; N, 5.6
【0060】
(実施例5)
錯体Eを以下の合成スキームに従って合成した。
【化20】
Ar雰囲気下、ナトリウムメトキシド/メタノール溶液(1mol/l, 4.4ml, 44mmol)を無水THF(50ml)に溶かし、これに室温でアセトフェノン(4.9ml, 42mmol, 1.4eq)を加えた。次に6-メチル-2-ピリジンカルボン酸エチルエステル(4.98g, 29.4mmol)を加えて4時間還流した。反応混合物を放冷後、溶媒留去して、残渣を水に溶かし、2M塩酸を加えて中性にした。水層をエーテルで抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥、溶媒留去した。残渣をエタノール(50ml)に溶かし、ヒドラジン1水和物(1.94g, 37.9mmol)のエタノール溶液(15ml)をゆっくり加え、2時間還流した。反応混合物を放冷し、溶媒留去後、残渣をジクロロメタンに溶かし、飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥、溶媒留去して黄色オイルを得た。これをカラムクロマトグラフィ(シリカゲル/ヘキサン+50%ジクロロメタン、続いてジクロロメタン+20%酢酸エチル)で精製して白色固体として5-(6-メチル-2-ピリジル)-3-フェニルピラゾール(1.92g, 28%)を得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3, TMS) δ 2.60 (3H, s), 7.01 (1H, s), 7.10 (1H, d, J=8Hz), 7.34 (1H, t, J=8Hz), 7.43 (2H, t, J=8Hz), 7.51 (1H, bs), 7.64 (1H, t, J=8Hz), 7.86 (2H, d, J=8Hz), 11.24 (1H, bs).
【0061】
Ar雰囲気下、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)ベンゼン(dppbz、0.91g, 2.04mmol)、水素化ナトリウム(60%, 92mg, 2.3mmol, 1.1eq)を無水THF(35ml)に懸濁し、5-(6-メチル-2-ピリジル)-3-フェニルピラゾール(0.47g, 2.0mmol)の無水THF溶液(10ml)を室温で滴下した。反応混合物を室温で1時間撹拌後、塩化第一銅(0.20g, 2.0mmol)を加え、室温で3時間撹拌した。反応混合物をろ別し、ろ液を溶媒留去して黄緑色アモルファス固体を得た。これに少量のエーテルを加え、超音波処理すると固体になったので、ろ別し、トルエン+ヘキサンの混合溶媒から再結晶することにより黄色針状晶として錯体E(0.79g, 53%)を得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3, TMS) δ 1.75 (3H, s), 6.67 (1H, d, J=4Hz), 6.9-7.3 (18H, m), 7.4-75 (6H, m), 7.62-7.63 (2H, m), 7.95 (2H, bs), 8.08 (2H, d, J=8Hz).
元素分析、C45H36CuN3P2+H2Oとしての計算値: C, 70.90; H, 5.02; N, 5.51
実測値: C, 71.1; H, 5.0; N, 5.3
【0062】
(実施例6)
錯体Fを以下の合成スキームに従って合成した。
【化21】
Ar雰囲気下、4,5-ビス(ジフェニルホスフィノ)-9,9-ジメチルキサンテン(XantPhos、1.04g, 1.8mmol)、水素化ナトリウム(60%, 81mg, 2.0mmol, 1.1eq)を無水THF(35ml)に懸濁し、5-(6-メチル-2-ピリジル)-3-フェニルピラゾール(0.42g, 1.79mmol)の無水THF溶液(10ml)を室温で滴下した。反応混合物を室温で1時間撹拌後、塩化第一銅(0.17g, 1.72mmol)を加え、室温で3時間撹拌した。反応混合物をろ別し、ろ液を溶媒留去して淡緑色アモルファス固体を得た。これに少量のエーテルを加え、超音波処理すると固体になったので、ろ別し、トルエン+ヘキサンの混合溶媒から再結晶することにより白色固体として錯体F(0.48g, 32%)を得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3, TMS) δ 1.48 (3H, s), 1.62 (3H, s), 1.91 (3H, s), 6.50-6.52 (2H, m), 6.74 (1H, d, J=7Hz), 6.82 (4H, bs), 6.90 (1H, s), 7.0-7.2 (15H, m), 7.30 (2H, t, J=8Hz), 7.5-7.6 (4H, m), 7.69 (4H, bs), 7.99 (2H, d, J=8Hz).
元素分析、C54H44CuN3OP2としての計算値: C, 74.00; H, 5.06; N, 4.79
実測値: C, 73.9; H, 5.1; N, 4.7
【0063】
(実施例7)
錯体Gを以下の合成スキームに従って合成した。
【化22】
Ar雰囲気下、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)ベンゼン(1.0g, 2.24mmol)、水素化ナトリウム(60%, 96mg, 2.4mmol, 1.1eq)を無水THF(30ml)に懸濁し、2-(2-ピリジル)ベンズイミダゾール(pybimH、0.44g, 2.25mmol)を室温で少量ずつ添加した。反応混合物を室温で1時間撹拌後、塩化第一銅(0.22g, 2.22mmol)を加え、室温で3時間撹拌した。反応混合物をろ別し、ろ液を溶媒留去して黄色アモルファス固体を得た。これに少量のエーテルを加え、超音波処理すると固体になったので、ろ別し、ジクロロメタン+ヘキサン+エーテルの混合溶媒から3回再結晶することにより黄色板状晶として錯体G(0.51g, 33%)を得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3, TMS) δ 6.93-6.94 (1H, m), 7.0-7.5 (23H, m), 7.5-7.6 (5H, m), 7.74 (1H, t, J=8Hz), 7.85 (1H, d, J=8Hz), 8.51 (1H, d, J=6Hz).
元素分析、C42H32CuN3P2+0.5H2Oとしての計算値: C, 70.73; H, 4.66; N, 5.89
実測値: C, 70.7; H, 4.9; N, 5.8
【0064】
(実施例8)
錯体Hを以下の合成スキームに従って合成した。
【化23】
Ar雰囲気下、4,5-ビス(ジフェニルホスフィノ)-9,9-ジメチルキサンテン(1.00g, 1.73mmol)、水素化ナトリウム(60%, 80mg, 2.0mmol, 1.1eq)を無水THF(30ml)に懸濁し、2-(2-ピリジル)ベンズイミダゾール(pybimH、0.34g, 1.74mmol)を室温で少量ずつ添加した。反応混合物を室温で1時間撹拌後、塩化第一銅(0.17g, 1.72mmol)を加え、室温で3時間撹拌した。反応混合物をろ別し、ろ液を溶媒留去して黄色固体を得た。これをジクロロメタン+エーテルの混合溶媒から2回再結晶することにより黄色板状晶として錯体H(0.21g, 15%)を得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3, TMS) δ 1.70 (3H, s), 1.88 (3H, s), 6.35 (1H, d, J=8Hz), 6.41-6.64 (2H, m), 6.63 (1H, t, J=7Hz), 6.91-7.20 (24H, m), 7.58 (2H, dd, J=8Hz, 2Hz), 7.69 (1H, t, J=8Hz), 7.75 (1H, d, J=8Hz), 8.01 (1H, d, J=5Hz), 8.52 (1H, d, J=8Hz).
元素分析、C51H40CuN3OP2としての計算値: C, 73.24; H, 4.82; N, 5.02、
実測値: C, 72.9; H, 5.1; N, 4.9
【0065】
(実施例9)
錯体Iを以下の合成スキームに従って合成した。
【化24】
Ar雰囲気下、2,2'-ビス(ジフェニルホスフィノ)ジフェニルエーテル(1.39g, 2.53mmol)、水素化ナトリウム(60%, 0.11g, 2.75mmol, 1.1eq)を無水THF(30ml)に懸濁し、2-(2-ピリジル)ベンズイミダゾール(pybimH、0.49g, 2.51mmol)を室温で少量ずつ添加した。反応混合物を室温で1時間撹拌後、塩化第一銅(0.25g, 2.53mmol)を加え、室温で3時間撹拌した。反応混合物をろ別し、ろ液を溶媒留去して緑色アモルファス固体を得た。これをジクロロメタン+エーテル+ヘキサンから再結晶し、続いてジクロロメタン+トルエンの混合溶媒から再結晶することにより緑色板状晶として錯体I(1.68g, 84%)を得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3, TMS) δ 6.74 6.76 (2H, m), 6.81 (1H, t, J=8Hz), 6.90 (2H,t, J=8Hz), 7.0-7.2 (22H, m), 7.33 (1H,d, J=8Hz), 7.64 (1H, t, J=8Hz), 7.77 (1H, d , J=8Hz), 7.94 (1H,d , J=5Hz), 8.45 (1H, d, J=8Hz).
元素分析、C51H40CuN3OP2+0.4PhMeとしての計算値: C, 73.24; H, 4.74; N, 5.04、
実測値: C, 73.0; H, 5.1; N, 4.8
【0066】
(実施例10)
錯体Jを以下の合成スキームに従って合成した。
【化25】
6-ブロモピコリン酸(5.0g, 24.2mmol)、炭酸カリウム(3.76g, 27.2mmol, 1.1eq.)をN,N-ジメチルホルムアミド(DMF、60ml)に懸濁し、沃化エチル(4ml, 48.8mmol, 2eq.)を加え、室温で1時間撹拌後、55℃で7時間加熱した。反応混合物を水(150ml)で希釈し、エーテルで抽出した。有機層を水(50ml x 3)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥、溶媒留去して無色オイルを得た。これをカラムクロマトグラフィ(シリカゲル/ヘキサン、続いてヘキサン+50%ジクロロメタン、最後にジクロロメタンのみ)で精製して無色オイルとして6-ブロモピコリン酸エチル(5.4g, 95%)を得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3, TMS) δ 1.43 (3H, t, J=8Hz), 4.47 (2H, q, J=8Hz), 7.66 (1H, dd, J=8Hz, 1Hz), 7.70 (1H, t, J=8Hz), 8.08 (1H, dd, J=7Hz, 1Hz).
【0067】
Ar雰囲気下、6-ブロモピコリン酸エチル(3.85g, 16.7mmol)、1,1'-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンパラジウムジクロリド(PdCl2(dppf)、0.27g, 0.33mmol, 2%Pd)にプロピル臭化亜鉛(PrZnBr)のTHF溶液(0.5mol/l, 50ml, 25.0mmol, 1.5eq.)を加え、室温で2時間撹拌後、55℃で6時間加熱した。反応混合物に炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて、ジクロロメタンで抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥、溶媒留去して赤褐色オイルを得た。これをカラムクロメトグラフィ(シリカゲル/ヘキサン+50%ジクロロメタン、続いてジクロロメタン、最後にヘキサン+8%酢酸エチル)で精製して黄色オイルとして6-プロピルピコリン酸エチル(1.18g, 37%)を得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3, TMS) δ 1.78 (3H, t, J=7Hz), 1.43 (3H, t, J=7Hz), 1.78 (2H, sextet, J=7Hz), 2.88 (2H, t, J=7Hz), 4.47 (2H, q, J-=7Hz), 7.32 (1H,d, J=8Hz), 7.72 (1H, t, J=8Hz), 7.93 (1H, d, J=8Hz).
【0068】
Ar雰囲気下、水素化ナトリウム(60%, 0.3g, 7.5mmol)を無水THF(30ml)に懸濁し、これに室温で3,3-ジメチル-2-ブタノン(MeCOtBu、0.92ml, 7.44mmol, 1.3eq)を少量ずつ加えた。水素ガスの発生が収まるまで室温で20分撹拌し、反応混合物を60℃に加熱した。これに、6-プロピル-2-ピリジンカルボン酸エチル(1.1g, 5.69mmol)の無水THF溶液(15ml)を少量ずつ滴下し、70℃で20分撹拌した。反応混合物を放冷後、氷浴で冷却し、希塩酸を少量ずつ加えてpH=8〜9に調整した。エーテルで抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥、溶媒留去して黄色オイルを得た。これをエタノール(20ml)に溶かし、ヒドラジン1水和物(0.59g, 11.8mmol)のエタノール溶液(15ml)をゆっくり加え、2時間還流した。反応混合物を放冷し、溶媒留去後、残渣をジクロロメタンに溶かし、飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥、溶媒留去して黄色オイルを得た。これをカラムクロマトグラフィ(シリカゲル/ジクロロメタン、続いてジクロロメタン+8%酢酸エチル、最後にジクロロメタン+1%メタノール)で精製して淡黄色固体として5-(6-プロピル-2-ピリジル)-3-t-ブチルピラゾール(1.13g, 82%)を得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3, TMS) δ 0.98 (3H, t, J=7Hz), 1.40 (9H, s), 1.79 (2H, sextet, J=7Hz), 2.78 (2H, t, J=7Hz), 6.60 (1H, s), 7.04 (1H, d, J=8Hz), 7.49 (1H, d, J=8Hz), 7.60 (1H, t, J=8Hz).
【0069】
Ar雰囲気下、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)ベンゼン(dppbz、1.01g, 2.17mmol)、水素化ナトリウム(60%, 97mg, 2.43mmol, 1.1eq)を無水THF(35ml)に懸濁し、5-(6-プロピル-2-ピリジル)-3-t-ブチルピラゾール(0.54g, 2.22mmol)の無水THF溶液(15ml)を室温で滴下した。反応混合物を室温で1時間撹拌後、塩化第一銅(0.22g, 2.22mmol)を加え、室温で3時間撹拌した。反応混合物をろ別し、ろ液を溶媒留去して黄緑色アモルファス固体を得た。これに少量のエーテルを加え、超音波処理すると固体になったので、ろ別し、エーテル+ヘキサンの混合溶媒から再結晶することにより淡黄色結晶として錯体J(0.79g, 53%)を得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3, TMS) δ -0.07 (3H, t, J=7Hz), 0.89 (2H, sextet, J=7Hz), 1.55 (9H, s), 1.68 (2H, t, J=7Hz), 6.55 (1H, s), 6.61 (1H, d, J=8Hz), 7.3-7.5 (24H, m), 7.63 (2H, m).
元素分析、C45H44CuN3P2としての計算値: C, 71.84; H, 5.89; N, 5.59、
実測値: C, 71.7; H, 6.3; N, 5.5
【0070】
(実施例11)
錯体Kを以下の合成スキームに従って合成した。
【化26】
Ar雰囲気下、4,5-ビス(ジフェニルホスフィノ)-9,9-ジメチルキサンテン(XantPhos、1.07g, 1.85mmol)、水素化ナトリウム(60%, 85mg, 2.1mmol, 1.1eq)を無水THF(30ml)に懸濁し、5-(6-プロピル-2-ピリジル)-3-t-ブチルピラゾール(0.45g, 1.85mmol)の無水THF溶液(10ml)を室温で滴下した。反応混合物を室温で1時間撹拌後、塩化第一銅(0.18g, 1.82mmol)を加え、室温で3時間撹拌した。反応混合物をろ別し、ろ液を溶媒留去して淡褐色固体を得た。これをヘキサン+ジエチルエーテルの混合溶媒から1回、ヘキサン+エタノールから1回再結晶することにより淡緑色板状晶として錯体K(0.31g, 19%)を得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3, TMS) δ -0.15 (3H, t, J=7Hz), 0.96 (2H, sextet, J=7Hz), 1.26 (9H, s), 1.45 (3H, s), 1.89 (3H, s), 2.12 (2H, t, J=7Hz), 6.24 (1H, s), 6.54-6.56 (2H, m), 6.7-6.8 (5H, m), 6.9-7.1 (14H, m), 7.32 (1H, d, J=8Hz), 7.48 (2H, d, J=8Hz), 7.54 (1H, t, J=8Hz), 7.77 (4H, bs).
元素分析、C54H52CuN3OP2+EtOHとしての計算値: C, 73.33; H, 5.93; N, 4.75、
実測値: C, 72.1; H, 6.2; N, 4.5
【0071】
(実施例12)
錯体Lを以下の合成スキームに従って合成した。
【化27】
6-メチルピリジン-2-カルボキサルデヒド(2.05g, 16.9mmol)、o-フェニレンジアミン(1.82g, 16.0mmol)を水(130ml)に懸濁し、炭酸カリウム(3.42g, 24.7mmol)を加えて室温で20分撹拌した。これに、沃化カリウム(0.69g, 4.16mmol)と沃素(0.98g, 3.86mmol)の水溶液を加え、続いて沃素(3.21g, 12.6mmol)を少量ずつ加えた。反応混合物を90℃で50分撹拌し、室温まで放冷した後、5%チオ硫酸ナトリウム水溶液を加えて未反応の沃素を失活させた。反応混合物を酢酸エチルで抽出し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥、溶媒留去後、カラムクロマグラフィ(シリカゲル/ヘキサン+50%ジクロロメタン、続いてヘキサン+5%酢酸エチル)で精製して淡褐色固体として2-(6-メチル-2-ピリジル)ベンズイミダゾール(1.23g, 37%)を得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3, TMS) δ 2.62 (3H, s), 7.22 (1H, d, J=8Hz), 7.28-7.30 (2H, m), 7.47-7.49 (1H, m), 7.74 (1H, t, J=8Hz), 7.83-7.85 (1H, m), 8.23 (1H, d, J=8Hz).
【0072】
Ar雰囲気下、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)ベンゼン(dppbz、1.24g, 2.78mmol)、水素化ナトリウム(60%, 0.12g, 3.0mmol, 1.1eq)を無水THF(45ml)に懸濁し、2-(6-メチル-2-ピリジル)ベンズイミダゾール(0.58g, 2.77mmol)を室温で少量ずつ添加した。反応混合物を室温で1時間撹拌後、塩化第一銅(0.27g, 2.73mmol)を加え、室温で5時間撹拌した。反応混合物をろ別し、ろ液を溶媒留去して黄色アモルファス固体を得た。これに少量のエーテルを加えると固体になったので、ろ別し、トルエン+ヘキサンの混合溶媒から1回、ジクロロメタン+エーテルの混合溶媒から2回再結晶することにより黄緑色板状晶として錯体L(0.48g, 24%)を得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3, TMS) δ 1.68 (3H, s), 6.92 (1H, d, J=8Hz), 6.98 (1H, t, J=7Hz), 7.09-7.26 (18H, m), 7.49 (4H, bs), 7.54-7.57 (2H, m), 7.64-7.69 (3H, m), 7.86 (1H, d, J=8Hz), 8.42 (1H, d, J=8Hz).
元素分析、C43H34CuN3P2+0.3PhMeとしての計算値: C, 71.91; H, 4.77; N, 5.85、
実測値: C, 72.4; H, 5.2; N, 5.6
【0073】
(実施例13)
錯体Mを以下の合成スキームに従って合成した。
【化28】
Ar雰囲気下、4,5-ビス(ジフェニルホスフィノ)-9,9-ジメチルキサンテン(XantPhos、1.20g, 2.07mmol)、水素化ナトリウム(60%, 91mg, 2.28mmol, 1.1eq)を無水THF(35ml)に懸濁し、2-(6-メチル-2-ピリジル)ベンズイミダゾール(0.44g, 2.1mmol)を室温で少量ずつ添加した。反応混合物を室温で1時間撹拌後、塩化第一銅(0.20g, 2.02mmol)を加え、室温で3時間撹拌した。反応混合物をろ別し、ろ液を溶媒留去して黄色固体を得た。これをジクロロメタン+エーテルの混合溶媒から再結晶することにより黄色板状晶として錯体M(1.25g, 73%)を得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3, TMS) δ 1.67 (3H, s), 1.69 (3H, s), 1.85 (3H, s), 6.5-6.53 (2H, m), 6.85 (1H, d, J=7Hz), 6.87 (1H, t, J=8Hz), 6.93-7.08 (16H, m), 7.14-7.25 (8H, m), 7.54 (2H, d, J=8Hz), 7.67 (1H, t, J=8Hz), 7.75 (1H, d, J=8Hz), 8.44 (1H, d, J=8Hz).
元素分析、C52H42CuN3OP2としての計算値: C, 73.44; H, 4.98; N, 4.94、
実測値: C, 73.2; H, 5.2; N, 4.7
【0074】
(実施例14)
錯体Nを以下の合成スキームに従って合成した。
【化29】
Ar雰囲気下、6-ブロモピコリン酸エチル(3.0g, 13.0mmol)、フェニルボロン酸(1.98g, 16.2mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.3g, 0.26mmol, 2%Pd)を1,2-ジメトキシエタン(50ml)に溶かし、2M炭酸ナトリウム水溶液(4.19g, 39.5mmol, 3eq./20ml)を加えて8時間還流した。反応混合物をジクロロメタンで抽出し、有機層を分取、飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥、溶媒留去して黄色オイルを得た。これをカラムクロマトグラフィ(シリカゲル/ヘキサン+30%ジクロロメタン)で精製して淡黄色固体としてフェニルピコリン酸エチル(1.55g, 53%)を得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3, TMS) δ 1.47 (3H, t, J=7Hz), 4.49 (2H, q, J=7Hz), 7.42-7.51 (3H, m), 7.89-7.92 (2H, m), 8.04-8.09 (3H, m).
【0075】
Ar雰囲気下、水素化ナトリウム(60%, 0.34g, 8.5mmol)を無水THF(40ml)に懸濁し、これに室温で3,3-ジメチル-2-ブタノン(MeCOtBu、1.1ml, 8.9mmol, 1.3eq)を少量ずつ加えた。水素ガスの発生が収まるまで室温で20分撹拌し、反応混合物を60℃に加熱した。これに、6-フェニル-2-ピリジンカルボン酸エチル(1.5g, 6.6mmol)の無水THF溶液(20ml)を少量ずつ滴下し、70℃で20分撹拌した。反応混合物を放冷後、氷浴で冷却し、希塩酸を少量ずつ加えてpH=8〜9に調整した。エーテルで抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥、溶媒留去して黄色オイルを得た。これをエタノール(30ml)に溶かし、ヒドラジン1水和物(0.67g, 13.4mmol)のエタノール溶液(10ml)をゆっくり加え、2時間還流した。反応混合物を放冷し、溶媒留去後、残渣をジクロロメタンに溶かし、飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥、溶媒留去して黄色オイルを得た。これをカラムクロマトグラフィ(シリカゲル/ジクロロメタン、続いてジクロロメタン+1%メタノール)で精製して白色固体として5-(6-フェニル-2-ピリジル)-3-t-ブチルピラゾール(1.42g, 76%)を得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3, TMS) δ 1.40 (9H, s), 6.72 (1H, s), 7.43-7.51 (3H, m), 7.65 (2H, t, J=7Hz), 7.79 (1H, t, J=8Hz), 8.06 (2H, d, J=8Hz).
【0076】
Ar雰囲気下、4,5-ビス(ジフェニルホスフィノ)-9,9-ジメチルキサンテン(XantPhos、1.01g, 1.75mmol)、水素化ナトリウム(60%, 80mg, 2.0mmol, 1.1eq)を無水THF(40ml)に懸濁し、5-(6-フェニル-2-ピリジル)-3-t-ブチルピラゾール(0.48g, 1.73mmol)の無水THF溶液(10ml)を室温で滴下した。反応混合物を室温で1時間撹拌後、塩化第一銅(0.17g, 1.72mmol)を加え、室温で3時間撹拌した。反応混合物をろ別し、ろ液を溶媒留去して淡褐色固体を得た。これをジクロロメタン+ジエチルエーテルの混合溶媒から再結晶することにより淡黄色板状晶として錯体N(1.24g, 78%)を得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3, TMS) δ 1.27 (9H, s), 1.39 (3H, bs), 1.96 (3H, bs), 6.08 (2H, t, J=7Hz), 6.34-6.44 (4H, m), 6.82 (2H, bs), 7.00-7.49 (29H, m), 7.67-7.71 (4H, m).
元素分析、C57H50CuN3OP2としての計算値: C, 74.53; H, 5.49; N, 4.57、
実測値: C, 74.1; H, 5.8; N, 4.5
【0077】
(実施例15)
錯体Oを以下の合成スキームに従って合成した。
【化30】
Ar雰囲気下、2,3-ジブロモピリジン(8.73g, 36.9mmol)、ジフェニル(トリメチルシリル)ホスフィン(Me3SiPPh2、10g, 38.7mmol, 1.1eq)、ジクロロビス(アセトニトリル)パラジウム(II)(0.24g, 0.93mmol, 2.5%Pd)を無水トルエン(70ml)に溶かし、16時間還流した。反応混合物を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥、溶媒留去して褐色オイルを得た。これをカラムクロマトグラフィ(シリカゲル/ヘキサン+50%ジクロロメタン、続いてヘキサン+1%酢酸エチル)で精製して白色固体(8.0g, 63%)を得た。このものは2-(ジフェニルホスフィノ)-3-ブロモピリジンと2-ブロモ-3-(ジフェニルホスフィノ)ピリジンの混合物であることが1H-NMRから示唆されたが、このまま次の反応に用いた。
1H-NMR (400MHz, CDCl3, TMS) δ 7.08 (1H, dd, J=9Hz, 6Hz), 7.16 (1H, dd, J=7Hz, 4Hz), 7.33 (10H, s), 7.79-7.82 (1H, m), 7.91 (1H, dd, J=8Hz, 2Hz), 8.33 (1H, dd, J=5Hz, 2Hz), 8.56 (1H, d, J=4Hz).
FDMS, C17H13NBrPとしての計算値341、実測値m/z=341 (M+, 100), 682 (2M+, 14).
【0078】
Ar雰囲気下、2-(ジフェニルホスフィノ)-3-ブロモピリジン(4.12g, 12mmol)を無水エーテル(60ml)+無水THF(10ml)の混合溶媒に溶かし、ドライアイス/メタノール浴で-60℃に冷却した。これにn-ブチルリチウム/ヘキサン溶液(9ml, 14.4mmol, 1.2eq)を滴下し、-40℃で30分撹拌した。反応混合物を-60℃に冷却し、クロロジフェニルホスフィン(2.7ml, 14.7mmol)のエーテル溶液(10ml)を滴下し、冷却浴をとりはずし、室温で一晩放置した。反応混合物を脱気したイオン交換水で失活し、ジクロロメタンで抽出、有機層を飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥、溶媒留去して褐色オイルを得た。これをカラムクロマトグラフィ(シリカゲル/ヘキサン+50%ジクロロメタン、続いてヘキサン+5%酢酸エチル)で精製して淡黄色固体として2,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)ピリジン(1.5g, 28%)を得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3, TMS) δ 7.09-7.35 (22H, m), 8.64 (1H, d, J=5Hz).
【0079】
Ar雰囲気下、2,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)ピリジン(0.75g, 1.87mmol)、水素化ナトリウム(60%, 75mg, 1.88mmol, 1.1eq)を無水THF(45ml)に懸濁し、5-(6-メチル-2-ピリジル)-3-t-ブチルピラゾール (pypz、0.36g, 1.67mmol)の無水THF溶液(10ml)を室温で滴下した。反応混合物を室温で1時間撹拌後、塩化第一銅(0.16g, 1.62mmol)を加え、室温で3時間撹拌した。反応混合物をろ別し、ろ液を溶媒留去して淡黄色アモルファス固体を得た。これをヘキサンで洗浄することにより淡黄色固体として錯体O(0.83g, 71%)を得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3, TMS) δ 1.40 (3H, s), 1.55 (9H, s), 6.58 (1H, s), 6.59 (1H, d, J=6Hz), 7.09-7.32 (18H, m), 7.37 (1H, d, J=8Hz), 7.44 (1H, t, J=8Hz), 7.88-8.28 (4H, m), 8.85-8.86 (1H, m).
元素分析、C42H39CuN4P2としての計算値: C, 69.55; H, 5.42; N, 7.72、
実測値: C, 70.0; H, 5.8; N, 7.5
【0080】
(比較例1)
特開2006-286749に例示されている下記錯体RをZ. Naturforsch. B, 58, 950 (2003).に準じて合成し、比較例として用いた。
【化31】
【0081】
<評価>
上記実施例1〜8、10〜15及び比較例1で得られた錯体A〜H,J〜O及びRの粉末状態における発光量子収率、発光極大波長及び発光寿命を測定した。各測定に用いた装置を以下に示す。
発光極大波長および発光量子収率:
浜松ホトニクス社製、有機EL量子収率測定装置(C9920−01)
発光寿命:
浜松ホトニクス社製、ピコ秒蛍光寿命測定装置(C4780)
【0082】
錯体A〜H,J〜O及びRの発光量子収率、発光極大波長及び発光寿命の測定結果を、以下の表1に示す。また、錯体A〜H及びJ〜Oの粉末状態における発光スペクトルをそれぞれ図1〜14に示す。
【0083】
表1
【0084】
このように、比較例錯体Rが発光しなかったのに対し、錯体A〜H及びJ〜Oは、高収率に発光した。錯体A〜H及びJ〜Nの発光寿命は10ms以下の範囲内にあり、充分に速い応答を示すことがわかる。
【0085】
<有機エレクトロルミネッセンス素子の作製>
(実施例16)
錯体Aを用いて、基板/陽極/正孔注入層/発光層/正孔障壁層/電子輸送層/電子注入層/陰極からなる有機エレクトロルミネッセンス素子を作製した。25mm×75mm×1.1mm厚のITO透明電極付きガラス基板(ジオマティック社製)をイソプロピルアルコール中で超音波洗浄を5分間行なった後、UVオゾン洗浄を30分間行なって、電極−ガラス基板接合体を準備した。この接合体の上に、スピンコート法で正孔注入層に用いるポリエチレンジオキシチオフェン:ポリスチレンスルホン酸(PEDOT:PSS)を40nmの膜厚で成膜し、正孔注入層を得た。ついで発光層に用いる錯体Aおよびポリビニルカルバゾールとの混合物(錯体Aとポリビニルカルバゾールとの質量比は5:95)の1質量%クロロベンゼン溶液を用いてPEDOT:PSSの正孔注入層上に発光層をスピンコート法で成膜し、発光層を得た。この発光層の膜厚は70nmであった。続いて、成膜された上記基板を真空蒸着装置の基板ホルダーに装着し、膜厚20nmのバソクプロイン(BCP)、続いて膜厚20nmのトリス(8-ヒドロキシキノリン)アルミニウム(Alq)を真空蒸着法により成膜した。このBCP膜は、正孔障壁層として機能し、Alq膜は電子輸送層として機能する。更に、膜厚1nmのふっ化リチウムを真空蒸着法により成膜し、電子注入層とした。最後にアルミニウム陰極を真空蒸着法により成膜し、有機エレクトロルミネッセンス素子を作製した。
【0086】
<評価>
上記実施例16で得られた有機エレクトロルミネッセンス素子を用い、Al電極をマイナス、ITO電極をプラスにして直流電圧15Vを印加したところ、32cd/m2の緑色発光が観測された。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】錯体Aの発光スペクトルを示す。
【図2】錯体Bの発光スペクトルを示す。
【図3】錯体Cの発光スペクトルを示す。
【図4】錯体Dの発光スペクトルを示す。
【図5】錯体Eの発光スペクトルを示す。
【図6】錯体Fの発光スペクトルを示す。
【図7】錯体Gの発光スペクトルを示す。
【図8】錯体Hの発光スペクトルを示す。
【図9】錯体Jの発光スペクトルを示す。
【図10】錯体Kの発光スペクトルを示す。
【図11】錯体Lの発光スペクトルを示す。
【図12】錯体Mの発光スペクトルを示す。
【図13】錯体Nの発光スペクトルを示す。
【図14】錯体Oの発光スペクトルを示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規金属錯体、特に発光性金属錯体、およびそれを用いた有機エレクトロニクス材料、特に有機エレクトロルミネッセンス素子用材料又は発光材料並びに有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。より詳しくは、特定の銅錯体を有機エレクトロルミネッセンス素子用材料又は発光材料として用いることで、特に高効率な発光が得られる有機エレクトロルミネッセンス素子又は発光材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子はキャリア注入型の発光素子であり、液晶やプラズマディスプレイに次ぐ次世代のフラットパネルディスプレイとして近年注目されており、一部実用化もされている。有機EL素子では、キャリアの再結合によって生じる励起子には1重項と3重項の2種類が存在する。電子と正孔の再結合が無秩序に起こり、単純なスピン統計に従うとすれば、その生成比は1重項:3重項=1:3となるはずであり、1重項励起子に比べ3重項励起子は3倍量生成していることになる。ここで、1重項励起子からの発光は蛍光、3重項励起子からの発光はりん光と呼ばれている。
ところで、有機EL素子用材料として頻繁に用いられる従来型の蛍光色素は、3重項からの放射失活過程はスピン禁制のため非常に遅く、室温では無輻射遷移(熱失活)に打ち勝つことができず、室温でりん光発光を観測することはほとんどない。従って、有機EL素子内でキャリア再結合によって生成された3重項励起子は熱的に失活してしまい発光に寄与しないことになる。このような理由から、1重項のみを利用する蛍光型有機EL素子の内部量子収率の上限は25%と言われている。これに光取出し効率などを加味して、実際に外部に取出せる光に換算すると、外部量子収率(exQE)の上限は約5%と言われている。
【0003】
そこで、有機EL素子の発光効率を向上させるために、3重項励起子を利用することが提唱され、ベンゾフェノン誘導体やランタニド錯体が検討されたが、内部量子収率は蛍光色素に及ばないものであった。その後、d-ブロックの遷移金属を用いる検討がなされ、白金のポルフィリン錯体(PtOEP)を用いたりん光EL素子(赤色発光)が発表されたが、依然として蛍光色素と同程度の内部量子収率であった。しかしその後、オルトメタル型イリジウム錯体(緑色発光)が報告され、緑色発光で26cd/A, 19lm/W, exQE=7.5%が達成され 、蛍光色素の内部量子収率限界を越えるりん光型EL素子が実現された。これらd-ブロック遷移金属錯体の特徴は、中心金属として第5周期以降の重金属を用いていることであり、これによりスピン−軌道相互作用が大きくなり(重原子効果)、本来スピン禁制であるはずの3重項−1重項遷移が許容遷移になり、高効率のりん光発光を室温で観測することができるようになった。
これを機に多くのイリジウム錯体が研究されてきたが、イリジウム金属は地殻中の存在比が極めて少ない元素のひとつであるため非常に高価であり、より安価かつ入手容易な金属を用いた発光性金属錯体が待ち望まれていた。
一方、イリジウム以外の金属を用いた発光性金属錯体の研究もこれまで多くなされてきた。たとえば、白金、オスミウムなどがあるが、いずれもイリジウムと同じ第六周期の遷移金属のため非常に高価であり、高効率な発光も実現できていなかった。そこで、より安価かつ入手容易な第四周期の遷移金属、中でも銅錯体が特に注目され、その発光特性についてこれまでいくつか報告されてきた。
【0004】
一般に銅は1価と2価の酸化状態を取るが、2価の場合はd9の開殻構造を取るため、基底状態、励起状態ともに2重項になり、それらの光学遷移は同じ多重項同士であるから蛍光となる。従ってりん光型有機EL素子の発光材料として用いても高効率発光は望めない。また、光学遷移は非発光性のd-d遷移になることが多ため、発光性の2価銅錯体はほとんど知られていない。これに対して、1価の銅錯体の場合はd10の閉殻構造を取り、熱失活の原因となるd-d遷移が存在しないため、高効率で発光しやすいことが知られている。また発光の起源に関しても、銅1価錯体はイリジウムと同様な金属−配位子遷移(3MLCT)に基づく発光を示すことが知られている。従って、大きなスピン−軌道相互作用ひいては高効率りん光発光が期待できるが、それでもなお発光効率は実用領域に達しておらず、高効率で発光する安価かつ入手容易な銅錯体が望まれていた。
【0005】
発光性銅錯体に関しては、これまでにもいくつかの文献が開示されているが、実用的な発光性錯体は得られていなかった。更に、発光性銅錯体およびそれを用いた有機EL素子は、以下のような特許文献1〜3や非特許文献1〜4に開示されているが、発光効率が充分でなかった。
【化1】
【0006】
【特許文献1】特開2003-332074号公報
【特許文献2】特開2005-36020号公報
【特許文献3】特開2006-286749号公報
【非特許文献1】Appl. Phys. Lett., 88, 213508 (2006)
【非特許文献2】Adv. Mater., 16, 432 (2004)
【非特許文献3】J. Amer. Chem. Soc., 124, 6 (2002)
【非特許文献4】Inorg. Chem., 41, 3313 (2002)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の第一の目的は、有機エレクトロニクス材料、特に有機エレクトロルミネッセンス素子用材料として有用な新規発光性金属錯体を提供することにある。
本発明の第二の目的は、このような金属錯体を含む、有機エレクトロルミネッセンス素子用材料、当該材料を含む有機エレクトロルミネッセンス素子の有機層、例えば、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層を提供することにある。
本発明の第三の目的は、このような有機エレクトロルミネッセンス素子用材料を含む有機エレクトロルミネッセンス素子、並びに当該有機エレクトロルミネッセンス素子を含む装置、例えば、車載用、携帯機器用、パソコン用、テレビ用等のディスプレイを提供することにある。
本発明の第四の目的は、発光材料として有用な新規発光性金属錯体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の発明者らは、特定構造の単核1価銅錯体を用いることで、発光効率が高く、素子の発光寿命が長く、しかも安価で入手容易な有機エレクトロルミネッセンス素子又は発光材料を得ることができることを見出した。具体的に、本発明は、
1.下記式(1)で表される単核1価銅錯体に関する。
【化2】
(式中、XおよびYはそれぞれ独立にNまたはCR6であり、R1〜R6はそれぞれ独立に、水素、ハロゲン、C1〜C40の置換もしくは無置換のアルキル基、C2〜C40の置換もしくは無置換のアルケニル基、C6〜C40の置換もしくは無置換のアリール基、C3〜C40の置換もしくは無置換のヘテロアリール基、C1〜C40の置換もしくは無置換のアルコキシ基、C6〜C40の置換もしくは無置換のアリールオキシ基、C1〜C40の置換もしくは無置換のアルキルチオ基であり、R1〜R6のうち隣接する基は互いに結合して環を形成してもよく、L1およびL2はそれぞれ独立に、窒素、燐及び砒素から選ばれる元素を含む配位子であり、L1とL2が互いに結合して2座配位子を形成してもよい。)
2.XがCR6であり、YがNである上記1に記載の銅錯体に関する。
3.XがNであり、YがCR6である上記1に記載の銅錯体に関する。
4.L1およびL2がそれぞれ独立に窒素及び燐から選ばれる元素を含む配位子であり、互いに結合して2座配位子を形成している、上記1〜3の何れか1に記載の銅錯体に関する。
【0009】
5.L1およびL2が互いに結合した2座配位子であり、該配位子が、下記式(2)の2座ホスフィンを形成している、上記1〜4の何れか1に記載の銅錯体に関する。
【化3】
(式中、R10〜R13はそれぞれ独立に水素、ハロゲン、C1〜C40の置換もしくは無置換のアルキル基、C2〜C40の置換もしくは無置換のアルケニル基、C6〜C40の置換もしくは無置換のアリール基、C3〜C40の置換もしくは無置換のヘテロアリール基、C1〜C40の置換もしくは無置換のアルコキシ基、C6〜C40の置換もしくは無置換のアリールオキシ基、C1〜C40の置換もしくは無置換のアルキルチオ基であり、R10とR11及び/又はR12とR13は互いに結合して環を形成してもよく、QはC1〜C6の置換もしくは無置換のアルキリデン基、C2〜C6の置換もしくは無置換のアルケニリデン基、C6〜C40の置換もしくは無置換のアリーレン基、C3〜C40の置換もしくは無置換のヘテロアリーレン基である。)
6.Qが、ハロゲン、C1〜C40の置換もしくは無置換のアルキル基、C6〜C40の置換もしくは無置換のアリール基で置換されてもよい下記構造;
【化4】
から選ばれる有機基である、上記5に記載の銅錯体に関する。
7.上記1〜6の何れか1に記載の銅錯体を含有する発光材料に関する。
8.上記1〜6の何れか1に記載の銅錯体を含有する有機エレクトロルミネッセンス素子用材料に関する。
9.陰極と、陽極と、該陰極と該陽極との間に挟持された1層または複数層からなる有機層とを含み、該有機層が少なくとも発光層を含み、及び、該有機層の少なくとも1層が、上記8に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料を含む有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。
10.上記9に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を有する装置に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の特定構造の単核1価銅錯体を用いることで、発光効率が高く、素子の発光寿命が長く、しかも安価で入手容易な有機エレクトロルミネッセンス素子又は発光材料を得ることができる。
また、本発明で使用する単核1価銅錯体を含む有機エレクトロルミネッセンス素子用材料又は発光材料は、結晶状態のみならず、溶液状態または分散状態でも良好な発光を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(1)銅錯体
本発明の銅錯体は、下記式(1)で表される単核1価銅錯体である。
【化5】
(式中、XおよびYはそれぞれ独立にNまたはCR6(R6は1価の置換基。-C(-R6)=の様に結合している)であり、R1〜R6はそれぞれ独立に、水素、ハロゲン、C1〜C40の置換もしくは無置換のアルキル基、C2〜C40の置換もしくは無置換のアルケニル基、C6〜C40の置換もしくは無置換のアリール基、C3〜C40の置換もしくは無置換のヘテロアリール基、C1〜C40の置換もしくは無置換のアルコキシ基、C6〜C40の置換もしくは無置換のアリールオキシ基、C1〜C40の置換もしくは無置換のアルキルチオ基であり、R1〜R6のうち隣接する基は互いに結合して環を形成してもよく、L1およびL2はそれぞれ独立に、窒素、燐及び砒素から選ばれる元素を含む配位子であり、L1とL2が互いに結合して2座配位子を形成してもよい。)
【0012】
ここで、X=CR6, Y=CR6のものをピロール誘導体(但し、XのR6とYのR6は互いに同一でも異なっていてもよい)、X=CR6, Y=Nのものをピラゾール誘導体、X=N, Y=CR6のものをイミダゾール誘導体、X=N, Y=Nのものをトリアゾール誘導体と呼ぶ。
【化6】
【0013】
上記R1〜R6のC1〜C40の置換もしくは無置換のアルキル基は、直鎖、分岐鎖または環状のいずれであってもよく、それらの具体例としては、メチル、エチル、1-プロピル、2-プロピル、1-ブチル、2-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル、2-エチルヘキシル、3,7-ジメチルオクチル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、1-アダマンチル、2-アダマンチル、ノルボルニル、トリフルオロメチル、トリクロロメチル、ベンジル、α,α-ジメチルベンジル、2-フェニルエチル、1-フェニルエチルなどが挙げられる。好ましくは、C1〜C20の置換もしくは無置換のアルキル基であり、より好ましくは、C1〜C10の置換もしくは無置換のアルキル基であり、更に好ましくは、C1〜C6の置換もしくは無置換のアルキル基であり、具体的には、好ましくは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、tert-ブチル、シクロヘキシルなどである。
R1〜R6のC2〜C40の置換もしくは無置換のアルケニル基は、直鎖、分岐鎖または環状のいずれであってもよく、それらの具体例としては、ビニル、プロペニル、ブテニル、オレイル、エイコサペンタエニル、ドコサヘキサエニル、2,2-ジフェニルビニル、1,2,2-トリフェニルビニル、2-フェニル-2-プロペニルなどが挙げられる。好ましくは、C2〜C20の置換もしくは無置換のアルケニル基であり、より好ましくは、C2〜C10の置換もしくは無置換のアルケニル基であり、具体的には、好ましくは、ビニル、2,2-ジフェニルビニルなどである。
【0014】
R1〜R6のC6〜C40の置換もしくは無置換のアリール基の具体例としては、フェニル、2-トリル、4-トリル、4-トリフルオロメチルフェニル、4-メトキシフェニル、4-シアノフェニル、2-ビフェニリル、3-ビフェニリル、4-ビフェニリル、ターフェニリル、3,5-ジフェニルフェニル、3,4-ジフェニルフェニル、ペンタフェニルフェニル、4-(2,2-ジフェニルビニル)フェニル、4-(1,2,2-トリフェニルビニル)フェニル、フルオレニル、1-ナフチル、2-ナフチル、9-アントリル、2-アントリル、9-フェナントリル、1-ピレニル、クリセニル、ナフタセニル、コロニルなどが挙げられる。好ましくは、C6〜C20の置換もしくは無置換のアリール基であり、より好ましくは、C6〜C14の置換もしくは無置換のアリール基であり、具体的には、好ましくは、フェニル、4-ビフェニリル、1-ナフチル、2-ナフチル、9-フェナントリルなどである。
R1〜R6のC3〜C40の置換もしくは無置換のヘテロアリール基の具体例としては、フラン、チオフェン、ピロール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、ピラゾール、ベンズピラゾール、トリアゾール、オキサジアゾール、ピリジン、ピラジン、トリアジン、キノリン、ベンゾフラン、ジベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、カルバゾールなどが挙げられる。好ましくは、1以上のS、O又はN基を有し、C3〜C20の置換もしくは無置換のヘテロアリール基であり、より好ましくは、C4〜C5の置換もしくは無置換のヘテロアリール基であり、具体的には、好ましくは、フラン、チオフェン、ピリジンなどである。
【0015】
R1〜R6のC1〜C40の置換もしくは無置換のアルコキシ基は、直鎖、分岐鎖または環状のいずれであってもよく、それらの具体例としては、メトキシ、エトキシ、1-プロピルオキシ、2-プロピルオキシ、1-ブチルオキシ、2-ブチルオキシ、sec-ブチルオキシ、tert-ブチルオキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、オクチルオキシ、デシルオキシ、ドデシルオキシ、2-エチルヘキシルオキシ、3,7-ジメチルオクチルオキシ、シクロプロピルオキシ、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシ、1-アダマンチルオキシ、2-アダマンチルオキシ、ノルボルニルオキシ、トリフルオロメトキシ、ベンジロキシ、α,α-ジメチルベンジロキシ、2-フェニルエトキシ、1-フェニルエトキシなどが挙げられる。好ましくは、C1〜C20の置換もしくは無置換のアルコキシ基であり、より好ましくは、C1〜C10の置換もしくは無置換のアルコキシ基であり、更に好ましくは、C1〜C4の置換もしくは無置換のアルコキシ基であり、具体的には、好ましくは、メトキシ、エトキシ、ter-ブチルオキシなどである。
R1〜R6のC6〜C40の置換もしくは無置換のアリールオキシ基の具体例としては、前記アリール基が酸素を介して結合した置換基が挙げられる。好ましくは、C6〜C20の置換もしくは無置換のアリールオキシ基であり、より好ましくは、C6〜C14の置換もしくは無置換のアリールオキシ基であり、具体的には、好ましくは、フェノキシ、ナフトキシ、フェナントリルオキシなどである。
【0016】
R1〜R6のC1〜C40の置換もしくは無置換のアルキルチオ基は、直鎖、分岐鎖または環状のいずれであってもよく、それらの具体例としては、メチルチオ、エチルチオ、1-プロピルチオ、2-プロピルチオ、1-ブチルチオ、2-ブチルチオ、sec-ブチルチオ、tert-ブチルチオ、ペンチルチオ、ヘキシルチオ、オクチルチオ、デシルチオ、ドデシルチオ、2-エチルヘキシルチオ、3,7-ジメチルオクチルチオ、シクロプロピルチオ、シクロペンチルチオ、シクロヘキシルチオ、1-アダマンチルチオ、2-アダマンチルチオ、ノルボルニルチオ、トリフルオロメチルチオ、ベンジルチオ、α,α-ジメチルベンジルチオ、2-フェニルエチルチオ、1-フェニルチルチオなどが挙げられる。好ましくは、C1〜C20の置換もしくは無置換のアルキルチオ基であり、より好ましくは、C1〜C10の置換もしくは無置換のアルキルチオ基であり、更に好ましくは、C1〜C4の置換もしくは無置換のアルキルチオ基であり、具体的には、好ましくは、メチルチオ、エチルチオ、ter-ブチルチオなどである。
R1〜R6を構成する上述した各基の置換基としては、上記アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、及びヘテロアリール基が挙げられる。
【0017】
R1およびYがCR6である場合の当該R6は水素以外の置換基であることが好ましい。本発明で使用する単核1価銅錯体に含まれているような1価の銅錯体は、空気中の酸素によって酸化されやすく、容易に2価銅錯体になるという性質を有している。ところが、2価銅錯体は開殻のd軌道を有しており、非発光性のd-d遷移が優勢になるため一般的には発光しないことが知られている。R1およびYがCR6である場合の当該R6の少なくともひとつを水素以外の置換基にすることにより、立体障害が生じ、正四面体型の1価銅錯体から平面四辺形型2価銅錯体への異性化反応が阻害され、安定に発光する銅錯体を得ることができる。R1およびYがCR6である場合の当該R6の更に好ましい例としては、C1〜C8程度のアルキル基や塩素、臭素などに代表されるハロゲン類など、適度な立体障害を有する置換基を挙げることができる。このようにR1およびYがCR6である場合の当該R6の置換基が適度な大きさを有する場合は、置換基による立体反発も抑制でき、1価銅錯体の安定性を保持できる。
【0018】
R1〜R6のうち隣接する基は互いに結合して環を形成してもよい。例えば、R5と隣接するYがCR6である場合のR6は、互いに結合して環を形成してもよい。また、R4と隣接するXがCR6である場合のR6は、互いに結合して環を形成してもよい。環としては、例えば3〜8員環、好ましくは5〜6員環の、芳香環又は一部に不飽和結合を有してもよい脂肪族環が挙げられる。
【0019】
式(1)中、L1およびL2となる材料として好ましくは、トリエチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミンなどのアミン類、ピリジン、ビピリジン、フェンナントロリン、ジメチルフェナントロリン、ジフェニルフェンナントロリン、ジメチルジフェニルフェナントロリンなどのアジン類、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィンなどのホスフィン類などを挙げることができる。より好ましくは、L1とL2は、それぞれ独立に燐を含む配位子であり得る。
燐を含む配位子であるL1とL2としては、具体的には、ビスジフェニルホスフィノメタン、ビスジシクロヘキシルホスフィノメタン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,4-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エチレン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)ベンゼン、2,2'-ビス(ジフェニルホスフィノ)ビフェニル、2,2'-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1'-ビナフチル、1,1'-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、2,2'-ビス(ジフェニルホスフィノ)ジフェニルエーテル、4,5-ビス(ジフェニルホスフィノ)-9,9-ジメチルキサンテンなどの2座ホスフィン配位子を挙げることができる。
【0020】
また、L1およびL2は、それぞれ独立に窒素及び燐から選ばれる元素を含む配位子であり、互いに結合して2座配位子を形成していることが好ましい。L1およびL2を形成する配位子は、窒素又は燐が銅に配位していることが好ましい。
さらに、L1およびL2は、互いに結合した2座配位子であり、該配位子が、下記式(2)の2座ホスフィンを形成していることがより好ましい。
【化7】
(式中、R10〜R13はそれぞれ独立に水素、ハロゲン、C1〜C40の置換もしくは無置換のアルキル基、C2〜C40の置換もしくは無置換のアルケニル基、C6〜C40の置換もしくは無置換のアリール基、C3〜C40の置換もしくは無置換のヘテロアリール基、C1〜C40の置換もしくは無置換のアルコキシ基、C6〜C40の置換もしくは無置換のアリールオキシ基、C1〜C40の置換もしくは無置換のアルキルチオ基であり、R10とR11及び/又はR12とR13は互いに結合して環を形成してもよく、QはC1〜C6の置換もしくは無置換のアルキリデン基、C2〜C6の置換もしくは無置換のアルケニリデン基、C6〜C40、好ましくは、C6〜C20、より好ましくは、C6〜C14の置換もしくは無置換のアリーレン基、C3〜C40、好ましくはC3〜C20、より好ましくは、C4〜C5の置換もしくは無置換のヘテロアリーレン基(好ましくは、1以上のS、O又はN基を有するヘテロアリーレン基)である。)
【0021】
上記式(2)のR10〜R13として挙げられているC1〜C40の置換もしくは無置換のアルキル基、C2〜C40の置換もしくは無置換のアルケニル基、C6〜C40の置換もしくは無置換のアリール基、C3〜C40の置換もしくは無置換のヘテロアリール基、C1〜C40の置換もしくは無置換のアルコキシ基、C6〜C40の置換もしくは無置換のアリールオキシ基、C1〜C40の置換もしくは無置換のアルキルチオ基は、前記したR1〜R6と同様の基を選択することができる。
R10とR11及び/又はR12とR13は互いに結合して環を形成してもよい。環としては、例えば3〜8員環、好ましくは5〜6員環の、芳香環又は一部に不飽和結合を有してもよい脂肪族環が挙げられる。
上記Qは、さらに、ハロゲン、C1〜C40、好ましくは、C1〜C20、より好ましくは、C1〜C10、更に好ましくは、C1〜C6の置換もしくは無置換のアルキル基、C6〜C40、好ましくは、C6〜C20、より好ましくは、C6〜C14の置換もしくは無置換のアリール基で置換されてもよい下記構造;
【化8】
から選ばれる有機基であってもよい。
【0022】
具体的に、上記式(2)のようなL1およびL2が互いに結合した2座配位子を含む本発明の単核1価銅錯体は、下記式(3)の様に示すことができる。
【化9】
(式中、X、Y、Q、R1〜R5、R10〜R13の定義は上記と同様である。)
【0023】
本発明で用いることのできる単核1価銅錯体の具体例を以下に示す。
【化10】
【0024】
【化11】
【0025】
【化12】
【0026】
【化13】
【0027】
本発明の単核1価銅錯体の一般的な合成経路を以下に説明する。
第一の方法は、アルゴンや窒素などの不活性ガス雰囲気下、アゾール誘導体のNHプロトンを塩基(base)により引き抜き、第二配位子(L1)および第三配位子(L2)を加え、更に銅(I)源を加えて、室温(約25℃)で撹拌することにより合成できる。
【化14】
また第二の方法として、X=N(イミダゾールまたはトリアゾール)およびY=N(ピラゾール)の場合は、L1およびL2とともに先に錯体形成を行ない、カチオン性錯体を単離した後に塩基を反応させて、本発明化合物(中性錯体)に誘導することも可能である。
【0028】
【化15】
【0029】
これらの反応で用いられる塩基としては、特に限定はされないが、例えば水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カルシウムなどのアルカリ(土類)金属水素化物、ナトリウムメトキシド、カリウムt-ブトキシドなどのアルコキシド類、n-ブチルリチウム、t-ブチルリチウムなどの有機リチウム類などを挙げることができる。これらの塩基のうち好ましいのは、水素化ナトリウムなどに代表されるアルカリ金属水素化物であり、これらの塩基は求核性が低いため、副反応(C=N結合への塩基の付加反応)を抑制し、収率を向上させることができる。また、銅(I)源としては、テトラキス(アセトニトリル)銅(I)ヘキサフルオロホスフェート(Cu(MeCN)4PF6)やCu(PPh3)3Clなどに代表される錯体類、CuI、CuBr、CuClなどのハロゲン化物などを用いることができる。
【0030】
このようにして合成した単核1価銅錯体は、室温、大気中で安定なため、必要に応じてカラムクロマトグラフィや再結晶などによって精製することができる。また構造の確認には、中心金属がd10の閉殻構造をしているため各種核磁気共鳴(1H-NMR、13C-NMR、31P-NMR)を用いることができ、必要に応じて元素分析、X線構造解析などによっても確認することができる。
【0031】
(2) 発光材料及び有機エレクトロルミネッセンス素子用材料
本発明の上記銅錯体は、有機エレクトロニクス素子用材料または発光材料として用いることができる。
有機エレクトロニクス素子用材料の具体例としては、例えば有機エレクトロルミネッセンス材料、有機半導体材料、有機トランジスタ材料、有機光電変換材料、有機太陽電池材料などを挙げることができ、これらの中で好ましい適用例としては、有機エレクトロルミネッセンス材料を挙げることができる。
また、発光材料の具体例としては、りん光色素、波長変換素子などを挙げることができ、好ましい適用例としては、波長変換素子を挙げることができる。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料又は発光材料は、上記単核1価銅錯体以外の他の材料として、後述する(3)有機エレクトロルミネッセンス素子の項で説明する発光材料、正孔注入材料、正孔輸送材料、電子注入材料、電子輸送材料等を含んでもよい。
さらに本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料又は発光材料は、従来から公知の他の混合物である、以下のような樹脂及び添加剤等を含んでもよい。以下、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料又は発光材料について詳しく説明するが、「有機エレクトロルミネッセンス素子用材料又は発光材料」は、「有機エレクトロルミネッセンス素子用材料等」と省略して説明する。
【0032】
(2-1)樹脂
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料等は、成膜性向上、膜のピンホール防止等のため適切な樹脂を含んでいてもよい。このような樹脂としては、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリスルフォン、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、セルロース等の絶縁性樹脂およびそれらの共重合体、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリシラン等の光導電性樹脂、ポリチオフェン、ポリピロール等の導電性樹脂を挙げられる。
(2-2)添加剤
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料等は、成膜性向上、膜のピンホール防止等のため適切な添加剤を含んでいてもよい。このような添加剤としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤等が挙げられる。
【0033】
(3)有機エレクトロルミネッセンス素子
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、陰極と、陽極と、該陰極と陽極との間に挟持された1層または複数層からなる有機層とを含む。また、この有機エレクトロルミネッセンス素子の素子は、基板上に設けられていてよい。本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子表面上に、さらに保護層を設けてもよい。
より具体的には、本発明における有機エレクトロルミネッセンス素子の素子構造は、電極間に有機層を1層あるいは2層以上積層した構造である。有機層としては、例えば、正孔注入層、正孔輸送層(電子障壁層)、発光層、電子輸送層(正孔障壁層)及び電子注入層がある。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の具体的な素子構造は、例えば、(陽極/発光層/陰極)、(陽極/正孔注入層または輸送層/発光層/電子注入層または輸送層/陰極)、(陽極/正孔注入層または輸送層/発光層/陰極)、(陽極/発光層/電子注入層または輸送層/陰極)、あるいは(陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極)等の構造が挙げられる。
【0034】
(3-1)発光層
発光層を構成する発光材料としては、上記単核1価銅錯体をそのまま使用することができる。また、発光層は、本発明で使用する単核1価銅錯体をトーパントとして用い、ホスト材料とドーパントとの混合物であってもよい。なお、通常、各種有機層に含まれるドーパントとホスト材料との質量比は、1:99〜50:50、好ましくは、5:95〜20:80であることが適当である。発光材料用のホスト材料としては、本発明で使用する単核1価銅錯体からホスト材料への逆エネルギー移動を防止するため、金属錯体よりも3重項エネルギーギャップが広い化合物であれば特に限定されない。特に好ましいホスト材料としては、m−ジカルバゾリルベンゼン、4,4’−ジカルバゾリルビフェニルに代表されるカルバゾール誘導体、1,3−ビス(トリメチルシリル)ベンゼン、に代表されるシリコン誘導体、1,3,5−トリス(3,5−ジフェニルフェニル)ベンゼンに代表されるオリゴアリーレン類、ポリビニルカルバゾールに代表される高分子化合物などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。さらに、発光層は、後述する正孔注入材料、正孔輸送材料、電子注入材料及び電子輸送材料等の他の材料を含んでいてもよい。発光層に含み得る他の材料は、例えば、発光層全体の質量に対し、1〜50質量%、好ましくは、1〜20質量%であることが適当である。
【0035】
(3-2)正孔注入層及び正孔輸送層(電子障壁層)
正孔注入層及び正孔輸送層(電子障壁層)等に含まれる正孔注入材料及び正孔輸送材料(電子障壁材料)としては、特に限定はなく、公知の正孔注入材料及び正孔輸送材料(電子障壁材料)を使用できるが、薄膜形成能力の優れた化合物が好ましい。正孔注入層は、陽極からの正孔注入効果、発光層または発光材料に対して優れた正孔注入効果を有する。正孔輸送層は、正孔を輸送する能力を有する。正孔輸送層は、電子障壁層とも呼ばれ、発光層で生成した励起子の電子注入層または電子注入材料への移動を防止する能力を有する。これら正孔注入層及び正孔輸送層(電子障壁層)は、それぞれ独立の層として使用しても、又は、各層の各特性を併せ持つ単一の層として使用してもよい。具体的には、フタロシアニン誘導体、ナフタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、金属フタロシアニン類、金属ポルフィリン類、オリゴアリーレン類、オリゴチオフェン類、ベンジジン型トリフェニルアミン類、スチリルアミン型トリフェニルアミン類、スターバースト型トリフェニルアミン類、テトラシアノテトラアザトリフェニレン類と、それらの重合体、およびポリビニルカルバゾール、ポリシランなどの高分子、ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸(PEDOT:PSS)、ポリアニリン/カンファースルホン酸(PANI/CSA)などに代表される導電性高分子等の高分子材料、酸化ゲルマニウム、酸化モリブデン等に代表される無機酸化物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0036】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子において使用できる正孔注入材料及び正孔輸送材料(電子障壁材料)の中で、さらに効果的な正孔注入材料及び正孔輸送材料(電子障壁材料)は、芳香族三級アミン誘導体もしくはフタロシアニン誘導体である。芳香族三級アミン誘導体の具体例は、トリフェニルアミン、トリトリルアミン、トリルジフェニルアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン、N,N,N’,N’−(4−メチルフェニル)−1,1’−フェニル−4,4’−ジアミン、N,N,N’,N’−(4−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ジナフチル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン、N,N’−(メチルフェニル)−N,N’−(4−n−ブチルフェニル)−フェナントレン−9,10−ジアミン、N,N−ビス(4−ジ−4−トリルアミノフェニル)−4−フェニル−シクロヘキサン等、もしくはこれらの芳香族三級アミン骨格を有したオリゴマーもしくはポリマーであるが、これらに限定されるものではない。フタロシアニン(Pc)誘導体の具体例は、H2 Pc、CuPc、CoPc、NiPc、ZnPc、PdPc、FePc、MnPc、ClAlPc、ClGaPc、ClInPc、ClSnPc、Cl2 SiPc、(HO)AlPc、(HO)GaPc、VOPc、TiOPc、MoOPc、GaPc−O−GaPc等のフタロシアニン誘導体およびナフタロシアニン誘導体であるが、これらに限定されるものではない。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子において使用できる正孔注入材料及び正孔輸送材料(電子障壁材料)の中で、更に効果的な材料は、CuPc、PEDOT:PSS、N,N’−ジフェニル−N,N’−ジナフチル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミンであってもよい。
【0037】
(3-3)電子注入層及び電子輸送層(正孔障壁層)
電子注入層及び電子輸送層(正孔障壁層)等に含まれる電子注入材料及び電子輸送材料(正孔障壁材料)としては、特に限定はなく、公知の電子注入材料及び電子輸送材料(正孔障壁材料)を使用できるが、薄膜形成能力の優れた化合物が好ましい。電子注入層は、陰極からの電子注入効果、発光層または発光材料に対して優れた電子注入効果を有する。電子輸送層は、電子を輸送する能力を有する。電子輸送層は、正孔障壁層とも呼ばれ、発光層で生成した励起子の正孔注入層への移動を防止する能力を有する。これら電子注入層及び電子輸送層(正孔障壁層)は、それぞれ独立の層として使用しても、又は、各層の各特性を併せ持つ単一の層として使用してもよい。具体的には、フルオレノン、アントラキノジメタン、ジフェノキノン、チオピランジオキシド、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、イミダゾール、ペリレンテトラカルボン酸、フレオレニリデンメタン、アントラキノジメタン、アントロン等とそれらの誘導体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、正孔注入材料に電子受容物質を、電子注入材料に電子供与性物質を添加することにより電荷注入性を向上させることもできる。
【0038】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子において、さらに効果的な電子注入材料及び電子輸送材料(正孔障壁材料)は、金属錯体化合物もしくは含窒素ヘテロ環誘導体である。金属錯体化合物の具体例は、8−ヒドロキシキノリナートリチウム、ビス(8−ヒドロキシキノリナート)亜鉛、ビス(8−ヒドロキシキノリナート)銅、ビス(8−ヒドロキシキノリナート)マンガン、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム、トリス(2−メチル−8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)ガリウム、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナート)ベリリウム、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナート)亜鉛、ビス(2−メチル−8−キノリナート)クロロガリウム、ビス(2−メチル−8−キノリナート)(o−クレゾラート)ガリウム、ビス(2−メチル−8−キノリナート)(1−ナフトラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリナート)(2−ナフトラート)ガリウム等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0039】
また、含窒素ヘテロ誘導体は、オキサゾール、チアゾール、オキサジアゾール、チアジアゾールなどのアゾール誘導体、フェナントロリン、バソフェナントロリン、バソクプロインなどのフェナントロリン誘導体、ビピリジン、アリール置換ピリジンなどのピリジン類が好ましい。具体的には、2,5−ビス(1−フェニル)−1,3,4−オキサゾール、2,5−ビス(1−フェニル)−1,3,4−チアゾール、2,5−ビス(1−フェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−(4’−tert−ブチルフェニル)−5−( 4”−ビフェニル) 1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、1,4−ビス[2−( 5−フェニルオキサジアゾリル) ]ベンゼン、1,4−ビス[2−( 5−フェニルオキサジアゾリル) −4−tert−ブチルベンゼン]、2−(4’−tert−ブチルフェニル)−5−( 4”−ビフェニル) −1,3,4−チアジアゾール、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−チアジアゾール、1,4−ビス[2−( 5−フェニルチアジアゾリル) ]ベンゼン、2−(4’−tert−ブチルフェニル)−5−(4”−ビフェニル) −1,3,4−トリアゾール、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−トリアゾール、1,4−ビス[2−( 5−フェニルトリアゾリル)]ベンゼン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0040】
電子注入層が絶縁体や半導体で構成されていれば、電流のリークを有効に防止して、電子注入性を向上させることができる。このような絶縁体としては、アルカリ金属カルコゲナイド、アルカリ土類金属カルコゲナイド、アルカリ金属のハロゲン化物およびアルカリ土類金属のハロゲン化物からなる群から選択される少なくとも一つの金属化合物を使用するのが好ましい。電子注入層がこれらのアルカリ金属カルコゲナイド等で構成されていれば、電子注入性をさらに向上させることができる点で好ましい。
具体的に、好ましいアルカリ金属カルコゲナイドとしては、例えば、Li2O、LiO、Na2S、Na2SeおよびNaOが挙げられ、好ましいアルカリ土類金属カルコゲナイドとしては、例えば、CaO、BaO、SrO、BeO、BaS、およびCaSeが挙げられる。また、好ましいアルカリ金属のハロゲン化物としては、例えば、LiF、NaF、KF、LiCl、KClおよびNaCl等が挙げられる。また、好ましいアルカリ土類金属のハロゲン化物としては、例えば、CaF2 、BaF2、SrF2、MgF2およびBeF2といったフッ化物や、フッ化物以外のハロゲン化物が挙げられる。
【0041】
さらに電子注入層は、通常電子輸送層として使用される電子輸送材料に還元性ドーパントを添加して、電子注入層として機能させたものであってもよい。還元性ドーパントは、仕事関数が2.9eV以下の還元性ドーパントであってもよい。ここで、還元性ドーパントとは、電子輸送材料を還元できる物質と定義される。したがって、一定の還元性を有するものであれば、様々なものが用いられ、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、アルカリ金属の酸化物、アルカリ金属のハロゲン化物、アルカリ土類金属の酸化物、アルカリ土類金属のハロゲン化物、希土類金属の酸化物または希土類金属のハロゲン化物、アルカリ金属の有機錯体、アルカリ土類金属の有機錯体、希土類金属の有機錯体からなる群から選択される少なくとも一つの物質を好適に使用することができる。
【0042】
また、より具体的に、好ましい還元性ドーパントとしては、Na(仕事関数:2.36eV)、K(仕事関数:2.28eV)、Rb(仕事関数:2.16eV)およびCs(仕事関数:1.95eV)からなる群から選択される少なくとも一つのアルカリ金属や、Ca(仕事関数:2.9eV)、Sr(仕事関数:2.0〜2.5eV)、およびBa(仕事関数:2.52eV)からなる群から選択される少なくとも一つのアルカリ土類金属が挙げられる仕事関数が2.9eVのものが特に好ましい。
これらのうち、より好ましい還元性ドーパントは、K、RbおよびCsからなる群から選択される少なくとも一つのアルカリ金属であり、さらに好ましくは、RbまたはCsであり、最も好ましのは、Csである。これらのアルカリ金属は、特に還元能力が高く、電子注入域(電子注入層又は発光層中の電子注入領域)への比較的少量の添加により、有機エレクトロルミネッセンス素子における発光輝度の向上や長寿命化が図られる。
また、仕事関数が2.9eV以下の還元性ドーパントとして、これら2種以上のアルカリ金属の組合わせも好ましく、特に、Csを含んだ組み合わせ、例えば、CsとNa、CsとK、CsとRbあるいはCsとNaとKとの組み合わせであることが好ましい。Csを組み合わせて含むことにより、還元能力を効率的に発揮することができ、電子注入域(電子注入層又は発光層中の電子注入領域)への添加により、有機エレクトロルミネッセンス素子における発光輝度の向上や長寿命化が図られる。
【0043】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子において、さらに効果的な電子輸送材料は、トリス(8-ヒドロキシキノリン)アルミニウム、バソクプロイン、バソフェナントロリン等が挙げられる。
また、電子輸送層が半導体で構成されていれば、電流のリークを有効に防止して、電子注入性を向上させることができる。電子輸送層を構成する半導体としては、Ba、Ca、Sr、Yb、Al、Ga、In、Li、Na、Cd、Mg、Si、Ta、SbおよびZnの少なくとも一つの元素を含む酸化物、窒化物または酸化窒化物等の一種単独または二種以上の組み合わせが挙げられる。また、電子輸送層を構成する無機化合物が、微結晶または非晶質の絶縁性膜であることが好ましい。電子輸送層がこれらの絶縁性膜で構成されていれば、当該絶縁製膜を薄膜とする際、より均質な薄膜が形成されるために、ダークスポット等の画素欠陥を減少させることができる。なお、このような無機化合物としては、上述したアルカリ金属カルコゲナイド、アルカリ土類金属カルコゲナイド、アルカリ金属のハロゲン化物およびアルカリ土類金属のハロゲン化物等が挙げられる。
【0044】
(3-4)陽極及び陰極
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の陽極として使用される導電性材料としては、4eVより大きな仕事関数を持つものが適しており、炭素、アルミニウム、バナジウム、鉄、コバルト、ニッケル、タングステン、銀、金、白金、パラジウム等およびそれらの合金、ITO基板、NESA基板に使用される酸化スズ、酸化インジウム等の酸化金属、さらにはポリチオフェンやポリピロール等の有機導電性樹脂が用いられる。
【0045】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の陰極として使用される導電性物質としては、4eVより小さな仕事関数を持つものが適しており、マグネシウム、カルシウム、錫、鉛、チタニウム、イットリウム、リチウム、ルテニウム、マンガン、アルミニウム等およびそれらの合金が用いられるが、これらに限定されるものではない。合金としては、マグネシウム/銀、マグネシウム/インジウム、リチウム/アルミニウム等が代表例として挙げられるが、これらに限定されるものではない。合金の比率は、蒸着源の温度、雰囲気、真空度等により制御され、適切な比率に選択される。陽極および陰極は、必要があれば二層以上の層構成により形成されていても良い。
【0046】
(3-5)基板
基板は、機械的、熱的強度を有し、好ましくは透明性を有するものであれば限定されるものではない。基板として好ましくは、ガラス基板および透明性樹脂フィルムがある。
透明性樹脂フィルムとしては、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメチルメタアクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ナイロン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリサルホン、ポリエーテルサルフォン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ポリビニルフルオライド、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリプロピレン等が挙げられる。
【0047】
(3-6)保護層
本発明により得られた有機エレクトロルミネッセンス素子の、温度、湿度、雰囲気等に対する安定性の向上のために、素子の表面に保護層を設けることができる。保護層を構成する材料としては、シリコンオイル、樹脂等が挙げられる。
【0048】
(3-7)添加剤等
いずれの有機層においても、成膜性向上、膜のピンホール防止等のため、上述した樹脂や添加剤((2-1)及び(2-2)参照)を使用しても良い。
【0049】
(3-8)各層の性質
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の膜厚は特に限定されるものではないが、適切な膜厚に設定する必要がある。本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の膜厚は、例えば、5nm〜10μm、好ましくは、10nm〜0.2μmの範囲であることが適当である。10μm以下であれば、一定の光出力を得るための印加電圧が大きくなりすぎず、効率化が図れる。5nm以上であれば、ピンホール等が発生することもなく、また、電界を印加することにより充分な発光輝度が得られるので好ましい。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の各有機層の膜厚は特に制限されないが、、例えば、1nm〜5μm、好ましくは、5nm〜1μmの範囲であることが適当である。1nm以上であれば、ピンホール等の欠陥が生じることもなく、また、5μm以下であれば必要な印加電圧を低く抑えることができ、効率化が図れる。
特に、有機層の一つである発光層の膜厚は、更に好ましくは、1nm〜500nm、最も好ましくは、10nm〜100nmの範囲であることが適当である。
【0050】
また、有機層の一つである正孔注入層の膜厚は、更に好ましくは、1nm〜100nm、最も好ましくは、10nm〜50nmの範囲であることが適当である。
有機エレクトロルミネッセンス素子では、効率良く発光させるために、基板、保護層及び少なくとも一方の電極は、素子の発光波長領域において充分透明にすることが望ましい。ここで、透明電極は、上記の導電性材料を使用して、蒸着やスパッタリング等の方法で所定の透光性が確保するように設定する。本発明で使用される電極は、光透過率を10%以上、好ましくは、30〜100%、より好ましくは、50〜100%にすることが望ましい。
【0051】
(3-9)各層の作製
本発明に係わる有機エレクトロルミネッセンス素子の各層の形成は、真空蒸着、スパッタリング、プラズマ、イオンプレーティング等の乾式成膜法やスピンコーティング、ディップコート、キャスティング、ロールコート、フローコーティング、インクジェット等の湿式成膜法のいずれの方法も適用することができる。
【0052】
湿式成膜法の場合、各層を形成する材料を、適切な溶媒に溶解または分散させて有機溶液を調製し、スピンコート法等を利用して有機溶液を基板上に塗布し、乾燥し、各層の薄膜を得る。ここで、使用される溶媒はいずれであっても良い。例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、テトラクロロエタン、トリクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロトルエンなどのハロゲン系炭化水素系溶媒や、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アニソールなどのエーテル系溶媒、メタノールやエタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、エチレングリコールなどのアルコール系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ヘキサン、オクタン、デカン、テトラリンなどの炭化水素系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミルなどのエステル系溶媒等が挙げられる。なかでも、炭化水素系溶媒またはエーテル系溶媒が好ましい。また、これらの溶媒は単独で使用しても複数混合して用いてもよい。なお、使用可能な溶媒はこれらに限定されるものではない。
【0053】
(3-10)有機エレクトロルミネッセンス素子の製造及び性質
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、陰極と陽極との間に、上記有機層を挟持することによって製造される。このうち、有機層は、上述の乾式成膜法や湿式製膜法により各層を好ましくは基板上に順次積層することによって製造される。
具体的には、例えば、まず、基板を準備する。基板は、上述した各種の基板を利用できる。この基板上に、電極を設けて電極−基板接合体を得る。この作業に代わり、あらかじめ電極が基板の一面に設けられた電極−基板接合体を市場から入手してもよい。この接合体の上に、有機層を構成する材料を、上述したスピンコート法等を用いて順次積層する。有機層の積層に続いて、基板上の電極と対極をなす電極を、真空蒸着法等により積層する。
その他、基板、陰極、陽極、有機層を別々の工程で調製した後、これらを圧着して積層させてもよい。
得られた有機エレクトロルミネッセンス素子は、例えば、500nm以下、好ましくは 400nm〜500nm、より好ましくは、430nm〜480nmの発光極大波長を有することが適当である。500nm以下であれば、青色発光となるので好ましく、400nm以上であれば、人間の目の視感度が良好になるので好ましい。ここで、発光極大波長は、一般的に、発光スペクトルを分光放射輝度計の様な装置で測定し、得られた発光スペクトルから判断される。
得られた有機エレクトロルミネッセンス素子は、例えば、1ms以下、好ましくは、100μs以下の発光寿命を有することが適当である。
【0054】
(4)有機エレクトロルミネッセンス素子を有する装置
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、車載用、携帯機器用、パソコン用、テレビ用等のディスプレイ等の装置として利用できる。
【実施例】
【0055】
(実施例1)
錯体Aを以下の合成スキームに従って合成した。
【化16】
Ar雰囲気下、水素化ナトリウム(60%, 2.06g, 51.5mmol)を無水THF(60ml)に懸濁し、これに室温で3,3-ジメチル-2-ブタノン(tBuCOMe、6.1ml, 49.3mmol, 1.3eq)を少量ずつ加えた。水素ガスの発生が収まるまで室温で20分撹拌し、反応混合物を60℃に加熱した。これに、6-メチル-2-ピリジンカルボン酸エチルエステル(6.48g, 38.1mmol)を少量ずつ滴下し、70℃で20分撹拌した。反応混合物を放冷後、氷浴で冷却し、希塩酸を少量ずつ加えてpH=8〜9に調整した。エーテルで抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥、溶媒留去して黄色オイルを得た。これをエタノール(100ml)に溶かし、ヒドラジン1水和物(3.95g, 77.3mmol)のエタノール溶液(20ml)をゆっくり加え、2時間還流した。反応混合物を放冷し、溶媒留去後、残渣をジクロロメタンに溶かし、飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥、溶媒留去して黄色オイルを得た。これをカラムクロマトグラフィ(シリカゲル/ヘキサン+50%ジクロロメタン、続いてジクロロメタン+20%酢酸エチル)で精製して淡黄色固体として5-(6-メチル-2-ピリジル)-3-t-ブチルピラゾール(7.3g, 89%)を得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3, TMS) δ 1.38 (9H, s), 2.57 (3H, s), 6.62 (1H, s), 7.04 (1H, d, J=8Hz), 7.53 (1H, bs), 7.59 (1H, t, J=8Hz).
【0056】
Ar雰囲気下、4,5-ビス(ジフェニルホスフィノ)-9,9-ジメチルキサンテン(Xantphos、1.14g, 1.97mmol)、水素化ナトリウム(60%, 84mg, 2.1mmol, 1.1eq)を無水THF(35ml)に懸濁し、5-(6-メチル-2-ピリジル)-3-t-ブチルピラゾール(0.42g, 1.95mmol)の無水THF溶液(10ml)を室温で滴下した。反応混合物を室温で1時間撹拌後、塩化第一銅(0.19g, 1.92mmol)を加え、室温で3時間撹拌した。反応混合物をろ別し、ろ液を溶媒留去して淡黄色固体を得た。これをジクロロメタン+ジエチルエーテルの混合溶媒から2回再結晶することにより緑黄色板状晶として錯体A(0.3g, 18%)を得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3, TMS) δ 1.26 (9H, s), 1.46 (3H, s), 1.61 (3H, s), 1.89 (3H, s), 6.24 (1H, s), 6.54-6.57 (2H, m), 6.66 (1H, d, J=9Hz), 6.78 (3H, bs), 6.99-7.15 (16H, m), 7.29 (1H, d, J=8Hz), 7.45-7.49 (3H, m), 7.72 (3H, bs).
【0057】
(実施例2)
錯体Bを以下の合成スキームに従って合成した。
【化17】
Ar雰囲気下、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)ベンゼン(dppbz、0.92g, 2.06mmol)、水素化ナトリウム(60%, 90mg, 2.3mmol, 1.1eq)を無水THF(35ml)に懸濁し、5-(6-メチル-2-ピリジル)-3-t-ブチルピラゾール(0.45g, 2.1mmol)の無水THF溶液(15ml)を室温で滴下した。反応混合物を室温で1時間撹拌後、塩化第一銅(0.20g, 2.1mmol)を加え、室温で5時間撹拌した。反応混合物をろ別し、ろ液を溶媒留去して黄色アモルファス固体を得た。これをジクロロメタン+ジエチルエーテルの混合溶媒から再結晶することにより黄色板状晶として錯体B(0.74g, 50%)を得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3, TMS) δ 1.28 (3, s), 1.54 (9H, s), 6.54 (1H, s), 6.57 (1H, d, J=8Hz), 7.21-7.45 (21H, m), 7.62-7.66 (2H, m), 8.00 (3H, bs).
【0058】
(実施例3)
錯体Cを以下の合成スキームに従って合成した。
【化18】
Ar雰囲気下、2,2'-ビス(ジフェニルホスフィノ)ジフェニルエーテル(DPEphos、1.05g, 1.91mmol)、水素化ナトリウム(60%, 80mg, 2.0mmol, 1.1eq)を無水THF(35ml)に懸濁し、5-(6-メチル-2-ピリジル)-3-t-ブチルピラゾール(0.41g, 1.9mmol)の無水THF溶液(15ml)を室温で滴下した。反応混合物を室温で1時間撹拌後、塩化第一銅(0.18g, 1.8mmol)を加え、室温で5時間撹拌した。反応混合物をろ別し、ろ液を溶媒留去して茶色アモルファス固体を得た。これをヘキサンで洗浄し、ジクロロメタン+エタノールの混合溶媒から再結晶することにより白色固体として錯体C(0.37g, 25%)を得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3, TMS) δ 1.37 (9H, s), 1.91 (3H, s), 6.22 (1H, s), 6.63-6.68 (3H, m), 6.84 (2H, t, J=8Hz), 6.94 (2H, d, J=8Hz), 7.12-7.20 (2H, m), 7.43 (1H, t, J=8Hz), 7.84 (2H, bs).
元素分析、C49H44CuN3OP2としての計算値: C, 72.09; H, 5.43; N, 5.15
実測値: C, 72.4; H, 5.5; N, 5.0
【0059】
(実施例4)
錯体Dを以下の合成スキームに従って合成した。
【化19】
Ar雰囲気下、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン(dppe、1.24g, 2.96mmol)、水素化ナトリウム(60%, 0.12g, 3.0mmol, 1.1eq)を無水THF(50ml)に懸濁し、5-(6-メチル-2-ピリジル)-3-t-ブチルピラゾール(0.63g, 2.93mmol)の無水THF溶液(20ml)を室温で滴下した。反応混合物を室温で1時間撹拌後、塩化第一銅(0.28g, 2.83mmol)を加え、室温で4時間撹拌した。反応混合物をろ別し、ろ液を溶媒留去して黄色アモルファス固体を得た。これを少量のジクロロメタンに溶かし、ヘキサンで再沈することにより白色固体を得た。更にトルエン+ヘキサンの混合溶媒から再結晶することにより淡黄色板状晶として錯体D(0.72g, 38%)を得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3, TMS) δ 1.56 (9H, s), 1.70 (3H, s), 2.40 (4H, bs), 6.59 (1H, s), 6.65 (1H, d, J=8Hz), 7.16-7.18 (1H, m), 7.23-7.29 (12H, m), 7.40 (1H, d, J=8Hz), 7.48 (1H, t, J=8Hz), 7.74 (7H, bs).
元素分析、C39H40CuN3P2+0.8PhMeとしての計算値: C, 71.44; H, 6.24; N, 5.60
実測値: C, 71.0; H, 6.6; N, 5.6
【0060】
(実施例5)
錯体Eを以下の合成スキームに従って合成した。
【化20】
Ar雰囲気下、ナトリウムメトキシド/メタノール溶液(1mol/l, 4.4ml, 44mmol)を無水THF(50ml)に溶かし、これに室温でアセトフェノン(4.9ml, 42mmol, 1.4eq)を加えた。次に6-メチル-2-ピリジンカルボン酸エチルエステル(4.98g, 29.4mmol)を加えて4時間還流した。反応混合物を放冷後、溶媒留去して、残渣を水に溶かし、2M塩酸を加えて中性にした。水層をエーテルで抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥、溶媒留去した。残渣をエタノール(50ml)に溶かし、ヒドラジン1水和物(1.94g, 37.9mmol)のエタノール溶液(15ml)をゆっくり加え、2時間還流した。反応混合物を放冷し、溶媒留去後、残渣をジクロロメタンに溶かし、飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥、溶媒留去して黄色オイルを得た。これをカラムクロマトグラフィ(シリカゲル/ヘキサン+50%ジクロロメタン、続いてジクロロメタン+20%酢酸エチル)で精製して白色固体として5-(6-メチル-2-ピリジル)-3-フェニルピラゾール(1.92g, 28%)を得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3, TMS) δ 2.60 (3H, s), 7.01 (1H, s), 7.10 (1H, d, J=8Hz), 7.34 (1H, t, J=8Hz), 7.43 (2H, t, J=8Hz), 7.51 (1H, bs), 7.64 (1H, t, J=8Hz), 7.86 (2H, d, J=8Hz), 11.24 (1H, bs).
【0061】
Ar雰囲気下、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)ベンゼン(dppbz、0.91g, 2.04mmol)、水素化ナトリウム(60%, 92mg, 2.3mmol, 1.1eq)を無水THF(35ml)に懸濁し、5-(6-メチル-2-ピリジル)-3-フェニルピラゾール(0.47g, 2.0mmol)の無水THF溶液(10ml)を室温で滴下した。反応混合物を室温で1時間撹拌後、塩化第一銅(0.20g, 2.0mmol)を加え、室温で3時間撹拌した。反応混合物をろ別し、ろ液を溶媒留去して黄緑色アモルファス固体を得た。これに少量のエーテルを加え、超音波処理すると固体になったので、ろ別し、トルエン+ヘキサンの混合溶媒から再結晶することにより黄色針状晶として錯体E(0.79g, 53%)を得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3, TMS) δ 1.75 (3H, s), 6.67 (1H, d, J=4Hz), 6.9-7.3 (18H, m), 7.4-75 (6H, m), 7.62-7.63 (2H, m), 7.95 (2H, bs), 8.08 (2H, d, J=8Hz).
元素分析、C45H36CuN3P2+H2Oとしての計算値: C, 70.90; H, 5.02; N, 5.51
実測値: C, 71.1; H, 5.0; N, 5.3
【0062】
(実施例6)
錯体Fを以下の合成スキームに従って合成した。
【化21】
Ar雰囲気下、4,5-ビス(ジフェニルホスフィノ)-9,9-ジメチルキサンテン(XantPhos、1.04g, 1.8mmol)、水素化ナトリウム(60%, 81mg, 2.0mmol, 1.1eq)を無水THF(35ml)に懸濁し、5-(6-メチル-2-ピリジル)-3-フェニルピラゾール(0.42g, 1.79mmol)の無水THF溶液(10ml)を室温で滴下した。反応混合物を室温で1時間撹拌後、塩化第一銅(0.17g, 1.72mmol)を加え、室温で3時間撹拌した。反応混合物をろ別し、ろ液を溶媒留去して淡緑色アモルファス固体を得た。これに少量のエーテルを加え、超音波処理すると固体になったので、ろ別し、トルエン+ヘキサンの混合溶媒から再結晶することにより白色固体として錯体F(0.48g, 32%)を得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3, TMS) δ 1.48 (3H, s), 1.62 (3H, s), 1.91 (3H, s), 6.50-6.52 (2H, m), 6.74 (1H, d, J=7Hz), 6.82 (4H, bs), 6.90 (1H, s), 7.0-7.2 (15H, m), 7.30 (2H, t, J=8Hz), 7.5-7.6 (4H, m), 7.69 (4H, bs), 7.99 (2H, d, J=8Hz).
元素分析、C54H44CuN3OP2としての計算値: C, 74.00; H, 5.06; N, 4.79
実測値: C, 73.9; H, 5.1; N, 4.7
【0063】
(実施例7)
錯体Gを以下の合成スキームに従って合成した。
【化22】
Ar雰囲気下、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)ベンゼン(1.0g, 2.24mmol)、水素化ナトリウム(60%, 96mg, 2.4mmol, 1.1eq)を無水THF(30ml)に懸濁し、2-(2-ピリジル)ベンズイミダゾール(pybimH、0.44g, 2.25mmol)を室温で少量ずつ添加した。反応混合物を室温で1時間撹拌後、塩化第一銅(0.22g, 2.22mmol)を加え、室温で3時間撹拌した。反応混合物をろ別し、ろ液を溶媒留去して黄色アモルファス固体を得た。これに少量のエーテルを加え、超音波処理すると固体になったので、ろ別し、ジクロロメタン+ヘキサン+エーテルの混合溶媒から3回再結晶することにより黄色板状晶として錯体G(0.51g, 33%)を得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3, TMS) δ 6.93-6.94 (1H, m), 7.0-7.5 (23H, m), 7.5-7.6 (5H, m), 7.74 (1H, t, J=8Hz), 7.85 (1H, d, J=8Hz), 8.51 (1H, d, J=6Hz).
元素分析、C42H32CuN3P2+0.5H2Oとしての計算値: C, 70.73; H, 4.66; N, 5.89
実測値: C, 70.7; H, 4.9; N, 5.8
【0064】
(実施例8)
錯体Hを以下の合成スキームに従って合成した。
【化23】
Ar雰囲気下、4,5-ビス(ジフェニルホスフィノ)-9,9-ジメチルキサンテン(1.00g, 1.73mmol)、水素化ナトリウム(60%, 80mg, 2.0mmol, 1.1eq)を無水THF(30ml)に懸濁し、2-(2-ピリジル)ベンズイミダゾール(pybimH、0.34g, 1.74mmol)を室温で少量ずつ添加した。反応混合物を室温で1時間撹拌後、塩化第一銅(0.17g, 1.72mmol)を加え、室温で3時間撹拌した。反応混合物をろ別し、ろ液を溶媒留去して黄色固体を得た。これをジクロロメタン+エーテルの混合溶媒から2回再結晶することにより黄色板状晶として錯体H(0.21g, 15%)を得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3, TMS) δ 1.70 (3H, s), 1.88 (3H, s), 6.35 (1H, d, J=8Hz), 6.41-6.64 (2H, m), 6.63 (1H, t, J=7Hz), 6.91-7.20 (24H, m), 7.58 (2H, dd, J=8Hz, 2Hz), 7.69 (1H, t, J=8Hz), 7.75 (1H, d, J=8Hz), 8.01 (1H, d, J=5Hz), 8.52 (1H, d, J=8Hz).
元素分析、C51H40CuN3OP2としての計算値: C, 73.24; H, 4.82; N, 5.02、
実測値: C, 72.9; H, 5.1; N, 4.9
【0065】
(実施例9)
錯体Iを以下の合成スキームに従って合成した。
【化24】
Ar雰囲気下、2,2'-ビス(ジフェニルホスフィノ)ジフェニルエーテル(1.39g, 2.53mmol)、水素化ナトリウム(60%, 0.11g, 2.75mmol, 1.1eq)を無水THF(30ml)に懸濁し、2-(2-ピリジル)ベンズイミダゾール(pybimH、0.49g, 2.51mmol)を室温で少量ずつ添加した。反応混合物を室温で1時間撹拌後、塩化第一銅(0.25g, 2.53mmol)を加え、室温で3時間撹拌した。反応混合物をろ別し、ろ液を溶媒留去して緑色アモルファス固体を得た。これをジクロロメタン+エーテル+ヘキサンから再結晶し、続いてジクロロメタン+トルエンの混合溶媒から再結晶することにより緑色板状晶として錯体I(1.68g, 84%)を得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3, TMS) δ 6.74 6.76 (2H, m), 6.81 (1H, t, J=8Hz), 6.90 (2H,t, J=8Hz), 7.0-7.2 (22H, m), 7.33 (1H,d, J=8Hz), 7.64 (1H, t, J=8Hz), 7.77 (1H, d , J=8Hz), 7.94 (1H,d , J=5Hz), 8.45 (1H, d, J=8Hz).
元素分析、C51H40CuN3OP2+0.4PhMeとしての計算値: C, 73.24; H, 4.74; N, 5.04、
実測値: C, 73.0; H, 5.1; N, 4.8
【0066】
(実施例10)
錯体Jを以下の合成スキームに従って合成した。
【化25】
6-ブロモピコリン酸(5.0g, 24.2mmol)、炭酸カリウム(3.76g, 27.2mmol, 1.1eq.)をN,N-ジメチルホルムアミド(DMF、60ml)に懸濁し、沃化エチル(4ml, 48.8mmol, 2eq.)を加え、室温で1時間撹拌後、55℃で7時間加熱した。反応混合物を水(150ml)で希釈し、エーテルで抽出した。有機層を水(50ml x 3)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥、溶媒留去して無色オイルを得た。これをカラムクロマトグラフィ(シリカゲル/ヘキサン、続いてヘキサン+50%ジクロロメタン、最後にジクロロメタンのみ)で精製して無色オイルとして6-ブロモピコリン酸エチル(5.4g, 95%)を得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3, TMS) δ 1.43 (3H, t, J=8Hz), 4.47 (2H, q, J=8Hz), 7.66 (1H, dd, J=8Hz, 1Hz), 7.70 (1H, t, J=8Hz), 8.08 (1H, dd, J=7Hz, 1Hz).
【0067】
Ar雰囲気下、6-ブロモピコリン酸エチル(3.85g, 16.7mmol)、1,1'-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンパラジウムジクロリド(PdCl2(dppf)、0.27g, 0.33mmol, 2%Pd)にプロピル臭化亜鉛(PrZnBr)のTHF溶液(0.5mol/l, 50ml, 25.0mmol, 1.5eq.)を加え、室温で2時間撹拌後、55℃で6時間加熱した。反応混合物に炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて、ジクロロメタンで抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥、溶媒留去して赤褐色オイルを得た。これをカラムクロメトグラフィ(シリカゲル/ヘキサン+50%ジクロロメタン、続いてジクロロメタン、最後にヘキサン+8%酢酸エチル)で精製して黄色オイルとして6-プロピルピコリン酸エチル(1.18g, 37%)を得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3, TMS) δ 1.78 (3H, t, J=7Hz), 1.43 (3H, t, J=7Hz), 1.78 (2H, sextet, J=7Hz), 2.88 (2H, t, J=7Hz), 4.47 (2H, q, J-=7Hz), 7.32 (1H,d, J=8Hz), 7.72 (1H, t, J=8Hz), 7.93 (1H, d, J=8Hz).
【0068】
Ar雰囲気下、水素化ナトリウム(60%, 0.3g, 7.5mmol)を無水THF(30ml)に懸濁し、これに室温で3,3-ジメチル-2-ブタノン(MeCOtBu、0.92ml, 7.44mmol, 1.3eq)を少量ずつ加えた。水素ガスの発生が収まるまで室温で20分撹拌し、反応混合物を60℃に加熱した。これに、6-プロピル-2-ピリジンカルボン酸エチル(1.1g, 5.69mmol)の無水THF溶液(15ml)を少量ずつ滴下し、70℃で20分撹拌した。反応混合物を放冷後、氷浴で冷却し、希塩酸を少量ずつ加えてpH=8〜9に調整した。エーテルで抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥、溶媒留去して黄色オイルを得た。これをエタノール(20ml)に溶かし、ヒドラジン1水和物(0.59g, 11.8mmol)のエタノール溶液(15ml)をゆっくり加え、2時間還流した。反応混合物を放冷し、溶媒留去後、残渣をジクロロメタンに溶かし、飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥、溶媒留去して黄色オイルを得た。これをカラムクロマトグラフィ(シリカゲル/ジクロロメタン、続いてジクロロメタン+8%酢酸エチル、最後にジクロロメタン+1%メタノール)で精製して淡黄色固体として5-(6-プロピル-2-ピリジル)-3-t-ブチルピラゾール(1.13g, 82%)を得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3, TMS) δ 0.98 (3H, t, J=7Hz), 1.40 (9H, s), 1.79 (2H, sextet, J=7Hz), 2.78 (2H, t, J=7Hz), 6.60 (1H, s), 7.04 (1H, d, J=8Hz), 7.49 (1H, d, J=8Hz), 7.60 (1H, t, J=8Hz).
【0069】
Ar雰囲気下、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)ベンゼン(dppbz、1.01g, 2.17mmol)、水素化ナトリウム(60%, 97mg, 2.43mmol, 1.1eq)を無水THF(35ml)に懸濁し、5-(6-プロピル-2-ピリジル)-3-t-ブチルピラゾール(0.54g, 2.22mmol)の無水THF溶液(15ml)を室温で滴下した。反応混合物を室温で1時間撹拌後、塩化第一銅(0.22g, 2.22mmol)を加え、室温で3時間撹拌した。反応混合物をろ別し、ろ液を溶媒留去して黄緑色アモルファス固体を得た。これに少量のエーテルを加え、超音波処理すると固体になったので、ろ別し、エーテル+ヘキサンの混合溶媒から再結晶することにより淡黄色結晶として錯体J(0.79g, 53%)を得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3, TMS) δ -0.07 (3H, t, J=7Hz), 0.89 (2H, sextet, J=7Hz), 1.55 (9H, s), 1.68 (2H, t, J=7Hz), 6.55 (1H, s), 6.61 (1H, d, J=8Hz), 7.3-7.5 (24H, m), 7.63 (2H, m).
元素分析、C45H44CuN3P2としての計算値: C, 71.84; H, 5.89; N, 5.59、
実測値: C, 71.7; H, 6.3; N, 5.5
【0070】
(実施例11)
錯体Kを以下の合成スキームに従って合成した。
【化26】
Ar雰囲気下、4,5-ビス(ジフェニルホスフィノ)-9,9-ジメチルキサンテン(XantPhos、1.07g, 1.85mmol)、水素化ナトリウム(60%, 85mg, 2.1mmol, 1.1eq)を無水THF(30ml)に懸濁し、5-(6-プロピル-2-ピリジル)-3-t-ブチルピラゾール(0.45g, 1.85mmol)の無水THF溶液(10ml)を室温で滴下した。反応混合物を室温で1時間撹拌後、塩化第一銅(0.18g, 1.82mmol)を加え、室温で3時間撹拌した。反応混合物をろ別し、ろ液を溶媒留去して淡褐色固体を得た。これをヘキサン+ジエチルエーテルの混合溶媒から1回、ヘキサン+エタノールから1回再結晶することにより淡緑色板状晶として錯体K(0.31g, 19%)を得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3, TMS) δ -0.15 (3H, t, J=7Hz), 0.96 (2H, sextet, J=7Hz), 1.26 (9H, s), 1.45 (3H, s), 1.89 (3H, s), 2.12 (2H, t, J=7Hz), 6.24 (1H, s), 6.54-6.56 (2H, m), 6.7-6.8 (5H, m), 6.9-7.1 (14H, m), 7.32 (1H, d, J=8Hz), 7.48 (2H, d, J=8Hz), 7.54 (1H, t, J=8Hz), 7.77 (4H, bs).
元素分析、C54H52CuN3OP2+EtOHとしての計算値: C, 73.33; H, 5.93; N, 4.75、
実測値: C, 72.1; H, 6.2; N, 4.5
【0071】
(実施例12)
錯体Lを以下の合成スキームに従って合成した。
【化27】
6-メチルピリジン-2-カルボキサルデヒド(2.05g, 16.9mmol)、o-フェニレンジアミン(1.82g, 16.0mmol)を水(130ml)に懸濁し、炭酸カリウム(3.42g, 24.7mmol)を加えて室温で20分撹拌した。これに、沃化カリウム(0.69g, 4.16mmol)と沃素(0.98g, 3.86mmol)の水溶液を加え、続いて沃素(3.21g, 12.6mmol)を少量ずつ加えた。反応混合物を90℃で50分撹拌し、室温まで放冷した後、5%チオ硫酸ナトリウム水溶液を加えて未反応の沃素を失活させた。反応混合物を酢酸エチルで抽出し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥、溶媒留去後、カラムクロマグラフィ(シリカゲル/ヘキサン+50%ジクロロメタン、続いてヘキサン+5%酢酸エチル)で精製して淡褐色固体として2-(6-メチル-2-ピリジル)ベンズイミダゾール(1.23g, 37%)を得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3, TMS) δ 2.62 (3H, s), 7.22 (1H, d, J=8Hz), 7.28-7.30 (2H, m), 7.47-7.49 (1H, m), 7.74 (1H, t, J=8Hz), 7.83-7.85 (1H, m), 8.23 (1H, d, J=8Hz).
【0072】
Ar雰囲気下、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)ベンゼン(dppbz、1.24g, 2.78mmol)、水素化ナトリウム(60%, 0.12g, 3.0mmol, 1.1eq)を無水THF(45ml)に懸濁し、2-(6-メチル-2-ピリジル)ベンズイミダゾール(0.58g, 2.77mmol)を室温で少量ずつ添加した。反応混合物を室温で1時間撹拌後、塩化第一銅(0.27g, 2.73mmol)を加え、室温で5時間撹拌した。反応混合物をろ別し、ろ液を溶媒留去して黄色アモルファス固体を得た。これに少量のエーテルを加えると固体になったので、ろ別し、トルエン+ヘキサンの混合溶媒から1回、ジクロロメタン+エーテルの混合溶媒から2回再結晶することにより黄緑色板状晶として錯体L(0.48g, 24%)を得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3, TMS) δ 1.68 (3H, s), 6.92 (1H, d, J=8Hz), 6.98 (1H, t, J=7Hz), 7.09-7.26 (18H, m), 7.49 (4H, bs), 7.54-7.57 (2H, m), 7.64-7.69 (3H, m), 7.86 (1H, d, J=8Hz), 8.42 (1H, d, J=8Hz).
元素分析、C43H34CuN3P2+0.3PhMeとしての計算値: C, 71.91; H, 4.77; N, 5.85、
実測値: C, 72.4; H, 5.2; N, 5.6
【0073】
(実施例13)
錯体Mを以下の合成スキームに従って合成した。
【化28】
Ar雰囲気下、4,5-ビス(ジフェニルホスフィノ)-9,9-ジメチルキサンテン(XantPhos、1.20g, 2.07mmol)、水素化ナトリウム(60%, 91mg, 2.28mmol, 1.1eq)を無水THF(35ml)に懸濁し、2-(6-メチル-2-ピリジル)ベンズイミダゾール(0.44g, 2.1mmol)を室温で少量ずつ添加した。反応混合物を室温で1時間撹拌後、塩化第一銅(0.20g, 2.02mmol)を加え、室温で3時間撹拌した。反応混合物をろ別し、ろ液を溶媒留去して黄色固体を得た。これをジクロロメタン+エーテルの混合溶媒から再結晶することにより黄色板状晶として錯体M(1.25g, 73%)を得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3, TMS) δ 1.67 (3H, s), 1.69 (3H, s), 1.85 (3H, s), 6.5-6.53 (2H, m), 6.85 (1H, d, J=7Hz), 6.87 (1H, t, J=8Hz), 6.93-7.08 (16H, m), 7.14-7.25 (8H, m), 7.54 (2H, d, J=8Hz), 7.67 (1H, t, J=8Hz), 7.75 (1H, d, J=8Hz), 8.44 (1H, d, J=8Hz).
元素分析、C52H42CuN3OP2としての計算値: C, 73.44; H, 4.98; N, 4.94、
実測値: C, 73.2; H, 5.2; N, 4.7
【0074】
(実施例14)
錯体Nを以下の合成スキームに従って合成した。
【化29】
Ar雰囲気下、6-ブロモピコリン酸エチル(3.0g, 13.0mmol)、フェニルボロン酸(1.98g, 16.2mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.3g, 0.26mmol, 2%Pd)を1,2-ジメトキシエタン(50ml)に溶かし、2M炭酸ナトリウム水溶液(4.19g, 39.5mmol, 3eq./20ml)を加えて8時間還流した。反応混合物をジクロロメタンで抽出し、有機層を分取、飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥、溶媒留去して黄色オイルを得た。これをカラムクロマトグラフィ(シリカゲル/ヘキサン+30%ジクロロメタン)で精製して淡黄色固体としてフェニルピコリン酸エチル(1.55g, 53%)を得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3, TMS) δ 1.47 (3H, t, J=7Hz), 4.49 (2H, q, J=7Hz), 7.42-7.51 (3H, m), 7.89-7.92 (2H, m), 8.04-8.09 (3H, m).
【0075】
Ar雰囲気下、水素化ナトリウム(60%, 0.34g, 8.5mmol)を無水THF(40ml)に懸濁し、これに室温で3,3-ジメチル-2-ブタノン(MeCOtBu、1.1ml, 8.9mmol, 1.3eq)を少量ずつ加えた。水素ガスの発生が収まるまで室温で20分撹拌し、反応混合物を60℃に加熱した。これに、6-フェニル-2-ピリジンカルボン酸エチル(1.5g, 6.6mmol)の無水THF溶液(20ml)を少量ずつ滴下し、70℃で20分撹拌した。反応混合物を放冷後、氷浴で冷却し、希塩酸を少量ずつ加えてpH=8〜9に調整した。エーテルで抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥、溶媒留去して黄色オイルを得た。これをエタノール(30ml)に溶かし、ヒドラジン1水和物(0.67g, 13.4mmol)のエタノール溶液(10ml)をゆっくり加え、2時間還流した。反応混合物を放冷し、溶媒留去後、残渣をジクロロメタンに溶かし、飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥、溶媒留去して黄色オイルを得た。これをカラムクロマトグラフィ(シリカゲル/ジクロロメタン、続いてジクロロメタン+1%メタノール)で精製して白色固体として5-(6-フェニル-2-ピリジル)-3-t-ブチルピラゾール(1.42g, 76%)を得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3, TMS) δ 1.40 (9H, s), 6.72 (1H, s), 7.43-7.51 (3H, m), 7.65 (2H, t, J=7Hz), 7.79 (1H, t, J=8Hz), 8.06 (2H, d, J=8Hz).
【0076】
Ar雰囲気下、4,5-ビス(ジフェニルホスフィノ)-9,9-ジメチルキサンテン(XantPhos、1.01g, 1.75mmol)、水素化ナトリウム(60%, 80mg, 2.0mmol, 1.1eq)を無水THF(40ml)に懸濁し、5-(6-フェニル-2-ピリジル)-3-t-ブチルピラゾール(0.48g, 1.73mmol)の無水THF溶液(10ml)を室温で滴下した。反応混合物を室温で1時間撹拌後、塩化第一銅(0.17g, 1.72mmol)を加え、室温で3時間撹拌した。反応混合物をろ別し、ろ液を溶媒留去して淡褐色固体を得た。これをジクロロメタン+ジエチルエーテルの混合溶媒から再結晶することにより淡黄色板状晶として錯体N(1.24g, 78%)を得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3, TMS) δ 1.27 (9H, s), 1.39 (3H, bs), 1.96 (3H, bs), 6.08 (2H, t, J=7Hz), 6.34-6.44 (4H, m), 6.82 (2H, bs), 7.00-7.49 (29H, m), 7.67-7.71 (4H, m).
元素分析、C57H50CuN3OP2としての計算値: C, 74.53; H, 5.49; N, 4.57、
実測値: C, 74.1; H, 5.8; N, 4.5
【0077】
(実施例15)
錯体Oを以下の合成スキームに従って合成した。
【化30】
Ar雰囲気下、2,3-ジブロモピリジン(8.73g, 36.9mmol)、ジフェニル(トリメチルシリル)ホスフィン(Me3SiPPh2、10g, 38.7mmol, 1.1eq)、ジクロロビス(アセトニトリル)パラジウム(II)(0.24g, 0.93mmol, 2.5%Pd)を無水トルエン(70ml)に溶かし、16時間還流した。反応混合物を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥、溶媒留去して褐色オイルを得た。これをカラムクロマトグラフィ(シリカゲル/ヘキサン+50%ジクロロメタン、続いてヘキサン+1%酢酸エチル)で精製して白色固体(8.0g, 63%)を得た。このものは2-(ジフェニルホスフィノ)-3-ブロモピリジンと2-ブロモ-3-(ジフェニルホスフィノ)ピリジンの混合物であることが1H-NMRから示唆されたが、このまま次の反応に用いた。
1H-NMR (400MHz, CDCl3, TMS) δ 7.08 (1H, dd, J=9Hz, 6Hz), 7.16 (1H, dd, J=7Hz, 4Hz), 7.33 (10H, s), 7.79-7.82 (1H, m), 7.91 (1H, dd, J=8Hz, 2Hz), 8.33 (1H, dd, J=5Hz, 2Hz), 8.56 (1H, d, J=4Hz).
FDMS, C17H13NBrPとしての計算値341、実測値m/z=341 (M+, 100), 682 (2M+, 14).
【0078】
Ar雰囲気下、2-(ジフェニルホスフィノ)-3-ブロモピリジン(4.12g, 12mmol)を無水エーテル(60ml)+無水THF(10ml)の混合溶媒に溶かし、ドライアイス/メタノール浴で-60℃に冷却した。これにn-ブチルリチウム/ヘキサン溶液(9ml, 14.4mmol, 1.2eq)を滴下し、-40℃で30分撹拌した。反応混合物を-60℃に冷却し、クロロジフェニルホスフィン(2.7ml, 14.7mmol)のエーテル溶液(10ml)を滴下し、冷却浴をとりはずし、室温で一晩放置した。反応混合物を脱気したイオン交換水で失活し、ジクロロメタンで抽出、有機層を飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥、溶媒留去して褐色オイルを得た。これをカラムクロマトグラフィ(シリカゲル/ヘキサン+50%ジクロロメタン、続いてヘキサン+5%酢酸エチル)で精製して淡黄色固体として2,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)ピリジン(1.5g, 28%)を得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3, TMS) δ 7.09-7.35 (22H, m), 8.64 (1H, d, J=5Hz).
【0079】
Ar雰囲気下、2,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)ピリジン(0.75g, 1.87mmol)、水素化ナトリウム(60%, 75mg, 1.88mmol, 1.1eq)を無水THF(45ml)に懸濁し、5-(6-メチル-2-ピリジル)-3-t-ブチルピラゾール (pypz、0.36g, 1.67mmol)の無水THF溶液(10ml)を室温で滴下した。反応混合物を室温で1時間撹拌後、塩化第一銅(0.16g, 1.62mmol)を加え、室温で3時間撹拌した。反応混合物をろ別し、ろ液を溶媒留去して淡黄色アモルファス固体を得た。これをヘキサンで洗浄することにより淡黄色固体として錯体O(0.83g, 71%)を得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3, TMS) δ 1.40 (3H, s), 1.55 (9H, s), 6.58 (1H, s), 6.59 (1H, d, J=6Hz), 7.09-7.32 (18H, m), 7.37 (1H, d, J=8Hz), 7.44 (1H, t, J=8Hz), 7.88-8.28 (4H, m), 8.85-8.86 (1H, m).
元素分析、C42H39CuN4P2としての計算値: C, 69.55; H, 5.42; N, 7.72、
実測値: C, 70.0; H, 5.8; N, 7.5
【0080】
(比較例1)
特開2006-286749に例示されている下記錯体RをZ. Naturforsch. B, 58, 950 (2003).に準じて合成し、比較例として用いた。
【化31】
【0081】
<評価>
上記実施例1〜8、10〜15及び比較例1で得られた錯体A〜H,J〜O及びRの粉末状態における発光量子収率、発光極大波長及び発光寿命を測定した。各測定に用いた装置を以下に示す。
発光極大波長および発光量子収率:
浜松ホトニクス社製、有機EL量子収率測定装置(C9920−01)
発光寿命:
浜松ホトニクス社製、ピコ秒蛍光寿命測定装置(C4780)
【0082】
錯体A〜H,J〜O及びRの発光量子収率、発光極大波長及び発光寿命の測定結果を、以下の表1に示す。また、錯体A〜H及びJ〜Oの粉末状態における発光スペクトルをそれぞれ図1〜14に示す。
【0083】
表1
【0084】
このように、比較例錯体Rが発光しなかったのに対し、錯体A〜H及びJ〜Oは、高収率に発光した。錯体A〜H及びJ〜Nの発光寿命は10ms以下の範囲内にあり、充分に速い応答を示すことがわかる。
【0085】
<有機エレクトロルミネッセンス素子の作製>
(実施例16)
錯体Aを用いて、基板/陽極/正孔注入層/発光層/正孔障壁層/電子輸送層/電子注入層/陰極からなる有機エレクトロルミネッセンス素子を作製した。25mm×75mm×1.1mm厚のITO透明電極付きガラス基板(ジオマティック社製)をイソプロピルアルコール中で超音波洗浄を5分間行なった後、UVオゾン洗浄を30分間行なって、電極−ガラス基板接合体を準備した。この接合体の上に、スピンコート法で正孔注入層に用いるポリエチレンジオキシチオフェン:ポリスチレンスルホン酸(PEDOT:PSS)を40nmの膜厚で成膜し、正孔注入層を得た。ついで発光層に用いる錯体Aおよびポリビニルカルバゾールとの混合物(錯体Aとポリビニルカルバゾールとの質量比は5:95)の1質量%クロロベンゼン溶液を用いてPEDOT:PSSの正孔注入層上に発光層をスピンコート法で成膜し、発光層を得た。この発光層の膜厚は70nmであった。続いて、成膜された上記基板を真空蒸着装置の基板ホルダーに装着し、膜厚20nmのバソクプロイン(BCP)、続いて膜厚20nmのトリス(8-ヒドロキシキノリン)アルミニウム(Alq)を真空蒸着法により成膜した。このBCP膜は、正孔障壁層として機能し、Alq膜は電子輸送層として機能する。更に、膜厚1nmのふっ化リチウムを真空蒸着法により成膜し、電子注入層とした。最後にアルミニウム陰極を真空蒸着法により成膜し、有機エレクトロルミネッセンス素子を作製した。
【0086】
<評価>
上記実施例16で得られた有機エレクトロルミネッセンス素子を用い、Al電極をマイナス、ITO電極をプラスにして直流電圧15Vを印加したところ、32cd/m2の緑色発光が観測された。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】錯体Aの発光スペクトルを示す。
【図2】錯体Bの発光スペクトルを示す。
【図3】錯体Cの発光スペクトルを示す。
【図4】錯体Dの発光スペクトルを示す。
【図5】錯体Eの発光スペクトルを示す。
【図6】錯体Fの発光スペクトルを示す。
【図7】錯体Gの発光スペクトルを示す。
【図8】錯体Hの発光スペクトルを示す。
【図9】錯体Jの発光スペクトルを示す。
【図10】錯体Kの発光スペクトルを示す。
【図11】錯体Lの発光スペクトルを示す。
【図12】錯体Mの発光スペクトルを示す。
【図13】錯体Nの発光スペクトルを示す。
【図14】錯体Oの発光スペクトルを示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される単核1価銅錯体。
【化1】
(式中、XおよびYはそれぞれ独立にNまたはCR6であり、R1〜R6はそれぞれ独立に、水素、ハロゲン、C1〜C40の置換もしくは無置換のアルキル基、C2〜C40の置換もしくは無置換のアルケニル基、C6〜C40の置換もしくは無置換のアリール基、C3〜C40の置換もしくは無置換のヘテロアリール基、C1〜C40の置換もしくは無置換のアルコキシ基、C6〜C40の置換もしくは無置換のアリールオキシ基、C1〜C40の置換もしくは無置換のアルキルチオ基であり、R1〜R6のうち隣接する基は互いに結合して環を形成してもよく、L1およびL2はそれぞれ独立に、窒素、燐及び砒素から選ばれる元素を含む配位子であり、L1とL2が互いに結合して2座配位子を形成してもよい。)
【請求項2】
XがCR6であり、YがNである請求項1に記載の銅錯体。
【請求項3】
XがNであり、YがCR6である請求項1に記載の銅錯体。
【請求項4】
L1およびL2がそれぞれ独立に窒素及び燐から選ばれる元素を含む配位子であり、互いに結合して2座配位子を形成している、請求項1〜3の何れか1項に記載の銅錯体。
【請求項5】
L1およびL2が互いに結合した2座配位子であり、該配位子が、下記式(2)の2座ホスフィンを形成している、請求項1〜4の何れか1項に記載の銅錯体。
【化2】
(式中、R10〜R13はそれぞれ独立に水素、ハロゲン、C1〜C40の置換もしくは無置換のアルキル基、C2〜C40の置換もしくは無置換のアルケニル基、C6〜C40の置換もしくは無置換のアリール基、C3〜C40の置換もしくは無置換のヘテロアリール基、C1〜C40の置換もしくは無置換のアルコキシ基、C6〜C40の置換もしくは無置換のアリールオキシ基、C1〜C40の置換もしくは無置換のアルキルチオ基であり、R10とR11及び/又はR12とR13は互いに結合して環を形成してもよく、QはC1〜C6の置換もしくは無置換のアルキリデン基、C2〜C6の置換もしくは無置換のアルケニリデン基、C6〜C40の置換もしくは無置換のアリーレン基、C3〜C40の置換もしくは無置換のヘテロアリーレン基である。)
【請求項6】
Qが、ハロゲン、C1〜C40の置換もしくは無置換のアルキル基、C6〜C40の置換もしくは無置換のアリール基で置換されてもよい下記構造;
【化3】
から選ばれる有機基である、請求項5に記載の銅錯体。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか1項に記載の銅錯体を含有する発光材料。
【請求項8】
請求項1〜6の何れか1項に記載の銅錯体を含有する有機エレクトロルミネッセンス素子用材料。
【請求項9】
陰極と、陽極と、該陰極と該陽極との間に挟持された1層または複数層からなる有機層とを含み、該有機層が少なくとも発光層を含み、及び、該有機層の少なくとも1層が、請求項8に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料を含む有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項10】
請求項9に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を有する装置。
【請求項1】
下記式(1)で表される単核1価銅錯体。
【化1】
(式中、XおよびYはそれぞれ独立にNまたはCR6であり、R1〜R6はそれぞれ独立に、水素、ハロゲン、C1〜C40の置換もしくは無置換のアルキル基、C2〜C40の置換もしくは無置換のアルケニル基、C6〜C40の置換もしくは無置換のアリール基、C3〜C40の置換もしくは無置換のヘテロアリール基、C1〜C40の置換もしくは無置換のアルコキシ基、C6〜C40の置換もしくは無置換のアリールオキシ基、C1〜C40の置換もしくは無置換のアルキルチオ基であり、R1〜R6のうち隣接する基は互いに結合して環を形成してもよく、L1およびL2はそれぞれ独立に、窒素、燐及び砒素から選ばれる元素を含む配位子であり、L1とL2が互いに結合して2座配位子を形成してもよい。)
【請求項2】
XがCR6であり、YがNである請求項1に記載の銅錯体。
【請求項3】
XがNであり、YがCR6である請求項1に記載の銅錯体。
【請求項4】
L1およびL2がそれぞれ独立に窒素及び燐から選ばれる元素を含む配位子であり、互いに結合して2座配位子を形成している、請求項1〜3の何れか1項に記載の銅錯体。
【請求項5】
L1およびL2が互いに結合した2座配位子であり、該配位子が、下記式(2)の2座ホスフィンを形成している、請求項1〜4の何れか1項に記載の銅錯体。
【化2】
(式中、R10〜R13はそれぞれ独立に水素、ハロゲン、C1〜C40の置換もしくは無置換のアルキル基、C2〜C40の置換もしくは無置換のアルケニル基、C6〜C40の置換もしくは無置換のアリール基、C3〜C40の置換もしくは無置換のヘテロアリール基、C1〜C40の置換もしくは無置換のアルコキシ基、C6〜C40の置換もしくは無置換のアリールオキシ基、C1〜C40の置換もしくは無置換のアルキルチオ基であり、R10とR11及び/又はR12とR13は互いに結合して環を形成してもよく、QはC1〜C6の置換もしくは無置換のアルキリデン基、C2〜C6の置換もしくは無置換のアルケニリデン基、C6〜C40の置換もしくは無置換のアリーレン基、C3〜C40の置換もしくは無置換のヘテロアリーレン基である。)
【請求項6】
Qが、ハロゲン、C1〜C40の置換もしくは無置換のアルキル基、C6〜C40の置換もしくは無置換のアリール基で置換されてもよい下記構造;
【化3】
から選ばれる有機基である、請求項5に記載の銅錯体。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか1項に記載の銅錯体を含有する発光材料。
【請求項8】
請求項1〜6の何れか1項に記載の銅錯体を含有する有機エレクトロルミネッセンス素子用材料。
【請求項9】
陰極と、陽極と、該陰極と該陽極との間に挟持された1層または複数層からなる有機層とを含み、該有機層が少なくとも発光層を含み、及び、該有機層の少なくとも1層が、請求項8に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料を含む有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項10】
請求項9に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を有する装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2008−303152(P2008−303152A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−149307(P2007−149307)
【出願日】平成19年6月5日(2007.6.5)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月5日(2007.6.5)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]