新規BMP−12関連タンパク質およびその製造方法
本発明は、その製造方法を含めて、新規BMP−12関連タンパク質を提供する。このタンパク質には、置換、切断および置換−切断されたBMP−12関連タンパク質が含まれる。置換BMP−12関連タンパク質は、1つまたは複数の酸化感受性メチオニン残基の、ノルロイシンなどの非メチオニン残基での置換を含有する。置換BMP−12関連タンパク質は、置換されていないタンパク質と比較して正常な生物活性および増強された酸化耐性を示す。切断されたBMP−12関連タンパク質は増強された活性を示す。
【図1】
【図1】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、その全体が参照により組み込まれている、2008年6月9日に出願の米国仮特許出願第61/059,870号の先出願日の優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は、ペプチド成長因子の分野に関する。具体的には、本発明は、腱およびまたは靱帯様組織の誘導活性を有する新規BMP−12関連タンパク質、ならびにその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
トランスフォーミング成長因子−β(TGF−β)スーパーファミリーのメンバーは、生理的に重要な成長調節および形態形成特性を保有する(Kingsleyら、Genes Dev.、8:133〜146(1994)、Hoodlessら、Curr.Topics Microbiol.Immunol.、228:235〜272(1998))。骨形成タンパク質(BMP)は、成長および分化因子のTGF−βスーパーファミリーのメンバーである(Rosenら、Principles of Bone Biology、2:919〜928(2002))。BMPが存在するという最初の証拠の一部は、筋肉内に移植した際に脱ミネラル化した骨が新しい骨を誘導する能力である(Uristら、Science、150:893〜99(1965))。続いてBMPを脱ミネラル化した骨から生化学的に精製し(Wangら、PNAS、85:9484〜9488(1988))、精製したタンパク質のペプチド断片から設計した、放射標識したオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションによってクローニングした(Wozneyら、Science、242:1528〜1534(1988))。クローニングしたBMPを組換えによって発現させ、その機能を保持させた。たとえば、大腸菌(E.coli)において発現される、組換え成熟BMP−2(アミノ酸283〜396)は、in vitro(Ruppertら、Euro.J.Biochem.、237:295〜302(1996))およびin vivo(Kublerら、Int.J.Oral Maxillofacial Surgery、27:305〜09(1998))のどちらにおいても骨刺激活性を示す。
【0004】
既知のBMPの相同体をスクリーニングすることによってさらなるBMPをクローニングし、骨、結合組織、腎臓、心臓、および神経の組織の成長および分化の誘導を含めた、広範囲の活性を保有することが示された(Rengachary、Neurosrug.Focus、13(6):1〜6(2002))。
【0005】
BMP−12、BMP−13、およびMP−52(それぞれGDF7、6、および5として知られる)が含まれるBMP−12関連タンパク質は、腱および/または靱帯形成活性を保有するBMPの亜属である(Stormら、Nature、368:639〜643(1994)、Wolfmanら、J.Clin.Invest.、100:321〜330(1997)、および国際公開WO95/16035号)。in vivoでは、このタンパク質は大きなプレプロタンパク質として合成され、タンパク質分解によってプロセッシングされて、それぞれ約120〜130個の残基の長さの2つのサブユニットを含有する、成熟した生物活性のある二量体タンパク質が生じる。BMP−12の成熟型は、大腸菌(E.coli)などの細菌細胞中で組換えによって産生することができる。
【0006】
腱および/または靱帯の傷害の共通部位には、前十字靱帯(Laurenceinら、Annu.Rev.Biomed.Eng.、1:19〜46(1999))、アキレス腱(MazzoneおよびMcCue、Am.Fam.Physician、65:1805〜10(2002))、回旋腱板、および手の屈筋腱(Boyerら、J.Hand Ther.、18:80〜85(2005))が含まれる。腱または靱帯様組織の他の病源には、身体のほとんどの臓器および組織を貫通、支持および包囲する靱帯様筋膜組織の傷害、不全、または先天性の欠損が含まれる。筋膜組織の損傷は、ヘルニアまたは臓器脱出、たとえば膀胱、子宮、または直腸の脱出をもたらす場合がある。
【0007】
腱および/または靱帯様組織の異所性成長に影響を与えるBMP−12関連タンパク質の能力に加えて(WO95/16035号、Wolfmanら、1997、およびHelmら、J.Neurosurg.、95:298〜307(2001)を参照)、BMP−12およびその関連タンパク質はこれらの組織の修復を増強することが示されている。たとえば、BMP−12は、回旋腱板(Archambaultら、5th Comb.Mtg.Ortho.Res.Soc.Canada,USA,Japan,and Europe、講演番号128、(2004))、膝蓋腱(Archambaultら、5th Comb.Mtg.Ortho.Res.Soc.Canada,USA,Japan,and Europe、ポスター番号197、(2004))、および深屈筋腱(flexor profundus tendon)(Louら、J.Ortho.Res.、19:1199〜1202(2001))の動物モデルにおける修復を改善させた。同様に、MP−52(GDF−5)は、アキレス腱欠損において治癒を刺激した(Rickertら、Growth Factors、19:115〜26(2001))。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
天然のhBMP−12は成熟タンパク質の位置84および121にメチオニン残基を含有する。これら2つのメチオインは、BMP−12のほとんどの種で保存され、ヒトBMP−12関連タンパク質−BMP−12、BMP−13、およびMP−52間でも保存されており、タンパク質中で重要な機能的役割を果たすことが示唆される。しかし、注意深くプロセス制御を行わなければ、これらのメチオニンはBMP−12関連タンパク質の大スケール産生の間に特に酸化されやすく、タンパク質の失活がもたらされる。したがって、大スケール産生を受け入れやすく、かつその腱および/または靱帯様組織の誘導活性を維持するBMP−12関連タンパク質が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、酸化失活に対する耐性が増加した新規BMP−12および関連タンパク質を提供する。これらのタンパク質に基づいた治療剤の拡大する必要性を満たすために、本発明のBMP−12関連タンパク質は高スループット産生を特に受け入れやすい。本発明は、部分的に、1つまたは複数の天然のメチオニン残基が非メチオニン残基で置換された成熟BMP−12タンパク質(「置換BMP−12関連タンパク質」)が、酸化による失活に対する耐性の増加を示すだけでなく、そのin vitro活性も維持したという驚くべき発見に基づく。これらの残基が高度に保存されており、したがって、一般にタンパク質の活性に重要であると考えられることに鑑みて、このことは特に驚くべきである。
【0010】
したがって、一態様では、本発明は、腱および/または靱帯様組織の形成を誘導することができる置換BMP−12関連タンパク質を提供する。置換BMP−12関連タンパク質は、成熟BMP−12関連タンパク質のメチオニンに対応する残基での少なくとも1つのアミノ酸置換を有する。一部の実施形態では、置換は配列番号1のメチオニン84に対応する残基であり得る。他の実施形態では、置換は配列番号1のメチオニン121に対応する残基であり得る。さらなる実施形態では、配列番号1のメチオニン84および121の両方に対応する残基で置換が存在し得る。
【0011】
一部の実施形態では、置換BMP−12関連タンパク質のメチオニン残基は、ノルロイシン、ロイシン、イソロイシン、バリン、アラニン、またはフェニルアラニンから選択されるアミノ酸で置換されている。より具体的な実施形態では、メチオニン残基はノルロイシン、ロイシン、またはイソロイシンで置換されている。さらにより具体的な実施形態では、メチオニン残基はノルロイシンで置換されている。2つ以上のメチオニンの置換を有する置換BMP−12関連タンパク質は、同じ残基でメチオニンのそれぞれが置換されているか、または異なる残基でメチオニンのそれぞれが置換されていてよい。
【0012】
特定の実施形態では、置換BMP−12関連タンパク質は、配列番号1、3、または4のいずれか1つと少なくとも90%同一の配列を含み、腱および/または靱帯様組織を誘導することができる。一部の実施形態では、BMP−12関連タンパク質はBMP−12である。他の実施形態では、BMP−12関連タンパク質はBMP−13である。さらに他の実施形態では、BMP−12関連タンパク質はMP−52である。一部の実施形態では、本発明の置換BMP−12関連タンパク質には、少なくとも1つの切断されたサブユニット、すなわち、二量体タンパク質のうちの1つの単量体が含まれ、1〜27個の長さのアミノ酸のN末端切断を有する(「置換−切断されたBMP−12関連タンパク質」)。特定の実施形態では、N末端切断は最大22個、たとえば、18または7個のアミノ酸の長さである。一部の実施形態では、本発明は、少なくとも1つの切断されたサブユニットを有するが、配列番号1のメチオニン84または121に対応する残基でどのような置換も含有しないBMP−12関連タンパク質を提供する(「切断されたBMP−12関連タンパク質」)。
【0013】
一部の実施形態では、本発明の置換BMP−12関連タンパク質は組成物の一部である。特定の実施形態では、組成物は、配列番号1のメチオニン84および121に対応する残基にメチオニンを有し、腱および/または靱帯様組織の形成を誘導することができるBMP−12関連タンパク質をさらに含む。一部の実施形態では、組成物は適切な医薬担体をさらに含む。
【0014】
特定の実施形態では、置換BMP−12関連タンパク質は、組成物中のBMP−12関連タンパク質の少なくとも0.1%、1%、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、99.9%、またはそれより多くを構成し得る。特定の実施形態では、組成物は細菌中での発酵によって産生する。一部の実施形態では、細菌は、メチオニン制限、ロイシン制限、ノルロイシン過剰、およびその組合せからなる群から選択される条件下で培養する。
【0015】
別の態様では、本発明は、有効量の本発明の医薬組成物を投与することを含む、対象において腱または靱帯の欠損を治療する方法を提供する。
【0016】
別の態様では、本発明は、本発明の置換BMP−12関連タンパク質をコードしている核酸を提供する。一実施形態では、核酸は、配列番号2のヌクレオチド4〜390と少なくとも90%同一の配列を含む。
【0017】
特定の実施形態では、核酸は置換BMP−12関連タンパク質をコードしており、メチオニン残基は、ロイシン、イソロイシン、バリン、アラニン、またはフェニルアラニンからなる群から選択されるアミノ酸で置換されている。より具体的な実施形態では、メチオニン残基は、ロイシンまたはイソロイシンで置換されている。特定の実施形態では、本発明によって提供される核酸は、ベクターまたは宿主細胞中に含有される。特定の実施形態では、宿主細胞は細菌である。より具体的な実施形態では、細菌は大腸菌(E.coli)である。
【0018】
本明細書中に組み込まれており、その一部を構成する添付の図面は、本発明のいくつかの実施形態を例示し、説明と共に本発明の原理を説明する役割を果たす。
【0019】
配列の簡単な説明
配列番号1は、成熟ヒトBMP−12のアミノ酸配列である。
【0020】
配列番号2は、成熟ヒトBMP−12をコードしている核酸配列である。この配列には、成熟タンパク質中に存在しない残基をコードしている、「atg」開始コドンおよび2つの「taa」終止コドンが含まれる。この配列の翻訳を配列番号9に提供する。
【0021】
配列番号3は、成熟ヒトBMP−13のアミノ酸配列である。
【0022】
配列番号4は、成熟ヒトMP−52のアミノ酸配列である。
【0023】
配列番号5および6は、BMP−12 T10ペプチドの配列である。
【0024】
配列番号7および8は、BMP−12 T12ペプチドの配列である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【技術分野】
【0001】
本出願は、その全体が参照により組み込まれている、2008年6月9日に出願の米国仮特許出願第61/059,870号の先出願日の優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は、ペプチド成長因子の分野に関する。具体的には、本発明は、腱およびまたは靱帯様組織の誘導活性を有する新規BMP−12関連タンパク質、ならびにその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
トランスフォーミング成長因子−β(TGF−β)スーパーファミリーのメンバーは、生理的に重要な成長調節および形態形成特性を保有する(Kingsleyら、Genes Dev.、8:133〜146(1994)、Hoodlessら、Curr.Topics Microbiol.Immunol.、228:235〜272(1998))。骨形成タンパク質(BMP)は、成長および分化因子のTGF−βスーパーファミリーのメンバーである(Rosenら、Principles of Bone Biology、2:919〜928(2002))。BMPが存在するという最初の証拠の一部は、筋肉内に移植した際に脱ミネラル化した骨が新しい骨を誘導する能力である(Uristら、Science、150:893〜99(1965))。続いてBMPを脱ミネラル化した骨から生化学的に精製し(Wangら、PNAS、85:9484〜9488(1988))、精製したタンパク質のペプチド断片から設計した、放射標識したオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションによってクローニングした(Wozneyら、Science、242:1528〜1534(1988))。クローニングしたBMPを組換えによって発現させ、その機能を保持させた。たとえば、大腸菌(E.coli)において発現される、組換え成熟BMP−2(アミノ酸283〜396)は、in vitro(Ruppertら、Euro.J.Biochem.、237:295〜302(1996))およびin vivo(Kublerら、Int.J.Oral Maxillofacial Surgery、27:305〜09(1998))のどちらにおいても骨刺激活性を示す。
【0004】
既知のBMPの相同体をスクリーニングすることによってさらなるBMPをクローニングし、骨、結合組織、腎臓、心臓、および神経の組織の成長および分化の誘導を含めた、広範囲の活性を保有することが示された(Rengachary、Neurosrug.Focus、13(6):1〜6(2002))。
【0005】
BMP−12、BMP−13、およびMP−52(それぞれGDF7、6、および5として知られる)が含まれるBMP−12関連タンパク質は、腱および/または靱帯形成活性を保有するBMPの亜属である(Stormら、Nature、368:639〜643(1994)、Wolfmanら、J.Clin.Invest.、100:321〜330(1997)、および国際公開WO95/16035号)。in vivoでは、このタンパク質は大きなプレプロタンパク質として合成され、タンパク質分解によってプロセッシングされて、それぞれ約120〜130個の残基の長さの2つのサブユニットを含有する、成熟した生物活性のある二量体タンパク質が生じる。BMP−12の成熟型は、大腸菌(E.coli)などの細菌細胞中で組換えによって産生することができる。
【0006】
腱および/または靱帯の傷害の共通部位には、前十字靱帯(Laurenceinら、Annu.Rev.Biomed.Eng.、1:19〜46(1999))、アキレス腱(MazzoneおよびMcCue、Am.Fam.Physician、65:1805〜10(2002))、回旋腱板、および手の屈筋腱(Boyerら、J.Hand Ther.、18:80〜85(2005))が含まれる。腱または靱帯様組織の他の病源には、身体のほとんどの臓器および組織を貫通、支持および包囲する靱帯様筋膜組織の傷害、不全、または先天性の欠損が含まれる。筋膜組織の損傷は、ヘルニアまたは臓器脱出、たとえば膀胱、子宮、または直腸の脱出をもたらす場合がある。
【0007】
腱および/または靱帯様組織の異所性成長に影響を与えるBMP−12関連タンパク質の能力に加えて(WO95/16035号、Wolfmanら、1997、およびHelmら、J.Neurosurg.、95:298〜307(2001)を参照)、BMP−12およびその関連タンパク質はこれらの組織の修復を増強することが示されている。たとえば、BMP−12は、回旋腱板(Archambaultら、5th Comb.Mtg.Ortho.Res.Soc.Canada,USA,Japan,and Europe、講演番号128、(2004))、膝蓋腱(Archambaultら、5th Comb.Mtg.Ortho.Res.Soc.Canada,USA,Japan,and Europe、ポスター番号197、(2004))、および深屈筋腱(flexor profundus tendon)(Louら、J.Ortho.Res.、19:1199〜1202(2001))の動物モデルにおける修復を改善させた。同様に、MP−52(GDF−5)は、アキレス腱欠損において治癒を刺激した(Rickertら、Growth Factors、19:115〜26(2001))。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
天然のhBMP−12は成熟タンパク質の位置84および121にメチオニン残基を含有する。これら2つのメチオインは、BMP−12のほとんどの種で保存され、ヒトBMP−12関連タンパク質−BMP−12、BMP−13、およびMP−52間でも保存されており、タンパク質中で重要な機能的役割を果たすことが示唆される。しかし、注意深くプロセス制御を行わなければ、これらのメチオニンはBMP−12関連タンパク質の大スケール産生の間に特に酸化されやすく、タンパク質の失活がもたらされる。したがって、大スケール産生を受け入れやすく、かつその腱および/または靱帯様組織の誘導活性を維持するBMP−12関連タンパク質が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、酸化失活に対する耐性が増加した新規BMP−12および関連タンパク質を提供する。これらのタンパク質に基づいた治療剤の拡大する必要性を満たすために、本発明のBMP−12関連タンパク質は高スループット産生を特に受け入れやすい。本発明は、部分的に、1つまたは複数の天然のメチオニン残基が非メチオニン残基で置換された成熟BMP−12タンパク質(「置換BMP−12関連タンパク質」)が、酸化による失活に対する耐性の増加を示すだけでなく、そのin vitro活性も維持したという驚くべき発見に基づく。これらの残基が高度に保存されており、したがって、一般にタンパク質の活性に重要であると考えられることに鑑みて、このことは特に驚くべきである。
【0010】
したがって、一態様では、本発明は、腱および/または靱帯様組織の形成を誘導することができる置換BMP−12関連タンパク質を提供する。置換BMP−12関連タンパク質は、成熟BMP−12関連タンパク質のメチオニンに対応する残基での少なくとも1つのアミノ酸置換を有する。一部の実施形態では、置換は配列番号1のメチオニン84に対応する残基であり得る。他の実施形態では、置換は配列番号1のメチオニン121に対応する残基であり得る。さらなる実施形態では、配列番号1のメチオニン84および121の両方に対応する残基で置換が存在し得る。
【0011】
一部の実施形態では、置換BMP−12関連タンパク質のメチオニン残基は、ノルロイシン、ロイシン、イソロイシン、バリン、アラニン、またはフェニルアラニンから選択されるアミノ酸で置換されている。より具体的な実施形態では、メチオニン残基はノルロイシン、ロイシン、またはイソロイシンで置換されている。さらにより具体的な実施形態では、メチオニン残基はノルロイシンで置換されている。2つ以上のメチオニンの置換を有する置換BMP−12関連タンパク質は、同じ残基でメチオニンのそれぞれが置換されているか、または異なる残基でメチオニンのそれぞれが置換されていてよい。
【0012】
特定の実施形態では、置換BMP−12関連タンパク質は、配列番号1、3、または4のいずれか1つと少なくとも90%同一の配列を含み、腱および/または靱帯様組織を誘導することができる。一部の実施形態では、BMP−12関連タンパク質はBMP−12である。他の実施形態では、BMP−12関連タンパク質はBMP−13である。さらに他の実施形態では、BMP−12関連タンパク質はMP−52である。一部の実施形態では、本発明の置換BMP−12関連タンパク質には、少なくとも1つの切断されたサブユニット、すなわち、二量体タンパク質のうちの1つの単量体が含まれ、1〜27個の長さのアミノ酸のN末端切断を有する(「置換−切断されたBMP−12関連タンパク質」)。特定の実施形態では、N末端切断は最大22個、たとえば、18または7個のアミノ酸の長さである。一部の実施形態では、本発明は、少なくとも1つの切断されたサブユニットを有するが、配列番号1のメチオニン84または121に対応する残基でどのような置換も含有しないBMP−12関連タンパク質を提供する(「切断されたBMP−12関連タンパク質」)。
【0013】
一部の実施形態では、本発明の置換BMP−12関連タンパク質は組成物の一部である。特定の実施形態では、組成物は、配列番号1のメチオニン84および121に対応する残基にメチオニンを有し、腱および/または靱帯様組織の形成を誘導することができるBMP−12関連タンパク質をさらに含む。一部の実施形態では、組成物は適切な医薬担体をさらに含む。
【0014】
特定の実施形態では、置換BMP−12関連タンパク質は、組成物中のBMP−12関連タンパク質の少なくとも0.1%、1%、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、99.9%、またはそれより多くを構成し得る。特定の実施形態では、組成物は細菌中での発酵によって産生する。一部の実施形態では、細菌は、メチオニン制限、ロイシン制限、ノルロイシン過剰、およびその組合せからなる群から選択される条件下で培養する。
【0015】
別の態様では、本発明は、有効量の本発明の医薬組成物を投与することを含む、対象において腱または靱帯の欠損を治療する方法を提供する。
【0016】
別の態様では、本発明は、本発明の置換BMP−12関連タンパク質をコードしている核酸を提供する。一実施形態では、核酸は、配列番号2のヌクレオチド4〜390と少なくとも90%同一の配列を含む。
【0017】
特定の実施形態では、核酸は置換BMP−12関連タンパク質をコードしており、メチオニン残基は、ロイシン、イソロイシン、バリン、アラニン、またはフェニルアラニンからなる群から選択されるアミノ酸で置換されている。より具体的な実施形態では、メチオニン残基は、ロイシンまたはイソロイシンで置換されている。特定の実施形態では、本発明によって提供される核酸は、ベクターまたは宿主細胞中に含有される。特定の実施形態では、宿主細胞は細菌である。より具体的な実施形態では、細菌は大腸菌(E.coli)である。
【0018】
本明細書中に組み込まれており、その一部を構成する添付の図面は、本発明のいくつかの実施形態を例示し、説明と共に本発明の原理を説明する役割を果たす。
【0019】
配列の簡単な説明
配列番号1は、成熟ヒトBMP−12のアミノ酸配列である。
【0020】
配列番号2は、成熟ヒトBMP−12をコードしている核酸配列である。この配列には、成熟タンパク質中に存在しない残基をコードしている、「atg」開始コドンおよび2つの「taa」終止コドンが含まれる。この配列の翻訳を配列番号9に提供する。
【0021】
配列番号3は、成熟ヒトBMP−13のアミノ酸配列である。
【0022】
配列番号4は、成熟ヒトMP−52のアミノ酸配列である。
【0023】
配列番号5および6は、BMP−12 T10ペプチドの配列である。
【0024】
配列番号7および8は、BMP−12 T12ペプチドの配列である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
腱および/または靱帯様組織の形成を誘導することができる、配列番号1のメチオニン84および/またはメチオニン121に対応する残基での少なくとも1つのアミノ酸置換を含む置換BMP−12関連タンパク質。
【請求項2】
配列番号1と少なくとも90%同一の配列を含む、請求項1に記載の置換BMP−12関連タンパク質。
【請求項3】
配列番号3と少なくとも90%同一の配列を含む、請求項1に記載の置換BMP−12関連タンパク質。
【請求項4】
配列番号4と少なくとも90%同一の配列を含む、請求項1に記載の置換BMP−12関連タンパク質。
【請求項5】
配列番号1のメチオニン84に対応する残基でのアミノ酸置換を有する、請求項1に記載の置換BMP−12関連タンパク質。
【請求項6】
配列番号1のメチオニン121に対応する残基でのアミノ酸置換を有する、請求項1に記載の置換BMP−12関連タンパク質。
【請求項7】
配列番号1のメチオニン84に対応する残基でのアミノ酸置換およびメチオニン121に対応する残基でのアミノ酸置換を有する、請求項1に記載の置換BMP−12関連タンパク質。
【請求項8】
配列番号1のメチオニン84および/またはメチオニン121に対応する残基でのアミノ酸置換が、ノルロイシン、ロイシン、イソロイシン、バリン、アラニン、およびフェニルアラニンからなる群から選択される残基である、請求項1に記載の置換BMP−12関連タンパク質。
【請求項9】
配列番号1のメチオニン84および/またはメチオニン121に対応する残基でのアミノ酸置換が、ノルロイシン、ロイシン、およびイソロイシンからなる群から選択される残基である、請求項8に記載の置換BMP−12関連タンパク質。
【請求項10】
配列番号1のメチオニン84および/またはメチオニン121に対応する残基でのアミノ酸置換がノルロイシン残基である、請求項9に記載の置換BMP−12関連タンパク質。
【請求項11】
1〜27個のアミノ酸のN末端切断を有する少なくとも1つの切断されたサブユニットを含む、請求項1に記載の置換BMP−12関連タンパク質。
【請求項12】
1〜22個のアミノ酸のN末端切断を有する少なくとも1つの切断されたサブユニットを含む、請求項11に記載の置換BMP−12関連タンパク質。
【請求項13】
1〜18個のアミノ酸のN末端切断を有する少なくとも1つの切断されたサブユニットを含む、請求項12に記載の置換BMP−12関連タンパク質。
【請求項14】
1〜7個のアミノ酸のN末端切断を有する少なくとも1つの切断されたサブユニットを含む、請求項13に記載の置換BMP−12関連タンパク質。
【請求項15】
腱および/または靱帯様組織の形成を誘導することができる、1〜27個のアミノ酸のN末端切断を有する少なくとも1つの切断されたサブユニットを含むBMP−12関連タンパク質。
【請求項16】
切断されたサブユニットが1〜22個のアミノ酸のN末端切断を有する、請求項15に記載のBMP−12関連タンパク質。
【請求項17】
切断されたサブユニットが1〜18個のアミノ酸のN末端切断を有する、請求項16に記載のBMP−12関連タンパク質。
【請求項18】
切断されたサブユニットが1〜7個のアミノ酸のN末端切断を有する、請求項17に記載のBMP−12関連タンパク質。
【請求項19】
切断されたサブユニットが配列番号1と少なくとも90%同一の配列を含む、請求項15に記載のBMP−12関連タンパク質。
【請求項20】
切断されたサブユニットが配列番号3と少なくとも90%同一の配列を含む、請求項15に記載のBMP−12関連タンパク質。
【請求項21】
切断されたサブユニットが配列番号4と少なくとも90%同一の配列を含む、請求項15に記載のBMP−12関連タンパク質。
【請求項22】
配列番号1のメチオニン84および/またはメチオニン121に対応する残基での少なくとも1つのアミノ酸置換を有する、請求項15に記載のBMP−12関連タンパク質。
【請求項23】
i)腱および/または靱帯様組織の誘導活性を有するBMP−12関連タンパク質をコードしている核酸配列を含む宿主細胞を培養するステップと、
ii)腱および/または靱帯様組織の形成を誘導することができる、配列番号1のメチオニン84および/またはメチオニン121に対応する残基での少なくとも1つのアミノ酸置換を含む置換BMP−12関連タンパク質を回収するステップと
を含む、置換BMP−12関連タンパク質を産生する方法。
【請求項24】
置換BMP−12関連タンパク質が配列番号1と少なくとも90%同一の配列を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
核酸が配列番号2のヌクレオチド4〜390と少なくとも90%同一の配列を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
BMP−12関連タンパク質が配列番号3と少なくとも90%同一の配列を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
BMP−12関連タンパク質が配列番号4と少なくとも90%同一の配列を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
宿主細胞が細菌である、請求項23に記載の方法。
【請求項29】
細菌が大腸菌(E.coli)である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
細菌を、メチオニン制限、ロイシン制限、ノルロイシン過剰、およびその組合せからなる群から選択される条件下で培養する、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
置換BMP−12関連タンパク質が1〜27個のアミノ酸のN末端切断を有する少なくとも1つの切断されたサブユニットを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項32】
i)腱および/または靱帯様組織の誘導活性を有するBMP−12関連タンパク質をコードしている核酸を含む宿主細胞を培養するステップと、
ii)腱および/または靱帯様組織の形成を誘導することができる、1〜27個のアミノ酸のN末端切断を有する少なくとも1つの切断されたサブユニットを含むBMP−12関連タンパク質を回収するステップと
を含む、切断されたサブユニットを含むBMP−12関連タンパク質を産生する方法。
【請求項33】
BMP−12関連タンパク質が配列番号1と少なくとも90%同一の配列を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
核酸が配列番号2のヌクレオチド4〜390と少なくとも90%同一の配列を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
BMP−12関連タンパク質が配列番号3と少なくとも90%同一の配列を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項36】
BMP−12関連タンパク質が配列番号4と少なくとも90%同一の配列を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項37】
宿主細胞が細菌である、請求項32に記載の方法。
【請求項38】
細菌が大腸菌(E.coli)である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
請求項1から14のいずれか一項に記載の置換BMP−12関連タンパク質をコードしている核酸。
【請求項40】
配列番号1のメチオニン84および/またはメチオニン121に対応する残基でのアミノ酸置換が、ロイシン、イソロイシン、バリン、アラニン、およびフェニルアラニンからなる群から選択される残基である、請求項39に記載の核酸。
【請求項41】
請求項15から23のいずれか一項に記載のBMP−12関連タンパク質をコードしている核酸。
【請求項42】
腱および/または靱帯様組織の形成を誘導することができる、配列番号1のメチオニン84および/またはメチオニン121に対応する残基での少なくとも1つのアミノ酸置換を含む置換BMP−12関連タンパク質を含む組成物。
【請求項43】
置換BMP−12関連タンパク質が配列番号1と少なくとも90%同一の配列を含む、請求項42に記載の組成物。
【請求項44】
置換BMP−12関連タンパク質が配列番号3と少なくとも90%同一の配列を含む、請求項42に記載の組成物。
【請求項45】
置換BMP−12関連タンパク質が配列番号4と少なくとも90%同一の配列を含む、請求項42に記載の組成物。
【請求項46】
配列番号1のメチオニン84および/またはメチオニン121に対応する残基での少なくとも1つのアミノ酸置換が、ノルロイシン、ロイシン、イソロイシン、バリン、アラニン、およびフェニルアラニンからなる群から選択される、請求項42に記載の組成物。
【請求項47】
配列番号1のメチオニン84および/またはメチオニン121に対応する残基での少なくとも1つのアミノ酸置換が、ノルロイシン、ロイシン、およびイソロイシンからなる群から選択される非メチオニン残基である、請求項46に記載の組成物。
【請求項48】
細菌の発酵産物である、請求項42に記載の組成物。
【請求項49】
細菌が、配列番号2のヌクレオチド4〜390と少なくとも90%同一の配列を含む核酸によってコードされているタンパク質を発現する、請求項48に記載の組成物。
【請求項50】
細菌を、メチオニン制限、ロイシン制限、ノルロイシン過剰、およびその組合せからなる群から選択される条件下で増殖させる、請求項48に記載の組成物。
【請求項51】
細菌が大腸菌(E.coli)である、請求項48に記載の組成物。
【請求項52】
配列番号1と少なくとも90%同一の配列を含み、腱および/または靱帯様組織の形成を誘導する能力を有するBMP−12関連タンパク質をさらに含む、請求項42に記載の組成物。
【請求項53】
配列番号3と少なくとも90%同一の配列を含み、腱および/または靱帯様組織の形成を誘導する能力を有するBMP−12関連タンパク質をさらに含む、請求項42に記載の組成物。
【請求項54】
配列番号4と少なくとも90%同一の配列を含み、腱および/または靱帯様組織の形成を誘導する能力を有するBMP−12関連タンパク質をさらに含む、請求項42に記載の組成物。
【請求項55】
置換BMP−12関連タンパク質が全BMP−12関連タンパク質の少なくとも約1%を含む、請求項52から54のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項56】
置換BMP−12関連タンパク質が全BMP−12関連タンパク質の少なくとも約5%を含む、請求項55に記載の組成物。
【請求項57】
置換BMP−12関連タンパク質が全BMP−12関連タンパク質の少なくとも約10%を含む、請求項56に記載の組成物。
【請求項58】
置換BMP−12関連タンパク質が全BMP−12関連タンパク質の少なくとも約20%を含む、請求項57に記載の組成物。
【請求項59】
置換BMP−12関連タンパク質が全BMP−12関連タンパク質の少なくとも約50%を含む、請求項58に記載の組成物。
【請求項60】
本質的にBMP−12関連タンパク質からなる、請求項52から54のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項61】
少なくとも約10重量%のBMP−12関連タンパク質を含む、請求項52から54のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項62】
発酵産物である、請求項61に記載の組成物。
【請求項63】
適切な医薬担体をさらに含む、請求項42、または52から54のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項64】
請求項1から14のいずれか一項に記載の置換BMP−12関連タンパク質と適切な医薬担体とを含む医薬組成物。
【請求項65】
請求項15から23のいずれか一項に記載のBMP−12関連タンパク質と適切な医薬担体とを含む医薬組成物。
【請求項66】
有効量の請求項64に記載の医薬組成物を投与することを含む、対象において腱または靱帯様組織の疾患または欠損を治療する方法。
【請求項67】
有効量の請求項65に記載の医薬組成物を投与することを含む、対象において腱または靱帯様組織の疾患または欠損を治療する方法。
【請求項68】
請求項23から38のいずれか一項に記載の方法によって作製する生成物。
【請求項69】
医薬品の調製における、請求項1から22のいずれか一項に記載のタンパク質、請求項39から41のいずれか一項に記載の核酸、請求項42から65のいずれか一項に記載の組成物、または請求項68に記載の生成物の使用。
【請求項70】
医薬品を、対象における腱または靱帯様組織の疾患または欠損の治療に使用する、請求項69に記載の使用。
【請求項1】
腱および/または靱帯様組織の形成を誘導することができる、配列番号1のメチオニン84および/またはメチオニン121に対応する残基での少なくとも1つのアミノ酸置換を含む置換BMP−12関連タンパク質。
【請求項2】
配列番号1と少なくとも90%同一の配列を含む、請求項1に記載の置換BMP−12関連タンパク質。
【請求項3】
配列番号3と少なくとも90%同一の配列を含む、請求項1に記載の置換BMP−12関連タンパク質。
【請求項4】
配列番号4と少なくとも90%同一の配列を含む、請求項1に記載の置換BMP−12関連タンパク質。
【請求項5】
配列番号1のメチオニン84に対応する残基でのアミノ酸置換を有する、請求項1に記載の置換BMP−12関連タンパク質。
【請求項6】
配列番号1のメチオニン121に対応する残基でのアミノ酸置換を有する、請求項1に記載の置換BMP−12関連タンパク質。
【請求項7】
配列番号1のメチオニン84に対応する残基でのアミノ酸置換およびメチオニン121に対応する残基でのアミノ酸置換を有する、請求項1に記載の置換BMP−12関連タンパク質。
【請求項8】
配列番号1のメチオニン84および/またはメチオニン121に対応する残基でのアミノ酸置換が、ノルロイシン、ロイシン、イソロイシン、バリン、アラニン、およびフェニルアラニンからなる群から選択される残基である、請求項1に記載の置換BMP−12関連タンパク質。
【請求項9】
配列番号1のメチオニン84および/またはメチオニン121に対応する残基でのアミノ酸置換が、ノルロイシン、ロイシン、およびイソロイシンからなる群から選択される残基である、請求項8に記載の置換BMP−12関連タンパク質。
【請求項10】
配列番号1のメチオニン84および/またはメチオニン121に対応する残基でのアミノ酸置換がノルロイシン残基である、請求項9に記載の置換BMP−12関連タンパク質。
【請求項11】
1〜27個のアミノ酸のN末端切断を有する少なくとも1つの切断されたサブユニットを含む、請求項1に記載の置換BMP−12関連タンパク質。
【請求項12】
1〜22個のアミノ酸のN末端切断を有する少なくとも1つの切断されたサブユニットを含む、請求項11に記載の置換BMP−12関連タンパク質。
【請求項13】
1〜18個のアミノ酸のN末端切断を有する少なくとも1つの切断されたサブユニットを含む、請求項12に記載の置換BMP−12関連タンパク質。
【請求項14】
1〜7個のアミノ酸のN末端切断を有する少なくとも1つの切断されたサブユニットを含む、請求項13に記載の置換BMP−12関連タンパク質。
【請求項15】
腱および/または靱帯様組織の形成を誘導することができる、1〜27個のアミノ酸のN末端切断を有する少なくとも1つの切断されたサブユニットを含むBMP−12関連タンパク質。
【請求項16】
切断されたサブユニットが1〜22個のアミノ酸のN末端切断を有する、請求項15に記載のBMP−12関連タンパク質。
【請求項17】
切断されたサブユニットが1〜18個のアミノ酸のN末端切断を有する、請求項16に記載のBMP−12関連タンパク質。
【請求項18】
切断されたサブユニットが1〜7個のアミノ酸のN末端切断を有する、請求項17に記載のBMP−12関連タンパク質。
【請求項19】
切断されたサブユニットが配列番号1と少なくとも90%同一の配列を含む、請求項15に記載のBMP−12関連タンパク質。
【請求項20】
切断されたサブユニットが配列番号3と少なくとも90%同一の配列を含む、請求項15に記載のBMP−12関連タンパク質。
【請求項21】
切断されたサブユニットが配列番号4と少なくとも90%同一の配列を含む、請求項15に記載のBMP−12関連タンパク質。
【請求項22】
配列番号1のメチオニン84および/またはメチオニン121に対応する残基での少なくとも1つのアミノ酸置換を有する、請求項15に記載のBMP−12関連タンパク質。
【請求項23】
i)腱および/または靱帯様組織の誘導活性を有するBMP−12関連タンパク質をコードしている核酸配列を含む宿主細胞を培養するステップと、
ii)腱および/または靱帯様組織の形成を誘導することができる、配列番号1のメチオニン84および/またはメチオニン121に対応する残基での少なくとも1つのアミノ酸置換を含む置換BMP−12関連タンパク質を回収するステップと
を含む、置換BMP−12関連タンパク質を産生する方法。
【請求項24】
置換BMP−12関連タンパク質が配列番号1と少なくとも90%同一の配列を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
核酸が配列番号2のヌクレオチド4〜390と少なくとも90%同一の配列を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
BMP−12関連タンパク質が配列番号3と少なくとも90%同一の配列を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
BMP−12関連タンパク質が配列番号4と少なくとも90%同一の配列を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
宿主細胞が細菌である、請求項23に記載の方法。
【請求項29】
細菌が大腸菌(E.coli)である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
細菌を、メチオニン制限、ロイシン制限、ノルロイシン過剰、およびその組合せからなる群から選択される条件下で培養する、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
置換BMP−12関連タンパク質が1〜27個のアミノ酸のN末端切断を有する少なくとも1つの切断されたサブユニットを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項32】
i)腱および/または靱帯様組織の誘導活性を有するBMP−12関連タンパク質をコードしている核酸を含む宿主細胞を培養するステップと、
ii)腱および/または靱帯様組織の形成を誘導することができる、1〜27個のアミノ酸のN末端切断を有する少なくとも1つの切断されたサブユニットを含むBMP−12関連タンパク質を回収するステップと
を含む、切断されたサブユニットを含むBMP−12関連タンパク質を産生する方法。
【請求項33】
BMP−12関連タンパク質が配列番号1と少なくとも90%同一の配列を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
核酸が配列番号2のヌクレオチド4〜390と少なくとも90%同一の配列を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
BMP−12関連タンパク質が配列番号3と少なくとも90%同一の配列を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項36】
BMP−12関連タンパク質が配列番号4と少なくとも90%同一の配列を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項37】
宿主細胞が細菌である、請求項32に記載の方法。
【請求項38】
細菌が大腸菌(E.coli)である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
請求項1から14のいずれか一項に記載の置換BMP−12関連タンパク質をコードしている核酸。
【請求項40】
配列番号1のメチオニン84および/またはメチオニン121に対応する残基でのアミノ酸置換が、ロイシン、イソロイシン、バリン、アラニン、およびフェニルアラニンからなる群から選択される残基である、請求項39に記載の核酸。
【請求項41】
請求項15から23のいずれか一項に記載のBMP−12関連タンパク質をコードしている核酸。
【請求項42】
腱および/または靱帯様組織の形成を誘導することができる、配列番号1のメチオニン84および/またはメチオニン121に対応する残基での少なくとも1つのアミノ酸置換を含む置換BMP−12関連タンパク質を含む組成物。
【請求項43】
置換BMP−12関連タンパク質が配列番号1と少なくとも90%同一の配列を含む、請求項42に記載の組成物。
【請求項44】
置換BMP−12関連タンパク質が配列番号3と少なくとも90%同一の配列を含む、請求項42に記載の組成物。
【請求項45】
置換BMP−12関連タンパク質が配列番号4と少なくとも90%同一の配列を含む、請求項42に記載の組成物。
【請求項46】
配列番号1のメチオニン84および/またはメチオニン121に対応する残基での少なくとも1つのアミノ酸置換が、ノルロイシン、ロイシン、イソロイシン、バリン、アラニン、およびフェニルアラニンからなる群から選択される、請求項42に記載の組成物。
【請求項47】
配列番号1のメチオニン84および/またはメチオニン121に対応する残基での少なくとも1つのアミノ酸置換が、ノルロイシン、ロイシン、およびイソロイシンからなる群から選択される非メチオニン残基である、請求項46に記載の組成物。
【請求項48】
細菌の発酵産物である、請求項42に記載の組成物。
【請求項49】
細菌が、配列番号2のヌクレオチド4〜390と少なくとも90%同一の配列を含む核酸によってコードされているタンパク質を発現する、請求項48に記載の組成物。
【請求項50】
細菌を、メチオニン制限、ロイシン制限、ノルロイシン過剰、およびその組合せからなる群から選択される条件下で増殖させる、請求項48に記載の組成物。
【請求項51】
細菌が大腸菌(E.coli)である、請求項48に記載の組成物。
【請求項52】
配列番号1と少なくとも90%同一の配列を含み、腱および/または靱帯様組織の形成を誘導する能力を有するBMP−12関連タンパク質をさらに含む、請求項42に記載の組成物。
【請求項53】
配列番号3と少なくとも90%同一の配列を含み、腱および/または靱帯様組織の形成を誘導する能力を有するBMP−12関連タンパク質をさらに含む、請求項42に記載の組成物。
【請求項54】
配列番号4と少なくとも90%同一の配列を含み、腱および/または靱帯様組織の形成を誘導する能力を有するBMP−12関連タンパク質をさらに含む、請求項42に記載の組成物。
【請求項55】
置換BMP−12関連タンパク質が全BMP−12関連タンパク質の少なくとも約1%を含む、請求項52から54のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項56】
置換BMP−12関連タンパク質が全BMP−12関連タンパク質の少なくとも約5%を含む、請求項55に記載の組成物。
【請求項57】
置換BMP−12関連タンパク質が全BMP−12関連タンパク質の少なくとも約10%を含む、請求項56に記載の組成物。
【請求項58】
置換BMP−12関連タンパク質が全BMP−12関連タンパク質の少なくとも約20%を含む、請求項57に記載の組成物。
【請求項59】
置換BMP−12関連タンパク質が全BMP−12関連タンパク質の少なくとも約50%を含む、請求項58に記載の組成物。
【請求項60】
本質的にBMP−12関連タンパク質からなる、請求項52から54のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項61】
少なくとも約10重量%のBMP−12関連タンパク質を含む、請求項52から54のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項62】
発酵産物である、請求項61に記載の組成物。
【請求項63】
適切な医薬担体をさらに含む、請求項42、または52から54のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項64】
請求項1から14のいずれか一項に記載の置換BMP−12関連タンパク質と適切な医薬担体とを含む医薬組成物。
【請求項65】
請求項15から23のいずれか一項に記載のBMP−12関連タンパク質と適切な医薬担体とを含む医薬組成物。
【請求項66】
有効量の請求項64に記載の医薬組成物を投与することを含む、対象において腱または靱帯様組織の疾患または欠損を治療する方法。
【請求項67】
有効量の請求項65に記載の医薬組成物を投与することを含む、対象において腱または靱帯様組織の疾患または欠損を治療する方法。
【請求項68】
請求項23から38のいずれか一項に記載の方法によって作製する生成物。
【請求項69】
医薬品の調製における、請求項1から22のいずれか一項に記載のタンパク質、請求項39から41のいずれか一項に記載の核酸、請求項42から65のいずれか一項に記載の組成物、または請求項68に記載の生成物の使用。
【請求項70】
医薬品を、対象における腱または靱帯様組織の疾患または欠損の治療に使用する、請求項69に記載の使用。
【図1】置換された種を有する(図1B)または有さない(図1A)BMP−12単量体の還元性RP−HPLCプロフィールを示す図である。図1Aは、配列番号1の残基1〜4として「TALA」および配列番号1の残基126〜129として「CGCR」を開示する。
【図2】置換された種を有する(図2B、2D)または有さない(図2A、2C)バッチの、精製したBMP−12単量体(図2A、2B)および可溶化した封入体(sIB)中に存在する未精製のBMP−12単量体(図2C、2D)の還元性RP−HPLCプロフィールを示す図である。「DS」とは薬原体(精製したBMP−12)をいう。
【図3】ロット174(図1B、置換された種を含有)およびロット148(図1A、置換された種を含まない)からのBMP−12単量体のペプチドマップを示す図である。ロット174中の新しいピークを点線によって示す。注記:cbm:カルバミル化、ox:酸化、d:脱アミド化。
【図4】トリプシン消化産物を含めた、成熟ヒトBMP−12単量体の配列を示す図である(配列番号1)。すべて大文字またはすべて小文字の残基の交互のストリングは、明白なトリプシンペプチドに対応する。
【図5】置換された種を含有しない(図5A)または含有する(図5B)BMP−12バッチのT10ペプチドのMS/MS断片化スペクトルを示す図である。図5Aおよび5Bは、それぞれ配列番号5〜6を出現順に開示する。
【図6】置換された種を含有しない(図6A)または含有する(図6B)BMP−12バッチのT12ペプチドのMS/MS断片化スペクトルを示す図である。図6Aおよび6Bは、それぞれ配列番号7〜8を出現順に開示する。
【図7】有意なレベルの置換された種を有する(174)および有さない(002)バッチにおける、細胞に基づいたBMP−応答エレメントルシフェラーゼ(BRE−luc)レポーターからの相対蛍光単位(RFU)をrhBMP−12濃度の関数として示す、当てはめた片対数プロットの図である。
【図8】様々なレベルの過酢酸(PAA)で処理した野生型BMP−12の単量体(部位あたり<5%の置換)の還元性RP−HPLCプロフィールを示す図である。2ox:両方のメチオニン残基が酸化されている、1ox:2個のメチオニン残基のうちの1個が酸化されている、0ox:酸化されていない。
【図9】様々なレベルのPAAで処理したBMP−12(二量体、部位あたり<5%の置換)の銀染色したSDS−PAGEトリシンゲルを示す写真である。
【図10】特異的活性(BRE−lucバイオアッセイによって決定)対様々なレベルのPAAで処理した高度に精製したBMP−12(二量体、部位あたり<5%の置換)の還元性RP−HPLC(図8)によって測定した酸化された種の合計%(一重および二重酸化された単量体種の合計)を示すプロットである。最小二乗回帰直線をプロット上に含める。
【図11】高(部位あたり25〜40%)および低(<5%)レベルの置換を有する試料について、二重酸化されたBMP−12に対応するRP−HPLCプロフィール上の%ピーク面積をPAA濃度の関数として示すプロットである。
【図12】低い(<5%)置換率を有するBMP−12のバッチおよび高い(25〜40%)置換率を有するBMP−12のバッチのプールについて、BRE−lucバイオアッセイで測定されたBMP−12の%対照(非処理)活性をPAA/BMP−12のモル比の関数として示すプロットである。
【図13】緩衝液単独(図13A)、切断された二量体BMP−12種を含有するバッチ(図13C、13D)、および含有しないバッチ(図13B)の非還元性SDS−CEの結果を示すプロットである。10kDaの内部標準を注記した。矢印は新しいプレピークを示す(図13C、13D)。IRM#1は参照物質である。
【図14】成熟BMP−12の23RGR...GCR129に対応するBMP−12の切断された単量体のナノESI QTOF MS/MSスペクトルを示す図である。図14は配列番号1を開示する。
【図15】トリプシンを用いて様々な酵素対基質比で処理したBMP−12のSDS−PAGEを示す写真である。
【図16】細胞に基づいたBMP−応答エレメントルシフェラーゼ(BRE−luc)レポーターからの相対蛍光単位(RFU)を、様々な度合のトリプシン誘導性切断を有する試料のrhBMP−12濃度の関数として示す、当てはめた片対数プロットである。アッセイで使用した試料のSDS−PAGEの写真の挿入図であり、切断されていない対照と比較した、それぞれの試料中に存在する切断の度合およびそれぞれの試料の推定効力を示す。
【図17】ヒトBMP−12、BMP−13、およびMP−52の成熟配列の複数の配列アラインメントを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
「BMP−12関連タンパク質」とは、腱および/または靱帯様組織の誘導活性を有しており、また、アミノ酸レベルで成熟BMP−12、BMP−13、またはMP−52(GDF7、6、および5としても知られる)タンパク質の配列と少なくとも70%、80%、90%、95%、97%、98%、99%、またはそれを超えて同一の配列を含む、2つのジスルフィドで連結された単量体サブユニットを含有する、二量体タンパク質である。本発明は、置換、切断、および置換かつ切断された(「置換−切断された」)BMP−12関連タンパク質、ならびにその製造方法を提供する。これらの新規BMP−12関連タンパク質は正常な生物活性および物理的特徴を示すが、特に大スケール産生中の、酸化による失活に対する耐性の増加を示す。
【0027】
一部の実施形態では、BMP−12関連タンパク質には、たとえばカルバミル化を含めた追加の修飾が含まれる場合がある。したがって、「カルバミル化されたBMP−12関連タンパク質」は少なくとも1つのカルバミル化されたサブユニットを含有する。一部の実施形態では、カルバミル化されたBMP−12関連タンパク質は2つのカルバミル化されたサブユニットを含有する。BMP−12関連タンパク質のカルバミル化は、タンパク質を高レベルの尿素と共にインキュベーションする精製際に起こる。尿素は、大腸菌(E.coli)から抽出したBMP−12関連タンパク質を含有する封入体の可溶化を支援する。カルバミル化はBMP−12関連タンパク質の活性に影響を与えないと考えられる。本明細書中で論じる本発明の置換、切断、または置換−切断されたBMP−12関連タンパク質のいずれかもカルバミル化し得る。
【0028】
BMP−12関連タンパク質および切断されたBMP−12関連タンパク質
「切断されたBMP−12関連タンパク質」は、二量体タンパク質の少なくとも1つのサブユニットのN末端から、少なくとも1個、3個、5個、7個、10個、15個、18個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、またはそれより多くの残基のN末端が切断されている。一部の実施形態では、切断されたBMP−12関連タンパク質は、1つの切断されたサブユニットを含有する。他の実施形態では、BMP−12関連タンパク質の両方のサブユニットが切断されている。これらの実施形態では、切断されたサブユニットは、必ずしもそうである必要はないが、長さまたは配列が同一であり得る。一部の実施形態では、切断は、BMP−12関連タンパク質サブユニットの成熟型のN末端に対応する残基から開始される。特定の実施形態では、切断は、配列番号1、3、または4のアミノ酸番号1に対応する残基から開始される。
【0029】
したがって、特定の実施形態では、切断されたBMP−12関連タンパク質は、配列番号1のアミノ酸28〜128、28〜129、23〜129、22〜129、19〜129、8〜129、7〜129、もしくは1〜129、または、配列番号3もしくは4の28〜119、28〜120、23〜120、19〜120、14〜120、13〜120、8〜120、7〜120、6〜120、もしくは1〜120に対応する残基を含むサブユニットを含有する。「に対応する残基」とは、参照残基と同じ機能的およびまたは構造的な役割に最も近い役割を果たす残基を意味する。これは、目視検査、スミス−ウォーターマン、BLAST、マルコフモデル、またはClustalWなどの配列アラインメントを含めた、当分野で知られている手段によって決定する。2つの配列を相同性によって比較する場合、%相同性はより短い配列の長さにわたるものであることを理解されたい。たとえば、BMP−12関連タンパク質が10個の残基のN末端切断を有し、配列番号1と90%同一である場合、切断されたタンパク質中の残基の90%が配列番号1に対応する。特定の実施形態では、BMP−12関連タンパク質は、少なくとも50、60、70、80、90、100、105、110、または115個の残基の長さである。本発明によって提供する切断されたBMP−12関連タンパク質のいずれかは、置換BMP−12関連タンパク質について以下に記載するメチオニン置換のいずれかを含有し得る。
【0030】
BMP−12関連タンパク質は、たとえば、ヒト、マカク、マウス、およびラットを含めた数々の種において同定されている。当分野で知られているように、これらの配列を、さらなる置換BMP−12関連タンパク質を調製するためのガイドとして使用することができる。BMP−12関連タンパク質間で保存されている残基またはモチーフは、その腱および/または靱帯様組織の形成活性に重要な傾向がある一方で、これらのタンパク質間で異なる残基およびモチーフは、タンパク質の腱および/または靱帯様組織の形成活性を破壊せずに改変できる可能性が高い。たとえば、国立バイオテクノロジー情報センター(National Center for Biotechnology Information、NCBI)のEntrez GeneID、およびいくつかの種由来のBMP−12関連タンパク質の参照タンパク質の受託番号(RefSeq)を記載する表1を参照されたい。これらのGeneIDを用いて、公に入手可能な注釈したmRNAまたはタンパク質の配列を、たとえばユニフォームリソースロケーター(URL):http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez?db=geneのNCBIウェブサイトから検索し得る。参照配列およびその関連する注釈を含めた、これらのGeneIDに関連する情報は、すべて参照により組み込まれている。
【0031】
【表1】
【0032】
さらに、図17は、成熟ヒトBMP−12、BMP−13、およびMP−52タンパク質の複数の配列アラインメントを提供する。シスチンノットモチーフに対応する保存されたシステイン残基をハイライトし、メチオニンに下線を引き太字で示した。示した配列は、完全長プレプロペプチドのNCBI RefSeq識別子である。
【0033】
置換BMP−12関連タンパク質
「置換BMP−12関連タンパク質」は、配列番号1のメチオニン残基84または121に対応する少なくとも1つの残基が非メチオニン残基で置き換えられており、腱および/または靱帯様組織の形成活性を保持している。これらの置換は、BMP−12関連タンパク質二量体の一方または両方のサブユニット中に存在し得る。したがって、特定の実施形態では、置換BMP−12関連タンパク質は、これらの部位で少なくとも1、2、3、または4個の非メチオニン置換を有する。BMP−12関連タンパク質サブユニットがさらなるメチオニンを含有する場合は、それらは非メチオニン残基で置換されていてもよい。これには、1〜2n個の置換が包含される[ただし、「n」は、成熟タンパク質サブユニット(単量体)中のメチオニンの合計数である]。たとえば、成熟BMP−13単量体は3個の天然のメチオニンを有する:それぞれ配列番号1のM84およびM121に対応する配列番号3のM75およびM112、ならびに配列番号1のL81に対応するM72。成熟MP−52単量体は4個の天然のメチオニンを有する:それぞれ配列番号1のM84およびM121に対応する配列番号4のM75およびM112、ならびに配列番号1のL40およびL81に対応する配列番号4のM31およびM72。本発明の置換BMP−12関連タンパク質中では、これらのメチオニンのいずれかまたはすべてが、非メチオニンアミノ酸残基で置換されていてよい。
【0034】
置換によりタンパク質の腱および/または靱帯様組織の形成活性が保持される限りは、メチオニンを置換するアミノ酸残基には、19種の典型的な天然に存在する非メチオニンアミノ酸、任意の非典型的なアミノ酸(たとえば、ノルロイシンまたはノルバリン)、ならびにアミノ酸類似体、誘導体、および修飾体のいずれかが含まれ得る。特定の実施形態では、置換は、ノルロイシン、ロイシン、イソロイシン、バリン、アラニン、およびフェニルアラニンからなる群から選択される。より具体的な実施形態では、置換は、ノルロイシン、ロイシン、およびイソロイシンからなる群から選択される。一部の実施形態では、BMP−12関連タンパク質中の1つまたは複数のメチオニンはノルロイシンで置換されている。
【0035】
生物活性
BMP−12関連タンパク質の活性を測定するための様々な方法が当分野で知られている。これらには、BMP−12関連タンパク質が細胞の観察可能な表現型を変化させる、たとえば、適切な宿主細胞における腱および/もしくは靱帯様組織に関連する形態学的変化、またはマウスL6細胞における筋芽細胞分化の阻害に影響を与える、細胞に基づいたアッセイが含まれる(BMP−12について示したInadaら、Biochem Biophys.Res.Comm.、222:317〜22(1996))。腱および/または靱帯様組織の誘導活性を検出するための別のモダリティーは異所性移植である。ここでは、BMP−12関連タンパク質を含有するカプセルを宿主動物内に1〜2週間の間移植し、回収し、カプセルの内容物を、たとえば腱および/または靱帯様組織の存在について組織学的に評価する(米国特許第6,150,328号の実施例III、SampathおよびReddi、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、80:6591〜6595(1983))。
【0036】
BMP−12関連タンパク質の活性は、レポーター分子の発現(すなわち転写または翻訳)を監視することによっても抽出することができる。これには、細胞に基づいたBMP−応答エレメント−ルシフェラーゼ(BRE−luc)レポーターの構築体(BREの論述については、Kusanagiら、Mol.Bio.Cell、11:555〜65(2000)を参照)またはBMP−12応答性細胞における特徴的なBMP−12関連タンパク質誘導性発現プロフィールが含まれる。参照により組み込まれている2009年2月26日に出願の米国特許出願第12/393,628号は、細胞に基づいたアッセイにおけるBMP−12(および関連)タンパク質活性のさらなる検出方法を教示している。この方法には、たとえばBMP−12を含有する試験試料に対する用量応答曲線を計算することによって、トロンボスポンジン−4(THBS4、ヒト(Homo sapiens)、GeneID7060)を含めたBMP−12関連活性マーカーのレベルを検出および/または測定することが含まれる。
【0037】
新規BMP−12関連タンパク質の産生方法
本発明の置換、切断、または置換−切断されたBMP−12関連タンパク質は、たとえば、タンパク質合成の前および/またはその間に発酵条件を制御して自発性の置換を生じさせること、遺伝子操作、化学合成、ならびに酵素処理によるものを含めた、当分野で知られている様々な手段によって産生することができる。
【0038】
メチオニン残基での置換に影響を与える発酵条件には、メチオニン制限、ロイシン制限、ノルロイシン過剰(たとえばメチオニンと比較して)、およびその組合せが含まれる。ノルロイシンとは、炭素原子がメチオニンの単一の硫黄原子を置き換えるメチオニン類似体である。ノルロイシンはメチオニルtRNA合成酵素の低親和性(メチオニンと比較して)の基質であり、これら2個のアミノ酸の相対的な存在量が質量作用による置換率に影響を与える場合があるという学説が立てられている。たとえば、メチオニンに対するノルロイシンの過剰は、ノルロイシンの置換率を増加させることができる。
【0039】
したがって、一部の実施形態では、置換BMP−12関連タンパク質は、ノルロイシンがメチオニンのモル濃度過剰にある条件下において、発酵で産生させることができる。ノルロイシンまたは別の適切な酸化耐性メチオニン類似体は、メチオニンと比較して少なくとも1.1、1.2、1.5、1.8、2、4、8、10、20、40、50、80、100、200、400、500、800、1000倍、またはそれより多くのモル濃度過剰であり得る。ノルロイシンは、タンパク質合成の前またはその間に発酵培地に加え得る。あるいは、またはそれに加えて、1つまたは複数のノルロイシン前駆体をタンパク質合成の前またはその間に発酵培地に加えることができる。
【0040】
ロイシン合成経路がノルロイシン産生を司っているため、ロイシンの存在量はノルロイシンの合成速度に影響を与える場合がある(Kisumiら、Appl.Envir.Microbiol.、34:135〜138(1977)およびKisumiら、J.Biochem.、80:333〜330(1976))。たとえば、ロイシンが制限されている場合は、ロイシン生合成経路が活性化され、ノルロイシンが合成される。逆に、ロイシン生合成経路が非活性である場合は(たとえば、増殖培地中の過剰のロイシンが原因)、ノルロイシン合成が低下または中止される。
【0041】
したがって、一部の実施形態では、細胞は、ロイシン生合成経路の活性化を支持することが知られている条件、たとえば、ロイシンなし、低ロイシン、またはロイシン制限の培地中での増殖の下で増殖させ得る。たとえば、標準の増殖条件下よりも、少なくとも50%、80%、90%、99%、または少なくとも1、2、5、10、20、40、100、500倍少ないロイシンが存在し得る。一部の標準細菌増殖条件におけるロイシン濃度は、約30〜120mg/L、たとえば約60mg/Lであり得る。一部の実施形態では、発酵培地は補充ロイシンを含有しない。一部の実施形態では、細胞を、タンパク質合成の前に遊離ロイシンの利用可能なプールを消失または枯渇させるための期間の間、増殖させる。たとえば、アミノ酸源、たとえば酵母抽出物またはタンパク質加水分解物を含有する増殖培地は、たとえばタンパク質合成を誘導する前の宿主細胞の増殖期を延長することによって、アミノ酸を枯渇させることができる。一部の実施形態では、宿主細胞は、野生型宿主細胞と比較して1つまたは複数のロイシン生合成遺伝子の発現レベルが上昇していてもよく、それにより、たとえば、たとえば抑制解除が原因でロイシン生合成経路の構成的活性化がもたらされる。
【0042】
一部の実施形態では、宿主細胞は、メチオニンなし、低メチオニン、またはメチオニン制限の条件下で増殖させ得る。たとえば、標準の増殖条件下よりも、少なくとも50%、80%、90%、99%、または少なくとも1、2、5、10、20、40、100、500倍少ないメチオニンが存在し得る。一部の標準の細菌増殖条件におけるメチオニン濃度は、約10〜40mg/L、たとえば約20mg/Lであり得る。一部の実施形態では、発酵培地は補充メチオニンを含有しない。一部の実施形態では、細胞を、タンパク質合成の前に遊離メチオニンの利用可能なプールを消失または枯渇させるための期間の間、増殖させる。一部の実施形態では、宿主細胞はメチオニンを低レベルで産生するか産生しない場合があり、たとえば、細胞はメチオニン栄養要求体である。より具体的な実施形態では、宿主細胞は、野生型宿主細胞と比較して、1つまたは複数のメチオニン生合成遺伝子、たとえばメチオニン合成酵素の発現が低下し、低い、またはない場合がある。
【0043】
特定の発酵条件は、タンパク質におけるメチオニンのノルロイシンでの自発性の置換に影響を与えることが知られており、本発明の置換BMP−12関連タンパク質を産生するために使用することができる。これらには、たとえば、メチオニンに対して100倍過剰のノルロイシン:200mg/Lのノルロイシンおよび2mg/Lのメチオニンを有する培地中での発酵が含まれる(AnfisenおよびCorley、J.Biol.Chem.、244:5149〜52(1969)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)メチオニン栄養要求体において15%の完全に置換された組換えブドウ球菌ヌクレアーゼの産生を示す)。変更したメチオニン/ノルロイシン比を有する別の培地は、6g/リットルのKH2PO4、18.3g/リットルのK2HPO4、4g/リットルの(NH4)2SO4、0.4g/リットルのMgS04・7H20、5×10−4g/リットルのFeSO4・7H20、8g/リットルのグリセロール、0.1g/リットルのアンピシリン、3×10−3g/リットル(2×10−5M)のL−メチオニン、0.2g/リットル(1.5×10−3Mの)DL−ノルロイシンである(Gillesら、J Biol.Chem.、263:8204〜8209(1988)により、産生されたタンパク質の約20%でその6個すべてのメチオニンがノルロイシンで置き換えられている、組換えアデニル酸キナーゼが産生された)。米国特許第5,599,690号に開示されているように、別の方法では、ノルバリンを培地に加えてノルロイシン置換を増加させることができる(ノルロイシン(0.25g/Lのバッチ、1.25g/Lのフィード)またはノルバリン(0.37g/Lのバッチ、1.25g/Lのフィード)の補充により、組換えIL−2において40%までのノルロイシン置換が生じた)。ノルバリンが脱アミド化されてα−ケトバレレートが形成され、ロイシン生合成経路によってこれをノルロイシンに変換することができるという学説が立てられている。
【0044】
あるいは、最初にアミノ酸に富んだシード培地、その後、低アミノ酸発酵培地(たとえば、逆浸透水中、1リットルあたり10.90gのNa(NH4)HPO4・H2O、2.61gのK2HPO4、1.92gのクエン酸(無水)、0.25gのMgSO4・7H2O、0.66gの(NH4)2SO4、1.00gの酵母抽出物、0.75mLのSAG4130、後に無菌的な微量栄養素混合物およびセレロースを補充)の、2ステップの発酵を用いてメチオニン置換を誘導し得る(Brunnerら、米国特許第5,698,418号および第5,622,845号、その4つの天然のメチオニンで36%までのノルロイシン置換を有する組換えウシソマトトロピンを示す)。
【0045】
一部の実施形態では、本発明の置換、切断、または置換−切断されたBMP−12関連タンパク質は、固相ペプチド合成などの化学合成によって産生する。ペプチド合成は、自動ペプチド合成機の使用を含めた、当分野で知られている手段によって行う。ペプチド合成の論述については、たとえば、John Howl、Peptide Synthesis and Applications、Humana Press、第1版(2005)、N.Leo Benoiton、Chemistry of Peptide Synthesis、CRC、第1版(2005)、および米国特許第7,329,727号を参照されたい。
【0046】
本発明の置換、切断、または置換−切断されたBMP−12関連タンパク質は、当分野で知られている遺伝子操作技術を用いて産生することもできる。たとえば、Joseph SambrookおよびDavid Russell、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、第3版(2001)を参照されたい。たとえば、それぞれ配列番号1のメチオニン84および121をコードしている配列番号2のヌクレオチド253〜255および364〜366に対応するヌクレオチドの「ATG」コドンのうちの少なくとも1つを、非メチオニンコドンで置き換え得る。一部の実施形態では、BMP−12関連タンパク質をコードしている核酸のメチオニンコドンを、ロイシン(CTT、CTC、CTA、CTG、TTA、TTG)、イソロイシン(ATT、ATC、ATA)、バリン(GTT、GTC、GTA、GTG)、アラニン(GCT、GCC、GCA、GCG)、またはフェニルアラニン(TTT、TTC)をコードしているコドンで置き換える。より具体的な実施形態では、メチオニンコドンを、ロイシン(CTT、CTC、CTA、CTG、TTA、TTG)またはイソロイシン(ATT、ATC、ATA)をコードしているコドンで置き換える。一部の実施形態では、配列番号1のメチオニン84および121に対応するメチオニン残基をコードしているコドンのうちの一方のみを置き換える。他の実施形態では、配列番号1のメチオニン84および121に対応するメチオニンをコードしているコドンの両方を置き換える。両方のコドンを置き換える場合、これらは同じコドンまたは異なるコドンで置き換え得る。
【0047】
したがって、一部の実施形態では、本発明は、本発明の置換BMP−12関連タンパク質をコードしている核酸を提供する。特定の実施形態では、配列番号1のM84もしくはM121、または配列番号3もしくは4のM75もしくはM112に対応するアミノ酸のうちの少なくとも1つをコードしているコドンを置き換える。より具体的な実施形態では、配列番号3もしくは4のM72、および/または配列番号4のM31に対応するアミノ酸をコードしているコドンも置き換える。
【0048】
一部の実施形態では、核酸は、配列番号2のヌクレオチド4〜390の縮重配列を含有する。特定の実施形態では、核酸は、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下(たとえば、少なくとも約6×SSCおよび1%のSDSで65℃、0.1×SSC中の約20%(v/v)のホルムアミドを用いた、10分間、約42℃の最初の洗浄、および続いて0.2×SSCおよび0.1%のSDSを用いた65℃の洗浄)で配列番号2とハイブリダイズし、腱および/または靱帯様組織の誘導活性を有する置換BMP−12関連タンパク質をコードしている。一部の実施形態では、本発明は、配列番号2のヌクレオチド4〜390と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、92%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれを超えて同一の配列を含有し、腱および/または靱帯様組織の形成活性を有するタンパク質をコードしている核酸を提供する。
【0049】
他の実施形態では、本発明の核酸は、腱および/または靱帯様組織の形成活性を有する切断されたBMP−12関連タンパク質をコードしている。切断されたBMP−12関連タンパク質を作製するためには、たとえば、配列番号1のアミノ酸1〜27および129、1〜27、1〜22、1〜21、1〜18、1〜7、もしくは1〜6、または配列番号3もしくは4の1〜18および120、1〜18、1〜7、もしくは1〜5に対応するアミノ酸をコードしているヌクレオチドを欠失させる。本発明の核酸は、たとえば部位特異的突然変異誘発による、野生型BMP−12、BMP−13、またはMP−52の改変によって作製することができる。
【0050】
一部の実施形態では、本発明の核酸は、特定の宿主細胞におけるタンパク質の発現レベルを増強させるために最適化し得る。最適化には、たとえば、コドンの最適化、mRNAの安定性に影響を与える修飾、ならびに改変された翻訳開始および終結部位が含まれる。組換えタンパク質発現の最適化方法のさらなる論述については、Gustafssonら、Trends Biotechnol.、22:346〜53(2004)ならびにSorensenおよびMortensen、J.Biotechnol.、115:113〜28(2005)を参照されたい。
【0051】
本発明の核酸はベクター内に含有され得る。一部の実施形態では、ベクターには選択マーカー(たとえば、アンピシリン、テトラサイクリン、シプロフロキサシン、G418、またはプロマイシンなどの抗生物質に対する耐性をコードしている1つまたは複数の遺伝子)が含まれる。一部の実施形態では、ベクターには、本発明の核酸の転写および翻訳を駆動するための制御配列(たとえば、ガラクトース誘導性プロモーターまたは構成的プロモーター)ならびに1つまたは複数の複製起点が含まれる。
【0052】
一部の実施形態では、本発明の核酸およびベクターを適切な宿主細胞に含有させ得る。一部の実施形態では、宿主細胞は、たとえば、哺乳動物、たとえば、ヒト、マウス、ラット、ハムスター、チンパンジー、もしくはマカク、真菌、たとえば、分裂もしくは出芽酵母、または細菌、たとえば、大腸菌(E.coli)もしくは枯草菌(B.subtilis)もしくは蛍光菌(P.fluorescens)由来であり得る。
【0053】
一部の実施形態では、切断されたまたは置換−切断されたBMP−12関連タンパク質は、BMP−12関連タンパク質または置換BMP−12関連タンパク質の消化によって産生することができる。たとえば、完全長、成熟BMP−12関連タンパク質または置換BMP−12関連タンパク質を、プロテアーゼ、たとえばトリプシンと共に、切断されたまたは置換−切断されたBMP−12関連タンパク質を産生するために十分な時間インキュベーションすることができる。たとえば、BMP−12関連タンパク質(置換されているまたは置換されていない)を、たとえば緩衝洗剤溶液中のトリプシンと共に、約1:50、1:100、1:200、1:500、1:1000、1:2000、または1:4000の酵素対基質比で、たとえば、約1、2、4、5、10、15、20、30分間、またはそれより長い期間インキュベーションすることができる。
【0054】
組成物および担体
本発明の新規BMP−12関連タンパク質は、組成物の一部であり得る。一部の実施形態では、組成物は、配列番号1のメチオニン84および121に対応する位置にメチオニン残基を含有するBMP−12関連タンパク質をさらに含む(「met−BMP−12関連タンパク質」)。特定の実施形態では、met−BMP−12関連タンパク質は、配列番号1、3、または4と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、92%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれを超えて同一の配列を含み、腱および/または靱帯様組織の形成を誘導することができる。
【0055】
一部の実施形態では、組成物は、置換BMP−12関連タンパク質、切断されたBMP−12関連タンパク質、置換−切断されたBMP−12関連タンパク質、met−BMP−12関連タンパク質、およびその組合せを含めた、BMP−12関連タンパク質を含む、またはそれから本質的になり得る。BMP−12関連タンパク質は、組成物の粗乾重量の少なくとも約0.1%、1%、5%、10%、15%、20%、25%、50%、70%、80%、90%、95%、99%、またはそれより多くを構成することができる。特定の実施形態では、置換BMP−12関連タンパク質は、組成物中のBMP−12関連タンパク質の少なくとも約0.1%、1%、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、99.9%、またはそれより多くを構成し得る。特定の実施形態では、組成物中のBMP−12関連タンパク質サブユニットのメチオニン残基は、少なくとも約1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、またはそれより多くの、残基あたりの置換率を有することができる。特定の実施形態では、組成物には、その組合せおよびヘテロ二量体、ならびにタンパク質が置換、切断、または置換−切断されていてよいものを含めた、BMP−12、BMP−13、またはMP−52が含まれ得る。
【0056】
一部の実施形態では、組成物は細菌の発酵産物である。特定の実施形態では、細菌は、メチオニン制限、ロイシン制限、ノルロイシン過剰、およびその組合せから選択される条件下で増殖させる。一部の実施形態では、BMP−12関連タンパク質は、細菌の全タンパク質の少なくとも約1%、2%、5%、8%、10%、12%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、またはそれより多くを構成する。より具体的な実施形態では、BMP−12関連タンパク質は、細菌の全タンパク質の少なくとも10%を構成する。さらにより具体的な実施形態では、BMP−12関連タンパク質は、細菌の全タンパク質の約10〜24%を構成する。
【0057】
一部の実施形態では、組成物は、1つまたは複数の医薬担体をさらに含み得る。適切な医薬担体は、従事者によって所望される特性に基づいて選択される。BMP用の医薬担体の一般的な総説には、たとえば、SeehermanおよびWozney、Cytokine Growth Factor Rev.、16(3):329〜45(2005)を参照されたい。一般に、担体は、本発明のBMP−12関連タンパク質の活性を保持し、かつ生体再吸収可能である必要がある。担体分子は、治療部位におけるBMP−12関連タンパク質の保持時間を有利に増加させ得る。さらに、担体は、残留担体が治癒を妨害せずに、細胞の浸潤を可能にすべきである。
【0058】
適切な担体には、可溶化賦形剤および安定化剤、天然ポリマー、たとえば、コラーゲン、ゼラチン、ヒアルロナン、キトサン、絹、フィブリン、アルギネートまたはアガロース、人工ポリマー、たとえば、ポリラクチドまたはポリグリコリドおよびそのコポリマーなどのポリ(α−ヒドロキシ酸)ポリマー、ならびに無機化合物、たとえば、高温や低温のオルトホスフェート(リン酸カルシウムや焼結セラミックなど)および硫酸カルシウムを含む、緩衝液および溶液が含まれる。
【0059】
特定の実施形態では、本発明の組成物は、1つまたは複数の追加の骨形成タンパク質(BMP)などの追加の成長因子を含有する。BMPの説明は以下の出版物中に見つけることができる:BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6、およびBMP−7(たとえば、米国特許第5,108,922号、第5,013,649号、第5,116,738号、第5,106,748号、第5,187,076号、および第5,141,905号に開示)、BMP−8(PCT WO91/18098号に開示)、BMP−9(PCT WO93/00432号に開示)、BMP−10(PCT WO94/26893号に開示)、BMP−11(PCT WO94/26892号に開示)、BMP−12およびBMP−13(PCT WO95/16035号に開示)、BMP−15(米国特許第5,635,372号に開示)、BMP−16(米国特許第6,331,612号に開示)、MP−52(PCT WO93/16099号に開示)、ならびにBMP−17およびBMP−18(米国特許第6,027,917号に開示)。これらのタンパク質への言及には、BMPの変異体、対立遺伝子変異体、断片、ならびに、それだけには限定されないが、欠失突然変異体、挿入突然変異体、および置換突然変異体を含めた突然変異体が含まれることを理解されたい。特に、任意の特定のBMPへの言及には、少なくとも1、3、5、7、10、15、18、20、22、25、30、35、またはそれより多くの残基が成熟タンパク質のN末端から除去されているN末端切断断片が含まれることを理解されたい。特定の実施形態では、組成物には、本発明の置換、切断、または置換−切断されたBMP−12関連タンパク質の1つのサブユニットおよび別のBMPの1つのサブユニットを含有するヘテロ二量体が含まれる。ヘテロ二量体は、たとえば、参照により組み込まれているWO93/009229号にさらに詳述されている。
【実施例】
【0060】
(実施例1)
置換BMP−12の発見
組換えBMP−12の大腸菌(E.coli)産生の発酵条件の開発中に、BMP−12の新種が後期に溶出されるRP−HPLCのピーク中で同定され、ペプチドマップにおいて確認された。
【0061】
大腸菌(E.coli)におけるBMP−12発酵物からの可溶化した封入体(sIB)を、最小希釈係数10を有する還元緩衝液(5MのグアニジンHCl、0.1Mのトリス、pH8.2)で0.2〜0.5mg/mL(A280によって推定)に希釈した。1MのDTT(ジチオスレイトール)を10mMの最終濃度まで加えて、BMP−12を単量体サブユニットへと還元した。還元混合物を40℃で30分間インキュベーションし、0.3%(v/v)のTFA(トリフルオロ酢酸)の最終濃度となるまで10%のTFA(v/v)で酸性化した。高度に精製した試料を、希釈係数10を有する還元緩衝液で0.1mg/mLまで希釈し、上述のようにDTTによって還元させた。ルーチン分析およびLC/MS分析用のHPLC方法は以下のとおりである。
【0062】
【表2】
【0063】
発酵中の迅速なインプロセススクリーニング用のHPLC方法は以下のとおりである。
【0064】
【表3】
【0065】
図1は、典型的なBMP−12ピークの直後期に溶出される2つの新しいピークを有する(ロット174、図1B)または有さない(ロット002、図1A)、高度に精製したBMP−12の還元性RP−HPLCプロフィールを示す。以前の実験室スケールのBMP−12調製物も後期に溶出されるピークを欠き、ロット002に類似のプロフィールを示す。
【0066】
(実施例2)
精製ではなく発酵により新しいBMP−12種が生じた
前出の実施例に記載した新しいBMP−12種は、発酵プロセスから生じ、続く精製からではない可能性が非常に高い。図2Aおよび2Cは、新しい種がsIB段階(図2A)で既に存在していた場合は、これはさらなる精製(図2C)によって有意に除去されなかったことを示す。逆に、図2Bおよび2Dは、sIB調製物(図2B)が新しい種を含有しなかった場合は、これはさらに精製した試料(図2D)中にも存在しなかったことを示す。様々な発酵由来のいくつかのsIBバッチから同様の結果が得られた。したがって、新しいBMP−12種は、発酵プロセスの結果であり、続く精製の結果ではない可能性が高い。
【0067】
(実施例3a)
新しいBMP−12種はメチオニン残基での置換を含有する
新しいBMP−12種を含有する精製したBMP−12材料のうちの1つであるロット174を選択して、新しい種のさらなる特徴づけおよび同定を行った。還元性RP−HPLCにおいて新しい種を示さなかった、以前に調製した材料であるロット148を対照として使用した。
【0068】
図2に示す還元性RP−HPLCプロフィールを、高分解能のWaters QTOF質量分析装置(MS)と連結させることによってさらに分析した。液体クロマトグラフィー/質量分析(LC/MS)の結果は、最初に主要なピークが観察質量14014.8Daを有することを示しており、これは、BMP−12単量体サブユニットの理論質量14014.9Daと一致している。新しいBMP−12種を含有する2つの後期に溶出されるピークは、野生型BMP−12と比較してそれぞれ−18Daおよび−36Daの質量差を有する。これらの後期に溶出されるピークは、全単量体種のそれぞれ約32%および8%を構成する。
【0069】
図3Aおよび3Bは、アルキル化およびトリプシン処理後の、それぞれロット148(新しい種を有さない)および174(新しい種を有する)のペプチドマップを示す。BMP−12の理論的なトリプシン−ペプチドマップを図4に示す。2つの新しいピーク(破線)がロット174のマップ中に存在する一方で、T12およびT10ペプチドは対応する強度の減少を示した。LC/MSペプチドマッピングでも2つの新しいピークが示され、2つのMet含有ペプチド、T10およびT12に対する−18Daの質量差が限局された。高分解能のQTOF質量分析装置により、T10およびT12由来のペプチドについてそれぞれ−17.949および−17.957Daの正確な質量差が提供された。ESI−QTOF質量分析装置の質量の正確さにより、新しいBMP−12種がロイシン、イソロイシン、またはノルロイシンによるメチオニンの置換を含有するとして特徴づけすることが可能となった。ロット174中の「アーチファクト」のピークは、質量分析により試料調製中の不完全な還元によって引き起こされると同定された。
【0070】
ロイシン、イソロイシン、またはノルロイシンでメチオニンを置換することの正確な質量差は−17.956Daである。質量値ではロイシン、イソロイシン、またはノルロイシンを識別することができないが、大腸菌(E.coli)における組換えタンパク質の過剰発現はメチオニンの代わりにノルロイシンを取り込むことをもたらす場合があるため、置換されたアミノ酸はノルロイシンである可能性が高い(Tsaiら、Biochem.Biophys.Res.Comm.、156:733〜739(1988)、Bogosianら、J.Biol.Chem.、264:531〜539、(1989))。
【0071】
メチオニンおよびノルロイシンを含有するT10およびT12ペプチドを収集し、その後、ナノESI−QTOF MS/MSによって断片化して、ノルロイシンでのメチオニンの置換を確認した(図5、図6)。ほぼ同じ割合のT10およびT12ペプチドがノルロイシンで置換された形態中に存在していた。これは、メチオニンおよびノルロイシンの置換には部位優先度がないことを示唆している。
【0072】
ペプチドマッピングの結果に基づいて、還元性RP−HPLCプロフィール(図1)における2つの後期に溶出されるピークは、一方(−18Da)または両方(−36Da)のメチオニンがノルロイシンで置換されているBMP−12単量体を表す。ジスルフィド結合した二量体の形態では、4個までのメチオニンからノルロイシンへの置換が可能である。それぞれの単量体サブユニット上のそれぞれのメチオニン部位での置換がランダムであり、協同性または部位優先度がない場合、それぞれの部位において25%の置換率(図3のペプチドマップにおけるメチオニンおよびノルロイシン含有ペプチドの相対ピーク面積に基づく)により、置換された単量体サブユニットの以下の予測される分布がもたらされる:
・約56%、置換なし(2個のメチオニン)
・約38%、単一の置換を有する(1個のメチオニンおよび1個のノルロイシン)
・約6%、二重の置換を有する(2個のノルロイシン)
【0073】
この予想された分布は図1の還元性RP−HPLCプロフィールで観察された実際の分布に大雑把に一致し、これは、2つの部位での置換がランダムに分布されていることを示唆している。置換された単量体サブユニットの様々な形態(再折り畳み前)が、再折り畳み中の置換されていないサブユニットと同じように挙動すると仮定すると、以下の二量体種の分布が予測される:
・約32%、置換なし(4個のメチオニン)
・約42%、1個の置換を有する(3個のメチオニン、1個のノルロイシン)
・約21%、2個の置換を有する(2個のメチオニン、2個のノルロイシン)
・約5%、3個の置換を有する(1個のメチオニン、3個のノルロイシン)
・約0.4%、4個の置換を有する(4個のノルロイシン)。
【0074】
(実施例3b)
置換BMP−12は野生型BMP−12と生物物理学的に類似している
純粋なノルロイシンで置換したBMP−12は単離しなかったが、有意な量の置換BMP−12を有するおよび有さないバッチ間の比較により、置換は、1)電気泳動移動度(見かけの大きさ、還元性および非還元性SDS−PAGEならびに非還元性SDS−CEによる)、2)凝集、3)ジスルフィドノット形成(ペプシン消化に対する耐性)、4)折り畳み(トリプトファン蛍光)、または5)in vitro生物活性(実施例4を参照)に有意な影響を与えないことが示された。
【0075】
(実施例4)
置換BMP−12は正常な生物活性を有する
有意な置換を含有するBMP−12のバッチ(ロット174)のin vitro生物活性を、低い置換率を有するBMP−12の2つのバッチ(ロット002およびロット148(標準)、液体クロマトグラフィー/質量分析によって検出して<5%)と、たとえば参照により組み込まれているKusanagiら、Mol.Bio.Cell、11:555〜65(2000)に詳述されている骨形成タンパク質応答エレメントルシフェラーゼレポーター遺伝子バイオアッセイ(BRE−luc)において比較した。アッセイ前に試料を50mMの酢酸で1mg/mLまで希釈した。これらの試料をバイオアッセイの前に滅菌濾過し、濾過した試料の濃度を、A280値を用いて確認した。すべての試料はバイオアッセイにおいて比較可能な活性を示した(図7)。
【0076】
ロット174は、単量体中のそれぞれの部位で約25%のメチオニンからノルロイシンへの置換を含有していた。還元性RP−HPLCに基づいて、単量体サブユニットの約40%が少なくとも1つの置換されたメチオニンを含有しており、これは、少なくとも1つの置換されたメチオニンを含有する全BMP−12二量体の約70%に対応する。この置換レベルは、試験したBMP−12のin vitro生物活性または他の物理的特徴に有意な影響は全く与えなかった。
【0077】
(実施例5a)
非置換BMP−12は酸化による失活に感受性である
BMP−12のin vitro生物活性に対する酸化の効果を調査するために、野生型BMP−12のバッチ(<5%のノルロイシン置換)を、光から保護して様々な濃度の過酢酸(形成緩衝液で希釈)と共に2時間、室温でインキュベーションした。過酢酸は時間と共に分解されるが、残った可能性がある残留過酢酸はすべて、Zeba脱塩スピンカラム(MWCO 7000)での緩衝液交換によって除去した。図8は、酸化された試料の還元性RP−HPLCクロマトグラムを示す。還元性RP−HPLCにより、ジスルフィド還元単量体サブユニットの一重酸化および二重酸化された形態が分離された(ピークが何であるかは、液体クロマトグラフィー/質量分析によって確認した)。過酢酸レベルが増加するにつれて、BMP−12の酸化された形態の割合も増加した。相対ピーク面積を比較することによって、二重酸化された形態は低い過酢酸濃度で初期の遅れを示したが、より高い過酢酸濃度では容易に増加したことが明らかであった。
【0078】
高レベルの過酢酸は鎖間ジスルフィド結合の酸化切断をもたらす場合があり、BMP−12二量体が不活性の単量体サブユニットへの解離が引き起こされる。しかし、図9は、二量体のほとんどが各試料中でインタクトであったことを示す。最高レベルの過酢酸を有する試料では(一番右のレーン)、単量体およびジスルフィドがスクランブルされた二量体(通常の二量体のバンドの上を移動する小さなバンド)のわずかな増加が観察された。しかし、その試料中でさえも、タンパク質の大多数は予測された二量体の形態であり、対照試料と同じ位置で移動した。したがって、ジスルフィド結合の酸化切断からの最小限の妨害が予測された。
【0079】
過酢酸処理した試料および未処理の対照試料の生物活性をBRE−lucバイオアッセイによって測定した。図10は、in vitro生物活性と還元性RP−HPLCによって測定した酸化レベルとの間の相関を示す(図8)。メチオニン酸化の程度とin vitro生物活性との間には直接の負の相関があった。
【0080】
図10に示されるように、BMP−12中のどちらのメチオニン残基の酸化も活性の低下をもたらす。酸化により、メチオニンの疎水性側鎖がより親水性のものに変わり、これにより、タンパク質の構造の変化がもたらされ、かつ/またはたとえば受容体もしくは別のBMP−12単量体サブユニットとの相互作用に影響が与えられ得る。これは、活性を維持するために84および121の位置での疎水性側鎖が必要であることを示唆している。メチオニンをノルロイシンで置換することで、疎水性の性質および残基のおおよその大きさが維持される。したがって、メチオニンの代わりにノルロイシンを取り込ませることで、BMP−12の構造および生物活性がどちらも維持されると推測することが合理的である。
【0081】
rhBMP−2の配列も2つのメチオニン残基を含有し、そのうちの1つはBMP−12中で保存されている(M121)。また、過酢酸によるrhBMP−2中のメチオニン残基の酸化は、活性の減少ももたらす。この残基がBMP−12およびBMP−2の間で保存されていることは、この特定のメチオニン残基の重要性を強調している。
【0082】
(実施例5b)
置換BMP−12は酸化失活に耐性である
置換BMP−12に対する酸化の効果を調査するために、それぞれのメチオニン部位で25〜40%の置換を含有する置換BMP−12のバッチのプールを過酢酸での酸化に供し、検出不可能なレベルの置換を有するバッチと比較した。最高レベルの過酢酸では、通常のBMP−12ではどちらのメチオニン残基でも約80%が酸化された一方で、高度にノルロイシン置換されたプールの約40%のみが完全に酸化された(図11)。ノルロイシンの存在は残ったすべてのメチオニン残基の酸化率には影響を与えなかったと考えられるが、完全に置換BMP−12は酸化に完全に耐性であると予測される。
【0083】
次に、高度にノルロイシン置換されたバッチのプールにおける、in vitroのBMP−12活性に対する酸化の効果(BRE−lucバイオアッセイによって測定)を、有意な置換を有さないBMP−12のバッチと比較した。比較的低いレベルの過酢酸では、高度にノルロイシン置換されたBMP−12試料は非置換BMP−12に匹敵する活性の損失を示した。しかし、より高いレベルの過酢酸では、高度にノルロイシン置換されたBMP−12試料はそれでも有意な活性を維持していた一方で、非置換BMP−12は完全に不活性であった(図12)。これらの結果は、置換BMP−12が酸化関連失活に対してより耐性であることを示す。
【0084】
(実施例6)
発酵条件
使用した基本的な発酵条件への改変およびBMP−12の様々なロットで観察された置換のレベルを表4に提供する。大腸菌(E.coli)の原栄養株をBMP−12の産生に使用した。光学密度(OD)はShimadzu UV 2401PC分光光度計で測定した。
【0085】
大腸菌(E.coli)の発酵(10Lまたは60Lの発酵)プロセスで使用した基本栄養培地には、6.8g/Lのリン酸カリウム一塩基性、2.0g/Lの硫酸アンモニウム、3.0g/Lのクエン酸三ナトリウム、0.1g/LのCaCl2・2H2O、2.4g/LのMgSO4・7H2O、1.0ml/Lの微量元素混合物(27.03g/Lの塩化第二鉄、1.29g/Lの塩化亜鉛、2.0g/Lのモリブデン酸ナトリウム、1.0g/Lの塩化カルシウム、1.27g/Lの塩化第二銅、0.5g/Lのホウ酸、2.86g/Lの塩化コバルト、100ml/LのHCl、蒸留水で最終体積1リットルまで)、および任意選択で2.0〜4.0g/LのAmisoy(商標)(ダイズタンパク質加水分解物)が含まれていた。Amisoy(商標)(アミノ酸源)はすべての発酵条件には存在させなかった。すべての成分を水に溶かした後、60分間オートクレーブすることによって発酵槽を滅菌した。滅菌後、培地のpHを無菌条件下で7.0に調節し、その後、40%のグルコースストック溶液(200〜250ml、最終濃度1.0〜1.25g/L)を8Lの培地に加えた。さらに、市販のRoswell Park Memorial Institute(RPMI)ビタミン混合物(1ml/L)またはアミノ酸を含まない酵母窒素ベース(0.1g/L)のどちらかを滅菌濾過し、オートクレーブした培地に加えた後、成熟rhBMP−12遺伝子を発現させるためのプラスミドを保有する組換え大腸菌(E.coli)株と共に播種した。pHは、pHコントローラーによって濃水酸化アンモニウム溶液で制御した。
【0086】
播種後、培地を通気し、溶存酸素飽和を20%に維持するために0.8〜1.0VVMに維持し、攪拌器RPMにカスケードした。細胞密度(OD600)が約15〜18に達した際、40%のグルコースストック溶液の供給を1.0ml/分(約3.5g/L/時間)で開始し、細胞密度が所望の値に達するまで続けた。OD600が約30〜60となった際、トリプトファンを約0.3〜0.6g/Lの最終濃度まで加えることによってBMP−12タンパク質合成を誘導し、グルコースの供給をさらに4〜24時間続けた。細胞を遠心分離によって収集し、機械的に壊して開け、BMP−12タンパク質を含有する封入体を単離した。
【0087】
【表4】
【0088】
ロット148および002を生じたバッチを播種した後、OD600が8〜10に達した際に10g/L/時間のグルコースの供給を開始した。OD600が30に近づいた際(8.7時間)、誘導培地フィードを施用し、1.5時間で完了した。バッチを13時間目の最終OD600が55.0となった際に収集した。
【0089】
他の実施形態では、BMP−12合成の誘導前のグルコース供給の長さは変動する場合がある。たとえば、Amisoy(商標)が初期培地中に存在する発酵バッチでは、細胞密度OD600が約30または60に達するまでグルコース供給を続けることができ、この場合、Amisoy(商標)中に存在するアミノ酸のほとんどが代謝される。したがって、それに依存するわけではないが、遺伝子発現をこれらの条件下で誘導した場合、メチオニン置換は、たとえば、細胞が利用可能な遊離メチオニンが低レベルであること、および/またはロイシン経路の低いロイシン誘導性活性化から生じるノルロイシン合成が増加することが原因で起こるという学説が立てられている。
【0090】
BMP−12中にノルロイシン置換が発見された後、大腸菌(E.coli)の40%のグルコースフィードにメチオニン(0.1M)、ロイシン(0.1M)、またはメチオニンおよびロイシンの組合せ(それぞれ0.05M)を補充した。生じたsIB調製物を部分精製し、ESI−QTOF MSと連結させた還元性RP−HPLCおよびペプチドマッピングによって分析した。3つの条件すべてにより、検出不可能または微小レベルのBMP−12置換がもたらされた。
【0091】
(実施例7a)
切断されたBMP−12種の同定
新しいピークが精製したBMP−12の一部のバッチの非還元性SDS−CEアッセイで観察された(図13)。新しいピークがBMP−12の2つのバッチで観察されたが(07L78H001および07L78H002、図13C、13D)、以前に精製した参照バッチでは観察されなかった(IRM#1、図13B)。新しいピークが二量体ピークの直前であるが単量体ピークの後に移動した。したがって、新しい種の見かけの大きさは、28kDa未満であるが14kDaよりも大きい。さらに、新しいより低いバンドがこれらのバッチの還元性SDS−PAGEで観察されたが、参照バッチ中では観察されなかった。これらのバッチのRP−HPLC分画および液体クロマトグラフィー/質量分析により、非還元性SDS−CEにおける新しいピークおよび還元性SDS−PAGEにおける新しいバンドが、どちらもBMP−12の26kDaのN末端が切断された形態に関連していることが明らかとなった。また、液体クロマトグラフィー/質量分析により、特定の調製物においてBMP−12の27kDaのN末端が切断された形態も同定された。
【0092】
切断されたBMP−12種をより良好に検出するために、SDS−PAGEをさらに洗練させた。切断された種を、10%のトリシンゲルを用いてSDS−PAGEによって完全長BMP−12種から分離した。非還元の高度に精製した試料はかすかな低分子量(LMW)のバンド(より低い移動位置)を示し、これは非還元性SDS−CEプロフィールと一致している。試料を還元およびアルキル化した場合、LMWバンドがより高い全タンパク質ロードで検出された。LMWバンドの推定分子量は、主バンドよりも約2kDa低い。
【0093】
オンラインRP−HPLC/MS分析により、切断された種のうちの1つがBMP−12ピークの最後の1/3で溶出されたことが示された。さらなる特徴づけのために切断された種を濃縮するために、切断された種を含有する還元またはインタクトな試料をRP−HPLC中の溶出時間によって分画した。BMP−12の単量体サブユニットの分析には還元条件を使用した一方で、二量体BMP−12の分析には非還元条件を使用した。画分の収集に必要なより高いロードを可能にするために、Poros R1/10カラムを使用した。
【0094】
ジスルフィドが還元されたBMP−12単量体の2つの画分をナノエレクトロスプレーイオン化QTOF−質量分析(ナノESI QTOF−MS)およびナノESI QTOF MS/MSに供した。MSモードを使用して、後期に溶出される画分が切断された12036.8および13344.1Da種を含有することを確認した。12036.8Da種の優勢な荷電状態を選択し、衝突誘起解離(CID)によって断片化して、種を配列決定し、それが23RGR・・・GCR129であることを確認した(図14)。配列タグを含むb型およびy型の断片イオンについて決定した正確な質量は、断片化していない種の正確な質量分析に基づく23RGR・・・GCR129としてのNH2末端の割当てを支持している。同様の分析により、13344.1Daの種が8TAQ・・・GCR129として同定された。
【0095】
RP−HPLC/MSを使用して、精製プロセスの全体にわたって収集された生成物のプールにおける切断された種の存在を検査した。存在量に有意な変化なしに、上述の切断された種が精製プロセス全体にわたって検出された。下流の精製ではこれら2つの切断された種がいかなる有意な度合にも除去されず、これは、これらが完全長BMP−12と構造的に非常に類似していることを示している。
【0096】
(実施例7b)
酵素的に切断されたBMP−12は活性の増強を示す
再折り畳み反応を模倣する緩衝液−洗剤の溶液(2%のCHAPS、0.1Mのトリス、pH8.4、5mMのEDTA)中での希釈した高度に精製したBMP−12のトリプシン消化によって、切断されたBMP−12を意図的に生成した。BMP−12を非常に低いレベルのトリプシン(E:S=2000)と共にインキュベーションすることで、10分以内に室温で、実施例7aに記載のものに類似の(図14)、切断された種が生じた(図15)。より高いトリプシン濃度(E:S=100など)またはより長いインキュベーション時間では、さらなる切断を観察することができる。
【0097】
液体クロマトグラフィー/質量分析を可能にするために、CHAPSの代わりに0.2%のRapigest(商標)を含有する緩衝液−洗剤の溶液中での高度に精製したBMP−12のトリプシン消化によって切断された種を生成した。この分析から、トリプシンタンパク質分解により、実施例7aで同定したものに類似の、R7、R22、およびR23のN末端を有するBMP−12が生じたことが示された。
【0098】
トリプシンで切断されたBMP−12種をBRE−lucバイオアッセイで試験し、上昇したin vitro生物活性が示された(図16)。切断された種のin vivo活性は試験しなかった。
【0099】
BMP−12のN末端が切断された形態(26SRC・・・GCR129)を大腸菌(E.coli)中で産生させ、ラット異所性アッセイにおいて腱様組織を誘導することが見い出された。また、完全長BMP−12分子も動物モデルにおいて活性である。ここで観察された切断物は、完全長BMP−12およびより短いBMP−12の切断された種(どちらもin vivoで生物活性がある)の中間の大きさであったため、切断された種もin vivoで生物活性があると予測される。
【0100】
本発明の他の実施形態は、本明細書中に開示した本発明の明細および実施を考慮することで、当業者には明らかであろう。明細および実施例は例示的のみとして考慮されることを意図し、本発明の真の範囲および精神は以下の特許請求の範囲によって示される。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】置換された種を有する(図2B、2D)または有さない(図2A、2C)バッチの、精製したBMP−12単量体(図2A、2B)および可溶化した封入体(sIB)中に存在する未精製のBMP−12単量体(図2C、2D)の還元性RP−HPLCプロフィールを示す図である。「DS」とは薬原体(精製したBMP−12)をいう。
【図3】ロット174(図1B、置換された種を含有)およびロット148(図1A、置換された種を含まない)からのBMP−12単量体のペプチドマップを示す図である。ロット174中の新しいピークを点線によって示す。注記:cbm:カルバミル化、ox:酸化、d:脱アミド化。
【図4】トリプシン消化産物を含めた、成熟ヒトBMP−12単量体の配列を示す図である(配列番号1)。すべて大文字またはすべて小文字の残基の交互のストリングは、明白なトリプシンペプチドに対応する。
【図5】置換された種を含有しない(図5A)または含有する(図5B)BMP−12バッチのT10ペプチドのMS/MS断片化スペクトルを示す図である。図5Aおよび5Bは、それぞれ配列番号5〜6を出現順に開示する。
【図6】置換された種を含有しない(図6A)または含有する(図6B)BMP−12バッチのT12ペプチドのMS/MS断片化スペクトルを示す図である。図6Aおよび6Bは、それぞれ配列番号7〜8を出現順に開示する。
【図7】有意なレベルの置換された種を有する(174)および有さない(002)バッチにおける、細胞に基づいたBMP−応答エレメントルシフェラーゼ(BRE−luc)レポーターからの相対蛍光単位(RFU)をrhBMP−12濃度の関数として示す、当てはめた片対数プロットの図である。
【図8】様々なレベルの過酢酸(PAA)で処理した野生型BMP−12の単量体(部位あたり<5%の置換)の還元性RP−HPLCプロフィールを示す図である。2ox:両方のメチオニン残基が酸化されている、1ox:2個のメチオニン残基のうちの1個が酸化されている、0ox:酸化されていない。
【図9】様々なレベルのPAAで処理したBMP−12(二量体、部位あたり<5%の置換)の銀染色したSDS−PAGEトリシンゲルを示す写真である。
【図10】特異的活性(BRE−lucバイオアッセイによって決定)対様々なレベルのPAAで処理した高度に精製したBMP−12(二量体、部位あたり<5%の置換)の還元性RP−HPLC(図8)によって測定した酸化された種の合計%(一重および二重酸化された単量体種の合計)を示すプロットである。最小二乗回帰直線をプロット上に含める。
【図11】高(部位あたり25〜40%)および低(<5%)レベルの置換を有する試料について、二重酸化されたBMP−12に対応するRP−HPLCプロフィール上の%ピーク面積をPAA濃度の関数として示すプロットである。
【図12】低い(<5%)置換率を有するBMP−12のバッチおよび高い(25〜40%)置換率を有するBMP−12のバッチのプールについて、BRE−lucバイオアッセイで測定されたBMP−12の%対照(非処理)活性をPAA/BMP−12のモル比の関数として示すプロットである。
【図13】緩衝液単独(図13A)、切断された二量体BMP−12種を含有するバッチ(図13C、13D)、および含有しないバッチ(図13B)の非還元性SDS−CEの結果を示すプロットである。10kDaの内部標準を注記した。矢印は新しいプレピークを示す(図13C、13D)。IRM#1は参照物質である。
【図14】成熟BMP−12の23RGR...GCR129に対応するBMP−12の切断された単量体のナノESI QTOF MS/MSスペクトルを示す図である。図14は配列番号1を開示する。
【図15】トリプシンを用いて様々な酵素対基質比で処理したBMP−12のSDS−PAGEを示す写真である。
【図16】細胞に基づいたBMP−応答エレメントルシフェラーゼ(BRE−luc)レポーターからの相対蛍光単位(RFU)を、様々な度合のトリプシン誘導性切断を有する試料のrhBMP−12濃度の関数として示す、当てはめた片対数プロットである。アッセイで使用した試料のSDS−PAGEの写真の挿入図であり、切断されていない対照と比較した、それぞれの試料中に存在する切断の度合およびそれぞれの試料の推定効力を示す。
【図17】ヒトBMP−12、BMP−13、およびMP−52の成熟配列の複数の配列アラインメントを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
「BMP−12関連タンパク質」とは、腱および/または靱帯様組織の誘導活性を有しており、また、アミノ酸レベルで成熟BMP−12、BMP−13、またはMP−52(GDF7、6、および5としても知られる)タンパク質の配列と少なくとも70%、80%、90%、95%、97%、98%、99%、またはそれを超えて同一の配列を含む、2つのジスルフィドで連結された単量体サブユニットを含有する、二量体タンパク質である。本発明は、置換、切断、および置換かつ切断された(「置換−切断された」)BMP−12関連タンパク質、ならびにその製造方法を提供する。これらの新規BMP−12関連タンパク質は正常な生物活性および物理的特徴を示すが、特に大スケール産生中の、酸化による失活に対する耐性の増加を示す。
【0027】
一部の実施形態では、BMP−12関連タンパク質には、たとえばカルバミル化を含めた追加の修飾が含まれる場合がある。したがって、「カルバミル化されたBMP−12関連タンパク質」は少なくとも1つのカルバミル化されたサブユニットを含有する。一部の実施形態では、カルバミル化されたBMP−12関連タンパク質は2つのカルバミル化されたサブユニットを含有する。BMP−12関連タンパク質のカルバミル化は、タンパク質を高レベルの尿素と共にインキュベーションする精製際に起こる。尿素は、大腸菌(E.coli)から抽出したBMP−12関連タンパク質を含有する封入体の可溶化を支援する。カルバミル化はBMP−12関連タンパク質の活性に影響を与えないと考えられる。本明細書中で論じる本発明の置換、切断、または置換−切断されたBMP−12関連タンパク質のいずれかもカルバミル化し得る。
【0028】
BMP−12関連タンパク質および切断されたBMP−12関連タンパク質
「切断されたBMP−12関連タンパク質」は、二量体タンパク質の少なくとも1つのサブユニットのN末端から、少なくとも1個、3個、5個、7個、10個、15個、18個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、またはそれより多くの残基のN末端が切断されている。一部の実施形態では、切断されたBMP−12関連タンパク質は、1つの切断されたサブユニットを含有する。他の実施形態では、BMP−12関連タンパク質の両方のサブユニットが切断されている。これらの実施形態では、切断されたサブユニットは、必ずしもそうである必要はないが、長さまたは配列が同一であり得る。一部の実施形態では、切断は、BMP−12関連タンパク質サブユニットの成熟型のN末端に対応する残基から開始される。特定の実施形態では、切断は、配列番号1、3、または4のアミノ酸番号1に対応する残基から開始される。
【0029】
したがって、特定の実施形態では、切断されたBMP−12関連タンパク質は、配列番号1のアミノ酸28〜128、28〜129、23〜129、22〜129、19〜129、8〜129、7〜129、もしくは1〜129、または、配列番号3もしくは4の28〜119、28〜120、23〜120、19〜120、14〜120、13〜120、8〜120、7〜120、6〜120、もしくは1〜120に対応する残基を含むサブユニットを含有する。「に対応する残基」とは、参照残基と同じ機能的およびまたは構造的な役割に最も近い役割を果たす残基を意味する。これは、目視検査、スミス−ウォーターマン、BLAST、マルコフモデル、またはClustalWなどの配列アラインメントを含めた、当分野で知られている手段によって決定する。2つの配列を相同性によって比較する場合、%相同性はより短い配列の長さにわたるものであることを理解されたい。たとえば、BMP−12関連タンパク質が10個の残基のN末端切断を有し、配列番号1と90%同一である場合、切断されたタンパク質中の残基の90%が配列番号1に対応する。特定の実施形態では、BMP−12関連タンパク質は、少なくとも50、60、70、80、90、100、105、110、または115個の残基の長さである。本発明によって提供する切断されたBMP−12関連タンパク質のいずれかは、置換BMP−12関連タンパク質について以下に記載するメチオニン置換のいずれかを含有し得る。
【0030】
BMP−12関連タンパク質は、たとえば、ヒト、マカク、マウス、およびラットを含めた数々の種において同定されている。当分野で知られているように、これらの配列を、さらなる置換BMP−12関連タンパク質を調製するためのガイドとして使用することができる。BMP−12関連タンパク質間で保存されている残基またはモチーフは、その腱および/または靱帯様組織の形成活性に重要な傾向がある一方で、これらのタンパク質間で異なる残基およびモチーフは、タンパク質の腱および/または靱帯様組織の形成活性を破壊せずに改変できる可能性が高い。たとえば、国立バイオテクノロジー情報センター(National Center for Biotechnology Information、NCBI)のEntrez GeneID、およびいくつかの種由来のBMP−12関連タンパク質の参照タンパク質の受託番号(RefSeq)を記載する表1を参照されたい。これらのGeneIDを用いて、公に入手可能な注釈したmRNAまたはタンパク質の配列を、たとえばユニフォームリソースロケーター(URL):http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez?db=geneのNCBIウェブサイトから検索し得る。参照配列およびその関連する注釈を含めた、これらのGeneIDに関連する情報は、すべて参照により組み込まれている。
【0031】
【表1】
【0032】
さらに、図17は、成熟ヒトBMP−12、BMP−13、およびMP−52タンパク質の複数の配列アラインメントを提供する。シスチンノットモチーフに対応する保存されたシステイン残基をハイライトし、メチオニンに下線を引き太字で示した。示した配列は、完全長プレプロペプチドのNCBI RefSeq識別子である。
【0033】
置換BMP−12関連タンパク質
「置換BMP−12関連タンパク質」は、配列番号1のメチオニン残基84または121に対応する少なくとも1つの残基が非メチオニン残基で置き換えられており、腱および/または靱帯様組織の形成活性を保持している。これらの置換は、BMP−12関連タンパク質二量体の一方または両方のサブユニット中に存在し得る。したがって、特定の実施形態では、置換BMP−12関連タンパク質は、これらの部位で少なくとも1、2、3、または4個の非メチオニン置換を有する。BMP−12関連タンパク質サブユニットがさらなるメチオニンを含有する場合は、それらは非メチオニン残基で置換されていてもよい。これには、1〜2n個の置換が包含される[ただし、「n」は、成熟タンパク質サブユニット(単量体)中のメチオニンの合計数である]。たとえば、成熟BMP−13単量体は3個の天然のメチオニンを有する:それぞれ配列番号1のM84およびM121に対応する配列番号3のM75およびM112、ならびに配列番号1のL81に対応するM72。成熟MP−52単量体は4個の天然のメチオニンを有する:それぞれ配列番号1のM84およびM121に対応する配列番号4のM75およびM112、ならびに配列番号1のL40およびL81に対応する配列番号4のM31およびM72。本発明の置換BMP−12関連タンパク質中では、これらのメチオニンのいずれかまたはすべてが、非メチオニンアミノ酸残基で置換されていてよい。
【0034】
置換によりタンパク質の腱および/または靱帯様組織の形成活性が保持される限りは、メチオニンを置換するアミノ酸残基には、19種の典型的な天然に存在する非メチオニンアミノ酸、任意の非典型的なアミノ酸(たとえば、ノルロイシンまたはノルバリン)、ならびにアミノ酸類似体、誘導体、および修飾体のいずれかが含まれ得る。特定の実施形態では、置換は、ノルロイシン、ロイシン、イソロイシン、バリン、アラニン、およびフェニルアラニンからなる群から選択される。より具体的な実施形態では、置換は、ノルロイシン、ロイシン、およびイソロイシンからなる群から選択される。一部の実施形態では、BMP−12関連タンパク質中の1つまたは複数のメチオニンはノルロイシンで置換されている。
【0035】
生物活性
BMP−12関連タンパク質の活性を測定するための様々な方法が当分野で知られている。これらには、BMP−12関連タンパク質が細胞の観察可能な表現型を変化させる、たとえば、適切な宿主細胞における腱および/もしくは靱帯様組織に関連する形態学的変化、またはマウスL6細胞における筋芽細胞分化の阻害に影響を与える、細胞に基づいたアッセイが含まれる(BMP−12について示したInadaら、Biochem Biophys.Res.Comm.、222:317〜22(1996))。腱および/または靱帯様組織の誘導活性を検出するための別のモダリティーは異所性移植である。ここでは、BMP−12関連タンパク質を含有するカプセルを宿主動物内に1〜2週間の間移植し、回収し、カプセルの内容物を、たとえば腱および/または靱帯様組織の存在について組織学的に評価する(米国特許第6,150,328号の実施例III、SampathおよびReddi、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、80:6591〜6595(1983))。
【0036】
BMP−12関連タンパク質の活性は、レポーター分子の発現(すなわち転写または翻訳)を監視することによっても抽出することができる。これには、細胞に基づいたBMP−応答エレメント−ルシフェラーゼ(BRE−luc)レポーターの構築体(BREの論述については、Kusanagiら、Mol.Bio.Cell、11:555〜65(2000)を参照)またはBMP−12応答性細胞における特徴的なBMP−12関連タンパク質誘導性発現プロフィールが含まれる。参照により組み込まれている2009年2月26日に出願の米国特許出願第12/393,628号は、細胞に基づいたアッセイにおけるBMP−12(および関連)タンパク質活性のさらなる検出方法を教示している。この方法には、たとえばBMP−12を含有する試験試料に対する用量応答曲線を計算することによって、トロンボスポンジン−4(THBS4、ヒト(Homo sapiens)、GeneID7060)を含めたBMP−12関連活性マーカーのレベルを検出および/または測定することが含まれる。
【0037】
新規BMP−12関連タンパク質の産生方法
本発明の置換、切断、または置換−切断されたBMP−12関連タンパク質は、たとえば、タンパク質合成の前および/またはその間に発酵条件を制御して自発性の置換を生じさせること、遺伝子操作、化学合成、ならびに酵素処理によるものを含めた、当分野で知られている様々な手段によって産生することができる。
【0038】
メチオニン残基での置換に影響を与える発酵条件には、メチオニン制限、ロイシン制限、ノルロイシン過剰(たとえばメチオニンと比較して)、およびその組合せが含まれる。ノルロイシンとは、炭素原子がメチオニンの単一の硫黄原子を置き換えるメチオニン類似体である。ノルロイシンはメチオニルtRNA合成酵素の低親和性(メチオニンと比較して)の基質であり、これら2個のアミノ酸の相対的な存在量が質量作用による置換率に影響を与える場合があるという学説が立てられている。たとえば、メチオニンに対するノルロイシンの過剰は、ノルロイシンの置換率を増加させることができる。
【0039】
したがって、一部の実施形態では、置換BMP−12関連タンパク質は、ノルロイシンがメチオニンのモル濃度過剰にある条件下において、発酵で産生させることができる。ノルロイシンまたは別の適切な酸化耐性メチオニン類似体は、メチオニンと比較して少なくとも1.1、1.2、1.5、1.8、2、4、8、10、20、40、50、80、100、200、400、500、800、1000倍、またはそれより多くのモル濃度過剰であり得る。ノルロイシンは、タンパク質合成の前またはその間に発酵培地に加え得る。あるいは、またはそれに加えて、1つまたは複数のノルロイシン前駆体をタンパク質合成の前またはその間に発酵培地に加えることができる。
【0040】
ロイシン合成経路がノルロイシン産生を司っているため、ロイシンの存在量はノルロイシンの合成速度に影響を与える場合がある(Kisumiら、Appl.Envir.Microbiol.、34:135〜138(1977)およびKisumiら、J.Biochem.、80:333〜330(1976))。たとえば、ロイシンが制限されている場合は、ロイシン生合成経路が活性化され、ノルロイシンが合成される。逆に、ロイシン生合成経路が非活性である場合は(たとえば、増殖培地中の過剰のロイシンが原因)、ノルロイシン合成が低下または中止される。
【0041】
したがって、一部の実施形態では、細胞は、ロイシン生合成経路の活性化を支持することが知られている条件、たとえば、ロイシンなし、低ロイシン、またはロイシン制限の培地中での増殖の下で増殖させ得る。たとえば、標準の増殖条件下よりも、少なくとも50%、80%、90%、99%、または少なくとも1、2、5、10、20、40、100、500倍少ないロイシンが存在し得る。一部の標準細菌増殖条件におけるロイシン濃度は、約30〜120mg/L、たとえば約60mg/Lであり得る。一部の実施形態では、発酵培地は補充ロイシンを含有しない。一部の実施形態では、細胞を、タンパク質合成の前に遊離ロイシンの利用可能なプールを消失または枯渇させるための期間の間、増殖させる。たとえば、アミノ酸源、たとえば酵母抽出物またはタンパク質加水分解物を含有する増殖培地は、たとえばタンパク質合成を誘導する前の宿主細胞の増殖期を延長することによって、アミノ酸を枯渇させることができる。一部の実施形態では、宿主細胞は、野生型宿主細胞と比較して1つまたは複数のロイシン生合成遺伝子の発現レベルが上昇していてもよく、それにより、たとえば、たとえば抑制解除が原因でロイシン生合成経路の構成的活性化がもたらされる。
【0042】
一部の実施形態では、宿主細胞は、メチオニンなし、低メチオニン、またはメチオニン制限の条件下で増殖させ得る。たとえば、標準の増殖条件下よりも、少なくとも50%、80%、90%、99%、または少なくとも1、2、5、10、20、40、100、500倍少ないメチオニンが存在し得る。一部の標準の細菌増殖条件におけるメチオニン濃度は、約10〜40mg/L、たとえば約20mg/Lであり得る。一部の実施形態では、発酵培地は補充メチオニンを含有しない。一部の実施形態では、細胞を、タンパク質合成の前に遊離メチオニンの利用可能なプールを消失または枯渇させるための期間の間、増殖させる。一部の実施形態では、宿主細胞はメチオニンを低レベルで産生するか産生しない場合があり、たとえば、細胞はメチオニン栄養要求体である。より具体的な実施形態では、宿主細胞は、野生型宿主細胞と比較して、1つまたは複数のメチオニン生合成遺伝子、たとえばメチオニン合成酵素の発現が低下し、低い、またはない場合がある。
【0043】
特定の発酵条件は、タンパク質におけるメチオニンのノルロイシンでの自発性の置換に影響を与えることが知られており、本発明の置換BMP−12関連タンパク質を産生するために使用することができる。これらには、たとえば、メチオニンに対して100倍過剰のノルロイシン:200mg/Lのノルロイシンおよび2mg/Lのメチオニンを有する培地中での発酵が含まれる(AnfisenおよびCorley、J.Biol.Chem.、244:5149〜52(1969)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)メチオニン栄養要求体において15%の完全に置換された組換えブドウ球菌ヌクレアーゼの産生を示す)。変更したメチオニン/ノルロイシン比を有する別の培地は、6g/リットルのKH2PO4、18.3g/リットルのK2HPO4、4g/リットルの(NH4)2SO4、0.4g/リットルのMgS04・7H20、5×10−4g/リットルのFeSO4・7H20、8g/リットルのグリセロール、0.1g/リットルのアンピシリン、3×10−3g/リットル(2×10−5M)のL−メチオニン、0.2g/リットル(1.5×10−3Mの)DL−ノルロイシンである(Gillesら、J Biol.Chem.、263:8204〜8209(1988)により、産生されたタンパク質の約20%でその6個すべてのメチオニンがノルロイシンで置き換えられている、組換えアデニル酸キナーゼが産生された)。米国特許第5,599,690号に開示されているように、別の方法では、ノルバリンを培地に加えてノルロイシン置換を増加させることができる(ノルロイシン(0.25g/Lのバッチ、1.25g/Lのフィード)またはノルバリン(0.37g/Lのバッチ、1.25g/Lのフィード)の補充により、組換えIL−2において40%までのノルロイシン置換が生じた)。ノルバリンが脱アミド化されてα−ケトバレレートが形成され、ロイシン生合成経路によってこれをノルロイシンに変換することができるという学説が立てられている。
【0044】
あるいは、最初にアミノ酸に富んだシード培地、その後、低アミノ酸発酵培地(たとえば、逆浸透水中、1リットルあたり10.90gのNa(NH4)HPO4・H2O、2.61gのK2HPO4、1.92gのクエン酸(無水)、0.25gのMgSO4・7H2O、0.66gの(NH4)2SO4、1.00gの酵母抽出物、0.75mLのSAG4130、後に無菌的な微量栄養素混合物およびセレロースを補充)の、2ステップの発酵を用いてメチオニン置換を誘導し得る(Brunnerら、米国特許第5,698,418号および第5,622,845号、その4つの天然のメチオニンで36%までのノルロイシン置換を有する組換えウシソマトトロピンを示す)。
【0045】
一部の実施形態では、本発明の置換、切断、または置換−切断されたBMP−12関連タンパク質は、固相ペプチド合成などの化学合成によって産生する。ペプチド合成は、自動ペプチド合成機の使用を含めた、当分野で知られている手段によって行う。ペプチド合成の論述については、たとえば、John Howl、Peptide Synthesis and Applications、Humana Press、第1版(2005)、N.Leo Benoiton、Chemistry of Peptide Synthesis、CRC、第1版(2005)、および米国特許第7,329,727号を参照されたい。
【0046】
本発明の置換、切断、または置換−切断されたBMP−12関連タンパク質は、当分野で知られている遺伝子操作技術を用いて産生することもできる。たとえば、Joseph SambrookおよびDavid Russell、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、第3版(2001)を参照されたい。たとえば、それぞれ配列番号1のメチオニン84および121をコードしている配列番号2のヌクレオチド253〜255および364〜366に対応するヌクレオチドの「ATG」コドンのうちの少なくとも1つを、非メチオニンコドンで置き換え得る。一部の実施形態では、BMP−12関連タンパク質をコードしている核酸のメチオニンコドンを、ロイシン(CTT、CTC、CTA、CTG、TTA、TTG)、イソロイシン(ATT、ATC、ATA)、バリン(GTT、GTC、GTA、GTG)、アラニン(GCT、GCC、GCA、GCG)、またはフェニルアラニン(TTT、TTC)をコードしているコドンで置き換える。より具体的な実施形態では、メチオニンコドンを、ロイシン(CTT、CTC、CTA、CTG、TTA、TTG)またはイソロイシン(ATT、ATC、ATA)をコードしているコドンで置き換える。一部の実施形態では、配列番号1のメチオニン84および121に対応するメチオニン残基をコードしているコドンのうちの一方のみを置き換える。他の実施形態では、配列番号1のメチオニン84および121に対応するメチオニンをコードしているコドンの両方を置き換える。両方のコドンを置き換える場合、これらは同じコドンまたは異なるコドンで置き換え得る。
【0047】
したがって、一部の実施形態では、本発明は、本発明の置換BMP−12関連タンパク質をコードしている核酸を提供する。特定の実施形態では、配列番号1のM84もしくはM121、または配列番号3もしくは4のM75もしくはM112に対応するアミノ酸のうちの少なくとも1つをコードしているコドンを置き換える。より具体的な実施形態では、配列番号3もしくは4のM72、および/または配列番号4のM31に対応するアミノ酸をコードしているコドンも置き換える。
【0048】
一部の実施形態では、核酸は、配列番号2のヌクレオチド4〜390の縮重配列を含有する。特定の実施形態では、核酸は、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下(たとえば、少なくとも約6×SSCおよび1%のSDSで65℃、0.1×SSC中の約20%(v/v)のホルムアミドを用いた、10分間、約42℃の最初の洗浄、および続いて0.2×SSCおよび0.1%のSDSを用いた65℃の洗浄)で配列番号2とハイブリダイズし、腱および/または靱帯様組織の誘導活性を有する置換BMP−12関連タンパク質をコードしている。一部の実施形態では、本発明は、配列番号2のヌクレオチド4〜390と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、92%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれを超えて同一の配列を含有し、腱および/または靱帯様組織の形成活性を有するタンパク質をコードしている核酸を提供する。
【0049】
他の実施形態では、本発明の核酸は、腱および/または靱帯様組織の形成活性を有する切断されたBMP−12関連タンパク質をコードしている。切断されたBMP−12関連タンパク質を作製するためには、たとえば、配列番号1のアミノ酸1〜27および129、1〜27、1〜22、1〜21、1〜18、1〜7、もしくは1〜6、または配列番号3もしくは4の1〜18および120、1〜18、1〜7、もしくは1〜5に対応するアミノ酸をコードしているヌクレオチドを欠失させる。本発明の核酸は、たとえば部位特異的突然変異誘発による、野生型BMP−12、BMP−13、またはMP−52の改変によって作製することができる。
【0050】
一部の実施形態では、本発明の核酸は、特定の宿主細胞におけるタンパク質の発現レベルを増強させるために最適化し得る。最適化には、たとえば、コドンの最適化、mRNAの安定性に影響を与える修飾、ならびに改変された翻訳開始および終結部位が含まれる。組換えタンパク質発現の最適化方法のさらなる論述については、Gustafssonら、Trends Biotechnol.、22:346〜53(2004)ならびにSorensenおよびMortensen、J.Biotechnol.、115:113〜28(2005)を参照されたい。
【0051】
本発明の核酸はベクター内に含有され得る。一部の実施形態では、ベクターには選択マーカー(たとえば、アンピシリン、テトラサイクリン、シプロフロキサシン、G418、またはプロマイシンなどの抗生物質に対する耐性をコードしている1つまたは複数の遺伝子)が含まれる。一部の実施形態では、ベクターには、本発明の核酸の転写および翻訳を駆動するための制御配列(たとえば、ガラクトース誘導性プロモーターまたは構成的プロモーター)ならびに1つまたは複数の複製起点が含まれる。
【0052】
一部の実施形態では、本発明の核酸およびベクターを適切な宿主細胞に含有させ得る。一部の実施形態では、宿主細胞は、たとえば、哺乳動物、たとえば、ヒト、マウス、ラット、ハムスター、チンパンジー、もしくはマカク、真菌、たとえば、分裂もしくは出芽酵母、または細菌、たとえば、大腸菌(E.coli)もしくは枯草菌(B.subtilis)もしくは蛍光菌(P.fluorescens)由来であり得る。
【0053】
一部の実施形態では、切断されたまたは置換−切断されたBMP−12関連タンパク質は、BMP−12関連タンパク質または置換BMP−12関連タンパク質の消化によって産生することができる。たとえば、完全長、成熟BMP−12関連タンパク質または置換BMP−12関連タンパク質を、プロテアーゼ、たとえばトリプシンと共に、切断されたまたは置換−切断されたBMP−12関連タンパク質を産生するために十分な時間インキュベーションすることができる。たとえば、BMP−12関連タンパク質(置換されているまたは置換されていない)を、たとえば緩衝洗剤溶液中のトリプシンと共に、約1:50、1:100、1:200、1:500、1:1000、1:2000、または1:4000の酵素対基質比で、たとえば、約1、2、4、5、10、15、20、30分間、またはそれより長い期間インキュベーションすることができる。
【0054】
組成物および担体
本発明の新規BMP−12関連タンパク質は、組成物の一部であり得る。一部の実施形態では、組成物は、配列番号1のメチオニン84および121に対応する位置にメチオニン残基を含有するBMP−12関連タンパク質をさらに含む(「met−BMP−12関連タンパク質」)。特定の実施形態では、met−BMP−12関連タンパク質は、配列番号1、3、または4と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、92%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれを超えて同一の配列を含み、腱および/または靱帯様組織の形成を誘導することができる。
【0055】
一部の実施形態では、組成物は、置換BMP−12関連タンパク質、切断されたBMP−12関連タンパク質、置換−切断されたBMP−12関連タンパク質、met−BMP−12関連タンパク質、およびその組合せを含めた、BMP−12関連タンパク質を含む、またはそれから本質的になり得る。BMP−12関連タンパク質は、組成物の粗乾重量の少なくとも約0.1%、1%、5%、10%、15%、20%、25%、50%、70%、80%、90%、95%、99%、またはそれより多くを構成することができる。特定の実施形態では、置換BMP−12関連タンパク質は、組成物中のBMP−12関連タンパク質の少なくとも約0.1%、1%、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、99.9%、またはそれより多くを構成し得る。特定の実施形態では、組成物中のBMP−12関連タンパク質サブユニットのメチオニン残基は、少なくとも約1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、またはそれより多くの、残基あたりの置換率を有することができる。特定の実施形態では、組成物には、その組合せおよびヘテロ二量体、ならびにタンパク質が置換、切断、または置換−切断されていてよいものを含めた、BMP−12、BMP−13、またはMP−52が含まれ得る。
【0056】
一部の実施形態では、組成物は細菌の発酵産物である。特定の実施形態では、細菌は、メチオニン制限、ロイシン制限、ノルロイシン過剰、およびその組合せから選択される条件下で増殖させる。一部の実施形態では、BMP−12関連タンパク質は、細菌の全タンパク質の少なくとも約1%、2%、5%、8%、10%、12%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、またはそれより多くを構成する。より具体的な実施形態では、BMP−12関連タンパク質は、細菌の全タンパク質の少なくとも10%を構成する。さらにより具体的な実施形態では、BMP−12関連タンパク質は、細菌の全タンパク質の約10〜24%を構成する。
【0057】
一部の実施形態では、組成物は、1つまたは複数の医薬担体をさらに含み得る。適切な医薬担体は、従事者によって所望される特性に基づいて選択される。BMP用の医薬担体の一般的な総説には、たとえば、SeehermanおよびWozney、Cytokine Growth Factor Rev.、16(3):329〜45(2005)を参照されたい。一般に、担体は、本発明のBMP−12関連タンパク質の活性を保持し、かつ生体再吸収可能である必要がある。担体分子は、治療部位におけるBMP−12関連タンパク質の保持時間を有利に増加させ得る。さらに、担体は、残留担体が治癒を妨害せずに、細胞の浸潤を可能にすべきである。
【0058】
適切な担体には、可溶化賦形剤および安定化剤、天然ポリマー、たとえば、コラーゲン、ゼラチン、ヒアルロナン、キトサン、絹、フィブリン、アルギネートまたはアガロース、人工ポリマー、たとえば、ポリラクチドまたはポリグリコリドおよびそのコポリマーなどのポリ(α−ヒドロキシ酸)ポリマー、ならびに無機化合物、たとえば、高温や低温のオルトホスフェート(リン酸カルシウムや焼結セラミックなど)および硫酸カルシウムを含む、緩衝液および溶液が含まれる。
【0059】
特定の実施形態では、本発明の組成物は、1つまたは複数の追加の骨形成タンパク質(BMP)などの追加の成長因子を含有する。BMPの説明は以下の出版物中に見つけることができる:BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6、およびBMP−7(たとえば、米国特許第5,108,922号、第5,013,649号、第5,116,738号、第5,106,748号、第5,187,076号、および第5,141,905号に開示)、BMP−8(PCT WO91/18098号に開示)、BMP−9(PCT WO93/00432号に開示)、BMP−10(PCT WO94/26893号に開示)、BMP−11(PCT WO94/26892号に開示)、BMP−12およびBMP−13(PCT WO95/16035号に開示)、BMP−15(米国特許第5,635,372号に開示)、BMP−16(米国特許第6,331,612号に開示)、MP−52(PCT WO93/16099号に開示)、ならびにBMP−17およびBMP−18(米国特許第6,027,917号に開示)。これらのタンパク質への言及には、BMPの変異体、対立遺伝子変異体、断片、ならびに、それだけには限定されないが、欠失突然変異体、挿入突然変異体、および置換突然変異体を含めた突然変異体が含まれることを理解されたい。特に、任意の特定のBMPへの言及には、少なくとも1、3、5、7、10、15、18、20、22、25、30、35、またはそれより多くの残基が成熟タンパク質のN末端から除去されているN末端切断断片が含まれることを理解されたい。特定の実施形態では、組成物には、本発明の置換、切断、または置換−切断されたBMP−12関連タンパク質の1つのサブユニットおよび別のBMPの1つのサブユニットを含有するヘテロ二量体が含まれる。ヘテロ二量体は、たとえば、参照により組み込まれているWO93/009229号にさらに詳述されている。
【実施例】
【0060】
(実施例1)
置換BMP−12の発見
組換えBMP−12の大腸菌(E.coli)産生の発酵条件の開発中に、BMP−12の新種が後期に溶出されるRP−HPLCのピーク中で同定され、ペプチドマップにおいて確認された。
【0061】
大腸菌(E.coli)におけるBMP−12発酵物からの可溶化した封入体(sIB)を、最小希釈係数10を有する還元緩衝液(5MのグアニジンHCl、0.1Mのトリス、pH8.2)で0.2〜0.5mg/mL(A280によって推定)に希釈した。1MのDTT(ジチオスレイトール)を10mMの最終濃度まで加えて、BMP−12を単量体サブユニットへと還元した。還元混合物を40℃で30分間インキュベーションし、0.3%(v/v)のTFA(トリフルオロ酢酸)の最終濃度となるまで10%のTFA(v/v)で酸性化した。高度に精製した試料を、希釈係数10を有する還元緩衝液で0.1mg/mLまで希釈し、上述のようにDTTによって還元させた。ルーチン分析およびLC/MS分析用のHPLC方法は以下のとおりである。
【0062】
【表2】
【0063】
発酵中の迅速なインプロセススクリーニング用のHPLC方法は以下のとおりである。
【0064】
【表3】
【0065】
図1は、典型的なBMP−12ピークの直後期に溶出される2つの新しいピークを有する(ロット174、図1B)または有さない(ロット002、図1A)、高度に精製したBMP−12の還元性RP−HPLCプロフィールを示す。以前の実験室スケールのBMP−12調製物も後期に溶出されるピークを欠き、ロット002に類似のプロフィールを示す。
【0066】
(実施例2)
精製ではなく発酵により新しいBMP−12種が生じた
前出の実施例に記載した新しいBMP−12種は、発酵プロセスから生じ、続く精製からではない可能性が非常に高い。図2Aおよび2Cは、新しい種がsIB段階(図2A)で既に存在していた場合は、これはさらなる精製(図2C)によって有意に除去されなかったことを示す。逆に、図2Bおよび2Dは、sIB調製物(図2B)が新しい種を含有しなかった場合は、これはさらに精製した試料(図2D)中にも存在しなかったことを示す。様々な発酵由来のいくつかのsIBバッチから同様の結果が得られた。したがって、新しいBMP−12種は、発酵プロセスの結果であり、続く精製の結果ではない可能性が高い。
【0067】
(実施例3a)
新しいBMP−12種はメチオニン残基での置換を含有する
新しいBMP−12種を含有する精製したBMP−12材料のうちの1つであるロット174を選択して、新しい種のさらなる特徴づけおよび同定を行った。還元性RP−HPLCにおいて新しい種を示さなかった、以前に調製した材料であるロット148を対照として使用した。
【0068】
図2に示す還元性RP−HPLCプロフィールを、高分解能のWaters QTOF質量分析装置(MS)と連結させることによってさらに分析した。液体クロマトグラフィー/質量分析(LC/MS)の結果は、最初に主要なピークが観察質量14014.8Daを有することを示しており、これは、BMP−12単量体サブユニットの理論質量14014.9Daと一致している。新しいBMP−12種を含有する2つの後期に溶出されるピークは、野生型BMP−12と比較してそれぞれ−18Daおよび−36Daの質量差を有する。これらの後期に溶出されるピークは、全単量体種のそれぞれ約32%および8%を構成する。
【0069】
図3Aおよび3Bは、アルキル化およびトリプシン処理後の、それぞれロット148(新しい種を有さない)および174(新しい種を有する)のペプチドマップを示す。BMP−12の理論的なトリプシン−ペプチドマップを図4に示す。2つの新しいピーク(破線)がロット174のマップ中に存在する一方で、T12およびT10ペプチドは対応する強度の減少を示した。LC/MSペプチドマッピングでも2つの新しいピークが示され、2つのMet含有ペプチド、T10およびT12に対する−18Daの質量差が限局された。高分解能のQTOF質量分析装置により、T10およびT12由来のペプチドについてそれぞれ−17.949および−17.957Daの正確な質量差が提供された。ESI−QTOF質量分析装置の質量の正確さにより、新しいBMP−12種がロイシン、イソロイシン、またはノルロイシンによるメチオニンの置換を含有するとして特徴づけすることが可能となった。ロット174中の「アーチファクト」のピークは、質量分析により試料調製中の不完全な還元によって引き起こされると同定された。
【0070】
ロイシン、イソロイシン、またはノルロイシンでメチオニンを置換することの正確な質量差は−17.956Daである。質量値ではロイシン、イソロイシン、またはノルロイシンを識別することができないが、大腸菌(E.coli)における組換えタンパク質の過剰発現はメチオニンの代わりにノルロイシンを取り込むことをもたらす場合があるため、置換されたアミノ酸はノルロイシンである可能性が高い(Tsaiら、Biochem.Biophys.Res.Comm.、156:733〜739(1988)、Bogosianら、J.Biol.Chem.、264:531〜539、(1989))。
【0071】
メチオニンおよびノルロイシンを含有するT10およびT12ペプチドを収集し、その後、ナノESI−QTOF MS/MSによって断片化して、ノルロイシンでのメチオニンの置換を確認した(図5、図6)。ほぼ同じ割合のT10およびT12ペプチドがノルロイシンで置換された形態中に存在していた。これは、メチオニンおよびノルロイシンの置換には部位優先度がないことを示唆している。
【0072】
ペプチドマッピングの結果に基づいて、還元性RP−HPLCプロフィール(図1)における2つの後期に溶出されるピークは、一方(−18Da)または両方(−36Da)のメチオニンがノルロイシンで置換されているBMP−12単量体を表す。ジスルフィド結合した二量体の形態では、4個までのメチオニンからノルロイシンへの置換が可能である。それぞれの単量体サブユニット上のそれぞれのメチオニン部位での置換がランダムであり、協同性または部位優先度がない場合、それぞれの部位において25%の置換率(図3のペプチドマップにおけるメチオニンおよびノルロイシン含有ペプチドの相対ピーク面積に基づく)により、置換された単量体サブユニットの以下の予測される分布がもたらされる:
・約56%、置換なし(2個のメチオニン)
・約38%、単一の置換を有する(1個のメチオニンおよび1個のノルロイシン)
・約6%、二重の置換を有する(2個のノルロイシン)
【0073】
この予想された分布は図1の還元性RP−HPLCプロフィールで観察された実際の分布に大雑把に一致し、これは、2つの部位での置換がランダムに分布されていることを示唆している。置換された単量体サブユニットの様々な形態(再折り畳み前)が、再折り畳み中の置換されていないサブユニットと同じように挙動すると仮定すると、以下の二量体種の分布が予測される:
・約32%、置換なし(4個のメチオニン)
・約42%、1個の置換を有する(3個のメチオニン、1個のノルロイシン)
・約21%、2個の置換を有する(2個のメチオニン、2個のノルロイシン)
・約5%、3個の置換を有する(1個のメチオニン、3個のノルロイシン)
・約0.4%、4個の置換を有する(4個のノルロイシン)。
【0074】
(実施例3b)
置換BMP−12は野生型BMP−12と生物物理学的に類似している
純粋なノルロイシンで置換したBMP−12は単離しなかったが、有意な量の置換BMP−12を有するおよび有さないバッチ間の比較により、置換は、1)電気泳動移動度(見かけの大きさ、還元性および非還元性SDS−PAGEならびに非還元性SDS−CEによる)、2)凝集、3)ジスルフィドノット形成(ペプシン消化に対する耐性)、4)折り畳み(トリプトファン蛍光)、または5)in vitro生物活性(実施例4を参照)に有意な影響を与えないことが示された。
【0075】
(実施例4)
置換BMP−12は正常な生物活性を有する
有意な置換を含有するBMP−12のバッチ(ロット174)のin vitro生物活性を、低い置換率を有するBMP−12の2つのバッチ(ロット002およびロット148(標準)、液体クロマトグラフィー/質量分析によって検出して<5%)と、たとえば参照により組み込まれているKusanagiら、Mol.Bio.Cell、11:555〜65(2000)に詳述されている骨形成タンパク質応答エレメントルシフェラーゼレポーター遺伝子バイオアッセイ(BRE−luc)において比較した。アッセイ前に試料を50mMの酢酸で1mg/mLまで希釈した。これらの試料をバイオアッセイの前に滅菌濾過し、濾過した試料の濃度を、A280値を用いて確認した。すべての試料はバイオアッセイにおいて比較可能な活性を示した(図7)。
【0076】
ロット174は、単量体中のそれぞれの部位で約25%のメチオニンからノルロイシンへの置換を含有していた。還元性RP−HPLCに基づいて、単量体サブユニットの約40%が少なくとも1つの置換されたメチオニンを含有しており、これは、少なくとも1つの置換されたメチオニンを含有する全BMP−12二量体の約70%に対応する。この置換レベルは、試験したBMP−12のin vitro生物活性または他の物理的特徴に有意な影響は全く与えなかった。
【0077】
(実施例5a)
非置換BMP−12は酸化による失活に感受性である
BMP−12のin vitro生物活性に対する酸化の効果を調査するために、野生型BMP−12のバッチ(<5%のノルロイシン置換)を、光から保護して様々な濃度の過酢酸(形成緩衝液で希釈)と共に2時間、室温でインキュベーションした。過酢酸は時間と共に分解されるが、残った可能性がある残留過酢酸はすべて、Zeba脱塩スピンカラム(MWCO 7000)での緩衝液交換によって除去した。図8は、酸化された試料の還元性RP−HPLCクロマトグラムを示す。還元性RP−HPLCにより、ジスルフィド還元単量体サブユニットの一重酸化および二重酸化された形態が分離された(ピークが何であるかは、液体クロマトグラフィー/質量分析によって確認した)。過酢酸レベルが増加するにつれて、BMP−12の酸化された形態の割合も増加した。相対ピーク面積を比較することによって、二重酸化された形態は低い過酢酸濃度で初期の遅れを示したが、より高い過酢酸濃度では容易に増加したことが明らかであった。
【0078】
高レベルの過酢酸は鎖間ジスルフィド結合の酸化切断をもたらす場合があり、BMP−12二量体が不活性の単量体サブユニットへの解離が引き起こされる。しかし、図9は、二量体のほとんどが各試料中でインタクトであったことを示す。最高レベルの過酢酸を有する試料では(一番右のレーン)、単量体およびジスルフィドがスクランブルされた二量体(通常の二量体のバンドの上を移動する小さなバンド)のわずかな増加が観察された。しかし、その試料中でさえも、タンパク質の大多数は予測された二量体の形態であり、対照試料と同じ位置で移動した。したがって、ジスルフィド結合の酸化切断からの最小限の妨害が予測された。
【0079】
過酢酸処理した試料および未処理の対照試料の生物活性をBRE−lucバイオアッセイによって測定した。図10は、in vitro生物活性と還元性RP−HPLCによって測定した酸化レベルとの間の相関を示す(図8)。メチオニン酸化の程度とin vitro生物活性との間には直接の負の相関があった。
【0080】
図10に示されるように、BMP−12中のどちらのメチオニン残基の酸化も活性の低下をもたらす。酸化により、メチオニンの疎水性側鎖がより親水性のものに変わり、これにより、タンパク質の構造の変化がもたらされ、かつ/またはたとえば受容体もしくは別のBMP−12単量体サブユニットとの相互作用に影響が与えられ得る。これは、活性を維持するために84および121の位置での疎水性側鎖が必要であることを示唆している。メチオニンをノルロイシンで置換することで、疎水性の性質および残基のおおよその大きさが維持される。したがって、メチオニンの代わりにノルロイシンを取り込ませることで、BMP−12の構造および生物活性がどちらも維持されると推測することが合理的である。
【0081】
rhBMP−2の配列も2つのメチオニン残基を含有し、そのうちの1つはBMP−12中で保存されている(M121)。また、過酢酸によるrhBMP−2中のメチオニン残基の酸化は、活性の減少ももたらす。この残基がBMP−12およびBMP−2の間で保存されていることは、この特定のメチオニン残基の重要性を強調している。
【0082】
(実施例5b)
置換BMP−12は酸化失活に耐性である
置換BMP−12に対する酸化の効果を調査するために、それぞれのメチオニン部位で25〜40%の置換を含有する置換BMP−12のバッチのプールを過酢酸での酸化に供し、検出不可能なレベルの置換を有するバッチと比較した。最高レベルの過酢酸では、通常のBMP−12ではどちらのメチオニン残基でも約80%が酸化された一方で、高度にノルロイシン置換されたプールの約40%のみが完全に酸化された(図11)。ノルロイシンの存在は残ったすべてのメチオニン残基の酸化率には影響を与えなかったと考えられるが、完全に置換BMP−12は酸化に完全に耐性であると予測される。
【0083】
次に、高度にノルロイシン置換されたバッチのプールにおける、in vitroのBMP−12活性に対する酸化の効果(BRE−lucバイオアッセイによって測定)を、有意な置換を有さないBMP−12のバッチと比較した。比較的低いレベルの過酢酸では、高度にノルロイシン置換されたBMP−12試料は非置換BMP−12に匹敵する活性の損失を示した。しかし、より高いレベルの過酢酸では、高度にノルロイシン置換されたBMP−12試料はそれでも有意な活性を維持していた一方で、非置換BMP−12は完全に不活性であった(図12)。これらの結果は、置換BMP−12が酸化関連失活に対してより耐性であることを示す。
【0084】
(実施例6)
発酵条件
使用した基本的な発酵条件への改変およびBMP−12の様々なロットで観察された置換のレベルを表4に提供する。大腸菌(E.coli)の原栄養株をBMP−12の産生に使用した。光学密度(OD)はShimadzu UV 2401PC分光光度計で測定した。
【0085】
大腸菌(E.coli)の発酵(10Lまたは60Lの発酵)プロセスで使用した基本栄養培地には、6.8g/Lのリン酸カリウム一塩基性、2.0g/Lの硫酸アンモニウム、3.0g/Lのクエン酸三ナトリウム、0.1g/LのCaCl2・2H2O、2.4g/LのMgSO4・7H2O、1.0ml/Lの微量元素混合物(27.03g/Lの塩化第二鉄、1.29g/Lの塩化亜鉛、2.0g/Lのモリブデン酸ナトリウム、1.0g/Lの塩化カルシウム、1.27g/Lの塩化第二銅、0.5g/Lのホウ酸、2.86g/Lの塩化コバルト、100ml/LのHCl、蒸留水で最終体積1リットルまで)、および任意選択で2.0〜4.0g/LのAmisoy(商標)(ダイズタンパク質加水分解物)が含まれていた。Amisoy(商標)(アミノ酸源)はすべての発酵条件には存在させなかった。すべての成分を水に溶かした後、60分間オートクレーブすることによって発酵槽を滅菌した。滅菌後、培地のpHを無菌条件下で7.0に調節し、その後、40%のグルコースストック溶液(200〜250ml、最終濃度1.0〜1.25g/L)を8Lの培地に加えた。さらに、市販のRoswell Park Memorial Institute(RPMI)ビタミン混合物(1ml/L)またはアミノ酸を含まない酵母窒素ベース(0.1g/L)のどちらかを滅菌濾過し、オートクレーブした培地に加えた後、成熟rhBMP−12遺伝子を発現させるためのプラスミドを保有する組換え大腸菌(E.coli)株と共に播種した。pHは、pHコントローラーによって濃水酸化アンモニウム溶液で制御した。
【0086】
播種後、培地を通気し、溶存酸素飽和を20%に維持するために0.8〜1.0VVMに維持し、攪拌器RPMにカスケードした。細胞密度(OD600)が約15〜18に達した際、40%のグルコースストック溶液の供給を1.0ml/分(約3.5g/L/時間)で開始し、細胞密度が所望の値に達するまで続けた。OD600が約30〜60となった際、トリプトファンを約0.3〜0.6g/Lの最終濃度まで加えることによってBMP−12タンパク質合成を誘導し、グルコースの供給をさらに4〜24時間続けた。細胞を遠心分離によって収集し、機械的に壊して開け、BMP−12タンパク質を含有する封入体を単離した。
【0087】
【表4】
【0088】
ロット148および002を生じたバッチを播種した後、OD600が8〜10に達した際に10g/L/時間のグルコースの供給を開始した。OD600が30に近づいた際(8.7時間)、誘導培地フィードを施用し、1.5時間で完了した。バッチを13時間目の最終OD600が55.0となった際に収集した。
【0089】
他の実施形態では、BMP−12合成の誘導前のグルコース供給の長さは変動する場合がある。たとえば、Amisoy(商標)が初期培地中に存在する発酵バッチでは、細胞密度OD600が約30または60に達するまでグルコース供給を続けることができ、この場合、Amisoy(商標)中に存在するアミノ酸のほとんどが代謝される。したがって、それに依存するわけではないが、遺伝子発現をこれらの条件下で誘導した場合、メチオニン置換は、たとえば、細胞が利用可能な遊離メチオニンが低レベルであること、および/またはロイシン経路の低いロイシン誘導性活性化から生じるノルロイシン合成が増加することが原因で起こるという学説が立てられている。
【0090】
BMP−12中にノルロイシン置換が発見された後、大腸菌(E.coli)の40%のグルコースフィードにメチオニン(0.1M)、ロイシン(0.1M)、またはメチオニンおよびロイシンの組合せ(それぞれ0.05M)を補充した。生じたsIB調製物を部分精製し、ESI−QTOF MSと連結させた還元性RP−HPLCおよびペプチドマッピングによって分析した。3つの条件すべてにより、検出不可能または微小レベルのBMP−12置換がもたらされた。
【0091】
(実施例7a)
切断されたBMP−12種の同定
新しいピークが精製したBMP−12の一部のバッチの非還元性SDS−CEアッセイで観察された(図13)。新しいピークがBMP−12の2つのバッチで観察されたが(07L78H001および07L78H002、図13C、13D)、以前に精製した参照バッチでは観察されなかった(IRM#1、図13B)。新しいピークが二量体ピークの直前であるが単量体ピークの後に移動した。したがって、新しい種の見かけの大きさは、28kDa未満であるが14kDaよりも大きい。さらに、新しいより低いバンドがこれらのバッチの還元性SDS−PAGEで観察されたが、参照バッチ中では観察されなかった。これらのバッチのRP−HPLC分画および液体クロマトグラフィー/質量分析により、非還元性SDS−CEにおける新しいピークおよび還元性SDS−PAGEにおける新しいバンドが、どちらもBMP−12の26kDaのN末端が切断された形態に関連していることが明らかとなった。また、液体クロマトグラフィー/質量分析により、特定の調製物においてBMP−12の27kDaのN末端が切断された形態も同定された。
【0092】
切断されたBMP−12種をより良好に検出するために、SDS−PAGEをさらに洗練させた。切断された種を、10%のトリシンゲルを用いてSDS−PAGEによって完全長BMP−12種から分離した。非還元の高度に精製した試料はかすかな低分子量(LMW)のバンド(より低い移動位置)を示し、これは非還元性SDS−CEプロフィールと一致している。試料を還元およびアルキル化した場合、LMWバンドがより高い全タンパク質ロードで検出された。LMWバンドの推定分子量は、主バンドよりも約2kDa低い。
【0093】
オンラインRP−HPLC/MS分析により、切断された種のうちの1つがBMP−12ピークの最後の1/3で溶出されたことが示された。さらなる特徴づけのために切断された種を濃縮するために、切断された種を含有する還元またはインタクトな試料をRP−HPLC中の溶出時間によって分画した。BMP−12の単量体サブユニットの分析には還元条件を使用した一方で、二量体BMP−12の分析には非還元条件を使用した。画分の収集に必要なより高いロードを可能にするために、Poros R1/10カラムを使用した。
【0094】
ジスルフィドが還元されたBMP−12単量体の2つの画分をナノエレクトロスプレーイオン化QTOF−質量分析(ナノESI QTOF−MS)およびナノESI QTOF MS/MSに供した。MSモードを使用して、後期に溶出される画分が切断された12036.8および13344.1Da種を含有することを確認した。12036.8Da種の優勢な荷電状態を選択し、衝突誘起解離(CID)によって断片化して、種を配列決定し、それが23RGR・・・GCR129であることを確認した(図14)。配列タグを含むb型およびy型の断片イオンについて決定した正確な質量は、断片化していない種の正確な質量分析に基づく23RGR・・・GCR129としてのNH2末端の割当てを支持している。同様の分析により、13344.1Daの種が8TAQ・・・GCR129として同定された。
【0095】
RP−HPLC/MSを使用して、精製プロセスの全体にわたって収集された生成物のプールにおける切断された種の存在を検査した。存在量に有意な変化なしに、上述の切断された種が精製プロセス全体にわたって検出された。下流の精製ではこれら2つの切断された種がいかなる有意な度合にも除去されず、これは、これらが完全長BMP−12と構造的に非常に類似していることを示している。
【0096】
(実施例7b)
酵素的に切断されたBMP−12は活性の増強を示す
再折り畳み反応を模倣する緩衝液−洗剤の溶液(2%のCHAPS、0.1Mのトリス、pH8.4、5mMのEDTA)中での希釈した高度に精製したBMP−12のトリプシン消化によって、切断されたBMP−12を意図的に生成した。BMP−12を非常に低いレベルのトリプシン(E:S=2000)と共にインキュベーションすることで、10分以内に室温で、実施例7aに記載のものに類似の(図14)、切断された種が生じた(図15)。より高いトリプシン濃度(E:S=100など)またはより長いインキュベーション時間では、さらなる切断を観察することができる。
【0097】
液体クロマトグラフィー/質量分析を可能にするために、CHAPSの代わりに0.2%のRapigest(商標)を含有する緩衝液−洗剤の溶液中での高度に精製したBMP−12のトリプシン消化によって切断された種を生成した。この分析から、トリプシンタンパク質分解により、実施例7aで同定したものに類似の、R7、R22、およびR23のN末端を有するBMP−12が生じたことが示された。
【0098】
トリプシンで切断されたBMP−12種をBRE−lucバイオアッセイで試験し、上昇したin vitro生物活性が示された(図16)。切断された種のin vivo活性は試験しなかった。
【0099】
BMP−12のN末端が切断された形態(26SRC・・・GCR129)を大腸菌(E.coli)中で産生させ、ラット異所性アッセイにおいて腱様組織を誘導することが見い出された。また、完全長BMP−12分子も動物モデルにおいて活性である。ここで観察された切断物は、完全長BMP−12およびより短いBMP−12の切断された種(どちらもin vivoで生物活性がある)の中間の大きさであったため、切断された種もin vivoで生物活性があると予測される。
【0100】
本発明の他の実施形態は、本明細書中に開示した本発明の明細および実施を考慮することで、当業者には明らかであろう。明細および実施例は例示的のみとして考慮されることを意図し、本発明の真の範囲および精神は以下の特許請求の範囲によって示される。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公表番号】特表2011−522565(P2011−522565A)
【公表日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−513605(P2011−513605)
【出願日】平成21年6月8日(2009.6.8)
【国際出願番号】PCT/US2009/046589
【国際公開番号】WO2009/152085
【国際公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(309040701)ワイス・エルエルシー (181)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月8日(2009.6.8)
【国際出願番号】PCT/US2009/046589
【国際公開番号】WO2009/152085
【国際公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(309040701)ワイス・エルエルシー (181)
【Fターム(参考)】
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