説明

新規dsDNA結合蛍光色素

本発明は、(i)ピリミジンの2位にC-原子で始まる置換基を有すること、および(ii)ピリミジン環の5位および6位が、さらなる芳香族環構造の一体化した一部分であることを特徴とする、モノメチン結合によって連結されたベンゾチアゾリウム部分およびピミジニウム部分を含む蛍光色素に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光色素が二本鎖核酸に特異的に結合された状態で適切に励起される場合に蛍光を放出することができる新規種類の蛍光色素に関する。かかるdsDNA結合色素は、リアルタイムでの核酸増幅のモニタリングまたは温度依存性DNA融解曲線解析の実施に頻度高く使用される。
【背景技術】
【0002】
(先行技術背景)
臭化エチジウムのような蛍光二本鎖DNA結合色素は、電気泳動に供されたゲルマトリックス中の核酸の染色に以前から使用されている。
【0003】
等しく重要なことには、蛍光二本鎖DNA結合色素は、当該技術分野で、PCRまたは融解曲線解析のような核酸増幅のリアルタイムモニタリングに使用されている。それぞれの増幅産物は、二本鎖核酸との相互反応時に適切な波長の光で励起した後に対応する蛍光シグナルを放出する蛍光DNA結合色素によって検出される。少なくとも部分的にインターカレートする色素SybrGreenI(Molecular Probes)はこの用途に適切であることが証明されている。
【0004】
この形式を用いるリアルタイムアンプリコン検出がプライマー/ダイマーのような特異的な産物と増幅人工物とを区別できないという事実のために、次に融解曲線解析が通常行われる。PCR反応の終了後に、試料の温度は構成的に高く、SybrGreenが試料中に存在する二本鎖DNAに結合されている限り、蛍光が検出される。二本鎖DNAが解離した時に、シグナルは直ぐに減少する。この減少は、蛍光の最大減少が観察される時の一次導関数の値が決定され得るように、適切な蛍光対温度-時間プロットでモニターされる。プライマー/ダイマー二本鎖DNAは通常短いために、二本鎖特異的増幅産物の解離と比べて一本鎖DNAへの解離が低温で生じる。
【0005】
リアルタイムPCRおよび融解曲線解析のための検出薬として使用され得る当該技術分野で公知のいくつかの蛍光二本鎖DNA結合色素が存在する。最も卓越してかつ最も頻度高く使用される例はSybrGreen Iであり、モノメチン結合を介してピリジニウムまたはキノリニウム環系に結合されたN-アルキル化ベンゾチアゾリウム環系を含む非対称モノマーシアニン色素である(米国特許第5,658,751号)。より正確に、SybrGreenは、化学式[2-[N-(-3-ジメチルアミノプロピル)-N-プロピルアミノ]-4-[2,3-ジヒドロ-3-メチル-(ベンゾ-1,3-チアゾール-2-イル)-メチリデン]-1-フェニル-キノリニウム]+を有する(Zipper, H., et al., Nucl. Acids Res. 32 (2004) e103)。関連する色素PicoGreenでは、化学式が[2-[N-ビス-(-3-ジメチルアミノプロピル)-アミノ]-4-[2,3-ジヒドロ-3-メチル-(ベンゾ-1,3-チアゾール-2-イル)-メチリデン]-1-フェニル-キノリニウム]+であると解される。
【0006】
米国特許第4,937,198号は、化学式3-メチル-2-[[(3,7-ジメチル-6-プリニリデン)-メチル]-ベンゾチアゾリウムを有する関連蛍光DNA結合色素を開示しており、細胞系アッセイにおける核酸染色に首尾よく使用されている。さらなる色素およびそれぞれの分析手段がMoreda, W.およびForrester, A.R., Tetrahedron 53 (1997) 12595-12604に開示されている。
【0007】
WO 04/38038は、メチン結合によって連結されるピリミジニウム環系およびベンゾチアゾリウムに基づいた蛍光dsDNA結合色素の例を開示している。SybrGreenとは対照的に、飽和条件、即ち、各DNA分子がすでに最大数の蛍光分子と結合している高濃度下で、PCR増幅産物の検出にこれらの色素を使用することができる。US 2005/233335では、同じグループの発明者らが、ピリミジン部分およびベンゾチアゾリウム部分を含む蛍光分子のさらなる具体例を開示している。
【0008】
開示された多くの色素は、リアルタイムPCRおよびアンプリコン融解曲線解析に首尾よく使用されている。しかし、当該技術分野で記載される蛍光二本鎖DNA結合色素は全て、制限された安定性を有するおよび/または融解曲線解析の改善された方法のみに限定されて有用である。変異スキャニングに適用され得る融解曲線解析のかかる改善された方法(WO 04/38038)について、標的核酸の構造状態に関してわずかな温度変化の影響が分析されている。
【発明の概要】
【0009】
従って、本発明の目的は、DNA融解曲線解析中の増大した安定性および改善された性能を有する改善された二本鎖DNA結合蛍光色素を提供することであった。
【0010】
(発明の簡単な説明)
第一の局面において、本発明は、モノメチン結合によって連結されたベンゾチアゾリウム部分およびピリミジニウム部分を含む蛍光色素であって、
(i)ピリミジンの2位がC原子で始まる置換基を保有する
(ii)ピリミジン環の5位および6位がさらなる芳香族環構造の統合(integral)部分であることを特徴とする
蛍光色素に関する。
【0011】
より正確に、第一の局面において、本発明は、式


(- A1、A2、A3およびA4の全てはHであるまたはA1、A2、A3およびA4の1つは好ましくはハロゲニルである置換基であり、他はHであるかのいずれかである
- BはS、O、N-R、およびC-(R)2(式中、RはC1〜C6-アルキルである)からなる群より選択される
- Dは非置換もしくは置換C1〜C6アルキルのいずれかである
- XはHまたはメトキシ基のいずれかである
- YはS、O、N-R(式中、RはC1〜C6-アルキルである)、ならびにZ1-C=C-Z2(式中、Z1およびZ2は互いに独立してHまたはメトキシ基のいずれかである)からなる群より選択される
- LはCH3またはフェニルのいずれかである
- Mはフェニルまたは置換もしくは非置換C1〜C18アミノ-アルキルのいずれかである
ことを特徴とする)
を有する蛍光色素に関する。
【0012】
一態様において、Dは-(CH2)n-COOHまたは-(CH2)n-CO-Oスクシンイミド(Succininimid)のいずれかであり、nは1〜6の自然数であることを特徴とする。
【0013】
有利には、Mは-(CH2)n-N+-(CH3)3(式中、nは1〜18の自然数である)である。
【0014】
第二の局面において、本発明は、
a)式


(- XはHまたはメトキシ基のいずれかである
- YはS、O、N-R(式中、RはC1〜C6-アルキルである)、ならびにZ1-C=C-Z2(式中、Z1およびZ2は互いに独立してHまたはメトキシ基のいずれかである)からなる群より選択される
- LはCH3またはフェニルのいずれかであることを特徴とする)
を有する化学物質を提供する工程、
b)1,4-ジヒドロピリミジン-4-オン誘導体を作製するために前記物質と置換酸性塩化物とを反応させる工程、
c)1,4-ジヒドロピリミジン-チオン誘導体を作製するために前記1,4-ジヒドロピリミジン-4-オン誘導体とチオネーション(thionation)試薬とを反応させる工程、
d)4-メチルチオ-ピリミジン誘導体を作製するために前記1,4-ジヒドロピリミジン-チオン誘導体とヨードメタンとを反応させる工程、
e)前記4-メチルチオ-ピリミジンと式


(- A1、A2、A3およびA4の全てはHであるまたはA1、A2、A3およびA4の1つは好ましくはハロゲニルである置換基であり、他はHであるかのいずれかである
- BはS、O、N-R、およびC-(R)2(式中、RはC1〜C6-アルキルである)からなる群より選択される
- Dは置換もしくは非置換C1〜C6アルキルのいずれかであることを特徴とする)
を有する化合物とを反応させる工程
を含む、請求項1記載の蛍光色素の製造方法に関する。
【0015】
本発明の化合物は様々な種々の用途に使用され得る。
【0016】
特に、本発明による化合物は二本鎖核酸の検出に使用される。
【0017】
一態様において、本発明による化合物はリアルタイムでの核酸増幅反応中の二本鎖核酸の検出に使用される。
【0018】
第二の態様において、本発明による化合物は融解曲線解析中の二本鎖核酸の検出に使用される。
【0019】
さらなる態様において、本発明による化合物は、二本鎖核酸がゲル電気泳動に供されたゲルマトリックス中の二本鎖核酸の検出に使用される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1はRO3の合成スキームである。
【図2】図2はRO4の合成スキームである。
【図3】図3はR11の合成スキームである。
【図4】図4はR12の合成スキームである。
【図5】図5はR13およびR14の合成スキームである。
【図6】図6はR26の合成スキームである。
【図7】図7はR27の合成スキームである。
【図8】図8はR28の合成スキームである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(発明の詳細な説明)
本発明による化合物
本発明は、式


(- A1、A2、A3およびA4の全てはHであるまたはA1、A2、A3およびA4の1つは好ましくはハロゲニルである置換基であり、他はHであるかのいずれかである
- BはS、O、N-R、およびC-(R)2(式中、RはC1〜C6-アルキルである)からなる群より選択される
- Dは非置換もしくは置換C1〜C6アルキルのいずれかである
- XはHまたはメトキシ基のいずれかである
- YはS、O、N-R(式中、RはC1〜C6-アルキルである)、ならびにZ1-C=C-Z2(式中、Z1およびZ2は互いに独立してHまたはメトキシ基のいずれかである)からなる群より選択される
- LはCH3またはフェニルのいずれかである
- Mはフェニルまたは置換もしくは非置換C1〜C18アミノ-アルキルのいずれかであることを特徴とする)
を有する蛍光色素に関する。
【0022】
モノメチン結合によって連結されたベンゾチアゾリウム部分およびピリミジニウム部分を含むかかる蛍光色素の1つの重要な特徴は、ピリミジンの2位がC原子で始まる置換基を保有するということである。結果として、かかる蛍光化合物は当該技術分野で公知の他の蛍光色素と比べて熱安定性および化学安定性が高い。
【0023】
第二の重要な特徴は、ピリミジン環の5位および6位がさらなる芳香族環構造の統合部分であるということである。これらによって、2つの環構造はキナゾリンまたはある態様において他の複素環構造を形成する。結果として、蛍光化合物の励起および放出スペクトルは、WO 04/38038およびUS 2005/233335に開示されるものと異なっているが、SybrGreenのものと同様である。従って、本発明の化合物は、SybrGreenの検出に専ら設定される同じ検出チャンネルによって検出され得る。さらに、所定の構造内で、該放出スペクトルは、該化合物のXおよびY置換基の1つまたは他の代替物を選ぶことによって調節され得る。
【0024】
好ましくは、A1、A2、A3およびA4の唯一代表的なものは置換である。また好ましくは、かかる置換はハロゲニルであり、最も好ましくはフッ素原子である。また非常に好ましくは、Bは硫黄原子である。
【0025】
蛍光化合物が第二の化学部分にコンジュゲートされない色素として使用される場合において、Dはメチル基または別のC2〜C6アルキル基である。しかし、本発明の蛍光化合物が第二の化学部分に連結される場合において、Dは-(CH2)n-COOHまたは-(CH2)n-CO-Oスクシンイミド(nは1〜6の自然数であることを特徴とする)のいずれかである。好ましくはこれらの場合で、nは3または4のいずれかである。次に蛍光化合物は任意の種類の他の分子、特に生体分子にそれぞれの基を介して結合し得る。例えば、かかる化合物はオリゴヌクレオチドの5'末端に結合し得る。次に、得られるコンジュゲートは、該オリゴヌクレオチドが相補的な標的核酸配列にハイブリダイズしている場合のみで適切な励起の後に蛍光を放出するハイブリダイゼーションプローブとして機能し得る。
【0026】
一態様において、Lはフェニルであり、Mは置換もしくは非置換C1〜C18アミノ-アルキルである。あるいは、Mはフェニルであり、Lはメチル基である。さらにあるいは、Lはメチル基であり、Mは置換もしくは非置換C1〜C18アミノ-アルキルである。これらの分子は低いDNAインターカレート特性を有する傾向があるために、LおよびMがフェニルである態様は好ましくない。特に、Mは-(CH2)n-N+-(CH3)3(式中、nは1〜18の自然数である)であり得る。
【0027】
ピリミジンの5位および6位(ピリミジン自体において定義される)を介してピリミジンに連結されるさらなる芳香族環構造は、一態様において、キナゾリンが形成されるようなフェニレン環である。このフェニレン環は、キナゾリン環系の6位および/または7位で1個または2個のメトキシ基と置換され得る。
【0028】
別の態様において、芳香族環構造は、硫黄原子を有する5-複素環であり、チエノ[3,2-d]ピリミジンを形成する。
【0029】
さらに、本発明によるかかる化合物が固体状態で存在する場合に、好ましい対イオンはヨウ化物または塩化物などのハロゲンである。
【0030】
以下の構造:
















を有する化合物が非常に好ましい。
【0031】
本発明による方法
本発明によって開示される化合物は全て、本発明による特定の方法で合成され得る。従って、本発明はまた、
a)式


(- XはHまたはメトキシ基のいずれかである
- YはS、O、N-R(式中、RはC1〜C6-アルキルである)、ならびにZ1-C=C-Z2(式中、Z1およびZ2は互いに独立してHまたはメトキシ基のいずれかである)からなる群より選択される
- LはCH3またはフェニルのいずれかであることを特徴とする)
を有する化学物質を提供する工程、
b)1,4-ジヒドロピリミジン-4-オン誘導体を作製するために前記物質と置換酸性塩化物とを反応させる工程、
c)1,4-ジヒドロピリミジン-チオン誘導体を作製するために前記1,4-ジヒドロピリミジン-4-オン誘導体とチオネーション試薬とを反応させる工程、
d)4-メチルチオ-ピリミジン誘導体を作製するために前記1,4-ジヒドロピリミジン-チオン誘導体とヨードメタンとを反応させる工程、
e)前記4-メチルチオ-ピリミジン誘導体と式


(- A1、A2、A3およびA4の全てはHであるまたはA1、A2、A3およびA4の1つは好ましくはハロゲニルである置換基であり、他はHであるかのいずれかである
- BはS、O、N-RおよびC-(R)2(式中、RはC1〜C6-アルキルである)からなる群より選択される
- Dは置換もしくは非置換C1-C6アルキルのいずれかであることを特徴とする)
を有する化合物とを反応させる工程
を含む、請求項1記載の蛍光色素の製造方法に関する。
【0032】
本発明の文脈において、加硫試薬はカルボニル基をチオカルボニル基に変換する試薬として定義される。好ましくは、かかる試薬はラヴェッソン(Lawesson)試薬(FLUKAカタログ)である。
【0033】
より正確に、本発明の方法は以下のように開示され得る。
【0034】
新規dsDNA結合色素の合成のための出発物質は一般的にオルトアミノ-カルボキシ芳香族化合物であり、これらは市販されているかまたは文献に記載される標準手順によって合成され得る。これらの芳香族化合物は、特定の環位置でのアミノおよびカルボキシ機能の他にさらに置換され得るアリールおよびヘテロアリール環構造からなり得る。本発明の観点における好ましい化合物は2-アミノ安息香酸またはさらに置換された2-アミノ安息香酸であり、特に1個または2個のメトキシ基を保有する誘導体である。好ましいヘテロ芳香族オルトアミノ-カルボン酸は、5員環構造を有し、チオフェン、フランおよびピロールの場合のように硫黄原子、酸素原子または窒素原子を有する。オルトアミノ-カルボン酸基の好ましい位置は3-アミノ-2-カルボキシ置換である。
【0035】
オルトアミノ-カルボキシ芳香族化合物のアミノ基は、第二置換基を有し得るまたは水素原子の1つが新規色素の合成の後の工程で置換されるかのいずれかである。これらの置換基はアルキル鎖を含み得るまたはアリール化合物である。メチルまたはフェニルが特に好ましい。
【0036】
オルトアミノ-カルボキシ基を有する芳香族化合物が該アミノ基に適切な置換基を既に有する場合、これらは、例えば、チオニルクロライド、またはオキサリルジクロライドまたは他の標準方法を用いた酸塩化物への活性化によって直接的に反応させてさらにアミドにすることができ、さらにアンモニアを用いて反応させてアミドにすることができる。例えば、N-フェニルアントラニル酸(N-phenylanthralinic acid)は、開示される方法を用いてN-フェニルアントラニル酸アミドに転換され得る。
【0037】
オルトアミノ-カルボキシ基を有する芳香族化合物が該アミノ基においてさらに置換される必要がある場合において、その手順は以下の通りである: 例えば、第一に、エチルクロロホルメート、ホスゲン、ジホスゲン、またはトリホスゲンとの反応を行って、ベンズ-3H-(1,3)オキサジン-2,6-ジオン、置換ベンズ-3H-(1,3)オキサジン-2,6-ジオンまたはヘテロシクロ-3H-(1,3)オキサジン-2,6-ジオンを形成する。ベンズ-3H-(1,3)オキサジン-2,6-ジオンまたは置換ベンズ-3H-(1,3)オキサジン-2,6-ジオンまたはヘテロシクロ-3H-(1,3)オキサジン-2,6-ジオン中の窒素は、以下のアルキル化手順によって置換され得る。第一に、例えば、水素化ナトリウムのような強塩基を用いた脱保護を行って、その形成アニオンをアルキルハロゲン化物または例えばトシレートのような他の遊離基を有するアルキル化合物と反応させてベンズ-3-アルキル-3H-(1,3)オキサジン-2,6-ジオン、置換ベンズ-3-アルキル-3H-(1,3)オキサジン-2,6-ジオンまたはヘテロシクロ-3-アルキル-3H-(1,3)オキサジン-2,6-ジオンを形成する。ヨードメタンを用いたベンズ-3-メチル-3H-(1,3)オキサジン-2,6-ジオン、置換ベンズ-3-メチル-3H-(1,3)オキサジン-2,6-ジオンまたはヘテロシクロ-3-メチル-3H-(1,3)オキサジン-2,6-ジオンへの反応が特に好ましい。
【0038】
第三の工程において、ベンズ-3-アルキル-3H-(1,3)オキサジン-2,6-ジオン、置換ベンズ-3-アルキル-3H-(1,3)オキサジン-2,6-ジオンまたはヘテロシクロ-3-アルキル-3H-(1,3)オキサジン-2,6-ジオンをアンモニアと反応させて、2-アルキルアミノ-ベンズアミド、置換2-アルキルアミノベンズアミド、または3-アルキルメチル-2-カルボン酸アミド複素環化合物、特にチオフェン、フラン、またはピロール誘導体を得る。
【0039】
このように調製されたフェニレン-、置換フェニレン、または複素環-オルトアリール-またはアルキルアミノカルボン酸アミドは、アルキル-、またはアリール酸塩化物または置換アルキル-、アリールカルボン酸塩化物との反応による縮合5員複素環構造を有する適切な1H-キナゾリン-4-オン誘導体、または1H-ピリミジン-4-オン誘導体に変換され得る。カルボン酸塩化物の代わりに、無水物、混合無水物またはアルデヒドのような他の試薬を利用することができ、次の酸化には過マンガン酸カリウムを用いる。例えば置換アルキルカルボン酸塩化物の場合において、置換基は、アミノ基、またはアルキル化アミノ基、または例えばアンモニアと反応し得るハロゲン化物のようなアミノ基に変換され得る前駆体、または置換アミンからなり、2位の側鎖に一級、二級、三級または四級アミンを形成し得る。
【0040】
次の工程において、縮合5員複素環構造を有する1H-キナゾリン-4-オン誘導体または1H-ピリミジン-4-オン誘導体のカルボニル官能基を例えば五硫化二リンまたはラヴェッソン試薬とさらに反応させて、縮合5員複素環構造を有する1H-キナゾリン-4-チオン誘導体または1H-ピリミジン-4-チオンオン誘導体を得る。
【0041】
次の工程において、チオエノ、フロ、またはピロロのような縮合5員複素環構造を有する1H-キナゾリン-4-チオン誘導体または1H-ピリミジン-4-オン誘導体は、ヨードメタンまたは例えばジメチルスルフェート(dimethylsufate)のような他の試薬を用いてメチル化され、2-アルキル/置換アルキル/もしくはアリール-4-メチルスルファニル-1-アルキル/もしくはアリール-キナゾリン-1-イウム塩または2-アルキル/置換アルキル/もしくはアリール-4-メチルスルファニル-1-アルキル/もしくはアリール-チエノ(3,2-d)ピリミジン-1-イウムまたは類似したフロもしくはピロロ誘導体を得る。
【0042】
最終的に、これらの化合物は、塩基性条件下で、市販されているまたは公表された手順によって合成され得る3-アルキル-2-メチル-ベンゾチアゾール-3-イウムヨウ素またはさらに置換された3-アルキル-2-メチル-ベンゾチアゾール-3-イウムヨウ素と反応させて、新規dsDNA結合色素を得る。対イオンは、2-メチル-ベンゾチアゾールの3位でのアルキル化に利用される試薬によって変化し得るかまたは最終産物で交換され得る。
【0043】
本発明による蛍光化合物の用途
本発明の化合物は様々な種々の用途に使用され得る。最も重要には、化合物は二本鎖核酸を検出するために使用され得る。いくつかの非対称カルボシアニン色素は二本鎖DNAのような二本鎖核酸にインターカレートするおよび/またはDNA二重らせんの小さい溝に結合することが公知であるので、本発明の化合物による二本鎖DNAとの結合様式は同じではない場合でも類似するという証拠がある。
【0044】
一態様において、本発明による化合物は、ゲルマトリックス中の二本鎖核酸の検出に使用され、二本鎖核酸はゲル電気泳動に供される。第一に、核酸ゲル電気泳動は当該技術分野で公知の標準方法によってアガロースゲルまたはアクリルアミドゲル中のいずれかで行われる。次に、該ゲルは好ましくは0.2〜1.5μg/mlの上記に開示される化合物を含む水溶液中で連続して温和に振りながらインキュベートされる。好ましくは、0.7μg/mlの濃度を使用する。
【0045】
別の態様において、本発明による化合物は、リアルタイムでの核酸増幅反応中の二本鎖核酸の検出に使用される。この状況において、本発明の化合物は、PCR反応混合物の一部であり、増幅反応の開始に既に存在している。本発明者らによって示されたように、本発明の化合物は、かかるPCR増幅反応の効率に干渉しない。
【0046】
従って、本発明による混合物は少なくとも
- 上記に開示される本発明による化合物
- 熱安定性DNAポリメラ―ゼ
- 通常dA、dG、dCおよびdTまたはdA、dG、dCおよびdUであるデオキシヌクレオシド三リン酸の混合物、ならびに
- バッファ
を含む。
【0047】
1つ以上の特異的な核酸標的配列の増幅の適切な場合、かかるPCR反応混合物は
- 本発明による化合物
- 熱安定性DNAポリメラーゼ
- 通常dA、dG、dCおよびdTまたはdA、dG、dCおよびdUであるデオキシヌクレオシド三リン酸の混合物、
- バッファ、ならびに
- 少なくとも1対の増幅プライマー
を含む。
【0048】
前記1対の増幅プライマーが、分子生物学の分野で公知の標準方法に従って目的の特異的配列を増幅するように設計される。
【0049】
さらに、解析される試料と接触させる場合、かかるPCR反応混合物は
- 本発明による化合物
- 熱安定性DNAポリメラーゼ
- 通常dA、dG、dCおよびdTまたはdA、dG、dCおよびdUであるデオキシヌクレオシド三リン酸の混合物、
- バッファ、
- 少なくとも1対の増幅プライマー
- 推定上目的の特異的配列を含む少なくとも部分的に精製された核酸
を含む。
【0050】
前記部分的に精製された核酸は、好ましくは全ゲノムDNAまたはあるいは全細胞RNAもしくは全細胞mRNAである。RNAの場合、熱安定性DNAポリメラーゼは、DNAポリメラーゼまたは逆転写酵素活性を含むDNAポリメラーゼの混合物である。
【0051】
含まれる全ての試薬の濃度は当業者におよそ公知であり、標準プロトコールに従って特定の適合のために最適化され得る。本発明による蛍光化合物の濃度は、0.1〜10.0μg/ml、好ましくは0.6μg/mlである。
【0052】
さらなる態様において、本発明による化合物は、当該技術分野で公知の他の化合物について開示されるように、融解曲線解析中の二本鎖核酸の検出に使用される。より正確に、二本鎖DNA断片は、本発明による化合物の存在下で熱勾配に供される。好ましくは、勾配は連続勾配であるが、段階勾配もまた好ましい。最も好ましくは、勾配は線形勾配である。特定の一態様において、試料は解離曲線の生成となる温度増大に供される。別の態様において、二本鎖標的分子が最初に一本鎖に熱変性され、温度依存性の蛍光が次の復元中にモニターされる。
【0053】
融解曲線解析のための本発明による蛍光化合物の濃度は、0.1〜10.0μg/ml、好ましくは0.6μg/mlである。
【0054】
好ましくは、解析される二本鎖DNA断片はPCR増幅反応に由来する。また、リアルタイムでの増幅モニタリングは、本発明による化合物を用いてモニターされ得、該化合物を用いた次の融解曲線解析が後に行われ得る。好ましくは、かかるプロセスは反応容器の中間開放なしで均一に行われる。
【0055】
あるいは、融解曲線実験自体の前に2つの異なる試料に由来する2つの異なるバリアントの配列のバリアントを混合することができる。第一工程において、2つの二本鎖DNAを混合して一本鎖に熱変性させる。次の温度減少によって混合二本鎖ハイブリッドの形成がもたらされる。2つのもともとのDNAの配列中のバリエーションは、生成した混合ハイブリッドの低い融解温度をさらにもたらすミスマッチをもたらす。次に、これらのミスマッチは次の温度増大中の温度依存性の蛍光シグナルのモニタリングによって検出される。
【0056】
さらにあるいは、PCRアンプリコンのような二本鎖核酸試料に過剰モル濃度の一本鎖核酸プローブを添加することができる。この場合において、融解曲線は、プローブ/アンプリコン複合体の融解挙動を測定する。プローブと標的との間でのミスマッチの場合では、低い融解温度が観察される。
【0057】
さらに、本発明の蛍光化合物がハイブリダイゼーションプローブに共有結合されることを特徴とする融解曲線解析のためのオリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションプローブを使用することも可能である。該プローブのハイブリダイゼーションの際に、少なくとも部分的な二本鎖構造が生成されて蛍光化合物からの蛍光シグナルがモニターされる。
【0058】
以下の実施例および図面は、本発明の理解を補助するために提供され、その真の範囲は添付の特許請求の範囲に示される。
【実施例】
【0059】
実施例1:
R03の合成


1) 2-フェニルアミノ-ベンズアミド
10g(46.9mmol)のN-フェニルアントラニル酸(N-phenylanthranilic acid)を、100mlトルエンに溶解して、8.37g(5.10ml, 70.3mmol)のチオニルクロライドを添加した。混合物を30分間沸騰させ、蒸発させて、赤残渣に30ml濃縮アンモニアを添加した。懸濁液を一晩撹拌し、ろ過して、エチル酢酸/メタノール混合物から結晶化させた。
収率: 6.0g=60%黄橙色粉末
【0060】
2) 2-エチル-1-フェニル-1H-キナゾリン-4-オン
2.0g(9.42mmol)の2-フェニルアミノ-ベンズアミドを、30mlのトリクロロメタンに溶解し、溶液を0℃に冷却し、2.61g(2.44ml, 28.2mmol)のプロピオニルクロライドをゆっくりと添加した。混合物を90分間沸騰してその後飽和炭酸水素ナトリウム溶液で中和した。蒸発後に、物質をイソプロパノールから結晶化させた。
収率: 1.85g=78%黄色粉末
【0061】
3) 2-エチル-1-フェニル-1H-キナゾリン-4-チオン
1.50g(5.99mmol)の2-エチル-1-フェニル-1H-キナゾリン-4-オンおよび2.42g(5.99mmol)のラヴェッソン試薬(C14H14O2P2S4, Fluka)を40mlのトルエンに再懸濁し、1時間沸騰させた。蒸発後に、粗混合物を、シリカゲル、溶出液ジクロロメタン/アセトン95/5でのカラムクロマトグラフィーによって精製した。
収率: 1.36g=85%橙色粉末
【0062】
4) 2-エチル-4-メチルスルファニル-1-フェニル-キナゾリン-1-イウム
1.0g(3.72)の2-エチル-1-フェニル-1H-キナゾリン-4-チオンを、15mlのヨードメタンに添加し、1時間撹拌した。混合物をろ過してエチルエーテルで洗浄した。
収率: 1.0g=65%
【0063】
5) 2,3-ジメチル-ベンゾチアゾール-3-イウムイオダイド
14.9g(12.7ml, 0.10mol)の2-メチル-ベンゾチアゾールおよび28.4g(12.5ml, 0.20mol)のヨードメタンを20mlエタノール中で7時間沸騰させた。残渣をろ過しエタノールで洗浄した。
収率: 17.0g=58%無色粉末
【0064】
6) 2-(2-エチル-1-フェニル-1H-キナゾリン-4-イリデンメチル)-3-メチル-ベンゾチアゾール-3-イウムクロライド
400mg(1.37mmol)の2,3-ジメチル-ベンゾチアゾール-3-イウムイオダイドおよび559mg(1.37mmol)の2-エチル-4-メチルスルファニル-1-フェニル-キナゾリン-1-イウムを10mlのジメチルホルムアミドに溶解し、554mg(0.76ml, 5.47mmol)のトリエチルアミンを添加した。混合物を80℃で1時間撹拌した。残渣をろ過して塩酸(10%)で洗浄した。
収率: 250mg=42%
【0065】
実施例2:
R04の合成


1) 2-(3-ジメチルアミノ-ブチル)-1-フェニル-1H-キナゾリン-4-オン
3.80g(20.9mmol)のジメチルアミノ-ペンタン酸(pentanoic acid)を、25mlチオニルクロライドに添加し、55〜60℃で90分間撹拌した。残っているチオニルクロライドを、真空で蒸留し、残渣を0℃の30mlのトリクロロメタン中2.00g(9.42mmol)の2-フェニルアミノ-ベンズアミド溶液(上記参照)に添加した。反応混合物を4時間沸騰させ、室温で一晩撹拌した。残渣をろ過してジクロロメタンおよび飽和炭酸水素ナトリウム溶液に溶解した。有機溶媒を硫酸マグネシウムで乾燥させて蒸発させた。黄色オイルがゆっくりと結晶化した。
収率: 1.90g=63%黄結晶
【0066】
2) 2-(3-ジメチルアミノ-ブチル)-1-フェニル-1H-キナゾリン-4-チオン
550mg(1.71mmol)の2-(3-ジメチルアミノ-ブチル)-1-フェニル-1H-キナゾリン-4-オンを10mlのピリジンに溶解して、445mg(2.00mmol)の五硫化二リンを添加した。反応混合物を90分間沸騰させた。溶媒の蒸発後に、残渣をジクロロメタンに溶解して、2N 水酸化ナトリウム溶液で洗浄した。有機溶液を硫酸マグネシウムで乾燥させて蒸発させた。粗生成物を、シリカ、溶出液ジクロロメタン/メタノール/トリエチルアミン 9/1/0.1でのカラムクロマトグラフィーによってさらに精製した。
収率: 375mg=65%黄橙色粉末
【0067】
3) 2-(4-トリメチルアンモニウム-ブチル)-4-メチルスルファニル-1-フェニル-キナゾリン-1-イウムジイオダイド
300mg(0.89mmol)の2-(3-ジメチルアミノ-ブチル)-1-フェニル-1H-キナゾリン-4-チオンを、5mlのヨードメタンに溶解して、室温で1時間撹拌した。混合物をろ過して残渣をエチルエーテルおよびジクロロメタンで洗浄した。
収率: 370mg=845 黄色粉末
【0068】
4) 2-(2-(4-トリメチルアンモニウム-ブチル)-1-フェニル-1H-キナゾリン-4-イリデンメチル)-3-ベンゾチアゾール-3-イウムイオダイド
300mg(0.48mmol)の2-(4-トリメチルアンモニウム-ブチル)-4-メチルスルファニル-1-フェニル-キナゾリン-1-イウムイオダイドおよび177mg(0.61mmol)の2,3-ジメチル-ベンゾチアゾール-3-イウムイオダイドを、2mlのジメチルホルムアミドに溶解して、247mg(0.34ml, 2.44mmol)のトリエチルアミンを添加した。懸濁液を80℃で1時間撹拌し、ろ過し、水、ジクロロメタンおよびメタノールで洗浄した。
収率: 350mg=100%赤色粉末
【0069】
実施例3:
R11の合成


1) 6,7-ジメトキシ-1H-ベンゾ(d)(1,3)オキサジン-2,4-ジオン
10.0g(50.7mmol)の2-アミノ-4,5-ジメトキシ-安息香酸を150mlのテトラヒドロフランに溶解した。6.52g(22.0mmol)のトリホスゲンを添加し、溶液を3時間煮沸した。室温まで平衡後、反応混合物を水/氷混合物上に注入した。残渣を濾過し、メタノールですすいだ。
収率:8.7g=86% 灰色粉末
【0070】
2) 6,7-ジメトキシ-1-メチル-1H-ベンズ(d)(1,3)オキサジン-2,4-ジオン
9.00g(40.3mmol)の6,7-ジメトキシ-1H-ベンゾ(d)(1,3)オキサジン-2,4-ジオンを60mlの乾燥ジメチルホルムアミドに溶解し、0℃まで冷却した。1.32g(52.3mmol)水素化ナトリウムを添加し、溶液を30分間室温で攪拌した(アルゴン)。再度0℃まで冷却後、7.42g(3.27ml、52.3mmol)のヨードメタンを添加し、室温で1時間攪拌した。300mlの水を添加し、残渣を濾過し、水およびエチルエーテルですすいだ。
収率:8.5g=89% 灰色粉末
【0071】
3) 4,5-ジメトキシ2-メチルアミノ-ベンズアミド
2.40g(10.1mmol)の6,7-ジメトキシ-1-メチル-1H-ベンズ(d)(1,3)オキサジン-2,4-ジオンを30mlのテトラヒドロフランに溶解し、15.0mlのアンモニア(25%)を0℃で添加した。溶液を30分間0℃でおよび30分間室温で攪拌した。THFを真空下で蒸留し、残留した懸濁液を希塩酸で中和した。生成物を濾過によって単離した。
収率:2.00g=94% 灰色粉末
【0072】
4) 6,7-ジメトキシ-1-メチル-2-フェニル-1H-キナゾリン-4-オン
2.00g(9.51mmol)の4,5-ジメトキシ2-メチルアミノ-ベンズアミドを20mlのジクロロメタンに溶解し、4.01g(3.31ml、28.5mmol)の塩化ベンゾイルを添加する。混合物を90分間煮沸した。濾過後、残渣をトリクロロメタンおよび飽和炭酸水素ナトリウム溶液に溶解した。有機溶液を硫酸マグネシウムで乾燥し、真空下で蒸発させた。
収率:2.30g=82% 黄色粉末
【0073】
5) 6,7-ジメトキシ-1-メチル-2-フェニル-1H-キナゾリン-4-チオン
1.50g(5.06mmol)の6,7-ジメトキシ-1-メチル-2-フェニル-1H-キナゾリン-4-オンおよび)2.00g(4.94mmol)のラヴェッソン試薬(C14H14O2P2S4、Fluka)を20mlのトルエンに溶解した。反応混合物を2時間煮沸した。蒸発後、シリカ、溶出液ジクロロメタン/アセトン95/5を用いたカラムクロマトグラフィーによって残渣をさらに精製した。
収率:1.25g=79% 橙色粉末
【0074】
6) 6,7-ジメトキシ-1-メチル-4-メチルスルファニル-2-フェニル-キナゾリン-1-イウムイオダイド
1.00g(3.20mmol)の6,7-ジメトキシ-1-メチル-2-フェニル-1H-キナゾリン-4-チオンを5mlの(80mmol)のヨードメタンにゆっくりと0℃で添加し、1時間室温で攪拌した。溶液を濾過し、残渣をエチルエーテルおよびジクロロメタンで洗浄した。
収率:1.20g=82% 黄色粉末
【0075】
7) 2-(6,7-ジメトキシ-1-メチル-2-フェニル-1H-キナゾリン-4-イリデンメチル)-3-メチル-ベンゾチアゾール-3-イウムイオダイド
500mg(1.10mmol)の6,7-ジメトキシ-1-メチル-4-メチルスルファニル-2-フェニル-キナゾリン-1-イウムイオダイドおよび320mg(1.10mmol)の2,3-ジメチル-ベンゾチアゾール-3-イウムイオダイドを200mlのジメチルホルムアミドに溶解し、445mg(0.61ml、4.40mmol)のトリエチルアミンを添加した。溶液を1時間80℃で攪拌し、濾過し、残渣を水およびメタノールで洗浄する。
収率:450mg=72% 橙赤色粉末
【0076】
実施例4:
R12、R13およびR14の合成


R12
1) 6-メトキシ-1H-ベンゾ(d)(1,3)オキサジン-2,4-ジオン
5.00g(21.6mmol)2-ブロモ-5-メトキシ-安息香酸、620mg(4.32mmol)臭化銅(I)および2.63g(32.4mmol)のシアン酸カリウムをピリジンに溶解し、30分間煮沸した。溶媒を除去し、残渣を150mlの2N 塩酸および150mlの酢酸エチルに溶解した。有機溶媒を水およびブラインで処理し、硫酸マグネシウムで乾燥し、除去した。残渣をメタノールで消化した。
収率:2.50g=61% 灰色粉末
【0077】
2) 6-メトキシ-1-メチル-1H-ベンズ(d)(1,3)オキサジン-2,4-ジオン
2.00g(10.4mmol)の6-メトキシ-1H-ベンゾ(d)(1,3)オキサジン-2,4-ジオンを乾燥ジメチルホルムアミドに溶解し、0℃まで冷却した。324mg(13.5mmol)の水素化ナトリウムをゆっくりと添加し(アルゴン)、混合物を30分間室温で攪拌した。再度0℃まで冷却後、1.92g(0.85ml、13.5mmol)のヨードメタンを添加した。1時間室温で攪拌後、残渣を濾過し、水およびエチルエーテルで洗浄した。
収率:1.62g=75% 灰色粉末
【0078】
3) 5-メトキシ-2-メチルアミノ-ベンズアミド
1.50g(7.24mmol)の6-メトキシ-1-メチル-1H-ベンズ(d)(1,3)オキサジン-2,4-ジオンを20mlのテトラヒドロフランに溶解し、10.0mlのアンモニア(25%)を0℃で添加した。溶液を30分間0℃でおよび30分間室温で攪拌した。THFを真空下で蒸留し、残留した懸濁液を希塩酸で中和した。生成物を濾過によって単離した。
収率:1.00g=77% 褐色粉末
【0079】
4) 6-メトキシ-1-メチル-2-フェニル-1H-キナゾリン-4-オン
1.00g(5.55mmol)の5-メトキシ-2-メチルアミノ-ベンズアミドを25mlのトリクロロメタンに溶解し、2.34g(1.93ml、16.6mmol)の塩化ベンゾイルを添加した。混合物を90分間煮沸した。濾過後、残渣をトリクロロメタンおよび飽和炭酸水素ナトリウム溶液に溶解した。有機溶液を硫酸マグネシウムで乾燥し、真空下で蒸発させた。
収率:1.30g=88% 黄色粉末
【0080】
5) 6-メトキシ-1-メチル-2-フェニル-1H-キナゾリン-4-チオン
1.20g(4.51mmol)の6-メトキシ-1-メチル-2-フェニル-1H-キナゾリン-4-オンおよび1.82g(4.50mmol)のラヴェッソン試薬(C14H14O2P2S4、Fluka)を20mlのトルエンに溶解した。反応混合物を3時間煮沸した。蒸発後、シリカ、溶出液ジクロロメタン/アセトン95/5を用いたカラムクロマトグラフィーによって残渣をさらに精製した。
収率:1.20g=94% 橙色粉末
【0081】
6) 6-メトキシ-1-メチル-4-メチルスルファニル-2-フェニル-キナゾリン-1-イウムイオダイド
1.00g(3.54mmol)の6-メトキシ-1-メチル-2-フェニル-1H-キナゾリン-4-チオンを5mlの(80mmol)のヨウ化メチルに0℃でゆっくりと添加し、1時間室温で攪拌した。溶液を濾過し、残渣をエチルエーテルおよびジクロロメタンで洗浄した。
収率:1.25g=83% 黄色粉末
【0082】
7) 2-(6-メトキシ-1-メチル-2-フェニル-1H-キナゾリン-4-イリデンメチル)-3-メチル-ベンゾチアゾール-3-イウムイオダイド
600mg(1.41mmol)の6-メトキシ-1-メチル-4-メチルスルファニル-2-フェニル-キナゾリン-1-イウムイオダイドおよび412mg(1.41mmol)の2,3-ジメチル-ベンゾチアゾール-3-イウムイオダイドを2.0mlのジメチルホルムアミドに溶解し、571mg(0.79ml、5.64mmol)のトリエチルアミンを添加した。溶液を1時間80℃で攪拌し、濾過し、残渣を水およびメタノールで洗浄した。
収率:650mg=85% 赤色粉末
【0083】
R13
1) 5-フルオロ-2,3-ジメチル-ベンゾチアゾール-3-イウムイオダイド
13.0g(10.4ml、77.7mmol)の5-フルオロ-2-メチル-ベンゾチアゾールおよび22.1g(9.47ml、156mmol)のヨードメタンをエタノール中で7時間煮沸した。残渣を濾過した。
4.00g=17% 白色粉末
【0084】
2) 5-フルオロ-2-(6-メトキシ-1-メチル-2-フェニル-1H-キナゾリン-4-イリデンメチル)-3-メチル-ベンゾチアゾール-3-イウムイオダイド
600mg(1.41mmol)の6-メトキシ-1-メチル-4-メチルスルファニル-2-フェニル-キナゾリン-1-イウムイオダイドおよび436mg(1.41mmol)の5-フルオロ-2,3-ジメチル-ベンゾチアゾール-3-イウムイオダイドを3.0mlのジメチルホルムアミドに溶解し、571mg(0.79ml、5.64mmol)のトリエチルアミンを添加した。溶液を1時間80℃で攪拌し、濾過し、残渣を水およびメタノールで洗浄した。
収率:600mg=76% 橙赤色粉末
【0085】
R14
1) 2-(6,7-ジメトキシ-1-メチル-2-フェニル-1H-キナゾリン-4-イリデンメチル)-5-フルオロ-3-メチル-ベンゾチアゾール-3-イウムイオダイド
500mg(1.10mmol)の6,7-ジメトキシ-1-メチル-4-メチルスルファニル-2-フェニル-キナゾリン-1-イウムイオダイド(上記参照)および340mg(1.10mmol)の5-フルオロ-2,3-ジメチル-ベンゾチアゾール-3-イウムイオダイドを3.0mlのジメチルホルムアミドに溶解し、445mg(0.61ml、4.40mmol)のトリエチルアミンを添加した。溶液を1時間80℃で攪拌し、濾過し、残渣を水およびメタノールで洗浄した。
収率:400mg=62% 赤色粉末
【0086】
実施例5:
R26の合成


1) 1H-チエノ(3,2-d)(1,3)オキサジン-2,4-ジオン
40g(250mmol)の3-アミノ-チオフェン-2-カルボン酸メチルエステルを、21.0g(374mmol)の水酸化カリウムを含む250mlの水に懸濁した。混合物を電子レンジ(500W)で30分間煮沸した後、0℃まで冷却した。200mlのトルエン中37.1g(125mmol)のトリホスゲンの溶液を滴下し、反応混合物を2時間室温で攪拌した。残渣を濾過によって単離した。生成物を水および炭酸水素ナトリウム溶液で洗浄した。さらなる精製のため、これは、乾燥後にエチルエーテルおよびメタノールで洗浄され得る。
収率:22g=52%、無色
【0087】
2) 1-メチル-1H-チエノ(3,2-d)(1,3)オキサジン-2,4-ジオン
3.60(21.3mmol)の1H-チエノ(3,2-d)(1,3)オキサジン-2,4-ジオンを乾燥ジメチルホルムアミドに溶解し、0℃まで冷却した。664mg(27.7mmol)の水素化ナトリウムをゆっくりと添加し(アルゴン)、混合物を30分間0℃および30分間室温で攪拌した。再度0℃まで冷却後、3.93g(1.73ml、27.7mmol)のヨードメタンを添加した。1時間室温で攪拌後、200mlの水を添加した。残渣を濾過し、水およびエチルエーテルで洗浄した。
収率:2.70g=69% ベージュ色粉末
3) 3-メチルアミノ-チオフェン-2-カルボン酸アミド
2.60g(14.2mmol)の1-メチル-1H-チエノ(3,2-d)(1,3)オキサジン-2,4-ジオンを30mlのテトラヒドロフランに溶解し、15.0mlのアンモニア(25%)を0℃で添加した。溶液を30分間0℃でおよび30分間室温で攪拌した。THFを真空下で蒸留し、残留した懸濁液を希塩酸で中和した。生成物を濾過によって単離した。
収率:1.76g=79% ベージュ色粉末
【0088】
4) 1-メチル-2-フェニル-1H-チエノ(3,2-d)ピリミジン-4-オン
1.70g(10.9mmol)の3-メチルアミノ-チオフェン-2-カルボン酸アミドを20mlのトリクロロメタンに溶解し、3.82g(3.16ml、22.2mmol)の塩化ベンゾイルを添加した。混合物を90分間煮沸した。濾過後、残渣をトリクロロメタンに溶解し、飽和炭酸水素ナトリウム溶液で洗浄した。有機溶液を硫酸マグネシウムで乾燥し、真空下で蒸発させた。粗生成物を、シリカ、溶出液ジクロロメタン/メタノール95/5上でのカラムクロマトグラフィーによって精製した。
収率:2.10g=80% 白色粉末
【0089】
5) 1-メチル-2-フェニル-1H-チエノ(3,2-d)ピリミジン-4-チオン
2.10g(8.67mmol)の1-メチル-2-フェニル-1H-チエノ(3,2-d)ピリミジン-4-オンおよび3.51g(8.67mmol)のラヴェッソン試薬(C14H14O2P2S4、Fluka)を40mlのトルエンに溶解した。反応混合物を3時間煮沸した。蒸発後、シリカ、溶出液ジクロロメタン/アセトン95/5を用いたカラムクロマトグラフィーによって残渣をさらに精製した。
収率:500g=22% 黄色粉末
【0090】
6) 1-メチル-4-メチルスルファニル-2-フェニル-チエノ(3,2-d)ピリミジン-1-イウムイオダイド
500mgの1-メチル-2-フェニル-1H-チエノ(3,2-d)ピリミジン-4-チオンを5mlの(80mmol)のヨードメタンにゆっくりと0℃で添加し、1時間室温で攪拌した。溶液を濾過し、残渣をジクロロメタンで洗浄した。
収率:550g=71% 黄色粉末
【0091】
7) 3-メチル-2-(1-メチル-2-フェニル-1H-チエノ(3,2-d)ピリミジン-4-イリデンメチル)-ベンゾチアゾール-3-イウムイオダイド
200mg(0.50mmol)の1-メチル-4-メチルスルファニル-2-フェニル-チエノ(3,2-d)ピリミジン-1-イウムイオダイドおよび145mg(0.50mmol)の2,3-ジメチル-ベンゾチアゾール-3-イウムイオダイドを2.0mlのジメチルホルムアミドに溶解し、202mg(0.28ml、2.00mmol)のトリエチルアミンを添加した。この緑色の溶液を1時間80℃で攪拌し、濾過し、残渣をメタノールで洗浄した。粗生成物をHPLCによってさらに精製した。
収率:40mg=15% 黄色粉末
【0092】
実施例6:
R27の合成


1) 2-(4-ジメチルアミノ-ブチル)-6,7-ジメトキシ-1-メチル-1H-キナゾリン-4-オン
3.80g(20.9mmol)のジメチルアミノ-ペンタン酸を25mlの塩化チオニルに添加し、55〜60℃で90分間攪拌した。残留した塩化チオニルを真空で蒸留し、残渣を、30mlのトリクロロメタンに溶解した2.00g(9.51mmol)の4,5-ジメトキシ-2-メチルアミノ-ベンズアミド(上記参照)の溶液に0℃で添加した。混合物を4時間煮沸した。濾過後、残渣をトリクロロメタンおよび飽和炭酸水素ナトリウム溶液に溶解した。有機溶液を硫酸マグネシウムで乾燥し、真空下で蒸発させた。
収率:400mgの=13% 褐色がかった粉末
【0093】
2) 2-(4-ジメチルアミノ-ブチル)-6,7-ジメトキシ-1-メチル-1H-キナゾリン-4-チオン
400mg(1.25mmol)の2-(4-ジメチルアミノ-ブチル)-6,7-ジメトキシ-1-メチル-1H-キナゾリン-4-オンを20mlのピリジンに溶解し、418mg(1.88mmol)の五硫化リンを添加した。反応混合物を2時間煮沸した。溶媒の蒸発後、残渣をジクロロメタンに溶解し、2N水酸化ナトリウム溶液で洗浄した。有機溶液を硫酸マグネシウムで乾燥し、蒸発させた。
収率:310mg=74% 黄橙色粉末
【0094】
3) 2-(4-トリメチルアンモニウム-ブチル)-6,7-ジメトキシ-1-メチル-4-メチルスルファニル-キナゾリン-1-イウムジイオダイド
300mg(0.89mmol 2-(4-ジメチルアミノ-ブチル)-6,7-ジメトキシ-1-メチル-1H-キナゾリン-4-チオンを1mlのヨードメタンに0℃で溶解し、1時間室温で攪拌した。混合物を濾過し、残渣をジクロロメタンですすいだ。
収率:310mg=75% オークル色粉末
【0095】
4) 2-(2-(4-トリメチルアンモニウム-ブチル-6,7-ジメトキシ-1-メチル-1H-キナゾリン-4-イリデンメチル)-3-メチル-ベンゾチアゾール-3-イウムジイオダイド
220mg(0.36)の2-(4-トリメチルアンモニウム-ブチル)-6,7-ジメトキシ-1-メチル-4-メチルスルファニル-キナゾリン-1-イウムジイオダイド(diodide)および104mg(0.36mmol)の2,3-ジメチル-ベンゾチアゾール-3-イウムイオダイドを2mlのジメチルホルムアミドに溶解し、146mg(0.20ml、1.44mmol)のトリエチルアミンを添加した。懸濁液を1時間80℃で攪拌し、濾過し、ジクロロメタンおよびメタノールですすいだ。
収率:220mg=83% 赤橙色粉末
【0096】
2,3-ジメチル-ベンゾチアゾール-3-イウムイオダイド、例えばベンゾチアゾリウムの代わりに、3-(3-カルボキシプロピル)-2-メチルブロミド(Alfimov,M.V. et al.,J. Chem. Soc.,Perkin Transactions 2:Physical Organic Chemistry 7 (1996)1441-1447)が使用され得、2-(2-(4-トリメチルアンモニウム-ブチル-6,7-ジメトキシ-1-メチル-1H-キナゾリン-4-イリデンメチル)-3-カルボキシプロピル-ベンゾチアゾール-3-イウムジイオダイドが得られる。
【0097】
実施例7:
R28の合成


1) 2,3-ジメトキシ6-ニトロ-ベンズアルデヒド
50.0g(301mmol)の2,3-ジメトキシ-ベンズアルデヒド(Aldrich)を硝酸にゆっくりと0℃で添加した。反応混合物を5分間攪拌し、それ以上沈殿物が得られなくなるまで水で希釈した。濾過後、残渣をメタノールで洗浄した。
収率:58.0g=91% (5-および6-ニトロ異性体)黄色粉末
【0098】
2) 6-ニトロ-2,3-ジメトキシ-安息香酸
58.0g(275mmol)の2,3-ジメトキシ-6(5)-ニトロ-ベンズアルデヒドを、1リットルの2%水酸化ナトリウム中45.6g(289mmol)の過マンガン酸カリウムの溶液に添加した。溶液を90分間60℃で攪拌した。セライトを使用し、濾過によって二酸化マンガンを除去した。残留した過マンガン酸カリウムをメタノールの添加によって不活化し、再度二酸化マンガンを濾過によって除去した。溶液を塩酸でpH2.75酸性化した。沈殿した生成物を濾過し、水および水/エタノール混合物ですすいだ。pH0.8への酸性化によってさらなる生成物が単離され得る。
収率:23.8g=38% 無色粉末
【0099】
3) 6-アミノ-2,3-ジメトキシ-安息香酸
エタノール中23.4g(104mmol)の6-ニトロ-2,3-ジメトキシ-安息香酸の溶液に、2.5gのPd/Cを添加し、1バールのH2で24時間処理した。触媒をセライト上での濾過によって除去し、溶液を蒸発させ、残渣を300mlのジオキサンに溶解し、凍結乾燥した。
収率:20.0g=98% ベージュ色粉末
【0100】
4) 5,6-ジメトキシ-1H-ベンゾ[d][1,3]オキサジン-2,4-ジオン
10.0g(50.7mmol)の6-アミノ-2,3-ジメトキシ-安息香酸を150mlのテトラヒドロフランに溶解し、6.52g(22.0mmol)のトリホスゲンを添加し、溶液を3時間還流した。400mlの氷/水混合物上に注入した後、沈殿物を濾過し、水およびメタノールですすいだ。
収率:8.27g=73% 黄色粉末
【0101】
5) 5,6-ジメトキシ-1H-ベンゾ[d]-N-メチル-[1,3]オキサジン-2,4-ジオン
19.0g(85.1mmol)の5,6-ジメトキシ-1H-ベンゾ[d][1,3]オキサジン-2,4-ジオンを乾燥ジメチルホルムアミド(100ml)に溶解し、0℃まで冷却した。2.8g(111mmol)の水素化ナトリウムをゆっくりと添加し(アルゴン)、混合物を30分間0℃および30分間室温で攪拌した。再度0℃まで冷却後、15.7g(6.92ml、111mmol)のヨードメタンを添加した。1時間室温で攪拌後、150mlの水を添加した。残渣を濾過し、水およびエチルエーテルで洗浄した。
収率:14.2g=67% ベージュ色粉末
【0102】
6) 6-メチルアミノ-2,3-ジメトキシベンズアミド
14.0g(59mmol)の5,6-ジメトキシ-1H-ベンゾ[d]-N-メチル-[1,3]オキサジン-2,4-ジオンを180mlのテトラヒドロフランに溶解し、90mlのアンモニア(25%)を0℃で添加した。溶液を30分間0℃でおよび30分間室温で攪拌した。THFを真空下で蒸留し、残留した懸濁液を希塩酸で中和した。生成物を濾過によって単離した。
収率:10.75g=87% 黄色粉末
【0103】
7) 2-(4-ジメチルアミノ-ブチル)-5,6-ジメトキシ-1-メチル-1H-キナゾリン-4-オン
3.80g(20.9mmol)のジメチルアミノ-ペンタン酸を25mlの塩化チオニルに添加し、55〜60℃で90分間攪拌した。残留した塩化チオニルを真空で蒸留し、残渣を、2.00g(11.1mmol)の6-メチルアミノ-2,3-ジメトキシベンズアミドを30mlのトリクロロメタンに0℃で溶解した溶液に添加した。混合物を2時間煮沸し、一晩室温で攪拌した。濾過後、残渣をトリクロロメタンおよび飽和炭酸水素ナトリウム溶液に溶解した。有機溶液を硫酸マグネシウムで乾燥し、真空下で蒸発させた。
収率:500mg=14% 油状物
【0104】
8) 2-(4-ジメチルアミノ-ブチル)-5,6-ジメトキシ-1-メチル-1H-キナゾリン-4-チオン
800mg(2.50mmol)の2-(4-ジメチルアミノ-ブチル)-5,6-ジメトキシ-1-メチル-1H-キナゾリン-4-オンを20mlのピリジンに溶解し、612mg(2.75mmol)の五硫化リンを添加した。反応混合物を1時間煮沸した。溶媒の蒸発後、残渣をジクロロメタンに溶解し、2N水酸化ナトリウム溶液で洗浄した。有機溶液を硫酸マグネシウムで乾燥し、蒸発させた。粗生成物をシリカ、溶出液トリクロロメタン、メタノール、トリエチルアミン 8:2:0.2上でのカラムクロマトグラフィーによってさらに精製した。
収率:220mg=26% 橙赤色粉末
【0105】
9) 2-(4-トリメチルアンモニウム-ブチル)-5,6-ジメトキシ-1-メチル-4-メチルスルファニル-キナゾリン-1-イウムジイオダイド
220mg(0.66mmolの2-(4-ジメチルアミノ-ブチル)-5,6-ジメトキシ-1-メチル-1H-キナゾリン-4-チオンを2mlのヨードメタンに0℃で溶解し、1時間室温で攪拌した。混合物を濾過し、残渣をジクロロメタンですすいだ。
収率:340mg=83% 赤褐色がかった粉末
【0106】
10) 2-(2-(4-トリメチルアンモニウム-ブチル)-5,6-ジメトキシ-1-メチル-1H-キナゾリン-4-イリデンメチル)-3-メチル-ベンゾチアゾール-3-イウムジイオダイド
117mg(0.27)の2-(4-トリメチルアンモニウム-ブチル)-5,6-ジメトキシ-1-メチル-4-メチルスルファニル-キナゾリン-1-イウムジイオダイドおよび79mg(0.27mmol)の2,3-ジメチル-ベンゾチアゾール-3-イウムイオダイドを2mlのジメチルホルムアミドに溶解し、109mg(0.15ml、1.08mmol)のトリエチルアミンを添加した。懸濁液を1時間80℃で攪拌し、濾過し、ジクロロメタンおよびメタノールですすいだ。
収率:100mg=51% 赤橙色粉末
【0107】
実施例8:PCRにおけるR03、R04、R11、R12、R13、R14、R26、R27およびR28の使用および融解曲線分析
上記に開示した色素を使用し、mdr-1遺伝子(Gene bank受託番号:M29445)の特定の部分のためのプライマーとともに、LightCycler 480 System (Roche Diagnostics、カタログ番号04640268001、付属品あり)を用いてPCRを実施した。使用するプライマーは、位置番号:122(フォワード)および211(リバース)に対応する。野生型、ヘテロ接合型(heterocygote)またはホモ接合型であるゲノムDNAの試料を、この配列内の点変異について解析した。
【0108】
PCRミックス:
- 0.5μM フォワードプライマーmdr-1
- 0.5μM リバースプライマーmdr-1
- 1 ng/μl ゲノムDNA
- LightTyper 96 PCR Kit (Roche Diagnostics、カタログ番号03707709001)
- 0.8μMのそれぞれの色素
【0109】

【0110】
すべての色素で、483〜533nmでの蛍光発光を検出するチャネル内での蛍光測定によって増幅曲線が良好にモニターされた。続いて、ホモ接合性またはヘテロ接合性DNAの異なる融解様式がモニターされ得た。
【0111】
実施例9:
R27の安定性
記載の9つの色素の代表であるR27の光安定性を、かかる適用で既に使用されている確立された色素と比較した。それぞれの色素およびゲノムDNAの混合物の蛍光を、連続光曝露中に測定した。R27の安定性は、顕著に高いことがわかった。
【0112】

【0113】
蛍光測定のためのR27溶液の励起、およびLightCycler(登録商標)480などのリアルタイムPCR装置での典型的なPCR プロトコル中での55〜95℃での反復温度変化は、認識可能な色素の退色を引き起こさない。



【特許請求の範囲】
【請求項1】



を有する蛍光色素であって、
- A1、A2、A3およびA4のすべてがHであるか、またはA1、A2、A3およびA4の1つがハロゲニルである置換基であり、その他がHであるかのいずれかである、
- Bは、S、O、N-R、およびC-(R)2(式中、Rは、C1〜C6アルキルである)からなる群より選択される、
- Dは、非置換または置換C1〜C6アルキルのいずれかである、
- Xは、Hまたはメトキシ基のいずれかである、
- Yは、S、O、N-R (式中、Rは、C1〜C6アルキルである)、およびZ1-C=C-Z2(式中、Z1およびZ2は、互いに独立して、Hまたはメトキシ基のいずれかである)からなる群より選択される、
- Lは、CH3またはフェニルのいずれかである、
- Mは、フェニルまたは置換もしくは非置換C1〜C18アミノアルキルのいずれかである、
ことを特徴とする、蛍光色素。
【請求項2】
Dが、-(CH2)n-COOHまたは-(CH2)n-CO-Oスクシンイミド(nが1〜6の自然数であることを特徴とする)のいずれかである、請求項1記載の蛍光色素。
【請求項3】
Mが、-(CH2)n-N+-(CH3)3(式中、nは、1〜18の自然数である)である、請求項1または2記載の蛍光色素。
【請求項4】
a)式


を有する化学物質であって、
- Xは、Hまたはメトキシ基のいずれかである、
- Yは、S、O、N-R(式中、Rは、C1〜C6アルキルである)、およびZ1-C=C-Z2(式中、Z1およびZ2は、互いに独立して、Hまたはメトキシ基のいずれかである)からなる群より選択される、
- Lは、CH3またはフェニルのいずれかである
ことを特徴とする化学物質を提供する工程
b)1,4-ジヒドロピリミジン-4-オン誘導体を作製するために、前記物質を置換酸性塩化物と反応させる工程
c)1,4-ジヒドロピリミジン-4-チオン誘導体を作製するために、前記1,4-ジヒドロピリミジン-4-オン誘導体をチオネーション試薬と反応させる工程
d)4-メチルチオ-ピリミジン誘導体を作製するために、前記1,4-ジヒドロピリミジン-4-チオン誘導体をヨードメタンと反応させる工程
e)前記4-メチルチオ-ピリミジンを、式


を有する化合物であって、
- A1、A2、A3およびA4のすべてがHであるか、またはA1、A2、A3およびA4の1つが、好ましくはハロゲニルである置換基であり、その他がHであるかのいずれかである、
- Bは、S、O、N-R、およびC-(R)2(式中、Rは、C1〜C6アルキルである)からなる群より選択される、
- Dは、置換または非置換C1〜C6 アルキルのいずれかである
ことを特徴とする化合物と反応させる工程
を含む、請求項1記載の蛍光色素の調製方法。
【請求項5】
二本鎖核酸の検出のための請求項1〜3いずれか記載の化合物の使用。
【請求項6】
検出が融解曲線分析中に行なわれる、請求項5記載の使用。
【請求項7】
検出がリアルタイム核酸増幅反応中に行なわれる、請求項5記載の使用。
【請求項8】
検出がゲルマトリックス中で行なわれる、請求項5記載の使用。
【請求項9】
少なくとも
- 請求項1〜3いずれか記載の化合物
- 熱安定性DNAポリメラーゼ
- デオキシヌクレオシド三リン酸の混合物、および
- バッファー
を含む、反応混合物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2010−508410(P2010−508410A)
【公表日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−535017(P2009−535017)
【出願日】平成19年10月30日(2007.10.30)
【国際出願番号】PCT/EP2007/009407
【国際公開番号】WO2008/052742
【国際公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】