説明

方位センサ

【課題】地磁気を検出して方位を特定する方位センサは、較正の際に、この方位センサを回転させる必要があり、精度良く安定した較正ができないという課題があった。
【解決手段】地磁気を検出する磁気センサ1と、磁気センサを振動させる振動手段2と、磁気センサの出力を増幅する増幅器3と、増幅器の出力を微分する第1の微分器4と、第1の微分器の出力を微分する第2の微分器5と、演算により較正と方位の算出とを行う演算手段6とを有する。これにより、構成のために磁気センサを回転する必要がなく、精度良く安定した較正ができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地磁気を検出して方位を特定する方位センサであり、特に、検出精度を高めるため較正を実行する方位センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より自動車や携帯機器等のナビゲーション機能を有する装置において、進行方向や装置の向きなどを検出する方位センサが広く使用されている。このような方位センサは、磁気センサによって地磁気を検出し方位を特定する。ところで、検出される地磁気は常に一定ではなく、周囲の金属の存在や、温度変化や、経時変化などによって強度や方向が変化するため、一般に較正作業が必要である。較正は、装置を1回転させるなどして、全方向の磁気センサの出力値から行うのが一般的である。
【0003】
ところが、携帯機器によく見られるように、人間が装置を回転させるような場合は、回転が速すぎる、水平が保てない、などの理由で正しく較正できなかったり、操作が煩雑であるいという問題があった。この問題を解決するため、演算を用いることで、装置を1回転させずとも、装置をいくつかの向きにして、そのときの出力値だけから較正を行う方位センサが考えられており、提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
特許文献1に示した従来技術の方位センサを図面を用いて説明する。図7は、特許文献1に示した従来技術の方位センサを示す構成図である。
図7において、80は3軸磁気センサ、81はx軸ホール素子、82はy軸ホール素子、83はz軸ホール素子、84はチョッパ部、85は磁気センサ駆動電源部、86は差動入力アンプ、87はA/D変換部、88は補正値更新部、89は補正値記憶部、90は補正計算部、91は方位角計算部である。
【0005】
以下に方位検出の原理を説明する。3軸磁気センサ80は、x軸ホール素子81とy軸ホール素子82とz軸ホール素子83とを有している。x軸ホール素子81とy軸ホール素子82とは、水平面内の回転角を検出するように配置され、z軸ホール素子83は鉛直方向の磁気を検出するように配置されている。
チョッパ部84は、x軸ホール素子81、y軸ホール素子82およびz軸ホール素子83を駆動する端子を切り換えるためのもので、磁気センサ駆動電源部85から出力された駆動電圧をx軸ホール素子81、y軸ホール素子82およびz軸ホール素子83にそれぞれ印加する。
x軸ホール素子81、y軸ホール素子82およびz軸ホール素子83から出力された信号は、差動入力アンプ86でそれぞれ増幅され、ここで増幅された出力増幅値がA/D変換部87でデジタル信号に変換された後、補正計算部90に入力される。
補正値記憶部89には、x軸ホール素子81、y軸ホール素子82およびz軸ホール素子83の出力のばらつきを示すオフセット値と増幅度とがそれぞれ記憶されており、補正計算部90は、これらのオフセット値および増幅度を用いることにより、x軸ホール素子81、y軸ホール素子82およびz軸ホール素子83の出力値をそれぞれ補正し、地磁気の各軸成分に比例した値に変換して出力する。方位角計算部91は、補正計算部90の出力を用いて方位を算出する。
【0006】
以下に較正について説明する。較正とは、補正値記憶部89に記憶されている、x軸ホール素子81、y軸ホール素子82およびz軸ホール素子83のそれぞれのオフセット値および増幅度を正しい値に更新することである。
較正の手順は、まず、同一面内で90度ずつ回転した際のボタン入力等の人間の動作を
機に、ホール素子からの信号を取得する。例えば、x軸ホール素子81のある向きにおける信号をXaとして取得し、その向きに対して90度、180度の向きにおける信号を、それぞれXb、Xcとして取得する。次に、以下の計算により求めたオフセット値および増幅度を補正値記憶部89に記憶する。
x軸のオフセット値Oxは、以下の式で表すことができる。
Ox=(Xa+Xc)/2
x軸の増幅度Axは、以下の式で表すことができる。
Ax={(Xa−Ox)^2+(Xb−Ox)^2}^2
y軸、z軸についても同様に、オフセット値Oy、Ozと増幅度Ay、Azとを求める。
【0007】
以下に補正計算部90における補正計算について説明する。x軸ホール素子81、y軸ホール素子82およびz軸ホール素子83の出力値をそれぞれX、Y、Zとした時、補正後のx軸信号αは、以下の式で表すことができる。
α=(X−Ox)/Ax
補正後のy軸信号βは、以下の式で表すことができる。
β=(Y−Oy)/Ay
補正後のz軸信号γは、以下の式で表すことができる。
γ=(Z−Oz)/Az
【0008】
以下に方位角計算部91における方位角計算について説明する。方位角計算部91は、補正計算部90によって補正された信号α、β、γを用いて方位を算出する。例えば、X軸とY軸とが水平面内にある時は、方位角計算部91は、地磁気の各軸成分に比例した値であるα、βを用いて、方位角θを以下の式に基づいて算出する。
θ=tan−1(β/α)
また、X軸とY軸とが水平面から傾いている時には、地磁気の各軸成分に比例した値であるα、β、γを用いて傾斜角を補正した上で、方位角θを算出することもできる。
【0009】
上記のような原理に基づき地磁気を検出することによって方位を特定することができる。
【0010】
【特許文献1】特開2004−12416号公報(第8−11頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1に示した従来技術の方位センサは、いくつかの向きにおける出力信号だけから演算を用いて較正を行うことができるため、方位センサを搭載した装置を1回転させる必要はない。しかしながら、いくつかの向きに装置を向ける必要があるため、例えば、正確に90度向きを変えるなどの操作が難しく、また、向きを変えている最中に装置を水平を保つことも難しいといったことから、精度良く安定した較正ができないという欠点があった。さらに、いくつかの向きといえども、装置を動かす必要があるから、動かせる装置の大きさを制限してしまう。つまり、従来技術の方位センサは、大きな装置には搭載できないという欠点もあった。
【0012】
本発明の目的は、上記課題を解決しようとするもので、精度良く安定した較正を行うとともに、搭載する装置の大きさを制限しない方位センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明の方位センサは下記に示す構造を採用する。
【0014】
地磁気を検出して方位を特定する方位センサであって、
地磁気を検出する磁気センサと、磁気センサを振動させる振動手段と、磁気センサの出力を増幅する増幅器と、増幅器の出力を微分する第1の微分器と、第1の微分器の出力を微分する第2の微分器と、演算により較正と方位の算出とを行う演算手段とを有することを特徴とする。
【0015】
振動手段は、一定角速度で磁気センサを振動させることを特徴とする。
【0016】
振動手段は、形状記憶合金を有し、形状記憶合金の相変態を利用して振動を発生させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の方位センサは、磁気センサを振動させる振動手段を設け、磁気センサの出力を増幅する増幅器と、この増幅器の出力を微分する微分器とを設けている。この微分器は、第1の微分器と第2の微分器とからなり、第1の微分器の出力を第2の微分器が微分する。
本発明の方位センサは、磁気センサを一定角速度で振動させることにより、増幅度とオフセットとを演算により求めることができるため、較正と方位の算出とを行うことができる。
さらに、較正のために人間が一切手を触れる必要はないから、精度良く、安定した較正を行うことができるという効果がある。また、本発明の方位センサを搭載する装置を動かす必要がないから、装置の大きさを制限しない。したがって、あらゆる装置に本発明の方位センサを搭載することができるという効果もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下図面により本発明の実施の形態を詳述する。図1は、本発明の方位センサを示す構成図である。図2は、本発明の方位センサの磁気センサと振動手段とを示す構成図である。図3は、本発明の方位センサの形状記憶合金の形状図であって、図3(a)は第1の形状を示す図であり、図3(b)は第2の形状を示す図である。図4は、本発明の方位センサの磁気センサの理想的な出力波形を説明する図である。図5は、本発明の方位センサの磁気センサの実際の出力波形を説明する図である。図6は、本発明の方位センサの微分器の回路図である。
【0019】
[構造説明:図1、図2、図4、図6]
まず、本発明の方位センサの構成を図1、図2、図4、図6を用いて説明する。
図1において、1は磁気センサ、2は振動手段、3は増幅器、4は第1の微分器、5は第2の微分器、6は演算手段である。
本発明の実施の形態では、磁気センサ1として磁気によって抵抗値が変化する磁気抵抗素子を用いた場合を例にして説明するが、これに限られるものではなく、磁気インピーダンス素子、フラックスゲートなどの磁気センサであってもよい。また、本発明の実施の形態では、振動手段として形状記憶金属を用いた場合を例にして説明する。
演算手段6はメモリとA/D変換器とを有するマイクロコントローラを使用することができる。
【0020】
図2において、7は磁気抵抗素子、9a〜9dは形状記憶合金、10は電極である。
形状記憶合金9a〜9dは、Ti(チタン)とNi(ニッケル)との化合物からなるTi−Ni合金を使用することができる。図2においては、形状記憶合金9a〜9dは4つ、電極10は8つある場合を示している。
図2の形状記憶合金9bに示す点線の矢印は、電極10を通して形状記憶合金9bに流す電流を模式的に示したものである。
図1と図2とに示す円弧状の矢印は、振動手段2による磁気センサ1の振動を模式的に
示したものである。
【0021】
図3において、図3(a)と図3(b)とに示すものは、図2に示す形状記憶合金9a〜9dが記憶している形状である。形状記憶合金9a〜9dは、図3(a)に示す第1の形状か図3(b)に示す第2の形状のどちらかの形状を記憶している。図3に示す円弧状の矢印は、形状記憶合金9a〜9dへの通電により発生する熱で、その形状が変形する様子を模式的に示したものである。
【0022】
図4においては、11はx軸出力、12はy軸出力である。XaとYaとは、ある向きにおけるそれぞれの軸出力である。
【0023】
図5においては、AxとAyは増幅度、OxとOyとはオフセット値である。
【0024】
図6においては、13はオペアンプ、14は第1の抵抗、15はコンデンサ、16は第2の抵抗である。
【0025】
なお、図1から図6において同一の構成には同一の番号を付与している。
【0026】
[方位検出原理説明:図1、図2、図4、図5]
まずはじめに、本発明の方位センサの方位検出原理を図1、図2、図4、図5を用いて説明する。
図1示す磁気センサ1はx軸とy軸との2方向の地磁気を検出するため、図2に示すごとく2つの磁気抵抗素子7を直角に配置した構造を持つ。それぞれの磁気抵抗素子7は、地磁気に応じた信号を出力する。この信号は増幅器3によって増幅された後、演算手段6に入力される。演算手段6は演算を用いて方位を算出する。
磁気抵抗素子7は、磁気の強さに比例して抵抗値が増加するものであるので、磁気抵抗素子7は南北に向いた時、最大の抵抗値を示し、出力が最大となり、東西に向いた時出力0となる。つまり、磁気センサ1を一定角速度で振動させたとすると、理想的には図4に示すようなサイン波形を示す。x軸出力11とy軸出力12とは、磁気抵抗素子7が直角に配置されているため、90度位相がずれた波形となる。今、ある向きにおけるx軸出力をXa、y軸出力をYaとしたならば、演算手段6では方位角θを次式に基づいて算出することができる。
θ=tan−1(Ya/Xa)
ところが、検出される地磁気は常に一定ではなく、周囲の金属の存在や、温度変化や、経時変化などによって変化するため、図4に示すような理想的な波形からずれた図5のような波形となる。つまり、x軸出力11とy軸出力12との振幅が異なってしまう増幅度のばらつきの現象や、サイン波形の中心が出力0の点からずれてオフセット値が加わってしまうといった現象を含んだ波形となる。そのため、正しい計測を行うためには、この増幅度やオフセット値を正しく検出するという較正作業が必要となる。
【0027】
[較正手順説明:図1、図2、図3、図5]
次に、本発明の方位センサの較正手順を図1、図2、図3、図5を用いて説明する。
較正時、図1に示す振動手段2は、磁気センサ1を回転角45度程度、一定角速度ωで振動させる。この時、磁気センサ1の出力は、図5のようなサイン波形を示す。
今、x軸について考えてみると、x軸出力11は、以下の式で表すことができる。
X1=Ax*sin(ωt+φ)+Ox ・・・・(式1)
ここで、X1はx軸出力11、Axは増幅度、ωは一定角速度、tは時間、φは初期位相、Oxはオフセット値である。
第1の微分器4は、x軸出力11を微分する。すなわち、式1を微分するので第1の微分器4の出力X2は、以下の式で表すことができる。
X2=Ax*ω*cos(ωt+φ) ・・・・(式2)
第2の微分器5は、第1の微分器4の出力をさらに微分するので、その出力X3は、以下の式で表すことができる。
X3=−Ax*ω^2*sin(ωt+φ) ・・・・(式3)
【0028】
演算手段6は、式1、式2、式3で表される信号を受取り、以下の式により増幅度Ax、オフセット値Oxを算出する。オフセット値Oxは、式1と式3とにより算出し、増幅度Axは、式2と式3とにより算出する。
Ox=X1+X3/(ω^2)
Ax={(X2/ω)^2 + (X3/ω^2)^2 }^(1/2)
【0029】
以上のことは、磁気センサ1を一定角速度ωで振動させたことにより、増幅度Axとオフセット値Oxとが、3つの出力X1、X2、X3のみから演算により求められることを示している。
同様にy軸についても増幅度Ay、オフセット値Oyを求める。このように求められた、AxとAy、OxとOyは演算手段6内のメモリに記憶され、方位計測時の補正演算に使用される。
【0030】
[方位計測時の補正演算説明]
次に、本発明の方位センサの方位計測時の補正演算を説明する。方位計測時のx軸出力をXとし、y軸出力をYとする。補正後のx軸出力αと補正後のy軸出力βと、これを利用して正しく補正された方位角θとは以下の式で表すことができる。
α=(X−Ox)/Ax
β=(Y−Oy)/Ay
θ=tan−1(β/α)
【0031】
[振動手段説明:図2、図3]
次に、本発明の方位センサの振動手段2を図2、図3を用いて説明する。
図2に示すように、振動手段2は、形状記憶合金9a〜9dと電極10とを有している。形状記憶合金9a〜9dは、一般に知られるように、温度によってオーステナイト相とマルテンサイト相との間で相変態を起すものであって、低温のマルテンサイト相では非常に柔らかく変形しやすく、加熱しオーステナイト相になると記憶していた形状を復元するというものである。
【0032】
本発明の方位センサは、形状記憶合金9a〜9dを磁気センサ1の周囲に配置する。図2に示す例では、形状記憶合金9a〜9dは、磁気センサ1を挟み、形状記憶合金9aと9cとが対向し、形状記憶合金9bと9dとが対向するように磁気センサ1の周囲に設けている。
磁気センサ1を挟み、対向配置する形状記憶合金は、同一の形状を記憶しておく。例えば、形状記憶合金9aと9cとは、図3(a)に示すような第1の形状を記憶しておき、形状記憶合金9bと9dとは、図3(b)に示すような第2の形状を記憶しておく。したがって、形状記憶合金の数が4つの場合は、隣り合う形状記憶合金は、互いに異なる形状を記憶していることになる。
【0033】
形状記憶合金9a〜9dへの加熱は、電極10を通して電流を印加した時のジュール熱によって行うが、図2に示す例では、磁気センサ1を挟み、対向して配置する形状記憶合金(例えば、形状記憶合金9aと9c)と、それとは異なって対向して配置する形状記憶合金(例えば、形状記憶合金9bと9d)とに、交互に電流を印加することにより、磁気センサ1を図中の円弧状の矢印に示すごとく振動させることができる。また、ジュール熱は電流の2乗に比例するので一定電流を印加することで、一定角速度で振動させることが
できる。
【0034】
もちろん、磁気センサ1を振動させる方法は、これに限定されるものではない。図2に示す例では、形状記憶合金を4つ用いる例を示したが、形状記憶合金の数は4つでなくてもよく、振動させる磁気センサ1の大きさや形状に応じて変更が可能である。例えば、磁気センサ1が大きい場合などは、いくつかの隣り合う形状記憶合金同士に同一の形状を記憶しておき、見かけ上1つの形状記憶合金としてグループ化し、そのグループに対して電流を印加してもかまわないのである。
さらに、磁気センサ1を挟み、対向して配置する形状記憶合金と、それとは異なって対向して配置する形状記憶合金とに、交互に電流を印加する例を説明したが、これに限定されるものではない。形状記憶合金の変形形状を鑑みて、例えば、形状記憶合金9aと9dと、形状記憶合金9bと9cとをそれぞれ同じ方向に変形するように配すれば、形状記憶合金9aと9dと、形状記憶合金9bと9cとに対して交互に電流を印加すれば、磁気センサ1を振動させることができるのである。
以上の説明では、形状記憶合金9a〜9dへの加熱は、電流印加により発生するジュール熱を利用した場合であるが、これに限定はされない。ヒーターなどを用いて加熱して相変態を起こさせてもよい。
【0035】
[微分器説明:図6]
次に、本発明の方位センサの微分器を図6を用いて説明する。
図1に示す第1の微分器4と第2の微分器5とを構成する回路は、同一構成とすることができ、一般に良く知られたオペアンプと抵抗とコンデンサとを有する微分器を使用することができる。このような微分器の一例を図6に示す。
図6に示す微分器は、オペアンプ13、第1の抵抗14、コンデンサ15、第2の抵抗16とを備える。微分器の入力とオペアンプ13の負入力との間にコンデンサ15と第2の抵抗16とを直列に接続し、微分器の出力とオペアンプ13の負入力との間に第1の抵抗14を接続する。オペアンプの正入力は、接地または一定の電位に接続する。
第2の抵抗16は発振防止のための抵抗であって、第1の抵抗14の1/100〜1/1000程度の抵抗値のものを使用する。
また、演算手段6が高い演算能力を持つ場合は、演算手段6の演算によって微分器を実現してもよい。
【0036】
本発明の実施の形態における方位センサでは、その説明を簡単にするため、x軸、y軸の2軸の方位センサを例にして説明したが、同様な構成をz軸に用意し、3軸の方位センサを構成することもできる。
【0037】
本発明の方位センサは、振動手段と第1の微分器と第2の微分器とを設けることによって、水平な机の上などに置くだけで較正ができるようになり、一切人間が触る必要がなく、精度良く、安定した較正ができる。
【0038】
本発明の方位センサは、振動手段に形状記憶合金を使用したため、構造が簡単になり小型化できる。特に、近年実用化されてきたMEMS(Micro Electro−Mechanical System)技術、すなわち、機構部品を半導体製造技術を利用して小型化するという技術を用いることにより、磁気センサ、振動手段を含む方位センサ全体を、例えば、5mm角以下に小型化することができる。
もちろん、振動手段はすべて形状記憶合金で構成する必要もなく、形状記憶合金とバネのように伸縮する部材とを組み合わせてもよい。
また、形状記憶合金を用いなくてもよく、その場合は、電気信号で伸縮する部材などを用いることができる。例えば、電圧変化で形状が変位する高分子アクチュータなどである。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の方位センサは、自動車や携帯機器等のナビゲーション機能を有する装置に適用することができる。特に、人間が一切手を触れることなく較正できるため、精度と安定した較正とを要求される電子機器に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の方位センサを示す構成図である。
【図2】本発明の方位センサの磁気センサと振動手段とを示す構成図である。
【図3】本発明の方位センサの形状記憶合金の形状図である。
【図4】本発明の方位センサの磁気センサの理想的な出力波形を説明する図である。
【図5】本発明の方位センサの磁気センサの実際の出力波形を説明する図である。
【図6】本発明の方位センサの微分器の回路図である。
【図7】従来技術の方位センサを示す構成図である。
【符号の説明】
【0041】
1 磁気センサ
2 振動手段
3 増幅器
4 第1の微分器
5 第2の微分器
6 演算手段
7 磁気抵抗素子
9 形状記憶合金
10 電極
11 x軸出力
12 y軸出力
13 オペアンプ
14 第1の抵抗
15 コンデンサ
16 第2の抵抗
80 3軸磁気センサ
81 x軸ホール素子
82 y軸ホール素子
83 z軸ホール素子
84 チョッパ部
85 磁気センサ駆動電源部
86 差動入力アンプ
87 A/D変換部
88 補正値更新部
89 補正値記憶部
90 補正計算部
91 方位角計算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地磁気を検出して方位を特定する方位センサであって、
地磁気を検出する磁気センサと、該磁気センサを振動させる振動手段と、該磁気センサの出力を増幅する増幅器と、該増幅器の出力を微分する第1の微分器と、該第1の微分器の出力を微分する第2の微分器と、演算により較正と方位の算出とを行う演算手段とを有することを特徴とする方位センサ。
【請求項2】
前記振動手段は、一定角速度で前記磁気センサを振動させることを特徴とする請求項1に記載の方位センサ。
【請求項3】
前記振動手段は、形状記憶合金を有し、該形状記憶合金の相変態を利用して振動を発生させることを特徴とする請求項1または2のいずれか1つに記載の方位センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−153674(P2006−153674A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−345057(P2004−345057)
【出願日】平成16年11月30日(2004.11.30)
【出願人】(000001960)シチズン時計株式会社 (1,939)
【Fターム(参考)】