説明

方法

(a)有機化合物を酸化して有機ヒドロペルオキシドを含む反応生成物を得ること、(b)有機ヒドロペルオキシド含有反応生成物の少なくとも一部を塩基性水溶液で処理し、塩基性水相から、有機ヒドロペルオキシドを含む炭化水素相を分離すること、(c)分離された有機ヒドロペルオキシド含有炭化水素相の少なくとも一部を水で洗い、有機ヒドロペルオキシドを含む炭化水素相を水相から分離すること、さらに、(d)場合によってはステップ(c)を1回または複数回繰り返すことを含み、ステップ(b)において使用される前に、有機ヒドロペルオキシドを含む反応生成物および/または塩基性水溶液から固体粒子が(好ましくは濾過により)除去される、有機ヒドロペルオキシドの調製方法、ならびに、このようなヒドロペルオキシドが使用されるオキシラン化合物の調製方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機ヒドロペルオキシドの調製方法、ならびに、このような有機ヒドロペルオキシドが、例えば、オキシラン化合物の調製、およびアルケニルアリール化合物の調製に使用される方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機化ヒドロペルオキシドを用いるプロピレンオキシドの調製方法は当技術分野においてよく知られている。米国特許第5883268号に記載されるように、このような方法は、通常、エチルベンゼンを過酸化物にすること、次に、過酸化物化反応生成物をその酸性成分を中和するのに十分な量の塩基性水溶液と接触させること、および、得られた混合物を水性の流れと脱酸処理された有機物の流れとに分けることを含む。塩基を不純物として含む、脱酸処理後のヒドロペルオキシドの流れは水で洗浄され、得られた混合物は、有機物を不純物として含む水相と、アルカリ金属含量が低下した有機相とに分けられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
驚くべきことに、最終的に得られる有機ヒドロペルオキシド中の不純物の量を、簡単で効果的なやり方でさらに減らせることが見出された。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、有機ヒドロペルオキシドの調製方法に関し、その方法は、
(a)有機化合物を酸化して有機ヒドロペルオキシドを含む反応生成物を得ること、
(b)前記有機ヒドロペルオキシド含有反応生成物の少なくとも一部を塩基性水溶液で処理し、塩基性水相から、有機ヒドロペルオキシドを含む炭化水素相を分離すること、
(c)前記分離された有機ヒドロペルオキシド含有炭化水素相の少なくとも一部を水で洗い、有機ヒドロペルオキシドを含む炭化水素相を水相から分離すること、さらに
(d)場合によってはステップ(c)を1回または複数回繰り返すこと、
を含み、その方法においては、ステップ(b)において使用される前に、有機化ヒドロペルオキシドを含む反応生成物および/または塩基性水溶液から固体粒子が除去される。好ましくは、ステップ(b)において使用される前に、有機ヒドロペルオキシドを含む反応生成物の少なくとも一部、および/または、塩基性水溶液の少なくとも一部を濾過することにより、前記固体粒子は除去される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
本発明の要点は、固体粒子が、1つまたは複数の供給の流れの少なくとも一部から、これらの流れがステップ(b)において使用される前に除去されるという事実にある。方法ステップ(b)に従う供給の流れは、ステップ(a)において得られた有機ヒドロペルオキシド含有反応生成物と、有機ヒドロペルオキシド含有反応生成物がそれにより処理される塩基性水溶液である。
【0006】
通常の操業において、有機ヒドロペルオキシドを含む炭化水素相の洗浄に際して、界面エマルジョン層または使用不可物(rag)が生成し得ることが観察された。このような層は、有機相における塩基性水溶液の量を増大させ得る。有機相における相当量の塩基性水溶液の存在は、有機ヒドロペルオキシドのさらなる処理において、塩基性化合物、より詳細には、水酸化ナトリウムおよび水酸化カルシウムのような化合物の存在により主に引き起こされる問題を生じる傾向がある。
【0007】
有機ヒドロペルオキシドは、様々な製造法において有用である。これらの製造法の1つは、オキシラン化合物を得るための、有機ヒドロペルオキシドとオレフィンの反応である。このような製造法において、有機化合物は、通常、アルキルアリール化合物であり、その製造法はさらに以下を含む:
(e)ステップ(c)および/または(d)において得られるアルキルアリールヒドロペルオキシドを含む炭化水素相の少なくとも一部を、オレフィンおよび触媒と接触させてアルキルアリール水酸化物およびオキシラン化合物を得ること、および
(f)オキシラン化合物の少なくとも一部をアルキルアリール水酸化物から分離すること。
【0008】
ステップ(f)において得られたアルキルアリール水酸化物は、様々な製造法において使用され得る。このような製造法は、アルキルアリール水酸化物の脱水によるアルケニルアリール化合物の調製である。別の製造法は、アルキルアリール化合物を得るための、アルキルアリール水酸化物の水素化である。本発明による方法が、アリキルアリール水酸化物の脱水のために用いられる場合、その製造法は、適切には、さらに、
(g)ステップ(f)において得られたアルキルアリール水酸化物の少なくとも一部を転化させること、
を含む。
【0009】
好ましくは、ステップ(g)は、反応生成物の脱水または水素化分解を含む。水素化分解は、アルキルアリール水酸化物と水素の、好ましくは触媒の存在の下での反応である。脱水は、一般に、アルケニルアリール化合物と水を生成し、一方、水素化分解は、一般に、アルキルアリール化合物を生成する。好ましくは、水素化分解は、出発化合物として使用されるアルキルアリール化合物を生成する。
【0010】
本発明の方法において用いられる有機化合物は、原理的に、どのような化合物であってもよく、最も頻繁に用いられる有機化合物は、アルキルアリール化合物、より詳細には、少なくとも1個のアルキル置換基をもつベンゼン化合物であり、そのアルキル置換基は1から10個、好ましくは2から8個の炭素原子を含む。好ましくは、ベンゼン化合物は平均で1から2個の置換基を含む。最も頻出するアルキルアリール化合物は、エチルベンゼン、クメンおよびジ(イソプロピル)ベンゼンである。
【0011】
有機化合物の酸化は、当技術分野において知られている如何なる適切な方法により実施されてもよい。酸化は希釈剤の存在下に液相において実施され得る。好ましくは、この希釈剤は、反応条件の下で液体であり、また、出発物質および得られる生成物と反応しない化合物である。しかし、希釈剤は、反応の間に必然的に存在する化合物であってもよい。例えば、アルキルアリール化合物がエチルベンゼンである場合には、その希釈剤はやはりエチルベンゼンであってもよい。
【0012】
望みの有機ヒドロペルオキシド以外に、有機化合物の酸化反応の間には、多様な不純物が生成する。これらのほとんどは少量で存在するが、特に、有機酸の存在は、有機ヒドロペルオキシドのさらなる使用において時に問題を生じることが見出されている。米国特許第5883268号に記載されるように、不純物の量を減らす方法は、有機ヒドロペルオキシドを含む反応生成物をアルカリ性水溶液と接触させることである。しかし、アルカリ性水溶液との接触は、有機ヒドロペルオキシド含有反応生成物に、ある量のアルカリ金属を導入する。有機酸の量はアルカリ洗浄により減少するが、アルカリ金属不純物の量は増加する。
【0013】
本発明の方法においては、有機ヒドロペルオキシド含有反応生成物は、塩基性水溶液、より詳細には、1種または複数のアルカリ金属化合物を含む塩基性水溶液と接触する。アルカリ性水溶液での使用に適するアルカリ原料には、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩およびアルカリ金属炭酸水素塩が含まれる。これらの化合物の例は、NaOH、KOH、Na、KCO、NaHCOおよびKHCOである。容易に入手できることを考えると、NaOHおよび/またはNaCOを用いることが好ましい。
【0014】
塩基性水溶液は、好ましくは、新しい塩基性水溶液、リサイクルされた塩基性水溶液と、場合によっては追加の水を含む。リサイクルされた塩基性水溶液は、ステップ(b)から得られる。
【0015】
ステップ(b)がその下で実施される正確な条件は、さらなる事情に強く依存する。好ましくは、ステップ(b)は、0℃と150℃の間、より好ましくは、20℃と100℃の間の温度で実施される。
【0016】
ステップ(b)において、次に、炭化水素相が水相から分離される。好ましい方法は、炭化水素相および水相が分離容器(settling vessel)において自然に分離し、次に、炭化水素相を水相から分離することを含む。好ましくは、次に、有機ヒドロペルオキシドを含む炭化水素相はコアレッサ(coalescer)に送られ、さらに水相が除去される。好ましくは、分離は0℃と150℃の間、より好ましくは、20℃と100℃の間の温度で実施される。
【0017】
通常の操業において、有機ヒドロペルオキシドを含む炭化水素相の洗浄に際して、界面エマルジョン層または使用不可物が時折観察された。驚くべきことに、使用不可物のこのような生成を、ステップ(b)において使用される供給の流れの1つまたは複数から固体粒子を除去することにより防げることが今や見出された。理論に拘束されようとは思わないが、使用不可物の生成は、固体粒子、例えば、鉄のような金属の化合物の小さな不溶性粒子の存在が原因であった。このような金属化合物は金属表面の腐食で生成し得る。有機ヒドロペルオキシド含有反応生成物は、このような金属化合物を酸化の間に取り込み得るであろう。さらに、有機化合物を含む流れは、酸化の前にすでにこのような固体粒子を含んでいることがある。塩基性水溶液は、このような金属化合物を、リサイクルされた塩基性水溶液から、および/または、塩基性水溶液の調製に用いられた廃水から取り込み得るであろう。いずれの供給の流れも貯蔵中に金属化合物を取り込み得る。固体粒子は様々な方法で除去され得る。固体粒子は、当業者に知られているどのような方法で除去されてもよい。適切な方法は、ステップ(b)において使用される供給の流れの1つまたは複数の少なくとも一部をイオン交換樹脂、吸収剤で処理すること、および/または、これらの供給の流れの少なくとも一部を濾過することを含む。濾過することが固体粒子を除去する好ましい方法であることが見出された。
【0018】
濾過が実施され得る温度および圧力は当業者によく知られており、存在する化合物に依存する。
【0019】
ステップ(b)の供給の流れを濾過するために好ましく使用されるフィルタは、50マイクロメートル以下、好ましくは30マイクロメートル以下、より好ましくは20マイクロメートル以下の目の開きをもつ。
【0020】
フィルタは当業者により適切であることが知られている材料からなる。ポリプロピレンおよびセルロース製のフィルタがよい性能を示すことが見出された。フィルタは徐々に詰まり、それはフィルタを挟む圧力降下の増加により示される。圧力降下が高くなりすぎた時は、当業者によく知られているように、フィルタを操業状態から取り出し、洗浄し、元に戻すことができる。別法として、クメンまたはエチルベンゼンのような洗浄液を、正常な流れとは逆の方向に供給すること(いわゆる、バックフラッシュ)によりフィルタを洗浄してもよい。後者には、フィルタを取り出す必要がないという利点がある。
【0021】
前記のように、ステップ(b)において使用される供給の流れの各々は、除去される必要がある金属化合物を含み得る。ステップ(a)において生成した有機ヒドロペルオキシド含有反応生成物に取り込まれる金属化合物の量は、ステップ(a)に従う有機化合物中に存在する金属化合物の量と、ステップ(a)における正確な工程条件に依存する。ステップ(a)において存在する金属化合物の量と種類が、ステップ(a)の生成物、あるいはその一部から、固体粒子を除去する必要があるかどうかを決めるであろう。
【0022】
ステップ(b)において使用される塩基性水溶液は、様々な源から金属化合物を取り込み得る。それぞれの源に存在する金属化合物の量は、塩基性水溶液から固体粒子をいつ除去するのが好ましいかを決めるであろう。
【0023】
ステップ(b)、(c)および/または、場合によっては実施されるステップ(d)において、水相と炭化水素相の分離をさらに向上させるために、追加の化合物が存在し得る。このような追加の化合物の例は、脂肪族アミンまたは環状アミンのような、いわゆるエマルジョンブレーカーまたは脱ヘーズ剤(de−hazer)である。
【0024】
本発明の本説明において、水という表現は、清浄な水と、不純物を含み得る廃水との両方を示すために用いられている。清浄な水が使用されるべき場合には、これは個別に言及される。ステップ(c)および(d)の水による洗浄は、清浄な水および/または廃水を用いて実施され得る。
【0025】
廃水の使用(場合によっては、清浄な水との組合せで)には、多くの利点がある。このことは、未公開特許出願PCT/EP02/10519(本発明者のTS 1068)に、詳細に記載されている。このように、ステップ(c)および/または(d)の水による洗浄は、廃水(場合によっては清浄な水との組合せで)により実施される。
【0026】
分離された炭化水素相に、どの段階で廃水を加えてもよい。好ましい特定の実施形態は、廃水または廃水を含む水溶液をコアレッサに加えることを含む。
【0027】
好ましくは、ステップ(c)および/または(d)において使用される水は、有機ヒドロペルオキシドを含む炭化水素相の洗浄に前に使用された廃水と、別種の廃水との両方を含む。
【0028】
有機ヒドロペルオキシドを含む炭化水素相の洗浄に前に使用された廃水は、好ましくは、有機ヒドロペルオキシドを含む炭化水素相を水相(好ましくは、清浄な水)と接触させて、次に、炭化水素相から水相を分離することにより得られた廃水である。そうして得られた水相は、好ましくは、さらなる処理なしで廃水として使用される。最も好ましくは、このようにして得られた廃水は、別種の廃水と組み合わせて使用される。
【0029】
炭化水素相の洗浄は、好ましくは、炭化水素相を向流として水と接触させることにより実施される。向流操作は、比較的清浄な水と、1回以上すでに洗浄された炭化水素相とを接触させ、他方、まだ洗浄されていない炭化水素相と、すでに炭化水素相と接触したことがある水相とを接触させることを含むと考えられている。
【0030】
廃水の源は、原理的に、本発明の方法では問題とされていない。しかし、本発明の方法に関連する方法ステップにおいて廃水が得られると、炭化水素相に存在する化合物が水溶液中に存在する化合物と反応する危険性を低下させるので、好ましい。さらに、本発明の方法に新しい成分を導入しないことが好ましい。先行する方法ステップの目的が、ステップ(a)の酸化における副生成物として生成した有機酸を除去することであったので、廃水の利用により、良好な結果が得られることは驚きである。ステップ(c)および/または(d)の水洗浄において廃水を使用し、エポキシ化触媒(例えば、EP−A−345856において記載されるもの)のような次の触媒に悪影響を与えることなく良好な結果が得られることが、今や、見出された。
【0031】
本発明の水溶液に使用するのに特に適することが見出された廃水は、酸性の廃水である。好ましくは、酸性の廃水は1種または複数の有機酸を含む。有機酸は、一般に、本発明の方法においてさらに使用される化合物に悪影響を与えないことが見出された。存在する酸が1から20個の炭素原子を含む有機酸であれば、特に好ましいことが見出された。廃水中に存在する好ましい有機酸には、総数で1から10個の炭素原子をもつ炭化水素カルボン酸が含まれる。特に好ましい酸は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸および酪酸である。ギ酸は有機ヒドロペルオキシドを限定的にのみ分解することが認められたので、ギ酸が特に適切であることが見出された。
【0032】
水溶液中の酸の濃度は、水溶液の全量に対して、0.0001から5wt%、より好ましくは、0.001から2wt%、最も好ましくは、0.001から1wt%である。
【0033】
好ましくは、ステップ(c)および/または(d)において使用される水は、廃水(場合によっては清浄な水と組み合わせられる)からなり、2から7、好ましくは、3から7未満、より好ましくは、3.5から6.5のpHをもつ。
【0034】
廃水の流れをこのように用いることができる。しかし、いくつかの場合には、本発明による方法において使用される前に、廃水の流れを濃縮すると利点があるであろう。
【0035】
有機ペルオキシドを含む炭化水素相に存在する不純物の量に応じて、水による洗浄は、1回または数回実施される。好ましくは、1から3回の洗浄が実施される。
【0036】
場合によっては実施されるステップ(e)において、ステップ(c)および/または(d)において得られた有機ヒドロペルオキシド含有炭化水素相の少なくとも一部がオレフィン、好ましくはプロペンと、触媒の存在の下で接触して、アルキルアリール水酸化物とオキシラン化合物を与える。このような製造法において相応しく使用され得る触媒には、シリカおよび/またはシリケート上のチタンが含まれる。好ましい触媒は、EP−A−345856に記載されている。反応は、一般に、穏やかな温度と圧力で、特に、0から200℃の範囲、好ましくは、25から200℃の範囲の温度で進行する。精確な圧力は、それが反応混合物を液体として、あるいは、蒸気と液体の混合物として保つのに十分である限り、重要でない。大気圧で十分であろう。一般に、圧力は、1から100x10N/mの範囲にある。
【0037】
オキシラン化合物は、アルキルアリール水酸化物を含む反応生成物から、当業者に適切であると知られている如何なる方法で分離されてもよい。液体反応生成物は、分留、選択抽出および/または濾過により精製され得る。溶剤、触媒および任意の未反応オレフィンまたはアルキルアリール水酸化物は、さらなる利用に向けてリサイクルされ得る。
【0038】
本発明の方法において得られたアルキルアリール水酸化物は触媒の存在の下に脱水されて、スチレンおよび水を与え得る。このステップに用いることができる製造法は、WO 99/42425およびWO 99/42426に記載されている。しかし、当業者に知られている如何なる適切な方法も、原理的には、用いることができる。
【0039】
本発明は以下の実施例によりさらに詳細に例示される。
(比較例1)
反応器内において、エチルベンゼンを通して空気を吹かした。得られた生成物は、エチルベンゼンヒドロペルオキシドを含んでいた。この生成物を0.5wt%のNaOHを含む水溶液と接触させ、60℃で混合した。エチルベンゼンヒドロペルオキシドを含む生成物とNaOH含有溶液との重量比は4.5:1(wt:wt)であった。得られた中和後の混合物を分離容器に送り、そこで、エチルベンゼンヒドロペルオキシドを含む中和後の炭化水素相を水相から分離した。
【0040】
エチルベンゼンヒドロペルオキシドを含む中和後の炭化水素相をコアレッサに送り、そこで、水相をさらに除去した。コアレッサからの中和後のエチルベンゼンヒドロペルオキシド溶液と水溶液とを混合し、得られた混合物を分離容器において水相と炭化水素相に分離し、次に、分離容器から得られた炭化水素相を第1コアレッサにより分離し、そして、第1コアレッサにおいて得られた炭化水素相を第2コアレッサを用いて分離することにより、エチルベンゼンヒドロペルオキシドを含む中和後の炭化水素相を洗浄した。これら各々のステップは以下に詳しく述べる。第2コアレッサにおいて得られた炭化水素相は、エチルベンゼンヒドロペルオキシド、エチルベンゼン、水および不純物を含む。炭化水素相を蒸留する。留出液はエチルベンゼン、水および不純物を含む。この留出液を容器内で相分離させて、エチルベンゼンおよび不純物を含む炭化水素相と、水および不純物を含む水相とを得た。後者のpHは3であり、それを、中和後の炭化水素相を洗浄するための水溶液に用いる廃水として使用した。
【0041】
中和後のエチルベンゼンヒドロペルオキシド溶液を、水溶液と4.5:1(wt:wt)の比で混合した。その水溶液は、1.3wt%の清浄な水と、有機ヒドロペルオキシドを含む炭化水素相を洗浄するのに使用された13.7wt%の廃水とに加えて、この方法ステップにおいてリサイクルされている85wt%の水を含んでいた。
【0042】
得られた混合物を分離容器に送り、そこで、炭化水素相を水相から分離した。
【0043】
得られた水相にNaOHを加え、そのNaOH含有水相は、エチルベンゼンヒドロペルオキシドを含む炭化水素相の中和用とした。
【0044】
分離容器において得られた炭化水素相を第1コアレッサに送り、それに、水と不純物を含む前記留出水相を1.1wt%(全炭化水素相に対して)と、清浄な水を1.7wt%(全炭化水素相に対して)加えた。第1コアレッサにおいて水相と炭化水素相を得た。第1コアレッサからの炭化水素相を第2コアレッサに送り、そこで、さらに、1.4wt%(全炭化水素相に対して)の清浄な水を加えた。
【0045】
第2コアレッサから得られた炭化水素相は約1ppmのナトリウムを含むことが見出された。
【実施例1】
【0046】
中和ステップにリサイクルされるNaOH含有水相を、中和ステップにおいて再び使用する前に、Whatmanのポリプロピレンフィルタ(最大で0.4ミクロンの目の開きをもつ)を用いて濾過したことを除いて、比較例1を繰り返した。
【0047】
第2コアレッサから得られた炭化水素相は、1ppmよりかなり少ないナトリウムを含んでいることが見出された。さらに、フィルタを挟む圧力は、0.05x10N/mから1x10N/mへと、3週間の間に徐々に増加することが見出された。これは、固体が取り除かれたことを示している。
【実施例2】
【0048】
廃水を、1−フェニルエタノールからスチレンへの脱水において得た。得られた廃水を蒸留したが、そうして得られた留出液は水と有機化合物を含んでいる。留出液から分離容器において有機相を分離し取り出した。分離容器から水相をコアレッサに送った。コアレッサにおいて得られた水相は、10ppmの固体を含んでおり、2ppmは鉄であった。この水相に20wt%のNaOHを加えた。こうして得られたNaOH溶液を、目の開きの最大径が様々なプロピレンフィルタを用いて濾過した。濾過液をエチルベンゼンヒドロペルオキシドのエチルベンゼン溶液に70℃で数時間接触させた。比較例においては、使用前にNaOH溶液を濾過しなかった。
次の結果を得た。
【0049】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)有機化合物を酸化して有機ヒドロペルオキシドを含む反応生成物を得ること、
(b)有機ヒドロペルオキシド含有反応生成物の少なくとも一部を塩基性水溶液で処理し、塩基性水相から、有機ヒドロペルオキシドを含む炭化水素相を分離すること、
(c)分離された有機ヒドロペルオキシド含有炭化水素相の少なくとも一部を水で洗い、有機ヒドロペルオキシドを含む炭化水素相を水相から分離すること、さらに
(d)場合によってはステップ(c)を1回または複数回繰り返すこと、
を含み、ステップ(b)において使用される前に、有機ヒドロペルオキシドを含む反応生成物および/または塩基性水溶液から固体粒子が除去される、有機ヒドロペルオキシドの調製方法。
【請求項2】
ステップ(b)において使用される前に、有機ヒドロペルオキシドを含む反応生成物の少なくとも一部および/または塩基性水溶液の少なくとも一部から固体粒子が濾過により除去される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
有機化合物がアルキルアリール化合物である、請求項1または2に記載される方法を用いてアルキルアリールヒドロペルオキシドを調製することを含み、さらに、
(e)ステップ(c)および/または(d)において得られるアルキルアリールヒドロペルオキシドを含む炭化水素相の少なくとも一部を、オレフィンおよび触媒と接触させてアルキルアリール水酸化物およびオキシラン化合物を得ること、および
(f)オキシラン化合物の少なくとも一部をアルキルアリール水酸化物から分離すること、
を含む、オキシラン化合物の調製方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法を用いてアルキルアリール水酸化物を調製することを含み、さらに
(g)ステップ(f)において得られるアルキルアリール水酸化物の少なくとも一部を転化させること、
を含む、アルケニルアリール化合物の調製方法。
【請求項5】
濾過が50ミクロン以下の目の開きをもつフィルタを用いて実施される請求項2から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(b)において分離された塩基性水溶液の少なくとも一部が濾過され、引き続き、ステップ(b)にリサイクルされる請求項2から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
塩基性水溶液が、新しい塩基性水溶液、リサイクルされた塩基性水溶液と、場合によっては追加の水を含む請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
ステップ(c)および/または(d)において、分離された有機ヒドロペルオキシド含有炭化水素相の少なくとも一部が、場合によっては清浄な水と組み合わせて、廃水で洗浄される請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。

【公表番号】特表2006−519213(P2006−519213A)
【公表日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−502050(P2006−502050)
【出願日】平成16年2月26日(2004.2.26)
【国際出願番号】PCT/EP2004/050208
【国際公開番号】WO2004/076408
【国際公開日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(590002105)シエル・インターナシヨナル・リサーチ・マートスハツペイ・ベー・ヴエー (301)
【Fターム(参考)】