説明

旅客案内システム及び旅客案内方法

【課題】音声により旅客案内を行うコンコースやホームの騒音レベルに応じて、自動的に最適な音声レベル設定することにより、例えば列車到着時あるいはラッシュ時にも、駅構内の乗客に音声案内を確実に伝達可能とするとともに、騒音レベルが低いときにも駅構内の乗客に不快感を与えないようにする。
【解決手段】駅に発着する列車の運行情報を受信する旅客案内端末と、駅構内のコンコースあるいはホームに設置され、列車運行情報を表示するとともに列車発着情報、列車遅延情報を音声案内する旅客案内装置とからなる旅客案内システムにおいて、旅客案内装置はLAN経由で旅客案内端末に接続されている。この旅客案内装置には、設置箇所周辺の騒音レベルを検出する騒音測定装置が接続されており、旅客案内端末で設定される音声出力レベルの初期値と騒音レベルに基づいて、音声案内の音声出力レベルを調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駅構内のホームあるいはコンコースに設置される旅客案内システム及び旅客案内システムによる旅客案内方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の旅客案内システムでは、駅の案内放送を出力する際、その案内放送の音声出力レベルは、列車到着前後の案内種別、列車在線中の列車騒音、乗客の増加に起因する駅構内の騒音の大きさに関係なく、予め定めた一定の値に予め設定されたレベルで出力を行っていた。
しかし、従来システムでは次のような問題点がある。
すなわち、列車到着時の案内放送においては、列車の到着時の進入騒音により案内放送が聞きづらくなる。
この改善策として、列車到着時の案内放送を基準として出力レベルを設定することが考えられる。これにより、列車到着時には案内放送が聞きやすくなる利点があるが、列車到着前の案内放送において、列車到着時と同じ音声出力レベルで案内放送を行った場合、音声出力レベルが過大となりホーム乗客に不快感を与える問題が発生する。
また、ホーム乗客に不快感を与えるのを避けるため、音声出力レベルを制限すると、朝ラッシュや夕ラッシュ時等には、乗降にかかわりなく多数の乗客がホームに押し寄せるため、乗客の話し声などが起因となる騒音が発生し、案内放送が聞きづらくなるという問題が生じる。
【0003】
この観点から、案内放送の出力レベルを時間帯で管理することも考えられ、例えば、朝夕のラッシュ時間帯を設定し、その時間帯に音声出力レベルを自動的に通常時より数dB上げることにより、ラッシュ時に騒音が増大した場合にも案内放送が聞きやすくなる。
しかし、朝・夕ラッシュ時間帯に乗客が増加することはあくまで予測であり、実際にはラッシュ時間帯でも、発着する列車、特定の時間帯によっては閑散となる場合があり、このようなときには、騒音がさほど高くないにもかかわらず、音声出力のみが高くなるため、ホーム乗客に不快感を与える問題が発生する。また、朝夕のラッシュ時以外にも乗客が増加する場合もあるため、突発的な騒音に対応した案内放送ができない。
【0004】
これらの問題を解決するため、駅員等の操作者が列車到着時あるいは乗降する乗客の多少に応じて、その都度案内放送の出力レベルを手動で調整することも考えられるが、ホーム数が多い駅では操作者の負担が非常に高くなり、また、最適な調整には熟練を要する。
【0005】
従来の旅客案内システムとして、次のような先行技術が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−212258号公報
【特許文献2】特開平6−247307号公報
【特許文献3】特開平9−097093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、上記の問題点を解決するため、本発明では、旅客案内装置が設置されたコンコースやホームの騒音レベルに応じて、自動的に最適な音声出力レベルを設定することにより、例えば列車到着時あるいはラッシュ時にも、駅構内の乗客に音声案内を確実に伝達可能とするとともに、騒音レベルが低いときにも駅構内の乗客に不快感を与えないようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するため、本発明の旅客案内システムは、駅に発着する列車の運行情報を受信する旅客案内端末と、駅構内のコンコースあるいはホームに設置され、列車運行情報を音声案内する旅客案内装置と、を備える旅客案内システムにおいて、旅客案内装置は、旅客案内端末及び騒音レベルを検出する騒音測定装置と接続され、騒音測定装置で検出した騒音レベルに基づいて、音声案内の音声出力レベルを調整する出力レベル決定部を備える。
【0009】
前記出力レベル決定部は、前記旅客案内装置に設けられ、該前記出力レベル決定部は前記旅客案内端末からLAN経由で受信した音声出力レベルの初期値と、前記騒音レベルに基づいて、音声案内の音声出力レベルを調整するようにしてもよい。
【0010】
前記出力レベル決定部は、前記旅客案内端末に設けられ、前記音声出力レベルの初期値と、前記旅客案内装置からLAN経由で受信した前記騒音レベルに基づいて、音声案内の音声出力レベルを調整し、前記旅客案内装置に送信するようにしてもよい。
【0011】
さらに、前記騒音レベルに基づいて、前記音声出力レベルの初期値を時間毎に学習する学習手段を備えるようにしてもよい。
【0012】
また、本発明の旅客案内システムの旅客案内方法は、騒音測定装置により駅構内のコンコースあるいはホームの騒音レベルを検出し、該騒音レベルに基づいて前記旅客案内装置から出力される音声出力レベルを調整する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、旅客案内装置が設置されたコンコースやホームの騒音レベルに応じて、案内放送の音声出力レベルを自動的に最適な値に調整することができるので、駅員等に負担を与えることなく常に変化する騒音の大きさに対応した案内放送の提供が可能となり、騒音レベルが高いときでも案内放送を聞きやすくするとともに、騒音レベルが低いときにも、乗客に不快感を与えない適切な音声出力レベルでの音声による案内放送が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明のシステムを実現するシステム構成のブロック図である。
【図2】本発明のシステムの一部である旅客案内端末のブロック図を示す。
【図3】本発明のシステムの一部である旅客案内装置のブロック図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、発明の実施例を、図面を用いて説明する。
【実施例】
【0016】
図1は本発明を実現するシステム構成のブロック図である。
旅客案内端末3は、中央の列車集中管理システム等から通信ケーブルを介して受信した、駅に発着する列車の運行情報に基づいて、LAN経由で駅構内のコンコースあるいはホームに設置された旅客案内装置6の案内画像表示データや音声案内等の制御情報を個別に送信するとともに、これらの情報の詳細設定などを行うための端末であり、旅客案内端末3はデスクトップ型またはノート型パソコン(PC)などの汎用装置が使用できる。駅員等の操作者は、案内放送の出力レベルをキーボード、マウス等の入力装置4により入力し、設定値入出力部11が出力する設定値をモニタ5で確認しながら、LAN経由で、各旅客案内装置6の設置箇所に応じて音声出力レベルの初期値を調整する。
【0017】
各旅客案内装置6は、各線の発着情報、遅延情報などを表示するディスプレイ(図示せず)と、これらを音声で案内するスピーカ、音声増幅器(アンプ)などからなる放送設備7とからなり、コンコースあるいはホームの所定箇所に測定する箇所に設置されたマイク等の集音装置1と、集音装置1の出力に基づいて騒音レベルを測定する騒音測定装置2が接続されている。
なお、集音装置1は、音声出力を行うホームあるいはホームの騒音レベルを広範囲にかつ正確に集音できるよう、騒音が常時発生する場所を避けて設置することが望ましい。
【0018】
旅客案内装置6は、騒音測定装置2から受信する騒音の測定値と、旅客案内端末3からLAN経由で受信した案内放送の音声出力レベルの初期値と、騒音の大きさに対応した案内放送の出力レベル設定値から、案内放送の出力レベルを決定し、放送設備7からこの出力レベルでの音声案内を行う。
【0019】
図2は、図1に示した旅客案内端末3のブロック図を示している。
旅客案内端末3では、入力装置4より入力した各コンコースあるいはホームに応じた音声出力レベルの初期値を、設定値入出力部11によりモニタ5に表示するとともに、入力された初期値は、設定値解析部12により妥当性のチェックが行われた後、データ送信部13の処理を起動し、LAN経由でデータを旅客案内装置6に送信する。
なお、このデータ送信は、操作者が入力装置4により出力レベル設定値を送信するための入力を行う度に、データ送信部13により旅客案内装置6に送信される。
【0020】
図3は、図1に示した旅客案内装置6のブロック図を示している。旅客案内装置6では、旅客案内端末3から送信される、各コンコースあるいはホームに応じた音声出力レベルの初期値に応じた案内放送の音声出力レベルの初期値を、出力レベル設定値受信部21により受信し、このデータを出力レベル設定ファイル22に格納する。
出力レベル設定ファイル22は、旅客案内端末3から案内放送の出力レベルが送信されると、新たな設定値として上書きされる。
【0021】
旅客案内装置6は騒音測定装置2から送信される、コンコースあるいはホームにおける騒音の測定値を、騒音測定値受信部23により受信し、出力レベル決定部24に送信する。旅客案内装置6から案内放送の出力要求をする際に、出力レベル決定部24にて、騒音の測定値と出力レベル設定ファイル22に格納した案内放送の出力レベル設定値から、案内放送の出力レベルを決定する。また音源部25に出力文章情報と共に出力レベル情報を送信する。
音源部25は、出力文章情報を基に音声合成を行い、出力レベル決定部24から送信された出力レベル情報を加味し音声出力データし、放送設備7に送信する。
【0022】
なお、この実施例では、旅客案内装置6内の出力レベル決定部24により、客案内端末3から送信される音声出力レベルの初期値と、騒音測定値受信部23により受信した騒音の測定値に基づいて最終的な音声出力レベルを決定したが、騒音測定値受信部23により受信した騒音の測定値をLAN経由で旅客端末3に送信し、設定値入出力部11で、音声出力レベルの初期値と、騒音測定値受信部23により受信した騒音の測定値に基づいて最終的な音声出力レベルを決定してもよい。
さらに、騒音測定値受信部23により受信した騒音の測定値を時間毎に記憶し、音声出力レベルの初期値を長期的な時定数で学習するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0023】
以上説明したように、本発明によれば、旅客案内装置が設置されたコンコースやホームの騒音レベルに応じて、案内放送の音声出力レベルを自動的に最適な値に調整することができるので、駅業務の負担を増大することなく、サービスの向上を図ることができるとともに、駅構内の安全性を高めることができる。
【符号の説明】
【0024】
1 集音装置
2 騒音測定装置
3 旅客案内端末
4 入力装置
5 モニタ
6 旅客案内装置
7 放送設備
11 設定値入出力部
12 設定値解析部
13 データ送信部
21 出力レベル設定値受信部
22 出力レベル設定ファイル
23 騒音測定値受信部
24 出力レベル決定部
25 音源部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駅に発着する列車の運行情報を受信する旅客案内端末と、
駅構内のコンコースあるいはホームに設置され、列車の運行情報を音声案内する旅客案内装置と、を備える旅客案内システムにおいて、
前記旅客案内装置は、前記旅客案内端末及び騒音レベルを検出する騒音測定装置と接続され、前記騒音測定装置で検出した騒音レベルに基づいて、音声案内の音声出力レベルを調整する出力レベル決定部を備えることを特徴とする旅客案内システム。
【請求項2】
前記出力レベル決定部は、前記旅客案内装置に設けられ、該前記出力レベル決定部は前記旅客案内端末からLAN経由で受信した音声出力レベルの初期値と、前記騒音レベルに基づいて、音声案内の音声出力レベルを調整することを特徴とする請求項1記載の旅客案内システム。
【請求項3】
前記出力レベル決定部は、前記旅客案内端末に設けられ、前記音声出力レベルの初期値と、前記旅客案内装置からLAN経由で受信した前記騒音レベルに基づいて、音声案内の音声出力レベルを調整し、前記旅客案内装置に送信することを特徴とする請求項1記載の旅客案内システム。
【請求項4】
前記騒音レベルに基づいて、前記音声出力レベルの初期値を時間毎に学習する学習手段を備えたことを特徴とする請求項1ないし3に記載の旅客案内システム。
【請求項5】
駅に発着する列車の運行情報を受信する旅客案内端末と、駅構内のコンコースあるいはホームに設置され、列車の運行情報を音声案内する旅客案内装置と、を備える旅客案内システムの旅客案内方法において、
騒音測定装置により駅構内のコンコースあるいはホームの騒音レベルを検出し、
該騒音レベルに基づいて前記旅客案内装置から出力される音声出力レベルを調整することを特徴とする旅客案内方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−49697(P2012−49697A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−188385(P2010−188385)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】