説明

既存構造物の外壁貫通配管工事の防水処理方法

【課題】 既存構造物の外壁貫通配管工事において漏水を完全に防止する。
【解決手段】 既存構造物の外壁(1)をコア抜きし、コア抜き部(2)に配管(3)を通す外壁貫通配管工事の防水処理方法において、コア抜き部(2)の外壁外面側に一回り大きいコア抜きを行い、所定箇所外面全周に水切り用ツバ(11)を形成した管状部材(10)をコア抜き部に挿入して一回り大きいコア抜きを行った外壁部(7)にツバを固定した後、管状部材を通して配管を貫通させ、管状部材と外壁との間、管状部材と配管との間に防水処理を施したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は既存構造物の外壁貫通配管工事における防水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の既存構造物の外壁貫通配管工事を図7により説明する。
従来の外壁貫通配管工事においては、まず、既存構造物のコンクリート外壁1に配管を通すためのコア抜きを行い、コア抜き部2に配管3(例えば、PEライニング管)3を挿入する。なお、図7の右側は構造物外、左側は構造物内を示している。
【0003】
次いで、コア抜きしたコンクリート部と配管との間にスペーサ(材質はヤーン)4を詰めてレベル調整を行い、バックアップ材(材質はシリコン系コーキング材)5を詰めて防水処理を行い、さらに配管廻りにコーキング6を施して防水処理を行う。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記した従来の既存構造物の改修工事においては、防水処理を完全に行うのは困難で、特に地中工事などの場合に経年変化による防水材の劣化で構造物内への水等の漏水があった場合の対策が懸念されているのが実情である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記課題を解決しようとするものであり、既存構造物の外壁貫通配管工事において漏水を完全に防止できる防水処理方法を提供することを目的とする。
そのために請求項1の発明は、既存構造物の外壁をコア抜きし、コア抜き部に配管を通す外壁貫通配管工事の防水処理方法において、
前記コア抜き部の外壁外面側に一回り大きいコア抜きを行い、所定箇所外面全周に水切り用ツバを形成した管状部材を前記コア抜き部に挿入して一回り大きいコア抜きを行った外壁部に前記ツバを固定した後、管状部材を通して配管を貫通させ、管状部材と外壁との間、管状部材と配管との間に防水処理を施したことを特徴とする。
請求項2の発明は、前記水切り用ツバは、管状部材外面の全周に溶接し、外壁への固定用ボルト孔を形成したことを特徴とする。
請求項3の発明は、外壁と管状部材廻りに防水シール材を充填し、ツバ部分をコーキング処理し、管状部材と配管との隙間にスペーサを詰めるとともに、防水処理することを特徴とする。
請求項4の発明は、さらに、外壁外面側に突き出た管状部材を覆って根巻きコンクリートを打設し、根巻きコンクリートと外壁との間を防水処理したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、既存構造物の外壁をコア抜きし、コア抜き部に配管を通す外壁貫通配管工事の防水処理方法において、前記コア抜き部の外壁外面側に一回り大きいコア抜きを行い、所定箇所外面全周に水切り用ツバを形成した管状部材を前記コア抜き部に挿入して一回り大きいコア抜きを行った外壁部に前記ツバを固定した後、管状部材を通して配管を貫通させ、管状部材と外壁との間、管状部材と配管との間に防水処理を施したので、地下室などの場合であっても水等の浸入を防止することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
本発明の既存構造物の外壁貫通配管工事の手順を図1〜図6により説明する。
図1は本発明で使用する水切り用のツバを付けた管状部材を説明する図で、図1(a)は側面図、図1(b)は横断面図、図1(c)はツバ取り付け部を示す図である。
鋼管や鋳鉄管等からなる管状部材10には、所定位置に外面全周に円板状の水切り用のツバ11を溶接し、ツバには外壁への固定用ボルト孔12を形成する。なお、管状部材は後工程の根巻コンクリートを考慮した長さで設定し、本実施形態では長さ630mm、左端位置(外壁内面に対応)から260mmの位置にツバ11を溶接し、管状部材外径140mm、ツバ外径250mmとしている。
【0008】
図2はツバ付の管状部材を外壁に挿入し固定した状態を説明する図であり、図の右側は構造物外、左側は構造物内を示している。
まず、既存構造物の外壁1の鉄筋・配管の探査を行ってコア抜き部を選定する。そして、選定した箇所のコンクリート壁にコア抜きを行い、さらに管状部材のツバ部分の取り付け用に1回り大きいコア抜きを行って、コア抜き部2、大径コア抜き部7を形成する。そして、図1に示したツバ付の管状部材10をコア抜き部2に挿入し、ツバ11を大径コア抜き部7の壁部にボルト14で固定する。このとき管状部材10の内側端部は外壁の内面位置となるようにし、構造物の外側へは所定長さ(本実施形態では300mm)突出させている。もちろん、管状部材10は構造物の内側へも突出させるようにしてもよい。
【0009】
図3はさらに管状部材と外壁間に防水処理を施した状態を示す図である。
図2に示したようにツバ付の管状部材10を挿入・固定し、外壁1のコンクリートと管状部材10との間にスペーサ(材質ヤーン)4を詰めてレベル調製し、さらにバックアップ材(シリコン系コーキング材)5を充填して防水処理を行う。また、ツバ部分にシリコン系シール材を充填してコーキング15を施して防水処理を行う。
【0010】
図4は管状部材に配管を挿入した状態を示す図である。
図3に示したように外壁1のコンクリートと管状部材10との間に防水処理を施し、管状部材を通してPEライニング配管3を挿入し、図示は省略するが、配管3と管状部材10との間にもスペーサを詰めてレベル調製し、さらにバックアップ材(シリコン系コーキング材)を充填して防水処理を行う。
【0011】
図5は外側に突出した管状部材を根巻コンクリートで覆った状態を示す図である。
上記したように管状部材10は構造物の外側へ突出しており、この部分を覆うようにコンクリート型枠を設置してコンクリートを打設し、コンクリート硬化後脱枠し、根巻コンクリート16を形成する。
【0012】
図6は外壁と根巻コンクリートの取り合い部の防水処理を説明する図である。
外壁1と根巻コンクリート16の取り合い部にシール材17を施して防水処理を行い、さらに配管3と外壁1との間にコーキング6を施して防水処理を行う。なお、管状部材を構造物の内側へ突出させた場合にも、管状部材と外壁との間、管状部材端部と配管との間にはコーキングを施して防水処理を行うようにする。
【0013】
以上のように本発明では、コア抜き部に水切り用のツバを外面全周に溶接した管状部材を挿入固定し、管状部材内に配管を挿入して外壁と管状部材間、管状部材と配管との間、配管と外壁間に防水処理を施すようにしたので漏水を完全に防止し、地下室などの場合であっても水等の浸入を防止することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0014】
本発明によれば、既存構造物の外壁貫通配管工事において完全に水等の浸入を防止することが可能になるので産業上の利用価値は極めて大きい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明で使用するツバ付管状部材を説明する図である。
【図2】ツバ付の管状部材を外壁に挿入し固定した状態を説明する図である。
【図3】管状部材と外壁との間の防水処理を説明する図である。
【図4】管状部材に配管を挿入した状態を示す図である。
【図5】管状部材の突出部に根巻コンクリートを打設した状態を示す図である。
【図6】根巻コンクリートと外壁間、配管と管状部材及び外壁間の防水処理を説明する図である。
【図7】従来の既存構造物の外壁貫通配管工事を説明する図である。
【符号の説明】
【0016】
1…外壁、2…コア抜き部、3…配管、4…スペーサ、5…バックアップ材、6…コーキング、10…管状部材、11…ツバ、12…溶接部、13…ボルト孔、14…ボルト、15…コーキング、16…根巻きコンクリート、17…シール材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
既存構造物の外壁をコア抜きし、コア抜き部に配管を通す外壁貫通配管工事の防水処理方法において、
前記コア抜き部の外壁外面側に一回り大きいコア抜きを行い、所定箇所外面全周に水切り用ツバを形成した管状部材を前記コア抜き部に挿入して一回り大きいコア抜きを行った外壁部に前記ツバを固定した後、管状部材を通して配管を貫通させ、管状部材と外壁との間、管状部材と配管との間に防水処理を施したことを特徴とする既存構造物の外壁貫通配管工事の防水処理方法。
【請求項2】
前記水切り用ツバは、管状部材外面の全周に溶接し、外壁への固定用ボルト孔を形成したことを特徴とする請求項1記載の防水処理方法。
【請求項3】
外壁と管状部材廻りに防水シール材を充填し、ツバ部分をコーキング処理し、管状部材と配管との隙間にスペーサを詰めるとともに、防水処理することを特徴とする請求項1または2記載の防水処理方法。
【請求項4】
さらに、外壁外面側に突き出た管状部材を覆って根巻きコンクリートを打設し、根巻きコンクリートと外壁との間を防水処理したことを特徴とする請求項1乃至3何れか1項記載の防水処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−161998(P2006−161998A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−356590(P2004−356590)
【出願日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(591048830)日本電設工業株式会社 (21)
【Fターム(参考)】