説明

既製杭上端部の構造

【課題】既に構築された基礎の下側において地盤へ打ち込まれた既製杭の上端と基礎とを確実に接合することができ、かつ、基礎の修復作業を安定して行うことができる既製杭上端部の構造を提供する。
【解決手段】既製杭1の上端部の構造は、既製杭1の上端部と遊嵌する筒体12と、筒体12の上端に接続された平板13と、平板13と基礎8の下面とを連結する固定部材20と、を具備する。平板13と基礎8の下面とを平行として、筒体12が既製杭1の上端部に遊嵌されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基礎の下側に打設された既製杭における上端部の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
家屋などの建物は、地盤に構築された基礎に支持されている。建物が軟弱な地盤に建築されると、建物及び基礎の重量によって、基礎の一部或いは全部が沈下することがある。このように、建物を建築した後に基礎が沈下する現象は、不同沈下と呼ばれている。不同沈下により基礎の一部が地盤に沈下して建物が傾倒すると、その建物を水平に修復しなければならない。
【0003】
従来より、不同沈下した建物の修復方法として、基礎と建物の間にジャッキなどを介在させて、そのジャッキにより、建物を基礎に対して不同沈下した分だけ持ち上げる方法がある。また、基礎とともに建物をジャッキなどにより持ち上げる方法がある(例えば、特許文献1)。
【0004】
また、不同沈下した基礎の下側を掘削して杭を新たに打ち込む方法がある(特許文献2の段落「0007」など)。この杭の打ち込みは、上側に基礎及び建物が存在するので、杭と基礎との間にジャッキを介在させ、基礎及び建物の荷重を反力として行われる。
【0005】
一方、不同沈下が生じる前に、予め軟弱な地盤に杭を打設してから、基礎及び建物を構築する場合がある。このように予め地盤に打設された杭において、その後に施工される基礎との接合構造が種々考案されている。
【0006】
例えば、特許文献3及び特許文献4においては、杭の頭部に当該杭よりも外径の大きい補強管を設け、コンクリートや鉄筋を用いて、杭、補強管及び基礎を一体に接合する構造が開示されている。
【0007】
また、特許文献5においては、杭の頭部に側方へ突出する金物を連結し、この金物によって杭を支持する構造が開示されている。
【0008】
【特許文献1】特開2000−328591号公報
【特許文献2】特開平10−18311号公報
【特許文献3】特開2003−105779号公報
【特許文献4】特開2001−107356号公報
【特許文献5】特開2002−348884号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ジャッキなどにより建物又は基礎を持ち上げる方法では、不同沈下が更に進行すれば、再び修復する必要が生じる。しかし、不同沈下が終わったか否かを正確に判断することは難しく、また、建物が傾いていれば、不同沈下が終わっているか否かにかかわらず、建物の傾きを修復する必要がある。
【0010】
これに対し、新たに杭を打ち込んで基礎を支持する方法では、その杭により基礎が支持されるので、修復した建物が再び沈下して傾くことがない。この方法においては、基礎の下側に新たに杭を打ち込んだ後、不同沈下した基礎を持ち上げて修復する必要がある。この修復は、新たに打ち込んだ杭の支持力を反力として、基礎をジャッキアップすることにより実現される。このジャッキアップのため、杭の上端にジャッキを載置するための平板等が接続される。
【0011】
前述された方法において、新たに地盤へ打ち込まれた杭の軸線が、鉛直方向に対して傾斜することがある。そうすると、杭の上端の平板等に載置されたジャッキの伸長方向が鉛直方向に対して傾斜するので、基礎へ作用する力に無駄が生じ、更には作業中にジャッキが転倒するおそれもある。
【0012】
また、不同沈下が生じた後に杭を地盤へ打ち込む場合には、特許文献3,4に示されているように、杭の上端を基礎へ埋入させる構造は施工が困難である。したがって、杭の上端と基礎とを適当な固定部材等を用いて接続することになるが、杭の軸線が傾斜していると、固定部材も同様に傾斜するので、基礎との接合が不確実になりやすい。
【0013】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、既に構築された基礎の下側において地盤へ打ち込まれた既製杭の上端と基礎とを確実に接合することができ、かつ、基礎の修復作業を安定して行うことができる既製杭上端部の構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(1) 本発明にかかる既製杭上端部の構造は、既製杭の上端部と遊嵌する筒体と、上記筒体の上端に接続された平板と、上記平板と基礎の下面とを連結する固定部材と、を具備する。そして、上記平板と上記基礎の下面とを平行として、上記筒体が上記既製杭の上端部に遊嵌されている。
【0015】
地盤に打ち込まれた既製杭は、その軸方向が鉛直方向に必ずしも一致しない。筒体は、この既製杭の上端部に遊嵌されて、その筒体の上面に接続された平板を基礎の下面に対して平行となるように位置決めされる。その位置で、筒体が既製杭に対して固定される。平板と基礎の下面とが平行となることにより、これらを固定部材により簡易且つ確実に連結することができる。
【0016】
(2) 上記既製杭の上端部に、留め板がその上面を水平として連結され、当該留め板に上記筒体が支持されてなることが好ましい。これにより、平板を基礎の下面に対して平行となるように、筒体を既製杭の上端部に対して位置決めすることが容易である。
【0017】
(3) 上記筒体と上記既製杭の上端部との隙間にセメント系固化材が充填されてなることが好ましい。これにより、筒体を既製杭に対して確実に固定できる。また、既製杭の上端部が補強される。
【0018】
(4) 上記セメント系固化材は、無収縮モルタルが好適である。
【0019】
(5) 上記既製杭は、上記基礎の下側の地盤を掘削して形成された空間において地盤に打ち込まれたものである場合に、本発明が好適である。
【0020】
(6) 上記既製杭に、上記空間における地面と当接する鍔材が設けられてもよい。これにより、既製杭の支持力が増強される。
【0021】
(7) 上記平板は、上記基礎の不同沈下を修正するためのジャッキが載置されるものである場合に、本発明が好適である。前述されたように、平板と基礎の下面とが平行であるので、平板上にジャッキを載置して、基礎を安定してジャッキアップできる。
【0022】
(8) 上記固定部材は、上記平板に起立された少なくとも2本の棒材と、上記棒材にそれぞれ外嵌されて当該棒材に沿ってスライド可能なスライド部材と、上記スライド部材の上端に設けられた接続板と、上記スライド部材を、上記棒材に対する所望のスライド位置において支持する支持部材と、を具備するものとして実現されてもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、既製杭の上端部に筒体が遊嵌され、平板と基礎の下面とが平行となるので、これらを固定部材により簡易且つ確実に連結することができる。また、平板上にジャッキを載置して、基礎を安定してジャッキアップできる。これにより、不同沈下した基礎の修復作業が簡易且つ安定的に実現される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、適宜図面を参照して本発明の実施形態を説明する。なお、本実施の形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。
【0025】
図1は、本発明の実施形態に係る既製杭1を示す斜視図である。図2は、既製杭1の上端部における構造を示す分解斜視図である。図3は、作業空間70における既製杭1の構造を説明するための模式図である。図4は、図3におけるIV−IV断面図である。図5は、基礎8を修正した状態を示す模式図である。
【0026】
[既製杭1]
以下に、本発明にかかる既製杭の一例として、既製杭1の構造が説明される。なお、本発明にかかる既製杭は、基礎8の下側の地盤を掘削して形成された空間において地盤に打ち込み可能なものであれば、その全体構成は特に限定されず、多様な公知の既製杭の構成が採用されうる。
【0027】
図1に示されるように、既製杭1は、杭本体2の先端部分に杭先部材3が設けられてなる。杭本体2は、所定の長さを有し、施工現場において必要な長さに継合される。杭本体2と杭先部材3とは別個の部材として構成されており、施工現場において容易に取り付け可能である。
【0028】
杭本体2は、軸線74方向(図1における上下方向)と直交する断面外形が正方形の鋼管である。杭本体2の軸線方向の長さは、特に限定されるものではないが、例えば住宅の基礎を支持するために既製杭1を用いる場合には、数メートルから20メートル程度のものが利用される。杭本体2は、1本当たりが例えば数メートル程度の長さであって、数本の杭本体2が、上下端を当接させて溶接されることにより同軸線上に継合される。杭本体2の外形寸法や肉厚等も、特に限定されるものではなく、例えば住宅の基礎を支持するために既製杭1を用いる場合には、1辺が10センチメートルから数十センチメートル程度、肉厚が数ミリメートル程度のものが利用される。また、杭本体2として、汎用目的で市販されている角パイプ(鋼管)を用いるとコストや調達の容易から好適である。
【0029】
杭先部材3は、杭本体2の先端に外嵌される角管5と、角管5の外周に設けられた螺旋翼6と、角管5の先端に設けられた掘削爪7とを具備する。杭本体2の先端部分に杭先部材3の角管5が外嵌されて、ボルトによる固定とカシメによる変形とにより、杭本体2に固定されている。これにより、杭本体2の先端部分に、杭先部材3の螺旋翼6が略水平方向に突出した形状の既製杭1が得られる。
【0030】
なお、杭本体2の断面外形は必ずしも正方形に限定されず、他の多角形や円形であってもよいが、既製杭1の施工の際に、杭本体2の周囲に付着する土が少なく、地盤への貫入に対する抵抗が小さくなることから、断面外形が多角形であることが好ましい。また、杭先部材3は任意の構成であるが、杭先部材3を設けることにより、既製杭1を回転貫入する際の推進力が得られるので好ましい。
【0031】
[杭頭部材10]
図3に示されるように、地盤に打ち込まれた既製杭1は、杭頭部材10及び固定部材20によって、基礎8と連結される。図2に示されるように、杭頭部材10は、筒体12、平板13を主要な構成とする。筒体12は、その断面形状が、既製杭1の杭本体2の外形より十分に大きい円形の鋼管である。具体的には、筒体12の内径は、杭本体2の正方形の外形における対角の寸法より大きい。したがって、図4に示されるように、筒体12が杭本体2の上端部に対して外嵌された状態において、杭本体2は、その外周面が筒体12の内周面と接触しない配置を採りうる。
【0032】
筒体12の上端には、平板13が溶接固定されている。平板13は、筒体12の断面外形より大きな矩形の平板である。この平板13が、その周縁が鍔として筒体12から突出するように配置されて、筒体12と連結されている。また、平板13の上面と筒体12の軸方向とは直交している。平板13には、厚み方向に貫通する一対の孔が形成されており、その孔に対応してナット14,15が固定されている。また、平板13には、筒体12の内空に対応する位置であって、後述されるように、杭本体2に外嵌された状態において杭本体2の外側に対応する位置に、4つの孔18が形成されている。各孔18は、平板13を厚み方向に貫通して、筒体12の内空へ通じている。各孔18は、筒体12が杭本体2に外嵌された状態において、筒体12と杭本体2との隙間に通じる。
【0033】
筒体12には、その外周面から突出し、かつ軸方向に沿って延びる一対の支持部材16,17が設けられている。この支持部材16,17の各上端は、平板13と連結されている。支持部材16,17により、筒体12から突出する平板13の一部分が下方から支持されている。
【0034】
固定部材20は、平板13のナット14,15に螺合される棒材21,22と、棒材21,22に外嵌されるスライド部材23,24と、スライド部材23,24の上端に連結された接続板25と、棒材21,22に螺合されるナット26,27とを主要な構成とする。棒材21,22は、外周に雄ネジが形成された円柱形状であり、その雄ネジがナット14,15に螺合される。これにより、棒材21,22が平板13に対して垂直に起立される。この棒材21,22に、別のナット26,27が螺合され、さらにスライド部材23,24が外嵌される。スライド部材23,24は、その内径が、棒材21,22の外径より大きな円筒形状である。スライド部材23,24は、棒材21,22にそれぞれ外嵌された状態で棒材21,22の長さ方向へスライド可能である。スライド部材23,24の下端がナット26,27と当接することにより、スライド部材23,24は、棒材21,22に対して所定の高さに支持される。このナット26,27が、本発明における支持部材に相当する。
【0035】
スライド部材23,24の上端には接続板25が連結されている。接続板25の上面とスライド部材23,24の軸方向とは直交している。したがって、スライド部材23,24が棒材21,22に外嵌されると、杭頭部材10の平板13と接続板25とが平行に配置される。そして、棒材21,22に対するナット26,27の螺合位置が変更されることによって、スライド部材23,24が所望のスライド位置に支持される。これにより、杭頭部材10に対して、固定部材20の接続板25の高さが調整される。
【0036】
杭頭部材10は、杭本体2の上端部に設けられた留め板30に担持されている。図2及び図4に示されるように、留め板30は、その径が筒体12の径より大きい円盤であり、その中央に矩形の孔31が厚み方向に貫通されている。孔31は、杭本体2の断面外形より若干大きい正方形である。つまり、孔31に杭本体2が挿通された状態において、孔31には若干の遊びが存在する。この遊びは、後述されるように、軸方向75が傾斜した杭本体2を孔31に挿通させた状態において、留め板30の上面を水平面にできる程度に設けられる。そうすると、杭本体2の軸方向75と筒体12の軸方向(鉛直方向74と合致する。)とが合致しないが、前述されたように、筒体12の断面形状は杭本体2の外形より十分に大きいので、このような軸方向のズレを許容した状態で、筒体12が杭本体2の上端部に外嵌される。このような筒体12と杭本体2の上端部との嵌め合いが、本発明において遊嵌と称される。
【0037】
以下に、本既製杭上端部の構造を施工する方法について詳細な説明がされる。本構造は、既に構築された建物を支持する基礎8に対して使用される。建物は、例えば住宅などであるが、本発明において建物は特に限定されるものではない。また、基礎8の構成も特に限定されないが、基礎8の下面はほぼ水平面として構築されているものとする。
【0038】
先ず、既製杭1により支持すべき基礎8の下側の地盤を掘削して作業空間70を形成する。作業空間70は、その内部において作業者が作業を行う空間である。この作業空間70の深さは、既製杭1の1本の杭本体2の長さより深い。つまり、作業空間70の深さは、杭本体2を鉛直方向75へ起立させて地盤へ打ち込むために十分な深さであればよい。また、作業空間70は、基礎8の全体に対して一度にすべてを形成する必要はなく、1本の既製杭1を打ち込むに必要な作業空間70が形成されればよい。もちろん、複数本の既製杭1を打ち込むに十分な作業空間70を形成してもよいことは言うまでもない。
【0039】
つづいて、作業空間70において、既製杭1を地盤へ打ち込む。既製杭1の地盤への打ち込みは、例えば特開平10−18311号公報に開示されているような公知の方法を採用しうる。また、必要に応じて杭本体2は複数本が継ぎ足される。そして、所望の支持地盤まで既製杭1を打ち込んだ後、既製杭1を打ち込むために使用した装置等が取り外される。
【0040】
つづいて、図3に示されるように、既製杭1の杭本体2に留め板30及び鍔材32を外嵌する。鍔材32は留め板30と同様の構成なので、ここでは詳細な説明は省略される。鍔材32は、作業空間70内の地盤に敷き込むようにして、杭本体2の外周面と溶接固定する。この鍔材32によって、杭本体2への押し込み力に対する反力が増加されるとともに、既製杭1の支持力が増加される。
【0041】
留め板30は、その上面が水平となるようにして、杭本体2の外周面と溶接固定する。また、留め板30から杭本体2の上端までの距離は、杭頭部材10の筒体12の長さより短くする。ここで、図3に示されるように、地盤に打ち込まれた既製杭1は、その軸方向74が鉛直方向75に必ずしも一致しないことがあり得る。一方、基礎8の下面はほぼ水平である。なお、不同沈下によって基礎8又は建物が傾斜していれば、本施工の際に、その傾斜を修復するので、修復後の基礎8の下面はほぼ水平となる。このような場合に、既製杭1と基礎8との連結部分に隙間などが生じやすく、その結果、連結部分の破断などが生じるおそれがある。これに対し、留め板30を水平に配置して、その留め板30に杭頭部材10を支持させることにより、後述されるように、杭頭部材10の平板13と基礎8の下面とを平行にして、隙間のない連結を確保することができる。
【0042】
図4に示されるように、杭頭部材10の筒体12は、杭本体2の外形に対して十分に大きいので、図3に示されるように、筒体12へ杭本体2を斜めに挿入することができる。つまり、筒体12が杭本体2の上端に遊嵌されることにより、杭本体2の軸方向74の傾斜を許容して、平板13の上面が水平となるように杭頭部材10を位置決めすることができる。
【0043】
そして、杭頭部材10に固定部材20を装着するが、予め、杭頭部材10に固定部材20を装着した状態で、前述されたように、杭頭部材10を杭本体2の上端部に外嵌してもよい。この装着状態において、ナット26,27に支持されたスライド部材23,24は、棒材21,22に対して比較的下方に位置しており、スライド部材23,24の上端に固定された接続板25が基礎8の下面付近に位置している。
【0044】
つづいて、杭頭部材10の平板13上にジャッキ9を載置する。このジャッキ9は、油圧ジャッキや、機械式ジャッキなどの公知のジャッキを用いることができるが、ポンプ分離型の油圧ジャッキが好適である。このようなジャッキの構成は当業者に周知であるので、ここでは詳細な説明が省略される。
【0045】
図5に示されるように、ジャッキ9を駆動させてロッドを伸長させると、固定部材20の接続板25が基礎8の下面と当接して、基礎8及び建物が持ち上がる。既製杭1の先端が支持地盤に到達しており、さらに鍔材32が設けられることにより、基礎8及び建物の荷重を既製杭1が支持できる。不同沈下した基礎8及び建物を持ち上げて傾斜を修復した後、固定部材20の棒材21,22に螺合されたナット26,27の位置を調整して、筒体12及び平板13を所定の高さに固定する。これにより、杭頭部材10の平板13、固定部材20の接続板25、及び基礎8の下面がすべて水平となって相互に平行となるので、既製杭1と基礎8とを隙間なく確実に連結することができる。
【0046】
そして、平板13の孔18から、杭頭部材10の筒体12と杭本体2の上端との隙間に無収縮モルタルを充填して、この隙間を埋める。筒体12の下端側は、留め板30により封止されているので、無収縮モルタルは、杭本体2、筒体12、平板13及び留め板30によって形成される空間に充填される。なお、無収縮モルタルの充填は、杭本体2の上端部に杭頭部材10を外嵌させた際に行ってもよい。これにより、筒体12が杭本体2に対して確実に固定されるとともに、杭本体2の上端部が補強される。なお、本実施形態では、本発明にかかるセメント系固化材の好適な一例として無収縮モルタルが採用されるが、その他のセメント系固化材を用いることも可能である。
【0047】
最後に、作業空間70を埋め戻す。この埋め戻しの際に、杭頭部材10の周囲にコンクリートを打設して、既製杭1と基礎8とをより強固に連結する。
【0048】
[本実施形態の作用効果]
本実施形態にかかる既製杭1の上端部の構造によれば、既製杭1の上端部に筒体12が遊嵌され、平板13と基礎8の下面とが平行となるので、これらを固定部材20により簡易且つ確実に連結することができる。また、平板13上にジャッキ9を載置して、基礎8を安定してジャッキアップできる。これにより、不同沈下した基礎8の修復作業が簡易且つ安定的に実現される。
【0049】
また、既製杭1の上端部に連結された留め板30によって筒体12が支持されるので、平板13を基礎8の下面に対して平行となるように、筒体12を既製杭1の上端部に対して位置決めすることが容易である。
【0050】
また、筒体12と既製杭1の上端部との隙間に無収縮モルタルが充填されることにより、筒体12が既製杭1に対して確実に固定れるとともに、既製杭1の上端部が補強される。
【0051】
また、既製杭1に、作業空間70における地面と当接する鍔材32が設けられているので、既製杭1の支持力が増強される。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係る既製杭1を示す斜視図である。
【図2】図2は、既製杭1の上端部における構造を示す分解斜視図である。
【図3】図3は、作業空間70における既製杭1の構造を説明するための模式図である。
【図4】図4は、図3におけるIV−IV断面図である。
【図5】図5は、基礎8を修正した状態を示す模式図である。
【符号の説明】
【0053】
1・・・既製杭
8・・・基礎
9・・・ジャッキ
12・・・筒体
13・・・平板
20・・・固定部材
21,22・・・棒材
23,24・・・スライド部材
25・・・接続板
26,27・・・ナット(支持部材)
30・・・留め板
32・・・鍔材
70・・・作業空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
既製杭の上端部と遊嵌する筒体と、
上記筒体の上端に接続された平板と、
上記平板と基礎の下面とを連結する固定部材と、を具備し、
上記平板と上記基礎の下面とを平行として、上記筒体が上記既製杭の上端部に遊嵌されている既製杭上端部の構造。
【請求項2】
上記既製杭の上端部に、留め板がその上面を水平として連結され、当該留め板に上記筒体が支持されてなる請求項1に記載の既製杭上端部の構造。
【請求項3】
上記筒体と上記既製杭の上端部との隙間にセメント系固化材が充填されてなる請求項1又は2に記載の既製杭上端部の構造。
【請求項4】
上記セメント系固化材が無収縮モルタルである請求項3に記載の既製杭上端部の構造。
【請求項5】
上記既製杭は、上記基礎の下側の地盤を掘削して形成された空間において地盤に打ち込まれたものである請求項1から4のいずれかに記載の既製杭上端部の構造。
【請求項6】
上記既製杭に、上記空間における地面と当接する鍔材が設けられた請求項5に記載の既製杭上端部の構造。
【請求項7】
上記平板は、上記基礎の不同沈下を修正するためのジャッキが載置されるものである請求項1から6のいずれかに記載の既製杭上端部の構造。
【請求項8】
上記固定部材は、
上記平板に起立された少なくとも2本の棒材と、
上記棒材にそれぞれ外嵌されて当該棒材に沿ってスライド可能なスライド部材と、
上記スライド部材の上端に設けられた接続板と、
上記スライド部材を、上記棒材に対する所望のスライド位置において支持する支持部材と、を具備する請求項1から7のいずれかに記載の既製杭上端部の構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−19341(P2009−19341A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−180580(P2007−180580)
【出願日】平成19年7月10日(2007.7.10)
【出願人】(305044235)株式会社WASC基礎地盤研究所 (9)
【Fターム(参考)】