説明

既設埋設管破砕用カッタヘッドの案内装置

【課題】 推進オペレータ自らがカッタヘッド案内装置のローリング量を確認し、カッタヘッド案内装置制御手段の操作もその場で行え、作業性の優れた既設埋設管破砕用カッタヘッド案内装置を提供する。
【解決手段】 カッタヘッド案内装置100にローリング量自動計測手段90を備え、且つ発進坑内3又は推進オペレータ用操作盤85にローリング量表示と、カッタヘッド案内装置100の上下方向揺動手段60及び水平方向揺動手段70の操作機能と、を配すると共に、カッタヘッド案内装置100自体に駆動用油圧ユニット付制御手段80を搭載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中に埋設されて老朽化した既設埋設管を新しい埋設管に更新する際に既設埋設管および周囲の地盤を掘削するカッタヘッドの進行方向を案内する装置に関し、より詳しくは、掘削反力の不釣り合いによってカッタヘッドが半径方向に大きくずれようとする場合や既設埋設管の進路が曲がっている場合においても、計画線どおりに新しい埋設管を埋設できるようにカッタヘッドの進行方向を正確に案内する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
上下水道等を含む各種用途に供される地中埋設管は、経年変化によって老朽化が進むため、適切な時期に新しい埋設管(更新管)に交換する必要がある。
この場合、既設埋設管が埋設されている個所の地盤を地表面から開削して既設埋設管を掘り出した後に新たな管を吊り込んで埋設し直す方法、あるいは図4に示したように地表面に掘設した立坑から水平方向に掘進しつつ既設埋設管を撤去して更新管に交換する方法が用いられる。
【0003】
図4に示した従来の既設埋設管更新方法においては、既設埋設管1を更新管2に交換するべく地表面Gに発進坑3を掘設するとともに、この発進坑3の底部に推進機4を設置する。
そして、推進機4の駆動モータおよび減速機5によってスクリュコンベア6およびその先端に設けられているカッタヘッド7を一体に回転駆動し、カッタヘッド7の面板から突設されている掘削ビット8により既設埋設管1を破砕しつつその周囲の地盤を掘削する。
さらに、破砕した既設埋設管1の破片および掘削した周囲の地盤の土砂は、スクリュコンベア6およびケーシング9によって移送し、発進坑3側に取り出して地表面G側に除去する。
これと同時に、推進機4によってスクリュコンベア6,カッタヘッド7,更新管2,先導管10を一体に前方に推進し、既設埋設管1を更新管2に順次交換する。
【0004】
また、カッタヘッド7の進行方向にずれが生じた場合に備えて、先導管10と刃口部11との間には、複数の方向修正用油圧シリンダ12が先導管10の内側に円周方向に等間隔に並設されている。
これにより、これらの油圧シリンダ12を選択的に伸縮させて先導管10に対し刃口部11を傾斜させると、刃口部11の内周面がカッタヘッド7の外周部を半径方向内側に押すので、カッタヘッド7の進行方向を修正することができる。
【0005】
一方、カッタヘッド7に先行して既設埋設管1の内部を移動する案内手段によりカッタヘッド7を案内し、既設埋設管1の進路に沿わせてカッタヘッド7を進行させる技術が提案されている(下記特許文献1,2を参照)。
【0006】
ところで、既設埋設管1の下側に基礎としての丸太やコンクリート等が配設されていると、カッタヘッド7に設けられている掘削ビット8はこれらの丸太やコンクリートを掘削することになり、カッタヘッド7に作用する掘削反力の不釣り合いが生じる。
このとき、カッタヘッド7の外周と先導管の刃口部11の内周面との間には、その円周方向の全体にわたって隙間が存在するため、カッタヘッド7が刃口部11の内側で振れ回り、その掘削性が低下することがある。
特に、カッタヘッド7の振れ回りに伴って既設埋設管1に掘削ビット8が食い込むと、カッタヘッド7の回転に連れて既設埋設管1が共回りし、既設埋設管1の破砕効率が大きく低下してしまう。
【0007】
また、カッタヘッド7に作用する掘削反力の不釣り合いによってカッタヘッド7がその半径方向に大きくずれると、方向修正用油圧シリンダ12を用いた進行方向の修正ができなくなり、計画線に沿った掘削および更新管2の埋設が不能となる。
【0008】
また、上記特許文献1に記載されている技術は、既設埋設管1の進路に合わせてカッタヘッドの進行方向を案内するものにすぎない。
したがって、既設埋設管の進路が曲がっている場合には、この曲がりに沿って更新管を埋設することになってしまう。
【0009】
また、上記特許文献2に記載されている技術は、カッタヘッドに先行して既設埋設管内を前進する先行体にセンサを設けるとともに、このセンサから得られる既設埋設管の曲がりや傾斜を表す信号に基づいて方向修正用油圧シリンダの作動を制御するものである。
これにより、カッタヘッドの半径方向のずれ量が方向修正用油圧シリンダによって修正可能なずれ量を上回ると、カッタヘッドの進行方向を修正できなくなってしまう。
【0010】
そこで本発明者は、掘削反力の不釣り合いによってカッタヘッドが半径方向に大きくずれる場合や既設埋設管の進路が曲がっている場合においても、計画線どおりに新しい埋設管を埋設できるようにカッタヘッドの進行方向を正確に案内できる既設埋設管破砕用カッタヘッドの案内装置および案内方法、さらにはそれを用いた既設埋設管の更新方法を提案した。(下記特許文献3を参照)。
【特許文献1】特開平9−25787号公報
【特許文献2】特開2000−257374号公報
【特許文献3】特願2005−063844号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかるに、特許文献3の方法では、作動状況確認者が到達坑内で目視にてカッタヘッドの案内装置のローリング量や斜度測定を行っているため、作業状況によっては切削粉塵やカッタ部に注水することによって生ずる泥水でターゲットが見えなくなることがあり、確認が難しくなるといった問題があった。
【0012】
また、到達坑近くにセットされたカッタヘッドの案内装置の駆動油圧ユニットの操作盤でカッタヘッドの案内装置の制御を行う操作者並びに到達坑内の作動状況確認者と、発進立坑内の推進オペレータとが離れているため、それら3者の連携に問題を生じることがあった。
【0013】
更に、案内装置の駆動油圧ユニットが到達坑近くの地上にあるため、カッタヘッド案内装置への長距離の油圧配管取り付けや巻取り作業が大変であった。
【0014】
そこで、本発明の目的は、推進オペレータ自らがカッタヘッド案内装置のローリング量を確認し、カッタヘッドの案内装置の駆動油圧ユニットの操作もその場で行え、全作業が容易に行える、特許文献3の装置を改良した既設埋設管の更新装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の課題を解決するための請求項1に記載した手段は、
既設埋設管を新しい埋設管に更新する際に前記既設埋設管を破砕するカッタヘッドの進行方向案内装置であって、
前記カッタヘッドの前方において前記既設埋設管に挿入され、前記既設埋設管と上下方向および水平方向に係合する係合体と、
その前端が前記係合体に軸支されてその後端が上下方向および水平方向に揺動自在であり、且つ前記後端が前記カッタヘッドに対して揺動自在に接続される揺動部材と、
前記係合体に対して前記揺動部材を上下方向に揺動させる上下方向揺動手段と、
前記係合体に対して前記揺動部材を水平方向に揺動させる水平方向揺動手段と、
前記上下方向揺動手段及び前記水平方向揺動手段の作動を制御する制御手段と、
前記カッタヘッドの進行方向案内装置のローリング自動計測手段と、
を備え、且つ発進立坑内又は推進オペレータ用計器盤にローリング及び斜度表示と、
発進立坑内又は推進オペレータ用操作盤にカッタヘッドの進行方向案内装置の上下・水平方向揺動操作遠隔機能を配することを特徴とする既設埋設管破砕用カッタヘッドの進行方向案内装置。
【0016】
すなわち、請求項1に記載した既設埋設管破砕用カッタヘッド案内装置によれば、発進立坑内又は推進オペレータ操作位置にて、上下及び水平方向揺動手段を用いて揺動部材を揺動させることにより、既設埋設管に係合している係合体を基準として、この揺動部材の後端に接続されているカッタヘッドを所望の位置に位置決めすることができる。
これにより、新しい埋設管を埋設する際の目標である計画線に対し、既設埋設管が上下方向あるいは水平方向に位置ずれしている場合でも、推進オペレータ自らがその場で、計画線に対してカッタヘッドを正確に位置合わせすることができるから、カッタヘッドを推進する際の進行方向を正確に制御することができる。
また、上下及び水平方向揺動手段を用いて揺動部材が揺動しないように固定すれば、カッタヘッドが回転する際の振れ回りを確実に防止することができる。
【0017】
また、請求項2に記載した手段は、請求項1に記載した既設埋設管破砕用カッタヘッド案内装置において、
カッタヘッド案内装置の上下及び水平方向揺動手段駆動源である油圧ユニットをカッタヘッド案内装置上に搭載することを特徴とする請求項1に記載した既設埋設管破砕用カッタヘッドの案内装置。
【0018】
すなわち、請求項2に記載した既設埋設管破砕用カッタヘッド案内装置によれば、カッタヘッド案内装置への配線が油圧ユニット駆動用等の電力線と油圧操作用及びローリング量送信用信号ケーブルとになるため、長距離の油圧配管が不要となり取り付け巻き取り等の作業が容易となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、次のような効果を奏することができる。
1.推進機オペレータが即時に状況を把握でき、修正操作も自らが行え、作業性のアップと作業人員の削減が図れる。
2.到達坑内に測量器のセットや、カッタヘッド案内装置のローリング量等の計測作業のための独立した測定者が不要となる。
3.ローリング量測定に関して、粉塵、泥水対策が不要となる。
4.油圧配管作業が不要となり作業効率アップにつながる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図1乃至図3を参照し、本発明による既設埋設管破砕用カッタヘッド案内装置の一実施形態について詳細に説明する。
なお、以下の説明においては、前述した従来技術を含めて同一の部分には同一の参照符号を用いて重複した説明を省略し、かつカッタヘッドが前進する方向を前方、カッタヘッド側から既設埋設管を見たときの水平方向を左右方向、鉛直方向を上下方向と言う。
【0021】
まず、最初に図1乃至図3を参照し、本実施形態の既設埋設管破砕用ヘッドカッタの案内装置の構造について詳細に説明する。
【0022】
図1に示したように、本実施形態のカッタヘッド案内装置100は、図4に示した従来の既設埋設管更新装置の前方において既設埋設管1の内部に配置されるとともに、その後端がカッタヘッド7に接続されてカッタヘッド7の進行を案内するものである。
なお、既設埋設管更新装置を用いて既設埋設管を更新する方法の基本的な部分は、従来と同様である。
【0023】
このカッタヘッド案内装置100は、このカッタヘッド案内装置100をカッタヘッド7の面板に接続するための接続手段20と、既設埋設管1に挿入されると既設埋設管1と上下方向および水平方向に係合する係合体30と、その前端が係合体30に軸支されてその後端が上下及び水平方向に揺動自在であり、かつその後端が接続手段20を介してカッタヘッド7に揺動自在に接続される揺動部材40と、揺動部材40を係合体30に対して揺動自在に支持する支持手段50と、係合体30に対して揺動部材40を上下方向に揺動させる上下方向揺動手段60と、係合体30に対して揺動部材40を水平方向に揺動させる水平方向揺動手段70と、上下方向揺動手段60および水平方向揺動手段70の作動を制御する制御手段80と、係合体30のローリング量を自動計測するための計測手段90と、加えてカッタヘッド案内装置100自体に搭載された上下及び水平方向揺動手段駆動用油圧ユニット82を備えている。
【0024】
接続手段20は、図2及び図3に示したように、カッタヘッド7の面板15と一体に形成され、若しくは面板15に着脱自在に装着されるカッタヘッド7と同軸な支持円筒21と、この支持円筒21の内側に軸受22を介して取り付けられる接続円筒23とを有している。
そして、接続円筒23の前側外周面には、揺動部材40を前後方向に係止するための環状位置決め部材24,25が固定されている。
【0025】
係合体30は前後方向に離間している一対の環状部材31,32と、これらの環状部材31,32を接続するための3分割された接続部材33とを有している。
前後一対の環状部材31,32の外周面には、既設埋設管1の内周面と摺動する摺動部材36が、それぞれ4個ずつ円周方向に等間隔に固定されている。
なお、一対の環状部材31,32と摺動部材36との間にそれぞれ調整部材を介装することにより、さらに内径の大きい既設埋設管にも対応することができる。
また、一対の環状部材31,32の下側において水平に延びる接続部材33は幅広の厚板から構成されており、支持手段50を支持する役割を果たしている。
【0026】
揺動部材40は、前述した環状位置決め部材24,25の間において接続円筒23に外嵌される、その内周面が前後方向に円弧状に湾曲している円筒部材41と、この円筒部材41の外周面にその後端が固定されて互いに平行に延びる左右一対の板状部材42,43とを有している。
これらの板状部材42,43は、その前端が左右方向に水平に延びる揺動軸54a,55aによって支持手段50に軸支され、その後端が上下方向に揺動することができる。
また、進行方向左側の板状部材42の長手方向中央部には、上下方向揺動手段60の先端を取り付けるためのブラケット44が固設されている。
【0027】
支持手段50は、係合体30の接続部材33の上面と平行に延びる底板51と、この底板51が上下方向に延びる軸線の回りに揺動できるように軸支する揺動軸52とを有している。
また、底板51の左側の後端には、上下方向揺動手段60の基端を取り付けるためのブラケット53が垂設されている。
また、底板51の左右両端には、揺動部材40を構成している左右一対の板状部材42,43の前端をそれぞれ軸支するための支持部54,55が立設されている。
なお、左右一対の板状部材42,43の前端を軸支している揺動軸54a,55aは、平面視において揺動軸52を左右方向に挟む位置において各支持部54,55に挿通されている。
【0028】
上下方向揺動手段60は、前述したブラケット44,53間に取り付けられる油圧シリンダである。
そのシリンダ本体61からピストン62が突出すると揺動部材40の後端が上方に揺動し、シリンダ本体61内へとピストン62が後退すると揺動部材40の後端が下方に揺動する。
このとき、油圧シリンダ60は上下方向に対して傾斜して延びるように配設されているから、係合体30の外径寸法を小さく抑えることができる。
【0029】
水平方向揺動手段70は、支持手段50の右側の支持部55に連設されているブラケット55bと、係合体30の前側環状部材31の後側内壁面に固定されているブラケット37との間に取り付けられる油圧シリンダ70である。
そのシリンダ本体71からピストン72が突出すると、支持手段50が揺動軸52の回りで時計方向に揺動し、揺動部材40の後端は左方に揺動する。
また、シリンダ本体71内へとピストン72が後退すると、支持手段50が揺動軸52の回りで反時計方向に揺動し、揺動部材40の後端が右方に揺動する。
このとき、油圧シリンダ70は前後方向に水平に延びるように配設されているから、係合体30の外径寸法を小さく抑えることができる。
【0030】
制御手段80は、係合体30の接続部材33の前方上面に油圧ユニット82が固定されており、発進坑の推進オペレータが操作盤85から発信する送信信号に基づいて各油圧シリンダ60,70に供給する圧油の流れを制御され、それによって揺動部材40の後端の揺動方向および揺動位置が制御される。
なお、この制御手段(油圧ユニット)80から各油圧シリンダ60,70へと延びる油圧配管の図示は省略されている。
また、各油圧シリンダ60,70の作動状況確認用として各油圧シリンダ60,70にストロークセンサー(図示せず)を取り付け、その信号を発進坑の推進オペレータが操作盤85に送信表示させてもよい。
【0031】
既設埋設管破砕用カッタヘッド案内装置100のローリング量を自動計測するための計測手段90は、係合体30を構成している環状部材31の上側内周面に固定されたローリング計測器91で自動計測され、信号線を経由して推進オペレータ側操作盤上85に表示される。
【0032】
次に、図1乃至図3を参照し、上述した構造を有する本実施形態の案内装置100の作動について説明する。
【0033】
図1に示したように、本実施形態の案内装置100は、既設埋設管1およびその周囲の地盤を掘削するカッタヘッド7の前方において既設埋設管1の内部に配置される。このとき、図2および図3に示したように、揺動部材40の後端に固定されている円筒部材41が、接続手段20の接続円筒23に外嵌され、かつ前後一対の環状位置決め部材24,25の間に挟装されている。
これにより、カッタヘッド7が前進すると、後側の環状位置決め部材24によって円筒部材41、したがって揺動部材40が前方に押されるから、案内装置100の全体がカッタヘッド7と一体に前進する。
【0034】
また、カッタヘッド7側の支持円筒21と接続円筒23との間に軸受22が介装されてが、カッタヘッド7の回転及び振動で既設埋設管破砕用カッタヘッド案内装置100が回転することがあり、その回転量がローリング計測器91で自動計測され、推進オペレータ側の操作盤85に表示される。
【0035】
それに基づき、推進オペレータは、既設埋設管破砕用カッタヘッド案内装置100の回転量を勘案して以下のカッタヘッド7の修正作業を行うこととなる。
即ち、既設埋設管破砕用カッタヘッド案内装置100が例えば90度回転した場合には、上下方向揺動手段60と水平方向揺動手段70とはその機能が入れ替わることとなる。
それ故、以下の説明では、既設埋設管破砕用カッタヘッド案内装置100の回転量を勘案したものとして、夫々の説明にはそのことを付け加えないものとする。
【0036】
なお、円筒部材41の内周面が図示のように円弧状に湾曲しているから、カッタヘッド7に支持されている接続円筒23に対して揺動部材40は滑らかに揺動できる。
なお、この部分に球面継手を用いることもできるが、本実施形態における構造の方が安価であり、製造および交換を容易に行うことができる。
【0037】
本実施形態の案内装置100が既設埋設管1の内部を前進するときには、係合体30の摺動部材36が既設埋設管1の内壁面上を摺動する。
また、摺動部材36が取り付けられている一対の環状部材31,32が前後方向に離間しており、かつ既設埋設管1の内壁面と摺動部材36との間の隙間は小さい。これにより、既設埋設管1の内部における係合体30のガタつきが小さいから、係合体30は既設埋設管1の内壁面と上下方向および水平方向に容易に係合し、各油圧シリンダ60,70を作動させてカッタヘッド7を変位させる際に生じる反力を既設埋設管1の内壁面に直ちに伝達することができる。
さらに、既設埋設管1の軸線に沿ってほぼ平行に延びる各油圧シリンダ60,70を、前後一対の環状部材31,32の間に配置する構造であるから、内径の小さい既設埋設管1の内部にも容易に配置することができる。
【0038】
図2および図3に示したように、更新管2を埋設する基準である計画線と既設埋設管1の軸線とが同軸であるときには、各油圧シリンダ60,70をその中立位置に固定する。すると、揺動部材40もまた中立位置に固定されるから、カッタヘッド7を計画線と同軸に固定することができる。
これにより、掘削反力の不釣合に起因するカッタヘッド7の振れ回りを防止できるから、既設埋設管1の破砕およびその周囲の地盤の掘削を効率よく行うことができる。
【0039】
同様に、例えば既設埋設管1の下側に基礎としての丸太やコンクリートが配設されていると、掘削ビット8がこれらの丸太やコンクリートを掘削する時に生じる反力により、カッタヘッド7は上方に逃げようとする。
このとき、先導管10内のターゲット13に、発進坑3内に設置したセオドライト(図示せず)からレーザ光を発進して測定される変位にて、カッタヘッド7の上方へのずれが認められると、上下方向揺動手段の油圧シリンダ60を短縮方向に作動させることにより、揺動部材40の後端を降下させてカッタヘッド7に対して下向きの力を作用させ、カッタヘッド7を強制的に下方に変位させる、若しくは先導管10内の方向修正用油圧シリンダ12を作動させるか、又は併用してカッタヘッド7修正作業を行ってもよい。
これにより、カッタヘッド7の上方への逃げを防止し、カッタヘッド7を計画線に沿わせて前進させることができる。
また、カッタヘッド7が下方に逃げようとした場合は、上記の逆の操作を行うことにより、カッタヘッド7の下方への逃げを防止し、カッタヘッド7を計画線に沿わせて前進させることができる。
【0040】
他方、例えば既設埋設管1の周囲の地盤のうち進行方向左側の部分が硬いと、カッタヘッド7は進行方向右側に逃げようとする。
このとき、先導管10内のターゲット13に、発進坑3内に設置したセオドライト(図示せず)からレーザ光を発進して測定される変位にて、カッタヘッド7の右方へのずれが認められると、水平方向揺動手段の油圧シリンダ70を伸長方向に作動させることにより、揺動部材40の後端を進行方向左側に変位させ、カッタヘッド7に対して進行方向左向きの力を作用させ、カッタヘッド7を強制的に左方に変位させる若しくは先導管10内の方向修正用油圧シリンダ12を作動させるか、又は併用してカッタヘッド7修正作業を行ってもよい。
また、カッタヘッド7が左方に逃げようとした場合は、上記の逆の操作を行うことにより、カッタヘッド7の左方への逃げを防止し、カッタヘッド7を計画線に沿わせて前進させることができる。
【0041】
これにより、掘削反力の不釣り合いに起因するカッタヘッド7の振れ回りを防止して、既設埋設管1の破砕およびその周囲の地盤の掘削を効率よく行うことができる。
また、掘削反力の不釣り合いに起因するカッタヘッド7の半径方向のずれを防止して、カッタヘッド7が計画線に沿って前進するようにその進行方向を案内することができる。
【0042】
なお、上下及び水平方向揺動手段の駆動用油圧ユニット82をカッタヘッド案内装置100自体に搭載したしたことにより、油圧配管作業が不要となり作業効率アップにつながることはいうまでもない。
【0043】
以上、本発明に係る既設埋設管破砕用カッタヘッドの案内装置の一実施形態について詳しく説明したが、本発明は上述した実施形態によって限定されるものではなく、種々の変更が可能であることは言うまでもない。
例えば、上述した実施形態においては、上下方向揺動手段の油圧シリンダ60および水平方向揺動手段の油圧シリンダ70は、それぞれ一つずつ設けられている。
これに対して、各油圧シリンダ60,70を2つずつ用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の既設埋設管の更新装置の一実施例を示す側面断面図。
【図2】図1に示したカッタヘッドの作用を説明する側面断面図。
【図3】図1に示したカッタヘッドの作用を説明する平面断面図。
【図4】従来の既設埋設管の更新装置を示す側面断面図。
【符号の説明】
【0045】
1 既設埋設管
2 更新管
3 発進坑
4 推進機
5 駆動モータおよび減速機
6 スクリュコンベア
7 カッタヘッド
8 掘削ビット
9 ケーシング
10 先導管
11 刃口部
12 方向修正用油圧シリンダ
15 面板
20 接続手段
21 支持円筒
22 軸受
23 接続筒
24,25 環状位置決め部材
30 係合体
31 前側環状部材
32 後側環状部材
33 接続部材
36 摺動部材
37 ブラケット
40 揺動部材
41 円筒部材
42,43 板状部材
44 ブラケット
50 支持手段
51 底板
52 揺動軸
53 ブラケット
54,55 支持部
54a,55a 揺動軸
55b ブラケット
60 油圧シリンダ(上下方向揺動手段)
61 シリンダ本体
62 ピストン
70 油圧シリンダ(水平方向揺動手段)
71 シリンダ本体
72 ピストン
80 制御手段
81 信号ケーブル
82 油圧ユニット
85 操作盤
90 計測手段
91 ローリング計測器
100 カッタヘッド案内装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設埋設管を新しい埋設管に更新する際に前記既設埋設管を破砕するカッタヘッドの進行方向案内装置であって、
前記カッタヘッドの前方において前記既設埋設管に挿入され、前記既設埋設管と上下方向および水平方向に係合する係合体と、
その前端が前記係合体に軸支されてその後端が上下方向および水平方向に揺動自在であり、かつ前記後端が前記カッタヘッドに対して揺動自在に接続される揺動部材と、
前記係合体に対して前記揺動部材を上下方向に揺動させる上下方向揺動手段と、
前記係合体に対して前記揺動部材を水平方向に揺動させる水平方向揺動手段と、
前記上下方向揺動手段及び前記水平方向揺動手段の作動を制御する制御手段と、
前記カッタヘッドの進行方向案内装置のローリング量自動計測手段と、
を備え、且つ発進立坑内又は推進オペレータ用計器盤にローリング量表示と、
発進立坑内又は推進オペレータ用操作盤にカッタヘッドの進行方向案内装置の上下・水平方向揺動操作遠隔機能を配することを特徴とする既設埋設管破砕用カッタヘッドの進行方向案内装置。
【請求項2】
前記上下方向揺動手段と水平方向揺動手段の駆動用油圧ユニットを前記カッタヘッドの進行方向案内装置自体に搭載したことを特徴とする請求項1記載の既設埋設管破砕用カッタヘッドの進行方向案内装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2007−146616(P2007−146616A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−370773(P2005−370773)
【出願日】平成17年11月28日(2005.11.28)
【出願人】(000177416)三和機材株式会社 (144)
【Fターム(参考)】