説明

日焼け止め乳化化粧料

【課題】 専用のクレンジング洗浄料を使う必要がなく、石鹸、ボディーソープで簡単に洗い落とすことが可能な疎水化処理酸化亜鉛粉末配合の日焼け止め乳化化粧料を提供すること。
【解決手段】(a)疎水化処理酸化亜鉛粉末と、(b)揮発性シリコーンと、(c)流動パラフィン及び/又はイソノナン酸イソノニルと、(d)非イオン性界面活性剤と、(e)水とを含有することを特徴とする日焼け止め乳化化粧料である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、疎水化処理酸化亜鉛粉末を配合した日焼け止め乳化化粧料に関する。さらに詳しくは、洗浄性を改良した乳化日焼け止め乳化化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光線の紫外線のうち、中波長紫外部の波長280〜320nmは、皮膚にサンバーンと呼ばれる紅斑を引き起こし、ひどい場合は、火傷と同様の水泡を起こす。また、長波長紫外部の波長320〜400nmは、皮膚の黒化をもたらし、いずれの波長も長期に渡って繰り返し作用すると皮膚の老化を促進することが知られている。
【0003】
紫外線による肌への悪影響を防御するためには、紫外線吸収剤や紫外線防御粉体を配合した日焼け止め化粧料が使用されている。
【0004】
このうち、長波長紫外部領域を効果的に防御し、かつ可視部の透明性が高い素材として微粒子酸化亜鉛粉末が使用されている。また、耐汗性の点で、W/O型乳化組成物が良好であることが知られている。
【0005】
W/O型乳化組成物に、微粒子酸化亜鉛を配合する場合、製剤の安定性の観点から表面処理が必要である。しかしながら、表面処理が不均一であると亜鉛イオンが溶出して系の安定性を害することがあり、微粒子酸化亜鉛は、表面処理方法及びW/O型乳化組成物への安定配合が極めて困難な粉末であった。
【0006】
一方、サンスクリーン等の日焼け止め化粧料はプールや海水浴で使用されることから、撥水性や撥油性が要求され、何度も塗り直す必要がないように、化粧持ち(撥水性・撥油性)の優れたものが要求されている。そのため、疎水性粉末を配合した油中水型乳化化粧料が日焼け止め化粧料として利用されている。疎水性粉末を配合した油中水型乳化化粧料は、例えば特許文献5〜8に記載されている。化粧持ちを向上させる技術としては通常の油分よりもさっぱりした使用性で、撥水効果が高いオイルや樹脂成分を配合することが常套手段として用いられている。
しかしながら、使用後にはこれらの成分が残存してしまいシャワー等で洗浄し難くなってしまうといった課題があった。
【0007】
また、特許文献9においても、シリコン処理した酸化亜鉛粉末を配合した日焼け止め化粧料が開示されている。この日焼け止め化粧料は、イソノナン酸エステルとシリコーン系界面活性剤を配合するものであり、のびがよく使用感触に優れるものの、上記特許文献5〜8の乳化化粧料と同じく、使用後の洗浄性が好ましくなく、落とし難いといった課題があった。
【0008】
【特許文献1】特許第2724257号公報
【特許文献2】特許第2672913号公報
【特許文献3】特公平5−86984号公報
【特許文献4】特開平3−246210号公報
【特許文献5】特許第2691654号公報
【特許文献6】特開平11−246330号公報
【特許文献7】特開平9−202714号公報
【特許文献8】特開平6−321735号公報
【特許文献9】特開2000−169353号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
発明者らは上述の観点に鑑み、透明性の高い紫外線散乱剤として有用な微粒子酸化亜鉛粉末を配合した日焼け止め化粧料において、特定の油分を、シリコーン系界面活性剤でなく特定の非イオン性界面活性剤で乳化すると、化粧もちが良くてかつ使用後に極めて洗い流し易い日焼け止め乳化化粧料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明の目的は、使用後の洗浄性に極めて優れた日焼け止め乳化化粧料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、本発明は、(a)疎水化処理酸化亜鉛粉末と、(b)揮発性シリコーンと、(c)流動パラフィン及び/又はイソノナン酸イソノニルと、(d)非イオン性界面活性剤と、(e)水とを含有することを特徴とする日焼け止め乳化化粧料を提供するものである。
【0012】
また、本発明は、前記(b)揮発性シリコーンの含有量が日焼け止め乳化化粧料全量に対して10〜40質量%であり、前記(c)流動パラフィン及び/又はイソノナン酸イソノニルの含有量が日焼け止め乳化化粧料全量に対して1〜10質量%であることを特徴とする上記の日焼け止め乳化化粧料を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の日焼け止め乳化化粧料は、化粧持ち(撥水性・撥油性)に優れながら、使用後に容易に洗い流せるという顕著な効果を発揮する。即ち、日焼け止め化粧料やメーキャップ化粧料専用のクレンジング洗浄料を使う必要がなく、石鹸、ボディーソープで簡単に洗い落とすことが出来るので、極めて便利である。また、塗布し易く、塗布時の使用感にも優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明について詳述する。
【0015】
(a)疎水化処理酸化亜鉛粉末
使用できる疎水化処理酸化亜鉛としては、ステアリン酸アルミニウム等で処理された金属石鹸処理酸化亜鉛、シクロデキストリン−脂肪酸エステル等で処理された脂肪酸−デキストリン処理粉体(WSX−トランスパロンTM等)、N−ラウロイル−L−リジン等で処理されたアミノ酸処理粉体(LL5−ST(HS)TM等)、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン・ジメチルポリシロキサン共重合体、ジメチルポリシロキサン、シリカ+ジメチルポリシロキサン等で処理されたシリコーン処理粉体(SS−Activox80TM等)、パーフルオロアルキルリン酸等で処理されたフッ素処理粉体(PFTM等)、オクチルトリエトキシシラン等で処理されたシランカップリング剤処理粉体(OTSTM等)が挙げられる。この中で、特に好ましい処理粉体として、オクチルトリエトキシシラン等で処理されたシランカップリング剤処理粉体等が挙げられる。
本発明に使用する疎水化処理酸化亜鉛粉末は特に限定されない。
但し、酸化亜鉛粉末を溶媒中に分散させて、一般式(1)で示されるパーフルオロアルキルを有するリン酸エステルと、一般式(2)で示される、分子量が30,000〜300,000のアクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチルの共重合体とメチルポリシロキサンのメチル基の一部をヒドロキシプロピル基で置換したものとのエステルとにより表面処理を行って疎水化処理酸化亜鉛粉末を製造する方法において、1次粒子径1μm以下の微粒子酸化亜鉛粉末を使用し、溶媒の使用量を該酸化亜鉛粉末に対して50〜90質量%の範囲の範囲で行うことにより製造される疎水化処理酸化亜鉛粉末を使用することが好ましい。なぜなら、一般的なW/O型製剤の連続相に配合しても製剤として低粘度のものが得られやすく、また、比表面積が維持されていることから、肌に塗布した時のシェアでほぐれて白浮きせずに効果的に長波長紫外部を防御することが可能となるからである。
【化1】

(式中、Rfは炭素数3〜21のパーフルオロアルキル基または、パーフルオロオキシアルキル基を示し、直鎖状あるいは分岐状であって、単一鎖長のものであっても複合鎖長のものであってもよい。nは1〜12の整数を示し、yは1〜3の数を示す。)

【化2】

【0016】
この疎水化処理酸化亜鉛粉末は、特開2001−302455号公報に記載された方法において、表面処理される化粧料顔料の代りに、1次粒子径1μm以下の微粒子酸化亜鉛粉末を表面処理することにより製造される。好ましくは0.1μm以下の微粒子酸化亜鉛粉末が使用される。なお、1次粒子径とは1次粒子の平均粒子径のことである。
【0017】
1次粒子径1μm以下の微粒子酸化亜鉛としては、例えば堺化学(株)製のFINEX−50、住友大阪セメント(株)製のZnO−350、石原産業(株)製の酸化亜鉛FZO−50、あるいはテイカ(株)製の微粒子酸化亜鉛MZ−500等を使用できる。また、WO99/25654号公報(特願平11−525984号)記載の微粒子酸化亜鉛粉末(カーネーションの花びら状の外観を有するもの)を使用できる。
【0018】
一般式(1)で示されるパーフルオロアルキル基を有するリン酸エステルとしては、例えば、旭硝子(株)からAG−530の名称で市販されている水分散エマルジョンの固形分であるパーフルオロアルキルリン酸エステルジエタノールアミン塩、またはこれと同じ分子構造を持つが塩の形が異なるパーフルオロアルキルリン酸エステルナトリウム塩、パーフルオロアルキルリン酸エステルカリウム塩、パーフルオロアルキルリン酸アンモニウム塩等を酸を用いてアミン塩、アンモニウム塩、アルカリ金属塩を除去したものを用いることができる。
【0019】
一般式(2)で示されるエステル(以下「アクリルシリコーン共重合物」と称する場合がある)としては、例えば、信越化学工業(株)からKP−541、KP−543、KP−545の名称で市販されているイソプロピルアルコール、酢酸ブチル、揮発性シリコーンに溶解された共重合物、あるいはKP−544と称するアクリルシリコーン共重合物をその他の有機溶媒に溶解したものが挙げられる。
【0020】
一般式(1)及び(2)にて示されるパーフルオロアルキルリン酸エステルとアクリルシリコーン共重合物の総被覆量は、微粒子酸化亜鉛粉末の比表面積をXm2/gとすると、X/5〜X/10重量%に調整することにより、十分な撥水性と撥油性が得られる。この範囲外の量で被覆すると、一般式(1)のリン酸エステルが粉体表面以外で自らが粉末状に析出し粉末中に共存するようになり、また粉末同士の過剰な凝集が無視できなくなって長波長紫外部の防御能が低下する恐れがあり、あるいは撥水性・撥油性が不足する可能性がある。
したがって、表面処理される微粒子酸化亜鉛粉末の比表面積がX(m2/g)の場合、一般式(1)のリン酸エステルと一般式(2)のエステルとの使用量の和は、該酸化亜鉛粉末に対してX/10〜X/5質量%の範囲で行われることが好ましい。
【0021】
また、一般式(1)のリン酸エステルと前記一般式(2)のエステルとの使用量の質量比が、一般式(1)のリン酸エステル/一般式(2)のエステル=1〜5で行うことが好ましく、さらに好ましくは、2〜4である。この範囲外であると、得られる粉末は、一般的に用いられる化粧料油分との親和性が低下したり、あるいは製剤として肌に塗布した時の耐水性(撥油性)が不足したりする場合がある。
【0022】
この製造方法では、溶媒の量が酸化亜鉛粉末に対して50〜90質量%の範囲であることを特徴とする。表面処理剤の一般式(1)のリン酸エステルと一般式(2)のエステルを用いて、常法に従って表面処理を行うと、驚くべきことに、低吸油量、見掛けの比容積が低く撥水性・撥油性に優れた疎水化処理微粒子酸化亜鉛粉末が製造される。この溶媒の量は、粉末が分散する系内に存在するすべての溶媒の量であり、一般式(1)と(2)の化合物を除いたすべての溶液のことである。なお、粉末は予め溶媒に分散させて処理容器内に添加する必要はない。処理容器に、最初に粉末を添加し、次に一般式(1)と(2)の処理剤溶液(溶液)を添加し、最後に溶媒を添加して攪拌処理する方法が好ましい。
【0023】
溶媒は、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル溶媒、揮発性シリコーン、アセトン等の有機溶媒である。イソプロピルアルコール(以下、IPAと記載)が好ましく用いられる。なお、本発明において、酸化亜鉛粉末に対して50〜90質量%用いる溶媒は、表面処理剤を予め溶解させる場合に用いる溶媒を含む、全溶媒量である。
【0024】
上記製造方法のフローシートを「図1」に示す。
(1)まず、処理容器に、1次粒子径1μm以下の微粒子酸化亜鉛粉末、表面処理剤の一般式(1)のリン酸エステルと一般式(2)のエステル、溶媒とを添加する。添加の順は特に問われないが、粉末、処理剤(溶液)、溶媒の順で添加することが好ましい。
表面処理剤は、そのまま添加しても、予め溶媒に溶かした状態で添加しても良いが、製造効率上、予め溶媒に溶かした状態で添加することが好ましい。
表面処理剤を溶解する溶媒は制限されない。通常はイソプロピルアルコールなどの溶媒に30〜70%程度に溶解させた状態で添加するのが扱いやすい。
さらに加える溶媒量としては、処理剤を予め溶かすための溶媒との合計量が、被処理粉末量に対して50〜90質量%であることが好ましく、さらに好ましくは60〜80質量%である。50質量%未満では溶媒中に粉末が十分に分散しきれず凝集したまま被覆される(不完全な表面処理の)割合が高くなる。一方、90質量%より多い量では粉末は十分に分散されるものの、見掛けの比容積が下がりにくく、また被覆そのものは溶媒がほとんど除去されるタイミングで行われるため、その領域に達するまでの溶媒除去時間が長くなる。即ち溶媒が過剰で、かつ非効率的でもあるので好ましくない。
粉末を混合(分散)させる方法は特に限定されないが、通常は適当な混合(分散)機、例えば回転ボールミル、振動式ボールミル、遊星型ボールミル、サンドミル、アトライター、バグミル、ポニミキサー、プラネタリーミキサー、らいかい機、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、ニーダー、媒体撹拌ミル(ビーズミル)等を用いて行う。
混合時間は制限されないが、通常0.1〜2hで行なう。
(2)次に溶媒除去を行う。溶媒除去は分散液を撹拌及び場合により適当に加熱をしながら行う。さらに効率的にはトラップを備えた真空ポンプで減圧状態を保つことで行うことができる。
(3)次に粉砕を行う。粉砕方法は特に限定されないが、高速回転粉砕機(ハンマーミル、ケージミル、ピンミル、ディスインテグレータ、スクリーンミル、ターボ型ミル、遠心分級ミル等)、ボールミル(転動ミル、振動ボールミル、遊星ミル)、撹拌ミル(タワーミル、撹拌槽型ミル、流通管型ミル、アニュラーミル)、ラボミル、ジェットミル、剪断ミル、圧縮摩粋型粉砕機、コロイドミル等により行う。
(4)最後に乾燥する。
乾燥は電熱式タイプの加熱乾燥機、あるいは加熱した気体を供給して行う乾燥機等を用いて行う。
乾燥時間は、特に限定されないが、1h〜250h、乾燥温度は50〜150℃の範囲で行うことが望ましい。これ以外で行うと、十分な乾燥が行われないか、あるいは処理剤の劣化が起こる恐れがある。
【0025】
上記により得られる微粒子酸化亜鉛粉末は、低吸油量、見掛けの比容積が低いという顕著な効果を有する。
この微粒子酸化亜鉛粉末の好ましい吸油量は15〜40mL/100gである。
この吸油量は、JISK5101 21.に準じた方法、あるいは市販の吸油量測定機器を用いて測定される数値である。
また、本発明に用いる微粒子酸化亜鉛粉末の好ましい見掛けの比容積は0.5〜0.9mL/gである。
この見掛けの比容積は、JISK5101 20.2記載のタップ法に準じて測定される1g当たりの容積(mL)を表す数値(mL/g)である。
【0026】
本発明において好ましく使用される(a)疎水化処理酸化亜鉛粉末は、上述の通りである。この微粒子酸化亜鉛粉末は、低吸油量、見掛けの比容積が低いという優れた効果を有すると同時に、撥水性・撥油性に優れ、かつ製剤に安定配合可能なものであり、紫外線散乱効果にも優れている。
【0027】
<配合量の説明>
本発明の日焼け止め化粧において、(a)成分の疎水化処理酸化亜鉛粉末は、好ましくは0.1〜60質量%、より好ましくは1〜40質量%程度配合される。0.1質量%未満では、紫外線防御効果を十分に得ることができず、逆に60質量%を越えて配合すると、塗布部が白浮きしてしまう場合がある。また、粉っぽい使用性になることがある。
油中水型乳化化粧料の場合には1〜40質量%配合されることが好ましい。
【0028】
(b)揮発性シリコーン
本発明に使用する(b)成分の揮発性シリコーンは、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、メチルトリメチコン、デカメチルテトラシロキサンであり、単独または2種以上が目的に応じて組み合わせて配合される。
【0029】
<配合量の説明>
配合量は適宜決定されるが、10〜40質量%配合することが好ましい。10質量%未満の場合安定な油中水型乳化組成物を得るためには必然的に他の油分の配合量が多くなるためさっぱりした使用感触といった揮発性シリコーン配合のメリットが得られにくくなる。40質量%を越えると塗布中のなじみが遅くなり、使用感触が油っぽくなるため好ましくない。
【0030】
(c)流動パラフィン及び/又はイソノナン酸イソノニル
(1)使用性の観点(のび、なじみ、べたつきのなさ)、(2)他のシリコーン油やシリコーン活性剤(基本的に洗浄性が悪い)との相溶性の高さ、(3)相溶性の高さゆえの安定性の向上、(4)紫外線吸収剤の溶解性の高さという観点からは、イソノナン酸イソノニルが好ましい。しかし、流動パラフィンも、従来通常配合していた不揮発性シリコーン油に換えて配合すると、格段に洗浄性が向上する。
流動パラフィンとイソノナン酸イソノニルとを併用しても好ましい。
イソノナン酸イソノニルの市販品としては、Cetiol ININ(ヘンケル社)が挙げられる。
【0031】
<流動パラフィンの配合量の説明>
配合量は日焼け止め乳化化粧料全量に対して1〜10質量%であることが好ましい。1.0質量%未満の場合、洗浄性の向上効果が得られにくくなる。10質量%を越えるとべたつきが感じられ、のびも重くなるため好ましくない。
【0032】
<イソノナン酸イソノニルの配合量の説明>
配合量は日焼け止め乳化化粧料全量に対して1〜10質量%であることが好ましい。1.0質量%未満の場合、洗浄性の向上効果が得られにくくなる。10質量%を越えるとべたつきが感じられ、のびも重くなるため好ましくない。
【0033】
本発明の日焼け止め乳化化粧料は、(d)非イオン性界面活性剤を配合して、油中水型乳化日焼け止め化粧料とすることにより、洗浄性に優れたものとなる。また、伸びが良く、さっぱりとした使用性を発揮することができる。
本発明では、シリコーン系界面活性剤{例えば親油性活性剤として周知なポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサンであるシリコーンKF−6017、シリコーンKF−6028(信越化学工業社製)等}は実質的に使用しない。シリコーン系界面活性剤を配合すると、使用後の洗浄性が落ちてしまう。
好ましい非イオン性界面活性剤は、シリコーン系界面活性剤以外のHLBが7以下の親油性界面活性剤であり、例えば、ジイソステアリン酸ポリグリセリル、トリイソステアリン酸PEG-20グリセリル、ジイソステアリン酸ポリグリセリルが挙げられる。市販品としては、WOGEL18DV(松本製薬工業株式会社製)、エマレックスGWIS320(日本エマルジョン社製)、エステモール182V(日清製油株式会社製)などが挙げられる。
【0034】
<配合量の説明>
配合量は日焼け止め乳化化粧料全量に対して1〜4質量%が好ましい。1質量%以下では、油中水型乳化化粧料とした場合に乳化安定性が悪くなる場合がある。また、4質量%以上配合しても乳化安定性のさらなる向上は得られず、かえって皮膚への刺激やべたつきが生じる原因となる。
【0035】
(e)水
本発明の日焼け止め化粧料を、油中水型乳化日焼け止め化粧料して用いる場合には、水が1〜60質量%範囲で適宜配合される。
【0036】
本発明の油中水型乳化日焼け止め化粧料は、さらに(f)有機変性粘土鉱物を配合することにより、安定性を向上させ、塗布の時の伸びがよく、みずみずしい使用感を付与することができる。
本発明に配合される(f)有機変性粘土鉱物は、乳化助剤として用いられものである。この有機変性粘土鉱物は、三層構造を有するコロイド性含水ケイ酸アルミニウムの一種で、一般に下記一般式(3)で表される粘土鉱物を第四級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤で変性したものである。
【化3】

(但し、X=Al,Fe(III),Mn(III),Cr(III)、Y=Mg,Fe(II),Ni,Zn,Li、Z=K,Na,Ca)
具体的にはモンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト等の天然または合成(この場合、式中の(OH)基がフッ素で置換されたもの)のモンモリロナイト群(市販品ではビーガム、クニピア、ラポナイト等がある。)およびナトリウムシリシックマイカやナトリウムまたはリチウムテニオライトの名で知られる合成雲母(市販品ではダイモナイト:トピー工業(株)等がある。)等の粘土鉱物を第四級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤で処理して得られる。
ここで用いられる第四級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤は、下記一般式(4)で表されるものである。
【化4】

(式中、R1は炭素数10〜22のアルキル基またはベンジル基、R2はメチル基または炭素数10〜22のアルキル基、R3およびR4は炭素数1〜3のアルキル基またはヒドロキシアルキル基、Xはハロゲン原子またはメチルサルフェート残基を表す。)
かかる第四級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤としては、例えばドデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ミリスチルトリメチルアンモニウムクロリド、セチルトリメチルアンモニウムクロリド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド、アラキルトリメチルアンモニウムクロリド、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロリド、ミリスチルジメチルエチルアンモニウムクロリド、セチルジメチルエチルアンモニウムクロリド、ステアリルジメチルエチルアンモニウムクロリド、アラキルジメチルエチルアンモニウムクロリド、ベヘニルジメチルエチルアンモニウムクロリド、ミリスチルジエチルメチルアンモニウムクロリド、セチルジエチルメチルアンモニウムクロリド、ステアリルジエチルメチルアンモニウムクロリド、アラキルジエチルメチルアンモニウムクロリド、ベヘニルジエチルメチルアンモニウムクロリド、ベンジルジメチルミリスチルアンモニウムクロリド、ベンジルジメチルセチルアンモニウムクロリド、ベンジルジメチルステアリルアンモニウムクロリド、ベンジルジメチルベヘニルアンモニウムクロリド、ベンジルメチルエチルセチルアンモニウムクロリド、ベンジルメチルエチルステアリルアンモニウムクロリド、ジベヘニルジヒドロキシエチルアンモニウムクロリド、および相当するブロミド等、更にはジパルミチルプロピルエチルアンモニウムメチルサルフェート等が挙げられる。本発明の実施にあたっては、これらのうち一種または二種以上が任意に選択される。
有機変性粘土鉱物の代表的なものとしては、ジメチルアルキルアンモニウムヘクトライト、ベンジルジメチルステアリルアンモニウムヘクトライト、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム処理ケイ酸アルミニウムマグネシウム等が挙げられる。市販品としては、ベントン27(ベンジルジメチルステアリルアンモニウムクロライド処理ヘクトライト:ナショナルレッド社製)およびベントン38(ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド処理ヘクトライト:ナショナルレッド社製)が好ましい。
【0037】
本願発明の日焼け止め乳化化粧料には、オクチルメトキシシンナメート等の紫外線吸収剤を上記油分に溶解して配合することが好ましい。紫外線吸収剤の配合量は油分の配合量に応じて適宜決定されるが、好ましくは、日焼け止め乳化化粧料全量に対して1〜10質量%である。
本発明の日焼け止め乳化化粧料は、化粧料に通常配合される成分を本発明の効果を損なわない範囲で適宜配合して、商品形態に応じて常法により製造される。
【実施例】
【0038】
本発明を実施例により具体的に説明する。本発明の技術範囲はこれら実施例によってなんら限定されるものではない。なお、配合量については特記しない限り、質量%で示す。
【0039】
(a)疎水化処理酸化亜鉛粉末
「製造例1」
炭素数12の一般式(1)のパーフルオロアルキルリン酸エステル(Rf:炭素数10,n=2,1≦y≦2)を300g、及び一般式(2)のエステル(アクリルシリコーン共重合体:信越化学工業社製KP-544:一般式(2)で示される、分子量が30,000〜300,000のアクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチルの共重合体とメチルポリシロキサンのメチル基の一部をヒドロキシプロピル基で置換したものとのエステル)100g、IPA(溶媒)を3.5kg用意した。これらを用い、上記一般式(1)のリン酸エステルの50質量%溶液と上記一般式(2)のエステルの60質量%溶液を調製した。
20Lの高速撹拌混合機に、WO99/25654号公報(特願平11−525984号)記載の微粒子酸化亜鉛粉末(カーネーションの花びら状の外観を有するもの,比表面積(X)=60m2/g)5kgを入れ、上記一般式(1)のリン酸エステルの溶液と、上記一般式(2)のエステルの溶液入れた。さらに残りのIPAを入れ、全溶媒量となるトータルのIPA量を3.5kgとした。その後、60℃で1時間撹拌した後、120℃に加温し高速撹拌混合機内を減圧にして約2時間保ち、溶媒であるIPAを完全に除去した。
【0040】
次に、混合機内から払い出した後、2mmスクリーンを備えたハンマーミルで粉砕し、45130℃で24h加熱することにより、炭素数が12のパーフルオロアルキルリン酸エステル6%と、アクリルシリコーン共重合体2%で表面被覆した微粒子酸化亜鉛を得た。
【0041】
粉末の吸油量は、JISK5101の方法に準じ、油分としてシリコーン油を用いて測定した結果、30.8mL/100gであった。粉末の見掛けの比容積は、JISK5101 20.2記載のタップ法に準じて測定した結果、0.71mL/gであった。粉末の接触角は、粉末を錠剤成型機等を用いてペレットを作製し、この上に流動パラフィンを滴下して形成される接触角を測定した結果、52°であった。
製造例1の製造方法における溶媒の使用量は該酸化亜鉛粉末に対して70質量%である。
また、一般式(1)のリン酸エステルと一般式(2)のエステルとの使用量の和は、8%であり、一般式(1)のリン酸エステル/一般式(2)のエステル=3である。
【0042】
「製造例2〜10、比較製造例1〜3」
製造例1と同様にして製造した。すなわち、後述の製造処方の「表1」に従い、微粒子酸化亜鉛粉末、炭素数12の一般式(1)のパーフルオロアルキルリン酸エステル(Rf:炭素数10,n=2,1≦y≦2)、及び一般式(2)のエステル(アクリルシリコーン共重合体:信越化学工業社製KP-544:一般式(2)で示される、分子量が30,000〜300,000のアクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチルの共重合体とメチルポリシロキサンのメチル基の一部をヒドロキシプロピル基で置換したものとのエステル)、及びIPA(溶媒)を用意した。
20Lの高速撹拌混合機に、微粒子酸化亜鉛粉末5kgを入れ、次に予めIPAに溶解させた上記一般式(1)のリン酸エステルの50質量%溶液と上記一般式(2)のエステルの60質量%溶液を入れた。さらに全溶媒量となるトータルのIPA量を調整するためIPAを加えた。その後、60℃で1時間撹拌した後、120℃に加温し高速撹拌混合機内を減圧にして約2時間保ち、溶媒であるIPAを完全に除去し、表面被覆微粒子酸化亜鉛を得た。
また、製造例1と同様にして、得られた粉末の吸油量、見掛けの比容積、流動パラフィンに対する接触角を測定した。
【0043】
製造例及び比較製造例を「表1」及び「表2」にまとめると次のようになる。
【表1】

*1)WO99/25654号公報(特願平11−525984号)記載の微粒子酸化亜鉛粉末(カーネーションの花びら状の外観を有するもの,比表面積(X)=60m2/g)
*2)微粒子酸化亜鉛FINEX−50(堺化学社製、比表面積(X)=50m2/g)












【表2】

【0044】
また、以上の表面処理条件を、粉末量に対する溶媒使用量と、一般式(1)のリン酸エステル/一般式(2)のエステルの比のパラメータに対する吸油量と見掛けの比容積の値をグラフに示すと、「図2」、「図3」及び「図4」のようになる。
【0045】
これらの図から、粉末量に対する溶媒量をコントロールして見掛けの比容積と吸油量を適度に制御することにより、化粧料、特に油分に分散することを特徴とする化粧料に極めて配合(分散)し易くすることができる。また、処理剤の比率と量は、比容積と吸油量に影響することはもちろん、化粧持ち(撥水性・撥油性)向上に寄与する撥油性とも関連があることから、これらの条件を選択することにより、化粧料調製時の処方幅(特にフッ素化合物で被覆された粉末と既存原料との親和性向上)と化粧品としての機能を両立できる。したがって、本発明に用いる(a)疎水化処理酸化亜鉛粉末は、日焼け止め化粧料に極めて有用な疎水化処理粉末であることが分かる。
【0046】
次に、本発明の日焼け止め化粧料の実施例を説明する。表3および表4の処方の油中水型乳化化粧料を常法により製造し、その効果を下記により評価した。
<洗浄容易性の評価>
10人の専門パネルに実際に使用してもらい、洗浄容易性(落ち易さ)について、以下の基準で判定した。
◎:8〜10人が洗浄し易いと回答した。
○△:5〜7人が洗浄し易いと回答した。
△:2〜4人が洗浄し易いと回答した。
×:0〜1人が洗浄し易いと回答した。










【0047】
【表3】

【0048】
【表4】

【0049】
「表3及び表4の(a)疎水化処理酸化亜鉛粉末」
(a)疎水化処理酸化亜鉛粉末*1:パーフルオロアルキルリン酸エステル処理酸化亜鉛粉末(商品名FSA-ZnO(SF)、大東化成工業株式会社)
(a)疎水化処理酸化亜鉛粉末*2:シランカップリング剤−カチオン界面活性剤処理酸化亜鉛粉末
(a)疎水化処理酸化亜鉛粉末*3:脂肪酸−デキストリン処理酸化亜鉛粉末(商品名WSX-MZ-700、テイカ株式会社)
(a)疎水化処理酸化亜鉛粉末*4:金属石鹸処理酸化亜鉛粉末(商品名MT-Finex25、三好化成株式会社)
(a)疎水化処理酸化亜鉛粉末*5:シリコーン処理酸化亜鉛粉末(商品名SS-ActivoxC80、昭和電工株式会社)
【0050】
(a)疎水化処理酸化亜鉛粉末と(b)揮発性シリコーンとが配合された日焼け止め乳化化粧料に、(c)流動パラフィンまたはイソノナン酸イソノニルと(d)非イオン性界面活性剤とを組み合わせて配合すると洗浄容易性が高くなる。特にイソノナン酸イソノニルを配合した場合は顕著に高い洗浄容易性を示す。
(c)流動パラフィン若しくは(c)イソノナン酸イソノニル、又は、(d)非イオン性界面活性剤の一方のみの配合では本願発明の効果は半減する。しかし、(c)成分と、(d)成分との洗浄容易性に対する寄与は、(c)成分の方が大きい。
【0051】
以下にその他の本発明の実施例を挙げる。いずれも、化粧持ち(撥水性・撥油性)と、洗浄容易性に優れた日焼け止め化粧料である。なお、下記実施例においては、製造例1〜10の任意の疎水化処理酸化亜鉛粉末を配合することが可能である。
【0052】
実施例11:W/O型乳化日焼け止めクリーム
ジメチルポリシロキサン 0.5
デカメチルシクロペンタシロキサン 28
ラウリリルメチコン 6
トリメチルシロキシケイ酸 0.5
ポリエーテル変性シリコーン 1
(信越化学社製KF−6017)
ジプロピレングリコール 5
トリイソステアリン酸PEG-20グリセリル 2
製造例2で得られた酸化亜鉛 18
イソノナン酸イソノニル(または流動パラフィン) 5
パラベン 適量
フェノキシエタノール 適量
エデト酸三ナトリウム 適量
パラメトキシ桂皮酸2−エチルヘキシル 7.5
ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト 1
球状PMMA粉末 4
精製水 残余
香料 適量
【0053】
実施例12:W/O型乳化日焼け止めクリーム
ヘキシリルメチコン 5
デカメチルシクロペンタシロキサン 25
メチルトリメチコン 5
1,3−ブチレングリコール 5
微粒子酸化チタン(テイカ社製MT−100TV) 5
セスキイソステアリン酸ソルビタン 2
製造例3で得られた酸化亜鉛 18
イソノナン酸イソノニル(または流動パラフィン) 5
パラベン 適量
フェノキシエタノール 適量
エデト酸三ナトリウム 適量
ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト 1
球状ポリメチルシルセスキオキサン粉末 5
精製水 残余
香料 適量
【0054】
実施例13:二層型W/O日中用乳液
カプリリルメチコン 7
デカメチルシクロペンタシロキサン 15
デカメチルテトラシロキサン 13
分岐型ポリエーテル変性シリコーン 1.5
(信越化学社製KF−6028)
1,3−ブチレングリコール 5
スクワラン 0.5
タルク 1
グリチルリチン酸ジカリウム 0.1
酢酸トコフェロール 0.1
エデト酸三ナトリウム 0.05
パラメトキシ桂皮酸2−エチルヘキシル 5
ジイソステアリン酸ポリグリセリル 2
製造例3で得られた酸化亜鉛 18
イソノナン酸イソノニル(または流動パラフィン) 5
ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト 0.5
球状ポリエチレン末 3
フェノキシエタノール 適量
エタノール 5
精製水 残余
香料 適量
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明によれば、化粧持ち(撥水性・撥油性)と、洗浄容易性に優れた日焼け止め乳化化粧料を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明に好ましい疎水化処理酸化亜鉛粉末の製造方法の工程図である。
【図2】粉末量に対する溶媒使用量に対する吸油量と見掛けの比容積の値のグラフである。
【図3】粉末量に対する溶媒使用量と、一般式(1)のリン酸エステル/一般式(2)のエステルの比のパラメータに対する吸油量と見掛けの比容積の値のグラフである。
【図4】一般式(1)のリン酸エステル/一般式(2)のエステルの比のパラメータに対する接触角(対流動パラフィン)のグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)疎水化処理酸化亜鉛粉末と、(b)揮発性シリコーンと、(c)流動パラフィン及び/又はイソノナン酸イソノニルと、(d)非イオン性界面活性剤と、(e)水とを含有することを特徴とする日焼け止め乳化化粧料。
【請求項2】
前記(b)揮発性シリコーンの含有量が日焼け止め乳化化粧料全量に対して10〜40質量%であり、前記(c)流動パラフィン及び/又はイソノナン酸イソノニルの含有量が日焼け止め乳化化粧料全量に対して1〜10質量%であることを特徴とする請求項1記載の日焼け止め乳化化粧料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−248999(P2006−248999A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−68306(P2005−68306)
【出願日】平成17年3月11日(2005.3.11)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】