昇華型プリンタ
【課題】ドットプリント処理によって裏面印刷を行う昇華型プリンタにおいて、ドット印字ヘッドとプラテンプレートとのギャップを再現性高く規定寸法に保つことが可能な昇華型プリンタを提供する。
【解決手段】筐体Cに取り付けたヘッドユニットUの一部及びドットプリント処理可能位置(P)に位置付けたプラテンプレート42の一部をそれぞれペーパーガイド部45に押し当てることにより、ドット印字ヘッド41及びプラテンプレート42を、これらドット印字ヘッド41とプラテンプレート42との間に用紙Sを挟み得る規定寸法のギャップGを形成する相対位置に位置決めする位置決め手段49を裏面プリント部4に設けた昇華型プリンタ1とした。
【解決手段】筐体Cに取り付けたヘッドユニットUの一部及びドットプリント処理可能位置(P)に位置付けたプラテンプレート42の一部をそれぞれペーパーガイド部45に押し当てることにより、ドット印字ヘッド41及びプラテンプレート42を、これらドット印字ヘッド41とプラテンプレート42との間に用紙Sを挟み得る規定寸法のギャップGを形成する相対位置に位置決めする位置決め手段49を裏面プリント部4に設けた昇華型プリンタ1とした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙の表面に対して昇華プリント処理を行い、裏面に対してドットプリント処理を行う昇華型プリンタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、サーマルヘッドでインクリボンに熱を加えてインクを昇華させ、例えばポリエステル系の樹脂でコーティングした用紙の表面にインクを付着させる昇華型プリンタが知られている。この種の昇華型プリンタは、サーマルヘッドに加える熱を制御することで印字濃度を細かく変化させることができ、他のプリント方式では困難な連続階調の表現が可能である。
【0003】
一方で、用紙の表面に印刷した内容に関する情報等の付随的な情報を用紙の裏面にドットインパクトプリント(以下、「ドットプリント」と称す)処理によって印刷するように構成されたプリンタも考えられている(特許文献1参照)。周知のように、ドットプリント処理は、縦横に並べられた複数のドットピンを備えたドット印字ヘッドを用紙の裏面側に位置付け、インクリボンを介してドットピンで用紙の裏面を叩き付けて、その圧力で用紙の裏面にインクを付着することによって印字を行う処理である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−90805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した昇華プリント方式によって用紙の表面に昇華プリント処理を施すことが可能な昇華型プリンタとして、ドットプリント方式により用紙の裏面にドットプリント処理を施す裏面プリント機能を備えた新たなタイプの昇華型プリンタの商品化に向けて本発明者らが試行を重ねたところ、以下の問題が見受けられた。
【0006】
すなわち、用紙の裏面にドットプリント処理を施す際に、ドット印字ヘッドとプラテンプレートとの間に用紙を挟む必要があるが、ドット印字ヘッドとプラテンプレートとのギャップが規定寸法(例えば用紙の厚み+数μm乃至数百μm)よりも大き過ぎるとドットプリント処理時に用紙の不要な撓み等に起因して適切なドットプリント処理を行うことができない。一方で、ドット印字ヘッドとプラテンプレートとのギャップを常に規定寸法に維持した状態では、用紙の厚みよりも僅か数μm乃至数百μmだけ大きく設定されたギャップに用紙をスムーズに搬送することは極めて困難であり、用紙詰まりの原因にもなる。
【0007】
そこで、本発明者らは、ドットプリント処理を行う場合だけプラテンプレートをドット印字ヘッドと対面する位置に位置付け、ドットプリント処理を行わない場合にはプラテンプレートをドット印字ヘッドから退避する方向に移動させておくことにより、用紙の搬送をスムーズに行える態様を案出した。
【0008】
しかしながら、ドットプリント処理を行う度にプラテンプレートを移動させる態様であれば、ドットプリント処理毎にドット印字ヘッドとプラテンプレートとのギャップが変化するおそれがあり、このようなギャップの変化によってドットプリントの出来上がり(品質)にばらつきが生じるという問題が考えられた。
【0009】
さらに、ドット印字ヘッドのメンテナンスや交換を行えるようにドット印字ヘッドをユニット化して昇華型プリンタの筐体に対し着脱可能なものとした場合、ドット印字ヘッドの交換又はメンテナンス毎にやはりドット印字ヘッドとプラテンローラとのギャップが変化するおそれがあり、ドットプリントの質にばらつきが生じ得ると考えられた。
【0010】
本発明は、このような問題点に鑑み、昇華プリント処理によって表面印刷を行うとともに、ドットプリント処理によって裏面印刷を行う昇華型プリンタにおいて、ドットプリント処理に供する用紙の搬送をスムーズに行うことができるとともに、筐体に対して着脱可能なドット印字ヘッドと筐体内で移動するプラテンプレートとのギャップをドットプリント処理に適した規定寸法に精度高く保つことができる昇華型プリンタを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち本発明の昇華型プリンタは、用紙の表面に昇華プリント処理を行う表面プリント部を筐体内に設けるとともに、筐体内に、用紙の裏面にドットプリント処理を行う裏面プリント部を更に設けたものである。そして、本発明の昇華型プリンタは、裏面プリント部を、少なくともドット印字ヘッドを有し且つ筐体に着脱可能に取り付けられるヘッドユニットと、ドット印字ヘッドとの間でギャップを隔てて設けられ且つドット印字ヘッドとの間で用紙を挟み得るギャップを形成したドットプリント処理可能位置と当該ドットプリント処理可能位置と比較してドット印字ヘッドとのギャップが大きく形成される退避位置との間で移動可能なプラテンプレートと、筐体においてドット印字ヘッドとプラテンプレートとの間に固定され且つこれらドット印字ヘッドとプラテンプレートとの間の位置に用紙を導くペーパーガイド部と、筐体に取り付けたヘッドユニットの一部及びドットプリント処理可能位置に位置付けたプラテンプレートの一部をそれぞれペーパーガイド部に直接又は間接的に押し当てることにより、ドット印字ヘッド及びプラテンプレートを、これらドット印字ヘッドとプラテンプレートとの間に用紙を挟み得る規定寸法のギャップを形成する相対位置に位置決めする位置決め手段とを用いて構成していることを特徴とする。
【0012】
ここで、「ヘッドユニットの一部をペーパーガイド部に直接又は間接的に押し当てる」とは、「ヘッドユニットの一部をペーパーガイド部に直接押し当てる」態様、「ヘッドユニットの一部をペーパーガイド部にスペーサ等の適宜の部材を介して間接的に押し当てる」態様、これら何れを含む概念であり、「プラテンプレートの一部をペーパーガイド部に直接又は間接的に押し当てる」とは、「プラテンプレートの一部をペーパーガイド部に直接押し当てる」態様、「プラテンプレートの一部をペーパーガイド部にスペーサ等の適宜の部材を介して間接的に押し当てる」態様、これら何れを含む概念である。
【0013】
このような昇華型プリンタであれば、裏面プリント部でドットプリント処理を行わない場合にはプラテンプレートを退避位置に位置付けることによりプラテンプレートとドット印字ヘッドとの間のギャップを大きく形成することによって、プラテンプレートとドット印字ヘッドとの間に用紙を搬送させる処理をスムーズに行うことができ、用紙詰まりを防止することができる。そして、用紙をペーパーガイド部に沿ってドット印字ヘッドとプラテンプレートとの間に案内させた状態でドットプリント処理を施す場合には、プラテンプレートを退避位置からドットプリント処理可能位置へ移動させればよい。本実施形態の昇華型プリンタにおける裏面プリント部は、退避姿勢からドットプリント処理可能位置に移動させたプラテンプレートを、当該プラテンプレートの一部を筐体に固定したペーパーガイド部に直接又は間接的に押し当てることによって、ペーパーガイド部に対する相対位置を位置決めする位置決め手段を備えており、この位置決め手段は、さらに、ヘッドユニットを筐体内に取り付けた際にヘッドユニットの一部を筐体に固定したペーパーガイド部に押し当てることによって、ペーパーガイド部に対するドット印字ヘッドの相対位置を位置決めするものでもある。したがって、本発明の昇華型プリンタは、筐体に着脱可能に取り付けたヘッドユニットに搭載されているドット印字ヘッドの交換やメンテナンスを行えるようにしたものでありながら、位置決め手段により、筐体に固定したペーパーガイド部を基準にしてプラテンプレート及びドット印字ヘッドの相対位置を位置決めし、さらに、プラテンプレートとドット印字ヘッドとの間にドットプリント処理に適した規定寸法のギャップ(例えば用紙の厚み+数μm乃至数百μm)を形成するようにしたものである。このため、本発明の昇華型プリンタでは、プラテンプレートを退避位置からドットプリント処理可能位置へ移動させる度に、或いはヘッドユニットを筐体外から筐体内へ取り付ける度に、プラテンプレートとドット印字ヘッドとの相対位置を逐一調整することなく、ドットプリント処理を行う度にプラテンプレートとドット印字ヘッドとの間に適切なギャップを精度良く再現することができ、裏面プリント部によるドットプリント処理を適切に行うことができる。
【0014】
このような昇華型プリンタにおいて、簡易な構成でペーパーガイド部に対するヘッドユニット、ひいてはドット印字ヘッドの装着位置を適切に位置決めすることができるようにするには、ヘッドユニットを、当該ヘッドユニットを筐体に取り付けた際に他の部分よりも優先してペーパーガイド部に当たる突部を備えたものとし、位置決め手段を、この突部をペーパーガイド部に押し当てることによってヘッドユニットの取付位置を位置決めするように構成すればよい。このようなものであれば、ヘッドユニットの突部の寸法さえ精度高く決めておけば、ペーパーガイド部に対するヘッドユニットの相対位置を位置決めすることができる。
【0015】
さらに、ペーパーガイド部に対するヘッドユニットの取付状態をより安定したものとするとともにパーペーガイド部に対するヘッドユニットの適切な相対位置を位置決めすることができるようにするには、ヘッドユニットに3箇所の突部を設け、ヘッドユニットを筐体に取り付けた際にこれらの突部をペーパーガイド部に押し当てて3点接触させるようにすればよい。特に、3つの突部のうち2つの突部をドット印字ヘッドを挟む位置に設ければ、ドット印字ヘッドが左右に傾くことを防止し、裏面プリント部によるドットプリント処理にばらつきが生じ難いものとなる。
【0016】
また、ペーパーガイド部にプラテンプレートを直接押し当てた場合、ペーパーガイド部に沿って搬送される用紙がプラテンプレートに当たり、用紙のそれ以上の搬送に制約を受けて用紙詰まりが生じ得るが、本発明の昇華型プリンタでは、ペーパーガイド部に設けたスペーサにプラテンプレートを押し当てる構成を採用することができ、それにより、プラテンプレートとペーパーガイド部との間に用紙が通過し得るギャップを形成するようにしているため、上述のような用紙詰まりを防止することができる。
【0017】
また、本発明の昇華型プリンタでは、ペーパーガイド部において、ヘッドユニットを筐体に取り付けた際にドット印字ヘッドがドットプリント処理可能位置に位置付けたプラテンプレートと直接対面し得るように開口部を形成し、この開口部を挟んだ位置であって用紙の幅寸法よりも広く離間させた位置にスペーサを設けた構成とすることができる。このような構成にすれば、プラテンプレートとドット印字ヘッドとの間に用紙を挟んだ状態で開口部を通じて対面するドット印字ヘッドとプラテンプレートとによって適切にドットプリント処理を行うことができるとともに、これらスペーサをプラテンプレートが押し付けることによってペーパーガイド部に対するプラテンプレートの安定した押し付け状態を実現することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の昇華型プリンタによれば、ドットプリント処理に供する用紙の搬送をスムーズに行うことができるとともに、筐体に対して着脱可能としながらもドット印字ヘッドと筐体内で移動するプラテンプレートとのギャップをドットプリント処理に適した規定寸法に精度良く保つことができ、裏面プリントの品質をも向上させることが可能な昇華型プリンタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係る昇華型プリンタの概略構成図。
【図2】同実施形態に係る昇華型プリンタの全体斜視図。
【図3】同実施形態に係る昇華型プリンタによってプリントされた用紙の表面側から見た図。
【図4】同実施形態に係る昇華型プリンタによってプリントされた用紙の裏面側から見た図。
【図5】同実施形態におけるヘッドユニットの全体概略図。
【図6】同実施形態においてインクリボンカセットを取り外した状態のヘッドユニットを背面側から見た全体概略図。
【図7】本実施形態におけるドット印字ヘッドの幅方向ほぼ中央部分の断面に相当する模式図で示す位置決め手段の作用説明図。
【図8】図7の要部拡大図。
【図9】同実施形態においてプラテンプレートを退避位置に位置付けた状態を図7に対応して示す図。
【図10】同実施形態における位置決め手段の作用説明図であって、図7よりも幅方向中心部から偏位した位置における模式図。
【図11】同実施形態において排紙口側から見た位置決め手段の作用説明図。
【図12】同実施形態におけるヘッドユニット付勢手段の作用説明図。
【図13】同実施形態においてヘッドユニット搬出入機構を引き出した状態を図2に対応して示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0021】
本実施形態に係る昇華型プリンタ1は、図1乃至図4に示すように、用紙Sの表面Saに対して昇華プリント(図3参照)処理を行うとともに、用紙Sの裏面Sbに対してドットプリント(図4参照)処理を行うものである。この昇華型プリンタ1は、図1に示すように、給紙部2と、給紙部2から供給された用紙Sの表面Saに対して昇華プリント処理を施す表面プリント部3と、用紙Sの裏面Sbに対してドットプリント処理を施す裏面プリント部4と、排紙部5(具体的には図2に示す排紙口5)とを備えたものである。本実施形態では、表面プリント部3を給紙部2側に設け、裏面プリント部4を排紙部5側に設けている。すなわち、本実施形態の昇華型プリンタ1は、先ず表面プリント部3によって用紙Sの表面Saに昇華プリント処理を行い、その後に裏面プリント部4によって用紙Sの裏面Sbにドットプリント処理を行うものである。なお、この昇華型プリンタ1は、図2に示すように、共通の筐体C内に、給紙部2、表面プリント部3、裏面プリント部4、排紙部5、及び後述する用紙搬送機構6を設けている。
【0022】
給紙部2は、ロール状に巻回した用紙Sを収容し得るものである。本実施形態に係る昇華型プリンタ1は、この給紙部2にロール状に収容された用紙Sを、給紙部2と排紙部5との間に形成される搬送経路に沿って搬送する用紙搬送機構6を備えている。なお、以下の説明における「上流側」とは「給紙部側」を意味し、「下流側」とは「排紙部側」を意味する。
【0023】
用紙搬送機構6は、用紙Sを主として給紙部2から表面プリント部3の下流側に向かって搬送する上流側搬送機構61と、用紙Sを主として表面プリント部3の下流側から排紙部5に向かって搬送する下流側搬送機構62とを備えている。
【0024】
上流側搬送機構61は、給紙部2側から排紙部5側に向かって順に配置された給紙ローラ611と上流側第1ピンチローラ612との組、上流側送りローラ613と上流側第2ピンチローラ614との組を用いて構成したものである。給紙ローラ611と上流側第1ピンチローラ612との組を表面プリント部3よりも上流側に配置し、上流側送りローラ613と上流側第2ピンチローラ614との組を表面プリント部3よりも下流側に配置している。なお、図1では、給紙ローラ611よりもさらに上流側に給紙ガイドローラ615を配置した態様を示している。
【0025】
また、下流側搬送機構62は、表面プリント部3側から排紙部5側に向かって順に配置された下流側送りローラ621と下流側第1ピンチローラ622との組、及び排紙ローラ623と下流側第2ピンチローラ624との組を用いて構成したものである。下流側送りローラ621と下流側第1ピンチローラ622との組を裏面プリント部4よりも上流側に配置し、排紙ローラ623及び下流側第2ピンチローラ624との組を裏面プリント部4よりも下流側に配置している。また、本実施形態の昇華型プリンタ1は、下流側送りローラ621及び下流側第1ピンチローラ622の組と裏面プリント部4との間に用紙Sを切断するカッター部7を設けている。
【0026】
表面プリント部3は、サーマルヘッド31と、このサーマルヘッド31と対向する位置に配置されたプラテンローラ32と、インクリボン33と、インクリボン33をサーマルヘッド31とプラテンローラ32との間に搬送するインクリボン搬送機構34と、サーマルヘッド31の作動等を制御する表面プリント制御部(図示省略)とを備えたものである。
【0027】
サーマルヘッド31は、発熱素子(図示省略)を発熱させて用紙Sに印刷を行う周知のものである。本実施形態では、このサーマルヘッド31を、ヘッド駆動モータ(図示省略)により、プラテンローラ32との間で用紙Sを挟み得る位置と挟み得ない位置との間で移動可能に設定している。
【0028】
プラテンローラ32は、サーマルヘッド31との間で用紙Sを挟み得るものであり、回転しながら用紙Sを下流側へ順次搬送する機能を有する。したがって、このプラテンローラ32は前述した上流側搬送機構61の機能の一部を担っている。
【0029】
インクリボン33は、長尺なベースフィルムに例えばイエロー・マゼンタ・シアンの各色のインクを塗布したものである。ベースフィルムに塗布されるイエロー・マゼンタ・シアンの各色のインクは、熱によって昇華する染料を用いて形成されたものである。
【0030】
インクリボン搬送機構34は、未使用のインクリボン33(ベースフィルムにインクが塗布されたもの)を巻回している供給側リボンコア341と、使用済みのインクリボン33(ベースフィルムからインクの一部又は全部が剥離されたもの)を巻き取る巻取側リボンコア342と、供給側リボンコア341から巻き出したインクリボン33をサーマルヘッド31側に案内する供給側リボンガイド343と、サーマルヘッド31を通過した後に用紙Sから剥離したインクリボン33を巻取側リボンコア342側に案内する巻取側リボンガイド344とを備えたものである。供給側リボンコア341及び供給側リボンガイド343はサーマルヘッド31よりも下流側に配置され、巻取側リボンコア342及び巻取側リボンガイド344はサーマルヘッド31よりも上流側に配置される。したがって、供給側リボンコア341に巻回したインクリボン33は、供給側リボンガイド343及び巻取側リボンガイド344により、サーマルヘッド31側に巻き出されて昇華プリント処理に供された後、巻取側リボンコア342に順次巻き取られる。本実施形態では、インクリボン33及びインクリボン搬送機構34をユニット化し、サーマルヘッド31やプラテンローラ32に対して着脱可能に構成している。
【0031】
このような各部から構成される表面プリント部3は、サーマルヘッド31の熱によりイエロー・マゼンタ・シアンの各色インクを昇華させることで用紙Sの表面Saにカラー画像を印刷する(形成する)機能を発揮する。そして、この表面プリント部3は、サーマルヘッド31の温度を調整することにより印刷濃度のレベルを変化させた階調印刷を行うことができ、用紙Sの表面Saに高品質なカラー画像を印刷することが可能である。
【0032】
一方、裏面プリント部4は、図1に示すように、複数のドットピン(図示省略)を有するドット印字ヘッド41と、ドット印字ヘッド41と対向する位置に配置されたプラテンプレート42と、インクリボン43(図5に鎖線で示す)と、インクリボン43をドット印字ヘッド41へ供給するとともに、印字ヘッド41上を通過したインクリボン43を巻き取るインクリボンカセット44と、ドット印字ヘッド41とプラテンプレート42との間に固定され且つドット印字ヘッド41とプラテンプレート42との間に用紙Sを案内するペーパーガイド部45とを備えたものである。本実施形態では、ドット印字ヘッド41、インクリボン43及びインクリボンカセット44をユニット化し、このユニット化したヘッドユニットUを筐体Cに対して着脱可能に構成している。
【0033】
ドット印字ヘッド41は、図5乃至図11等に示すように、用紙Sの幅方向(換言すれば用紙Sの搬送方向と直交する方向)に沿って平行移動可能なヘッド本体41bと、このヘッド本体41bに単列又はマトリクス状に配置された複数(本実施形態では例えば1列9本)のドットピンとを備え、用紙Sの裏面Sbに印字すべき文字や記号等に応じて選択された所定のドットピンがヘッド本体41bの先端部から用紙Sに対して近付く方向に突出し得るように構成している。すなわち、各ドットピンは用紙Sに対して接離する方向に突没動作可能なものである。各ドットピンの突没動作等は裏面プリント制御部(図示省略)によって制御される。なお、このドット印字ヘッド41は用紙Sの幅方向に沿って平行移動可能に構成されている。本実施形態では、ドット印字ヘッド41を用紙Sの幅方向に沿って平行移動可能に支持する平行移動支持機構46を、軸方向を用紙Sの幅方向と同一方向に設定したスライド軸461と、ヘッド本体41bを支持した状態でこのスライド軸461に沿って移動可能なスライダ462とから構成している(図5参照)。スライド軸461の両端部はベース体47に固定している。このベース体47は、平行移動支持機構46を介してドット印字ヘッド41を支持するとともに、インクリボンカセット44を着脱可能に保持するものである。
【0034】
インクリボン43は、ベースフィルムに例えばブラックのインクを塗布したものである。インクリボンカセット44は、内部に図示しない供給側リボンコア及び巻取側リボンコアを設けたボディ部441と、このボディ部441の左右両端部からそれぞれ上方に延出し且つボディ部441の内部と連通する内部をインクリボン43の搬送経路として機能させている供給側リボン搬送部442及び巻取側リボン搬送部443とを備えたものである。このようなインクリボンカセット44をベース体47に取り付けると、供給側リボン搬送部442と巻取側リボン搬送部443との間にドット印字ヘッド41が位置付けられ、インクリボン43はドット印字ヘッド41の先端部上を通過(摺動走行)し得るように搬送される。具体的にこのインクリボン43は、ボディ部441内の供給側リボンコアから供給側リボン搬送部442の内部を通過して当該供給側リボン搬送部442の上端部から供給された後、ドット印字ヘッド41の先端部上を通過する。そして用紙Sがこのインクリボン43の上方を通過した際にドットピンを突出させてインクリボン43を押圧し、用紙Sの裏面Sbにインクを付着させることによって文字や記号等の付帯情報を印字することができる。ドット印字ヘッド41の先端部上を通過したインクリボン43は、巻取側リボン搬送部443の上端部から当該巻取側リボン搬送部443の内部を通過してボディ部441内の巻取側リボンコイルに巻き取られる。本実施形態では無端環状のインクリボン43を適用しており、インクリボンカセット44は、巻取側リボンコイルにより巻き取った無端環状のインクリボン43を供給側リボンコアへ送り、当該インクリボン43を再度ドット印字ヘッド41へ供給してドット印字ヘッド41上に対面させ得るように構成されている。つまり、インクリボン43はインクが無くなる又はドットプリントの濃度(裏面印刷結果)が薄くなるまで繰り返し使用されるものである。なお、本実施形態では、インクリボン43のテンション調節を行うことが可能(具体的には巻取側リボンコアを回転させることが可能)な調整つまみ444をインクリボンカセット44のボディ部441に設けている。なお、この調整つまみ444は、インクリボンカセット44をユニットUにセットした際にインクリボン43の弛みを取るためのものである。
【0035】
ヘッドユニットUは、ドット印字ヘッド41をベース体47に支持させるとともに、インクリボンカセット44をベース体47に対して着脱可能に取り付け、且つドット印字ヘッド41を前方及び上方(図5における左方及び上方)に露出させた概略直方体状をなすユニット本体U1と、このユニット本体U1の両側面及び背面を被覆し得るホルダU2とを組み付けたものである。ホルダU2は、左右一対のホルダ側壁部U21と、これらホルダ側壁部U21の後端部同士を接続するホルダ後壁部U22とを一体に備えたものである。本実施形態では、このホルダU2を例えば一枚の鋼板にプレス加工等を施すことによって成形している。各ホルダ側壁部U21及びホルダ後壁部U22にそれぞれヘッドユニットUの他の部位よりも上方へ突出させた突部U2tを設けている。これら突部U2tは各壁部(ホルダ側壁部U21、ホルダ後壁部U22)と一体に形成されたものである。本実施形態では、各ホルダ側壁部U21に設けた突部U2t同士を結ぶ仮想直線上にドット印字ヘッド41(より具体的にはヘッド本体41b)を位置付けている。すなわち、このホルダU2は、3つの突部U2tのうち2つの突部U2tをドット印字ヘッド41(より具体的にはヘッド本体41b)を挟む位置に設けている。また、残り1つの突部U2t(後壁部に設けた突部U2t)の位置は、ヘッドユニットUの幅方向中心部から左右何れかに寄った位置に設定されている。ホルダU2は、図6に示すように、ホルダ後壁部U22をベース体47にあてがった状態でビスV1によってユニット本体U1に固定している。なお、ユニット本体U1に対するホルダU2の取付高さ位置を調整可能に構成することにより突部U2tの高さ位置を調整可能に設定することができる。具体的な態様としては、例えば、ベース体47に、ビスV1の取付穴(ビス穴)を高さ方向に所定ピッチ毎に設け、ビスV1の取付高さ位置をこれらビス孔から選択して適宜のビス孔の位置に決めることによって、ユニット本体U1に対するホルダU2の取付高さ位置を調整可能に構成し、突部U2tの高さ位置を調整できるようにした態様が挙げられる。また、本実施形態におけるヘッドユニットUは、他の部分よりも側方に突出させた側方突出部U2sを有する(図5、図12参照)。この側方突出部U2sの機能については後述する。
【0036】
このヘッドユニットUは、筐体Cに装着した際にドット印字ヘッド41を上方に向けた起立姿勢(図7等参照)を取る。本実施形態の昇華型プリンタ1は、筐体C内に装着したヘッドユニットUを筐体C外へ持ち出し、作業者や治具(ジグ)によるヘッドユニットU単位又はヘッドユニットUを構成する部品(例えばインクリボンカセット44(インクリボン43含む)やドット印字ヘッド41)単位の交換やメンテナンス作業を終えた後に、新品又はメンテナンス済みのヘッドユニットUを筐体C内へ運び入れるヘッドユニット搬出入機構8(図12及び図13参照)を備えている。このヘッドユニット搬出入機構8によって筐体C外に持ち出されたヘッドユニットU、換言すれば、筐体C内へ運び入れる前のヘッドユニットUは、ドット印字ヘッド41を横たわらせた倒伏姿勢(図13参照)を取り、交換作業及びメンテナンス作業をスムーズに行えるようにしている。ヘッドユニット搬出入機構8は、複数のリンクアーム等から構成され、筐体Cのうち排紙部5(排紙口5)の下方であって且つ排紙方向と同一方向に開口するヘッドユニット搬出入口C1内に収まる折畳状態(図2、図12参照)と、ヘッドユニット搬出入口C1から筐体C外に向かって伸びた(引き出された)展開状態(図13参照)との間で変更可能なものである。
【0037】
そして、図9乃至図11に示すように、ヘッドユニットUをヘッドユニット搬出入機構8によって筐体C内に装着した際に、ホルダU2に設けた突部U2tがヘッドユニットUにおける他の部分よりも優先してペーパーガイド部45に当たるように設定されている。
【0038】
ペーパーガイド部45は、筐体Cのうちヘッドユニット搬出入口C1の奥方側(反排紙口5側)に図示しないビス等によって固定されたものであり、上述したようにドット印字ヘッド41とプラテンプレート42との間に用紙Sを案内する機能を有し、下流側搬送機構62の機能の一部を担っている(図1参照)。このペーパーガイド部45は、図7に示すように、筐体C内に装着したヘッドユニットUにおけるドット印字ヘッド41とプラテンプレート42との間に位置付けられるペーパーガイド本体板451と、ペーパーガイド本体板451の前端部(排紙口側の端部)から斜め下方に延びる前板452と、ペーパーガイド本体板451の後端部から下方に延びる後板453とを備えたものである。本実施形態では、このペーパーガイド部45を例えば一枚の板金にプレス又は折り曲げ加工等を施すことによって形成している。
【0039】
ペーパーガイド部45は、ヘッドユニットUの幅寸法よりも大きい幅寸法を有するものであり、ペーパーガイド本体板451及び前板452に亘る領域においてドット印字ヘッド41と重なり得る部分に、ヘッドユニットUを筐体C内に装着した際にドット印字ヘッド41との干渉を回避するとともに当該ドット印字ヘッド41を上方に露出させ得る所定寸法の開口部45Kを形成している(図7乃至図9、図11参照)。本実施形態では、この開口部45Kの開口寸法のうち少なくとも幅寸法(用紙Sの搬送方向と直交する方向の寸法)を、ドットプリント処理時における用紙Sの幅方向に沿ったドット印字ヘッド41の移動可能距離(本実施形態では平行移動支持機構46を構成するスライド軸461の長手寸法と略同じ距離)よりも大きく設定している。そして、ペーパーガイド本体板451における上向面のうち開口部45Kを挟んだ位置にスペーサ45Sを固定している。
【0040】
プラテンプレート42は、図7乃至図9等に示すように、ドット印字ヘッド41との間で用紙Sを挟み得るドットプリント処理可能位置(P)(図7及び図8参照)と、ドット印字ヘッド41との間で用紙Sを挟み得ない位置に退避させた退避位置(Q)(図9参照)との間で移動可能なものである。本実施形態の昇華型プリンタ1は、ドットプリント処理を行う場合にのみプラテンプレート42をドットプリント処理可能位置(P)に位置付け、ドットプリント処理を行わない場合にはプラテンプレート42を退避位置(Q)に位置付けるように設定している。プラテンプレート42は、ドットプリント処理時にドット印字ヘッド41との間で用紙Sを直接挟むプレート本体421と、プレート本体421の前端部(排紙口側の端部)から上方に延びる起立板422と、プレート本体421の後端部から斜め後方に延びる傾斜板423とを備えたものである。本実施形態では、このプラテンプレート42を例えば一枚の鋼板にプレス加工又は折り曲げ加工等を施すことによって形成している。プラテンプレート42の幅寸法は、ペーパーガイド部45に形成した開口部45Kの開口幅寸法よりも大きく、特にプレート本体421については、このプラテンプレート42をドットプリント処理可能位置(P)に位置付けた際に上述した各スペーサ45Sに当たるように、その幅寸法をスペーサ45S同士の外法と同じか若しくは大きく設定している(図11参照、なお同図ではスペーサ45Sにパターンを付している)。
【0041】
本実施形態の昇華型プリンタ1では、裏面プリント部4にプラテンプレート42のドットプリント処理可能位置(P)と退避位置(Q)との間で移動させるプラテンプレート移動機構48を備えている。本実施形態では、プラテンプレート移動機構48を、プラテンプレート42の起立板422の前面にあてがった状態でビスV2により起立板422と連結される前壁481a及びこの前壁481aの左右両端を後方に折り曲げた側壁481b(図7及び図10)を一体に有する平面視コの字状のプラテンプレート取付片481と、このプラテンプレート取付片481を水平軸481X回りに回転させる回転片482とによって構成している。
【0042】
本実施形態に係る昇華型プリンタ1は、ドット印字ヘッド41及びプラテンプレート42が共に可動型のものである。すなわち、ドット印字ヘッド41は、ヘッドユニットU単位又はヘッドユニットUの構成部品単位の交換やメンテナンスを行う度にヘッドユニット搬出入機構8により筐体C外へ一旦持ち出されるものであり、プラテンプレート42はドットプリント処理可能位置(P)と退避位置(Q)との間で移動可能なものである。前述した通り、本実施形態の昇華型プリンタ1では、用紙搬送機構6により用紙Sを給紙部2から排紙部5に向かって搬送する過程で、先ず表面プリント部3によって用紙Sの表面Saに昇華プリント処理を施し、その後、裏面プリント部4によって用紙Sの裏面Sbにドットプリント処理を施す。そして、裏面プリント部4でドットプリント処理を施す場合に裏面プリント部4におけるプラテンプレート42を、ドットプリント処理可能位置(P)に位置付ける一方で、ドットプリント処理を施さない場合には退避位置(Q)に退避させて、ドット印字ヘッド41とプラテンプレート42とのギャップを大きく形成するように設定している。これにより、表面プリント部3で昇華プリント処理を終えて裏面プリント部4に向かって搬送される用紙Sをペーパーガイド部45(具体的にはペーパーガイド本体板451の上向面)にガイドさせながらドット印字ヘッド41とプラテンプレート42との間にスムーズに搬送することができる。
【0043】
そして、本実施形態の昇華型プリンタ1は、用紙Sがドット印字ヘッド41とプラテンプレート42との間に位置付けられた状態で裏面プリント制御部から出力されるドットプリント処理を行う旨の指令信号に基づき、プラテンプレート42を退避位置(Q)からドットプリント処理可能位置(P)へ移動させる。この状態、つまりプラテンプレート42をドットプリント処理可能位置(P)に位置付けた状態で、プラテンプレート42とドット印字ヘッド41との隙間であるギャップを、ドットプリント処理に適した規定寸法(例えば用紙の厚み+数μm乃至数百μm)に設定する必要がある。つまり、ドットプリント処理可能位置(P)に位置付けたプラテンプレート42とドット印字ヘッド41とギャップが規定寸法よりも大きければドットプリント処理時に用紙Sが不用意に撓む等して適切なドットプリント処理を施すことができず、プラテンプレート42とドット印字ヘッド41とギャップが規定寸法よりも小さければ用紙Sの搬送を適切に行うことができずに用紙詰まりを招来するという問題が生じ得る。
【0044】
そこで、本実施形態の昇華型プリンタ1では、裏面プリント部4に、筐体C内に装着(セッティング)したヘッドユニットUの一部及びドットプリント処理可能位置(P)に位置付けたプラテンプレート42の一部をそれぞれペーパーガイド部45に直接又は間接的に押し当てることにより、ドット印字ヘッド41及びプラテンプレート42を、これらドット印字ヘッド41とプラテンプレート42との間に用紙Sを挟み得る規定寸法のギャップG(図11参照)を形成する相対位置に位置決めする位置決め手段49を設けている。
【0045】
位置決め手段49は、筐体C内に装着したヘッドユニットUの一部をペーパーガイド部45に直接押し当てることによりペーパーガイド部45に対するヘッドユニットUの相対位置を位置決めするヘッドユニット側位置決め機能と、ドットプリント処理可能位置(P)に位置付けたプラテンプレート42の一部をペーパーガイド部45に間接的に押し当てることによりペーパーガイド部45に対するプラテンプレート42の相対位置を位置決めするプラテンプレート側位置決め機能とを有する。
【0046】
先ず、プラテンプレート側位置決め機能について説明する。本実施形態では、退避位置(Q)からドットプリント処理可能位置(P)に移動させたプラテンプレート42が、ペーパーガイド部45に設けたスペーサ45Sに押し付けられることにより、プラテンプレート42がそれ以上ペーパーガイド部45に近寄る方向へ移動することが防止され、ペーパーガイド部45に対するプラテンプレート42の相対位置を位置決めすることができる。そして、このように位置決めされた状態で、プラテンプレート42(具体的にはプレート本体421の下向面)とペーパーガイド部45(具体的にはペーパーガイド本体板451の上向面)との間には、スペーサ45Sの厚み(高さ寸法)に等しい又はほぼ等しい規定寸法のギャップGが常に形成される。さらに、本実施形態では、ペーパーガイド部45のうち用紙Sを幅方向に挟む位置に左右一対のスペーサ45Sを設けているため、これらのスペーサ45Sにプラテンプレート42を押し当てることにより、用紙Sの幅方向に沿ってプラテンプレート42(具体的にはプレート本体421の下向面)とペーパーガイド部45(具体的にはペーパーガイド本体板451の上向面)との間に均一な規定寸法のギャップGが形成される。
【0047】
一方、ヘッドユニット側位置決め機能については、次の通りである。本実施形態では、ヘッドユニットUを筐体C内へ装着した際、ヘッドユニットUのうちホルダU2に設けた3つの突部U2tがヘッドユニットUの他の部位よりも優先してペーパーガイド部45(具体的にはペーパーガイド本体板451の下向面)に押し当たることにより、ヘッドユニットUがさらにペーパーガイド部45に近寄る方向(上方)へ移動することが防止され、ペーパーガイド部45に対するヘッドユニットUの相対位置を位置決めすることができる。その結果、ヘッドユニットUに搭載されているドット印字ヘッド41とペーパーガイド部45との相対位置も位置決めすることができる。なお、本実施形態では、ヘッドユニットUの突部U2tをペーパーガイド部45に押し付ける方向に付勢するヘッドユニット付勢手段9を筐体C内に設けている(図12参照)。
【0048】
ヘッドユニット付勢手段9は、一端部を筐体Cのうちヘッドユニット搬出入口C1の奥方側に固定した固定片91に取り付けた例えばコイルバネ又はガススプリング等の弾性部材からなる付勢部材92と、この付勢部材92の他端部に上端部を取り付けて下端部にヘッドユニットUに設けた側方突出部U2s(図5及び図12参照)が引っ掛かり得る引っ掛け部93aを有する回動可能なレバー部材93とから構成される。なお、ヘッドユニット搬出入口C1は、通常使用時にはカバー部材C2によって蓋封されており、ヘッドユニットUの交換作業等を行う場合にカバー部材C2を適宜の手段で開放位置へ移動させることによって当該ヘッドユニット搬出入口C1は前方(排紙方向)側に開放される。ヘッドユニット付勢手段9を構成するレバー部材93は、付勢部材92により引っ掛け部93aを上方へ移動させる方向に付勢されている。そして、ヘッドユニット搬出入機構8を展開状態から折畳状態へ変更させてヘッドユニットUを筐体C外から筐体C内へ運ぶ過程で、ヘッドユニットUの側方突出部U2sがレバー部材93の下端部に当たり、さらにヘッドユニットUを筐体C内へ運ぶ操作力に基づいて側方突出部U2sがレバー部材93を付勢部材92によって付勢される方向とは逆の反対へ移動させると、この側方突出部U2sがレバー部材93の引っ掛け部93aに引っ掛かる。この状態で、ヘッドユニットUを筐体C内へ運ぶ操作力を停止又は軽減すると、付勢部材92の付勢力によりレバー部材93が引っ掛け部93aにヘッドユニットUの側方突出部U2sを引っ掛けた状態でこの引っ掛け部93aを上方へ移動させる方向に回転する。その結果、ヘッドユニットUは、ホルダU2に設けた各突部U2tがペーパーガイド部45に圧接する位置まで上方へ移動する。本実施形態では、ヘッドユニットUに設けた3つの突部U2tのうち2つの突部U2tを、ドット印字ヘッド41を挟む位置であって且つドット印字ヘッド41を通る直線上に設けているため、この2つの突部U2tがペーパーガイド部45に当たることによって、ドット印字ヘッド41の左右のバランスがとれた状態となる。このようにして、ペーパーガイド部45に突部U2tを当てることによって筐体C内におけるヘッドユニットUの取付位置を位置決めすることができる。なお、ヘッドユニット付勢手段9を、ヘッドユニットUに設けた左右一対の側方突出部U2sに対応させて対にして筐体C内に設けている。また、本実施形態では、ホルダU2をヘッドユニット搬出入機構8のうち所定箇所に取り付けてあり、ホルダU2の側方突出部U2sがヘッドユニット付勢手段9によって上方へ付勢されることにより、ヘッドユニット搬出入機構8は自動的に収納状態へと移動する。
【0049】
位置決め手段49は、以上のように、プラテンプレート側位置決め機能及びヘッドユニット側位置決め機能を発揮することにより、プラテンプレート42とドット印字ヘッド41との間の規定寸法のギャップGを常に一定に保つことが可能なものである。さらに詳述すると、ヘッドユニットUを筐体C内に取り付けた状態で、ドット印字ヘッド41がペーパーガイド部45に形成した開口部45Kを介して上方に露出し、ドットプリント処理可能位置(P)に位置付けたプラテンプレート42と直接対面し得る状態となる(図8参照)。この状態において、ドット印字ヘッド41はペーパーガイド部45に対する相対位置が位置決めされており、プラテンプレート42はペーパーガイド部45に対する相対位置が位置決めされているため、筐体Cに固定した共通の部材であるペーパーガイド部45を介してドット印字ヘッド41とプラテンプレート42との相対位置が位置決めされることとなり、ドット印字ヘッド41とプラテンプレート42との間のギャップGは常に一定となる。そして、本実施形態の昇華型プリンタ1では、この位置決め手段49が、ドット印字ヘッド41とプラテンプレート42との間のギャップGをドットプリント処理に適した規定寸法となるようにドット印字ヘッド41とプラテンプレート42との相対位置を位置決めしているものである。そのため、用紙Sをペーパーガイド部45によってドットプリント処理位置(ドット印字ヘッド41に対面する位置)に搬送した状態で、プラテンプレート42を退避位置(Q)からドットプリント処理可能位置(P)へ移動させると、このプラテンプレート42とドット印字ヘッド41との間に用紙Sが挟まれ、ドット印字ヘッド41のドットピンを用紙Sの裏面Sbに押圧することにより、所定の文字や記号等の付帯情報(表面Saプリント部により用紙Sの表面Saに印刷された画像に関する情報)を用紙Sの裏面Sbに印字することができる。
【0050】
本実施形態の昇華型プリンタ1は、裏面プリント部4でドットプリント処理を終えた後、プラテンプレート42をドットプリント処理可能から退避位置(Q)へ移動させて、プラテンプレート42とドット印字ヘッド41との間のギャップを規定寸法よりも大きくした状態で用紙Sを、下流側搬送機構62における排紙ローラ623及び下流側第2ピンチローラ624によって排紙口5側へ搬送してそのまま排紙口5から排出する。なお、本実施形態では、ロール状の用紙Sを裏面プリント部4によるドットプリント処理と同時又はほぼ同時にカッター部7で切断して排紙ローラ623及び下流側第2ピンチローラ624により排紙部(排紙口5)から排出するように設定している。
【0051】
このように、本実施形態に係る昇華型プリンタ1は、裏面プリント部4でドットプリント処理を行わない場合にはプラテンプレート42を退避位置(Q)に位置付けることによりプラテンプレート42とドット印字ヘッド41との間のギャップを大きく形成することによって、プラテンプレート42とドット印字ヘッド41との間に用紙Sを搬送させる処理をスムーズに行うことができ、用紙詰まりを防止することができる。そして、用紙Sをペーパーガイド部45に沿ってドット印字ヘッド41とプラテンプレート42との間に搬送した状態でドットプリント処理を施す場合には、プラテンプレート42を退避位置(Q)からドットプリント処理可能位置(P)へ移動させれば、位置決め手段49により、筐体Cに固定したペーパーガイド部45を基準にしてプラテンプレート42及びドット印字ヘッド41の相対位置を位置決めし、プラテンプレート42とドット印字ヘッド41との間にドットプリント処理に適した規定寸法のギャップGを形成するようにしているため、プラテンプレート42を退避位置(Q)からドットプリント処理可能位置(P)へ移動させる度に、或いはヘッドユニットUを筐体C外から筐体C内へ取り付ける度に、プラテンプレート42とドット印字ヘッド41との相対位置を逐一調整する必要がなく、プラテンプレート42とドット印字ヘッド41との間に適切な規定寸法のギャップGを精度良く再現することができ、裏面プリント部4によるドットプリント処理を適切に行うことができる。
【0052】
特に、本実施形態の昇華型プリンタ1では、ヘッドユニットUに、当該ヘッドユニットUを筐体C内に取り付けた際に他の部分よりも優先してペーパーガイド部45に当たる突部U2tを設け、位置決め手段49が、この突部U2tをペーパーガイド部45に押し当てることによってヘッドユニットUの取付位置を位置決めするように構成しているため、簡単な構成でありながら突部U2tの寸法を精度高く決めておきさえすれば、ペーパーガイド部45に対するヘッドユニットU、ひいてはドット印字ヘッド41の装着位置を適切に位置決めすることができる。
【0053】
さらに、ヘッドユニットUのうち3箇所に突部U2tを設け、ヘッドユニットUを筐体C内に取り付けた際にこれら突部U2tをペーパーガイド部45に押し当てて3点接触させるようにしているため、パーペーガイド部に対するヘッドユニットUの接触状態(取付状態)が安定したものとなり、筐体C内におけるヘッドユニットUのばらつきを防止することができる。特に、3つの突部U2tのうち2つの突部U2tをドット印字ヘッド41を挟む位置に設けているため、ドット印字ヘッド41が左右に傾くことを有効に防止することができる。
【0054】
また、ペーパーガイド部45にプラテンプレート42を直接押し当てた場合、ペーパーガイド部45に沿って搬送される用紙Sが当たり、用紙Sのそれ以上の搬送に制約を受けて用紙詰まりが生じ得るが、ペーパーガイド部45に設けたスペーサ45Sにプラテンプレート42を押し当てることによって、プラテンプレート42とペーパーガイド部45との間に用紙Sが通過し得るギャップを形成するようにしているため、用紙詰まりを防止することができる。
【0055】
また、本実施形態の昇華型プリンタ1では、ペーパーガイド部45に開口部45Kを形成し、ヘッドユニットUを筐体C内に取り付けた際にドット印字ヘッド41がこの開口部45Kを介してドットプリント処理可能位置(P)に位置付けたプラテンプレート42と直接対面し得るように形成しているため、このプラテンプレート42とドット印字ヘッド41との間に用紙Sを挟んだ状態で適切にドットプリント処理を行うことができる。さらに、本実施形態では、開口部45Kを挟んだ位置であって用紙Sの幅寸法よりも大きく離間させた位置にスペーサ45Sを設けているため、これらスペーサ45Sをプラテンプレート42が押し付けることによってペーパーガイド部45に対するプラテンプレート42の安定した押し付け状態を実現することができるとともに、用紙Sの幅方向に沿ったギャップGの寸法にばらつきが生じることを回避することができ、用紙Sの搬送をスムーズに行うことができる。
【0056】
加えて、本実施形態では、ペーパーガイド部45を厚みにばらつきが生じ難い板金から形成しているため、このような板金からなるペーパーガイド部45を基準としてドット印字ヘッド41とプラテンプレート42との相対位置を位置決めすることにより、ドット印字ヘッド41とプラテンプレート42との規定寸法のギャップGを高精高く決めることができる。
【0057】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、上述した実施形態では、ヘッドユニットに設けた突部の数は適宜増減してもよい。また、ペーパーガイド部にヘッドユニットの一部を間接的に押し当てることによってペーパーガイド部に対するヘッドユニットの位置決めを行うようにしても構わない。一方、用紙の搬送に支障がなければプラテンプレートの一部をペーパーガイド部に直接押し当てることによってペーパーガイド部に対するプラテンプレートの位置決めを行うようにしてもよい。
【0058】
また、上述した実施形態ではプラテンプレートが退避位置とドットプリント処理可能位置との間で回転を伴って移動する態様を例示したが、これに限らず、プラテンプレートが退避位置とドットプリント処理可能位置との間で直線移動するものであっても構わない。
【0059】
さらに、上述した実施形態では、用紙の表面に対して表面プリント部により昇華プリント処理を施した後に、用紙の裏面に対して裏面プリント部によりドットプリント処理を施す昇華型プリンタを例示したが、用紙の裏面に対して裏面プリント部によりドットプリント処理を施した後に、用紙の表面に対して表面プリント部により昇華プリント処理を施す昇華型プリンタであっても構わない。
【0060】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0061】
1…昇華型プリンタ
3…表面プリント部
4…裏面プリント部
41…ドット印字ヘッド
42…プラテンプレート
(P)…ドットプリント処理可能位置
(Q)…退避位置
45…ペーパーガイド部
45S…スペーサ
45K…開口部
49…位置決め手段
C…筐体
G…規定寸法のギャップ
S…用紙
U…ヘッドユニット
U2t…突部
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙の表面に対して昇華プリント処理を行い、裏面に対してドットプリント処理を行う昇華型プリンタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、サーマルヘッドでインクリボンに熱を加えてインクを昇華させ、例えばポリエステル系の樹脂でコーティングした用紙の表面にインクを付着させる昇華型プリンタが知られている。この種の昇華型プリンタは、サーマルヘッドに加える熱を制御することで印字濃度を細かく変化させることができ、他のプリント方式では困難な連続階調の表現が可能である。
【0003】
一方で、用紙の表面に印刷した内容に関する情報等の付随的な情報を用紙の裏面にドットインパクトプリント(以下、「ドットプリント」と称す)処理によって印刷するように構成されたプリンタも考えられている(特許文献1参照)。周知のように、ドットプリント処理は、縦横に並べられた複数のドットピンを備えたドット印字ヘッドを用紙の裏面側に位置付け、インクリボンを介してドットピンで用紙の裏面を叩き付けて、その圧力で用紙の裏面にインクを付着することによって印字を行う処理である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−90805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した昇華プリント方式によって用紙の表面に昇華プリント処理を施すことが可能な昇華型プリンタとして、ドットプリント方式により用紙の裏面にドットプリント処理を施す裏面プリント機能を備えた新たなタイプの昇華型プリンタの商品化に向けて本発明者らが試行を重ねたところ、以下の問題が見受けられた。
【0006】
すなわち、用紙の裏面にドットプリント処理を施す際に、ドット印字ヘッドとプラテンプレートとの間に用紙を挟む必要があるが、ドット印字ヘッドとプラテンプレートとのギャップが規定寸法(例えば用紙の厚み+数μm乃至数百μm)よりも大き過ぎるとドットプリント処理時に用紙の不要な撓み等に起因して適切なドットプリント処理を行うことができない。一方で、ドット印字ヘッドとプラテンプレートとのギャップを常に規定寸法に維持した状態では、用紙の厚みよりも僅か数μm乃至数百μmだけ大きく設定されたギャップに用紙をスムーズに搬送することは極めて困難であり、用紙詰まりの原因にもなる。
【0007】
そこで、本発明者らは、ドットプリント処理を行う場合だけプラテンプレートをドット印字ヘッドと対面する位置に位置付け、ドットプリント処理を行わない場合にはプラテンプレートをドット印字ヘッドから退避する方向に移動させておくことにより、用紙の搬送をスムーズに行える態様を案出した。
【0008】
しかしながら、ドットプリント処理を行う度にプラテンプレートを移動させる態様であれば、ドットプリント処理毎にドット印字ヘッドとプラテンプレートとのギャップが変化するおそれがあり、このようなギャップの変化によってドットプリントの出来上がり(品質)にばらつきが生じるという問題が考えられた。
【0009】
さらに、ドット印字ヘッドのメンテナンスや交換を行えるようにドット印字ヘッドをユニット化して昇華型プリンタの筐体に対し着脱可能なものとした場合、ドット印字ヘッドの交換又はメンテナンス毎にやはりドット印字ヘッドとプラテンローラとのギャップが変化するおそれがあり、ドットプリントの質にばらつきが生じ得ると考えられた。
【0010】
本発明は、このような問題点に鑑み、昇華プリント処理によって表面印刷を行うとともに、ドットプリント処理によって裏面印刷を行う昇華型プリンタにおいて、ドットプリント処理に供する用紙の搬送をスムーズに行うことができるとともに、筐体に対して着脱可能なドット印字ヘッドと筐体内で移動するプラテンプレートとのギャップをドットプリント処理に適した規定寸法に精度高く保つことができる昇華型プリンタを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち本発明の昇華型プリンタは、用紙の表面に昇華プリント処理を行う表面プリント部を筐体内に設けるとともに、筐体内に、用紙の裏面にドットプリント処理を行う裏面プリント部を更に設けたものである。そして、本発明の昇華型プリンタは、裏面プリント部を、少なくともドット印字ヘッドを有し且つ筐体に着脱可能に取り付けられるヘッドユニットと、ドット印字ヘッドとの間でギャップを隔てて設けられ且つドット印字ヘッドとの間で用紙を挟み得るギャップを形成したドットプリント処理可能位置と当該ドットプリント処理可能位置と比較してドット印字ヘッドとのギャップが大きく形成される退避位置との間で移動可能なプラテンプレートと、筐体においてドット印字ヘッドとプラテンプレートとの間に固定され且つこれらドット印字ヘッドとプラテンプレートとの間の位置に用紙を導くペーパーガイド部と、筐体に取り付けたヘッドユニットの一部及びドットプリント処理可能位置に位置付けたプラテンプレートの一部をそれぞれペーパーガイド部に直接又は間接的に押し当てることにより、ドット印字ヘッド及びプラテンプレートを、これらドット印字ヘッドとプラテンプレートとの間に用紙を挟み得る規定寸法のギャップを形成する相対位置に位置決めする位置決め手段とを用いて構成していることを特徴とする。
【0012】
ここで、「ヘッドユニットの一部をペーパーガイド部に直接又は間接的に押し当てる」とは、「ヘッドユニットの一部をペーパーガイド部に直接押し当てる」態様、「ヘッドユニットの一部をペーパーガイド部にスペーサ等の適宜の部材を介して間接的に押し当てる」態様、これら何れを含む概念であり、「プラテンプレートの一部をペーパーガイド部に直接又は間接的に押し当てる」とは、「プラテンプレートの一部をペーパーガイド部に直接押し当てる」態様、「プラテンプレートの一部をペーパーガイド部にスペーサ等の適宜の部材を介して間接的に押し当てる」態様、これら何れを含む概念である。
【0013】
このような昇華型プリンタであれば、裏面プリント部でドットプリント処理を行わない場合にはプラテンプレートを退避位置に位置付けることによりプラテンプレートとドット印字ヘッドとの間のギャップを大きく形成することによって、プラテンプレートとドット印字ヘッドとの間に用紙を搬送させる処理をスムーズに行うことができ、用紙詰まりを防止することができる。そして、用紙をペーパーガイド部に沿ってドット印字ヘッドとプラテンプレートとの間に案内させた状態でドットプリント処理を施す場合には、プラテンプレートを退避位置からドットプリント処理可能位置へ移動させればよい。本実施形態の昇華型プリンタにおける裏面プリント部は、退避姿勢からドットプリント処理可能位置に移動させたプラテンプレートを、当該プラテンプレートの一部を筐体に固定したペーパーガイド部に直接又は間接的に押し当てることによって、ペーパーガイド部に対する相対位置を位置決めする位置決め手段を備えており、この位置決め手段は、さらに、ヘッドユニットを筐体内に取り付けた際にヘッドユニットの一部を筐体に固定したペーパーガイド部に押し当てることによって、ペーパーガイド部に対するドット印字ヘッドの相対位置を位置決めするものでもある。したがって、本発明の昇華型プリンタは、筐体に着脱可能に取り付けたヘッドユニットに搭載されているドット印字ヘッドの交換やメンテナンスを行えるようにしたものでありながら、位置決め手段により、筐体に固定したペーパーガイド部を基準にしてプラテンプレート及びドット印字ヘッドの相対位置を位置決めし、さらに、プラテンプレートとドット印字ヘッドとの間にドットプリント処理に適した規定寸法のギャップ(例えば用紙の厚み+数μm乃至数百μm)を形成するようにしたものである。このため、本発明の昇華型プリンタでは、プラテンプレートを退避位置からドットプリント処理可能位置へ移動させる度に、或いはヘッドユニットを筐体外から筐体内へ取り付ける度に、プラテンプレートとドット印字ヘッドとの相対位置を逐一調整することなく、ドットプリント処理を行う度にプラテンプレートとドット印字ヘッドとの間に適切なギャップを精度良く再現することができ、裏面プリント部によるドットプリント処理を適切に行うことができる。
【0014】
このような昇華型プリンタにおいて、簡易な構成でペーパーガイド部に対するヘッドユニット、ひいてはドット印字ヘッドの装着位置を適切に位置決めすることができるようにするには、ヘッドユニットを、当該ヘッドユニットを筐体に取り付けた際に他の部分よりも優先してペーパーガイド部に当たる突部を備えたものとし、位置決め手段を、この突部をペーパーガイド部に押し当てることによってヘッドユニットの取付位置を位置決めするように構成すればよい。このようなものであれば、ヘッドユニットの突部の寸法さえ精度高く決めておけば、ペーパーガイド部に対するヘッドユニットの相対位置を位置決めすることができる。
【0015】
さらに、ペーパーガイド部に対するヘッドユニットの取付状態をより安定したものとするとともにパーペーガイド部に対するヘッドユニットの適切な相対位置を位置決めすることができるようにするには、ヘッドユニットに3箇所の突部を設け、ヘッドユニットを筐体に取り付けた際にこれらの突部をペーパーガイド部に押し当てて3点接触させるようにすればよい。特に、3つの突部のうち2つの突部をドット印字ヘッドを挟む位置に設ければ、ドット印字ヘッドが左右に傾くことを防止し、裏面プリント部によるドットプリント処理にばらつきが生じ難いものとなる。
【0016】
また、ペーパーガイド部にプラテンプレートを直接押し当てた場合、ペーパーガイド部に沿って搬送される用紙がプラテンプレートに当たり、用紙のそれ以上の搬送に制約を受けて用紙詰まりが生じ得るが、本発明の昇華型プリンタでは、ペーパーガイド部に設けたスペーサにプラテンプレートを押し当てる構成を採用することができ、それにより、プラテンプレートとペーパーガイド部との間に用紙が通過し得るギャップを形成するようにしているため、上述のような用紙詰まりを防止することができる。
【0017】
また、本発明の昇華型プリンタでは、ペーパーガイド部において、ヘッドユニットを筐体に取り付けた際にドット印字ヘッドがドットプリント処理可能位置に位置付けたプラテンプレートと直接対面し得るように開口部を形成し、この開口部を挟んだ位置であって用紙の幅寸法よりも広く離間させた位置にスペーサを設けた構成とすることができる。このような構成にすれば、プラテンプレートとドット印字ヘッドとの間に用紙を挟んだ状態で開口部を通じて対面するドット印字ヘッドとプラテンプレートとによって適切にドットプリント処理を行うことができるとともに、これらスペーサをプラテンプレートが押し付けることによってペーパーガイド部に対するプラテンプレートの安定した押し付け状態を実現することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の昇華型プリンタによれば、ドットプリント処理に供する用紙の搬送をスムーズに行うことができるとともに、筐体に対して着脱可能としながらもドット印字ヘッドと筐体内で移動するプラテンプレートとのギャップをドットプリント処理に適した規定寸法に精度良く保つことができ、裏面プリントの品質をも向上させることが可能な昇華型プリンタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係る昇華型プリンタの概略構成図。
【図2】同実施形態に係る昇華型プリンタの全体斜視図。
【図3】同実施形態に係る昇華型プリンタによってプリントされた用紙の表面側から見た図。
【図4】同実施形態に係る昇華型プリンタによってプリントされた用紙の裏面側から見た図。
【図5】同実施形態におけるヘッドユニットの全体概略図。
【図6】同実施形態においてインクリボンカセットを取り外した状態のヘッドユニットを背面側から見た全体概略図。
【図7】本実施形態におけるドット印字ヘッドの幅方向ほぼ中央部分の断面に相当する模式図で示す位置決め手段の作用説明図。
【図8】図7の要部拡大図。
【図9】同実施形態においてプラテンプレートを退避位置に位置付けた状態を図7に対応して示す図。
【図10】同実施形態における位置決め手段の作用説明図であって、図7よりも幅方向中心部から偏位した位置における模式図。
【図11】同実施形態において排紙口側から見た位置決め手段の作用説明図。
【図12】同実施形態におけるヘッドユニット付勢手段の作用説明図。
【図13】同実施形態においてヘッドユニット搬出入機構を引き出した状態を図2に対応して示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0021】
本実施形態に係る昇華型プリンタ1は、図1乃至図4に示すように、用紙Sの表面Saに対して昇華プリント(図3参照)処理を行うとともに、用紙Sの裏面Sbに対してドットプリント(図4参照)処理を行うものである。この昇華型プリンタ1は、図1に示すように、給紙部2と、給紙部2から供給された用紙Sの表面Saに対して昇華プリント処理を施す表面プリント部3と、用紙Sの裏面Sbに対してドットプリント処理を施す裏面プリント部4と、排紙部5(具体的には図2に示す排紙口5)とを備えたものである。本実施形態では、表面プリント部3を給紙部2側に設け、裏面プリント部4を排紙部5側に設けている。すなわち、本実施形態の昇華型プリンタ1は、先ず表面プリント部3によって用紙Sの表面Saに昇華プリント処理を行い、その後に裏面プリント部4によって用紙Sの裏面Sbにドットプリント処理を行うものである。なお、この昇華型プリンタ1は、図2に示すように、共通の筐体C内に、給紙部2、表面プリント部3、裏面プリント部4、排紙部5、及び後述する用紙搬送機構6を設けている。
【0022】
給紙部2は、ロール状に巻回した用紙Sを収容し得るものである。本実施形態に係る昇華型プリンタ1は、この給紙部2にロール状に収容された用紙Sを、給紙部2と排紙部5との間に形成される搬送経路に沿って搬送する用紙搬送機構6を備えている。なお、以下の説明における「上流側」とは「給紙部側」を意味し、「下流側」とは「排紙部側」を意味する。
【0023】
用紙搬送機構6は、用紙Sを主として給紙部2から表面プリント部3の下流側に向かって搬送する上流側搬送機構61と、用紙Sを主として表面プリント部3の下流側から排紙部5に向かって搬送する下流側搬送機構62とを備えている。
【0024】
上流側搬送機構61は、給紙部2側から排紙部5側に向かって順に配置された給紙ローラ611と上流側第1ピンチローラ612との組、上流側送りローラ613と上流側第2ピンチローラ614との組を用いて構成したものである。給紙ローラ611と上流側第1ピンチローラ612との組を表面プリント部3よりも上流側に配置し、上流側送りローラ613と上流側第2ピンチローラ614との組を表面プリント部3よりも下流側に配置している。なお、図1では、給紙ローラ611よりもさらに上流側に給紙ガイドローラ615を配置した態様を示している。
【0025】
また、下流側搬送機構62は、表面プリント部3側から排紙部5側に向かって順に配置された下流側送りローラ621と下流側第1ピンチローラ622との組、及び排紙ローラ623と下流側第2ピンチローラ624との組を用いて構成したものである。下流側送りローラ621と下流側第1ピンチローラ622との組を裏面プリント部4よりも上流側に配置し、排紙ローラ623及び下流側第2ピンチローラ624との組を裏面プリント部4よりも下流側に配置している。また、本実施形態の昇華型プリンタ1は、下流側送りローラ621及び下流側第1ピンチローラ622の組と裏面プリント部4との間に用紙Sを切断するカッター部7を設けている。
【0026】
表面プリント部3は、サーマルヘッド31と、このサーマルヘッド31と対向する位置に配置されたプラテンローラ32と、インクリボン33と、インクリボン33をサーマルヘッド31とプラテンローラ32との間に搬送するインクリボン搬送機構34と、サーマルヘッド31の作動等を制御する表面プリント制御部(図示省略)とを備えたものである。
【0027】
サーマルヘッド31は、発熱素子(図示省略)を発熱させて用紙Sに印刷を行う周知のものである。本実施形態では、このサーマルヘッド31を、ヘッド駆動モータ(図示省略)により、プラテンローラ32との間で用紙Sを挟み得る位置と挟み得ない位置との間で移動可能に設定している。
【0028】
プラテンローラ32は、サーマルヘッド31との間で用紙Sを挟み得るものであり、回転しながら用紙Sを下流側へ順次搬送する機能を有する。したがって、このプラテンローラ32は前述した上流側搬送機構61の機能の一部を担っている。
【0029】
インクリボン33は、長尺なベースフィルムに例えばイエロー・マゼンタ・シアンの各色のインクを塗布したものである。ベースフィルムに塗布されるイエロー・マゼンタ・シアンの各色のインクは、熱によって昇華する染料を用いて形成されたものである。
【0030】
インクリボン搬送機構34は、未使用のインクリボン33(ベースフィルムにインクが塗布されたもの)を巻回している供給側リボンコア341と、使用済みのインクリボン33(ベースフィルムからインクの一部又は全部が剥離されたもの)を巻き取る巻取側リボンコア342と、供給側リボンコア341から巻き出したインクリボン33をサーマルヘッド31側に案内する供給側リボンガイド343と、サーマルヘッド31を通過した後に用紙Sから剥離したインクリボン33を巻取側リボンコア342側に案内する巻取側リボンガイド344とを備えたものである。供給側リボンコア341及び供給側リボンガイド343はサーマルヘッド31よりも下流側に配置され、巻取側リボンコア342及び巻取側リボンガイド344はサーマルヘッド31よりも上流側に配置される。したがって、供給側リボンコア341に巻回したインクリボン33は、供給側リボンガイド343及び巻取側リボンガイド344により、サーマルヘッド31側に巻き出されて昇華プリント処理に供された後、巻取側リボンコア342に順次巻き取られる。本実施形態では、インクリボン33及びインクリボン搬送機構34をユニット化し、サーマルヘッド31やプラテンローラ32に対して着脱可能に構成している。
【0031】
このような各部から構成される表面プリント部3は、サーマルヘッド31の熱によりイエロー・マゼンタ・シアンの各色インクを昇華させることで用紙Sの表面Saにカラー画像を印刷する(形成する)機能を発揮する。そして、この表面プリント部3は、サーマルヘッド31の温度を調整することにより印刷濃度のレベルを変化させた階調印刷を行うことができ、用紙Sの表面Saに高品質なカラー画像を印刷することが可能である。
【0032】
一方、裏面プリント部4は、図1に示すように、複数のドットピン(図示省略)を有するドット印字ヘッド41と、ドット印字ヘッド41と対向する位置に配置されたプラテンプレート42と、インクリボン43(図5に鎖線で示す)と、インクリボン43をドット印字ヘッド41へ供給するとともに、印字ヘッド41上を通過したインクリボン43を巻き取るインクリボンカセット44と、ドット印字ヘッド41とプラテンプレート42との間に固定され且つドット印字ヘッド41とプラテンプレート42との間に用紙Sを案内するペーパーガイド部45とを備えたものである。本実施形態では、ドット印字ヘッド41、インクリボン43及びインクリボンカセット44をユニット化し、このユニット化したヘッドユニットUを筐体Cに対して着脱可能に構成している。
【0033】
ドット印字ヘッド41は、図5乃至図11等に示すように、用紙Sの幅方向(換言すれば用紙Sの搬送方向と直交する方向)に沿って平行移動可能なヘッド本体41bと、このヘッド本体41bに単列又はマトリクス状に配置された複数(本実施形態では例えば1列9本)のドットピンとを備え、用紙Sの裏面Sbに印字すべき文字や記号等に応じて選択された所定のドットピンがヘッド本体41bの先端部から用紙Sに対して近付く方向に突出し得るように構成している。すなわち、各ドットピンは用紙Sに対して接離する方向に突没動作可能なものである。各ドットピンの突没動作等は裏面プリント制御部(図示省略)によって制御される。なお、このドット印字ヘッド41は用紙Sの幅方向に沿って平行移動可能に構成されている。本実施形態では、ドット印字ヘッド41を用紙Sの幅方向に沿って平行移動可能に支持する平行移動支持機構46を、軸方向を用紙Sの幅方向と同一方向に設定したスライド軸461と、ヘッド本体41bを支持した状態でこのスライド軸461に沿って移動可能なスライダ462とから構成している(図5参照)。スライド軸461の両端部はベース体47に固定している。このベース体47は、平行移動支持機構46を介してドット印字ヘッド41を支持するとともに、インクリボンカセット44を着脱可能に保持するものである。
【0034】
インクリボン43は、ベースフィルムに例えばブラックのインクを塗布したものである。インクリボンカセット44は、内部に図示しない供給側リボンコア及び巻取側リボンコアを設けたボディ部441と、このボディ部441の左右両端部からそれぞれ上方に延出し且つボディ部441の内部と連通する内部をインクリボン43の搬送経路として機能させている供給側リボン搬送部442及び巻取側リボン搬送部443とを備えたものである。このようなインクリボンカセット44をベース体47に取り付けると、供給側リボン搬送部442と巻取側リボン搬送部443との間にドット印字ヘッド41が位置付けられ、インクリボン43はドット印字ヘッド41の先端部上を通過(摺動走行)し得るように搬送される。具体的にこのインクリボン43は、ボディ部441内の供給側リボンコアから供給側リボン搬送部442の内部を通過して当該供給側リボン搬送部442の上端部から供給された後、ドット印字ヘッド41の先端部上を通過する。そして用紙Sがこのインクリボン43の上方を通過した際にドットピンを突出させてインクリボン43を押圧し、用紙Sの裏面Sbにインクを付着させることによって文字や記号等の付帯情報を印字することができる。ドット印字ヘッド41の先端部上を通過したインクリボン43は、巻取側リボン搬送部443の上端部から当該巻取側リボン搬送部443の内部を通過してボディ部441内の巻取側リボンコイルに巻き取られる。本実施形態では無端環状のインクリボン43を適用しており、インクリボンカセット44は、巻取側リボンコイルにより巻き取った無端環状のインクリボン43を供給側リボンコアへ送り、当該インクリボン43を再度ドット印字ヘッド41へ供給してドット印字ヘッド41上に対面させ得るように構成されている。つまり、インクリボン43はインクが無くなる又はドットプリントの濃度(裏面印刷結果)が薄くなるまで繰り返し使用されるものである。なお、本実施形態では、インクリボン43のテンション調節を行うことが可能(具体的には巻取側リボンコアを回転させることが可能)な調整つまみ444をインクリボンカセット44のボディ部441に設けている。なお、この調整つまみ444は、インクリボンカセット44をユニットUにセットした際にインクリボン43の弛みを取るためのものである。
【0035】
ヘッドユニットUは、ドット印字ヘッド41をベース体47に支持させるとともに、インクリボンカセット44をベース体47に対して着脱可能に取り付け、且つドット印字ヘッド41を前方及び上方(図5における左方及び上方)に露出させた概略直方体状をなすユニット本体U1と、このユニット本体U1の両側面及び背面を被覆し得るホルダU2とを組み付けたものである。ホルダU2は、左右一対のホルダ側壁部U21と、これらホルダ側壁部U21の後端部同士を接続するホルダ後壁部U22とを一体に備えたものである。本実施形態では、このホルダU2を例えば一枚の鋼板にプレス加工等を施すことによって成形している。各ホルダ側壁部U21及びホルダ後壁部U22にそれぞれヘッドユニットUの他の部位よりも上方へ突出させた突部U2tを設けている。これら突部U2tは各壁部(ホルダ側壁部U21、ホルダ後壁部U22)と一体に形成されたものである。本実施形態では、各ホルダ側壁部U21に設けた突部U2t同士を結ぶ仮想直線上にドット印字ヘッド41(より具体的にはヘッド本体41b)を位置付けている。すなわち、このホルダU2は、3つの突部U2tのうち2つの突部U2tをドット印字ヘッド41(より具体的にはヘッド本体41b)を挟む位置に設けている。また、残り1つの突部U2t(後壁部に設けた突部U2t)の位置は、ヘッドユニットUの幅方向中心部から左右何れかに寄った位置に設定されている。ホルダU2は、図6に示すように、ホルダ後壁部U22をベース体47にあてがった状態でビスV1によってユニット本体U1に固定している。なお、ユニット本体U1に対するホルダU2の取付高さ位置を調整可能に構成することにより突部U2tの高さ位置を調整可能に設定することができる。具体的な態様としては、例えば、ベース体47に、ビスV1の取付穴(ビス穴)を高さ方向に所定ピッチ毎に設け、ビスV1の取付高さ位置をこれらビス孔から選択して適宜のビス孔の位置に決めることによって、ユニット本体U1に対するホルダU2の取付高さ位置を調整可能に構成し、突部U2tの高さ位置を調整できるようにした態様が挙げられる。また、本実施形態におけるヘッドユニットUは、他の部分よりも側方に突出させた側方突出部U2sを有する(図5、図12参照)。この側方突出部U2sの機能については後述する。
【0036】
このヘッドユニットUは、筐体Cに装着した際にドット印字ヘッド41を上方に向けた起立姿勢(図7等参照)を取る。本実施形態の昇華型プリンタ1は、筐体C内に装着したヘッドユニットUを筐体C外へ持ち出し、作業者や治具(ジグ)によるヘッドユニットU単位又はヘッドユニットUを構成する部品(例えばインクリボンカセット44(インクリボン43含む)やドット印字ヘッド41)単位の交換やメンテナンス作業を終えた後に、新品又はメンテナンス済みのヘッドユニットUを筐体C内へ運び入れるヘッドユニット搬出入機構8(図12及び図13参照)を備えている。このヘッドユニット搬出入機構8によって筐体C外に持ち出されたヘッドユニットU、換言すれば、筐体C内へ運び入れる前のヘッドユニットUは、ドット印字ヘッド41を横たわらせた倒伏姿勢(図13参照)を取り、交換作業及びメンテナンス作業をスムーズに行えるようにしている。ヘッドユニット搬出入機構8は、複数のリンクアーム等から構成され、筐体Cのうち排紙部5(排紙口5)の下方であって且つ排紙方向と同一方向に開口するヘッドユニット搬出入口C1内に収まる折畳状態(図2、図12参照)と、ヘッドユニット搬出入口C1から筐体C外に向かって伸びた(引き出された)展開状態(図13参照)との間で変更可能なものである。
【0037】
そして、図9乃至図11に示すように、ヘッドユニットUをヘッドユニット搬出入機構8によって筐体C内に装着した際に、ホルダU2に設けた突部U2tがヘッドユニットUにおける他の部分よりも優先してペーパーガイド部45に当たるように設定されている。
【0038】
ペーパーガイド部45は、筐体Cのうちヘッドユニット搬出入口C1の奥方側(反排紙口5側)に図示しないビス等によって固定されたものであり、上述したようにドット印字ヘッド41とプラテンプレート42との間に用紙Sを案内する機能を有し、下流側搬送機構62の機能の一部を担っている(図1参照)。このペーパーガイド部45は、図7に示すように、筐体C内に装着したヘッドユニットUにおけるドット印字ヘッド41とプラテンプレート42との間に位置付けられるペーパーガイド本体板451と、ペーパーガイド本体板451の前端部(排紙口側の端部)から斜め下方に延びる前板452と、ペーパーガイド本体板451の後端部から下方に延びる後板453とを備えたものである。本実施形態では、このペーパーガイド部45を例えば一枚の板金にプレス又は折り曲げ加工等を施すことによって形成している。
【0039】
ペーパーガイド部45は、ヘッドユニットUの幅寸法よりも大きい幅寸法を有するものであり、ペーパーガイド本体板451及び前板452に亘る領域においてドット印字ヘッド41と重なり得る部分に、ヘッドユニットUを筐体C内に装着した際にドット印字ヘッド41との干渉を回避するとともに当該ドット印字ヘッド41を上方に露出させ得る所定寸法の開口部45Kを形成している(図7乃至図9、図11参照)。本実施形態では、この開口部45Kの開口寸法のうち少なくとも幅寸法(用紙Sの搬送方向と直交する方向の寸法)を、ドットプリント処理時における用紙Sの幅方向に沿ったドット印字ヘッド41の移動可能距離(本実施形態では平行移動支持機構46を構成するスライド軸461の長手寸法と略同じ距離)よりも大きく設定している。そして、ペーパーガイド本体板451における上向面のうち開口部45Kを挟んだ位置にスペーサ45Sを固定している。
【0040】
プラテンプレート42は、図7乃至図9等に示すように、ドット印字ヘッド41との間で用紙Sを挟み得るドットプリント処理可能位置(P)(図7及び図8参照)と、ドット印字ヘッド41との間で用紙Sを挟み得ない位置に退避させた退避位置(Q)(図9参照)との間で移動可能なものである。本実施形態の昇華型プリンタ1は、ドットプリント処理を行う場合にのみプラテンプレート42をドットプリント処理可能位置(P)に位置付け、ドットプリント処理を行わない場合にはプラテンプレート42を退避位置(Q)に位置付けるように設定している。プラテンプレート42は、ドットプリント処理時にドット印字ヘッド41との間で用紙Sを直接挟むプレート本体421と、プレート本体421の前端部(排紙口側の端部)から上方に延びる起立板422と、プレート本体421の後端部から斜め後方に延びる傾斜板423とを備えたものである。本実施形態では、このプラテンプレート42を例えば一枚の鋼板にプレス加工又は折り曲げ加工等を施すことによって形成している。プラテンプレート42の幅寸法は、ペーパーガイド部45に形成した開口部45Kの開口幅寸法よりも大きく、特にプレート本体421については、このプラテンプレート42をドットプリント処理可能位置(P)に位置付けた際に上述した各スペーサ45Sに当たるように、その幅寸法をスペーサ45S同士の外法と同じか若しくは大きく設定している(図11参照、なお同図ではスペーサ45Sにパターンを付している)。
【0041】
本実施形態の昇華型プリンタ1では、裏面プリント部4にプラテンプレート42のドットプリント処理可能位置(P)と退避位置(Q)との間で移動させるプラテンプレート移動機構48を備えている。本実施形態では、プラテンプレート移動機構48を、プラテンプレート42の起立板422の前面にあてがった状態でビスV2により起立板422と連結される前壁481a及びこの前壁481aの左右両端を後方に折り曲げた側壁481b(図7及び図10)を一体に有する平面視コの字状のプラテンプレート取付片481と、このプラテンプレート取付片481を水平軸481X回りに回転させる回転片482とによって構成している。
【0042】
本実施形態に係る昇華型プリンタ1は、ドット印字ヘッド41及びプラテンプレート42が共に可動型のものである。すなわち、ドット印字ヘッド41は、ヘッドユニットU単位又はヘッドユニットUの構成部品単位の交換やメンテナンスを行う度にヘッドユニット搬出入機構8により筐体C外へ一旦持ち出されるものであり、プラテンプレート42はドットプリント処理可能位置(P)と退避位置(Q)との間で移動可能なものである。前述した通り、本実施形態の昇華型プリンタ1では、用紙搬送機構6により用紙Sを給紙部2から排紙部5に向かって搬送する過程で、先ず表面プリント部3によって用紙Sの表面Saに昇華プリント処理を施し、その後、裏面プリント部4によって用紙Sの裏面Sbにドットプリント処理を施す。そして、裏面プリント部4でドットプリント処理を施す場合に裏面プリント部4におけるプラテンプレート42を、ドットプリント処理可能位置(P)に位置付ける一方で、ドットプリント処理を施さない場合には退避位置(Q)に退避させて、ドット印字ヘッド41とプラテンプレート42とのギャップを大きく形成するように設定している。これにより、表面プリント部3で昇華プリント処理を終えて裏面プリント部4に向かって搬送される用紙Sをペーパーガイド部45(具体的にはペーパーガイド本体板451の上向面)にガイドさせながらドット印字ヘッド41とプラテンプレート42との間にスムーズに搬送することができる。
【0043】
そして、本実施形態の昇華型プリンタ1は、用紙Sがドット印字ヘッド41とプラテンプレート42との間に位置付けられた状態で裏面プリント制御部から出力されるドットプリント処理を行う旨の指令信号に基づき、プラテンプレート42を退避位置(Q)からドットプリント処理可能位置(P)へ移動させる。この状態、つまりプラテンプレート42をドットプリント処理可能位置(P)に位置付けた状態で、プラテンプレート42とドット印字ヘッド41との隙間であるギャップを、ドットプリント処理に適した規定寸法(例えば用紙の厚み+数μm乃至数百μm)に設定する必要がある。つまり、ドットプリント処理可能位置(P)に位置付けたプラテンプレート42とドット印字ヘッド41とギャップが規定寸法よりも大きければドットプリント処理時に用紙Sが不用意に撓む等して適切なドットプリント処理を施すことができず、プラテンプレート42とドット印字ヘッド41とギャップが規定寸法よりも小さければ用紙Sの搬送を適切に行うことができずに用紙詰まりを招来するという問題が生じ得る。
【0044】
そこで、本実施形態の昇華型プリンタ1では、裏面プリント部4に、筐体C内に装着(セッティング)したヘッドユニットUの一部及びドットプリント処理可能位置(P)に位置付けたプラテンプレート42の一部をそれぞれペーパーガイド部45に直接又は間接的に押し当てることにより、ドット印字ヘッド41及びプラテンプレート42を、これらドット印字ヘッド41とプラテンプレート42との間に用紙Sを挟み得る規定寸法のギャップG(図11参照)を形成する相対位置に位置決めする位置決め手段49を設けている。
【0045】
位置決め手段49は、筐体C内に装着したヘッドユニットUの一部をペーパーガイド部45に直接押し当てることによりペーパーガイド部45に対するヘッドユニットUの相対位置を位置決めするヘッドユニット側位置決め機能と、ドットプリント処理可能位置(P)に位置付けたプラテンプレート42の一部をペーパーガイド部45に間接的に押し当てることによりペーパーガイド部45に対するプラテンプレート42の相対位置を位置決めするプラテンプレート側位置決め機能とを有する。
【0046】
先ず、プラテンプレート側位置決め機能について説明する。本実施形態では、退避位置(Q)からドットプリント処理可能位置(P)に移動させたプラテンプレート42が、ペーパーガイド部45に設けたスペーサ45Sに押し付けられることにより、プラテンプレート42がそれ以上ペーパーガイド部45に近寄る方向へ移動することが防止され、ペーパーガイド部45に対するプラテンプレート42の相対位置を位置決めすることができる。そして、このように位置決めされた状態で、プラテンプレート42(具体的にはプレート本体421の下向面)とペーパーガイド部45(具体的にはペーパーガイド本体板451の上向面)との間には、スペーサ45Sの厚み(高さ寸法)に等しい又はほぼ等しい規定寸法のギャップGが常に形成される。さらに、本実施形態では、ペーパーガイド部45のうち用紙Sを幅方向に挟む位置に左右一対のスペーサ45Sを設けているため、これらのスペーサ45Sにプラテンプレート42を押し当てることにより、用紙Sの幅方向に沿ってプラテンプレート42(具体的にはプレート本体421の下向面)とペーパーガイド部45(具体的にはペーパーガイド本体板451の上向面)との間に均一な規定寸法のギャップGが形成される。
【0047】
一方、ヘッドユニット側位置決め機能については、次の通りである。本実施形態では、ヘッドユニットUを筐体C内へ装着した際、ヘッドユニットUのうちホルダU2に設けた3つの突部U2tがヘッドユニットUの他の部位よりも優先してペーパーガイド部45(具体的にはペーパーガイド本体板451の下向面)に押し当たることにより、ヘッドユニットUがさらにペーパーガイド部45に近寄る方向(上方)へ移動することが防止され、ペーパーガイド部45に対するヘッドユニットUの相対位置を位置決めすることができる。その結果、ヘッドユニットUに搭載されているドット印字ヘッド41とペーパーガイド部45との相対位置も位置決めすることができる。なお、本実施形態では、ヘッドユニットUの突部U2tをペーパーガイド部45に押し付ける方向に付勢するヘッドユニット付勢手段9を筐体C内に設けている(図12参照)。
【0048】
ヘッドユニット付勢手段9は、一端部を筐体Cのうちヘッドユニット搬出入口C1の奥方側に固定した固定片91に取り付けた例えばコイルバネ又はガススプリング等の弾性部材からなる付勢部材92と、この付勢部材92の他端部に上端部を取り付けて下端部にヘッドユニットUに設けた側方突出部U2s(図5及び図12参照)が引っ掛かり得る引っ掛け部93aを有する回動可能なレバー部材93とから構成される。なお、ヘッドユニット搬出入口C1は、通常使用時にはカバー部材C2によって蓋封されており、ヘッドユニットUの交換作業等を行う場合にカバー部材C2を適宜の手段で開放位置へ移動させることによって当該ヘッドユニット搬出入口C1は前方(排紙方向)側に開放される。ヘッドユニット付勢手段9を構成するレバー部材93は、付勢部材92により引っ掛け部93aを上方へ移動させる方向に付勢されている。そして、ヘッドユニット搬出入機構8を展開状態から折畳状態へ変更させてヘッドユニットUを筐体C外から筐体C内へ運ぶ過程で、ヘッドユニットUの側方突出部U2sがレバー部材93の下端部に当たり、さらにヘッドユニットUを筐体C内へ運ぶ操作力に基づいて側方突出部U2sがレバー部材93を付勢部材92によって付勢される方向とは逆の反対へ移動させると、この側方突出部U2sがレバー部材93の引っ掛け部93aに引っ掛かる。この状態で、ヘッドユニットUを筐体C内へ運ぶ操作力を停止又は軽減すると、付勢部材92の付勢力によりレバー部材93が引っ掛け部93aにヘッドユニットUの側方突出部U2sを引っ掛けた状態でこの引っ掛け部93aを上方へ移動させる方向に回転する。その結果、ヘッドユニットUは、ホルダU2に設けた各突部U2tがペーパーガイド部45に圧接する位置まで上方へ移動する。本実施形態では、ヘッドユニットUに設けた3つの突部U2tのうち2つの突部U2tを、ドット印字ヘッド41を挟む位置であって且つドット印字ヘッド41を通る直線上に設けているため、この2つの突部U2tがペーパーガイド部45に当たることによって、ドット印字ヘッド41の左右のバランスがとれた状態となる。このようにして、ペーパーガイド部45に突部U2tを当てることによって筐体C内におけるヘッドユニットUの取付位置を位置決めすることができる。なお、ヘッドユニット付勢手段9を、ヘッドユニットUに設けた左右一対の側方突出部U2sに対応させて対にして筐体C内に設けている。また、本実施形態では、ホルダU2をヘッドユニット搬出入機構8のうち所定箇所に取り付けてあり、ホルダU2の側方突出部U2sがヘッドユニット付勢手段9によって上方へ付勢されることにより、ヘッドユニット搬出入機構8は自動的に収納状態へと移動する。
【0049】
位置決め手段49は、以上のように、プラテンプレート側位置決め機能及びヘッドユニット側位置決め機能を発揮することにより、プラテンプレート42とドット印字ヘッド41との間の規定寸法のギャップGを常に一定に保つことが可能なものである。さらに詳述すると、ヘッドユニットUを筐体C内に取り付けた状態で、ドット印字ヘッド41がペーパーガイド部45に形成した開口部45Kを介して上方に露出し、ドットプリント処理可能位置(P)に位置付けたプラテンプレート42と直接対面し得る状態となる(図8参照)。この状態において、ドット印字ヘッド41はペーパーガイド部45に対する相対位置が位置決めされており、プラテンプレート42はペーパーガイド部45に対する相対位置が位置決めされているため、筐体Cに固定した共通の部材であるペーパーガイド部45を介してドット印字ヘッド41とプラテンプレート42との相対位置が位置決めされることとなり、ドット印字ヘッド41とプラテンプレート42との間のギャップGは常に一定となる。そして、本実施形態の昇華型プリンタ1では、この位置決め手段49が、ドット印字ヘッド41とプラテンプレート42との間のギャップGをドットプリント処理に適した規定寸法となるようにドット印字ヘッド41とプラテンプレート42との相対位置を位置決めしているものである。そのため、用紙Sをペーパーガイド部45によってドットプリント処理位置(ドット印字ヘッド41に対面する位置)に搬送した状態で、プラテンプレート42を退避位置(Q)からドットプリント処理可能位置(P)へ移動させると、このプラテンプレート42とドット印字ヘッド41との間に用紙Sが挟まれ、ドット印字ヘッド41のドットピンを用紙Sの裏面Sbに押圧することにより、所定の文字や記号等の付帯情報(表面Saプリント部により用紙Sの表面Saに印刷された画像に関する情報)を用紙Sの裏面Sbに印字することができる。
【0050】
本実施形態の昇華型プリンタ1は、裏面プリント部4でドットプリント処理を終えた後、プラテンプレート42をドットプリント処理可能から退避位置(Q)へ移動させて、プラテンプレート42とドット印字ヘッド41との間のギャップを規定寸法よりも大きくした状態で用紙Sを、下流側搬送機構62における排紙ローラ623及び下流側第2ピンチローラ624によって排紙口5側へ搬送してそのまま排紙口5から排出する。なお、本実施形態では、ロール状の用紙Sを裏面プリント部4によるドットプリント処理と同時又はほぼ同時にカッター部7で切断して排紙ローラ623及び下流側第2ピンチローラ624により排紙部(排紙口5)から排出するように設定している。
【0051】
このように、本実施形態に係る昇華型プリンタ1は、裏面プリント部4でドットプリント処理を行わない場合にはプラテンプレート42を退避位置(Q)に位置付けることによりプラテンプレート42とドット印字ヘッド41との間のギャップを大きく形成することによって、プラテンプレート42とドット印字ヘッド41との間に用紙Sを搬送させる処理をスムーズに行うことができ、用紙詰まりを防止することができる。そして、用紙Sをペーパーガイド部45に沿ってドット印字ヘッド41とプラテンプレート42との間に搬送した状態でドットプリント処理を施す場合には、プラテンプレート42を退避位置(Q)からドットプリント処理可能位置(P)へ移動させれば、位置決め手段49により、筐体Cに固定したペーパーガイド部45を基準にしてプラテンプレート42及びドット印字ヘッド41の相対位置を位置決めし、プラテンプレート42とドット印字ヘッド41との間にドットプリント処理に適した規定寸法のギャップGを形成するようにしているため、プラテンプレート42を退避位置(Q)からドットプリント処理可能位置(P)へ移動させる度に、或いはヘッドユニットUを筐体C外から筐体C内へ取り付ける度に、プラテンプレート42とドット印字ヘッド41との相対位置を逐一調整する必要がなく、プラテンプレート42とドット印字ヘッド41との間に適切な規定寸法のギャップGを精度良く再現することができ、裏面プリント部4によるドットプリント処理を適切に行うことができる。
【0052】
特に、本実施形態の昇華型プリンタ1では、ヘッドユニットUに、当該ヘッドユニットUを筐体C内に取り付けた際に他の部分よりも優先してペーパーガイド部45に当たる突部U2tを設け、位置決め手段49が、この突部U2tをペーパーガイド部45に押し当てることによってヘッドユニットUの取付位置を位置決めするように構成しているため、簡単な構成でありながら突部U2tの寸法を精度高く決めておきさえすれば、ペーパーガイド部45に対するヘッドユニットU、ひいてはドット印字ヘッド41の装着位置を適切に位置決めすることができる。
【0053】
さらに、ヘッドユニットUのうち3箇所に突部U2tを設け、ヘッドユニットUを筐体C内に取り付けた際にこれら突部U2tをペーパーガイド部45に押し当てて3点接触させるようにしているため、パーペーガイド部に対するヘッドユニットUの接触状態(取付状態)が安定したものとなり、筐体C内におけるヘッドユニットUのばらつきを防止することができる。特に、3つの突部U2tのうち2つの突部U2tをドット印字ヘッド41を挟む位置に設けているため、ドット印字ヘッド41が左右に傾くことを有効に防止することができる。
【0054】
また、ペーパーガイド部45にプラテンプレート42を直接押し当てた場合、ペーパーガイド部45に沿って搬送される用紙Sが当たり、用紙Sのそれ以上の搬送に制約を受けて用紙詰まりが生じ得るが、ペーパーガイド部45に設けたスペーサ45Sにプラテンプレート42を押し当てることによって、プラテンプレート42とペーパーガイド部45との間に用紙Sが通過し得るギャップを形成するようにしているため、用紙詰まりを防止することができる。
【0055】
また、本実施形態の昇華型プリンタ1では、ペーパーガイド部45に開口部45Kを形成し、ヘッドユニットUを筐体C内に取り付けた際にドット印字ヘッド41がこの開口部45Kを介してドットプリント処理可能位置(P)に位置付けたプラテンプレート42と直接対面し得るように形成しているため、このプラテンプレート42とドット印字ヘッド41との間に用紙Sを挟んだ状態で適切にドットプリント処理を行うことができる。さらに、本実施形態では、開口部45Kを挟んだ位置であって用紙Sの幅寸法よりも大きく離間させた位置にスペーサ45Sを設けているため、これらスペーサ45Sをプラテンプレート42が押し付けることによってペーパーガイド部45に対するプラテンプレート42の安定した押し付け状態を実現することができるとともに、用紙Sの幅方向に沿ったギャップGの寸法にばらつきが生じることを回避することができ、用紙Sの搬送をスムーズに行うことができる。
【0056】
加えて、本実施形態では、ペーパーガイド部45を厚みにばらつきが生じ難い板金から形成しているため、このような板金からなるペーパーガイド部45を基準としてドット印字ヘッド41とプラテンプレート42との相対位置を位置決めすることにより、ドット印字ヘッド41とプラテンプレート42との規定寸法のギャップGを高精高く決めることができる。
【0057】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、上述した実施形態では、ヘッドユニットに設けた突部の数は適宜増減してもよい。また、ペーパーガイド部にヘッドユニットの一部を間接的に押し当てることによってペーパーガイド部に対するヘッドユニットの位置決めを行うようにしても構わない。一方、用紙の搬送に支障がなければプラテンプレートの一部をペーパーガイド部に直接押し当てることによってペーパーガイド部に対するプラテンプレートの位置決めを行うようにしてもよい。
【0058】
また、上述した実施形態ではプラテンプレートが退避位置とドットプリント処理可能位置との間で回転を伴って移動する態様を例示したが、これに限らず、プラテンプレートが退避位置とドットプリント処理可能位置との間で直線移動するものであっても構わない。
【0059】
さらに、上述した実施形態では、用紙の表面に対して表面プリント部により昇華プリント処理を施した後に、用紙の裏面に対して裏面プリント部によりドットプリント処理を施す昇華型プリンタを例示したが、用紙の裏面に対して裏面プリント部によりドットプリント処理を施した後に、用紙の表面に対して表面プリント部により昇華プリント処理を施す昇華型プリンタであっても構わない。
【0060】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0061】
1…昇華型プリンタ
3…表面プリント部
4…裏面プリント部
41…ドット印字ヘッド
42…プラテンプレート
(P)…ドットプリント処理可能位置
(Q)…退避位置
45…ペーパーガイド部
45S…スペーサ
45K…開口部
49…位置決め手段
C…筐体
G…規定寸法のギャップ
S…用紙
U…ヘッドユニット
U2t…突部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙の表面に昇華プリント処理を行う表面プリント部を筐体内に設けた昇華型プリンタであって、
前記筐体内に、用紙の裏面にドットプリント処理を行う裏面プリント部を更に設けてなり、
当該裏面プリント部が、
少なくともドット印字ヘッドを有し且つ前記筐体に着脱可能に取り付けられるヘッドユニットと、
前記ドット印字ヘッドとの間でギャップを隔てて設けられ、且つ前記ドット印字ヘッドとの間で用紙を挟み得るギャップを形成したドットプリント処理可能位置と当該ドットプリント処理可能位置と比較して前記ドット印字ヘッドとのギャップが大きく形成される退避位置との間で移動可能なプラテンプレートと、
前記筐体において前記ドット印字ヘッドと前記プラテンプレートとの間に固定され且つこれらドット印字ヘッドとプラテンプレートとの間に用紙を導くペーパーガイド部と、
前記筐体に取り付けた前記ヘッドユニットの一部及び前記ドットプリント処理可能位置に位置付けた前記プラテンプレートの一部をそれぞれ前記ペーパーガイド部に直接又は間接的に押し当てることにより、前記ドット印字ヘッド及び前記プラテンプレートを、これらドット印字ヘッドとプラテンプレートとの間に用紙を挟み得る規定寸法のギャップを形成する相対位置に位置決めする位置決め手段とを備えたものであることを特徴とする昇華型プリンタ。
【請求項2】
前記ヘッドユニットが、当該ヘッドユニットを筐体に取り付けた際に他の部分よりも優先して前記ペーパーガイド部に当たる突部を備えたものであり、
前記位置決め手段が、前記突部を前記ペーパーガイド部に押し当てることによって前記ヘッドユニットの取付位置を位置決めするものである請求項1に記載の昇華型プリンタ。
【請求項3】
前記筐体に取り付けた前記ヘッドユニットが前記ペーパーガイドに対して3点で接触し得るように当該ヘッドユニットの少なくとも前記ドット印字ヘッドを挟む3箇所に前記突部を設けている請求項2に記載の昇華型プリンタ。
【請求項4】
前記ペーパーガイド部に前記プラテンプレートを押し当て得るスペーサを設け、前記位置決め手段が、前記スペーサに押し当てた前記プラテンプレートを、前記ペーパーガイド部との間に用紙を挟み得るギャップを形成する位置に位置決めするものである請求項1乃至3の何れかに記載の昇華型プリンタ。
【請求項5】
前記ペーパーガイド部に、前記ヘッドユニットを前記筐体に取り付けた際に前記ドット印字ヘッドが前記ドットプリント処理可能位置に位置付けた前記プラテンプレートと直接対面し得るように開口部を形成し、当該開口部を挟んだ位置であって用紙の幅寸法よりも広く離間させた位置に前記スペーサを設けている請求項4に記載の昇華型プリンタ。
【請求項1】
用紙の表面に昇華プリント処理を行う表面プリント部を筐体内に設けた昇華型プリンタであって、
前記筐体内に、用紙の裏面にドットプリント処理を行う裏面プリント部を更に設けてなり、
当該裏面プリント部が、
少なくともドット印字ヘッドを有し且つ前記筐体に着脱可能に取り付けられるヘッドユニットと、
前記ドット印字ヘッドとの間でギャップを隔てて設けられ、且つ前記ドット印字ヘッドとの間で用紙を挟み得るギャップを形成したドットプリント処理可能位置と当該ドットプリント処理可能位置と比較して前記ドット印字ヘッドとのギャップが大きく形成される退避位置との間で移動可能なプラテンプレートと、
前記筐体において前記ドット印字ヘッドと前記プラテンプレートとの間に固定され且つこれらドット印字ヘッドとプラテンプレートとの間に用紙を導くペーパーガイド部と、
前記筐体に取り付けた前記ヘッドユニットの一部及び前記ドットプリント処理可能位置に位置付けた前記プラテンプレートの一部をそれぞれ前記ペーパーガイド部に直接又は間接的に押し当てることにより、前記ドット印字ヘッド及び前記プラテンプレートを、これらドット印字ヘッドとプラテンプレートとの間に用紙を挟み得る規定寸法のギャップを形成する相対位置に位置決めする位置決め手段とを備えたものであることを特徴とする昇華型プリンタ。
【請求項2】
前記ヘッドユニットが、当該ヘッドユニットを筐体に取り付けた際に他の部分よりも優先して前記ペーパーガイド部に当たる突部を備えたものであり、
前記位置決め手段が、前記突部を前記ペーパーガイド部に押し当てることによって前記ヘッドユニットの取付位置を位置決めするものである請求項1に記載の昇華型プリンタ。
【請求項3】
前記筐体に取り付けた前記ヘッドユニットが前記ペーパーガイドに対して3点で接触し得るように当該ヘッドユニットの少なくとも前記ドット印字ヘッドを挟む3箇所に前記突部を設けている請求項2に記載の昇華型プリンタ。
【請求項4】
前記ペーパーガイド部に前記プラテンプレートを押し当て得るスペーサを設け、前記位置決め手段が、前記スペーサに押し当てた前記プラテンプレートを、前記ペーパーガイド部との間に用紙を挟み得るギャップを形成する位置に位置決めするものである請求項1乃至3の何れかに記載の昇華型プリンタ。
【請求項5】
前記ペーパーガイド部に、前記ヘッドユニットを前記筐体に取り付けた際に前記ドット印字ヘッドが前記ドットプリント処理可能位置に位置付けた前記プラテンプレートと直接対面し得るように開口部を形成し、当該開口部を挟んだ位置であって用紙の幅寸法よりも広く離間させた位置に前記スペーサを設けている請求項4に記載の昇華型プリンタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−201737(P2010−201737A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−48657(P2009−48657)
【出願日】平成21年3月2日(2009.3.2)
【出願人】(000002059)シンフォニアテクノロジー株式会社 (1,111)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月2日(2009.3.2)
【出願人】(000002059)シンフォニアテクノロジー株式会社 (1,111)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]