説明

昇降式ドアガラスのシール構造

【課題】無用なコストアップを招くことなしに、ドアガラス上昇時の挙動に基づくドアグラスランの位置ずれを効果的に防止できる昇降式ドアガラスのシール構造を提供する。
【解決手段】フロントドア側のドアサッシュ1のサッシュ上辺部1aについて、ドアガラス3の閉め切り時に、フロントピラー相当部1Pよりもルーフ相当部1R側で先にドアグラスラン2に対してドアガラス3の上端を当接させる。そのための手段として、フロントピラー相当部1P側ではドアガラス3の上端の輪郭形状をS1だけ小さくしてあり、ドアガラス3の閉め切り時に、ルーフ相当部1R側ではS2=0であるのに対して、フロントピラー相当部1P側ではS1をS1>S2として確保する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車における昇降式ドアガラスのシール構造に関し、特に乗用車のフロントドアに付帯するドアサッシュ(ドアフレーム)のように、ドアサッシュ上辺部のうちでもピラー相当部とルーフ相当部とで車両前後方向での傾斜の度合いが大きく異なる場合の特殊性に着目した昇降式ドアガラスのシール構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車のフロントドアにおけるドアサッシュ周りの概略構造を図4に模式的に示す。同図から明らかなように、フロントドアのドア本体に付帯するドアサッシュ1の内周にドアグラスラン2が嵌合保持されていて、そのドアグラスラン2にドアガラス3が受容されていることにより、ドアガラス3が昇降可能に案内支持されているとともに、ドアガラス3にて仕切られた車室内外をドアグラスラン2にてシールするようになっている。なお、ドアグラスラン2はドア本体のドアウエスト部よりも下側のロアサッシュ側にまで跨るように配設される。また、図4の符号4は、リアドア側のドアサッシュに嵌合保持されるドアグラスランを示している。
【0003】
ここで、フロントドア側のドアサッシュ1のサッシュ上辺部1aに着目した場合、サッシュ上辺部1aのうちでもその後半部側はルーフ相当部1Rとしてルーフサイド部に沿ったものとなるのに対して、サッシュ上辺部1aのうちでもその前半部側はフロントピラー相当部1Pとしてフロントピラーに沿ったものとなり、フロントピラー相当部1Pはルーフ相当部1Rに比べて前下がりで大きく傾斜したものとなっている。そして、ドアガラス3の閉め切り時においては、サッシュ上辺部1aの全長においてドアガラス3の上端がドアグラスラン2の内底面に均等に弾接するようになっているのが一般的である。
【0004】
すなわち、図5に示すように、フロントピラー相当部1Pであるかルーフ相当部1Rであるかにかかわらず、ドアガラス3の閉め切り時において、ドアグラスラン2が着座することになるドアサッシュ1の内底面とドアガラス3の上端とのなす距離H1,H2同士、および同じくドアガラス3の閉め切り時において、ドアグラスラン2の内底面とドアガラス3の上端とのなす距離S1,S2同士は、共に同じ大きさに設定するのが一般的である。なお、ドアガラス3の閉め切り時において、ドアグラスラン2に対してドアガラス3が突き当たるのが通常であるから、多くの場合にS1=S2=0となる。
【0005】
この場合において、サッシュ上辺部1aのうちでもピラー相当部1Pに着目した場合、上記ドアガラス3の昇降方向を図4の矢印Q方向とすると、ドアガラス3の閉め切り時において、ドアガラス3の上昇力Fはピラー相当部1Pにほぼ直角な分力F1とともにそのピラー相当部1Pの長手方向の分力F2を発生することになる。分力F2はピラー相当部1Pにおいてドアグラスラン2の同等部位を後方側にずらそうとする力にほかならず、そのために例えばドアグラスラン2のうちでもサッシュ上辺部1aに相当する部分と前側の縦辺部1bに相当する部分とのなすコーナー部相当部に位置ずれが生じ、外観的な見栄えを悪化させる要因となる。
【0006】
特に、図4のようなフロントドアのドアサッシュ1の場合、仮にドアサッシュ1に対するドアガラス3の建て付け精度が適正であっても、前側の縦辺部1bにおけるドアグラスラン2とドアガラス3との接触長に比べて、後側の縦辺部1cにおけるドアグラスラン2とドアガラス3との接触長の方が大きいことから、この後側の縦辺部1cに相当する部分の摺動抵抗が前側の縦辺部1bに相当する部分に比べて大きくなる傾向にある。そのため、図6の(A)に示すように、ドアガラス3の閉め切り時にドアガラス3が矢印Mのようにいわゆる後転び状態で上昇して、サッシュ上辺部1aのうちでもルーフ相当部1Rよりもピラー相当部1Pにおいて先にドアガラス3の上端がドアグラスラン2に当接することとなり、先に述べたようにドアグラスラン2を後方にずらそうとする力F2の発生が一段と顕著となる。
【0007】
このことは、例えば図6の(B)のように、ドアサッシュ1に対するドアガラス3の建て付け精度の影響でドアガラス3の位置が前側(図6の(B)の矢印J方向)にばらついた場合でも、同様である。
【0008】
このようなことから、ドアガラス上昇時の挙動に基づくドアグラスラン2の位置ずれを防止する技術として、特許文献1〜4に記載のような多様な技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−143032号公報
【特許文献2】特開2007−196909号公報
【特許文献3】特開2005−271659号公報
【特許文献4】特開2006−205796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1〜4に記載のいずれも技術も、ドアグラスランの特定位置に突起部等を設定した上でドアサッシュ側の穴と凹凸嵌合させたり、あるいはドアグラスランと接触することになるドアサッシュ側の着座面に特殊加工を施すること等を基本とするものであるから、部品点数の増加や加工工程数の増加が余儀なくされ、コストアップを招くこととなって好ましくない。
【0011】
本発明はこのような課題に着目してなされたものであり、無用なコストアップを招くことなしに、所期の目的、すなわちドアガラス上昇時の挙動に基づくドアグラスランの位置ずれを効果的に防止することができる昇降式ドアガラスのシール構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載の発明は、自動車のドアサッシュの内周に嵌合保持されたドアグラスランにドアガラスが受容されていて、そのドアガラスを昇降可能に案内支持しながら車室内外をシールするようにした昇降式ドアガラスのシール構造であって、ドアガラス閉め切り時におけるサッシュ上辺部でのドアグラスランの内底面とドアガラスの上端との相対位置関係として、サッシュ上辺部のうちルーフ相当部ではドアグラスランの内底面に対してドアガラスの上端を当接させるのに対して、ピラー相当部ではドアグラスランの内底面に対してドアガラスの上端を当接させないように設定してあることを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明を別の観点から特定したものである。すなわち、請求項2に記載の発明は、自動車のドアサッシュの内周に嵌合保持されたドアグラスランにドアガラスが受容されていて、そのドアガラスを昇降可能に案内支持しながら車室内外をシールするようにした昇降式ドアガラスのシール構造であって、ドアガラス閉め切り時におけるサッシュ上辺部でのドアグラスランの内底面とドアガラスの上端とのなす距離について、サッシュ上辺部のうちでもピラー相当部側をルーフ相当部側よりも大きく設定してあることを特徴とする。
【0014】
この場合において、請求項3に記載のように、ドアガラス閉め切り時におけるサッシュ上辺部でのドアグラスランの内底面とドアガラスの上端とのなす距離とともに、ドアガラス閉め切り時におけるサッシュ上辺部の内底面とドアガラスの上端とのなす距離について、それぞれサッシュ上辺部のうちでもピラー相当部側をルーフ相当部側よりも大きく設定してあっても良い。
【0015】
他方、先に述べたようなフロントドアにおける昇降式ドアガラスのシール構造を想定するならば、多くの場合に、請求項4に記載のように、サッシュ上辺部のうちフロントピラー相当部とルーフ相当部とでは、フロントピラー相当部側の方がルーフ相当部側よりも車両前後方向での前下がりの傾斜の度合いを大きく設定してあることになる。
【0016】
また、上記ドアグラスランの形状を一段と明確化するならば、請求項5に記載のように、上記ドアグラスランは、底壁部と一対の側壁部を含んでなる断面略コ字状の本体部と、それぞれの側壁部の先端から本体部におけるコ字状空間の内方に向けて突出形成されたシールリップと、を備えていて、上記本体部におけるコ字状空間にドアガラスを受容して当該ドアガラスを摺動可能に案内支持しているものであることを特徴とする。
【0017】
したがって、少なくとも請求項1に記載の発明では、ドアガラスの閉め切り時において、サッシュ上辺部のうちルーフ相当部ではドアグラスランの内底面に対してドアガラスの上端を当接させるのに対して、ピラー相当部ではドアグラスランの内底面に対してドアガラスの上端を当接させないように設定してあることから、サッシュ上辺部においてドアグラスランの位置を後側にずらそうとする力の発生は極端に小さなものとなるか、またはほとんど発生しないことになる。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に記載の発明によれば、従来のようにドアグラスラン側に突起部を、ドアサッシュ側に穴等をそれぞれ設定することになしに、サッシュ上辺部においてドアグラスランの位置を後側にずらそうとする力の発生を極端に小さくしたり、あるいはほとんど発生しないものとすることができる。そのため、部品点数の増加や加工工程数の増加によるコストアップを招くことなく、ドアグラスランの当初の外観的な見栄えを安定して維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1におけるフロントドア側のドアサッシュ周りの拡大説明図。
【図2】本発明の第1の実施の形態としてサッシュ上辺部の詳細な形状を示す図であって、(A)は図1のA−A線に沿う拡大断面図、(B)は図1のB−B線に沿う拡大断面図。
【図3】本発明の第2の実施の形態としてサッシュ上辺部の詳細な形状を示す図であって、(A)は図1のA−A線断面に相当する拡大断面図、(B)は図1のB−B線断面に相当する拡大断面図。
【図4】自動車のフロントドア側のドアサッシュ周りの概略側面説明図。
【図5】図4のサッシュ上辺部の詳細な形状を示す図であって、(A)は図4のA1−A1線に沿う拡大断面図、(B)は図4のB1−B1線に沿う拡大断面図。
【図6】ドアガラスの建て付け精度のばらつきに伴うガラス上昇時の挙動の説明図で、(A)は後転び状態となった場合の説明図、(B)は前側へのばらつき時の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1,2は本発明に係る昇降式ドアガラスのシール構造のより具体的な第1の実施の形態を示し、図4に示したフロントドアに適用した場合の例を示している。なお、図4〜6と共通する部分には同一符号を付してある。
【0021】
図1,2に示すように、フロントドアのドア本体に付帯するドアサッシュ(ドアフレーム)1は、例えばロールフォーミングにより成形されたものであって、周知のようにサッシュ上辺部1aのほか前側および後側のそれぞれの縦辺部1b,1cが含まれていて、全体として枠状に形成されている。そして、ドアサッシュ1には枠状の内側に開口する断面略コ字状のチャンネル部5が形成されていて、このチャンネル部5の内周には同じく断面略コ字状に成形された例えばEPDM製のドアグラスラン2が嵌合保持される。
【0022】
ドアグラスラン2は、概略的には、底壁部7とその両側のアウタ側,インナ側のそれぞれの側壁部8a,8bを含んでなる断面略コ字状の本体部6と、それぞれの側壁部8a,8bの先端から本体部6におけるコ字状空間の内方に向けて斜状に突出形成されたアウタ側,インナ側のそれぞれのシールリップ9a,9bと、を備えていて、長手方向でほぼ均一断面形状のものとして形成されている。そして、本体部6の外周に突出形成された係止リップ10をチャンネル部5側のショルダー部11に係止させることで、チャンネル部5からのドアグラスラン2の抜け止めが施されている。
【0023】
その上で、上記ドアグラスラン2の本体部6におけるコ字状空間にドアガラス3の周縁部が受容されている。これによって、ドアガラス3がドアグラスラン2を介してドアサッシュ1に摺動可能に、すなわち昇降可能に案内支持されているとともに、ドアガラス3の閉め切り時(最大上昇時)にはそのドアガラス3にて仕切られた車室内外をドアグラスラン2にてシールされることになる。
【0024】
ここで、図1に示したフロントドアの場合、ドアサッシュ1のサッシュ上辺部1aのうちその前半部はフロントピラー相当部1Pとしてフロントガラスの両側のフロントピラーに沿って延在するかたちとなるのに対して、サッシュ上辺部1aのうちその後半部はルーフ相当部1Rとしてルーフのルーフサイドに沿って延在するかたちとなることは先に述べた。そのため、フロントピラー相当部1Pはルーフ相当部1Rに比べて前下がりに大きく傾斜していて、フロントピラー相当部1Pの傾斜の度合いはルーフ相当部1Rの傾斜の度合いに比べて大きなものとなっている。
【0025】
このような昇降式ドアガラス3のシール構造において、ドアガラス3の閉め切り時にそのドアガラス3の上端がサッシュ上辺部1aの長手方向においてドアグラスラン2に均等に当接するように仮に設計したとしても、サッシュ上辺部1aのうちフロントピラー相当部1Pにおけるドアガラス3の当接により、図4に示したようにドアグラスラン2を後方にずらそうとする力F2が発生することもまた先に述べたとおりである。
【0026】
そこで、本実施の形態では、サッシュ上辺部1aにおけるフロントピラー相当部1Pとルーフ相当部1Rとでその仕様を互いに異ならせてある。図1のA−A線断面である図2の(A)と図1のB−B線断面である図2の(B)とを比較すると明らかなように、フロントピラー相当部1Pとルーフ相当部1Rとではドアグラスラン2そのものの断面形状は共に同一であり、なお且つその断面形状は図5に例示した従来のものとも共通している。
【0027】
その一方、ドアガラス3の閉め切り時を想定し、その閉め切り時のドアガラス3の上端とドアグラスラン2が着座すべきチャンネル部5の内底面5aとのなす距離H1,H2に着目した場合に、フロントピラー相当部1P側での距離H1に対して、ルーフ相当部1R側での距離H2をH1>H2の関係に設定してある。なお、図5に例示した従来のものではH1=H2となっている。
【0028】
同様に、ドアガラス3の閉め切り時を想定し、その閉め切り時のドアガラス3の上端とドアグラスラン2の底壁部7の内底面7aとのなす距離S1,S2に着目した場合に、ルーフ相当部1R側ではS2=0であるのに対して、フロントピラー相当部1P側のS1はS2よりも大きく、S1>S2の関係に設定してある。なお、図5に例示した従来のものではS1=S2となっている。
【0029】
つまり、ルーフ相当部1R側に比べてフロントピラー相当部1P側では、ドアガラス3の上端の輪郭形状をS1相当分だけわずかに小さく形成して、ドアガラス3の閉め切り時においてもそのドアガラス3の上端がドアグラスラン2の底壁部7の内底面7aに当接せずに、その内底面7aとの間にS1なる隙間が確保されるように設定してある。このS1なる隙間の大きさは、ドアサッシュ1やドアガラス3単体での寸法許容誤差(寸法ばらつき)や、ドアサッシュ1に対するドアガラス3の建て付け誤差等を考慮して決定するものとし、標準的には例えば2〜4mm程度に設定するものとする。
【0030】
したがって、このような昇降式ドアガラス3のシール構造によれば、ドアガラス3の閉め切り時に、そのドアガラス3の上端がフロントピラー相当部1P側よりもルーフ相当部1R側で必ず先に当接することになるため、図4に示したようなドアグラスラン2を後方にずらそうとする力F2が発生しないか、または発生したとしてもきわめて小さいものとなる。そして、フロントピラー相当部1Pにおいてドアガラス3の上端の輪郭形状をわずかに小さく形成するだけで良いから、部品点数の増加や加工工程数の増加によるコストアップを招くことなく、ドアグラスラン2の当初の外観的な見栄えを安定して維持できることになる。
【0031】
図3は本発明に係る昇降式ドアガラスのシール構造のより具体的な第2の実施の形態を示し、先の第1の実施の形態と共通する部分には同一符号を付してある。
【0032】
図3の(B)は図1のB−B線に相当する断面図、すなわちサッシュ上辺部1aのうちルーフ相当部1Rの断面図であって、このルーフ相当部1Rの断面図は図2の(B)のものと同一である。他方、図3の(A)は図1のA−A線に相当する断面図、すなわちサッシュ上辺部1aのうちフロントピラー相当部1Pの断面図であって、このフロントピラー相当部1Pの断面図が図2の(A)のものと異なっている。
【0033】
より具体的には、図3の(A),(B)における距離H1,H2、すなわちドアガラス3の閉め切り時においてドアサッシュ1のチャンネル部5の内底面5aとドアガラス3の上端とのなす距離H1,H2は、図5と同様にH1=H2として設定してある。
【0034】
他方、図3の(A),(B)において、ドアガラス3の閉め切り時にドアグラスラン2における底壁部7の内底面7aとドアガラス3の上端とのなす距離S1,S2に着目したとき、図2と同様にS1>S2の関係に設定してある。これは、H1=H2であるにもかかわらず、S1>S2とするために、図3の(A)に示すように、ドアグラスラン2における底壁部7の内底面7aの位置を図2の(A)のものより上方側にオフセットさせてある。なお、図3の(A)と(B)とを比較した場合の両者の断面形状の違いは、ドアグラスラン2のうち少なくともサッシュ上辺部1aに相当する部分を押出成形する際にいわゆる可変押出工法を採用することで実現できる。この可変押出工法によれば、図3の(A)の断面と(B)の断面との間でその断面形状を漸次変化させて徐変させることで双方の微妙な断面形状の違いに対応することができることになる。
【0035】
したがって、この第2の実施の形態の構造によれば、ドアガラス3の閉め切り時の挙動としては、先の第1の実施の形態のものと全く同様のものとなり、そのドアガラス3の上端がフロントピラー相当部1P側よりもルーフ相当部1R側で必ず先に当接することになるため、図1に示したようなドアグラスラン2を後方にずらそうとする力F2が発生しないか、または発生したとしてもきわめて小さいものとなる。
【0036】
ここで、フロントピラー相当部1Pにおけるドアグラスラン2の図3の(A)の断面形状と、ルーフ相当部1Rにおけるドアグラスラン2の図3の(B)の断面形状とを相互の異ならせる手段として、先に述べた可変押出工法にて断面形状を徐変させながら連続させるのに代えて、それぞれの断面形状に押出成形したもの同士を適宜の位置にて金型成形法にて相互に接続させることももちろん可能である。
【0037】
このように上記第1,第2の実施の形態の昇降式ドアガラス3のシール構造によれば、ドアガラス3側あるいはドアグラスラン2側のわずかな形状の改良のみで、ドアサッシュ上辺部1aにおいてドアグラスラン2の位置を後側にずらそうとする力F2の発生を極端に小さくしたり、あるいはほとんど発生しないものとすることができる。そのため、部品点数の増加や加工工程数の増加によるコストアップを招くことなく、ドアグラスラン2の当初の外観的な見栄えを安定して維持できることになる。
【符号の説明】
【0038】
1…ドアサッシュ
1a…サッシュ上辺部
1P…フロントピラー相当部
1R…ルーフ相当部
2…ドアグラスラン
3…ドアガラス
6…本体部
7…底壁部
7a…内底面
8a…アウタ側の側壁部
8b…インナ側の側壁部
9a…アウタ側のシールリップ
9b…インナ側のシールリップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のドアサッシュの内周に嵌合保持されたドアグラスランにドアガラスが受容されていて、そのドアガラスを昇降可能に案内支持しながら車室内外をシールするようにした昇降式ドアガラスのシール構造であって、
ドアガラス閉め切り時におけるサッシュ上辺部でのドアグラスランの内底面とドアガラスの上端との相対位置関係として、サッシュ上辺部のうちルーフ相当部ではドアグラスランの内底面に対してドアガラスの上端を当接させるのに対して、ピラー相当部ではドアグラスランの内底面に対してドアガラスの上端を当接させないように設定してあることを特徴とする昇降式ドアガラスのシール構造。
【請求項2】
自動車のドアサッシュの内周に嵌合保持されたドアグラスランにドアガラスが受容されていて、そのドアガラスを昇降可能に案内支持しながら車室内外をシールするようにした昇降式ドアガラスのシール構造であって、
ドアガラス閉め切り時におけるサッシュ上辺部でのドアグラスランの内底面とドアガラスの上端とのなす距離について、サッシュ上辺部のうちでもピラー相当部側をルーフ相当部側よりも大きく設定してあることを特徴とする昇降式ドアガラスのシール構造。
【請求項3】
ドアガラス閉め切り時におけるサッシュ上辺部でのドアグラスランの内底面とドアガラスの上端とのなす距離とともに、ドアガラス閉め切り時におけるサッシュ上辺部の内底面とドアガラスの上端とのなす距離について、それぞれサッシュ上辺部のうちでもピラー相当部側をルーフ相当部側よりも大きく設定してあることを特徴とする請求項2に記載の昇降式ドアガラスのシール構造。
【請求項4】
サッシュ上辺部のうちフロントピラー相当部とルーフ相当部とでは、フロントピラー相当部側の方がルーフ相当部側よりも車両前後方向での前下がりの傾斜の度合いを大きく設定してあることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の昇降式ドアガラスのシール構造。
【請求項5】
上記ドアグラスランは、底壁部と一対の側壁部を含んでなる断面略コ字状の本体部と、それぞれの側壁部の先端から本体部におけるコ字状空間の内方に向けて突出形成されたシールリップと、を備えていて、
上記本体部におけるコ字状空間にドアガラスを受容して当該ドアガラスを摺動可能に案内支持しているものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の昇降式ドアガラスのシール構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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