説明

易接着性裏面保護シート及びそれを用いた太陽電池モジュール

【課題】高温、高湿度環境下においても封止材との密着性及び耐久性に優れた太陽電池モジュール用易接着性裏面保護シートを提供する。
【解決手段】裏面保護シート用基材の片面に易接着層が形成された易接着性裏面保護シートであって、前記易接着層は、成分(A)脂肪族ポリカーボネートジオール化合物と、成分(B)ジイソシアネート化合物と、成分(C)アルキレンジオール化合物と、成分(D)分子内にイソシアネート基を3つ以上有する変性イソシアネート化合物と、を反応させて得られる成分(E)グリコール変性ポリカーボネートポリウレタン樹脂組成物を含有し、前記成分(A)〜(D)の質量部の合計に対する成分(C)の質量部の割合が8%以上12%未満であり、前記成分(A)〜(D)の質量部の合計に対する成分(D)の質量部の割合が2%以上4%未満である太陽電池モジュール用易接着性裏面保護シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュール用易接着性裏面保護シートに関する。更に詳しくは、易接着性裏面保護シートを構成するポリオレフィン系樹脂基材とエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)を用いた封止材との接着性を顕著に高める易接着層を備える易接着性裏面保護シート、及び当該易接着性裏面保護シートを備えた太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題に対する意識の高まりから、クリーンなエネルギー源としての太陽電池が注目されている。一般に、太陽電池を構成する太陽電池モジュールは、受光面側から、透明前面基板、前面封止材、太陽電池セル、背面封止材、及び裏面保護シートの各部材が順に積層された構造であり、太陽光が上記太陽電池セルに入射することにより発電する機能を有している。
【0003】
太陽電池モジュールは、屋外に設置されることが一般的である。このため、太陽電池モジュールを構成する各部材は、常時、強い紫外線、熱線、風雨等といった過酷な環境に曝されることになる。このため、太陽電池モジュールにおいて最外層に配置される裏面保護シートには、極めて高い耐候性が要求される。そのような耐候性を備えるものとして、フッ素系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等が挙げられる。これらのなかでも、加工性、施工性、製造コストの面でも優れたポリエステル系樹脂であるポリエチレンテレフタレート(PET)が、裏面保護シート用の基材として一般的なものとして使用されている。
【0004】
一方、太陽電池モジュールに使用される封止材としては、その加工性、施工性、製造コスト、その他等の観点から、EVAが最も一般的なものとして使用されている。
【0005】
太陽電池モジュールの製造過程における裏面保護シートを含む各部材の一体化の方法として、真空熱ラミネート加工により一体化する方法が挙げられる。しかし、裏面保護シートの基材として用いられるPETと、封止材として用いられるEVAとを真空熱ラミネート加工により一体化した場合、両者間の接着性は太陽電池モジュールにおいて必要とされる高い耐候性を備えるためには不充分であった。そこで、裏面保護シートと封止材との接着性を高めるために、一方の面に例えばウレタン系の樹脂とイソシアネート系の硬化剤等からなる組成物によって易接着層を形成することにより接着性を高めた裏面保護シートが提案されている(特許文献1)。
【0006】
また、高耐久性のウレタン系の樹脂組成物として、ポリカプロラクトン(PCL)とイソシアネート系の硬化剤を反応させてなるポリウレタン組成物が開示されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−332091号公報
【特許文献2】特開2006−511639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、太陽電池モジュールの最外層に配置される裏面保護シートと封止材との間の接着性及びそれら接着部の耐久性については、更なる改善が必要とされていた。特許文献2に記載の組成物は、PETとEVAとの間の接着性という点において未だ不十分であり、接着性の向上のためには、接着性を高める効果のあるポリエーテル樹脂等を更に添加することが考えられるが、これらの樹脂は一方では耐加水分解性が低く、これらの樹脂の添加は裏面保護シートの接着耐久性の低下につながるという問題があった。
【0009】
また、近年、可視光線を透過する採光型の太陽電池モジュールに使用するために、太陽電池用裏面保護シートにも透明性が求められる場合があるが、従来の易接着層の形成においては、ブロッキング防止のために、二酸化硅素等のフィラーの添加が必須となっており、これが十分な透明性を得ることのできない要因となっていた。
【0010】
本発明は、以上のような状況に鑑みてなされたものであり、EVA封止材との間に高い接着性を備え、且つ、長期にわたる過酷な環境での使用に耐えうることができる耐久性をも備え、更に透明性にも優れる太陽電池モジュール用易接着性裏面保護シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、太陽電池モジュール用裏面保護シートの片面に、ポリカーボネートポリウレタンの両末端を所定範囲の変性量でグリコール変性させ、更にイソシアネート基を3つ以上有する変性イソシアネート化合物と反応させて高分子量化して得ることのできる樹脂組成物によって易接着層を形成することにより、裏面保護シートと封止材との間の接着性と接着耐久性を十分に高めたものであり、且つ、透明性も兼ね備えた易接着性裏面保護シートとすることができることを見出し本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は、以下のものを提供する。
【0012】
(1) 一又は複数の層からなる裏面保護シート用基材の片面に易接着層が形成された易接着性裏面保護シートであって、前記易接着層は、成分(A)脂肪族ポリカーボネートジオール化合物と、成分(B)ジイソシアネート化合物と、成分(C)炭素数2以上10以下のアルキレンジオール化合物と、成分(D)分子内にイソシアネート基を3つ以上有する変性イソシアネート化合物と、を反応させて得られる成分(E)グリコール変性ポリカーボネートポリウレタンを含有する主剤樹脂が、イソシアネート系の硬化剤により架橋されている架橋樹脂からなり、前記成分(A)〜(D)の質量部の合計に対する成分(C)の質量部の割合が6%以上12%未満であり、前記成分(A)〜(D)の質量部の合計に対する成分(D)の質量部の割合が2%以上4%以下であることを特徴とする太陽電池モジュール用易接着性裏面保護シート。
【0013】
(2) 前記成分(C)の炭素数が6以上8以下である(1)に記載の易接着性裏面保護シート。
【0014】
(3) 前記成分(C)が、炭素数の異なる2以上のアルキレンジオール化合物の混合物である(1)又は(2)に記載の易接着性裏面保護シート。
【0015】
(4) 前記成分(C)が、1,6−ヘキサンジオール及び1,8−オクタンジオールの混合物である(1)から(3)のいずれかに記載の易接着性裏面保護シート。
【0016】
(5) 前記成分(D)が、イソホロンジイソシアネート(IPDI)のトリメチロールプロパン(TMP)アダクト変性物である(1)から(4)のいずれかに記載の易接着性裏面保護シート。
【0017】
(6) 前記一又は複数の層のうち、少なくとも前記易接着層が形成されている層がポリエチレンテレフタレートである(1)から(5)のいずれかに記載の易接着性裏面保護シート。
【0018】
(7) 可視光線の透過率が90%以上であることを特徴とする(1)から(6)のいずれかに記載の易接着性裏面保護シート。
【0019】
(8) (1)から(7)のいずれかに記載の易接着性裏面保護シートと、エチレン−酢酸ビニル共重合体を含んでなる太陽電池モジュール用封止材とが、前記易接着層を介して密着し、積層されている太陽電池モジュール。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、裏面保護シートと封止材との間の接着性及び接着耐久性を十分に高めたものであり、且つ、透明性も兼ね備えた太陽電池モジュール用易接着性裏面保護シートが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の太陽電池モジュールの層構成の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の具体的な実施形態について説明する。本実施形態は、易接着性裏面保護シート及び易接着性裏面保護シートが使用された太陽電池モジュールである。本発明の特徴は、透明PET等を基材とする裏面保護シートに、以下に詳しく説明する本発明に係る易接着層を形成することにより、EVA封止材との間に極めて高い接着性及び接着耐久性を備える易接着性裏面保護シートとしたこと、更には、採光型モジュールにも好適に使用可能な透明性をも備えるものとした点にある。以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0023】
<易接着性裏面保護シート>
本発明の一実施形態である易接着性裏面保護シートについて説明する。本実施形態の易接着性裏面保護シートは、裏面保護シート用基材と、裏面保護シート用基材の片面に形成される易接着層とからなる。
【0024】
[易接着層]
易接着層はいわゆるプライマー層である。この易接着層は、成分(E)グリコール変性ポリカーボネートポリウレタンを含有する主剤樹脂(以下単に「主剤樹脂」ともいう)がイソシアネート系の硬化剤により架橋されている架橋樹脂によって構成される。易接着層は、主剤樹脂、イソシアネート系硬化剤、溶剤、その他の添加剤からなる易接着層形成用コーティング液を、裏面保護シート用基材の表面に塗布し、塗布された易接着層形成用コーティング液から被膜を形成させることにより形成することができる。
【0025】
易接着層の厚さは、特に限定されず、易接着性裏面保護シートが適用される条件に合わせて適宜決定すればよいが、1〜20μmであることが好ましく、2〜10μmがであることがより好ましい。易接着層の厚さが1μm以上であれば、十分な接着性を付与することができる。易接着層の厚さが20μm以下であれば、耐ブロッキング性が良好な加工性を付与することができ、コスト面を抑えることがきる点からも好ましい。
【0026】
[易接着層形成用コーティング液]
裏面保護シート用基材の表面に易接着層を形成するための易接着層形成用コーティング液は、主剤樹脂、硬化剤及び溶剤を含み、必要に応じてその他の各種の添加剤を含むものであってもよい。その他の添加剤としては、密着性助剤等を例として挙げることができる。易接着層形成用コーティング液は、主剤樹脂と硬化剤を使用直前に混合する2液タイプのものであることが好ましい。主剤樹脂は、易接着層を形成する際に、硬化剤と反応して架橋され高分子量化する。
【0027】
[主剤樹脂]
主剤樹脂は、成分(A)脂肪族ポリカーボネートジオール化合物(以下単に成分(A)ともいう)と、成分(B)ジイソシアネート化合物(以下単に成分(B)ともいう)とが、ウレタン結合してなるポリカーボネートポリウレタンの両末端を特定量の成分(C)アルキレンジオール化合物(以下単に成分(C)ともいう)との反応によりグリコール変性させ、更に特定量の成分(D)分子内にイソシアネート基を3つ以上有する変性イソシアネート化合物(以下、単に「変性イソシアネート化合物」、又は単に「成分(D)」ともいう)と、反応させて高分子量化することによって得た(E)グリコール変性ポリカーボネートポリウレタン(以下単に成分(E)ともいう)を主成分とする。
【0028】
成分(E)は、成分(A)と、成分(B)とが、ウレタン結合してなるポリカーボネートポリウレタンを、成分(C)と所定の変性量の範囲で反応させてグリコール変性させることにより密着性を向上させ、更に、成分(D)とも所定の変性量の範囲で反応させて高分子量化することにより、ブロッキング性を改善したものである。
【0029】
成分(A)の脂肪族ポリカーボネートジオール化合物は、下記の成分(B)のジイソシアネート化合物と反応することができる主剤樹脂の構成成分である。成分(A)は、カーボネート構造を繰り返し単位とし、その両末端に水酸基を有するものである。その両末端の水酸基は、イソシアネート基と硬化反応することができる。
【0030】
成分(A)は、アルキレンカーボネートとジオールを原料に用いて製造する方法、ジアルキルカーボネートやジアリールカーボネートとジオールを用いて製造する方法等を用いて製造することができる。本発明において使用される成分(A)は、主剤成分に必要とされる性能に応じて、上記製造方法を適宜選択することにより製造することができる。
【0031】
成分(A)の製造に使用できるアルキレンカーボネートとしては、エチレンカーボネート、トリメチレンカーボネート、1,2−プロピレンカーボネート、1,2−ブチレンカーボネート、1,3−ブチレンカーボネート、1,2−ペンチレンカーボネート等が挙げられる。また、ジアルキルカーボネートとしては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート等が、ジアリールカーボネートとしては、ジフェニルカーボネート等が挙げられる。
【0032】
ジオールとしては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール等の側鎖を持たないジオール、2−メチル−1,8オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,6−ヘキサンジオール等の側鎖を持ったジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール等の環状ジオールを挙げることができる。尚、1種類のジオールを使用してもよいし、2種類以上のジオールを原料とした共重合ポリカーボネートジオールでもよい。
【0033】
成分(A)の数平均分子量は、1000〜2000であることが好ましい。1000以下であると、ウレタン架橋点が多くなり耐久性劣化の点で好ましくなく、2000以上であると、溶剤への溶解性が低下するため好ましくない。成分(A)の製造においては、モノマーの反応性が高く、高分子量化し易いため、所定の数平均分子量を有するポリカーボネートジオールを得るためには、反応速度等の制御が必要となる。
【0034】
成分(A)は、市販のものを使用することもできる。耐久性、耐候性、耐熱性、耐加水分解性に優れた接着剤を得るため、例えば、数平均分子量1000の脂肪族ポリカーボネートジオール(旭化成ケミカルズ社製、商品名「デュラノールT5651」)、数平均分子量2000の脂肪族ポリカーボネートジオール(旭化成ケミカルズ社製、商品名「デュラノールT5662」)等を好適に使用することができる。
【0035】
成分(B)ジイソシアネート化合物としては、例えば、脂肪族系、脂環式系、芳香族系、芳香族−脂肪族系等が挙げられるが、脂肪族系、脂環式系のジイソシアネート化合物が好ましく使用される。具体例としては、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,2,4−トリメチルヘキサンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等といった炭素数3〜12の脂肪族イソシアネート;1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)等といった炭素数5〜18の脂環式ジイソシアネート;これらのジイソシアネートの変性物(ビューレット、イソシアヌレート変性物等)等が挙げられるが、中でも皮膜の柔軟性を高め、耐湿熱性を向上させる効果があるIPDIを特に好ましく用いることができる。
【0036】
成分(C)アルキレンジオール化合物としては、1,6ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオールの混合物を好ましく用いることができる。1,8−オクタンジオールより炭素数が多いものを用いると溶剤への溶解性が低下し、又、被膜の強度が低下する。一方、炭素数が1,6ヘキサンジオールより低いものを用いると、被膜が硬くて脆いものとなる。以上より、成分(C)アルキレンジオール化合物としては、上記混合物を用いることが好ましい。
【0037】
成分(C)の添加量については、成分(A)〜(D)の質量部の合計に対する成分(C)の質量部の割合が6%以上12%未満となる添加量であり、上記割合が8%以上11%未満となる添加量であることが好ましく、上記割合が10%となる添加量であることが更に好ましい。上記割合が6%未満であると耐ブロッキング性が不十分となり、12%以上となると、特に裏面保護シートの基材がPETである場合にEVA封止材との密着性が不十分となる。又、成分(C)の炭素数としては、有機溶剤への溶解性及び反応率の観点から、炭素数が6以上8以下であることが好ましい。
【0038】
成分(D)変性イソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート(TDI)のトリメチロールプロパン(TMP)変性物、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のTMPアダクト変性物、イソホロンジイソシアネート(IPDI)のTMPアダクト変性物、TDIのイソシアヌレート変性物、HDIのイソシアヌレート変性物、IPDIのイソシアヌレート変性物、HDIのビュレッ変性物を用いることができる。中でも、中でも被膜硬化膜の柔軟性を高め、耐湿熱性を向上させる効果があるIPDIのTMPアダクト変性物を好適に用いることができる。
【0039】
成分(D)の添加量については、成分(A)〜(D)の質量部の合計に対する成分(D)の質量部の割合が2%以上4%以下となる添加量であり、上記割合が2%以上3%以下となる添加量であることが好ましく、上記割合が2%となる添加量であることが更に好ましい。上記割合が2%以上5%未満の範囲にあるとき、成分(D)との反応により高分子量化した成分(E)の数平均分子量については、6000以上〜12000未満となる。成分(D)の上記割合が、2%未満でると、ブロッキング防止効果が不十分となり好ましくなく、又、4%を超えると、インキがゲル化してしまい溶剤への溶解性が不十分となり好ましくない。
【0040】
成分(E)グリコール変性ポリカーボネートポリウレタンの水酸基価(OH価)は、9.0〜15.0mg/gであることが好ましい。9.0mg/g未満であると、ブロッキング性が低下するため好ましくなく、15.0mg/gを超えると、インキの粘度の上昇及び溶剤への溶解性が低下するため好ましくない。
【0041】
主剤樹脂は、上記の成分(E)単独でもよく、或いは必要により主剤の固形分中に通常50質量%以下の範囲でその他の従来公知のバインダー樹脂を併用してもよい。他のバインダー樹脂として、ポリウレタン、ポリアミド、ニトロセルロース、ポリアクリル酸エステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニルと酢酸ビニルのコポリマー、塩素化ポリプロピレン、スチレンブタジエンゴム、エポキシ樹脂、ロジン系樹脂、ケトンレジン等があげられる。
【0042】
従来公知の易接着層形成用コーティング液においては、主剤には、ブロッキング防止効果を十分なものとするために、ブロッキング防止剤として二酸化珪素化合物等を添加する必要があった。しかし、本発明の易接着裏面保護シートにおいては、易接着層を構成する主剤樹脂の耐ブロッキング性の向上をブロッキング防止剤等の外添によらずに、成分(D)との反応により高分子量化することにより実現している。このため、例えば未処理シリカ等に代表されるフィラーをブロッキング防止剤として添加する必要がなく、このため、易接着層の透明度を容易に高めることが可能である。このように、本発明の易接着裏面保護シートは、可視光線の透過率を90%以上とすることが可能であり、光透過型の太陽電池モジュール用の透明な裏面保護シートとしても好適に用いることができる。
【0043】
[その他の添加剤]
主剤には、必要に応じて密着性助剤としてシランカップリング剤等を添加剤として混合することができる。シランカップリング剤としては、例えば、メチルトリメトキシラン、メチルトリエトキシシラン等のシランモノマー、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のビニルシラン、3−メタクリロキシプロピルエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメトキシシラン等のメタクリルシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシシランを挙げることができる。尚、上記シランカップリング剤の添加量は、接着剤の主剤と硬化剤との合計100質量部に対し1.0から3.0質量%のシランカップリング剤であることが好ましい、シランカップリング剤の添加量が1.0質量%以上であると保護シートと封止材との密着力が良好となるため好ましく、3.0質量%以下であると耐久性が向上するため好ましい。
【0044】
[硬化剤]
硬化剤としては、イソシアネート化合物のうち、ジイソシアネート化合物を好適に使用することができる。上記のように、ジイソシアネート化合物は、主剤樹脂を架橋して硬化(高分子量化)させ、易接着層に含まれる架橋樹脂を形成させる。ジイソシアネート化合物としては、例えば、脂肪族系、脂環式系、芳香族系、芳香族−脂肪族系等が挙げられるが、易接着層が長期間に亘って外部環境に曝されることに伴う着色を抑制するという観点からは、脂肪族系、脂環式系のジイソシアネート化合物が好ましく使用される。
【0045】
ジイソシアネート化合物の具体例としては、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,2,4−トリメチルヘキサンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等といった炭素数3〜12の脂肪族イソシアネート;1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)等といった炭素数5〜18の脂環式ジイソシアネート;これらのジイソシアネートの変性物(ビューレット、イソシアヌレート変性物等)等が挙げられる。これらの中でも、特にHDIヌレート変性物とIPDIのTMPアダクト変性物との混合物を特に好ましく用いることができる。この場合のHDIヌレート変性物とIPDIのTMPアダクト変性物との配合比は、十分な密着性と密着耐久性及び耐ブロッキング性を発現させるために、20/80以上50/50以下であることが好ましく、40/60であることが更に好ましい。
【0046】
[溶剤]
主剤樹脂及び硬化剤には、良好な塗布性及びハンドリング適正を得るために、溶剤成分を添加することが好ましい。このような溶剤成分としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール等のアルコール系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコルモノエチルエーテル等の多価アルコール系溶剤;ジメチルフォルムアミド等のアミド系溶剤;ジメチルスルホキサイド等のスルホキサイド系溶剤;及びこれらの2種以上の混合溶剤が挙げられる。これらの内、好ましいのはアセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、及びこれらの2種以上の混合溶剤である。
【0047】
[易接着層形成用コーティング液の製造方法]
易接着層形成用コーティング液の製造方法は、特に限定されないが、以下に説明する製造方法を好適に用いることができる。
【0048】
まず、主剤樹脂の製造方法について以下に説明する。成分(A)脂肪族ポリカーボネートジオール化合物、成分(B)ジイソシアネート化合物、成分(C)アルキレンジオール化合物、及び成分(D)変性イソシアネート化合物を、ともにアルコール系の溶剤に添加し、窒素雰囲気下において加熱して反応させる。この反応により、成分(A)と成分(B)がウレタン結合して、ポリカーボネートポリウレタンとなり、ポリカーボネートポリウレタンの両末端が成分Cによりグリコール変性されて、グリコール変性ポリカーボネートポリウレタンとなる。グリコール変性ポリカーボネートポリウレタンは、更に、成分(D)と反応して高分子量化して成分(E)グリコール変性ポリカーボネートポリウレタンが調整される。この際、ポリカーボネートポリウレタンと成分(D)の配合比率は、(イソシアネート化合物由来のNCO基)/(ポリカーボネートポリウレタン樹脂のOH基)の当量比が1.0〜1.2の範囲となるようにする。尚、反応温度は60〜200℃であることが好ましく、より好ましくは80〜160℃である。反応時間は5〜8時間であることが好ましい。以上により、主剤樹脂を製造することができる。
【0049】
上記に製造方法の一例を説明した主剤樹脂と、必要に応じて密着性助剤等のその他の添加剤を混合することにより主剤液とすることができる。易接着層形成用コーティング液は、このようにして調整した主剤液と硬化剤とを使用直前に混合する2液タイプのものであることが好ましい。
【0050】
易接着層形成用コーティング液の樹脂濃度は重量基準で、通常は10〜100%であることが好ましく、20〜80%であることが更に好ましい。また粘度は通常50〜500000cP/25℃であることが好ましく、100〜100000cP/25℃であることが更に好ましい。
【0051】
[易接着層の形成方法]
易接着層は、裏面保護シート用基材の表面に易接着層形成用コーティング液を塗布してコーティング塗膜を形成させ、このコーティング塗膜に含まれる溶剤を蒸発後、コーティング塗膜に含まれる主剤樹脂と硬化剤とを架橋反応させて硬化させることによって形成される。
【0052】
裏面保護シート用基材の表面に易接着層形成用コーティング液を塗布する方法としては、従来公知の方法を特に制限なく使用することができる。このような塗布方法としては、印刷法、グラビアコーターによるコーティング法、ロールコーティング法、スプレーコティング法、ディップコーティング法、ベタコーティング法、はけ塗り法等が例示される。
【0053】
コーティング塗膜に含まれる溶剤を蒸発させる方法としては、従来公知の方法を特に制限なく使用することができる。このような蒸発方法としては、加熱法、減圧乾燥法、熱風乾燥法、自然乾燥法等が例示されるが、特に限定されない。コーティング塗膜に含まれる溶剤を蒸発させる条件は、使用される溶剤に合わせて適宜設定すればよいが、加熱時間及び加熱温度については、1〜5分間、50〜120℃の範囲であることが好ましく、2分間、70〜100℃であることが更に好ましい。このように加熱することにより、好ましい耐ブロッキング性及び接着性が発現する。溶剤を蒸発させたコーティング塗膜は、架橋反応を十分に行わせるための養生に付される。養生の条件は、使用される主剤樹脂及び硬化剤の種類に応じて適宜設定すればよいが、例えば、40〜50℃で3〜4日間放置することが挙げられる。
【0054】
コーティング塗膜から溶剤が蒸発除去されると、主剤樹脂、硬化剤及び易接着層形成用コーティング液に添加したその他の添加剤が裏面保護シート用基材の表面に残って膜を形成する。この膜が硬化して易接着層となる。
【0055】
[裏面保護シート用基材]
裏面保護シート用基材は、その表面に上述の易接着層が形成されることにより、易接着性裏面保護シートとなる。裏面保護シート用基材としては、樹脂をシート状に成型した樹脂シートが使用される。このような樹脂シートとしては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリ塩化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、各種のナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアリールフタレート系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アセタール系樹脂、セルロース系樹脂等、各種の樹脂シートを使用することができる。これらの樹脂シートの中でも、特に、ポリエチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンナフタレートが好ましく使用される。中でも、例えば、透明性に優れる透明PETシートが特に好ましい。又、易接着層と反対側の最外層に耐候性に優れるフッ素系樹脂シートを積層することも好ましい。尚、本明細書では、これらの樹脂をシート状に加工したものの名称として樹脂シートという用語を使用するが、この用語は、樹脂フィルムも含む概念として使用される。これらは単独層であってもよく、従来公知の接着剤等で積層された複数層からなる積層体であってもよい。
【0056】
尚、上記した通り、本発明の易接着層は、ブロッキング防止剤を外添する必要がないため、特に透明性に優れ、例えば、透明PETを裏面保護シート用基材とすることにより、本発明の易接着性裏面保護シートを可視光線の透過率が90%以上である透明裏面保護シートとすることができる。このような透明裏面保護シートは、近年需要が増している光透過型(シースルー型)の太陽電池モジュール用の裏面保護シートとして好適に用いることができる。
【0057】
裏面保護シート用基材の厚さは、易接着性裏面保護シートに要求される厚さを考慮して適宜決定すればよい。一例として、裏面保護シート用基材の厚さとしては、10〜300μmが挙げられるが、特に限定されない。
【0058】
以上、実施形態を示して本発明を具体的に説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0059】
<太陽電池モジュール>
次に、上記の易接着性裏面保護シートを用いた太陽電池モジュールの一例について、図1を参照しながら説明する。図1は、本実施形態の易接着性裏面保護シート6が使用された太陽電池モジュール1を模式的に示す断面図である。太陽電池モジュール1は、図1に示すように、入射光の受光面側から、透明前面基板2、前面封止材シート3、太陽電池素子4、背面封止材シート5、及び易接着性裏面保護シート6が順に積層されている。ここで易接着性裏面保護シート6は、上記の易接着層が非露出面側、すなわち背面封止材シート5の側となるように積層される。このように積層することにより、易接着性裏面保護シート6と背面封止材シート5の間における強固な接着性が発現する。尚、透明前面基板2や太陽電池素子4等の構成部材は従来公知のものが使用可能であり特に限定されない。
【0060】
前面封止材シート3及び背面封止材シート5には、EVA(エチレン−酢酸ビニル共重合体)系、PVB(ポリビニルブチラール)系、シリコーン系等の比較的低温で流動する樹脂が用いられる。封止材シートの厚さは、それぞれ50μm〜2000μmの範囲内が好ましく、特に100μm〜1250μmの範囲内が好ましい。本発明の易接着性裏面保護シート6は、特にEVAとの接着性に優れているため、本発明の太陽電池モジュールにおいては、特にEVAからなる封止材シートを好ましく用いることができる。
【0061】
太陽電池モジュール1は、太陽電池素子4を前面封止材シート3及び背面封止材シート5でサンドし、次いで、透明前面基板2及び易接着性裏面保護シート6を順次積層して、例えば真空熱ラミネート加工により一体化することにより製造することができる。この際のラミネート温度は、130℃〜190℃の範囲内とすることが好ましい。また、ラミネート時間は、5〜60分の範囲内が好ましく、特に8〜40分の範囲内が好ましい。
【実施例】
【0062】
以下、実施例によって、本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0063】
<易接着層形成用コーティング液の製造>
(実施例1〜5及び、比較例1〜4)
まず最初に、本発明の易接着性裏面保護シートに使用する易接着層形成用コーティング液を製造した。易接着層形成用コーティング液については、以下に説明する主剤樹脂と硬化剤を所定量配合して製造した。本発明の特長は、易接着層を構成する主剤樹脂のベース樹脂をポリカーボネートポリウレタン(PCU)としたこと、ベース樹脂をグリコール変性、更にはIPDI変性したものであること、且つ、グリコール変性、及びIPDI変性の変性量を特定の範囲に限定した点にある。そこで、グリコール変性量、IPDI変性量の異なる複数の主剤樹脂を用いて、易接着層形成用コーティング液を製造した。具体的製造方法を以下に説明する。
【0064】
[主剤樹脂]
実施例1の主剤樹脂については、下記の通り、脂肪族ポリカーボネートジオールとイソホロンジイソシアネート(IPDI)とからなるポリカーボネートポリウレタン(表1中でPCUと表示)を調整した。
攪拌機、温度計、窒素ガス導入管を備えた丸底フラスコに数平均分子量1000の脂肪族ポリカーボネートジオール(50質量部)と、1,6ヘキサンジオール(70質量部)と、1,8−オクタンジオール(30質量部)と、イソホロンジイソシアネート(IPDI)(176.6質量部)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)のトリメチロールプロパン(TMP)アダクト変性物(10質量部)と、酢酸エチル(333.6質量部)を仕込み、窒素ガス導入下にて、赤外線吸収スペクトルにて2270cm−1のイソシアネートの吸収が消失するまで加熱環流させ、グリコール変性量:10%、IPDI変性量:2%の実施例1の主剤樹脂を調整した。尚、本実施例において、グリコール変性量とは、上記の主剤樹脂成分の全成分質量に対するアルキレンジオール化合物(本実施例においては、1,6ヘキサンジオールとオクタンジオールの混合物)の質量(質量比%)をいい、IPDI変性量とは、上記の主剤樹脂成分の全成分質量に対する変性イソシアネート化合物(本実施例においては、イソホロンジイソシアネート(IPDI)のトリメチロールプロパン(TMP)アダクト変性物)の質量(質量比%)をいう。
【0065】
実施例2〜4及び比較例1〜4の主剤樹脂については、下記の通り調整した。
グリコール変性量及びIPDI変性量がそれぞれ、下記表1の量となるように、1,6ヘキサンジオールと1,8−オクタンジオールの合計添加量、及び、イソホロンジイソシアネート(IPDI)のトリメチロールプロパン(TMP)アダクト変性物の添加量を適宜調整し、その他については、実施例1と同様の配合、方法で調整した。
【0066】
[硬化剤]
ヘキサメチレンジイソシアヌレート(HDI)のヌレート体(40質量部)とイソホロンジイソシアネート(IPDI)のトリメチロールプロパン(TMP)アダクト変性物(60質量部)とからなる硬化剤を調整した。尚、上記各質量部数は、溶剤を含まない固形質量であるが、使用に際しては、固形分75%に調整した。
【0067】
<易接着性裏面保護シートの製造>
上記の通り製造した各易接着層形成用コーティング液を裏面保護シート用基材の一方の面に塗布し、続いて塗布された接着プライマーから溶剤成分を蒸発させることによって、裏面保護シート用基材の表面に易接着層を形成させ、実施例1〜5及び比較例1〜4の易接着性裏面保護シートを製造した。裏面保護シート用基材としては、下記に示したフィルムを用いた。易接着層形成用コーティング液の塗布は、ミヤバー法により行い、1分間、70℃、ドライヤー乾燥により溶剤を蒸発させ、更に、45℃で3日間放置して養生した。
裏面保護シート用基材:下記の樹脂基材を裏面保護シート用基材として用い、後述する試験方法により密着性を評価した
ポリエチレンテレフタレート(PET)基材:厚さ125μm(商品名「ルミラーT60」、東レ社製)及びポリオレフィン系樹脂
【0068】
<易接着性裏面保護シートの密着性評価>
実施例1〜5及び比較例1〜4の易接着性裏面保護シート、封止材、及びガラス基板を一体化して評価用太陽電池モジュールを製造した。一体化は、上面から、ガラス基板、封止材、易接着性裏面保護シートの順となるように積層し、真空ラミネーター(日清紡社製太陽電池モジュールラミネーター:LAMINATOR 0505S)にて熱板温度150℃にて真空引き6分、圧着7分、1気圧でラミネート処理を施すことにより行った。評価用太陽電池モジュールを構成するガラス基板は、TF白板ガラス:厚さ3.2mm(大阪硝子工業社製)封止材シートは、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)樹脂からなるシート(厚さ300μm)を使用した。この評価用太陽電池モジュールについて、下記の試験及び外観検証を行い、密着性、密着耐久性を評価した。評価結果については、下記表1に示す。
【0069】
[剥離試験]
上記評価用太陽電池モジュールが、十分に冷却された後、JIS K6854−3に準じて測定した。15mm巾に切れ目を入れ、テンシロンにて、引っ張り速度50mm/分で、180°剥離試験を実施した。裏面保護シート用PET基材が破断した場合は、表中に基材破断(※1)と記した。また、その他、いずれの層間に剥離が見られたかについても、表中に記した。上記、剥離試験は、それぞれの初期値に加えて、以下の条件下で湿熱耐久(PCT)試験を行い、耐久性を評価した。
[湿熱耐久(PCT)試験]
プレッシャークッカー試験機(平山製作所製:HASTTEST)にて120℃、85%RH、1.6atmの条件に設定し、上記評価用太陽電池モジュールを一定時間投入した。96時間経過後に数時間常温放置し、その後、上記剥離試験を行った。
【0070】
<易接着性裏面保護シートのアンチブロッキング性評価>
実施例1〜5及び比較例1〜4の易接着性裏面保護シートについて、下記のアンチブロッキング性試験を行い、アンチブロッキング性を評価した。
【0071】
[アンチブロッキング性試験]
実施例1〜5及び比較例1〜4の易接着性裏面保護シート表面に、厚さ25μmの透明フッ素フィルム(製品名アフレックス25ND:旭硝子株式会社製)の凹凸面を重ね合わせたものを試料とした。試料を、ロッキングテスター(荷重3kg/cm、40℃)にて168時間静置した。その後、テスターから外した試料の重ね合わせた部分を剥がすことでブロッキング状態を観察して、以下の評価基準により評価した。尚、本試験においては、各実施例、比較例とも、裏面保護シート用基材として、上記のポリエチレンテレフタレート(PET)基材を用いた。評価結果については、下記表2に示す。
◎:易接着層の転移なく、自然にシート同士が剥離する
○:易接着層の転移なく、シート同士の密着はあるが手ごたえなし
△:易接着層の転移なく、基材同士の剥離時の若干の密着手ごたえあり
×:易接着層の転移あり、及び/又は、基材同士の剥離時に密着手ごたえあり
【0072】
<易接着性裏面保護シートの透明性評価>
実施例1〜5及び比較例1〜4の易接着性裏面保護シートについて、下記の透明性試験を行い、透明性を評価した。評価結果については、下記表1に示す。
【0073】
[透明性試験]
実施例1〜5及び比較例1〜4の易接着性裏面保護シートについて、それぞれ、350〜900nmの波長域における光線透過率を、日本分光社製分光光度計(U−4000)を用いて測定した。そして、測定結果について、350〜900nmの波長域における光線透過率が90%以上であれば好ましいもの、下回っていれば好ましくないものとして評価した。
【0074】
尚、比較例4については、接着層形成用コーティング液がゲル化(※2)してしまい、上記測定を行うことができなかった。その他の実施例及び比較例については、そのようなゲル化は全く観察されなかった。
【0075】
【表1】

【0076】
表1により、脂肪族ポリカーボネートジオール化合物を特定の変性量でグリコール変性し、特定量の変性イソシアネート化合物と反応させて高分子量化した樹脂組成物を含有する主剤樹脂からなる易接着層を備える本発明の易接着性裏面保護シートは、太陽電池モジュール用封止材との間に高い初期密着性及び密着耐久性を有し、且つアンチブロッキング性及び透明性においても優れたものであることが分かる。
【0077】
例えば、比較例1の易接着性裏面保護シートは、密着性は高いが、ブロッキング性に劣るため、実際の製品化の際には、ブロッキング防止のためのフィラーの添加が必須となり、透明性が低下してしまう。これに対し、実施例の易接着性裏面保護シートは、いずれもアンチブロッキング性及び透明性を兼ね備えるものであるため、太陽電池モジュール用の裏面保護シートとして極めて好適に用いることができるものである。
【符号の説明】
【0078】
1 太陽電池モジュール
2 透明前面基板
3 前面封止材シート
4 太陽電池素子
5 背面封止材シート
6 易接着性裏面保護シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一又は複数の層からなる裏面保護シート用基材の片面に易接着層が形成された易接着性裏面保護シートであって、
前記易接着層は、
成分(A)脂肪族ポリカーボネートジオール化合物と、
成分(B)ジイソシアネート化合物と、
成分(C)炭素数2以上10以下のアルキレンジオール化合物と、
成分(D)分子内にイソシアネート基を3つ以上有する変性イソシアネート化合物と、
を反応させて得られる成分(E)グリコール変性ポリカーボネートポリウレタンを含有する主剤樹脂が、イソシアネート系の硬化剤により架橋されている架橋樹脂からなり、
前記成分(A)〜(D)の質量部の合計に対する成分(C)の質量部の割合が6%以上12%未満であり、
前記成分(A)〜(D)の質量部の合計に対する成分(D)の質量部の割合が2%以上4%以下であることを特徴とする太陽電池モジュール用易接着性裏面保護シート。
【請求項2】
前記成分(C)の炭素数が6以上8以下である請求項1に記載の易接着性裏面保護シート。
【請求項3】
前記成分(C)が、炭素数の異なる2以上のアルキレンジオール化合物の混合物である請求項1又は2に記載の易接着性裏面保護シート。
【請求項4】
前記成分(C)が、1,6−ヘキサンジオール及び1,8−オクタンジオールの混合物である請求項1から3のいずれかに記載の易接着性裏面保護シート。
【請求項5】
前記成分(D)が、イソホロンジイソシアネート(IPDI)のトリメチロールプロパン(TMP)アダクト変性物である請求項1から4のいずれかに記載の易接着性裏面保護シート。
【請求項6】
前記一又は複数の層のうち、少なくとも前記易接着層が形成されている層がポリエチレンテレフタレートである請求項1から5のいずれかに記載の易接着性裏面保護シート。
【請求項7】
可視光線の透過率が90%以上であることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の易接着性裏面保護シート。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の易接着性裏面保護シートと、エチレン−酢酸ビニル共重合体を含んでなる太陽電池モジュール用封止材とが、前記易接着層を介して密着し、積層されている太陽電池モジュール。

【図1】
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【公開番号】特開2013−74172(P2013−74172A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212827(P2011−212827)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】