説明

易解体性接着剤用エポキシ樹脂組成物、易解体性接着剤及びこれを用いた解体方法

【課題】 本発明は剥離性を発揮させることを目的とした発泡剤、離型剤などを使用しなくても十分な剥離性を有し、さらに初期及び使用時の接着性に極めて優れており、建築用部材、電気電子部品、自動車用部品、事務用品、生活用品等数多くの用途に用いることができる易解体性接着剤用エポキシ樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】 下記一般式(1)
【化1】


(式中、Rは水素原子、又は炭素数1〜4のアルキル基である。)
で表される官能基を有するエポキシ樹脂(A)と硬化剤(B)とを含有する易解体性接着剤用エポキシ樹脂組成物、これを用いた易解体性接着剤、及び該接着剤を用いて得られた接着体の解体方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は初期接着性に優れ、使用後は接着体にエネルギー照射することにより、容易に解体(剥離)し、基材をリサイクル(再利用若しくは分別廃棄処理)可能とする易解体性接着剤用エポキシ樹脂組成物、これを用いる易解体性接着剤及び解体方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
異種の基材を接着剤で貼り合わせた複合接着体は、建築用部材、電気電子部品、自動車用部品、事務用品、生活用品等数多くの用途に用いられている。近年、環境問題、省資源問題等により、接着基材をリサイクル(再利用若しくは分別廃棄処理)させるため、不要となった時には容易に解体(剥離)可能な接着剤が求められている。
【0003】
このような要求に対して、例えば、基材/発泡剤を含有する架橋性ポリマー/架橋性ポリマーを順次積層してなる積層体にエネルギーを照射することにより、再利用し得る基材が得られることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。またエポキシ樹脂系接着剤に離型剤および発泡剤を配合してなるエポキシ樹脂系接着剤組成物がエネルギー照射により、容易に解体(剥離)可能であることが報告されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
しかしながら、これらの易解体性接着剤は、いずれも剥離性を発揮させるために高価な発泡剤を多量に使用しており、経済的にその実用性が問われている。さらに剥離性を追求するが故、接着性を低下させる発泡剤、離型剤等を配合したり、接着性が低い樹脂を使用したりするために、接着体を得る際やそれを用いるときに十分な接着性が得られず、汎用には至っていない。
【0005】
【特許文献1】特開2001−212900号公報(第2−5頁)
【特許文献2】特開2003−286464号公報(第3−4頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記実状に鑑み、本発明は剥離性を発揮させることを目的とした発泡剤、離型剤などを使用しなくても十分な剥離性を有し、さらに初期及び使用時の接着性に極めて優れており、建築用部材、電気電子部品、自動車用部品、事務用品、生活用品等数多くの用途に用いることができる易解体性接着剤用エポキシ樹脂組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために初期及び使用中の接着性を損なうことなく、使用後には十分な剥離性を有するエポキシ樹脂組成物を求めて鋭意検討したところ、下記特定の構造を有するエポキシ樹脂と硬化剤とを含有するエポキシ樹脂組成物は、硬化反応時には通常のエポキシ樹脂と同様に反応することによって強固な接着層を形成することができ、使用後は、エネルギー照射によって該接着層が溶融・分解が進行することにより、解体性を有することを見出し、本発明を完成した。
【0008】
即ち、本発明は、下記一般式(1)
【0009】
【化1】

(式中、Rは水素原子、又は炭素数1〜4のアルキル基である。)
で表される官能基を有するエポキシ樹脂(A)と硬化剤(B)とを含有することを特徴とする易解体性接着剤用エポキシ樹脂組成物、及びこれを用いた易解体性接着剤並びにこれを用いて得られる接着体の解体方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明のエポキシ樹脂組成物は剥離性を発揮させることを目的とした発泡剤、離型剤などを一切使用しなくても使用後に十分な剥離性を有し、さらに初期接着性が極めて優れる。従って、建築用部材、電気電子部品、自動車用部品、事務用品、生活用品等数多くの用途に用いられる易解体性接着剤として極めて有用であり、その解体方法としてはエネルギー照射、特に加熱のみでも解体することができ、工業的に優位な方法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明で使用するエポキシ樹脂(A)は、上記一般式(1)で表される構造を有するものである。エポキシ樹脂(A)を用いて得られる硬化物(接着体)は、通常のエポキシ樹脂と同様に反応が進行してできた三次元架橋構造により、強固な接着層を形成するため、初期及び使用時の接着強度に優れ、かつ、使用後はエネルギー照射によって該構造部分、特にエーテル結合部位より溶融・分解が進行し、剥離性を有するものと考えられる。
【0012】
エポキシ樹脂(A)としては、得られる接着体の剥離性に優れる点から、下記一般式(2)
【0013】
【化2】

(式中、Rは水素原子、又は炭素数1〜4のアルキル基であり、Xは2価の有機基を表す。)
で表されるエポキシ樹脂であることが好ましい。
【0014】
これらのエポキシ樹脂の中でも、低粘度のエポキシ樹脂が得られる点から、前記一般式(2)中の2価の有機基Xが、エチレンオキシエチル基、ジ(エチレンオキシ)エチル基、トリ(エチレンオキシ)エチル基、プロピレンオキシプロピル基、ジ(プロピレンオキシ)プロピル基、トリ(プロピレンオキシ)プロピル基、ブチレンオキシブチル基、ジ(ブチレンオキシ)ブチル基、トリ(ブチレンオキシ)ブチル基等のポリオキシアルキレン骨格を有するもの、炭素原子数2〜15のアルキレン基、又はシクロアルカン骨格を有する炭素原子数6〜17の脂肪族炭化水素基であるものが好ましい。
【0015】
これらの中でも、得られるエポキシ樹脂が低粘度であり、硬化物の柔軟性に優れる点、或いはエポキシ樹脂の水溶性に優れることから、前記一般式(2)中のXがポリオキシアルキレン骨格を有するものであることが好ましい。また、得られる硬化物の低吸湿性、誘電特性に優れることから、Xがシクロアルカン骨格を有する炭素原子数6〜17の脂肪族炭化水素基であることが好ましい。さらに、得られるエポキシ樹脂の低粘度性、硬化物の柔軟性、低吸湿性、誘電特性にバランス良く優れることから、Xが炭素原子数2〜15のアルキレン基であることが好ましい。
【0016】
また、前記エポキシ樹脂(A)としては、25℃における粘度が200mPa・s以下であることが流動性・作業性や、組成物配合の自由度等の点で好ましい。さらに好ましくは、同条件の粘度が100mPa・s以下である。
【0017】
また、前記エポキシ樹脂(A)としては、接着基板のリサイクル性に優れる点から、水溶性であることが好ましく、具体的には25℃において、後述する希釈価が20以上であることが好ましい。さらに好ましくは、同条件での希釈価が1000以上である。
【0018】
更に該エポキシ樹脂(A)としては、全塩素(ブタノール溶液中で金属ナトリウム処理後に、硝酸銀滴定法にて得られる塩素含有量)が50ppm以下であることが、得られる硬化物の耐湿信頼性に優れることから好ましい。さらに好ましくは10ppm以下である。
【0019】
前記エポキシ樹脂(A)の製造方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、ビニルエーテル類(a1)とグリシドール類(a2)とのアセタール化反応による製造方法を挙げることができる。
【0020】
前記アセタール化反応は、ビニルエーテル類(a1)中のビニルエーテル基とグリシドール類(a2)中の水酸基との付加反応であり下記化学反応式
【0021】
【化3】

で表されるものである。
【0022】
前記ビニルエーテル類(a1)としては、特に限定されないが、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル、tert−アミルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、n−ドデシルビニルエーテル、n−オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、モノビニルエーテル類;エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレンレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレンレングリコールジビニルエーテル、トリプロピレングリコールジビニルエーテル、テトラプロピレンレングリコールジビニルエーテル、ジブチレングリコールジビニルエーテル、トリブチレングリコールジビニルエーテル、テトラブチレングリコールジビニルエーテル等のポリオキシアルキレン基を含有するジビニルエーテル類;1,3−ブタンジオールジビニルエーテル、1,4−ブタンジジオールジビニルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジビニルエーテル、1,9−ノナンジオールジビニルエーテル、1,10−デカンジオールジビニルエーテル、ネオペンチルグリコールジビニルエーテル、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジビニルエーテル等のアルキレン基を有するジビニルエーテル類;1,4−シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリシクロデカンジオールジビニルエーテル、トリシクロデカンジメタノールジビニルエーテル、ペンタシクロペンタデカンジメタノールジビニルエーテル、ペンタシクロペンタデカンジオールジビニルエーテル等のシクロアルカン構造を含有するジビニルエーテル類;ビスフェノールAジビニルエーテル、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジビニルエーテル、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールAジビニルエーテル、ビスフェノールFジビニルエーテル、エチレンオキサイド変性ビスフェノールFジビニルエーテル、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールFジビニルエーテルのようなジビニルエーテル類;トリメチロールプロパントリビニルエーテル、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリビニルエーテル、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテルのような3価ビニルエーテル類、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ペンタエリスリトールエトキシテトラビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテルのような4価ビニルエーテル類;ジペンタエリスリトールヘキサ(ペンタ)ビニルエーテル多価ビニルエーテル類などが挙げられる。
【0023】
これらの中でも、得られるエポキシ樹脂が低粘度で流動性が高く、その硬化物の特性バランスが良い点から、ジビニルエーテル類が好ましい。ジビニルエーテル類を用いた場合には、前記一般式(2)で表されるエポキシ樹脂を得ることができる。前記ジビニルエーテル類としては、得られるエポキシ樹脂の所望の特性を考慮して、適当なものを選択すればよいが、例えば、エポキシ樹脂の低粘度性と硬化物の柔軟性に加えて、優れた水溶性も所望するならば、ポリオキシアルキレン骨格を含有するジビニルエーテル類を用いることが好ましい。又、得られる硬化物の優れた低吸湿性、誘電特性を所望するならば、シクロアルカン骨格を含有するジビニルエーテル類を用いることが好ましい。
【0024】
前記グリシドール類(a2)としては、エポキシ基と水酸基とを有するグリシドールやβ位メチル基置換グリシドールなどが挙げられるが、工業的な入手のし易さや経済性、及び硬化性を考慮するとグリシドールを用いることが好ましい。
【0025】
前記ビニルエーテル類(a1)とグリシドール類(a2)との反応について述べる。反応方法としては、ビニルエーテル類(a1)とグリシドール類(a2)とを仕込み、撹拌混合しながら加熱することによってエポキシ樹脂を得ることができる。この場合、必要に応じて、有機溶媒や触媒を使用することができる。使用できる有機溶媒としては、特に限定されるものではないが、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族性有機溶媒や、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系有機溶媒等を挙げることができ、用いる原料や生成物の溶解度などの性状や反応条件や経済性等を考慮して適宜選択すればよい。有機溶媒の量としては、原料重量に対して、5〜500重量%の範囲で用いることが好ましい。
【0026】
また前記触媒としては、通常、無触媒系においても反応は進行するが、反応速度を高めたり、グリシドールの自己重合を防ぐ低温条件で反応を進めたりするためには、触媒を用いた方が好ましい。その触媒としては、例えば、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸などの無機酸、酸性燐酸エステル類、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、キシレンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、シュウ酸、ギ酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸など有機酸、塩化アルミニウム、塩化鉄、塩化スズ、塩化ガリウム、塩化チタン、臭化アルミニウム、臭化ガリウム、三弗化ホウ素エーテル錯体、三弗化ホウ素フェノール錯体などのルイス酸等が挙げられ、添加量としては、原料全重量に対して、10ppm〜5重量%の範囲で用いることができる。これらの中でも、酸性燐酸エステル類が反応速度が良好であり、副反応が少ない点等から特に好ましい。
【0027】
ビニルエーテル類(a1)とグリシドール類(a2)との反応操作条件としては、通常、室温から150℃、好ましくは20〜100℃の温度で、0.5〜30時間程度、加熱撹拌すればよい。反応の進行程度は、ガスクロマトグラフィーや液体クロマトグラフィー、GPC等を用いて、原料の残存量を測定することによって追跡できる。また有機溶媒を使用した場合は、反応終了後、蒸留等でそれを除去し、触媒を使用した場合は、必要によって失活剤等で失活させて、水洗や濾過操作によって除去することが好ましい。
【0028】
上記反応におけるビニルエーテル類(a1)とグリシドール類(a2)との反応比率としては、特に限定されず、所望の特性に応じて調製すればよい。例えば、硬化物物性を犠牲にしてでも低粘度を優先するならば、ビニルエーテル基に対して当量以下のグリシドール基の仕込量にして、ビニルエーテル基を残存させてエポキシ化率を下げればよい。それで得られたエポキシ樹脂は、残存ビニルエーテル基を利用した光及び熱カチオン重合システムが応用できる。逆に、硬化物物性を優先するならば、グリシドール基をビニルエーテル基に対して当量以上に仕込んで、ビニルエーテル基からのエポキシ基への添加率を可能な限り高めればよい。反応終了後に残存する過剰のグリシドール類は、アルカリ水洗等に操作でグリセリンまで変化させて、水抽出等で除去すればよい。従って、所望の特性が鑑みながら、ビニルエーテル類とグリシドール類の反応比率が、ビニルエーテル基/グリシドール基=100/25〜100/300(モル比)になるような仕込み条件で反応させればよい。
【0029】
本発明で用いる硬化剤(B)としては、種々のものが使用でき、特に限定されないが、例えば、アミン系化合物、酸無水物系化合物、アミド系化合物、フェノ−ル系化合物などの硬化剤を用いることができる。これらの例としては、アミン系化合物としては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ペンタエチレンヘキサミンなどの脂肪族ポリアミン類や、メタキシリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、フェニレンジアミンなどの芳香族ポリアミン類や、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、イソホロンジアミン、ノルボルナンジアミンなどの脂環族ポリアミン類等や、ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンとより合成されるポリアミド樹脂が挙げられる。
【0030】
また、酸無水物系化合物としては、例えば、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸などが挙げられる。
【0031】
また、フェノール系化合物としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール付加型樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、トリメチロールメタン樹脂、テトラフェニロールエタン樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂、アミノトリアジン変性フェノール樹脂やこれらの変性物等が挙げられる。また潜在性触媒として、イミダゾ−ル、BF−アミン錯体、グアニジン誘導体なども挙げられる。
【0032】
また、これらのアミン系化合物、酸無水物系化合物、アミド系化合物、フェノ−ル系化合物等の硬化剤は単独で用いてもよく、2種以上を混合してもよい。
【0033】
前記硬化剤(B)の使用量としては、硬化が円滑に進行し、良好な硬化物性が得られることから、エポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対して、硬化剤中の活性水素基が0.7〜1.5当量になる量が好ましい。
【0034】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において前記エポキシ樹脂(A)以外のその他のエポキシ樹脂を併用して使用することができる。併用する場合には、得られる硬化物の剥離性を維持するために前記エポキシ樹脂(A)の全エポキシ樹脂に占める割合が10重量%以上であることが好ましく、特に30重量%以上であることが好ましい。前記その他のエポキシ樹脂としては、特に限定されず種々のエポキシ樹脂を用いることができるが、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、レゾルシン型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、カテコール型エポキシ樹脂、ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、アリル基置換型ビスフェノール型エポキシ樹脂、アルキル基置換型ジヒドロキベンゼン型エポキシ樹脂等のビスフェノール型液状エポキシ樹脂や、1,6−ヘキサンジオール型、ネオペンチルグリコール型、水添ビスフェノールA型、ブチルグリシジルエーテルなどのアルコールエーテル型エポキシ樹脂、アルキルフェノールグリシジルエーテルなどの1官能反応性希釈剤型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等の結晶性エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン−フェノール付加反応型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂型エポキシ樹脂、ビフェニル変性ノボラック型エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールA型エポキシ樹脂、ブロム化フェノールノボラック型エポキシ樹脂などが挙げられる。これらのその他のエポキシ樹脂は単独で用いてもよく、2種以上を混合してもよい。
【0035】
これらの中でも、特に低粘度性が必要となる用途においては、液状エポキシ樹脂と組み合わせることが好ましく、具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、レゾルシン型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、カテコール型エポキシ樹脂、ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂等との組み合わせが好適である。またそれらを分子蒸留して高純度化したタイプとの組み合わせはより好ましい。
【0036】
また、本発明のエポキシ樹脂組成物には、硬化促進剤を適宜使用することもできる。硬化促進剤としては種々のものが使用できるが、例えば、リン系化合物、第3級アミン、イミダゾール、有機酸金属塩、ルイス酸、アミン錯塩、等が挙げられ、これらは単独のみならず2種以上の併用も可能であり、リン系ではトリフェニルホスフィン、アミン系では1,8−ジアザビシクロ−[5,4,0]−ウンデセン(DBU)などが、硬化性、耐熱性、電気特性、耐湿信頼性などが優れるために好ましい。
【0037】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、無機質充填材を配合することができる。前記無機質充填材としては、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、窒化珪素、水酸化アルミ等が挙げられる。前記無機充填材の配合量を特に大きくする場合は溶融シリカを用いることが好ましい。前記溶融シリカは破砕状、球状のいずれでも使用可能であるが、溶融シリカの配合量を高め且つ成形材料の溶融粘度の上昇を抑制するためには、球状のものを主に用いる方が好ましい。更に球状シリカの配合量を高めるためには、球状シリカの粒度分布を適当に調整することが好ましい。その充填率は難燃性を考慮して、高い方が好ましく、エポキシ樹脂組成物の全体量に対して65重量%以上が特に好ましい。また導電ペーストなどの用途に使用する場合は、銀粉や銅粉等の導電性充填剤を用いることができる。
【0038】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、必要に応じて、シランカップリング剤、離型剤、顔料、乳化剤等の種々の配合剤を添加することができる。
【0039】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、必要に応じて難燃付与剤も添加できる。前記難燃付与剤としては種々のものが使用できるが、例えば、デカブロモジフェニルエーテル、テトラブロモビスフェノールAなどのハロゲン化合物、赤リンや各種燐酸エステル化合物などの燐原子含有化合物、メラミン或いはその誘導体などの窒素原子含有化合物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硼酸亜鉛、硼酸カルシウムなどの無機系難燃化合物が例示できる。
【0040】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、各成分を均一に混合することにより得られ、前記エポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)、更に必要により硬化促進剤の配合された本発明のエポキシ樹脂組成物は種々の方法で容易に硬化物(接着体)とすることができる。
【0041】
本発明の易解体性接着剤は、上記で得られるエポキシ樹脂組成物を用いることを特徴とし、接着基材の再利用が求められる用途、例えば、建築用部材、電気電子部品、自動車用部品、事務用品、生活用品等数多くの用途に使用することができる。
【0042】
前記易解体性接着剤の接着体(硬化物)は、使用後にエネルギーを照射することにより、接着基材が接着体から容易に解体(剥離)、回収され、再利用できる。また、回収された金属、プラスチックなどの接着基材は溶融成形して再利用しても良い。接着体に照射するエネルギーとしては、例えば紫外線、可視光、赤外線、レーザー光線等の光エネルギー、マイクロ波、超音波、電波、磁場等の電磁気エネルギー、加熱、冷却等の熱エネルギー等が挙げられ、中でも光エネルギー、熱エネルギー照射が好ましく、とりわけ加熱が好適である。実践的な接着基材の回収方法としては、例えば、乾燥機、温水(温油)槽等に接着体を入れ、100〜300℃程度、好ましくは150〜250℃で加熱することにより、接着剤が溶融し、有機溶剤等を染み込ませた布等で基材を拭き取り、接着基材を回収する方法、火炎、赤外線、遠赤外線、スチーム、超音波、電磁場等を照射して前記同様、接着剤を溶融させ、拭き取り、接着基材を回収する方法等が挙げられる。中でも150〜250℃に予熱した乾燥機で加熱する方法が好適である。
【実施例】
【0043】
以下、本発明を実施例により説明する。
【0044】
合成例1 下記構造式(I)のエポキシ樹脂の合成
【0045】
【化4】

【0046】
温度計、撹拌機を取り付けたフラスコに1,4−シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル(日本カーバイト工業株式会社製:商品名CHDVE)196gとグリシドール(2,3−エポキシ−1−プロパノール)148gを仕込み、室温でメチルアシッドフォスフェート(大八社製:商品名AP−1)1gを添加し、70℃まで昇温して8時間撹拌を続けた。GPCで原料の実質的な消失を確認後、内容物を取り出し、無色透明の液体を345g得た。その樹脂はNMRスペクトル(13C)から、またマススペクトルで理論構造に相当するM=344のピークが得られたことから前記構造式(I)で表されるエポキシ樹脂(A−1)であることを確認した。その樹脂のエポキシ当量は185g/eqであり、GPCによって測定された理論構造体〔前記構造式(I)の構造〕の含有量は71面積%であった。また25℃における粘度(E型粘度計)は129mPa・sであり、全塩素(ブタノール溶液中で金属ナトリウム処理後に、硝酸銀滴定法)は定量限界以下(定量限界=10ppm)であった。さらに水溶性評価(希釈価;100mlの三角フラスコにエポキシ樹脂5gを入れて、25℃でマグネットスターラーで撹拌しながら蒸留水を滴下し、白濁に要する蒸留水の容量を求め、下式により算出)において希釈価は38であった。
【0047】
【数1】

【0048】
合成例2 下記構造式(II)のエポキシ樹脂の合成
【0049】
【化5】

【0050】
合成例1において、1,4−ヘキサンジメタノールジビニルエーテル196gをトリエチレングリコールジビニルエーテル(ISP社製:商品名Rapi−Cure DVE−3)202gに変更した以外は、合成例1と同様にして、無色透明の液体を351g得た。その樹脂はNMRスペクトル(13C)から、またマススペクトルで理論構造に相当するM=350のピークが得られたことから前記構造式(IIで表されるエポキシ樹脂(A−2)であることを確認した。その樹脂のエポキシ当量は188g/eqであり、GPCによって測定された理論構造体〔前記構造式(II)の構造〕の含有量は71面積%であった。また25℃における粘度(E型粘度計)は34mPa・sであり、全塩素は定量限界以下、希釈価は1000以上であった。
【0051】
合成例3 下記構造式(III)のエポキシ樹脂の合成
【0052】
【化6】

【0053】
合成例1において、1,4−ヘキサンジメタノールジビニルエーテル196gを1,4−ブタンジオールジビニルエーテル(ISP社製:商品名Rapi−Cure DVB1D)142gに変更した以外は、合成例1と同様にして、無色透明の液体を291g得た。その樹脂はNMRスペクトル(13C)から、またマススペクトルで理論構造に相当するM=290のピークが得られたことから前記構造式(III)で表されるエポキシ樹脂(A−3)であることを確認した。その樹脂のエポキシ当量は154g/eqであり、GPCによって測定された理論構造体〔前記構造式(III)の構造〕の含有量は76面積%であった。また25℃における粘度(E型粘度計)は24mPa・sであり、全塩素は定量限界以下、希釈価は28であった。
【0054】
実施例1〜6及び比較例1〜2
上記のようにして合成した3種のエポキシ樹脂(A−1)、(A−2)、(A−3)を下記項目について評価した。比較にはビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(A’−1、大日本インキ化学工業株式会社製:商品名EPICLON 850S、エポキシ当量188g/eq)を用いた。また硬化剤として酸無水物硬化剤(B−1、大日本インキ化学工業株式会社製:商品名EPICLON B−570、酸無水物当量166g/eq)、またはイミダゾール硬化剤(B−2、2−エチル−4−メチルイミダゾール)を用いた。酸無水物硬化系では、エポキシ当量と酸無水物当量が当量になるような配合(促進剤としてベンジルジメチルアミンをエポキシ樹脂と硬化剤との合計100重量部に対して0.8重量部配合した。)、イミダゾール硬化系ではエポキシ樹脂100部、イミダゾール硬化剤4部になるような配合で行い、均一になるまで攪拌してエポキシ樹脂組成物を得た。硬化は酸無水物硬化系では110℃で3時間+165℃で2時間、イミダゾール硬化系では150℃で5時間加熱して行った。
【0055】
剥離性 評価方法
JIS K―6850に記載された試験片の作製方法に準拠して、アルミニウム板(Al板、1.6mm×25mm×100mm、A1050P、テストピース社製、トルエンにて脱脂)とポリカーボネート板(PC板、1.6mm×25mm×100mm、PC、テストピース社製、トルエンにて脱脂)を張り合わせた試験片(接着体)を作製した。剥離性の評価は、試験片(接着体)を200℃の乾燥機の中に入れ、5時間放置し、さらに室温で1時間放置した後、試験片を素手で容易に剥離できた場合を○、剥離できない場合は×と判定した。得られた結果を表−1に示す。
【0056】
拭き取り性 評価方法
剥離性の評価で回収された接着基板を用いて拭き取り性を評価した。アセトンを染み込ませた布を用いて、アルミニウム板およびポリカーボネート板に付着した接着層を拭き取り、容易に拭き取れた場合を○、拭き取れなかった場合を×と判定した。得られた結果を表−1に示す。
【0057】
【表1】

【0058】
この結果から、本発明のエポキシ樹脂組成物を用いた接着体は、加熱することにより、容易に剥離することができ、さらに、接着基材である金属やプラスチックに付着した接着層も容易に拭き取れることを確認できた。
【0059】
実施例7〜9と比較例3〜5
エポキシ樹脂(A−1)を用いて下記項目について評価した。比較にはビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(A’−1、大日本インキ化学工業株式会社製:商品名EPICLON 850S、エポキシ当量188g/eq)を用いた。また硬化剤として酸無水物硬化剤(B−1、大日本インキ化学工業株式会社製:商品名EPICLON B−570、酸無水物当量188g/eq)、またはイミダゾール硬化剤(B−2、2−エチル−4−メチルイミダゾール)、脂肪族アミン硬化剤(B−3、トリエチレンテトラミン、活性水素当量24g/eq)を用いた。酸無水物硬化系およびイミダゾール硬化系では剥離性の評価と同配合、脂肪族アミン硬化系ではエポキシ当量と活性水素当量が当量になるような配合で均一になるまで攪拌して、エポキシ樹脂組成物を得た。硬化は酸無水物硬化系およびイミダゾール硬化系では剥離性の評価と同条件、脂肪族アミン硬化系では80℃で3時間、更に150℃で2時間の硬化条件で行った。
【0060】
接着性 評価方法
引っ張りせん断試験により接着性を評価した。引っ張りせん断試験JIS K―6850に準拠した方法で実施した。接着基板はアルミニウム板(Al板、1.6mm×25mm×100mm、A1050P、テストピース社製、トルエンにて脱脂)と冷延鋼板(1.6mm×25mm×100mm、SPCC−SB、テストピース社製、トルエンにて脱脂)の2種を用いた。接着性は破断応力(MPa)で比較した。得られた結果を表−2に示す。
【0061】
【表2】

【0062】
この結果から、本発明のエポキシ樹脂は優れた接着性を有するビスフェノールA型液状エポキシ樹脂と比較して、さらに高度な接着性を有することが確認できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】

(式中、Rは水素原子、又は炭素数1〜4のアルキル基である。)
で表される官能基を有するエポキシ樹脂(A)と硬化剤(B)とを含有する易解体性接着剤用エポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
エポキシ樹脂(A)が、下記一般式(2)
【化2】

(式中、Rは水素原子、又は炭素数1〜4のアルキル基であり、Xは2価の有機基を表す。)
で表されるエポキシ樹脂である請求項1記載の易解体性接着剤用エポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
エポキシ樹脂(A)が、ビニルエーテル類(a1)とグリシドール類(a2)とを反応させて得られるエポキシ樹脂である請求項2記載の易解体性接着剤用エポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
ビニルエーテル類(a1)が、ジビニルエーテル類である請求項3記載の易解体性接着剤用エポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
ビニルエーテル類(a1)が、ポリオキシアルキレン骨格、シクロアルカン骨格及びアルキレン骨格からなる群から選ばれる1種以上の骨格を含有するものである請求項4記載の易解体性接着剤用エポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
エポキシ樹脂(A)の25℃における粘度が200mPa・s以下である請求項1〜5の何れか1項記載の易解体性接着剤用エポキシ樹脂組成物。
【請求項7】
エポキシ樹脂(A)の25℃における水に対する希釈価が20以上である請求項6記載の易解体性接着剤用エポキシ樹脂組成物。
【請求項8】
エポキシ樹脂(A)の全塩素が10ppm以下である請求項6記載の易解体性接着剤用エポキシ樹脂組成物。
【請求項9】
硬化剤(B)が、多価ヒドロキシ化合物、酸無水物化合物、アミン系化合物及びイミダゾール系化合物からなる群から選ばれる1種類以上の化合物である請求項1記載の易解体性接着剤用エポキシ樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1〜9の何れか1項記載のエポキシ樹脂組成物を用いることを特徴とする易解体性接着剤。
【請求項11】
請求項10記載の易解体性接着剤を用いて得られる接着体を150〜250℃に加熱して解体することを特徴とする解体方法。


【公開番号】特開2006−111716(P2006−111716A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−299965(P2004−299965)
【出願日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】