説明

易開封性シュリンク包装食品容器とその製造方法

【課題】シュリンクフィルムに容易に開封部を形成することができ、保管、配送、陳列時の開封部の破損を抑制しながら、しかも容易に開封することができる易開封性シュリンク包装食品容器とその製造方法を提供する。
【解決手段】内部に食品を充填した食品容器1の全体をシュリンクフィルム4で被覆し、食品容器1の底面22において、底上げ部24を覆うシュリンクフィルム4の表面に、10W以下の低出力レーザマーカ6により、開封部5となる不連続なレーザ痕よりなるマーカパターン51を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品用の容器外表面をシュリンクフィルムで包装し、易開封性の開封口を設けて、開封性を改善した食品容器とその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えばカップ麺、具入りスープといったインスタント食品は、紙またはプラスチック製の容器に食品を充填した後、シュリンクフィルムで包装することにより、容器の破損等から製品を保護している。シュリンク包装は、例えばポリプロピレン(PP)等のフィルムで容器全体を被覆した後、ヒートシールしてフィルム端縁同士を圧着封止することによりなされる。
【0003】
このようなシュリンク包装を施された食品容器は、使用時にシュリンクフィルムを開封する手間がかかる。そこで開封を容易にするために、シュリンク包装に先立ってシュリンクフィルムにミシン目や切込みを設けることが行われている。例えば、特許文献1のように、フィルムに切込みを入れた後にシュリンク包装し、さらにフィルムの切込みを覆うように、開封用のラベルを貼付する方法がある。
【0004】
具体的には、特許文献1の方法では、ピローシュリンク包装機にフィルム幅方向中央に刃を有する治具を設け、繰り出される熱収縮性フィルムに直線状やV字状の切込みを複数設けてから、矩形プラスチック容器等をピロー包装し、シュリンクさせる。その後、容器上面または側面において、切込みにより形成させる空隙部の少なくとも1つが覆われるように、つまみ部を有するラベルを貼付ける。
【0005】
また、特許文献2のように、容器をシュリンク包装するための塩化ビニル樹脂(PVC)等からなる包装体に、開封用の2重ミシン目を、例えば平行または千鳥に形成する方法がある。この方法では、二重ライン上のミシン目を入れるための2枚の刃を有するカッターを用いて、予め包装体の所定位置にミシン目を入れ、容器形状に合わせた外形に包装体を切断した後、例えば筒状の容器外周に装着する。包装体が装着された容器は、さらに、加熱部へ送られてシュリンク包装される。ミシン目形状は、シュリンクによる縮みを考慮して設定され、包装体の切断時に、ミシン目の開封を支援する摘みとなる爪部を設けて、開封を容易にしている。
【0006】
あるいは、特許文献3のように、帯状フィルムの長手方向に開裂帯を設けて、幅方向の力により容易に開裂可能とした包装用フィルムが提案されている。開裂帯は、例えば一対のくの字状の凹部の組を長手方向に並列し、さらにこれを幅方向に複数列形成する。各凹部組は、エンボスローラと所定硬度の受けローラとの間にフィルムを挟んで走行することにより形成される。この包装用フィルムを用いて包装することで、被包装物の種類や形状によらず、包装後の開封が容易になるとされている。
【0007】
また、特許文献4には、熱収縮時の脱気を行う脱気孔が形成された熱収縮性フィルムにより、食品容器等の被包装物をシュリンク包装した後に、脱気孔の近傍位置に、開封用の切り込みを設けるシュリンク包装体が開示されている。開封用の切り込みは、切り込み形成刃により刻設され、脱気孔と切り込みをまとめて開封用のラベルを貼着し、密封状態とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−173340号公報
【特許文献2】特開平9−207922号公報
【特許文献3】特開2009−154905号公報
【特許文献4】特開2002−205712号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、予めミシン目や切込みを設けてからシュリンク包装する方法では、シュリンク包装後のミシン目や切込みを所望の位置とすることが難しい。このため、特許文献1のように、視認されやすい容器上面や側面にミシン目や切込みを配置する方法では、その位置が一定せずに外観を損ねるだけでなく、フィルムの熱収縮に伴いミシン目や切込みも変形するために、一定の開封性が得られない問題があった。また、保管、配送、陳列時にミシン目や切込みが開いて破損するおそれがある。
【0010】
このため、特許文献1のように、切込みが隠れるようラベルを貼付する方法が採用されるが、部品点数や貼付工程が増えることになり、コストが増加する。また、刃具による切込みは包装途中さらには貼付工程までの間に破れを生じやすい。あるいは、破損しにくいようにミシン目を形成すると、開封性が低下する。特許文献1の方法では、これらを回避するためにカット長や形状、カット方向を厳しく規定して、シュリンク後に切込みが開いた所定の空隙部となるようにしており、製造が容易でない。しかも、シュリンク後の空隙部の全部がラベルで覆われない場合には、上面や側面に開口を有することになり、衛生面が重視される食品容器には適さない。
【0011】
特許文献2の方法ではラベルを貼付せず、容器を筒状に取巻く包装体と一体に爪部を形成するが、容器全体をシュリンクフィルムで覆う食品容器には適さない。特許文献3のように、帯状フィルムの長手方向に形成した複数組列の開裂帯をエンボスローラにて設ける方法は、手指で幅方向に開裂するので衛生面で優れるが、開封性を高めるには、多数列多数組の開裂帯を形成する必要がある。また、シュリンク後の位置が一定しないと外観や開封性に影響し、フィルムの製作に手間がかかり、コスト増となりやすい。
【0012】
特許文献4の方法は、シュリンク包装後に開封用の切り込みを設けるので、形成位置を一定とすることはできるが、密封用のラベルを貼着する必要がある。また、切り込み形成刃を用いるため、容器やフィルムに損傷を与えるおそれがあり、製作が容易でない。
【0013】
そこで本発明は、シュリンクフィルムに容易に開封部を形成することができ、外観や衛生面に優れ、保管、配送、陳列時の開封部の破損を抑制しながら、しかも容易に開封することができる易開封性シュリンク包装食品容器とその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本願請求項1の発明は、内部に食品を充填した食品容器の全体をシュリンクフィルムで被覆し、該シュリンクフィルムに開封部を設けた易開封性シュリンク包装食品容器であって、
上記食品容器の底面は、脚部となる外周縁部の内側に底上げ部を有する形状であり、
上記開封部は、上記底上げ部を覆うシュリンクフィルムの表面に、10W以下の低出力レーザマーカにより形成される不連続なレーザ痕よりなるマーカパターンであることを特徴とする。
【0015】
本願請求項2の発明において、上記底上げ部は、最大高さが3mm以上であり、上記開封部となるマーカパターンは、上記底上げ部の中央部または周縁部に形成されるU字状、I字状または円弧状のパターンである。
【0016】
本願請求項3の発明において、上記開封部は、1mm以下の微細なレーザ痕にて形成されるミシン目状のマーカパターンである。
【0017】
本願請求項4の発明において、上記底上げ部は、略台形の断面形状を有し、最大高さが10mm以下である。
【0018】
本願請求項5の発明において、上記食品容器は、硬質パルプモールド成形体である。
【0019】
本願請求項6の発明は、易開封性シュリンク包装食品容器の製造方法であって、
底面に底上げ部を有する形状の食品容器の内部に食品を充填してその全体をシュリンクフィルムで被覆するシュリンク包装工程と、
シュリンク包装した上記食品容器の底面を覆うシュリンクフィルムの表面に、レーザマーカにより開封部となるマーカパターンを形成するパターン形成工程を有し、
該パターン形成工程における上記レーザマーカ出力を10W以下、焦点距離を120mm以下に設定し、上記底上げ部に対向するシュリンクフィルムの所定位置に、不連続なレーザ痕よりなる所定形状のマーカパターンを形成して上記開封部とすることを特徴とする。
【0020】
本願請求項7の発明は、パターン形成工程における上記レーザマーカ出力を4〜8Wとする。
【0021】
本願請求項8の発明は、上記食品容器の底面が、脚部となる外周縁部の内側に最大高さが3mm以上の底上げ部を有する形状であり、上記マーカパターンが形成される位置における上記底上げ部の高さを10mm以下とする。
【0022】
本願請求項9の発明は、マーカパターンを、容器底面の高さとシュリンクフィルムのテンションの有無に基づいて、U字状、I字状および円弧状の中から選択する。
【発明の効果】
【0023】
本願請求項1の発明によれば、低出力レーザマーカのレーザ痕にて開封部となるマーカパターンを形成するので、容器全体をシュリンクフィルムで被覆した後に、所望の位置に精度よく開封部を形成することができる。この時、食品容器は、底面に底上げ部を有するので、保管時や陳列時の安定性に優れ、レーザ出力を制御することで、シュリンクフィルムに近接する容器底部に、焦げ等の不具合を生じさせることなく、シュリンクフィルムにのみ、レーザ照射による所定のマーカパターンを形成することができる。
【0024】
そして、低出力レーザによる微細なレーザ痕にて開封部が一定位置に容易に形成されるので、外観が良好であり、刃具による切込みのように開口せず、しかも開封時に手指で容易に押し開くことができる。したがって、衛生面で優れ、従来のように開封用のラベル等を貼付ける必要がないので、製作コストが低減できる。よって、保管、配送、陳列時の開封部の破損を抑制しながら、開封性を向上させることができる。
【0025】
本願請求項2の発明によれば、底上げ部の最大高さを3mm以上とすることで、その中央部のみならず脚部に近い周縁部に対向する位置にも、焦げや傷等を生じることなく、マーカパターンを形成できる。マーカパターンは、底上げ部形状や形成位置、シュリンクフィルムの種類等に応じてU字状、I字状または円弧状のパターンから選択することで良好な開封性を確保することができる。
【0026】
本願請求項3の発明によれば、上記開封部を微細なレーザ痕にてミシン目状に形成されるので、開封のための力を加えるまでは開口することがなく、より破損しにくい高品質な開封部とすることができる。
【0027】
本願請求項4の発明によれば、底上げ部が略台形のモールド成形体等では、最大高さを10mm以下とすることで、食品容器の内部形状を損なうことなく、全体をコンパクトにすることができる。
【0028】
本願請求項5の発明によれば、食品容器を硬質パルプモールド成形体とするので、リサイクル性に優れ、高強度で、任意形状の外観の良好な容器とすることができる。また、硬質パルプモールド成形体は、底面の底上げ部が比較的低くなるため、刃具等による開封部の形成は難しいが、本発明のマーカパターンによる開封部を設けることで、低コストで開封性の良好な食品容器を実現できる。
【0029】
本願請求項6の発明によれば、容器全体をシュリンクフィルムで被覆した後に、レーザマーカにてパターン形成するので、所望の位置に精度よく開封部を形成することができる。この時、レーザ出力を10W以下、焦点距離を120mm以下に制御することで、シュリンクフィルムに近接する容器底面に、焦げ等の不具合を生じさせることなく、シュリンクフィルム表面に、レーザ照射による所定のマーカパターンを形成することができる。
【0030】
そして、開封部が一定位置に容易に形成されるので、外観が良好であり、従来のように開封用のラベル等を貼付ける必要がないので、製作コストが低減できる。よって、保管、配送、陳列時の開封部の破損を抑制しながら、開封性を向上させることができる。
【0031】
本願請求項7の発明によれば、パターン形成工程における出力を4〜8Wとすることで、シュリンクフィルムと容器底面が近接していても、容器底面にレーザ照射による焦げ等を生じさせることなく、外観に優れ開封性の良好な食品容器を製造できる。
【0032】
本願請求項8の発明によれば、食品容器の底面高さが3mm以上底上げされるので、シュリンクフィルムと底面との距離を確保し、マーカパターンを形成しやすくなる。ただし、底上げ部が高いと容器に対して脚部が大きくなり容器が大型となる一方、充填容積が小さくなりやすい。そこで、底面の高さを10mm以下とすることで、容器をコンパクトにして、かつ低出力レーザによるマーカパターンを採用することで、良好な開封性を有する開封部を容易に形成することができる。
【0033】
本願請求項9の発明によれば、最適なマーカパターンを、容器底面の高さとシュリンクフィルムのテンションの有無に基づいて、U字状、I字状および円弧状の中から選択するので、容器の底面形状やシュリンクフィルムの種類等によらず、開封性を維持することができる。例えば、容器底面の高さが比較的低く、シュリンクフィルムの弾性が高い場合には、よりテンションの高い底上げ部の周縁部に円弧状のマーカパターンを形成することで、開封性を向上させることができる。あるいは、中央部にI字状のマーカパターンを形成することで、開裂しやすくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の製造方法が適用される食品容器の第1実施形態であり、(a)は食品容器の全体断面図、(b)はその底部形状を示す平面図、(c)はその変形例を示す底部断面図である。
【図2】本発明の製造方法が適用される食品容器の第2実施形態であり、(a)は食品容器の全体断面図、(b)はその底部形状を示す平面図である。
【図3】本発明の製造方法が適用される食品容器の第3実施形態であり、(a)は食品容器の全体断面図、(b)はその底部形状を示す平面図である。
【図4】本発明の製造方法が適用される食品容器の第4実施形態であり、(a)は食品容器の全体断面図、(b)はその底部形状を示す平面図である。
【図5】本発明の製造方法が適用される食品容器の第5実施形態であり、(a)は食品容器の全体断面図、(b)はその底部形状を示す平面図である。
【図6】本発明の製造方法を説明するための製造工程図である。
【図7】本発明の製造方法におけるシュリンク包装工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、図面に基づいて本発明を詳細に説明する。図1は、本発明が適用される易開封性シュリンク包装食品容器Cの具体的形状を示す第1実施形態である。易開封性シュリンク包装食品容器Cは、例えば、カップ入り即席麺、具入り粉末スープといったインスタント食品を直接収容するために好適に使用され、使用時に熱湯を注ぐことができるようになっている。その他の乾燥食品、液状食品用として用いることもできる。
【0036】
図1(a)、(b)に示すように、本実施形態において、易開封性シュリンク包装食品容器Cは、容器本体2の上面開口を蓋体3で閉鎖した食品容器1と、食品容器1の全体を被覆するシュリンクフィルム4からなる。シュリンクフィルム4の底面には、詳細を後述する開封部5が形成される。容器本体2は、上端が開口する深型カップ形状の容器体で、下方へ向けて徐々に縮径するテーパ状に成形されており、上端開口の外径が底部22の外径より大きくなっている。容器本体2の上端開口縁部には、全周に径方向外方へ突出するフランジ部21が一定幅で一体的に形成されている。
【0037】
容器本体2の底面22は、外周縁部に下方に突出する脚部23を有し、その内側が略台形状に底上げされて底上げ部24となっている。容器本体2は、硬質パルプモールド成形体からなり、その内表面は、全面に樹脂コート層25が形成されている。容器本体2を構成する硬質パルプモールド成形体は、一対の雄型と雌型の間に含水状態のパルプ系繊維集合体を挟んで加圧圧縮することにより、フランジ部21と一体的に成形されることが望ましい。
【0038】
食品容器1を被覆するシュリンクフィルム4は、シュリンク包装が可能な熱可塑性樹脂フィルムであればよく、例えば、ポリプロピレン(PP)フィルムからなる。ポリプロピレン(PP)フィルムは、ガスバリア性に優れるので、食品容器の包装材として好適である。その他にも、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)等の公知の樹脂フィルムを用いることができる。
【0039】
シュリンクフィルム4の厚さは、食品容器1の大きさや充填物、樹脂の種類等に応じて任意に設定することができる。シュリンクフィルム4が厚いと破損しにくいが、開封部5が開封しにくくなるおそれがある。通常は、シュリンクフィルム4の厚さを50μm以下、好ましくは、10〜30μm程度の範囲とすることで、シュリンク包装後の食品容器1との密着性と良好な外観、保管時の耐久性、開封部5の開封性等を確保することができる。
【0040】
容器本体2の底上げ部24と対向する位置において、シュリンクフィルム4には、レーザマーカにより開封部5が形成される。開封部5は、10W以下の低出力レーザマーカにより、フィルム表面に不連続なレーザ痕がミシン目状に並んでマーカパターンを形成したもので、パターン形状および形成位置は、容器本体2の形状やシュリンクフィルム4の種類等に応じて、所望の開封性が得られるように、適宜選択することができる。具体的には、図1(b)に示すように、U字形状のマーカパターン51、I字形状のマーカパターン52、円弧状のマーカパターン53のいずれかから、選択することができる。
【0041】
容器本体2は、底面22に脚部23と底上げ部24を有することで、載置時の安定性および底面22の強度を向上させる。また、シュリンクフィルム4は、脚部23の底面に当接し、底上げ部24との間に間隙が形成されるので、シュリンクフィルム4の表面にマーカパターンよりなる開封部5を形成し、開封部5を押し開くことで開封することができる。開封部5は底面22に位置するので、保管時や陳列時に露出しにくく隣接する商品と接触する機会が少ないので安全性を高めることができる。
【0042】
本実施形態で容器本体2を構成する硬質パルプモールド成形体は、モールド成形により底面22の脚部23と底上げ部24が一体に形成される。この時、図1(a)に示すように、底上げ部24を台形断面とし、内表面を下方へ向けて拡径するテーパ面として、脚部23と底上げ部24の接続部の成形性を良好にしている。一方、容器本体2の内部には、脚部23に対応する位置に環状溝が形成され、容器内容積や食品の充填性に影響する。このため、底上げ部24の最大高さdをあまり大きくすることはできず、また、底上げ部24の最大高さdが小さいほど、食品容器1の高さを低くして容器全体をコンパクトにすることができる。
【0043】
そこで、好適には、容器本体2の底上げ部24は、最大高さdが3mm以上であるとよく、レーザマーカによる容器の損傷を防止しながら、開封部5となるマーカパターンを形成可能とする。また、底上げ部24の最大高さdが大きい方が、小さい力で開封部5を押し開くことができる。容器本体2が硬質パルプモールド成形体からなる本実施形態では、底上げ部24の最大高さd(中央部の高さ)は、通常、5mm以上(例えば7mm程度)であり、この高さとなる位置であれば、図1(b)に示すU字形状のマーカパターン51、I字形状のマーカパターン52、円弧状のマーカパターン53のいずれを形成しても、良好な開封性が得られる。
【0044】
図示するように、好適には、底上げ部24の中央部に対向して、手指のサイズに対応するU字形状のマーカパターン51を形成すると、レーザ痕の全長が長く開封性が良好である。また、本発明では、シュリンク成形後のシュリンクフィルム4にレーザ照射してマーカパターン51を形成するので、位置ずれ等の懸念がなく外観にも優れる。なお、底上げ部24の脚部23に近い周縁部では、中央部に比べてシュリンクフィルム4のテンション(張力)が高いので、図示するように、I字形状のマーカパターン52、円弧状のマーカパターン53を形成して、比較的小さな力で開封可能とすることができる。
【0045】
図1(c)に示すように、容器本体2を構成する硬質パルプモールド成形体は、底面22の底上げ部24内表面を曲面状として、脚部23から底上げ部24へ滑らかに接続する形状とすることもできる。この場合は、最大高さdとなる面積がより小さくなるので、シュリンクフィルム4の種類(テンションの有無)や、開封部5となるマーカパターン形状と形成位置等を、所望の開封性が得られるように適宜設定するとよい。
【0046】
このように、マーカパターン51〜53の選択に際しては、容器本体2の底上げ部24の高さと、脚部23を含む底面22形状、さらに、シュリンクフィルム4の種類とマーカパターン形成位置のテンションの有無等が重要であり、開封性に大きく影響する。
【0047】
マーカパターン51〜53を形成するために、レーザマーカの出力は、10W以下、好適には、4〜8Wの範囲とし、焦点距離は120mm以下に設定するのがよい。レーザ照射を10W以下の低出力とすることで、底上げ部24の高さが比較的低い場合でも、容器本体2に損傷を与えるのを抑制しながら、開封部5を形成できる。また、より低出力とし、焦点距離を短くすることで、レーザマーカのレーザ痕(スポット径)を小さくし、好適には、1mm以下の微細なレーザ痕を微小間隔で並列させた開封部5を形成することができる。レーザ痕がシュリンクフィルム4の表面にのみ形成され未貫通となるように調整すれば、保管中の破損を防止する効果が高く、衛生面が向上する。なお、レーザ痕がシュリンクフィルム4の裏面側に達していても、スポット径が小さいので、刃具を用いる場合のように開封部5が開口してしまうおそれは小さい。
【0048】
図2〜5は、本発明が適用される易開封性シュリンク包装食品容器Cの他の例を示す第2〜5実施形態であり、容器本体2の底部形状が異なっている。以下、これら各実施形態について順に説明する。
【0049】
図2(a)は、第2実施形態における容器本体2であり、簡便のため蓋体3およびシュリンクフィルム4は省略している。本実施形態では、容器本体2の底面22を、円筒状の本体側面と一体の円筒状脚部23と、フラットな面よりなる底上げ部24とで構成する。このような容器本体2は、紙基材の折曲成形品に樹脂コーティング層や発泡プラスチック層を積層した積層構造体等によって構成することができる。
【0050】
このような積層構造体を容器本体2とする場合は、製作時の制約が小さく、脚部23すなわち底上げ部24の最大高さdを、比較的高く設定できる(例えば10mm前後)。したがって、上記第1実施形態と同様、図2(b)に示すように、開封部5としてU字形状のマーカパターン51、I字形状のマーカパターン52、円弧状のマーカパターン53のいずれを形成しても、良好な開封性が得られる。また、レーザマーカによる損傷のおそれも小さい。ただし、この形状では、食品容器1の容量は脚部23の高さによらず一定であるので、好適には、底上げ部24の最大高さdを10mm以下として、コンパクトで開封性な良好な製品とするのがよい。
【0051】
図3(a)は、第3実施形態における容器本体2であり、簡便のため蓋体3およびシュリンクフィルム4は省略している。本実施形態では、容器本体2を、底面22の脚部23と台形状の底上げ部24とが一体成形されたプラスチック成形体等で構成する。このような容器本体2は、底上げ部24の最大高さを5mmより低くすることで(例えば4mm程度)、内容積を大きくすることができる。ただし、底上げ部24の中央部に対向する位置では、シュリンクフィルム4のテンションが小さくなりやすく、開封部5の開封性が低下するおそれがある。
【0052】
そこで、本実施形態では、図3(b)に示すように、底上げ部24のテーパ面状の周縁部に対向して、周縁に沿う円弧状のマーカパターン54を形成して開封部5とする。このように、比較的テンションが高い脚部23近傍に開封部5を形成することで、開封性が向上する。マーカパターン54の大きさは、例えば、1/4円弧〜1/3円弧程度の大きさとするとよく、破損を抑制する効果が高い。
【0053】
図4(a)は、第4実施形態における容器本体2であり、簡便のため蓋体3およびシュリンクフィルム4は省略している。本実施形態では、第3実施形態と同様に、容器本体2を、底面22の脚部23と台形状の底上げ部24とが一体成形された形状としている。また、第3実施形態よりも、脚部23の接地面積を広く、底上げ部24を小さくする。このような容器本体2は、安定性がより向上するが、底上げ部24の最大高さが第4実施形態と同等であっても、周縁部にてシュリンクフィルム4のテンションが不十分となりやすい。
【0054】
そこで、本実施形態では、図4(b)に示すように、底上げ部24の中央部を横切るようにI字状(直線状)のマーカパターン55を形成して開封部5とする。このように、比較的長いI字状(直線状)のマーカパターン55を形成することで、開封性が向上する。この場合も、底上げ部24の高さに応じて、レーザマーカの出力を調整することで、容器本体2の損傷を防止しながら、開封部5を形成することができる。
【0055】
図5(a)は、第5実施形態における容器本体2であり、簡便のため蓋体3およびシュリンクフィルム4は省略している。本実施形態では、容器本体2の底面22を、脚部23と底上げ部24の間に段差部を有する2段(台形)形状に成形されたプラスチック成形体等で構成する。このような容器本体2は、底上げ部24の最大高さが比較的高く(例えば10mm程度)、底上げ部24の周縁部にある段差部の高さが比較的高ければ(例えば5mm以上)、任意位置に任意形状の開封部5を形成することができる。例えば、図5(b)に示すように、周縁部にU字状のマーカパターン51や、I字状のマーカパターン52を形成し、底上げ部24の中央部を横切るようにI字状(直線状)のマーカパターン55を形成してもよい。
【0056】
図6〜7に基づき、第1実施形態の包装食品容器Cについて、具体的製造工程を説明する。カップ形状の容器本体2を構成する硬質パルプモールド成形体は、パルプ繊維を主として含有する天然系原料繊維からなり、木材系パルプ繊維の他、非木材系パルプ繊維を使用することができる。また、古紙を解繊した繊維を使用することもでき、これら繊維を単独でまたは適宜配合した原料繊維を用いる。これら繊維の繊維長や繊維径、配合割合等は任意に選択可能である。
【0057】
図6の(1)〜(3)の工程は、硬質パルプモールド成形体からなる容器本体2の成形工程である。まず、(1)の抄紙工程で、公知の抄紙型を用いて所定の概略形状とした含水状態のパルプ系繊維集合体を得る。次いで、(2)の脱水工程において含水繊維集合体の水分を除去し、さらに(3)の乾燥工程において、加熱乾燥させて、所定の最終形状とする。
【0058】
ここで、乾燥工程では、図示しない雄型と雌型からなる乾燥型内に、脱水したパルプ系繊維集合体を配置し、ヒータ加熱しながら加圧圧縮する。これにより、厚み方向に圧縮された硬質のパルプモールド成形体とすることができる。この時、雄型と雌型を容器本体2の内外表面と対応する形状とすることで、フランジ部21や底面24の脚部23、底上げ部24を所望形状に成形することができる。
【0059】
次いで、(4)の工程において、得られた容器本体2の内部に、樹脂コート層25となる樹脂フィルムを配置し、加熱プラグにて加熱する。これにより容器本体2の内表面に樹脂フィルムが密着し、樹脂コート層25が形成される。さらに、(5)の工程において、内容物となる食品を計量して、容器本体2に充填し、上面開口を蓋体3で閉鎖して食品容器1とする。
【0060】
(6)はシュリンク包装工程であり、食品容器1の全体をシュリンクフィルム4で被覆する。製品の包装は、一般にピロー包装工程として知られる方法にて行うことができ、この詳細を図7に示す。図において、図示しないコンベア上を製品である食品容器1が搬送され、繰り出されたフィルムを製袋機にて筒状に包み、製品を収容した状態でセンターシール部にて熱シールして筒状体とする。さらに、カッターシーラ部で筒状体の両端部を熱シールし、溶断する。さらに、図示しない次工程のシュリンク炉にて加熱することにより、フィルムを熱収縮させ、食品容器1に密着させることができる。
【0061】
この時、食品容器1の形状や大きさ、使用されるフィルムの種類や厚さ、延伸倍率等によって、シュリンク包装後の食品容器1の底面22において、シュリンクフィルム4のテンション(張力)が変化する。例えば、テンション大(伸び小)のシュリンクフィルム4は、開封に要する力が小さく、マーカパターンや位置によらず良好な開封性が得やすい。ただし、本発明では、図6の(7)の工程において、レーザマーカ6を用いて、食品容器1の底上げ部24に対向するシュリンクフィルム4の任意の位置に、開封部5となるマーカパターンを形成することができるので、容器本体2の底面22形状やシュリンクフィルム4の種類に応じた最適なマーカパターンを、最適位置に形成することができる。したがって、テンション小(伸び大)のシュリンクフィルム4であっても、良好な開封性を実現できる。
【0062】
この時、レーザマーカ6としては、レーザ光源と光捜査手段およびこれらを制御するコントローラを備え、10W以下の所望の低出力に出力調整しながら、レーザ光Lの照射を行う公知のものが使用される。これにより、シュリンクフィルム4の表面に、任意形状のマーカパターンとなるように不連続なレーザ痕を形成し、開封部5を有する易開封性包装食品容器Cを得ることができる。
【実施例】
【0063】
上記第1実施形態の構成の易開封性シュリンク包装食品容器Cについて、上記図6、7の方法で評価用のサンプルを作製し、シュリンクフィルム4を用いてシュリンク包装後に、マーカパターンよりなる開封部5を形成した時の開封性と外観(コゲの有無)を調べた(サンプル1)。シュリンクフィルム4の材質は、全てポリプロピレン(PP)とした。食品容器1の容器本体2仕様と、フィルムテンションの有無、マーカパターンの形成条件とともに、結果を表1に示す。
【0064】
なお、フィルムテンション有無は、包装後のフィルムを指で押した時に伸びのほとんどないものを○(テンション有)、指で押した時に容易に弾性変形するものを×(テンション無)とした。また、マーカパターンは、市販のレーザマーカを使用し、いずれも1mm以下のレーザ痕にて所定形状となるように形成した。開封性は、マーカパターンに指をのせて押すだけで開いたものを○、爪を立てるか押し開くことで開いたものを△とした。コゲの有無は、容器本体2の底面にレーザ照射によるコゲが生じたものを×、照射痕が視認可能なものを△、照射痕のないものを○とした。
【0065】
また、比較のため、マーカパターンの形成条件のみを変更し、同様にして、開封部5を形成した時の開封性と外観(コゲの有無)を調べた(比較サンプル1)。さらに、容器本体2仕様と、フィルムテンションの有無、マーカパターンの形成条件等を変更したサンプルを作製し、同様にして評価した。これらの結果を表1に示す。
【0066】
【表1】

【0067】
表1に明らかなように、レーザマーカ6の出力が8W相当(10Wの80%出力)である本発明のサンプル1では、開封性および外観ともに良好な結果が得られた。これに対して、マーカパターンを形成するためのレーザマーカ6の出力が24W相当(30Wの80%出力)では、本体容器にコゲが生じ、外観を悪化させている。また、容器本体2の材質や底上げ部24高さを種々に変更し、フィルムテンションの異なるサンプル2〜5についても、レーザマーカ6の出力が8W相当以下であれば、ほぼ良好な結果が得られることが分かる。なお、本発明のサンプル1〜5のマーカパターンは、指をのせて押すまでは開くことがなく、シュリンク包装後にレーザ照射により開封口5を形成することで、衛生面に優れ、破損の生じにくい包装容器とすることができた。
【0068】
さらに、シュリンクフィルム4の厚さの影響を調べるため、同材質で厚さの異なる2種類のPPフィルムを用意し、サンプル3と同じ容器本体2を用いて評価用のサンプルを作製した(サンプル6)。レーザマーカ6の出力を変更して、それぞれ同様にして評価した結果を表2に示す。
【0069】
【表2】

【0070】
表2に明らかなように、シュリンクフィルム(PP)の厚さを12μm、15μmとした場合の結果は、レーザマーカ6の出力が8W相当(10Wの80%出力)、6W相当(10Wの80%出力)で同じであり、フィルム厚さによらず、良好な結果が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0071】
このようにして製造形成される本発明の易開封性シュリンク包装食品容器は、各種の加工食品用として、安全性、信頼性に優れ、産業上の利用価値が高い。
【符号の説明】
【0072】
C 易開封性包装食品容器
1 食品容器
2 容器本体
21 フランジ部
22 底面
23 脚部
24 底上げ部
3 蓋体
4 シュリンクフィルム
5 開封部
51〜55 マーカパターン
6 レーザマーカ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に食品を充填した食品容器の全体をシュリンクフィルムで被覆し、該シュリンクフィルムに開封部を設けた易開封性シュリンク包装食品容器であって、
上記食品容器の底面は、脚部となる外周縁部の内側に最大高さが3mm以上の底上げ部を有しており、
上記開封部は、上記底上げ部を覆うシュリンクフィルムの表面に、10W以下の低出力レーザマーカにより形成される不連続なレーザ痕よりなるマーカパターンであることを特徴とする易開封性シュリンク包装食品容器。
【請求項2】
上記開封部となるマーカパターンは、上記底上げ部の中央部または周縁部に形成されるU字状、I字状または円弧状のパターンである請求項1記載の易開封性シュリンク包装食品容器。
【請求項3】
上記開封部は、1mm以下の微細なレーザ痕にて形成されるミシン目状のマーカパターンである請求項1または2記載の易開封性シュリンク包装食品容器。
【請求項4】
上記底上げ部は、略台形の断面形状を有し、最大高さが10mm以下である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の易開封性シュリンク包装食品容器。
【請求項5】
上記食品容器は、硬質パルプモールド成形体である請求項1ないし4のいずれか1項に記載の易開封性シュリンク包装食品容器。
【請求項6】
易開封性シュリンク包装食品容器の製造方法であって、
底面に底上げ部を有する形状の食品容器の内部に食品を充填してその全体をシュリンクフィルムで被覆するシュリンク包装工程と、
シュリンク包装した上記食品容器の底面を覆うシュリンクフィルムの表面に、レーザマーカにより開封部となるマーカパターンを形成するパターン形成工程を有し、
該パターン形成工程における上記レーザマーカ出力を10W以下、焦点距離を120mm以下に設定し、上記底上げ部に対向するシュリンクフィルムの所定位置に、不連続なレーザ痕よりなる所定形状のマーカパターンを形成して上記開封部とすることを特徴とする易開封性シュリンク包装食品容器の製造方法。
【請求項7】
パターン形成工程における上記レーザマーカ出力を4〜8Wとする請求項6記載の易開封性シュリンク包装食品容器の製造方法。
【請求項8】
上記食品容器の底面が、脚部となる外周縁部の内側に最大高さが3mm以上の底上げ部を有する形状であり、上記マーカパターンが形成される位置における上記底上げ部の高さを10mm以下とする請求項6または7記載の易開封性シュリンク包装食品容器の製造方法。
【請求項9】
上記マーカパターンを、上記食品容器底面の高さとシュリンクフィルムのテンションの有無に基づいて、U字状、I字状および円弧状の中から選択する請求項6ないし8のいずれか1項に記載の易開封性シュリンク包装食品容器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−95468(P2013−95468A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239322(P2011−239322)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000241485)豊田通商株式会社 (73)
【Fターム(参考)】