説明

映像伝送システム

【課題】映像の無線伝送において、伝送条件が悪くても、映像信号受信機の出力映像信号に途切れが発生する頻度を少なくする。
【解決手段】送信側で映像信号を再構成可能な複数の映像信号に分離し、かつ、分離された信号を異なる搬送周波数で別々に変調して送信する。一方、受信側で受信した変調信号は別々に復調し、各復調信号が正しく受信されたものであるかを判定する。正しく受信されたものではないときは、他の復調信号で置き替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線により映像信号の伝送を行う映像伝送システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
無線通信システムは、有線ネットワークにおける配線の煩わしさを取り除き、端末のレイアウトを自由に行えるなどの利点から企業や家庭に広く普及している。
無線LANとして広く普及しているIEEE802.11a/b/gに準拠した無線通信システムは、無免許で使用可能な帯域であるISM(Industrial, Scientific and Medical)バンドを使用しているため、無線LAN以外の端末が同一周波数帯域を使用することがある。現在の無線通信システムでは、同一周波数帯域に異なるシステムが同時に存在する場合については考慮されていないことが多いため、無線信号の干渉が生じ、無線通信システムで通信エラーが発生する要因となる。
【0003】
すなわち、同じアクセス制御を行う同種の無線通信端末同士は、互いの発信する信号を解析し、信号の衝突が出来るだけ発生しないよう送信タイミングの制御等を行うが、プロトコルの異なる端末が混在する環境では、信号の衝突を回避できず、互いの通信を阻害してしまうことになる。
【0004】
無線通信システムの構築時には、周辺の電波環境を測定し、信号の干渉が一定以下となる周波数帯域を選択することが可能であるが、無線通信システムの構築後にも電波環境は変化する可能性があるため、無線信号の干渉状況を監視し、例えば周波数帯域を変更するなどの対応を行う必要がある。
【0005】
下記の特許文献1には、受信した信号の信号強度が基準信号強度よりも高い場合に他の無線通信システムが通信を行っていると判断し、そのタイミングで無線通信を行わないよう制御することで信号の相互干渉を回避することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−37529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、リアルタイムでの伝送を行う映像伝送システムの場合、他の無線通信システムからの信号を検知したとしても、特定のタイミングで信号を伝送する必要があり、他の無線通信システムからの信号のタイミングに合わせて送信停止するだけの制御では映像信号を規定の表示タイミングに間に合うよう伝送することができない事態が発生する可能性がある。また、他の無線通信システムからの信号のタイミングに合わせて、ある一定以上のレベルの信号を送信することで、他の無線通信システムからの干渉があっても、そのタイミングで送信される信号を正常に受信することができると考えられるが、その分消費電力の増大に繋がってしまうと共に他の無線通信システムの通信を阻害するなどの可能性がある。
【0008】
また、上記特許文献1の発明は、リアルタイムでの伝送を想定したものではない。
【0009】
本発明の目的は、伝送条件が悪くても、映像信号受信機の出力映像信号に途切れが発生するのを少なくすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の映像伝送システムは、
映像信号送信機から映像信号受信機に映像信号を無線伝送する映像伝送システムにおいて、
前記映像信号送信機は、
順次走査のデジタル映像信号を再構成が可能なように分離して複数の映像信号を生成する分離手段と、
前記複数の映像信号をそれぞれ異なる搬送周波数で変調することで複数の変調信号を生成し、該複数の変調信号を合成して無線信号として送信する手段を備え、
前記映像信号受信機は、
前記無線信号を受信し、受信した無線信号に含まれる複数の変調信号を、前記映像信号送信機における変調に用いられたのと同じ搬送周波数でそれぞれ復調して、複数の復調映像信号を生成する手段と、
前記複数の復調映像信号を組み合わせることで再構成を行って、映像信号を再生する合成手段とを備え、
前記複数の復調映像信号の各々が、正常に受信されたものであるかどうかを判定する制御処理手段と、
前記制御処理手段は、前記複数の復調映像信号のいずれかが正常に受信されたものではないと判断したときは、前記合成手段に、前記正常に受信されたものではないと判断された復調映像信号を、他の復調映像信号で置き換えて、前記映像信号の再構成を行わせる
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、伝送条件が悪くても映像受信端末からの出力映像信号に途切れが生じないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態における映像伝送システムを示すブロック図である。
【図2】実施の形態1で用いられる、図1の映像信号送信機15の構成を示す図である。
【図3】実施の形態1における映像信号の分離を示す概念図である。
【図4】(a)及び(b)は、図1の映像伝送システムで映像の伝送に用いられるパケットデータの構成を示す図である。
【図5】実施の形態1で用いられる、図1の映像信号受信機35の構成を示す図である。
【図6】実施の形態1における映像信号の合成を示す概念図である。
【図7】実施の形態1における映像信号送受信機35における補間による映像信号の合成を示す概念図である。
【図8】実施の形態1における映像信号送信機15の動作を示すフローチャートである。
【図9】図8のステップST13Aの処理を示すフローチャートである。
【図10】実施の形態1における映像信号受信機35の処理の動作を示すフローチャートである。
【図11】図10のステップST30Aの処理を示すフローチャートである。
【図12】本発明の実施の形態2で用いられる、図1の映像信号送信機15の構成を示す図である。
【図13】実施の形態2における映像信号送信機15での映像信号の分離を示す概念図である。
【図14】実施の形態2で用いられる、図1の映像信号受信機35の構成を示す図である。
【図15】実施の形態2における映像信号受信機35での映像信号の合成を示す概念図である。
【図16】実施の形態2における映像信号送受信機35における補間による映像信号の合成を示す概念図である。
【図17】実施の形態2における映像信号送信機15の動作を示すフローチャートである。
【図18】図17にステップST53Aの処理を示すフローチャートである。
【図19】実施の形態2における映像信号受信機35の動作を示すフローチャートである。
【図20】図19にステップST70Aの処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付した図面に基づき本発明に係る映像伝送システムを説明する。この映像伝送システムは、無線ネットワーク乃至伝播経路において、干渉、妨害などにより、無線信号が正常に受信できなかった場合に、正常に受信できなかった信号の代わりに、正常に受信できた信号を用いて映像を再構成するものである。
【0014】
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1の映像伝送システム40を示す。図示の映像伝送システムは、映像信号送信機15と、映像信号受信機35とを有し、これらの間で無線による映像信号の伝送が行われる。
【0015】
図2は、図1の映像信号送信機15の構成を示す。図示の映像信号送信機15は、A/D変換器2と、分離処理部3と、第1及び第2のフレーミング処理部4及び7と、第1及び第2のメモリ5及び8と、第1及び2の変調器6及び9と、第1の制御処理部10と、送信アンテナ11とを有する。
【0016】
外部の供給源(図示しない)からプログレッシブ(順次走査)仕様のアナログ映像信号Saが入力端子1に入力される。映像信号Saは、フレームの時系列で構成される。A/D変換器2はアナログ映像信号Saを順次デジタル映像信号Sbに変換する。
【0017】
分離処理部3は、各フレームのデジタル映像信号Sbを、奇数フィールドの映像信号Scと偶数フィールドの映像信号Sdに分離する。即ち、図3に示すように、各フレームのデジタル映像信号Sbを奇数番目のライン(奇数ライン)L1、L3、L5、…L(N−1)と偶数番目のライン(偶数ライン)L2、L4、L6、…LNとに分離し、奇数ラインのみから成る奇数フィールドの映像信号Scと、偶数ラインのみから成る偶数フィールドの映像信号Sdを生成する。なお、奇数フィールドScにおいても、各ラインを、分離前のフレーム内における順序に従い、1番目、2番目、3番目、…のラインと呼び、分離前と同じ符号L1、L2、L3、…で表す。偶数フィールドSd内のラインについても同様である。
【0018】
第1の伝送フレーミング処理部4は、奇数フィールド映像信号Scを受け、内部のバッファメモリ4Bに格納した後、無線伝送のためのパケット化処理を施し、第1の制御処理部10に送出する。
【0019】
ここでフレーミング処理部4によるパケット化処理の詳細は省略するが、基本的に一般に無線伝送で採用される1パケット1500Byteと同等のものが生成される。
【0020】
第1の制御処理部10は、ヘッダ情報58を生成し、生成したヘッダ情報58をフレーミング処理部4から出力されたパケット化データに付加してヘッダ部56を形成し、図4に示すパケットデータ57として出力する。第1の制御処理部10で付加されるヘッダ情報58は、例えば、パケットの生成順序を示すシーケンシャルな番号を含む。なお、パケットには、一般に上記のヘッダ情報58以外のヘッダ情報が含まれるが、該他のヘッダ情報については説明を省略する。
【0021】
各パケットのデータは、奇数フィールド映像信号Sc内の複数のラインのデータを含むことがあり、また、複数のラインのうちの最初のラインのデータの一部のみを含み、最後のラインのデータの一部のみを含むことがある。さらに、各パケットのデータが、1つの奇数フィールドのデータの一部と次の奇数フィールドのデータの一部とを含む場合がある。
生成されたパケットデータ59は、第1のメモリ5に格納される。
【0022】
第1のメモリ5に格納されたパケットデータはその後順次読み出され、第1の変調器6により任意の搬送周波数(第1の搬送波周波数)によって変調されて変調信号となる。
【0023】
偶数フィールド映像信号Sdは、奇数フィールド映像信号Scについて上記したのと同様に処理される。つまり偶数フィールド映像信号Sdは第2のフレーミング処理部7で内部のバッファメモリ7Bに格納された後、無線伝送のためのパケット化処理が施され第1の制御処理部10に送出される。
【0024】
第1の制御処理部10は、ヘッダ情報58を生成し、生成したヘッダ情報58を、フレーミング処理部7から出力されたパケット化データに付加してヘッダ部55を形成し、図4に示すパケットデータ57として出力する。第1の制御処理部10で付加されるヘッダ情報58は、例えば、パケットの生成順序を示すシーケンシャルな番号を含む。
【0025】
各パケットのデータは、偶数フィールド映像信号Sd内の複数のラインのデータを含むことがあり、また、複数のラインのうちの最初のラインのデータの一部のみを含み、最後のラインのデータの一部のみを含むことがある。さらに、各パケットのデータが、1つの偶数フィールドのデータの一部と次の偶数フィールドのデータの一部とを含む場合がある。
生成されたパケットデータ57は、第2のメモリ8に格納される。
【0026】
第2のメモリ8に格納されたパケットデータはその後順次読み出され、第2の変調器9にて任意の搬送周波数(第2の搬送波周波数)で変調されて変調信号となる。
【0027】
第2の変調器9における搬送周波数(第2の搬送波周波数)は任意であるが、第1の変調器6の搬送周波数(第1の搬送波周波数)と干渉、妨害が起こらない、異なった周波数が選択される。
第1の変調器6からの変調信号と、第2の変調器9からの変調信号は合成されて、送信アンテナ11により無線信号として送出される。
【0028】
第1の制御処理部10は、A/D変換器2及び分離処理部3に対する動作タイミングの制御、並びに第1及び第2のフレーミング処理部4及び7におけるパケットの生成に対する制御、並びに生成されたパケットのためのヘッダの生成及び付加、並びに第1及び第2のメモリ5及び8へのパケットデータの書き込み及び読み出しの制御、並びに第1及び第2の変調器6及び9への搬送周波数の出力、及び変調指令を司る。
【0029】
図5は、図1の映像信号受信機35の構成を示す。
図示の映像信号受信機35は、受信アンテナ21と、第1及び第2の復調器22及び25と、第1及び第2の伝送でフレーミング処理部23及び26と、第3及び第4のメモリ24及び27と、第2の制御処理部30と、セレクタ28と、D/A変換器29とを有する。
【0030】
受信アンテナ21は、無線信号を受信する。受信された信号は、第1及び第2の復調器22及び25に供給される。受信された無線信号には合成された2つの変調信号が含まれる。
【0031】
第1の復調器22は、図2の映像信号送信機15における第1の変調器6の搬送周波数(第1の搬送波周波数)と同じ復調周波数を有し、受信アンテナ21からの変調信号を復調して、奇数フィールドの映像信号のパケットデータPeを生成し、出力する。
第1の復調器22から出力されるパケットデータPeは第2の制御処理部30へ入力される。
【0032】
第2の制御処理部30は、入力されたパケットデータ57のヘッダ部55のヘッダ情報58を確認する。そして、異常がなければ、ヘッダ部55を削除し、ヘッダ部55が削除されたパケットデータ(データ部56のみから成るデータ)を第1のデフレーミング処理部23に送出する。
第1のデフレーミング処理部23ではパケットデータを内部のバッファメモリ23Bに格納した後、順次読み出してパケットデータを元の奇数フィールド映像信号Seに復元する。復元された奇数フィールド映像信号Seは第3のメモリ24に格納される。
【0033】
第2の復調器25は、図2の映像信号送信機15における第2の変調器9の搬送周波数(第2の搬送波周波数)と同じ復調周波数を有し、受信アンテナ21からの変調信号を復調して、偶数フィールドの映像信号のパケットデータPfを生成し、出力する。
第2の復調器25から出力されるパケットデータPfは第2の制御処理部30へ入力される。
【0034】
第2の制御処理部30は、入力されたパケットデータ57のヘッダ部55のヘッダ情報58を確認する。そして、異常がなければ、ヘッダ部55を削除し、ヘッダ部55が削除されたパケットデータ(データ部56のみから成るデータ)を第2のデフレーミング処理部26に送出する。
第2のデフレーミング処理部26ではパケットデータを内部のバッファメモリ26Bに格納した後、順次読み出してパケットデータを元の偶数フィールド映像信号Sfに復元する。復元された偶数フィールド映像信号Sfは第4のメモリ27に格納される。
【0035】
次に第3のメモリ24からの奇数フィールド映像信号Seと第4のメモリ27からの偶数フィールド映像信号Sfは、セレクタ28により合成乃至再構成され、フレーム単位のプログレッシブの映像信号Sgが再生される。
【0036】
この合成は、映像信号送信機15における分離(図3)とは逆の処理であり、図6に示すように、奇数フィールド映像信号Seと偶数フィールド映像信号Sfを入力とするセレクタ28が、1ライン毎に入力を切り替えることにより、奇数フィールド映像信号Seと偶数フィールド映像信号Sfを1ライン毎に交互に選択し、出力することで、奇数ラインと偶数ラインが元の順序で並んだ合成映像信号Sg(図3の元の映像信号Sbと同じもの)を生成する。
【0037】
再構成された映像信号は、D/A変換器29によりアナログ信号に変換され、出力端子31からアナログ映像信号Shとして出力される。
【0038】
以上は、第2の制御処理部30によりヘッダ部55に含まれるヘッダ情報58を確認した結果、異常がないと判断された場合の処理である。異常があると判断された場合には、セレクタ28は、上記の交互選択をせずに、補間処理を行う。
【0039】
ヘッダ情報58の異常は、該ヘッダ情報58が付されたパケット(第1の搬送周波数で変調された信号)が正しく受信できなかったことを示す。このような問題が発生する原因としては、送出された変調信号が伝送路上で何らかの妨害、干渉を受け正しく受信できなかったことが考えられる。このような場合には、復調後のヘッダ情報58に異常が生じることから検出できる。例えば順次受信したパケットのヘッダのシーケンシャル番号が所定の順序通りでなければ、異常があったと判断する。
【0040】
例えば、奇数フィールド映像信号Seの一部を含むパケットのヘッダ情報58の判定で、異常と判定された場合、第2の制御処理部30はパケットデータ57のヘッダ部55を削除し、データ部56のデータを、無効であることを示すマーカ(任意で特定のコード情報)のデータと置き換えて、第1のデフレーミング処理部23に送出する。
【0041】
マーカで置き換えられたデータは、デフレーミング処理部23で奇数フィールドの映像信号への復元処理を受けた後、第3のメモリ24に書き込まれ、その後、セレクタ28に供給される。
【0042】
第2の制御処理部30は、セレクタ28に供給される各ラインのデータの有効性をチェックし、上記のマーカで置き換えられたデータが含まれる場合、即ち、当該ラインのデータの少なくとも一部が上記のマーカで置き換えられたものである場合には、セレクタ28にそのデータを選択させず、第4のメモリ27から供給されているラインのデータを選択している状態を維持させる。即ち、セレクタ28の入力の切り替えを行わないこととし、これにより、第4のメモリ27からの1ライン分のデータ(前ラインのデータ)が再度セレクタ28から出力されるようにする。この結果、前ラインのデータによる置換え(補間)が行われる。
【0043】
この様子を図7に示す。奇数フィールドSeの第3のラインL3、及び第5のラインL5が正しくなく、マーカのデータで置き換えられている場合である。セレクタ28では、該当する奇数フィールドSeの第3のラインL3、第5のラインL5を出力すべきタイミングで、その前に出力した偶数フィールドSfの第2のラインL2、第4のラインL4を再度出力する。その結果、セレクタ28から出力される合成映像信号Sgは、奇数フィールドSeの第3のライン、第5のラインが、偶数フィールドSfの第2のラインL2、第4のラインL4でそれぞれ置き換えられたものとなる。
【0044】
このように、映像信号受信機35は、映像信号送信機15が送信した変調映像信号を受信して復調した後、制御処理部30により、パケットデータを復元する処理においてパケットのヘッダ情報が正しく再生されているか否かを判定し、正しくないと判断したとき、該当フィールドの該当ラインのデータをマーカで置換え、該当ラインの該映像信号の送出を止め、他方のフィールドの一つ前のライン映像信号を代わりとして送出する。即ち、セレクタ28による入力の切り替えをせずに同じラインの映像信号を再度出力する。
【0045】
以上のように、第2の制御処理部30は第1及び第2の復調器22への復調周波数の出力、並びに第1及び第2のデフレーミング処理部23及び26におけるデフレーミング処理(パケットデータから映像信号を復元するための復元処理)に対する制御、並びに第3及び第4のメモリ24及び27へのデータ書き込み及び読み出しの制御、セレクタ28に対する切り替えの制御、並びにD/A変換器29のタイミング制御を司るほか、第1及び第2のデフレーミング処理部23及び26の処理過程における、パケットのヘッダ情報の確認(正当性の確認)、異常があると判定されたパケットのデータ部のデータのマーカへの置換え、及びメモリ24及び27から読み出されたデータが有効かどうかの判断を行なう。
【0046】
以下に図8を参照して本実施の形態に係る映像伝送システム40の映像信号送信機15の第1の制御処理部10の動作における処理の手順を説明する。
映像信号送信機15の入力端子1にはプログレッシブのアナログ映像信号Saが順次入力される(ステップST10)。
【0047】
各フレームの映像信号SaはA/D変換器2にてデジタル映像信号Sbに変換される(ステップST11)。
【0048】
デジタル映像信号Sbは、分離処理部3で、図3に示すように、奇数フィールドと偶数フィールドに分離され、奇数フィールド映像信号Scと偶数フィールド映像信号Sdが生成される(ステップST12)。
【0049】
次に、奇数フィールド映像信号Scと、偶数フィールド映像信号Sdに対して同様の処理(ステップST13A、ST13B)が並行して行われる。
以下、奇数フィールド映像信号Scに対する、ステップST13Aの処理について図9を参照して説明する。
【0050】
先ず、フレーミング処理部4は奇数フィールド映像信号Scをバッファメモリ4Bに一時的に格納する(ステップST14)。
【0051】
フレーミング処理部4はバッファメモリ4Bから映像データを逐次読み出し、パケットデータ57のデータ部56を生成する(ステップST15)。
【0052】
次に、第1の制御処理部10が、ヘッダ情報58を生成し、ヘッダ部55としてデータ部56に付加する。これにより、パケットデータ57が生成される(ステップST16)。
【0053】
生成されたパケットデータ57は第1のメモリ5に格納される(ステップST17)。
メモリ5に格納されたパケットデータ57は、その後逐次読み出されて変調器6で変調される(ステップST18)。
【0054】
偶数フィールド映像信号Sdに対する処理ST13Bも上記したステップST13Aの処理と同様である。但し、ステップST13A内のステップST18で用いられる搬送周波数と、ステップST13B内の、対応するステップで用いられる搬送周波数は互いに異なる。
ステップST13A、ST13Bの後、変調信号が合成され、送信アンテナ11から送出される(図8のST19)。
以上が映像信号送信機15における動作である。
【0055】
次に、映像信号受信機35の第2の制御処理部30の動作における処理の手順を、図10を参照して説明する。
先ず、受信アンテナ21により変調された映像信号を受信する(ステップST29)。
【0056】
次に、受信した映像信号のうちの奇数フィールドの映像信号に対する処理ST30Aと、偶数フィールドの映像信号に対する処理ST30Bが並行して行われる。
以下に、奇数フィールドの映像信号に対する処理ST30Aを、図11を参照して説明する。
【0057】
先ず、第1の復調器22にて映像信号送信機15の変調器6の搬送周波数と同じ周波数で復調する(ステップST31)。
【0058】
次に、復調されたパケットデータ57を第2の制御処理部30に供給する(ステップST32)。
【0059】
次に、第2の制御処理部30にて図4のパケットデータ57のヘッダ部55の情報を確認し(ステップST33)、ヘッダ部55の情報が正しいか否かの判定を行う(ステップST34)。
【0060】
上記ステップST34で正しいと判定された場合、ステップST35に進み、一方、正しくないと判定された場合、ステップST36に進む。
【0061】
ステップST35では、パケットデータ57からヘッダ部55を削除してデータ部56を第1のデフレーミング処理部23に供給する。
【0062】
ステップST36では、第2の制御処理部30はパケットデータ57のヘッダ部55を削除し、かつデータ部56のデータを、無効であることを示すマーカ(任意で特定のコード情報)のデータと置き換えて、第1のデフレーミング処理部23に供給する。
【0063】
ステップST35又はST36の次にステップST37において、第1のデフレーミング処理部23にてパケットデータ57のデータ部56(送信されたデータ又は無効であることを示すマーカのデータ)を一度バッファメモリ23Bに格納した後、データを復元して奇数フィールドの映像データを生成する(ステップST37)。
【0064】
次に、奇数フィールドのデータを第3のメモリ24にライン(走査線)単位で格納する(ステップST38)。
【0065】
以上が奇数フィールドの映像信号に対するステップST30Aの処理である。
偶数フィールドの映像信号に対するステップST30Bの処理も同様である。
【0066】
ステップST30Aの次に、ステップST39A(図10)では、第3のメモリ24から順次ライン単位でデータを読み出し、データ内容を確認する。
【0067】
次に、読み出したライン単位のデータが有効データであるかどうか(対応する変調信号が正常に受信されたものであるかどうか)を判定し(ステップST40A)、有効であれば、ステップST41に進み、無効であれば、ステップST43Aに進む。
【0068】
同様に、ステップST30Bの次のステップST39B(図10)では、第4のメモリ27から順次ライン単位でデータを読み出し、データ内容を確認する。
【0069】
次に、読み出したライン単位のデータが有効データであるかどうか(対応する変調信号が正常に受信されたものであるかどうか)を判定し(ステップST40B)、有効であれば、ステップST41に進み、無効であれば、ステップST43Bに進む。
【0070】
ステップST41では、セレクタ28は、現に選択されているラインのデータの出力が終わったら、次に有効と判定されたラインのデータを選択するため、入力の切り替えを行う。この切り替えが繰り返されることで、セレクタ28では、ライン単位のデータが供給される毎に、入力の切り替えが行われることになる。即ち、ステップST41では、第3のメモリ24からの奇数フィールドのラインデータと第4のメモリ27からの偶数フィールドのライン単位のデータが交互に切り替えられ、プログレッシブ映像信号Sgが再構成される。
【0071】
ステップST43Aでは、セレクタ28は、第3のメモリ24から読み出された1ライン分のデータが供給されても、入力の切り替えを行わずに、これにより、無効と判定されたデータがセレクタ28を通過しないようにし、偶数フィールド映像信号Sfの前ラインのデータ(第4のメモリ27から出力されるもの)を再度出力する。この結果、前ラインのデータが再度出力され、これにより前ラインのデータによる置換え(補間)が行われる。
【0072】
同様に、ステップST43Bでは、セレクタ28は、第4のメモリ27から読み出された1ライン分のデータが供給されても、入力の切り替えを行わずに、これにより、無効と判定されたデータがセレクタ28を通過しないようにし、奇数フィールド映像信号の前ラインのデータ(第3のメモリ24から出力されるもの)を再度出力する。この結果、前ラインのデータが再度出力され、これにより前ラインのデータによる置換え(補間)が行われる。
【0073】
このように、例えば奇数フィールドSeのラインデータが正しくなく、奇数フィールド映像信号に対する処理ST30Aのうち、ステップST36、ステップST37の処理により正しいデータでないと判断された場合、ステップST43Aの処理により、偶数フィールドの1ライン前のデータが補間され、ラインが連続した映像信号の再生が可能になる。
【0074】
このような処理において、図7を参照して上記したように、奇数フィールドSeの第3のラインL3、及び第5のラインが正しくないためにマーカのデータで置き換えられている場合には、映像信号Sgの第3のラインL3、第5のラインL5は偶数フィールドSfの第2のラインL2、第4のラインL4でそれぞれ置き換えられる。
【0075】
逆に偶数フィールドのラインデータが正しくない場合には、奇数フィールドのラインデータによる置換えが行われる。
【0076】
ステップST41、ST43A、又はST43Bの次に、ステップST42に進む。ステップST42では、セレクタ28からの出力をD/A変換器29にて、アナログ信号に変換する。セレクタ28からの出力はすべてのラインのデータが揃ったフレーム映像信号であり、D/A変換器29にてプログレッシブのアナログ映像信号Shが生成される。
【0077】
以上のように、実施の形態1においては、映像信号送信機15と映像信号受信機35の間で映像信号の伝送が行なわれる映像伝送システムあって、映像信号送信機15は、映像信号を送信する際、まずアナログ映像信号をデジタル信号に変換し、その後、奇数ラインと偶数ラインへの分離を行って、奇数フィールドと偶数フィールドを形成する。そして、形成された奇数フィールド映像信号と偶数フィールド映像信号に対し、各々別々に、無線伝送に最適なパケット化処理を行い、更に別々の搬送周波数によって変調した後、2つの変調信号を合成して無線信号として伝送する。
一方、伝送された変調信号を受けた映像信号受信機35は、映像信号送信機15で使用した2つの変調周波数と同じ復調周波数で復調した後、パケットデータをデパケット化処理で復元し、2枚のフィールド映像信号を各々生成する。そして、この2枚のフィールド映像信号を合成して元のアナログのフレーム映像信号を出力する。
2枚のフィールド映像信号がともに正常に受信できた変調信号に対応するものである場合には、これらのそれぞれのラインのデータを交互に選択して、順に出力する。
【0078】
一方のフィールド映像信号の変調信号が伝送中に干渉、妨害に遭遇しても、もう一方のフィールド映像信号の変調信号が妨害を受けないで正常であれば、妨害を受けたフィールド映像信号の代わりに正常なフィールド映像信号で補間して出力する。この結果、映像信号受信機35からの出力映像信号に途切れが生じるのを防ぐことができる。
【0079】
実施の形態2.
次に実施の形態2の映像伝送システム40を説明する。実施の形態2の映像伝送システム40の構成は、図1に示すごとくであり、実施の形態1の場合と同様に、映像信号送信機15と映像信号受信機35の間で、無線による映像信号の伝送が行われる。
【0080】
図12は、図2の映像信号送信機15の代わりに、実施の形態2で用いられる映像信号送信機15の構成を示す。図示の映像信号送信機15は、A/D変換器2と、分離処理部103と、第1及び第2のフレーミング処理部4及び7と、第1及び第2のメモリ5及び8と、第1及び2の変調器6及び9と、第1の制御処理部110と、送信アンテナ11とを有する。
図12で図2と同じ符号の部材は、同様のものである。
【0081】
外部の供給源(図示しない)からプログレッシブ(順次走査)仕様のアナログ映像信号Saが入力端子1に入力される。映像信号Saは、フレームの時系列Gaで構成される。A/D変換器2はアナログ映像信号Saを順次デジタル映像信号Sbに変換し、デジタル映像信号を構成するフレーム系列Gbを生成する。
【0082】
分離処理部103は、図13に示すように、フレーム系列Gbを、奇数番目のフレーム(奇数フレーム)F1、F3、F5、…と偶数番目のフレーム(偶数フレーム)F2、F4、F6、…に分離し、奇数フレームのみから成る奇数フレーム系列Gcと、偶数フレームのみから成る偶数フレーム系列Gdを生成する。図13(並びに後述の図15及び図16)において、符号tは時間を表す。なお、奇数フレーム系列Gcにおいても、各フレームを、分離前のフレーム系列内における順序に従い、1番目、2番目、3番目、…のフレームと呼び、分離前と同じ符号F1、F2、F3、…で表す。偶数フレーム系列Gdを構成するフレームについても同様である。
【0083】
第1の伝送フレーミング処理部4は、実施の形態1の場合と同様に、奇数フレーム系列Gcの映像信号を受け、内部のバッファメモリ4Bに格納した後、無線伝送のためのパケット化処理を施し、第1の制御処理部10に送出する。
【0084】
第1の制御処理部10は、ヘッダ情報58を生成し、生成したヘッダ情報58をフレーミング処理部4から出力されたパケット化データに付加してヘッダ部55を形成し、図4に示すパケットデータ57として出力する。第1の制御処理部10で付加されるヘッダ情報58は、例えば、パケットの生成順序を示すシーケンシャルな番号を含む。なお、パケットには、一般には、上記のヘッダ情報58以外のヘッダ情報が含まれるが、該他のヘッダ情報については説明を省略する。
【0085】
各パケットのデータは、奇数フレーム系列Gcの複数のフレームにまたがることがある。即ち、各パケットが奇数フレーム系列Gcの一つの奇数フレームのデータの一部と次の奇数フレームのデータの一部を含むことがある。
生成されたパケットデータ57は、第1のメモリ5に格納される。
【0086】
第1のメモリ5に格納されたパケットデータはその後順次読み出され、第1の変調器6により任意の搬送周波数(第1の搬送波周波数)によって変調されて変調信号となる。
【0087】
偶数フレーム系列Gdの映像信号は、奇数フレーム系列Gcの映像信号について上記したのと同様に処理される。つまり偶数フレーム系列Gdの映像信号は第2のフレーミング処理部7で内部のバッファメモリ7Bに格納された後、無線伝送のためのパケット化処理が施され第1の制御処理部110に送出される。
【0088】
第1の制御処理部110は、ヘッダ情報58を生成し、生成したヘッダ情報58をフレーミング処理部7から出力されたパケット化データに付加してヘッダ部55を形成し、図4に示すパケットデータ57として出力する。第1の制御処理部10で付加されるヘッダ情報58は、例えば、パケットの生成順序を示すシーケンシャルな番号を含む。
【0089】
各パケットのデータは、偶数フレーム系列Gdの複数のフレームにまたがることがある。即ち、各パケットが偶数フレーム系列Gdの一つの偶数フレームのデータの一部と次の偶数フレームのデータの一部を含むことがある。
生成されたパケットデータ57は、第2のメモリ8に格納される。
【0090】
第2のメモリ8に格納されたパケットデータはその後順次読み出され、第2の変調器9にて任意の搬送周波数(第2の搬送波周波数)で変調されて変調信号となる。
【0091】
第2の変調器9における搬送周波数(第2の搬送波周波数)は任意であるが、第1の変調器6の搬送周波数(第1の搬送波周波数)と干渉、妨害が起こらない、異なった周波数が選択される。
第1の変調器6からの変調信号と、第2の変調器9からの変調信号は合成されて、送信アンテナ11により無線信号として送出される。
【0092】
第1の制御処理部110は、A/D変換器2及び分離処理部103に対する動作タイミングの制御、並びに第1及び第2のフレーミング処理部4及び7におけるパケットの生成に対する制御、並びに生成されたパケットのためのヘッダ生成及び付加、並びに第1及び第2のメモリ5及び8へのパケットデータの書き込み及び読み出しの制御、並びに第1及び第2の変調器6及び9への搬送周波数の出力、及び変調指令を司る。
【0093】
図14は、図2の映像信号送信機15の代わりに、実施の形態2で用いられる映像信号受信機35の構成を示す。
図示の映像信号受信機35は、受信アンテナ21と、第1及び第2の復調器22及び25と、第1及び第2の伝送でフレーミング処理部23及び26と、第3及び第4のメモリ24及び27と、第2の制御処理部130と、セレクタ28と、D/A変換器29とを有する。
図5と同じ符号は同様の部材を示す。
【0094】
受信アンテナ21は、無線信号を受信する。受信された信号は、第1及び第2の復調器22及び25に供給される。受信された無線信号には合成された2つの変調信号が含まれる。
【0095】
第1の復調器22は、図12の映像信号送信機15における第1の変調器6の搬送周波数(第1の搬送波周波数)と同じ復調周波数を有し、受信アンテナ21からの変調信号を復調して、奇数フレーム系列の映像信号のパケットデータPeを生成し、出力する。
第1の復調器22から出力されるパケットデータPeは第2の制御処理部130へ入力される。
【0096】
第2の制御処理部130は、入力されたパケットデータ57のヘッダ部55のヘッダ情報58を確認する。そして、異常がなければ、ヘッダ部55を削除し、ヘッダ部55が削除されたパケットデータ(データ部56のみから成るデータ)を第1のデフレーミング処理部23に送出する。
第1のデフレーミング処理部23ではパケットデータを内部のバッファメモリ23Bに格納した後、順次読み出してパケットデータを元の奇数フレーム系列Geの映像信号に復元する。復元された奇数フレーム系列Geの映像信号は第3のメモリ24に格納される。
【0097】
第2の復調器25は、図12の映像信号送信機15における第2の変調器9の搬送周波数(第2の搬送波周波数)と同じ復調周波数を有し、受信アンテナ21からの変調信号を復調して、偶数フレームの映像信号のパケットデータPfを生成し、出力する。
第2の復調器25から出力されるパケットデータPfは第2の制御処理部130へ入力される。
【0098】
第2の制御処理部130は、入力されたパケットデータ57のヘッダ部55のヘッダ情報58を確認する。そして、異常がなければ、ヘッダ部55を削除し、ヘッダ部55が削除されたパケットデータ(データ部56のみから成るデータ)を第2のデフレーミング処理部26に送出する。
第2のデフレーミング処理部26ではパケットデータを内部のバッファメモリ26Bに格納した後、順次読み出してパケットデータを元の偶数フレーム系列Gfの映像信号に復元する。復元された偶数フレーム系列Gfの映像信号は第4のメモリ27に格納される。
【0099】
次に第3のメモリ24からの奇数フレーム系列Geの映像信号と第4のメモリ27からの偶数フレーム系列Gfの映像信号は、セレクタ28により合成乃至再構成され、映像信号系列Ggが再生される。
【0100】
この合成は、映像信号送信機15における分離(図13)とは逆の処理であり、図15に示すように、奇数フレーム系列Geの映像信号と偶数フレーム系列Gfの映像信号を入力とするセレクタ28が、1フレーム毎に入力を切り替えることにより、奇数フレーム系列Geの映像信号と、偶数フレーム系列Gfの映像信号を1フレーム毎に交互に選択し、出力することで、奇数フレームと偶数フレームが元の順序に並んだ合成フレーム系列Gg(図13の元のフレーム系列Gbと同じもの)を生成する。
【0101】
フレーム系列が再構成されたフレーム系列Ggの映像信号は、D/A変換器29によりアナログ信号に変換され、出力端子31からアナログ映像信号Shの時系列Ghとして出力される。
【0102】
以上は、第2の制御処理部130によりヘッダ部55に含まれるヘッダ情報58を確認した結果、異常がないと判断された場合の処理である。異常があると判断された場合には、セレクタ28は、上記の交互選択をせずに、補間処理を行う。
【0103】
ヘッダ情報58の異常は、該ヘッダ情報58が付されたパケット(第1の搬送周波数で変調された信号)が正しく受信できなかったことを示す。このような問題が発生する原因としては、送出された変調信号が伝送路上で何らかの妨害、干渉を受け正しく受信できなかったことが考えられる。このような場合には、復調後のヘッダ情報58に異常が生じることから検出できる。例えば順次受信したパケットのヘッダのシーケンシャル番号が所定の順序通りでなければ、異常があったと判断する。
【0104】
例えば、奇数フレーム系列Geの映像信号の一部を含むパケットのヘッダ情報58の判定で、異常と判定された場合、第2の制御処理部130はパケットデータ57のヘッダ部55を削除し、データ部56のデータを、無効であることを示すマーカ(任意で特定のコード情報)のデータと置き換えて、第1のデフレーミング処理部23に送出する。
【0105】
マーカで置き換えられたデータは、デフレーミング処理部23で奇数フレームの映像信号への復元処理を受けた後、第3のメモリ24に書き込まれ、その後、セレクタ28に供給される。
【0106】
第2の制御処理部130は、セレクタ28に供給される各フレームのデータの有効性をチェックし、上記のマーカで置き換えられたデータが含まれる場合、即ち、当該フレームのデータの少なくとも一部が上記のマーカで置き換えられたものである場合には、セレクタ28にそのデータを選択させず、第4のメモリ27から供給されているフレームのデータを選択している状態を維持させる。即ち、セレクタ28の入力の切り替えを行わないこととし、これにより、第4のメモリ27からの1フレーム分のデータ(前フレームのデータ)が再度セレクタ28から出力されるようにする。この結果、前フレームのデータによる置換え(補間)が行われる。
【0107】
この様子を図16に示す。奇数フレーム系列Geの第5のフレームF5、及び第7のフレームF7が正しくなく、マーカのデータで置き換えられている場合である。セレクタ28では、奇数フレーム系列Geの第5のフレームF5、第7のフレームF7を出力すべきタイミングで、その前に出力した偶数フレーム系列Ggの第4のフレームF4、第6のフレームF6を再度出力する。その結果、セレクタ28から出力される合成映像信号Sgのフレーム系列Ggは、奇数フレーム系列Geの第5のフレーム、第7のフレームが、偶数フレーム系列Gfの第4のフレームF4、第6のフレームF6でそれぞれ置き換えられたものとなる。
【0108】
このように、映像信号受信機35は、映像信号送信機15が送信した変調映像信号を受信して復調した後、制御処理部130により、パケットデータを復元する処理においてパケットのヘッダ情報が正しく再生されているか否かを判定し、正しくないと判断したとき、該当フレーム系列の該当フレームの該映像信号の送出を止め、他方のフレーム系列の一つ前のフレームの映像信号を代わりとして送出する。即ち、セレクタ28による入力の切り替えをせずに同じフレームの映像信号を再度出力する。
【0109】
以上のように、第2の制御処理部130は第1及び第2の復調器22への復調周波数の出力、並びに第1及び第2のデフレーミング処理部23及び26におけるデフレーミング処理(パケットデータから映像信号を復元するための復元処理)に対する制御、並びに第3及び第4のメモリ24及び27へのデータ書き込み及び読み出しの制御、セレクタ28に対する切り替えの制御、並びにD/A変換器29のタイミング制御を司るほか、第1及び第2のデフレーミング処理部23及び26の処理過程における、パケットのヘッダ情報の確認(正当性の確認)、異常があると判定されたパケットのデータ部のデータのマーカへの置換え、及びメモリ24及び27から読み出されたデータが有効かどうかの判断を行なう。
【0110】
以下に図17を参照して本実施の形態に係る映像伝送システム40の映像信号送信機15の第1の制御処理部110の動作における処理の手順を説明する。
映像信号送信機15の入力端子1にはプログレッシブのアナログ映像信号Saを構成するフレーム系列Gaが順次入力される(ステップST50)。
【0111】
フレーム系列Gaの各フレームの映像信号SaはA/D変換器2にてデジタル映像信号Sbに変換され、デジタル映像信号Sbを構成するフレーム系列Gbが形成される(ステップST51)。
【0112】
デジタル映像信号Sbのフレーム系列Gbは、分離処理部103で図13に示すように、奇数フレームと偶数フレームに分離され、奇数フレーム系列Gcと偶数フレーム系列Gdが形成される(ステップST52)。
【0113】
次に、奇数フレーム系列Gcと、偶数フレーム系列Gdに対して同様の処理(ステップST53A、ST53B)が並行して行われる。
以下、奇数フレーム系列Gcに対する、ステップST53Aの処理について図18を参照して説明する。
【0114】
まず、フレーミング処理部4は奇数フレーム系列Gcのフレーム映像信号をバッファメモリ4Bに一時的に格納する(ステップST54)。
【0115】
次に、フレーミング処理部4はバッファメモリ4Bから映像データを逐次読み出し、パケットデータ57のデータ部56を生成する(ステップST55)。
【0116】
次に、第1の制御処理部110が、ヘッダ情報58を生成し、ヘッダ部55としてデータ部56に付加する。これにより、パケットデータ57が生成される(ステップST66)。
【0117】
生成されたパケットデータ57は第1のメモリ5に格納される(ステップST57)。
メモリ5に格納されたパケットデータ57は、その後逐次読み出されて変調器6で変調される(ST58)。
【0118】
偶数フレーム系列Gdの映像信号に対する処理ST53Bも上記したステップST53Aの処理と同様である。但し、ステップST53A内のステップST58で用いられる搬送周波数と、ステップST53B内の、対応するステップで用いられる搬送周波数は互いに異なる。
ステップST53A、ST53Bの後、変調信号が合成され、送信アンテナ11から送出される(図17のST57)。
以上が映像信号送信機15における動作である。
【0119】
次に、映像信号受信機35の第2の制御処理部130の動作における処理の手順を、図19を参照して説明する。
先ず、受信アンテナ21により、変調された映像信号を受信する(ステップST69)。
【0120】
次に、受信した映像信号のうちの奇数フレーム系列の映像信号に対する処理ST70Aと、偶数フレーム系列の映像信号に対する処理ST70Bが並行して行われる。
以下に、奇数フレーム系列の映像信号に対する処理ST70Aを、図20を参照して説明する。
【0121】
先ず、第1の復調器22にて映像信号送信機15の変調器6の搬送周波数と同じ周波数で復調する(ステップST71)。
【0122】
次に、復調されたパケットデータ57を第2の制御処理部130に供給する(ステップST72)。
【0123】
次に、第2の制御処理部130にてパケットデータ57のヘッダ部55の情報を確認し(ステップST73)、ヘッダ部55の情報が正しいか否かの判定を行う(ステップST74)。
【0124】
上記ステップST74で正しいと判定された場合、ステップST75に進み、一方、正しくないと判定された場合、ステップST76に進む。
【0125】
ステップST75では、パケットデータ57からヘッダ部55を削除してデータ部56を第1のデフレーミング処理部23に供給する。
【0126】
ステップST76では、第2の制御処理部130はパケットデータ57のヘッダ部55を削除し、かつデータ部56のデータを、無効であることを示すマーカ(任意で特定のコード情報)のデータと置き換えて、第1のデフレーミング処理部23に供給する。
【0127】
ステップST75又はST76の次にステップST77において、第1のデフレーミング処理部23にてパケットデータ57のデータ部56(送信されたデータ又は無効であることを示すマーカのデータ)を一度バッファメモリ23Bに格納した後、データを復元して奇数フレーム系列Geの映像データを生成する。
【0128】
次に、奇数フレーム系列Geのデータを第3のメモリ24にフレーム単位で格納する(ステップST78)。
【0129】
以上が奇数フレーム系列Geの映像信号に対するステップST70Aの処理である。
偶数フレーム系列Gfの映像信号に対するステップST70Bの処理も同様である。
【0130】
ステップST70Aの次に、ステップST79A(図19)では、第3のメモリ24から順次フレーム単位でデータを読み出し、データ内容を確認する。
【0131】
次に、読み出したフレーム単位のデータが有効データであるかどうか(対応する変調信号が正常に受信されたものであるかどうか)を判定し(ステップST80A)、有効であれば、ステップST81に進み、無効であればステップST83Aに進む。
【0132】
同様に、ステップST70Bの次のステップST79B(図19)では、第4のメモリ27から順次フレーム単位でデータを読み出し、データ内容を確認する。
【0133】
次に、読み出したフレーム単位のデータが有効データであるかどうか(対応する変調信号が正常に受信されたものであるかどうか)を判定し(ステップST80B)、有効であれば、ステップST81に進み、無効であれば、ステップST83Bに進む。
【0134】
ステップST81では、セレクタ28は、現に選択されているフレームのデータの出力が終わったら、次に有効と判定されたフレームのデータを選択するため、入力の切り替えを行う。この切り替えが繰り返されることで、セレクタ28では、フレーム単位のデータが供給される毎に、入力の切り替えが行われることになる。即ち、ステップST81では、第3のメモリ24からの奇数フレーム系列Geのフレーム単位のデータと、第4のメモリ27からの偶数フレーム系列Gfのフレーム単位のデータが交互に切り替えられ、映像信号Sgのフレーム系列Ggが再構成される。
【0135】
ステップST83Aでは、セレクタ28は、第3のメモリ24から読み出された1フレーム分のデータが供給されても、入力の切り替えを行わずに、これにより、無効と判定されたデータがセレクタ28を通過しないようにし、偶数フレーム系列Gfの前フレームのデータ(第4のメモリ27から出力されるもの)を再度出力する。この結果、前フレームのデータが再度出力され、これにより前フレームのデータによる置換え(補間)が行われる。
【0136】
同様に、ステップST83Bでは、セレクタ28は、第4のメモリ27から読み出された1フレーム分のデータが供給されても、入力の切り替えを行わずに、これにより、無効と判定されたデータがセレクタ28を通過しないようにし、奇数フレーム系列Geの前フレームのデータ(第3のメモリ24から出力されるもの)を再度出力する。この結果、前フレームのデータが再度出力され、これにより前フレームのデータによる置換え(補間)が行われる。
【0137】
このように、例えば奇数フレーム系列Geのフレームのデータが正しくなく、奇数フレーム系列Geのフレームの映像信号に対する処理ST80Aのうち、ステップST86、ステップST87の処理により正しいデータでないと判断された場合、ステップST83Aの処理により、偶数フレーム系列Gfの1フレーム前のデータが補間され、フレームが連続した映像信号の再生が可能になる。
【0138】
このような処理において、図16を参照して上記したように、奇数フレーム系列Geの第5のフレームF5、及び第7のフレームが正しくないためにマーカのデータで置き換えられている場合には、奇数フレーム系列Geの第5のフレームF5、第7のフレームF7は偶数フレーム系列Gfの第4のラインフレームF4、第6のフレームF6でそれぞれ置き換えられる。
【0139】
逆に偶数フレーム系列Gfのフレームデータが正しくない場合には、奇数フレーム系列Geのフレームデータによる置換えが行われる。
【0140】
ステップST81、ST83A、又はST83Bの次に、ステップST82に進む。ステップST82では、セレクタ28からの出力をD/A変換器29にて、アナログ信号に変換する。セレクタ28からの出力はすべてのフレームのデータが揃ったフレーム系列の映像信号であり、D/A変換器29にてアナログ映像信号のフレーム系列Ghが生成される。
【0141】
以上のように、実施の形態2においては、映像信号送信機15と映像信号受信機35の間で映像信号の伝送が行なわれる映像伝送システムあって、映像信号送信機15は、映像信号を送信する際、まずアナログ映像信号のフレーム系列をデジタル信号のフレーム系列に変換し、その後、奇数フレームと偶数フレームへの分離を行って、奇数フレーム系列と偶数フレーム系列を形成する。そして、形成された奇数フレーム系列の映像信号と偶数フレーム系列の映像信号に対し、各々別々に、無線伝送に最適なパケット化処理を行い、更に別々の搬送周波数によって変調した後、2つの変調信号を合成して無線信号として伝送する。
一方、伝送された変調信号を受けた映像信号受信機35は、映像信号送信機15で使用した2つの変調周波数と同じ復調周波数で復調した後、パケットデータをデパケット化処理で復元し、2系列のフレーム映像信号を各々生成する。そして、この2系列のフレーム映像信号を合成して元の映像信号のフレーム系列を出力する。
【0142】
奇数フレーム系列の映像信号と偶数フレーム系列の映像信号がともに正常に受信できた変調信号に対応するものである場合には、これらのそれぞれのフレームのデータを交互に選択して、順に出力する。
【0143】
一方のフレーム系列の変調信号が伝送中に比較的長い期間の干渉、妨害に遭遇しても、他方のフレーム系列の変調信号が妨害を受けないで正常であれば、妨害を受けたフレーム信号の代わりに正常なフレーム映像信号で補間して出力する。この結果、映像信号受信機35からの出力映像信号に途切れが生じるのを防ぐことができる。
【0144】
以上説明したように本発明の映像伝送システムにおいては、映像信号を再構成可能な映像信号に分離し、かつ、分離された信号を異なる搬送周波数で各々別々に変調して送信する。
一方、受信した変調信号は送信時の変調周波数と同じ復調周波数でそれぞれ別々に復調され、その後、受信した信号が干渉・妨害等により正しく受信されたかを判定する。判定の結果、一方の受信が正しくないと判定された場合、もう一方で受信した信号で、補間して出力する。これにより、途中で途切れないで連続した映像信号が再構成される効果がある。また、映像信号を分離し、送信することで個々の信号の変調における帯域を狭くすることが可能である。
【0145】
尚、上記説明では映像信号を2つに又は2系列に分離して、送受信を行う例を説明したが、3つ以上に分離して処理しても良い。更に、1走査ライン、又は1フレームを単位とする補間の例を示したが、複数の走査ライン、複数のフレームを単位として補間を行うこととしても良い。要するに、独立に再生及び表示することが可能な単位であって、かつ再構成により復元が可能なように分離し、合成することすれば良い。また、変調・復調の搬送周波数は、システムに合わせて最適な周波数を選択して良い。
【符号の説明】
【0146】
2 A/D変換器、 3 分離処理部、 4 第1のフレーミング処理部、 4B バッファメモリ、 5 第1のメモリ、 6 第1の変調器、 7 第2のフレーミング処理部、 7B バッファメモリ、 8 第2のメモリ、 9 第1の変調器、 10 第1の制御処理部、 11 送信アンテナ、 15 映像信号送信機、 21 受信アンテナ、 22 第1の復調器、 23 第1のデフレーミング処理部、 23B バッファメモリ、 24 第3のメモリ、 25 第1の復調器、 26 第2のデフレーミング処理部、 26B バッファメモリ、 27 第4のメモリ、 28 セレクタ、 29 D/A変換器、 30 第2の制御処理部、 35 映像信号受信機、 40 映像伝送システム、 103 分離処理部、 110 第1の制御処理部、 130 第2の制御処理部、 Sb デジタル映像信号、 Sc 奇数フィールド映像信号、 Sd 偶数フィールド映像信号、 Se 奇数フィールド映像信号、 Sf 偶数フィールド映像信号、 Sg 復元された映像信号、 Gb フレーム系列、 Gc 奇数フレーム系列、 Gd 偶数フレーム系列、 Ge 奇数フレーム系列、 Gd 偶数フレーム系列、 Gg 復元されたフレーム系列。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像信号送信機から映像信号受信機に映像信号を無線伝送する映像伝送システムにおいて、
前記映像信号送信機は、
順次走査のデジタル映像信号を再構成が可能なように分離して複数の映像信号を生成する分離手段と、
前記複数の映像信号をそれぞれ異なる搬送周波数で変調することで複数の変調信号を生成し、該複数の変調信号を合成して無線信号として送信する手段を備え、
前記映像信号受信機は、
前記無線信号を受信し、受信した無線信号に含まれる複数の変調信号を、前記映像信号送信機における変調に用いられたのと同じ搬送周波数でそれぞれ復調して、複数の復調映像信号を生成する手段と、
前記複数の復調映像信号を組み合わせることで再構成を行って、映像信号を再生する合成手段とを備え、
前記複数の復調映像信号の各々が、正常に受信されたものであるかどうかを判定する制御処理手段と、
前記制御処理手段は、前記複数の復調映像信号のいずれかが正常に受信されたものではないと判断したときは、前記合成手段に、前記正常に受信されたものではないと判断された復調映像信号を、他の復調映像信号で置き換えて、前記映像信号の再構成を行わせる
ことを特徴とする映像伝送システム。
【請求項2】
前記分離手段は、前記順次走査のデジタル映像信号の各フレームを、奇数走査ラインのみから成る奇数フィールドと、偶数走査ラインのみから成る偶数フィールドに分離することを特徴とする請求項1に記載の映像伝送システム。
【請求項3】
前記制御手段は、一方のフィールドの各ラインのデータが正しく受信されたものではないと判断したときは、前記合成手段に、前記正しく受信されたものではないと判断されたラインのデータを、他方のフィールドの、前記正しく受信されたものであると判断されたラインの前のラインのデータで置き換えさせることを特徴とする請求項2に記載の映像伝送システム。
【請求項4】
前記分離手段は、前記順次走査のデジタル映像信号を構成するフレーム系列を、奇数フレーム系列と偶数フレーム系列に分離することを特徴とする請求項1に記載の映像伝送システム。
【請求項5】
前記制御手段は、一方のフレーム系列の各フレームのデータが正しく受信されたものではないと判断したときは、前記合成手段に、前記正しく受信されたものではないと判断されたフレームのデータを、他方のフレーム系列の、前記正しく受信されたものではないと判断されたフレームの前のフレームのデータで置き換えさせることを特徴とする請求項4に記載の映像伝送システム。
【請求項6】
前記送信機は、
前記分離手段で生成された複数の映像信号を別個にパケット化し、ヘッダを付加する手段を有し、
前記受信機の前記制御処理部は、受信した複数の復調映像信号のパケットの前記ヘッダをチェックすることで、前記複数の復調映像信号に対応する変調信号が正常に受信されたものであるかどうかの判定を行う
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の映像伝送システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−213085(P2012−213085A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−78236(P2011−78236)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】