映像信号処理装置
【課題】あらゆる撮像条件下においても、適切な輪郭強調処理を行い良好な画質を得ることが可能な映像信号処理装置を提供する。
【解決手段】映像信号処理装置は、画像内の輪郭部分を強調する輪郭強調処理部であって、映像信号に基づいて輪郭部分を検出し、外部から入力された輪郭強調制御信号を利用して輪郭部分を強調した映像信号を出力する輪郭強調処理部と、映像信号を高能率符号化する符号化部と、符号化部の符号化状態を示す少なくとも2種類の符号化情報に応じて輪郭部分を強調する程度を変更する輪郭強調制御信号を生成する輪郭強調制御部とを備えている。
【解決手段】映像信号処理装置は、画像内の輪郭部分を強調する輪郭強調処理部であって、映像信号に基づいて輪郭部分を検出し、外部から入力された輪郭強調制御信号を利用して輪郭部分を強調した映像信号を出力する輪郭強調処理部と、映像信号を高能率符号化する符号化部と、符号化部の符号化状態を示す少なくとも2種類の符号化情報に応じて輪郭部分を強調する程度を変更する輪郭強調制御信号を生成する輪郭強調制御部とを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像信号処理に関する。より具体的には、本発明は、デジタルビデオカメラなどで用いられる映像信号の輪郭強調処理に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルビデオカメラ等の一般的な撮像装置は、撮像手段と、映像信号処理手段と、符号化手段とを備えている。
【0003】
撮像手段は、撮像光学系を通して被写体光(被写体からの光)を固体撮像素子に結像さ
せて光電変換し、映像信号を生成する。映像信号処理手段は、撮像手段によって得られた映像信号に対して画質向上のための種々の信号処理を行う。そして符号化手段は、信号処理が行われた映像信号をMPEG2などの符号化方式によりデータ量圧縮する。
【0004】
被写体が撮影される条件は様々であるため、撮像装置の映像信号処理手段は、どのような撮影条件下においても安定して良好な画質を得るための制御を種々行っている。たとえば、撮像手段に対する、絞り、シャッタ速度、フォーカス、手振れ補正、ズーム動作の制御である。また、自動利得制御(AGC)も行っている。さらに、映像信号処理手段は、画質向上のために、ガンマ補正処理や輪郭強調処理なども行っている。
【0005】
たとえば、特許文献1および2は、カメラに代表される装置を開示している。
【0006】
図10は従来の撮像装置の構成を示す構成図である。
【0007】
撮像装置は、撮像部20と、種々の制御部21〜25と、撮像制御部42と、映像信号処理部44とを備えている。
【0008】
撮像光学系19に入射した被写体光は、撮像光学系19のレンズ群10、11、13、14およびアイリス12を介して撮像素子上に結像される。そして、被写体光は、撮像素子15、CDS回路16およびAGC回路17によってアナログ映像信号に変換され、さらにA/D変換器18によって、デジタル映像信号に変換される。
【0009】
次に、変換されたデジタル映像信号は、映像信号処理部44に入力される。映像信号処理部44のガンマ補正回路40は、入力されたデジタル映像信号に対してガンマ補正処理を行う。次に、輪郭強調処理部41は、ガンマ補正後の映像信号に対して輪郭強調処理を施す。具体的には、輪郭強調処理部41は、ガンマ補正処理が行われた映像信号に対して、外部から受け取ったゲイン値を乗算することで、適正レベルとなるように輪郭成分信号を増幅する。輪郭強調処理部41は、その結果得られた輪郭成分信号を出力端子43から後段へと出力する。
【0010】
上述の撮像光学系19での処理に関し、撮像制御部42は、種々の制御部21〜25を制御する。具体的には、撮像制御部42は、ズーム制御部21、アイリス制御部22、OIS(Optical Image Stabilizer)制御部23、シャッタ制御部24、および、AGC制御部25を制御する。これらの制御により、あらゆる撮影条件においても、自動的に安定した画質を得ている。
【特許文献1】特開平2−63271号公報
【特許文献2】特開2002−64745号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来の輪郭強調処理方法には、様々な撮影条件に対応した効果的な輪郭強調処理ができないこと、符号化による画質低下と輪郭強調による画質向上のバランスをとることができないこと、および、複数の制御情報を用いるとメモリなどの回路規模が増加してコストアップを招いてしまうこと、が課題として存在していた。具体的には以下の通りである。
【0012】
第1の例として、上述した課題は、被写体の照度が低下したときに顕著となる。
【0013】
まず、撮像素子15へ入力される被写体の照度が明るい場合は、輪郭部のコントラストが高い映像が得られ、輪郭強調効果が現れやすい。また輝度の高い領域が画面内に多いので信号対雑音(S/N)比も良好である。よって輪郭強調ゲイン値が大きく設定されていても不要なノイズの増幅はなく画質の向上を図ることができる。
【0014】
一方、照度が低くなるに従い徐々にS/N比が悪化する。特に暗い平坦部にてノイズが目立つようになってくる。しかしながら、輪郭強調処理時には、照度にかかわらず、比較的大きなゲイン値が一律に与えられ、それにより輪郭成分信号が増幅されている。これでは、ノイズ成分までもが増幅され、非常に見栄えの悪い画質となる。また照度が低い場合は輪郭部のコントラストが低下し、輪郭強調処理を施してもその効果が現れにくい。
【0015】
また、第2の例として、ズームやパンといった撮像光学系や撮像装置本体の動きによって被写体に動きが発生した場合にも、上述した課題が顕著となる。
【0016】
まず、撮像光学系や撮像装置本体が動いていない静止撮影においては、被写体のフォーカスが合いやすく輪郭部もくっきりと撮像される。そこに輪郭強調処理を施せば、さらに輪郭がくっきりと強調され画質向上を図ることができる。
【0017】
しかし、カメラをパンし、またはズームしながら撮影した場合、被写体が動くためにフォーカスが合いにくくなり、輪郭部がぼける。つまり高周波成分が少なくなるため、輪郭強調処理を施しても輪郭強調効果が現れにくい。
【0018】
さらには、不要な信号成分を強調してしまうおそれもある。たとえば、ノイズ低減用の3次元ノイズリダクション回路(図示せず)が設けられている場合には、動いた輪郭部の近傍に残像または偽輪郭などの、被写体には存在しない不要な成分が出現することがある。輪郭強調処理は、そのような不要な成分も同時に強調する。さらに照度が低い状況であればS/N比も悪く、ノイズ成分だけを強調してしまい、画質低下をもたらす。
【0019】
特許文献1には、低照度時に画質低下を抑える輪郭強調方法が提案されている。これは、AGC回路17へ与えるAGCゲイン値に連動して輪郭強調係数を制御する技術である。
【0020】
これは、AGC回路17によって強い輪郭強調処理が行われるような、非常に低い照度での問題には対応可能であるが、AGC回路17が動作を開始する照度ほどには低くないが、客観的にはかなり低い照度の場合には問題が残る。
【0021】
撮像部における照度調整はAGC制御が開始される以前にも、アイリスの絞り量やシャッタ速度などを制御することによって行われている。例えば、1/60秒のシャッタ速度でアイリス開放の場合には、照度が低くなっており、解像度の低下やS/N比の悪化が顕著になってくる。このように、ある単独条件のみを改善するだけでは、他の条件では問題が残されたままであり、複数のカメラ制御情報の条件を総合的に考慮しなければならない。
【0022】
複数のカメラ制御情報を用いる例としては特許文献2の技術が存在する。特許文献2に示される方法は複数条件に基づく各パラメータの場合分けにより、パラメータセットをロードするように設定テーブルがメモリに保持されている。しかしこの構成では使用する撮像制御情報の数が増えるとテーブル量が増加し、メモリ量が増えるなどの大幅なコスト増加を招いてしまう。
【0023】
また、輪郭強調処理を行うことにより、さらに他の問題も発生する。
【0024】
たとえば、ビデオカメラで動画を撮影すると、映像信号が符号化され、動画データとして記録媒体に書き込まれる。符号化処理前に輪郭強調処理が行われると、その処理結果を受けた符号化処理時にブロック歪が増大し、画質劣化をもたらすことがある。よりよい画質(解像感)を得るための輪郭強調処理が、その後の画質劣化の原因になり、逆効果を招いているといえる。
【0025】
以下、図11を参照しながら、ブロック歪が増大する理由を説明する。図11は、従来の撮像装置の符号化部81の構成を示す。一例としてMPEG2方式を用いた符号化を行う構成を示している。
【0026】
以下、符号化部81において行われる処理の流れを説明する。
【0027】
まず、入力端子80から映像信号が入力される。入力された映像信号はガンマ補正後の映像信号とする。
【0028】
輪郭強調処理部41は所定のゲイン値に基づき映像信号に輪郭強調処理を施す。輪郭強調された映像信号は、並べ替えメモリ51に保持される。
【0029】
並べ替えメモリ51は符号化順に並べ替えられた符号化画像を出力する。動き補償予測部53は、並べ替えメモリ51から出力された符号化画像と参照画像メモリ52から出力された参照画像とから動き補償を行って予測画像を生成する。減算器54はこの予測画像と符号化画像との差分画像を求め、DCT回路55へ出力する。差分画像はDCT回路55で直交変換され、量子化部56でレート制御部61から与えられる量子化パラメータに従って量子化される。その結果は可変長符号化部60へ与えられるとともに、逆量子化部57へ与えられる。可変長符号化部60へ与えられたデータは、可変長符号化されて記録媒体82に記録される。一方、逆量子化部57へ与えられたデータは、先ほどの量子化パラメータに従い逆量子化され、逆DCT回路58にて逆直交変換され、先ほどの予測画像と加算され、参照画メモリに記憶される。なお、参照画メモリには参照画面に選ばれた画像のみが保持される。
【0030】
レート制御部61は、設定された目標とする記録ビットレートに符号化データが収まるように、量子化の強度を制御する。量子化の強度制御は、量子化パラメータの大きさを変更することで行う。
【0031】
入力される画像の情報量は、常に刻々と変動している。一般に平坦部が多く動きの少ない画像は情報量が少なく、輪郭部の多い複雑な画像や動きの激しい画像は情報量が多い。情報量が多い画像を所定の記録ビットレートに収めるためには、情報量が少ない画像を同じ記録ビットレートに収めるよりも、より大きな量子化パラメータを用いて量子化しなければならない。その結果、量子化誤差の増加によるブロック歪が顕著となって現れる。
【0032】
輪郭強調処理部41における輪郭強調処理は、高周波成分の信号レベルを増加させるものである。したがって、符号化処理にて削除されるべき高周波成分が削除されにくくなり、多く残存するという結果をもたらす。すると、符号化部はさらに量子化パラメータを大きくして目標の記録ビットレートに収めようと働く。
【0033】
このように、輪郭強調処理により解像感が向上する効果を狙っても、ブロック歪が増大して画質が劣化するという逆効果を招く。この現象は特に、画像の情報量に対して記録ビットレートが相対的に低すぎる場合に顕著になる。
【0034】
また、レート制御部61はレート制御を行うために符号化画像ごとの発生符号量を計測している。そして可変レート制御(VBR)を行う場合は、画像情報量が増加したとき、量子化パラメータを上げるだけの制御でなく、少し量子化パラメータを上げるとともに、発生符号量が記録ビットレートに対して超過することをある程度認めるように制御を行う。よって、符号化による画質の変化の程度(画質劣化の影響)は量子化パラメータと発生符号の増加量という2つのパラメータに現れる。
【0035】
また、目標の記録ビットレートで消費する記録容量と、実際に発生した符号量によって消費した記録容量との差分である累積誤差量の大きさに応じて量子化制御している場合には、累積誤差量に応じて発生符号量が制限される。よって、画質劣化の程度は、累積誤差量というパラメータにも現れる。
【0036】
また、目標の記録ビットレートの高さも当然画質にかかわる。上記のようにブロック歪が増大して画質劣化をもたらすことは、画像の情報量に対して記録ビットレートが相対的に低すぎる場合に顕著になるからである。よって、画質劣化の程度は、目標の記録ビットレートというパラメータにも現れる。
【0037】
上述の通り、輪郭強調処理のみでは画質を向上させることはできず、種々のパラメータに与える影響も考慮する必要がある。
【0038】
本発明の目的は、どのような撮像条件下および/またはどのような符号化条件下において、適切な輪郭強調処理を行い良好な画質を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0039】
本発明による映像信号処理装置は、被写体を撮像して映像信号を生成する撮像部と、撮像された画像内の輪郭部分を強調する輪郭強調処理部であって、前記撮像部から出力される前記映像信号に基づいて前記輪郭部分を検出し、外部から入力された輪郭強調制御信号を利用して、前記輪郭部分を強調する輪郭強調処理部と、前記撮像部の撮像動作を制御するための少なくとも1つの撮像制御信号を生成する撮像制御部と、前記少なくとも1つの撮像制御信号に応じて、前記輪郭部分を強調する程度を決定する輪郭強調制御信号を生成し、前記輪郭強調処理部に送信する輪郭強調制御部とを備えている。
【0040】
前記輪郭強調制御部は、前記少なくとも1つの撮像制御信号の各々に対応した輪郭強調パラメータを生成するパラメータ決定部と、前記輪郭強調パラメータの中から、前記輪郭部分を強調する程度が最も弱い特性を持つ輪郭強調パラメータを選択し、前記輪郭強調制御信号として生成する選択部とを備えていてもよい。
【0041】
前記撮像制御部は、ズーム位置、シャッタ速度、絞り値、自動利得値、撮像装置本体の動き量、のうち1つ以上を制御する信号を前記撮像制御信号として生成してもよい。
【0042】
本発明による他の映像信号処理装置は、画像内の輪郭部分を強調する輪郭強調処理部であって、映像信号に基づいて前記輪郭部分を検出し、外部から入力された輪郭強調制御信号を利用して前記輪郭部分を強調した映像信号を出力する輪郭強調処理部と、映像信号を高能率符号化する符号化部と、前記符号化部の符号化状態を示す少なくとも2種類の符号化情報に応じて前記輪郭部分を強調する程度を変更する輪郭強調制御信号を生成する輪郭強調制御部とを備えている。
【0043】
前記輪郭強調制御部は、前記少なくとも2種類の符号化情報の各々に対応した輪郭強調パラメータを生成するパラメータ決定部と、前記輪郭強調パラメータの中から、前記輪郭部分を強調する程度が最も弱い特性を持つ輪郭強調パラメータを選択し、前記輪郭強調制御信号として生成する選択部とを備えていてもよい。
【0044】
前記符号化部は、量子化パラメータ、符号量、目標符号量に対する発生符号量の累積誤差量、目標ビットレート値、のうちの少なくとも2種類の符号化情報を出力してもよい。
【0045】
前記映像信号処理装置は、映像信号を高能率符号化する符号化部をさらに備え、前記パラメータ決定部は、前記符号化部の符号化状態を示す前記少なくとも1種類の符号化情報に応じて、前記輪郭部分を強調する程度を変更する前記輪郭強調パラメータをさらに生成してもよい。
【0046】
前記輪郭強調処理部は、検出した前記輪郭部分に対応する前記映像信号の成分にゲイン値を乗じて前記映像信号に加算し、前記輪郭強調制御部は、前記パラメータ決定部の各々で生成されたゲイン値の中から最小のゲイン値を選択してもよい。
【0047】
前記輪郭強調処理部は、前記映像信号およびフィルタ係数に基づいて前記輪郭部分を検出するフィルタを備えており、前記輪郭強調処理部は、検出した前記輪郭部分に対応する前記映像信号の成分にゲイン値を乗じて前記映像信号に加算し、前記輪郭強調制御部は、前記輪郭強調の程度が最も弱いフィルタ係数を前記輪郭強調信号として生成してもよい。
【0048】
前記少なくとも1つの撮像制御信号はズーム位置信号であって、前記撮像制御部は、前記撮像部のズーム動作を制御するために前記ズーム位置信号を前記撮像部へ出力し、前記パラメータ決定部は、前記ズーム位置信号から現在のズーム速度を計算し、ズーム速度が速いほど前記輪郭強調の程度を弱める輪郭強調パラメータを生成してもよい。
【0049】
前記少なくとも1つの撮像制御信号は装置本体の動き量であって、前記撮像制御部は、前記撮像部の手振れ補正動作を制御するために前記装置本体の動き量信号を前記撮像部へ出力し、前記パラメータ決定部は、前記装置本体の動き量が速いほど前記輪郭強調の程度を弱める輪郭強調パラメータを生成してもよい。
【0050】
前記少なくとも1つの撮像制御信号はアイリスの絞り値であって、前記撮像制御部は、前記撮像部のアイリスの絞り量を制御するために絞り値を前記撮像部へ出力し、前記パラメータ決定部は、前記絞り値が開放に近いほど前記輪郭強調の程度を弱める輪郭強調パラメータを生成してもよい。
【0051】
前記少なくとも1つの撮像制御信号はシャッタ速度値であって、前記撮像制御部は、前記撮像部のシャッタ速度を制御するためにシャッタ速度値を前記撮像部へ出力し、前記パラメータ決定部は、前記シャッタ速度が遅いほど前記輪郭強調する程度を弱める輪郭強調パラメータを生成してもよい。
【0052】
前記少なくとも1つの撮像制御信号は自動利得値であって、前記撮像制御部は、前記撮像部の自動利得量を制御するために自動利得値を前記撮像部へ出力し、前記パラメータ決定部は、前記自動利得値が大きいほど前記輪郭強調の程度を弱める輪郭強調パラメータを生成してもよい。
【0053】
前記少なくとも2種類のうちの1種類の符号化情報は量子化パラメータであって、前記符号化部は、符号化に用いた前記量子化パラメータを前記輪郭強調制御部へ出力し、前記輪郭強調制御部は、前記量子化パラメータが大きいほど前記輪郭強調の程度を弱める輪郭強調パラメータを生成してもよい。
【0054】
前記少なくとも2種類のうちの1種類の符号化情報は符号量であって、前記符号化部は、符号化により発生した前記符号量を前記輪郭強調制御部へ出力し、前記輪郭強調制御部は、前記符号量が大きいほど前記輪郭強調度合いを弱める輪郭強調パラメータを生成してもよい。
【0055】
前記少なくとも2種類の符号化情報のうちの1種類は、目標符号量に対する発生符号量の累積誤差量であって、前記符号化部は、前記累積誤差量を前記輪郭強調制御部へ出力し、前記輪郭強調制御部は、前記累積誤差量が大きいほど前記輪郭強調の程度を弱める輪郭強調パラメータを生成してもよい。
【0056】
前記少なくとも2種類の符号化情報のうちの1種類は目標ビットレート値であって、前記符号化部は、前記目標ビットレート値を前記輪郭強調制御部へ出力し、前記輪郭強調制御部は、前記目標ビットレート値が小さいほど前記輪郭強調の程度を弱める輪郭強調パラメータを生成してもよい。
【発明の効果】
【0057】
本発明によれば、撮像制御情報を用いることにより、様々な撮影条件下で最適な、輪郭強調処理を行うことができる。また、符号化情報を用いることにより、符号化による画質劣化を招くことなく適切な輪郭強調処理を行うことができる。また、あらゆる撮像条件と符号化状態に対応した最適な輪郭強調処理を行うことができる。よって、常に画質の向上を図ることが可能になる。また、非常に処理量の少ない簡単な方法で実現できるので、回路規模やメモリ量などのコスト増大を招くこともなく導入可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0058】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明による映像信号処理装置の実施形態を説明する。
【0059】
(実施形態1)
図1は、本実施形態による映像信号処理装置100の構成を示すブロック図である。
【0060】
映像信号処理装置100は、たとえばデジタルスチルカメラ、カムコーダである。ただし、図1には、一般的なデジタルスチルカメラやカムコーダのすべての構成は示していない。図1の構成に加えて、たとえば映像信号を圧縮符号化処理する回路、記録媒体に記録するための入出力回路、撮影した映像を表示する表示回路等を設ければよい。それらの一般的な構成の説明は省略する。
【0061】
映像信号処理装置100は、撮像部20と、種々の制御部21〜25と、撮像制御部42と、出力端子43と、映像信号処理部44と、輪郭強調制御部45とを備えている。
【0062】
撮像部20は、撮像光学系19、撮像素子15、CDS回路16、AGC回路17、A/D変換器18を備えている。撮像光学系19は、たとえば固定レンズ10、ズームレンズ11、アイリス12、光学手振れ補正用レンズ13、フォーカスレンズ14を含む。
【0063】
また、信号処理部44は、ガンマ補正回路40、輪郭強調処理部41を含む。
【0064】
種々の制御部21〜25は、ズーム制御部21、アイリス制御部22、OIS(Optical Image Stabilizer)制御部23、シャッタ制御部24、AGC制御部25である。
【0065】
輪郭強調制御部45は、パラメータ決定部31〜35および選択部36を含む。
【0066】
以下、各構成要素の機能を詳細に説明する。
【0067】
撮像光学系19を通過した被写体光は、撮像素子15の受光面で結像し、撮像素子15によって電気信号に変換されて映像信号が生成される。映像信号は、CDS回路16に入力されて相関2重サンプリングされた後、AGC回路17にて適正レベルに増幅され、A/D変換器18にてA/D変換されて、デジタル映像信号に変換される。
【0068】
上述の撮影時において、撮像制御部42は、撮像光学系19や撮像素子15、AGC回路17などの撮像部20内の複数の構成要素を制御する。以下、撮像制御部42の主要な6つの動作を説明する。
【0069】
第1に、撮像制御部42は、ユーザのズーム操作に応じてズームレンズ11を動作させ、ズーム撮影を実現する。撮像制御部42は、ズーム制御部21に対し、たとえばズームレンズ11の位置または移動量を特定するためのズーム位置情報を与える。それにより、ズーム制御部21はズームレンズ11を駆動し、ズーム制御が実現される。
【0070】
第2に、撮像制御部42は、被写体の光量を測定することによりアイリス12の絞り量を変化させて最適な露出での撮影を可能とする。撮像制御部42は、アイリス制御部22に対し、絞り量情報を与える。それにより、アイリスの絞り制御が実現される。
【0071】
第3に、撮像制御部42は、映像信号処理装置100本体の動き量を検出した結果に基づいて手振れ量を計算し、手振れ量をキャンセルするように光学手振れ補正用レンズ13を制御する。この制御のために、撮像制御部42は、OIS制御部23に対し、映像信号処理装置100本体の動き量や補正量情報を与える。なお、映像信号処理装置100本体の動き量は、たとえば、角速度センサーを機器に別途備えてもよいし、映像信号の動きベクトル量を計算してもよい。また、パン・チルトのように、映像信号処理装置100本体を意図的に動かして撮影する場合には、手振れ補正を行わないようにするために、映像信号処理装置100本体の動き量をOIS制御部23に与えてもよいし、撮像制御部42が補正量を計算する際に考慮してもよい。
【0072】
第4に、撮像制御部42は、撮像素子15の光量蓄積時間を制御して、撮像した被写体の明るさを制御する。この制御を電子シャッタ制御という。この電子シャッタ制御のために、撮像制御部42はシャッタ制御部24に対し、シャッタ速度情報を送る。なお、撮像素子15の前(光入射側の位置)にメカニカルシャッタ(図示せず)を備える場合には、撮像制御部42はメカニカルシャッタに対してもシャッタ速度制御を行う。
【0073】
第5に、撮像制御部42は、映像信号レベルを増幅するためのAGC回路17を制御する。被写体の照度が低下していくに従って、映像信号の信号レベルを増幅する必要がある。そのため、撮像制御部42は、比較的大きな自動利得値(AGCゲイン値)をAGC制御部25に対して与える。逆に、被写体の照度が高くなるに従って、映像信号の信号レベルを増幅する必要がなくなるため、比較的小さなAGCゲイン値をAGC制御部25に対して与える。
【0074】
第6に、撮像制御部42は、フォーカスレンズ14を制御して、被写体からの光が撮像素子15上に結像させる。すなわち、被写体に対してフォーカスを合わせる。
【0075】
撮像制御部42は、このような複数の撮像動作制御を常に行っている。これにより、あらゆる撮影条件においても、自動的に安定した画質を得ている。
【0076】
映像信号処理部44は、デジタル映像信号を受け取り、ガンマ補正処理を行う。ガンマ補正処理は広く知られているため、その説明は省略する。
【0077】
輪郭強調処理部41は、ガンマ補正後の映像信号に対して輪郭強調処理を施す。このとき、輪郭強調処理部41は、後述の輪郭強調制御部45から、輪郭強調のためのゲイン値を受け取っており、ガンマ補正後の映像信号とそのゲイン値を乗算する。これにより輪郭成分信号を増幅する。輪郭強調処理部41は、その結果得られた輪郭成分信号を出力端子43から後段へと出力する。
【0078】
図2は、輪郭強調処理部41の詳細な構成を示す。輪郭強調処理部41は、輪郭成分抽出部91および加算器93を有している。
【0079】
入力端子90より入力された映像信号は、輪郭成分抽出部91および加算器93に入力される。すると輪郭成分抽出部91は、映像信号の高周波成分を抽出し、輪郭成分信号として乗算器92に入力する。輪郭成分信号は、画像内の被写体等の輪郭部分に対応する映像信号である。
【0080】
乗算器92は、輪郭成分信号と、輪郭強調制御部45から受け取ったゲイン値とを乗算することで、輪郭成分信号を増幅する。増幅された輪郭成分信号は加算器93にて入力信号と加算され、出力端子94から出力される。出力された映像信号は輪郭強調処理が実施された映像信号となる。なお、出力端子94には、先に説明した出力端子43と接続されている。
【0081】
以下、このように構成された映像信号処理装置100の動作を説明する。
【0082】
撮像制御部42は、撮像部20の各構成要素を制御するため、各種の撮像制御信号を出力している。各種の撮像制御信号とは、上述の通り、ズーム位置情報、絞り値情報、手振れ補正用の映像信号処理装置100本体の動き量情報、シャッタ速度情報、AGCゲイン値情報である。これらの撮像制御信号は並列して輪郭強調制御部45にも与えられる。
【0083】
輪郭強調制御部45の選択部36は、パラメータ決定部31〜35によって決定されたパラメータのうちのひとつを選択して出力する。出力先は信号処理部44である。パラメータ決定部31〜35の各機能は以下のとおりである。なお、パラメータ決定部31〜35がゲイン値の決定のために利用する情報は、撮像制御部42から出力された信号に基づいて得られる。
【0084】
第1のパラメータ決定部31は、ズーム速度に連動して、適切な輪郭強調ゲイン値(パラメータ)を算出する。ズーム速度はズーム位置情報の時間変化を測定して求めることができる。
【0085】
図3Aは、第1のパラメータ決定部31に保持されている、ズーム速度とゲイン値との関係を示している。第1のパラメータ決定部31は、ズーム速度が速いほどゲイン値が小さくなるように輪郭強調ゲイン値を決定する。
【0086】
その理由は、以下のとおりである。ズーム速度が速いほど、撮影された画像の輪郭部がぼける場合が多い。このような場合には、画像中に高周波成分が少なくなるので、輪郭強調処理を施してもその効果が現れにくくなる。また、S/N比が悪い状況や、偽輪郭が輪郭周辺に出現する場合には、ノイズや偽輪郭という不要成分を強調してしまうおそれがある。そこで、ズーム速度が大きくなるにつれて輪郭強調ゲイン値が小さくなるようにした。
【0087】
第2のパラメータ決定部32は、本体の動き量に連動して輪郭強調ゲイン値を算出する。本体の動き量情報は、撮像制御部42から出力された、OIS制御のための信号である。
【0088】
図3Bは、第2のパラメータ決定部32に保持されている、映像信号処理装置100本体の動き量とゲイン値との関係を示している。第2のパラメータ決定部32は、本体の動き量が大きいほどゲイン値が小さくなるように輪郭強調ゲイン値を決定する。
【0089】
その理由は、ズーム同様、映像信号処理装置100本体の動き量が大きいほど、画像がぼける場合が多いためである。そこで、本体の動き量が大きくなるほど、輪郭強調ゲイン値が小さくなるようにした。
【0090】
第3のパラメータ決定部33は、絞り値に連動して輪郭強調ゲイン値を算出する。
【0091】
図3Cは、第3のパラメータ決定部33に保持されている、絞り値とゲイン値との関係を示している。第3のパラメータ決定部33は、絞り値が大きいほどゲイン値が小さくなるように輪郭強調ゲイン値を決定する。
【0092】
その理由は、以下のとおりである。絞り値が開放に近いほど、被写体照度が低い場合が多い。このようなときは、映像信号の輪郭部のような高周波成分が減少し、ノイズが増える傾向にある。すると、高周波成分が減少するため、輪郭強調処理を施してもその効果が現れにくい。さらにS/N比が悪い場合、すなわちノイズが多い場合には、ノイズ成分が増幅されることになり画質が低下する。特に暗い平坦部にてノイズが目立つようになってくる。そこで、絞り値が大きくなるほど、輪郭強調ゲイン値が小さくなるようにした。
【0093】
第4のパラメータ決定部34は、シャッタ速度に連動して輪郭強調ゲイン値を算出する。
【0094】
図3Dは、第4のパラメータ決定部34に保持されている、シャッタ速度とゲイン値との関係を示している。第4のパラメータ決定部34は、シャッタ速度が遅いほどゲイン値が小さくなるように輪郭強調ゲイン値を決定する。
【0095】
基本的には、非常に明るい被写体の場合は、撮像制御部42は、アイリス12を閉じる方向へ制御し、さらにシャッタ速度も高速にすることにより光量制限の制御を行っている。逆に、シャッタ速度が遅いと、被写体照度が低い場合が多い。被写体が暗くなると、アイリス12を開きつつ、シャッタ速度も遅くして蓄積光量を増加させるためである。被写体が暗いときは、高周波成分が減少するため輪郭強調処理を施してもその効果が現れにくく、S/N比が悪い場合にはノイズ成分が増幅されることになり画質が低下する。よって、図3Dに示すように、シャッタ速度が遅いほど輪郭強調ゲイン値が小さくなるようにした。
【0096】
第5のパラメータ決定部35は、AGC値に連動して輪郭強調ゲイン値を算出する。
【0097】
図3Eは、第5のパラメータ決定部35に保持されている、AGC値とゲイン値との関係を示している。
【0098】
AGC値が大きいほど、被写体照度が低い。このようなときは、映像信号の輪郭部のような高周波成分が減少し、ノイズが増える傾向にある。よって、図3Eに示すように、AGC値が大きいほど輪郭強調ゲイン値が小さくなるようにした。
【0099】
なお、図3A〜図3Eの縦軸に示された値のうち、Ba〜Beは、対応する各パラメータのうちで、ノイズが目立ちにくいと思われるレベルのうち、最も高いレベルを表している。
【0100】
選択部36は、第1〜第5のパラメータ決定部31〜35によってそれぞれ決定された各輪郭強調ゲイン値のうち最小のものを選択する。各輪郭強調ゲイン値のうち最小のゲイン値を採用する理由は、上述のズーム位置情報、絞り値情報、映像信号処理装置100本体の動き量情報、シャッタ速度情報、AGCゲイン値情報のすべての条件下において、ノイズや偽輪郭という不要な信号成分の増幅を最小限に抑えるためである。
【0101】
輪郭強調制御部45は、選択した輪郭強調ゲイン値を輪郭強調制御信号として、輪郭強調処理部41へ出力する。輪郭強調処理部41は、図2に示すとおり、この輪郭強調ゲイン値を輪郭成分に乗算して、映像信号に輪郭強調処理を施す。
【0102】
なお、撮像状態が刻々と変わるとき、選択部36にて選択される輪郭強調ゲイン値が激しく変動する可能性がある。すると同じ物体の輪郭部分の解像感が変動して見づらい画質になる。輪郭強調ゲイン値の急激な変動を回避するために、選択部36は、出力する輪郭強調ゲイン値に時定数を持たせるか、直前の値からの変化幅を規定するなどの処理を施して、輪郭強調ゲイン値を出力するようにすることが望ましい。
【0103】
図4は、輪郭強調ゲイン値に変化幅を持たせたときの選択部36からの出力信号の応答(輪郭強調ゲイン値)を示す。図4によると、点線で示すように、時刻によって急に変動する最小ゲインが選択されているが、直前のゲイン値からの変化幅を小さく設定されることにより、実際には実線で示すようなゆるやかな応答になっている。
【0104】
なお、上記の複数の撮像制御信号の全てを使用する必要はなく、一部のみを使用することももちろん可能である。また、同じ撮像制御信号を用いていても、図3A−3Eに例示した輪郭強調ゲイン値の算出特性と異なる特性を設定してもよい。また、上記の複数の撮像制御信号の例は一例であって、他の撮像制御信号を追加した場合も、上記と同様の処理方法を行うことができる。
【0105】
図5は、映像信号処理装置100の処理の手順を示すフローチャートである。
【0106】
ステップS1において、撮影開始に伴って撮像制御部42による各種制御が開始されると、撮像制御信号の出力が開始される。
【0107】
ステップS2において、パラメータ決定手段31〜35は、撮像制御部42から受け取った撮像制御信号と、図3A−3Eに示す各グラフとに基づいて、輪郭強調ゲイン値を決定する。
【0108】
ステップS3では、パラメータ決定手段31〜35のすべてが、撮像制御信号に対応する輪郭強調ゲイン値を決定したか否かが判断される。すべてについてまだ輪郭強調ゲイン値が決定されていない場合には、処理はステップS2に戻り、パラメータ決定手段31〜35のすべてが輪郭強調ゲイン値を決定し終えるまで繰り返される。すべてについて輪郭強調ゲイン値が決定された場合には、処理はステップS4に進む。
【0109】
ステップS4では、選択部36は、全ての撮像制御信号に対応する輪郭強調ゲイン値のうち、最も小さい輪郭強調ゲイン値を選択する。選択された輪郭強調ゲイン値は、輪郭強調処理部41に送られる。
【0110】
ステップS5において、輪郭強調処理部41は受け取った輪郭強調ゲイン値を適用して、輪郭強調処理を行う。
【0111】
以上の処理によれば、様々な撮影条件下で、ノイズや偽輪郭などの不要な信号成分の増幅を最小限に抑えた輪郭強調処理を行うことができる。
【0112】
(実施形態2)
図6は、本実施形態による映像信号処理装置200の構成を示すブロック図である。
【0113】
映像信号処理装置200は、輪郭強調処理部41、入力端子80、符号化部81、記録媒体82、輪郭強調制御部83を備えている。
【0114】
輪郭強調処理部41は、実施形態1で説明したとおりであるため、説明は省略する。
【0115】
符号化部81は、映像信号を目標の記録ビットレートに収まるように符号化して記録媒体に記録する。レート制御部61は、このときの符号量の制御を行っている。特に、レート制御部61は可変レート制御(VBR)を行うものとする。
【0116】
レート制御に際して使用されるパラメータは、量子化パラメータ、発生符号量、累積誤差量、目標の記録ビットレートである。なお、「累積誤差量」とは、目標の記録ビットレートで消費する記録容量と実際に発生した符号量によって消費した記録容量との差分として求められる。
【0117】
符号化部81は、種々の構成要素を備えている。具体的には、符号化部81は、並べ替えメモリ51、参照画像メモリ52、動き補償予測部53、減算器54、DCT回路55、量子化部56、逆量子化部57、逆DCT回路58、加算器59、可変長符号化部60およびレート制御部61を備えている。
【0118】
並べ替えメモリ51は符号化順に並べ替えられた符号化画像を出力する。動き補償予測部53は、並べ替えメモリ51から出力された符号化画像と参照画像メモリ52から出力された参照画像とから動き補償を行って予測画像を生成する。減算器54はこの予測画像と符号化画像との差分画像を求め、DCT回路55へ出力する。差分画像はDCT回路55で直交変換され、量子化部56でレート制御部61から与えられる量子化パラメータに従って量子化される。その結果は可変長符号化部60へ与えられるとともに、逆量子化部57へ与えられる。可変長符号化部60へ与えられたデータは、可変長符号化されて記録媒体82に記録される。一方、逆量子化部57へ与えられたデータは、先ほどの量子化パラメータに従い逆量子化され、逆DCT回路58にて逆直交変換され、先ほどの予測画像と加算され、参照画メモリに記憶される。なお、参照画メモリには参照画面に選ばれた画像のみが保持される。
【0119】
輪郭強調制御部83は、選択部36、および、パラメータ制御部71〜74を有している。パラメータ決定部71〜74の各機能は以下のとおりである。なお、パラメータ決定部71〜74がゲイン値の決定のために利用する情報は、レート制御部61から出力された信号に基づいて得られる。
【0120】
第6のパラメータ決定部71は、量子化パラメータに連動して輪郭強調ゲイン値を算出する。
【0121】
図7Aは、第6のパラメータ決定部71に保持されている、量子化パラメータとゲイン値との関係を示している。量子化パラメータが大きいほど、量子化誤差によるブロック歪が増加する。これを防ぐように輪郭強調ゲインは小さくする方が良い。よって図7Aに示すように、量子化パラメータが大きいほどゲイン値が小さくなるように輪郭強調ゲイン値を決定することとした。
【0122】
第7のパラメータ決定部72は、発生符号量に連動して輪郭強調ゲイン値を算出する。
【0123】
図7Bは、第7のパラメータ決定部72に保持されている、符号量とゲイン値との関係を示している。発生符号量が大きいほど、その後に発生符号量を抑えるためのレート制御がかかることになる。そのため、輪郭強調ゲインは小さくする方が良い。よって図7Bに示すように、発生符号量が大きいほどゲイン値が小さくなるように輪郭強調ゲイン値を決定することとした。
【0124】
第8のパラメータ決定部73は、上記累積誤差量に連動して輪郭強調ゲイン値を算出する。
【0125】
図7Cは、第8のパラメータ決定部73に保持されている、累積誤差量とゲイン値との関係を示している。累積誤差量が大きくなることは、目標の記録レートより符号量を消費しすぎている状態を意味する。累積誤差量が大きくなると、その後は発生符号量を抑えるためのレート制御が行われることになるので、輪郭強調ゲインは小さくする方が良い。よって図7Cに示すように、累積誤差量が大きいほどゲイン値が小さくなるように輪郭強調ゲイン値を決定する。
【0126】
第9のパラメータ決定部74は、目標記録ビットレートに連動して輪郭強調ゲイン値を算出する。
【0127】
図7Dは、第8のパラメータ決定部73に保持されている、目標記録ビットレートとゲイン値との関係を示している。目標記録ビットレートが小さいとき、当然量子化パラメータは大きくなるので、輪郭強調ゲインは小さくする方が良い。よって図7Dに示すように、目標記録ビットレートが小さいほどゲイン値が小さくなるように輪郭強調ゲイン値を決定することとした。
【0128】
なお、図7A〜7Dの縦軸に示された値のうち、Ca〜Cdは、対応する各パラメータのうちで、ノイズが目立ちにくいと思われるレベルのうち、最も高いレベルを表している。
【0129】
選択部36は、第6〜第9のパラメータ決定部で上記方法で決定された各輪郭強調ゲイン値のうち最小のものを選択する。輪郭制御部45は、選択した輪郭強調ゲイン値を、輪郭強調処理部41へ出力する。輪郭強調処理部41は、図2に示すとおり、この輪郭強調ゲイン値を輪郭成分に乗算して、映像信号に輪郭強調処理を施す。
【0130】
なお、符号化難易度が刻々と変わるとき、選択部36にて選択される輪郭強調ゲイン値が激しく変動する可能性がある。すると同じ物体の輪郭部分の解像感が変動して見づらい画質になる。これを回避するために、選択部36は、出力する輪郭強調ゲイン値に時定数を持たせるか、直前の値からの変化幅を規定するなどの処理を施して、輪郭強調ゲイン値を出力するようにすることが望ましい。この応答性の動作は実施形態1と同じである。
【0131】
なお、上記の複数の符号化情報の全てを使用する必要はなく、一部のみを使用することももちろん可能である。また、同じ符号化情報を用いていても、図7A−7Dに例示した輪郭強調ゲイン値の算出特性と異なる特性を設定してもよい。また、上記の複数の符号化情報の例は一例であって、他の符号化情報を追加した場合も、上記と同様の処理方法を行うことができる。
【0132】
本実施形態による映像信号処理装置200の動作は、実施形態1に関連した図5と概ね同じである。相違点は、図5の「撮影制御信号」に代えて、レート制御部61から出力された信号が用いられる点である。
【0133】
(実施形態3)
図8は、本実施形態による映像信号処理装置300の構成を示すブロック図である。図8に示す映像信号処理装置300は実施形態1にかかる映像信号処理装置100と、実施形態2にかかる映像信号処理装置200とを組み合わせた構成になっている。同じ機能を有する構成要素には、図1および図6に付したと同じ参照符号を付し、その説明は省略する。
【0134】
輪郭強調制御部84はパラメータ決定部31〜35および71〜74を備えている。各パラメータ決定部は、実施形態1及び実施形態2で述べたとおりに動作して、各々輪郭強調ゲイン値を決定する。
【0135】
選択部301は、パラメータ決定部31〜35および71〜74が決定した各輪郭強調ゲイン値のうち、最小のゲイン値を選択する。輪郭強調制御部84は、選択した輪郭強調ゲイン値を、輪郭強調処理部41へ出力する。輪郭強調処理部41は、図2に示すとおり、この輪郭強調ゲイン値を輪郭成分に乗算して、映像信号に輪郭強調処理を施す。
【0136】
なお、撮像状態や符号化難易度が刻々と変わるとき、選択部301にて選択される輪郭強調ゲイン値が激しく変動する可能性がある。すると同じ物体の輪郭部分の解像感が変動して見づらい画質になる。これを回避するために、選択部301は、出力する輪郭強調ゲイン値に時定数を持たせるか、直前の値からの変化幅を規定するなどの処理を施して、輪郭強調ゲイン値を出力するようにすることが望ましい。この応答性の動作は実施形態1と同じである。
【0137】
なお、上記の複数の撮像制御信号及び符号化情報の全てを使用する必要はなく、一部のみを使用することももちろん可能である。また、同じ撮像制御信号及び符号化情報を用いていても、図3A−3E及び図7A−7Dに例示した輪郭強調ゲイン値の算出特性と異なる特性を設定してもよい。また、上記の複数の撮像制御信号及び符号化情報の例は一例であって、他の撮像制御信号及び符号化情報を追加した場合も、上記と同様の処理方法を行うことができる。
【0138】
なお、実施の形態1〜3において、輪郭強調制御信号として輪郭強調ゲイン値を使用して本発明の実施の形態を説明した。それ以外に、輪郭強調制御信号として、輪郭成分抽出部91を構成するフィルタに与えるフィルタ係数を用いることも可能である。
【0139】
この場合は、あらかじめ複数種類のフィルタ係数が用意されていて、それぞれは異なる係数であり、それにより、フィルタの周波数特性を変動させる。これらの係数をあらかじめ輪郭強調度合い(程度)を強めるものから弱めるものまで順番付けしておき、各パラメータ決定部で入力制御信号に応じた順番を決定し、選択部301にて最も弱い特性の順番を選択するようにすればよい。例えば弱い係数ほど小さな番号を与えるとすると、選択部301は最小の番号を選択する。これにより本発明の目的を達成できる。
【0140】
図9は、輪郭成分抽出部91に備えられたハイパスフィルタに与える複数種類のフィルタ係数に基づく周波数特性を示す。各周波数特性は番号(1)〜(5)があらかじめ設定されており、番号の小さい方ほど、輪郭強調の程度が弱いという定義になっている。各輪郭強調パラメータはこれらの番号のいずれかをとり、選択部にて最小の番号を選択すればよい。なお、輪郭成分抽出部91の構成は他にも考えられる。バンドパスフィルタやローパスフィルタを用いる構成でも良く、用いるフィルタに適合する係数を選ぶことにより、上記と同様の処理方法を行うことができる。
【0141】
以上、本発明の実施形態を説明した。
【0142】
上述の実施形態では、撮像制御情報を複数種類用いる例を挙げたが、種類は1つでもよい。1種類の撮像制御情報であっても、図3A等を用いるとノイズを低減できるようなゲイン値を選択できるためである。
【0143】
なお、上述の各実施形態に関する図3A−3E、図7A−7Dでは、横軸の情報は、デジタル値として撮像制御部42から出力される。たとえば図3Aの「ズーム速度」は、正規化された8ビットのデジタル情報として、パラメータ決定部31およびズーム制御部21に与えられる。これは、ズーム速度を示す値であるが、ズーム速度そのものであってもよい。
【0144】
また、図3A−3E、図7A−7Dのグラフの形状は例であり、どの位置で折れるかは適宜決定することができる。たとえば、横軸が8ビットのデジタル値(10進数で0〜255)として表されるときは、その範囲の1/3の位置で一度折れ、2/3の位置でさらに折れるとしてもよい。ユーザがその位置を設定できるようにしてもよい。なお、グラフ形式ではなく、横軸の情報が入力として与えられるとゲイン値を求めることが可能な関数(数式)として表現されていてもよい。
【0145】
実施形態の説明のうち、特に実施形態2および3にかかる説明では、輪郭強調処理部41と、符号化部81とを別個の構成要素として説明した。しかしながら、これらを1つにまとめ、1チップとして実装させてもよい。
【0146】
また、実施形態3の説明に関連して、図8では、輪郭強調処理部41は1つのみ設けていた。しかしながら、輪郭強調処理部41を2つ設けてもよい。そのうち一方は、撮像部20からの映像信号を受けて輪郭強調処理を行い、他方は、当該輪郭強調処理がなされたその映像信号に対してさらに輪郭強調処理を行ってもよい。記録媒体82への録画時には、2つの輪郭強調処理部41によって処理された映像信号が利用される。一方、録画は行っていないがリアルタイムの映像をモニタ(図示せず)に表示する場合には、撮像部20からの信号を輪郭強調処理した映像信号が利用される。
【0147】
本実施形態による映像信号処理装置300の動作は、実施形態1に関連した図5と概ね同じである。相違点は、図5の「撮影制御信号」に加えて、「符号化部81内のレート制御部61から出力された信号」が用いられる点である。
【産業上の利用可能性】
【0148】
以上述べたように本発明による映像信号処理装置は、撮像制御情報を用いることにより、あらゆる撮影条件下で最適な輪郭強調処理を行うことができる。また、複数の符号化情報を用いることにより、符号化による画質劣化を招くことなく適切な輪郭強調処理を行うことができる。また、あらゆる撮像条件と符号化状態に対応した最適な輪郭強調処理を行うことができる。よって、常に画質の向上を図ることができるという効果を得ることができる。また、非常に処理量の少ない簡単な方法で実現できるので、処理に利用する撮像制御情報の種類が増加したとしても、回路規模やメモリ量などのコスト増大を招くこともなく導入可能である。
【0149】
よって、本発明はデジタルビデオカメラやビデオレコーダなどに用いる各種の映像信号処理装置やソフトウェアに極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0150】
【図1】実施形態1による映像信号処理装置100の構成を示すブロック図である。
【図2】輪郭強調処理部41の詳細な構成を示す図である。
【図3A】第1のパラメータ決定部31に保持されている、ズーム速度とゲイン値との関係を示す図である。
【図3B】第2のパラメータ決定部32に保持されている、映像信号処理装置100本体の動き量とゲイン値との関係を示す図である。
【図3C】第3のパラメータ決定部33に保持されている、絞り値とゲイン値との関係を示す図である。
【図3D】第4のパラメータ決定部34に保持されている、シャッタ速度とゲイン値との関係を示す図である。
【図3E】第5のパラメータ決定部35に保持されている、AGC値とゲイン値との関係を示す図である。
【図4】輪郭強調ゲイン値に変化幅を持たせたときの選択部36からの出力信号の応答(輪郭強調ゲイン値)を示す図である。
【図5】映像信号処理装置100の処理の手順を示すフローチャートである。
【図6】実施形態2による映像信号処理装置200の構成を示すブロック図である。
【図7A】第6のパラメータ決定部71に保持されている、量子化パラメータとゲイン値との関係を示す図である。
【図7B】第7のパラメータ決定部72に保持されている、符号量とゲイン値との関係を示す図である。
【図7C】第8のパラメータ決定部73に保持されている、累積誤差量とゲイン値との関係を示す図である。
【図7D】第8のパラメータ決定部73に保持されている、目標記録ビットレートとゲイン値との関係を示す図である。
【図8】実施形態3による映像信号処理装置300の構成を示すブロック図である。
【図9】輪郭成分抽出部91に備えられたハイパスフィルタに与える複数種類のフィルタ係数に基づく周波数特性を示す図である。
【図10】従来の撮像装置の構成を示す構成図である。
【図11】従来の撮像装置の符号化部81の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0151】
20 撮像部
31〜35、71〜74 パラメータ決定部
36 選択部
41 輪郭強調処理部
42 撮像制御部
44 信号処理部
45、83、84 輪郭強調制御部
61 レート制御部
81 符号化部
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像信号処理に関する。より具体的には、本発明は、デジタルビデオカメラなどで用いられる映像信号の輪郭強調処理に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルビデオカメラ等の一般的な撮像装置は、撮像手段と、映像信号処理手段と、符号化手段とを備えている。
【0003】
撮像手段は、撮像光学系を通して被写体光(被写体からの光)を固体撮像素子に結像さ
せて光電変換し、映像信号を生成する。映像信号処理手段は、撮像手段によって得られた映像信号に対して画質向上のための種々の信号処理を行う。そして符号化手段は、信号処理が行われた映像信号をMPEG2などの符号化方式によりデータ量圧縮する。
【0004】
被写体が撮影される条件は様々であるため、撮像装置の映像信号処理手段は、どのような撮影条件下においても安定して良好な画質を得るための制御を種々行っている。たとえば、撮像手段に対する、絞り、シャッタ速度、フォーカス、手振れ補正、ズーム動作の制御である。また、自動利得制御(AGC)も行っている。さらに、映像信号処理手段は、画質向上のために、ガンマ補正処理や輪郭強調処理なども行っている。
【0005】
たとえば、特許文献1および2は、カメラに代表される装置を開示している。
【0006】
図10は従来の撮像装置の構成を示す構成図である。
【0007】
撮像装置は、撮像部20と、種々の制御部21〜25と、撮像制御部42と、映像信号処理部44とを備えている。
【0008】
撮像光学系19に入射した被写体光は、撮像光学系19のレンズ群10、11、13、14およびアイリス12を介して撮像素子上に結像される。そして、被写体光は、撮像素子15、CDS回路16およびAGC回路17によってアナログ映像信号に変換され、さらにA/D変換器18によって、デジタル映像信号に変換される。
【0009】
次に、変換されたデジタル映像信号は、映像信号処理部44に入力される。映像信号処理部44のガンマ補正回路40は、入力されたデジタル映像信号に対してガンマ補正処理を行う。次に、輪郭強調処理部41は、ガンマ補正後の映像信号に対して輪郭強調処理を施す。具体的には、輪郭強調処理部41は、ガンマ補正処理が行われた映像信号に対して、外部から受け取ったゲイン値を乗算することで、適正レベルとなるように輪郭成分信号を増幅する。輪郭強調処理部41は、その結果得られた輪郭成分信号を出力端子43から後段へと出力する。
【0010】
上述の撮像光学系19での処理に関し、撮像制御部42は、種々の制御部21〜25を制御する。具体的には、撮像制御部42は、ズーム制御部21、アイリス制御部22、OIS(Optical Image Stabilizer)制御部23、シャッタ制御部24、および、AGC制御部25を制御する。これらの制御により、あらゆる撮影条件においても、自動的に安定した画質を得ている。
【特許文献1】特開平2−63271号公報
【特許文献2】特開2002−64745号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来の輪郭強調処理方法には、様々な撮影条件に対応した効果的な輪郭強調処理ができないこと、符号化による画質低下と輪郭強調による画質向上のバランスをとることができないこと、および、複数の制御情報を用いるとメモリなどの回路規模が増加してコストアップを招いてしまうこと、が課題として存在していた。具体的には以下の通りである。
【0012】
第1の例として、上述した課題は、被写体の照度が低下したときに顕著となる。
【0013】
まず、撮像素子15へ入力される被写体の照度が明るい場合は、輪郭部のコントラストが高い映像が得られ、輪郭強調効果が現れやすい。また輝度の高い領域が画面内に多いので信号対雑音(S/N)比も良好である。よって輪郭強調ゲイン値が大きく設定されていても不要なノイズの増幅はなく画質の向上を図ることができる。
【0014】
一方、照度が低くなるに従い徐々にS/N比が悪化する。特に暗い平坦部にてノイズが目立つようになってくる。しかしながら、輪郭強調処理時には、照度にかかわらず、比較的大きなゲイン値が一律に与えられ、それにより輪郭成分信号が増幅されている。これでは、ノイズ成分までもが増幅され、非常に見栄えの悪い画質となる。また照度が低い場合は輪郭部のコントラストが低下し、輪郭強調処理を施してもその効果が現れにくい。
【0015】
また、第2の例として、ズームやパンといった撮像光学系や撮像装置本体の動きによって被写体に動きが発生した場合にも、上述した課題が顕著となる。
【0016】
まず、撮像光学系や撮像装置本体が動いていない静止撮影においては、被写体のフォーカスが合いやすく輪郭部もくっきりと撮像される。そこに輪郭強調処理を施せば、さらに輪郭がくっきりと強調され画質向上を図ることができる。
【0017】
しかし、カメラをパンし、またはズームしながら撮影した場合、被写体が動くためにフォーカスが合いにくくなり、輪郭部がぼける。つまり高周波成分が少なくなるため、輪郭強調処理を施しても輪郭強調効果が現れにくい。
【0018】
さらには、不要な信号成分を強調してしまうおそれもある。たとえば、ノイズ低減用の3次元ノイズリダクション回路(図示せず)が設けられている場合には、動いた輪郭部の近傍に残像または偽輪郭などの、被写体には存在しない不要な成分が出現することがある。輪郭強調処理は、そのような不要な成分も同時に強調する。さらに照度が低い状況であればS/N比も悪く、ノイズ成分だけを強調してしまい、画質低下をもたらす。
【0019】
特許文献1には、低照度時に画質低下を抑える輪郭強調方法が提案されている。これは、AGC回路17へ与えるAGCゲイン値に連動して輪郭強調係数を制御する技術である。
【0020】
これは、AGC回路17によって強い輪郭強調処理が行われるような、非常に低い照度での問題には対応可能であるが、AGC回路17が動作を開始する照度ほどには低くないが、客観的にはかなり低い照度の場合には問題が残る。
【0021】
撮像部における照度調整はAGC制御が開始される以前にも、アイリスの絞り量やシャッタ速度などを制御することによって行われている。例えば、1/60秒のシャッタ速度でアイリス開放の場合には、照度が低くなっており、解像度の低下やS/N比の悪化が顕著になってくる。このように、ある単独条件のみを改善するだけでは、他の条件では問題が残されたままであり、複数のカメラ制御情報の条件を総合的に考慮しなければならない。
【0022】
複数のカメラ制御情報を用いる例としては特許文献2の技術が存在する。特許文献2に示される方法は複数条件に基づく各パラメータの場合分けにより、パラメータセットをロードするように設定テーブルがメモリに保持されている。しかしこの構成では使用する撮像制御情報の数が増えるとテーブル量が増加し、メモリ量が増えるなどの大幅なコスト増加を招いてしまう。
【0023】
また、輪郭強調処理を行うことにより、さらに他の問題も発生する。
【0024】
たとえば、ビデオカメラで動画を撮影すると、映像信号が符号化され、動画データとして記録媒体に書き込まれる。符号化処理前に輪郭強調処理が行われると、その処理結果を受けた符号化処理時にブロック歪が増大し、画質劣化をもたらすことがある。よりよい画質(解像感)を得るための輪郭強調処理が、その後の画質劣化の原因になり、逆効果を招いているといえる。
【0025】
以下、図11を参照しながら、ブロック歪が増大する理由を説明する。図11は、従来の撮像装置の符号化部81の構成を示す。一例としてMPEG2方式を用いた符号化を行う構成を示している。
【0026】
以下、符号化部81において行われる処理の流れを説明する。
【0027】
まず、入力端子80から映像信号が入力される。入力された映像信号はガンマ補正後の映像信号とする。
【0028】
輪郭強調処理部41は所定のゲイン値に基づき映像信号に輪郭強調処理を施す。輪郭強調された映像信号は、並べ替えメモリ51に保持される。
【0029】
並べ替えメモリ51は符号化順に並べ替えられた符号化画像を出力する。動き補償予測部53は、並べ替えメモリ51から出力された符号化画像と参照画像メモリ52から出力された参照画像とから動き補償を行って予測画像を生成する。減算器54はこの予測画像と符号化画像との差分画像を求め、DCT回路55へ出力する。差分画像はDCT回路55で直交変換され、量子化部56でレート制御部61から与えられる量子化パラメータに従って量子化される。その結果は可変長符号化部60へ与えられるとともに、逆量子化部57へ与えられる。可変長符号化部60へ与えられたデータは、可変長符号化されて記録媒体82に記録される。一方、逆量子化部57へ与えられたデータは、先ほどの量子化パラメータに従い逆量子化され、逆DCT回路58にて逆直交変換され、先ほどの予測画像と加算され、参照画メモリに記憶される。なお、参照画メモリには参照画面に選ばれた画像のみが保持される。
【0030】
レート制御部61は、設定された目標とする記録ビットレートに符号化データが収まるように、量子化の強度を制御する。量子化の強度制御は、量子化パラメータの大きさを変更することで行う。
【0031】
入力される画像の情報量は、常に刻々と変動している。一般に平坦部が多く動きの少ない画像は情報量が少なく、輪郭部の多い複雑な画像や動きの激しい画像は情報量が多い。情報量が多い画像を所定の記録ビットレートに収めるためには、情報量が少ない画像を同じ記録ビットレートに収めるよりも、より大きな量子化パラメータを用いて量子化しなければならない。その結果、量子化誤差の増加によるブロック歪が顕著となって現れる。
【0032】
輪郭強調処理部41における輪郭強調処理は、高周波成分の信号レベルを増加させるものである。したがって、符号化処理にて削除されるべき高周波成分が削除されにくくなり、多く残存するという結果をもたらす。すると、符号化部はさらに量子化パラメータを大きくして目標の記録ビットレートに収めようと働く。
【0033】
このように、輪郭強調処理により解像感が向上する効果を狙っても、ブロック歪が増大して画質が劣化するという逆効果を招く。この現象は特に、画像の情報量に対して記録ビットレートが相対的に低すぎる場合に顕著になる。
【0034】
また、レート制御部61はレート制御を行うために符号化画像ごとの発生符号量を計測している。そして可変レート制御(VBR)を行う場合は、画像情報量が増加したとき、量子化パラメータを上げるだけの制御でなく、少し量子化パラメータを上げるとともに、発生符号量が記録ビットレートに対して超過することをある程度認めるように制御を行う。よって、符号化による画質の変化の程度(画質劣化の影響)は量子化パラメータと発生符号の増加量という2つのパラメータに現れる。
【0035】
また、目標の記録ビットレートで消費する記録容量と、実際に発生した符号量によって消費した記録容量との差分である累積誤差量の大きさに応じて量子化制御している場合には、累積誤差量に応じて発生符号量が制限される。よって、画質劣化の程度は、累積誤差量というパラメータにも現れる。
【0036】
また、目標の記録ビットレートの高さも当然画質にかかわる。上記のようにブロック歪が増大して画質劣化をもたらすことは、画像の情報量に対して記録ビットレートが相対的に低すぎる場合に顕著になるからである。よって、画質劣化の程度は、目標の記録ビットレートというパラメータにも現れる。
【0037】
上述の通り、輪郭強調処理のみでは画質を向上させることはできず、種々のパラメータに与える影響も考慮する必要がある。
【0038】
本発明の目的は、どのような撮像条件下および/またはどのような符号化条件下において、適切な輪郭強調処理を行い良好な画質を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0039】
本発明による映像信号処理装置は、被写体を撮像して映像信号を生成する撮像部と、撮像された画像内の輪郭部分を強調する輪郭強調処理部であって、前記撮像部から出力される前記映像信号に基づいて前記輪郭部分を検出し、外部から入力された輪郭強調制御信号を利用して、前記輪郭部分を強調する輪郭強調処理部と、前記撮像部の撮像動作を制御するための少なくとも1つの撮像制御信号を生成する撮像制御部と、前記少なくとも1つの撮像制御信号に応じて、前記輪郭部分を強調する程度を決定する輪郭強調制御信号を生成し、前記輪郭強調処理部に送信する輪郭強調制御部とを備えている。
【0040】
前記輪郭強調制御部は、前記少なくとも1つの撮像制御信号の各々に対応した輪郭強調パラメータを生成するパラメータ決定部と、前記輪郭強調パラメータの中から、前記輪郭部分を強調する程度が最も弱い特性を持つ輪郭強調パラメータを選択し、前記輪郭強調制御信号として生成する選択部とを備えていてもよい。
【0041】
前記撮像制御部は、ズーム位置、シャッタ速度、絞り値、自動利得値、撮像装置本体の動き量、のうち1つ以上を制御する信号を前記撮像制御信号として生成してもよい。
【0042】
本発明による他の映像信号処理装置は、画像内の輪郭部分を強調する輪郭強調処理部であって、映像信号に基づいて前記輪郭部分を検出し、外部から入力された輪郭強調制御信号を利用して前記輪郭部分を強調した映像信号を出力する輪郭強調処理部と、映像信号を高能率符号化する符号化部と、前記符号化部の符号化状態を示す少なくとも2種類の符号化情報に応じて前記輪郭部分を強調する程度を変更する輪郭強調制御信号を生成する輪郭強調制御部とを備えている。
【0043】
前記輪郭強調制御部は、前記少なくとも2種類の符号化情報の各々に対応した輪郭強調パラメータを生成するパラメータ決定部と、前記輪郭強調パラメータの中から、前記輪郭部分を強調する程度が最も弱い特性を持つ輪郭強調パラメータを選択し、前記輪郭強調制御信号として生成する選択部とを備えていてもよい。
【0044】
前記符号化部は、量子化パラメータ、符号量、目標符号量に対する発生符号量の累積誤差量、目標ビットレート値、のうちの少なくとも2種類の符号化情報を出力してもよい。
【0045】
前記映像信号処理装置は、映像信号を高能率符号化する符号化部をさらに備え、前記パラメータ決定部は、前記符号化部の符号化状態を示す前記少なくとも1種類の符号化情報に応じて、前記輪郭部分を強調する程度を変更する前記輪郭強調パラメータをさらに生成してもよい。
【0046】
前記輪郭強調処理部は、検出した前記輪郭部分に対応する前記映像信号の成分にゲイン値を乗じて前記映像信号に加算し、前記輪郭強調制御部は、前記パラメータ決定部の各々で生成されたゲイン値の中から最小のゲイン値を選択してもよい。
【0047】
前記輪郭強調処理部は、前記映像信号およびフィルタ係数に基づいて前記輪郭部分を検出するフィルタを備えており、前記輪郭強調処理部は、検出した前記輪郭部分に対応する前記映像信号の成分にゲイン値を乗じて前記映像信号に加算し、前記輪郭強調制御部は、前記輪郭強調の程度が最も弱いフィルタ係数を前記輪郭強調信号として生成してもよい。
【0048】
前記少なくとも1つの撮像制御信号はズーム位置信号であって、前記撮像制御部は、前記撮像部のズーム動作を制御するために前記ズーム位置信号を前記撮像部へ出力し、前記パラメータ決定部は、前記ズーム位置信号から現在のズーム速度を計算し、ズーム速度が速いほど前記輪郭強調の程度を弱める輪郭強調パラメータを生成してもよい。
【0049】
前記少なくとも1つの撮像制御信号は装置本体の動き量であって、前記撮像制御部は、前記撮像部の手振れ補正動作を制御するために前記装置本体の動き量信号を前記撮像部へ出力し、前記パラメータ決定部は、前記装置本体の動き量が速いほど前記輪郭強調の程度を弱める輪郭強調パラメータを生成してもよい。
【0050】
前記少なくとも1つの撮像制御信号はアイリスの絞り値であって、前記撮像制御部は、前記撮像部のアイリスの絞り量を制御するために絞り値を前記撮像部へ出力し、前記パラメータ決定部は、前記絞り値が開放に近いほど前記輪郭強調の程度を弱める輪郭強調パラメータを生成してもよい。
【0051】
前記少なくとも1つの撮像制御信号はシャッタ速度値であって、前記撮像制御部は、前記撮像部のシャッタ速度を制御するためにシャッタ速度値を前記撮像部へ出力し、前記パラメータ決定部は、前記シャッタ速度が遅いほど前記輪郭強調する程度を弱める輪郭強調パラメータを生成してもよい。
【0052】
前記少なくとも1つの撮像制御信号は自動利得値であって、前記撮像制御部は、前記撮像部の自動利得量を制御するために自動利得値を前記撮像部へ出力し、前記パラメータ決定部は、前記自動利得値が大きいほど前記輪郭強調の程度を弱める輪郭強調パラメータを生成してもよい。
【0053】
前記少なくとも2種類のうちの1種類の符号化情報は量子化パラメータであって、前記符号化部は、符号化に用いた前記量子化パラメータを前記輪郭強調制御部へ出力し、前記輪郭強調制御部は、前記量子化パラメータが大きいほど前記輪郭強調の程度を弱める輪郭強調パラメータを生成してもよい。
【0054】
前記少なくとも2種類のうちの1種類の符号化情報は符号量であって、前記符号化部は、符号化により発生した前記符号量を前記輪郭強調制御部へ出力し、前記輪郭強調制御部は、前記符号量が大きいほど前記輪郭強調度合いを弱める輪郭強調パラメータを生成してもよい。
【0055】
前記少なくとも2種類の符号化情報のうちの1種類は、目標符号量に対する発生符号量の累積誤差量であって、前記符号化部は、前記累積誤差量を前記輪郭強調制御部へ出力し、前記輪郭強調制御部は、前記累積誤差量が大きいほど前記輪郭強調の程度を弱める輪郭強調パラメータを生成してもよい。
【0056】
前記少なくとも2種類の符号化情報のうちの1種類は目標ビットレート値であって、前記符号化部は、前記目標ビットレート値を前記輪郭強調制御部へ出力し、前記輪郭強調制御部は、前記目標ビットレート値が小さいほど前記輪郭強調の程度を弱める輪郭強調パラメータを生成してもよい。
【発明の効果】
【0057】
本発明によれば、撮像制御情報を用いることにより、様々な撮影条件下で最適な、輪郭強調処理を行うことができる。また、符号化情報を用いることにより、符号化による画質劣化を招くことなく適切な輪郭強調処理を行うことができる。また、あらゆる撮像条件と符号化状態に対応した最適な輪郭強調処理を行うことができる。よって、常に画質の向上を図ることが可能になる。また、非常に処理量の少ない簡単な方法で実現できるので、回路規模やメモリ量などのコスト増大を招くこともなく導入可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0058】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明による映像信号処理装置の実施形態を説明する。
【0059】
(実施形態1)
図1は、本実施形態による映像信号処理装置100の構成を示すブロック図である。
【0060】
映像信号処理装置100は、たとえばデジタルスチルカメラ、カムコーダである。ただし、図1には、一般的なデジタルスチルカメラやカムコーダのすべての構成は示していない。図1の構成に加えて、たとえば映像信号を圧縮符号化処理する回路、記録媒体に記録するための入出力回路、撮影した映像を表示する表示回路等を設ければよい。それらの一般的な構成の説明は省略する。
【0061】
映像信号処理装置100は、撮像部20と、種々の制御部21〜25と、撮像制御部42と、出力端子43と、映像信号処理部44と、輪郭強調制御部45とを備えている。
【0062】
撮像部20は、撮像光学系19、撮像素子15、CDS回路16、AGC回路17、A/D変換器18を備えている。撮像光学系19は、たとえば固定レンズ10、ズームレンズ11、アイリス12、光学手振れ補正用レンズ13、フォーカスレンズ14を含む。
【0063】
また、信号処理部44は、ガンマ補正回路40、輪郭強調処理部41を含む。
【0064】
種々の制御部21〜25は、ズーム制御部21、アイリス制御部22、OIS(Optical Image Stabilizer)制御部23、シャッタ制御部24、AGC制御部25である。
【0065】
輪郭強調制御部45は、パラメータ決定部31〜35および選択部36を含む。
【0066】
以下、各構成要素の機能を詳細に説明する。
【0067】
撮像光学系19を通過した被写体光は、撮像素子15の受光面で結像し、撮像素子15によって電気信号に変換されて映像信号が生成される。映像信号は、CDS回路16に入力されて相関2重サンプリングされた後、AGC回路17にて適正レベルに増幅され、A/D変換器18にてA/D変換されて、デジタル映像信号に変換される。
【0068】
上述の撮影時において、撮像制御部42は、撮像光学系19や撮像素子15、AGC回路17などの撮像部20内の複数の構成要素を制御する。以下、撮像制御部42の主要な6つの動作を説明する。
【0069】
第1に、撮像制御部42は、ユーザのズーム操作に応じてズームレンズ11を動作させ、ズーム撮影を実現する。撮像制御部42は、ズーム制御部21に対し、たとえばズームレンズ11の位置または移動量を特定するためのズーム位置情報を与える。それにより、ズーム制御部21はズームレンズ11を駆動し、ズーム制御が実現される。
【0070】
第2に、撮像制御部42は、被写体の光量を測定することによりアイリス12の絞り量を変化させて最適な露出での撮影を可能とする。撮像制御部42は、アイリス制御部22に対し、絞り量情報を与える。それにより、アイリスの絞り制御が実現される。
【0071】
第3に、撮像制御部42は、映像信号処理装置100本体の動き量を検出した結果に基づいて手振れ量を計算し、手振れ量をキャンセルするように光学手振れ補正用レンズ13を制御する。この制御のために、撮像制御部42は、OIS制御部23に対し、映像信号処理装置100本体の動き量や補正量情報を与える。なお、映像信号処理装置100本体の動き量は、たとえば、角速度センサーを機器に別途備えてもよいし、映像信号の動きベクトル量を計算してもよい。また、パン・チルトのように、映像信号処理装置100本体を意図的に動かして撮影する場合には、手振れ補正を行わないようにするために、映像信号処理装置100本体の動き量をOIS制御部23に与えてもよいし、撮像制御部42が補正量を計算する際に考慮してもよい。
【0072】
第4に、撮像制御部42は、撮像素子15の光量蓄積時間を制御して、撮像した被写体の明るさを制御する。この制御を電子シャッタ制御という。この電子シャッタ制御のために、撮像制御部42はシャッタ制御部24に対し、シャッタ速度情報を送る。なお、撮像素子15の前(光入射側の位置)にメカニカルシャッタ(図示せず)を備える場合には、撮像制御部42はメカニカルシャッタに対してもシャッタ速度制御を行う。
【0073】
第5に、撮像制御部42は、映像信号レベルを増幅するためのAGC回路17を制御する。被写体の照度が低下していくに従って、映像信号の信号レベルを増幅する必要がある。そのため、撮像制御部42は、比較的大きな自動利得値(AGCゲイン値)をAGC制御部25に対して与える。逆に、被写体の照度が高くなるに従って、映像信号の信号レベルを増幅する必要がなくなるため、比較的小さなAGCゲイン値をAGC制御部25に対して与える。
【0074】
第6に、撮像制御部42は、フォーカスレンズ14を制御して、被写体からの光が撮像素子15上に結像させる。すなわち、被写体に対してフォーカスを合わせる。
【0075】
撮像制御部42は、このような複数の撮像動作制御を常に行っている。これにより、あらゆる撮影条件においても、自動的に安定した画質を得ている。
【0076】
映像信号処理部44は、デジタル映像信号を受け取り、ガンマ補正処理を行う。ガンマ補正処理は広く知られているため、その説明は省略する。
【0077】
輪郭強調処理部41は、ガンマ補正後の映像信号に対して輪郭強調処理を施す。このとき、輪郭強調処理部41は、後述の輪郭強調制御部45から、輪郭強調のためのゲイン値を受け取っており、ガンマ補正後の映像信号とそのゲイン値を乗算する。これにより輪郭成分信号を増幅する。輪郭強調処理部41は、その結果得られた輪郭成分信号を出力端子43から後段へと出力する。
【0078】
図2は、輪郭強調処理部41の詳細な構成を示す。輪郭強調処理部41は、輪郭成分抽出部91および加算器93を有している。
【0079】
入力端子90より入力された映像信号は、輪郭成分抽出部91および加算器93に入力される。すると輪郭成分抽出部91は、映像信号の高周波成分を抽出し、輪郭成分信号として乗算器92に入力する。輪郭成分信号は、画像内の被写体等の輪郭部分に対応する映像信号である。
【0080】
乗算器92は、輪郭成分信号と、輪郭強調制御部45から受け取ったゲイン値とを乗算することで、輪郭成分信号を増幅する。増幅された輪郭成分信号は加算器93にて入力信号と加算され、出力端子94から出力される。出力された映像信号は輪郭強調処理が実施された映像信号となる。なお、出力端子94には、先に説明した出力端子43と接続されている。
【0081】
以下、このように構成された映像信号処理装置100の動作を説明する。
【0082】
撮像制御部42は、撮像部20の各構成要素を制御するため、各種の撮像制御信号を出力している。各種の撮像制御信号とは、上述の通り、ズーム位置情報、絞り値情報、手振れ補正用の映像信号処理装置100本体の動き量情報、シャッタ速度情報、AGCゲイン値情報である。これらの撮像制御信号は並列して輪郭強調制御部45にも与えられる。
【0083】
輪郭強調制御部45の選択部36は、パラメータ決定部31〜35によって決定されたパラメータのうちのひとつを選択して出力する。出力先は信号処理部44である。パラメータ決定部31〜35の各機能は以下のとおりである。なお、パラメータ決定部31〜35がゲイン値の決定のために利用する情報は、撮像制御部42から出力された信号に基づいて得られる。
【0084】
第1のパラメータ決定部31は、ズーム速度に連動して、適切な輪郭強調ゲイン値(パラメータ)を算出する。ズーム速度はズーム位置情報の時間変化を測定して求めることができる。
【0085】
図3Aは、第1のパラメータ決定部31に保持されている、ズーム速度とゲイン値との関係を示している。第1のパラメータ決定部31は、ズーム速度が速いほどゲイン値が小さくなるように輪郭強調ゲイン値を決定する。
【0086】
その理由は、以下のとおりである。ズーム速度が速いほど、撮影された画像の輪郭部がぼける場合が多い。このような場合には、画像中に高周波成分が少なくなるので、輪郭強調処理を施してもその効果が現れにくくなる。また、S/N比が悪い状況や、偽輪郭が輪郭周辺に出現する場合には、ノイズや偽輪郭という不要成分を強調してしまうおそれがある。そこで、ズーム速度が大きくなるにつれて輪郭強調ゲイン値が小さくなるようにした。
【0087】
第2のパラメータ決定部32は、本体の動き量に連動して輪郭強調ゲイン値を算出する。本体の動き量情報は、撮像制御部42から出力された、OIS制御のための信号である。
【0088】
図3Bは、第2のパラメータ決定部32に保持されている、映像信号処理装置100本体の動き量とゲイン値との関係を示している。第2のパラメータ決定部32は、本体の動き量が大きいほどゲイン値が小さくなるように輪郭強調ゲイン値を決定する。
【0089】
その理由は、ズーム同様、映像信号処理装置100本体の動き量が大きいほど、画像がぼける場合が多いためである。そこで、本体の動き量が大きくなるほど、輪郭強調ゲイン値が小さくなるようにした。
【0090】
第3のパラメータ決定部33は、絞り値に連動して輪郭強調ゲイン値を算出する。
【0091】
図3Cは、第3のパラメータ決定部33に保持されている、絞り値とゲイン値との関係を示している。第3のパラメータ決定部33は、絞り値が大きいほどゲイン値が小さくなるように輪郭強調ゲイン値を決定する。
【0092】
その理由は、以下のとおりである。絞り値が開放に近いほど、被写体照度が低い場合が多い。このようなときは、映像信号の輪郭部のような高周波成分が減少し、ノイズが増える傾向にある。すると、高周波成分が減少するため、輪郭強調処理を施してもその効果が現れにくい。さらにS/N比が悪い場合、すなわちノイズが多い場合には、ノイズ成分が増幅されることになり画質が低下する。特に暗い平坦部にてノイズが目立つようになってくる。そこで、絞り値が大きくなるほど、輪郭強調ゲイン値が小さくなるようにした。
【0093】
第4のパラメータ決定部34は、シャッタ速度に連動して輪郭強調ゲイン値を算出する。
【0094】
図3Dは、第4のパラメータ決定部34に保持されている、シャッタ速度とゲイン値との関係を示している。第4のパラメータ決定部34は、シャッタ速度が遅いほどゲイン値が小さくなるように輪郭強調ゲイン値を決定する。
【0095】
基本的には、非常に明るい被写体の場合は、撮像制御部42は、アイリス12を閉じる方向へ制御し、さらにシャッタ速度も高速にすることにより光量制限の制御を行っている。逆に、シャッタ速度が遅いと、被写体照度が低い場合が多い。被写体が暗くなると、アイリス12を開きつつ、シャッタ速度も遅くして蓄積光量を増加させるためである。被写体が暗いときは、高周波成分が減少するため輪郭強調処理を施してもその効果が現れにくく、S/N比が悪い場合にはノイズ成分が増幅されることになり画質が低下する。よって、図3Dに示すように、シャッタ速度が遅いほど輪郭強調ゲイン値が小さくなるようにした。
【0096】
第5のパラメータ決定部35は、AGC値に連動して輪郭強調ゲイン値を算出する。
【0097】
図3Eは、第5のパラメータ決定部35に保持されている、AGC値とゲイン値との関係を示している。
【0098】
AGC値が大きいほど、被写体照度が低い。このようなときは、映像信号の輪郭部のような高周波成分が減少し、ノイズが増える傾向にある。よって、図3Eに示すように、AGC値が大きいほど輪郭強調ゲイン値が小さくなるようにした。
【0099】
なお、図3A〜図3Eの縦軸に示された値のうち、Ba〜Beは、対応する各パラメータのうちで、ノイズが目立ちにくいと思われるレベルのうち、最も高いレベルを表している。
【0100】
選択部36は、第1〜第5のパラメータ決定部31〜35によってそれぞれ決定された各輪郭強調ゲイン値のうち最小のものを選択する。各輪郭強調ゲイン値のうち最小のゲイン値を採用する理由は、上述のズーム位置情報、絞り値情報、映像信号処理装置100本体の動き量情報、シャッタ速度情報、AGCゲイン値情報のすべての条件下において、ノイズや偽輪郭という不要な信号成分の増幅を最小限に抑えるためである。
【0101】
輪郭強調制御部45は、選択した輪郭強調ゲイン値を輪郭強調制御信号として、輪郭強調処理部41へ出力する。輪郭強調処理部41は、図2に示すとおり、この輪郭強調ゲイン値を輪郭成分に乗算して、映像信号に輪郭強調処理を施す。
【0102】
なお、撮像状態が刻々と変わるとき、選択部36にて選択される輪郭強調ゲイン値が激しく変動する可能性がある。すると同じ物体の輪郭部分の解像感が変動して見づらい画質になる。輪郭強調ゲイン値の急激な変動を回避するために、選択部36は、出力する輪郭強調ゲイン値に時定数を持たせるか、直前の値からの変化幅を規定するなどの処理を施して、輪郭強調ゲイン値を出力するようにすることが望ましい。
【0103】
図4は、輪郭強調ゲイン値に変化幅を持たせたときの選択部36からの出力信号の応答(輪郭強調ゲイン値)を示す。図4によると、点線で示すように、時刻によって急に変動する最小ゲインが選択されているが、直前のゲイン値からの変化幅を小さく設定されることにより、実際には実線で示すようなゆるやかな応答になっている。
【0104】
なお、上記の複数の撮像制御信号の全てを使用する必要はなく、一部のみを使用することももちろん可能である。また、同じ撮像制御信号を用いていても、図3A−3Eに例示した輪郭強調ゲイン値の算出特性と異なる特性を設定してもよい。また、上記の複数の撮像制御信号の例は一例であって、他の撮像制御信号を追加した場合も、上記と同様の処理方法を行うことができる。
【0105】
図5は、映像信号処理装置100の処理の手順を示すフローチャートである。
【0106】
ステップS1において、撮影開始に伴って撮像制御部42による各種制御が開始されると、撮像制御信号の出力が開始される。
【0107】
ステップS2において、パラメータ決定手段31〜35は、撮像制御部42から受け取った撮像制御信号と、図3A−3Eに示す各グラフとに基づいて、輪郭強調ゲイン値を決定する。
【0108】
ステップS3では、パラメータ決定手段31〜35のすべてが、撮像制御信号に対応する輪郭強調ゲイン値を決定したか否かが判断される。すべてについてまだ輪郭強調ゲイン値が決定されていない場合には、処理はステップS2に戻り、パラメータ決定手段31〜35のすべてが輪郭強調ゲイン値を決定し終えるまで繰り返される。すべてについて輪郭強調ゲイン値が決定された場合には、処理はステップS4に進む。
【0109】
ステップS4では、選択部36は、全ての撮像制御信号に対応する輪郭強調ゲイン値のうち、最も小さい輪郭強調ゲイン値を選択する。選択された輪郭強調ゲイン値は、輪郭強調処理部41に送られる。
【0110】
ステップS5において、輪郭強調処理部41は受け取った輪郭強調ゲイン値を適用して、輪郭強調処理を行う。
【0111】
以上の処理によれば、様々な撮影条件下で、ノイズや偽輪郭などの不要な信号成分の増幅を最小限に抑えた輪郭強調処理を行うことができる。
【0112】
(実施形態2)
図6は、本実施形態による映像信号処理装置200の構成を示すブロック図である。
【0113】
映像信号処理装置200は、輪郭強調処理部41、入力端子80、符号化部81、記録媒体82、輪郭強調制御部83を備えている。
【0114】
輪郭強調処理部41は、実施形態1で説明したとおりであるため、説明は省略する。
【0115】
符号化部81は、映像信号を目標の記録ビットレートに収まるように符号化して記録媒体に記録する。レート制御部61は、このときの符号量の制御を行っている。特に、レート制御部61は可変レート制御(VBR)を行うものとする。
【0116】
レート制御に際して使用されるパラメータは、量子化パラメータ、発生符号量、累積誤差量、目標の記録ビットレートである。なお、「累積誤差量」とは、目標の記録ビットレートで消費する記録容量と実際に発生した符号量によって消費した記録容量との差分として求められる。
【0117】
符号化部81は、種々の構成要素を備えている。具体的には、符号化部81は、並べ替えメモリ51、参照画像メモリ52、動き補償予測部53、減算器54、DCT回路55、量子化部56、逆量子化部57、逆DCT回路58、加算器59、可変長符号化部60およびレート制御部61を備えている。
【0118】
並べ替えメモリ51は符号化順に並べ替えられた符号化画像を出力する。動き補償予測部53は、並べ替えメモリ51から出力された符号化画像と参照画像メモリ52から出力された参照画像とから動き補償を行って予測画像を生成する。減算器54はこの予測画像と符号化画像との差分画像を求め、DCT回路55へ出力する。差分画像はDCT回路55で直交変換され、量子化部56でレート制御部61から与えられる量子化パラメータに従って量子化される。その結果は可変長符号化部60へ与えられるとともに、逆量子化部57へ与えられる。可変長符号化部60へ与えられたデータは、可変長符号化されて記録媒体82に記録される。一方、逆量子化部57へ与えられたデータは、先ほどの量子化パラメータに従い逆量子化され、逆DCT回路58にて逆直交変換され、先ほどの予測画像と加算され、参照画メモリに記憶される。なお、参照画メモリには参照画面に選ばれた画像のみが保持される。
【0119】
輪郭強調制御部83は、選択部36、および、パラメータ制御部71〜74を有している。パラメータ決定部71〜74の各機能は以下のとおりである。なお、パラメータ決定部71〜74がゲイン値の決定のために利用する情報は、レート制御部61から出力された信号に基づいて得られる。
【0120】
第6のパラメータ決定部71は、量子化パラメータに連動して輪郭強調ゲイン値を算出する。
【0121】
図7Aは、第6のパラメータ決定部71に保持されている、量子化パラメータとゲイン値との関係を示している。量子化パラメータが大きいほど、量子化誤差によるブロック歪が増加する。これを防ぐように輪郭強調ゲインは小さくする方が良い。よって図7Aに示すように、量子化パラメータが大きいほどゲイン値が小さくなるように輪郭強調ゲイン値を決定することとした。
【0122】
第7のパラメータ決定部72は、発生符号量に連動して輪郭強調ゲイン値を算出する。
【0123】
図7Bは、第7のパラメータ決定部72に保持されている、符号量とゲイン値との関係を示している。発生符号量が大きいほど、その後に発生符号量を抑えるためのレート制御がかかることになる。そのため、輪郭強調ゲインは小さくする方が良い。よって図7Bに示すように、発生符号量が大きいほどゲイン値が小さくなるように輪郭強調ゲイン値を決定することとした。
【0124】
第8のパラメータ決定部73は、上記累積誤差量に連動して輪郭強調ゲイン値を算出する。
【0125】
図7Cは、第8のパラメータ決定部73に保持されている、累積誤差量とゲイン値との関係を示している。累積誤差量が大きくなることは、目標の記録レートより符号量を消費しすぎている状態を意味する。累積誤差量が大きくなると、その後は発生符号量を抑えるためのレート制御が行われることになるので、輪郭強調ゲインは小さくする方が良い。よって図7Cに示すように、累積誤差量が大きいほどゲイン値が小さくなるように輪郭強調ゲイン値を決定する。
【0126】
第9のパラメータ決定部74は、目標記録ビットレートに連動して輪郭強調ゲイン値を算出する。
【0127】
図7Dは、第8のパラメータ決定部73に保持されている、目標記録ビットレートとゲイン値との関係を示している。目標記録ビットレートが小さいとき、当然量子化パラメータは大きくなるので、輪郭強調ゲインは小さくする方が良い。よって図7Dに示すように、目標記録ビットレートが小さいほどゲイン値が小さくなるように輪郭強調ゲイン値を決定することとした。
【0128】
なお、図7A〜7Dの縦軸に示された値のうち、Ca〜Cdは、対応する各パラメータのうちで、ノイズが目立ちにくいと思われるレベルのうち、最も高いレベルを表している。
【0129】
選択部36は、第6〜第9のパラメータ決定部で上記方法で決定された各輪郭強調ゲイン値のうち最小のものを選択する。輪郭制御部45は、選択した輪郭強調ゲイン値を、輪郭強調処理部41へ出力する。輪郭強調処理部41は、図2に示すとおり、この輪郭強調ゲイン値を輪郭成分に乗算して、映像信号に輪郭強調処理を施す。
【0130】
なお、符号化難易度が刻々と変わるとき、選択部36にて選択される輪郭強調ゲイン値が激しく変動する可能性がある。すると同じ物体の輪郭部分の解像感が変動して見づらい画質になる。これを回避するために、選択部36は、出力する輪郭強調ゲイン値に時定数を持たせるか、直前の値からの変化幅を規定するなどの処理を施して、輪郭強調ゲイン値を出力するようにすることが望ましい。この応答性の動作は実施形態1と同じである。
【0131】
なお、上記の複数の符号化情報の全てを使用する必要はなく、一部のみを使用することももちろん可能である。また、同じ符号化情報を用いていても、図7A−7Dに例示した輪郭強調ゲイン値の算出特性と異なる特性を設定してもよい。また、上記の複数の符号化情報の例は一例であって、他の符号化情報を追加した場合も、上記と同様の処理方法を行うことができる。
【0132】
本実施形態による映像信号処理装置200の動作は、実施形態1に関連した図5と概ね同じである。相違点は、図5の「撮影制御信号」に代えて、レート制御部61から出力された信号が用いられる点である。
【0133】
(実施形態3)
図8は、本実施形態による映像信号処理装置300の構成を示すブロック図である。図8に示す映像信号処理装置300は実施形態1にかかる映像信号処理装置100と、実施形態2にかかる映像信号処理装置200とを組み合わせた構成になっている。同じ機能を有する構成要素には、図1および図6に付したと同じ参照符号を付し、その説明は省略する。
【0134】
輪郭強調制御部84はパラメータ決定部31〜35および71〜74を備えている。各パラメータ決定部は、実施形態1及び実施形態2で述べたとおりに動作して、各々輪郭強調ゲイン値を決定する。
【0135】
選択部301は、パラメータ決定部31〜35および71〜74が決定した各輪郭強調ゲイン値のうち、最小のゲイン値を選択する。輪郭強調制御部84は、選択した輪郭強調ゲイン値を、輪郭強調処理部41へ出力する。輪郭強調処理部41は、図2に示すとおり、この輪郭強調ゲイン値を輪郭成分に乗算して、映像信号に輪郭強調処理を施す。
【0136】
なお、撮像状態や符号化難易度が刻々と変わるとき、選択部301にて選択される輪郭強調ゲイン値が激しく変動する可能性がある。すると同じ物体の輪郭部分の解像感が変動して見づらい画質になる。これを回避するために、選択部301は、出力する輪郭強調ゲイン値に時定数を持たせるか、直前の値からの変化幅を規定するなどの処理を施して、輪郭強調ゲイン値を出力するようにすることが望ましい。この応答性の動作は実施形態1と同じである。
【0137】
なお、上記の複数の撮像制御信号及び符号化情報の全てを使用する必要はなく、一部のみを使用することももちろん可能である。また、同じ撮像制御信号及び符号化情報を用いていても、図3A−3E及び図7A−7Dに例示した輪郭強調ゲイン値の算出特性と異なる特性を設定してもよい。また、上記の複数の撮像制御信号及び符号化情報の例は一例であって、他の撮像制御信号及び符号化情報を追加した場合も、上記と同様の処理方法を行うことができる。
【0138】
なお、実施の形態1〜3において、輪郭強調制御信号として輪郭強調ゲイン値を使用して本発明の実施の形態を説明した。それ以外に、輪郭強調制御信号として、輪郭成分抽出部91を構成するフィルタに与えるフィルタ係数を用いることも可能である。
【0139】
この場合は、あらかじめ複数種類のフィルタ係数が用意されていて、それぞれは異なる係数であり、それにより、フィルタの周波数特性を変動させる。これらの係数をあらかじめ輪郭強調度合い(程度)を強めるものから弱めるものまで順番付けしておき、各パラメータ決定部で入力制御信号に応じた順番を決定し、選択部301にて最も弱い特性の順番を選択するようにすればよい。例えば弱い係数ほど小さな番号を与えるとすると、選択部301は最小の番号を選択する。これにより本発明の目的を達成できる。
【0140】
図9は、輪郭成分抽出部91に備えられたハイパスフィルタに与える複数種類のフィルタ係数に基づく周波数特性を示す。各周波数特性は番号(1)〜(5)があらかじめ設定されており、番号の小さい方ほど、輪郭強調の程度が弱いという定義になっている。各輪郭強調パラメータはこれらの番号のいずれかをとり、選択部にて最小の番号を選択すればよい。なお、輪郭成分抽出部91の構成は他にも考えられる。バンドパスフィルタやローパスフィルタを用いる構成でも良く、用いるフィルタに適合する係数を選ぶことにより、上記と同様の処理方法を行うことができる。
【0141】
以上、本発明の実施形態を説明した。
【0142】
上述の実施形態では、撮像制御情報を複数種類用いる例を挙げたが、種類は1つでもよい。1種類の撮像制御情報であっても、図3A等を用いるとノイズを低減できるようなゲイン値を選択できるためである。
【0143】
なお、上述の各実施形態に関する図3A−3E、図7A−7Dでは、横軸の情報は、デジタル値として撮像制御部42から出力される。たとえば図3Aの「ズーム速度」は、正規化された8ビットのデジタル情報として、パラメータ決定部31およびズーム制御部21に与えられる。これは、ズーム速度を示す値であるが、ズーム速度そのものであってもよい。
【0144】
また、図3A−3E、図7A−7Dのグラフの形状は例であり、どの位置で折れるかは適宜決定することができる。たとえば、横軸が8ビットのデジタル値(10進数で0〜255)として表されるときは、その範囲の1/3の位置で一度折れ、2/3の位置でさらに折れるとしてもよい。ユーザがその位置を設定できるようにしてもよい。なお、グラフ形式ではなく、横軸の情報が入力として与えられるとゲイン値を求めることが可能な関数(数式)として表現されていてもよい。
【0145】
実施形態の説明のうち、特に実施形態2および3にかかる説明では、輪郭強調処理部41と、符号化部81とを別個の構成要素として説明した。しかしながら、これらを1つにまとめ、1チップとして実装させてもよい。
【0146】
また、実施形態3の説明に関連して、図8では、輪郭強調処理部41は1つのみ設けていた。しかしながら、輪郭強調処理部41を2つ設けてもよい。そのうち一方は、撮像部20からの映像信号を受けて輪郭強調処理を行い、他方は、当該輪郭強調処理がなされたその映像信号に対してさらに輪郭強調処理を行ってもよい。記録媒体82への録画時には、2つの輪郭強調処理部41によって処理された映像信号が利用される。一方、録画は行っていないがリアルタイムの映像をモニタ(図示せず)に表示する場合には、撮像部20からの信号を輪郭強調処理した映像信号が利用される。
【0147】
本実施形態による映像信号処理装置300の動作は、実施形態1に関連した図5と概ね同じである。相違点は、図5の「撮影制御信号」に加えて、「符号化部81内のレート制御部61から出力された信号」が用いられる点である。
【産業上の利用可能性】
【0148】
以上述べたように本発明による映像信号処理装置は、撮像制御情報を用いることにより、あらゆる撮影条件下で最適な輪郭強調処理を行うことができる。また、複数の符号化情報を用いることにより、符号化による画質劣化を招くことなく適切な輪郭強調処理を行うことができる。また、あらゆる撮像条件と符号化状態に対応した最適な輪郭強調処理を行うことができる。よって、常に画質の向上を図ることができるという効果を得ることができる。また、非常に処理量の少ない簡単な方法で実現できるので、処理に利用する撮像制御情報の種類が増加したとしても、回路規模やメモリ量などのコスト増大を招くこともなく導入可能である。
【0149】
よって、本発明はデジタルビデオカメラやビデオレコーダなどに用いる各種の映像信号処理装置やソフトウェアに極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0150】
【図1】実施形態1による映像信号処理装置100の構成を示すブロック図である。
【図2】輪郭強調処理部41の詳細な構成を示す図である。
【図3A】第1のパラメータ決定部31に保持されている、ズーム速度とゲイン値との関係を示す図である。
【図3B】第2のパラメータ決定部32に保持されている、映像信号処理装置100本体の動き量とゲイン値との関係を示す図である。
【図3C】第3のパラメータ決定部33に保持されている、絞り値とゲイン値との関係を示す図である。
【図3D】第4のパラメータ決定部34に保持されている、シャッタ速度とゲイン値との関係を示す図である。
【図3E】第5のパラメータ決定部35に保持されている、AGC値とゲイン値との関係を示す図である。
【図4】輪郭強調ゲイン値に変化幅を持たせたときの選択部36からの出力信号の応答(輪郭強調ゲイン値)を示す図である。
【図5】映像信号処理装置100の処理の手順を示すフローチャートである。
【図6】実施形態2による映像信号処理装置200の構成を示すブロック図である。
【図7A】第6のパラメータ決定部71に保持されている、量子化パラメータとゲイン値との関係を示す図である。
【図7B】第7のパラメータ決定部72に保持されている、符号量とゲイン値との関係を示す図である。
【図7C】第8のパラメータ決定部73に保持されている、累積誤差量とゲイン値との関係を示す図である。
【図7D】第8のパラメータ決定部73に保持されている、目標記録ビットレートとゲイン値との関係を示す図である。
【図8】実施形態3による映像信号処理装置300の構成を示すブロック図である。
【図9】輪郭成分抽出部91に備えられたハイパスフィルタに与える複数種類のフィルタ係数に基づく周波数特性を示す図である。
【図10】従来の撮像装置の構成を示す構成図である。
【図11】従来の撮像装置の符号化部81の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0151】
20 撮像部
31〜35、71〜74 パラメータ決定部
36 選択部
41 輪郭強調処理部
42 撮像制御部
44 信号処理部
45、83、84 輪郭強調制御部
61 レート制御部
81 符号化部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像内の輪郭部分を強調する輪郭強調処理部であって、映像信号に基づいて前記輪郭部分を検出し、外部から入力された輪郭強調制御信号を利用して前記輪郭部分を強調した映像信号を出力する輪郭強調処理部と、
映像信号を高能率符号化する符号化部と、
前記符号化部の符号化状態を示す少なくとも2種類の符号化情報に応じて前記輪郭部分を強調する程度を変更する輪郭強調制御信号を生成する輪郭強調制御部と
を備えた、映像信号処理装置。
【請求項2】
前記輪郭強調制御部は、
前記少なくとも2種類の符号化情報の各々に対応した輪郭強調パラメータを生成するパラメータ決定部と、
前記輪郭強調パラメータの中から、前記輪郭部分を強調する程度が最も弱い特性を持つ輪郭強調パラメータを選択し、前記輪郭強調制御信号として生成する選択部と
を備えた、請求項1に記載の映像信号処理装置。
【請求項3】
前記符号化部は、量子化パラメータ、符号量、目標符号量に対する発生符号量の累積誤差量、目標ビットレート値、のうちの少なくとも2種類の符号化情報を出力する、請求項1又は2に記載の映像信号処理装置。
【請求項4】
前記少なくとも2種類のうちの1種類の符号化情報は量子化パラメータであって、
前記符号化部は、符号化に用いた前記量子化パラメータを前記輪郭強調制御部へ出力し、
前記輪郭強調制御部は、前記量子化パラメータが大きいほど前記輪郭強調の程度を弱める輪郭強調パラメータを生成する、請求項1又は2に記載の映像信号処理装置。
【請求項5】
前記少なくとも2種類の符号化情報のうちの1種類は符号量であって、
前記符号化部は、符号化により発生した前記符号量を前記輪郭強調制御部へ出力し、
前記輪郭強調制御部は、前記符号量が大きいほど前記輪郭強調度合いを弱める輪郭強調パラメータを生成する、請求項1又は2に記載の映像信号処理装置。
【請求項6】
前記少なくとも2種類の符号化情報のうちの1種類は、目標符号量に対する発生符号量の累積誤差量であって、
前記符号化部は、前記累積誤差量を前記輪郭強調制御部へ出力し、
前記輪郭強調制御部は、前記累積誤差量が大きいほど前記輪郭強調の程度を弱める輪郭強調パラメータを生成する、請求項1又は2に記載の映像信号処理装置。
【請求項7】
前記少なくとも2種類の符号化情報のうちの1種類は目標ビットレート値であって、
前記符号化部は、前記目標ビットレート値を前記輪郭強調制御部へ出力し、
前記輪郭強調制御部は、前記目標ビットレート値が小さいほど前記輪郭強調の程度を弱める輪郭強調パラメータを生成する、請求項1又は2に記載の映像信号処理装置。
【請求項1】
画像内の輪郭部分を強調する輪郭強調処理部であって、映像信号に基づいて前記輪郭部分を検出し、外部から入力された輪郭強調制御信号を利用して前記輪郭部分を強調した映像信号を出力する輪郭強調処理部と、
映像信号を高能率符号化する符号化部と、
前記符号化部の符号化状態を示す少なくとも2種類の符号化情報に応じて前記輪郭部分を強調する程度を変更する輪郭強調制御信号を生成する輪郭強調制御部と
を備えた、映像信号処理装置。
【請求項2】
前記輪郭強調制御部は、
前記少なくとも2種類の符号化情報の各々に対応した輪郭強調パラメータを生成するパラメータ決定部と、
前記輪郭強調パラメータの中から、前記輪郭部分を強調する程度が最も弱い特性を持つ輪郭強調パラメータを選択し、前記輪郭強調制御信号として生成する選択部と
を備えた、請求項1に記載の映像信号処理装置。
【請求項3】
前記符号化部は、量子化パラメータ、符号量、目標符号量に対する発生符号量の累積誤差量、目標ビットレート値、のうちの少なくとも2種類の符号化情報を出力する、請求項1又は2に記載の映像信号処理装置。
【請求項4】
前記少なくとも2種類のうちの1種類の符号化情報は量子化パラメータであって、
前記符号化部は、符号化に用いた前記量子化パラメータを前記輪郭強調制御部へ出力し、
前記輪郭強調制御部は、前記量子化パラメータが大きいほど前記輪郭強調の程度を弱める輪郭強調パラメータを生成する、請求項1又は2に記載の映像信号処理装置。
【請求項5】
前記少なくとも2種類の符号化情報のうちの1種類は符号量であって、
前記符号化部は、符号化により発生した前記符号量を前記輪郭強調制御部へ出力し、
前記輪郭強調制御部は、前記符号量が大きいほど前記輪郭強調度合いを弱める輪郭強調パラメータを生成する、請求項1又は2に記載の映像信号処理装置。
【請求項6】
前記少なくとも2種類の符号化情報のうちの1種類は、目標符号量に対する発生符号量の累積誤差量であって、
前記符号化部は、前記累積誤差量を前記輪郭強調制御部へ出力し、
前記輪郭強調制御部は、前記累積誤差量が大きいほど前記輪郭強調の程度を弱める輪郭強調パラメータを生成する、請求項1又は2に記載の映像信号処理装置。
【請求項7】
前記少なくとも2種類の符号化情報のうちの1種類は目標ビットレート値であって、
前記符号化部は、前記目標ビットレート値を前記輪郭強調制御部へ出力し、
前記輪郭強調制御部は、前記目標ビットレート値が小さいほど前記輪郭強調の程度を弱める輪郭強調パラメータを生成する、請求項1又は2に記載の映像信号処理装置。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−85284(P2013−85284A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−277834(P2012−277834)
【出願日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【分割の表示】特願2009−11655(P2009−11655)の分割
【原出願日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【分割の表示】特願2009−11655(P2009−11655)の分割
【原出願日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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