説明

映像表示装置およびマルチビジョン装置

【課題】従来の映像表示装置では、テーパープレートをディスプレイパネルの前面基板の表面に装着することにより非表示領域をなくしたマルチビジョンが提案されているが、鮮明な画質が提供できないという問題があった。
【解決手段】画像拡大機能を持つテーパープレート20を、プラズマディスプレイパネルを構成する前面基板として構成することにより、非表示領域のない、鮮鋭感のある良好な画質を実現するマルチビジョンを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマディスプレイパネルなどのフラットディスプレイパネルを拡大表示するための映像表示装置、およびそれらを多数使用したマルチビジョン装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年プラズマディスプレイパネルや液晶ディスプレイ装置の普及に伴い、ディスプレイの大画面化が進んでいる。しかしながら、100インチを超える大画面や、複数の映像装置からの複合画像表示を行う所謂マルチビジョンは、投写型映像装置(リアプロジェクター)で行われている場合が多い。図4(a)に示すように、投射光学系101によるマルチビジョンは、スクリーン102までのある程度の投射距離を必要とするため、これを用いてマルチビジョンを構成すると、図4(b)に示したように奥行きが大きくなり、広い設置面積を必要とする。
【0003】
そこで、現在普及が進んでいるプラズマディスプレイパネル等のフラットディスプレイパネルを用いてマルチビジョンを構成すれば、奥行きを小さくすることができ、設置面積が小さくできる。しかしながら、図5に示すように、フラットディスプレイパネル110は、観察者側に向かって映像を表示する表示部である前面基板130と、非表示部140とにより構成され、表示部の周りを非表示部が取り囲むように形成されている。
【0004】
これは、図6に示すように、前面基板130の下面に設けられた金属電極131および透明電極132より引き出された配線基板141等があるため、非表示部140を生じている。この非表示部140は、複数のフラットディスプレイパネル110でマルチビジョンを構成したとき、フラットディスプレイパネル110間の境界で、図4(b)に示すような非表示部である所謂目地部分103が大きくなり、マルチビジョンとして観察者側からは見難いものとなる。
【0005】
この非表示部である目地部分を小さくする手段として、例えば特許文献1に示されている光ファイバープレートを用いた映像表示装置の例がある。これを、図7を用いて説明する。
【0006】
この映像表示装置は、図7(a)に示すように、入射側端面の面積と出射側端面の面積が異なることで拡大機能を有する光ファイバープレート(以後、テーパープレートと称す)150の入射面151を、フラットディスプレイパネル110の前面基板130の観察者側の面に接触させることにより、前面基板130に表示した映像を、非表示部140と同じか、それ以上に拡大させ、非表示部140を覆って観察者側より見えなくする。図7(b)は、図7(a)のA部を拡大したもので、前面基板130を通過してきた光は、テーパープレート150の入射面151から入射し、テーパープレート内部のクラッド153で反射を繰り返しながらコア154内を進み、出射面152から出射される。
【0007】
このように構成した映像表示装置でマルチビジョンを形成すれば、境界に目地部分103のない、見やすいマルチビジョンが実現できることとなる。
【特許文献1】特開平7−245733号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このような、フラットディスプレイパネル110の前面基板130にテーパープレート150を接触させる方法では、鮮明な画質を得ることは難しい。その理由を、図6と図8を用いて説明する。
【0009】
図6は従来のプラズマディスプレイパネルの略断面図である。各画素において、背面板120に設けられた電極121と前面基板130に設けられた金属電極131および透明電極132との間に印加された電圧によって、蛍光体122が発光することにより映像光を得ているが、この蛍光体による発光は完全拡散光になる。図8に従来の映像表示装置による光の拡散状態を示している。背面板120の中の蛍光体からの発光は、前面基板130の下部の発光部130aより発光したものと近似できるが、前面基板130を通過する間に拡散される。同様に、隣の発光部130bより発光される光も拡散されるため、テーパープレート150に入射する光は隣画素と混合した、所謂クロストークした光が入る。そのため、観察者側から見る映像は、解像感やコントラスト感のない不鮮明なものとなる。この傾向は、前面基板130の厚みが多ければ多いほど顕著になる。本発明はかかる上記課題を解決し、鮮明な画像を得るためのものである。
【0010】
本発明は、上記の課題を考慮し、非表示領域のない、目地の存在を感じさせないとともに鮮鋭感のある良好な画質を実現するマルチビジョン装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、画像拡大機能を持つテーパープレートをフラットディスプレイパネルを構成する前面基板として用いるものである。こうすることによりテーパープレート下部が発光部となり、そのまま光が拡散することなく、各々のテーパープレートのファイバーのコア部分に入射するため、観察者に鮮明な画像を提供することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明による映像表示装置によれば、複数のフラットパネルディスプレイにより構成されるマルチビジョンにおいて、その境界で非表示領域を生ずることなく、所謂目地がなくなるため、複数のディスプレイにまたがる映像であっても、違和感なく、しかも高解像力で高コントラストな、鮮明な画像を実現できる。
【0013】
又、ディスプレイ単体としても高画質画像を有し、非表示領域のない、又は有効表示領域のみを有する所謂額縁のないディスプレイも併せて提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0015】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における映像表示装置としてのプラズマディスプレイパネルの断面を示す。図2は同プラズマディスプレイパネルにおける発光面からの光の作用を示したものである。
【0016】
図1に示した本実施の形態の映像表示装置としてのプラズマディスプレイパネルは、内壁に蛍光体12を有し多数個配列されたセル13を有する背面板10と前面基板としてのテーパープレート20によって構成されている。前述したようにテーパープレート20は、入射面21と出射面22が異なる面積を持つことで拡大機能を持つ。又、入射面21と出射面22は略平行になっている。
【0017】
テーパープレート20の入射面21は、画素ピッチ(図示せず)に沿って金属電極31や透明電極32を備え、そのプレートの端面から接続用の配線基板30が引き出されている。テーパープレート20の上部、出射面22のサイズは、この配線基板30を覆う大きさになっている。つまりテーパープレート20の拡大率は、配線基板30を覆うような拡大率となるため、観察者側からは非表示部のない、表示部のみの有効画面だけが観察できるようになる。
【0018】
電極11と金属電極31および透明電極32との間でセル13に電圧を印加すると、プラズマ放電による紫外線エネルギーにより蛍光体12が発光する。発光した光は、図2に示すように、テーパープレート20の下部の発光部20aからの発光として近似できる。この発光部20aからの光は、拡散することなくテーパープレート20のコア24に入射し、クラッド23で反射を繰り返しながらコア24内を進み出射面22から出射するため、観察者側からは、出射面22を通して解像力感やコントラスト感のある、鮮明な画像を観察することができる。
【0019】
図3は、本実施の形態によるプラズマディスプレイパネルで構成したマルチビジョン装置を示す。各々のディスプレイ間の境界に非表示部、すなわち目地がなく、複数のディスプレイを使った一体映像でも、非常に見やすく、鮮鋭感のある良質な画像が提供できる。又、奥行きの少ないフラットディスプレイによるため、設置面積も少なくてすむようになっている。
【0020】
本実施の形態においては、その効果が顕著なプラズマディスプレイパネルについて説明したが、どのディスプレイにおいても、その視野角を得るために、拡散性の光を発するようになっているため、鮮明な画像を得るための手段として、ディスプレイの種類にかかわらず本発明が有効になる。
【0021】
例えば、液晶ディスプレイ装置においても有効な手段となる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明の映像表示装置は画質が鮮明で設置面積が少なくて済み、既存のディスプレイ装置では実現できない大型映像を提供することができ、監視用、広告用、イベント用等、さまざまな分野で活用が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態1に係る映像表示装置の構造を示した略断面図
【図2】本発明の実施の形態1に係る映像表示装置の光の作用を表した略断面図
【図3】本発明の実施の形態1に係る映像表示装置によるマルチビジョン装置の概略図
【図4】従来例のプロジェクターによるマルチビジョン装置の概略図
【図5】従来例によるフラットディスプレイパネルの略断面図
【図6】従来例によるフラットディスプレイパネルの構成を示す略断面図
【図7】従来例によるフラットディスプレイパネルの構造を示す略断面図
【図8】従来例における光の作用を表した略断面図
【符号の説明】
【0024】
10 背面板
11 電極
12 蛍光体
13 セル
20 テーパープレート
21 入射面
22 出射面
23 クラッド
24 コア
30 配線基板
31 金属電極
32 透明電極
101 投射光学系
102 スクリーン
103 目地部分
110 フラットディスプレイパネル
120 背面板
121 電極
122 蛍光体
130 前面基板
131 金属電極
132 透明電極
140 非表示部
141 配線基板
150 テーパープレート
151 入射面
152 出射面
153 クラッド
154 コア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力される映像信号に対応した映像光を生成するフラットな表示部と、この表示部の外周に位置し映像光を生成しない非表示部とを有する背面板と、
前記背面板の前記表示部の前面に設けられ、前記映像光が入射する入射面と前記映像光が出射する出射面とが異なる面積を持つことで拡大機能を有するテーパープレートとを備え、
前記テーパープレートは、前記出射面が前記背面板の前記非表示部を覆うことを特徴とする映像表示装置。
【請求項2】
内壁に蛍光体を有し多数個配列されたセルと、これらのセルに電圧を印加してプラズマ放電させるための第1の電極とを有して、入力される映像信号に対応した映像光を生成するフラットな表示部と、この表示部の外周に位置し映像光を生成しない非表示部とを有する背面板と、
前記背面板の前記表示部の前面に設けられ、前記映像光が入射する入射面と前記映像光が出射する出射面とが異なる面積を持つことで拡大機能を有するテーパープレートとを備え、
前記テーパープレートは、前記入射面に前記第1の電極に対向する第2の電極を有し、
前記非表示部には、前記第2の電極から引き出された配線基板が配置され、
前記テーパープレートは、前記出射面が前記背面板の前記非表示部を覆うことを特徴とする映像表示装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の映像表示装置を複数個並べ、入力される1つの画像に対応する映像信号を複数の前記映像表示装置に分割して表示するマルチビジョン装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−16293(P2009−16293A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−179534(P2007−179534)
【出願日】平成19年7月9日(2007.7.9)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】