説明

映像表示装置

【課題】ノイズの目立ちやすさを抑制する。
【解決手段】入力したアナログ映像信号をデジタル映像信号に変換するA/D変換部と、映像信号における一定期間分の平均輝度を算出するAPL算出部とを備える映像表示装置であって、上記平均輝度を監視する監視部を備え、上記監視部は、平均輝度が所定のしきい値以下である場合には、A/D変換部による上記変換後のデジタル映像信号の階調範囲を、平均輝度が当該しきい値よりも高い場合の当該階調範囲と比較して少なくとも最小値を大きな値に設定させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
入力したアナログ映像信号をデジタル映像信号に変換するA/D変換部と、映像信号における一定期間分の平均輝度を算出するAPL算出部とを備える映像表示装置が知られている。
【0003】
関連技術として、映像信号のある一定時間における平均輝度値を検出し、平均輝度値から映像情報の多い輝度レベルの映像信号領域をデジタル信号処理部における階調性のある表示が可能なγ補正カーブ領域に合うようなA/D変換部の入力信号帯域の平均値を算出し、この平均値からA/D変換部の入力信号上限値および入力信号下限値がA/D変換部に設定される構成が知られている(特許文献1参照。)。また、APL(平均映像レベル)が最低しきい値より小さいときは、出力映像信号の最大レベルを出力映像信号レベル範囲の最大値より小さなレベルとし、APLが最大しきい値より大きいときは、出力映像信号の最小レベルを出力映像信号レベル範囲の最小値より大きいレベルとすることで、APLが極端に小さい場合は出力映像信号レベルの最大値も極端に大きくならず、逆に、APLが極端に大きい場合は出力映像信号レベルの最小値も極端に小さくならないようにしたダイナミック映像制御回路が知られている(特許文献2参照。)。また、低輝度検出部は、比較的低輝度の映像信号を検出し、抑圧量設定部は映像信号が低輝度になるほど大きくなるノイズ抑制量を生成し、ノイズ抑制回路は低輝度検出部により検出された比較的低輝度の映像信号に対して、抑圧量設定部により生成されたノイズ抑圧量でノイズを抑圧する構成が知られている(特許文献3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003‐189124号公報
【特許文献2】特開平8‐317250号公報
【特許文献3】特開2005‐184786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、映像信号に基づいて映像表示を実行する場合、映像とともにノイズが表示されることで画質が劣化する。このようなノイズは、特に映像が暗い場合に目立ちやすいという課題があった。
【0006】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、映像が全体的に暗い場合のノイズの目立ちやすさを抑制することが可能な映像表示装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の態様の一つは、入力したアナログ映像信号をデジタル映像信号に変換するA/D変換部と、映像信号における一定期間分の平均輝度を算出するAPL算出部とを備える映像表示装置であって、上記平均輝度を監視する監視部を備え、上記監視部は、平均輝度が所定のしきい値以下である場合には、A/D変換部による上記変換後のデジタル映像信号の階調範囲を、平均輝度が当該しきい値よりも高い場合の当該階調範囲と比較して少なくとも最小値を大きな値に設定させる構成としてある。
【0008】
当該構成によれば、映像表示装置は、映像信号の明るさが全体的に暗い場合には、A/D変換部による変換後のデジタル映像信号が取りうる階調範囲の最小値を、映像信号の明るさが全体的に明るい場合と比較して大きな値に設定させることで、デジタル映像信号に基づいて表示される映像上でノイズが目立つことを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】映像表示装置の要部を概略的に示したブロック図である。
【図2】アナログ映像信号からデジタル映像信号への変換に用いる変換特性を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態として、所定の電源回路から供給された電圧を調整し、当該調整後の電圧をA/D変換部の駆動用の電源電圧としてA/D変換部へ供給する電圧調整部を備え、上記監視部は、平均輝度が上記しきい値以下である場合には、A/D変換部へ供給する電源電圧のレベルを低下させる指示を電圧調整部へ出力し、上記電圧調整部は、上記指示を入力した場合に、A/D変換部へ供給する電源電圧のレベルを第1レベルから第2レベルへ低下させ、上記A/D変換部は、電圧調整部から供給される電圧レベルが第2レベルである場合には、上記階調範囲を、電圧調整部から供給される電圧レベルが第1レベルである場合の当該階調範囲と比較して少なくとも最小値を大きな値とする構成としてもよい。
また、本発明の実施形態として、上記A/D変換部は、電圧調整部から供給される電圧レベルが第2レベルである場合には、上記階調範囲を、電圧調整部から供給される電圧レベルが第1レベルである場合の当該階調範囲と比較して狭くする構成としてもよい。
【0011】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。
図1は、本実施形態にかかる映像表示装置10の要部を概略的に示したブロック図である。映像表示装置10には、例えば、テレビジョンやモニター等が該当する。映像表示装置10は、電源回路14、ADC電圧調整部15、CPU16、アナログ・フロントエンド11、タイミングコントローラ(T‐CON)17、表示パネル18等を備える。表示パネル18は、例えば液晶パネルである。アナログ・フロントエンド11は、アナログ/デジタルコンバータ(A/D変換部。以下、ADC12と表記。)やAPL算出部13などを含む回路である。
【0012】
電源回路14は、例えば、外部の商用電源から電源コードを介して取得される交流電圧を所定レベルの直流電圧DCに変換し、ADC電圧調整15を始めとした映像表示装置10内の各部へ必要なレベルの電圧を供給する。ADC電圧調整部15は、電源回路14から供給された電圧を調整し、調整後の電圧をADC12の駆動用の電源電圧としてADC12へ供給する。
【0013】
ADC12は、図示しないチューナや外部入力端子から入力したアナログ映像信号を、その電圧値に応じたデジタル映像信号に変換する。APL算出部13は、変換後のデジタル映像信号における一定期間(例えば1フレーム分)毎の平均輝度(APL)を算出する。その他、アナログ・フロントエンド11は、デジタル化された映像信号に対してガンマ補正等、種々の画質調整を実行した上で、映像信号をT‐CON17へ出力する。T‐CON17は、入力した映像信号をフレームメモリ(図示せず)に一時的に保存しつつ、当該保存した信号に対応する駆動信号を所定のタイミングで液晶パネル(表示パネル18)に出力することにより、画素の配列により構成された液晶パネルの各画素を駆動して液晶パネルに映像信号に基づく映像を表示させる。
【0014】
CPU16は、所定のプログラムに従った機能の一つとして、APL算出部13が算出する平均輝度を監視し、監視結果に応じた指示をADC電圧調整部15へ出力する。CPU16は監視部に該当する。映像表示装置10は、図1に示した構成以外にも、上記チューナや外部入力端子、その他、音声信号処理回路やスピーカなど、テレビジョン等を構成する上で必要な公知の各構成を備え得る。
【0015】
CPU16は、APL算出部13が算出する平均輝度が、予め設定された所定のしきい値以下である場合には、ADC12による変換後のデジタル映像信号の階調範囲について、平均輝度が当該しきい値よりも高い場合の当該階調範囲と比較して少なくともその最小値を大きな値に設定させる。より具体的には、CPU16は、APL算出部13が算出する平均輝度が上記しきい値以下である場合には、ADC12へ供給する電源電圧のレベルを低下させる指示をADC電圧調整部15へ出力する。ADC電圧調整部15は、通常(CPU16から、当該電源電圧のレベルを低下させる指示を入力しない場合。)は、例えば電源回路14から供給される3.3V程度(第1レベル)の電圧をそのままADC12へ供給するが、当該電源電圧のレベルを低下させる指示をCPU16から入力した場合は、電源回路14から供給される3.3V程度(第1レベル)の電圧を、5%程度低下させた電圧(第2レベル)に変換した上で、当該第2レベルの電圧を電源電圧としてADC12へ供給する。ADC12は、第1レベル±5%の範囲の電圧の供給を受けることで駆動可能なICである。
【0016】
ADC12は、ADC電圧調整部15から供給される電圧レベルが第1レベルであるか第2レベルであるかを判定し、第1レベルである場合には第1変換特性を用いてA/D変換を実行し、第2レベルである場合には第2変換特性を用いてA/D変換を実行する。
図2は、ADC12がアナログ映像信号(入力値)をデジタル映像信号(出力値)に変換する際に用いる変換特性を例示している。例えば、図2において二点鎖線で示した一次関数(一部実線と重なっている直線)が第1変換特性に該当し、実線で示した関数が第2変換特性に該当する。図2から判るように、第2変換特性による変換後の階調範囲は、第1変換特性による変換後の階調範囲(0〜255)よりも狭く、特に、少なくともその階調範囲の最小値minは、第1変換特性による階調範囲の最小値0よりも大きな値に設定されている。
【0017】
かかる構成によれば、APL算出部13が算出する平均輝度が上記しきい値以下である場合は、当該平均輝度が上記しきい値より高い場合と比較して、ADC12によるデジタル変換後の映像信号のダイナミックレンジが狭くなり、少なくとも映像内の低輝度部分がある程度明るくなる。
【0018】
このように本実施形態によれば、映像表示装置10は、入力する映像信号の明るさが全体的に暗い場合(平均輝度が上記しきい値以下である場合)には、ADC12による変換後のデジタル映像信号が取りうる階調範囲の最小値を、映像信号の明るさが全体的に明るい場合(平均輝度が上記しきい値より高い場合)と比較して大きな値に設定する。入力される映像信号には種々の原因によりノイズが重畳されている。また、ADC12に対してADC調整部15から供給される電源電圧にもノイズが重畳されており、この電源電圧に重畳されたノイズが、映像信号に対してノイズとして表れることもある。これらノイズは、映像が暗い部分で特に目立ちやすい(人間の目に見えやすい)。そこで、本実施形態のように、入力する映像信号の明るさが全体的に暗い場合(ノイズが目立ちやすい場合)には、映像の最低輝度をある程度引き上げつつダイナミックレンジを狭めることで、このようなノイズが映像上で目立つことを的確に防止することができる。また、ノイズの原因の一つとなるADC12に対してADC調整部15から供給される電源電圧についても、そのレベルを第2レベルへ下げることで、当該電源電圧の影響によるノイズを抑制することができる。
【符号の説明】
【0019】
10…映像表示装置、11…アナログ・フロントエンド、12…ADC、13…APL算出部、14…電源回路、15…ADC電圧調整部、16…CPU、17…T‐CON、18…表示パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力したアナログ映像信号をデジタル映像信号に変換するA/D変換部と、映像信号における一定期間分の平均輝度を算出するAPL算出部とを備える映像表示装置であって、
上記平均輝度を監視する監視部を備え、
上記監視部は、平均輝度が所定のしきい値以下である場合には、A/D変換部による上記変換後のデジタル映像信号の階調範囲を、平均輝度が当該しきい値よりも高い場合の当該階調範囲と比較して少なくとも最小値を大きな値に設定させることを特徴とする映像表示装置。
【請求項2】
所定の電源回路から供給された電圧を調整し、当該調整後の電圧をA/D変換部の駆動用の電源電圧としてA/D変換部へ供給する電圧調整部を備え、
上記監視部は、平均輝度が上記しきい値以下である場合には、A/D変換部へ供給する電源電圧のレベルを低下させる指示を電圧調整部へ出力し、
上記電圧調整部は、上記指示を入力した場合に、A/D変換部へ供給する電源電圧のレベルを第1レベルから第2レベルへ低下させ、
上記A/D変換部は、電圧調整部から供給される電圧レベルが第2レベルである場合には、上記階調範囲を、電圧調整部から供給される電圧レベルが第1レベルである場合の当該階調範囲と比較して少なくとも最小値を大きな値とすることを特徴とする請求項1に記載の映像表示装置。
【請求項3】
上記A/D変換部は、電圧調整部から供給される電圧レベルが第2レベルである場合には、上記階調範囲を、電圧調整部から供給される電圧レベルが第1レベルである場合の当該階調範囲と比較して狭くすることを特徴とする請求項2に記載の映像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−253719(P2012−253719A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127157(P2011−127157)
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】