説明

映像記録装置

【課題】 事故の検知漏れが無く、かつ事故発生前後の映像を容易に取り出すことが可能な映像記録装置を提供する。
【解決手段】 この交通監視装置の制御部11は、交差点の交通状況、時刻情報などを含む交通状況データを記録媒体M1〜MNに順次上書き記録し、各記録媒体Mの残記録時間が所定時間になったことに応じて、その記録媒体Mの終了番地まで上書き記録を継続するとともに、次の記録媒体Mへの上書き記録を開始する。したがって、前後2つの記録媒体Mの両方に所定時間の映像が記録されるので、映像が途切れることなく、事故の状況を確実に記録することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は映像記録装置に関し、特に、道路の交通状況の映像を記録する映像記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、交差点における事故発生前後の映像を記録し、現場検証の省力化・効率化を図る交通監視装置がある(たとえば特許文献1参照)。この交通監視装置では、カメラによって撮影した交差点の映像をエンドレス記録再生部に記録するとともに、マイクで収集した交差点の音が所定レベルを超えたときに事故が発生したと判定し、その判定の所定時間後にエンドレス記録再生部における映像記録を停止し、エンドレス記録再生部に記録されている事故発生前後の映像を蓄積部に蓄積する。
【特許文献1】特開平8−263785号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来の交通監視装置では、人対車の事故のように音が小さな事故を検出することができないという問題があった。
【0004】
交差点の映像を長時間に亘って記録媒体に連続記録し、事故発生前後の映像を記録媒体から探し出せば、あらゆる事故の映像を得ることができる。しかし、この方法では、記録媒体における情報量が極めて大きくなり、事故が発生した時間帯の映像を記録媒体から取り出すのに時間がかかる。
【0005】
それゆえに、この発明の主たる目的は、事故の検知漏れが無く、かつ事故発生前後の映像を容易に取り出すことが可能な映像記録装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る映像記録装置は、道路の交通状況の映像を記録する映像記録装置であって、複数の記録媒体と、映像に時刻情報をスーパインポーズして複数の記録媒体に順次上書き記録する制御部とを備え、制御部は、各記録媒体の残記録時間が所定時間になったことに応じて、その記録媒体の終了番地まで上書き記録を継続するとともに、次の記録媒体への上書き記録を開始するものである。
【0007】
好ましくは、制御部は、複数の記録媒体と時刻情報との関係を記憶し、時刻情報が指定されたことに応じて、その時刻情報がスーパインポーズされた映像が記録された記録媒体を特定する情報を出力する。
【0008】
また好ましくは、各記録媒体は、取付けおよび取り外し自在に設けられ、制御部は、複数の記録媒体のうちの取り外された記録媒体以外の記録媒体に順次上書き記録する。
【0009】
また好ましくは、記録媒体は半導体メモリである。
【発明の効果】
【0010】
この発明に係る映像記録装置では、事故音の発生の有無に関係なく道路の交通状況の映像を複数の記録媒体に順次上書き記録するので、事故の検知漏れが生じることは無い。また、記録媒体の切換時には所定の時間の映像を前後2つの記録媒体の両方に記録するので、事故が記録媒体の切換時に発生した場合でも事故の発生前後の映像は後の記録媒体に記録されている。また、映像に時刻情報をスーパインポーズするので、事故が発生した時間帯の映像を容易に取り出すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は、この発明の一実施の形態による交通監視装置の構成を示すブロック図である。図1において、この交通監視装置は、交差点の近くに設けられ、カメラ1,2、マイク3、A/Dコンバータ4〜6、符号化/スーパインポーズ部7、符号化部8、電波時計/タイマ部9、操作部10、制御部11、表示部12、および記録媒体M1〜MN(ただし、Nは2以上の整数である)を備える。
【0012】
カメラ1は、交差点の交通状況(自動車、単車、人の流れ)を撮影する。カメラ2は、信号灯器の点灯状態(青、黄、赤のうちのいずれが点灯しているか)を撮影する。カメラ1,2から出力されたアナログ映像信号は、それぞれA/Dコンバータ4,5でデジタル信号に変換され、さらに符号化/スーパインポーズ部7で符号化/スーパインポーズ処理を施される。これにより、カメラ2によって撮影された信号灯器の点灯状況を示す映像が、カメラ1によって撮影された交差点の交通状況を示す映像にスーパインポーズされる。この映像は、事故解析、交通状況解析に用いられる。
【0013】
また、マイク3は、交差点の音を収集してアナログ音声信号に変換する。マイク3から出力されたアナログ音声信号は、A/Dコンバータ6でデジタル信号に変換され、さらに符号化部8で符号化される。マイク3によって収集されたクラクション音、ブレーキ音、衝突音などは事故解析に用いられ、交通騒音は交通状況解析に用いられる。
【0014】
電波時計/タイマ部9は、日時(年、月、日、時、分、秒)を示す時刻情報、所定周期のクロック信号などを生成して制御部11に与える。時刻情報は、標準電波局からの標準電波αやGPSからの電波に基づいて校正される。時刻情報は、制御部11において、交差点の交通状況および信号灯器の点灯状況を示す映像にスーパインポーズされる。
【0015】
制御部11は、交通状況データ(交差点の交通状況の映像、時刻情報、信号灯器点灯状態、交差点での音声)を記録媒体M1〜MNに順次上書き記録する。その際、制御部11は、各記録媒体Mの残記録時間が所定時間になったことに応じて、その記録媒体Mの終了番地まで上書き記録を継続するとともに、次の記録媒体Mへの上書き記録を開始する。これにより、前後2つの記録媒体Mの両方に所定時間の映像が記録されるので、たとえば記録媒体Mの終了番地の近くの番地に記録しているときに事故が発生しても、その事故発生前後の映像は次の記録媒体Mに記録されている。したがって、事故の状況を確実に記録することができる。
【0016】
記録媒体M1〜MNは、それぞれ独立して取付け/取り外しが可能になっている。記録媒体Mは、たとえばUSB(Universal Serial Bus)フラッシュメモリで構成され、制御部11と各記録媒体Mの間はUSBで接続される。USBフラッシュメモリは、フラッシュメモリのパッケージにUSBコネクタを設けたものであり、取付け/取り外しが可能になっている。記録媒体Mとして1〜2GB程度の容量のUSBフラッシュメモリを使用すれば、1つの記録媒体Mに1日程度の映像を記録することができる。たとえば事故が発生した場合は、その事故が発生した時刻の記録媒体Mを取り外して解析室で事故を解析したり、事故の証拠として保存することができる。取り外した記録媒体の代わりに、新しい記録媒体を取付けてもよい。
【0017】
操作部10は、交通監視装置の使用者によって操作され、制御部11に種々の情報を入力するために使用される。表示部12は、制御部11からの信号に応答して種々の情報を表示する。制御部11は、どの記録媒体Mにいつの映像を記録しているかを記憶している。使用者が操作部10を操作して事故解析、交通状況解析のために必要とする映像の日時を入力すると、その日時の映像の記録データが記録媒体M1〜MNのうちのどの記録媒体に記録されているのかが制御部11によって調査され、その調査結果を示す情報が表示部12に表示される。これにより、事故発生前後の映像が記録された記録媒体を容易に回収することができる。
【0018】
図2は、制御部11の記録媒体M1〜MNへの書込動作を示すフローチャートである。ステップS1において制御部11は、記録媒体M1が実装され、かつ正常にデータの書込/読出を行なえるかどうかを判別する。ステップS1における判別結果が肯定的である場合(記録媒体M1が実装され、かつ正常な場合)はステップS2において記録媒体M1を記録媒体MnとしてステップS4に進み、ステップS1における判別結果が否定的である場合(記録媒体M1が実装されていない場合、記録媒体M1が実装されているが正常でない場合)はステップS3において次に記録可能な記録媒体Mを探し、見つかった記録媒体Mを記録媒体MnとしてステップS4に進む。
【0019】
ステップS4において記録媒体Mnの先頭番地から交通状況データの書込を開始し、ステップS5において記録媒体Mnの「終了番地−D」(終了番地よりも所定番地数Dだけ前の番地)まで交通状況データの書込が終了するのを待つ。所定番地数Dは、記録媒体Mnの残記録時間であり、残記録容量である。
【0020】
記録媒体Mnの「終了番地−D」まで交通状況データの書込が終了したら、ステップS6において次の記録媒体Mnext(通常はMn+1)が実装され、かつ正常にデータの書込/読出を行なえるかどうかを判別する。ステップS6における判別結果が肯定的である場合(記録媒体Mnextが実装され、かつ正常な場合)はステップS8に進み、ステップS6における判別結果が否定的である場合(記録媒体Mnextが実装されていない場合、記録媒体Mnextが実装されているが正常でない場合)はステップS7において次に記録可能な記録媒体Mを探し、見つかった記録媒体Mを記録媒体MnextとしてステップS8に進む。
【0021】
ステップS8において次の記録媒体Mnextに先頭番地から記録媒体Mnと同じ交通状況データの書込を開始する。ステップS9においてnextが最終記録媒体番号Nであるか否かを判別し、next=Nでない場合はステップS10においてnextをnと読み替えて処理を継続してステップS5に戻り、next=Nである場合はステップS11に進む。
【0022】
ステップS11において記録媒体MNの「終了番地−D」まで交通状況データの書込が終了するのを待ち、記録媒体MNの「終了番地−D」まで交通状況データの書込が終了したら、ステップS1に戻る。
【0023】
なお、この実施の形態では、カメラ2で撮影した信号灯器の点灯状態をカメラ1で撮影した交差点の交通状況の映像にスーパインポーズしたが、信号灯器の青、黄、赤の各電球(LED)に流れる電流を検出して、どの色の電球が点灯しているかを判定し、その判定結果を示す情報を交差点の交通状況の映像にスーパインポーズしてもよい。
【0024】
また、複数の符号化、圧縮方法を内蔵しておき、操作部10を操作することにより、交通状況データの使用目的に応じて所望の符号化、圧縮方法を選択できるようにしてもよい。これにより、記録媒体1つ当りの記録時間、映像の解像度などを選択することができる。
【0025】
また、操作部10を操作することにより、交通状況データの使用目的に応じて、記録媒体M1〜MNにデータを順次上書きするか、記録データM1〜MNへのデータの書込が終了した時点でデータの書込を停止するかを選択できるようにしてもよい。
【0026】
また、交通監視装置と解析室を通信回線で接続し、解析室から指定された日時と時間幅の交通状況データを交通監視装置から通信回線を介して解析室に送信できるようにしてもよい。これにより、事故現場まで行くことなく交通状況データを回収することができる。
【0027】
また、交通監視装置と解析室を通信回線で接続し、解析室から交通監視装置に映像や音の記録を停止させたり開始させたりできるようにしてもよい。これにより、事故現場まで行くことなく交通状況データの記録動作を遠隔操作することができる。
【0028】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】この発明の一実施の形態による交通監視装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示した制御部の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0030】
1,2 カメラ、3 マイク、4〜6 A/Dコンバータ、7 符号化/スーパインポーズ部、8 符号化部、9 電波時計/タイマ部、10 操作部、11 制御部、12 表示部、M1〜MN 記録媒体。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路の交通状況の映像を記録する映像記録装置であって、
複数の記録媒体と、
前記映像に時刻情報をスーパインポーズして前記複数の記録媒体に順次上書き記録する制御部とを備え、
前記制御部は、各記録媒体の残記録時間が所定時間になったことに応じて、その記録媒体の終了番地まで上書き記録を継続するとともに、次の記録媒体への上書き記録を開始する、映像記録装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記複数の記録媒体と時刻情報との関係を記憶し、時刻情報が指定されたことに応じて、その時刻情報がスーパインポーズされた映像が記録された記録媒体を特定する情報を出力する、請求項1に記載の映像記録装置。
【請求項3】
各記録媒体は、取付けおよび取り外し自在に設けられ、
前記制御部は、前記複数の記録媒体のうちの取り外された記録媒体以外の記録媒体に順次上書き記録する、請求項1または請求項2に記載の映像記録装置。
【請求項4】
前記記録媒体は半導体メモリである、請求項1から請求項3までのいずれかに記載の映像記録装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−302104(P2006−302104A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−125107(P2005−125107)
【出願日】平成17年4月22日(2005.4.22)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】